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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20220117BHJP
   C08G 63/183 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B32B27/36
C08G63/183
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020198528
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2020-12-14
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 大
(72)【発明者】
【氏名】奥村 麻子
(72)【発明者】
【氏名】種田 祐路
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-293920(JP,A)
【文献】特開平09-104090(JP,A)
【文献】特開2006-341422(JP,A)
【文献】特開2006-341423(JP,A)
【文献】特開平05-255490(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
B32B27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、ポリオレフィン樹脂を含む接着層、およびシーラント層をこの順に積層してなる積層体であって、
前記シーラント層を形成するための共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂
全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合割合が8モル%超であり、
全酸成分と全ジオール成分の合計を100モル%としたときの、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の成分の割合が、合計で8モル%以下であり、かつ
極限粘度が、0.55以上0.80以下である、積層体
【請求項2】
前記積層体の基材層がバリア層である、請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記バリア層が、金属箔、または、無機蒸着層を有するフィルムである、請求項2に記載の積層体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料などに用いられる積層体においてシーラント層として用いられた場合に、ヒートシール性、耐ブロッキング性に優れる共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や食品などに用いられる包装材として、シーラント層と基材層とが接着剤を介して積層された積層体が知られている。シーラントに用いられる樹脂として、ポリエステル樹脂が知られており、例えば特許文献1には、シーラント層として、共重合ポリエステル樹脂を用いた積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-14204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした積層体におけるシーラント層は、よりいっそう優れたヒートシール性と、隣接する他の基材層との接着性に加えて、この積層体をフィルム状に巻き取って保管する際の耐ブロッキング性が求められている。
【0005】
本発明の課題は、積層体に用いられた場合に、ヒートシール性、他の基材層との接着性、耐ブロッキング性の何れにも優れる、シーラント層に適した共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは検討の結果、全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合比率が8モル%を超え、かつ、全酸成分と全ジオール成分の合計を100モル%としたときの、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の共重合成分が8モル%以下であり、極限粘度が特定範囲である共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、シーラントとした場合に、上記課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は以下(1)~(4)の通りである。
(1)シーラント用の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であって、全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合割合が8モル%超であり、
全酸成分と全ジオール成分の合計を100モル%としたときの、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の成分の割合が、合計で8モル%以下であり、かつ
極限粘度が、0.55以上0.80以下である、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
(2)基材層、接着層、およびシーラント層をこの順に積層してなる積層体において、
シーラント層に用いられる、(1)の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
(3)前記積層体の接着層がポリオレフィン樹脂を含む、(2)の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
(4)前記積層体の基材層がバリア層である、(2)または(3)の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
(5)前記バリア層が、金属箔、または、無機蒸着層を有するフィルムである、(4)の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂。
【発明の効果】
【0007】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂によれば、積層体に用いられた場合の、ヒートシール性、バリア層等の他の基材層との接着性に優れ、さらに耐ブロッキング性にも優れるシーラント層を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明のシーラント用の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合割合が8モル%超であり、かつ、全酸成分と全ジオール成分の合計を100モル%としたときの、テレフタル酸とエチレングリコール以外の共重合成分の割合が合計で8モル%以下である。
【0009】
