(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】防汚塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 5/16 20060101AFI20220117BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20220117BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220117BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220117BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220117BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20220117BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C09D5/16
C08F220/26
C08K3/01
C09D7/61
C09D7/63
C09D133/14
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2020148305
(22)【出願日】2020-09-03
(62)【分割の表示】P 2016527475の分割
【原出願日】2016-04-15
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2015084199
(32)【優先日】2015-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015175470
(32)【優先日】2015-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015177629
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】勝間田 匠
(72)【発明者】
【氏名】谷口 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】浦 正敏
(72)【発明者】
【氏名】加門 良啓
(72)【発明者】
【氏名】浅井 学文
(72)【発明者】
【氏名】安齋 竜一
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特許第6760061(JP,B2)
【文献】特開平04-103671(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183637(WO,A1)
【文献】特開平05-230280(JP,A)
【文献】国際公開第2007/026692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00- 33/26
C08F 20/00- 20/70
C08F 220/00-220/70
C08K 3/01
C09D 5/16
C09D 7/61
C09D 7/63
C09D 133/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、下記式(2)、又は下記式(3)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を少なくとも1つ以上有する重合体(A)、並びに化合物(B)及び塩基性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含む樹脂組成物と、防汚剤とを含み、
前記化合物(B)は、エチレン性不飽和結合と、前記エチレン性不飽和結合を形成する炭素原子の1つに結合したエーテル性酸素原子、スルフィド系硫黄原子、又はアミン系窒素原子とを有する化合物(ただし、ジヒドロピラン、1-メトキシ-1-シクロペンテン及びシクロヘキシルビニルエーテルを除く。)であり、
前記重合体(A)は、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位をさらに有し、前記オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位の含有量が、全構成単位の合計に対し、1~80質量%であり、
前記樹脂組成物は、40℃30日貯蔵後における前記重合体(A)中の下記式(1)又は下記式(2)又は下記式(3)の構造の分解率が20%以下である、防汚塗料組成物。
【化1】
(式中:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3及びR
5はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。R
4及びR
6はそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
脱水剤をさらに含む、請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記化合物(B)は、下記式(31)、下記式(32)、又は下記式(33)で表される化合物(ただし、ジヒドロピラン、1-メトキシ-1-シクロペンテン及びシクロヘキシルビニルエーテルを除く。)の少なくとも1つ以上である、請求項1又は請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【化2】
(式中:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
7は、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示す。R
8は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
9及びR
11はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。R
10は、単結合、又は炭素数1~9のアルキレン基を示す。R
12は、炭素数1~9のアルキレン基を示す。)
【請求項4】
前記重合体(A)が、下記式(1)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【化3】
(式(1)において:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3は、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。ただし、R
1、R
2及びR
3の炭素数の合計は4以上である。)
【請求項5】
前記重合体(A)が、下記式(1)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【化4】
(式(1)において:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3は、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。ただし、R
1、R
2、及びR
3の炭素数の合計は8以上である。)
【請求項6】
前記重合体(A)の重量平均分子量が2,000~19,000であり、
前記重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して57質量%以上であり、
前記樹脂組成物の25℃においてB型粘度計で測定される粘度が2,000mPa・s未満である請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記重合体(A)の重量平均分子量が3,000~16,000であり、
前記重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物の全量に対して59質量%以上であり、
前記樹脂組成物の25℃においてB型粘度計で測定される粘度が1,000mPa・s未満である請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記防汚剤が、亜酸化銅、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3カルボニトリル、及びメデトミジンからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上を含む、請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記防汚剤が、亜酸化銅である、請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
揮発性有機化合物の含有量が、410g/L以下である請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚塗料組成物に関する。
本願は、2015年4月16日に、日本に出願された特願2015-084199号、2015年9月7日に、日本に出願された特願2015-175470号、及び2015年9月9日に、日本に出願された特願2015-177629号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
船舶(特に船底部分)等の海洋構造物には、浸水部分の腐食や航行速度低下の原因となる海中生物の付着防止を目的として、防汚塗料を塗布することが知られている。防汚塗料としては、性能面から加水分解型の防汚塗料が広く使用されている。加水分解型防汚塗料により形成される塗膜は、水中において塗膜表面が徐々に溶解して表面が更新され(自己研磨)、塗膜表面に常に防汚成分が露出することにより、防汚効果を長期的に発揮する。加水分解型の防汚塗料としては、金属含有ポリマーを用いた防汚塗料が知られており、そのような防汚塗料としては例えば、特許文献1や特許文献2に提案されている2価の金属を含有する樹脂を含む塗料組成物が挙げられる。しかしながら、特許文献1や特許文献2の塗料組成物では、海中で優れた防汚効果を長期間持続させるための防汚剤として一般的に用いられる亜酸化銅を添加すると、溶解安定性が低下する。すなわち、塗膜の加水分解速度(溶解速度ともいう)が低下し、自己研磨性が低下するという問題があった。
【0003】
特許文献3には、金属非含有樹脂として、1-(アルキルオキシ)エステル基含有樹脂を主成分とする加水分解型塗料が提案されている。このような金属非含有樹脂を主成分とする塗料は、長期間溶解性が低下しないという利点がある。しかしながら、特許文献3の塗料を用いた塗膜は、溶解安定性が低く、塗膜の加水分解速度(溶解速度ともいう)が経時で上昇する。そのため、過度に塗膜を消耗し、長期に渡る塗膜の維持が困難という欠点があった。さらに溶解速度が経時で上昇することにより、塗膜の耐水性が低下し、クラックや剥がれといった塗膜欠陥が生じやすいという問題点があった。
さらに、特許文献3の塗料は、貯蔵安定性が低く、また、粘度を抑えて塗装性を向上させるために、溶剤として環境等への影響から低減が求められている揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound;以下、「VOC」ともいう。)が多く含有されている。このように、従来技術では塗膜の溶解安定性が充分ではなく、溶解速度の低下による自己研磨性の低下や、溶解速度の上昇による塗膜の過度な消耗及び欠陥の発生があった。そのため、従来技術では塗膜の長期的な防汚効果は不十分であった。また、貯蔵安定性が低い又はVOC含有量が多いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-12630号公報
【文献】特公平7-64985号公報
