(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20220117BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20220117BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F04B49/10 331K
F04B49/10 331F
F04C18/02 311Z
F04B49/02 331F
(21)【出願番号】P 2018185313
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅士
(72)【発明者】
【氏名】名嶋 一記
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高見 知寛
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044206(JP,A)
【文献】特開2017-044205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04C 18/02
F04B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮室を有する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するためにスイッチング動作を行うスイッチング素子を有する駆動回路と、
前記モータの回転制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記モータの停止指令を外部から受信すると、
前記モータの回転数が零に到達する前に前記駆動回路から前記モータへ流れる電流に基づいて、前記モータのロータの位置を推定しつつ、前記モータの回転速度を減速させる第1減速制御と、
前記第1減速制御によって前記モータの回転速度が減速した後に、前記モータの回転速度を強制同期制御によって前記モータの回転数が零になるまで減速させる第2減速制御と、
前記第2減速制御によって前記モータの回転数が零に到達した後に、前記ロータの位置を特定の角度に固定するように前記スイッチング素子のスイッチング動作の制御を行うブレーキ制御と、を実行することを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータの回転速度が前記第1減速制御によって減速されて、前記モータの回転数が予め定められた規定回転数に到達すると、前記第1減速制御から前記第2減速制御に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記制御部は、前記モータに流れるd軸電流とq軸電流のうち、前記q軸電流のみ変動が大きくなるときに前記第1減速制御から前記第2減速制御に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、例えば特許文献1に開示されているように、流体を圧縮する圧縮室を有する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するスイッチング素子を有する駆動回路と、モータの回転制御を行う制御部と、を備えている。そして、スイッチング素子がスイッチング動作を行うことにより、外部電源からの直流電圧が交流電圧に変換され、交流電圧が駆動電圧としてモータに印加されることにより、モータの駆動が制御される。また、制御部は、モータの停止指令を外部から受信すると、スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる。これにより、モータの駆動が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制御部によってスイッチング素子のスイッチング動作が停止すると、モータのロータの回転は、惰性回転を行った後に停止する。このとき、圧縮室内に残存する流体が膨脹することに伴い、回転が停止したロータが逆回転し始めることがある。ロータが逆回転すると、圧縮部から騒音が発生してしまう。
【0005】
そこで、ロータの逆回転を防止するために、ロータの回転が停止した後に、ブレーキ制御を行ってロータの回転を強制的に停止させることが考えられている。しかしながら、例えば、ロータが惰性回転を行っている際にブレーキ制御を行ってしまうと、ロータの惰性回転に伴うモータからの回生電流が駆動回路へ過剰に流れて、駆動回路が故障してしまう虞がある。一方で、ロータの回転が停止した後、ブレーキ制御を行うタイミングが遅れると、ブレーキ制御を行う前にロータが逆回転し始めてしまい、圧縮部から騒音が発生してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、駆動回路の故障を回避しつつも、ロータの逆回転を効率良く防止することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮室を有する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを駆動するためにスイッチング動作を行うスイッチング素子を有する駆動回路と、前記モータの回転制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータの停止指令を外部から受信すると、前記駆動回路から前記モータへ流れる電流に基づいて、前記モータのロータの位置を推定しつつ、前記モータの回転速度を減速させる第1減速制御と、前記第1減速制御によって前記モータの回転速度が減速した後に、前記モータの回転速度を強制同期制御によって前記モータの回転数が零になるまで減速させる第2減速制御と、前記第2減速制御によって前記モータの回転数が零に到達した後に、前記ロータの位置を特定の角度に固定するように前記スイッチング素子のスイッチング動作の制御を行うブレーキ制御と、を実行する。
