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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20220117BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20220117BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/09
H01L43/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019193474
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021067568
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】梅原 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 研一
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139110(WO,A1)
【文献】特表2017-502298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313122(US,A1)
【文献】特開2019-074481(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/00-33/26、
H01L 27/22、
29/82、
43/00-43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軟磁性層と、
前記第1の軟磁性層の厚さ方向において前記第1の軟磁性層と異なる位置に設けられた一対の第2の軟磁性層と、
前記厚さ方向において前記第1の軟磁性層と前記第2の軟磁性層との間に設けられ、前記一対の第2の軟磁性層の配列方向と平行な磁界検出方向を有する磁界検出素子と、を有し、
前記磁界検出素子が設置される領域は、前記配列方向における前記第1の軟磁性層の中央部と対向する位置に設けられ、
前記厚さ方向からみて、前記一対の第2の軟磁性層は前記第1の軟磁性層の中心の両側に位置している、磁気センサ。
【請求項2】
前記厚さ方向からみて、前記磁界検出素子の少なくとも一部は前記一対の第2の軟磁性層の間に位置する、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記厚さ方向からみて、前記一対の第2の軟磁性層は前記第1の軟磁性層と重なっている、請求項1または2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記厚さ方向からみて、前記一対の第2の軟磁性層は前記第1の軟磁性層から離れている、請求項1または2に記載の磁気センサ。
【請求項5】
複数の第1の軟磁性層と、複数の第2の軟磁性層と、ブリッジ回路を構成する複数の磁界検出素子と、を有し、
複数の第2の軟磁性層は、前記磁界検出素子と交互に位置するように所定の配列方向に沿って配列され、
前記第1の軟磁性層の厚さ方向において、前記第2の軟磁性層は前記第1の軟磁性層と異なる位置に設けられ、前記磁界検出素子は、前記第1の軟磁性層と前記第2の軟磁性層との間に設けられ、
前記磁界検出素子は、前記配列方向と平行な磁界検出方向を有し、前記磁界検出素子が設置される領域は、前記配列方向における前記第1の軟磁性層の中央部と対向する位置に設けられ
前記厚さ方向からみて、前記第2の軟磁性層は各第1の軟磁性層の中心の両側に位置している、磁気センサ。
【請求項6】
前記複数の磁界検出素子は4つの磁界検出素子であり、2つの前記磁界検出素子が前記磁界検出方向方向に互いに隣接して第1の列を、他の2つの前記磁界検出素子が前記磁界検出方向方向に互いに隣接して第2の列を形成し、
前記第1の列と前記第2の列は前記磁界検出方向と直交する方向に互いに隣接し、
