(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】移動車両の走行システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220117BHJP
【FI】
G05D1/02 K
G05D1/02 D
(21)【出願番号】P 2020530289
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2019027813
(87)【国際公開番号】W WO2020013337
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2018133735
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 一洋
(72)【発明者】
【氏名】仲 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヤルシャウスカス アルマンダス
(72)【発明者】
【氏名】堀越 浩司
(72)【発明者】
【氏名】羽富 桂亮
(72)【発明者】
【氏名】鯵坂 志門
(72)【発明者】
【氏名】唐 家威
(72)【発明者】
【氏名】井上 真
(72)【発明者】
【氏名】笠置 泰孝
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-186097(JP,A)
【文献】特開2009-237851(JP,A)
【文献】特開平08-211936(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107479545(CN,A)
【文献】特開2018-106312(JP,A)
【文献】特開2017-041188(JP,A)
【文献】特開2015-222541(JP,A)
【文献】特開平05-108153(JP,A)
【文献】特開2000-053395(JP,A)
【文献】特開2002-091564(JP,A)
【文献】特開2016-134019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0313740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、地上を走行するための走行部と、前記走行部を駆動制御する駆動制御部と、
マーカー検出部と、を含む移動車両と、
前記移動車両が走行すべき走行路に沿って所定の複数箇所にそれぞれ配置されたマーカーと、
を、備え、
前記マーカー検出部が、前記本体部の下方を撮像するための撮像手段と、前記撮像手段で撮像された撮像画面を画像処理して、前記マーカーを検出する画像処理部と、前記画像処理部で検出されたマーカーに基づいて、当該マーカーに前もって設定された走行情報を前記駆動制御部に出力するマーカー制御部と、を含んでおり、
前記マーカーが横長帯状に形成されて前記走行路の横断方向に配置され、該帯状のマーカーに横一列で複数個のマークが設けられ、
前記横一列に設けられた各マークには、前記移動車両が走行すべき走行情報と前記移動車両の進行方向横方向のずれを検知するためにそれぞれ異なる記号が付された配置位置情報とが設定され、
前記マーカー制御部が、前記マーカーの前記走行情報及び前記配置位置情報に基づいて前記移動車両の横方向のずれ及び角度のずれを補正するための修正走行情報を生成して前記駆動制御部に出力し、
前記駆動制御部が、前記マーカー制御部からの前記修正走行情報に基づいて前記走行部を駆動制御することにより、前記移動車両が、前記マーカーにより指定された走行路に沿って自律走行するようにした、移動車両の走行システム。
【請求項2】
前記移動車両に接続されるネットワークと、
前記ネットワークに接続される前記移動車両の外部運転制御部と、を備え、
前記外部運転制御部が、前記ネットワークを介して必要に応じて前記マーカーにおける前記走行情報を変更することにより、前記移動車両の走行路を任意に変更できる、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項3】
前記帯状のマーカーには、進行方向に対して手前と後方側に2列で複数個のマークがそれぞれ配置されている、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項4】
前記2列に配置された複数個のマーク中、各行の手前と後方側のマークは、同一の前記走行情報と前記配置位置情報とが設定されている、請求項3に記載の移動車両の走行システム。
【請求項5】
前記マーカー検出部は、前記画像処理部で検出されたマーカーを認識することにより、該マーカーに対する前記移動車両のXY位置及び角度を演算してこれらを前記マーカー制御部に出力する、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
ここで、X位置は前記走行路における横方向の位置であり、Y位置は前記走行路における進行方向の位置であり、角度は進行方向からのずれである。
【請求項6】
前記画像処理部が、前記マーカーを構成する各マークの並んだ方向を検出し、
前記マーカー制御部が、前記各マークの並んだ方向に基づいて前記走行情報による走行方向と実際の走行方向のずれを検出して前記修正走行情報を生成する、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項7】
前記マーカーを構成する各マークのうち、前記マーカー検出部による撮像画面の中央付近に位置するマークに基づいて、前記マーカー制御部が前記配置位置情報から当該移動車両の走行路における横方向のずれを検出して前記修正走行情報を生成する、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項8】
前記マーカーを構成する各マークが、直進、Uターン、左旋回、右旋回、停止、弧状の左旋回、弧状の右旋回の何れか又はこれらの一つ以上を組み合わせた走行情報を設定されている、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項9】
前記マーカーを構成する各マークが、前記直進の走行情報に関して、数段階の走行速度を設定されている、請求項8に記載の移動車両の走行システム。
【請求項10】
前記移動車両は、さらに、前記走行部の車輪回転センサと、前記本体部に設け
た慣性計測ユニットと、を備えており、
前記駆動制御部が、前記車輪回転センサの検出信号から移動距離を算出すると共に、
前記慣性計測ユニットの検出信号から前記移動車両の進行方向の角度のずれを検出し、前記移動距離及び前記
角度を補正し、該補正した移動距離及び
角度に基づいて前記走行部を駆動制御する、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項11】
さらに、移動車両が、障害物センサを備えている、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項12】
さらに、操作時に非常停止信号を出力する非常停止操作部を備えており、
前記非常停止操作部が操作されたとき、前記マーカー制御部が、前記非常停止操作部からの非常停止信号に基づいて前記マーカーによる自律走行を中断して非常停止の走行情報を生成して前記駆動制御部に送出し、
前記駆動制御部が、前記マーカー制御部からの非常停止の走行情報に基づいて、前記走行部を駆動制御して非常停止させる、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項13】
前記マーカーを構成する各マークに、さらに追従モード切替えの走行情報が付されており、
前記本体部が、前方の追従すべきビーコンからの識別光を検出して前記ビーコンの方向及び距離から成るビーコン位置情報を生成するビーコン検出部を備えていて、
前記画像処理部が、前記各マークに付された前記ビーコンに追従する追従モード切替えの走行情報を検出したとき、前記マーカー制御部が、前記マーカーによる自律走行を中断して前記駆動制御部の制御を前記ビーコン検出部に引き継いで、該ビーコン検出部が、前記ビーコン位置情報に基づいて前記ビーコンに向かって走行するための前記修正走行情報を生成して前記駆動制御部に送出し、
前記駆動制御部が、前記ビーコン検出部からの前記修正走行情報に基づいて前記走行部を駆動制御することにより、前記移動車両が前記ビーコンの移動に追従して走行する、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項14】
前記ビーコンが、携帯型ビーコンであって、
前記ビーコン検出部が前記携帯型ビーコンからの識別光を検出したとき、前記マーカー制御部が前記マーカーによる自律走行を中断して、前記ビーコン検出部が前記移動車両を所定距離だけ直進して停止させる、請求項13に記載の移動車両の走行システム。
【請求項15】
前記本体部が、平坦な載置台を備えた搬送台車の本体部として構成されている、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項16】
前記移動車両
が、被牽引台車とこの被牽引台車を牽引する搬送台車として構成され、該搬送台車と該被牽引台車とが連結機構
により互いに連結及び連結解除可能である、請求項1に記載の移動車両の走行システム。
【請求項17】
前記連結機構として、前記被牽引台車が、該被牽引台車の本体部の下部において下方に突出したピンと、前記
搬送台車を該被牽引台車の下部側に潜り込ませて保持する左右両側に設けた一対のガイドと、を備え、
前記
搬送台車が、前記被牽引台車を連結する際に前記ピンを挿入する牽引部材と、前記ピンが該牽引部材の孔に挿入されたときに該ピンの離脱を抑止するバネ性の拘束部材と、前記牽引部材に接続したリンク機構と、該リンク機構を駆動するソレノイドと、を備え、
前記連結機構による連結を解除する際は、前記ソレノイドを駆動することにより前記リンク機構を吸引して前記牽引部材を前記ピンの下方に引き下げることで前記被牽引台車を前記
搬送台車から離脱させる、請求項16に記載の移動車両の走行システム。
【請求項18】
前記
搬送台車が前記被牽引台車に自動接続又は自動離脱するように、前記マーカーに前もって走行情報が設定される、請求項16又は17に記載の移動車両の走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場や倉庫等において無人の移動車両を自律走行させる移動車両の走行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の自律航法と呼ばれる技術は、古くから航空機や船舶等で実用化されており、近年では自動車やドローン等でも実現されている。このような移動体は、それぞれ移動環境に対応して種々のセンサを組み合わせて使用することにより周囲の状況を把握する必要があり、そのためには適切なセンサを使用しなければならない。各種センサの低価格化、高性能化も進んでおり、GPS,ジャイロセンサ,カメラ等が大いに利用されている。特に、レーザーを用いた測距センサは、周囲の対象物までの距離を高精度で測定でき、360度の範囲で三次元データとして対象物を検出することが可能である。
