(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】水素製造装置及び水素製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20220117BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01D53/04 230
(21)【出願番号】P 2018557738
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2017045106
(87)【国際公開番号】W WO2018116982
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2016249791
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】及川 淳
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-23069(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102910580(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
B01D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア供給装置と、
前記アンモニア供給装置に接続されており、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する分解ガスを生成するアンモニア分解装置と、
前記アンモニア分解装置に接続されており、前記分解ガスを冷却する分解ガス冷却装置と、
前記分解ガス冷却装置に接続されており、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去してアンモニア除去後ガスを流出するアンモニア吸着装置と、
前記アンモニア吸着装置に接続されており、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する水素回収装置と、
前記アンモニア分解装置を加熱する加熱機器と、
を有しており、
前記アンモニア吸着装置は、並列に配設された複数のアンモニア吸着器を有しており、前記分解ガス冷却装置からの分解ガスを前記複数のアンモニア吸着器のうち任意の一部に供給可能とされている水素製造装置であって、
前記水素回収装置に接続されており、前記オフガスを加熱するオフガス加熱装置と、
一端が前記オフガス加熱装置に接続され、他端が前記複数のアンモニア吸着器に接続されており、前記オフガスを使用済みのアンモニア吸着器に供給してアンモニア吸着器を再生可能なオフガス流路と、
複数の前記アンモニア吸着器に接続されており、前記使用済みのアンモニア吸着器から流出する吸着材再生ガスを流通する吸着材再生ガス流路と、
前記吸着材再生ガス流路に接続されており、前記吸着材再生ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する燃焼反応装置と、
一端が前記燃焼反応装置に接続され、他端が前記加熱機器に接続された燃焼ガス流路と、
を有する水素製造装置。
【請求項2】
前記分解ガス冷却装置と前記オフガス加熱装置とは同一の熱交換器であり、前記アンモニア分解装置から流出する前記分解ガスと前記水素回収装置から流出する前記オフガスとの間で熱交換可能とされている、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
一端が前記加熱機器に接続され、他端が前記吸着材再生ガス流路に接続された循環ガス流路を有する、請求項1又は2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記吸着材再生ガス流路及び前記循環ガス流路の一方又は双方に、酸素供給装置が接続されている、請求項3に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記循環ガス流路と交差する水流路と、
前記循環ガス流路と前記水流路との交差点に設置された温水加熱用熱交換器と、
前記水流路の下流端に設けられた加熱水供給装置とを有し、該加熱水供給装置から流出した加熱水を用いて前記アンモニア供給装置を加温する、請求項3又は4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記循環ガス流路のうち前記温水加熱用熱交換器よりも下流に、前記循環ガス流路を流通する循環ガス中の水を除去するためのドレンポットを有する、請求項5に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記循環ガス流路のうち前記温水加熱用熱交換器よりも上流に位置する第1ポイントと前記ドレンポットよりも下流に位置する第2ポイントとが交差して交差点となっており、前記循環ガス流路のうち前記第1ポイントと前記第2ポイントとの間の部分が環状流路となっており、
前記交差点に循環ガス用熱交換器が設置されている、請求項6に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記循環ガス流路のうち前記ドレンポットよりも下流に、循環ガスの循環機を有する、請求項6又は7に記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記環状流路の途中に、前記循環ガスの一部又は全部を排出するためのガス廃棄流路が接続されている、請求項
7に記載の水素製造装置。
【請求項10】
前記ガス廃棄流路が、
一端が前記環状流路に接続された第1のガス廃棄流路と、
前記第1のガス廃棄流路の他端に接続された補助アンモニア吸着装置と、
前記補助アンモニア吸着装置に接続され、前記補助アンモニア吸着装置から排出されるガスを流通させる第2のガス廃棄流路と、
を備えたアンモニア除害設備を有する、請求項9に記載の水素製造装置。
【請求項11】
前記補助アンモニア吸着装置が、並列に配設された複数の補助アンモニア吸着器を有しており、
前記第1のガス廃棄流路は、上流端が前記環状流路に接続され、下流端が分岐して第1分岐流路となって前記複数の補助アンモニア吸着器に接続されており、
前記第2のガス廃棄流路の上流端は、分岐して第2分岐流路となって前記複数の補助アンモニア吸着器に接続されており、
前記アンモニア除害設備は、更に、
前記複数の補助アンモニア吸着器に再生ガスを供給する再生ガス供給装置、
一端が前記再生ガス供給装置に接続され、他端が分岐して前記第2分岐流路に接続された再生ガス流路、
前記再生ガス流路の途中に設けられており、前記再生ガスを加熱する再生ガス加熱器、
一端が分岐して前記第1分岐流路に接続されている脱着ガス流路、
前記脱着ガス流路の他端に接続されており、前記複数の
補助アンモニア吸着器の各々から排出され
た吸着材脱着ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する廃ガス燃焼反応器、及び
前記廃ガス燃焼反応器から排出された燃焼ガスを前記第2のガス廃棄流路に返送する返送流路、
を有するアンモニア除害設備である、請求項10に記載の水素製造装置。
【請求項12】
前記廃ガス燃焼反応器が、前記燃焼反応装置である、請求項11に記載の水素製造装置。
【請求項13】
前記返送流路に設けられており、前記廃ガス燃焼反応器から流出された前記燃焼ガスを冷却する、廃ガス冷却器を有する、請求項11又は12に記載の水素製造装置。
【請求項14】
前記水素回収装置に接続されており、前記水素回収装置で分離した水素を流出する水素流路と、
前記水素流路に設置された圧力制御弁と、
を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項15】
前記アンモニア供給装置と前記アンモニア分解装置とを接続するアンモニア流路と、
前記アンモニア流路に設置された流量制御弁と、
を有する請求項1~14のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項16】
前記アンモニア流路に設置されたアンモニア加熱用熱交換器と、
前記アンモニア分解装置と前記アンモニア吸着装置とを接続する分解ガス流路と、を有しており、
前記分解ガス流路の途中が前記アンモニア加熱用熱交換器に流通しており、
前記分解ガス流路のうち前記アンモニア加熱用熱交換器の設置位置よりも上流側に、前記分解ガス冷却装置が設置されている、請求項15に記載の水素製造装置。
【請求項17】
前記アンモニア分解装置と前記複数のアンモニア吸着器とを接続する分解ガス流路と、
前記複数のアンモニア吸着器と前記水素回収装置とを接続するアンモニア除去後ガス流路と、
を有しており、
前記分解ガス流路の途中に前記分解ガス冷却装置が設置されており、
前記分解ガス流路及び前記アンモニア除去後ガス流路が加圧装置を有しない、請求項1~16のいずれか1項に記載の水素製造装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の水素製造装置を用いた水素製造方法であって、
前記アンモニア供給装置からの前記アンモニアを前記アンモニア分解装置に流通させ、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する前記分解ガスを生成するアンモニア分解工程、
前記アンモニア分解装置から流出する前記分解ガスを、前記分解ガス冷却装置に流通させて冷却した後、前記複数のアンモニア吸着器の一部に流通させて、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去して前記アンモニア除去後ガスを得るアンモニア吸着工程、
前記複数のアンモニア吸着器の前記一部から流出する前記アンモニア除去後ガスを、前記水素回収装置に流通させて、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する水素回収工程、
前記水素回収装置から流出する前記オフガスを、前記オフガス加熱装置、及び前記複数のアンモニア吸着器の残部のうちの一部又は全部に流通させてアンモニア吸着器を再生させるアンモニア吸着器再生工程、並びに、
前記アンモニア吸着器から流出する吸着材再生ガスを、前記燃焼反応装置、前記燃焼ガス流路、及び前記加熱機器に流通させて前記アンモニア分解装置を加熱するアンモニア分解装置の加熱工程、
を実施する、水素製造方法。
【請求項19】
前記水素回収装置に接続されており、前記水素回収装置で分離した水素を流出する水素流路と、
前記水素流路に設置された圧力制御弁と、
を有しており、
前記圧力制御弁を制御することにより、前記アンモニア分解装置の圧力P1、前記アンモニア吸着装置の圧力P2、及び前記水素回収装置の圧力P3の各々を、