【文献】特開平4-103671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、溶解安定性が高く、自己研磨性を維持しつつ消耗や欠陥の発生が抑制された、長期にわたって防汚効果を発現することができる塗膜を形成する、貯蔵安定性及び塗装性に優れかつVOC含有量が少ない防汚塗料組成物を構成する樹脂組成物及び防汚塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
【0007】
[1]下記式(1)、下記式(2)、又は下記式(3)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を少なくとも1つ以上有する重合体(A)を含み、40℃30日貯蔵後における前記重合体(A)中の下記式(1)又は下記式(2)又は下記式(3)の構造の分解率が20%以下である、樹脂組成物。
【化1】
(式中:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3及びR
5はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、これらの基はシクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。R
4及びR
6はそれぞれ、炭素数1~10のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。)
[2]酸と反応する化合物、酸性化合物、脱水剤、及び塩基性化合物からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記酸と反応する化合物は、下記式(31)、下記式(32)、又は下記式(33)で表される化合物の少なくとも1つ以上である、[2]に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
7は、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示す。R
8は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
9及びR
11はそれぞれ、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、これらの基はシクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。R
10は、単結合、又は炭素数1~9のアルキレン基を示し、これらはシクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。R
12は、炭素数1~9のアルキレン基を示し、当該アルキレン基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。)
[4]前記重合体(A)が、下記式(1)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(1)において:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3は、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、これらの基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。ただし、R
1、R
2及びR
3の炭素数の合計は4以上である。)
[5]前記重合体(A)が、下記式(1)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
(式(1)において:Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子である。R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示す。R
3は、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す、これらの基はシクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。ただし、R
1、R
2、及びR
3の炭素数の合計は8以上である。)
[6]前記重合体(A)が、下記式(2-1)で表されるオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体由来の構成単位をさらに有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
Z
1-(CH
2CH
2O)
nR
21 (2-1)
(式中、Z
1はアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を示し、R
21は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はアリール基を示し、nは1~15の整数を示す。)
[7]前記重合体(A)の重量平均分子量が2,000~19,000であり、
前記重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物の総量に対して57質量%以上であり、
25℃においてB型粘度計で測定される粘度が2,000mPa・s未満である[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8]前記重合体(A)の重量平均分子量が3,000~16,000であり、
前記重合体の含有量が、前記樹脂組成物の全量に対して59質量%以上であり、
前記粘度が1,000mPa・s未満である[1]~[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、防汚剤とを含有する、防汚塗料組成物。
[10]前記防汚剤として、亜酸化銅、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3カルボニトリル、及びメデトミジンからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上を含む、[9]に記載の防汚塗料組成物。
[11]揮発性有機化合物の含有量が、410g/L以下である[9]又は[10]に記載の防汚塗料組成物。
[12]25℃においてB型粘度計で測定される粘度が3,000mPa・s未満である[9]~[11]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
[13]40℃で90日貯蔵後におけるB型粘度計での粘度変化率が、400%以下である、[9]~[12]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
[14]熱可塑性樹脂をさらに含む[9]~[13]のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶解安定性が高く、自己研磨性を維持しつつ消耗や欠陥の発生が抑制された、長期にわたって防汚効果を発現することができる塗膜を形成する、貯蔵安定性及び塗装性に優れかつVOC含有量が少ない防汚塗料組成物を構成する樹脂組成物及び防汚塗料組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「揮発性有機化合物(VOC」」とは、常温常圧で容易に揮発する有機化合物を意味する。なお、常温常圧とは、例えば、10℃~30℃、1000Pa~1050Paをいう。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された単位、又は重合体を処理することによって一部が別の構造に変換された単位を意味する。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0010】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、下記式(1)、下記式(2)、又は下記式(3)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を少なくとも1つ以上を有する重合体(A)を含み、40℃30日貯蔵後における前記重合体(A)中の下記式(1)又は下記式(2)又は下記式(3)の構造の分解率が20%以下である、樹脂組成物である。
【化5】
(式中、Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子であり、R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R
3及びR
5はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、R
4及びR
6はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0011】
<(共)重合体(A)>
重合体(A)は、下記式(1)、(2)、又は(3)で表される構造を有する単量体由来の構成単位を有する重合体である。
【0012】
【化6】
(式中、Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子であり、R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R
3及びR
5はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示し、R
4及びR
6はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
形成される塗膜の溶解安定性を向上させる観点から、式(1)の構造を有する単量体が最も好ましい。
【0013】
式(1)中、R1又はR2が炭素数1~10のアルキル基の場合、炭素数1~10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
R1又はR2が炭素数1~10のアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、それぞれ1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
【0014】
R1及びR2の好ましい組み合わせとして、水素原子とメチル基との組み合わせ、メチル基とメチル基との組み合わせ、水素原子と炭素数2~10のアルキル基(以下、「長鎖アルキル基」ともいう。)との組み合わせ、メチル基と長鎖アルキル基との組み合わせ、水素原子と水素原子との組み合わせ、長鎖アルキル基と長鎖アルキル基との組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、形成される塗膜の加水分解性を適切にする点で、水素原子とメチル基との組み合わせが好ましい。
【0015】
R3が炭素数1~20のアルキル基の場合、R3としては、例えば前述の炭素数1~10のアルキル基として挙げたアルキル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。R3が炭素数1~20のアルキル基の場合、R3の炭素数は、3から20が好ましく、7から20がさらに好ましい。炭素数が7以上となることで耐水性や耐クラッキング性に優れる。
R3がシクロアルキル基の場合、R3としては、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましく、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
R3がアリール基の場合、R3としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
R3としては、炭素数3~20のアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。