【0003】
これに対して、例えば工場や倉庫等で使用される積載重量が1トン程度の台車やゴルフカート,遊園地の乗り物等のように、私有地や関係者以外の立入りが制限される環境での移動体の運用においては、走行路に沿って白線や磁気テープ(特許文献1参照),ポイント,レール等を敷設し、これらで構成されるラインに沿って走行する(ライントレース)ことによって所定箇所から所定箇所まで移動させることも実用化されている。特に、走行路に沿って白線を敷設して白線に沿って自律走行させる場合、白線を容易に且つ低コストで敷設しなければならない。
【0004】
このような閉鎖的領域での自律走行においても、近年ではレーザー測距センサを用いた全周囲の計測により、白線やレール等がなくても自律走行による移動が実現されている。この場合、レーザー測距センサの検出信号、所謂SLAM技術(Simultaneously Localization and Mapping:自己位置推定と地図作成を同時に行う)を用いて、レーザー測距センサにより前もって作成された周囲マップと、自律走行時の計測データを照合して、移動体の自己位置を認識すると同時に、前もって作成された周囲マップから目標地点へのルートを計算して、移動体が目標地点まで自律走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の走行路に敷設した白線を使用する自律走行において、走行路を変更する場合には白線を敷設し直す必要があることから、手間がかかり走行路を頻繁に変更することは困難である。また、走行路に沿って敷設した白線は、汚れたり剥離したりするので、走行路全体に亘って白線のメンテナンスが必要になる。
【0007】
レーザー測距センサを用いて周囲の対象物を検出する方式は、周囲の対象物が高精度で検出できるものの、レーザー測距センサ自体が一般に数十万円から数百万円するため、初期投資が著しく増大する。また、前もって作成された周囲マップとの照合が必要で、周囲環境が頻繁に変化する工場や倉庫等で使用するには、周囲マップを頻繁に更新する必要があり、運用面での作業が面倒である。他のセンサ、例えばGPSや無線強度による自己位置推定等で補完することも可能であるが、一般に工場や倉庫等の室内ではGPS利用は期待できない。無線強度による自己位置推定では、前もって複数個の無線送信機を設置するので設備コストが高くなる。また、ジャイロセンサやカメラを用いて、周囲マップの欠如を補完しながら自律走行する方法も、周囲マップとの照合が前提となるため、非常に狭い範囲でしか周囲マップの補完ができず、その利用は限定的になる。
【0008】
本発明は以上の点に鑑み、簡単な構成により低コストで移動車両が自律走行できる移動車両の走行システムを提供することを第1の目的とし、必要に応じて又は任意で、ネットワークを介して移動車両の走行路を任意に変更できる移動車両の走行システムを提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本発明による移動車両の走行システムは、
本体部と地上を走行するための走行部と走行部を駆動制御する駆動制御部とマーカー検出部とを含む移動車両と、移動車両が走行すべき走行路に沿って所定の複数箇所にそれぞれ配置されたマーカーと、を備え、
マーカー検出部が、本体部の下方を撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像された撮像画面を画像処理してマーカーを検出する画像処理部と、画像処理部で検出されたマーカーに基づいて当該マーカーに前もって設定された走行情報を駆動制御部に出力するマーカー制御部と、を含んでおり、
マーカーが、横長帯状に形成されて走行路の横断方向に配置され、該帯状のマーカーに横一列で複数個のマークが設けられ、
横一列に設けられた各マークには、移動車両が走行すべき走行情報と移動車両の進行方向横方向のずれを検知するためにそれぞれ異なる記号が付された配置位置情報とが設定され、
マーカー制御部が、マーカーの走行情報及び配置位置情報に基づいて移動車両の横方向のずれ及び角度のずれを補正するための修正走行情報を生成して駆動制御部に出力し、駆動制御部が、マーカー制御部からの修正走行情報に基づいて走行部を駆動制御することにより、移動車両がマーカーにより指定された走行路に沿って自律走行するよう構成されている。
【0010】
上記構成によれば、移動車両のマーカー検出部が走行路に沿って配置されたマーカーを検出し、制御部が検出したマーカーに設定された走行情報を駆動制御部に出力し、駆動制御部がこの走行情報に基づいて走行部を駆動制御することで、移動車両は、マーカーにより指定された走行路に沿って自律走行する。マーカーは、移動車両が走行する領域において所定の間隔をあけた地点に配置すればよいので、従来のように走行路の全長に亘って白線等を設ける必要がない。走行路を変更する場合には、変更部分のみにマーカーを新設,交換又は排除すればよく、さらに、マーカーが走行路を横切るように横方向又は縦方向に1個以上設定されるので、移動車両が走行路に対して左右に多少ずれて走行しても、いずれかのマークを検出することが可能である。
【0011】
上記第2の目的を達成するため、本発明による移動車両の走行システムは、移動車両に接続されるネットワークと、ネットワークに接続される移動車両の外部運転制御部と、を備え、外部運転制御部が、必要に応じて、ネットワークを介してマーカーにおける走行情報を変更することにより移動車両の走行路を任意に変更できるよう構成されている。外部運転制御部を備えていると、必要に応じて又は任意にネットワークを介してマーカーにおける走行情報を変更して、移動車両の走行路を任意に変更できる。走行路を変更する場合には、変更部分のみに関して外部運転制御部が走行路を変更するか、又は、マーカーを新設,交換又は排除すればよい。マーカー自体の汚損,破損や剥離の際には、当該マーカーのみを交換すればよい。
【0012】
帯状のマーカーには、好ましくは、進行方向に対して手前と後方側に2列で複数個のマークがそれぞれ配置されている。2列に配置された複数個のマーク中、各行の手前と後方側のマークは、同一の走行情報と配置位置情報とが設定されてもよい。
マーカー検出部は、好ましくは、画像処理部で検出されたマーカーを認識することにより、該マーカーに対する移動車両のXY位置及び角度を演算してこれらをマーカー制御部に出力する。ここで、X位置は走行路における横方向の位置であり、Y位置は走行路における進行方向の位置であり、角度は進行方向からのずれである。
マーカーに、走行路を横切るように横方向に及び/又は走行路に沿って縦方向に1個以上のマークが並んで配置されていると、移動車両がマーカーの上を通過する際に、例えば一列目のマークを検出できなかった場合に、移動車両の走行に伴って走行方向に並んだ次の列のマークを検出することができる。
画像処理部は、好ましくは、マーカーを構成する各マークの並んだ方向を検出し、マーカー制御部は、各マークの並んだ方向に基づいて走行情報による走行方向と実際の走行方向のずれを検出して修正走行情報を生成する。
好ましくは、マーカーを構成する各マークのうち、マーカー検出部による撮像画面の中央付近に位置するマークに基づいて、マーカー制御部が配置位置情報から当該移動車両の走行路における横方向のずれを検出して修正走行情報を生成する。マーカーを構成する各マークは、直進、Uターン、左旋回、右旋回、停止、弧状の左旋回、弧状の右旋回の何れか又はこれらの一つ以上を組み合わせた走行情報を設定されている。マーカーを構成する各マークは、直進の走行情報に関して数段階の走行速度を設定されている。
画像処理部が各マークの並んだ方向を検出し、マーカー制御部が、この方向に基づいて実際の走行方向のずれを検出して走行情報を修正することで、移動車両が正確に走行路に沿って移動走行する。マーカーを構成する各マークに配置位置情報が設定され、マーカー検出部による撮像画面の中央付近に位置するマークに基づいて、マーカー制御部がその配置位置情報から当該移動車両の走行路における横方向のずれを検出して走行情報を修正することで、移動車両が正確に走行路に沿って移動走行する。各マークに、直進,Uターン,左旋回,右旋回及び停止の走行情報が設定されていると、移動車両は、直進,Uターン,左旋回,右旋回、停止、弧状の左旋回、弧状の右旋回の何れか又はこれらの一つ以上を組み合わせた自律走行ができる。
移動車両は、好ましくは、さらに走行部の車輪回転センサと本体部に設けた慣性計測ユニットとを備え、駆動制御部が、車輪回転センサの検出信号から移動距離を算出すると共に、慣性計測ユニットの検出信号から移動車両の進行方向の角度のずれを検出し、移動距離及び角度を補正し、該補正した移動距離及び角度に基づいて走行部を駆動制御する。よって、走行部の車輪がすべって空転したときなどでも車輪回転センサによる移動距離や角度のずれを補正して、正しい移動距離や進行方向の角度が得られる。
さらに、移動車両は、好ましくは障害物センサを備えている。さらに好ましくは、操作時に非常停止信号を出力する非常停止操作部を備え、非常停止操作部が操作されたとき、マーカー制御部が、非常停止操作部からの非常停止信号に基づいてマーカーによる自律走行を中断し非常停止の走行情報を生成して駆動制御部に送出し、駆動制御部は、マーカー制御部からの非常停止の走行情報に基づいて、走行部を駆動制御して非常停止させる。
さらに、操作時に非常停止信号を出力する非常停止操作部を備えていると、移動車両は非常停止信号に基づいてマーカーによる自律走行を中断して非常停止する。従って、移動車両が走行路を外れてしまった場合や障害物に衝突しそうになった場合は、操作者が非常停止操作部を操作することによって衝突事故が未然に防止される。
好ましくは、マーカーを構成する各マークに、さらに追従モード切替えの走行情報が付され、本体部が、前方の追従すべきビーコンからの識別光を検出してビーコンの方向及び距離から成るビーコン位置情報を生成するビーコン検出部を備え、画像処理部は、各マークに付されたビーコンに追従する追従モード切替えの走行情報を検出したとき、マーカー制御部がマーカーによる自律走行を中断して駆動制御部の制御をビーコン検出部に引き継いで、該ビーコン検出部がビーコン位置情報に基づいてビーコンに向かって走行するための修正走行情報を生成して駆動制御部に送出し、駆動制御部が、ビーコン検出部からの修正走行情報に基づいて走行部を駆動制御することにより、移動車両がビーコンの移動に追従して走行する。ビーコンは、好ましくは携帯型ビーコンであって、ビーコン検出部が携帯型ビーコンからの識別光を検出したとき、マーカー制御部がマーカーによる自律走行を中断して、ビーコン検出部が移動車両を所定距離だけ直進して停止させる。本体部が、ビーコン検出部を備え、マーカーが前方の追従すべきビーコンへの追従モード切替えの走行情報に関連付けられているとき、マーカーによる自律走行を中断して、移動車両がビーコンの移動に追従して走行する。
【0013】