【0008】
強制同期制御では、ロータの位置を推定せずに、モータに対して強制的に電流を流すことにより、モータの回転速度を減速していくため、消費電流が増大するとともにモータの回転速度を減速していくのに時間を要する。そこで、制御部は、モータの停止指令を外部から受信すると、駆動回路からモータへ流れる電流に基づいて、ロータの位置を推定しつつ、モータの回転速度を減速させる第1減速制御を行う。よって、例えば、強制同期制御によってモータの回転速度を減速していく場合に比べると、消費電流を少なくすることができるとともにモータの回転速度を早期に減速することができる。
【0009】
また、駆動回路からモータへ流れる電流は、モータの回転数が小さくなるほどロータの位置推定の精度が悪くなり不安定になっていくため、モータの回転数が小さくなるほど、駆動回路からモータへ流れる電流に基づくロータの位置の推定が困難になる。そこで、制御部は、第1減速制御によってモータの回転速度が減速した後に、モータの回転速度を強制同期制御によってモータの回転数が零になるまで減速させる第2減速制御を行う。これにより、モータの回転数が零になるまでモータの回転速度を安定させて確実に減速させることができる。
【0010】
そして、制御部は、第2減速制御によってモータの回転数が零に到達した後に、ロータの位置を特定の角度に固定するようにスイッチング素子のスイッチング動作の制御を行うブレーキ制御を行う。よって、例えば、ロータが惰性回転を行っている際に制御部がブレーキ制御を行ってしまい、ロータの惰性回転に伴うモータからの回生電流が駆動回路へ過剰に流れて、駆動回路が故障してしまうといった問題を回避することができる。また、ロータの回転が停止した後、制御部によるブレーキ制御を行うタイミングが遅れて、ロータが逆回転し始めてしまうといった問題も回避することができる。以上のことから、駆動回路の故障を回避しつつも、ロータの逆回転を効率良く防止することができる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記制御部は、前記モータの回転速度が前記第1減速制御によって減速されて、前記モータの回転数が予め定められた規定回転数に到達すると、前記第1減速制御から前記第2減速制御に切り替えるとよい。
【0012】
これによれば、制御部は、モータの回転数が規定回転数に到達するまで、モータの回転速度を第1減速制御によって減速するため、モータの回転速度を早期に減速させることができる。よって、ロータの逆回転を効率良く防止することができる。
【0013】
上記電動圧縮機において、前記制御部は、前記モータに流れるd軸電流とq軸電流のうち、前記q軸電流のみ変動が大きくなるときに前記第1減速制御から前記第2減速制御に切り替えるとよい。
【0014】
モータの回転数が小さくなるほど位置推定の精度の悪化に伴い推定回転速度が変動し、速度フィードバック制御が誤動作するまで位置推定の誤差が大きくなると、モータに流れるq軸電流は大きく変動し、駆動回路からモータへ流れる電流に基づくロータの位置の推定が困難となる。q軸電流が大きく変動し始めるタイミングは、電動圧縮機の負荷の状態やスイッチング素子の温度特性などによって変わる。そこで、制御部は、モータに流れるq軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替える。これによれば、駆動回路からモータへ流れる電流に基づくロータの位置の推定が困難となる限界まで第1減速制御によってモータの回転速度を減速させることができるため、消費電力を極力少なくすることができるとともにモータの回転速度を可能な限り早期に減速することができる。よって、ロータの逆回転をさらに効率良く防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、駆動回路の故障を回避しつつも、ロータの逆回転を効率良く防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態における電動圧縮機を示す側断面図。
【
図3】モータの回転数及びモータに流れる電流の変化を示すタイミングチャート。
【
図4】制御装置の制御を説明するためのフローチャート。
【
図5】第2の実施形態におけるモータの回転数及びモータに流れる電流の変化を示すタイミングチャート。
【
図8】制御装置の制御を説明するためのフローチャート。
【
図9】別の実施形態における電流の変化を示すグラフ。
【
図10】別の実施形態における電流の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、電動圧縮機を具体化した第1の実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
【0018】
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13とを有している。吐出ハウジング12及びモータハウジング13は金属材料製(例えばアルミニウム製)である。モータハウジング13は、底壁13eと、底壁13eの外周縁から筒状に延設する側壁13aとを有している。
【0019】
モータハウジング13内には、回転軸14が収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸14が回転することにより駆動して流体としての冷媒を圧縮する圧縮部15と、回転軸14を回転させて圧縮部15を駆動するモータ16とが収容されている。圧縮部15及びモータ16は、回転軸14の回転軸線Lが延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。モータ16は、圧縮部15よりもモータハウジング13の底壁13e側に配置されている。
