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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】パージ制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
F02M25/08 301Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018180277
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020051312
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】李 曄楠
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅明
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-113401(JP,A)
【文献】特開2012-087884(JP,A)
【文献】特開2015-007455(JP,A)
【文献】特開2008-045733(JP,A)
【文献】特開2006-002932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記連通路は、前記蒸発燃料通路において前記弁体よりも上流側に設けられているパージ制御弁。
【請求項2】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記ハウジングは、前記弁体の径方向に延び且つ前記蒸発燃料を前記内部通路に流入させる流入通路(41a)を有しており、
前記連通路(106a)は、前記弁体の径方向において前記弁体と前記流入通路との間に設けられているパージ制御弁。
【請求項3】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記連通路は、前記区画壁を前記弁体の径方向に貫通しているパージ制御弁。
【請求項4】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記連通路は、前記弁体よりも前記内部通路の上流端部から離れた位置に設けられているパージ制御弁。
【請求項5】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記区画壁は、前記内部通路の上流端部から弁座(54)に向けて延びる一対の対向壁部(404c)と、前記弁座を取り囲むとともに前記一対の対向壁部に連結している筒状壁部(404b)とを備えて形成されているパージ制御弁。
【請求項6】
前記連通路は、前記筒状壁部を貫通する通路である請求項に記載のパージ制御弁。
【請求項7】
前記連通路は、前記一対の対向壁部のうち少なくとも一方を貫通する通路である請求項に記載のパージ制御弁。
【請求項8】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記ハウジングは、前記電磁コイル部を内蔵する第1ハウジング(40,140)と、弁座(54)を有し前記第1ハウジングに対して前記弁体の軸方向に一体に組み付けられている第2ハウジング(5,105)とを備え、
前記区画壁は、前記第1ハウジングに設けられた第1通路壁(404)と、前記第2ハウジングに設けられて前記第1通路壁に対して前記軸方向に組み付けられている第2通路壁(55)とによって形成されているパージ制御弁。
【請求項9】
前記連通路は、前記第1通路壁と前記第2通路壁の少なくとも一方の先端部に形成された凹み部(55a,404a)によって形成された開口部である請求項に記載のパージ制御弁。
【請求項10】
前記チャンバ室の容積は、前記内部通路の容積よりも大きく設定されている請求項1から請求項のいずれか一項に記載のパージ制御弁。
【請求項11】
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
前記弁体および前記電磁コイル部を内蔵し、前記キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し前記弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
前記ハウジングの内部において前記内部通路を形成する壁であるとともに前記内部通路と前記チャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
前記区画壁を貫通して前記内部通路と前記チャンバ室とを連通する連通路であって、前記蒸発燃料を前記内部通路から前記チャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え
