(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】フーリエ変換型分光光度計
(51)【国際特許分類】
G01J 3/45 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
G01J3/45
(21)【出願番号】P 2018088776
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大二郎
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-125971(JP,A)
【文献】特開2017-192743(JP,A)
【文献】特開平02-102425(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135356(WO,A1)
【文献】特開昭59-003226(JP,A)
【文献】特開昭59-040221(JP,A)
【文献】特開平10-122964(JP,A)
【文献】特開2014-163810(JP,A)
【文献】特開2003-227754(JP,A)
【文献】米国特許第04797923(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉光を生成する干渉計と、
前記干渉計により生成された干渉光を検出する検出器と、
前記検出器からの検出信号を固有の第1周期でAD変換するADコンバータと、
前記干渉計の制御に用いられるフリンジ信号の発生に基づくAD変換開始信号と、前記AD変換開始信号と同期したクロック信号を生成し、前記ADコンバータに入力する信号入力部と、
前記ADコンバータによりAD変換された検出信号に基づいて、フーリエ変換を用いた演算を行う演算部とを備えたことを特徴とするフーリエ変換型分光光度計。
【請求項2】
前記信号入力部は、前記AD変換開始信号が発生した時点と、実際にAD変換が開始される時点の間の時間が常に一定になるように、前記クロック信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のフーリエ変換型分光光度計。
【請求項3】
前記信号入力部は、前記第1周期よりも短い第2周期であるマスタークロックを有し、前記フリンジ信号に基づいて前記AD変換開始信号を生成するとともに、前記ADコンバータに入力するクロック信号を、前記AD変換開始信号の発生した時点に対して前記第2周期で所定のクロック数だけ遅延させることにより、前記ADコンバータにおけるAD変換の開始タイミングを制御することを特徴とする請求項2に記載のフーリエ変換型分光光度計。
【請求項4】
前記ADコンバータが内部に持つ固有のマスタークロックで動作する状態、又は、前記ADコンバータが前記信号入力部から入力されるクロック信号に基づいて動作する状態のいずれかに切り替える切替部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフーリエ変換型分光光度計。
【請求項5】
前記ADコンバータは、ΔΣ型ADコンバータであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフーリエ変換型分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉光を検出器で検出し、ADコンバータによりAD変換された検出信号に基づいて、フーリエ変換を用いた演算を行うフーリエ変換型分光光度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フーリエ変換型分光光度計には、検出器からの検出信号をAD変換するためのADコンバータが備えられている(例えば、下記特許文献1参照)。ADコンバータによる検出信号のAD変換は、フリンジ信号に同期して開始されることが望ましい。フリンジ信号は、干渉計で生成される干渉光の干渉縞信号であり、干渉計の制御を行う際のタイミングの基準となる。
【0003】
ADコンバータとしては、逐次比較型ADコンバータ、ΔΣ型ADコンバータ等が知られている。ΔΣ型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換すれば、逐次比較型ADコンバータを用いる場合よりもノイズの影響を小さくすることができるため、より精度の高い測定を行うためにはΔΣ型ADコンバータを用いることが好ましい。
【0004】
図3Aは、逐次比較型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際のタイミングについて説明するための図である。
図3Bは、ΔΣ型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際のタイミングについて説明するための図である。
