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7006734炭素繊維束の分繊方法、装置、および繊維強化樹脂成形材料の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】炭素繊維束の分繊方法、装置、および繊維強化樹脂成形材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/12 20060101AFI20220117BHJP
   D06H 7/04 20060101ALI20220117BHJP
   D02G 3/16 20060101ALI20220117BHJP
   B26D 1/40 20060101ALI20220117BHJP
   B26F 1/18 20060101ALI20220117BHJP
   B26F 1/20 20060101ALI20220117BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20220117BHJP
   D02J 1/18 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B29B15/12
D06H7/04
D02G3/16
B26D1/40 502M
B26F1/18
B26F1/20
B26D3/08 Z
D02J1/18 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020126738
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2017133132の分割
【原出願日】2016-07-07
(65)【公開番号】P2020186511
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2015136084
(32)【優先日】2015-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016078937
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 禎雄
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 由貴廣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 康
(72)【発明者】
【氏名】金羽木 惇二
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104154(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021315(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/067763(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/043037(WO,A1)
【文献】特開平01-163219(JP,A)
【文献】特開平02-175729(JP,A)
【文献】特開2010-163536(JP,A)
【文献】特開平08-192424(JP,A)
【文献】特開2014-210991(JP,A)
【文献】特開2011-241494(JP,A)
【文献】特開2013-133378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
D06B 1/00-23/30
D06C 3/00-29/00
D06G 1/00- 5/00
D06H 1/00- 7/24
B26D 1/00- 1/24
B26D 3/00- 3/30
B26F 1/00- 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される連続炭素繊維束の幅方向にスペーサ部材と交互に並べられた複数の刃物のそれぞれが、断続的に、かつ、前記連続炭素繊維束に該スペーサ部材が接することになる深さまで、前記連続炭素繊維束に突き刺される、炭素繊維束の分繊方法。
【請求項2】
前記複数の刃物を挟む位置に配置された一対のガイド部材の間を搬送される前記連続炭素繊維束に対して、前記一対のガイド部材が配置された側とは反対側から、前記複数の刃物のそれぞれが突き刺される、請求項1に記載の分繊方法。
【請求項3】
刃物を挟む位置に配置された一対のガイド部材の間を搬送される連続炭素繊維束に対して、前記一対のガイド部材が配置された側とは反対側から、断続的に前記刃物が突き刺されることによって、前記連続炭素繊維束に、長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分とが下式(3)の条件を充たすように形成される、炭素繊維束の分繊方法。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(3)中、aは前記分繊部分の長さであり、bは前記未分繊部分の長さである。)
【請求項4】
前記連続炭素繊維束に、長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分とが下式(1’)および(3’)の条件を充たすように形成される、請求項1または2に記載の分繊方法。
1≦/25.4 ・・・(1’)
0.9≦A/(A+B)<1 ・・・(3’)
(ただし、前記式(1’)および(3’)中、は前記分繊部分の長さ(単位:mm)であり、Bは前記未分繊部分の長さ(単位:mm)である。)
【請求項5】
らに下式(2’)の条件を充たす、請求項4に記載の分繊方法。
/25.4≦10 ・・・(2’)
(ただし、前記式(2’)中、は前記分繊部分の長さ(単位:mm)である。)
【請求項6】
前記連続炭素繊維束に、長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分とが下式(3)の条件を充たすように形成される、請求項1または2に記載の分繊方法。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(3)中、aは前記分繊部分の長さであり、bは前記未分繊部分の長さである。)
【請求項7】
裁断した炭素繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する方法であって、請求項1または2に記載の分繊方法を用いて長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分が形成されるように連続炭素繊維束を分繊した後、前記連続炭素繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断することを含み、下式(1’’)および(3)の条件を充たす、製造方法。
1<a/L ・・・(1’’)
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(1’’)および(3)中、aは前記分繊部分の長さであり、bは前記未分繊部分の長さであり、Lは前記間隔である。)
【請求項8】
裁断した炭素繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する方法であって、請求項に記載の分繊方法を用いて長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分が形成されるように連続炭素繊維束を分繊した後、前記連続炭素繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断することを含み、下式(1’’)の条件を充たす、製造方法。