前記チャンバ室の容積は、前記内部通路の容積よりも大きく設定されているパージ制御弁。
【請求項12】
前記連通路は、前記弁体よりも前記内部通路の上流端部寄りに位置している請求項11に記載のパージ制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、エンジンに向けて蒸発燃料が流通する通路に設けられたパージ制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力ポートの開口端と弁口との間の流体通路に、脈動低減手段である柱部材を備えたパージ制御弁が記載されている。柱部材は、入力ポートから弁口に向かう正流れ方向にはCD値が小さく、反対の流れ方向にはCD値が大きい断面形状であるため、流体が正流れ方向にスムーズに流れて流体の流量低下を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-291916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、蒸発燃料の流量低下抑制の観点においてパージ制御弁にはさらなる改良が求められている。
【0005】
この明細書における開示の目的は、流量低下を抑えつつ脈動の低減が図れるパージ制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示されたパージ制御弁の一つは、キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、を備え、連通路は、蒸発燃料通路において弁体よりも上流側に設けられている
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
ハウジングは、弁体の径方向に延び且つ蒸発燃料を内部通路に流入させる流入通路(41a)を有しており、
連通路(106a)は、弁体の径方向において弁体と流入通路との間に設けられている。
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
連通路は、区画壁を弁体の径方向に貫通している。
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
連通路は、弁体よりも内部通路の上流端部から離れた位置に設けられている。
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
区画壁は、内部通路の上流端部から弁座(54)に向けて延びる一対の対向壁部(404c)と、弁座を取り囲むとともに一対の対向壁部に連結している筒状壁部(404b)とを備えて形成されている。
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
ハウジングは、電磁コイル部を内蔵する第1ハウジング(40,140)と、弁座(54)を有し第1ハウジングに対して弁体の軸方向に一体に組み付けられている第2ハウジング(5,105)とを備え、
区画壁は、第1ハウジングに設けられた第1通路壁(404)と、第2ハウジングに設けられて第1通路壁に対して軸方向に組み付けられている第2通路壁(55)とによって形成されている。
開示されたパージ制御弁の一つは、
キャニスタ(16)から脱離された蒸発燃料がエンジン(22)に向けて流通する蒸発燃料通路に設置されるパージ制御弁(4;104)であって、
弁体(43)を駆動する電磁コイル部(42)と、
弁体および電磁コイル部を内蔵し、キャニスタ側から流入した蒸発燃料が流下し弁体によって開閉される内部通路(401a)を有するハウジング(40)と、
ハウジングの内部において内部通路の外に設けられたチャンバ室(6)と、
ハウジングの内部において内部通路を形成する壁であるとともに内部通路とチャンバ室とを区画する区画壁(404,55)と、
区画壁を貫通して内部通路とチャンバ室とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路からチャンバ室に逃がす連通路(6a;106a)と、
を備え、
チャンバ室の容積は、内部通路の容積よりも大きく設定されている。
【0008】
このパージ制御弁によれば、ハウジングの内部において内部通路を形成する壁である区画壁を貫通する連通路を備えることにより、例えば閉弁時に内部通路の圧力が高まった場合に、内部通路に存在する蒸発燃料の一部をチャンバ室に逃がすことができる。これにより、閉弁状態において上流側に伝搬する脈動流に対して、流体の一部を連通路を介してチャンバ室へ拡散させることにより上流側への脈動を減衰することができる。連通路は、内部通路の外にあるチャンバ室と内部通路とを区画する区画壁を貫通するため、内部通路を流れる流体に対する流通抵抗にはなりにくい通路である。以上より、流量低下を抑えつつ脈動の低減が図れるパージ制御弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のパージ制御弁を搭載可能な蒸発燃料処理システムを示した概要図である。
