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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】害獣侵入防止装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/30 20110101AFI20220117BHJP
【FI】
A01M29/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018019737
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019135933
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591172906
【氏名又は名称】株式会社赤城商会
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【弁理士】
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】永井 明
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079623(JP,A)
【文献】特開2013-223484(JP,A)
【文献】特開2011-160733(JP,A)
【文献】米国特許第05451239(US,A)
【文献】特開平09-000138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00-29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さの側壁で形成され上下が開口した害獣侵入防止領域を上面全体に有する侵入防止部と、
前記侵入防止部と接続し上面が外側に向けて斜め下方に傾斜し、さらに前記侵入防止部との接続側に前記害獣侵入防止領域を備えたスロープ部と、
前記害獣侵入防止領域の下方に所定の間隔で並んだ脚部と、を有し、
前記脚部間の間隙によって前記害獣侵入防止領域の下側の開口が横方向に互いに連通することを特徴とする害獣侵入防止装置。
【請求項2】
所定の高さの側壁で形成され上下が開口した害獣侵入防止領域を上面全体に有する侵入防止部と、
前記侵入防止部と接続し上面が外側に向けて斜め下方に傾斜し、さらに前記侵入防止部との接続側に前記害獣侵入防止領域を備えたスロープ部と、を備え、
前記侵入防止部と前記スロープ部とが接続する接続面を双方に有するとともに、
前記接続面の上辺は、害獣侵入防止領域の側壁間が下に凹んだアーチ状を呈することを特徴とする害獣侵入防止装置。
【請求項3】
侵入防止部とスロープ部とがそれぞれ合成樹脂で一体的に成型されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の害獣侵入防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に敷設して鹿や猪等の害獣が侵入することを防止する害獣侵入防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、山林の疲弊や個体数の増加等の理由により、鹿や猪等の野生動物が山間部の農地等に侵入し農作物を食い荒らす食害が問題となっている。これら害獣が農地等に侵入することを防止する手法としては、侵入防止区域を柵やフェンス等の侵入防止柵で囲うことが一般的である。尚、侵入防止区域を侵入防止柵で囲う場合、人間や車両の出入りは侵入防止柵の一部に設置された開閉式ゲートにて行われる。しかしながら、侵入防止区域に林野作業道等の一般道部分からの進入経路が存在する場合、通行者の妨げとなるために開閉式ゲートを設置することができず、害獣に対する有効な侵入防止策を取ることができない。
【0003】
この問題点に対して本願発明者らはハニカム状のグレーチング部材を地面に敷設して害獣の侵入を防止する下記[特許文献1]に記載の発明を行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-223484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の[特許文献1]に記載の発明により、道路上に開閉ゲートを設けることなく害獣の侵入を防止することが可能となった。しかしながら、[特許文献1]に記載の発明は道路を重機等を用いて掘削しU字溝部材を埋設する必要があり、更なる改善が望まれる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、路面を掘削することなく人力でも敷設が可能な害獣侵入防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)所定の高さの側壁52で形成され上下が開口(54)した害獣侵入防止領域50を上面全体に有する侵入防止部80と、
