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7006477メタクリル酸製造用触媒の製造方法、およびメタクリル酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】メタクリル酸製造用触媒の製造方法、およびメタクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20220203BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20220203BHJP
   C07C 51/235 20060101ALI20220203BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B01J37/04 102
B01J37/00 F
B01J37/08
B01J27/24 Z
C07C57/055 B
C07C51/235
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018079639
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019188268
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 実穂
(72)【発明者】
【氏名】平田 純
(72)【発明者】
【氏名】井口 敏行
(72)【発明者】
【氏名】谷元 浩一
(72)【発明者】
【氏名】日野 智道
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/051840(WO,A1)
【文献】特開2013-006162(JP,A)
【文献】国際公開第2010/013749(WO,A1)
【文献】特開2004-268027(JP,A)
【文献】特開2013-086008(JP,A)
【文献】特開2011-092882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07B 31/00-63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、リン及びモリブデンを含むメタクリル酸製造用触媒の製造方法であって、
(I)レーザー回折式粒径分布測定法にて測定して得られた粒径分布において、少なくとも1つのピークが1μm以上の範囲にあり、かつメディアン径が2μm~3μmの範囲にあるヘテロポリ酸触媒前駆体であり、ヘテロポリ酸触媒前駆体濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーを調製する工程と
(II)レーザー回折式粒径分布測定法にて測定して得られた粒径分布において、少なくとも1つのピークが0.1μm以上の範囲にあり、かつメディアン径が0.2~0.6μmの範囲にあるヘテロポリ酸触媒前駆体であり、ヘテロポリ酸触媒前駆体濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーを調製する工程と
(III)(I)の工程および(II)の工程で調製された各々の水性スラリーを混合する工程と、
(IV)(III)の工程により得られた水性スラリーを噴霧乾燥させ、触媒前駆体を得る工程と、
(V)前記触媒前駆体を焼成し触媒を得る工程と
を含み、
(III)の工程により得られた混合水性スラリー中のスラリー濃度が15wt%以上50wt%以下であり、(III)の工程により得られた混合水性スラリー全質量部に対して、(II)の工程で得られた水性スラリーの質量部が25wt%以上50wt%以下である混合水性スラリーを用いて触媒を製造するメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記(III)の工程において、前記(I)の工程および前記(II)の工程で調製された各々の水性スラリーを混合後、75~130℃の範囲で、10~90分攪拌する請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【請求項3】
前記(IV)の工程で得られた触媒前駆体乾燥粉を成形する請求項1または2に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【請求項4】
前記(V)の工程で得られた焼成粉を成形する請求項1または2に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
下記式(1)で表される組成を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
MoCu(NH (1)
(式(1)中、P、Mo、V、Cu、NHおよびOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオンおよび酸素を表す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a~iは、各成分のモル比率を表し、b=12の時、0.5≦a≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦2、0≦e≦3、0≦f≦3、0.01≦g≦5、0≦h≦5を満たし、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。)
【請求項6】
