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  • 特許-ワイヤハーネス、及び外装部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス、及び外装部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220117BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220117BHJP
   H01B 7/20 20060101ALI20220117BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20220117BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H02G3/04
H01B7/00 301
H01B7/20
F16L57/00 A
B60R16/02 623U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018190226
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020061822
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕一
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180168(JP,A)
【文献】特開2017-158299(JP,A)
【文献】特開2009-296743(JP,A)
【文献】特開2002-186131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
H01B 7/20
F16L 57/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線部材が挿通される外装部材であって、
自身と前記電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔が並設され、前記排出孔の前記電線部材側の端部には面取り部が形成された外装部材。
【請求項2】
電線部材が挿通される管状の外装部材であって、
自身と前記電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔が並設され、管状とされた状態で軸方向に延びる溝部が周方向に複数形成された外装部材。
【請求項3】
前記溝部は、周方向に並設される前記排出孔毎に形成された請求項2に記載の外装部材。
【請求項4】
前記排出孔は、六角形に形成されてハニカム構造とされた請求項1から請求項3の何れか1項に記載の外装部材。
【請求項5】
電線部材と、
前記電線部材が挿通される請求項1から請求項4の何れか1項に記載の外装部材と
を備えたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス、及び外装部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスとしては、電線部材の外側がコルゲートチューブや樹脂パイプ等の外装部材で覆われたワイヤハーネスが知られている。そして、このようなワイヤハーネスは、車両床下等に配索されて外部に晒される場合があるため、各種外装部材に覆われるとともに外装部材同士の間に発泡部材を介在させて外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することを防止しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、電線部材が砂等の異物と長期的に擦れ合って傷付くといったことが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-201336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように発泡部材等の別部材を用いて外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することを防止する構成では、構成が複雑化して部品点数や組み付け工数が増大する等、コストの増大を招くことになる。そのため、簡単な構成で電線部材が傷付きにくいワイヤハーネスが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡単な構成で電線部材を良好に保護することができるワイヤハーネス、及び外装部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、電線部材と、前記電線部材が挿通される外装部材とを備えたワイヤハーネスであって、前記外装部材には、該外装部材と前記電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔が並設される。
【0007】
同構成によれば、外装部材には、該外装部材と電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔が並設されるため、排出孔から異物を排出することができ、外装部材と電線部材との間に異物が保持されてしまうことを防ぐことができる。よって、電線部材が砂等の異物と長期的に擦れ合って傷付くといったことが防止され、簡単な構成で電線部材を良好に保護することができる。
【0008】
上記ワイヤハーネスであって、前記外装部材は、前記排出孔が六角形に形成されてハニカム構造とされることが好ましい。
同構成によれば、外装部材は、前記排出孔が六角形に形成されてハニカム構造とされるため、排出孔からの異物の排出能力を高めながらも、全体の剛性を高く保つことができる。
【0009】
上記ワイヤハーネスであって、前記排出孔の前記電線部材側の端部には面取り部が形成されることが好ましい。