図2】第1実施形態のパージ制御弁の縦断面図である。
図3】パージ制御弁の横断面図である。
図4】実施形態品と従来品について弁の開閉状態と圧力変動との関係を示したグラフである。
図5】第2実施形態のパージ制御弁の縦断面図である。
図6】パージ制御弁の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。図1に示す蒸発燃料処理システムは、キャニスタ16に吸着した燃料中のHCガス等をエンジン22の吸気通路に供給し、燃料タンク14からの蒸発燃料が大気に放出されることを防止可能なシステムである。この蒸発燃料処理システムは、蒸発燃料通路における所定の位置に、吸気通路に供給される蒸発燃料の流量を調整可能なパージ制御弁4を備えている。図2図3に示すように、パージ制御弁4は、流入ポート41を有し電磁コイル部42を内蔵する第1ハウジング40と、第1ハウジング40と一体に結合された第2ハウジング5とを少なくとも備えている。第1ハウジング40と第2ハウジング5との組立体は、弁体43および電磁コイル部42を内蔵し、キャニスタ16側から流入した蒸発燃料が流下し弁体43によって開閉される内部通路401aを有する、パージ制御弁4のハウジングを構成する。第1ハウジング40、第2ハウジング5のそれぞれは、樹脂材料により形成されている。
【0012】
エンジン22の吸気系1に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン22に供給される燃焼用燃料と混合されてエンジン22のシリンダ内で燃焼される。エンジン22の吸気系1には、エンジン22の吸気マニホールド20に吸気管10の一端側が接続され、さらに吸気管10の途中にスロットルバルブ21とフィルタ13が設けられている。蒸発燃料パージ系2は、燃料タンク14およびキャニスタ16が、配管15、配管17を介して吸気マニホールド20に接続されて形成されている。
【0013】
フィルタ13は、吸気管10の上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。スロットルバルブ21は、アクセルペダルと連動して吸気マニホールド20の上流部における開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入される吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、フィルタ13、スロットルバルブ21を順に通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されてシリンダ内で燃焼される。
【0014】
燃料タンク14は、ガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク14は、配管15によってキャニスタ16の流入部16aに接続されている。キャニスタ16は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器であり、燃料タンク14内で発生する蒸発燃料を、配管15を介して流入部16aから取り入れ、吸着材に一時的に吸着する。キャニスタ16には、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部16bが設けられている。キャニスタ16が吸入部16bを備えることにより、キャニスタ16内には大気圧が作用する。キャニスタ16は、吸着材に吸着した蒸発燃料を、吸入された新鮮な空気に脱離することができる。
【0015】
吸入部16bには、例えばバルブモジュールが一体に設けられている。バルブモジュールは、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部を開閉するキャニスタクローズバルブと、大気に対してガスを放出したり大気を吸入したりすることが可能な内部ポンプとを内蔵している。キャニスタ16がキャニスタクローズバルブを備えることによれば、キャニスタ16内に大気圧を作用させることができる。キャニスタ16は、吸入された新鮮な空気によって、吸着材に吸着している蒸発燃料を容易に脱離可能、すなわちパージすることができる。
【0016】
キャニスタ16には、吸着材から離脱された蒸発燃料が流出される流出部16cが設けられている。流出部16cには配管17の一端側が接続されている。配管17の他端側は、吸気管10において吸気マニホールド20とスロットルバルブ21の間に接続されている。配管17内の通路は、パージ制御弁4に対して燃料が流入する燃料流入通路とも称する。配管17においてキャニスタ16と吸気管10との間には、上流側から順にパージ制御弁4、逆止弁装置3が設置されている。
【0017】
