(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220203BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220203BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220203BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220203BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220203BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J11/06
C09J175/04
B32B27/00 M
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2017219788
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】髪口 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
(72)【発明者】
【氏名】笠原 天弥
(72)【発明者】
【氏名】吉原 悠
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-035602(JP,A)
【文献】特開2017-052818(JP,A)
【文献】特開平07-145358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00-7/50
C09J 133/00
C09J 11/06
C09J 175/04
B32B 27/00
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に配置された粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成され、かつ、前記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm~15μmであり、
前記(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2質量%~8質量%と、単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%~
43.8質量%と、
単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して49質量%以上と、を含み、かつ、ガラス転移温度が-40℃以下であり、
前記架橋剤は、イソシアネート化合物であり、
前記粘着剤組成物における前記イソシアネート化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して3質量部~7質量部である粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の基材とは反対側の面に、剥離フィルムを更に有する請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記剥離フィルムの前記粘着剤層と接する側の面の算術平均粗さRaが、2μm~15μmである請求項2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、40万~150万である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、自動二輪車等の車両では、装飾を施した粘着フィルムを車体上に貼着することで意匠性を高めることが行われている。このような粘着フィルムは、燃料タンク、フロントカバー、フロントフェンダー等の曲面を有する被着体に貼り付けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、曲面を有する被着体に貼り付けられるマーキングフィルムとして、特定の粘弾性特性を有する基材と、アクリル酸ブチル(n-ブチルアクリレート;n-BA)を主原料とし、ガラス転移温度が-50~-20℃の範囲を満足する粘着剤層を有するマーキングフィルムが開示されている。
また、特許文献2には、曲面形状を有する対象物に貼り付けられるラッピング用フィルムとして、ポリ塩化ビニルフィルム層と、特定の重量平均分子量を有するアクリル系粘着化合物、及び、特定の重量平均分子量と特定のガラス転移温度とを有するメタクリル酸系エステル共重合物を含有する粘着剤層と、離型フィルムと、を有するラッピング用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-234011号公報
【文献】特開2017-52146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、曲面を有する被着体に対し粘着フィルムを貼り付ける際には、泡噛みを生じさせることなく綺麗に正確な位置に貼り合わせるために、一旦貼り合わせた粘着フィルムを途中まで手で剥がし、再度貼り付ける作業を行う。貼り合わせた粘着フィルムを途中まで剥がす作業(所謂、貼り起こし作業)では、粘着フィルムの剥がした部分に、剥離方向に対し垂直の方向に線状の跡(所謂、ショックライン)が付くことがあり、外観上問題となることがあった。
したがって、曲面を有する被着体に貼着する粘着フィルムには、貼り起こし作業の際にショックラインが発生し難い性質(以下、適宜「貼り起こし性」と称する。)が求められる場合がある。
【0006】
上述の点に関し、特許文献1に記載のマーキングフィルムでは、粘着剤層の柔軟性が不足しているため、ショックラインの発生を十分に抑制できず、満足のいく貼り起こし性は得られない。
また、特許文献2に記載のラッピング用フィルムでは、粘着剤層に含まれるメタクリル酸系エステル共重合物の重量平均分子量及びガラス転移温度を制御することで、剥離時の作業性を良好なものとしているが、ショックラインの発生を十分に抑制できず、満足のいく貼り起こし性は得られない。
【0007】
また、曲面を有する被着体(特に、車体)に貼着する粘着フィルムには、上述の貼り起こし性に優れることのみならず、耐燃料油性及び耐熱収縮性に優れることも求められる場合がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、貼り起こし性、耐燃料油性、及び耐熱収縮性に優れる粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 基材と、上記基材の表面に配置された粘着剤層と、を有し、
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成され、かつ、上記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm~15μmであり、
上記(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2質量%~8質量%と、単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%~50質量%と、を含み、かつ、ガラス転移温度が-40℃以下である粘着フィルム。
<2> 上記粘着剤層の基材とは反対側の面に、剥離フィルムを更に有する<1>に記載の粘着フィルム。
<3> 上記剥離フィルムの上記粘着剤層と接する側の面の算術平均粗さRaが、2μm~15μmである<2>に記載の粘着フィルム。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量が、40万~150万である<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着フィルム。
<5> 上記架橋剤が、イソシアネート化合物である<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、貼り起こし性、耐燃料油性、及び耐熱収縮性に優れる粘着フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