本体部は、好ましくは平坦な載置台を備えた搬送台車の本体部として構成されている。移動車両として、搬送台車と搬送台車が牽引する被牽引台車とで構成され、該搬送台車と被牽引台車とを連結し又は連結解除する連結機構を備えていてもよい。好ましくは、連結機構として、被牽引台車が、該被牽引台車の本体部の下部において下方に突出したピンと、搬送台車を該被牽引台車の下部側に潜り込ませて保持する左右両側に設けた一対のガイドと、を備え、搬送台車が、被牽引台車を連結する際にピンを挿入する牽引部材と、ピンが該牽引部材の孔に挿入されたときに該ピンの離脱を抑止するバネ性の拘束部材と、牽引部材に接続したリンク機構と、該リンク機構を駆動するソレノイドと、を備え、連結機構による連結を解除する際は、ソレノイドを駆動することによりリンク機構を吸引して牽引部材をピンの下方に引き下げることで被牽引台車を搬送台車から離脱させる。好ましくは、搬送台車が被牽引台車に自動接続又は自動離脱するように、マーカーに前もって走行情報が設定される。
移動車両が平坦な載置台を備えた搬送台車と被牽引台車として構成され、さらに、被牽引台車を牽引するための連結機構が備えられていると、被牽引台車を牽引して搬送すべき商品等の重量を増大できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成で低コストで移動車両が自律走行でき、さらに、必要に応じて、ネットワークを介して移動車両の走行路を任意に変更できる、極めて優れた移動車両の走行システムを提供することができる。さらに、本発明の移動車両の走行システムによれば、例えば、坂道を壁と検知するレーザー測距(SLAM)システムを用いた自律走行システムや段差や凹凸のある路面では使用できないライントレース方式の自律走行システムに対して、走行路上に点状又は線状に配置されるマーカーとマーカーとの間を自律走行するので、途中の路面がどういう状況であっても、自律走行を継続できる移動車両の走行システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による移動車両として搬送台車の走行システムの一実施形態を示す概略部分平面図である。
【
図2】
図1に示す搬送台車において、(A)は概略斜視図、(B)は平面図、(C)は側面図、(D)は操作部の拡大平面図である。
【
図4】
図2の搬送台車の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1におけるマーカーの構成を示す図である。
【
図6】
図2の搬送台車におけるマーカー検出部のカメラを示す概略図である。
【
図7】直進を表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図8】左折を表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図9】停止を表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図10】進入禁止を表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図11】Uターンを表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図12】追従モード切替えを表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図13】携帯型ビーコンによる停止の状態を示し、(A)は幅方向のずれがある場合、(B)は走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合の説明図である。
【
図14】マーカー検出部のマーカー制御部による自律走行の動作を示すフローチャートである。
【
図15】マーカーによる自律走行の具体例を示す説明図である。
【
図16】第2の実施形態を示す概略部分平面図である。
【
図17】第3の実施形態を示す概略部分平面図である。
【
図18】搬送台車と被牽引台車との接続を示す概略側面図である。
【
図19】
図17において、弧状の左旋回を表すマーカーによる搬送台車の走行状態を示す説明図である。
【
図20】第3の実施形態の変形例1に係る移動車両の走行システムにおいて、搬送台車と被牽引台車との接続を示す概略側面図である。
【
図22】搬送台車の内部構成を示すブロック図である。
【
図23】第3の実施形態の変形例2に係る移動車両の走行システムにおいて、搬送台車と被牽引台車との接続の際の位置関係を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略側面図である。
【
図24】搬送台車と被牽引台車との接続関係を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略側面図である。
【
図25】
図24(a)のA-A線に沿った搬送台車の牽引部材及び拘束部材の断面図を示し、(a)は接続前1の状態、(b)は接続前2の状態、(c)は接続時の状態、(d)は離脱時の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1-
図4は、本発明による移動車両として第1の実施形態に係る搬送台車の走行システムを示す。
図1において、搬送台車の走行システム1は、搬送台車10と、搬送台車10の走行エリア2に配置されたマーカー40(後述)と、から構成されている。
【0017】
搬送台車10は、本体部11と、本体部11の下部に設けられた走行部12と、駆動制御部13と、ビーコン検出部20と、マーカー検出部30と、CPU部36と、を含む。CPU部36は、電子計算機のチップを搭載したCPU(Central Processing Unit)と、CPUに接続される各種のセンサ、つまり、後述する距離センサ23やマーカー検出部30等のインターフェース回路、後述するネットワーク80に接続される送受信機を含む通信部、外部メモリ等から構成される。CPU36としては、MPU(Micro Processing Unit)、ECU(Engine ControlUnit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等が使用できる。搬送台車10の主スイッチ37は、CPU部36によりオンやオフされてもよい。
【0018】
本体部11は、例えばその外形が偏平な直方体状に形成され、その上面が平坦な載置台11aとして形成されると共に、その後端から上方に伸びるハンドル11bを備える。走行部12は、
図2(B)、
図3に示すように、本体部11の下面にて、その前方(
図2(B)にて矢印で示す方向)の両側に配置された一対の車輪15と、各車輪15をそれぞれ駆動する減速機構16aを備えたモータ16と、その後方の両側に配置された一対のキャスター17と、から構成される。各駆動モータ16が後述する駆動制御部13により駆動制御されることで各車輪15が回転駆動され、搬送台車10が前進,後退又は左右に転回して所定の方向に走行する。走行部12は、車輪15に限らず、例えば無限軌道等の他の駆動手段により構成されていてもよい。各車輪15には、それぞれその回転数を検出する車輪回転センサ15aが設けられている。
【0019】
駆動制御部13は、本体部11内に配置されている。駆動制御部13及び各モータ16への給電は、本体部11の下面中央付近に配置された電源13aから行なわれる。電源13aは、電池や充電可能な二次電池、例えばリチウム二次電池を使用できる。駆動制御部13は、本体部11に設けられたビーコン検出部20又はマーカー検出部30からの後述する走行情報に基づいて、走行部12の各駆動モータ16をそれぞれ駆動制御することにより、車輪15をそれぞれ独立的に駆動して、前進,後退,左右転回等の走行を行なわせる。駆動制御部13は、距離センサ23とは別に、図示しない障害物センサからの情報に基づいて、障害物を検出した場合には走行部12を停止させてもよい。障害物センサは、搬送台車10を障害物に対して衝突前に停止させるための目的で設けてあり、搬送台車10の周囲、進行方向を監視できればよい。障害物センサは、例えば、レーザレーダーやミリ波レーダー等を使用できる。レーザレーダーは、レーザー画像検出とTOF(Time Of Flight)方式による測距を行うセンサである。二次元や三次元のセンサが使用できる。センサとして、搬送台車10の加速度や角加速度を測定するための二軸又は三軸加速度センサあるいはジャイロセンサを利用した慣性計測ユニット18が備えられる。この慣性計測ユニット18は、IMUとも呼ばれる。さらに、駆動制御部13は、各車輪15の回転数をそれぞれ検出する二つの車輪回転センサ15aから入力される検出信号に基づいて、搬送台車10の移動距離を算出すると共に、慣性計測ユニット18から入力される検出信号18aを参照して、搬送台車10の進行方向のずれ、つまり角度のずれを検出する。これにより駆動制御部13は、車輪15の滑り等による移動距離及び角度のずれを補正し補正した移動距離を算出すると共に、搬送台車10の進行方向の角度を修正することができる。駆動制御部13は、この補正した移動距離に基づいて、後述する走行情報50a,25bによる走行部12の駆動制御を行なう。駆動制御部13は、ハンドル11bの上部に取り付けられた操作部19により操作されてもよい。
図2(D)に示すように、操作部19は、所謂シフトレバー19a,ジョイスティック19bと非常停止操作部としての非常停止スイッチ19cと、後述する主スイッチ37とを備える。シフトレバー19aは、例えばP(パーキング),N(ニュートラル),D(ドライブ),Fo(追従)の四つのモードを有する。ジョイスティック19bは、任意の方向に倒すことにより、種々の入力操作ができる。非常停止スイッチ19cは、操作時に非常停止信号19dをCPU部36に出力する。操作部19には、さらに速度切替えダイヤル19eを設けてもよい。シフトレバー19a及び速度切替えダイヤル19eは、モードの位置や速度を示す表示灯19f,19gをさらに備えてもよい。CPU部36は、非常停止信号19dが入力されたとき、この非常停止信号19dに基づいて、走行情報50aによる自律走行を中断して、非常停止の走行情報50bを生成して駆動制御部13に送出する。
【0020】
ビーコン検出部20はそれ自体公知であって、例えば
図2~