【0020】
モータハウジング13内において、圧縮部15とモータ16との間には軸支部材17が設けられている。軸支部材17の中央部には、回転軸14の一端部が挿通される挿通孔17hが形成されている。挿通孔17hと回転軸14の一端部との間にはベアリング18aが設けられている。回転軸14の一端部は、ベアリング18aを介して軸支部材17に回転可能に支持されている。
【0021】
モータハウジング13の底壁13eには、筒状の軸受部19が突設されている。軸受部19の内側には回転軸14の他端が挿入されている。軸受部19と回転軸14の他端との間にはベアリング18bが設けられている。回転軸14の他端は、ベアリング18bを介して軸受部19に回転可能に支持されている。
【0022】
圧縮部15は、モータハウジング13に固定された固定スクロール20と、固定スクロール20に対向配置された可動スクロール21と、を有している。固定スクロール20と可動スクロール21とは互いに噛み合っている。そして、固定スクロール20と可動スクロール21との間には容積変更可能な圧縮室22が区画されている。圧縮室22は、冷媒を圧縮する。よって、圧縮部15は、冷媒を圧縮する圧縮室22を有している。
【0023】
モータハウジング13の底壁13eには、有底筒状のカバー23が取り付けられている。そして、モータハウジング13の底壁13eとカバー23とによって、モータ16を駆動する駆動回路30を収容する収容空間23aが形成されている。圧縮部15、モータ16、及び駆動回路30は、この順序で、回転軸14の軸線方向に並んで配置されている。
【0024】
モータ16は、筒状のステータ24と、ステータ24の内側に配置されるロータ25とからなる。ロータ25は、回転軸14と一体的に回転する。ステータ24は、ロータ25を取り囲んでいる。ロータ25は、回転軸14に止着されたロータコア25aと、ロータコア25aに設けられた複数の永久磁石(図示せず)と、を有している。ステータ24は、筒状のステータコア24aと、ステータコア24aに巻回されたコイル26とを有している。そして、コイル26に電力が供給されることによりロータ25及び回転軸14が回転する。
【0025】
側壁13aには、吸入ポート13hが形成されている。吸入ポート13hは、モータハウジング13内に冷媒を吸入する。吸入ポート13hには、外部冷媒回路27の一端が接続されている。吐出ハウジング12内には、吐出室12aが形成されている。吐出ハウジング12には、吐出室12aに連通する吐出ポート12hが形成されている。吐出ポート12hには、外部冷媒回路27の他端が接続されている。
【0026】
外部冷媒回路27から吸入ポート13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、可動スクロール21の旋回(吸入動作)によって、圧縮室22に吸入される。圧縮室22内の冷媒は、可動スクロール21の旋回(吐出動作)によって圧縮されて、吐出室12aに吐出される。吐出室12aに吐出された冷媒は、吐出ポート12hを介して外部冷媒回路27へ流出し、外部冷媒回路27の熱交換器や膨張弁を経て、吸入ポート13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路27は、車両空調装置28を構成している。
【0027】
図2に示すように、モータ16のコイル26は、u相コイル26u、v相コイル26v、及びw相コイル26wを有する三相構造になっている。本実施形態において、u相コイル26u、v相コイル26v、及びw相コイル26wは、Y結線されている。
【0028】
駆動回路30は、複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2を有している。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、モータ16を駆動するためにスイッチング動作を行う。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、IGBT(パワースイッチング素子)である。複数のスイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2がそれぞれ接続されている。ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2は、スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2に対して並列に接続されている。
【0029】
各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1は、各相の上アームを構成している。各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2は、各相の下アームを構成している。各スイッチング素子Qu1,Qu2、各スイッチング素子Qv1,Qv2、及び各スイッチング素子Qw1,Qw2はそれぞれ直列に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のゲートは、制御装置40に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のコレクタは、車両のバッテリ31の正極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のエミッタは、各電流センサ41u,41v,41wを介してバッテリ31の負極に電気的に接続されている。各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のエミッタ及び各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のコレクタは、それぞれ直列に接続された中間点からu相コイル26u、v相コイル26v、及びw相コイル26wにそれぞれ電気的に接続されている。