a/L・・・(1’’
(ただし、前記式(1’’)中、aは前記分繊部分の長さであり、Lは前記間隔である。)
【請求項9】
さらに、下式(2)の条件を充たす、請求項7または8に記載の製造方法。
a/L≦10 ・・・(2)
【請求項10】
搬送される連続繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ複数の刃物を、前記連続繊維束に間欠的に突き刺して、分繊された複数の繊維束の各間が部分的に未分繊の状態となるように前記連続繊維束を分繊するための装置であって、前記複数の刃物の各間に配置されたスペーサ部材を備え、前記連続繊維束に前記複数の刃物を突き刺すときは前記連続繊維束に前記スペーサ部材が接する位置まで突き刺すようにした、装置。
【請求項11】
前記複数の刃物を挟む位置に配置された一対のガイド部材の間を搬送される前記連続繊維束に対して、前記一対のガイド部材が配置された側とは反対側から、前記複数の刃物が突き刺されるようにした、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置を用いて、分繊された複数の繊維束の各間が部分的に未分繊の状態となるように連続炭素繊維束を分繊する、分繊方法。
【請求項13】
前記連続炭素繊維束に、長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分とが下式(1’)および(3’)の条件を充たすように形成される、請求項12に記載の分繊方法。
1≦A/25.4 ・・・(1’)
0.9≦A/(A+B)<1 ・・・(3’)
(ただし、前記式(1’)および(3’)中、Aは前記分繊部分の長さ(単位:mm)であり、Bは前記未分繊部分の長さ(単位:mm)である。)
【請求項14】
前記連続炭素繊維束に、長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分が下式(3)の条件を充たすように形成される、請求項12に記載の分繊方法。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(3)中、aは前記分繊部分の長さであり、bは前記未分繊部分の長さである。)
【請求項15】
裁断した炭素繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する方法であって、請求項12に記載の分繊方法を用いて長手方向に交互に配置された分繊部分と未分繊部分が形成されるように連続炭素繊維束を分繊した後、前記連続炭素繊維束を長手方向に間隔を空けて裁断することを含み、下式(1’’)および(3)の条件を充たす、製造方法。
1<a/L・・・(1’’)
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(1’’)および(3)中、aは前記分繊部分の長さであり、bは前記未分繊部分の長さであり、Lは前記間隔である。)
【請求項16】
熱硬化性樹脂を含むペーストを準備することと、
所定の方向に搬送される第1のシートの上に前記ペーストを塗工することと、
前記裁断により生じた裁断済み炭素繊維束を、第1のシートに塗工された前記ペーストの上に散布することと、
前記裁断済み炭素繊維束が散布された第1のシートの上に、前記ペーストが塗工された第2のシートを重ね合わせた後、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記裁断済み炭素繊維束を加圧することによって、前記裁断済み炭素繊維束のフィラメント間に前記熱硬化性樹脂を含浸させることと、
を更に含む、請求項7~9および15のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維束の分繊方法、装置、および繊維強化樹脂成形材料の製造方法に関する。
本願は、2015年7月7日に日本に出願された特願2015-136084号、及び2016年4月11日に日本に出願された特願2016-078937号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
成形品の機械特性に優れるとともに、三次元形状等の複雑形状の成形に適した成形材料としては、SMC(Sheet Molding Compound)やスタンパブルシートが知られている。SMCは、例えばガラス繊維やカーボン繊維などの強化繊維を裁断した繊維束のフィラメント間に、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料である。また、スタンパブルシートは、例えば上記の裁断した繊維束に熱可塑性樹脂を含浸させた、シート状の繊維強化樹脂成形材料である。
【0003】
SMCは、成形品を得るための中間材料である。SMCを成形加工する際は、金型を用いてSMCを加熱しながら圧縮(プレス)成形する。このとき、繊維束と熱硬化性樹脂とが一体に流動しながら金型のキャビティ内に充填された後、熱硬化性樹脂が硬化される。したがって、このSMCを用いて、部分的に肉厚の異なるもの、リブやボスなどを有するものなど、各種形状の成形品を得ることが可能である。また、スタンパブルシートの成形品は、一度赤外線ヒーター等で熱可塑性樹脂の融点以上に加熱し、所定の温度の金型にて冷却加圧することによって得ることができる。
【0004】
ところで、上述したSMC(繊維強化樹脂成形材料)の製造においては、搬送されるシート(キャリア)の上に熱硬化性樹脂を含むペーストを塗工した後に、連続する繊維束を裁断機で所定の長さに裁断して、ペーストの上に散布することが行われる(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【0005】
また、SMCの製造では、製造コストを下げるため、比較的安価なラージトウと呼ばれるフィラメント本数の多い繊維束を用いて、この繊維束を幅方向に拡幅(開繊という。)した後に、開繊された繊維束を複数の繊維束に分割(分繊という。)し、分繊された繊維束を裁断機で裁断することが行われている。
【0006】
しかしながら、従来の製造方法では、繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が発生したときに、開繊された繊維束の一部が分繊されずに残ったり、一部が切断されたりすることによって、開繊後に分繊された繊維束の裁断機への供給が不安定となることがあった。これは、スタンパブルシートの場合においても同様である。
【0007】
具体的に、特許文献1には、開繊された繊維束に突起状物を突き刺すことで分繊する方法が開示されている。しかしながら、この方法を用いた場合、繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が発生していると、分繊したはずの繊維束が一部で分繊されずに裁断後まで残ってしまい、繊維束が分割されないおそれがある。
【0008】
一方、特許文献2には、回転する回転刃を用いて、開繊された繊維束を連続的に分繊する方法が開示されている。しかしながら、この方法を用いた場合、繊維束の蛇行や繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が発生すると、分繊した繊維束の一部が切断されてしまい、切断された繊維束がロール等に巻き付いてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2012/0213997号明細書