図4に示すように、本体部11の前部に設けられ、一対の撮像手段としての赤外線カメラ21及び22と、距離センサ23と、ビーコン演算部24と、ビーコン処理部25と、ビーコン記憶部25a等から構成される。ビーコン演算部24と、ビーコン処理部25と、ビーコン記憶部25aの各動作は、CPU部36内に格納されたプログラムにより実行される。又、ビーコン記憶部25aは、CPU部36内の記憶装置又はCPU部36の外部に設けた記憶装置を使用することができる。各赤外線カメラ21及び22は、それぞれ本体部11の前方の追尾すべきビーコンBからの識別光を撮像するために本体部11の互いに横方向に離れてそれぞれ前方に向かって、例えば前端の左右両側にて前方に向かって配置される。即ち、各赤外線カメラ21及び22は、各光軸が互いにほぼ平行に、例えば上向きに傾斜して前方に延びるように配置される。各光軸の傾斜角度は、例えば光軸が前方1メートルで高さ50cm程度の位置を通るように、例えば傾斜角度10度から30度程度に設定される。各赤外線カメラ21,22は公知の赤外線ステレオカメラであって、撮像素子及びレンズ等の光学系から構成される。各赤外線カメラ21,22として、赤外線ステレオカメラを用いた場合には、ビーコンBまでの距離と角度を計測することが可能となる。撮像素子が入射する赤外線を検知することにより、太陽光等の外乱光の影響を低減することができ、夜間等の暗い場所においても、確実にビーコンBからの識別光を検出することが可能である。赤外光を検出する撮像素子としては、通常の撮像素子の入射側に赤外線のみを透過する光学フィルターを配置して構成してもよい。各赤外線カメラ21,22は、追尾すべきビーコンBを所定時間ごとに撮像して、撮像した撮像信号をビーコン演算部24に送出する。
【0021】
距離センサ23は、本体部11の前端のほぼ中央、さらには前端の左端及び右端にも設けられてもよく、前方に向かって配置され、走行路2a(
図1)の前方にある障害物に対して超音波や赤外線を出射してその反射波を検出して、当該障害物までの距離を補助的に測定する。つまり、距離センサ23は、ビーコンBの追尾は行わずに、専ら走行路2aの前方にある障害物との距離を検出する。
【0022】
ビーコン演算部24は、各赤外線カメラ21,22からのビーコンBの撮像画面を画像処理することにより、所謂ステレオ視によるビーコンBの位置情報24a、即ち方向及び距離を算出して、ビーコン処理部25に送出する。ビーコン演算部24は、ビーコンBの撮像画面に関して、各赤外線カメラ21,22の光学系による歪み補正を行なうと共に、各赤外線カメラ21,22の本体部11への取付姿勢、即ちそれぞれの光軸の間の平行からのずれを修正して、撮像画面上における中心位置を修正する。ビーコン演算部24は、距離センサ23で測定されたビーコンまでの距離を参照することにより、ビーコンまでの距離をより正確に算出する。ビーコン演算部24は、赤外線カメラ21,22からの撮像画面の画像処理によりビーコンBの位置情報24aを算出できないときには、ビーコンBの位置情報24aを作成せず、ビーコン処理部25に送出しない。ビーコン処理部25は、ビーコン演算部24で算出されたビーコンBの位置情報24aを、本搬送台車10が走行すべき領域に関してマッピングしてビーコン記憶部25aに登録し、またCPU部36に送出すると共に、このビーコンBの位置情報24aに基づいて、そのときの追尾すべきビーコンBに対する方向及び距離から、搬送台車10をビーコンBに追従させるための速度及び方向(操舵角)から成る走行情報25bを生成する。ビーコン処理部25は、当該ビーコンBの位置情報24aと直前のビーコンBの位置情報24aとを比較することにより、ビーコンBと搬送台車10との相対速度及び距離の変化を算出して、ビーコンBに対する距離が所定範囲内に収まるように、走行情報25bに含まれる速度を決定する。走行情報25bは、左右の車輪15を駆動する駆動モータ16の回転速度を制御するための制御情報であって、左右の駆動モータ16を互いに異なる回転速度で制御することにより、その速度差により操舵角を実現する。ビーコン処理部25は、所定時間毎にビーコン演算部24から送られてくるビーコンBの位置情報24aを順次にマッピングしてビーコン記憶部25aに登録すると共に、ビーコン記憶部25aから順次にビーコンBの位置情報24aを読み出して、そのときのビーコンBに対する方向及び距離に基づいて、走行情報25bを生成して、駆動制御部13に送出する。ビーコン処理部25は、ビーコン演算部24からビーコンBの位置情報24aが送られてこないときには、既にビーコン記憶部25aに登録されているマッピングによるビーコンの位置情報24aに基づいて走行情報25bを生成して駆動制御部13に送出する。これにより、追尾すべきビーコンBが屈曲した経路を進行したり、左右に曲がる場合であっても、マッピングされたビーコンBの位置情報24aに基づいて確実に追尾を行なう。
【0023】
本実施形態における搬送台車の走行システム1は、走行エリア2に配置されたマーカー40と、このマーカー40を検出するためにマーカー検出部30を備える。マーカー40は、少なくとも1個のマークを有し、このマークは走行路2aを横切るように横方向に及び/又は走行路2aに沿って縦方向に、好ましくは複数個で構成される。マーカー40に複数個のマークを付す場合は、マーカーは1本の帯状に構成されるのが好ましい。
マーカー40は、走行路2aに沿って縦方向に、複数個のマークを線状に連続的に付して、1本以上で配置してもよい。この場合、マーカー40は、走行路2aに沿って進行方向に所定の間隔で複数本配置するか、又は連続的に1本を配置してもよい。
マーカー40は帯状に形成されることが好ましく、横方向に及び/又は縦方向に並んだ複数個のマークがこの帯状のマーカーに付される。マークは、同じマークでも異なるマークであってもよい。例えば、帯状のマーカー40が走行路2aを横切るように配置されている場合、この帯状の1本のマーカーに横方向に1列に複数個の同一のマーク又は異なるマークを配置してもよい。
図5に示すように、1本のマーカー40に2列以上を配置して、列毎に複数個の同一のマーク又は異なるマークを配置してもよい。
マーカー40を走行路2aに沿って縦方向に複数本併置してもよい。帯状のマーカー40に付された複数個のマークは、上記のように、同一のマーク又は異なるマークから構成されてもよい。例えば2本のマーカー40を走行路2aの進行方向中央で併置してもよく、或いは、通路の左右に間隔をあけて併置してもよい。また、横方向の中央のマーカー40を第1のマーカーとするとその両側にさらに第2、第3のマーカー40を併置してもよい。これらの場合も、マーカー毎に同じマークを付しても異なるマークを付してもよい。
【0024】
図5は
図1のマーカーの構成の一例を示す。マーカー40は、走行方向を横切って1本の帯状に構成され、帯状の1本のマーカーに、図において上下に2列でそれぞれ9個並んでマークが付されている。すなわち、マーカー40は、搬送台車10の走行方向(矢印図示)に対して手前側の第一列の9個のマーク41と、後方の第二列の9個のマーク42とから構成される。第一列のマーク41は、左方から順に、41a,41b,41c,41d,41e,41f,41g,41h,41iであり、各マーク41a~41iを、a行からi行と呼ぶ。第二列のマーク42は、同様に左方から順に、42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42h,42iである。各マーク42a~41iも同様にa行からi行と呼ぶ。マーカー40の行方向は、順にマーク41の意味する記号として、例えば数字や文字を異ならせても良い。列方向(横方向)に記号の異なる複数のマーク41を配置した場合には、横方向の左側から右側の記号が後述する配置位置情報51を有している。マーカー40を検知した時の搬送台車10は、マーク41の配置位置情報51によりの横方向のずれを検知する。又、走行方向に手前から後方側に複数のマーカー40を配列する場合、同じ数字や同じ文字を並べると、進行方向の速度が上がった時にマーカー40の配置位置情報51のデータ取得の失敗やエラーを無くすことができる。
マーカー40を、走行路2aに沿って縦方向に配置する場合は、横方向のずれを検知するために走行路2aを横切るように横方向にもマーカー40を設けてもよい。また、マーカー40を走行路2aに沿って中央及び左右に配置する場合には、左右に配設されるマーカー40を構成するマークに横方向に関する配置位置情報51を設定してもよい。
【0025】
第一列のマーク41a~41i及び第二列のマーク42a~42iは、前もって搬送台車10の当該マーカー40を通過した後の搬送台車10の走行情報50が設定されている。この走行情報50は、例えば直進,Uターン,左旋回,右旋回,停止又は追従モード切替であり、直進の場合にはさらに数段階、例えば低速,中速及び高速の走行速度を設定されている。例えば
図5に示す18個のマーク41a~41i及び42a~42iから成る一本のマーカー40は、すべて同じ走行情報50に関連付けられている。個々のマーク41a~41i及び42a~42iは、図示の場合、ArUcoマーカーが使用され、それぞれ縦横、例えば2cm程度の大きさを有すると共に、互いに例えば8cm程度の間隔で配置されている。個々のマーク41a~41i及び42a~42iの大きさと間隔は、後述するが、マーカー40を検出するカメラ31の設置位置とカメラ31に装着されるレンズの画角から決定される。個々のマーク41a~41i及び42a~42iは、ArUcoマーカーに限らず、バーコード、QRコード(登録商標)等を使用してもよい。一本のマーカー40は、搬送台車10の走行路2aを完全に横切るような幅を備える。マーカー40を構成する各マーク41a~41i及び42a~42iは、左端から右端まで順次に左右方向、そして第一列か第二列かの配置位置情報51を設定されている。例えば、マーク41cは、第一列三番目という配置位置情報51を設定されている。各マーク41a~41i及び42a~42iの走行情報50及び配置位置情報51は、それぞれ後述するCPU部36で前もって設定され、CPU部36内のマーカー記憶部34に記憶されている。
図5において、マーカー40は、全体として一枚のシート状に構成され、例えば裏面に接着剤が塗布されて床面等に貼り付けることができる。これにより、各マークの間隔等を調整することなく、容易にマーカー40全体を正しい配置で設置することができる。
図5に示すように、マーカー40のシートの一部に、その走行情報50の内容を示す『RIGHT』という表記43を備えることにより、マーカー40の取扱いがより一層容易となる。図示の『RIGHT』は、右旋回を示す。
【0026】
マーカー検出部30は、
図4に示すように、撮像手段としてのカメラ31と、画像処理部32とを備え、画像処理部32からの信号が、CPU部36内のマーカー制御部33に出力され必要に応じてマーカー記憶部34に保存される。マーカー制御部33とマーカー記憶部34aの各動作は、CPU部36内に格納されたプログラムにより実行される。マーカー記憶部34aは、ビーコン記憶部25aと同様にCPU部36内の記憶装置又はCPU部36の外部記憶装置を使用できる。カメラ31は、
図2(C)及び
図3に示すように、太陽光の影響を受けにくい位置、図示の場合には搬送台車10の本体部11の下面にて下方に向かうように下向きに配置されると共に、その画角内を照明する発光部31aを備える。発光部31aから出射する光の波長は、可視光や赤外線とし得る。カメラ31及び発光部31aとして、好ましくは、外乱光の影響を受けにくいように、例えば赤外線カメラ及び赤外線発光部が使用される。カメラ31は、
