(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】試料搬送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20220117BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01N1/00 101N
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2018180553
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】小森 優輝
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-268612(JP,A)
【文献】特開平10-62432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0190056(US,A1)
【文献】特開平9-208049(JP,A)
【文献】特開平2-160450(JP,A)
【文献】特開平7-191041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧を供給する負圧供給部と、
試料容器を保持する試料容器保持部と、
前記試料容器保持部に交換可能に設けられ、供給された負圧により試料容器を吸着する容器吸着部材と、
前記容器吸着部材の大きさに基づいて決定される所定の圧力値と前記容器吸着部材における負圧の大きさとに基づいて、前記容器吸着部材の状態を判定する制御を行う制御部と、を備える、試料搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、負圧の大きさに基づいて、前記容器吸着部材が劣化しているか、または、試料容器に対する前記容器吸着部材の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の試料搬送装置。
【請求項3】
前記制御部の判定結果を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、時系列の負圧の検出結果に基づいて、前記容器吸着部材が劣化しているか、または、試料容器の蓋部に対する前記容器吸着部材の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の試料搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記容器吸着部材に供給された負圧の大きさと、第1閾値と、前記第1閾値よりも小さい第2閾値とに基づいて、負圧が前記第1閾値よりも大きい第1負圧状態から、負圧が前記第1閾値以下でかつ前記第2閾値よりも大きい第2負圧状態を経て、負圧が前記第2閾値以下の第3負圧状態へと時系列的に変化したことに基づいて、前記容器吸着部材が劣化したと判定する制御を行うように構成されている、請求項3に記載の試料搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記容器吸着部材に供給された負圧の大きさと、第1閾値と、前記第1閾値よりも小さい第2閾値とに基づいて、負圧が前記第1閾値よりも大きい第1負圧状態とならずに、負圧が前記第1閾値以下でかつ前記第2閾値よりも大きい第2負圧状態、または、負圧が前記第2閾値以下の第3負圧状態となったことに基づいて、前記容器吸着部材の形状の不一致であると判定する制御を行うように構成されている、請求項3に記載の試料搬送装置。
【請求項6】
前記容器吸着部材の状態が、前記第1負圧状態と、前記第2負圧状態と、前記第3負圧状態とのうち、いずれの状態であるかを報知する報知部をさらに備える、請求項4または5に記載の試料搬送装置。
【請求項7】
前記試料容器保持部に供給される負圧の大きさに基づいて、前記試料容器保持部が試料容器を保持しているか否かを判定する保持判定部をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の試料搬送装置。
【請求項8】
試料容器から試料を吸引して所定の位置において吐出する試料吸引吐出部と、
水平方向において、前記試料吸引吐出部とともに前記試料容器保持部を一体的に移動させる水平方向移動機構と、
垂直方向において、前記試料容器保持部と、前記試料吸引吐出部とを、それぞれ独立して移動させる垂直方向移動機構と、をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の試料搬送装置。
【請求項9】
クロマトグラフ装置による分析を行う試料の前処理を行う前処理部をさらに備え、
前記水平方向移動機構および前記垂直方向移動機構は、前記試料容器保持部を移動させることにより、試料容器を試料容器配置部から前記前処理部まで移動させて、試料の前処理を行うように構成されており、
前記試料吸引吐出部は、前処理後の試料を吸引して前記クロマトグラフ装置の試料注入口に吐出するように構成されている、請求項8に記載の試料搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料搬送装置に関し、特に、試料が入った試料容器を搬送する試料搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料が入った試料容器を搬送する試料搬送装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されている試料搬送装置は、試料容器の蓋部に設けられた被係合部と、棒状支持体に設けられた係合部とが係合することにより、試料容器を保持し、試料容器を搬送する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されている構成は、係合部と被係合部との係合によって試料容器を保持しているため、被係合部が設けられた専用の試料容器を使用する必要があり、被係合部が設けられていない一般的な試料容器を使用することができないという不都合がある。そこで、上記特許文献1には開示されていないが、上記のような不都合を解決するために、容器吸着部材が設けられた試料容器保持部によって試料容器を吸着することにより、試料容器を保持する構成が考えられる。この構成の場合、容器吸着部材を用いて試料容器を吸着するため、専用の試料容器を使用することなく試料容器を保持することができる。
【0006】
しかしながら、容器吸着部材が設けられた試料容器保持部を用いた場合でも、容器吸着部材が劣化した場合など、容器吸着部材の状態によっては、試料容器を正常に保持できない場合があるという不都合がある。この場合、容器吸着部材の状態に応じて容器吸着部材を交換することにより、試料容器を正常に保持できない状態となることを抑制することが可能である。しかし、試料容器を正常に保持できなくなってからでなければ、容器吸着部材の交換時期を把握できないという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、試料容器を吸着して保持する場合に、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できない状態となる前に、容器吸着部材の交換時期を把握することが可能な試料搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における試料搬送装置は、負圧を供給する負圧供給部と、試料容器を保持する試料容器保持部と、試料容器保持部に交換可能に設けられ、供給された負圧により試料容器を吸着する容器吸着部材と、容器吸着部材の大きさに基づいて決定される所定の圧力値と容器吸着部材における負圧の大きさとに基づいて、容器吸着部材の状態を判定する制御を行う制御部と、を備える。
【0009】
この発明の一の局面における試料搬送装置は、上記のように、供給された負圧により試料容器を吸着する容器吸着部材と、容器吸着部材の大きさに基づいて決定される所定の圧力値と容器吸着部材における負圧の大きさとに基づいて、容器吸着部材の状態を判定する制御を行う制御部とを備える。これにより、容器吸着部材の状態によって容器吸着部材における負圧の大きさが変化するため、容器吸着部材が試料容器を吸着できるか否かを判定することが可能となり、容器吸着部材の交換が必要か否かを判定することができる。その結果、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できない状態となる前に、容器吸着部材の交換時期を把握することができる。
【0010】
上記一の局面における試料搬送装置において、好ましくは、制御部は、負圧の大きさに基づいて、容器吸着部材が劣化しているか、または、試料容器に対する容器吸着部材の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できなくなった原因が、容器吸着部材の劣化によるものか、試料容器に対する容器吸着部材の形状が一致していないことによるものかを把握することができる。その結果、容器吸着部材を交換する際に、交換前の容器吸着部材と大きさなどが同一で、劣化していない容器吸着部材に交換すればよいのか、交換前の容器吸着部材とは大きさなどが異なる容器吸着部材に交換しなければならないのかを判定することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、制御部の判定結果を記憶する記憶部をさらに備え、制御部は、時系列の負圧の検出結果に基づいて、容器吸着部材が劣化しているか、または、試料容器の蓋部に対する容器吸着部材の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、容器吸着部材における負圧の大きさが徐々に(経時的に)小さくなったのか、容器吸着部材の交換後などに、容器吸着部材における負圧の大きさが突然小さくなったのかによって、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できなくなった原因を精度よく判定することができる。その結果、ある時点における負圧の検出結果のみに基づいて容器吸着部材の状態を判定する構成と比較して、試料容器保持部の保持力が正常値から低下した原因をより正確に判定することが可能となり、どのような容器吸着部材に交換すればよいのかを、正確に判定することができる。