本明細書において「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位(即ち、(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位)の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
本明細書において「粘着剤組成物」とは、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを混合した後から、架橋反応が終了する前の、液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において「粘着剤層」とは、粘着剤組成物の架橋反応が終了した後の物質からなる膜を意味する。
【0016】
[粘着フィルム]
本発明の粘着フィルムは、基材と、上記基材の表面に配置された粘着剤層と、を有し、
上記粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成され、かつ、上記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm~15μmであり、
上記(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2質量%~8質量%と、単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%~50質量%と、を含み、かつ、ガラス転移温度が-40℃以下である。
本発明の粘着フィルムは、貼り起こし性、耐燃料油性、及び耐熱収縮性に優れる。
本発明の粘着フィルムがこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着フィルムの効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
以下、本発明の粘着フィルムに含まれる(メタ)アクリル系共重合体を、適宜「特定(メタ)アクリル系共重合体」と称する。
【0017】
本発明における粘着剤層は、基材とは反対側の面、即ち、被着体と接する面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲であり、表面が比較的粗い粘着剤層である。
また、本発明における粘着剤層は、単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%~50質量%と、を含み、かつ、ガラス転移温度が-40℃以下である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成されるため、比較的柔らかい粘着剤層である。
本発明の粘着フィルムは、表面が比較的粗く、かつ、層自体が比較的柔らかい粘着剤層を有するため、被着体に対する粘着剤層の有効接着面積を、貼り合わせの初期段階から経時で調整できる。
すなわち、本発明の粘着フィルムでは、粘着剤層の表面が比較的粗いため、貼り合わせの初期段階では、被着体に対する有効接着面積が小さくなる。被着体に対する有効接着面積が小さくなると、被着体から剥離し易くなる。そのため、本発明の粘着フィルムは、貼り起こし性に優れると考えられる。
ところで、被着体が自動車、自動二輪車等の車両である場合には、粘着フィルムが燃料油に接触することがある。被着体に対する粘着剤層の有効接着面積が小さいと、被着体と粘着剤層との間に燃料油が入り込み易くなるため、粘着フィルムが被着体から剥離する。本発明の粘着フィルムでは、粘着剤層が比較的柔らかく、被着体に対して経時で濡れ拡がるため、次第に有効接着面積が大きくなり、被着体と粘着剤層との隙間が解消される。そのため、本発明の粘着フィルムは、耐燃料油性に優れると考えられる。
【0018】
本発明における粘着剤層は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2質量%以上含む(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成されるため、適度な凝集力を有する。このため、本発明の粘着フィルムは、耐熱収縮性に優れると考えられる。
また、本発明における粘着剤層は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%以下含む(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成されるため、極性が高くなりすぎない。粘着剤層の極性が高くなりすぎないことで、粘着剤層の被着体へのアンカー効果が抑制されるため、本発明の粘着フィルムは、貼り起こし性に優れると考えられる。また、粘着剤層の極性が高くなりすぎないことで、燃料油による粘着剤層の溶解が抑制されるため、本発明の粘着フィルムは、耐燃料油性に優れると考えられる。
【0019】
〔基材〕
本発明の粘着フィルムは、基材を有する。
基材の材料は、特に制限されない。
基材の材料としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。
これらの中でも、基材の材料としては、加工性が良好であるとの観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0020】
基材の厚みは、特に制限されないが、例えば、取り扱い性が良好であるとの観点から、50μm~100μmの範囲が好ましく、25μm~200μmの範囲がより好ましい。
【0021】
〔粘着剤層〕
本発明の粘着フィルムは、上記基材の表面に配置された粘着剤層を有する。
粘着剤層は、特定(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む粘着剤組成物により形成され、かつ、上記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm~15μmである。
【0022】
(粘着剤組成物)
粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを含む。
粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系共重合体及び架橋剤以外に、必要に応じて、有機溶媒、添加剤(以下、「他の成分」と称する。)等の成分を含んでいてもよい。
以下、粘着剤組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0023】
-特定(メタ)アクリル系共重合体-
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2質量%~8質量%と、単独重合体としたときのガラス転移温度が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して8質量%~50質量%と、を含み、かつ、ガラス転移温度が-40℃以下である。
【0024】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む。
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0025】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、被着体に対する接着力の観点、及び、粘着剤層を粘着フィルムに適用した場合における基材との密着性の観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0026】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0027】