下記式(2)で表される組成を有する請求項1から4のいずれか1項に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
MoCuCs(NH (2)
(式(2)中、P、Mo、V、Cu、Cs、NHおよびOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、セシウム、アンモニウムイオンおよび酸素を表す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を示す。a~iは、各成分のモル比率を表し、b=12の時、0.5≦a≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦2、0≦e≦3、0≦f≦3、0.01≦g≦5、0≦h≦5を満たし、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
【請求項7】
前記(I)の工程において、メタクリル酸製造用触媒原料として、Csを必須成分として含み、前記(I)の工程で得られるヘテロポリ酸触媒前駆体中のモリブデン12モルに対する、Csのモル比をg1としたとき、下記式(3)を満たす請求項6に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
0.01<g1<1.5 (3)
【請求項8】
前記(II)の工程において、メタクリル酸製造用触媒原料として、Csを必須成分として含み、前記(II)の工程で得られるヘテロポリ酸触媒前駆体中のモリブデン12モルに対する、Csのモル比をg2としたとき、下記式(4)を満たす請求項6または7のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
2<g2<5 (4)
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、このメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により、気相接触酸化してメタクリル酸を製造するメタクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられるメタクリル酸製造用触媒の製造方法、および該メタクリル酸製造用触媒を用いたメタクリル酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられるメタクリル酸製造用触媒(以下、単に「触媒」とも記す)としては、例えばモリブデンおよびリンを含むヘテロポリ酸系触媒が知られている。このようなヘテロポリ酸系触媒としては、カウンターカチオンがプロトンであるプロトン型ヘテロポリ酸、およびそのプロトンの一部をプロトン以外のカチオンで置換したヘテロポリ酸塩が挙げられる(以下、プロトン型ヘテロポリ酸を単に「ヘテロポリ酸」、プロトン型ヘテロポリ酸およびヘテロポリ酸塩より選ばれる少なくとも1種類を単に「ヘテロポリ酸(塩)」とも記す)。
【0003】
ヘテロポリ酸はポリ酸の基本骨格を形成する配位原子(以下、ポリ原子と記す)と、ヘテロ原子の酸化物による縮合酸素酸である。リン、ケイ素、ヒ素、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等がヘテロ原子、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル等がポリ元素になり得る。またヘテロポリ酸(塩)の基本構造は、ケギン型、ドーソン型、プレイスラー型等が知られている。
【0004】
メタクロレインからのメタクリル酸製造における収率を向上させるヘテロポリ酸系触媒の製造方法としては、特許文献1には、以下の触媒の製造方法が開示されている。
【0005】
(I)水中に少なくともモリブデン原料およびケイ素、チタン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモンおよびセリウムなどのX元素を添加して、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーまたは水溶液を調製する工程と、(II)前記水性スラリーまたは水溶液に、アルカリ金属化合物を添加して、前記ヘテロポリ酸の少なくとも一部のアルカリ金属塩であるヘテロポリ酸塩を析出させる工程と、(III)前記ヘテロポリ酸塩が析出している水性スラリーまたは水溶液に、正リン酸、五酸化リンおよびリン酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種であるリン原料を添加する工程と、(IV)全ての原料を含む水性スラリーまたは水溶液を乾燥して、触媒前駆体(以下、触媒成分粉末)を得る工程と、(V)前記触媒成分粉末を熱処理する工程とを有することを特徴とする。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された触媒の製造方法では、乾燥して得られた触媒成分粉末の嵩密度が低く機械的強度も弱い。上記課題の原因としては、触媒粒子径が大きく単一であることが挙げられる。非特許文献1より、粒径比が0.05~0.25の場合、小粒子を25~50%の割合で混合するとき、粒子密度が最密になることがわかっている。特許文献2では、ヘテロポリ酸のアルカリ金属塩を含むリン原料を添加する前の水性スラリーにおいて、0.01~0.25μmである粒子の体積が全粒子体積に対して40%以上であることによって、触媒の嵩密度とその再現性が向上することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第201 0/01 3749号