【0012】
上記時系列の負圧の検出結果に基づいて容器吸着部材の判定を行う構成において、好ましくは、制御部は、容器吸着部材に供給された負圧の大きさと、第1閾値と、第1閾値よりも小さい第2閾値とに基づいて、負圧が第1閾値よりも大きい第1負圧状態から、負圧が第1閾値以下でかつ第2閾値よりも大きい第2負圧状態を経て、負圧が第2閾値以下の第3負圧状態へと時系列的に変化したことに基づいて、容器吸着部材が劣化したと判定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、容器吸着部材における圧力値が徐々に低下していくことにより、容器吸着部材が劣化していると判定することが可能となり、容器吸着部材の劣化状況を詳細に把握することができる。その結果、容器吸着部材の劣化状況を詳細に把握することが可能となるので、容器吸着部材の適切な交換時期を把握することができる。
【0013】
上記時系列の負圧の検出結果に基づいて容器吸着部材の判定を行う構成において、好ましくは、制御部は、容器吸着部材に供給された負圧の大きさと、第1閾値と、第1閾値よりも小さい第2閾値とに基づいて、負圧が第1閾値よりも大きい第1負圧状態とならずに、負圧が第1閾値以下でかつ第2閾値よりも大きい第2負圧状態、または、負圧が第2閾値以下の第3負圧状態となったことに基づいて、容器吸着部材の形状の不一致であると判定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、容器吸着部材の負圧状態が、第1負圧状態を経ずに第2負圧状態または第3負圧状態となった場合に、試料容器に対する容器吸着部材の形状が一致していないと判定することが可能となり、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できない原因が試料容器に対する容器吸着部材の形状の不一致か否かを判定することができる。その結果、容器吸着部材が劣化している場合とは異なり、容器吸着部材の負圧状態に応じて、早急な交換が必要か否かをユーザが確認することができる。
【0014】
上記容器吸着部材の負圧状態に基づいて容器吸着部材の劣化または容器吸着部材の形状の不一致を判定する構成において、好ましくは、容器吸着部材の状態が、第1負圧状態と、第2負圧状態と、第3負圧状態とのうち、いずれの状態であるかを報知する報知部をさらに備える。このように構成すれば、ユーザは、報知部の報知内容に基づいて、容器吸着部材の状態を把握することができる。その結果、たとえば、試料搬送装置を設置している環境に関係なく、容器吸着部材の使用期間(使用時間)または使用回数に基づいて容器吸着部材を交換する場合と比較して、容器吸着部材の状態に基づいて交換時期を判断することが可能となるので、試料搬送装置を設置している環境に適したタイミングで容器吸着部材を交換することができる。
【0015】
上記一の局面における試料搬送装置において、好ましくは、試料容器保持部に供給される負圧の大きさに基づいて、試料容器保持部が試料容器を保持しているか否かを判定する保持判定部をさらに備える。このように構成すれば、試料容器保持部に供給される負圧の大きさに基づいて、試料容器保持部が試料容器を保持しているか否かを把握することができる。その結果、たとえば、磁石などを用いて試料容器を保持する場合と比較して、試料容器を保持できたか否かをより正確に把握することができる。また、試料容器保持部が試料容器の保持に失敗した回数に基づいて、試料容器に対する試料容器保持部の大きさなどが適切であるか否かを把握することができる。
【0016】
上記一の局面における試料搬送装置において、好ましくは、試料容器から試料を吸引して所定の位置において吐出する試料吸引吐出部と、水平方向において、試料吸引吐出部とともに試料容器保持部を一体的に移動させる水平方向移動機構と、垂直方向において、試料容器保持部と、試料吸引吐出部とを、それぞれ独立して移動させる垂直方向移動機構と、をさらに備える。このように構成すれば、試料吸引吐出部と試料容器保持部とを一体的に移動させることが可能となり、装置構成の簡素化および装置の大型化の抑制を図ることができる。また、試料容器保持部と試料吸引吐出部とを垂直方向に独立して移動させることにより、試料容器保持部によって試料容器を保持する際に、試料吸引吐出部が他の試料容器と当接することを抑制することができる。したがって、垂直方向における試料容器保持部の移動と試料吸引吐出部の移動とを一体的に行う構成と異なり、試料容器保持部と試料吸引吐出部とが相互に干渉することを考慮する必要がなくなるので、装置構成が複雑化することを抑制することができる。これらの結果、容器吸着部材の状態を把握することにより、容器吸着部材の適切な交換時期を把握することが可能な試料搬送装置において、装置が大型化することおよび装置構成が複雑化することを抑制することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、クロマトグラフ装置による分析を行う試料の前処理を行う前処理部をさらに備え、水平方向移動機構および垂直方向移動機構は、試料容器保持部を移動させることにより、試料容器を試料容器配置部から前処理部まで移動させて、試料の前処理を行うように構成されており、試料吸引吐出部は、前処理後の試料を吸引してクロマトグラフ装置の試料注入口に吐出するように構成されている。このように構成すれば、容器吸着部材の交換時期を把握することが可能となるので、たとえば、試料容器を前処理部に搬送して前処理を行い、その後クロマトグラフ装置によって分析を行う場合、試料の前処理を確実に行うことができる。その結果、前処理を行った試料をクロマトグラフ装置によって分析する場合に、本発明を適用することは好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、試料容器を吸着して保持する場合に、試料容器保持部が試料容器を正常に保持できない状態となる前に、容器吸着部材の交換時期を把握することが可能な試料搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態による試料搬送装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図2】第1実施形態による試料搬送装置を上面から見た模式図である。
【
図3】第1実施形態による試料搬送装置の側面から見た模式図である。
【
図4】第1実施形態による試料吸引吐出部を垂直方向に移動させる機構の図である。
【
図5】第1実施形態による試料搬送装置が搬送する試料容器の模式図である。
【
図6】
図5における500-500線に沿った断面図である。
【
図7】第1実施形態による試料搬送装置が搬送する試料容器の蓋部を上面から見た模式図である。
【
図8】第1実施形態による容器吸着部材と試料容器とが当接した状態の模式図である。
【
図9】第1実施形態による容器吸着部材の大きさと試料容器の蓋部およびニードル貫通部の大きさとを説明するための模式図(A)および模式図(B)である。
【
図10】第1実施形態による試料容器保持部が試料容器を搬送する際の処理を説明するための模式図(A)~模式図(H)である。
【
図11】第1実施形態による保持判定部が試料容器を保持しているか否かを判定する際の判定基準を説明するための模式図である。
【
図12】第1実施形態による保持判定部が試料容器を保持できたか否かを判定する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図13】第1実施形態による制御部が容器吸着部材の状態を判定する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図14】第2実施形態による試料搬送装置の全体構成を示したブロック図である。
【
図15】第2実施形態による保持判定部が試料容器を所定の位置まで搬送できたか否かを判定する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図16】第1変形例による試料容器保持部および試料吸引吐出部の配置を示す側面図である。
【
図17】第1変形例による容器吸着部材およびニードルの位置関係を示す模式図(A)および容器吸着部材の構造を説明するための模式図(B)である。
【
図18】第2変形例による負圧供給部の模式図である。
【
図19】第3変形例による試料搬送装置の全体構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態による試料搬送装置100の構成について説明する。
【0022】
(試料搬送装置の構成)
まず、
図1を参照して、第1実施形態による試料搬送装置100の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、試料搬送装置100は、負圧供給部1と、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3と、水平方向移動機構4と、垂直方向移動機構5と、制御部6と、負圧測定部9と、記憶部14と、報知部16と、前処理部60とを備える。
【0024】
負圧供給部1は、制御部6の制御の下、試料容器保持部2に負圧を供給するように構成されている。具体的には、負圧供給部1は、空気を吸引することにより、試料容器保持部2に負圧を供給するように構成されている。負圧供給部1は、たとえば、真空ポンプを含む。
【0025】
試料容器保持部2は、管状部材7(
