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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】電話制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 3/58 20060101AFI20220117BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H04Q3/58 101
H04M3/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018165108
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020039046
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 章紘
(72)【発明者】
【氏名】橋間 一水
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 晃司
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-307527(JP,A)
【文献】特開平05-183632(JP,A)
【文献】特開平06-177970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M3/00
3/08-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q1/20-1/26
3/54-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配下に収容した複数の内線端末に対して、電話網の電話回線や前記内線端末間の内線回線を用いた電話サービスを提供する電話制御装置であって、
前記電話サービスの提供動作に用いる制御データを記憶する記憶部と、
入力操作に応じて前記電話制御装置に対する保守モードの設定および解除を行う保守モード切替部と、
前記制御データのうちから、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に実施される保守作業により更新の対象となる対象データを選択するデータ選択部と、
前記保守モードが解除された場合、前記制御データのうち前記対象データを保守作業前の元の状態に回復するデータ回復部とを備え
前記データ選択部は、前記保守モードが設定されている場合、前記制御データに含まれる個々のデータに対する更新処理を監視し、更新された前記データを前記対象データとして選択する
ことを特徴とする電話制御装置。
【請求項2】
配下に収容した複数の内線端末に対して、電話網の電話回線や前記内線端末間の内線回線を用いた電話サービスを提供する電話制御装置であって、
前記電話サービスの提供動作に用いる制御データを記憶する記憶部と、
入力操作に応じて前記電話制御装置に対する保守モードの設定および解除を行う保守モード切替部と、
前記制御データのうちから、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に実施される保守作業により更新の対象となる対象データを選択するデータ選択部と、
前記保守モードが解除された場合、前記制御データのうち前記対象データを保守作業前の元の状態に回復するデータ回復部とを備え、
前記データ選択部は、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に更新された、前記保守作業用の内線端末に関する内線番号を含むデータを、前記制御データから検索して前記対象データとして選択する
ことを特徴とする電話制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の電話制御装置において、
前記データ回復部は、前記対象データを保守作業前の元の状態に回復する際、前記対象データが前記保守作業により変更されたデータである場合には、前記対象データを前記記憶部に一時保管しておいた保守作業前の状態に変更し、前記対象データが前記保守作業により追加されたデータである場合には、前記対象データを削除することを特徴とする電話制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守作業完了時に電話システムを保守作業前の状態に回復させる状態回復技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビジネスホンシステムやPBXシステムなどの電話システムでは、主装置やPBX装置などの電話制御装置において、動作に用いる各種の制御データを管理している。主な制御データとしては、例えば、電話制御装置や内線端末の機能や動作を設定するための設定データ、内線端末での発着信に関する履歴データ、相手先情報を登録した電話帳データ、電話システムの動作モードの切り替えに関する状態データ、通話内容を録音した録音データなどがある。
【0003】
このような制御データは、電話システムの通常の動作により更新されるだけでなく、保守者による動作確認や保守作業により更新されることもある。例えば、保守者が電話システムの任意の対象内線端末に関する発信動作を確認するため、当該対象内線端末で保守者が持つ保守用携帯端末宛に発信操作を行った場合、対象内線端末の発信履歴データとして、保守用携帯端末の電話番号が記録されることになる。また、対象内線端末の電話帳データを確認するため、一時的に電話帳データを追加することもある。
【0004】
また、夜間や休日などの休業状態において電話システムが自動応答する留守番モードや、昼間と夜間とで外線着信の鳴動先を予め指定した内線端末へ切り替える昼夜モードなどの動作確認を行う場合には、状態データが切り替えられることになる。また、対象内線端末との通話録音を確認する場合には、その通話録音に関する録音データが記録されることになる。