前記厚さ方向からみて、各の前記磁界検出素子の中心と前記第2の軟磁性層の中心は、前記第1の軟磁性層の中心より前記第1の列と前記第2の列の境界に近接している、請求項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第2の軟磁性層の前記第1の軟磁性層と対向する縁部は面取りされている、請求項1からのいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記磁界検出素子はTMR素子を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサは特定の方向(磁界検出方向)の磁界を検出する。磁気センサは磁界検出素子を備えている。TMR素子に代表される磁気抵抗効果を用いた磁界検出素子は、大きな磁界の検出時に磁気的に飽和する可能性が高いため、磁界検出素子の近傍に磁界を減衰させるための遮へい構造を設けることがある。特許文献1には感知素子の近傍に減衰器が、基準素子の近傍に遮へい体が設けられた磁気センサが開示されている。減衰器と遮へい体は軟磁性体などで形成され、同一平面上に磁界検出方向に交互に配置されている。感知素子は減衰器の直下に、基準素子は遮へい体の直下に、すなわち減衰器と遮へい体に対して同じ側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-502298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気センサは磁界検出方向の磁界だけを検出することが望まれるが、通常、外部磁界は磁界検出方向以外の成分も含んでいる。磁界検出方向以外の磁界成分は磁気センサのノイズ源となり、SN比を低下させる。特許文献1に記載された磁気センサは磁界検出方向の磁界を減衰させることができるが、磁界検出方向と直交する方向の磁界については何ら開示されていない。
【0005】
本発明は、磁界検出方向と直交する方向の磁界を磁界検出方向の磁界よりも高い比率で減衰させることができる磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気センサは、第1の軟磁性層と、第1の軟磁性層の厚さ方向において第1の軟磁性層と異なる位置に設けられた一対の第2の軟磁性層と、厚さ方向において第1の軟磁性層と第2の軟磁性層との間に設けられ、一対の第2の軟磁性層の配列方向と平行な磁界検出方向を有する磁界検出素子と、を有している。磁界検出素子が設置される領域は、上記配列方向における第1の軟磁性層の中央部と対向する位置に設けられている。厚さ方向からみて、一対の第2の軟磁性層は第1の軟磁性層の中心の両側に位置し、磁界検出素子は第1の軟磁性層の周縁部の内側に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁界検出方向と直交する方向の磁界を磁界検出方向の磁界よりも高い比率で減衰させることができる磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る磁気センサの概念図である。
図2図1に示す磁気センサに外部磁界を印加したときの磁束密度の例である。
図3】第2の実施形態に係る磁気センサの概念図である。
図4】第2の実施形態に係る磁気センサの概念図である。
図5図2に示す磁気センサに外部磁界を印加したときの磁束密度の例である。
図6】第3の実施形態に係る磁気センサの概念図である。
図7図3に示す磁気センサに外部磁界を印加したときの磁束密度の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の磁気センサのいくつかの実施形態について説明する。以下の説明及び図面において、X方向は磁気センサの磁界検出方向と平行な方向、あるいは一対の第2の軟磁性層の配列方向と平行な方向である。Y方向は一対の第2の軟磁性層の互いに対向する縁部と平行な方向であり、磁界検出素子のバイアス磁界の向きと一致する。Z方向はX方向及びY方向と直交する方向であり、第1の軟磁性層、第2の軟磁性層及び磁界検出素子の厚さ方向と一致する。X方向の磁界は信号磁界であり、Y方向の磁界は遮へい対象の磁界である。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気センサ1の概念図であり、図1(a)は磁気センサ1の斜視図、図1(b)は図1(a)のA-A線で切断した断面図を示している。磁気センサ1は、磁界検出素子2と、第1の軟磁性層3と、一対の第2の軟磁性層4A,4Bと、を有している。磁界検出素子2は直列接続された複数のTMR素子(図示せず)から構成されている。各TMR素子のフリー層の磁化方向は、外部磁化のない状態では、バイアス磁石(図示せず)によってY方向を向いている。X方向に外部磁界(信号磁界)が印加されると、フリー層の磁化方向が外部磁界の大きさに応じてX-Y面内をX方向に回転し、TMR素子の電気抵抗が変化する。磁気センサ1は電気抵抗に応じた電圧を出力し、それによってX方向の磁界強度が求められる。
【0011】