図2参照)によって負圧供給部1と接続されており、負圧供給部1から負圧が供給されるように構成されている。試料容器保持部2は、供給された負圧によって、試料容器10(
図2参照)を保持するように構成されている。具体的には、試料容器保持部2は、試料容器10に当接した状態で供給された負圧により、試料容器10を吸着することによって試料容器10を保持するように構成されている。試料容器保持部2が試料容器10を保持する構成の詳細については、後述する。
【0026】
試料吸引吐出部3は、試料容器10から試料を吸引して所定の位置において吐出するように構成されている。試料吸引吐出部3は、試料を吸引および吐出するニードル30を有している。ニードル30は、たとえば、中空構造を有した、吸引管である。また、試料吸引吐出部3は、たとえば、ニードル30に接続されたシリンジなどを含む。
【0027】
水平方向移動機構4は、制御部6の制御の下、水平方向において、試料吸引吐出部3とともに試料容器保持部2を一体的に移動させるように構成されている。水平方向移動機構4の構成の詳細については、後述する。
【0028】
垂直方向移動機構5は、制御部6の制御の下、垂直方向において、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3とを、それぞれ独立して移動させるように構成されている。垂直方向移動機構5の構成の詳細については、後述する。
【0029】
制御部6は、負圧供給部1を制御することにより、試料容器保持部2に負圧を供給するように構成されている。また、制御部6は、水平方向移動機構4を制御することにより、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3を水平方向において一体的に移動させるように構成されている。また、制御部6は、垂直方向移動機構5を制御することにより、垂直方向において、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3とを、それぞれ独立して移動させるように構成されている。また、制御部6は、後述する容器吸着部材20の状態を判定する制御を行うように構成されている。制御部6は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。制御部6が容器吸着部材20の状態を判定する制御の詳細については後述する。
【0030】
また、制御部6は、保持判定部8を含む。保持判定部8は、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを判定するように構成されている。なお、第1実施形態では、制御部6が記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、保持判定部8として機能するように構成されている。保持判定部8による試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かの判定を行う詳細な構成については後述する。
【0031】
負圧測定部9は、負圧供給部1と試料容器保持部2とを接続する管状部材7に設けられており、試料容器保持部2における負圧を測定するように構成されている。負圧供給部1は、たとえば、圧力センサを含む。
【0032】
記憶部14は、制御部6が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部14は、制御部6が容器吸着部材20の状態を判定する制御を行う際に用いる第1閾値Th1(
図11参照)および第2閾値Th2(
図11参照)を記憶している。なお、第2閾値Th2は、保持判定部8が試料容器10を保持しているか否かを判定する際にも用いられる。また、記憶部14は、制御部6の判定結果21を記憶するように構成されている。記憶部14は、たとえば、不揮発性のメモリ、またはHDD(Hard Disk Drive)などを含む。
【0033】
報知部16は、保持判定部8の判定結果21を報知するように構成されている。また、報知部16は、後述する容器吸着部材20の負圧状態を報知するように構成されている。報知部16は、保持判定部8の判定結果21および容器吸着部材20の負圧状態を報知することできればどのような構成でもよい。第1実施形態では、報知部16は、たとえば、負圧状態に応じて異なる色を発する光源を含む。報知部16が保持判定部8の判定結果21および容器吸着部材20の負圧状態を報知する詳細な構成については、後述する。
【0034】
前処理部60は、クロマトグラフ装置CEによる分析を行う試料の前処理を行うように構成されている。前処理部60は、前処理として、たとえば、試料に対する加温処理を行うように構成されている。前処理部60は、たとえば、試料加温装置を含む。なお、前処理部60は、試料撹拌装置を含み、前処理として、試料の撹拌処理を行うように構成されていてもよい。
【0035】
(水平方向移動機構)
次に、
図2を参照して、第1実施形態における水平方向移動機構4の構成について説明する。
【0036】
図2に示すように、水平方向移動機構4は、第1方向移動機構4aと、第2方向移動機構4bと、を含む。なお、第1実施形態では、第1方向をX方向とする。X方向のうち、一方をX1方向とし、他方をX2方向とする。
図2に示す例では、第2方向移動機構4bにおいて、試料容器保持部2が設けられている側の方向をX1方向とする。また、第2方向移動機構4bにおいて、試料吸引吐出部3が設けられている側の方向をX2方向とする。また、第1実施形態では、第2方向をY方向とする。Y方向のうち、一方をY1方向とし、他方をY2方向とする。
図2に示す例では、第2方向移動機構4bにおける第1方向移動機構4a側の方向をY1方向とし、逆向きの方向をY2方向とする。X方向とY方向とは、水平面内で互いに直交する方向である。
【0037】
第1方向移動機構4aは、第2方向移動機構4bをX方向に移動させるように構成されている。具体的には、第1方向移動機構4aは、第2方向移動機構4bの一端側(Y1側)を保持している。第1方向移動機構4aは、第1方向移動機構4a上において第2方向移動機構4bを移動させることにより、第2方向移動機構4bをX方向に移動させるように構成されている。第1方向移動機構4aは、たとえば、ボールねじ機構、または、ラックアンドピニオン機構などの直動機構を含む。
【0038】
第2方向移動機構4bは、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3をY方向に移動するように構成されている。具体的には、第2方向移動機構4bには、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3が設けられており、第2方向移動機構4bは、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3をY方向に移動させるように構成されている。第2方向移動機構4bは、たとえば、ボールねじ機構、または、ラックアンドピニオン機構などの直動機構を含む。
【0039】
図2に示す例では、試料容器保持部2は、第2方向移動機構4bの第1試料容器配置部61が配置されている側(X1方向側)に設けられている。また、試料吸引吐出部3は、第2方向移動機構4bのクロマトグラフ装置CEが配置されている側(X2方向側)に設けられている。すなわち、第1実施形態では、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3とは、水平方向において互いに異なる位置に配置されている。なお、第1試料容器配置部61は、特許請求の範囲の「試料容器配置部」の一例である。
【0040】
図2に示す例では、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3は、第2方向移動機構4bを介して、第1方向移動機構4aに設けられている。したがって、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3は、第2方向移動機構4bによって、Y方向に一体的に移動されるとともに、第1方向移動機構4aによって、X方向に一体的に移動される。このように、第1実施形態では、水平方向移動機構4は、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3を、XY平面内において移動可能に構成されている。水平方向移動機構4は、試料容器保持部2を、少なくとも、第2試料容器配置部62(
図3参照)の位置から前処理部60の位置まで、移動可能に構成されている。また、水平方向移動機構4は、試料吸引吐出部3を、少なくとも、第1試料容器配置部61の位置から、クロマトグラフ装置CEの試料注入口DPの位置まで移動可能に構成されている。
【0041】
(垂直方向移動機構)
次に、
図3および
図4を参照して、第1実施形態による垂直方向移動機構5の構成について説明する。なお、第1実施形態では、垂直方向移動機構5によって試料容器保持部2および試料吸引吐出部3が移動する方向をZ方向とする。Z方向のうち、垂直方向移動機構5における水平方向移動機構4側の方向をZ1方向とする。また、Z1方向と逆向きの方向をZ2方向とする。
【0042】
図3に示すように、垂直方向移動機構5は、第1垂直方向移動機構5aと、第2垂直方向移動機構5bとを含む。第1垂直方向移動機構5aは、試料容器保持部2を垂直方向に移動させるように構成されている。第2垂直方向移動機構5bは、試料吸引吐出部3を垂直方向に移動させるように構成されている。したがって、垂直方向移動機構5は、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを垂直方向において独立して移動可能に構成されている。
【0043】
第1垂直方向移動機構5aは、試料容器保持部設置部50と駆動部51とを含む。一例として、