P1≧P2≧P3
という関係を満たす所定の圧力範囲に制御する、請求項18に記載の水素製造方法。
【請求項20】
前記水素製造装置は請求項10~13のいずれか1項に記載の水素製造装置であり、
前記ガス廃棄流路を流通するガスを前記アンモニア除害設備に供給してアンモニアを除害するアンモニア除害工程を有する、18又は19に記載の水素製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアから水素ガスを製造する水素製造装置及び水素製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスは、究極のクリーンエネルギー源として期待されている。例えば、水素ガスは燃料電池用の燃料ガスとして用いられる。
この水素ガスの原料として、アンモニアを用いることも行われている。アンモニアは、水素の貯蔵及び輸送を容易にする化学物質(水素キャリア)として注目されている。アンモニアは室温、1MPa以下で圧縮することで容易に液化する。液体アンモニアは重量水素密度が17.8質量%と極めて高く、体積水素密度が液体水素の1.5~2.5倍という非常に優れた水素キャリアである。
【0003】
ところで、水素ガスが不純物として未分解のアンモニアを含有すると、アンモニアが燃料電池内の電解質膜や触媒層に悪影響を与える。そのため、アンモニアを分解してアンモニア分解ガスを得た後、当該分解ガスをアンモニア吸着器へ導入してアンモニアを除去することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アンモニアをアンモニア分解装置に供給して水素(H2)と窒素(N2)に分解した後、アンモニア吸着器に供給して未反応アンモニアを除去する技術が開示されている。また、特許文献1には、アンモニア吸着器で未反応アンモニアを除去した後のガスから水素以外のガスを分離することで、水素として用いることができることも記載されている。更に特許文献1には、複数のアンモニア吸着器を並列に設置し、一のアンモニア吸着器がアンモニアを吸着する時に他のアンモニア吸着器がアンモニアの脱着を行うことを繰り返すこと(スイッチング方式)も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、アンモニア吸着器で未反応アンモニアを除去した後のガスから水素を分離することで、水素を製造することが記載されている。しかし、水素を除去した後のオフガスの活用方法に関する具体的な記載はない。
本発明は、当該オフガスを有効利用し得る水素製造装置及び水素製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、アンモニア分解ガスから未反応アンモニアを除去した後に更に水素を分離した後のオフガスを、アンモニア吸着器内に収納されたアンモニア吸着剤の再生に用いると共に、脱着したアンモニアを含む当該オフガスを燃焼させて燃焼熱を利用することにより、当該オフガスを有効利用し得ることを見出した。
すなわち本発明は、以下の[1]~[25]に関する。
【0008】
[1]アンモニア供給装置と、前記アンモニア供給装置に接続されており、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する分解ガスを生成するアンモニア分解装置と、前記アンモニア分解装置に接続されており、前記分解ガスを冷却する分解ガス冷却装置と、前記分解ガス冷却装置に接続されており、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去してアンモニア除去後ガスを流出するアンモニア吸着装置と、前記アンモニア吸着装置に接続されており、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する水素回収装置と、前記アンモニア分解装置を加熱する加熱機器と、を有しており、前記アンモニア吸着装置は、並列に配設された複数のアンモニア吸着器を有しており、前記分解ガス冷却装置からの分解ガスを前記複数のアンモニア吸着器のうち任意の一部に供給可能とされている水素製造装置であって、前記水素回収装置に接続されており、前記オフガスを加熱するオフガス加熱装置と、一端が前記オフガス加熱装置に接続され、他端が前記複数のアンモニア吸着器に接続されており、前記オフガスを使用済みのアンモニア吸着器に供給してアンモニア吸着器を再生可能なオフガス流路と、複数の前記アンモニア吸着器に接続されており、前記使用済みのアンモニア吸着器から流出する吸着材再生ガスを流通する吸着材再生ガス流路と、前記吸着材再生ガス流路に接続されており、前記吸着材再生ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する燃焼反応装置と、一端が前記燃焼反応装置に接続され、他端が前記加熱機器に接続された燃焼ガス流路と、を有する水素製造装置。
【0009】
当該水素製造装置によると、アンモニアから水素を製造できると共に、水素回収装置から流出するオフガスを、アンモニア吸着器内のアンモニア吸着材の再生用ガスとして有効利用できる。また、水素回収装置から流出するオフガスは、窒素及び水素を含んでおり、また、当該オフガスをアンモニア吸着材の再生に利用した後の吸着材再生ガスは、窒素、水素及びアンモニアを含んでいる。これら窒素、水素及びアンモニアを含む吸着材再生ガスを燃焼反応装置で燃焼させることにより、高温の燃焼ガスを得ることができ、当該高温の燃焼ガスを用いてアンモニア分解装置を十分に加熱することができる。
【0010】
[2]前記分解ガス冷却装置と前記オフガス加熱装置とは同一の熱交換器であり、前記アンモニア分解装置から流出する前記分解ガスと前記水素回収装置から流出する前記オフガスとの間で熱交換可能とされている、上記[1]に記載の水素製造装置。
この熱交換器により、分解ガスの熱をオフガスに授与することができ、熱効率が向上する。
【0011】
[3]一端が前記加熱機器に接続され、他端が前記吸着材再生ガス流路に接続された循環ガス流路を有する、上記[1]又は[2]に記載の水素製造装置。
当該循環ガス流路を用いることにより、アンモニア分解装置の加熱に用いられた燃焼ガスの一部又は全部を、前述の吸着材再生ガスと混合して燃焼させて、再度アンモニア分解装置の加熱に利用することができる。これにより、アンモニア分解装置に供給する燃焼ガスの流量を多くし、これにより熱効率を向上させることができる。
また、燃焼反応装置から流出する燃焼ガスは、燃焼済みであるため、水素、アンモニア等の可燃性ガスの含有量は少ない。そして、当該燃焼ガスを、アンモニア分解装置の加熱に使用した後に循環ガスとして利用し、前述の吸着材再生ガスと混合して燃焼反応装置で燃焼させる。これにより、燃焼反応装置に供給されるガスを水素の爆発範囲に入らないように調整することができる。
【0012】
[4]前記吸着材再生ガス流路及び前記循環ガス流路の一方又は双方に、酸素供給装置が接続されている、上記[3]に記載の水素製造装置。
当該酸素供給装置から酸素含有ガスを供給し、前述の吸着材再生ガス、循環ガス、及び酸素含有ガスを混合して組成を調整後の混合ガスを燃焼反応装置に供給することにより、燃焼反応装置内においてガスをほぼ完全燃焼させることができる。
【0013】
[5]前記循環ガス流路と交差する水流路と、前記循環ガス流路と前記水流路との交差点に設置された温水加熱用熱交換器と、前記水流路の下流端に設けられた加熱水供給装置とを有し、該加熱水供給装置から流出した加熱水を用いて前記アンモニア供給装置を加温する、上記[3]又は[4]に記載の水素製造装置。
当該加熱水供給装置から前述のアンモニア供給装置に温水を放出することにより、アンモニア供給装置内の液体アンモニアを気化させることができる。
【0014】
[6]前記循環ガス流路のうち前記温水加熱用熱交換器よりも下流に、前記循環ガス流路を流通する循環ガス中の水を除去するためのドレンポットを有する、上記[5]に記載の水素製造装置。
当該ドレンポットで水を除去することで、燃焼反応装置で発生した水分を循環ガス系内から排出できる。
【0015】
[7]前記循環ガス流路のうち前記温水加熱用熱交換器よりも上流に位置する第1ポイントと前記ドレンポットよりも下流に位置する第2ポイントとが交差して交差点となっており、前記循環ガス流路のうち前記第1ポイントと前記第2ポイントとの間の部分が環状流路となっており、前記交差点に循環ガス用熱交換器が設置されている、上記[6]に記載の水素製造装置。
[8]前記循環ガス流路たとえば環状流路のうち前記ドレンポットよりも下流に、循環ガスの循環機を有する、上記[6]又は[7]に記載の水素製造装置。
【0016】
[9]前記循環ガス流路たとえば前記環状流路の途中に、前記循環ガスの一部又は全部を排出するためのガス廃棄流路が接続されている、上記[7]に記載の水素製造装置。
当該ガス廃棄流路から、循環ガスの一部又は全部を排出することにより、燃焼反応装置に供給されるガスの組成及び流量を調整することができる。
【0017】
[10]前記ガス廃棄流路が、一端が前記環状流路に接続された第1のガス廃棄流路と、前記第1のガス廃棄流路の他端に接続された補助アンモニア吸着装置と、前記補助アンモニア吸着装置に接続され、前記補助アンモニア吸着装置から排出されるガスを流通させる第2のガス廃棄流路と、を備えたアンモニア除害設備を有する、上記[9]に記載の水素製造装置。
アンモニア除害装置でガス中のアンモニアを除害することにより、より環境負荷の少ないガスを系外に排出させることができる。
【0018】
[11]前記補助アンモニア吸着装置が、並列に配設された複数の補助アンモニア吸着器を有しており、前記第1のガス廃棄流路は、上流端が前記環状流路に接続され、下流端が分岐して第1分岐流路となって前記複数の補助アンモニア吸着器に接続されており、前記第2のガス廃棄流路の上流端は、分岐して第2分岐流路となって前記複数の補助アンモニア吸着器に接続されており、前記アンモニア除害設備は、更に、前記複数の補助アンモニア吸着器に再生ガスを供給する再生ガス供給装置、一端が前記再生ガス供給装置に接続され、他端が分岐して前記第2分岐流路に接続された再生ガス流路、前記再生ガス流路の途中に設けられており、前記再生ガスを加熱する再生ガス加熱器、一端が分岐して前記第1分岐流路に接続されている脱着ガス流路、前記脱着ガス流路の他端に接続されており、前記複数の補助アンモニア吸着器の各々から排出された吸着材脱着ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する廃ガス燃焼反応器、及び前記廃ガス燃焼反応器から排出された燃焼ガスを前記第2のガス廃棄流路に返送する返送流路、を有するアンモニア除害設備である、上記[10]に記載の水素製造装置。
[12]前記廃ガス燃焼反応器が、前記燃焼反応装置である、上記[11]に記載の水素製造装置。
[13]前記返送流路に設けられており、前記廃ガス燃焼反応器から流出された前記燃焼ガスを冷却する、廃ガス冷却器を有する、上記[11]又は[12]に記載の水素製造装置。