【0005】
逐次比較型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際には、
図3Aに示すように、フリンジ信号に基づいて一定周期で検出信号がサンプリングされ、サンプリングされた検出信号(信号強度)に対してAD変換が行われる。すなわち、逐次比較型ADコンバータを用いた場合、フリンジ信号に同期してAD変換を開始させることができる。
【0006】
一方、ΔΣ型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際には、
図3Bに示すように、ΔΣ型ADコンバータに備えられたマスタークロックに基づいてサンプリングが行われる。マスタークロックは、フリンジ信号よりも短い一定周期でクロック信号を発生している。
【0007】
ΔΣ型ADコンバータを用いた場合も、フリンジ信号に基づいてサンプリングが行われるが、フリンジ信号の入力直後におけるマスタークロックのクロック信号に同期してサンプリングが開始される。すなわち、ΔΣ型ADコンバータを用いた場合、マスタークロックのクロック信号に同期してAD変換が開始されるため、AD変換の開始タイミングがフリンジ信号に対して一定のタイミングにならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、ΔΣ型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する場合には、マスタークロックのクロック信号に同期して検出信号がサンプリングされ、サンプリングされた検出信号に対してAD変換が行われる。そのため、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングが一定にならない事に起因して、測定結果にノイズ(いわゆるジッターノイズ)が発生し、S/N比が低下するという問題があった。このような問題は、ΔΣ型ADコンバータに限らず、検出器からの検出信号を固有の周期でAD変換するADコンバータであれば、ΔΣ型ADコンバータ以外のADコンバータにおいても同様に生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、検出器からの検出信号を固有の周期でAD変換するADコンバータを用いた場合であっても、ジッターノイズを低減することができるフーリエ変換型分光光度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係るフーリエ変換型分光光度計は、干渉計と、検出器と、ADコンバータと、信号入力部と、演算部とを備える。前記干渉計は、干渉光を生成する。前記検出器は、前記干渉計により生成された干渉光を検出する。前記ADコンバータは、前記検出器からの検出信号を固有の第1周期でAD変換する。前記信号入力部は、前記干渉計の制御に用いられるフリンジ信号の発生に基づくAD変換開始信号と、前記AD変換開始信号と同期したクロック信号を生成し、前記ADコンバータに入力する。前記演算部は、前記ADコンバータによりAD変換された検出信号に基づいて、フーリエ変換を用いた演算を行う。
【0012】
このような構成によれば、フリンジ信号に基づいて信号入力部から入力されるクロック信号を用いてADコンバータを動作させることにより、ADコンバータにおけるAD変換の開始タイミングをずらすことができる。これにより、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングとの時間差を毎回同じ程度にすることができるため、検出器からの検出信号を固有の周期(第1周期)でAD変換するADコンバータを用いた場合であっても、フリンジ信号に同期してAD変換を開始することができ、ジッターノイズを低減することができる。
【0013】
(2)前記信号入力部は、前記AD変換開始信号が発生した時点と、実際にAD変換が開始される時点の間の時間が常に一定になるように、前記クロック信号を生成してもよい。この場合、前記信号入力部は、前記第1周期よりも短い第2周期であるマスタークロックを有していてもよい。前記信号入力部は、前記フリンジ信号に基づいて前記AD変換開始信号を生成するとともに、前記ADコンバータに入力するクロック信号を、前記AD変換開始信号の発生した時点に対して前記第2周期で所定のクロック数だけ遅延させることにより、前記ADコンバータにおけるAD変換の開始タイミングを制御してもよい。
【0014】
このような構成によれば、信号入力部のマスタークロックを用いて、ADコンバータにAD変換を開始させることができる。マスタークロックは第1周期よりも短い第2周期であり、ADコンバータに入力するクロック信号を、AD変換開始信号の発生した時点に対して第2周期で所定のクロック数だけ遅延させることにより、ADコンバータにおけるAD変換の開始タイミングが制御されるため、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングとの時間差を確実に毎回同じ程度にすることができる。