パージ制御弁4は、蒸発燃料通路を開閉する開閉手段であり、キャニスタ16から流出する蒸発燃料をエンジン22へ供給することを許可および阻止できる機能を有する。図2に示すように、パージ制御弁4は、弁体43と、コイル部420、可動コア422、固定コア423およびスプリング424等を含む電磁コイル部42とを備えている。パージ制御弁4は、コイル部420に通電されたときに発生する電磁力とスプリング424の付勢力とのバランスに応じて弁体43を駆動することによって、内部通路401aを開閉する。
【0018】
パージ制御弁4は、内部通路401aを形成する第1ハウジング40を備える。パージ制御弁4は、通常は蒸発燃料通路をなす内部通路401aを閉じた状態を維持し、コイル部420に通電が行われると、電磁力がスプリング424の弾性力に打ち勝って、弁体43が弁座54から離間して内部通路401aを開いた状態にする。制御装置は、通電のオン時間とオフ時間とによって形成される1周期の時間に対するオン時間の比率、すなわちデューティ比を制御してコイル部に通電を行う。パージ制御弁4は、デューティコントロールバルブともいう。この通電制御により、内部通路401aを流通する蒸発燃料の流量は調節される。
【0019】
逆止弁装置3は、キャニスタ16から吸気管10に至る蒸発燃料通路であって、パージ制御弁4と吸気マニホールド20との間に設置された逆流防止用の弁である。逆止弁装置3は、蒸発燃料通路において、パージ制御弁4側の通路から吸気管10側の通路への蒸発燃料の本来の流通を許容し、吸気管10側の通路からパージ制御弁4側の通路への蒸発燃料の逆流を阻止する。逆止弁装置3は、蒸発燃料の本来の流通に伴って流路を開き、蒸発燃料の逆流に伴って流路を閉じるように動作する弁体を備える。
【0020】
車両の走行時に、制御装置によってパージ制御弁4が開弁状態になると、ピストンの吸入作用によって発生する吸気マニホールド20内の負圧とキャニスタ16にかかる大気圧との差が生じる。この圧力差によって、キャニスタ16内に吸着された蒸気燃料は、パージ制御弁4、逆止弁装置3を順に流下し、吸気マニホールド20内に吸引される。
【0021】
吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等からエンジン22に供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、エンジン22のシリンダ内で燃焼される。また、エンジン22のシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置は、パージ制御弁4の開弁時間と閉弁時間をデューティ制御することで、蒸発燃料をパージしても、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
【0022】
第1ハウジング40は、一方端側に底部を有し、一方端側とは反対側である他方端側に下流側開口部を有し、さらに底部に対して側方であって下流側開口部に対して交差する方向に延びる管状の流入ポート41を有する。流入ポート41は、内部通路401aへ流出する蒸発燃料が流通する流入通路41aを形成している。流入ポート41は第1ハウジング40の内部通路401aとキャニスタ16側の配管17内の通路とを連通させる流入通路41aを内部に有する。第1ハウジング40は、内部通路401aを開閉するための弁体43と、弁体43を駆動するための電磁コイル部42とを収容している。電磁コイル部42は、第1ハウジング40における底部に一体に設置されている。
【0023】
下流側開口部は矩形状である。下流側開口部の全周には、径外方向に放射状に突出するフランジ部401bが設けられている。流出側筒状部401は、下流端に位置する開口部の外周縁に放射状に突出するフランジ部401bが形成され、開口部よりも上流に方体状の空間を形成する筒状部である。フランジ部401bは、第2ハウジング5のフランジ部52に接合される部分である。
【0024】
パージ制御弁4の第2ハウジング5は、吸気管10側の配管17と第1ハウジング40とを連通させる部材である。第2ハウジング5は、溶着または接着によって第1ハウジング40に結合されるフランジ部52と、フランジ部52に対して直交するよう方向にフランジ部52から突出する流出ポート51とを備えている。流出ポート51は、内部通路401aから流出した蒸発燃料が流通する流出通路51aを内部に有している。流出ポート51は、蒸発燃料処理システムにおいて配管17に接続されて逆止弁装置3に連通している。
【0025】
第2ハウジング5は、フランジ部52の内側において流出ポート51とは反対側に突出する筒状部53をさらに備えている。筒状部53は、先端側に、弁体43が接触する弁座54を有している。筒状部53は、フランジ部401bの内側の開口部よりも第1ハウジング40の内部に突出する形状であり、弁体43が開弁状態であるときに蒸発燃料が内部通路401aから流入する内部通路53aを内部に有する。