[14]前記水素回収装置に接続されており、前記水素回収装置で分離した水素を流出する水素流路と、前記水素流路に設置された圧力制御弁と、を有する、上記[1]~[13]のいずれかに記載の水素製造装置。
当該圧力制御弁により、水素回収装置、アンモニア吸着装置、及びアンモニア分解装置の圧力を、調整することができる。
【0019】
[15]前記アンモニア供給装置と前記アンモニア分解装置とを接続するアンモニア流路と、前記アンモニア流路に設置された流量制御弁と、を有する上記[1]~[14]のいずれかに記載の水素製造装置。
当該流量制御弁により、アンモニア供給装置からアンモニア分解装置に供給するアンモニア流量を制御することができる。
【0020】
[16]前記アンモニア流路に設置されたアンモニア加熱用熱交換器と、前記アンモニア分解装置と前記アンモニア吸着装置とを接続する分解ガス流路と、を有しており、前記分解ガス流路の途中が前記アンモニア加熱用熱交換器に流通しており、前記分解ガス流路のうち前記アンモニア加熱用熱交換器の設置位置よりも上流側に、前記分解ガス冷却装置が設置されている、上記[15]に記載の水素製造装置。
【0021】
[17]前記アンモニア分解装置と前記複数のアンモニア吸着器とを接続する分解ガス流路と、前記複数のアンモニア吸着器と前記水素回収装置とを接続するアンモニア除去後ガス流路と、を有しており、前記分解ガス流路の途中に前記分解ガス冷却装置が設置されており、前記分解ガス流路及び前記アンモニア除去後ガス流路が加圧装置を有しない、上記[1]~[16]のいずれかに記載の水素製造装置。
このように、加圧装置を有しないため、設備コスト及び運転コストが低減される。
【0022】
[18]上記[1]~[17]のいずれかに記載の水素製造装置を用いた水素製造方法であって、前記アンモニア供給装置からの前記アンモニアを前記アンモニア分解装置に流通させ、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する前記分解ガスを生成するアンモニア分解工程、前記アンモニア分解装置から流出する前記分解ガスを、前記分解ガス冷却装置に流通させて冷却した後、前記複数のアンモニア吸着器の一部に流通させて、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去して前記アンモニア除去後ガスを得るアンモニア吸着工程、前記複数のアンモニア吸着器の前記一部から流出する前記アンモニア除去後ガスを、前記水素回収装置に流通させて、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する水素回収工程、前記水素回収装置から流出する前記オフガスを、前記オフガス加熱装置、及び前記複数のアンモニア吸着器の残部のうちの一部又は全部に流通させてアンモニア吸着器を再生させるアンモニア吸着器再生工程、並びに、前記アンモニア吸着器から流出する吸着材再生ガスを、前記燃焼反応装置、前記燃焼ガス流路、及び前記加熱機器に流通させて前記アンモニア分解装置を加熱するアンモニア分解装置の加熱工程、を実施する、水素製造方法。
【0023】
当該水素製造装置によると、アンモニアから水素を製造できると共に、水素回収装置から流出するオフガスを、アンモニア吸着器内のアンモニア吸着材の再生用ガスとして有効利用できる。また、水素回収装置から流出するオフガスは、窒素及び水素を含んでおり、また、当該オフガスをアンモニア吸着材の再生に利用した後の吸着材再生ガスは、窒素、水素及びアンモニアを含んでいる。これら窒素、水素及びアンモニアを含む吸着材再生ガスを燃焼反応装置で燃焼させることにより、高温の燃焼ガスを得ることができ、当該高温の燃焼ガスを用いてアンモニア分解装置を十分に加熱することができる。
【0024】
[19]前記オフガス加熱装置は、前記分解ガス冷却装置であり、前記分解ガス冷却装置により、前記分解ガスの熱を前記オフガスに授与して前記オフガスを加熱する、上記[18]に記載の水素製造方法。
この熱交換器により、分解ガスの熱をオフガスに授与することができ、熱効率が向上する。
【0025】
[20]一端が前記加熱機器に接続され、他端が前記吸着材再生ガス流路に接続された循環ガス流路を有しており、前記燃焼ガスを、前記燃焼ガス流路、前記加熱機器及び前記循環ガス流路を介して前記吸着材再生ガス流路に流通させて、前記吸着材再生ガスとの混合ガスとし、前記混合ガスを前記燃焼反応装置に流通させて燃焼させる、上記[18]又は[19]に記載の水素製造方法。
当該循環ガス流路を用いることにより、アンモニア分解装置の加熱に用いられた燃焼ガスの一部又は全部を、前述の吸着材再生ガスと混合して燃焼させて、再度アンモニア分解装置の加熱に利用することができる。これにより、アンモニア分解装置に供給する燃焼ガスの流量を多くし、これにより熱効率を向上させることができる。
また、燃焼反応装置から流出する燃焼ガスは、燃焼済みであるため、水素、アンモニア等の可燃性ガスの含有量は少ない。そして、当該燃焼ガスを、アンモニア分解装置の加熱に使用した後に循環ガスとして利用し、前述の吸着材再生ガスと混合して燃焼反応装置で燃焼させる。これにより、燃焼反応装置に供給されるガスを水素の爆発範囲に入らないように調整することができる。
【0026】
[21]前記吸着材再生ガス流路及び前記循環ガス流路の一方又は双方に、酸素供給装置が接続されており、前記酸素供給装置から供給される酸素含有ガスを、前記循環ガスと前記吸着材再生ガスとの混合ガスとし、前記混合ガスを前記燃焼反応装置に流通させて燃焼させる、上記[20]に記載の水素製造方法。
当該酸素供給装置から酸素含有ガスを供給し、前述の吸着材再生ガス、循環ガス、及び酸素含有ガスを混合して組成を調整後の混合ガスを燃焼反応装置に供給することにより、燃焼反応装置内においてガスをほぼ完全燃焼させることができる。
【0027】
[22]前記循環ガス流路と交差する水流路と、前記循環ガス流路と前記水流路との交差点に設置された温水加熱用熱交換器と、前記水流路の下流端に設けられた加熱水供給装置とを有しており、水または温水を前記温水加熱用熱交換器に流通して加熱水にした後、前記加熱水供給装置から前記アンモニア供給装置に加熱水を供給して、アンモニアを気化させる、上記[20]又は[21]に記載の水素製造方法。
当該加熱水供給装置から前述のアンモニア供給装置に加熱水を放出することにより、アンモニア供給装置内の液体アンモニアを気化させることができる。
【0028】
[23]前記循環ガス流路のうち前記温水加熱用熱交換器よりも下流に、前記循環ガス中の水を除去するためのドレンポットを有しており、前記循環ガスを、前記ドレンポットに流通させて水を除去した後に、前記吸着材再生ガスと共に前記燃焼反応装置に流通させて燃焼させる、上記[22]に記載の水素製造方法。
当該ドレンポットで水を除去することで、燃焼反応装置で発生した水分を循環ガス系内から排出できる。
【0029】
[24]前記水素回収装置に接続されており、前記水素回収装置で分離した水素を流出する水素流路と、前記水素流路に設置された圧力制御弁と、を有しており、前記圧力制御弁を制御することにより、前記アンモニア分解装置の圧力P1、前記アンモニア吸着装置の圧力P2、及び前記水素回収装置の圧力P3の各々を、
P1≧P2≧P3
という関係を満たす所定の圧力範囲に制御する、上記[18]~[23]のいずれかに記載の水素製造方法。
このように、P1≧P2≧P3とすることにより、加圧装置が不要となり、設備コスト及び運転コストが低減される。
当該酸素供給装置から酸素含有ガスを供給し、前述の吸着材再生ガス及び酸素含有ガスを混合して組成を調整後の混合ガスを燃焼反応装置に供給することにより、燃焼反応装置内においてガスをほぼ完全燃焼させることができる。
[25]前記水素製造装置は上記[10]~[13]のいずれかに記載の水素製造装置であり、前記ガス廃棄流路を流通するガスを前記アンモニア除害設備に供給してアンモニアを除害するアンモニア除害工程を有する、[18]~[24]のいずれかに記載の水素製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、アンモニアを分解して水素ガスを製造したときに発生するオフガスを有効利用することが可能な、水素製造装置及び水素製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図2】第2の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図3】
図2の水素製造装置を用いた第1の運転を説明する概略図である。
【
図4】第3の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図5】第4の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図6】第5の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図7】第6の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【
図8】第7の実施の形態に係る水素製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施の形態]
<水素製造装置>
図1は、第1の実施の形態に係る水素製造装置1の概略図である。
本実施の形態に係る水素製造装置1は、アンモニア供給装置2と、当該アンモニア供給装置2に接続されており、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する分解ガスを生成するアンモニア分解装置3と、当該アンモニア分解装置3に接続されており、分解ガスを冷却する分解ガス冷却装置4aと、当該分解ガス冷却装置4aに接続されており、分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去して水素ガスと窒素ガスを主成分とするアンモニア除去後ガスを流出するアンモニア吸着装置5と、当該アンモニア吸着装置5に接続されており、アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、水素ガスと窒素ガスを含む残りのオフガスを排出する水素回収装置6と、前記アンモニア分解装置を加熱する加熱機器8と、を有している。
【0033】
当該アンモニア吸着装置5は、並列に配設された複数のアンモニア吸着器5a、5bを有しており、前記分解ガス冷却装置4aからの分解ガスを当該複数のアンモニア吸着器5a、5bのうち任意の一方に供給可能とされている。
なお、本実施の形態では、アンモニア吸着器5a、5bの数は2個であるが、3個以上でもよい。
【0034】
水素製造装置1は、更に、前記水素回収装置6に接続されており、前記オフガスを加熱するオフガス加熱装置4bを有する。