【0005】
これらの制御データは、電話システムの動作の制御に用いられるだけでなく、利用者が再利用することもある。例えば、従来の電話システムとして、発信履歴を用いて電話帳データから効率よく相手先を検索する機能を備えているものもある(例えば、特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-071711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような動作確認や保守作業により更新された制御データを消去せずにそのまま残しておいた場合、電話システム動作に不具合が生じたり、利用者が違和感を感じたりするという悪影響が発生することになる。このため、作業完了時に保守者が、動作確認や保守作業により更新された制御データを消去して、保守作業前の状態に回復させる回復作業を行うことにより、上記悪影響の発生を回避していた。
しかしながら、このような保守作業前の状態に回復させる回復作業は、手作業で行われているため、保守者に対して極めて大きな作業負担となるだけでなく、回復作業ミスにより悪影響が発生するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、大きな作業負担を必要とすることなく、保守作業前の状態に容易に回復させることができる状態回復技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電話制御装置は、配下に収容した複数の内線端末に対して、電話網の電話回線や前記内線端末間の内線回線を用いた電話サービスを提供する電話制御装置であって、前記電話サービスの提供動作に用いる制御データを記憶する記憶部と、入力操作に応じて前記電話制御装置に対する保守モードの設定および解除を行う保守モード切替部と、前記制御データのうちから、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に実施される保守作業により更新の対象となる対象データを選択するデータ選択部と、前記保守モードが解除された場合、前記制御データのうち前記対象データを保守作業前の元の状態に回復するデータ回復部とを備え、前記データ選択部は、前記保守モードが設定されている場合、前記制御データに含まれる個々のデータに対する更新処理を監視し、更新された前記データを前記対象データとして選択するようにしたものである。
【0010】
また、本発明にかかる他の電話制御装置は、配下に収容した複数の内線端末に対して、電話網の電話回線や前記内線端末間の内線回線を用いた電話サービスを提供する電話制御装置であって、前記電話サービスの提供動作に用いる制御データを記憶する記憶部と、入力操作に応じて前記電話制御装置に対する保守モードの設定および解除を行う保守モード切替部と、前記制御データのうちから、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に実施される保守作業により更新の対象となる対象データを選択するデータ選択部と、前記保守モードが解除された場合、前記制御データのうち前記対象データを保守作業前の元の状態に回復するデータ回復部とを備え、前記データ選択部は、前記保守モードが設定されてから解除されるまでの期間に更新された、前記保守作業用の内線端末に関する内線番号を含むデータを、前記制御データから検索して前記対象データとして選択するようにしたものである。
【0013】
また、本発明にかかる上記電話制御装置の一構成例は、前記データ回復部が、前記対象データを保守作業前の元の状態に回復する際、前記対象データが前記保守作業により変更されたデータである場合には、前記対象データを前記記憶部に一時保管しておいた保守作業前の状態に変更し、前記対象データが前記保守作業により追加されたデータである場合には、前記対象データを削除するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電話制御装置における各種電話サービスの提供に用いる記憶部の制御データのうち、保守作業開始前に指定されている対象データが、保守作業の完了に応じて保守作業前の元の状態へ自動的に回復されることになる。したがって、制御データのうち保守作業により更新されたデータを、保守者が手作業で元の状態に戻すというような大きな作業負担を必要とすることなく、保守作業前の状態に回復させることが可能となる。このため、保守者に対する極めて大きな作業負担を大幅に削減できるとともに、回復作業ミスにより発生する悪影響を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電話制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】履歴データの構成例である。
図3】電話帳データの構成例である。
図4】第1の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。
図5】第1の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
図6】第2の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。
図7】第2の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
図8】第3の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。
図9】第3の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置10について説明する。図1は、電話制御装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