前記侵入防止部80と接続し上面が外側に向けて斜め下方に傾斜し、さらに前記侵入防止部80との接続側に前記害獣侵入防止領域50’を備えたスロープ部90と、
前記害獣侵入防止領域50、50’の下方に所定の間隔で並んだ脚部56と、を有し、
前記脚部56間の間隙56aによって前記害獣侵入防止領域50の下側の開口54が横方向に互いに連通することを特徴とする害獣侵入防止装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
所定の高さの側壁52で形成され上下が開口(54)した害獣侵入防止領域50を上面全体に有する侵入防止部80と、
前記侵入防止部80と接続し上面が外側に向けて斜め下方に傾斜し、さらに前記侵入防止部80との接続側に前記害獣侵入防止領域50’を備えたスロープ部90と、
前記害獣侵入防止領域50、50’の下方に所定の間隔で並んだ脚部56と、を備え、
前記侵入防止部80と前記スロープ部90とが接続する接続面(86、96)を双方に有するとともに、
前記接続面86、96の上辺86a、96aは、害獣侵入防止領域50、50’の側壁52間が下に凹んだアーチ状を呈することを特徴とする害獣侵入防止装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
)侵入防止部80とスロープ部90とがそれぞれ合成樹脂で一体的に成型されたことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の害獣侵入防止装置100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る害獣侵入防止装置は、アンカー等の固定部材を用いて路面に直接固定する。このため、路面を掘削する必要がなく敷設作業の簡素化と工事コストの削減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る害獣侵入防止装置の平面図及び側面図である。
図2】本発明を構成する侵入防止部の平面図、底面図、正面図である。
図3】本発明を構成する侵入防止部の側面図及び断面図である。
図4】本発明を構成する害獣侵入防止領域の他の例を示す図である。
図5】本発明を構成するスロープ部の平面図、底面図、背面図、正面図である。
図6】本発明を構成するスロープ部の左側面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る害獣侵入防止装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。ここで、図1(a)は本発明に係る害獣侵入防止装置100の平面図であり、図1(b)は側面図である。
【0011】
図1に示す本発明に係る害獣侵入防止装置100は、害獣侵入防止領域50を上面全体に有する侵入防止部80と、この侵入防止部80と接続し上面が外側に向けて斜め下方に傾斜したスロープ部90と、を有している。尚、本発明に係る害獣侵入防止装置100は基本的に侵入防止部80の前後(正面側及び背面側)にそれぞれスロープ部90を1つずつ接続するが、侵入防止部80の連結枚数に関しては特に制限はない。ただし、侵入防止部80の横(左右)方向への連結枚数は基本的に敷設する路面等の道幅に準ずる。また、侵入防止部80を前後方向に複数連結する場合には、連結した侵入防止部80の最も外側の正面及び背面にスロープ部90を設ける。
【0012】
次に、害獣侵入防止装置100を構成する侵入防止部80に関して説明する。ここで、図2(a)は本発明を構成する侵入防止部80の平面図であり、図2(b)は底面図であり、図2(c)は正面図である。また、図3(a)は侵入防止部80の側面図であり、図3(b)はX-X断面図であり、図3(c)はY-Y断面図である。尚、ここでは害獣侵入防止領域50の開口54の形状として上面視略正6角形のハニカム形状ものを例に説明を行うが、開口54の形状はハニカムに限定されるものではなく、図4(a)に示すように円形としても良いし、図4(b)に示すように三角形としても良い。また、図4(c)、図4(d)、図4(e)に示すような四角形としても良い他、その他いかなる形状としても良い。さらに、異なる複数形状の開口54を組み合わせても良い。これらのことは、後述のスロープ部90の害獣侵入防止領域50’の開口54に関しても同様である。尚、侵入防止部80の害獣侵入防止領域50の開口54とスロープ部90の害獣侵入防止領域50’の開口54とは基本的に同一の形状、寸法のものを用いることが好ましい。