【0030】
また、駆動回路30は、バッテリ31に対して並列に接続されたコンデンサ32を有している。コンデンサ32は、例えば、フィルムコンデンサや電解コンデンサで構成されている。
【0031】
電動圧縮機10は、バッテリ31からの入力電圧を検出する電圧センサ33を備えている。電圧センサ33は、制御装置40と電気的に接続されており、検出した検出結果を制御装置40に送信する。
【0032】
制御装置40は、モータ16の駆動電圧をパルス幅変調により制御する。具体的には、制御装置40は、搬送波信号と呼ばれる高周波の三角波信号と、電圧を指示するための電圧指令信号とによってPWM信号を生成する。そして、制御装置40は、生成したPWM信号を用いて各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作の制御(オンオフ制御)を行う。これにより、バッテリ31からの直流電圧が交流電圧に変換される。したがって、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2は、スイッチング動作を行うことにより、バッテリ31からの直流電圧を交流電圧に変換する。そして、変換された交流電圧が駆動電圧としてモータ16に印加されることにより、モータ16の駆動が制御される。よって、制御装置40は、モータ16の回転制御を行う制御部である。
【0033】
制御装置40は、車両空調装置28の全体を制御する空調ECU41と電気的に接続されている。空調ECU41は、車内温度や設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、モータ16の目標回転数に関する情報を制御装置40に送信する。また、空調ECU41は、モータ16の運転指令やモータ16の停止指令などの各種指令を制御装置40に送信する。この空調ECU41からの各種指令は、制御装置40が外部から受信する指令である。
【0034】
制御装置40は、モータ16のロータ25の位置を検出するレゾルバなどの回転角センサを用いずに、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づいて、モータ16のロータ25の位置θを推定することによりモータ16の回転制御を行うことが可能になっている。よって、本実施形態の電動圧縮機10は、制御装置40によって推定されたロータ25の位置θに基づいて、モータ16の回転を制御する位置センサレス制御が行われている。
【0035】
具体的には、制御装置40には、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwと、電圧センサ33により検出された入力電圧と、からロータ25の位置θを推定するロータ位置推定プログラムが予め記憶されている。そして、制御装置40は、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwと、電圧センサ33により検出された入力電圧と、ロータ位置推定プログラムと、に基づいてロータ25の位置θの推定を行う。
【0036】
制御装置40は、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwと、推定されたロータ25の位置θとに基づいて、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwをd軸電流(励磁成分電流)及びq軸電流(トルク成分電流)に変換する。なお、d軸電流(励磁成分電流)は、モータ16に流れる電流において、永久磁石が作る磁束と同じ方向の電流ベクトル成分である。q軸電流(トルク成分電流)は、モータ16に流れる電流において、d軸と直交する電流ベクトル成分である。
【0037】
制御装置40は、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwに基づいて、モータ16におけるd軸電流(励磁成分電流)とq軸電流(トルク成分電流)とが目標値となるように、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のオンオフ制御を行う。これにより、モータ16が、空調ECU41から送信された目標回転数で回転する。
【0038】
本実施形態の制御装置40は、第1減速制御を実行するプログラムと、第2減速制御を実行するプログラムと、ブレーキ制御を実行するプログラムと、がそれぞれ記憶されている。よって、制御装置40は、第1減速制御、第2減速制御、及びブレーキ制御を実行する制御部である。
【0039】
図3に示すように、第1減速制御では、制御装置40がモータ16の停止指令を空調ECU41から受信すると、駆動回路30からモータ16へ流れる電流(U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iw)に基づいて、モータ16のロータ25の位置θを推定しつつ、モータ16の回転速度を減速させる。よって、第1減速制御では、モータ16の回転速度を位置センサレス制御によって減速させる。
【0040】