図6に示すように、走行面から垂直に高さH(例えば12cm程度)の位置に取り付けられ、走行面にて幅W(例えば15cm程度)の範囲の画角を備える。発光部31aは、例えば発光ダイオード等から構成され、この画角の範囲を照明するように、図示の場合カメラ31の両側に配置される。マーカー40の配置は、カメラ31の設置位置とカメラ31のレンズの視野角、つまり画角から決定され、最大視野角内に3個以上のマーカー40が見えるようなマーカー間距離にすれば、搬送台車10がマーカー40上のどこを通過しても2個以上のマーカーが見える。
【0027】
画像処理部32は、カメラ31からの撮像信号31bが入力され、この撮像信号31bによる撮像画面を画像処理し、撮像画面内に写っているマーカー40及び当該マーカー40の並び方向32aを検出する。画像処理部32は、この撮像画面内のマーカー40のうち、最も中央寄りの第一列のマーク41a~41iを特定すると共に、同様に最も中央よりの第二列のマーク42a~42iを特定する。画像処理部32は、特定した第一列のマーク41a~41iと第二列のマーク42a~42iの横方向位置が同じ場合には、以下第一列のマーク41a~41iに基づいて、第一列のマーク41a~41i又は第二列のマーク42a~42iのうち、一方が撮像画面不良により特定できない場合には、特定が可能な第一列のマーク41a~41i又は第二列のマーク42a~42iに基づいて、当該マーク41a~41i又は42a~42iを検出マーク情報32bとして、並び方向32aと共に、マーカー制御部33に出力する。画像処理部32が、第一列のマーク41a~41i及び第二列のマーク42a~42iのいずれも特定できない場合には、エラー信号32cを生成して、マーカー制御部33に出力する。
【0028】
マーカー制御部33は、画像処理部32からの検出マーク情報32bに基づいて、画像処理部32で特定されたマーク41a~41i又は42a~42iに対して前もって設定された走行情報50及び配置位置情報51をマーカー記憶部34から読み出す。マーカー制御部33は、並び方向32aと配置位置情報51から、そのときの走行方向及び走行路2aにおける横方向のずれと、慣性計測ユニット18からの進行方向のずれ、つまり角度のずれを検出して正しい走行方向及横方向のずれを補正する。角度のずれの検出や補正は、慣性計測ユニット18内のジャイロセンサにより行われる。マーカー検出部30は、マーカー40の認識により、マーカー40に対する搬送台車10のXY位置と角度を演算し、マーカー制御部33に出力する。ここで、X位置は走行路2aにおける横方向であり、Y位置は進行方向を示す。マーカー40の検出では、マーク41aが1個でも検出できれば補正は可能であり、2個以上の連続したマーカー40、又は同じマーカー40を見つけることで、後述するマーカー40の示す、直進、停止、右左折等の走行情報を認識する。マーク41aの数を2個以上とすることにより、搬送台車10が走行する走路となる床の汚れなどと間違って誤検知することを回避する。このように、マーカー40は、必ずしも、
図5に示すマーク41の内、中央のものを優先して利用しなくても良い。
【0029】
マーカー制御部33は、搬送台車10の走行方向の横方向のずれと、現在角度をマーカー40から取得し、走行方向のずれを0にし、さらに角度のずれを無くすように走行方向を修正し、走行路2aにおける横方向のずれを中央に戻すように走行路2aによる横位置及び現在角度を修正することにより、読み出した走行情報50を修正して、修正走行情報50aを生成して駆動制御部13に出力する。駆動制御部13は、この修正走行情報50aに基づいて走行部12を駆動制御する。よって、搬送台車10は、修正走行情報50aに従ってマーカー40により指定された通りに移動走行を行なう。マーカー制御部33は、画像処理部32からエラー信号32cが入力された場合には、マーカー40の読取失敗と判断して非常停止信号33aを生成して、搬送台車10の駆動制御部13に出力する。駆動制御部13は、この非常停止信号33aに基づいて走行部12を駆動制御して、モータ16の駆動を停止させる。
【0030】
マーカー制御部33は、搬送台車10の各車輪15に設けられた車輪回転センサ15aから車輪回転数情報15bと、慣性計測ユニット18からの検出信号18aが入力されており、これらの車輪回転数情報15bに基づいて搬送台車10の移動距離を算出すると共に、慣性計測ユニット18の検出信号18aに基づいて車輪15のすべり等を検出して移動距離を補正し、補正した移動距離に基づいて走行情報50を修正し、修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。
【0031】
さらに、マーカー制御部33は、マーカーによる自律走行の制御中に、ビーコン検出部20のビーコン処理部25からビーコンBの位置情報24aを受け取ったときには、マーカーによる自律走行を中断して、駆動制御部13に対する制御をビーコン検出部20のビーコン処理部25に引き継いで、ビーコン処理部25がビーコンの近傍まで走行路2aに沿って所定距離(例えば3m)だけ直進して停止するような走行情報25bを作成して、駆動制御部13に送出する。
【0032】
ここで、種々のマーカー40、即ちマーカー40-1~40-10による搬送台車10の動作について説明する。マーカー40-1,2,3は、それぞれ低速,中速及び高速の直進、マーカー40-4は左90度旋回、マーカー40-5は右90度旋回、マーカー40-6は停止、マーカー40-7は進入禁止、マーカー40-8は反時計回りのUターン、マーカー40-9は、時計周りのUターン、マーカー40-10は追従モード切替に関連付けられている。
まず、直進の場合、
図7に示すように、前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-1,40-2又は40-3)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー制御部33は、検出マーク情報32bに基づいてマーカー記憶部34から当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれに関して修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。搬送台車10は、当該マーカー40から2mの間で徐行しながら、走行方向及び幅方向のずれを補正し、補正終了後は走行情報50に設定された速度まで加速し直進する。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合は、
図7(A)に示すように幅方向のずれが修正され、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合には、
図7(B)に示すように走行方向と幅方向のずれの双方が修正される。
【0033】
続いて、左90度旋回の場合、
図8に示すように、前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-4)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。制御部33は、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、走行路2aに対する走行方向のずれに関して修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。これにより、搬送台車10は、当該マーカー40から1mの位置で、一旦停止した後、左に旋回する。旋回角に関して、90度に対して方向のずれを加算して走行方向のずれを補正し、補正終了後は直前の走行情報50に設定された速度で直進する。この場合、幅方向のずれに関する修正は行なわない。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合には、
図8(A)に示すように、そのまま左旋回し、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合には、
図8(B)に示すように、走行方向のずれが修正される。例えば走行方向のずれが10度の場合には、100度(90度+10度)だけ左旋回する。右90度旋回の場合は、上述した左90度旋回の場合と左右に関して逆に動作するので、詳細な説明は省略する。
【0034】
停止の場合、
図9に示すように前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-6)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー制御部33は、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、走行路2aに対する方向のずれに関して修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。これにより、搬送台車10は、当該マーカー40から1mの位置で停止する。停止位置までの減速中に走行方向のずれを補正するが、幅方向のずれに関する修正は行なわない。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合は、
図9(A)に示すようにそのまま停止し、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合は、
図9(B)に示すように走行方向のずれが修正される。このまま搬送台車10の走行を終了する場合は、適宜の操作、例えばシフトレバー19aをN(ニュートラル)にし、あるいはブレーキを作動させる。自律走行を再開する場合は、再び自律走行の開始に必要な操作、例えばジョイスティック19bを前方に倒して3秒以上キープする。この場合、直前の走行情報50に設定された速度で直進する。
【0035】
進入禁止の場合、
図10に示すように、前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-7)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー制御部33は、マーカーによる自律走行を終了して、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、走行路2aに対する方向のずれ及び幅方向のずれに関して修正を行なわずに、直ちに停止させる。走行方向のずれ及び幅方向のずれに関する修正は行なわない。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合は、
図10(A)に示すようにそのまま停止し、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合は、
図10(B)に示すようにそのまま停止する。自律走行を再開させるためには、シフトレバー19aを手動でニュートラルにして、手動で搬送台車10自体を正しい位置に移動させたのち、通常の自律走行開始の操作を行なう。
【0036】
Uターンの場合、