イソフタル酸の共重合割合が8モル%以下では、得られる共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶性が高くなりすぎ、シーラントとした場合の、ヒートシール性、基材層との接着性が低下する。一方で、イソフタル酸の共重合割合が15モル%以下であることが好ましい。イソフタル酸の共重合割合が15モル%を超えると共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶性が低すぎて、却ってヒートシール性、基材層との接着性が低下する場合、さらに耐ブロッキング性にも劣るものとなる場合がある。全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合割合は、9~14モル%であることがより好ましい。
【0010】
また、全酸成分と全ジオール成分の合計を100モル%としたときの、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の共重合成分の割合が、合計で8モル%を超えると、ヒートシール性、基材層との接着性、耐ブロッキング性に劣るものとなる。共重合成分の割合は、4モル%を超え7.5モル%以下であることが好ましく、4.5~7モル%であることがより好ましい。
【0011】
従って、本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂においては、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の共重合成分の割合を少なくするとともに、イソフタル酸の共重合割合を多くし、両者を特定範囲とすることで、ヒートシール性、基材層との接着性、耐ブロッキング性の何れにも優れるものとなる。
【0012】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂において、酸成分の主成分であるテレフタル酸の割合は、全酸成分を100モル%としたとき83モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましい。
【0013】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂中、テレフタル酸、イソフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ε-カプロラクトンや乳酸等が挙げられる。これらは2種以上併用してもよい。
【0014】
テレフタル酸およびイソフタル酸以外の酸成分の割合は少ないことが好ましく、全酸成分を100モル%としたとき、9モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0015】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂において、ジオール成分を100モル%としたとき、主成分であるエチレングリコールの割合は、93モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
【0016】
エチレングリコール以外の、ジオール成分としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族グリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコールなどが挙げられる。グリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。また、ヒドロキノン、4,4′-ジヒドロキシビスフェノール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5-ナフタレンジオールなどのフェノール類が挙げられる。
【0017】
上記のような特定の組成を有する、本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、積層体に用いられた場合に、ヒートシール性、基材層との接着性、耐ブロッキング性の何れにも優れるシーラントを得ることができる。
【0018】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、極限粘度が0.55以上0.80以下であることが必要であり、0.60以上0.75以下であることが好ましい。極限粘度が0.55未満であるとヒートシール性、基材層との接着性に劣るものとなり、0.80を超えると取扱性に劣るものとなる。
【0019】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ガラス転移温度が、60~80℃であることが好ましく、65℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が60℃未満であると、非晶性となり、ヒートシール性、基材層との接着性、耐ブロッキング性に劣る場合があり、80℃を超えると、却ってヒートシール性に劣る場合がある。本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂において、例えば、共重合成分の種類や共重合割合を好ましいものにすることにより、ガラス転移温度を調整することができる。
【0020】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶融点を有するものであることが好ましい。結晶融点の範囲は、210℃~235℃であることがより好ましく、中でも215~230℃であることがさらに好ましい。結晶融点が210℃未満である、または結晶融点を有していない、いわゆる非晶性の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ヒートシール性、基材層との接着性、耐ブロッキング性に劣る場合がある。一方、結晶融点が235℃を超えると、却ってヒートシール性、基材層との接着性に劣る場合がある。本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂において、例えば、共重合成分の種類や、共重合割合を好ましいものにすることにより、結晶融点を調整することができる。
【0021】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度と結晶融点の測定方法については、実施例において後述する。
【0022】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の樹脂、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を添加できる。中でも、ブロッキング防止剤が添加されることが好ましい。ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造方法の一例について、以下に述べる。
まず、前記のような酸成分(テレフタル酸、イソフタル酸、および任意の酸成分)とジオール成分(エチレングリコール、および任意のジオール成分)を原料とし、エステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応を行う。
エステル化反応は、低次縮合物としてのエステル化物を得るものである。エステル化物を得る手法としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、および必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去する方法等が挙げられる。
【0024】
