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  • 特許-エアバッグ及びエアバッグ装置 図1
  • 特許-エアバッグ及びエアバッグ装置 図2
  • 特許-エアバッグ及びエアバッグ装置 図3
  • 特許-エアバッグ及びエアバッグ装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/203 20060101AFI20220117BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20220117BHJP
【FI】
B60R21/203
B60R21/2338
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018071674
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019182019
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岩里 賢
(72)【発明者】
【氏名】早川 真司
(72)【発明者】
【氏名】楠村 拓也
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047845(JP,A)
【文献】特開2018-020737(JP,A)
【文献】特開2009-040220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンバと、該第1チャンバの乗員側の周囲を周回する第2チャンバとを備えるエアバッグであって、
乗員側のフロントパネルと、
反乗員側のリアパネルと、
前記フロントパネルと前記リアパネルとの間に介在し、前記エアバッグの側周部を形成する複数枚のサイドパネルと、
を有し、
隣接する前記サイドパネルの側辺同士が結合されており、
前記サイドパネルの反乗員側の一端部は前記リアパネルの周縁部に結合されており、
前記サイドパネルの他端部は、該サイドパネルの前記一端部と他端部との間の中間部に結合されており、
前記サイドパネルの前記他端部と前記中間部との間の途中部分が前記フロントパネルの周縁部に結合されており、
前記第2チャンバは、前記サイドパネルの前記他端部と前記中間部との間の部分により囲まれており、
前記サイドパネルの他端側は一部が張り出した張出部となっており、該張出部が前記中間部に結合されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
請求項に記載のエアバッグにおいて、前記サイドパネルの他端側の前記中間部に結合されていない部分が、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを連通する連通口となることを特徴とするエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアバッグにおいて、膨張したエアバッグの乗員対向面にあっては、前記フロントパネルと前記サイドパネルとの間に凹陥部が存在することを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のエアバッグにおいて、前記サイドパネルは3~12枚配列されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項5】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のエアバッグにおいて、前記サイドパネルは単独形状のサイドパネルを複数枚連ねた多連形状のものであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のエアバッグにおいて、前記フロントパネルと前記リアパネルとを結合するインナーテザーをさらに備えることを特徴とするエアバッグ。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のエアバッグと、
前記エアバッグにガスを供給するインフレータと、
を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置としては、リテーナに取り付けられて折り畳まれたエアバッグをモジュールカバーと称されるカバー部材で覆ったものが多く使用されている。
【0003】
車両の衝突がセンサによって検知されると、インフレータが作動し、インフレータから発生したガスによってエアバッグが膨張展開する。
【0004】
特許文献1には、初期膨張時の乗員側への突出を抑制し、かつ斜め方向に移動する乗員を拘束することができる運転席用エアバッグが記載されている。特許文献1では、テザーによって運転席用エアバッグの乗員側とインフレータ用開口部とを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-65394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、膨張厚みが大きく、斜め衝突又は微小オーバーラップ衝突したときに乗員を拘束するのに好適なエアバッグ及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転席用エアバッグは、第1チャンバと、該第1チャンバの乗員側の周囲を周回する第2チャンバとを備えるエアバッグであって、乗員側のフロントパネルと、反乗員側のリアパネルと、前記フロントパネルと前記リアパネルとの間に介在し、前記エアバッグの側周部を形成する複数枚のサイドパネルと、を有し、隣接する前記サイドパネルの側辺同士が結合されており、前記サイドパネルの反乗員側の一端部は前記リアパネルの周縁部に結合されており、前記サイドパネルの他端部は、該サイドパネルの前記一端部と他端部との間の中間部に結合されており、前記サイドパネルの前記他端部と前記中間部との間の途中部分が前記フロントパネルの周縁部に結合されており、前記第2チャンバは、前記サイドパネルの前記他端部と前記中間部との間の部分により囲まれているものである。
【0008】
本発明の一態様では、前記サイドパネルの他端側は一部が張り出した張出部となっており、該張出部が前記中間部に結合されている。
【0009】
本発明の一態様では、前記サイドパネルの他端側の前記中間部に結合されていない部分が、前記第1チャンバと前記第2チャンバとを連通する連通口となる。
【0010】
本発明の一態様では、膨張したエアバッグの乗員対向面にあっては、前記フロントパネルと前記サイドパネルとの間に凹陥部が存在する。
【0011】
本発明の一態様では、前記サイドパネルは3~12枚配列されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記サイドパネルは単独形状のサイドパネルを複数枚連ねた多連形状のものである。
【0013】
本発明の一態様では、前記フロントパネルと前記リアパネルとを結合するインナーテザーをさらに備える。
【0014】