この電話制御装置10は、ビジネスホンシステムやPBXシステムなどの電話システム1で用いられる主装置やPBX装置からなり、内線回線L2を配下に収容する複数の内線端末20に対して、電話網NWとの電話回線L1や内線端末20間の内線回線L2を用いた各種の電話サービスを提供する機能を有している。
電話網NWは、次世代網(NGN:Next Generation Network)のほか、ISDN(Integrated Services Digital Network)、PSTN(Public Switched Telephone Network)、携帯電話網などの既存の電話網である。
【0018】
図1に示すように、電話制御装置10は、主な機能部として、網I/F部11、内線I/F部12、スイッチ部13、記憶部14、および制御部15を備えている。
【0019】
網I/F部11は、電話回線L1を介して電話網NWと接続し、電話網NWとの間で呼制御メッセージ(呼制御信号)や音声データ(音声信号)をやり取りする機能を有している。
内線I/F部12は、内線回線L2を介して内線端末20と接続し、内線端末20との間で制御メッセージや音声データを送受信する機能を有している。
スイッチ部13は、制御部15からの指示に応じて、網I/F部11側の通話路と内線I/F部12側の通話路とを交換接続する機能を有している。
【0020】
記憶部14は、半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、電話制御装置10における各種電話サービスの提供動作に用いる制御データやプログラムを記憶する機能を有している。
記憶部14は、主な制御データとして、設定データ14A、履歴データ14B、電話帳データ14C、録音データ14D、および状態データ14Eを記憶している。
【0021】
設定データ14Aは、電話制御装置10や内線端末20の機能や動作を設定するための制御データである。この設定データ14Aには、電話網NWを介して使用可能な電話回線L1ごとの電話番号をはじめとする各種の外線回線設定データや、内線端末20に付与されている内線番号や内線端末20が属するグループをはじめとする各種の内線端末設定データのほか、内線端末20に提供する電話サービスに関する提供サービス設定データが含まれる。
【0022】
履歴データ14Bは、内線端末20での発着信に関する履歴を示す制御データである。図2は、履歴データの構成例である。図2に示すように、履歴データ14Bには、内線端末20に固有の内線番号ごとに、当該内線端末20での発着信に関する時刻、相手番号、回線種別(外線/内線)、応答有無などのデータが組として登録されている。
【0023】
電話帳データ14Cは、内線端末20での発着信の相手となる相手先情報を登録した制御データであり、内線端末20で発着信を行う場合、相手先を特定する際に用いられる。図3は、電話帳データの構成例である。図3に示すように、電話帳データ14Cには、内線番号ごとに、相手先に関するフリガナ、相手名、電話番号、電話帳グループなどのデータが組として登録されている。
【0024】
録音データ14Dは、内線端末20が非応答の場合に発信者が録音した留守番メッセージや、内線端末20での通話の内容を録音した通話内容を示す制御データである。
状態データ14Eは、電話制御装置10や内線端末20に設けられている各種の動作モードにおける動作状態をそれぞれ規定するための制御データである。例えば、留守番モードについては、発信者に対する音声ガイダンスや留守番メッセージの録音時間を規定する制御データが用意されている。また、昼・夜モードについては、昼・夜期間の設定や昼・夜期間における着信処理を規定する制御データが用意されている。
【0025】
制御部15は、CPUとその周辺回路を有し、記憶部14からプログラムを読み出して実行することにより、記憶部14の制御データに基づいて、電話サービス提供処理および状態回復処理に用いる各種処理部を実現する機能を有している。
制御部15で実現される主な処理部として、呼制御部15A、設定処理部15B、保守モード切替部15C、データ選択部15D、およびデータ回復部15Eを備えている。
【0026】
呼制御部15Aは、内線端末20に対して電話回線L1や内線回線L2を用いた各種の電話サービスの提供を行う機能を有している。具体的には、電話回線L1を介した電話網NWからの外線着信に応じて対応する内線端末20を呼び出す外線着信機能、呼出中の内線端末20での応答操作に応じて、スイッチ部13を制御して内線端末20と電話網NWとの通話路を接続することにより外線通話を実現する機能、内線端末20での外線発信操作に応じて電話回線L1を介した電話網NWに対する外線発信を行う機能などがある。
【0027】
また、呼制御部15Aは、内線回線L2を介して内線端末20同士を交換接続するための一般的な呼制御を行う機能を有している。具体的には、内線端末20での内線発信操作に応じて、指定された内線端末20を呼び出す内線着信機能と、呼出中の内線端末20での応答操作に応じて、スイッチ部13を制御してこれら内線端末20の通話路を接続することにより内線通話を実現する機能などがある。
【0028】
また、呼制御部15Aは、内線端末20ごとに外線発着信や内線発着信に関する履歴を履歴データ14Bに記録する機能と、内線端末20による履歴データ14Bを用いた外線発信や内線発信を行う機能と、内線端末20での操作に応じて当該内線端末20と対応する電話帳データ14Cを編集する機能と、内線端末20による電話帳データ14Cを用いた外線発信や内線発信を行う機能とを有している。
【0029】
また、内線端末20への外線・内線着信に対する内線端末20での未応答時に発信者のメッセージを録音データ14Dとして記録する機能と、内線端末20による外線・内線通話時に通話内容を録音データ14Dとして記録する機能と、内線端末20での操作に応じて指定された録音データ14Dを再生する機能と、状態データ14Eに基づいて指定された時刻に指定された内線端末20を留守番モードに切り替える機能と、状態データ14Eに基づいて指定された時刻に指定された内線端末20を昼モードあるいは夜モードに切り替える機能とを有している。
【0030】