なお、本実施の形態では、当該オフガス加熱装置4bと前記分解ガス冷却装置4aとは同一の熱交換器(分解ガス冷却用熱交換器)4であり、前記アンモニア分解装置3から流出する前記分解ガスと前記水素回収装置6から流出する前記オフガスとの間で熱交換可能とされている。これにより、熱効率が向上する。
【0035】
前記アンモニア供給装置2と前記アンモニア分解装置3とは、アンモニア流路11を介して接続されている。
前記アンモニア分解装置3と前記アンモニア吸着装置5とは、分解ガス流路12を介して接続されており、当該分解ガス流路12の途中に前記分解ガス冷却装置4aが接続されている。なお、当該分解ガス流路12の下流端は、複数本(本実施の形態では2本)の分岐流路12a、12bに分岐して複数(本実施の形態では2個)のアンモニア吸着器5a、5bの総てに接続されている。
前記アンモニア吸着装置5と前記水素回収装置6とは、アンモニア除去後ガス流路14を介して接続されている。なお、アンモニア除去後ガス流路14の上流端は、複数本(本実施の形態では2本)の分岐流路14a、14bに分岐して複数(本実施の形態では2個)のアンモニア吸着器5a、5bの総てに接続されている。これら分岐流路12a、12b及び分岐流路14a、14bのそれぞれは、開閉弁を有している。
前記水素製造装置1は、更に、前記水素回収装置6に接続されており、アンモニア除去後ガスから分離した水素を流出する水素流路15と、アンモニア除去後ガスから水素を分離した後に残るオフガスを流出する接続流路21とを有する。この接続流路21の一端(上流端)は水素回収装置6に接続され、他端(下流端)は前記オフガス加熱装置4b(分解ガス冷却用熱交換器4)に接続されている。
【0036】
また、水素製造装置1は、一端が当該オフガス加熱装置4b(分解ガス冷却用熱交換器4)に接続され、他端が前記複数のアンモニア吸着器5a、5bに接続されており、前記オフガスを使用済みのアンモニア吸着器5a、5bに供給してアンモニア吸着器を再生可能なオフガス流路22と、複数の前記アンモニア吸着器5a、5bに接続されており、前記使用済みのアンモニア吸着器5a、5bから流出する吸着材再生ガス(主成分は、水素ガス、窒素ガス、及びアンモニア)を流通する吸着材再生ガス流路23と、当該吸着材再生ガス流路23に接続されており、前記吸着材再生ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する燃焼反応装置7と、一端が前記燃焼反応装置7に接続され、他端が前記加熱機器8に接続された燃焼ガス流路24と、を有する。
上記オフガス流路22の下端は、複数本(本実施の形態では2本)の分岐流路22a、22bに分岐して、複数本(本実施の形態では2本)の分岐流路14a、14bのうち開閉弁よりも上流側に接続されている。吸着材再生ガス流路23の上流端は、複数本(本実施の形態では2本)の分岐流路23a、23bに分岐して複数(本実施の形態では2個)の分岐流路12a、12bのうち開閉弁よりも下流側に接続されている。これら分岐流路22a、22b及び分岐流路23a、23bのそれぞれは、開閉弁を有している。
【0037】
なお、本実施の形態では、前記分解ガス流路12及び前記アンモニア除去後ガス流路14が、加圧装置を有しない。これにより、設備コスト及び運転コストを削減できる。なお、本実施の形態では、水素製造装置1が加圧装置を有しない。
ただし、分解ガス流路12及びアンモニア除去後ガス流路14の少なくとも一方に、加圧装置を設けてもよい。これにより、アンモニア分解装置3の圧力を低くしてアンモニア分解効率を向上させると共に、水素回収装置6に流入するアンモニア除去後ガスの圧力を高くして水素回収効率を向上させることができる。当該加圧装置を設ける場合には、分解ガス流路12及びアンモニア除去後ガス流路14のうちアンモニア除去後ガス流路14のみに設けることが好ましい。
【0038】
(アンモニア供給装置2)
本実施の形態において、アンモニア供給装置2は、液体アンモニアタンクを有する。
【0039】
(アンモニア分解装置3)
アンモニア分解装置3は、アンモニア分解触媒を収納している。
アンモニア分解触媒としては、アンモニア分解反応に触媒活性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、卑金属系遷移金属(鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン等)、希土類系(ランタン、セリウム、ネオジム等)、貴金属系(ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金等)を組成として含む触媒が挙げられる。上記卑金属系遷移金属は金属単体、合金、窒化物、炭化物、酸化物、複合酸化物として用いることができ、上記希土類系は酸化物として用いることができ、当該卑金属系遷移金属及び当該希土類系ともに、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等の高い比表面積を有する担体に担持して用いることができる。また、上記貴金属系も、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、チタニア等の高い比表面積を有する担体に担持して用いることができる。また、上記遷移金属系及び/又は上記希土類系に、少量の上記貴金属系を含有させて用いることもできる。これらの触媒は単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(アンモニア吸着装置5)
アンモニア吸着装置5を構成するアンモニア吸着器5a、5bは、アンモニア吸着材を収納している。
アンモニア吸着材としては、分解ガス中のアンモニアを除去でき且つ再生可能であるものであれば特に制限はなく、好ましくは、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ、複合酸化物である。
【0041】
(水素回収装置6)
水素回収装置6は、アンモニアを分解してなる分解ガス(主成分:水素ガス及び窒素ガス)から、水素を分取し得るものであれば特に限定はない。例えば、水素回収装置6は、圧力変動吸着分離装置(PSA装置)、温度変動吸着分離装置(TSA装置)、水素分離膜を有する水素分離膜装置等が挙げられる。
【0042】
(燃焼反応装置7)
燃焼反応装置7は、再生中のアンモニア吸着器5a、5bから流出する吸着材再生ガスを燃焼し得るものであれば特に限定はなく、例えば、内部に燃焼触媒を収納する燃焼反応装置、直接燃焼装置等が挙げられる。
燃焼反応装置で用いられる触媒としては、パラジウム、白金等が挙げられるが、コストの観点から、パラジウムが好ましい。また、直接燃焼装置の場合は、吸着材再生ガスに灯油、天然ガス等を混合し燃焼することも可能である。
(加熱機器8)
加熱機器8は、燃焼反応装置7からの燃焼ガスをアンモニア分解装置3の周囲に供給してアンモニア分解装置3を加熱する機器である。
加熱機器8としては、アンモニア分解装置3の周囲を覆うジャケットに燃焼ガスを供給する装置や、燃焼ガスが通る配管をアンモニア分解装置3の周囲に巻きつけたものなどを例示できる。
【0043】
<水素製造方法>
次に、前述した水素製造装置1を用いた水素製造方法の一例について説明する。
本実施の形態に係る水素製造方法では、後述する第1の運転と第2の運転とを繰り返す。
【0044】
(第1の運転)
第1の運転では、アンモニア吸着器5aを用いて水素ガスの製造を実施すると共に、アンモニア吸着器5b内のアンモニア吸着材の再生を実施する。
すなわち、第1の運転は、後述するアンモニア分解工程、アンモニア吸着工程、水素回収工程、アンモニア吸着器再生工程、及び、アンモニア分解装置の加熱工程、を有する。
【0045】
〔アンモニア分解工程〕
アンモニア分解工程は、前記アンモニア供給装置2からのアンモニアを前記アンモニア分解装置3に流通させ、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する前記分解ガスを生成する工程である。
アンモニア分解装置3内の温度は、好ましくは400~800℃である。当該温度が400℃以上であると、アンモニアの分解が促進され、分解ガス中における未反応アンモニアの含有量が少なくなる。また、当該温度が800℃以下であると、アンモニア分解触媒の劣化が抑制され、また、消費エネルギー量が抑制される。当該観点から、アンモニア分解装置3内の温度は、より好ましくは430~650℃、更に好ましくは450~550℃、より更に好ましくは480~520℃である。
【0046】
アンモニア分解装置3内の圧力は、好ましくは0.0~1.0MPaG(ゲージ圧)である。当該圧力が0.0MPaG以上であると、装置への大気の漏れ込みが防止される。当該圧力が1.0MPaG以下であると、アンモニア分解反応は分子数が増える平衡反応であるため、分解ガス中における未反応アンモニアの含有量を低減することができる。
当該観点から、アンモニア分解装置3内の圧力は、より好ましくは0.2~0.8MPaG、更に好ましくは0.3~0.7MPaG、より更に好ましくは0.45~0.55MPaGである。
【0047】
〔アンモニア吸着工程〕
アンモニア吸着工程は、前記アンモニア分解工程の実施により、前記アンモニア分解装置3から流出する前記分解ガスを、前記分解ガス冷却装置4a(分解ガス冷却用熱交換器4)に流通させて冷却した後、前記複数のアンモニア吸着器5a、5bの一方(アンモニア吸着器5a)に流通させて、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去して前記アンモニア除去後ガスを得る工程である。
アンモニア吸着器5a内の温度は、好ましくは10~100℃である。当該温度が10℃以上であると、ガスの冷却装置が不要となり、エネルギー消費量を削減できる。また、当該温度が100℃以下であると、アンモニアの吸着量が大きくなる。
当該観点から、アンモニア吸着器5a内の温度は、より好ましくは15~80℃、更に好ましくは20~60℃、より更に好ましくは25~50℃である。
【0048】
アンモニア吸着器5a内の圧力は、好ましくは0.1~1.0MPaGである。当該圧力が0.1MPaG以上であると、アンモニア吸着材の単位量当たりのアンモニア吸着量が大きくなる。また、当該圧力が1.0MPaG以下であると、ガスの昇圧のためのエネルギー消費を削減できる。
当該観点から、アンモニア吸着器5a内の圧力は、より好ましくは0.15~0.8MPaG、更に好ましくは0.2~0.6MPaG、より更に好ましくは0.25~0.5MPaGである。
【0049】
また、前記アンモニア分解装置3の圧力P1、及びアンモニア吸着器5a内の圧力P2を、
P1≧P2
としてもよい。これにより、アンモニア分解装置3とアンモニア吸着器5aとの間に、加圧装置を設ける必要がなくなり、運転コスト及び設備コストが抑制される。