図3では、試料容器保持部設置部50の一端側(Z2方向側)には試料容器保持部2が設けられており、他端側(Z1方向側)にはラック(溝)が形成されている。第1垂直方向移動機構5aは、駆動部51によってラックに係合したピニオンを回動させることにより、試料容器保持部設置部50を垂直方向に移動するように構成されている。第1垂直方向移動機構5aは、いわゆるラックアンドピニオン機構である。
【0044】
図4は、第2垂直方向移動機構5bをY方向から見た模式図である。
図4に示すように、第2垂直方向移動機構5bは、支持部52と、支持部移動機構53と、プランジャー移動機構54と、を含む。
【0045】
支持部52は、支持部移動機構53に設けられており、試料吸引吐出部3を把持するように構成されている。
【0046】
支持部移動機構53は、支持部52を垂直方向(Z方向)に移動させるように構成されている。支持部移動機構53は、第1モータ53aと、第1プーリー53bと、第2プーリー53cと、第1プーリー53bおよび第2プーリー53cに設けられた第1ベルト53dとを含む。第1ベルト53dには支持部52が設けられており、第1モータ53aの回動によって第1ベルト53dが移動することにより、支持部52を垂直方向に移動させる。すなわち、支持部移動機構53は、第1モータ53aの回動によって支持部52を垂直方向に移動させることにより、試料吸引吐出部3を垂直方向に移動させるように構成されている。支持部移動機構53は、いわゆるベルトアンドプーリー機構である。
【0047】
(試料吸引吐出部が試料を吸引および吐出する構成)
試料吸引吐出部3には、ニードル30と、プランジャー31とが設けられている。プランジャー31は、試料吸引吐出部3内に嵌合しており、プランジャー移動機構54によって、試料吸引吐出部3に設けられたプランジャー31を上下方向に移動させられることより試料を吸引および吐出するように構成されている。プランジャー移動機構54は、第2モータ54aと、第3プーリー54bと、第4プーリー54cと、第3プーリー54bおよび第4プーリー54cに設けられた第2ベルト54dとを含む。第2ベルト54dには、プランジャー把持部55が設けられており、第2モータ54aの回動によって第2ベルト54dが移動することにより、プランジャー把持部55を垂直方向に移動させることにより、プランジャー31を垂直方向に移動させる。プランジャー移動機構54は、いわゆるベルトアンドプーリー機構である。
【0048】
プランジャー移動機構54によってプランジャー31を上方向に移動させた場合、ニードル30を介して試料吸引吐出部3に試料が吸引される。また、試料吸引後に、プランジャー移動機構54によってプランジャー31を下方向に移動させた場合、試料吸引吐出部3内の試料がニードル30を介して吐出される。
【0049】
また、プランジャー移動機構54は、支持部52に設けられており、支持部52と一体的に移動する。すなわち、支持部移動機構53がニードル30の上下位置を制御するように構成されており、プランジャー移動機構54が試料の吸引および吐出を制御するように構成されている。
【0050】
第1実施形態では、試料吸引吐出部3は、クロマトグラフ装置CEによって分析を行う試料を、試料容器10から吸引してクロマトグラフ装置CEの試料注入口DPに吐出するように構成されている。具体的には、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって試料容器保持部2を水平方向および垂直方向に移動させることにより、試料容器10を第1試料容器配置部61から前処理部60まで移動させて試料の前処理を行う。また、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって、前処理後の試料容器10を第2試料容器配置部62(
図3参照)まで移動させる。また、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって試料吸引吐出部3を試料容器10が配置されている第2試料容器配置部62まで移動させ、前処理後の試料容器10内の試料を吸引し、クロマトグラフ装置CEの試料注入口DPに吐出する。
【0051】
(試料容器の構成)
次に、
図5~
図7を参照して、試料容器10の構造について説明する。
【0052】
図5に示すように、試料容器10は、容器部11と蓋部12とにより構成されている。容器部11には、分析対象の試料が収容される。容器部11は、一端側に開口部を有しており、他端側が塞がれた管状(筒状)形状を有している。容器部11は、たとえば、樹脂または、ガラスなどにより構成されている。蓋部12は、容器部11の開口部を塞ぐことにより、容器部11を密閉する。試料容器10は、蓋部12を開けることなく、ニードル30によって内部の試料を吸引することが可能なように構成されている。
【0053】
具体的には、蓋部12には、試料吸引吐出部3が試料を吸引する際にニードル30が刺されるニードル貫通部13が設けられている。より具体的には、蓋部12には、貫通孔12aが設けられており、ニードル貫通部13は、貫通孔12aを塞ぐように設けられている。試料容器10に収容された試料を吸引する場合には、ニードル30がニードル貫通部13を穿刺して通過することにより、ニードル30が容器部11の試料に到達する。ニードル貫通部13は、試料吸引吐出部3によって試料が吸引された後においても、試料容器10内部を密閉可能な素材によって構成されている。ニードル貫通部13は、たとえば、ゴムなどの柔軟素材によって形成されている。
【0054】
ニードル貫通部13は、貫通孔12a内であれば、どの高さに設けられていてもよい。第1実施形態では、
図6に示すように、ニードル貫通部13は、貫通孔12aのうち、蓋部12の上面部12bからわずかに凹んだ位置に設けられている。
【0055】
また、ニードル貫通部13は、蓋部12のどの位置に設けられていてもよい。第1実施形態では、
図7に示すように、ニードル貫通部13は、たとえば、蓋部12の内周側に設けられている。
【0056】
図8は、試料容器保持部2が試料容器10を保持する際に容器吸着部材20と試料容器10とが当接した状態を示す模式図である。
【0057】
図8に示すように、試料容器保持部2は、試料容器10の蓋部12に当接する容器吸着部材20を有している。容器吸着部材20は、試料容器保持部2に交換可能に設けられている。また、容器吸着部材20は、蓋部12の上面部12bと、容器吸着部材20の下面(当接面20a(
図9参照))とを密着させて、容器吸着部材20の内部に、略密閉した領域を形成して、供給された負圧により、試料容器10を吸着するように構成されている。また、容器吸着部材20は、円筒形状を有している。容器吸着部材20は、たとえば、真空パッドを含む。
【0058】
第1実施形態では、試料容器保持部2によって試料容器10を保持する際に、容器吸着部材20を、蓋部12の上面部12bに当接させるように構成されている。具体的には、容器吸着部材20は、蓋部12に設けられた試料吸引吐出部3が試料を吸引する際にニードル30が刺されるニードル貫通部13に当接せずに蓋部12に当接するように構成されている。
【0059】
図9は、容器吸着部材20の当接面20aの模式図および蓋部12を上面から見た模式図である。
【0060】
第1実施形態では、容器吸着部材20は、蓋部12の内周側に設けられたニードル貫通部13よりも外周側の蓋部12に当接するように構成されている。具体的には、
図9に示すように、容器吸着部材20の外周20bは、蓋部12の直径d1よりも小さい直径d2を有している。容器吸着部材20の内周20cは、ニードル貫通部13の直径d3よりも大きい直径d4を有している。したがって、容器吸着部材20は、蓋部12の内周側に設けられたニードル貫通部13よりも外周側において、ニードル貫通部13に当接することなく蓋部12に当接する。また、容器吸着部材20の当接面20aの面積は、蓋部12の上面部12bのうち、ニードル貫通部13を除いた面積よりも小さい。
【0061】
(試料容器の搬送)
図10は、試料搬送装置100が試料容器10を搬送する際の処理の流れを示す模式図である。
【0062】
図10(A)に示すように、制御部6は、水平方向移動機構4を制御して、試料容器10が配置されている第1試料容器配置部61の位置まで試料容器保持部2を移動させる。その後、
図10(B)に示すように、制御部6は、垂直方向移動機構5を制御して、容器吸着部材20が試料容器10の蓋部12の上面部12bと当接する高さまで試料容器保持部2を垂直方向に移動させる。
図10(C)に示すように、容器吸着部材20と蓋部12の上面部12bとが当接した状態において、制御部6は、負圧供給部1を制御して、試料容器保持部2に負圧を供給する。負圧が供給されることにより、試料容器保持部2は、
図10(D)に示すように、試料容器10を保持する。
【0063】
試料容器保持部2が試料容器10を保持した後、
図10(E)に示すように、制御部6は、水平方向移動機構4を制御して、試料容器保持部2を前処理部60の位置まで移動させる。
図10(F)に示すように、前処理部60の位置に試料容器10を移動させた後、制御部6は、垂直方向移動機構5を制御して、前処理部60に配置する高さまで試料容器10を移動させる。
図10(G)に示すように、制御部6は、負圧供給部1を制御して、負圧供給部1から試料容器保持部2への負圧の供給を停止する。
図10(H)に示すように、制御部6は、垂直方向移動機構5を制御して、試料容器保持部2を垂直方向に移動させることにより、試料容器10の移動を完了する。なお、前処理部60の位置から第2試料容器配置部62の位置まで試料容器10を移動させる構成も、第1試料容器配置部61の位置から前処理部60の位置まで試料容器10を移動させる構成と同様である。
【0064】
(保持判定部による判定)
図11は、負圧測定部9が測定する試料容器保持部2における負圧の変化を示すグラフG1である。グラフG1の横軸は時間であり、縦軸は圧力である。以下の説明において、負圧は、大気圧APからの負(マイナス)の圧力差のことであり、負圧の大きさは、負圧測定部9の測定圧力値と、大気圧APとの差分値(絶対値)である。