設定処理部15Bは、予め指定されている設定用の内線端末20での操作に応じて、設定データ14Aを設定変更する機能と、設定用の内線端末20での保守作業開始時における操作に応じて、保守作業で用いられる保守作業用の内線端末21を設定する機能と、設定用の内線端末20での保守作業開始時における操作に応じて、保守作業で電話制御装置10と電話網NWを介して発着信を行う保守作業用の電話端末30を設定する機能とを有している。
【0031】
保守モード切替部15Cは、予め指定されている設定用の内線端末20での操作に応じて、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードに対して、保守作業を行うための保守モードの設定および解除を行う機能を有している。
保守モードは、保守者が電話制御装置10あるいは内線端末20に対して保守作業を行う際に選択される動作モードである。電話制御装置10の動作モードは、保守者により保守作業開始時に保守モードに設定され、保守作業完了時に保守モードが解除される。保守モードでは、通常どおりの電話サービスが提供されるとともに、対象データを保守作業前の元の状態に回復するための各種の処理動作が実行される。
【0032】
なお、電話システムによっては、設定処理部15Bによる設定データ14Aの設定変更を行う動作モードを保守モードと呼ぶこともある。これは設定変更も保守作業に含まれるという考え方に基づくものである。一般的に、保守作業とは、正常な状態を保つための作業を指すものであり、本発明でもこれに基づいて、電話システムを正常な状態を保つための作業を行う動作モードを保守作業と呼んでいる。したがって、両者を区別するため、本発明でいう保守モードを保守確認モードと呼び、設定変更を行う動作モードを保守モードと呼んでもよい。これに従えば、後述する図4のステップS100-S102が保守モードに相当し、ステップS104さらにはステップと106が保守確認モードに相当する。
【0033】
データ選択部15Dは、制御データのうちから保守作業により更新される対象データを選択する機能を有している。具体的には、データ選択部15Dは、保守作業開始時に指定された、保守作業で用いられる保守作業用の内線端末21に関する制御データを、対象データとして選択する機能と、保守作業開始時に指定された、保守作業で電話制御装置10と電話網NWを介して発着信を行う保守作業用の電話端末30に関する制御データを、対象データとして選択する機能とを有している。
【0034】
データ回復部15Eは、予め指定されている設定用の内線端末20での操作に応じて、保守モード切替部15Cにより保守モードが解除された場合、記憶部14で記憶している制御データのうち、データ選択部15Dで選択された対象データを保守作業前の元の状態に回復する機能を有している。
【0035】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4および図5を参照して、本実施の形態にかかる電話制御装置10の動作について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。図5は、第1の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
ここでは、保守作業時において、保守作業用の内線端末21と電話端末30の両方を用いる場合を前提とし、保守作業開始時に、これら内線端末21および電話端末30に関する制御データを対象データとして一括して選択して記憶部14に一時保存しておき、保守作業完了時に、これら対象データを一時保存しておいた元の状態に一括して回復する場合を例として説明する。
【0036】
図4に示すように、保守作業を開始する際、予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、設定処理部15Bは、保守作業用の内線端末21の内線番号と保守作業用の電話端末30の電話番号とを、記憶部14に設定する(ステップS100)。
【0037】
データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された内線端末21の内線番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該内線端末21の制御データを対象データとして選択する(ステップS101)。
また、データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された電話端末30の電話番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該電話端末30の制御データを対象データとして選択する(ステップS102)。
【0038】
この後、データ回復部15Eは、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードを監視し(ステップS103)、保守モードが設定されたかどうか確認する(ステップS103:NO)。
予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、保守モード切替部15Cにより保守モードが設定された場合(ステップS103:YES)、データ回復部15Eは、記憶部14で記憶している制御データのうち、対象データとして選択されたデータを、記憶部14に一時保管する(ステップS104)。
【0039】
この後、データ回復部15Eは、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードを監視し(ステップS105)、保守モードが解除されたかどうか確認する(ステップS105:NO)。
予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、保守モード切替部15Cにより保守モードが解除された場合(ステップS105:YES)、データ回復部15Eは、選択されている対象データを一括して、記憶部14に一時保管されているそれぞれの元の状態に回復させた後(ステップS106)、一連の状態回復処理を終了する。