また、当該アンモニア吸着器5aの圧力を利用して、下流の水素回収装置6において水素回収を行う観点からは、アンモニア吸着器5a内の圧力は、より好ましくは0.2~0.8MPaG、更に好ましくは0.25~0.6MPaG、より更に好ましくは0.3~0.5MPaGである。
【0050】
〔水素回収工程〕
水素回収工程は、前記複数のアンモニア吸着器5a、5bの前記一方(アンモニア吸着器5a)から流出する前記アンモニア除去後ガスを、前記水素回収装置6に流通させて、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する工程である。
【0051】
水素回収装置6内の温度は、好ましくは10~60℃である。
水素回収装置6内の圧力は、好ましくは0.1~1.0MPaGである。
前記アンモニア分解装置3の圧力P1、前記アンモニア吸着装置5(アンモニア吸着器5a)の圧力P2、及び前記水素回収装置6の圧力P3の各々は、
P1≧P2≧P3
という関係を満たしてもよい。これにより、アンモニア分解装置3とアンモニア吸着器5aとの間、及びアンモニア吸着器5aと水素回収装置6との間に、加圧装置を設ける必要がなくなり、運転コスト及び設備コストが抑制される。
【0052】
〔アンモニア吸着器再生工程〕
アンモニア吸着器再生工程は、前記水素回収装置6から流出する前記オフガスを、前記オフガス加熱装置4b(分解ガス冷却用熱交換器4)、及び前記複数のアンモニア吸着器5a及び5bの残部(たとえばアンモニア吸着器5aを使用中の場合は、アンモニア吸着器5b)に流通させてアンモニア吸着器(アンモニア吸着器5b)を再生させる工程である。アンモニア吸着器5が3個以上存在する場合は、アンモニア吸着中ではない装置群のうちの少なくとも1つにこの再生工程を適用できる。
前述のとおり、水素回収装置6に供給されるアンモニア除去後ガスは、アンモニア吸着装置5において、アンモニア分解ガス(水素、窒素及び未反応アンモニア)からアンモニアが除去されている。したがって、水素回収装置6から流出するオフガス中におけるアンモニア含有量は少量である。したがって、当該オフガスを加熱した後にアンモニア吸着器5bに流通させることにより、アンモニア吸着材に吸着したアンモニアを良好に脱着させて、アンモニア吸着材を再生させることができる。
また、アンモニア吸着器5bを再生させている間、アンモニア吸着器5aを用いて分解ガスからアンモニアを吸着除去することができる。
【0053】
アンモニアを脱着させるときのアンモニア吸着器5b内の温度は、好ましくは100~500℃である。当該温度が100℃以上であると、アンモニア吸着材を十分に再生させることができる。また、当該温度が500℃以上であると、吸着材の劣化が懸念される。当該観点から、アンモニア吸着器5b内の温度は、より好ましくは200~450℃、更に好ましくは300~430℃、より更に好ましくは380~420℃である。
【0054】
アンモニア吸着器5b内の圧力は、好ましくは0.0~0.5MPaGである。当該圧力が0.0MPaG以上であると、真空引きが不要となりエネルギーを要しない。また、当該圧力が0.5MPaG以下であると、十分にアンモニアを脱着することができる。当該観点から、アンモニア吸着器5b内の圧力は、より好ましくは0.0~0.45MPaG、更に好ましくは0.0~0.4MPaG、より更に好ましくは0.0~0.3MPaGである。
【0055】
〔アンモニア分解装置の加熱工程〕
アンモニア分解装置の加熱工程は、前記アンモニア吸着器5bから流出する吸着材再生ガスを、前記燃焼反応装置7にて燃焼させることで熱エネルギーを生じさせ、この燃焼ガスを、前記燃焼ガス流路24を介して前記加熱機器8に流通させて前記アンモニア分解装置3を加熱する工程である。
前記アンモニア吸着器5bから流出する吸着材再生ガスは、前記アンモニア吸着器5bから脱着されたアンモニアを含んでいる。また、水素回収装置6で回収されずにオフガス中に含有する水素も含んでいる。したがって、当該吸着材再生ガスを燃焼反応装置7で燃焼させることにより、高温の燃焼ガスを得ることができる。また、この高温の燃焼ガスを用いてアンモニア分解装置3を加熱することにより、アンモニア分解装置3を十分に加熱することができる。
【0056】
(第2の運転)
前述の第1の運転を継続した後に、下記の第2の運転を実施する。
第2の運転では、第1の運転で再生させたアンモニア吸着器の一部又は全部(アンモニア吸着器5b)を用いてアンモニア吸着工程を行い、また、第1の運転で、アンモニア吸着工程で使用していたアンモニア吸着器(アンモニア吸着器5a)に対してアンモニア吸着器再生工程を実施する。なお、その他の工程、すなわち、アンモニア分解工程、水素回収工程、及びアンモニア分解装置の加熱工程は、第1の運転と同様である。
このように、第1の運転と第2の運転とを繰り返すことにより、連続運転を行うことができる。
【0057】
[第2の実施の形態]
<水素製造装置>
図2は、第2の実施の形態に係る水素製造装置30の概略図であり、
図3は、
図2の水素製造装置30を用いた第1の運転を説明する概略図である。
本実施の形態に係る水素製造装置30は、アンモニア供給装置31、アンモニア分解装置32、分解ガス冷却装置33a(分解ガス冷却用熱交換器33)、アンモニア吸着装置34、水素回収装置35、及び加熱機器38、を有する。
当該アンモニア吸着装置34は、並列に配設された複数(本実施の形態では2個)のアンモニア吸着器34a、34bを有している。
これらの装置31、32、33a(33)、34、35、38の詳細は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
後述するとおり、本実施の形態では、分解ガス冷却装置33aは、分解ガス冷却用熱交換器33であり、オフガス加熱装置33bを兼ねている。
【0058】
また、水素製造装置30は、アンモニア供給装置31とアンモニア分解装置32とを接続するアンモニア流路41、アンモニア分解装置32とアンモニア吸着装置34とを接続する分解ガス流路42、アンモニア吸着装置34と水素回収装置35とを接続するアンモニア除去後ガス流路43、及び水素回収装置35で分離された水素を流出させる水素流路44を有する。
上記分解ガス流路42は、一端(上流端)がアンモニア分解装置32に接続され、他端側が分岐して分岐流路42a、42bとなり、分岐流路42aがアンモニア吸着器34aに接続され、分岐流路42bがアンモニア吸着器34bに接続されている。分岐流路42a、42bのそれぞれは、開閉弁を有している。
また、上記アンモニア除去後ガス流路43は、一端(上流端)が分岐して分岐流路43a、43bとなり、分岐流路43aがアンモニア吸着器34aに接続され、分岐流路43bがアンモニア吸着器34bに接続されている。また、アンモニア除去後ガス流路43の他端は、合流して水素回収装置35に接続されている。分岐流路43a、43bのそれぞれは、開閉弁を有している。
上記アンモニア流路41には、流量制御弁V1が設けられている。また、上記水素流路44には、圧力制御弁V2が設けられている。
【0059】
上記アンモニア流路41のうち流量制御弁V1よりも下流側には、上流側(アンモニア供給装置31側)から順に、アンモニア加熱用熱交換器51及びアンモニア補助加熱用熱交換器52が設けられている。
上記分解ガス流路42のうち分岐路42a、42bよりも上流側には、上流側(アンモニア分解装置32側)から順に、分解ガス冷却装置33a(分解ガス冷却用熱交換器33)、上記アンモニア加熱用熱交換器51、及び水加熱用熱交換器54が設けられている。
すなわち、上記アンモニア流路41と分解ガス流路42とが交差しており、当該交差箇所に、上記アンモニア加熱用熱交換器51が設けられている。したがって、上記アンモニア加熱用熱交換器51のチューブ側及びシェル側の一方にアンモニアが流通し、他方に分解ガスが流通し、アンモニアと分解ガスとの間で熱交換可能とされている。
【0060】
更に、水素製造装置30は、水素回収装置35に接続された接続流路61と、当該接続流路61を介して水素回収装置35に接続されており、水素回収装置35から接続流路61を介して流出するオフガスを加熱するオフガス加熱装置33b(分解ガス冷却用熱交換器33)を有する。
本実施の形態では、前記分解ガス冷却装置33aと当該オフガス加熱装置33bとは同一の熱交換器(分解ガス冷却用熱交換器33)であり、アンモニア分解装置32から流出する分解ガスと前記水素回収装置35から流出するオフガスとの間で熱交換可能とされている。
【0061】
また、水素製造装置30は、一端がオフガス加熱装置33b(分解ガス冷却用熱交換器33)に接続され、他端が分岐して前記複数のアンモニア吸着器34a、34bに接続されており、前記オフガスを使用済みのアンモニア吸着器に供給してアンモニア吸着器を再生可能なオフガス流路62を有する。
すなわち、当該オフガス流路62の一端(上流端)は上記オフガス加熱装置33b(分解ガス冷却用熱交換器33)に接続されており、他端は分岐して分岐流路62a、62bとなり、分岐流路62aが上記アンモニア除去後ガス流路43の分岐流路43aのうち開閉弁よりも上流側に接続され、分岐流路62bが上記アンモニア除去後ガス流路43の分岐流路43bのうち開閉弁よりも上流側に接続されている。これら分岐流路43a、43bのそれぞれは、開閉弁を有している。
【0062】
また、水素製造装置30は、複数の前記アンモニア吸着器34a、34bに接続されており、前記使用済みのアンモニア吸着器から流出する吸着材再生ガスを流通する吸着材再生ガス流路63と、吸着材再生ガス流路63に接続されており、前記吸着材再生ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する燃焼反応装置36と、一端が前記燃焼反応装置36に接続され、他端が前記加熱機器38に接続された燃焼ガス流路64と、を有する。
詳しくは、当該吸着材再生ガス流路63は、一端(上流端)が分岐して分岐流路63a63bとなっており、分岐流路63aが前述の分解ガス流路42の分岐流路42aのうち開閉弁よりも下流側に接続されており、分岐流路63bが前述の分解ガス流路42の分岐流路42bのうち開閉弁よりも下流側に接続されている。すなわち、吸着材再生ガス流路63は、前述の分解ガス流路42の分岐流路42a、42bを介してアンモニア吸着器34a、34bに接続されている。当該吸着材再生ガス流路63は、他端が合流して燃焼反応装置36に接続されている。これら分岐流路63a、63bのそれぞれは、開閉弁を有している。
【0063】
本実施の形態では、当該吸着材再生ガス流路63のうち分岐流路63a、63bよりも下流の位置に、酸素供給装置37が設けられている。
【0064】
更に水素製造装置30は、一端が前記加熱機器38に接続され、他端が前記吸着材再生ガス流路63に接続された循環ガス流路71を有する。
前記吸着材再生ガス流路63及び前記循環ガス流路71の一方又は双方に、酸素供給装置37が接続されている。なお、本実施の形態では、吸着材再生ガス流路63に酸素供給装置37が接続されている。