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、全構成単位(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位)に対して、2質量%~8質量%の範囲であり、4質量%~7質量%の範囲が好ましく、5質量%~7質量%の範囲がより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して2質量%未満であると、粘着剤層の凝集力が低下するため、粘着フィルムの耐熱収縮性が悪化する傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して8質量%を超えると、粘着剤層の極性が高まり、被着体へのアンカー効果が生じるため、粘着フィルムの貼り起こし性が悪化する傾向がある。また、特定(メタ)アクリル系共重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して8質量%を超えると、粘着剤層の極性が高まり、燃料油に対する溶解性が向上するため、粘着フィルムの耐燃料油性が悪化する傾向がある。
【0028】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位)に対して8質量%~50質量%含む。
本明細書において「単独重合体としたときのガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をいう。単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)(型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株))を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度(Tg)としたものである。
また、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0029】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-90℃以上-60℃以下であることが好ましく、-85℃以上-65℃以下であることがより好ましく、-80℃以上-70℃以下であることが更に好ましい。
【0030】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、被着体に対する接着力及び基材への密着性の観点から、1~18の範囲が好ましく、1~12の範囲がより好ましい。
【0031】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA、単独重合体としたときのTg:-76℃)、i-オクチルアクリレート(i-OA、単独重合体としたときのTg:-75℃)、n-オクチルアクリレート(n-OA、単独重合体としたときのTg:-80℃)、ラウリルメタクリレート(LMA、単独重合体としたときのTg:-65℃)等が挙げられる。
これらの中でも、耐燃料油性及び耐熱収縮性により優れる粘着フィルムを実現し得るとの観点から、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)及びi-オクチルアクリレート(i-OA)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、貼り起こし性、耐燃料油性、及び耐熱収縮性により優れる粘着フィルムを実現し得るとの観点から、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)がより好ましい。
【0032】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0033】
特定(メタ)アクリル系共重合体における、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、全構成単位(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位)に対して、8質量%~50質量%の範囲であり、15質量%~40質量%の範囲が好ましく、20質量%~40質量%の範囲がより好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して8質量%未満であると、粘着剤層が硬くなるため、粘着フィルムの貼り起こし性が悪化する傾向がある。
特定(メタ)アクリル系共重合体における、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して50質量%を超えると、粘着剤層が柔らかくなりすぎるため、粘着フィルムの耐燃料油性が悪化する傾向がある。
【0034】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位(即ち、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位)を更に含むことが好ましい。
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、粘着剤層の接着力の調整に寄与する。
【0035】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体における上記ガラス転移温度(Tg)の上限は、特に制限されないが、例えば、10℃以下が好ましい。
【0036】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、被着体に対する接着力及び基材への密着性の観点から、1~18の範囲が好ましく、1~12の範囲がより好ましい。
【0037】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、i-ノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)を-40℃以下に調整しやすいとの観点から、n-ブチルアクリレート(n-BA、単独重合体としたときのTg:-57℃)が好ましい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系共重合体が、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を更に含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体は、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
特定(メタ)アクリル系共重合体が、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を更に含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(割合)は、例えば、粘着剤層の接着力を調整しやすいとの観点から、全構成単位(即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する全構成単位)に対して、49質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体における上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率(割合)の上限は、特に制限されず、例えば、全構成単位に対して、85質量%以下が好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の効果が発揮される範囲内において、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位、及び任意の構成単位である単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃を超える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含んでいてもよい。
【0041】
その他の構成単位を構成する単量体の種類は、特に制限されない。