またR1、R2、R3における炭素数の合計は、4以上が好ましく、8以上がさらに好ましい。上記の範囲とすることで耐水性や耐クラッキング性に優れる。
【0016】
R3は、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基が、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基により置換されている場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。
置換基としてのシクロアルキル基、アリール基はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルカノイルオキシ基としては、エタノイルオキシ基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0017】
式(2)中、炭素数1~10のアルキレン基のR4としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
R4の炭素数は、2~7が好ましく、3~4がより好ましい。
前記アルキレン基は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基により置換されている場合、置換基の数は1つでもよく2つ以上でもよい。アルキレン基に置換してもよい置換基の具体例としては、R3で挙げた置換基と同様のものが挙げられる。
【0018】
式(3)中、R5は、式(1)中のR3と同様であり、好ましい態様も同様である。
R6は、式(2)中のR4と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0019】
重合体(A)としては、エチレン性不飽和結合(重合性炭素-炭素二重結合)及び官能基(I)を有する単量体(m1)に基づく構成単位(u1)を有する重合体が好ましい。
重合体(A)が有する構成単位(u1)は1種でもよく2種以上でもよい。
重合体(A)は、構成単位(u1)に加えて、構成単位(u1)以外の他の構成単位(u2)をさらに有するものであってもよい。
【0020】
重合体(A)は、加水分解性、耐水性、耐クラック性、貯蔵安定性の点で、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。「(メタ)アクリル系重合体」は、重合体(A)を構成する構成単位の少なくとも一部が(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位である重合体を意味する。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(例えばスチレン等のビニル系単量体)に基づく構成単位をさらに有していてもよい。「(メタ)アクリル系単量体」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する単量体を意味する。
重合体(A)が構成単位(u1)と構成単位(u2)とを有する(メタ)アクリル系重合体である場合、構成単位(u1)及び構成単位(u2)のうち、いずれか一方が(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位を含んでもよく、両方が(メタ)アクリル系単量体に基づく構成単位を含んでもよい。
【0021】
(構成単位(u1))
構成単位(u1)は、単量体(m1)のエチレン性不飽和結合が開裂した構造を有する。
単量体(m1)は、樹脂組成物の粘度の点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
単量体(m1)としては、例えば、下記式(11)で表される化合物、下記式(12)で表される化合物、下記式(13)で表される化合物等が挙げられる。
【0022】
【化7】
(式中、Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子であり、Zは、CH
2=CH-COO-、CH(CH
3)=CH-COO-、CH
2=C(CH
3)-COO-、CHR
X=CH-COO-、CH
2=C(CH
2R
X)-COO-又はCH
2=CR
X-CH
2COO-を示し、R
Xは、1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基又はアルキルエステル基を示し、R
1及びR
2はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、R
3及びR
5はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、R
4及びR
6はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
【0023】
式(11)から(13)におけるR1~R6はそれぞれ、前記式(1)から(3)におけるR1~R6と同様である。
【0024】
Zとして挙げられているCH2=CH-COO-はアクリロイルオキシ基、CH2=C(CH3)-COO-はメタクリロイルオキシ基である。CH(CH3)=CH-COO-は、クロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)又はイソクロトノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)である。
CHRX=CH-COO-は、カルボキシ基が1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基又はアルキルエステル基に置換された、マレイノイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がシス型)又はフマロイルオキシ基(エチレン性不飽和結合がトランス型)である。
RXが1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基である場合、RXはそれぞれ、前記と同様のものが挙げられる。RXは、Zが結合した基と同じ構造を有することが好ましい。例えば式(11)で表される化合物の場合、RXは、-CR1R2-OR3で表される基であることが好ましい。
RXがアルキルエステル基である場合、RXは、-COORX1で表される。RX1はアルキル基を示す。RX1のアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
CH2=C(CH2RX)-COO-又はCH2=CRX-CH2COO-は、カルボキシ基が1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基又はアルキルエステル基に置換されたイタコノイルオキシ基である。RXは前記と同様である。
Zとしては、CH2=CH-COO-又はCH(CH3)=CH-COO-が好ましい。
【0025】
単量体(m1)としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
【0026】
【0027】
(構成単位(u2))
構成単位(u2)としては、エチレン性不飽和結合を有し、官能基(I)を有しない単量体(m2)に基づく構成単位が挙げられる。かかる構成単位は、単量体(m2)のエチレン性不飽和結合が開裂した構造を有する。
【0028】
単量体(m2)としては、例えば以下のものが挙げられる。
置換又は未置換のアルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-メトキシブチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、置換又は未置換のアリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレート、m-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p-メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o-メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート]、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;
メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリプロピレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ブトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル等の末端アルコキシアリル化ポリエーテル単量体;
(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有ビニル単量体;
ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級又は第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性単量体;
トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ-p-メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-s-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-2-メチルイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-t-ブチルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピル-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、n-オクチルジ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリイソプロピルシリルメチルマレート、トリイソプロピルシリルアミルマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルマレート、トリイソプロピルシリルメチルフマレート、トリイソプロピルシリルアミルフマレート、トリ-n-ブチルシリル-n-ブチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリルメチルフマレート、t-ブチルジフェニルシリル-n-ブチルフマレート等のオルガノシリル基含有ビニル単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル単量体;
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有ビニル単量体;
ジメチルマレート、ジブチルマレート、ジメチルフマレート、ジブチルフマレート、ジブチルイタコネート、ジパーフルオロシクロヘキシルフマレート等の不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトニル等のシアノ基含有ビニル単量体;
アルキルビニルエーテル[例えば、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等]、シクロアルキルビニルエーテル[例えば、シクロヘキシルビニルエーテル等]等のビニルエーテル単量体;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル単量体;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化オレフィン;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、ポリプロピレングリコールジアリルエーテル等の多官能単量体等。