【0065】
負圧供給部1によって負圧が供給されていない場合、試料容器保持部2に係る圧力は、大気圧APと同じ値になる。試料容器保持部2によって試料容器10を保持する際には、負圧供給部1によって負圧が供給されるため、試料容器保持部2における負圧(圧力)が上昇する。なお、第1実施形態では、試料容器保持部2が試料容器10を保持することが可能な所定の負圧が負圧供給部1から供給されるため、試料容器保持部2が試料容器10を保持した場合、グラフG1の値は所定の圧力値AFで概ね一定となる。
【0066】
また、グラフG1において、第1閾値Th1は、試料容器保持部2が所定の保持力で試料容器10を保持できているか否かの判定に用いる値(圧力値)である。また、第2閾値Th2は、試料容器保持部2が試料容器10を保持できているか否かの判定に用いる値(圧力値)である。
【0067】
第1閾値Th1および第2閾値Th2は、管状部材7の内径の大きさと、負圧供給部1と試料容器保持部2とを結ぶ管状部材7の長さと、容器吸着部材20の形状とに基づいて決定される。ここで、管状部材7の内径の大きさおよび負圧供給部1と試料容器保持部2とを結ぶ管状部材7の長さは、設計上既知の値となるので、第1閾値Th1および第2閾値Th2は、使用する容器吸着部材20の大きさに基づいて決定される。なお、容器吸着部材20の大きさとは、当接面20aの面積のことである。また、使用する容器吸着部材20の大きさは、ユーザなどにより、予め記憶部14に記憶されていてもよい。また、容器吸着部材20にICチップまたはRFタグ(電子タグ)などを付与しておき、試料搬送装置100にICチップなどを読み取るセンサを設けることにより、使用する容器吸着部材20の大きさを取得してもよい。また、反射センサや磁気センサなどにより、使用する容器吸着部材20の大きさを認識してもよいし、機械的スイッチによって使用する容器吸着部材20の大きさを認識してもよい。使用する容器吸着部材20の大きさを取得することができれば、どのような構成であってもよい。
【0068】
第1実施形態では、保持判定部8は、試料容器保持部2における負圧の大きさに基づいて、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを判定するように構成されている。具体的には、保持判定部8は、試料容器保持部2における負圧の大きさが第2閾値Th2以上であるか否かによって、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを判定する。すなわち、保持判定部8は、試料容器保持部2における負圧の大きさが、第2閾値Th2以上であれば、試料容器保持部2が試料容器10を保持していると判定する。また、保持判定部8は、試料容器保持部2における負圧の大きさが、第2閾値Th2よりも小さい場合、試料容器保持部2が試料容器10を保持できていないと判定する。なお、容器吸着部材20の形状に応じて負圧供給部1から供給される負圧が変更されるため、保持判定部8が判定に用いる第2閾値Th2の値は、容器吸着部材20の形状に応じて変更する。
【0069】
報知部16は、保持判定部8の判定結果21を報知するように構成されている。第1実施形態では、報知部16は、たとえば、保持判定部8の判定結果21に応じて、異なる色の光を発するように構成されている。
【0070】
第1実施形態では、報知部16は、試料容器保持部2が試料容器10を保持できている場合には、青色の光を発するように構成されている。また、報知部16は、試料容器保持部2が試料容器10を保持できない場合には、赤色の光を発するように構成されている。
【0071】
次に、
図12を参照して、第1実施形態による試料搬送装置100において、保持判定部8が、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを判定する方法の流れについて説明する。
【0072】
ステップS1において、負圧供給部1は、制御部6の制御の下、試料容器保持部2に負圧を供給する。その後、ステップS2において、保持判定部8は、試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2よりも大きい値となっているか否かを判定する。試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2よりも大きい値となっている場合、処理は、ステップS3へ進む。試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2よりも大きい値となっていない場合、処理は、ステップS5へ進む。
【0073】
ステップS3において、保持判定部8は、試料容器保持部2が試料容器10を保持できたと判定する。その後、処理は、ステップS4へ進む。
【0074】
ステップS4において、制御部6は、垂直方向移動機構5および垂直方向移動機構5を制御して、試料容器10を所定の位置まで搬送し、処理を終了する。なお、ステップS4において、制御部6は、報知部16を制御して、試料容器保持部2が試料容器10を保持できた旨を報知してもよい。
【0075】
ステップS5において、保持判定部8は、試料容器保持部2が試料容器10を保持できなかったと判定する。その後、ステップS6において、制御部6は、報知部16を制御して、試料容器保持部2が試料容器10を保持できなかった旨を報知する。また、制御部6は、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5を制御し、試料容器10の搬送を中止し、処理を終了する。
【0076】
(負圧状態の判定)
次に、
図11を参照して、制御部6による負圧状態の判定処理を行う構成について説明する。
【0077】
制御部6は、容器吸着部材20の大きさに基づいて決定される所定の圧力値と容器吸着部材20における負圧の大きさとに基づいて、容器吸着部材20の状態を判定する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部6は、負圧の大きさに基づいて、容器吸着部材20が劣化しているか、または、試料容器10に対する容器吸着部材20の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。より具体的には、制御部6は、時系列の負圧の検出結果に基づいて、容器吸着部材20が劣化しているか、または、試料容器10の蓋部12に対する容器吸着部材20の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。
【0078】
搬送動作を繰り返し行うと、容器吸着部材20が劣化して、蓋部12の上面部12bと、容器吸着部材20との密閉度が低下する。そこで、制御部6は、容器吸着部材20に供給された負圧の大きさと、第1閾値Th1と、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2とに基づいて、負圧が第1閾値Th1よりも大きい第1負圧状態から、負圧が第1閾値Th1以下でかつ第2閾値Th2よりも大きい第2負圧状態を経て、負圧が第2閾値Th2以下の第3負圧状態へと時系列的に変化したことに基づいて、容器吸着部材20が劣化したと判定する制御を行うように構成されている。なお、容器吸着部材20の形状に応じて負圧供給部1から供給される負圧が変更されるため、制御部6が判定に用いる第1閾値Th1の値および第2閾値Th2の値は、容器吸着部材20の形状に応じて変更する。
【0079】
また、制御部6は、容器吸着部材20に供給された負圧の大きさと、第1閾値Th1と、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2とに基づいて、負圧が第1閾値Th1よりも大きい第1負圧状態とならずに、負圧が第1閾値Th1以下でかつ第2閾値Th2よりも大きい第2負圧状態、または、負圧が第2閾値Th2以下の第3負圧状態となったことに基づいて、容器吸着部材20の形状の不一致であると判定する制御を行うように構成されている。
【0080】
第1負圧状態とは、容器吸着部材20に対して所定の負圧が供給されており、試料容器保持部2が試料容器10を正常に保持可能な状態である。また、第2負圧状態とは、容器吸着部材20が劣化することにより、試料容器保持部2によって試料容器10を保持できているが、正常時(第1負圧状態)と比較して保持力が低下している状態である。また、第3負圧状態とは、第2負圧状態における容器吸着部材20よりもさらに劣化が進み、試料容器保持部2によって試料容器10を保持できない状態である。
【0081】
報知部16は、容器吸着部材20の負圧状態を報知するように構成されている。第1実施形態では、報知部16は、たとえば、容器吸着部材20の負圧状態が第1負圧状態の場合、青色の光を発するように構成されている。また、報知部16は、たとえば、容器吸着部材20の負圧状態が第2負圧状態の場合、黄色の光を発するように構成されている。また、報知部16は、たとえば、容器吸着部材20の負圧状態が第3負圧状態の場合、赤色の光を発するように構成されている。
【0082】
言い換えると、報知部16は、試料容器保持部2によって正常に試料容器10を保持できている場合(第1負圧状態の場合)、青色の光を発することにより、正常に保持できていることを報知する。また、報知部16は、試料容器保持部2によって試料容器10を保持できているが、正常時と比較して保持力が低下している場合(第2負圧状態の場合)、黄色の光を発することにより、保持力の低下を報知する。また、報知部16は、試料容器保持部2によって試料容器10を保持できないか、または、試料容器保持部2から試料容器10が落下した可能性がある場合(第3負圧状態の場合)、赤色の光を発することにより、試料容器保持部2が試料容器10を保持できないこと、または、試料容器保持部2から試料容器10が落下した可能性があることを報知する。
【0083】