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0042】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、-40℃以下であり、好ましくは-60℃以上-40℃以下であり、より好ましくは-55℃以上-42℃以下であり、更に好ましくは-50℃以上-45℃以下である。
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が-40℃を超えると、粘着剤層が硬くなるため、粘着フィルムの貼り起こし性及び耐燃料油性が悪化する傾向がある。
【0043】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0044】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算でき、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算できる。
【0045】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度(Tg)」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレートが21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレートが107℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、n-オクチルアクリレート(n-OA)が-80℃、ラウリルメタクリレート(LMA)が-65℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBMX)が155℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートが-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、アクリル酸(AA)が163℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を用いることで、適宜調整できる。
【0047】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されず、例えば、30万~190万の範囲が好ましく、40万~150万の範囲がより好ましく、60万~120万の範囲が更に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が30万以上であると、粘着剤層の凝集力が低すぎず、より適度なものとなるため、粘着フィルムの耐熱収縮性がより向上し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)が190万以下であると、粘着剤層の凝集力が高すぎず、より適度なものになるため、粘着フィルムの貼り起こし性がより向上し得る。
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、重合反応の温度及び時間、有機溶媒の量、重合開始剤の種類及び量等により、所望の値に調整できる。
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0049】
~条件~
測定装置:高速GPC(型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株))
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC-8220に組込、東ソー(株))
カラム:TSK-GEL GMHXL(東ソー(株))を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0050】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法>>
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、単量体を重合して製造できる。
これらの中でも、重合方法としては、例えば、製造後に粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
【0051】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0052】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素類、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル類、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、並びに、t-ブチルアルコールに代表されるアルコール類が挙げられる。
【0054】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチル、トルエン等の使用が好ましい。
【0055】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナト、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t-ブチルペルオキシビバラト、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0056】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0057】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0058】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル類、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物類、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素類、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド類、炭素数1~18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル類、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、並びに、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン類が挙げられる。
【0059】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0060】
重合温度は、特に制限されず、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0061】
-架橋剤-
粘着剤組成物は、架橋剤を含む。
架橋剤の種類は、特定(メタ)アクリル系共重合体を架橋できるものであれば、特に制限されない。
架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等の架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としては、例えば、粘着フィルムの常態接着力がより向上し得るとの観点から、イソシアネート化合物又はエポキシ化合物が好ましく、粘着フィルムの貼り起こし性がより向上し得るとの観点から、イソシアネート化合物がより好ましい。
なお、本明細書において、「イソシアネート化合物」とは、イソシアネート基を有する化合物を意味し、「エポキシ化合物」とは、エポキシ基を有する化合物を意味する。
【0062】
イソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)に代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、上記の芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。