図11に示すように、前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-8,9)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー制御部33は、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれに関して修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。これにより、搬送台車10は、当該マーカー40から1mの位置aで一旦停止した後、その場で左又は右に旋回する。旋回角に関して、180度に対して走行方向のずれを加算して走行方向のずれを補正し、補正終了後は2mの位置bまで走行しながら幅方向のずれを修正し、その後直前の走行情報50に設定された速度で直進する。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合は、
図11(A)に示すように、Uターンした後、幅方向が修正され、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合は、
図11(B)に示すようにUターンした後、走行方向のずれ及び幅方向のずれが修正される。Uターンの場合にはその場で旋回するので、左旋回の場合も右旋回の場合も同様に動作する。
【0037】
最後に、追従モード切替えの場合には、
図12に示すように、前方に走行する搬送台車10がマーカー40(マーカー40-10)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー制御部33は、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された走行情報50を読み出し、マーカー40による自律走行を中断して、駆動制御部13の制御をビーコン検出部20のビーコン処理部25に引き継ぐ。その後は、搬送台車10は、ビーコン検出部20で検出されたビーコンBに追従する。ビーコンBは、作業者が装着してもよい。走行路2aに対する幅方向のずれのみがある場合は、
図12(A)に示すように、幅方向のずれは修正されずにそのままビーコンBに追従し、また走行路2aに対する走行方向のずれ及び幅方向のずれがある場合は、
図12(B)に示すように、走行方向のずれも幅方向のずれも修正されず、そのままビーコンBに追従する。このような追従モードへの切替えによって、走行路2aの途中で、走行路2aから外れた位置まで、ビーコンBにより搬送台車10を誘導して、搬送台車10の載置台11a上に搭載した荷物等の積み下ろしを行なうことが可能となる。
【0038】
図13に示すように、搬送台車10のマーカーによる自律走行中に、ビーコン検出部20がビーコンB(携帯型ビーコン)からの識別光を検出した場合は、ビーコン検出部20のビーコン処理部25がビーコンBの位置情報24aをマーカー検出部30のマーカー制御部33に送出する。マーカー検出部30のマーカー制御部33は、マーカー40による自律走行を中断して、ビーコンBの近傍まで走行路2aに沿って所定距離(例えば3m)だけ直進して停止する走行情報50を作成して、駆動制御部13に送出する。これを受けて、駆動制御部13は、走行部12を駆動制御することにより、搬送台車10は、ビーコンBの近傍まで走行路2aに沿って所定距離だけ直進して停止する。このとき、走行方向のずれや幅方向のずれの修正は行なわれず、
図13(A)に示すように走行方向のずれがない場合も、
図13(B)に示すように走行方向のずれがある場合も、搬送台車10は、そのまま直進する。搬送台車10の走行が再開されたとき、ビーコン検出部20がビーコンBからの識別光を検出している間は、マーカー制御部33による自律走行は行なわれず、ビーコン検出部20のビーコン処理部25によるビーコン追尾走行が行なわれるが、ビーコンBからの識別光を検出しなくなった時点で、搬送台車10は走行路2a上に位置しているので、マーカー検出部30は、マーカーによる自律走行を再開することができる。
【0039】
搬送台車10に設けた非常停止スイッチ19cが操作されたとき、非常停止信号19dがマーカー検出部30のマーカー制御部33に入力される。マーカー制御部33は、非常停止信号19dに基づいて走行情報50aによる自律走行を中断して非常停止の走行情報50を生成して駆動制御部13に送出する。これを受けて、駆動制御部13は、非常停止の走行情報50に基づいてただちに走行部12を駆動制御して、搬送台車10の走行を緊急停止させる。
【0040】
マーカー検出部30のマーカー制御部33は、マーカーの走行情報50aにより駆動制御部13を制御する。マーカー制御部33は、
図14に示す自律走行モードのフローチャートに従って、以下のように動作する。自律走行モードでは、まずステップST1にて、自律走行開始後に、マーカー検出部30が最初のマーカーを探し、マーカー40を検出する。マーカー検出部30は、ステップST1で検出したマーカー40が関連付けられている走行情報50の種類により、「直進」,「左旋回」,「右旋回」,「停止」,「Uターン」,「進入禁止」及び「追従モード切替」を判別する。
【0041】
「前進」の場合には、マーカー制御部33は、ステップST2にて
図7に示すように、直進の走行情報50aを作成して、ステップST3にて走行方向のずれ及び幅方向のずれを修正した後、ステップST4にて駆動制御部13により走行部12を駆動制御して搬送台車10を前進させて、ステップST1に戻る。「左旋回」及び「右旋回」の場合には、マーカー制御部33は、それぞれステップST5及びステップST6にて、
図8に示すように左旋回又は右旋回の走行情報50aを作成して左旋回又は右旋回させた後、ステップST4にて駆動制御部13により走行部12を駆動制御して搬送台車10を前進させてステップST1に戻る。「停止」の場合には、マーカー制御部33は、ステップST7にて
図9に示すように、停止の走行情報50aを作成し、ステップST8にて走行方向のずれ及び幅方向のずれを修正し、ステップST9にて操作者の自律走行再開の操作を待って、ステップST4にて駆動制御部13により走行部12を駆動制御し、搬送台車10を前進させてステップST1に戻る。「Uターン」の場合には、マーカー制御部33は、ステップST10にて
図11に示すように、Uターンの走行情報50aを作成してUターンさせた後、ステップST11にて走行方向のずれ及び幅方向のずれを修正し、ステップST4にて駆動制御部13により走行部12を駆動制御して搬送台車10を前進させてステップST1に戻る。「進入禁止」の場合には、マーカー制御部33は、ステップST12にて
図10に示すように、走行方向のずれや幅方向のずれの修正を行なわずに、ただちに停止させる。この場合、マーカー制御部33は、ステップ13にてマーカーによる自律走行を終了して操作者の操作を待つ。その間、マーカー制御部33は自律走行を停止し、ステップST14で示すようにニュートラルモードにする。「追従モード切替」の場合には、マーカー制御部33は、ステップST15にて
図12に示すように、マーカーによる自律走行を中断して、ステップST16にて追従モードに切り替える。
【0042】
上記搬送台車の走行システム1の具体的な使用例を、
図15を参照して説明する。搬送台車10が走行すべき例えば倉庫等の走行エリア内において、点線で示すように走行路2aを設定し、この走行路2aに沿って搬送台車10を誘導するために、適宜の箇所61~72にそれぞれマーカー40を設置する。位置61及び69のマーカー40は停止の走行情報を設定され、位置62,63,65,71及び72のマーカー40は直進の走行情報を設定され、位置64,66,68及び70のマーカー40は左折(左90度旋回)の走行情報を設定され、位置67のマーカー40は右折(右90度旋回)の走行情報を設定されている。
【0043】
このような走行エリア内において、位置61で停止している搬送台車10がマーカーによる自律走行を開始すると、位置62及び63で直進し、位置64で左折し、位置65で直進し、位置66で左折,位置67で右折し、さらに位置68で左折し、位置69で停止する。
図15に点線で示す搬送台車10の走行経路の各位置(61~69)において、それぞれ走行方向のずれ及び直進の場合には幅方向のずれが修正されることによって、搬送台車10は確実に走行路2aに沿って自律走行する。各マーカー40は、走行エリアの床面に接着等により設置され、走行路2aを変更する場合には、既設のマーカー40は容易に剥がすことができると共に、所定の位置に適宜のマーカー40を新たに設置することにより、容易に走行路2aの変更ができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る移動車両の走行システム5について
図16を参照して説明する。この移動車両の走行システム5が
図1に示す第1の実施形態に係る走行システム1と異なるのは、搬送台車10に接続されるネットワーク80と、ネットワーク80に接続される搬送台車10の外部運転制御部90と、をさらに備えている点である。搬送台車10は、CPU部36がネットワーク80に接続される送受信機を含む通信部を備えている以外は、第1の実施形態に係る移動車両の走行システム1と同じ構成である。
【0045】
ネットワーク80は任意の構成のネットワークであって、専用回線ネットワークであっても、3G、LTE、インターネットのような公衆回線ネットワークであってもよい。ネットワーク80は、無線に限らず有線であってもよい。有線を用いたネットワーク80としては、LAN(イーサネット(登録商標))、RS232C、車載ネットワークであるCAN(Controlled Area Network)等であってよい。無線を用いたネットワーク80としては所謂無線LANであってよい。無線LANとしてはWiFi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)が適用できる。ネットワーク80としては、CPU部36の通信部が備える通信機能及び入出力機能として電気的な信号を送出できるトランジスタやリレーのような電子部品と伝送用ケーブル等により構成してもよい。ネットワーク80により、搬送台車10と外部運転制御部90がそれぞれ相互に接続される。必要に応じて各種信号が相互に送受信され得る。
【0046】
外部運転制御部90は、例えば、タブレットとタブレットに格納されるプログラムにより構成されるが、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やシーケンサ、リモコン等の制御装置を用いてもよい。本明細書においては、搬送台車10を制御するプログラムが格納されているタブレットを用いる。
【0047】
第2実施形態に従えば、外部運転制御部90が、必要に応じてネットワーク80を介して搬送台車10の制御を行ってもよい。例えば、外部運転制御部90となるタブレットにより搬送台車10の走行路2aを任意に変更してもよい。マーカー40における走行情報が、外部運転制御部90により変更されてもよい。外部運転制御部90は、下記のように、必要に応じてネットワーク80を介してマーカー40における走行情報を変更することにより、移動車両10の走行路2aを任意に変更できる。
【0048】
(マーカーの変形例1)