【0026】
フランジ部52は、筒状部53と流出ポート51とがつながっている連結部分の全周において径外方向に放射状に突出する部分である。フランジ部52は、第1ハウジング40のフランジ部401bに接合される部分である。フランジ部52は、フランジ部401bに重ね合わされた状態で一体に接合されている。
【0027】
パージ制御弁4のハウジングは、内部通路401aとチャンバ室6とを内部に有している。チャンバ室6は、内部通路401aの外に設けられている。チャンバ室6は、内部通路401aの途中に設けられた空間ではない。チャンバ室6は、内部通路401aにおいて弁体43に至るまでの範囲を両側から覆うように設けられている。チャンバ室6は、さらに内部通路401aにおいて弁体43に取り囲む部分を覆うように設けられている。チャンバ室6の容積は、ハウジング内における内部通路401aの容積よりも大きく設定されている。チャンバ室6の容積は、ハウジング内における内部通路401aの容積に対して2倍以上であることが好ましい。
【0028】
パージ制御弁4のハウジングは、内部通路401aとチャンバ室6とを区画する区画壁を有している。区画壁は、パージ制御弁4のハウジングの内部において内部通路401aを形成する壁部でもある。区画壁は、図3に示すように、上流側に設けられた一対の対向壁部と、一対の対向壁部の下流端部に連結している筒状壁部とを備えて形成されている。
【0029】
一対の対向壁部は、間隔をあけて互いに対向する2つの壁を備え、内部通路401aの上流端部から下流側の弁座54に向けて延びている。一対の対向壁部は、内部通路401aにおいて、流入通路41aの下流端部から筒状壁部の上流端部にまで延びる通路を形成している。筒状壁部は、弁座54および筒状部53内の内部通路53aを取り囲み、一対の対向壁部に連結している横断面C字状の壁部である。
【0030】
区画壁は、第1ハウジング40に設けられた第1通路壁404と第2ハウジング5に設けられた第2通路壁55とによって形成されている。第1通路壁404は、電磁コイル部42側から先端部に向けて延びる壁部であり、フランジ部401b側の先端部が開口し、区画壁における電磁コイル部42側の壁部を構成する。第2通路壁55は、流出ポート51側から先端部に向けて延びる壁部であり、先端部の位置や形状が第1通路壁404の先端部と合致し、区画壁における流出ポート51側の壁部を構成する。第1通路壁404と第2通路壁55は軸方向に互いに組み付けられている。
【0031】
第1通路壁404は、筒状壁部における電磁コイル部42側の壁部をなす一対の第1筒状壁部404bと、一対の対向壁部における電磁コイル部42側の壁部をなす一対の第1対向壁部404cとを備えている。第1筒状壁部404bと一対の第1対向壁部404cとは、一体になって区画壁における電磁コイル部42側の壁部を形成している。第2通路壁55は、筒状壁部における電磁コイル部42側の壁部をなす一対の第2筒状壁部と、一対の対向壁部における電磁コイル部42側の壁部をなす一対の第2対向壁部とを備えている。第2筒状壁部と一対の第2対向壁部とは、一体になって区画壁における流出ポート51側の壁部を形成している。
【0032】
第1通路壁404の先端部には、周囲よりも電磁コイル部42側に凹んだ凹み部404aが設けられている。第2通路壁55の先端部には、周囲よりも流出ポート51側に凹んだ凹み部55aが設けられている。凹み部404aと凹み部55aは、それぞれ半円状の凹み部であり、第1通路壁404と第2通路壁55とを組み合わせた状態で合致する位置に設けられて両者によって円形状の開口部をなす連通路6aを形成している。連通路6aは、区画壁を貫通して内部通路401aとチャンバ室6とを連通する通路である。連通路6aは、弁体43が内部通路401aを閉じる閉弁状態において蒸発燃料を内部通路401aからチャンバ室6に逃がす通路として機能する。流体が連通路6aを通じて内部通路401aからチャンバ室6に漏れ出ることにより、内部通路401aの圧力を低下させることができる。チャンバ室6は、パージ制御弁4において発生する脈動の低減効果を奏するチャンバ容積を提供している。
【0033】
図2図3に示すように、連通路6aは、弁座54や筒状部53内の内部通路53aを取り囲む筒状壁部に設けられている。チャンバ室6は、この筒状壁部を囲むように設けられた第1チャンバ室6bと、一対の対向壁部の両外側に設けられた第2チャンバ室6cと含んでいる。第1チャンバ室6bと第2チャンバ室6cとは連通している。連通路6aは、区画壁において弁体43よりも内部通路401aの上流端部から離れた位置に設けられている。連通路6aは、区画壁において弁体43に対して内部通路401aの上流端部とは反対側に設けられている。この構成によれば、流体が開弁状態においてチャンバ室6に漏れにくく、閉弁状態において弁体43周りの高まった圧力を下げるようにチャンバ室6に漏れ出る効果を奏することができる。閉弁状態において内部通路401aの流体は連通路6aを通じて第1チャンバ室6bに流出し、一対の対向壁部の外側に位置する第2チャンバ室6cまで拡散することができる。