【0063】
これらの中でも、イソシアネート化合物としては、経時接着力の安定性を保つとの観点から、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの2量体、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、トリレンジイソシアネートの3量体又は5量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのビウレット体等の各種トリレンジイソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物が好ましい。
【0064】
イソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)の「コロネート(登録商標)HX」、「コロネート(登録商標)HL-S」、「コロネート(登録商標)L」、「コロネート(登録商標)L-45E」、「コロネート(登録商標)2031」、「コロネート(登録商標)2030」、「コロネート(登録商標)2234」、「コロネート(登録商標)2785」、「アクアネート(登録商標)200」、及び「アクアネート(登録商標)210」、住化コベストロウレタン(株)の「スミジュール(登録商標)N3300」、「デスモジュール(登録商標)N3400」、及び「スミジュール(登録商標)N-75」、旭化成(株)の「デュラネート(登録商標)E-405-80T」、「デュラネート(登録商標)24A-100」、及び「デュラネート(登録商標)TSE-100」、並びに、三井武田ケミカル(株)の「タケネート(登録商標)D-110N」、「タケネート(登録商標)D-120N」、「タケネート(登録商標)M-631N」及び「MT-オレスター(登録商標)NP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0065】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)等が挙げられる。
【0066】
エポキシ化合物としては、市販品を使用できる。
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)の「TETRAD-X」及び「TETRAD-C」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0067】
粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0068】
粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に制限されず、架橋剤の種類に応じて、適宜設定できる。
例えば、架橋剤がイソシアネート基を有するイソシアネート化合物である場合、粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、貼り起こし性及び耐燃料油性により優れる粘着フィルムを実現し得るとの観点から、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、1.5質量部~8質量部の範囲が好ましく、3質量部~7質量部の範囲がより好ましい。
例えば、架橋剤がエポキシ基を有するエポキシ化合物である場合、粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、上記と同様の観点から、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.01質量部~10質量部の範囲が好ましく、0.05質量部~3質量部の範囲がより好ましい。
【0069】
-有機溶媒-
粘着剤組成物は、例えば、塗布性向上の観点から、有機溶媒を含むことが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0070】
粘着剤組成物における有機溶媒の含有量としては、特に制限はない。
粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、粘着剤組成物における有機溶媒の含有量は、例えば、塗布性の観点から、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、100質量部~900質量部の範囲が好ましい。
【0071】
-他の成分-
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、特定(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0072】
(算術平均粗さ)
粘着剤層は、基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲であり、好ましくは3μm~13μmの範囲であり、より好ましくは4μm~12μmの範囲である。
粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが2μm未満であると、初期の有効接着面積が大きすぎるため、粘着フィルムの貼り起こし性が悪化する傾向がある。
粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaが15μmを超えると、有効接着面積が小さすぎるため、粘着フィルムの耐燃料油性が悪化する傾向がある。
【0073】
粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaは、例えば、養生後の粘着剤層の表面に金属ロールを押し当てることにより、所望の値に調整できる。
また、粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaは、例えば、粘着剤層の基材とは反対側の面に、表面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である剥離フィルムを配置することにより、所望の値に調整できる。
例えば、粘着フィルムの使用性(所謂、使いやすさ)の観点からは、上記算術平均粗さRaの調整は、表面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である剥離フィルムを配置することにより行うことが好ましい。
粘着剤層の表面の算術平均粗さRaは、粘着剤層の弾性により経時で徐々に調整前の状態に戻るため、表面の算術平均粗さRaが調整された粘着剤層は、その状態が保持されている間に、できるだけ速やかに被着体に貼着することが望ましい。上記剥離フィルムを使用する方法によれば、粘着剤層の表面から剥離フィルムを剥離した後、直ちに被着体に貼着できるため、上記金属ロールを使用する方法に比べて、粘着フィルムの使用性がより良好である。
【0074】
粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaは、キーエンス社のレーザー顕微鏡VK-X200、並びに、レーザー顕微鏡VK-X200に付属の観察アプリケーション及び解析アプリケーションを用いて測定した値である。
【0075】
(粘着剤層の厚み)
粘着剤層の厚みは、特に制限されず、例えば、被着体の種類に応じて、適宜設定できる。粘着剤層の厚みは、例えば、5μm~100μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましく、20μm~40μmの範囲が更に好ましい。
【0076】
〔剥離フィルム〕
本発明の粘着フィルムは、粘着剤層の基材とは反対側の面に、剥離フィルムを更に有することが好ましい。
本発明の粘着フィルムにおいて、剥離フィルムは、粘着剤層の表面保護に寄与する。
【0077】
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に制限されず、例えば、少なくとも片面に剥離処理剤による易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、粘着フィルムを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0078】