【0040】
したがって、図5に示すように、制御データのうちから選択された対象データが、保守作業開始時に一時保管され、保守作業時に更新された対象データが、保守作業完了時に、一時保管されている元の状態に回復されることになる。
【0041】
このため、例えば、図3に示した電話帳データ14Cに対して、保守作業時に電話端末30を登録して、内線端末21から電話帳データ14Cを用いた電話端末30への外線発信動作を確認する場合、保守作業時に内線端末21に関する電話帳データ14Cが更新されることになるが、保守作業完了時には、内線端末21に関する電話帳データ14Cが一時保管されている元の状態、すなわち電話端末30が登録されていない状態に、自動的に回復されることになる。
【0042】
また、上記外線発信については、図2に示した履歴データ14Bに内線端末21に関する外線発信履歴として記録されるため、保守作業時に内線端末21に関する履歴データ14Bが更新されることになるが、保守作業完了時には、内線端末21に関する履歴データ14Bが一時保管されている元の状態、すなわち内線端末21の外線発信履歴が記録されていない状態に、自動的に回復されることになる。
【0043】
また、例えば、電話端末30から内線端末21への外線着信に応じた留守番メッセージの登録動作を確認する場合、保守作業時に内線端末21に関する電話端末30からの録音メッセージが追加されて、録音データ14Dが更新されることになるが、保守作業完了時には、電話端末30からの録音メッセージが削除されて、内線端末21に関する録音データ14Dが一時保管されている元の状態、すなわち電話端末30が登録されていない状態に、自動的に回復されることになる。
【0044】
また、上記外線着信については、図2に示した履歴データ14Bに内線端末21に関する外線着信履歴として記録されるため、保守作業時に内線端末21に関する履歴データ14Bが更新されることになるが、保守作業完了時には、内線端末21に関する履歴データ14Bが一時保管されている元の状態、すなわち内線端末21の外線着信履歴が記録されていない状態に、自動的に回復されることになる。
【0045】
また、上記動作確認時に留守番メッセージの時間長の変更動作も確認した場合、状態データ14Eにおいて内線端末21に関する留守番メッセージの時間長が設定変更されるため、保守作業時に内線端末21に関する状態データ14Eが更新されることになるが、保守作業完了時には、内線端末21に関する状態データ14Eが一時保管されている元の状態、すなわち内線端末21に関する留守番メッセージの時間長が変更されていない状態に、自動的に回復されることになる。
【0046】
また、対象データについては、記憶部14の各種制御データのうち、履歴データ14B、電話帳データ14C、録音データ14D、および状態データ14Eからなる制御データを対象データとし、設定データ14Aは対象データから除外してもよい。例えば、内線端末21での不具合が、設定データ14Aの設定内容が適切でないことが原因であり、保守作業により、設定データ14Aを変更して不具合を解決するような場合もある。このような場合、設定データ14Aを元の状態に戻すと不具合が再発生することになる。このため、設定データ14Aを対象データから除外することにより、不具合の再発生を回避することができる。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、データ選択部15Dが、制御データのうちから、保守モードに設定されてから解除されるまでの期間に実施される保守作業により更新の対象となる対象データを選択し、データ回復部15Eが、保守モードが解除された場合、制御データのうち対象データを保守作業前の元の状態に回復するようにしたものである。
【0048】
これにより、電話制御装置10における各種電話サービスの提供に用いる記憶部14の制御データのうち、保守作業開始前に指定されている対象データが、保守作業の完了に応じて保守作業前の元の状態へ自動的に回復されることになる。したがって、制御データのうち保守作業により更新されたデータを、保守者が手作業で元の状態に戻すというような大きな作業負担を必要とすることになく、保守作業前の状態に回復させることが可能となる。このため、保守者に対する極めて大きな作業負担を大幅に削減できるとともに、回復作業ミスにより発生する悪影響を回避することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態において、データ選択部15Dが、保守作業開始時に指定された、保守作業で用いられる保守作業用の内線端末21に関する制御データを、対象データとして選択するようにしてもよく、保守作業開始時に指定された、保守作業で電話制御装置10と電話網NWを介して発着信を行う保守作業用の電話端末30に関する制御データを、対象データとして選択するようにしてもよい。これら内線端末21と電話端末30の対象データについては、保守作業開始時における内線端末21の内線番号および電話端末30の電話番号に関する指定有無に応じて、いずれか一方または両方を選択すればよい。
【0050】
通常、保守作業における動作確認は、内線端末20のうちから1つまたは複数選択した保守作業用の内線端末21で行われることになる。電話制御装置10に関する動作確認を行う場合、この内線端末21として、予め指定されている設定用の内線端末20が用いられる場合が多い。設定用の内線端末20には、予め制御データを変更する権限が与えられているからである。また、障害のあった内線端末20に関する動作確認を行う場合、障害のあった内線端末20を内線端末21として選択することもある。
また、内線端末20に関する発着信など電話網NW用いた電話サービスの動作確認を行う場合、相手先電話端末が必要となる。このような場合、保守者が携帯する携帯端末など、保守作業用の電話端末30を用いることになる。
【0051】
