(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】加工栗の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 25/00 20160101AFI20220117BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20220117BHJP
【FI】
A23L25/00
A23L19/00 A
(21)【出願番号】P 2017066914
(22)【出願日】2017-03-30
【審査請求日】2020-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】592134583
【氏名又は名称】愛媛県
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 直大
(72)【発明者】
【氏名】玉井 敬久
(72)【発明者】
【氏名】開 俊夫
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-055181(JP,A)
【文献】特開昭59-140829(JP,A)
【文献】特開平06-209702(JP,A)
【文献】特開昭55-077858(JP,A)
【文献】特開2007-274921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)及び(2a)の工程を有する加工栗の製造方法:
(1)剥き栗を水に浸漬した後に、加熱乾燥
し、剥き栗の水分を10~30質量%減少させる、工程、
(2a)工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗と調味液とをレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程。
【請求項2】
前記工程(1)において、加熱乾燥を35~80℃で行
う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2a)において、レトルトパウチに入れる調味液の量が、加熱乾燥した剥き栗100質量部に対して1~50質量部である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2a)において、調味液が糖度30~85%のショ糖液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工栗の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
栗はブナ科クリ属の植物であり、果樹として栽培されている栗には、大きく分けて日本栗、西洋栗、中国栗、及びアメリカ栗の4種類が存在している。日本栗(和栗)は、日本原産の栗であり、果実が大きく風味が強いのが特徴であるが、甘味はやや少なく、渋皮が剥がれ難く、果肉は割れやすい。日本栗は、独特の甘みや香り、歯ざわりが好まれ、和洋さまざまな料理に使われている。そのような日本栗の商品としては、例えば、栗甘露煮がある。
【0003】
従来の栗甘露煮の製造法は、栗を剥皮後、水晒し、及びボイルを行ってアクを取り除き、更に適当な調味剤を加えて煮上げ処理を施して缶や瓶等の容器に充填し、糖液を注入し密封殺菌を行うものである。この方法においては、ボイルに時間がかかり、栗本来の風味が失われてしまう。また、果肉の損傷が起こりやすく、柔らかく煮て且つ割れ防止するためにミョウバンやリン酸塩等の食品添加物を使う必要がある。さらには、蜜煮に時間がかかり、糖分を多く含む栗となってしまい、各種の調理品への利用がし難いという問題もある。また、蜜煮処理で生じる廃糖液や、包装容器内の残糖液の処理についての問題もある。
【0004】
加工栗の製造方法としては、特許文献1では、生栗を凍結乾燥して水分含有量を15重量%以下にまで減少させた乾燥生栗を、減圧下で糖類を含有するような液体成分と接触させ、次いで加圧することにより栗内部に液体成分を含浸させる方法が報告されている。当該方法では、凍結乾燥や減圧、加圧処理などを行う必要があり、操作が煩雑となる。
【0005】
他にも、特許文献2では、レトルト栗甘露煮の製造方法として、皮を剥き、水に晒してアクを抜いただけの生の剥き栗と調味液をレトルトパウチに入れた後、レトルトパウチ内を脱気して真空密封し、その後、加圧加熱殺菌機により加圧加熱することにより、真空密封されたレトルトパウチ内で剥き栗の蜜煮と殺菌とを同時に行う方法が報告されている。特許文献2に記載の方法では、レトルトパウチに入れる剥き栗と調味液の重量比が5:4~5であり、このように多くの調味液を使用することで、栗が本来有する成分が失われてしまうことや、レトルトパウチ内に多量の糖液が残る問題がある。
【0006】
このようなレトルトパウチを使用した加工栗の製法としては、特許文献3では、剥き栗を容器に収容、密封して加熱殺菌するに際し、剥き栗表面に水分を施与することが報告されている。当該方法により、表面にベトつきがなく、栗同士が付着したり、手が汚れたりすることのない調理栗を得ることができることが記載されている。特許文献3に記載の方法は、栗を焼成することが記載されているので、天津甘栗などの中国栗に使用することが想定される方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-137300号公報