剥離フィルムの表面の算術平均粗さRaは、特に制限されない。
例えば、既述したように、剥離フィルムを粘着剤層の基材とは反対側の面の算術平均粗さRaの調整に使用する場合には、剥離フィルムの粘着剤層と接する側の面の算術平均粗さRaは、2μm~15μmの範囲であることが好ましく、3μm~13μmの範囲であることがより好ましく、4μm~12μmの範囲である。
【0079】
剥離フィルムの表面の算術平均粗さRaは、キーエンス社のレーザー顕微鏡VK-X200、並びに、レーザー顕微鏡VK-X200に付属の観察アプリケーション及び解析アプリケーションを用いて測定した値である。
【0080】
剥離フィルムの厚みは、特に制限されず、例えば、100μm~300μmの範囲が好ましい。
【0081】
[粘着フィルムの製造方法]
本発明の粘着フィルムの製造方法は、特に制限されない。
本発明の粘着フィルムは、例えば、以下の方法により製造できる。
基材の面上に、既述の粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、養生することにより、粘着剤層を形成する。次いで、形成した粘着剤層の、基材と接しない露出した面に、表面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である金属ロールを押し当てることにより、基材/粘着剤層の積層構造を有する、本発明の粘着フィルムを製造できる。
【0082】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
表面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である剥離フィルムの面上に、既述の粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた後、養生することにより、粘着剤層を形成する。次いで、形成した粘着剤層を基材に転写する、即ち、剥離フィルムの粘着剤層が形成された側の面を、基材に貼り合わせて加圧し、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する積層体を製造した後、剥離フィルムを剥離することにより、基材/粘着剤層の積層構造を有する、本発明の粘着フィルムを製造できる。
【0083】
さらに別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
表面の算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である剥離フィルムの面上に、既述の粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させて、粘着剤付きフィルムを作製する。次いで、基材を粘着剤付きフィルムの粘着面に貼り合わせ、養生することにより、基材/粘着剤層/剥離フィルムの積層構造を有する、本発明の粘着フィルムを製造できる。
【0084】
基材又は剥離フィルムの面上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材又は剥離フィルムの面上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚みに応じて、適宜設定される。
【0085】
基材又は剥離フィルムの面上に塗布した粘着剤組成物を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
基材又は剥離フィルムの面上に塗布した粘着剤組成物の乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されず、塗布した粘着剤組成物の厚み、粘着剤組成物中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
【0086】
養生は、例えば、40℃の環境下で、3日間~7日間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
本実施例において製造した(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)及び重量平均分子量(Mw)は、既述の方法により測定した。
【0089】
<実施例1>
-(メタ)アクリル系共重合体の製造-
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート(n-BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、単独重合体としたときのTg:-57℃)81.8質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、単独重合体としたときのTg:-76℃)33.2質量部、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)8質量部、及び酢酸エチル(EAc)205質量部を仕込み、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.066質量部を添加した。AIBNの添加後、反応器の内容物を加熱し、還流温度(82℃)で20分間保った。次いで、この反応器内に、更に、2EHAを99.6質量部、n-BAを245.4質量部、AAを24質量部、EAcを94.3質量部、及びAIBNを0.189質量部からなる混合物Aを120分間かけて逐次滴下した。混合物Aの滴下後、更に、反応器内の内容物の温度を90分間85℃に保ってから、EAcを61.5質量部とAIBNを1.23質量部とからなる混合物Bを60分間かけて逐次滴下した。混合物Bの滴下後、更に、反応器内の内容物の温度を90分間85℃に保ってから、メチルエチルケトン(MEK)を用いて固形分35.1質量%に希釈後、冷却し、(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。なお、(メタ)アクリル系共重合体の溶液における「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体の溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する(以下、同じ)。
得られた(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-47.5℃であり、重量平均分子量(Mw)が80万であった。
【0090】
-粘着剤組成物の調製-
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体の溶液100質量部(固形分:35.1質量部)と、架橋剤としてイソシアネート化合物であるコロネート L-45E(商品名;「コロネート」は登録商標、トリレンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパンアダクト体、固形分:45質量%、東ソー(株))3.91質量部(固形分:1.76質量部)と、を充分に撹拌混合して粘着剤組成物を調製した。
【0091】
-評価試験用粘着フィルムの作製-
上記にて調製した粘着剤組成物を、表面の算術平均粗さRaが8.0μmである剥離フィルムの凹凸面に、ドクターブレードフィルムアプリケーターを用い、乾燥後における最小厚みが25μmとなるように塗布した後、100℃、5m/秒の熱風下で1分間乾燥させて、粘着剤付きフィルムを作製した
次いで、基材として塩化ビニルフィルム(商品名:00178M7、厚み:70μm、日本カーバイド工業(株))を粘着剤付きフィルムの粘着面に貼り合わせ、40℃の環境下で72時間静置することにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材の積層構造を有する粘着フィルムを得た。得られた粘着フィルムにおける粘着剤層の剥離フィルム側の面の算術平均粗さRaは、8.0μmである。