【0065】
水素製造装置30は、加熱水供給装置80を有する。当該加熱水供給装置80は、前記循環ガス流路71と交差する水流路81と、当該循環ガス流路71と当該水流路81との交差点に設置された温水加熱用熱交換器73と、当該水流路の81下流端に設けられたシャワーヘッド82とを有する。したがって、この温水加熱用熱交換器73のチューブ側及びシェル側の一方に循環ガスが流通し、他方に温水が通過することにより、循環ガスと温水との間で熱交換可能とされ、当該水流路81を流れる温水が加熱されて加熱水となる。
なお、水加熱用熱交換器54から温水加熱用熱交換器73までに存在する内部流体を“温水”と呼び、それよりも下流の内部流体を“加熱水”と呼ぶこととする。
【0066】
また、水流路81のうち当該温水加熱用熱交換器73よりも上流位置が、前述の分解ガス流路42のうち分岐して分岐流路42a、42bになるよりも上流かつアンモニア加熱用熱交換器51よりも下流の位置と交差して交差点となっており、当該交差点に水加熱用熱交換器54が設置されている。この水加熱用熱交換器54のチューブ側及びシェル側の一方に分解ガスが流通し、他方に水が通過することにより、分解ガスと水との間で熱交換可能とされている。
前記循環ガス流路71のうち前記温水加熱用熱交換器73よりも下流に、前記循環ガス中の水を除去するためのドレンポット74を有する。
【0067】
前記循環ガス流路71は、その前記温水加熱用熱交換器73よりも上流に位置する第1ポイントと前記ドレンポット74よりも下流に位置する第2ポイントとが交差して交差点となっており、前記循環ガス流路71のうち前記第1ポイントと前記第2ポイントとの間の部分が環状流路71aとなっており、当該交差点に循環ガス用熱交換器72が設置されている。したがって、燃焼ガス流路64から加熱機器38を介して循環ガス流路71に流入した燃焼ガス(循環ガス)は、循環ガス用熱交換器72のチューブ側及びシェル側の一方を通過した後、循環ガス流路71のうちの環状流路71aを流通し、次いで、循環ガス用熱交換器72のチューブ側及びシェル側の他方を通過することが可能とされている。
この環状流路71aには、前述の温水加熱用熱交換器73、ドレンポット74、及び循環機75が、上流側からこの順に設けられている。
【0068】
また、当該循環ガス流路71のうちドレンポット74の下流かつ循環機75の上流側の位置からは、ガス廃棄流路76が分岐している。但し、当該ガス廃棄流路76は、当該循環ガス流路71のどの位置から分岐してもよい。
【0069】
前述の燃焼ガス流路64の途中箇所と、前述の循環ガス流路71のうち前記循環ガス用熱交換器72よりも上流の箇所に、それぞれ、バイパス流路77の一端及び他端が接続されている。
当該バイパス流路77は、前述のアンモニア流路41と交差しており、当該交差点に、前述のアンモニア補助加熱用熱交換器52が設けられている。したがって、このアンモニア補助加熱用熱交換器52のチューブ側及びシェル側の一方にアンモニアが流通し、他方に燃焼ガスが通過することにより、アンモニアと燃焼ガスとの間の熱交換によってアンモニアを加熱することができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、前記分解ガス流路42及び前記アンモニア除去後ガス流路43が、加圧装置を有しない。これにより、設備コスト及び運転コストを削減できる。
ただし、分解ガス流路42及びアンモニア除去後ガス流路43の少なくとも一方に、加圧装置を設けてもよい。これにより、アンモニア分解装置32の圧力を低くしてアンモニア分解効率を向上させると共に、水素回収装置35に流入するアンモニア除去後ガスの圧力を高くして水素回収効率を向上させることができる。当該加圧装置を設ける場合には、分解ガス流路42及びアンモニア除去後ガス流路43のうちアンモニア除去後ガス流路43のみに設けることが好ましい。
【0071】
(燃焼反応装置)
燃焼反応装置36は、水素及びアンモニアを燃焼し得るものであれば特に制限されないが、効率よく燃焼させる観点から、燃焼触媒を収納するものであることが好ましい。
燃焼反応装置で用いられる触媒としては、パラジウム、白金等が挙げられるが、コストの観点から、パラジウムが好ましい。
【0072】
(酸素供給装置)
酸素供給装置37から供給される酸素含有ガスには、特に制限はなく、空気、酸素ボンベ等から供給される酸素等が挙げられるが、安全性及び経済性の観点から、空気が好ましい。
酸素供給装置37は、吸着材再生ガス流路63に酸素を供給し得るものであれば特に制限はなく、各種圧縮機が挙げられる。
(循環機)
循環機75には特に制限はなく、ブロア、ファン、各種圧縮機が挙げられる。
(加熱水供給装置)
加熱水供給装置80は、前述のとおり、水流路81と、水流路81の先端に設けられたシャワーヘッド82と、水流路81に設けられた水加熱用熱交換器54及び温水加熱用熱交換器73とを有している。この装置によって、加熱された水をアンモニア供給装置31に供給して内部のアンモニアを加温することができる。
【0073】
<水素製造方法>
次に、前述した水素製造装置30を用いた水素製造方法の一例について説明する。
本実施の形態に係る水素製造方法では、後述する第1の運転と第2の運転とを繰り返す。
【0074】
(第1の運転)
第1の運転では、アンモニア吸着器34aを用いて水素ガスの製造を実施すると共に、アンモニア吸着器34b内のアンモニア吸着材の再生を実施する。
すなわち、第1の運転は、後述するアンモニア分解工程、アンモニア吸着工程、水素回収工程、アンモニア吸着器再生工程、アンモニア分解装置の加熱工程、燃焼ガス循環工程、及び水加熱工程を有する。
【0075】
〔アンモニア分解工程〕
アンモニア分解工程は、前記アンモニア供給装置31からのアンモニアを前記アンモニア分解装置32に流通させ、アンモニアを分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する前記分解ガスを生成する工程である。
すなわち、まずアンモニア分解工程に先立って、後述する水加熱工程で説明している通りに、加熱水供給装置80のシャワーヘッド82からアンモニア供給装置31に加熱水を供給する。これにより、アンモニア供給装置31内の液体アンモニアが気化して、アンモニア流路41を流通する。
アンモニア流路41内のアンモニアは、流量制御弁V1により流量調整された後、アンモニア加熱用熱交換器51及びアンモニア補助加熱用熱交換器52にて加熱され、次いでアンモニア分解装置32に流通する。当該アンモニア分解装置32内で、アンモニアが分解して、水素、窒素及び未反応アンモニアを含有する前記分解ガスが生成される。
アンモニア分解装置32内の温度及び圧力に関しては、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0076】
〔アンモニア吸着工程〕
アンモニア吸着工程は、前記アンモニア分解工程の実施により、前記アンモニア分解装置32から流出する前記分解ガスを、前記分解ガス冷却装置33a(分解ガス冷却用熱交換器33)、アンモニア加熱用熱交換器51、及び水加熱用熱交換器54に流通させて冷却した後、前記複数のアンモニア吸着器34a、34bの一方(アンモニア吸着器34a)に流通させて、前記分解ガスから未反応アンモニアを吸着除去して前記アンモニア除去後ガスを得る工程である。
アンモニア吸着器34a内の温度及び圧力については、前述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0077】
〔水素回収工程〕
水素回収工程は、前記複数のアンモニア吸着器34a、34bの前記一方(アンモニア吸着器34a)から流出する前記アンモニア除去後ガスを、前記水素回収装置35に流通させて、前記アンモニア除去後ガスから水素を分離して流出すると共に、残りのオフガスを排出する工程である。
水素回収装置35内の温度及び圧力については、前述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0078】
なお、本実施の形態では、前記水素回収装置35に接続されており、前記水素回収装置35で分離した水素を流出する水素流路44と、水素流路44に設置された圧力制御弁V2と、を有する。また、本実施の形態では、アンモニア供給装置31から、アンモニア流路41、アンモニア分解装置32、分解ガス流路42、アンモニア吸着装置34、及びアンモニア除去後ガス流路43までの流路には、熱交換器以外の加熱装置、すなわちエネルギー供給タイプのヒーター類が存在しない。したがって、圧力制御弁V2を制御することにより、前記アンモニア分解装置32の圧力P1、前記アンモニア吸着装置34(アンモニア吸着器34a)の圧力P2、及び前記水素回収装置35の圧力P3の各々を、
P1≧P2≧P3
という関係を満たす所定の圧力範囲に制御することができる。
【0079】
〔アンモニア吸着器再生工程〕
アンモニア吸着器再生工程は、前記水素回収装置35から流出する前記オフガスを、前述の前記オフガス加熱装置33b(分解ガス冷却用熱交換器33)に流通させて加熱した後、前記複数のアンモニア吸着器34a及び34bの残部(たとえばアンモニア吸着器34aを使用中のときはアンモニア吸着器34b)に流通させてアンモニアを脱着させてアンモニア吸着器(アンモニア吸着器34b)を再生させる工程である。
【0080】
前述のとおり、水素回収装置35に供給されるアンモニア除去後ガスは、その上流のアンモニア吸着装置34において、アンモニア分解ガス(水素、窒素及び未反応アンモニア)からアンモニアが除去されている。したがって、水素回収装置35から流出するオフガス中におけるアンモニア含有量は少量である。したがって、当該オフガスを加熱した後にアンモニア吸着器34bに流通させることにより、アンモニア吸着材に吸着したアンモニアを良好に脱着させて、再生させることができる。
また、アンモニア吸着器34bを再生させている間、アンモニア吸着器34aを用いて分解ガスからアンモニアを吸着除去することができる。
アンモニア吸着器34b内の温度及び圧力については、前述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0081】
〔アンモニア分解装置の加熱工程〕
アンモニア分解装置32の加熱工程においては、まず前記アンモニア吸着器34bから流出する吸着材再生ガスを、酸素供給装置37からの酸素含有ガス及び後述する循環ガス流路71からの循環ガスと混合して混合ガスとする。次いで、当該混合ガスを前記燃焼反応装置36に供給して燃焼し、高温の燃焼ガスを得る。次いで、当該燃焼ガスを、燃焼ガス流路64を介して加熱機器38に流通させる。
このように、本実施の形態では、吸着材再生ガス、後述する循環ガス、及び酸素含有ガスを混合した混合ガスを、燃焼反応装置36で燃焼させている。したがって、循環ガス、及び酸素含有ガスの混合量を調整して混合ガスの組成を調整することにより、当該混合ガスを効率よく燃焼させることができる。また、循環ガスの一部又は全部を利用することにより、アンモニア分解装置32と熱交換を行うガス量を増量させることができ、これによりエネルギー効率を向上させることができる。