【文献】特開2006-219780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する際に、繊維強化樹脂成形材料の品質を維持しつつ、繊維束の蛇行や繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給することを可能とした繊維強化樹脂成形材料の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、
下式(1)の条件を満たすように、連続する繊維束を長手方向において断続的に分繊し、長手方向に間隔を空けて裁断して前記の裁断した繊維束を得る、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
1≦a/L ・・・(1)
(ただし、前記式(1)中、aは前記の連続する繊維束における分繊部分の長さであり、Lは前記繊維束の長手方向における裁断される間隔である。)
〔2〕 さらに、下式(2)の条件を満たすように前記分繊及び前記裁断を行う、〔1〕に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
a/L≦10 ・・・(2)
〔3〕 裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料の製造方法であって、
下式(3)の条件を満たすように、連続する繊維束を長手方向において断続的に分繊し、長手方向に間隔を空けて裁断して前記の裁断した繊維束を得る、繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
(ただし、前記式(3)中、aは前記の連続する繊維束における分繊部分の長さであり、bは前記の連続する繊維束における断続的な分繊部分間に存在する未分繊部分の長さである。)
〔4〕 前記樹脂が熱硬化性樹脂である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔5〕 前記の断続的な分繊を、前記の連続する繊維束に刃物を間欠的に突き刺すことによって行う、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔6〕 前記の連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ連なった複数の刃物を、前記の連続する繊維束に間欠的に突き刺して、分繊された複数の繊維束の各間を部分的に未分繊の状態とする、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔7〕 所定の方向に搬送される第1のシートの上に樹脂を含むペーストを塗工するステップと、
連続する繊維束を複数の繊維束に分繊するステップと、
前記分繊された繊維束を裁断機で裁断して、前記ペーストの上に散布するステップと、
前記繊維束が散布された第1のシートの上に、前記ペーストが塗工された第2のシートを重ね合わせた後、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記繊維束を加圧することによって、前記繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させるステップと、を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔8〕 前記の連続する繊維束を複数の繊維束に分繊するステップにおいて、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ、連なった複数の刃物が周方向に並んで配置された複数の回転刃を用いて、前記回転刃を回転させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺す、〔7〕に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔9〕 前記の連続する繊維束を複数の繊維束に分繊するステップにおいて、前記の複数の刃物が前記繊維束の搬送方向と同一方向に並んで配置された鋸刃を用いて、前記鋸刃を上下方向に揺動させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺す、〔7〕に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔10〕 前記の連続する繊維束を複数の繊維束に分繊するステップにおいて、前記連続する繊維束を厚み方向に重ね合わせた状態で、複数の繊維束に分繊する、〔7〕~〔9〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔11〕 前記の連続する繊維束を幅方向に開繊した後に、前記の連続する繊維束を複数の繊維束に分繊するステップにおいて、開繊された繊維束を複数の繊維束に分繊する、〔7〕~〔10〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造方法。
〔12〕 裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料を製造する繊維強化樹脂成形材料の製造装置であって、
連続する繊維束を複数の繊維束に分繊する分繊部と、分繊された繊維束を裁断機で裁断する裁断部と、を含み、
前記分繊部は、前記の連続する繊維束に刃物を間欠的に突き刺すことによって、分繊された複数の繊維束の各間を部分的に未分繊の状態とする、繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔13〕 前記刃物が、前記連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ連なった複数の刃物である、〔12〕に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔14〕 所定の方向に搬送される第1のシートの上に樹脂を含むペーストを塗工する塗工部と、
前記分繊部と、
分繊された繊維束を裁断機で裁断して、前記ペーストの上に散布する裁断部と、
前記繊維束が散布された第1のシートの上に、前記ペーストが塗工された第2のシートを重ね合わせた後、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記繊維束を加圧することによって、前記繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させる含浸部とを含む、〔12〕又は〔13〕に記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔15〕 前記分繊部が、複数の刃物が周方向に並んで配置された回転刃を備え、前記回転刃を回転させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺すものである、〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔16〕 前記分繊部が、複数の刃物が前記繊維束の搬送方向と同一方向に並んで配置された鋸刃を備え、前記鋸刃を上下方向に揺動させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺すものである、〔12〕~〔14〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔17〕 前記刃物を挟んだ搬送方向の両側に配置された一対のガイド部材を備え、前記一対のガイド部材の間で搬送される前記の連続する繊維束に対して、前記一対のガイド部材が配置された側とは反対側から前記刃物を突き刺す、請求項〔12〕~〔16〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