【文献】特開201 3-61 62号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】日高重助、神谷秀博著 「基礎紛体工学」日刊工業新聞社出版、201 4年7月28日、P.71
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されている、ヘテロポリ酸を含む水性スラリーにアルカリ金属原料を添加して30分以上撹拌することにより、水性スラリー中の粒子を0.01~0.25μmと1~10μmの範囲に集中させる調製方法では、最密充填を目指す場合において、大小粒子の粒径比に対して、小粒子の体積の割合が多すぎるため、乾燥して得られた触媒成分粉末の嵩密度が不十分である。嵩密度の高い触媒成分粉末によって触媒の嵩密度が上昇すれば、所定の反応器に充填する場合に、単位体積当たりより多くの触媒を充填することができ、反応器内の体積の有効利用が可能となる。また、嵩密度が高くなり触媒の機械的強度が高くなることで、触媒成形品において酸化反応に必要な適当な細孔径が確保できる。したがって、嵩密度の高い触媒成分粉末を製造できる方法の開発が望まれている。
【0010】
本発明は、嵩密度の高いメタクリル酸製造用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の[1]~[9]である。
[1]
メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に用いられる、リン及びモリブデンを含むメタクリル酸製造用触媒の製造方法であって、
(I)レーザー回折式粒径分布測定法にて測定して得られた粒径分布において、少なくとも1つのピークが1μm以上の範囲にあり、かつメディアン径が2μm~3μmの範囲にあるヘテロポリ酸触媒前駆体であり、ヘテロポリ酸触媒前駆体濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーを調製する工程と
(II)レーザー回折式粒径分布測定法にて測定して得られた粒径分布において、少なくとも1つのピークが0.1μm以上の範囲にあり、かつメディアン径が0.2~0.6μmの範囲にあるヘテロポリ酸触媒前駆体であり、ヘテロポリ酸触媒前駆体濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーを調製する工程と
(III)(I)の工程および(II)の工程で調製された各々の水性スラリーを混合する工程と、
(IV)(III)の工程により得られた水性スラリーを噴霧乾燥させ、触媒前駆体を得る工程と、
(V)前記触媒前駆体を焼成し触媒を得る工程と
を含み、
(III)の工程により得られた混合水性スラリー中のスラリー濃度が15wt%以上50wt%以下であり、(III)の工程により得られた混合水性スラリー全質量部に対して、(II)の工程で得られた水性スラリーの質量部が25wt%以上50wt%以下である混合水性スラリーを用いて触媒を製造するメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[2]
前記(III)の工程において、前記(I)の工程および前記(II)の工程で調製された各々の水性スラリーを混合後、75~130℃の範囲で、10~90分攪拌する[1]に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[3]
前記(IV)の工程で得られた触媒前駆体乾燥粉を成形する[1]または[2]に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[4]
前記(V)の工程で得られた焼成粉を成形する[1]または[2]に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
[5]
下記式(1)で表される組成を有する[1]から[4]のいずれか1項に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
MoCu(NH (1)
(式(1)中、P、Mo、V、Cu、NHおよびOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウムイオンおよび酸素を表す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を示す。Gはカリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム、マグネシウムおよびバリウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。a~iは、各成分のモル比率を表し、b=12の時、0.5≦a≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦2、0≦e≦3、0≦f≦3、0.01≦g≦5、0≦h≦5を満たし、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。)
[6]
下記式(2)で表される組成を有する[1]から[4]のいずれか1項に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
MoCuCs(NH (2)