このように、保守作業により更新される制御データは、保守作業用の内線端末21や保守作業用の電話端末30など、ある程度限定されることになる。このため、これら内線端末21や電話端末30に関する制御データを、回復対象となる対象データとして選択することにより、比較的大きな容量の制御データをすべて回復する場合と比較して、回復対象となるデータ量を大幅に削減でき、少ない処理負担および処理時間でデータを元の状態に回復することが可能となる。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる電話制御装置10について説明する。
本実施の形態では、データ選択部15Dが、保守モードに設定されている場合、制御データに含まれる個々のデータに対する更新処理を監視し、更新されたデータを対象データとして選択する場合を例として説明する。なお、本実施の形態にかかるその他の構成については図1と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0053】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図6および図7を参照して、本実施の形態にかかる電話制御装置10の動作について説明する。図6は、第2の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。図7は、第2の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
ここでは、保守作業時において、保守作業用の内線端末21と電話端末30の両方を用いる場合を例として説明する。
【0054】
図6に示すように、保守作業を開始する際、予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、設定処理部15Bは、保守作業用の内線端末21の内線番号と保守作業用の電話端末30の電話番号とを、記憶部14に設定する(ステップS200)。
【0055】
データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された内線端末21の内線番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該内線端末21の制御データを対象データとして選択し、これら対象データに関する更新フラグをリセットする(ステップS201)。
また、データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された電話端末30の電話番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該電話端末30の制御データを対象データとして選択し、これら対象データに関する更新フラグをリセットする(ステップS202)。
【0056】
この後、データ回復部15Eは、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードを監視し(ステップS203)、保守モードが設定されたかどうか確認する(ステップS203:NO)。
予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、保守モード切替部15Cによる保守モードの設定が確認された場合(ステップS203:YES)、データ選択部15Dは、対象データとして選択されている任意のデータに対する、呼制御部15Aや設定処理部15Bによる更新有無を監視する(ステップS204)。
【0057】
上記データに関するデータ更新があった場合(ステップS204:YES)、データ選択部15Dは、更新された上記データの元の状態を記憶部14に一時保管して(ステップS205)、更新された上記データに割り当てられている更新フラグをセットし(ステップS206)、後述するステップS207へ移行する。この際、上記データが新規追加されたデータである場合、上記データの元の状態が存在しないため、一時保管は行わなくてもよい。
【0058】
一方、ステップS204において、上記データに関するデータ更新がない場合(ステップS204:NO)、後述するステップS207へ移行する。
ステップS207において、データ回復部15Eは、保守作業が完了して保守モードが解除されたかどうか確認し(ステップS207)、保守モードが解除されていない場合(ステップS207:NO)、ステップS204に戻る。
【0059】
一方、ステップS207において、保守モードの解除が確認された場合(ステップS207:YES)、データ回復部15Eは、対象データのうち、更新フラグがセットされている各データを、記憶部14に一時保管されているそれぞれの元の状態に回復した後(ステップS208)、一連の状態回復処理を終了する。
この際、更新フラグがセットされている対象データに関する一時保管データが記憶部14にあれば、セットされている対象データを削除して一時保管データに書き換えればよい。また、一時保管データがなければ、セットされている対象データを削除するだけでよい。
【0060】
したがって、図7に示すように、制御データから選択された対象データのうち、保守作業時に更新された対象データが一時保管され、保守作業完了時に、更新フラグに基づいて一時保管されている元の状態に回復されることになる。
【0061】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、データ選択部15Dが、保守モードに設定されている場合、制御データに含まれる個々のデータに対する更新処理を監視し、更新されたデータを対象データとして選択するようにしたものである。
これにより、制御データのうちから実際に更新されたデータのみを回復対象として選択することができる。したがって、回復対象となるデータ量を大幅に削減でき、少ない処理負担および処理時間でデータを元の状態に回復することが可能となる。
【0062】
この際、保守作業開始時に指定された、保守作業で用いられる保守作業用の内線端末21および電話端末30に関する制御データを、対象データとして予め選択しておき、これら対象データのうちから実際に更新されたデータのみを回復対象として選択するようにしてもよい。
