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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】分取クロマトグラフ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20220203BHJP
   G01N 30/32 20060101ALI20220203BHJP
   G01N 30/02 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
G01N30/24 A
G01N30/32 A
G01N30/02 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020559689
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2019017714
(87)【国際公開番号】W WO2020121547
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】62/779,195
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】入来 隆之
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/185872(WO,A1)
【文献】特開2011-179839(JP,A)
【文献】特開2009-085897(JP,A)
【文献】特表2008-511002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0304745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 35/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相を送液する送液部と、
試料の吸入と吐出を行なうためのシリンジポンプ、試料を一時的に保持するためのサンプルループ、及び前記サンプルループを前記送液部からの移動相が流れる分離流路に接続する第1状態と分離流路から切り離す第2状態に切り替えるための注入バルブを有し、試料が充填された前記サンプルループを前記分離流路に接続することによって分離流路中に試料を注入するインジェクタと、
前記分離流路上に設けられ、前記インジェクタにより前記分離流路中に注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラムと、
前記分離流路上に設けられ、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、
前記分離流路の下流端に接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分のうちの所望の成分を分画して捕集するためのフラクションコレクタと、
前記インジェクタによる前記分離流路への試料の注入間隔時間を設定するように構成された注入間隔設定部と、
前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始し、前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始する場合に、前記注入バルブが次に前記第2状態から前記第1状態に切り替えられる直前に前記充填動作を完了させるために必要な前記シリンジポンプの吸入動作速度を、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間を用いて決定するように構成されたポンプ速度決定部と、
前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始するとともに前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始し、前記吸入動作において前記ポンプ速度決定部により決定された前記吸入動作速度で前記シリンジポンプを動作させることにより、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間で前記インジェクタに試料の注入を実行させるように構成された制御部と、を備えた分取クロマトグラフ。
【請求項2】
前記ポンプ速度決定部は、前記シリンジポンプの前記吸入動作速度とともに吐出動作速度を決定するように構成されており、
前記制御部は、前記充填動作において前記ポンプ速度決定部により決定された前記吐出動作速度で前記シリンジポンプを動作させるように構成されている、請求項1に記載の分取クロマトグラフ。
【請求項3】
前記ポンプ速度決定部は、前記シリンジポンプの吸入動作速度を吐出動作速度よりも遅い速度に決定するように構成されている、請求項2に記載の分取クロマトグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分取液体クロマトグラフ(分取LCともいう)、分取超臨界流体クロマトグラフ(分取SFCともいう)などの分取クロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる成分を液体クロマトグラフ(LC)や超臨界流体クロマトグラフ(SFC)を用いて分離・精製し、個別の容器に捕集する分取クロマトグラフが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