(式(2)中、P、Mo、V、Cu、Cs、NHおよびOは、それぞれ、リン、モリブデン、バナジウム、銅、セシウム、アンモニウムイオンおよび酸素を表す。Aはアンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステンおよびホウ素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を表す。Eは鉄、亜鉛、クロム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、チタン、スズ、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウムおよびランタンからなる群より選択される少なくとも1種類の元素を示す。a~iは、各成分のモル比率を表し、b=12の時、0.5≦a≦3、0.01≦c≦3、0.01≦d≦2、0≦e≦3、0≦f≦3、0.01≦g≦5、0≦h≦5を満たし、iは前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
[7]
前記(I)の工程において、メタクリル酸製造用触媒原料として、Csを必須成分として含み、前記(I)の工程で得られるヘテロポリ酸触媒前駆体中のモリブデン12モルに対する、Csのモル比をg1としたとき、下記式(3)を満たす[6]に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
0.01<g1<1.5 (3)
[8]
前記(II)の工程において、メタクリル酸製造用触媒原料として、Csを必須成分として含み、前記(II)の工程で得られるヘテロポリ酸触媒前駆体中のモリブデン12モルに対する、Csのモル比をg2としたとき、下記式(4)を満たす[6]または[7]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
2<g2<5 (4)
[9]
[1]から[8]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、このメタクリル酸製造用触媒を用いて、メタクロレインを分子状酸素により、気相接触酸化してメタクリル酸を製造するメタクリル酸の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、嵩密度の高いメタクリル酸製造用触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[メタクリル酸製造用触媒の製造方法]
(工程(I):水性スラリーA調製工程)
工程(I)では、少なくともモリブデン原料およびリン原料を溶媒と混合し、スラリー濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーAを調製する。
【0014】
前記水性スラリーAは、触媒構成成分を含有する原料を溶媒へ添加し、混合して得ることができる。前記水性スラリーAは、前記式(1)で表される組成に含まれる成分を含むことが好ましい。
【0015】
使用する原料としては特に限定はなく、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩等を単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。モリブデン原料としては、例えばパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が挙げられる。銅原料としては、例えば硫酸銅、硝酸銅、酸化銅、炭酸銅、酢酸銅、塩化銅等が挙げられる。バナジウム原料としては、例えばメタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられる。アンモニウムイオンの原料としては、リン酸三アンモニウムおよびその水和物に加え、例えば水酸化アンモニウム、アンモニア水、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。これらは一種類のみを用いても良く、二種類以上を併用しても良い。
【0016】
アルカリ金属化合物としては、熱安定性の観点からカリウムまたはセシウム化合物が好ましい。セシウム化合物としては、重炭酸セシウム、硝酸セシウム、酸化セシウム等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
水性スラリーAの調製は、溶媒に触媒を構成する各成分の原料の一部、または全てを加え、加熱しながら攪拌する方法により行うことが簡便であり好ましい。該溶媒としては水、有機溶媒および水と有機溶媒の混合溶媒等を使用できるが、工業的な観点から水を使用することが好ましい。水性スラリーAを調製する際の原料の添加順序は特に限定されないが、水性スラリーAのpHが0.1~6.5の範囲内となるように添加することが、メタクリル酸収率の観点から好ましい。pHの下限は0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。また上限は6以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0018】
水性スラリーの濃度は15~50wt%の範囲となることが好ましい。乾燥時に水分を効率よく蒸発させるため、下限は20wt%以上がより好ましく、混合時に効率よく撹拌させるため、上限は40wt%以下がより好ましい。
【0019】