第1の軟磁性層3はパーマロイ(NiFe)などの軟磁性層からなる薄膜であり、メッキやスパッタリングによって形成される。Z方向からみて、第1の軟磁性層3は長方形であり、磁界検出素子2は第1の軟磁性層3に含まれている。換言すれば、Z方向からみて、磁界検出素子2は第1の軟磁性層3の周縁部31の内側に位置しており、磁界検出素子2の周縁部21は第1の軟磁性層3の周縁部31と重なっていない。第1の軟磁性層3のZ方向からみた形状は磁界検出素子2の形状に応じて決定することができる。例えば磁界検出素子2がY方向に長いバー形状であるときは、第1の軟磁性層3もY方向に長いバー形状とすることができる。第1の軟磁性層3と磁界検出素子2との間にはZ方向にギャップG1が設けられている。
【0012】
一対の第2の軟磁性層4A,4Bは、Z方向において第1の軟磁性層3と異なる位置ないしレベルに設けられている。第2の軟磁性層4A,4Bは、Z方向において同じレベルに設けられている。すなわち、第1の軟磁性層3と一対の第2の軟磁性層4A,4Bとの間にはZ方向にギャップG2が設けられている。磁界検出素子2はZ方向において第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bとの間に設けられている。このように、第1の軟磁性層3と磁界検出素子2と一対の第2の軟磁性層4A,4Bは3層構成をなしており、かつZ方向に互いに分離されている。第1の軟磁性層3と磁界検出素子2との間、及び磁界検出素子2と一対の第2の軟磁性層4A,4Bとの間は、アルミナなどの非磁性材料が充填されている。Z方向からみて(すなわち、X方向において)、一対の第2の軟磁性層4A,4Bは第1の軟磁性層3の中心CのX方向両側に位置し、且つ第1の軟磁性層3と重なっている。Z方向からみて(すなわち、X方向において)、磁界検出素子2は一対の第2の軟磁性層4A,4Bの間に位置しており、第2の軟磁性層4A,4Bのいずれからも離れている。
【0013】
図2(a)はX方向に磁束密度10mTの外部磁界を印加したときの磁束密度(Bx)を、図2(b)はY方向に磁束密度10mTの外部磁界を印加したときの磁束密度(By)を示している。実施例は本実施形態に対応し、比較例1では第1の軟磁性層3だけが設けられ、比較例2では一対の第2の軟磁性層4A,4Bだけが設けられている。Bx及びByは磁界検出素子2の設置される領域における平均値であり、図中に磁界検出素子2の設置されるX方向の領域を記載している。比較例1では、磁界検出素子2の設置される領域でBx,Byとも低い値を示している。これは第1の軟磁性層3が磁界を弱めるシールドとして機能していることを示している。比較例2では、磁界検出素子2の設置される領域でBx,Byとも大きな値を示している。これは第2の軟磁性層4A,4Bが磁界を強めるヨークとして機能していることを示している。表1はX方向の磁場透過率Pxに対するY方向の磁場透過率Pyの比Py/Pxを示している。磁場透過率Px,Pyは、磁場透過率が求められる場所における磁束密度の、外部磁界により生じる磁束密度の比として定義される。比較例1に対する比較例2の増加率はX方向の方がY方向よりも大きい。このため、Py/Pxは比較例1より比較例2の方が小さい。実施例は磁界検出素子2の設置される領域で、比較例1より大きな磁束密度Bxを示している。これに対して、磁束密度Byは比較例1とほとんど同じである。この結果、Py/Pxは比較例2よりも小さくなっている。すなわち、実施例は信号磁場を透過させ信号磁場と直交する磁場を減衰させる性能が高く、信号磁場と異なる方向から印加される外乱磁場に強い。また、比較例2はBx,Byとも大きな値を示しているため、外部磁場が大きいときは磁気センサ1の出力が飽和し、測定精度が低下する可能性がある。
【0014】
【表1】
【0015】
表2、3は、Z方向からみた第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bの重なり長さD(図1(b)参照)をパラメータとしたときの、X方向磁場透過率Pxと、Y方向磁場透過率Pyと、それらの比Py/Pxと、を示している。X方向磁場透過率PxはX方向に10mTの外部磁界を掛けたときの値であり、Y方向磁場透過率PyはY方向に10mTの外部磁界を掛けたときの値である。Dが負の場合、第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bは重なっておらず、第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bの離間距離がDの負値で示されている。表2は第2の軟磁性層4A,4Bの幅W(図1(b)参照)が12μm、表3は第2の軟磁性層4A,4Bの幅Wが24μmの場合を示している。