分取LCや分取SFCなどの分取クロマトグラフでは、効率よく生成された試料成分を回収するためにスタックインジェクションを用いることができる。スタックインジェクションとは、予め設定された時間間隔で試料を複数回にわたって注入する手法である。試料の注入間隔時間は、n回目に注入した試料の成分ピークのうち分離カラムから最後に溶出する成分ピークとn+1回目に注入した試料の成分ピークのうち分離カラムから最初に溶出する成分ピークとが互いに重ならないように、対象となる試料について予め取得されたクロマトグラムに基づいてユーザにより設定される。分取クロマトグラフシステムのインジェクタは、ユーザにより設定された時間間隔で複数回にわたって試料の注入を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/194108A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分取クロマトグラフにおいて試料を分離流路に注入するインジェクタでは、分離流路への試料の注入間隔時間の間に、シリンジポンプによる試料容器からの試料の吸入とサンプルループへの試料の充填を完了しておく必要がある。設定された注入間隔時間でスタックインジェクションが正しく実行されるためには、設定された注入間隔時間の間に試料の吸入動作及び充填動作が完了するような十分に速いシリンジポンプの動作速度が必要である。
【0006】
一方で、試料の注入間隔時間は試料のクロマトグラムに依存し、試料によって適当な注入間隔時間は異なる。シリンジポンプを常時一定の速度で動作させる場合には、シリンジポンプの動作速度を、想定され得る最も短い注入間隔時間の間に試料の吸入動作及び充填動作を完了できるような速度に設定しておく必要がある。しかし、シリンジポンプによる試料注入量の精度は、シリンジポンプの動作速度が高くなるほど低下する。そのため、シリンジポンプの動作速度が必要以上に高いことは好ましくない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、インジェクタによる分離流路への試料の注入量の精度を向上させることによって、試料成分の回収効率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分取クロマトグラフは、移動相を送液する送液部と、試料の吸入と吐出を行なうためのシリンジポンプ、試料を一時的に保持するためのサンプルループ、及び前記サンプルループを前記送液部からの移動相が流れる分離流路に接続する第1状態と分離流路から切り離す第2状態に切り替えるための注入バルブを有し、試料が充填された前記サンプルループを前記分離流路に接続することによって分離流路中に試料を注入するインジェクタと、前記分離流路上に設けられ、前記インジェクタにより前記分離流路中に注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラムと、前記分離流路上に設けられ、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、前記分離流路の下流端に接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分のうちの所望の成分を分画して捕集するためのフラクションコレクタと、前記インジェクタによる前記分離流路への試料の注入間隔時間を設定するように構成された注入間隔設定部と、前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始するとともに前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始する場合に、前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられる直前に前記充填動作を完了させるために必要な前記シリンジポンプの吸入動作速度を、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間を用いて決定するように構成されたポンプ速度決定部と、前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始するとともに前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始し、前記吸入動作において前記ポンプ速度決定部により決定された前記吸入動作速度で前記シリンジポンプを動作させることにより、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間で前記インジェクタに試料の注入を実行させるように構成された制御部と、を備えている。
【0009】