水性スラリーAの加熱温度は特に限定されないが、水の蒸発を極力抑制し、スラリー濃度は一定に保つことが好ましい。加熱温度として、75~130℃の範囲となることが好ましく、水性スラリーAに含まれる化合物の応速度促進の観点から、下限は95℃以上がより好ましい。また、水の蒸発を抑制する観点から、上限は130℃以下がより好ましい。溶媒の蒸気圧に応じて、加熱時にコンデンサーを設けて蒸発した溶媒を凝縮させスラリーに戻したり、密閉容器の中で操作することにより加圧条件にて加熱処理したりしてもよい。
【0020】
昇温速度は特に限定されないが、0.8~15℃/分が好ましい。昇温速度が0.8℃/分以上であることにより、工程(I)に要する時間を短縮できる。また、昇温速度が1 5℃/分以下であることにより、通常の昇温設備を用いて昇温を行うことができる。
【0021】
工程(I)において得られる水性スラリーAのpHは0.2~3であることが好ましく、下限は0.5以上、上限は2.5以下がより好ましい。これにより後述する工程(IV)において、メタクロレイン気相酸化反応に好適なケギン型ヘテロポリ酸構造を有する触媒前駆体を得ることができる。水性スラリーのpHを前記範囲内に制御する方法として、触媒構成成分を含有する各原料の量を適宜選択し、硝酸、シュウ酸等を適宜添加する方法が挙げられる。
(工程(II):水性スラリーB調製工程)
工程(II)では、少なくともモリブデン原料およびリン原料を水中に添加して、ヘテロポリ酸を析出したのち、アルカリ金属化合物を添加してヘテロポリ酸(塩)を含み、スラリー濃度が15wt%以上50wt%以下の水性スラリーBを調製する。
【0022】
前記水性スラリーBは、触媒構成成分を含有する原料を溶媒へ添加し、混合して得ることができる。前記水性スラリーBは、前記式(2)で表される組成に含まれる成分を含むことが好ましい。
【0023】
使用する原料としては特に限定はなく、各元素の硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、酸化物、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩等を単独で、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。モリブデン原料としては、例えばパラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、塩化モリブデン等が挙げられる。銅原料としては、例えば硫酸銅、硝酸銅、酸化銅、炭酸銅、酢酸銅、塩化銅等が挙げられる。バナジウム原料としては、例えばメタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられる。アンモニウムイオンの原料としては、リン酸三アンモニウムおよびその水和物に加え、例えば水酸化アンモニウム、アンモニア水、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。これらは一種類のみを用いても良く、二種類以上を併用しても良い。
【0024】
アルカリ金属化合物としては、熱安定性の観点からカリウムまたはセシウム化合物が好ましい。セシウム化合物としては、重炭酸セシウム、硝酸セシウム、酸化セシウム等が挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
水性スラリーBの調製は、溶媒に触媒を構成する各成分の原料の一部、または全てを加え、加熱しながら攪拌する方法により行うことが簡便であり好ましい。該溶媒としては水、有機溶媒および水と有機溶媒の混合溶媒等を使用できるが、工業的な観点から水を使用することが好ましい。水性スラリーBを調製する際の原料の添加順序は特に限定されないが、水性スラリーBのpHが0.1~6.5の範囲内となるように添加することが、メタクリル酸収率の観点から好ましい。pHの下限は0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。また上限は6以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0026】
水性スラリーの濃度は15~50wt%の範囲となることが好ましい。乾燥時に水分を効率よく蒸発させるため、下限は20wt%以上がより好ましく、混合時に効率よく撹拌させるため、上限は40wt%以下がより好ましい。
【0027】
水性スラリーBの加熱温度は特に限定されないが、水の蒸発を極力抑制し、スラリー濃度は一定に保つことが好ましい。加熱温度として、75~130℃の範囲となることが好ましく、水性スラリーBに含まれる化合物の応速度促進の観点から、下限は95℃以上がより好ましい。また、水の蒸発を抑制する観点から、上限は130℃以下がより好ましい。溶媒の蒸気圧に応じて、加熱時にコンデンサーを設けて蒸発した溶媒を凝縮させスラリーに戻したり、密閉容器の中で操作することにより加圧条件にて加熱処理したりしてもよい。
【0028】
工程(II)において得られる水性スラリーBのpHは0.2~3であることが好ましく、下限は0.5以上、上限は2.5以下がより好ましい。これにより後述する工程(IV)において、メタクロレイン気相酸化反応に好適なケギン型ヘテロポリ酸構造を有する触媒前駆体を得ることができる。水性スラリーのpHを前記範囲内に制御する方法として、触媒構成成分を含有する各原料の量を適宜選択し、硝酸、シュウ酸等を適宜添加する方法が挙げられる。
(工程(III):水性スラリーAと水性スラリーBの混合工程)