〔18〕 前記幅方向に並ぶ前記の複数の刃物の各間に配置されたスペーサ部材を備え、前記の連続する繊維束に前記スペーサ部材が接する位置まで前記の複数の刃物を突き刺す、〔13〕~〔17〕のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料の製造装置。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、分繊された複数の繊維束の各間を部分的に未分繊の状態とすることで、繊維強化樹脂成形材料の品質を維持しつつ、繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るSMC製造装置の構成を示す側面図である。
図2A図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部の一構成例を示す側面図である。
図2B図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部の一構成例であり、その分繊部を搬送方向から見た正面図である。
図3】分繊された繊維束の分繊位置を示す模式図である。
図4A図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部の別の構成例を示す側面図である。
図4B図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部の別の構成例であり、その分繊部を搬送方向から見た正面図である。
図5A】刃物の形状を例示した側面図である。
図5B】刃物の形状を例示した側面図である。
図5C】刃物の形状を例示した側面図である。
図5D】刃物の形状を例示した側面図である。
図5E】刃物の形状を例示した側面図である。
図6A】刃物の刃先角度を説明するための模式図である。
図6B】刃物の刃角度を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
[繊維強化樹脂成形材料の製造方法]
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法は、裁断した繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させたシート状の繊維強化樹脂成形材料の製造方法であり、SMCやスタンパブルシート等の製造に適用できるものである。
【0016】
繊維束は複数の強化繊維を束ねたものである。強化繊維としては、カーボン繊維が好ましい。なお、強化繊維としては、カーボン繊維には限定されず、ガラス繊維などのカーボン繊維以外の強化繊維を用いてもよい。
【0017】
樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂のみを用いてもよく、熱可塑性樹脂のみを用いてもよく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の両方を用いてもよい。本実施形態の繊維強化樹脂材料をSMCとして用いる場合、樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましい。本実施形態の繊維強化樹脂材料をスタンパブルシートとして用いる場合、樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の一実施態様においては、下式(1)の条件を満たすように、連続する繊維束を長手方向において断続的に分繊し、長手方向に間隔を空けて裁断して前記の裁断した繊維束を得る。
1≦a/L ・・・(1)
ただし、前記式(1)中、aは前記の連続する繊維束における分繊部分の長さであり、Lは前記繊維束の長手方向における裁断される間隔である。
【0021】
a/Lの値が1未満、すなわち分繊部分の長さaが、繊維束の長手方向における裁断される間隔L未満である場合には、裁断されたそれぞれの繊維束に、分割されていない未分繊部分が必ず1ヶ所以上生じる。そのため、例えばSMCの製造時において強化繊維を均一に分散させることが難しくなるとともに、樹脂の含浸性が低下し、製造されるSMCの品質が著しく低下する傾向にある。a/Lは、1.05以上が好ましく、1.1以上がより好ましい。
【0022】
さらに、本発明においては、下式(2)の関係を満たすように繊維束の分繊及び裁断を行うことが好ましい。
a/L≦10 ・・・(2)
a/Lの値が10以下であれば、分繊する繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が存在する場合であっても、切断された繊維束への毛羽発生や、この毛羽による工程のトラブルを低減させやすい傾向にある。a/Lは、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0023】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法の別の一実施態様においては、下式(3)の条件を満たすように、連続する繊維束を長手方向において断続的に分繊し、長手方向に間隔を空けて裁断して前記の裁断した繊維束を得る。
0.9≦a/(a+b)<1 ・・・(3)
ただし、前記式(3)中、aは前記の連続する繊維束における分繊部分の長さであり、bは前記の連続する繊維束における断続的な分繊部分間に存在する未分繊部分の長さである。
【0024】
a/(a+b)の値が0.9未満の場合には、例えばSMC製造時における繊維束のペースト上への散布時に、裁断された繊維束の未分繊部分が分割されにくくなるため、強化繊維をペースト上に均一に分散させることが難しくなるとともに、強化繊維への樹脂の含浸性が低下し、製造されるSMCの品質が低下する傾向にある。a/(a+b)の値は、0.92以上が好ましい。
【0025】
未分繊部分がない(b=0)場合は、繊維束が連続的に分繊される状態に相当し、a/(a+b)の値は1となる。しかし、この場合は、未分繊部分がないため、繊維束の蛇行や繊維束内のフィラメントに斜行や蛇行が発生すると、分繊した繊維束の一部が切断されてしまい、切断された繊維束がロール等に巻き付いてしまうおそれがある。本発明では、連続する繊維束の長手方向において断続的に分繊を行うため、b>0、すなわちa/(a+b)<1となる。
分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給するためには、a/(a+b)の値は、0.99以下が好ましく、0.98以下がより好ましい。
【0026】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法においては、式(1)の条件と式(3)の条件を同時に満たすように繊維束の分繊及び裁断を行うことが好ましい。これにより、繊維束が裁断される際に、少なくとも一部が分繊された状態で分断されることになる。これにより、裁断後の繊維束に分繊されていない繊維束が残ってしまうことを回避しやすい。なお、仮に繊維束が一部で分繊されずに残ったとしても、裁断された繊維束の大部分は分繊されているため、散布されたときにそれらが分割されるので、製造されるSMCの品質に特に影響を与えることはない。
【0027】