【0015】
(3)前記フーリエ変換型分光光度計は、切替部をさらに備えていてもよい。前記切替部は、前記ADコンバータが内部に持つ固有のマスタークロックで動作する状態、又は、前記ADコンバータが前記信号入力部から入力されるクロック信号に基づいて動作する状態のいずれかに切り替える。
【0016】
このような構成によれば、ADコンバータが内部に持つ固有のマスタークロックに基づくタイミング、又は、信号入力部から入力されるクロック信号に基づくタイミングのいずれかに切り替えて、AD変換を開始させることができる。これにより、AD変換を開始させるタイミングを必要に応じて適切に設定することができる。
【0017】
(4)前記ADコンバータは、ΔΣ型ADコンバータであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、ΔΣ型ADコンバータが用いられたフーリエ変換型分光光度計において、ジッターノイズを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングとの時間差を毎回同じ程度にすることができるため、検出器からの検出信号を固有の周期(第1周期)でAD変換するADコンバータを用いた場合であっても、フリンジ信号に同期してAD変換を開始することができ、ジッターノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフーリエ変換型分光光度計の構成例を示したブロック図である。
【
図2】PLDから入力されるクロック信号に基づいてADコンバータがAD変換を開始するタイミングについて説明するためのタイミングチャートの一例である。
【
図3A】逐次比較型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際のタイミングについて説明するための図である。
【
図3B】ΔΣ型ADコンバータを用いて検出信号をAD変換する際のタイミングについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.フーリエ変換型分光光度計の構成
図1は、本発明の一実施形態に係るフーリエ変換型分光光度計の構成例を示したブロック図である。このフーリエ変換型分光光度計には、干渉計1、検出器2、ADコンバータ3、PLD(Programmable Logic Device)4、CPU(Central Processing Unit)5及びPC(Personal Computer)6などが備えられている。
【0022】
干渉計1は、光源、固定鏡、移動鏡及びハーフミラー(いずれも図示せず)を有するマイケルソン干渉計からなり、光源からの光を固定鏡及び移動鏡でそれぞれ反射させて干渉させることにより干渉光を生成する。光源からは、例えば赤外光が照射される。この種の干渉計1の構成は周知であるため、詳細な説明を省略する。
【0023】
干渉計1により生成された干渉光は、試料Sに照射され、試料Sからの透過光又は反射光が検出器2で検出されることにより、検出器2からADコンバータ3に検出信号が入力される。また、干渉計1からの干渉光の一部に基づいて、フリンジ信号生成部7によりフリンジ信号が生成され、そのフリンジ信号がPLD4に入力される。フリンジ信号は、干渉計1で生成される干渉光の干渉縞信号であり、このフリンジ信号を用いて干渉計1(移動鏡など)の制御が行われる。
【0024】
ADコンバータ3は、検出器2から入力される検出信号をAD変換する。本実施形態におけるADコンバータ3は、内部に固有のマスタークロック31を有するΔΣ型ADコンバータである。このマスタークロック31は、固有の周期(第1周期)で動作する。ADコンバータ3は、マスタークロック31に基づいてAD変換を開始することにより、上記第1周期でAD変換を行うことができる。本実施形態において、マスタークロック31の周波数は、例えば16MHzである。
【0025】
PLD4は、プログラミングにより任意の機能を実現することができるデバイスであり、本実施形態では上記機能の1つとしてマスタークロック41を有している。このマスタークロック41は、固有の周期(第2周期)で動作する。PLD4のマスタークロック41の周期(第2周期)は、ADコンバータ3のマスタークロック31の周期(第1周期)よりも短い。本実施形態において、マスタークロック41の周波数は、例えば128MHzである。マスタークロック41の周波数は、マスタークロック31の周波数の整数倍であることが好ましく、本実施形態では8倍となっている。
【0026】
