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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】物干し具
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/00 20060101AFI20220117BHJP
   D06F 57/12 20060101ALI20220117BHJP
   A47G 29/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
D06F57/00 390
D06F57/00 380
D06F57/12 P
A47G29/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018077595
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019180964
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591109212
【氏名又は名称】東和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】音綿 久功
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-099265(JP,A)
【文献】特開平09-215655(JP,A)
【文献】実開昭52-147530(JP,U)
【文献】特開2001-200829(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201448(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 57/00 - 57/12
A47G 29/00
A47F 7/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吊下物を吊り下げるための吊下部と、
前記吊下部に取り付けられた取付体および水平方向に延びる回転軸を中心に回転可能に前記取付体に連結されたホルダ本体を有する硬質合成樹脂からなるホルダと、
前記ホルダ本体の周面に外方に突出する態様で連結され、棚板を挟み込むクリップと、
前記ホルダ本体の前記周面に対して前記クリップとは周方向に異なる位置に外方に突出する態様で連結され、竿に引掛けることができるフックと、を備え、
前記ホルダは、前記フックが前記吊下部に対して上方に突出する位置と前記クリップが前記吊下部に対して上方に突出する位置との間で前記ホルダ本体の前記回転軸周りの回転が許容される回転許容状態と、前記フックが前記吊下部に対して上方に突出する位置および前記クリップが前記吊下部に対して上方に突出する位置とのそれぞれにおいて、少なくとも前記ホルダ本体の前記回転が阻止される回転阻止状態と、に切り替え可能に構成されている
物干し具。
【請求項2】
前記取付体と前記ホルダ本体のうちの一方は、突出方向に直交する断面において平行に対向する2つの辺を有する凸部を有し、
前記取付体と前記ホルダ本体のうちの他方は、前記凸部が挿入される挿入穴を有し、
前記挿入穴は、前記凸部の前記断面内において中心を通る線分のうち最も長い線分よりも大きな穴径を有するように形成されることにより、前記凸部との間の相対回転を許容する回転許容穴部と、前記回転許容穴部に連通し、前記凸部の前記断面において平行に対向する前記2つの辺を挟持するように形成されることにより、前記凸部との間の相対回転を阻止する係止穴部と、を有する
請求項1に記載の物干し具。
【請求項3】
前記吊下部は、水平方向に離れて平行に配置された少なくとも2つの竿部を有し、
前記フックは、前記ホルダ本体の前記回転軸に対して前記クリップとは反対側の前記周面に配置され、
前記凸部の前記断面は、正方形形状を有する
請求項2に記載の物干し具。
【請求項4】
前記取付体は、前記凸部を有し、
前記ホルダ本体は、前記挿入穴を有し、
前記係止穴部は、前記クリップと前記フックのうち少なくとも一方が前記吊下部に対して上方に突出した状態において前記回転許容穴部の下側に配置されている
請求項2又は3に記載の物干し具。
【請求項5】
前記クリップは、前記ホルダ本体の前記回転軸と直交する直交回転軸を中心に回転可能に前記ホルダ本体に連結されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の物干し具。
【請求項6】
前記クリップは、前記ホルダ本体に連結される連結部と、前記連結部に取り付けられ、前記連結部と対向する対向面との間で前記棚板を挟み込む挟持力を付与する板状のクリップ本体と、前記クリップ本体の前記対向面に貼り付けた柔軟性を有するシート体と、を有し、
前記シート体の幅は、前記クリップ本体の前記対向面の幅よりも広い
請求項1~5のいずれか1項に記載の物干し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り戸棚や桟などに吊り下げ可能な物干し具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、布巾や手袋などを干すために、高所に吊り下げ可能な物干し具が用いられている。例えば、台所においては、台所の吊り戸棚の棚板に取り付けることができる特許文献1に記載のような物干し具が知られている。