次いで、作製した粘着フィルムの基材(即ち、塩化ビニルフィルム)面に、250メッシュのスクリーンを用いて、スクリーンインキ(商品名:Hi-SSPINK、日本カーバイド工業(株))を印刷した後、熱風乾燥器を用いて、60℃の環境下で10分間加熱乾燥した。次いで、粘着フィルムのスクリーンインキ印刷面に、180メッシュのスクリーンを用いて、スクリーンクリア(商品名:Hi-SSPCLEAR、日本カーバイド工業(株))を印刷し、熱風乾燥器を用いて、80℃の環境下で60分間加熱乾燥した後、40℃の環境下で72時間静置することにより、剥離フィルム/粘着剤層/基材/スクリーンインキ層/スクリーンクリア層の積層構造を有する評価試験用粘着フィルムを得た。
【0092】
<実施例2>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0093】
<実施例3>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0094】
<実施例4>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0095】
<実施例5>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0096】
<実施例6>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0097】
<実施例7>
実施例1の「-評価試験用粘着フィルムの作製-」において、表面の算術平均粗さRaが8.0μmである剥離フィルムの代わりに、表面の算術平均粗さRaが3.0μmである剥離フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0098】
<実施例8>
実施例1の「-評価試験用粘着フィルムの作製-」において、表面の算術平均粗さRaが8.0μmである剥離フィルムの代わりに、表面の算術平均粗さRaが14.0μmである剥離フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0099】
<実施例9>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、有機溶媒及び重合開始剤の量を調整することにより重量平均分子量を190万に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0100】
<実施例10>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、有機溶媒及び重合開始剤の量を調整することにより重量平均分子量を30万に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0101】
<実施例11>
実施例1の「-粘着剤組成物の調製-」において、架橋剤として、イソシアネート化合物であるコロネート(登録商標)L-45Eを3.91質量部(固形分:1.76質量部)用いる代わりに、エポキシ化合物であるTETRAD-X(商品名;「TETRAD」は登録商標、1,3-フェニレンビス(N,N-ジグリシジルメタンアミン)、固形分:100質量%、三菱瓦斯化学(株))0.1質量部(固形分:0.1質量部)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0102】
<実施例12>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0103】
<比較例1>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0104】
<比較例2>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0105】
<比較例3>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0106】
<比較例4>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0107】
<比較例5>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0108】
<比較例6>
実施例1の「-(メタ)アクリル系共重合体の製造-」において、(メタ)アクリル系共重合体を構成する単量体の組成を表1に示す組成に変更し、固形分が35.1質量%の(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0109】
<比較例7>
実施例1の「-評価試験用粘着フィルムの作製-」において、表面の算術平均粗さRaが8.0μmである剥離フィルムの代わりに、表面の算術平均粗さRaが1.0μmである剥離フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0110】
<比較例8>
実施例1の「-評価試験用粘着フィルムの作製-」において、表面の算術平均粗さRaが8.0μmである剥離フィルムの代わりに、表面の算術平均粗さRaが17.0μmである剥離フィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、評価試験用粘着フィルムを得た。
【0111】
各実施例及び各比較例における粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体の単量体の組成、ガラス転移温度(Tg)、及び重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
また、各実施例及び各比較例における粘着剤組成物に含まれる架橋剤の種類及び量(単位:質量部)を表1に示す。なお、表1に示す架橋剤の量は、dry部数(即ち、固形分換算値)である。
また、各実施例及び各比較例の評価試験用粘着フィルムにおける粘着剤層の剥離フィルム側の面の算術平均粗さRa(単位:μm)を表1に示す。
【0112】
[評価]
1.貼り起こし性
上記にて作製した評価試験用粘着フィルムを5cm×20cmの大きさに切断し、評価試験用粘着フィルム片を準備した。
準備した評価試験用粘着フィルム片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層を、室温(23℃)環境下、白色塗装板(商品名:メラミン白色塗装板、材質:SPCC-SD、仕様:メラミン塗装、パルテック(株))に、スキージを用いて貼り合わせた。その後、すぐに、白色塗装板に貼り合わせた評価試験用粘着フィルム片を、長辺(20cm)方向に、剥離角度が120°となるように白色塗装板から手で剥離した。この粘着剤層の白色塗装板への貼り合わせから剥離までの作業を1回目の貼り起こし作業とする。
次いで、1回目の貼り起こし作業を行った評価試験用粘着フィルム片を用いて、同様の貼り起こし作業を更に4回繰り返した。
1回の貼り起こし作業が終了する毎に、剥離した評価試験用粘着フィルム片を目視にて観察し、下記の評価基準に従って、貼り起こし性を評価した。結果を表1に示す。
下記の評価基準において、貼り起こし性が最も優れるものは、「A」である。また、評価結果が、「A」、「B」、又は「C」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0113】
-評価基準-
A:5回目の貼り起こし作業後においても、ショックラインが発生していない。
B:4回目の貼り起こし作業後に、ショックラインが発生した。
C:2回目又は3回目の貼り起こし作業後に、ショックラインが発生した。
D:1回目の貼り起こし作業後に、ショックラインが発生した。
【0114】
2.耐燃料油性
上記にて作製した評価試験用粘着フィルムを2.5cm×2.5cmの大きさに切断し、評価試験用粘着フィルム片を準備した。
準備した評価試験用粘着フィルム片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層を、室温(23℃)環境下、白色塗装板(商品名:メラミン白色塗装板、材質:SPCC-SD、仕様:メラミン塗装、パルテック(株))に、スキージを用いて貼り合わせ、試験体を作製した後、室温(23℃)にて48時間放置した。