【0034】
筒状壁部の径方向についての弁座54と第1筒状壁部404bとの間隔XBは、当該径方向についての第1筒状壁部404bと第1ハウジング40の流出側筒状部401との間隔XAよりも小さくなるように設定されている。この構成によれば、閉弁時に連通路6aを通じてチャンバ室6へ漏れ出た流体が流出側筒状部401に衝突して連通路6aを逆流することを抑制できる。これにより、チャンバ室6へ漏れ出た流体をチャンバ室6に広く拡散させる流れを形成して、脈動低減に貢献することができる。
【0035】
区画壁を貫通する連通路6aは、第1通路壁404と第2通路壁55のいずれか一方の先端部に形成された凹み部によって形成された開口部として構成してもよい。つまり、先端部の凹み部は、第1通路壁404と第2通路壁55のいずれか一方に設けられる構成でもよい。
【0036】
パージ制御弁4は、例えば、第1ハウジング40に埋め込まれたナットに螺合するボルトによって車両側の部材に固定されている。可動コア422は磁気を通す材質、例えば磁性材料で構成されている。筒状体である可動コア422は、開口端から内挿された状態のシャフト部材425およびスプリング424を取り囲んでいる。弁体43は、ゴム等の弾性変形可能な材質で形成されている。弁体43は、基部と弁部とで可動コア422の頭部を両側から挟むようにして可動コア422に装着されて可動コア422と一体になっている。
【0037】
固定コア423は、電磁力によってスプリング424の付勢力に抗して軸方向に移動する可動コア422を摺動可能に支持する。スプリング424は、固定コア423に固定されているシャフト部材425に軸方向の一端部が接触し可動コア422の頭部に軸方向の他端部が接触した状態で可動コア422の筒状部の内側に設けられている。したがって、スプリング424は、可動コア422を弁座54側へ移動させようとする付勢力を提供している。固定コア423は、シャフト部材425を固定するとともに、外嵌めされるボビン421に組み付けられている。固定コア423、シャフト部材425、可動コア422、弁体43は、軸心が同軸をなすように設置されている。シャフト部材425は、例えばポリブチレンテレフタラート、ガラス繊維を含有して強化されたポリブチレンテレフタラートによって形成されている。固定コア423、可動コア422は磁気を通す材質で構成されている。固定コア423は、例えば冷間圧造用炭素鋼によって形成されている。
【0038】
第1ハウジング40の内部には、内部通路401aの上流側においてフィルタを設けるように構成してもよい。
【0039】
図2に示すように、第1ハウジング40は、電磁コイル部42が設置されている一方端側の底部において外方に延びるコネクタ402を備えている。コネクタ402は、コイル部420に通電するためのターミナル402aを内蔵する。コネクタ402は、第1ハウジング40の内部から底部を貫通して外部に突出するターミナル402aを支持する樹脂成形部である。ターミナル402aはコイル部420と電気的に接続されている通電用端子である。コネクタ402には、電源部や電流制御装置からの電力を供給するための電源側コネクタが接続される。コネクタ402と電源側コネクタとが接続されてターミナル402aが電流制御装置等に電気的に接続されると、パージ制御弁4はコイル部420に通電する電流を制御できる。
【0040】
図4は、パージ制御弁4と従来のパージ制御弁について、弁体43の開閉状態と圧力変動との関係を示したグラフである。従来品はチャンバ室を備えていないパージ制御弁であり、閉弁時には脈動流が上流へ向けて逆流する流れが発生する。横軸には時間軸を設定している。縦軸には、通電状態および非通電状態を示す信号電圧値と、流体通路における圧力とを設定している。図4において一点鎖線は、電磁コイル部42に対する通電状態を示している。矩形状に突出した波形部分は、パージ制御弁において開状態であることを示し、信号電圧がゼロであるときは閉状態であることを示している。
【0041】
図4において、破線は従来のパージ制御弁における流体通路の圧力変動を示し、実線はパージ制御弁4における流体通路の圧力変動を示している。パージ制御弁4と従来のパージ制御弁の両方とも、圧力変動は開弁状態から閉弁したときに急激に大きくなり、時間の経過とともに減衰していくことを確認している。閉弁直後の圧力変動の大きさは、パージ制御弁4と従来のパージ制御弁とについて同程度であるが、パージ制御弁4との方がその後、大きく減衰することを確認している。したがって、パージ制御弁4によれば、従来のパージ制御弁に比べて、閉弁後の脈動が低減す効果を大きいと考えられる。
【0042】