連続する繊維束を断続的に分繊する形態としては、繊維束の分繊をより安定して実施できる点から、連続する繊維束に対し、その長手方向に刃物で間欠的に突き刺す形態が好ましい。また、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ連なった複数の刃物を、連続する繊維束に間欠的に突き刺して、分繊された複数の繊維束の各間を部分的に未分繊の状態とすることがより好ましい。
【0028】
なお、本発明において刃物とは、板状で、繊維束に最初に接する先端部が細く、薄く作られ、かつ先端部の断面が略くさび状である物品である。刃物の素材としては、金属やセラミック等の硬質な素材が挙げられる。
【0029】
刃物の形状は、繊維束に突き刺すことが可能であれば特に限定されない。刃物の耐久性や分繊性の観点から、刃物の繊維束に接触する部分の最大厚みは、0.3~2mmが好ましい。刃物の繊維束に接触する部分の最大幅は、0.5~1.5mmが好ましい。刃物の幅方向の先端部の角度(切っ先の角度)は、30°~90°が好ましい。刃物の厚さ方向の刃角度(刃先角)は、10°~45°が好ましく、20°~30°がより好ましい。
なお、切っ先の角度とは、刃物の平面部分を正面から見たときの刃物の先端角度を意味する。また、刃先角とは、刃物の側面部分(厚み方向の面)を正面から見たときの刃物の先端角度を意味する。
【0030】
なお、連続する繊維束を断続的に分繊する形態としては、刃物以外の手段、例えば、上述の繊維束に空気等の気体を所定の条件で吹き付ける形態等であってもよい。
【0031】
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造方法としては、例えば、下記の塗工ステップ、分繊ステップ、裁断ステップ及び含浸ステップを有する方法が挙げられる。
塗工ステップ:所定の方向に搬送される第1のシートの上に樹脂を含むペーストを塗工する。
分繊ステップ:連続する繊維束を複数の繊維束に分繊する。
裁断ステップ:前記分繊された繊維束を裁断機で裁断して、前記ペーストの上に散布する。
含浸ステップ:前記繊維束が散布された第1のシートの上に、前記ペーストが塗工された第2のシートを重ね合わせた後、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に挟み込まれた前記ペースト及び前記繊維束を加圧することによって、前記繊維束のフィラメント間に樹脂を含浸させる。
【0032】
分繊ステップ及び裁断ステップにおいて、上述したように条件(1)及び条件(3)のいずれか一方又は両方を満たすように繊維束の分繊及び裁断を行うことで、繊維束内に発生するフィラメントの斜行や蛇行による影響を回避しながら、分繊した繊維束を安定した状態で裁断機まで供給して裁断することができる。
【0033】
分繊ステップにおいては、連続する繊維束の幅方向に所定の間隔で並ぶ、連なった複数の刃物が周方向に並んで配置された複数の回転刃を用いて、前記回転刃を回転させながら、連続する繊維束に複数の刃物を間欠的に突き刺す形態が好ましい。また、複数の刃物が前記繊維束の搬送方向と同一方向に並んで配置された鋸刃を用いて、前記鋸刃を上下方向に揺動させながら、前記の連続する繊維束に前記の複数の刃物を間欠的に突き刺す形態も好ましい。
【0034】
分繊ステップにおいては、連続する繊維束を厚み方向に重ね合わせた状態で、複数の繊維束に分繊することが好ましい。
また、連続する繊維束を幅方向に開繊した後に、分繊ステップにおいては開繊された繊維束を複数の繊維束に分繊することが好ましい。すなわち、分繊ステップの前に連続する繊維束を幅方向に開繊する開繊ステップをさらに有することが好ましい。
【0035】
[繊維強化樹脂成形材料の製造装置]
以下、本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形材料の製造装置として、例えば図1及び図2に示すSMC製造装置について具体的に説明する。本実施形態のSMC製造装置は、カーボン(炭素)繊維からなる繊維束と、不飽和ポリエステル樹脂からなる熱硬化性樹脂とを含み、裁断した繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状のSMC(Sheet Molding Compound)を製造する装置である。なお、繊維束としては、カーボン繊維の他にも、ガラス繊維等の強化繊維を用いることができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂の他にも、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0036】
図1は、SMC製造装置の構成を示す側面図である。図2Aは、図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部10の一構成例を示した側面図であり、図2Bはその分繊部を搬送方向から見た正面図である。また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0037】
本実施形態のSMC製造装置は、図1に示すように、繊維束供給部10と、第1のシート供給部11と、第1の塗工部12と、裁断部13と、第2のシート供給部14と、第2の塗工部15と、含浸部16とを備えている。
【0038】
繊維束供給部10は、図2Aに拡大して示すように、連続する繊維束CFを所定の方向(以下、搬送方向という。)に搬送させながら、幅方向(Y軸方向)に開繊する開繊部と、開繊された繊維束CFを複数の繊維束CFに分繊する分繊部とを構成している。
【0039】
具体的に、この繊維束供給部10は、複数の開繊バー17と、複数の回転刃18と、複数のゴデットローラ19とを備えている。
繊維束供給部10では、先ず、図1中の+X軸方向(水平方向の右側)に向けてボビンBから引き出されたラージトウの繊維束CFが幅方向に開繊される。具体的には、繊維束CFが開繊部である複数の開繊バー17を通過する間に、各開繊バー17で加熱、擦過、揺動等の手段により繊維束CFが幅方向に拡幅される。
【0040】
次に、分繊部である複数の回転刃18により、開繊された繊維束CFが複数の繊維束CFに分繊される。複数の回転刃18は、開繊された繊維束CFの幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各回転刃18には、複数の刃物18aが周方向に連なって並んで配置されている。各回転刃18の間では、複数の刃物18aの周方向における位置を互いに一致させることが好ましい。これにより、繊維束CFに対して幅方向に並ぶ複数の回転刃18の各刃物18aを突き刺し易くすることができる。
【0041】
図2Bに示すように、各回転刃18の間には、スペーサ部材18bが配置されている。スペーサ部材18bの外周面は、各刃物18aの境界(刃元)よりも僅かに上方、もしくは僅かに下方に位置している。この位置関係により突き差し深さを調整する。複数の回転刃18は、回転自在に支持されている。これにより、繊維束CFの搬送に伴って、繊維束CFに刃物18aを突き刺しながら、複数の回転刃18を繊維束CFの搬送方向と同一方向に回転させることができる。なお、複数の回転刃18については、繊維束CFの搬送に同期させながら、駆動モータ等により回転駆動させる構成としてもよい。
【0042】
複数の回転刃18を挟んだ搬送方向の両側には、一対のガイド部材40が配置されている。複数の回転刃18は、一対のガイド部材40の間で搬送される繊維束CFに対して、一対のガイド部材40が配置された側とは反対側から複数の刃物18aを突き刺すように配置されている。