【文献】特許第4705936号公報
【文献】特開2001-204381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高風味で均一の堅さがあり、低糖度の加工栗を、短時間で効率的に製造することができる上、廃棄する調味液を低減した加工栗の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、剥き栗を加熱乾燥処理し水分を蒸発させることで風味を濃縮した後、少量の糖液とともに、レトルトパウチ内に真空包装し加圧加熱処理することで調理と殺菌を同時に行うことにより、通常の栗甘露煮や加圧加熱処理しただけでは得られない高風味で均一な堅さがあり、低糖度の調味栗を、糖液を廃棄することなく製造することができるという知見を得た。
【0010】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の加工栗の製造方法を提供するものである。
【0011】
項1.下記(1)及び(2a)又は(2b)の工程を有する加工栗の製造方法:
(1)剥き栗を水に浸漬した後に、加熱乾燥する工程、
(2a)工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗と調味液とをレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程、
(2b)工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗をレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程。
項2.前記工程(1)において、加熱乾燥を35~80℃で行い、剥き栗の水分を10~30質量%減少させる、項1に記載の製造方法。
項3.前記工程(2a)において、レトルトパウチに入れる調味液の量が、加熱乾燥した剥き栗100質量部に対して1~50質量部である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記工程(2a)において、調味液が糖度30~85%のショ糖液である、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高風味で均一の堅さがあり(すなわち、食感に優れる)、煮崩れしない、低糖度の加工栗を、短時間で効率的に製造することができる。本発明では、生栗を加熱乾燥処理し水分を蒸発させることで風味を濃縮させているので、これまでにない風味を有している。また、加熱乾燥処理により生じたヒビ割れも、加圧加熱殺菌処理の際に再結着させることができる。
【0013】
本発明によれば、レトルトパウチ内に調味液がほとんど残らないため、手軽にどこでも喫食が可能であり利便性に優れている上、輸送コストを減少させることもできる。このように、廃棄する調味液が低減するため、砂糖量を低減でき、環境にやさしいエコな製造法である。
【0014】
さらに、本発明は、レトルト殺菌装置以外は特殊装置が必要なく、簡便な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による加工栗の製造方法の例を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0018】
本発明の加工栗の製造方法は、下記(1)及び(2a)又は(2b)の工程を有することを特徴とする。
(1)剥き栗を水に浸漬した後に、加熱乾燥する工程、
(2a)工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗と調味液とをレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程、
(2b)工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗をレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程。
【0019】
原料となる栗としては、特に制限されず、日本栗(和栗)、西洋栗、中国栗、アメリカ栗などのいずれの種類の栗も使用することができる。中でも好ましくは、独特の甘味や香り、歯ざわりが好まれ、和洋さまざまな料理に使用されている、日本栗である。原料となる栗について、必要により、洗浄、選別などの前処理を行ってもよい。
【0020】
本発明における「剥き栗」は、鬼皮及び渋皮が取り除かれた栗を意味する。鬼皮及び渋皮は少なくとも一部が取り除かれていればよい。
【0021】
また、剥き栗としては、加熱処理などが行われていない生のものが望ましい。剥き栗は、鬼皮及び渋皮が取り除かれた後に、必要により洗浄等の処理を行ってもよい。本発明では、冷蔵保存された剥き栗、冷凍保存された剥き栗を解凍したものなども使用することができる。鬼皮及び渋皮が取り除かれた状態の剥き栗は市販品も存在しているので、市販品を利用することもできる。
【0022】
剥き栗としては、切断されていない原形のままの状態のもの、及び切断されたもののいずれも使用でき、望ましくは切断されていない原形のままの状態のものである。
【0023】
・工程(1)
工程(1)は、剥き栗を水に浸漬した後に、加熱乾燥する工程である。
【0024】