これにより、極めて効率よく回復対象となるデータを選択することができ、極めて少ない処理負担および処理時間でデータを元の状態に回復することが可能となる。
【0063】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる電話制御装置10について説明する。
本実施の形態では、データ選択部15Dが、保守モードに設定されてから解除されるまでの期間に更新された、保守作業用の内線端末21に関する内線番号を含むデータや、保守作業用の電話端末30に関する電話番号を含むデータを、制御データから検索して対象データとして選択する場合を例として説明する。なお、本実施の形態にかかるその他の構成については図1と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0064】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図8および図9を参照して、本実施の形態にかかる電話制御装置10の動作について説明する。図8は、第3の実施の形態にかかる状態回復処理を示すフローチャートである。図9は、第3の実施の形態にかかる状態回復処理の処理例である。
【0065】
図8に示すように、予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、設定処理部15Bは、保守作業用の内線端末21の内線番号と保守作業用の電話端末30の電話番号とを、記憶部14に設定する(ステップS300)。
【0066】
データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された内線端末21の内線番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該内線端末21の制御データを対象データとして選択し、これら対象データに関する更新フラグをリセットする(ステップS301)。
また、データ選択部15Dは、保守者の上記操作に応じて入力された電話端末30の電話番号に基づいて、記憶部14の制御データのうち、当該電話端末30の制御データを対象データとして選択し、これら対象データに関する更新フラグをリセットする(ステップS302)。
【0067】
この後、データ回復部15Eは、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードを監視し(ステップS303)、保守モードが設定されたかどうか確認する(ステップS303:NO)。
予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、保守モード切替部15Cにより保守モードが設定された場合(ステップS303:YES)、データ回復部15Eは、記憶部14で記憶している制御データのうち、対象データとして選択されたデータを、記憶部14に一時保管する(ステップS304)。
【0068】
この後、データ回復部15Eは、記憶部14で保持されている電話制御装置10の動作モードを監視し(ステップS305)、保守モードが解除されたかどうか確認する(ステップS305:NO)。
予め指定されている設定用の内線端末20での保守者操作に応じて、保守モード切替部15Cにより保守モードが解除された場合(ステップS305:YES)、データ選択部15Dは、保守モード期間に更新された、内線端末21の内線番号を含むデータを、制御データから検索して対象データとして選択し(ステップS306)、制御データのうちから電話端末30の電話番号を含むデータを対象データとして選択する(ステップS307)。
【0069】
この後、データ回復部15Eは、選択された対象データを、記憶部14に一時保管されているそれぞれの元の状態に回復させた後(ステップS308)、一連の状態回復処理を終了する。
この際、更新フラグがセットされている対象データに関する一時保管データが記憶部14にあれば、セットされている対象データを削除して一時保管データに書き換えればよい。また、一時保管データがなければ、セットされている対象データを削除するだけでよい。
【0070】
したがって、図9に示すように、制御データのうちから選択された対象データが、保守作業開始時に一時保管され、保守作業完了時に、制御データのうちから内線端末21および電話端末30に関する対象データが検索されて、一時保管されている元の状態に回復されることになる。
【0071】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、データ選択部15Dが、保守モードに設定されてから解除されるまでの期間に更新された、保守作業用の内線端末21に関する内線番号を含むデータや、保守作業用の電話端末30に関する電話番号を含むデータを、制御データから検索して対象データとして選択するようにしたものである。
【0072】
これにより、制御データのうちから実際に更新された、保守作業用の内線端末21や電話端末30に関するデータのみを回復対象として選択することができる。したがって、回復対象となるデータ量を大幅に削減でき、少ない処理負担および処理時間でデータを元の状態に回復することが可能となる。
【0073】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…電話システム、10…電話制御装置、11…網I/F部、12…内線I/F部、13…スイッチ部、14…記憶部、14A…設定データ、14B…履歴データ、14C…電話帳データ、14D…録音データ、14E…状態データ、15…制御部、15A…呼制御部、15B…設定処理部、15C…保守モード切替部、15D…データ選択部、15E…データ回復部、20,21…内線端末、30…電話端末、L1…電話回線、L2…内線回線、NW…電話網。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9