【0043】
回転刃18を回転させながら、連続する繊維束CFに複数の刃物18aを間欠的に突き刺すことによって、繊維束CFが幅方向において分繊される。このとき、連続する繊維束CFにスペーサ部材18bが接する位置まで複数の刃物18aを突き刺すことで、各刃物18aの間で繊維束CFが連続的に分繊されることを防止している。これにより、分繊された複数の繊維束CFの各間は、完全に分繊された状態とはならず、部分的に未分繊の状態となる。その後、分繊された繊維束CFは、複数のゴデットローラ19で案内されながら、裁断部13に向けて供給される。
【0044】
第1のシート供給部11は、第1の原反ロールR1から巻き出された連続する第1のシートS1を第1の塗工部12に向けて供給する。SMC製造装置は、第1のシートS1を含浸部16に向けて搬送する第1の搬送部20を備えている。
【0045】
第1の搬送部20は、一対のプーリ21a,21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を備えている。コンベア23は、一対のプーリ21a,21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させながら、この無端ベルト22の面上において、第1のシートS1を図1中の+X軸方向(水平方向の右側)に向けて搬送する。
【0046】
第1の塗工部12は、図1中の+X軸方向(水平方向の右側)に向けて搬送される第1のシートS1の直上に位置して、ペーストPを供給するコータ24を有している。第1の塗工部12では、第1のシートS1がコータ24を通過することで、第1のシートS1の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
【0047】
なお、ペーストPには、上述した不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂の他にも、炭酸カルシウム等の充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤等を混合したものを用いることができる。
【0048】
裁断部13は、第1の塗工部12よりも搬送方向の下流側に位置して、繊維束供給部10から供給される繊維束CFを裁断機13Aで裁断してペーストPの上に散布させる。裁断機13Aは、コンベア23により搬送される第1のシートS1の上方に位置して、ガイドローラ25と、ピンチローラ26と、カッターローラ27とを備えている。
【0049】
ガイドローラ25は、回転しながら繊維束供給部10から供給された繊維束CFを下方に向けて案内する。ピンチローラ26は、ガイドローラ25との間で繊維束CFを挟み込みながら、ガイドローラ25とは逆向きに回転することによって、ガイドローラ25と協働しながら、分繊された繊維束CFを引き込む。カッターローラ27は、回転しながら繊維束CFを所定の長さとなるように裁断する。裁断された繊維束CFは、ガイドローラ25とカッターローラ27との間から落下し、第1のシートS1(ペーストP)の上に散布される。
【0050】
第2のシート供給部14は、第2の原反ロールR2から巻き出された連続する第2のシートS2を第2の塗工部15に向けて供給する。SMC製造装置は、第2のシートS2を含浸部16に向けて搬送する第2の搬送部28を備えている。
【0051】
第2の搬送部28は、コンベア23により搬送される第1のシートS1の上方に位置して、複数のガイドローラ29を有している。第2の搬送部28は、第2のシート供給部14から供給された第2のシートS2を図1中の-X軸方向(水平方向の左側)に向けて搬送した後、回転する複数のガイドローラ29によって第2のシートS2が搬送される方向を下方から図1中の+X軸方向(水平方向の右側)に向けて反転させる。
【0052】
第2の塗工部15は、図1中の-X軸方向(水平方向の左側)に向けて搬送される第2のシートS2の直上に位置して、ペーストPを供給するコータ30を備えている。第2の塗工部15では、第2のシートS2がコータ30を通過することで、第2のシートS2の面上にペーストPが所定の厚みで塗工される。
【0053】
含浸部16は、裁断部13よりも搬送方向の下流側に位置して、貼合機構31と、加圧機構32とを備えている。貼合機構31は、コンベア23の下流側のプーリ21bの上方に位置して、複数の貼合ローラ33を備えている。
【0054】
複数の貼合ローラ33は、ペーストPが塗工された第2のシートS2の背面に接触した状態で配置されている。また、複数の貼合ローラ33は、第1のシートS1に対して第2のシートS2が徐々に接近するように配置されている。
【0055】
これにより、第1のシートS1の上に第2のシートS2が重ね合わされる。また、第1のシートS1と第2のシートS2とは、その間に繊維束CF及びペーストPを挟み込みながら、互いに貼合された状態で加圧機構32側へと搬送される。以下、互いに貼合された第1のシートS1及び第2のシートS2を貼合シートS3という。
【0056】
加圧機構32は、第1の搬送部20(コンベア23)の下流側に位置して、一対のプーリ34a,34bの間に無端ベルト35aを掛け合わせた下側コンベア36Aと、一対のプーリ34c,34dの間に無端ベルト35bを掛け合わせた上側コンベア36Bとを備えている。
【0057】
下側コンベア36Aと上側コンベア36Bとは、互いの無端ベルト35a,35bを突き合わせた状態で、互いに対向して配置されている。加圧機構32は、下側コンベア36Aの一対のプーリ34a,34bを同一方向に回転させることによって無端ベルト35aを周回させ、上側コンベア36Bの一対のプーリ34c,34dを同一方向に回転させることによって無端ベルト35bを無端ベルト35aと同じ速さで逆向きに周回させる。これにより、無端ベルト35a,35bの間に挟み込まれた貼合シートS3が図1中の+X軸方向(水平方向の右側)に向けて搬送される。
【0058】
加圧機構32は、複数の下側ローラ37aと、複数の上側ローラ37bとを備えている。複数の下側ローラ37aは、無端ベルト35aの突合せ部分の背面に接触した状態で配置されている。同様に、複数の上側ローラ37bは、無端ベルト35bの突合せ部分の背面に接触した状態で配置されている。また、複数の下側ローラ37aと複数の上側ローラ37bとは、貼合シートS3の搬送方向に沿って互い違いに並んで配置されている。
【0059】
加圧機構32は、無端ベルト35a,35bの間を貼合シートS3が通過する間に、第1のシートS1と第2のシートS2との間に挟み込まれたペーストP及び繊維束CFを複数の下側ローラ37a及び複数の上側ローラ37bにより加圧する。このとき、ペーストPは、繊維束CFを挟んだ両側から繊維束CFのフィラメント内に含浸される。これにより、繊維束CFのフィラメント内に熱硬化性樹脂が含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0060】
(SMCの製造方法)
以下、本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形材料の製造方法として、上述したSMC製造装置を用いたSMCの製造方法について具体的に説明する。
【0061】
本実施形態のSMCの製造方法では、塗工ステップにおいて、第1の原反ロールR1から長尺の第1のシートS1を巻き出し、第1の搬送部20により搬送しつつ、第1の塗工部12により第1のシートS1上にペーストPを所定の厚みで塗工する。
次いで、開繊ステップにおいて、複数の開繊バー17の間に繊維束CFを通過させ、繊維束CFを幅方向に拡幅する。