剥き栗の水への浸漬は、酸化褐変の抑制、及び栗のアクを抜くために行う。剥き栗の水への浸漬時間は、通常1~72時間、好ましくは6~12時間である。また、剥き栗を浸漬する水の温度は、通常0~15℃、好ましくは0~5℃である。また、使用する水としては、水道水、天然水、地下水などが挙げられる。使用する水には、酸化褐変の抑制及びアク抜きが行える限り、水以外の成分が含まれていてもよい。
【0025】
浸漬後には、剥き栗の表面に付いた水をキッチンペーパーなどにより除去してもよい。
【0026】
浸漬後に、剥き栗を加熱乾燥することにより、剥き栗中の水分を減少させる。加熱乾燥では、剥き栗の水分を減少させることができればよく、焼成のような高温に曝すことは必要ではない。このように、加熱乾燥させることで栗の風味を濃縮させることができる。加熱乾燥により栗にヒビ割れが生じたとしても、後の工程で再結着できるため問題はない。
【0027】
加熱乾燥は、一般食品加工で採用される公知の方法で行うことができ、そのような方法としては、天日乾燥、熱風乾燥、マイクロ波乾燥などが挙げられる。中でも熱風乾燥が好ましい。
【0028】
加熱乾燥の温度としては、好ましくは35~80℃、より好ましくは50~60℃である。また、加熱乾燥の時間としては、好ましくは1~8時間、より好ましくは2~3時間である。
【0029】
加熱乾燥を行うことで、剥き栗の水分を、好ましくは10~30質量%、より好ましくは15~20質量%減少させる。ここでの水分の割合は、加熱乾燥前の剥き栗の質量に対する割合を示している。
【0030】
・工程(2a)及び(2b)
工程(2a)は、工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗と調味液とをレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程である。
【0031】
工程(2b)は、工程(1)で得られた加熱乾燥した剥き栗をレトルトパウチに入れ、該レトルトパウチ内を脱気して真空密封した後、加圧加熱殺菌する工程である。
【0032】
工程(2a)と(2b)の違いは、剥き栗と共に調味液をレトルトパウチに入れるか否かである。
【0033】
調味液としては、糖類及び/又は甘味料を含む糖液が挙げられる。糖類としては、食用されている糖類であれば特に制限されず、例えば、砂糖(ショ糖)(白糖、黒糖、三温糖、和三盆等)、果糖、乳糖、ブドウ糖、ブドウ糖果糖液糖、オリゴ糖、麦芽糖、水飴、モラセス(糖蜜)、蜂蜜、メープルシロップ等の糖;キシリトール、ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられる。甘味料としては、食用されている天然由来又は非天然の甘味料であれば特に制限されず、例えば、エリスリトール、パラチノース、スクラロース、トレハロース、マルチトール、ステビア、ソーマチン、甘草抽出物、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、羅漢果抽出物等が挙げられる。これらの糖類及び甘味料は、1種単独又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。糖液には、糖類及び/又は甘味料に加えて、調味料、酸味料などを適宜配合することもできる。配合する調味料及び酸味料としては、食用されている調味料及び酸味料から選択することができる。
【0034】
調味液が糖液である場合の糖度としては、好ましくは30~85%、より好ましくは50~70%である。調味液としては、ショ糖を含むショ糖液が好ましい。
【0035】
調味液としては、糖液以外にも、塩を含む塩水や、醤油、味噌、酢、酒類、果汁、チョコレート、食用油などを含むものなどが挙げられる。
【0036】
レトルトパウチに入れる調味液の量は、加熱乾燥した剥き栗100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは20~30質量部である。レトルトパウチに入れる調味液の量は、加熱乾燥により減少した水分と同程度とすることが望ましい。このように調味液の量を加熱乾燥により減少した水分と同程度とするで、レトルトパウチ内に調味液をほとんど残らないようにすることができる。
【0037】
工程(2b)では、調味液をレトルトパウチに入れないため、栗の味だけを楽しみたい場合には好適である。
【0038】
レトルトパウチとしては、耐熱性のある密閉可能な包装容器であれば特に制限されず、好ましくは気密性及び遮光性を有するものである。レトルトパウチの例としては、プラスチックフィルム(ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなど)若しくは金属箔(アルミ箔など)又はこれらを多層に積層したものを袋状などの形に成形した容器が挙げられる。
【0039】
脱気及び真空密着については、各種公知の方法を用いて行うことができ、また、脱気及び真空密着を行える各種市販の装置を利用することもできる。
【0040】
加圧加熱殺菌についても、各種公知の方法を用いて行うことができ、また、加圧加熱殺菌を行える各種市販の装置を利用することもできる。加圧加熱殺菌は、通常、105~125℃、10~120分の条件で行うことができる。当該加圧加熱殺菌により、調理と殺菌を同時に行うことができ、加熱乾燥処理により生じた栗のヒビ割れを再結着させることができる。また、調味液を含む場合、加圧加熱殺菌により、調味液はほとんど無くなる。
【0041】