なお、報知部16は、異なる色の光を発する光源以外によって構成されていてもよい。たとえば、報知部16は、容器吸着部材20の負圧状態に応じて、異なるメッセージを表示部などに表示することにより、容器吸着部材20の負圧状態を報知するように構成されていてもよい。
【0084】
次に、
図13を参照して、第1実施形態による試料搬送装置100において、制御部6が容器吸着部材20の負圧状態を判定する方法の流れについて説明する。なお、
図12に示した保持判定部8による保持判定処理と同様の処理については、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
ステップS1において、制御部6は、負圧供給部1から試料容器保持部2に負圧を供給させる。その後、ステップS7において、制御部6は、試料容器保持部2に供給された負圧が、第1閾値Th1よりも大きいか否かを判定する。試料容器保持部2に供給された負圧が、第1閾値Th1よりも大きい場合、処理はステップS8へ進む。試料容器保持部2に供給された負圧が、第1閾値Th1以下の場合、処理は、ステップS9へ進む。
【0086】
ステップS8において、制御部6は、容器吸着部材20の負圧状態が、第1負圧状態であると判定する。その後、処理はステップS12へ進む。
【0087】
ステップS9において、制御部6は、試料容器保持部2に供給された負圧が第2閾値Th2よりも大きいか否かを判定する。試料容器保持部2に供給された負圧が第2閾値Th2よりも大きい場合、処理は、ステップS10へ進む。試料容器保持部2に供給された負圧が第2閾値Th2以下の場合、処理は、ステップS11へ進む。
【0088】
ステップS10において、制御部6は、容器吸着部材20の負圧状態が、第2負圧状態であると判定する。その後、処理はステップS12へ進む。
【0089】
ステップS11において、制御部6は、容器吸着部材20の負圧状態が、第3負圧状態であると判定する。その後、処理はステップS12へ進む。
【0090】
ステップS12において、制御部6は、報知部16を制御すことにより、容器吸着部材20の負圧状態を報知し、処理を終了する。
【0091】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0092】
第1実施形態では、上記のように、試料搬送装置100は、負圧を供給する負圧供給部1と、試料容器10を保持する試料容器保持部2と、試料容器保持部2に交換可能に設けられ、供給された負圧により試料容器10を吸着する容器吸着部材20と、容器吸着部材20の大きさに基づいて決定される所定の圧力値と容器吸着部材20における負圧の大きさとに基づいて、容器吸着部材20の状態を判定する制御を行う制御部6と、を備える。これにより、容器吸着部材20の状態によって容器吸着部材20における負圧の大きさが変化するため、容器吸着部材20が試料容器10を吸着できるか否かを判定することが可能となり、容器吸着部材20の交換が必要か否かを判定することができる。その結果、試料容器保持部2が試料容器10を正常に保持できない状態となる前に、容器吸着部材20の交換時期を把握することができる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部6は、負圧の大きさに基づいて、容器吸着部材20が劣化しているか、または、試料容器10に対する容器吸着部材20の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。これにより、試料容器保持部2が試料容器10を正常に保持できなくなった原因が、容器吸着部材20の劣化によるものか、試料容器10に対する容器吸着部材20の形状が一致していないことによるものかを把握することができる。その結果、容器吸着部材20を交換する際に、交換前の容器吸着部材20と大きさなどが同一で、劣化していない容器吸着部材20に交換すればよいのか、交換前の容器吸着部材20とは大きさなどが異なる容器吸着部材20に交換しなければならないのかを判定することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部6の判定結果21を記憶する記憶部14をさらに備え、制御部6は、時系列の負圧の検出結果に基づいて、容器吸着部材20が劣化しているか、または、試料容器10の蓋部12に対する容器吸着部材20の形状の不一致かを区別して判定する制御を行うように構成されている。これにより、容器吸着部材20における負圧の大きさが徐々に(経時的に)小さくなったのか、容器吸着部材20の交換後などに、容器吸着部材20における負圧の大きさが突然小さくなったのかによって、試料容器保持部2が試料容器10を正常に保持できなくなった原因を精度よく判定することができる。その結果、ある時点における負圧の検出結果のみに基づいて容器吸着部材20の状態を判定する構成と比較して、試料容器保持部2の保持力が正常値から低下した原因をより正確に判定することが可能となり、どのような容器吸着部材20に交換すればよいのかを、正確に判定することができる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部6は、容器吸着部材20に供給された負圧の大きさと、第1閾値Th1と、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2とに基づいて、負圧が第1閾値Th1よりも大きい第1負圧状態から、負圧が第1閾値Th1以下でかつ第2閾値Th2よりも大きい第2負圧状態を経て、負圧が第2閾値Th2以下の第3負圧状態へと時系列的に変化したことに基づいて、容器吸着部材20が劣化したと判定する制御を行うように構成されている。これにより、容器吸着部材20における圧力値が徐々に低下していくことにより、容器吸着部材20が劣化していると判定することが可能となり、容器吸着部材20の劣化状況を詳細に把握することができる。その結果、容器吸着部材20の劣化状況を詳細に把握することが可能となるので、容器吸着部材20の適切な交換時期を把握することができる。
【0096】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部6は、容器吸着部材20に供給された負圧の大きさと、第1閾値Th1と、第1閾値Th1よりも小さい第2閾値Th2とに基づいて、負圧が第1閾値Th1よりも大きい第1負圧状態とならずに、負圧が第1閾値Th1以下でかつ第2閾値Th2よりも大きい第2負圧状態、または、負圧が第2閾値Th2以下の第3負圧状態となったことに基づいて、容器吸着部材20の形状の不一致であると判定する制御を行うように構成されている。これにより、容器吸着部材20の負圧状態が、第1負圧状態を経ずに第2負圧状態または第3負圧状態となった場合に、試料容器10に対する容器吸着部材20の形状が一致していないと判定することが可能となり、試料容器保持部2が試料容器10を正常に保持できない原因が試料容器10に対する容器吸着部材20の形状の不一致か否かを判定することができる。その結果、容器吸着部材20が劣化している場合とは異なり、容器吸着部材20の負圧状態に応じて、早急な交換が必要か否かをユーザが確認することができる。
【0097】
また、第1実施形態では、上記のように、容器吸着部材20の状態が、第1負圧状態と、第2負圧状態と、第3負圧状態とのうち、いずれの状態であるかを報知する報知部16をさらに備える。これにより、ユーザは、報知部16の報知内容に基づいて、容器吸着部材20の状態を把握することができる。その結果、たとえば、試料搬送装置100を設置している環境に関係なく、容器吸着部材20の使用期間(使用時間)または使用回数に基づいて容器吸着部材20を交換する場合と比較して、容器吸着部材20の状態に基づいて交換時期を判断することが可能となるので、試料搬送装置100を設置している環境に適したタイミングで容器吸着部材20を交換することができる。
【0098】
また、第1実施形態では、上記のように、試料容器保持部2に供給される負圧の大きさに基づいて、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを判定する保持判定部8を備える。これにより、試料容器保持部2に供給される負圧の大きさに基づいて、試料容器保持部2が試料容器10を保持しているか否かを把握することができる。その結果、たとえば、磁石などを用いて試料容器10を保持する場合と比較して、試料容器10を保持できたか否かをより正確に把握することができる。また、試料容器保持部2が試料容器10の保持に失敗した回数に基づいて、試料容器10に対する試料容器保持部2の大きさなどが適切であるか否かを把握することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、上記のように、試料容器10から試料を吸引して所定の位置において吐出する試料吸引吐出部3と、水平方向において、試料吸引吐出部3とともに試料容器保持部2を一体的に移動させる水平方向移動機構4と、垂直方向において、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3とを、それぞれ独立して移動させる垂直方向移動機構5と、をさらに備える。これにより、試料吸引吐出部3と試料容器保持部2とを一体的に移動させることが可能となり、装置構成の簡素化および装置の大型化の抑制を図ることができる。また、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを垂直方向に独立して移動させることにより、試料容器保持部2によって試料容器10を保持する際に、試料吸引吐出部3が他の試料容器10と当接することを抑制することができる。したがって、垂直方向における試料容器保持部2の移動と試料吸引吐出部3の移動とを一体的に行う構成と異なり、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とが相互に干渉することを考慮する必要がなくなるので、装置構成が複雑化することを抑制することができる。これらの結果、容器吸着部材20の状態を把握することにより、容器吸着部材20の適切な交換時期を把握することが可能な試料搬送装置100において、装置が大型化することおよび装置構成が複雑化することを抑制することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、上記のように、クロマトグラフ装置CEによる分析を行う試料の前処理を行う前処理部60をさらに備え、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5は、試料容器保持部2を移動させることにより、試料容器10を第1試料容器配置部61から前処理部60まで移動させて、試料の前処理を行うように構成されており、試料吸引吐出部3は、前処理後の試料を吸引してクロマトグラフ装置CEの試料注入口DPに吐出するように構成されている。これにより、容器吸着部材20の交換時期を把握することが可能となるので、たとえば、試料容器10を前処理部60に搬送して前処理を行い、その後クロマトグラフ装置CEによって分析を行う場合、試料の前処理を確実に行うことができる。その結果、前処理を行った試料をクロマトグラフ装置CEによって分析する場合に、試料搬送装置100を用いることは好適である。