これらは1種又は2種以上を必要に応じて適宜選択して使用することができる。
単量体(m2)は、樹脂組成物の粘度の点から、エチレン性不飽和結合を1つ有する単官能単量体であることが好ましい。
【0029】
構成単位(u2)は、形成される塗膜の溶解性や耐クラック性の点では、下記式(2-1)で表されるオキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体に基づく構成単位を含むことが好ましい。
オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、下記式(2-1)で表される化合物が好ましい。
Z1-(CH2CH2O)nR21 (2-1)
(式中、Z1はアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を示し、R21は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又はアリール基を示し、nは1~15の整数を示す。)
【0030】
式(2-1)中、Z1がアクリロイルオキシ基の場合とメタクリロイルオキシ基の場合とでは、アクリロイルオキシ基の場合の方が加水分解速度を速い傾向があり、溶解速度にあわせて任意に選択することができる。
R21における炭素数1~10のアルキル基、アリール基はそれぞれ前記R1、R3で挙げたものと同様のものが挙げられる。
nは、耐水性、耐クラック性の点から、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0031】
構成単位(u2)は、形成される塗膜の可撓性や耐クラック・耐剥離性と、長期の自己研磨性とをバランスよく良好にすることができる点では、疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体に基づく構成単位を含むことが好ましい。
疎水基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
構成単位(u1)の含有量としては、全構成単位の合計(100質量%)に対し、1~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0033】
重合体(A)が、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体に基づく構成単位を有する場合、この構成単位の含有量は、全構成単位の合計に対し、1~80質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、20~50質量%がより好ましい。この構成単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の親水性がより高くなり、自己研磨性がより優れたものとなる。この構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
重合体(A)が、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体(m2)に基づく構成単位を有する場合、この構成単位の含有量は、全構成単位の合計に対し、1~98質量%が好ましく、10~98質量%がより好ましく、10~80質量%がより好ましい。この構成単位の含有量が前記範囲内であれば、形成される塗膜の可撓性や耐クラック・耐剥離性がより高くなり、防汚効果がより優れたものとなる。この構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
なお、構成単位(u1)と構成単位(u2)との合計は100質量%である。
【0034】
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、2,000~100,000であり、2,000~35,000が好ましく、2,000~19,000がより好ましく、3,000~16,000がさらに好ましい。重合体(A)の重量平均分子量が19,000以下であれば、重合体(A)を57質量%以上の含有量で含んでいても、樹脂組成物の粘度を2,000mPa・s未満に抑えることができる。また、形成される塗膜の防汚性が優れる。重量平均分子量が2000以上であれば、形成される塗膜が充分な強度、耐久性を有するものとなる。
【0035】
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、1000~30,000であり、1,000~12,000が好ましく、2,000~9,000がより好ましい。
重合体(A)の多分散度(Mw/Mn)は、1.5~10.0であり、1.5~5.0が好ましく、2.2~3.0がより好ましい。がより好ましい。
重合体(A)の重量平均分子量及び数平均分子量はそれぞれ、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを基準樹脂として測定される。
【0036】
重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~60℃が好ましく、0℃~40℃がより好ましい。重合体(A)のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂組成物の粘度がより低くなる。ガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂の塗膜物性が優れる。
ガラス転移温度(Tg)は、下記式より算出される絶対温度(K)を摂氏(℃)に換算した値である。
1/Tg=Σ(wi/Tgi)
上記式において、wiは、重合体(A)を構成する単量体iの質量分率を示し、Tgiは、重合体(A)を構成する単量体iのホモポリマーのガラス転移温度を示す。
上記式中のTg及びTgiは、絶対温度(K)で表した値である。また、Tgiは、「ポリマーハンドブック第4版(POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION)」に記載されている値である。
【0037】
重合体(A)は、架橋構造を有しない鎖状の重合体であることが好ましい。鎖状であると、架橋構造を有する場合に比べて、樹脂組成物の粘度が低くなる。
【0038】
(重合体(A)の製造方法)
重合体(A)の製造方法としては、例えば以下の製造方法(α)、(β)等が挙げられる。
製造方法(α):単量体(m1)を含む単量体成分を重合する方法。
製造方法(β):エチレン性不飽和結合及びカルボキシ基を有する単量体(m0)を含む単量体成分を重合し、カルボキシ基を有する重合体(A0)を得て、この重合体(A0)のカルボキシ基を1-(アルキルオキシ)エステル基、1-(アルキルチオ)エステル基、又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換する方法。
【0039】
「製造方法(α)」
単量体成分:
製造方法(α)で用いられる単量体成分は、少なくとも単量体(m1)を含み、単量体(m2)をさらに含んでもよい。
【0040】
単量体成分中の単量体(m1)の含有量は、全単量体の合計質量に対し、1~80質量%が好ましい。すなわち、重合体(A)は、単量体(m1)を、全単量体の合計質量に対して1~80質量%(仕込み量)含む単量体成分を重合させて得られるものであることが好ましい。
単量体(m1)の含有量は、10~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
単量体(m1)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の自己研磨性がより優れる。単量体(m1)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0041】
単量体成分が、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む場合、この単量体の含有量は、全単量体の合計質量に対し、1~80質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。この単量体の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の親水性がより高くなり、自己研磨性がより優れたものとなる。この構成単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、形成される塗膜が適度な加水分解性を有し、長期にわたって自己研磨性が維持され、防汚効果がより優れたものとなる。
【0042】
単量体成分が、オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体(m2)を含む場合、この単量体の含有量は、全単量体の合計質量に対し、1~98質量%が好ましく、10~98質量%がより好ましく、10~80質量%がさらに好ましい。
なお、単量体(m1)と単量体(m2)との合計(単量体(m2)を含有しない場合も含む。)は、100質量%とする。
【0043】
単量体(m1)及び単量体(m2)はそれぞれ、市販品を購入することも可能であり、公知の方法を利用して適宜合成することも可能である。
単量体(m1)は、カルボキシ基を有する単量体(m0)のカルボキシ基を1-(アルキルオキシ)エステル基、1-(アルキルチオ)エステル基、又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換することにより合成できる。
単量体(m0)としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0044】
単量体(m0)のカルボキシ基を1-(アルキルオキシ)エステル基、1-(アルキルチオ)エステル基、又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換する方法としては、例えば単量体(m0)と、後述する化合物(B)とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。
化合物(B)は、1-アルケニルアルキルエーテル、1-アルケニルアルキルスルフィド、又は1-アルケニルジアルキルアミンである。
【0045】
単量体(m0)と化合物(B)との反応は、比較的マイルドな条件で進行する。例えば、塩酸、硫酸、燐酸などの酸性触媒の存在下又は非存在下に、40~100℃の反応温度に保って5~10時間反応させることにより目的物を得ることができる。
反応終了後、所定の条件で減圧蒸留を行って目的の単量体を回収することができる。
【0046】
<化合物(B)>
本発明の化合物(B)は、1-アルケニルアルキルエーテル又は1-アルケニルアルキルスルフィド又は1-アルケニルジアルキルアミンである。すなわち、化合物(B)は、エチレン性不飽和結合と、エチレン性不飽和結合を形成する炭素原子の1つに結合したエーテル性酸素原子、スルフィド系硫黄原子、又はアミン系窒素原子とを有する化合物である。化合物(B)としては、下記式(31)で表される化合物、下記式(32)で表される化合物、下記式(33)で表される化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0047】
【化9】
(式中、Xはエーテル性酸素原子又はスルフィド系硫黄原子又はアミン系窒素原子であり、R
7は、水素原子又は炭素数1~9のアルキル基を示し、
R
8は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を示し、
R
9及びR
11はそれぞれ、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、又は置換されていない、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示し、
R