工程(III)では、水性スラリーAと水性スラリーBを混合し、水性スラリーCを調製する。
【0029】
混合の割合は全スラリー質量に対して、水性スラリーBの質量が25~50wt%となる範囲が好ましい。
水性スラリーAと水性スラリーBの混合時は撹拌することが好ましい。撹拌装置としては、回転攪拌機、高速回転剪断攪拌機(ホモジナイザ―等)等の回転式白斑装置、振り子式の直線運動型攪拌機、容器ごと振とうする振とう機、超音波等を用いた振動式攪拌機等の公知の撹拌装置が挙げられる。回転式撹拌装置における撹拌翼又は回転刃の回転速度は、液の飛散等の不都合が起きない程度に、容器、撹拌翼、邪魔板等の形状、液量等を勘案して適宜調製すればよい。撹拌は連続的または断続的のいずれの方法で行ってもよいが、連続的に行う方が好ましい。
【0030】
撹拌時の液の温度は、水の蒸発を極力抑制し、スラリー濃度は一定に保つことが好ましい。加熱温度として、75~130℃の範囲となることが好ましく、水性スラリーCの溶媒に残存している化合物の応速度促進の観点から、下限は95℃以上がより好ましい。また、水の蒸発を抑制する観点から、上限は130℃以下がより好ましい。溶媒の蒸気圧に応じて、加熱時にコンデンサーを設けて蒸発した溶媒を凝縮させスラリーに戻したり、密閉容器の中で操作することにより加圧条件にて加熱処理したりしてもよい。
【0031】
撹拌時間は10~90分が好ましい。下限としては30以上がより好ましく、上限としては70分以下がより好ましい。
【0032】
工程(III)において得られる水性スラリーCのpHは0.2~3であることが好ましく、下限は0.5以上、上限は2.5以下がより好ましい。これにより後述する工程(IV)において、メタクロレイン気相酸化反応に好適なケギン型ヘテロポリ酸構造を有する触媒前駆体を得ることができる。
(工程(IV):乾燥工程))
工程(IV)では、前記工程(III)により得られる水性スラリーCを乾燥し、触媒前駆体を得る。乾燥方法に特に制限はなく、ドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固等が挙げられる。これらのうち本発明に係る方法では、噴霧乾燥が好ましい。乾燥に用いる空気の供給温度は120~500℃が好ましい。下限は140℃以上がより好ましく、上限は350℃以下がより好ましい。乾燥は、水性スラリーCが乾固するまで行うことができる。触媒前駆体の水分含有率は、0.1~4.5wt%が好ましい。なお、これらの条件は、所望する触媒前駆体の形状や大きさにより適宣選択することができる。
(工程(V):成形工程)
成形工程では、前記触媒前駆体または後述する工程(VI)で得られる触媒を成形する。成形方法は特に制限されず、公知の乾式又は湿式の成形方法が適用できる。例えば、打錠成形、押出成形、加圧成形、転動造粒等が挙げられる。成形物の形状としては特に制限はなく、球形粒状、リング状、円柱形ペレット状、星型状、成形後に粉砕分級した顆粒状等の任意の形状が挙げられる。成形物の大きさとしては、直径が0.1~10mmであることが好ましい。成形物の直径が0.1mm以上であることにより、反応管内の圧力損失を小さくすることができる。また、成形物の直径が10mm以下であることにより、触媒活性がより向上する。成形する際には担体に担持してもよく、その他の添加剤を混合してもよい。
【0033】
(工程(VI):焼成工程)
工程(VI)では、前記工程(IV)で得られた触媒前駆体、または前記工程(V)で得られた触媒前駆体の成形物(以下、まとめて触媒前駆体とも示す)を焼成し、触媒を得る。前記触媒前駆体は、焼成することで触媒活性を発現させることができる。焼成方法に特に限定はなく、静置焼成、流動焼成等から好適な方法を適宜選択すればよい。静置焼成としては、例えば箱型電気炉、環状焼成炉等を用いて焼成する方法が挙げられる。流動焼成としては、例えば流動焼成炉、ロータリーキルン等を用いて焼成する方法が挙げられる。焼成ガスは、例えば空気等の酸素含有ガスおよび不活性ガスの少なくとも一方から選択することができるが、空気等の酸素含有ガス雰囲気下で行われることが好ましい。また、「不活性ガス」とは触媒活性を低下させない気体のことを示し、例えば窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を混合して使用してもよい。なお、所望の焼成ガス雰囲気が維持できれば、焼成ガスは流通させても、流通させなくてもよい。メタクリル酸収率の観点から、焼成温度は200~500℃が好ましい。下限は300℃以上がより好ましく、上限は450℃以下がより好ましい。焼成時間は1~40時間が好ましく、下限は2時間以上がより好ましい。
[メタクリル酸の製造方法]
本発明に係るメタクリル酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造されたメタクリル酸製造用触媒の存在下で、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化する。また、本発明に係るメタクリル酸の製造方法は、本発明に係る方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒を用いてメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化する。これらの方法によれば、高収率でメタクリル酸を製造することができる。
【0034】