次いで、放置後の試験体を、室温(23℃)環境下、FuelC(トルエン/イソオクタン=50/50(体積比))に20分間浸漬させた後、取り出して、外観を目視にて観察し、下記の評価基準に従って、耐燃料油性を評価した。結果を表1に示す。
下記の評価基準において、耐燃料油性が最も優れるものは、「A」である。また、評価結果が、「A」、「B」、又は「C」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0115】
-評価基準-
A:浸漬前と変化がない。
B:4辺(合計の長さ:10cm)の範囲中、1cm以下の範囲において剥がれが見られる。
C:4辺(合計の長さ:10cm)の範囲中、1cmを超え2cm以下の範囲において剥がれが見られる。
D:4辺(合計の長さ:10cm)の範囲中、2cmを超える範囲において剥がれが見られる。
【0116】
3.耐熱収縮性
上記にて作製した評価試験用粘着フィルムを5cm×5cmの大きさに切断し、評価試験用粘着フィルム片を準備した。
準備した評価試験用粘着フィルム片から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層を、室温(23℃)環境下、白色塗装板(商品名:メラミン白色塗装板、材質:SPCC-SD、仕様:メラミン塗装、パルテック(株))に、スキージを用いて貼り合わせ、試験体を作製した後、室温(23℃)にて48時間放置した。次いで、放置後の試験体を、更に80℃の環境下にて2時間放置した後、室温(23℃)にて60分間放置して冷却した。冷却後、オリンパス(株)の測定顕微鏡(型番:STM6)を用いて、評価試験用粘着フィルム片の加熱後の収縮率を測長し、下記の評価基準に従って、耐熱収縮性を評価した。結果を表1に示す。
下記の評価基準において、耐熱収縮性が最も優れるものは、「A」である。また、評価結果が、「A」、「B」、又は「C」であれば、実用上問題がないと判断した。
【0117】
-評価基準-
A:収縮率が0.3%以下である。
B:収縮率が0.3%を超えて0.5%以下である。
C:収縮率が0.5%を超えて0.7%以下である。
D:収縮率が0.7%を超えている。
【0118】
【0119】
表1中、組成の欄に記載の「-」は、該当する成分を含まないことを意味する。
【0120】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示す通りである。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
・「n-BA」:n-ブチルアクリレート(単独重合体としたときのTg:-57℃)
・「EA」:エチルアクリレート(単独重合体としたときのTg:-27℃)
・「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート(単独重合体としたときのTg:-76℃)
・「i-OA」:i-オクチルアクリレート(単独重合体としたときのTg:-75℃)
<カルボキシ基を有する単量体>
・「AA」:アクリル酸(単独重合体としたときのTg:163℃)
・「HOA-MS」:2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸(単独重合体としたときのTg:-40℃)
【0121】
表1に示すように、実施例1~12の粘着フィルムは、貼り起こし性、耐燃料油性、及び耐熱収縮性の全てに優れていた。
【0122】
一方、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して8質量%を超える(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例1の粘着フィルムは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して2質量%~8質量%の範囲である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、耐燃料油性が顕著に劣り、また、貼り起こし性についても劣る傾向が認められた。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して2質量%未満である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例4の粘着フィルムは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して2質量%~8質量%の範囲である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、耐熱収縮性が顕著に劣り、また、耐燃料油性についても劣る傾向が認められた。
【0123】
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して8質量%を超え、かつ、ガラス転移温度(Tg)が-40℃を超える(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例2の粘着フィルムは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して2質量%~8質量%の範囲であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が-40℃以下である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、貼り起こし性及び耐燃料油性が顕著に劣っていた。
ガラス転移温度(Tg)が-40℃を超える(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例3の粘着フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が-40℃以下である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、貼り起こし性及び耐燃料油性が顕著に劣っていた。
【0124】
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して8質量%未満である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例5の粘着フィルムは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して8質量%~50質量%の範囲である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、貼り起こし性が顕著に劣っていた。
単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が-60℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して50質量%を超える(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する比較例6の粘着フィルムは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して8質量%~50質量%の範囲である(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、耐燃料油性が顕著に劣っていた。
【0125】
粘着剤層の基材とは反対側の面(即ち、剥離フィルム側の面)の算術平均粗さRaが2μm未満である比較例7の粘着フィルムは、上記算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、貼り起こし性が顕著に劣っていた。
粘着剤層の基材とは反対側の面(即ち、剥離フィルム側の面)の算術平均粗さRaが15μmを超える比較例8の粘着フィルムは、上記算術平均粗さRaが2μm~15μmの範囲である実施例(例えば、実施例1)の粘着フィルムと比較して、耐燃料油性が顕著に劣っていた。