溶融重縮合反応は、通常、重縮合触媒の存在下で行われる。重縮合触媒としては、例えば、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、スズ、コバルト等の金属化合物、スルホン酸系化合物等の有機化合物等が挙げられる。中でもゲルマニウム化合物が好ましい。
溶融重縮合反応は、270~285℃で3~7時間反応させることが好ましい。
【0025】
次に、溶融重縮合反応後の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を、結晶融点より20~100℃低い温度で結晶化させてもよい。
【0026】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂に添加剤が添加される場合、重合時に添加してもよく、また、加工時にブレンドして使用されるマスターバッチ等として添加してもよい。
【0027】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、基材層、接着層およびシーラント層をこの順に積層してなる積層体において、シーラント層に用いられる。
【0028】
(シーラント層)
シーラント層を形成する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法が挙げられる。中でも、汎用性等の観点から、Tダイを用いて材料を溶融混練して押し出すTダイ法が好ましい。Tダイ法によりシーラント層を形成する方法としては、Tダイより溶融状態の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を冷却ロールに押し出して、単層のシーラントフィルムを得る方法、Tダイより溶融状態の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を基材上に押し出して、シーラントと基材とを積層させる押出ラミネート法などが挙げられる。
【0029】
本発明においてシーラント層がシーラントフィルムである場合、フィルムの表面にコロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。このような表面処理は、フィルムのいずれの面に施してもよい。
【0030】
(接着層)
接着層を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。中でも、種々の材質からなる基材層と、本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたシーラント層との両方に対する密着性に優れる点から、ポリオレフィン樹脂を含有する接着層が好ましい。一般に接着剤用の樹脂としては、接着性の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましく使用されるが、本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリオレフィン樹脂との密着性により優れるので、接着層を構成する樹脂としてはポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂に含有されるオレフィン成分としては、プロピレン、エチレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、ノルボルネン類等のアルケン類やブタジエンやイソプレン等のジエン類が挙げられる。中でも、シーラント層に対する密着性に優れることから、プロピレン成分、エチレン成分を含有することが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン樹脂は、基材層およびシーラント層に対する密着性が向上することから、不飽和カルボン酸成分を含有する、酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。不飽和カルボン酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アリルコハク酸等が挙げられる。
【0033】
ポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸成分を含有する場合、その含有量は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0034】
ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。なお、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
【0035】
また、ポリオレフィン樹脂は、1-オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6を超えるアルケン類またはジエン類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、置換スチレン、一酸化炭素、二酸化硫黄等をポリオレフィン樹脂の10質量%以下程度含有してもよい。
【0036】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-無水マレイン酸共重合体、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン―無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0037】
ポリオレフィン樹脂として、アルケマ社製のボンダインシリーズ、エボニックジャパン社製のベストプラストシリーズ、ダウ・ケミカル社製のプリマコールシリーズ、三洋化成社製のユーメックスシリーズ、三井化学社製のアドマーシリーズ、三菱化学社製のモディックシリーズ、東洋紡社製のトーヨータックシリーズ等の市販品を使用することができる。
【0038】
ポリオレフィン樹脂としては、市販の水系のものも使用することができ、例えば、日本製紙ケミカル社製のスーパークロンシリーズ、住友精化社製のザイクセンシリーズ、三井化学社製のケミパールシリーズ、東洋紡社製のハードレンシリーズ、ユニチカ社製のアローベースシリーズ等を使用することができる。
【0039】
(基材層)
シーラント層に接着層を介して積層される基材層としては特に限定されず、各種の樹脂、金属等からなる層を、求める機能に応じて用いることができる。機能性を有する層として、例えば、バリア層、支持層、他の接着層等が挙げられる。積層体を包装材料として使用する場合には、バリア層が用いられることが多い。
バリア層は、液体や気体を遮断できる材料であれば、どのような材料から構成されていてもよい。たとえば、アルミニウムなどの金属材料からなる金属箔や、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの無機蒸着層を有するフィルム、塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア材料などを用いることができる。中でも、バリア性の点から、金属箔、無機蒸着層を有するフィルムが好ましい。
【0040】
バリア層の表面に、さらに紙などからなる他の基材を積層してもよいし、他の樹脂層を設けてもよい。他の樹脂層としては、例えば、ガスバリア性、耐電解液性、耐酸性、耐アルコール性、耐擦過性、耐帯電性、印刷適性等を付与し得るものが挙げられる。他の樹脂層は複数設けられていてもよく、その場合、同種、異種のいずれの樹脂からなるものであってもよい。