第1減速制御中に駆動回路30からモータ16へ流れる電流の振幅は、第1減速制御を実行する前に比べて小さくなっている。第1減速制御中に駆動回路30からモータ16へ流れる電流の振幅は一定である。また、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16へ流れる電流の周期は、第1減速制御を実行する前に比べて長くなっている。第1減速制御中に駆動回路30からモータ16へ流れる電流の周期は一定である。第1減速制御中のモータ16の回転数rは、徐々に小さくなっていく。第1減速制御中のモータ16の回転数rは、直線的に小さくなっている。
【0041】
第2減速制御では、第1減速制御によってモータ16の回転速度が減速した後に、モータ16の回転速度を強制同期制御によってモータ16の回転数rが零になるまで減速させる。強制同期制御では、位置センサレス制御のようにロータ25の位置θを推定せずに、モータ16に対して強制的に電流を流すことにより、モータ16の回転速度を減速していく。第2減速制御中のモータ16の回転数rは、徐々に小さくなっていく。第2減速制御中のモータ16の回転数rは、直線的に小さくなっている。
【0042】
制御装置40には、モータ16の回転速度が第1減速制御によって減速されて、モータ16の回転数rが予め定められた規定回転数rxに到達すると、第1減速制御から第2減速制御に切り替えるプログラムが予め記憶されている。よって、本実施形態の制御装置40は、モータ16の回転速度が第1減速制御によって減速されて、モータ16の回転数rが予め定められた規定回転数rxに到達すると、第1減速制御から第2減速制御に切り替える。
【0043】
ブレーキ制御では、第2減速制御によってモータ16の回転数rが零に到達した後に、ロータ25の位置θを特定の角度に固定するように各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作の制御を行う。具体的には、制御装置40は、ブレーキ制御として、各相の上アームを構成する各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のスイッチング動作をオフにするとともに、各相の下アームを構成する各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のスイッチング動作をオンにする。これにより、ロータ25の位置θが特定の角度に固定され、ロータ25の回転が強制的に停止する。制御装置40には、第2減速制御によってモータ16の回転数rが零に到達した後に、第2減速制御からブレーキ制御に切り替えるプログラムが予め記憶されている。
【0044】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、制御装置40は、まず、ステップS11においてモータ16の停止指令を空調ECU41から受信する。次に、制御装置40は、モータ16の停止指令を空調ECU41から受信すると、ステップS12においてモータ16の回転速度を位置センサレス制御によって減速させる第1減速制御を実行する。そして、制御装置40は、ステップS13においてモータ16の回転数rが規定回転数rxに到達したか否かを判定する。制御装置40は、ステップS13においてモータ16の回転数rが規定回転数rxに到達していないと判定すると、ステップS12に移行する。
【0045】
一方、制御装置40は、ステップS13においてモータ16の回転数rが規定回転数rxに到達したと判定すると、ステップS14に移行し、ステップS14において第1減速制御から第2減速制御に切り替える。そして、制御装置40は、ステップS15においてモータ16の回転速度を強制同期制御によってモータ16の回転数rが零になるまで減速させる第2減速制御を実行する。
【0046】
次に、制御装置40は、ステップS16においてモータ16の回転数rが零に到達したか否かを判定する。制御装置40は、ステップS16においてモータ16の回転数rが零に到達していないと判定すると、ステップS15に移行する。一方、制御装置40は、ステップS16においてモータ16の回転数rが零に到達したと判定すると、ステップS17に移行し、ステップS17において第2減速制御からブレーキ制御に切り替えてブレーキ制御を実行する。
【0047】
次に、制御装置40は、ステップS18において規定時間経過したか否かを判定する。ここで、規定時間とは、制御装置40によりブレーキ制御が実行されてからロータ25の回転が停止するまでに要する時間であり、この規定時間は予め求められて制御装置40に記憶されている。制御装置40は、ステップS18において規定時間経過していないと判定すると、ステップS17に移行する。一方、制御装置40は、ステップS18において規定時間経過したと判定すると、ステップS19に移行し、ステップS19においてブレーキ制御を終了する。圧縮室22内に残存する冷媒は、規定時間経過によって、モータハウジング13内へ充分に抜けており、ブレーキ制御を終了しても冷媒の膨張に伴うロータ25の逆回転は生じない。これにより、ロータ25の回転が強制的に停止し、圧縮室22内に残存する冷媒の膨張に伴うロータ25の逆回転が防止される。
【0048】
第1の実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1-1)強制同期制御では、ロータ25の位置θを推定せずに、モータ16に対して強制的に電流を流すことにより、モータ16の回転速度を減速していくため、消費電流が増大するとともにモータ16の回転速度を減速していくのに時間を要する。そこで、制御装置40は、モータ16の停止指令を空調ECU41から受信すると、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づいて、ロータ25の位置θを推定しつつ、モータ16の回転速度を減速させる第1減速制御を行う。よって、例えば、強制同期制御によってモータ16の回転速度を減速していく場合に比べると、消費電流を少なくすることができるとともにモータ16の回転速度を早期に減速することができる。