上述のマーカー40の変形例として、一度設置したマーカー40の走行情報を可変するマーカー40、つまり可変のマーカー40とする方法について説明する。一つの倉庫内において、複数の搬送台車10を異なる走行路2aで運行する場合は、走行路2aの移動範囲内で複数のAのマーカー40、Bのマーカー40、Cのマーカー40を設置した後に、1台目の搬送台車10と、2台目の搬送台車10における、マーカー40の意味を変えることができる。例えば、移動範囲内でA、B、C、・・・という少なくとも3つ以上のマーカー40を設置したときに、1台目の搬送台車10と、2台目の搬送台車10における、マーカー40の意味を、以下のように変えることも可能である。以下に、マーカー40が3つのときの意味付けの例を示す。
1台目の搬送台車10:マーカーAが直進、マーカーBが左折、マーカーCが停止。
2台目の搬送台車10:マーカーAが直進、マーカーBが右折、マーカーCが左折。
【0049】
1台目の搬送台車10のマーカー制御部33及びマーカー記憶部34には、上記のマーカーA(直進)、マーカーB(左折)、マーカーC(停止)の定義により搬送台車10が制御され、必要に応じてマーカー記憶部34に保存される。同様に、2台目の搬送台車10のマーカー制御部33及びマーカー記憶部34には、上記のマーカーA(直進)、マーカーB(右折)、マーカーC(左折)の定義により搬送台車10が制御され、必要に応じてマーカー記憶部34に保存される。ここで、各搬送台車10のマーカー制御部33及びマーカー記憶部34の制御は、搬送台車10毎に設定されてもよい。各搬送台車10のマーカー制御部33及びマーカー記憶部34は、ネットワーク80に接続されるタブレットのような外部運転制御部90により制御されてもよい。これにより、一つの倉庫内において、複数の搬送台車10を異なる走行路2aで運行することが可能となる。
【0050】
(マーカーの変形例2)
同一の搬送台車10に複数のマーカーによる走行パターンとしてN通り、つまり、走行パターン1、2、3・・・Nをあらかじめ記憶させ、搬送台車10の使用予定にあわせて、今回は走行パターン1、次回は走行パターン2というように制御すれば、同一の搬送台車10を異なるN通リの走行パターンで走行させることができる。走行パターンの指定方法としては、ルートを指示するマーカー40を走行路2aに設定するか、設置されたマーカー40を、上記マーカーの変形例1と同様に、タブレットでマーカー40の定義の修正、つまり、意味付けの変更で実施してもよい。外部運転制御部90となるタブレットは、無線LAN等で、搬送台車10との相互通信が行われてもよい。
【0051】
(マーカーの変形例3)
走行路2aに設置するマーカー40に走行路2aを指定するマーカー40として、マーカーDを設けてもよい。マーカーDは、走行パターン1から走行パターン2への変更を示すマーカーであり、マーカー記憶部34に記憶されている。搬送台車10が走行路2aにおいてマーカーDを検知すると、マーカー制御部33により走行パターン1から走行パターン2に切り替えられる。
【0052】
(マーカーの変形例4)
例えば、ネットワーク80に接続された外部運転制御部90から、複数の搬送台車10をリアルタイムで制御してもよい。外部運転制御部90は、倉庫に隣接した指令室や遠隔地に設けた指令室に設置することができる。
【0053】
(マーカーの変形例5)
マーカー40は、搬送台車10の制御以外の他の機器の制御に使用してもよい。例えば、倉庫のシャッターの前に設置するマーカーSには、シャッターを開けさせる意味付けをしても良い。マーカーSを検知したマーカー制御部33は、CPU部36に接続されたネットワーク接続手段を介してネットワーク80に接続され、シャッターの制御部に「シャッター開」の信号を送出しても良い。
【0054】
(マーカーの変形例6)
搬送台車10が別の搬送台車を牽引している場合は、マーカー40の指示により牽引している搬送台車を切り離してもよい。走行路2aを変更しても良い。例えば、搬送台車10が別の搬送台車を牽引している際に、走行路2aを指定するマーカーDを検知した時には、マーカーの変形例3と同様に走行パターン1から走行パターン2に切り替えが行われてもよい。
【0055】
さらに、本発明の移動車両の走行システム1,5によれば、例えば、坂道を壁と検知するレーザー測距(SLAM)システムを用いた自律走行システムや段差や凹凸のある路面では使用できないライントレース方式の自律走行システムに対して、走行路上に点状又は線状に配置されるマーカー40とマーカー40との間を自律走行するので、途中の路面がどういう状況であっても自律走行を継続できる。
【0056】
(第3の実施形態)
次に、
図17及び
図18を参照して本発明の第3の実施形態に係る移動車両の走行システム100を説明する。第3の実施形態では、移動車両が被牽引台車120とこの被牽引台車を牽引する搬送台車110とで構成される。これらの車両は、連結機構により互いに連結及び連結解除できるよう構成される。移動車両となる搬送台車110側の連結機構は、搬送台車110の後端に設けた連結器132と、被牽引台車120の前端に設けた連結器134と、これらを連結する連結用部材130とを備え、搬送台車110が先導して被牽引台車120を牽引して移動する構成である。被牽引台車120は、カゴ台車(ロールボックスパレット)、六輪台車(スリムカート)、あるいは、パレット搬送可能な台車であってよい。搬送台車110側の連結機構は、連結器132を連結用部材130に可動に取り付ける場合は、被牽引台車120側の連結器134は固定して取り付ける。逆に、搬送台車110側の連結器132を固定して取り付ける場合は、他方の連結器134を可動に取り付ければよい。被牽引台車120の積載量は、100kg~300kgとすることができる。各モータ16を適宜に選定すれば、被牽引台車120の積載量をさらに増大して、例えば600kgとすることも可能である。
【0057】
(マーカーの変形例7)
移動車両110は、移動車両10と同様に直進,Uターン,左旋回,右旋回及び停止、侵入禁止を示すマーカー40を使用できるが、
図17に示すように、さらに弧(R)を描く軌道を自律走行するマーカー40も併用することができる。弧を描く軌道の自律走行を、直角状の左旋回及び右旋回と区別するために、それぞれ、弧状の左旋回及び弧状の右旋回と呼ぶ。マーカーの変形例7として、旋回を示すマーカー40について説明する。
図19に示すように、被牽引台車120を牽引する搬送台車110が弧状の左旋回をする場合、搬送台車110がマーカー40(マーカー40-12)を通過すると、マーカー検出部30の画像処理部32が当該マーカー40の撮像画面からマーカー40の並び方向32a及び検出マーク情報32bを検出する。マーカー40-12により、最初に直進し、例えば2m直進したときに走路2aの中央位置になるように搬送台車110の位置が補正され、次に旋回半径Rと旋回する角度が設定される。例えば、2m直進し、半径3mで60°旋回(
図19のAの軌跡参照)、2m直進し、半径5mで90°旋回(
図19のBの軌跡参照)等に自由に設定ができる。
【0058】
マーカー制御部33は、検出マーク情報32bから当該マーカー40に設定された、直進する距離と旋回半径Rと旋回する角度に関する走行情報50を読み出し、走行路2aに対する走行方向のずれに関して修正した走行情報50aを駆動制御部13に出力する。これにより、搬送台車110は当該マーカー40-12から所定の位置迄直進し、一旦停止した後、左方向に弧を描くような軌道で旋回する。つまり、移動車両110は、始めは直進マーカー(
図7のマーカー40-1~3)と同じように直進し、次に、マーカー40-12が示す旋回半径Rと旋回する角度に従って弧状の左旋回をする。この場合、直進する際に幅方向のずれに関する修正が行なわれる。これにより、搬送台車110は、被牽引台車120を牽引して弧状に左旋回をする際に円滑に旋回することができる。弧状の右旋回の場合は、上述した弧状の左旋回の場合と左右に関して逆に動作するので、詳細な説明は省略する。
【0059】
(マーカーの変形例8)
マーカー40は、特定の方向へ進む際に、所定の距離で停止、又は所定の距離まで直進して旋回するという、二つ以上の機能を組み合わせても良い。つまり、マーカー40には、上述の直進,Uターン,左旋回,右旋回、停止、弧状の左旋回、弧状の右旋回の何れかに加えて、さらに、これらの一つ以上を組み合わせた走行情報を設定してもよい。例えば、5m先で停止、3m先で弧状に右旋回又は弧状の右旋回等に設定できる。
【0060】
(第3の実施形態の変形例1)
第3の実施形態の変形例1に係る移動車両の走行システム100Aを
図20~
図22を参照して説明する。搬送台車110Aは、被牽引台車120Aの連結機構として、自動的に着脱できる連結器142を備える。搬送台車110Aの連結器142は、上下方向に移動可能な機構を備えた自動連結用部材144を備える。自動連結用部材144は、連結器142内に配置されたソレノイドやモータにより駆動されて、自動連結用部材144のピン部144aを上下方向に移動する。被牽引台車120Aは、搬送台車110Aの連結器142と着脱可能な被牽引台車側の連結器154を備える。被牽引台車側の連結器154は、自動連結用部材144のピン部144aが挿入される挿入孔を備える。
【0061】
(搬送台車110Aと被牽引台車120Aとの自動接続)
搬送台車110Aと被牽引台車120Aとの自動接続について説明する。例えば、倉庫の走行路2aにおいて、搬送台車110Aと被牽引台車120Aとが自動接続すべき箇所にマーカーDと呼ぶマーカー40が設置されている。マーカーDは、搬送台車110Aと被牽引台車120Aとが自動接続される箇所と定義され、マーカー記憶部34に保存される。搬送台車110Aと被牽引台車120Aとが自動接続されることが、走行情報50に関連付けられる。マーカーDを検知したマーカー制御部33は、CPU部36にマーカーDの箇所で停止し、自動連結用部材144による自動接続をするように制御する。これを受けて、CPU部36は、自動連結用部材144のピン部144aを上方向に移動するようにソレノイドを制御して、ピン部144aが被牽引台車側の連結器154の孔に挿入する。ネットワーク80に接続された外部運転制御部90が、搬送台車110AのCPU部36に「被牽引台車120Aと接続する」の信号を送出しても良い。外部運転制御部90としてPLCを用いた場合は、PLCから被牽引台車120Aと被牽引台車120Aとが自動接続されるように制御することができる。PLCとCPU部36とを接続するネットワーク80は、CPU部36に接続されるスイッチや通信部を用いて構成してもよい。
【0062】
(搬送台車110Aと被牽引台車120Aとの自動脱離)