同構成によれば、前記排出孔の前記電線部材側の端部には面取り部が形成されるため、排出孔の電線部材側の端部に電線部材が擦れて傷付くことが低減される。
【0010】
上記ワイヤハーネスであって、前記外装部材は、シート状成形品が丸められて管状とされたものであることが好ましい。
同構成によれば、前記外装部材は、シート状成形品が丸められて管状とされたものであるため、成形工程で例えば複数個分のシート状成形品をまとめて成形することができるなど、容易に大量に製造することができる。
【0011】
上記ワイヤハーネスであって、前記外装部材には、管状とされた状態で軸方向に延びる溝部が周方向に複数形成されることが好ましい。
同構成によれば、前記外装部材には、管状とされた状態で軸方向に延びる溝部が周方向に複数形成されるため、容易に丸めて管状とすることができる。
【0012】
上記ワイヤハーネスであって、前記溝部は、周方向に並設される前記排出孔毎に形成されることが好ましい。
同構成によれば、前記溝部は、周方向に並設される排出孔毎に形成されるため、外装部材の剛性を各部位で一定としながら、容易に丸めて管状とすることができる。
【0013】
上記課題を解決する外装部材は、電線部材が挿通される外装部材であって、自身と前記電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔が並設される。
同構成によれば、外装部材には、自身と電線部材との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の孔が並設されるため、外装部材と電線部材との間に異物が保持されてしまうことを防ぐことができる。よって、電線部材が砂等の異物と長期的に擦れ合って傷付くといったことが防止され、簡単な構成で電線部材を良好に保護することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイヤハーネス、及び外装部材によれば、簡単な構成で電線部材を良好に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図。
図2】一実施形態のワイヤハーネスの一部斜視図。
図3】一実施形態のシート状成形品の一部平面図。
図4図3における4-4断面図。
図5】別例のプロテクタの斜視図。
図6】別例のワイヤハーネスの断面図。
図7】別例のワイヤハーネスの断面図。
図8】別例のワイヤハーネスの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ワイヤハーネスの一実施形態について、図1図4に従って説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0017】
図1に示すようにワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続するものであって、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下等を通るように配索され、その一端がコネクタC1を介してインバータ11に接続され、他端がコネクタC1を介して高圧バッテリ12に接続される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、百ボルト以上の電圧を供給可能なバッテリである。
【0018】
図2に示すように、ワイヤハーネス10は、電線部材20を備え、該電線部材20は、芯線21と該芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する複数本(本実施形態では2本)の電線23を備える。
【0019】
また、図1に示すように、ワイヤハーネス10は、前記電線部材20が挿通される種々の外装部材として金属パイプ25とプロテクタ26と樹脂パイプ27とを備える。金属パイプ25は、高圧バッテリ12から延びて車両Vの床下に配索される電線部材20を覆うように設けられている。プロテクタ26は、金属パイプ25よりもインバータ11側の電線部材20の屈曲部位を覆うように設けられている。樹脂パイプ27は、プロテクタ26とインバータ11との間の電線部材20を覆うように設けられている。
【0020】
ここで、図2に示すように、樹脂パイプ27には、該樹脂パイプ27と前記電線部材20との間に侵入した砂等の異物を外部に排出可能な多数の排出孔28が並設されている。本実施形態の樹脂パイプ27は、排出孔28が六角形に形成されてハニカム構造とされている。詳しくは、六角形の排出孔28は、電線部材20の延在方向であって軸方向に沿って等間隔で並設されるとともに、周方向に沿って等間隔で並設され、周方向に隣り合う排出孔28が軸方向にずれて設けられることで樹脂パイプ27がハニカム構造とされている。
【0021】
また、図2図4に示すように、樹脂パイプ27は、シート状成形品29が丸められて管状とされたものである。樹脂パイプ27(シート状成形品29)には、管状とされた状態で軸方向に延びる溝部30が周方向に複数形成されている。溝部30は、樹脂パイプ27の外周側に形成されている。溝部30は、周方向に並設される排出孔28毎に形成されている。溝部30は、各排出孔28の周方向中心と対応した周方向位置に形成され、軸方向に並設される排出孔28同士の間に形成されている。図4に示すように、溝部30は、深くなるほど幅が狭くなるV字形状に形成されている。
【0022】
また、図4に示すように、排出孔28の電線部材20側(すなわち、溝部30の反対側であって、樹脂パイプ27の内周側)の端部には断面R形状の面取り部31が形成されている。面取り部31は、排出孔28の六角形の全周に形成されている。
【0023】
次に、上記のように構成されたワイヤハーネス10の作用について説明する。
例えば、車両Vの走行中等では、回転するタイヤによる跳ね上げや走行風等によって地面の砂等の異物が舞い上げられてワイヤハーネス10に掛かることがある。そして、樹脂パイプ27と電線部材20との間に砂等の異物が入り込むこともあるが、それら異物は排出孔28から排出される。