次に、第1実施形態のパージ制御弁4がもたらす作用効果について説明する。パージ制御弁4は、弁体43を駆動する電磁コイル部42と、弁体43および電磁コイル部42を内蔵し、キャニスタ16側から流入した蒸発燃料が流下し弁体43によって開閉される内部通路401aを有するハウジングとを備える。ハウジングの内部には、内部通路401aの外にチャンバ室6が設けられている。ハウジングは、内部において内部通路401aを形成する壁であるとともに内部通路401aとチャンバ室6とを区画する区画壁を備える。パージ制御弁4は、区画壁を貫通して内部通路401aとチャンバ室6とを連通する連通路であって、蒸発燃料を内部通路401aからチャンバ室6に逃がす連通路6aを備える。
【0043】
パージ制御弁4によれば、内部通路401aを形成する区画壁を貫通する連通路6aを備えることにより、閉弁状態などにおいて内部通路401aの圧力が高まった場合に、内部通路401aに存在する蒸発燃料の一部をチャンバ室6に逃がすことができる。これにより、閉弁状態において上流側に伝搬する脈動流に対して、流体の一部を連通路6aを介してチャンバ室6へ拡散させることにより上流側への脈動を減衰することができる。連通路6aは、内部通路401aの外にあるチャンバ室6と内部通路401aとを区画する区画壁を貫通するため、内部通路401aを流れる流体に対して抵抗にはなりにくい通路である。さらにチャンバ室6に漏れ出た流体は圧力が低下した後、内部通路401aを逆流する流体流れに伴って、連通路6aを介して内部通路401aに戻るようになる。内部通路401aへの流体戻りは、上流側への脈動の減衰に寄与する。このようにパージ制御弁4によれば、流量低下を抑えつつ脈動の低減を図ることができる。
【0044】
連通路6aは、弁体43よりも内部通路401aの上流端部から離れた位置に設けられている。この構成によれば、閉弁したときに、弁体43よりも内部通路401aの上流端部に近い位置にある流体は連通路6aを通過しにくいが、連通路6aは開弁状態において内部通路401aを流下する流体の流れが乱れにくい位置にある。これにより、連通路6aは開弁状態における流体抵抗を抑えることができるので、脈動低減効果を奏するとともに流量低下を抑制することにも寄与する。
【0045】
区画壁は、内部通路401aの上流端部から弁座54に向けて延びる一対の対向壁部と、弁座54を取り囲むとともに一対の対向壁部に連結している筒状壁部とを備えて形成されている。この構成によれば、一対の対向壁部と筒状壁部とによって形成された内部通路壁の外側にチャンバ室6を設けることができる。これによれば、この内部通路壁を囲むようにチャンバ室6を形成することが可能にし、ハウジングの内部において大きな容積をもつチャンバ室6を確保することができ、高い脈動低減効果を有するパージ制御弁4を提供できる。
【0046】
連通路6aは筒状壁部を貫通する通路である。この構成によれば、閉弁したときに、筒状壁部の内側に存在する流体が連通路6aを通過しやすいため、弁体43の近傍に存在する流体が逆流するエネルギをチャンバ室6に逃がすことができる。これにより、閉弁状態において流体を逆流させるエネルギを低減し、逆流に伴う脈動低減に寄与する。
【0047】
ハウジングは、電磁コイル部42を内蔵する第1ハウジング40と、弁座54を有し第1ハウジング40に対して弁体43の軸方向に一体に組み付けられている第2ハウジング5とを備える。区画壁は、第1ハウジング40に設けられた第1通路壁404と、第2ハウジング5に設けられて第1通路壁404に対して軸方向に組み付けられている第2通路壁55とによって形成されている。この構成によれば、第1通路壁404を第1ハウジング40において軸方向に延びるように形成し、第2通路壁55を第2ハウジング5において軸方向に延びるように形成することにより、区画壁を形成でき、製造コストを抑えたパージ制御弁4を提供できる。
【0048】
区画壁は、第1通路壁404と、第1通路壁404に対して軸方向に組み付けられている第2通路壁55とによって形成されている。連通路6aは、第1通路壁404と第2通路壁55の少なくとも一方の先端部に形成された凹み部によって形成された開口部であることが好ましい。この構成によれば、軸方向に組み付けられた第1通路壁404と第2通路壁55との合わせ目の一部に、凹み部によって開口する連通路6aを形成することができる。これにより、第1ハウジング40と第2ハウジング5が樹脂成形品である場合に、金型内部でスライドする部分を用いなくても、区画壁を貫通するような連通路6aを形成することができ、パージ制御弁4の製造コストを抑えることにも寄与する。
【0049】
チャンバ室6の容積は内部通路401aの容積よりも大きく設定されていることが好ましい。この構成によれば、閉弁状態において上流側に伝搬する脈動流の一部が連通路6aを介してチャンバ室6へ拡散する場合に、チャンバ室6への流体の拡散を促進することができる。これにより、上流側への脈動を減衰させる効果を高めることができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態について図5および図6を参照して説明する。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0051】