本発明の加工栗は、そのまま食することもできるし、栗ご飯、栗おこわ、栗甘露煮、和菓子(栗羊羹、栗きんとん等)、洋菓子(マロングラッセ等)などの材料として利用することもできる。本発明の加工栗は、従来の栗甘露煮と比べて糖度が低いため、各種の調理品へ利用することが可能である。また、本発明の加工栗は、冷凍保存することで、良好に長期間保存することができ、解凍後には、そのまま食するか、又は各種の調理品に利用することができる。
【0042】
本発明の加工栗の製造方法の一例のフローシートを
図1に示す。
【0043】
本発明の加工栗は、高風味で均一の堅さがあり(すなわち、食感に優れる)、煮崩れしなく、低糖度であるという特徴を有している。本発明は、従来の栗甘露煮の製法のように複雑な処理を必要とせず、短時間で効率的に加工栗を製造することができる。
【0044】
また、本発明の加工栗は、生栗を加熱乾燥処理し水分を蒸発させることで風味を濃縮させているので、これまでにない風味を有している。さらに、加熱乾燥処理により生じた栗のヒビ割れも、加圧加熱殺菌処理の際に再結着させることができる。
【0045】
本発明では、レトルトパウチ内に調味液がほとんど残らないため、手軽にどこでも喫食が可能であり利便性に優れている上、輸送コストを減少させることもできる。本発明は、廃棄する調味液を低減させることができるので、砂糖量を低減でき、環境にやさしいエコな製造法である。
【0046】
本発明は、レトルト殺菌装置以外は特殊装置が必要なく、簡便な製造方法であり、6次産業化での利用も期待できる。また、本発明では、ミョウバンやリン酸塩等の食品添加物を使わなくとも、均一の堅さがあり、煮崩れしない加工栗を製造できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0048】
実施例
まず良質な日本栗の栗を用意した。日本産の生栗は水分が60質量%程あり、独特の甘みや香り、歯ざわりが好まれ、和洋さまざまな料理に使われている。
【0049】
鬼皮及び渋皮が剥皮された日本産の生栗を、0℃で12時間、水に晒してアクを抜いた。次にキッチンペーパーを用いて表面の水分を取り除き、この生の剥き栗374 gを、隣り合う生の剥き栗が接触しないよう金網容器に入れ、温風乾燥機(エスペック株式会社、PS-220型)内に設置した。なお、温風乾燥機は、予め50℃に昇温しておいた。50℃で2時間温風乾燥し得られた栗は299 gであった。得られた栗は、体積が小さくなり、中には乾燥により部分的にヒビ割れた栗もあった。
【0050】
この加熱乾燥した剥き栗をレトルトパウチに入れ、これと前後して糖度70%のショ糖液をレトルトパウチに入れた後、小型真空ガス包装機(株式会社古川製作所、FVCII-G)を用いてレトルトパウチ内を脱気して真空密封した。ショ糖液は、加熱乾燥により減少した水分重量に相当する75 gをレトルトパウチに入れた。加圧加熱殺菌は小型調理殺菌装置(株式会社サムソン、クックボーイCB-40)を用いて、温度112℃にて40分間行った。これにより、レトルトパウチで包装済みの加工栗の製品が得られた。なお、ヒビ割れた栗は加圧加熱殺菌により結着した。
【0051】
比較例
加熱乾燥を行わなかったこと、及び剥き栗とショ糖液との質量比が5:4.5となるようにショ糖液をレトルトパウチに入れたことを除いて実施例と同様に加工栗を製造した。本比較例は特許文献2に開示されている発明に対応するものである。
【0052】
比較例では加圧加熱殺菌処理後の包装容器内に多量の糖液が残っていたのに対し、実施例では加圧加熱殺菌処理後に糖液がほぼ無くなっていた。
【0053】
実施例及び比較例の加工栗を使用して以下の評価を行った。結果を表1に示す。
・果肉水分:常圧乾燥助剤法で測定した。
・果肉糖度:果肉糖度はキッチンペーパーを用いて表面を軽くふき取った加工栗を水で2倍希釈し乳鉢ですり潰した後、屈折糖度計(株式会社アタゴ、ポケット糖度計PAL-J)でBrix%を測定し、栗果肉のみの値に補正した。
・果肉硬度:ハンディー硬度計(株式会社青光舎、SF-1010)を用いて、直径1.6 mmの円柱形プランジャーを果肉に差し込んだ時の反力加重を測定し、平均値を求めた。
・もろさ試験力:キッチンペーパーを用いて表面を軽くふき取った加工栗を厚さ20 mmに切り揃え、レオメーター(株式会社パーカーコーポレーション、PC-200N)により楔形プランジャーを用いて破断試験を行いもろさ試験力を測定した。
・水分活性:キッチンペーパーを用いて表面を軽くふき取った加工栗を乳鉢ですり潰した後、水分活性測定装置(ロトニック社、Hygroskop DT)を用いて測定した。
・遊離アミノ酸:高速液体クロマトグラフにより測定した。
・食感:愛媛県産業技術研究所の職員6人が実施例と比較例の栗を試食し評価を行った。
・栗らしい味:愛媛県産業技術研究所の職員6人が実施例と比較例の栗を試食し評価を行った。一番多く選ばれた評価を採用した。
【0054】
【0055】
表1から明らかなとおり、実施例は、果肉水分、果肉糖度、水分活性において比較例とほぼ同等である。実施例は、比較例に比べて果肉硬度、もろさ試験力、遊離アミノ酸は高い値を示した。このことから、本発明の加工栗は、煮崩れせず、本来有する成分が失われていないことが分かる。食感は比較例が脆いのに対し、実施例は緻密で堅く、本発明の加工栗は食感において優れている。もろさ試験力と食感の結果から、本発明の加工栗は均一な堅さを有していると判断できる。栗らしい味は比較例が良いに対し、実施例はたいへん良いであった。このことから、本発明の加工栗は、風味が濃縮していることが分かる。