【0062】
次いで、分繊ステップにおいて、回転刃18を回転させながら、開繊された繊維束CFに複数の刃物18aを間欠的に突き刺す。これにより、繊維束CFを長手方向において断続的に分繊し、分繊された複数の繊維束CFの各間を部分的に未分繊の状態とする。なお、分繊ステップでは、分繊された繊維束CF同士の引っ付きを防止するため、分繊時の繊維束CFの温度を60℃以下とすることが好ましく、より好ましくは50~5℃とする。
【0063】
ここで、分繊された繊維束CFについて、その分繊位置について図3を参照して説明する。なお、図3では、開繊された繊維束CFのトウtを細線で示し、開繊された繊維束CFの分割線を太線で示し、開繊された繊維束CFの裁断機13Aで切断される切断線を破線で示している。
【0064】
分繊後の繊維束CFには、図3に示すように、刃物18aにより分割された分繊部分と、刃物18aにより分割されなかった未分繊部分とが交互に、いわゆるミシン目状に形成されている。
【0065】
この場合、繊維束CF内のフィラメントに斜行、蛇行や交絡が発生していても、分繊された複数の繊維束CFの間で一部が繋がっているため、幅方向に開繊した状態のまま、分繊された複数の繊維束CFを安定した状態で裁断機13A側へと搬送することが可能である。また、繊維束CF内のフィラメントが斜行や蛇行していても、繊維束CFを損傷させない。このため、分繊した繊維束CFの一部が切断されてしまい、切断された繊維束CFがロール等に巻き付いてしまうといったことを防ぐことが可能である。
【0066】
以上のように、本実施形態のSMCの製造方法では、分繊された複数の繊維束CFの各間を部分的に未分繊の状態とすることで、繊維束CFの蛇行や繊維束CFに発生するフィラメント内の斜行、蛇行や交絡による影響を回避しながら、分繊した繊維束CFを安定した状態で裁断機13Aまで供給することが可能である。また、比較的安価なラージトウの繊維束CFを用いることによって、SMCの製造コストを下げることが可能である。
【0067】
裁断ステップでは、裁断部13において分繊された繊維束CFを裁断機13Aにより裁断し、ペーストPの上に散布する。分繊ステップ及び裁断ステップにおいて、上述した条件(1)及び条件(3)のいずれか一方又は両方を満たすように繊維束の分繊及び分繊を行う。これにより、強化繊維を均一に分散させやすくなり、樹脂の含浸性が向上することで、高品質なSMCが得られる。
【0068】
含浸ステップでは、第2のシート供給部14により、第2の原反ロールR2から長尺の第2のシートS2を巻き出し、第2の塗工部15により第2のシートS2の上にペーストPを所定の厚みで塗工する。次いで、含浸部16において、貼合機構31により第1のシートS1の上に第2のシートS2を重ね合わせる。次いで、加圧機構32により、第1のシートS1と第2のシートS2で挟み込まれたペーストPと繊維束を加圧し、繊維束のフィラメント間に熱硬化性樹脂を含浸させる。これにより、繊維束CFのフィラメント内に熱硬化性樹脂が含浸されたSMCの原反Rが得られる。
【0069】
SMCの原反Rは、ロール状に巻き取られた後、次工程へと送られる。そして、SMCの原反Rは、所定の長さで切断されることによって、最終的にシート状のSMC(繊維強化樹脂成形材料)として出荷される。なお、第1のシートS1及び第2のシートS2は、SMCの成形前にSMCから剥離される。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、上記繊維束供給部10では、上記複数の回転刃18の代わりに、例えば図4A及び図4Bに示すような複数の鋸刃38を用いてもよい。なお、図4Aは、図1に示すSMC製造装置が備える繊維束供給部の別の構成例を示した側面図であり、図4Bはその分繊部を搬送方向から見た正面図である。
【0071】
複数の鋸刃38は、開繊された繊維束CFの幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各鋸刃38には、複数の刃物38aが繊維束CFの搬送方向と同一方向に連なって並んで配置されている。さらに、各鋸刃38の間では、複数の刃物38aの搬送方向における位置を互いに一致させることが好ましい。これにより、繊維束CFに対して幅方向に並ぶ複数の鋸刃38の各刃物38aを突き刺し易くすることができる。
【0072】
各鋸刃38の間には、スペーサ部材38bが配置されている。スペーサ部材38bの上面は、各刃物38aの境界(刃元)よりも僅かに上方に位置している。
【0073】
複数の鋸刃38を挟んだ搬送方向の両側には、一対のガイド部材40が配置されている。複数の鋸刃38は、一対のガイド部材40の間で搬送される繊維束CFに対して、一対のガイド部材40が配置された側とは反対側から複数の刃物38aを突き刺す位置と、繊維束CFから離間する位置との間で上下に往復移動(揺動)可能に配置されている。
【0074】
すなわち、この鋸刃38を用いた分繊ステップでは、鋸刃38を上下方向(Z軸方向)に揺動させながら、開繊された繊維束CFに複数の刃物38aを間欠的に突き刺すことによって、繊維束CFを幅方向において分繊する。このとき、連続する繊維束CFにスペーサ部材38bが接する位置まで複数の刃物38aを突き刺すことで、各刃物38aの間で繊維束CFが連続的に分繊されることを防止している。これにより、上記回転刃18を用いた場合と同様に、分繊された複数の繊維束CFの各間を部分的に未分繊の状態とすることができる。
【0075】
したがって、この場合も、繊維束CFの蛇行や繊維束CFに発生するフィラメント内の斜行、蛇行や交絡による影響を回避しながら、分繊した繊維束CFを安定した状態で裁断機13Aまで供給することが可能である。また、比較的安価なラージトウの繊維束CFを用いることによって、SMCの製造コストを下げることが可能である。
【0076】
本発明では、例えば、上述したSMC製造装置の回転刃18や鋸刃38を用いた分繊ステップにおいて、連続する繊維束CFを厚み方向に重ね合わせた状態で、複数の繊維束CFに分繊することも可能である。
【0077】
また、上記刃物18a,38aについては、連続する繊維束CFに対して刃物18a,38aを間欠的に突き刺すことが可能な形状であればよく、例えば図5A図5Eに示すような刃物18a,38aの形状を例示することができる。さらに、刃物18a,38aについては、片刃であっても、両刃であってもよい。
【0078】
また、幅方向(Y軸方向)で隣り合う複数の回転刃18又は鋸刃38の間では、それぞれの刃物18a,38aを繊維束CFに対して間欠的に突き刺すタイミングを一致させる場合に限らず、タイミングをずらすことも可能である。
【0079】
また、刃物18a,38aについては、図6Aに示す刃先角度(切っ先の角度)をαとし、図6Bに示す刃角度(刃先角)をβとしたときに、30°≦α≦90°、10°≦β≦45°(より好ましくは20°≦β≦30°)を満足することが好ましい。また、刃物18a,38aの厚みについては、0.3~2mmとすることが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂成形材料の製造装置は、開繊部を備えないものであってもよい。
【実施例
【0080】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0081】
[実施例1]
上記図1及び図2に示すSMC製造装置を用いてSMCを製造した。