10は、単結合、又はシクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、もしくは置換されていない、炭素数1~9のアルキレン基を示す。
R
12は、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基及びアラルキル基からなる群から選ばれる1以上の置換基により置換されているか、もしくは置換されていない、炭素数1~9のアルキレン基を示す。)
【0048】
化合物(B)として式(31)で表される化合物を用いると、単量体(m1)として、前記式(11)中のR1がCH2R7、R2がR8、R3がR9、ZがHである化合物が得られる。
式(31)中、R7における炭素数1~9のアルキル基は、炭素数が9以下である以外は、R1における炭素数1~10のアルキル基と同様である。
R8、R9はそれぞれ、前記式(11)におけるR2、R3と同様である。
【0049】
式(31)で表される化合物のうち、1-アルケニルアルキルエーテルとしては、例えば、アルキルビニルエーテル(例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル)、シクロアルキルビニルエーテル(例えば、シクロへキシルビニルエーテル)等のビニルエーテル類;エチル-1-プロペニルエーテル等の1-プロペニルエーテル類;エチル-1-ブテニルエーテル等の1-ブテニルエーテル類;等が挙げられる。1-アルケニルアルキルスルフィドとしては、1-(エテニルチオ)エタン、1-(エテニルチオ)プロパン、1-(エテニルチオ)ブタン、2-(エテニルチオ)ブタン、1-(エテニルチオ)-2-メチルプロパン、1-(プロピルチオ)-1-プロペン、2-(プロピルチオ)-1-プロペン等が挙げられる。1-アルケニルジアルキルアミンとしては、N,N-ジメチルエテナミン、N-メチル-N-エチルエテナミン、N,N-ジエチルエテナミン、N-ビニルピロリジン等が挙げられる。
これらのなかでは、ビニルエーテル類、1-プロペニルエーテル類が好ましい。
【0050】
化合物(B)として式(32)で表される化合物を用いると、単量体(m1)として、前記式(12)中のR4がCH-R10、ZがHである化合物が得られる。
式(32)中、R10における炭素数1~9のアルキレン基は、炭素数が9以下である以外は、R4と同様である。
【0051】
式(32)で表される化合物としては、例えば、2,3-ジヒドロフラン、5-メチル-2,3-ジヒドロフラン等のジヒドロフラン類;3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、5,6-ジヒドロ-4-メトキシ-2H-ピラン等のジヒドロピラン類;2,3-ジヒドロチオフェン等のジヒドロチオフェン類;3,4-ジヒドロ-2H-チオピラン等のジヒドロチオピラン類;2,3-ジヒドロ-1-メチルピロール等のジヒドロピロール類;1,2,3,4-テトラヒドロ-1-メチルピリジン等のテトラヒドロピリジン類;等が挙げられる。
【0052】
化合物(B)として式(33)で表される化合物を用いると、単量体(m1)として、前記式(13)中のR5がR11、R6がR12、ZがHである化合物が得られる。
式(33)中、R11は、R5と同様である。R12における炭素数1~9のアルキレン基は、炭素数が9以下である以外は、R6と同様である。
【0053】
式(33)で表される化合物としては、例えば、1-メトキシ-1-シクロペンテン、1-メトキシ-1-シクロヘキセン、1-メトキシ-1-シクロヘプテン、1-エトキシ-1-シクロペンテン、1-エトキシ-1-シクロヘキセン、1-ブトキシ-1-シクロペンテン、1-ブトキシ-1-シクロヘキセン等の1-アルコキシ-1-シクロアルキレン類;1-エトキシ-3-メチル-1-シクロヘキセン等の置換基含有1-アルコキシ-1-シクロアルキレン類;1-(メチルチオ)-1-シクロペンテン、1-(メチルチオ)-1-シクロヘキセン等の1-(アルキルチオ)-1-シクロアルキレン類;1-(1-ピロリジニル)-1-シクロペンテン、1-(1-ピロリジニル)-1-シクロヘキセン等の1-(1-ピロリジニル)-1-シクロアルキレン類;等が挙げられる。
【0054】
化合物(B)は、カルボキシル基を1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換する際に使用される原料であり、カルボン酸と化合物(B)が付加反応を起こすことによってカルボン酸をブロックした1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基が生成される。
【0055】
化合物(B)は、市販品を購入することも可能であり、適宜合成することも可能である。
重合体(A)は、前記重合体(A)の原料の単量体を重合せしめた後、又は、前記重合体(A)の原料の単量体を懸濁重合、エマルジョン重合又は溶液重合などの公知慣用の方法で重合して重合体(A)を得たのち、化合物(B)と反応させる際に化合物(B)が等量以上添加された未反応化合物でもよく、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(例えば、(メタ)アクリル酸)とその他のエチレン性不飽和単量体と化合物(B)とを共存させ、重合と同時に反応させる際に化合物(B)が等量以上添加された未反応化合物でもよく、化合物(B)を添加するタイミングを問わず、最終的に化合物(B)が共存すればよいが、重合中に化合物(B)を共存させる方法であれば、化合物(B)が一定量ラジカル重合するため、重合終了後に必要量添加する方法が好ましい。
【0056】
[化合物(B)の含有量]
樹脂組成物において、前記化合物(B)の含有量を、前記重合体(A)の1-(アルキルオキシ)エステル基、1-(アルキルチオ)エステル基、又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基の合計量100モルに対して1モル以上とすることによって貯蔵安定性が向上し、耐クラック性に優れ、溶解安定性が向上することができる。好ましくは、5モル以上、より好ましくは12モル以上、さらに好ましくは20モル以上、さらに好ましくは40モル以上である。また、1000モル以下にすることで耐候性や塗膜物性を良好に保つことができる。好ましくは800モル以下である。
【0057】
「製造方法(β)」
製造方法(β)では、まず、単量体(m0)を含む単量体成分を重合し、カルボキシ基を有する重合体(A0)を得る。単量体成分は、単量体(m2)をさらに含んでもよい。
単量体(m0)、単量体(m2)はそれぞれ前記と同様である。
単量体成分中の単量体(m0)の含有量の好ましい範囲は、製造方法(α)における単量体成分中の単量体(m1)の含有量の好ましい範囲と同様である。
オキシエチレン基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体やその他の単量体(m2)の含有量の好ましい範囲も前記と同様である。
単量体成分の重合は、製造方法(α)と同様にして行うことができる。
【0058】
次に、重合体(A0)のカルボキシ基を1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換することで、重合体(A)を得る。
重合体(A0)のカルボキシ基を1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基に変換する方法としては、例えば重合体(A0)と、化合物(B)とを反応(付加反応)させる方法が挙げられる。
化合物(B)としては前記と同様のものが挙げられる。
重合体(A0)と化合物(B)との反応は、前記単量体(m0)と化合物(B)との反応と同様にして行うことができる。
【0059】
[重合体(A)の製造方法]
本発明の重合体(A)は、上述した単量体を用いて製造される。製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などの公知の重合方法が適用できる。生産性、塗膜性能の点で溶液重合法が好ましい。溶液重合は公知の重合開始剤を用いて、公知の方法で行えばよい。
上記した単量体を混合した単量体混合物をラジカル開始剤の存在下に60~120℃の反応温度で4~14時間反応させることによって製造することができる。ラジカル開始剤としては、例えば、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ラウリルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルパーオキ-2-エチルヘキサノエート等が使用できる。また、必要に応じて、公知の連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸エステル類、α―メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等が挙げられる。また、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸n-ブチル等の一般の有機溶剤を使用する事ができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物中の重合体(A)の含有量は、樹脂組成物の全量に対して57質量%以上が好ましく、59質量%以上がより好ましく、61質量%以上がさらに好ましい。重合体(A)の含有量が前記下限値以上であれば、相対的に溶剤の含有量が少なく、樹脂組成物に防汚剤を配合したときに、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
重合体(A)の含有量の上限は、樹脂組成物の粘度が2,000mPa・s未満が好ましい、重合体(A)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、85質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0061】
<溶剤>
溶剤としては、重合体(A)を溶解できるものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル3-エトキシプロピオネート等のエステル系溶剤;等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
溶剤の含有量の下限は、樹脂組成物の粘度が2,000mPa・s未満が好ましく、重合体(A)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によっても異なるが、15質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。
【0062】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、重合体(A)以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分としては、例えば、後述する防汚塗料組成物における他の成分と同様のものが挙げられる。
他の成分の含有量は、重合体(A)に対して200質量%以下が好ましく、0質量%であってもよい。
また、貯蔵安定性を向上させる添加剤として、酸と反応する化合物、酸性化合物、塩基性化合物、及び脱水剤からなる群より選択される1種以上を含むことが望ましい。
1-(アルキルオキシ)エステル基又は1-(アルキルチオ)エステル基又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基含有樹脂において貯蔵安定性が低位な原因として、塗料中及び樹脂中で意図せずに分解してしまい、カルボン酸が生成することによるTgの上昇や、塗料中の成分と架橋構造を形成することによる樹脂及び塗料粘度の上昇がある。また、フリーのカルボン酸が生成することにより、溶解安定性や耐水性が低下する。また発生したカルボン酸が酸として触媒的に加水分解反応を促進させることにより分解が進行する。そのため、酸と反応する化合物を含むことにより、これが生成したカルボン酸を補足することで貯存安定性が向上する。酸と反応する化合物としては、塩基性化合物やエポキシ基を含有する化合物、化合物(B)等があげられる。