【0013】
図2図3に示す侵入防止部80は、前述のように害獣侵入防止領域50を上面全体に有している。この害獣侵入防止領域50は図3(a)、(b)、(c)に示すように、底面に対して略垂直な所定の高さの側壁52が組み合わさって形成され、その上下は開口している。尚、側壁52の高さは例えば90mm~150mm程度である。また、侵入防止部80の側面に位置する特定の側壁52には、侵入防止部80をビス、ナット等の連結部材を用いて横方向に連結するための連結孔83を有している。
【0014】
また、害獣侵入防止領域50の下方には略角棒状の脚部56が設けられている。この脚部56は害獣侵入防止領域50の横方向(左右方向)に伸び、所定の間隔をとって前後方向に並べて設置される。尚、脚部56は下方の開口54を極力塞がないような位置に設けることが好ましい。また、特定の脚部56’には侵入防止部80をアンカー等の固定部材を用いて路面に固定するための固定孔85を有している。
【0015】
そして、これら脚部56の間の間隙56aによって害獣侵入防止領域50の下側の開口54は横方向にそれぞれ全て連通する。また、この間隙56aは侵入防止部80の側面下にも存在するため、横方向に連結した複数の侵入防止部80の下側の開口54は間隙56aを介して横方向にそれぞれ全て連通する。そして、この間隙56aは開口54内に落下した土砂やゴミ、落ち葉等を放水や雨水などによって左右方向に押し流し、側溝等に排出する機能を有する。
【0016】
また、侵入防止部80の正面及び背面にはスロープ部90と接続する接続面86を有している。そして、この接続面86の上辺86aは、図2(c)に示すように、害獣侵入防止領域50の側壁52の当接部位の間、即ち開口54に相当する部位が下に凹んだアーチ状を呈し、上辺86a全体として側壁52の当接部位が凸の略水面波形状を呈する。また、接続面86の所定の位置には侵入防止部80とスロープ部90とをビス、ナット等の連結部材を用いて連結するための連結孔88を有している。
【0017】
次に、害獣侵入防止装置100を構成するスロープ部90に関して説明する。ここで、図5(a)は本発明を構成するスロープ部90の平面図であり、図5(b)は底面図であり、図5(c)は背面図であり、図5(d)は正面図である。また、図6(a)はスロープ部90の左側面図であり、図6(b)はX-X断面図であり、図6(c)はY-Y断面図である。
【0018】
本発明を構成するスロープ部90は、侵入防止部80との接続側に位置する害獣侵入防止領域50’と、この害獣侵入防止領域50’の外側に位置するベース部92とを有している。そして、害獣侵入防止領域50’とベース部92の上面は侵入防止部80の接続側が高く外側が低くなるよう傾斜して形成され、全体として外側に向けて斜め下方に傾斜する。
【0019】
また、スロープ部90の害獣侵入防止領域50’と侵入防止部80の害獣侵入防止領域50とは前述のように基本的に同一の寸法形状で害獣侵入防止領域50と同様に底面に対して略垂直に設けられた側壁52によって構成され、上下が開口54となっている。ただし、害獣侵入防止領域50’の上面は侵入防止部80の害獣侵入防止領域50とは異なり、全体として斜め下方に傾斜しスロープ部90の上面の接続側を構成する。また、スロープ部90の側面に位置する特定の側壁52には、スロープ部90をビス、ナット等の連結部材を用いて横方向に連結するための連結孔93を有している。
【0020】
また、ベース部92は上面が害獣侵入防止領域50’と連続した傾斜面となっており、この傾斜面に滑止めパターン94が設けられている。尚、この滑止めパターン94は害獣侵入防止領域50’の開口54と略同一形状とすることが好ましい。この構成によれば、害獣に対し滑止めパターン94を開口54として誤認させる視覚的効果を付与することができる。また、ベース部92の所定の部位にはスロープ部90をアンカー等の固定部材を用いて路面に固定するための固定孔95を有している。
【0021】
また、スロープ部90の害獣侵入防止領域50’の下方には侵入防止部80と同様に横方向に伸び、前後方向に所定の間隔をとって並んだ略角棒状の脚部56を有している。そして、この脚部56の間の間隙56aによって害獣侵入防止領域50’の下側の開口54は横方向にそれぞれ全て連通する。また、横方向に連結した複数のスロープ部90の下側の開口54を横方向にそれぞれ全て連通させる。そして、この間隙56aは害獣侵入防止領域50’の開口54内に落下した土砂やゴミ、落ち葉等を放水や雨水などによって左右方向に押し流し、側溝等に排出する機能を有する。