【0049】
また、駆動回路30からモータ16へ流れる電流は、モータ16の回転数が小さくなるほど不安定になっていくため、モータ16の回転数rが小さくなるほど、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置θの推定が困難になる。そこで、制御装置40は、第1減速制御によってモータ16の回転速度が減速した後に、モータ16の回転速度を強制同期制御によってモータ16の回転数rが零になるまで減速させる第2減速制御を行う。これにより、モータ16の回転数rが零になるまでモータ16の回転速度を確実に減速させることができる。
【0050】
そして、制御装置40は、第2減速制御によってモータ16の回転数rが零に到達した後に、ロータ25の位置θを特定の角度に固定するように各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作の制御を行うブレーキ制御を行う。よって、例えば、ロータ25が惰性回転を行っている際に制御装置40がブレーキ制御を行ってしまい、ロータ25の惰性回転に伴うモータ16からの回生電流が駆動回路30へ過剰に流れて、駆動回路30が故障してしまうといった問題を回避することができる。また、ロータ25の回転が停止した後、制御装置40によるブレーキ制御を行うタイミングが遅れて、ロータ25が逆回転し始めてしまうといった問題も回避することができる。以上のことから、駆動回路30の故障を回避しつつも、ロータ25の逆回転を効率良く防止することができる。
【0051】
(1-2)制御装置40は、モータ16の回転速度が第1減速制御によって減速されて、モータ16の回転数rが予め定められた規定回転数rxに到達すると、第1減速制御から第2減速制御に切り替える。これによれば、制御装置40は、モータ16の回転数rが規定回転数rxに到達するまで、モータ16の回転速度を第1減速制御によって減速するため、モータ16の回転速度を早期に減速させることができる。よって、ロータ25の逆回転を効率良く防止することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、電動圧縮機を具体化した第2の実施形態を
図5~
図8にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成について同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0053】
図5に示すように、制御装置40は、第1減速制御中に、駆動回路30からモータ16へ流れる電流の増加を検出すると、第1減速制御から第2減速制御に切り替える。ここで言う「電流の増加」とは、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定される電流の値に対して、実際に流れている電流の値が急激に増加した状態を言う。制御装置40には、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定される電流の値が予め記憶されている。
【0054】
図6では、第1減速制御中における駆動回路30からモータ16へ流れる電流の変化を、U相電流Iu、V相電流Iv、及びW相電流Iwに分けて示している。
図6では、U相電流Iuの変化を太線、V相電流Ivの変化を細線、W相電流Iwの変化を破線で示している。
図6において一点鎖線で示す円で囲まれた部分では、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定されるU相電流Iuの値に対して、U相電流Iuが急激に増加している。制御装置40は、第1減速制御中において、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのいずれか一つの増加を検出すると、第1減速制御から第2減速制御に切り替える。
【0055】
図7では、第1減速制御中におけるd軸電流の変化を太線L1で示すとともに、第1減速制御中におけるq軸電流の変化を細線L2で示している。
図7に示すように、第1減速制御中では、モータ16の回転速度が減速していくにつれて、d軸電流が徐々に小さくなっていく。また、q軸電流は、第1減速制御中においてモータ16の回転速度が減速してもほぼ一定である。
【0056】
ここで、本発明者らは、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定されるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの値に対して、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのいずれか一つが急激に増加したときに、モータ16に流れるq軸電流のみ変動が大きくなることを見出した。
図7において太線L1で示すように、実際に流れるU相電流Iuの値が、第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定されるU相電流Iuの値に対して増加すると、モータ16に流れるq軸電流の変動が大きくなる。モータ16に流れるq軸電流は、モータ16の回転数が小さくなると変動が大きくなる。本実施形態の制御装置40は、モータ16に流れるd軸電流とq軸電流のうち、q軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替えているとも言える。
【0057】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