【0101】
[第2実施形態]
次に、
図11および
図14を参照して、第2実施形態による試料搬送装置200(
図14参照)について説明する。保持判定部8が試料容器10の保持を判定する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、試料搬送装置200は、保持部位置取得部15を備え、保持判定部8は、試料容器10を所定の場所に移動させたか否かを判定可能に構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
【0102】
(試料搬送装置の構成)
まず、
図14を参照して、第2実施形態による試料搬送装置200の構成について説明する。
【0103】
第2実施形態では、試料搬送装置200は、上記第1実施形態における試料搬送装置100の構成に加えて、試料容器保持部2の水平方向における位置を取得する保持部位置取得部15を備える。また、第2実施形態では、保持判定部8は、試料容器保持部2の位置および試料容器保持部2における負圧の大きさに基づいて、試料容器10を所定の場所に移動させたか否かを判定可能に構成されている。なお、所定の場所とは、前処理部60または第2試料容器配置部62である。
【0104】
保持部位置取得部15は、試料容器保持部2の位置を取得することできればどのような構成でもよい。第2実施形態では、保持部位置取得部15は、たとえば、水平方向移動機構4に設けられたモータの出力によって試料容器保持部2の位置を取得するセンサを含む。
【0105】
(試料容器の移動判定)
第2実施形態では、保持判定部8は、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって試料容器10を搬送している際に試料容器保持部2に供給されている負圧の値が、第2閾値Th2よりも大きいか否かによって、試料容器10を所定の位置まで搬送できたか否かを判定するように構成されている。
【0106】
具体的には、保持判定部8は、試料容器10を搬送している際の試料容器保持部2に供給されている負圧の値が第2閾値Th2よりも大きい場合、試料容器10を所定の位置に搬送できたと判定する。また、保持判定部8は、試料容器10を搬送している際の試料容器保持部2に供給されている負圧の値が第2閾値Th2以下の場合、試料容器10を所定の位置に搬送できなかったと判定する。
【0107】
次に、
図15を参照して、第2実施形態による試料搬送装置200において試料容器10が所定の位置に搬送されたか否かの判定方法の流れについて説明する。
【0108】
ステップS13において、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5は、制御部6の制御の下、試料容器10を所定の場所(前処理部60または第2試料容器配置部62)まで搬送する。
【0109】
次に、ステップS14において、保持判定部8は、試料容器10を所定の場所まで搬送する際に、試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2よりも大きい値であったか否かを判定する。試料容器10を所定の場所まで搬送する際に試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2よりも大きい値であった場合、試料容器10を所定の場所に搬送できたと判定し、判定処理を終了する。試料容器10を所定の場所まで搬送する際に試料容器保持部2における負圧が第2閾値Th2以下の場合、処理は、ステップS15へ進む。
【0110】
なお、所定の場所まで試料容器10を搬送できた場合、試料搬送装置200は、後続の処理を継続して行う。後続の処理としては、たとえば、第1試料容器配置部61から前処理部60まで試料容器10を搬送した場合は、制御部6は、前処理部60を制御して、試料の前処理を行う。また、たとえば、前処理部60から第2試料容器配置部62まで試料容器10を搬送した場合は、制御部6は、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5を制御して、試料吸引吐出部3を第2試料容器配置部62まで移動させ、試料容器10から試料を吸引するとともに、クロマトグラフ装置CEの試料注入口DPに試料を吐出し、試料の分析を行う。
【0111】
ステップS15において、保持判定部8は、試料容器10を所定の場所まで搬送できなかったと判定する。その後、制御部6は、報知部16を制御して、試料容器保持部2から試料容器10が落下した可能性がある旨を報知して処理を終了する。
【0112】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0113】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0114】
第2実施形態では、上記のように、試料容器保持部2の水平方向における位置を取得する保持部位置取得部15をさらに備え、保持判定部8は、試料容器保持部2の位置および試料容器保持部2における負圧の大きさに基づいて、試料容器10を所定の場所に移動させたか否かを判定可能に構成されている。これにより、試料容器10が所定の場所に移動したか否かを把握することができる。したがって、たとえば、搬送中に試料容器10が試料容器保持部2から落下した場合など、試料容器10が所定の位置に搬送されていない場合に、試料吸引吐出部3による試料の吸引を中止することができる。その結果、所定の位置に試料容器10が配置されていないことにより試料吸引吐出部3が試料を吸引できないことを抑制することが可能となるので、分析装置などに試料を吐出しない状態で分析を行うことを抑制することができる。
【0115】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0116】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0117】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、試料搬送装置100(200)が、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3を垂直方向に移動させる垂直方向移動機構5を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1試料容器配置部61および第2試料容器配置部62を垂直方向に移動させることが可能であれば、試料搬送装置100(200)は、垂直方向移動機構5を備えていなくてもよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、試料搬送装置100(200)が保持判定部8を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料容器保持部2による試料容器10の保持判定などを行わない場合には、試料搬送装置100(200)は、保持判定部8を備えていなくてもよい。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3とを、X方向において、第2方向移動機構4bの異なる方向に配置する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とは、X方向において、第2方向移動機構4bの同一方向側に配置されていてもよい。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、垂直方向移動機構5が、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3を独立して垂直方向に移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図16に示す試料搬送装置300のように、垂直方向移動機構5は、垂直方向において、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを一体的に移動させるように構成されていてもよい。垂直方向移動機構5が試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを一体的に移動させる構成の場合、支持部52が試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを支持するように構成すればよい。具体的には、支持部52は、試料容器保持部2が設けられた支持部40を支持するように構成されている。また、支持部40には、ストッパ41およびばね42が設けられている。試料吸引吐出部3がクロマトグラフ装置CEに試料を吐出する際は、ストッパ41およびばね42により、試料容器保持部2(容器吸着部材20)が試料吸引吐出部3に対してZ方向に相対移動することにより、試料容器保持部2(容器吸着部材20)の内部を試料吸引吐出部3のニードル30が移動できるように構成すればよい。