本発明者は、シリンジポンプの吸入動作速度を高めたときの試料注入量の精度の低下の度合いが、充填動作速度を高めたときの試料注入量の精度の低下の度合いよりも大きく、シリンジポンプによる試料注入量の精度を確保するためには、シリンジポンプの吸入動作速度を速くし過ぎないことが重要であるとの知見を得ている。したがって、本発明に係る分取クロマトグラフでは、設定された注入間隔時間に基づいてシリンジポンプの(少なくとも)吸入動作速度を決定するように構成されている。シリンジポンプの吐出動作速度も注入間隔時間に基づいて決定してもよいが、一定の速度に固定されていてもよい。
【0010】
ここで、注入間隔時間とは、試料を保持したサンプルループを分離流路に接続するように注入バルブが第2状態から第1状態に切り替えられてから、次に、注入バルブが第2状態から第1状態に切り替えられるまでの間の時間を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る分取クロマトグラフでは、注入間隔時間を最大限に使用してシリンジポンプによる試料の吸入動作及び充填動作を実行するためのシリンジポンプの吸入動作速度を、設定された注入間隔時間に基づいて決定するように構成されているので、必要以上に速い速度で試料の吸入動作が実行されることはない。これにより、インジェクタによる試料の注入量の精度が向上し、試料成分の回収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】分取クロマトグラフの一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例において、シリンジポンプにより試料を吸入する際及び分離流路に試料を注入する際の流路状態を示す図である。
図3】同実施例において、サンプルループへ試料を充填する際の流路状態を示す図である。
図4】同実施例における条件設定時の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】同実施例のインジェクタによる試料の注入動作の一例を示すフローチャートである。
図6】シリンジポンプの吸入速度と試料注入量の再現性との関係を示すグラフである。
図7】シリンジポンプの吐出速度と試料注入量の再現性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、分取クロマトグラフの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は分取SFCの一実施例を示す概略構成図である。
【0015】
この実施例の分取SFCは、送液部2、インジェクタ4、分離カラム6、検出器8、背圧調整器(BPR)10、フラクションコレクタ11及び演算制御装置12を備えている。
【0016】
送液部2は、液化二酸化炭素を送液する二酸化炭素ポンプ18、モディファイアを送液するモディファイアポンプ20、及び液化二酸化炭素とモディファイアを混合するためのミキサ22を備えている。ミキサ22の出口は、後述するインジェクタ4の注入バルブ28の2番のポートに移動相流路14を介して接続されている。
【0017】
インジェクタ4は、シリンジポンプ24、サンプルループ26、注入バルブ28、サンプルバルブ30、シリンジバルブ32及び制御部34を備えている。
【0018】
シリンジポンプ24はモータ46によって駆動される。シリンジポンプ24は、シリンジバルブ32の1つのポートに接続されている。シリンジバルブ32の他のポートにはサンプルバルブ30の共通ポートに通じる流路36、及びリンス液ボトルに通じる流路38が接続されており、シリンジポンプ24はサンブルバルブ30の共通ポート又はリンス液ボトルのいずれか一方に切り替えて接続される。
【0019】
注入バルブ28は、1番から6番のポートを備えており、互いに隣り合うポートの間を切り替えて接続するように構成されている。注入バルブ28の1番のポートには分離流路16が接続され、2番のポートには移動相流路14が接続され、3番のポートにはサンプルループ26の一端が接続され、4番のポートにはドレインに通じる流路が接続され、5番のポートにはサンプルバルブ30の1番のポートに通じる流路40が接続され、6番のポートにはサンプルループ26の他端が接続されている。注入バルブ28は、サンプルループ26を分離流路16に接続した第1状態(図1及び図2の状態)とサンプルループ26を分離流路16から切り離した第2状態(図3の状態)のいずれか一方の状態に切り替えられる。注入バルブ28が第1状態になると、移動相流路14-サンプルループ26-分離流路16が直列に接続される。一方で、注入バルブ28が第2状態になると、流路40-サンプルループ26-ドレインが直列に接続される。
【0020】
サンプルバルブ30は、1つの共通ポートと1番から6番までの選択ポートを備えており、共通ポートをいずれか1つの選択ポートへ切り替えて接続するように構成されている。1番の選択ポートには流路40が接続され、2番の選択ポートにはドレインへ通じる流路が接続され、3番の選択ポートには試料容器へ通じる流路42が接続され、4番の選択ポートにはエアボトルに通じる流路44が接続され、5番及び6番の選択ポートには流路が接続されていない。
【0021】