分繊部には、4枚の回転刃18を備えるものを用いた。それぞれの回転刃18には、6個の刃物18aが周方向に連なって並んで配置されたものを用いた。それぞれの刃物18aは、繊維束CFに接触する部分の最大厚みが1mm、刃物の繊維束に接触する部分の最大幅が1mm、刃物の幅方向の先端部の角度(切っ先の角度)が64°、刃物の厚さ方向の刃角度(刃先角)が30°の略三角形の形状とした。各回転刃18の間においては、複数の刃物18aの周方向における位置を互いに一致させた。各回転刃18の間には、スペーサ部材18bを配置し、スペーサ部材18bの幅は2.2mmとした。
【0082】
繊維束CFとしては、炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。ペーストPとしては、ビニルエステル樹脂を用いた。
開繊バー17では繊維束CFを幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ28.3mmの分繊部分と長さ0.5mmの未分繊部分とを、繊維束CFの長手方向に交互に連続するように、かつ繊維束CFの幅方向において3mm間隔で4列形成させた。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔で行った。裁断した繊維束CFは、第1のシートS1上に塗工したペーストP上に散布した。a/Lは1.11であり、a/(a+b)は0.98であった。
【0083】
このSMCの製造においては、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分を有するものが一部存在したが、ペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0084】
[実施例2]
図1及び図2に示すSMC製造装置を用いてSMCを製造した。
分繊部には、1枚の回転刃18を備えるものを用いた。それぞれの刃物18aは、繊維束CFに接触する部分の最大厚みが0.5mm、刃物の繊維束に接触する部分の最大幅が0.5mm、刃物の幅方向の先端部の角度(切っ先の角度)が64°、刃物の厚さ方向の刃角度(刃先角)が30°の略三角形の形状とした。各回転刃18の間においては、複数の刃物18aの周方向における位置を互いに一致させた。各回転刃18の間には、スペーサ部材18bを配置し、スペーサ部材18bの幅は24.5mmとした。
繊維束CFとしては、炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:TRW40 50L、繊維数:50000本)を用いた。ペーストPとしては、ビニルエステル樹脂を用いた。
開繊バー17では繊維束CFを幅25mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ28.3mmの分繊部分と長さ0.6mmの未分繊部分を形成させた。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔で行った。裁断した繊維束CFは、第1のシートS1上に塗工したペーストP上に散布した。a/Lは1.11であり、a/(a+b)は0.98であった。
【0085】
このSMCの製造においては、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分を有するものが一部存在したが、ペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCとほぼ同等であった。
【0086】
[比較例1]
実施例1と同様の装置を使用して、炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。開繊バー17では繊維束CFを幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ20.4mmの分繊部分と長さ1mmの未分繊部分とを、繊維束CFの長手方向に交互に連続するように、かつ繊維束CFの幅方向において3mm間隔で4列形成させた。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔で行った。裁断した繊維束CFは、第1のシートS1上に塗工したペーストP上に散布した。a/Lは0.8であり、a/(a+b)は0.95であった。
このSMCの製造においては、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分を有するものが一部存在したが、ペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCよりも、裁断後の繊維束が分割されないものがあり、強度が3割低下した結果であった。
【0087】
[比較例2]
実施例1と同様の装置を使用して、炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。開繊バー17では繊維束CFを幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ28.3mmの分繊部分と長さ3.5mmの未分繊部分とを、繊維束CFの長手方向に交互に連続するように、かつ繊維束CFの幅方向において3mm間隔で4列形成させた。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔で行った。裁断した繊維束CFは、第1のシートS1上に塗工したペーストP上に散布した。a/Lは1.11であり、a/(a+b)は0.89であった。
このSMCの製造においては、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまうことなく、安定して裁断部13に供給された。裁断された繊維束CFには、未分繊部分を有するものが一部存在したが、ペーストP上への繊維束CFの分散性に影響を与えるレベルではなかった。製造されたSMCの品質は、繊維数の少ない炭素繊維束CF(繊維数:3000本)を用い、分繊ステップなしで得られる同サイズのチョップド炭素繊維束を使用したSMCよりも、裁断後の繊維束が分割されないものがあり、強度が3割低下した結果であった。
【0088】
[比較例3]
実施例1と同様の装置を使用して、炭素繊維束(三菱レイヨン社製、製品名:TR50S15L、繊維数:15000本)を用いた。 開繊バー17では繊維束CFを幅15mmに拡幅した。分繊時の繊維束CFの搬送速度は40m/minとした。4枚の回転刃18による分繊により、開繊後の繊維束CFに、長さ28.3mmの分繊部分と長さ0mmの未分繊部分とを、繊維束CFの長手方向に交互に連続するように、かつ繊維束CFの幅方向において3mm間隔で4列形成させた。裁断機13Aによる裁断は、分繊された繊維束CFの長手方向において25.4mm間隔で行った。裁断した繊維束CFは、第1のシートS1上に塗工したペーストP上に散布した。a/Lは1.11であり、a/(a+b)は1であった。
このSMCの製造においては、分繊後の繊維束CFは、その一部がロール等に巻き付いてしまい、製造することができなかった。
【符号の説明】
【0089】
10…繊維束供給部 11…第1のシート供給部 12…第1の塗工部 13…裁断部 13A…裁断機 14…第2のシート供給部 15…第2の塗工部 16…含浸部 18…回転刃 18a…刃物 18b…スペーサ部材 20…第1の搬送部 28…第2の搬送部 31…貼合機構 32…加圧機構 38…鋸刃 38a…刃物 38b…スペーサ部材 40…ガイド部材 CF…繊維束 P…ペースト(熱硬化性樹脂) S1…第1のシート S2…第2のシート S3…貼合シート R…SMC(繊維強化樹脂成形材料)の原反
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B