PLD4は、フリンジ信号の発生に基づくAD変換開始信号と、このAD変換開始信号と同期したクロック信号を生成し、ADコンバータ3に入力する信号入力部を構成している。このPLD4から入力されるAD変換開始信号及びクロック信号を用いて、ADコンバータ3にAD変換を開始させることができる。すなわち、ADコンバータ3は、その内部に備えられたマスタークロック31を用いることなく、PLD4から入力されるAD変換開始信号及びクロック信号に基づいてAD変換を開始することができる。
【0027】
PLD4は、CPU5に接続されている。ADコンバータ3によりAD変換された検出信号は、PLD4を介してCPU5に入力され、当該CPU5からPC6へと出力される。PC6は、プログラムを実行することにより、演算部61及び切替部62などの各種機能部として機能する。
【0028】
演算部61は、ADコンバータ3からの検出信号に基づいて、フーリエ変換を用いた演算を行う。試料Sに対して干渉計1から干渉光を照射して測定を行った場合には、演算部61による演算の結果が、試料Sの測定結果を表すスペクトルとして表示部(図示せず)に表示される。
【0029】
ADコンバータ3は、ADコンバータ3が内部に持つ固有のマスタークロック31で動作する状態(第1の状態)、又は、PLD4から入力されるクロック信号に基づいて動作する状態(第2の状態)のいずれかに切り替えることができる。切替部62は、ユーザの操作に基づいてADコンバータ3を第1の状態又は第2の状態に切り替える処理を行う。
【0030】
2.AD変換のタイミング
図2は、PLD4から入力されるクロック信号に基づいてADコンバータ3がAD変換を開始するタイミングについて説明するためのタイミングチャートの一例である。
図2では、ADコンバータ3が上記第2の状態のときのAD変換の開始タイミングの一例について説明する。
【0031】
図2Aに示すように、PLD4に備えられたマスタークロック41は、ADコンバータ3のマスタークロック31の周期(第1周期)よりも短い第2周期で動作する。すなわち、マスタークロック41は、立ち上がりと立ち下がりを上記第2周期で交互に繰り返す。
【0032】
PLD4は、所定の周期で入力されるフリンジ信号に基づいて、AD変換開始信号を生成する。また、PLD4は、AD変換開始信号に同期したクロック信号を生成する。フリンジ信号が入力された場合には、
図2Bに示すように、その直後のマスタークロック41の立ち上がりのタイミングT1と同期してAD変換開始信号が立ち上がる。ただし、マスタークロック41の立ち上がりではなく、立ち下がりと同期させてAD変換開始信号が生成されてもよい。
【0033】
上記のようにしてPLD4においてAD変換開始信号が生成された後、PLD4からADコンバータ3に入力されるクロック信号(入力クロック信号)が立ち下がったときに、ADコンバータ3がAD変換を開始する。入力クロック信号は、マスタークロック41に同期したタイミングで生成される。ただし、入力クロック信号の立ち下がりではなく、立ち上がりのときにAD変換が開始されてもよい。
【0034】
入力クロック信号は、ADコンバータ3のマスタークロック31の周期(第1周期)と同一の周期でADコンバータ3に入力され、ADコンバータ3のマスタークロックとして動作するが、PLD4が内部で生成する信号であるため、PLD4において立ち上がり又は立ち下がりのタイミングを任意にずらすことができる。入力クロック信号の立ち上がり又は立ち下がりのいずれか一方のタイミングをずらした場合であっても、その後の立ち上がり及び立ち下がりのタイミングはずらされず、入力クロック信号の周期は上記第1周期のまま維持される。
【0035】
本実施形態では、AD変換開始信号の立ち上がりのタイミングに応じて、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが必要に応じて遅延される。すなわち、PLD4は、AD変換開始信号の発生した時点に対して上記第2周期で所定のクロック数だけ遅延させた入力クロック信号をADコンバータ3に入力する。
【0036】
この例では、マスタークロック41の周波数が、マスタークロック31の周波数の8倍であるため、AD変換開始信号の発生した時点に対する入力クロック信号の遅延タイミング(遅延させない場合も含む。)は、8パターンとなる。言い換えれば、AD変換開始信号の発生した時点に対して入力クロック信号を遅延させるクロック数(遅延させない場合も含む。)は、0~7のいずれかである。
【0037】
図2Cに示すパターン1のように、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが、AD変換開始信号(
図2B参照)の立ち上がりのタイミングT1の直後のマスタークロック41(