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
表2、3からわかる通り、重なりの有無や重なり長さDはPy/Pxに対して有意な差を与えず、他の要因で適宜選択することができる。すなわち、Z方向からみて、一対の第2の軟磁性層4A,4Bは第1の軟磁性層3から離れていてもよい。例えば、第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bの重なり長さDを増加することで、磁気センサ1のX方向寸法を短縮することができる。第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bが重ならないようにすれば、第1の軟磁性層3の広い範囲でByの小さい領域を確保することができるため、磁界検出素子2のX方向の設置領域を拡大することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施形態に係る磁気センサ1の概念図であり、図3(a)は磁気センサ1の斜視図、図3(b)は図3(a)のA-A線で切断した断面図を示している。本実施形態では4つの磁界検出素子(第1~第4の磁界検出素子2A~2D)が設けられている。図4(a)は磁気センサ1の平面図、図4(b)は図4(a)に対応する磁気センサ1の概略回路構成を示している。磁界検出素子2A~2Dがブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)で相互に接続されている。4つの磁界検出素子2A~2Dは2つの組2A,2B及び2C,2Dに分割され、それぞれの組の磁界検出素子2A,2B及び磁界検出素子2C,2Dが直列接続されている。磁界検出素子2の組2A,2B及び2C,2Dのそれぞれの一端が電源電圧Vccに接続され、他端が接地(GND)されている。また、第1の磁界検出素子2Aと第2の磁界検出素子2Bの間の中点電圧V1と、第3の磁界検出素子2Cと第4の磁界検出素子2Dの間の中点電圧V2が取り出されるようにされている。従って、第1~第4の磁界検出素子2A~2Dの電気抵抗をそれぞれR1~R4とすると、中点電圧V1、V2はそれぞれ下式のように求められる。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
中点電圧V1,V2の差分V1-V2を検出することで、中点電圧V1,V2を検出する場合と比べて2倍の感度が得られる。また、中点電圧V1,V2がオフセットしている場合も差分を検出することでオフセットの影響を排除することができる。
【0023】
本実施形態の磁気センサ1は、各々が磁界検出素子と第1の軟磁性層と一対の第2の軟磁性層からなる複数の組5A~5Dを有している。第1の組5Aは磁界検出素子2Aと、第1の軟磁性層3Aと、一対の第2の軟磁性層4A,4Bとを有し、第2の組5Bは磁界検出素子2Bと、第1の軟磁性層3Bと、一対の第2の軟磁性層4B,4Cとを有し、第3の組5Cは磁界検出素子2Cと、第1の軟磁性層3Cと、一対の第2の軟磁性層4D,4Eとを有し、第4の組5Dは磁界検出素子2Dと、第1の軟磁性層3Dと、一対の第2の軟磁性層4E,4Fとを有している。第1の組5Aと第2の組5Bが磁界検出方向Xに互いに隣接し、第3の組5Cと第4の組5Dが磁界検出方向Xに互いに隣接している。第1の組5Aと第2の組5Bが磁界検出方向Xに互いに隣接して第1の列6Aを、第3の組5Cと第4の組5Dが磁界検出方向Xに互いに隣接して第2の列6Bを形成している。第1の列6Aと第2の列6Bは磁界検出方向と直交する方向Yに互いに隣接している。第1の組5Aの一方の第2の軟磁性層4Bは、隣接する第2の組5Bの一方の第2の軟磁性層4Bと一体化されている。同様に、第3の組5Cの一方の第2の軟磁性層4Eは、隣接する第4の組5Dの一方の第4の軟磁性層4Eと一体化されている。
【0024】
図5は(a)はX方向に10mT及び100mTの外部磁界を印加したときの磁束密度(Bx)を、図5(b)はY方向に10mT及び100mTの外部磁界を印加したときの磁束密度(By)を示している。Bx及びByは磁界検出素子2A~2Dの設置される領域における平均値である。磁界検出素子2A~2Dの設置領域ではBxが大きく、Byが小さい。10mT、100mTの場合ともX方向磁場透過率Pxは23%、Y方向磁場透過率Pyは4%、Py/Pxは約17%であった。