【0024】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)樹脂パイプ27には、該樹脂パイプ27と電線部材20との間に侵入した異物を外部に排出可能な多数の排出孔28が並設されるため、排出孔28から異物を排出することができ、樹脂パイプ27と電線部材20との間に異物が保持されてしまうことを防ぐことができる。よって、電線部材20が砂等の異物と長期的に擦れ合って傷付くといったことが防止され、簡単な構成で電線部材20を良好に保護することができる。
【0025】
(2)樹脂パイプ27は、排出孔28が六角形に形成されてハニカム構造とされるため、排出孔28からの異物の排出能力を高めながらも、全体の剛性を高く保つことができる。
【0026】
(3)排出孔28の電線部材20側の端部には面取り部31が形成されるため、排出孔28の電線部材20側の端部に電線部材20が擦れて傷付くことが低減される。
(4)樹脂パイプ27は、シート状成形品29が丸められて管状とされたものであるため、成形工程で例えば複数個分のシート状成形品29をまとめて成形することができるなど、容易に大量に製造することができる。
【0027】
(5)樹脂パイプ27には、管状とされた状態で軸方向に延びる溝部30が周方向に複数形成されるため、容易に丸めて管状とすることができる。
(6)溝部30は、周方向に並設される排出孔28毎に形成されるため、樹脂パイプ27の剛性を各部位で一定としながら、容易に丸めて管状とすることができる。
【0028】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、樹脂パイプ27に排出孔28が設けられた例としたが、他の外装部材に多数の排出孔を並設して実施してもよい。
【0029】
具体的には、例えば、図5及び図6に示すように、外装部材としてのプロテクタ26に多数の排出孔40を並設して実施してもよい。このプロテクタ26は、樹脂材よりなり、2本の電線23を備えた電線部材20が挿通可能な略四角筒状に形成されるとともに屈曲部を有し、電線部材20の経路をプロテクタ26の形状に沿って規制する。そして、プロテクタ26の各面には多数の排出孔40が並設されている。また、この例においても、排出孔40は六角形に形成されてプロテクタ26はハニカム構造とされている。また、この例においても、図6に示すように、排出孔40の電線部材20側の端部には面取り部41が形成されている。このようにしても、上記実施形態の効果(1)~(3)と同様の効果を得ることができる。なお、図5では、プロテクタ26が2つの直角な屈曲部を有するように図示しているが、勿論、1つの屈曲部しか有していないものや、直角でない屈曲部を有したもの等、他の形状のプロテクタ26として具体化してもよい。
【0030】
また、この例(図5及び図6参照)では、プロテクタ26を単一で可変しない一体成形品として図示したが、これに限定されず、複数の成形品で構成したり、可変可能な成形品としてもよい。
【0031】
具体的には、例えば、図7に示すように、プロテクタ26を略2分割した形状の第1成形品42と第2成形品43とから構成してもよい。
また、例えば、図8に示すように、プロテクタ26を開閉変形可能とするヒンジ部44を有した構成としてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、排出孔28,40が六角形に形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、円形や四角形等の他の形に形成してもよい。すなわち、樹脂パイプ27やプロテクタ26(図5参照)をハニカム構造としなくてもよい。また、上記実施形態では排出孔28,40が等間隔で全体に形成されるとしたが、これに限定されず、一部(例えば、車両Vに固定された状態で下部)にのみ並設された構成としてもよい。
【0033】
・上記実施形態では、排出孔28,40の電線部材20側の端部には断面R形状の面取り部31,41が形成されるとしたが、これに限定されず、例えば、断面が傾斜した直線形状の面取り部としてもよいし、面取り部を形成しなくてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、樹脂パイプ27は、シート状成形品29が丸められて管状とされたものであるとしたが、これに限定されず、最初から管状に成形されたものとしてもよい。また、特にこのような場合、溝部30を形成しなくてもよい。また、シート状成形品29が丸められて管状とされた樹脂パイプ27であっても、溝部30を形成しなくてもよい。また、溝部30を形成する場合の周方向の間隔は、変更してもよく、例えば排出孔28の2つ置き毎等に変更してもよい。また、溝部30は、V字形状以外の形状としてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、電線部材20は、2本の電線23を備えた構成としたが、1本や3本以上の電線を備えた構成としてもよい。また、電線部材20は、更に電線23の外周を包囲する電磁シールド部材を備えた構成としてもよく、例えば電線23の外周を包囲する複数の金属素線が編成された編組部材を備えた構成としてもよい。なお、編組部材を構成する金属素線の材料は、アルミニウム系金属材料や銅系金属材料等を用いることができる。
【0036】
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続するワイヤハーネスに採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…ワイヤハーネス
20…電線部材
26…プロテクタ(外装部材)
27…樹脂パイプ(外装部材)
28,40…排出孔
29…シート状成形品
30…溝部
31,41…面取り部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8