燃焼反応装置36に供給される吸着材再生ガスの温度、燃焼反応装置36内の温度、及び燃焼反応装置36内の圧力については、前述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0082】
〔燃焼ガス循環工程〕
燃焼ガス循環工程は、前記アンモニア分解装置32を加熱した後の前記燃焼ガスを、循環ガスとして、循環ガス用熱交換器72及び温水加熱用熱交換器73に流通させて冷却させた後、冷却により凝縮した水をドレンポット74で除去し、次いで冷却後の循環ガスの一部又は全部を再度循環ガス用熱交換器72に流通させて加熱し、前記吸着材再生ガス及び酸素含有ガスと共に前記燃焼反応装置36に流通させて燃焼させる工程である。
このように循環ガスを冷却することにより、循環ガスの体積を低減することができ、これにより、循環機75を小型化することができる。
なお、当該アンモニア分解装置32を加熱した後の前記循環ガスの一部を、前記吸着材再生ガスと共に前記燃焼反応装置36に流通させて燃焼させる場合には、当該循環ガスの残部を、ガス廃棄流路76を介して系外に排出すればよい。
ここで、燃焼ガスがアンモニア分解装置を通過した後に、循環ガス流路を流通するガスを循環ガスと呼ぶ。
【0083】
前記燃焼反応装置36にて前記混合ガスを燃焼させると、混合ガス中の水素及びアンモニアの少なくとも1種と酸素とが反応して水が生成する。したがって、本実施の形態では、前記循環ガス流路71に設けられたドレンポット74により、当該水を除去した後に、前記吸着材再生ガスと共に前記燃焼反応装置36に流通させて燃焼させる。
【0084】
〔水加熱工程〕
水加熱工程は、加熱水でアンモニアを加熱する工程であり、より具体的には、水を前記水加熱用熱交換器54及び温水加熱用熱交換器73に流通して加熱水にした後、前記シャワーヘッド82から前記アンモニア供給装置31に加熱水を供給して、アンモニアを気化させる工程である。
シャワーヘッド82から流出させる加熱水の温度は、好ましくは0~80℃、より好ましくは10~60℃、更に好ましくは20~50℃、より更に好ましくは30~45℃である。
【0085】
(第2の運転)
前述の第1の運転を継続した後に、下記の第2の運転を実施する。
第2の運転では、第1の運転で再生させたアンモニア吸着器34bを用いてアンモニア吸着工程を行い、また、第1の運転でアンモニア吸着工程を行っていたアンモニア吸着器34aを用いてアンモニア吸着器再生工程を実施する。なお、その他の工程、すなわち、アンモニア分解工程、水素回収工程、及びアンモニア分解装置の加熱工程は、第1の運転と同様である。
このように、第1の運転と第2の運転とを繰り返すことにより、連続運転を行うことができる。
【0086】
[第3の実施の形態]
<水素製造装置>
図4は、第3の実施の形態に係る水素製造装置30Aの概略図である。
図4の水素製造装置30Aは、
図2及び
図3の水素製造装置30において、燃焼ガスを循環利用することなく、つまりアンモニア分解装置32を加熱する加熱機器38を通過した燃焼ガスを再び燃焼反応装置36に戻すことなく水素製造装置外に廃棄し、かつ吸着剤再生ガス及び酸素含有ガスの混合ガスを燃焼反応装置36に供給して燃焼させるように改造したものである。
すなわち、水素製造装置30Aは、水素製造装置30において、循環ガス流路71と、当該循環ガス流路71に設置された配管及び装置類と、酸素供給装置37とを省略し、かつ後述する配管及び装置類を設置したものである。
【0087】
(水素製造装置30Aには無い装置類)
すなわち、
図4の水素製造装置30Aは、水素製造装置30における循環ガス流路71、循環ガス用熱交換器72、温水加熱用熱交換器73、ドレンポット74、循環機75、ガス廃棄流路76、及び酸素供給装置37を有しない。
【0088】
(水素製造装置30Aで追加された装置類)
図4に示すとおり、水素製造装置30Aは、一端が加熱機器38に接続され、他端がドレンポット74Aに接続された熱回収流路71Aを有する。また、ドレンポット74Aにはガス廃棄流路76Aが接続されている。
熱回収流路71Aが、酸素供給流路37Bと交差しており、当該交差点に、酸素ガス加熱用熱交換器72Aが設置されている。当該酸素ガス加熱用熱交換器72Aのチューブ側及びシェル側の一方に熱回収流路71A内のガスが通され、他方に酸素供給流路37B内のガスが通される。当該酸素供給流路37Bの一端は酸素供給装置37Aに接続され、他端は吸着剤再生ガス流路63のうち分岐流路63a63bよりも下流側に接続されている。
また、熱回収流路71Aのうち前記酸素ガス加熱用熱交換器72Aよりも下流側の箇所が、水流路81のうち水加熱用熱交換器54よりも下流側の箇所と交差しており、当該交差点に、温水加熱用熱交換器73Aが設置されている。当該温水加熱用熱交換器73Aのチューブ側及びシェル側の一方に熱回収流路71A内のガスが通され、他方に水流路81内の温水が通される。当該水流路81の下流端は、シャワーヘッド82に接続されている。
なお、水加熱用熱交換器54から温水加熱用熱交換器73Aまでに存在する内部流体を“温水”と呼び、それよりも下流の内部流体を“加熱水”と呼ぶこととする。
水素製造装置30Aの上記以外の構成は水素製造装置30と同様であり、同一符号は同一の装置又は配管類を意味する。
【0089】
<水素製造方法>
次に、前述した水素製造装置30Aを用いた水素製造方法の一例について説明する。
本実施の形態に係る水素製造方法では、後述する第1の運転と第2の運転とを繰り返す。
【0090】
(第1の運転)
第1の運転では、アンモニア吸着器34aを用いて水素ガスの製造を実施すると共に、アンモニア吸着器34b内のアンモニア吸着材の再生を実施する。
すなわち、第1の運転は、後述するアンモニア分解工程、アンモニア吸着工程、水素回収工程、アンモニア吸着器再生工程、アンモニア分解装置の加熱工程、熱回収工程、及び水加熱工程を有する。
【0091】
〔アンモニア分解工程〕
第2の実施の形態と同じである。
〔アンモニア吸着工程〕
第2の実施の形態と同じである。
〔水素回収工程〕
第2の実施の形態と同じである。
〔アンモニア吸着器再生工程〕
第2の実施の形態と同じである。
【0092】
〔アンモニア分解装置の加熱工程〕
アンモニア分解装置32の加熱工程においては、まず前記アンモニア吸着器34bから流出する吸着材再生ガスを、酸素供給装置37Aからの酸素含有ガスと混合して混合ガスとする。次いで、当該混合ガスを前記燃焼反応装置36に供給して燃焼し、高温の燃焼ガスを得る。次いで、当該燃焼ガスを、燃焼ガス流路64を介して加熱機器38に流通させることにより、アンモニア分解装置32を加熱する。
このように、本実施の形態では、吸着材再生ガス及び酸素含有ガスを混合した混合ガスを、燃焼反応装置36で燃焼させている。したがって、酸素含有ガスの量を調整して混合ガスの組成を調整することにより、当該混合ガスを効率よく燃焼させることができる。
燃焼反応装置36に供給される吸着材再生ガスの温度、燃焼反応装置36内の温度、及び燃焼反応装置36内の圧力については、前述の第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0093】
〔熱回収工程〕
熱回収工程は、前記アンモニア分解装置32を加熱した後の前記燃焼ガスを、酸素ガス加熱用熱交換器72A及び温水加熱用熱交換器73Aに流通させて冷却させた後、冷却により凝縮した水をドレンポット74Aで除去し、次いでガス廃棄流路76Aを介して系外に排出する工程である。
【0094】
前記燃焼反応装置36にて前記混合ガスを燃焼させると、混合ガス中の水素及びアンモニアの少なくとも1種と酸素とが反応して水が生成する。したがって、本実施の形態では、前記熱回収流路71Aに設けられたドレンポット74Aにより、当該水を除去した後に、系外に排出する。
【0095】
〔水加熱工程〕
水加熱工程は、加熱水でアンモニアを加熱する工程であり、より具体的には、水を前記水加熱用熱交換器54及び温水加熱用熱交換器73Aに流通して加熱水にした後、前記シャワーヘッド82から前記アンモニア供給装置31に加熱水を供給して、アンモニアを気化させる工程である。
シャワーヘッド82から流出させる加熱水の温度は、好ましくは0~80℃、より好ましくは10~60℃、更に好ましくは20~50℃、より更に好ましくは30~45℃である。
【0096】
(第2の運転)
前述の第1の運転を継続した後に、下記の第2の運転を実施する。
第2の運転では、第1の運転で再生させたアンモニア吸着器34bを用いてアンモニア吸着工程を行い、また、第1の運転でアンモニア吸着工程を行っていたアンモニア吸着器34aを用いてアンモニア吸着器再生工程を実施する。なお、その他の工程は、第1の運転と同様である。
このように、第1の運転と第2の運転とを繰り返すことにより、連続運転を行うことができる。
【0097】
[第4の実施の形態]
<水素製造装置>
図5は、第4の実施の形態に係る水素製造装置30Bの概略図である。
図5の水素製造装置30Bは、
図2及び
図3の水素製造装置30において、ガス廃棄流路76に、アンモニア除害設備90を設けたものである。
【0098】
すなわち、ガス廃棄流路76は、一端が環状流路71aに接続された第1のガス廃棄流路91と、第1のガス廃棄流路91の他端に接続された補助アンモニア吸着装置92と、補助アンモニア吸着装置92に接続され、補助アンモニア吸着装置92から排出されるガスを流通させる第2のガス廃棄流路93と、を備えたアンモニア除害設備90を有する。
【0099】
本実施の形態では、前記補助アンモニア吸着装置92は、並列に配設された複数(2個)の補助アンモニア吸着器92a、92bを有している。
前記第1のガス廃棄流路91は、上流端が前記環状流路71aに接続され、下流端が分岐して複数(2本)の第1分岐流路91a、91bとなって前記複数の補助アンモニア吸着器92a、92bに接続されている。
前記第2のガス廃棄流路93の上流端は、分岐して複数(2本)の第2分岐流路93a、93bとなって前記複数の補助アンモニア吸着器92a、92bに接続されている。
【0100】
アンモニア除害設備90は、更に、前記複数の補助アンモニア吸着器92a、92bに再生ガスを供給する再生ガス供給装置94と、一端が前記再生ガス供給装置94に接続され、他端が複数(2本)に分岐して前記第2分岐流路93a、93bに接続された再生ガス流路96(96a、96b)と、前記再生ガス流路96の途中に設けられており、前記再生ガスを加熱する再生ガス加熱器95とを有する。
また、アンモニア除害設備90は、一端が複数(2本)に分岐して前記第1分岐流路91a、91bに接続されている脱着ガス流路97(97a、97b)、前記脱着ガス流路97の他端に接続されており、前記複数の補助アンモニア吸着器92a、92bの各々から排出された吸着材脱着ガスを燃焼して燃焼ガスを流出する廃ガス燃焼反応器98、及び前記廃ガス燃焼反応器98から排出された燃焼ガスを前記第2のガス廃棄流路93に返送する返送流路100、を有する。