前記メタクリル酸の製造方法は、メタクロレインおよび分子状酸素を含む原料ガスと、本発明に係る触媒とを接触させることでメタクリル酸を製造する。この反応では固定床型反応器を使用することができる。反応管内に触媒を充填し、該反応器へ原料ガスを供給することにより反応を行うことができる。触媒層は1層でもよく、活性の異なる複数の触媒をそれぞれ複数の層に分けて充填してもよい。また、活性を制御するためにメタクリル酸製造用触媒を不活性担体により希釈し充填してもよい。
【0035】
原料ガス中のメタクロレインの濃度は特に限定されないが、1~20容量%が好ましく、下限は3容量%、上限は10容量%以下がより好ましい。原料であるメタクロレインは、水、低級飽和アルデヒド等の本反応に実質的な影響を与えない不純物を少量含んでいてもよい。
【0036】
原料ガス中の分子状酸素の濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4~4モルが好ましく、下限は0.5モル以上、上限は3モル以下がより好ましい。なお、分子状酸素源としては、経済性の観点から空気が好ましい。必要であれば、空気に純酸素を加えて分子状酸素を富化した気体を用いてもよい。
【0037】
原料ガスは、メタクロレイン及び分子状酸素を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。さらに、原料ガスに水蒸気を加えてもよい。水蒸気の存在下で反応を行うことにより、メタクリル酸をより高収率で得ることができる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1~50容量%が好ましく、下限は1容量%、上限は40容量%以下がより好ましい。
【0038】
原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間は、1.5~15秒が好ましく、下限は2秒以上、上限は10秒以下がより好ましい。反応圧力は、0.1~1MPa(G)が好ましい。ただし、(G)はゲージ圧であることを意味する。反応温度は200~450℃が好ましい。下限は250℃以上がより好ましく、上限は400℃以下がより好ましい。
【実施例
【0039】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例中の「部」は質量部を意味する。
【0040】
水性スラリーのpHは、HORIBA製ポータブル型pHメータD-72(商品名)を用いて測定した。また触媒前駆体の構造は、XRDにより判断した。
【0041】
工程(I)、(II)、(III)で得られる各スラリー中の粒子径分布は、(株)島津製作所製のSALD-7000(商品名)(光源:青紫色半導体レーザー、波長:405nm)を用い、レーザー回折式粒径分布測定法にて測定した。粒子径分布の結果において、粒子径分布Xは、測定した粒子径分布における、全粒子体積に対する粒子径が1μm以上、7μm未満である粒子の体積の比率(%)を示す。また、粒子径分布Yは、測定した粒子径分布における、全粒子体積に対する粒子径が0.1μm以上、1μm未満である粒子の体積の比率(%)を示す。
【0042】
触媒成分粉末の嵩密度は、工程(IV)の後に得られた乾燥物を50mlのメスシリンダーに量りとり、体積50ml中の質量から下記式により算出した。
【0043】
触媒の嵩密度(g/ml)=50mlメスシリンダーに充填された乾燥物質量(g)/50(ml)
原料ガスおよび生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。ガスクロマトグラフィーの結果から、メタクリル酸の転化率、選択率、収率を下記式にて求めた。
【0044】
メタクリル酸の転化率(%)=反応したメタクロレインのモル数/供給したメタクロレインのモル数×100
メタクリル酸の選択率(%)=生成したメタクリル酸のモル数/反応したメタクロレインのモル数×100
メタクリル酸の収率(%)=生成したメタクリル酸のモル数/供給したメタクロレインのモル数×100
[実施例1]
室温の純水1200部に、三酸化モリブデン300部およびメタバナジン酸アンモニウム10.2部を加えて撹拌分散させ、リン酸三アンモニウム三水和物38.8部、85%リン酸水溶液8.9部、重炭酸セシウム40.2部を純水175部で希釈した希釈物、および硝酸銅(II)三水和物6.2部を純水9.0部に溶解した溶解物を添加した。得られたスラリーを95℃に昇温し、95℃に保ちつつ2時間撹拌してヘテロポリ酸塩を析出させ、ヘテロポリ酸塩を含む水性スラリーAを調製した。得られた水性スラリーAのスラリー濃度は20.4wt%、pHは1.88であり、XRDの結果から得られた前駆体はケギン型ヘテロポリ酸構造を有していた。また、得られた水性スラリーAの粒子径分布を測定した。粒子径分布X,Yを表1にそれぞれ示す。得られた水性スラリーAのメディアン径は、2.56μmであった。
室温の純水1200部に三酸化モリブデン296部、メタバナジン酸アンモニウム10.1部、硝酸銅(II)三水和物4.1部、85質量%リン酸39.4部を溶解した。これを撹拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ2時間撹拌した。これに、純水184部に溶解した重炭酸セシウム88部を添加し、95℃で15分撹拌してヘテロポリ酸塩を析出させ、ヘテロポリ酸塩を含む水性スラリーBを調製した。得られた水性スラリーBのスラリー濃度は23.7wt%、pHは1.46であり、XRDの結果から得られた前駆体はケギン型ヘテロポリ酸構造を有していた。また、得られた水性スラリーBの粒子径分布を測定した。粒子径分布X,Yを表1にそれぞれ示す。得られたスラリーBのメディアン径は0.48μmであった。