制御部34は、インジェクタ4内に設けられたコンピュータ回路においてプログラムが実行されることによって実現される機能である。制御部34は、演算制御装置12から与えられる情報に基づいて、注入バルブ28、サンプルバルブ30、シリンジバルブ32及びモータ46の動作を制御するように構成されている。
【0022】
分離カラム6、検出器8及びBPR10は分離流路16上に設けられている。分離カラム6は、インジェクタ4により分離流路16中に注入された試料を成分ごとに分離するためのものである。検出器8は、分離カラム6にて分離された試料成分を検出するためのものである。BPR10は、移動相中の二酸化炭素を超臨界状態に保つために分離流路16内を所定の圧力(例えば、10MPa)に維持するためのものである。
【0023】
フラクションコレクタ11は分離流路16の下流端に設けられており、分離カラム6により分離された試料成分のうち所望の成分を分画して捕集する。
【0024】
演算制御装置12はこの分取SFC全体の動作管理を行なうためのものであって、システムコントローラのような専用のコンピュータ及び/又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現される。演算制御装置12は、注入間隔設定部48及びポンプ速度決定部50を備えている。注入間隔設定部48及びポンプ速度決定部50は、プログラムが中央演算装置(CPU)によって実行されることによって得られる機能である。
【0025】
注入間隔設定部48は、インジェクタ4に実行させるスタックインジェクションにおける試料の注入間隔時間をユーザによって入力される情報に基づいて設定するように構成されている。すなわち、ユーザは、任意の時間を注入間隔時間として設定することができる。
【0026】
ポンプ速度決定部50は、注入間隔設定部48により設定された注入間隔時間に基づいて、シリンジポンプ24の吸入動作速度及び吐出動作速度を決定するように構成されている。すなわち、図4のフローチャートに示されているように、ユーザが種々の動作条件とともに注入間隔時間を演算制御装置12に入力すると(ステップ101)、注入間隔設定部48によって注入間隔時間が設定され(ステップ102)、それに基づいてシリンジポンプ24の吸入動作速度及び吐出動作速度が自動的に設定される(ステップ103)。
【0027】
ここで、インジェクタ4によるスタックインジェクションについて、図2図3とともに図5のフローチャートを用いて説明する。
【0028】
まず、図2に示されているように、サンプルバルブ30の共通ポートを3番の選択ポートに接続し、ポンプ速度決定部50により決定された速度でシリンジポンプ24を吸入動作させて試料容器から試料を吸入する(ステップ201)。シリンジポンプ24による試料の吸入動作が完了するまでに、注入バルブ28は第2状態に切り替えられる。試料の吸入動作が完了すると、図3に示されているように、共通ポートを1番の選択ポートに接続するようにサンプルバルブ30を切り替え、ポンプ速度決定部50により決定された速度でシリンジポンプ24を吐出動作させてサンプルループ26に試料を充填する(ステップ202)。サンプルループ26への試料の充填動作が完了した後、図2に示されているように、注入バルブ28を第1状態に切り替え、サンプルループ26に充填した試料を分離流路16に注入する(ステップ203)。
【0029】
試料の吸入(ステップ201)から分離流路16への試料の注入(ステップ203)までの動作を、注入回数が予め設定された回数に達するまで、又は、試料容器内のすべての試料を分離流路16に注入するまで、繰り返し実行する(ステップ204)。スタックインジェクションにおける試料の注入間隔時間とは、注入バルブ28を第2状態から第1状態に切り替えてサンプルループ26に充填された試料を分離流路16に注入してから、次に、注入バルブ28を第2状態から第1状態に切り替えてサンプルループ26に充填された試料を分離流路16に注入するまでの間の時間を意味する。
【0030】
演算制御装置12のポンプ速度決定部50は、注入バルブ28が第2状態から第1状態に切り替えられた直後に試料の吸入動作を開始し、試料の吸入動作が完了した直後にサンプルループ26への試料の充填動作を開始したときに、吸入動作を開始してから充填動作が完了し、注入バルブ28が再び第1状態に切り替えられるまでに要する時間が、注入間隔設定部48によって設定された注入間隔時間となるように、シリンジポンプ24の吸入動作速度及び吐出動作速度を決定する。
【0031】
インジェクタ4の制御部34は、注入バルブ28が第2状態から第1状態に切り替えられた直後にポンプ速度決定部50によって決定された速度で試料の吸入動作を実行し、試料の吸入動作が完了した直後にポンプ速度決定部50によって決定された速度でサンプルループ26への試料の充填動作を実行するように構成されている。
【0032】