【0022】
また、スロープ部90の背面、即ち侵入防止部80との接続側には接続面96が設けられる。そして、この接続面96の上辺96aは、侵入防止部80と同様に害獣侵入防止領域50’の側壁52の当接部位の間、即ち開口54に相当する部位が下に凹んだアーチ状を呈し、上辺96a全体として側壁52の当接部位が凸の略水面波形状を呈する。また、接続面96の侵入防止部80側の連結孔88と対応した位置には、スロープ部90と侵入防止部80とをビス、ナット等の連結部材を用いて連結するための連結孔98を有している。
【0023】
尚、侵入防止部80及びスロープ部90は、硬化後にある程度の剛性を有する周知の合成樹脂を用い、型枠等で一体的に成型して製造することが好ましい。この合成樹脂としては、例えば車両の外装品や土木・建築材料としても使用されるオレフィン系架橋タイプの熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
次に、害獣侵入防止装置100の敷設方法を説明する。先ず、路面の目的の領域に侵入防止部80を配列する。この際、路面を横切る方向を侵入防止部80の左右方向とし、路面の進行方向を侵入防止部80の前後方向とする。また、配列した侵入防止部80の最も外側に位置する前後の接続面86にスロープ部90の接続面96がそれぞれ当接するようにスロープ部90を配置する。
【0025】
次に、横方向に隣り合う侵入防止部80及びスロープ部90の連結孔83、93にビス、ナット等の連結部材を通し互いに連結する。次に、侵入防止部80とスロープ部90の接続面86、96に設けられた連結孔88、98にビス、ナット等の連結部材を通し互いに連結する。また、侵入防止部80が前後方向に複数配列される場合には、前後方向に隣り合う接続面86の連結孔88にビス、ナット等の連結部材を通し互いに連結する。これにより路面上に害獣侵入防止装置100が構築される。尚、接続面86、96の上辺86a、96aは害獣侵入防止領域50の開口54に相当する部位が下に凹んだアーチ状を呈しているため、これらを連結した接続部も上辺86a、96aと同様の形状を呈する。次に、アンカー等の固定部材を固定孔85、95を通して路面に打ち込み害獣侵入防止装置100を路面に固定する。これにより、害獣侵入防止装置100の路面への敷設が完了する。尚、上記の敷設方法の順序には特に限定はなく、順番を入れ替えて行っても良いし、並行して行っても良い。
【0026】
次に、害獣侵入防止装置100の機能を説明する。先ず、車両や人間は害獣侵入防止装置100のスロープ部90を登り、侵入防止部80を通過して逆側のスロープ部90から特に障害なく降りることができる。しかしながら、害獣(動物)は害獣侵入防止領域50、50’の開口54に足が入り込み移動の際の障害となる。また、害獣侵入防止装置100は接続面86、96の上辺86a、96aが略水面波形状を呈しているため、接続部も足場とはならず、害獣の移動の際の障害となる。これにより、害獣は害獣侵入防止装置100を渡ることに対し警戒感を抱き、害獣侵入防止装置100を忌避して横断を断念する。これにより、害獣侵入防止装置100の内側への侵入を防止することができる。
【0027】
以上のように、本発明に係る害獣侵入防止装置100は、路面を重機等で掘削することなく人力でも敷設が可能である。これにより、敷設作業の簡素化と工事コストの削減とを図ることができる。また、害獣侵入防止領域50、50’の開口54内に落下した土砂やゴミ、落ち葉等の異物を放水や雨水等の流下により脚部56間に形成される間隙56aを通して害獣侵入防止装置100の側方に排出することができる。これにより、開口54内の掃除が容易となり害獣侵入防止装置100に関するメンテナンス作業の負荷を軽減することができる。
【0028】
尚、本例で示した害獣侵入防止装置100は一例であり、害獣侵入防止装置100、侵入防止部80、スロープ部90、害獣侵入防止領域50、50’、その他の各部の寸法、角度、形状、デザイン等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
50、50’ 害獣侵入防止領域
52 側壁
54 開口
56 脚部
56a 間隙
80 侵入防止部
90 スロープ部
86、96 接続面
86a、96a 上辺
100 害獣侵入防止装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6