塩基性化合物としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、ピリジン等があげられる。エポキシ基を含有する化合物としては2-エチルオキシラン、2,3-ジメチルオキシラン、2,2-ジメチルオキシラン、(メタ)アクリル酸グリシジル、α―エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等があげられる。化合物(B)としては前述の式(31)、(32)、(33)の化合物があげられる。樹脂組成物における化合物(B)の含有量としては、前述の範囲内が好ましい。
酸と反応する化合物としては、貯蔵安定性の観点で化合物(B)が好ましい。さらに好ましくは1-アルケニルアルキルエーテルである。1-アルケニルアルキルエーテルを配合することで、耐クラック性や溶解安定性にも優れる。
また、高pH領域や低pH領域では、1-(アルキルオキシ)エステル基、1-(アルキルチオ)エステル基、又は1-(ジアルキルアミノ)エステル基の分解が促進されることや高pH領域では、化合物(B)とカルボン酸との反応性が低下することにより、貯蔵安定性が低下する。貯蔵安定性を向上するためには、水中での測定したpHが2から12となる量の塩基性化合物の添加もしくは酸性化合物の添加が好ましい。より好ましくは水中での測定したpHが6から9となる量である。それにより、樹脂組成物及び塗料組成物中のpH調整することができる。
塩基性化合物は、前述の配合物が好ましい。酸性化合物としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、クロル酢酸、フルオロ酢酸等があげられる。
【0063】
脱水剤としては、シリケート系、イソシアネート系、オルソエステル系、無機系等が挙げられる。より具体的には、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトホウ素エステル、オルト珪酸テトラエチル、無水石膏、焼石膏、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられる。特にモレキュラーシーブが好ましい。これらは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、これらの添加剤は組み合わせて使用することができ、脱水剤と1-アルケニルアルキルエーテルとの組み合わせが最も好ましい。
【0064】
<重合体(A)中の40℃30日貯蔵後における式(1)又は式(2)又は式(3)の構造の分解率>
40℃30日貯蔵後における重合体(A)中の下記式(1)又は下記式(2)又は下記式(3)の構造の分解率を20%以下とすることで、樹脂組成物もしくは、防汚塗料組成物に貯蔵安定性や溶解安定性を付与することができる。
前記分解率は、好ましくは、7%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。
式(1)又は式(2)又は式(3)の構造の分解率は測定固形酸価(a)から式(1)又は式(2)又は式(3)の構造が全て分解していない際の理論固形酸価(b)を引いた値を試料中に含まれる式(1)又は式(2)又は式(3)の構造が全て分解した際の理論酸価(c)で除した下記の値として定義する。
(分解率)={(測定固形酸価(a))-(理論固形酸価(b))}/(理論固形酸価(c))×100
測定固形酸価に関しては後述する酸価測定の項目で説明する。
また、理論固形酸価は以下の式で計算できる。
(理論固形酸価)=Σ(561×100/Mwi×wi)
wiは、共重合体(A)を構成するモノマーの酸官能基をもつモノマーiの質量分率を表し、Mwiは、酸官能基をもつモノマーの分子量を表す。
分解した際の酸価としては、酸官能基をもつモノマーとして扱い計算する。
分解していない際の酸価としては、酸官能基をもたないモノマーとして扱い計算する。
【0065】
<粘度>
本発明の樹脂組成物の25℃においてB型粘度計で測定される粘度は、2,000mPa・s未満が好ましい、1,000mPa・s未満がより好ましく、600mPa・s未満がさらに好ましい。樹脂組成物の粘度が前記上限値以下であれば、樹脂組成物に希釈のための溶剤を加えなくても、防汚剤等を配合できる。そのため、VOC含有量の少ない防汚塗料組成物が得られる。
樹脂組成物の粘度の下限は特に限定されないが、塗膜物性の点では、100mPa・s以上が好ましい。
樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分量(重合体(A)及び他の成分の含有量)、重合体(A)の重量平均分子量、ガラス転移温度、架橋構造の有無等によって調整できる。例えば固形分量、特に重合体(A)の含有量が少ないほど、低粘度になる傾向がある。また、重合体(A)の重量平均分子量が小さいほど、又はガラス転移温度が低いほど、低粘度になる傾向がある。
本発明の樹脂組成物は、公知の方法を用いて調製できる。例えば前述の製造方法(α)又は(β)により重合体(A)を合成し、得られた重合体(A)と、溶剤と、必要に応じて他の成分とを配合することにより調製できる。
このとき、各材料の配合量は、得られる樹脂組成物中の重合体(A)の含有量が57質量%以上となる量が好ましく(より好ましくは59質量%以上)、樹脂組成物の粘度が2,000mPa・s未満となる量が好ましい(より好ましくは1,000mPa・s未満)。樹脂組成物の粘度を2,000mPa・s未満とすることで、防汚塗料組成物の製造時にさらに溶剤を加えなくても、防汚剤等と良好に混合できる。そのため、VOC含有量が少ない(例えば410g/L以下)防汚塗料組成物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物は、防汚塗料組成物のほか、防曇塗料組成物等に用いることもできる。
【0066】
[防汚塗料組成物]
本発明の防汚塗料組成物は、前述の本発明の樹脂組成物と、防汚剤とを含有する。
本発明の防汚塗料組成物は、重合体(A)及び防汚剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分は、本発明の樹脂組成物に由来するものであってもよく、由来しないもの(防汚塗料組成物の製造時に配合されたもの)であってもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、本発明の樹脂組成物に由来しない溶剤を含んでもよい。
【0067】
<防汚剤>
防汚剤としては、無機防汚剤、有機防汚剤等が挙げられ、要求性能に応じて1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
防汚剤としては、例えば、亜酸化銅、チオシアン銅、銅粉末等の銅系防汚剤、他の金属(鉛、亜鉛、ニッケル等)の化合物、ジフェニルアミン等のアミン誘導体、ニトリル化合物、ベンゾチアゾール系化合物、マレイミド系化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
防汚剤として、より具体的には、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメイト、ジンクジメチルジチオカーバメート、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、N,N-ジメチルジクロロフェニル尿素、ジンクエチレンビスジチオカーバメイト、ロダン銅、4,5-ジクロロ-2-nオクチル-3(2H)イソチアゾロン、N-(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N’-ジメチル-N’-フェニル-(N-フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジサルファイド、Cu-10%Ni固溶合金、2,4,6-トリクロロフェニルマレイミド2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、3-ヨード-2-プロピニールブチルカーバメイト、ジヨードメチルパラトリスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、フェニル(ビスピリジル)ビスマスジクロライド、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、メデトミジン、ピリジン-トリフェニルボラン等が挙げられる。
防汚剤は、上記の中でも、亜酸化銅、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3カルボニトリル(以下、「防汚剤(1)」ともいう。)及びメデトミジンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
亜酸化銅と防汚剤(1)とを組み合わせる場合、配合比率(質量比)は、亜酸化銅/防汚剤(1)=80/20~99/1が好ましく、90/10~99/1がより好ましい。
亜酸化銅及び防汚剤(1)のいずれか一方又は両方と、これら以外の他の防汚剤とを組み合わせてもよい。
防汚塗料組成物中の防汚剤の含有量は、特に制限されないが、重合体(A)100質量部に対し、10~200質量部が好ましく、50~150質量部がより好ましい。防汚剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、形成される塗膜の防汚効果がより優れる。防汚剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜物性が優れる。
【0068】
<他の成分>
防汚塗料組成物における他の成分としては、例えば重合体(A)以外の他の樹脂が挙げられる。
他の樹脂は、官能基(I)を有しない樹脂であり、例えば熱可塑性樹脂等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。防汚塗料組成物が熱可塑性樹脂を含むと、耐クラック性や耐水性等の塗膜物性が向上する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化パラフィン;塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン;ポリビニルエーテル;ポリプロピレンセバケート;部分水添ターフェニル;ポリ酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、(メタ)アクリル酸エチル系共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル系共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル系共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ポリエーテルポリオール;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合体、塩化ビニル-イソブチルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-イソプロピルビニルエーテル共重合体、塩化ビニル-エチルビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂;シリコーンオイル;ワックス;ワックス以外の常温で固体の油脂、ひまし油等の常温で液体の油脂及びそれらの精製物;ワセリン;流動パラフィン;ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸及びこれらの2価金属塩;等が挙げられる。ワックスとしては、例えば、蜜蝋等の動物由来のワックス;植物由来のワックス;アマイド系ワックス等の半合成ワックス;ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等の合成ワックス等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