【0121】
具体的には、
図17(A)に示すように、容器吸着部材20は、内部にニードル30が通過する領域RTを設けるように構成すればよい。このように構成すれば、垂直方向移動機構5が試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを一体的に移動させる構成の場合に、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを同軸に配置することができる。また、試料容器保持部2と試料吸引吐出部3とを同軸に配置する場合、容器吸着部材20は、
図17(B)に示すように、容器吸着部材20のうち、ハッチングを付した領域RP内に負圧を供給することにより、試料容器10を保持するように構成すればよい。
【0122】
また、上記第1および第2実施形態では、試料吸引吐出部3がクロマトグラフ装置CEに試料を吐出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。試料吸引吐出部3が試料を吐出する装置は、クロマトグラフ装置CEに限られない。たとえば、試料吸引吐出部3は、質量分析装置や分光分析装置などの分析装置に試料を吐出するように構成されていてもよい。また、試料吸引吐出部3は、分析する試料を調整するために、試料を試験管やプラスチックチューブなどに吐出するように構成されていてもよい。
【0123】
また、上記第1および第2実施形態では、試料容器保持部2が、ニードル貫通部13が蓋部12の上面部12bよりも凹んだ位置に設けられた蓋部12を備えた試料容器10を保持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料容器保持部2は、ニードル貫通部13が蓋部12の上面部12bから突出するように設けられた蓋部12を備える試料容器10を保持するように構成されていてもよい。
【0124】
また、上記第1および第2実施形態では、試料容器保持部2がニードル貫通部13を有する蓋部12を備えた試料容器10を保持する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料容器保持部2は、ニードル貫通部13を有さない蓋部12を備えた試料容器10を保持するように構成されていてもよい。また、試料容器保持部2は、試料容器10以外に、試験管やプラスチックチューブ、ウェルプレート、クロマトグラフ装置の定期交換部品などを保持するように構成されていてもよい。
【0125】
また、上記第1および第2実施形態では、容器吸着部材20が円筒形状を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。容器吸着部材20がニードル貫通部13に当接せずに蓋部12に当接することが可能であれば、容器吸着部材20はどのような形状を有していてもよい。
【0126】
また、上記第1および第2実施形態では、負圧供給部1が空気を吸引することにより発生させた負圧を試料容器保持部2に供給する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図18に示すように、空気を吐出することにより負圧を発生させる負圧供給部19を用いて、試料容器保持部2に負圧を供給するように構成されていてもよい。具体的には、負圧供給部19は、空気を吐出する(正圧を供給する)ポンプ17と、T字管18とを含む。ポンプ17によってT字管18に対して矢印A1方向に空気を吐出すると、T字管18内において、矢印A2方向に負圧が生じる。したがって、
図18に示すように、負圧供給部19において負圧が生じる位置に試料容器保持部2を配置することにより、試料容器保持部2に対して負圧を供給することができる。
【0127】
また、上記第1実施形態では、垂直方向移動機構5(第1垂直方向移動機構5a)がラックアンドピニオン機構によって試料容器保持部2を垂直方向に移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。試料容器保持部2を垂直方向に移動させることが可能であれば、垂直方向移動機構5(第1垂直方向移動機構5a)はどのように構成されていてもよい。垂直方向移動機構5(第1垂直方向移動機構5a)は、たとえば、ボールねじ機構またはベルトアンドプーリー機構で構成されていてもよい。
【0128】
また、上記第1実施形態では、垂直方向移動機構5(第2垂直方向移動機構5b)がベルトアンドプーリー機構によって試料吸引吐出部3を垂直方向に移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。試料吸引吐出部3を垂直方向に移動させることが可能であれば、垂直方向移動機構5(第2垂直方向移動機構5b)はどのように構成されていてもよい。垂直方向移動機構5(第2垂直方向移動機構5b)は、たとえば、ボールねじ機構またはラックアンドピニオン機構で構成されていてもよい。
【0129】
また、上記第1および第2実施形態では、前処理部60によって前処理を行うため、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって、第1試料容器配置部61から前処理部60に試料容器10を搬送する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料搬送装置100(200)は、試料容器10内の試料の情報を読み取るための、試料情報読み取り部を備えており、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって、第1試料容器配置部61から試料情報読み取り部まで試料容器10を移動させるように構成されていてもよい。
【0130】
また、上記第1および第2実施形態では、試料搬送装置100(200)が、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって、第1試料容器配置部61から前処理部60に試料容器10を搬送し、試料の前処理を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、試料の前処理を行う必要がない場合には、試料搬送装置100(200)は、前処理部60を備えていなくてもよい。前処理部60を備えていない場合、試料搬送装置100(200)は、水平方向移動機構4および垂直方向移動機構5によって、第1試料容器配置部61から第2試料容器配置部62に試料容器10を搬送するように構成すればよい。
【0131】
また、上記第1および第2実施形態では、試料搬送装置100(200)が報知部16を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。保持判定部8の判定結果21を報知する必要がない場合は、試料搬送装置100(200)は、報知部16を備えていなくてもよい。
【0132】
また、上記第1および第2実施形態では、試料容器保持部2および試料吸引吐出部3を移動させる試料搬送装置100(200)に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、試料吸引吐出部3を備えておらず、試料容器10の搬送のみを行う搬送装置に適用してもよい。
【0133】
また、上記第1および第2実施形態では、容器吸着部材20の負圧状態を報知する報知部16を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図19に示す試料搬送装置400のように、容器吸着部材20の交換時期をユーザに通知するように構成されていてもよい。試料搬送装置400は、負圧供給部1と、試料容器保持部2と、試料吸引吐出部3と、水平方向移動機構4と、垂直方向移動機構5と、制御部6と、負圧測定部9と、記憶部14と、報知部16と、前処理部60と、表示部70とを備える。報知部16の代わりに表示部70を備える以外は、上記第1および第2実施形態における試料搬送装置100および200と同様の構成である。表示部70は、制御部6の制御の下、容器吸着部材20の交換時期を表示するように構成されている。表示部70は、たとえば、液晶モニタなどを含む。
【0134】
第2負圧状態は、容器吸着部材20によって試料容器10を保持することができるが、容器吸着部材20が劣化した状態であることを示している。すなわち、第2負圧状態とは、容器吸着部材20を交換した方がよい状態である。そこで、
図19に示す例では、制御部6は、容器吸着部材20の負圧状態が、第1負圧状態から第2負圧状態へと変化する時期を予測し、容器吸着部材20の交換時期をユーザに通知するように構成されている。具体的には、制御部6は、容器吸着部材20の交換時期を、表示部70に表示することにより、ユーザに通知するように構成されている。制御部6は、たとえば、第1閾値Th1の値が20kPaであり、所定の圧力値AFが30kPaであるとすると、1か月ごとに容器吸着部材20に供給された負圧の大きさが0.5kPa低下する場合、制御部6は、20か月が経過すると、所定の圧力値AFが20kPaになると予測する。制御部6は、予測した交換時期(たとえば、20か月後)を表示部70に表示することにより、容器吸着部材20の交換時期をユーザに通知する。
【符号の説明】
【0135】
1 負圧供給部
2 試料容器保持部
3 試料吸引吐出部
4 水平方向移動機構
5 垂直方向移動機構
6 制御部
8 保持判定部
10 試料容器
12 蓋部
14 記憶部
16 報知部
20 容器吸着部材
21 判定結果
60 前処理部
61 第1試料容器配置部(試料容器配置部)
100、200、300、400 試料搬送装置
CE クロマトグラフ装置
DP クロマトグラフ装置の試料注入口