【0041】
積層体を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、基材層上に、接着剤を構成する樹脂と本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂とを、押出し成形機を用いて溶融して多層に押し出す方法が好ましい。
【0042】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂が用いられたシーラント層を含む積層体は、様々な用途に用いることができるが、特に包装材料に好適である。
積層体を包装材料として用いる場合、内容物は特に限定されないが、カレー、ハヤシ、シチュー、スープ、粥、パスタソース、料理用ソースなどのレトルト食品、お茶、酒類等の飲料品、ソース、醤油、酢、味噌、スープ等の調味料、サラダ油、食用油、ごま油、オリーブオイルの油脂類、農薬、防虫剤のような医薬(部外)品、入浴剤、化粧品、トイレタリー製品、界面活性剤、シャンプー、リンス、消臭剤、洗剤のようなアメニティー用品類等が挙げられる。
包装材料を製袋する場合、包装材料の形態としては、縦製袋充填シール袋、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、合掌袋、ピロー包装袋、ラミネートチューブ容器、輸液バッグ、カップ状容器や容器用蓋材、ゲーブルトップ型容器、ブリック型容器、スパウト付パウチ、スタンドアップパウチ、コンポジット缶等種々のものが挙げられる。
【実施例
【0043】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、測定、評価は以下の方法により行った。
【0044】
(1)共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の組成
得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を、日本電子社製JNM-ECZ400R/S1型NMR装置にて、H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピーク積分強度比から求めた。
(2)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
【0045】
(3)共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度(T)、結晶融点(T
得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を、パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(Diamond DSC)を用いて、昇温速度20℃/分で25℃から280℃まで測定した。なお、測定後のチャートから、ベースラインより融解エンタルピーが0.1J/g以上のピークトップを融点とした。
【0046】
(4)積層体の作製
バリア層としての15μmのアルミ箔上に、押出し成形機を用いて、260℃以上300℃以下の温度にて、接着剤用の酸変性ポリオレフィン樹脂(三井化学社製 「アドマー」)と、下記実施例、比較例で得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂とを、溶融して多層に押出し、製膜した。これにより、バリア層(厚さ15μm)と、酸変性ポリオレフィン樹脂からなる接着層(厚さ5μm)とシーラント層(厚さ30μm)とからなる積層体を作製した。
【0047】
(5)ヒートシール性
上記(4)で作製した積層体2枚を、シーラント層同士が向かい合うように重ねて、ヒートシーラーを用いて、シール温度を上面240℃、下面100℃、シール圧力0.1MPa、シール時間1秒でヒートシールした。次いで、ヒートシールされた積層体を幅15mmの試験片として切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック社製 RTC-1310A)を用い、20℃、65%RHの雰囲気中、引張速度300mm/分、チャック間距離50mm、シール部T型保持の条件で剥離強力を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記の基準で評価した。
〇;剥離強力が30N/15mm以上
×;剥離強力が30N/15mm未満
中でも本発明においては、剥離強力が40N/15mm以上であることが好ましく、45N/15mm以上であることがより好ましく、50N/15mm以上であることがさらに好ましい。
【0048】
(6)接着性
上記(4)で作製した積層体を幅25mmで切り出して、試験片とした。
テンシロン引張試験機((株)オリエンテック社製 RTC-1310A)を用い、常温下で、引張速度50mm/分、引張角度180度の条件で、バリア層とシーラント層との層間における接着強力を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて下記の基準で評価した。
〇;接着強力が3.0N/25mm以上
×;接着強力が3.0N/25mm未満
中でも本発明においては、接着強力が3.5N/25mm以上であることが好ましく、4.0N/25mm以上であることがより好ましい。
【0049】
(7)耐ブロッキング性
上記(4)で作製した積層体をロール状に巻き取り、40℃、3日間静置養生を行った。静置養生後、積層体の巻き出しを行う際の状況を観察し、下記の基準で評価した。
◎;積層体を容易に剥離することができる。
○;少し剥離音はするが、積層体を剥離する際に抵抗はない。
×;積層体を剥離する際に抵抗がある。
【0050】
実施例1
ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート、及びそのポリエステル低重合体の存在するエステル化反応缶にテレフタル酸(以下、TPA)とエチレングリコール(以下、EG)のEG/TPAのモル比1.6としたスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPaの条件で反応させ、反応率95%のエステル化反応物(以下、PETオリゴマー)を連続的に得た。
【0051】
このPETオリゴマー1809.0質量部を重縮合反応缶に移送し、反応缶内容物の温度が230℃以上になるように調整しながら、イソフタル酸(以下、IPA)とEGとを混合させた液(IPA/EGのモル比;0.30)を335.4質量部添加した。次いで、重縮合触媒として、濃度0.7質量%の二酸化ゲルマニウム/EG液を32.6質量部添加した。添加が終了した後、反応缶内の温度を283℃設定に昇温しつつ、圧力を徐々に減じて75分後に1.0hPa以下にした。この条件下で攪拌しながら重縮合反応(溶融重合反応)を5時間行い、極限粘度0.72、ガラス転移温度75℃、結晶融点223.4℃の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0052】
実施例2
実施例1にて得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、ブロッキング防止剤(富士シリシア化学社製シリカ 「SY-310P」)を、1.5質量部の割合で添加した。
【0053】
実施例3、比較例1~4