例えば、倉庫の走行路2aにおいて、搬送台車110Aと被牽引台車120Aとの接続を解除する場合、搬送台車110Aを被牽引台車120Aから離脱させる箇所にマーカー40としてマーカーEが設置されている。マーカーEは、搬送台車110Aを被牽引台車120Aから離脱する箇所と定義され、マーカー記憶部34に保存される。搬送台車110Aが被牽引台車120Aから離脱されることは、走行情報50に関連付けられる。マーカーEを検知したマーカー制御部33は、CPU部36にマーカーEの箇所で停止し、次に自動連結用部材144による自動離脱をするように制御する。これを受けて、CPU部36は、自動連結用部材144のピン部144aを下方向に移動するようにソレノイドを制御して、ピン部144aを被牽引台車側の連結器154から自動離脱させる。なお、搬送台車110Aと被牽引台車120Aとの自動接続と同様に、ネットワーク80に接続した外部運転制御部90が、搬送台車110AのCPU部36に「被牽引台車120Aから離脱」の信号を送出して、被牽引台車120Aを離脱させてもよい。
【0063】
搬送台車110Aに被牽引台車120Aを接続するときには、マーカー40に後退の意味付けを行い、搬送台車110Aを後退させて、連結器142と被牽引台車側の連結器154に対する位置合わせを行ってもよい。この位置合わせは、CPU部36により行うことができる。また、位置合わせは、作業者が搬送台車110Aのハンドルを操作して行ってもよい。或いは、PLCを用いた外部運転制御部90に接続されたスイッチや、通信機能を用いて位置合わせしてもよい。このように、マーカーD又はマーカーEに、自動接続又は自動離脱するように前もって走行情報が設定されていれば、搬送台車110AはCPU部36によりマーカーD又はマーカーEの箇所で停止し、次にソレノイドを制御して自動連結用部材144による自動接続又は自動離脱をする。
【0064】
この搬送台車110Aは、
図21及び
図22に示すように、測距センサ153をさらに備えて構成されている。測距センサ153は、距離センサ23が主として前方の障害物を検知するのに対して、搬送台車110Aよりも幅の広い被牽引台車120Aを牽引する時に左右の斜め方向を含む、より距離の長い範囲にある障害物を検知する。距離は、大凡5m前後、例えば5~10m程度に設定してもよい。測距センサ153は、2次元のレーザレンジファインダー(2DLRF)と呼ばれている測距センサ、ステレオカメラ等のカメラによる画像認識により測距する測距センサ等が好適である。幅広の被牽引台車120Aを牽引する際、進行方向前方の障害物を未然に検知し得ることで、障害物との衝突の前に搬送台車110Aを停止したり、障害物と衝突しないように回避する。2DLRFはmmオーダの測距ができるので、局所的に高精度、高密度に搬送台車110Aの周囲にある障害物との測距を行うことにより、障害物のための停止動作の早期化と障害物回避の動作を迅速に行う。重量物を積載している被牽引台車120Aは、障害物を検知して停止する迄の制動時間が余計に掛かるので停止動作の安全性がより高くなる。
【0065】
(第3の実施形態の変形例2)
第3の実施形態の走行システム100Bでは、
図23(a)及び(b)に示すように、搬送台車110Bが被牽引台車120Bを牽引する連結機構として、搬送台車110B側には、操作部119と、後述する被牽引台車120Bのピン160に接続するための牽引部材170と、拘束部材172と、該牽引部材172に接続されるリンク機構174と、該リンク機構174を駆動するソレノイド176等とが設けられるが、ハンドル111bを備えていない。牽引部材170は、被牽引台車120Bを連結する際にピン160を挿入する孔170が設けられている。拘束部材172は、ピン160が牽引部材170の孔172aに挿入されたときに該ピン160の離脱を抑止するバネ性の部材である。この実施形態では、搬送台車110Bが被牽引台車120Bの下側に潜り込んだ態様で被牽引台車120Bを牽引し誘導する構成である。操作部119は、搬送台車110Bが被牽引台車120Bの下部側に潜り込む際に支障がないように本体部111の積載面と水平の位置から略下側に配置されている。被牽引台車120B側の連結機構として、本体部122の下部において下方に突出したピン160と、搬送台車110Bを被牽引台車120Aの下部側に潜り込ませて保持する左右両側に設けた一対のガイド162を備えている。ガイド162の間隔Wgは搬送台車110Bの幅と略同じかそれより僅かに幅広に形成され、被牽引台車120Bを潜り込ませてこれを保持し得る幅に設定されている。
【0066】
(搬送台車110Bと被牽引台車120Bとの自動接続)
図24(a)及び(b)に示すように、被牽引台車120B側にはその連結機構として、本体部111の下部側に、前述の一対のガイド162に加え、下方に向かって突出するピン160を備える。搬送台車110Bは被牽引台車120Bの下部側に潜り込み、ガイド162に沿って直進することにより搬送台車110Bの牽引部材170の孔170aに被牽引台車120Bのピン160が挿入されて相互に連結する。連結機構による連結の動作を具体的に説明すると、まず、
図25(a)に示すように、搬送台車110Bが矢印方向に進むと、被牽引台車120Bのピン160に、搬送台車110Bの拘束部材172が近接する。さらに進むと、
図25(b)に示すように、バネ164で所定位置に弾性保持されている拘束部材172を被牽引台車120Bのピン160がバネ力に抗して押し下げると共に、このピン160は搬送台車110Bの牽引部材170の孔170aに入り込む。ピン160が孔170aの終端まで進むと、
図25(c)に示すように、拘束部材172は被牽引台車120Bのピン160と離れ、再びバネ154により所定位置に戻る。その結果、牽引部材170がピン160に水平方向で引っ掛かり、牽引部材の孔170aにピン160が挿入されることで被牽引台車120Bが搬送台車110Bに接続される。
【0067】
(搬送台車110Bと被牽引台車120Bとの自動脱離)
図25(c)に示す連結機構による連結を解除する場合は、
図25(d)に示すように、搬送台車110Bの本体部の下部に配置されたソレノイド176を駆動してリンク機構174を吸引することで、牽引部材170をピン160より下方向(矢印C)に引き下げる。これにより、搬送台車110Bの牽引部材170の孔170aから被牽引台車120Bのピン160の水平方向の接続を解除する。この状態で、搬送台車110Bが進行方向へ進むと被牽引台車120Bから離脱する。ソレノイド176はピン160から十分に離れた時間の経過後に停止することで、搬送台車110Bの牽引部材170はバネ164の力により所定の位置へ復帰する。搬送台車110Bが被牽引台車120Bの下部側に潜り込んで被牽引台車120Bを連結するので、被牽引台車120Bが移動車両100A単独の動作と同じ動きができ、被牽引台車を搬送台車の後方に接続した場合に被牽引台車のその場回転が可能になる。また、搬送台車110Bと被牽引台車120Bとは積層状態で移動するので、全体の長さが短縮され、作業効率が向上する。
【0068】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。上述した実施形態では、マーカー40の個々のマークとして、ArUcoマーカーが使用されているが、他の種々のマーク、例えばQRコード(登録商標)等も使用され得る。マーカー40は、二列×9個で並んで配置されたマークを備えているが、一列の配置又は三列以上でも、横方向に2~8又は10以上のマークが並んでいてもよい。搬送台車10,110,110A,110Bの進行方向の速度が上がった時、マーカー40の検知の可否は、カメラ31のシャッター速度とCPU部36の処理速度に依存する。従って、進行方向のマーカー40の列数を増して設置すれば、搬送台車10,110,110A,110Bの速度が上がった時でも、確実にマーカー40から走行情報を取得することができる。マーカー検出部30をビーコン検出部20と別体に独立して設けることなく、マーカー制御部33とビーコン検出部20のビーコン処理部25を共通化してもよい。非常停止操作部としての非常停止スイッチ19は、搬送台車10の本体部11に設けられることなく各種設定を行なう外部操作部に設けられてもよく、また搬送台車10の走行エリア内に固定配置されてもよい。この非常停止スイッチ19は、一つに限らず複数あっても良く、ジョイスティック19bの操作に含ませてもよい。非常停止のための周囲センサは、超音波センサのような距離センサに限らず、バンパー38に設けたバンパーセンサ38aによって検知してもよい。非常停止操作部としては、作業者が装着するビーコンや、他の赤外線や無線通信によるリモコン装置により、作業者がリモート操作により搬送台車10,110を停止させる構成としても良い。
【0069】
移動車両の走行システム1,5,100,110A,110Bの安全機能として、マーカー40が例えば10m進んでも発見できない場合には、移動車両10,110,110A,110Bがコースを外れたと認識して自動で停止してもよい。搬送台車10,110,100A,100Bは、スピーカを備えてもよい。スピーカにより、マーカー40の直進、左折、右折、緊急停止等の動作の前に搬送台車の周囲に警報音や効果音を発生することができる。上述した実施形態においては、移動車両として、搬送台車10,110,100A,100Bに例をとって説明したが、これに限らず、搬送台車以外のあらゆる移動車両に本発明を適用し得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0070】
1,5,100,100A,100B…移動車両の走行システム、
2…走行エリア、 2a…走行路、
10,110,110A,110B…搬送台車(移動車両)、
11,111…本体部、 11a…載置台、 11b,111b…ハンドル、
12…走行部、 13…駆動制御部、 13a…電源、
15…車輪、 15a…車輪回転センサ、 15b…車輪回転数情報、
16…モータ、 16a…減速機構、 17…キャスター、
18…慣性計測ユニット(IMU)、 18a…検出信号、 19,119…操作部、 19a…シフトレバー、 19b…ジョイスティック、 19c…非常停止スイッチ、 19d…非常停止信号、 19e…速度切り替えダイヤル、 19f,19g…表示灯、
20…ビーコン検出部、 21,22…赤外線カメラ、 23…距離センサ、
24…ビーコン演算部、 24a…ビーコンBの位置情報、
25…ビーコン処理部、 25a…ビーコン記憶部、 25b…走行情報、
30…マーカー検出部、 31…カメラ(撮像手段)、 31a…発光部、 31b…撮像信号、 32…画像処理部、 32a…並び方向、 32b…検出マーク情報、
32c…エラー信号、 33…マーカー制御部、 33a…非常停止信号、
34…マーカー記憶部、 36…CPU部、 37…主スイッチ、 38…バンパー、
38a…バンパーセンサ、 40…マーカー、
41,41a~41i…第一列のマーク、 42,42a~42i…第二列のマーク、
50…走行情報、 50a…修正走行情報、 51…配置位置情報、
61~72…位置、 80…ネットワーク、 90…外部運転制御部、
120,120A,120B…被牽引台車、 130…連結用部材、
132,142…移動車両側の連結機構、
134,154…被牽引台車側の連結機構、
144…自動連結用部材、 144a…ピン部、 153…測距センサ、
160…ピン、 162…ガイド、 164…バネ、
170…牽引部材、 170a…牽引部材の孔、
172…拘束部材、 174…リンク機構、 176…ソレノイド。