本発明のエアバッグ装置は、本発明のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアバッグは、膨張厚みが大きく、斜め衝突又は微小オーバーラップ衝突したときに乗員を拘束するのに好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係るエアバッグの膨張時の斜視図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】実施の形態に係るエアバッグの各パネルの平面図である。
図4】実施の形態に係るエアバッグの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図4を参照して実施の形態に係るエアバッグについて説明する。
【0018】
このエアバッグ1は、運転席乗員の前方で膨張展開する運転席用エアバッグであり、ステアリングホイールのハブ部に設置される。
【0019】
このエアバッグ1は、膨張展開した状態において、エアバッグ1のハブ部側(反乗員側)のリア面を構成するリアパネル2と、乗員側のフロント面を構成するフロントパネル4と、エアバッグ1の側周を構成するサイドパネル5とを備え、リアパネル2とフロントパネル4とをサイドパネル5を介して結合して袋状としたものである。また、リアパネル2とフロントパネル4とがインナーテザー14により連結されている。
【0020】
リアパネル2及びフロントパネル4は円形(略円形)である。フロントパネル4は、リアパネル2よりもやや小径の円形の織布よりなる。リアパネル2は直径がステアリングホイールと同程度である。例えば、リアパネル2の径は500~700mm程度であり、フロントパネル4の径は400~600mm程度である。
【0021】
リアパネル2には、インフレータが挿入されるインフレータ用開口2aが設けられている。また、このインフレータ用開口2aの周囲には、リアパネル2をインフレータと共にリテーナに固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通孔2bが設けられている。
【0022】
また、リアパネル2には、エアバッグ1の内部と外部とを連通する2個の円形のベントホール2cが設けられている。ベントホール2cの形状、個数、位置は適宜変更可能である。
【0023】
サイドパネル5は、複数枚(この実施の形態では6枚)配置されている。各サイドパネル5は、一対の短辺部5b、5cと、一対の長辺部(以下、側辺部という)5s、5sとを有し、長手方向の中央部分が幅の狭い狭幅部となっている。
【0024】
サイドパネル5の一端側(反乗員側)の短辺部5cと、リアパネル2の周縁部とが、縫合糸22(図2)で縫合される。
【0025】
サイドパネル5の他端側の短辺部5bは、一部(この例では中央部)が、サイドパネル5の外側に向かって張り出した張出部5aとなっている。サイドパネル5の他端側が折り返され、張出部5aが、サイドパネル5の短辺部5b、5cの間の中間部5dに縫合糸24(図2図4)で縫合される。サイドパネル5の折り返し部分は、エアバッグ膨張時に乗員側に位置するサイドパネルトップ部5tを形成する。
【0026】
隣接する各サイドパネル5の側辺部5s同士は縫合糸23(図2)によって縫合されている。
【0027】
サイドパネル5の短辺部5bと中間部5dとの間の途中部分と、フロントパネル4の周縁部とが、縫合糸21(図2)によって縫合されている。
【0028】
インナーテザー14は、中心部14aと、中心部14aから放射4方向に延在する脚部14bを有する十字形状である。中心部14aがフロントパネル4の中心部に縫合糸25(図2)で縫合される。脚部14bの端部14cにはインフレータ用開口14d及びボルト挿通孔14eが設けられており、リアパネル2及びインフレータをリテーナに固定するためのボルトがボルト挿通孔14eに挿通される。本実施形態では、十字形状のインナーテザー14を用いているが、形状はこれに限定されない。
【0029】
図2の通り、膨張したエアバッグ1内は、リアパネル2、フロントパネル4及びサイドパネル5(サイドパネル5の中間部5dと短辺部5cとの間の部分)で囲まれた第1チャンバC1と、サイドパネル5の短辺部5bと中間部5dとの間の部分により囲まれた第2チャンバC2とからなる。
【0030】
サイドパネル5の短辺部5bのうち、張出部5a以外の部分はサイドパネル5の中間部5dに結合されておらず、この部分が、第1チャンバC1と第2チャンバC2とを連通する連通口A(図2)となる。
【0031】
第2チャンバC2は第1チャンバC1の乗員側の周囲を周回している。
【0032】
このエアバッグ1は、インフレータ用開口2aに沿ってエアバッグ1内に配置された取付用リング(図示略)によって、運転席用エアバッグ装置のリテーナ(図示略)に取り付けられる。この取付用リングには複数のスタッドボルトが設けられており、このスタッドボルトがボルト挿通孔2b、14eと、インフレータのフランジ部のボルト挿通孔と、リテーナのボルト挿通孔とに差し通され、ナット締めされることにより、運転席用エアバッグ1及びインフレータがリテーナに固定される。
【0033】
運転席用エアバッグ1は折り畳まれ、運転席用エアバッグ装置モジュールカバーで覆われる。
【0034】
このように構成されたエアバッグ装置においては、車両衝突時等に、インフレータが作動してエアバッグ1内にガスが噴出する。エアバッグ1は、このガスにより膨張してモジュールカバーを押し開き、ステアリングホイールと乗員との間に膨張展開して運転席乗員を拘束する。
【0035】
このエアバッグ1にあっては、インフレータからのガスは第1チャンバC1内に供給され、まず第1チャンバC1を膨張させる。また、このガスは連通口Aを介して第2チャンバC2に流入して第2チャンバC2を膨張させる。
【0036】
膨張したエアバッグ1の乗員対向面にあっては、フロントパネル4及びサイドパネルトップ部5tは乗員方向に膨出し、両者の間に凹陥部Rが形成される。この凹陥部Rは、トップパネル4の周囲を周回している。
【0037】
膨張したエアバッグ1は膨張厚みが大きく、また、トップパネル4のサイドパネルトップ部5tとの間に凹陥部Rが形成されることにより、斜め衝突又は微小オーバーラップ衝突したときに乗員を拘束するのに好適なものとなる。また、基布の使用量を抑え、折り畳み時のエアバッグ1の容積・重量を軽減できる。
【0038】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の種々の形態をとることができる。例えば、サイドパネル5の数は6枚に限定されず、3~12枚程度であればよく、6~8枚程度が好ましい。
【0039】
本発明では、単独形状のサイドパネル5の代りに、単独形状のサイドパネル5を複数枚連ねた形状の多連形サイドパネルを用いてもよい。多連形サイドパネルを用いると、サイドパネル同士の縫合の手間を少なくすることができる。
【0040】
上記実施形態では、運転席用エアバッグについて説明したが、助手席用エアバッグ等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 エアバッグ
2 リアパネル
4 フロントパネル
5 サイドパネル
14 インナーテザー
C1 第1チャンバ
C2 第2チャンバ
図1
図2
図3
図4