可塑剤として機能し、塗膜の耐クラック性や耐剥離性の向上効果が得られる点では、塩素化パラフィンが好ましい。
沈降防止剤やたれ防止剤として機能し、防汚塗料組成物の貯蔵安定性や顔料分散性の向上効果が得られる点では、半合成ワックス、合成ワックス等の有機系ワックスが好ましく、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックスがより好ましい。
【0070】
防汚塗料組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に制限されないが、重合体(A)100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、耐クラック性や耐水性などの塗膜物性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、加水分解性がより優れる。
本発明の防汚塗料組成物は、塗膜表面に潤滑性を付与し、生物の付着を防止する目的で、ジメチルポリシロキサン、シリコーンオイル等のシリコン化合物、フッ素化炭化水素等の含フッ素化合物等を含んでもよい。シリコーンオイルとしては、「KF96」( 信越化学工業( 株) 製) 、「SH200」(トーレ・シリコーン社製)、「TSF451」( 東芝シリコーン(株)製)、「DC200」(ダウコーニング社製) 、「Fluid47」((仏)ローヌプラン社製)「KF50,KF54」( 信越化学工業(株) 製) 、「SH510,SH550,SH710」(トーレ・シリコーン社製) 等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、各種の顔料、脱水剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤(例えば沈降防止剤)、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、粘性制御剤等を含んでもよい。
【0071】
顔料としては、酸化亜鉛、タルク、シリカ、硫酸バリウム、カリ長石、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、弁柄、酸化チタン、フタロシアニンブルー、カオリン、石膏等が挙げられる。特に、酸化亜鉛やタルクが好ましい。
脱水剤としては、シリケート系、イソシアネート系、オルソエステル系、無機系等が挙げられる。より具体的には、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトホウ素エステル、オルト珪酸テトラエチル、無水石膏、焼石膏、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)等が挙げられる。防汚塗料組成物に脱水剤を含有させることによって水分を補足し、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0072】
熱可塑性樹脂以外の沈降防止剤やたれ防止剤としては、ベントナイト系、微粉シリカ系、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
熱可塑性樹脂以外の可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート(TCP)、トリアリールホスフェート、トリクロロエチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチルすずラウリレート、ジブチルすずラウリレート等の有機すず系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等が挙げられる。防汚塗料組成物に可塑剤を含有させることによって塗膜の耐クラック性や耐剥離性を高めることができる。可塑剤としては、上記の中でも、TCPが好ましい。
【0073】
<90日後の塗料粘度変化率>
貯蔵安定性の観点で、40℃で90日貯蔵後におけるB型粘度計での塗料の粘度変化率が2000%以下であることが好ましい。1000%以下がより好ましい、さらに400%以下が好ましく、200%以下がさらに好ましい。
<VOC含有量>
本発明の防汚塗料組成物のVOCの含有量は、410g/L以下が好ましく、400g/L以下がより好ましく、380g/L以下がさらに好ましい。
VOC含有量は、防汚塗料組成物の比重及び加熱残分の値を用いて、下記式から算出される。
VOC含有量(g/L)=組成物の比重×1000×(100-加熱残分)/100
防汚塗料組成物の比重及び加熱残分はそれぞれ、後述する実施例に記載の方法により測定される。
VOC含有量は、溶剤の含有量により調整できる。
【0074】
<粘度>
本発明の防汚塗料組成物の粘度は、3,000mPa・s未満であることが好ましく、2,000mPa・s未満がより好ましく、1,500mPa・s未満がさらに好ましい。防汚塗料組成物の粘度が前記上限値以下であれば、塗装しやすい。
防汚塗料組成物の粘度の下限は特に限定されないが、塗膜物性の点では、100mPa・s以上が好ましい。
防汚塗料組成物の粘度は、樹脂組成物の粘度、樹脂組成物への溶剤の添加量等によって調整できる。
【0075】
本発明の防汚塗料組成物は、本発明の樹脂組成物に、防汚剤、及び必要に応じて他の成分や溶剤を添加し、混合することにより調製できる。
【0076】
本発明の防汚塗料組成物は、船舶や各種の漁網、港湾施設、オイルフェンス、橋梁、海底基地等の水中構造物等の基材表面に塗膜(防汚塗膜)を形成するために使用できる。
本発明の防汚塗料組成物を用いた塗膜は、基材表面に、直接に、又は下地塗膜を介して形成することができる。
下地塗膜としては、ウオッシュプライマー、塩化ゴム系やエポキシ系等のプライマー、中塗り塗料等を用いて形成できる。
塗膜の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、基材表面又は基材上の下地塗膜の上に、防汚塗料組成物を、刷毛塗り、吹き付け塗り、ローラー塗り、沈漬塗り等の手段で塗布し、乾燥することにより塗膜を形成できる。
防汚塗料組成物の塗布量は、一般的には乾燥塗膜として10~400μmの厚さになる量に設定できる。
塗膜の乾燥は、通常、室温で行うことができ、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【実施例】
【0077】
[実施例]
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。後述する実施例3、5、16、17、18は参考例である。なお、実施例中の部は質量部を表す。また、重合体(A)に含まれる式(1)、式(2)又は式(3)に由来する構造を有する構成単位の含有率は、原料となる単量体の仕込み量から、該単量体が全て重合反応したとして計算した。実施例中の評価は、以下に示す方法で行った。
【0078】
[酸価測定]
試料約4.0gをビーカーに精秤し(A(g))、トルエン/95%エタノール溶液=50/50の割合で50mLを加えた。密閉容器で5分間撹拌させた後、平沼自動滴定装置(AUTO TITRATOR COM-1600)を使用して、キシダ化学製20℃でのファクター(f)が1.003である0.5mol/L水酸化カリウム溶液(エタノール溶液)で電位差滴定を行い、滴定曲線の最大傾斜点を終点とした。(滴定量=B(mL)、KOH溶液の力価=f)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(mL))、以下の式に従って算出した。
測定固形酸価(mgKOH/g)={(B-C)×0.5×56.11×f}/A/固形分
[B型粘度]
150mLのガラス瓶に試料を入れ、25.0±0.1℃に調節した恒温水槽中に少なくとも2時間浸漬して試料を恒温にし、東機産業製TVB-10形粘度計で回転速度を60rpmとして、任意のローターにて測定した。
[加熱残分(固形分)]
測定試料(樹脂組成物又は防汚塗料組成物)0.50gをアルミニウム製の皿に測りとり、トルエン3mLをスポイトで加えて皿の底に一様に広げ、予備乾燥を行った。予備乾燥は、測定試料を皿全体にのばし、本乾燥で溶剤を揮発させやすくするための処理である。予備乾燥では、70~80℃の水浴上で測定試料及びトルエンを加熱溶解させ、蒸発乾固させた。予備乾燥後、105℃の熱風乾燥機で2時間の本乾燥を行った。測定試料の予備乾燥前の質量(乾燥前質量)と、本乾燥後の質量(乾燥後質量)とから、以下の式により加熱残分(固形分)を求めた。
加熱残分(質量%)=乾燥後質量/乾燥前質量×100
【0079】
[ガードナー粘度]
乾燥した粘度管に試料を粘度管の指示線まで入れコルク栓で栓をした。試料を採取した粘度管を、規定の温度(25.0±0.1℃)に調節した恒温水槽中に少なくとも2時間垂直に浸漬して試料を恒温にし、基準管となる粘度管と試料を入れた粘度管を同時に180°回転させ、試料のアワ上昇速度を基準管と比較することで粘度を決定した。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製 HLC-8220)を用いて20mMのLiBrを添加したジメチルホルムアミド(DMF)を溶離液として用いて測定した。カラムはTSKgelα-M(東ソー株式会社製、7.8mm×30cm)、TSKguardcolumnα(東ソー株式会社製、6.0mm×4cm)を使用した。検量線は、F288/F1/28/F80/F40/F20/F2/A1000(東ソー株式会社製 標準ポリスチレン)、及びスチレン単量体を使用して作成した。
[比重]
25℃において、容量が100mLの比重カップに、防汚塗料組成物を満たし、質量を測定することにより、比重を算出した。
【0080】
[貯蔵安定性試験]
150mlのガラス瓶に入れ、樹脂組成物もしくは各防汚塗料の塗料作成直後と40℃で30日間もしくは90日間恒温水槽中で保管後の塗料粘度を上述のB型粘度測定方法で測定し、樹脂組成物粘度変化率及び塗料粘度変化率を算出した。
[VOC含有量]
防汚塗料組成物の比重及び加熱残分の値を用いて、下記式から算出した。
VOC含有量(g/L)=組成物の比重×1000×(100-加熱残分)/100
[静置防汚性]
防汚塗料組成物を、150mm×70mm×1.6mm(厚さ)のあらかじめ防錆塗料を塗布してあるサンドブラスト鋼板に、乾燥膜厚が120μmになるようにはけで塗布し、乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を海中に浸漬し、6ヶ月間静置した後、塗膜の全面積に対する海中生物が付着した面積の割合(海中生物の付着面積)を求め、以下の基準で静置防汚性を評価した。
A:海水生物の付着面積が10%以下。
B:海水生物の付着面積が10%超20%以下。
C:海水生物の付着面積が20%超40%以下。
D:海水生物の付着面積が40%超。
【0081】
[塗膜消耗度試験]
防汚塗料組成物を、50mm×50mm×2mm(厚さ)の硬質塩化ビニル板に、乾燥膜厚120μmになるようにアプリケーターで塗布し、乾燥して塗膜を形成し、試験板を得た。この試験板を、海水中に設置した回転ドラムに取り付け、周速7.7m/s(15ノット)で回転させて3カ月後及び6ヶ月後の塗膜の膜厚を測定し、測定された膜厚から消耗膜厚(120μm-測定された膜厚(μm))を算出した。
【0082】
[耐水性試験]
ガラス板基板上に、防汚塗料組成物を乾燥膜厚が120μmになるように塗布して試験板を作製した。該試験板を、滅菌濾過海水中に1ヶ月間浸漬した後、該試験板を温度20℃の室温で1週間乾燥し、塗膜表面を観察した。評価は以下の基準で行った。
A:クラック及び剥離が全く観察されない