図2A参照)に同期するタイミングT2である場合には、入力クロック信号を遅延させる必要がない。これに対して、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが、AD変換開始信号(
図2B参照)の立ち上がりのタイミングT1の直後のマスタークロック41(
図2A参照)に同期するタイミングT2でない場合には、1~7のいずれかのクロック数だけ入力クロック信号が遅延されることにより、タイミングT2に合わせられる。
【0038】
例えば、
図2Dに示すパターン2のように、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが、AD変換開始信号(
図2B参照)の立ち上がりのタイミングT1と同じタイミングである場合、AD変換開始信号が完全に立ち上がる前に入力クロック信号が立ち下がるため、この入力クロック信号の立ち下がりのタイミングではADコンバータ3におけるAD変換が開始されない。この場合、入力クロック信号を遅延させなければ、入力クロック信号の次の立ち下がりのタイミングT3までADコンバータ3におけるAD変換が開始されず、これがジッターノイズの原因となる。
【0039】
そこで、本実施形態では、
図2Dに示すパターン2のような場合に、AD変換開始信号に対して入力クロック信号を1クロックだけ遅延させる。これにより、
図2Dに破線で示すように、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが、タイミングT2に合わせられる。
図2Dのパターン(パターン2)以外の場合にも、適切なクロック数だけ入力クロック信号が遅延されることにより、入力クロック信号の立ち下がりのタイミングが常にタイミングT2に合わせられる。このように、PLD4は、AD変換開始信号が発生した時点と、実際にAD変換が開始される時点の間の時間が常に一定になるように、入力クロック信号を生成する。
【0040】
フリンジ信号に対する入力クロック信号の時間差が一定であれば、ジッターノイズが低減する。したがって、上記のように入力クロック信号の立ち下がりのタイミングを常にタイミングT2に合わせれば、ジッターノイズを効果的に低減することができる。
【0041】
3.作用効果
(1)本実施形態では、フリンジ信号に基づいてPLD4から入力されるクロック信号(入力クロック信号)を用いてADコンバータ3を動作させることにより、ADコンバータ3におけるAD変換の開始タイミングをずらすことができる。これにより、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングとの時間差を毎回同じ程度にすることができるため、検出器2からの検出信号を固有の周期(第1周期)でAD変換するADコンバータ3を用いた場合であっても、フリンジ信号に同期してAD変換を開始することができ、ジッターノイズを低減することができる。
【0042】
(2)特に、本実施形態では、PLD4のマスタークロック41(
図2A参照)を用いて、ADコンバータ3にAD変換を開始させることができる。マスタークロック41は、ADコンバータ3のマスタークロック31の周期(第1周期)よりも短い周期(第2周期)であり、ADコンバータ3に入力するクロック信号を、AD変換開始信号(
図2B参照)の発生した時点に対して第2周期で所定のクロック数だけ遅延させることにより(
図2D参照)、ADコンバータ3におけるAD変換の開始タイミングが制御されるため、フリンジ信号とAD変換の開始タイミングとの時間差を確実に毎回同じ程度にすることができる。
【0043】
(3)また、本実施形態では、切替部62の切り替えにより、ADコンバータ3が内部に持つ固有のマスタークロック31に基づくタイミング、又は、PLD4から入力されるクロック信号に基づくタイミングのいずれかに切り替えて、AD変換を開始させることができる。これにより、AD変換を開始させるタイミングを必要に応じて適切に設定することができる。
【0044】
(4)本実施形態では、ADコンバータ3がΔΣ型ADコンバータであるため、ΔΣ型ADコンバータが用いられたフーリエ変換型分光光度計において、ジッターノイズを低減することができる。
【0045】
4.変形例
ADコンバータ3は、固有の周期(第1周期)でクロック信号を生成するものであれば、ΔΣ型とは異なるADコンバータであってもよい。
【0046】
また、本発明に係るフーリエ変換型分光光度計は、赤外光を用いて測定を行うフーリエ変換赤外分光光度計に限らず、赤外領域以外の波長領域の光を用いて測定を行うようなフーリエ変換型分光光度計であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 干渉計
2 検出器
3 ADコンバータ
4 PLD
5 CPU
6 PC
31 マスタークロック
41 マスタークロック
61 演算部
62 切替部
S 試料