【0025】
Z方向からみて、各組の磁界検出素子2A~2Dの中心C1と一対の第2の軟磁性層4A~4Fの中心C2は、第1の軟磁性層3の中心C3より第1の列6Aと第2の列6Bの境界に近接している。これによって、磁界検出素子2A~2Dの設置領域におけるBxのばらつきを抑えることができる。磁界検出素子2A~2Dの設置領域内でBxの大きさがばらつくと、磁界検出素子2A~2Dを構成する個々のMR素子の出力がばらつく。この結果、磁界検出素子2A~2Dの出力が縁部7の影響を受けやすくなる。ばらつきを抑えることで、磁界検出素子2A~2Dの設計自由度が高められる。
【0026】
(第3の実施形態)
図6は第3の実施形態に係る磁気センサ1の概念図であり、図6(a)は磁気センサ1の斜視図、図6(b)は図1(a)のA-A線で切断した断面図を示している。本実施形態は第2の実施形態の変形例であるが、第1の実施形態に対しても同様に適用することができる。第2の軟磁性層4A~4Fの第1の軟磁性層3と対向する縁部7は面取りされている。図7はX方向に10mTの外部磁界を印加したときの磁束密度(Bx)を示している。面取りがない場合、磁界検出素子2の設置領域のX方向端部付近(ほぼ第2の軟磁性層4A~4Fの縁部7に一致する)でBxのピークが見られる。鋭い縁部7には磁束が集中するため、その近傍で磁束密度が増加する。この結果、磁界検出素子2A~2Dの設置領域内でBxの大きさがばらつく。縁部7を面取りすることで、図に示すように第2の軟磁性層4A~4Fの縁部7の磁束密度が低下し、磁界検出素子2A~2Dの設置領域内でBxの大きさがより平準化される。これによって、第2の実施形態で述べた効果がさらに増大する。
【0027】
以上説明したように、上述の各実施形態では第1の軟磁性層3(または3A~3D)と第2の軟磁性層4A,4B(または4A~4F)が異なるレベルに配置されている。このため、第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4Bの配置の自由度が増大する。例えば、第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4BのX方向の重なりDや第1の軟磁性層3と第2の軟磁性層4A,4BのZ方向のギャップG2の寸法H(図1(b)参照)を調整することで、ヨークとして機能する第2の軟磁性層4A,4Bの集磁性能を調整することができる。表4にはギャップG2の寸法Hを変えたときの磁界検出素子2の設置領域におけるX方向の平均磁場透過率を示している。磁界検出素子2と第1の軟磁性層3とのギャップG1は1μmとしている。ギャップG2の寸法Hを変えることで平均磁場透過率を調整することができる。一般に、平均磁場透過率が高いほど磁気センサ1の感度は向上するが、信号磁場が高いときには逆に信号磁場を低減する必要が生じることがある。このように、上述した各実施形態では平均磁場透過率を調整が容易である。
【0028】
【表4】
【0029】
上述の各実施形態では一つの磁界検出素子2に一つに第1の軟磁性層3が組み合わされている。第1の軟磁性層3はZ方向からみて磁界検出素子2を覆う大きさを有しており、製造誤差による影響を受けにくい。このため、磁気センサ1の歩留まりを向上させることができる。第1の軟磁性層3の形状も特に限定されないため、磁界検出素子2の設計に合わせた最適な形状及び大きさの第1の軟磁性層3を採用することができる。
【0030】
第2の軟磁性層4A,4Bの形状も限定されない。例えば、第2の軟磁性層4A,4BがY方向に長い形状である場合、Y方向の磁化が飽和しやすい。本実施形態ではZ方向からみた第2の軟磁性層4A,4Bのアスペクト比が限定されないため、最適な形状の第2の軟磁性層4A,4Bを採用することができる。
【0031】
本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、磁界検出素子2はZ方向からみて第2の磁界検出素子2のいずれかまたは双方と重なっていてもよい。第2及び第3の実施形態において、ブリッジ回路を構成する4つの磁界検出素子2は1列に配置されていてもよい。すなわち、複数の組5A~5Dの少なくとも一部が磁界検出方向に互いに隣接していればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 磁気センサ
2,2A~2D 磁界検出素子
3,3A~3D 第1の軟磁性層
4A~4F 第2の軟磁性層
X 磁界検出方向
Z 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7