なお、ポンプ速度決定部50は、必ずしも吐出動作速度を計算によって決定する必要はなく、吐出動作速度は注入間隔時間に拘わらず一定であってもよい。図6及び図7は、シリンジポンプ24の動作速度が分離流路16への試料注入量再現性に与える影響についての検証データである。図6の検証では、シリンジポンプ24の吐出動作速度を50μL/minで一定にし、試料の吸入を様々な吸入動作速度で行なって試料を分離流路16へ注入したときに得られるクロマトグラムのピーク面積の比率(吸入動作速度が100μL/minのときのピーク面積値を1として計算)を求めた。図7の検証では、シリンジポンプ24の吸入動作速度を50μL/minで一定にし、サンプルループ26への試料の充填を様々な吐出動作速度で行なって試料を分離流路16へ注入したときに得られるクロマトグラムのピーク面積の比率(吐出動作速度が100μL/minのときのピーク面積値を1として計算)を求めた。
【0033】
図6及び図7の検証データから、シリンジポンプ24の動作速度が速くなるほど分離流路16への試料注入量の再現性(ピーク面積比率)が低下するが、一定速度以上になると、吐出動作速度に比べて吸入動作速度のほうが試料注入量再現性への影響の度合いが大きいことがわかる。したがって、試料注入量の再現性を確保するためには、シリンジポンプ24の吸入動作速度をできる限り遅くするほうがよい。したがって、ポンプ速度決定部50は、シリンジポンプ24の吸入動作速度を吐出動作速度よりも遅い速度に決定するように構成されていてもよい。吸入動作速度と吐出動作速度の比率は、予め設定されていてもよいし、図6及び図7のようなデータを用いて計算により求めてもよい。
【0034】
以上においては、分取SFCを分取クロマトグラフの一実施例として説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、分取LCに対しても同様に適用することができる。本発明に係る分取クロマトグラフの実施形態は、以下のとおりである。
【0035】
本発明に係る分取クロマトグラフの実施形態では、移動相を送液する送液部と、試料の吸入と吐出を行なうためのシリンジポンプ、試料を一時的に保持するためのサンプルループ、及び前記サンプルループを前記送液部からの移動相が流れる分離流路に接続する第1状態と分離流路から切り離す第2状態に切り替えるための注入バルブを有し、試料が充填された前記サンプルループを前記分離流路に接続することによって分離流路中に試料を注入するインジェクタと、前記分離流路上に設けられ、前記インジェクタにより前記分離流路中に注入された試料を成分ごとに分離するための分離カラムと、前記分離流路上に設けられ、前記分離カラムにおいて分離された成分を検出するための検出器と、前記分離流路の下流端に接続され、前記分離カラムにおいて分離された成分のうちの所望の成分を分画して捕集するためのフラクションコレクタと、前記インジェクタによる前記分離流路への試料の注入間隔時間を設定するように構成された注入間隔設定部と、前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始し、前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始する場合に、前記注入バルブが次に前記第2状態から前記第1状態に切り替えられる直前に前記充填動作を完了させるために必要な前記シリンジポンプの吸入動作速度を、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間を用いて決定するように構成されたポンプ速度決定部と、前記注入バルブが前記第2状態から前記第1状態に切り替えられた直後に前記シリンジポンプによる試料の吸入動作を開始するとともに前記吸入動作が完了した後で前記シリンジポンプによる前記サンプルループへの試料の充填動作を開始し、前記吸入動作において前記ポンプ速度決定部により決定された前記吸入動作速度で前記シリンジポンプを動作させることにより、前記注入間隔設定部により設定された前記注入間隔時間で前記インジェクタに試料の注入を実行させるように構成された制御部と、を備えている。
【0036】
上記実施形態において、前記ポンプ速度決定部は、前記シリンジポンプの前記吸入動作速度とともに吐出動作速度を決定するように構成されており、前記制御部は、前記充填動作において前記ポンプ速度決定部により決定された前記吐出動作速度で前記シリンジポンプを動作させるように構成されていてもよい。このような態様により、シリンジポンプの動作速度をより柔軟に調節することができ、試料注入量の精度をより向上させることができる。
【0037】
さらに、前記ポンプ速度決定部は、前記シリンジポンプの吸入動作速度を吐出動作速度よりも遅い速度に決定するように構成されていてもよい。シリンジポンプの動作速度のうち、吸入動作速度が試料注入量の再現性に与える影響は吐出動作速度よりも大きいので、吸入動作速度を吐出動作速度よりも遅くすることで試料注入量の再現性を高めることができる。
【符号の説明】
【0038】
2 送液部
4 インジェクタ
6 分離カラム
8 検出器
10 BPR
11 フラクションコレクタ
12 演算制御装置
14 移動相流路
16 分離流路
18 二酸化炭素ポンプ
20 モディファイアポンプ
22 ミキサ
24 シリンジポンプ
26 サンプルループ
28 注入バルブ
30 サンプルバルブ
32 シリンジバルブ
34 制御部
36,38,40,42、44 流路
46 モータ
48 注入間隔設定部
50 ポンプ速度決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7