図8に示すように、制御装置40は、まず、ステップS21においてモータ16の停止指令を空調ECU41から受信する。次に、制御装置40は、モータ16の停止指令を空調ECU41から受信すると、ステップS22においてモータ16の回転速度を位置センサレス制御によって減速させる第1減速制御を実行する。
【0058】
そして、制御装置40は、ステップS23において電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのいずれか一つの増加を検出したか否かを判定する。ステップS23においては、制御装置40は、電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの値と、予め記憶された第1減速制御中に駆動回路30からモータ16に流れると推定されるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwの値とを比較する。制御装置40は、ステップS23において電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのいずれか一つの増加を検出していないと判定すると、ステップS22に移行する。
【0059】
一方、制御装置40は、ステップS23において電流センサ41u,41v,41wにより検出されたモータ16に流れるU相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwのいずれか一つの増加を検出したと判定すると、ステップS24に移行し、ステップS24において第1減速制御から第2減速制御に切り替える。そして、制御装置40は、ステップS25においてモータ16の回転速度を強制同期制御によってモータ16の回転数rが零になるまで減速させる第2減速制御を実行する。
【0060】
次に、制御装置40は、ステップS26においてモータ16の回転数rが零に到達したか否かを判定する。制御装置40は、ステップS26においてモータ16の回転数rが零に到達していないと判定すると、ステップS25に移行する。一方、制御装置40は、ステップS26においてモータ16の回転数rが零に到達したと判定すると、ステップS27に移行し、ステップS27において第2減速制御からブレーキ制御に切り替えてブレーキ制御を実行する。
【0061】
次に、制御装置40は、ステップS28において規定時間経過したか否かを判定する。制御装置40は、ステップS28において規定時間経過していないと判定すると、ステップS27に移行する。一方、制御装置40は、ステップS28において規定時間経過したと判定すると、ステップS29に移行し、ステップS29においてブレーキ制御を終了する。これにより、ロータ25の回転が強制的に停止し、圧縮室22内に残存する冷媒の膨張に伴うロータ25の逆回転が防止される。
【0062】
第2の実施形態では、第1の実施形態の効果(1-1)と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2-1)制御装置40は、モータ16に流れるd軸電流とq軸電流のうち、q軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替える。モータ16の回転数が小さくなるほど位置推定の精度の悪化に伴い推定回転速度が変動し、速度フィードバック制御が誤動作するまで位置推定の誤差が大きくなると、モータ16に流れるq軸電流は大きく変動し、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる。q軸電流が大きく変動し始めるタイミングは、電動圧縮機10の負荷の状態や各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2の温度特性などによって変わる。
【0063】
そこで、制御装置40は、モータ16に流れるq軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替える。これによれば、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる限界まで第1減速制御によってモータ16の回転速度を減速させることができる。したがって、消費電力を極力少なくすることができるとともにモータ16の回転速度を可能な限り早期に減速することができる。よって、ロータ25の逆回転をさらに効率良く防止することができる。
【0064】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0065】
○
図9に示すように、制御装置40は、第1減速制御中において、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの周波数及び電流値の変動が大きくなったときに第1減速制御から第2減速制御に切り替えるようにしてもよい。U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの周波数及び電流値は、モータ16の回転数が小さくなるほど変動が大きくなる。ここで、本発明者らは、第1減速制御中において、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの周波数及び電流値の変動が大きくなったときに、モータ16に流れるq軸電流のみ変動が大きくなることを見出した。したがって、
図9に示す実施形態においても、制御装置40は、モータ16に流れるd軸電流とq軸電流のうち、q軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替えているとも言える。
【0066】