前記水性スラリーAと水性スラリーBを、A:B=75:25の質量比でそれぞれ混合し、撹拌しながら95℃に昇温し液温を95℃に保ちつつ1時間撹拌して、水性スラリーC1を調製した。得られた水性スラリーC1のスラリー濃度は21.2wt%、pHは2.00であり、XRDの結果から得られた前駆体はケギン型ヘテロポリ酸構造を有していた。また、得られた水性スラリーC1の粒子径分布を測定した。粒子径分布X,Yを表2に示す。
【0045】
前記水性スラリーC1に対して、空気の供給温度300℃にて噴霧乾燥を実施し、触媒成分粉末を得た。該触媒成分粉末について、嵩密度を測定した。結果を表2 に示す。
【0046】
該触媒成分粉末を加圧成形し、破砕し、粒径が850μm~2.36mmの範囲内になるように篩いを用いて分級し、触媒成形体を得た。
【0047】
得られた触媒成形体を、空気流通下、380℃で5時間15分焼成してメタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒の酸素を除く組成は、P1.7Mo120.5Cu0.14Cs1.5であった。
【0048】
得られたメタクリル酸製造用触媒を反応管に充填し、そこに、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを、常圧下、285℃、接触時間3.6秒で通じ反応を行った。結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1で得られた水性スラリーAと水性スラリーBを、A:B=50:50の質量比で混合し、撹拌しながら95℃に昇温し液温を95℃に保ちつつ1時間撹拌して、混合水性スラリーC2を調製した。得られた混合スラリーC2のスラリー濃度は22.0wt%、pHは2.04であり、XRDの結果から得られた前駆体はケギン型ヘテロポリ酸構造を有していた。得られた混合水性スラリーC2の粒子径分布を測定した。粒子径分布X,Yを表2に示す。
【0049】
前記混合水性スラリーC2に対して、空気の供給温度300℃にて噴霧乾燥を実施し、触媒成分粉末を得た。該触媒成分粉末について、嵩密度を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
該触媒成分粉末を加圧成形し、破砕し、粒径が850μm~2.36mmの範囲内になるように篩いを用いて分級し、触媒成形体を得た。
【0051】
得られた触媒成形体を、空気流通下、380℃で5時間15分焼成してメタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒の酸素を除く組成は、P1.8Mo120.5Cu0.12Cs1.9であった。
【0052】
得られたメタクリル酸製造用触媒を反応管に充填し、そこに、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを、常圧下、285℃、接触時間3.6秒で通じ反応を行った。結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1で得られた水性スラリーAのみに対して、空気の供給温度300℃にて噴霧乾燥を実施し、触媒成分粉末を得た。該触媒成分粉末について、嵩密度を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
該触媒成分粉末を加圧成形し、破砕し、粒径が850μm~2.36mmの範囲内になるように篩いを用いて分級し、触媒成形体を得た。
【0054】
得られた触媒成形体を、空気流通下、380℃で5時間15分焼成してメタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒の酸素を除く組成は、P1.5Mo120.5Cu0.15Cs1.2であった。
【0055】
得られたメタクリル酸製造用触媒を反応管に充填し、そこに、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを、常圧下、285℃、接触時間3.6秒で通じ反応を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例1で得られた水性スラリーBのみに対して、空気の供給温度300℃にて噴霧乾燥を実施し、触媒成分粉末を得た。該触媒成分粉末について、嵩密度を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
該触媒成分粉末を加圧成形し、破砕し、粒径が850μm~2.36mmの範囲内になるように篩いを用いて分級し、触媒成形体を得た。
【0057】
得られた触媒成形体を、空気流通下、380℃で5時間15分焼成してメタクリル酸製造用触媒を得た。得られた触媒の酸素を除く組成は、P2.0Mo120.5Cu0.1Cs2.7であった。
【0058】
得られたメタクリル酸製造用触媒を反応管に充填し、そこに、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを、常圧下、285℃、接触時間3.6秒で通じ反応を行った。結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るメタクリル酸製造用触媒の製造方法は、嵩密度の高い触媒を製造することができるため、工業的に触媒を製造する際に有用である。また、メタクリル酸製造において高い収率でメタクリル酸を製造できる。