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を構成する酸成分とジオール成分を表1に示すものとなるように、成分仕込み量を変更した以外は、実施例1と同様にした。
【0054】
実施例3
全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合が14モル%となるように、PETオリゴマーを1728.6質量部、IPA/EG液を469.6質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0055】
比較例1
全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合が7モル%となるように、PETオリゴマーを1869.3質量部、IPA/EG液を234.8質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0056】
比較例2
全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合が18モル%となるように、PETオリゴマーを1648.2質量部、IPA/EG液を603.8質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。得られた樹脂は結晶融点を有しておらず、非晶性であった。
【0057】
比較例3
全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合が10モル%、コハク酸(以下、SU)の共重合割合が8モル%となるように、PETオリゴマーを1648.2質量部、IPA/EG液を335.4質量部、SUを118.0質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。得られた樹脂は結晶融点を有しておらず、非晶性であった。
【0058】
比較例4
全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合量が10モル%となるように、また全ジオール成分を100モル%としたとき、1,4-シクロヘキサンジメタノールを8モル%となるように、PETオリゴマーを1809.0質量部、イソフタル酸/EG液を335.4質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノールを115.2質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。得られた樹脂は結晶融点を有しておらず、非晶性であった。
【0059】
比較例5
実施例1において、重縮合反応の時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0060】
実施例4
上記(4)の積層体の作製において、接着剤用の酸変性ポリオレフィン樹脂に代えて、接着剤用のポリウレタン樹脂を用い、バリア層上に塗工して、接着層(厚さ5μm)を形成した。接着層上に実施例1で得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出してシーラント層(厚さ30μm)を形成して積層体とし、同様に評価した。
【0061】
実施例5
実施例1において、重縮合反応の時間を4時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0062】
実施例6
実施例1において、重縮合反応の時間を3.2時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を得た。
【0063】
比較例6
上記(4)の積層体の作製において、接着剤用の酸変性ポリオレフィン樹脂に変えて、接着剤用のポリウレタン樹脂を用い、バリア層上に塗工して、接着層(厚さ5μm)を形成した。接着層上に比較例1で得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を押出してシーラント層(厚さ30μm)を形成して積層体とし、同様に評価した。
【0064】
実施例、比較例にて得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂の組成、特性、積層体の評価結果を表1にまとめて示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、実施例1~6で得られた共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いたシーラントフィルムは、本発明で規定する構成を満足するものであったため、ヒートシール性、基材層としてのバリア層との接着性、耐ブロッキング性のいずれにも優れていた。
特に実施例2では、ブロッキング防止剤を含有させていたために、耐ブロッキング性にいっそう優れていた。
実施例1と実施例4との対比から、接着層において酸変性ポリオレフィン樹脂を用いた積層体は、ポリウレタン樹脂を用いた積層体よりも、ヒートシール性、接着性に優れるものとなった。
【0067】
一方、比較例1の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全酸成分100モル中のイソフタル酸の共重合割合が7モル%と低かったため、結晶性が高くなりすぎ、ヒートシール性、接着性に劣るものであった。
比較例2の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全酸成分100モル中のイソフタル酸の共重合割合が18モル%と多かったため、ヒートシール性、接着性に劣るものであった。また、耐ブロッキング性にも劣っていた。
比較例3~4の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸の共重合割合は本発明の範囲内であったが、共重合成分の合計の割合が、全酸成分と全ジオール成分の合計100モル%あたりに換算すると、何れも9モル%と多かったため、ヒートシール性、接着性に劣るものであった。また、耐ブロッキング性にも劣っていた。
比較例5の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、極限粘度が本願発明の範囲を外れて低かったため、ヒートシール性、接着性に劣るものであった。
比較例6の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂は、全酸成分100モル中のイソフタル酸の共重合割合が7モル%と低かったため、結晶性が高くなりすぎ、ヒートシール性に劣るものであるが、接着層がポリウレタン樹脂で形成されたものであったため、比較例1と比較すると接着性は向上していた。
【要約】      (修正有)
【課題】ヒートシール性、基材層との接着性に優れるシーラントを得るための共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を提供する。
【解決手段】シーラント用の共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である。全酸成分を100モル%としたときのイソフタル酸の共重合割合が8モル%超である。全酸成分と全ジオール成分の合計100モル%中、テレフタル酸およびエチレングリコール以外の共重合成分の割合が、合計で8モル%以下である。極限粘度が、0.55以上0.80以下である。
【選択図】なし