U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの周波数及び電流値の変動が大きくなると、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる。そこで、制御装置40は、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの周波数及び電流値の変動が大きくなったときに第1減速制御から第2減速制御に切り替える。これによれば、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる限界まで第1減速制御によってモータ16の回転速度を減速させることができる。よって、ロータ25の逆回転をさらに効率良く防止することができる。
【0067】
○
図10に示すように、制御装置40は、第1減速制御中において、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの正の振幅と負の振幅との時間差が大きくなるときに強制同期制御に切り替えるようにしてもよい。U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの振幅は、モータ16の回転数が小さくなるほど徐々に小さくなっている。そして、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの振幅は、第1減速制御中に大きな変動が生じる。このとき、U相電流Iuの正の振幅の時間T1は、U相電流Iuの負の振幅の時間T2よりも長くなったり短くなったりする。V相電流Ivの正の振幅の時間T11は、V相電流Ivの負の振幅の時間T12よりも長くなったり短くなったりする。W相電流Iwの正の振幅の時間T111は、W相電流Iwの負の振幅の時間T112よりも長くなったり短くなったりする。このように、制御装置40は、第1減速制御中において、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの変動が大きくなったときに第1減速制御から第2減速制御に切り替えるようにしてもよい。
【0068】
ここで、本発明者らは、第1減速制御中において、第1減速制御中において、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの正の振幅と負の振幅との時間差が大きくなったときに、モータ16に流れるq軸電流のみ変動が大きくなることを見出した。したがって、
図10に示す実施形態においても、制御装置40は、モータ16に流れるd軸電流とq軸電流のうち、q軸電流のみ変動が大きくなるときに第1減速制御から第2減速制御に切り替えているとも言える。
【0069】
U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの正の振幅と負の振幅との時間差が大きくなると、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる。そこで、制御装置40は、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwそれぞれの正の振幅と負の振幅との時間差が大きくなったときに第1減速制御から第2減速制御に切り替える。これによれば、駆動回路30からモータ16へ流れる電流に基づくロータ25の位置の推定が困難となる限界まで第1減速制御によってモータ16の回転速度を減速させることができる。よって、ロータ25の逆回転をさらに効率良く防止することができる。
【0070】
○ 上記各実施形態において、制御装置40は、ブレーキ制御として、例えば、各相の上アームを構成する各スイッチング素子Qu1,Qv1,Qw1のスイッチング動作をオンにするとともに、各相の下アームを構成する各スイッチング素子Qu2,Qv2,Qw2のスイッチング動作をオフにするようにしてもよい。
【0071】
○ 上記各実施形態において、制御装置40は、第2減速制御によってモータ16の回転数rが零に到達した後に、ブレーキ制御として、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2のスイッチング動作を所定のタイミングで停止させてもよい。これによれば、モータ16に対して直流通電が行われ、ロータ25の位置θが特定の角度で固定される。
【0072】
○ 上記各実施形態において、第1減速制御中のモータ16の回転数rが、曲線的に小さくなっていってもよい。
○ 上記各実施形態において、第2減速制御中のモータ16の回転数rが、曲線的に小さくなっていってもよい。
【0073】
○ 上記各実施形態において、圧縮部15は、固定スクロール20と可動スクロール21とから構成されるスクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
【0074】
○ 上記各実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、駆動回路30が、ハウジング11に対して回転軸14の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部15、モータ16、及び駆動回路30が、この順で、回転軸14の回転軸線方向に並設されていなくてもよい。
【0075】
○ 上記各実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置28を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部15により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2…スイッチング素子、10…電動圧縮機、15…圧縮部、16…モータ、22…圧縮室、25…ロータ、30…駆動回路、40…制御部である制御装置。