第2実施形態は、第1実施形態に対して、連通路106aの位置が相違している。図5図6に示すように、パージ制御弁104は、第1ハウジング140と、第1ハウジング140と一体に結合された第2ハウジング105とを少なくとも備えている。第1通路壁404において対向壁部をなす範囲の先端部には、周囲よりも電磁コイル部42側に凹んだ凹み部404aが設けられている。第2通路壁55において対向壁部をなす範囲の先端部には、周囲よりも流出ポート51側に凹んだ凹み部55aが設けられている。凹み部404aと凹み部55aは、それぞれ半円状の凹み部であり、第1通路壁404と第2通路壁55とを組み合わせた状態で合致する位置に設けられて両者によって円形状の開口部をなす連通路106aを形成している。連通路106aは、区画壁を貫通して内部通路401aとチャンバ室6とを連通する通路である。連通路106aは、第1実施形態の連通路6aと同様に機能をもつ。閉弁状態において内部通路401aの流体は連通路106aを通じて第2チャンバ室6cに流出し、筒状壁部の外側に位置する第1チャンバ室6bまで拡散することができる。流体が連通路106aを通じて内部通路401aからチャンバ室6に漏れ出ることにより、内部通路401aの圧力を低下させることができる。
【0052】
図5図6に示すように、連通路106aは、一体の対向壁部のいずれか一方または両方に設けられている。連通路106aは、区画壁において弁体43よりも内部通路401aの上流端部寄りとなる位置に設けられている。連通路106aは、区画壁において内部通路401aの上流端部近傍に設けられている。この構成によれば、流体が開弁状態において連通路106aを通じてチャンバ室6に漏れにくく、閉弁状態においてパージ制御弁4から流出する逆流をチャンバ室6に逃がして逆流のエネルギを小さくする効果を奏する。
【0053】
区画壁を貫通する連通路106aは、第1通路壁404と第2通路壁55のいずれか一方の先端部に形成された凹み部によって形成された開口部として構成してもよい。つまり、連通路106aを構成する先端部の凹み部は、第1通路壁404と第2通路壁55のいずれか一方に設けられる構成でもよい。
【0054】
第2実施形態によれば、連通路106aは、弁体43よりも内部通路401aの上流端部寄りに位置していることが好ましい。この構成によれば、閉弁したときに、弁体43よりも内部通路401aの上流端部に近い位置に存在する流体が連通路106aを通過しやすい。この位置にある連通路106aによれば、弁体43の近傍よりもパージ制御弁4から外部に向けて大きく成長した脈動流のエネルギをチャンバ室6に放出することができる。
【0055】
連通路106aは、一対の対向壁部のうち少なくとも一方を貫通する通路である。対向壁部の少なくとも一方を貫通する連通路106aによれば、閉弁したときに、弁体43よりも内部通路401aの上流端部に近い位置に存在する流体をチャンバ室6へ逃がすことができる。さらに、連通路106aは流体が沿うように流下する対向壁部を貫通するため、開弁状態における流体抵抗を抑えることができるので、脈動低減効果を奏するとともに流量低下を抑制することにも寄与する。
【0056】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0057】
明細書に開示の目的を達成可能なパージ制御弁は、前述の実施形態において開示した蒸発燃料処理システムに限定して適用される流量調整装置ではない。このパージ制御弁は、例えば、パージ制御弁を通過した蒸発燃料を過給機よりも上流の通路に導入することができ、過給時パージを行えるシステムに適用することもできる。
【0058】
明細書に開示の目的を達成可能なパージ制御弁は、流入ポートを有する第1ハウジングを備える構成だけでなく、別部品である流入ポートと第1ハウジングとが一体に結合された構成の装置も含んでいる。
【0059】
明細書に開示の目的を達成可能なパージ制御弁は、前述の実施形態において示した例に限定されるものではない。また、パージ制御弁に連結される部品についても、前述の実施形態において示した例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
4,104…パージ制御弁、 5,105…第2ハウジング(ハウジング)
6…チャンバ室、 6a,106a…連通路
16…キャニスタ、 22…エンジン
40,140…第1ハウジング(ハウジング)、 42…電磁コイル部
43…弁体、 55…第2通路壁(区画壁)
401a…内部通路、 404…第1通路壁(区画壁)
図1
図2
図3
図4
図5
図6