B:クラックが部分的に観察される
C:一部にクラック、剥離が観察される
D:クラック、剥離が全面に観察される。
【0083】
[製造例M1:(m1)]
ブチルビニルエーテル150.2部(1.5mol)、ヒドロキノン0.24部、フェノチアジン0.47部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸86.1部(1.0mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、5時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル264.5部(3.0mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液350部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.06部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点70℃/5torrの1-ブトキシエチルメタクリレート(m1)166.9部(0.91mol)を得た。
【0084】
[製造例M2:(m2)]
イソブチルビニルエーテル90.1部(0.9mol)、ヒドロキノン0.14部、フェノチアジン0.28部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸51.7部(0.6mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、6時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル158.7部(1.8mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液200部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.03部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点60℃/3torrの1-イソブトキシエチルメタクリレート(m2)97.5部(0.52mol)を得た。
【0085】
[製造例M3:(m3)]
シクロへキシルビニルエーテル138.8部(1.1mol)、ヒドロキノン0.28部、フェノチアジン0.53部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸86.1部(1.0mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、5時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル220.4部(2.5mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液135部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.06部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点92℃/5torrの1-(シクロへキシルオキシ)エチルメタクリレート(m3)160.0部(0.75mol)を得た。
【0086】
[製造例M4:(m4)]
2-エチルへキシルビニルエーテル171.9部(1.1mol)、ヒドロキノン0.32部、フェノチアジン0.61部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸86.1部(1.0mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、5時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル264.5部(3.0mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液135部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.07部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点99℃/3torrの1-(2-エチルへキシルオキシ)エチルメタクリレート(m4)207.0部(0.85mol)得た。
【0087】
[製造例M5:(m5)]
3,4-ジヒドロ-2H-ピラン75.7部(0.9mol)、ヒドロキノン0.13部、フェノチアジン0.26部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸(MAA)51.7部(0.6mol)を、反応液の温度が60℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、反応液の温度を80℃まで上げて、12時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル158.7部(1.8mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液200部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.03部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点76℃/3torrの2-テトラヒドロピラニルメタクリレート(m5)75.7部(0.44mol)を得た。
【0088】
[製造例M6:(m6)]
エチルビニルエーテル64.9部(0.9mol)、ヒドロキノン0.12部、フェノチアジン0.24部を室温で撹拌して均一になるまで混合した。空気(10ml/min)を吹込みながら、メタクリル酸51.7部(0.6mol)を、反応液の温度が30℃以下を保つようにして滴下した。滴下後、室温のまま4時間反応させた。反応液にt-ブチルメチルエーテル158.7部(1.8mol)を加えて混合し、有機相を20質量%炭酸カリウム水溶液160部で1回洗浄した。有機相に4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル0.05部を加え、エバポレータにより低沸分を留出させた。得られた残渣を減圧蒸留して、沸点43℃/3torrの1-エトキシエチルメタクリレート(m6)68.2部(0.43mol)を得た。
【0089】
[製造例B-1]
撹拌機、温度調整機、滴下装置を備えた反応容器に、キシレン75部を仕込み、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルアクリレート10.0部、メトキシエチルメタクリレート40.0部、製造例M1記載の1-ブトキシエチルメタクリレート50.0部、AIBN1.3部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了後、t-ブチルパーオキシオクトエート0.5部とキシレン2部を30分間隔で4回滴下し、さらに1時間撹拌した後、ブチルビニルエーテル7.3部、キシレンを6.7部、酢酸ブチル3部添加し、固形分50.2%、ガードナー粘度Gの、(共)重合体A-1を含む樹脂組成物B-1を得た。樹脂組成物B-1の40℃30日後の分解率、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は表1、2に記載の通りである。
【0090】
[製造例B-2~B-16、B-18、B-19]
樹脂組成物B-1と同様の方法で、表1、2に示す仕込み量で樹脂組成物(B-2~B-16、B-18、B-19)を製造した。表1、2で得られた樹脂組成物B-2~B-16、B-18、B-19の固形分(質量%)、ガードナー粘度、40℃30日後の分解率、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を記載した。
[製造例B-17]
撹拌機、温度調整機、滴下装置を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート44.4部を仕込み、撹拌しながら85℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート17.5部、エチルアクリレート20部、2-メトキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸11.6部、AIBN1.5部からなる混合物を4時間かけて等速滴下した。滴下終了後、t-ブチルパーオキシオクトエート0.5部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.5部を30分間隔で4回滴下し、さらに1時間撹拌した後、ブチルビニルエーテル67部を添加し、10時間撹拌した。固形分50.5%、ガードナー粘度FGの、(共)重合体A-17を含む樹脂組成物B-17を得た。樹脂組成物B-17の40℃30日後の分解率、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は表1、2に記載の通りである。
【0091】
【0092】
なお、表中の比率(mol%)は、樹脂組成物における
(式(31)、(32)、(33)で表される単量体の総mol数)/(式(1)、(2)、(3)で表される構造を有する構成単位の総mol数)を表す。
また、表1、表2で使用される各略号の意味は、以下のとおりである。
MMA:メチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
2-MTA:2-メトキシエチルアクリレート
2-MTMA:2-メトキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AIBN:2,2‘-アゾイソブチロニトリル
AMBN:2,2‘-アゾビス-2-メチルブチロニトリル
【0093】
[実施例1~19、比較例1~2]
次いで、樹脂組成物B-1~B-19を防汚剤等と表3、4に記載する配合で高速ディスパーにより混合し、防汚塗料組成物を得た。
【0094】
得られた防汚塗料組成物の評価結果を表3、4に示す。
【0095】
【0096】
表3、4中、組成の欄に記載される数値は、配合量(部)を示す。表3、4中、重合体溶液の配合量は、重合体溶液全体の量である。
また、表3、4で使用される各略号の意味は、以下のとおりである。
防汚剤(1):4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル。
添加剤(1):トヨパラックス150(東ソー(株)製、塩素化パラフィン)。
添加剤(2):ディスパロン4200-20(楠本化成(株)製、酸化ポリエチレンワックス)。
添加剤(3):ディスパロンA603-20X(楠本化成(株)製、ポリアマイドワックス)。
【0097】
実施例1-17については、優れた防汚効果が長期間持続するとともに、溶解安定性、耐クラッキング性、貯蔵安定性共に良好であった。
式(1)又は式(2)又は式(3)の構造を有する単量体のいずれに由来する構成単位も含まない場合(比較例1)では、静置防汚性が低く、さらに塗膜消耗度試験の値が小さく、塗膜消耗度試験の長期での自己研磨性が不良であった。40℃30日後の分解率が20%超の場合(比較例2)では、耐クラッキング性、溶解安定性、貯蔵安定性のいずれかに問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、溶解安定性が高く、自己研磨性を維持しつつ消耗や欠陥の発生が抑制された、長期にわたって防汚効果を発現することができる塗膜を形成する、貯蔵安定性及び塗装性に優れかつVOC含有量が少ない防汚塗料組成物を構成する樹脂組成物及び防汚塗料組成物を提供できる。したがって、本発明は海洋構造物に塗布される防汚塗料組成物の分野において好適に利用でき、産業上極めて重要である。