返送流路100に、前記廃ガス燃焼反応器から流出された前記燃焼ガスを冷却する、廃ガス冷却器99が設けられている。
また、アンモニア除害設備90は、一端が第1のガス廃棄流路91に接続され、他端が第2のガス廃棄流路93に接続されたバイパス流路101を有している。
【0101】
<水素製造方法>
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の水素製造方法を実施することができることに加え、次のアンモニア除害工程、補助アンモニア吸着器の再生工程、及びバイパス運転工程を実施することができる。
【0102】
(アンモニア除害工程)
アンモニア除害工程は、前記ガス廃棄流路76を流通するガスを、アンモニア除害設備90に供給してアンモニアを除害する工程である。本実施の形態では、補助アンモニア吸着器92aを用いてアンモニアを除害する場合と、補助アンモニア吸着器92bを用いてアンモニアを除害する場合とがある。
例えば、ガス廃棄流路76を流通するガスを、第1のガス廃棄流路91及び第1分岐流路91aを介して補助アンモニア吸着器92aに供給し、アンモニアを除害した後、第2分岐流路93a、第2のガス廃棄流路93を介して排出してもよい。
また、ガス廃棄流路76を流通するガスを、第1のガス廃棄流路91及び第1分岐流路91bを介して補助アンモニア吸着器92bに供給し、アンモニアを除害した後、第2分岐流路93b、第2のガス廃棄流路93を介して排出してもよい。
【0103】
アンモニア除害工程において、補助アンモニア吸着器92a又は92bにおける運転条件(温度、圧力等)は、前述のアンモニア吸着器5a、5bによるアンモニア吸着工程における運転条件と同様である。
【0104】
なお、通常は、ガス廃棄流路76内のガス中におけるアンモニア濃度は、そのまま廃棄しても環境上問題ないレベルである。したがって、水素製造装置30Bの運転開始作業時や運転停止作業時等の非定常時に、必要に応じて、当該アンモニア除害工程が実施されてもよい。これにより、系外へのアンモニアの流出を確実に防止できる。
第2のガス廃棄流路93を介して系外に排出されるガスにおけるアンモニア量は、25体積ppm以下であることが好ましい。したがって、第1のガス廃棄流路91中におけるガスにおけるアンモニア量が25体積ppmを超えている場合に、当該アンモニア除害工程を実施するのが好ましい。
【0105】
(補助アンモニア吸着器の再生工程)
補助アンモニア吸着器の再生工程は、上記アンモニア除害工程において使用された補助アンモニア吸着器92a、92bを、再生させる工程である。
例えば、補助アンモニア吸着器92aを再生させる場合、再生ガス供給装置94からの酸素含有ガスを、再生ガス加熱器95によって加熱した後、再生ガス流路96、96a、第2分岐流路93aを介して補助アンモニア吸着器92aに供給し、補助アンモニア吸着器92aを再生させる。当該補助アンモニア吸着器92aから排出したガスは、第1分岐流路91a、脱着ガス流路97a、97を介して廃ガス燃焼反応器98に供給され、ガス中の可燃性ガスが燃焼される。燃焼後のガスは、廃ガス冷却器99によって冷却された後、返送流路100及び第2のガス廃棄流路93を介して排出される。
また、補助アンモニア吸着器92bを再生させる場合、再生ガス供給装置94からの酸素含有ガスを、再生ガス加熱器95によって加熱した後、再生ガス流路96、96b、第2分岐流路93bを介して補助アンモニア吸着器92bに供給し、補助アンモニア吸着器92bを再生させる。当該補助アンモニア吸着器92bから排出したガスは、第1分岐流路91b、脱着ガス流路97b、97を介して廃ガス燃焼反応器98に供給され、ガス中の可燃性ガスが燃焼される。燃焼後のガスは、廃ガス冷却器99によって冷却された後、返送流路100及び第2のガス廃棄流路93を介して排出される。
【0106】
補助アンモニア吸着器の再生工程において、補助アンモニア吸着器92a又は92bの再生条件(温度、圧力等)は、前述のアンモニア吸着器5a、5bの再生を行うアンモニア吸着器再生工程における運転条件と同様である。
また、廃ガス燃焼反応器98の運転条件(温度、圧力等)は、前述した燃焼反応装置36の運転条件と同様である。
【0107】
(バイパス運転工程)
前述のとおり、非定常時に、必要に応じてアンモニア除害工程を実施するのが好ましく、また、定常時には、バイパス運転工程を実施するのが好ましい。
バイパス運転工程では、ガス廃棄流路76を流通するガスを、第1のガス廃棄流路91及びバイパス流路101を介して第2のガス廃棄流路93に供給し、第2のガス廃棄流路93からガスを排出させる。
これにより、アンモニア除害設備90への負荷が低減される。
【0108】
[第5の実施の形態]
<水素製造装置>
図6は、第5の実施の形態に係る水素製造装置30Cの概略図である。
図6の水素製造装置30Cは、
図5の水素製造装置30Bにおいて、アンモニア除害設備90に代えて、アンモニア除害設備90Aを設けたものである。
アンモニア除害設備90Aは、アンモニア除害設備90における廃ガス燃焼反応器98に代えて燃焼反応装置36を用いたものである。
すなわち、アンモニア除害設備90Aにおいて、当該脱着ガス配管97の一端は、複数(2本:97a、97b)に分岐して、第1分岐流路91a、91bに接続されている。また、当該脱着ガス配管97の他端は、吸着材再生ガス流路63のうち酸素供給装置37の接続位置と燃焼反応装置36の接続位置との間の位置に接続されている。
また、燃焼ガス流路64と第2のガス廃棄流路93とが、廃ガス冷却器103を備えた廃ガス流路104を介して接続されている。
【0109】
<水素製造方法>
本実施の形態では、第2の実施の形態と同様の水素製造方法を実施することができることに加え、次のアンモニア除害工程、補助アンモニア吸着器の再生工程、及びバイパス運転工程を実施することができる。
【0110】
(アンモニア除害工程)
第4の実施の形態と同様である。
【0111】
(補助アンモニア吸着器の再生工程)
補助アンモニア吸着器の再生工程は、上記アンモニア除害工程において使用された補助アンモニア吸着器92a、92bを、再生させる工程である。
補助アンモニア吸着器92aを再生させる場合、再生ガス供給装置94からの酸素含有ガスを、再生ガス加熱器95によって加熱した後、再生ガス流路96、96a、第2分岐流路93aを介して補助アンモニア吸着器92aに供給し、補助アンモニア吸着器92aを再生させる。当該補助アンモニア吸着器92aから排出したガスは、第1分岐流路91a、脱着ガス配管97a、97及び吸着材再生ガス流路63を介して燃焼反応装置36に供給され、ガス中の可燃性ガスが燃焼される。燃焼反応装置36から排出されるガスの一部は、廃ガス冷却器103によって冷却された後、第2のガス廃棄流路93を介して排出される。
また、補助アンモニア吸着器92bを再生させる場合、再生ガス供給装置94からの酸素含有ガスを、再生ガス加熱器95によって加熱した後、再生ガス流路96、96b、第2分岐流路93bを介して補助アンモニア吸着器92bに供給し、補助アンモニア吸着器92bを再生させる。当該補助アンモニア吸着器92bから排出したガスは、第1分岐流路91b、脱着ガス配管97b、97及び吸着材再生ガス流路63を介して燃焼反応装置36に供給され、ガス中の可燃性ガスが燃焼される。燃焼反応装置36から排出されるガスの一部は、廃ガス冷却器103によって冷却された後、第2のガス廃棄流路93を介して排出される。
ただし、燃焼反応装置36から排出されるガスの全部が、燃焼ガス流路64を介して加熱機器38に供給されてもよい。その場合、廃ガス冷却器103を備えた廃ガス流路104は省略されてもよい。
【0112】
(バイパス運転工程)
第4の実施の形態と同様である。
【0113】
[第6の実施の形態]
<水素製造装置>
図7は、第6の実施の形態に係る水素製造装置30Dの概略図である。
図7の水素製造装置30Dは、
図4の水素製造装置30Aにおいて、アンモニア除害設備90Bを設けたものである。
当該アンモニア除害設備90Bは、第4の実施の形態におけるアンモニア除害設備90と同様である。
【0114】
<水素製造方法>
本実施の形態では、第3の実施の形態と同様の水素製造方法を実施することができる。
また、本実施の形態では、アンモニア除害工程、補助アンモニア吸着器の再生工程、及びバイパス運転工程を実施することができる。なお、これらの工程は、第4の実施の形態と同様である。
【0115】
[第7の実施の形態]
<水素製造装置>
図8は、第7の実施の形態に係る水素製造装置30Eの概略図である。
図8の水素製造装置30Eは、
図4の水素製造装置30Aにおいて、アンモニア除害設備90Cを設けたものである。
当該アンモニア除害設備90Cは、第5の実施の形態におけるアンモニア除害設備90Aと同様である。
【0116】
<水素製造方法>
本実施の形態では、第3の実施の形態と同様の水素製造方法を実施することができる。
また、本実施の形態では、アンモニア除害工程、補助アンモニア吸着器の再生工程、及びバイパス運転工程を実施することができる。なお、これらの工程は、第5の実施の形態と同様である。
【符号の説明】
【0117】
1 水素製造装置
2 アンモニア供給装置
3 アンモニア分解装置
4 分解ガス冷却用熱交換器
4a 分解ガス冷却装置
4b オフガス加熱装置
5 アンモニア吸着装置
5a、5b アンモニア吸着器
6 水素回収装置
7 燃焼反応装置
8 加熱機器
11 アンモニア流路
12 分解ガス流路
14 アンモニア除去後ガス流路
15 水素流路
21 接続流路
22 オフガス流路
23 吸着材再生ガス流路
24 燃焼ガス流路
30 水素製造装置
31 アンモニア供給装置
32 アンモニア分解装置
33 分解ガス冷却用熱交換器
33a 分解ガス冷却装置
33b オフガス加熱装置
34 アンモニア吸着装置
34a、34b アンモニア吸着器
35 水素回収装置
36 燃焼反応装置
37 酸素供給装置
38 加熱機器
41 アンモニア流路
42 分解ガス流路
43 アンモニア除去後ガス流路
44 水素流路
51 アンモニア加熱用熱交換器
52 アンモニア補助加熱用熱交換器
54 水加熱用熱交換器
61 接続流路
62 オフガス流路
63 吸着材再生ガス流路
64 燃焼ガス流路
71 循環ガス流路
71a 環状流路
72 循環ガス用熱交換器
73 温水加熱用熱交換器
74 ドレンポット
75 循環機
76 ガス廃棄流路
77 バイパス流路
80 加熱水供給装置
81 水流路
82 シャワーヘッド
V1 流量制御弁
V2 圧力制御弁
30A 水素製造装置
37A 酸素供給装置
37B 酸素供給流路
71A 熱回収流路
72A 酸素ガス加熱用熱交換器
73A 温水加熱用熱交換器
74A ドレンポット
76A ガス廃棄流路