【0003】
特許文献1の物干し具は、図14に示すように、垂直方向に延びる軸体201と、軸体201に回転自在に連結された複数の掛け棹202と、軸体201における掛け棹202の上方の位置で軸体201とねじ結合する断面コ字状のクランプ203と、軸体201の上端に取り付けられた押え板204と、を有する。
【0004】
この物干し具は、クランプ203の上板205と押え板204との間に棚板300を差し込み、この状態で、軸体201を回転させて軸体201をクランプ203に対して上方に移動させ、押え板204と上板205との間に棚板300を挟持させることにより、棚板300に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-23960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような物干し具は、吊り戸棚の棚板にしか取り付けることができないため、汎用性に乏しく、需要者にとって不満の残るものである。例えば、吊り戸棚の棚板の下側に照明器具が設置されている場合には、照明器具の存在によって棚板の近傍に設置スペースが十分になかったり、そもそもキッチンに吊り戸棚がなかったりする場合には、物干し具を取り付けることができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に基づいてなされたものであり、その目的は、広範な対象物に吊り下げ可能な物干し具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る物干し具は、被吊下物を吊り下げるための吊下部と、前記吊下部に取り付けられた取付体および水平方向に延びる回転軸を中心に回転可能に前記取付体に連結されたホルダ本体を有する硬質合成樹脂からなるホルダと、前記ホルダ本体の周面に外方に突出する態様で連結され、棚板を挟み込むクリップと、前記ホルダ本体の前記周面に対して前記クリップとは周方向に異なる位置に外方に突出する態様で連結され、竿に引掛けることができるフックと、を備える。前記ホルダは、前記フックが前記吊下部に対して上方に突出する位置と前記クリップが前記吊下部に対して上方に突出する位置との間で前記ホルダ本体の前記回転軸周りの回転が許容される回転許容状態と、前記フックが前記吊下部に対して上方に突出する位置および前記クリップが前記吊下部に対して上方に突出する位置とのそれぞれにおいて、少なくとも前記ホルダ本体の前記回転が阻止される回転阻止状態と、に切り替え可能に構成されている。
【0009】
この構成によれば、ホルダ本体は、フックが吊下部に対して上方に突出する位置とクリップが吊下部に対して上方に突出する位置との間でホルダ本体の回転軸周りの回転が許容される回転許容状態と、フックが吊下部に対して上方に突出する位置およびクリップが吊下部に対して上方に突出する位置とのそれぞれにおいて、少なくともホルダ本体の回転が阻止される回転阻止状態と、に切り替え可能に構成されている。そのため、作業者は、回転阻止状態から回転許容状態に切り替えてホルダ本体を回転させることにより、状況に応じてフックとクリップを切換えることができる。すなわち、フックを吊下部に対して上方に突出させた場合には、竿にフックを引掛けて物干し具を吊り下げることができる。一方、クリップを吊下部に対して上方に突出させた場合には、棚板をクリップで挟み込んで物干し具を吊り下げることができる。したがって、作業者は、広範な対象物に物干し具を吊り下げることができる。さらに、作業者は、ホルダ本体を回転許容状態から回転阻止状態に切り替えることにより、吊下部をホルダ本体に対して固定することができ、ひいては、クリップ又はフックを吊下部に対して安定した状態で固定することができる。さらに、ホルダは、硬質合成樹脂からなるので、ホルダ本体が取付体に対して回転することによる摩耗が軽減され、耐久性が向上する。
【0010】
上記構成において、前記取付体と前記ホルダ本体のうちの一方は、突出方向に直交する断面において平行に対向する2つの辺を有する凸部を有してもよい。前記取付体と前記ホルダ本体のうちの他方は、前記凸部が挿入される挿入穴を有してもよい。前記挿入穴は、前記凸部の前記断面内において中心を通る線分のうち最も長い線分よりも大きな穴径を有するように形成されることにより、前記凸部との間の相対回転を許容する回転許容穴部と、前記回転許容穴部に連通し、前記凸部の前記断面において平行に対向する前記2つの辺を挟持するように形成されることにより、前記凸部との間の相対回転を阻止する係止穴部と、を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、挿入穴は、凸部の断面内において中心を通る線分のうち最も長い線分よりも大きな穴径を有するように形成されることにより、凸部との間の相対回転を許容する回転許容穴部を有するので、凸部が回転許容穴部に位置した状態では、ホルダ本体の回転が許容される。さらに、回転許容穴部に連通し、凸部の断面において平行に対向する2つの辺を挟持するように形成されることにより、凸部との間の相対回転を阻止する係止穴部を有するので、凸部が係止穴部に位置した状態では、凸部は、係止穴部よって両側から挟み込まれるように押圧される。そのため、凸部は、係止穴部に位置した状態では、係止穴部よって強固に把持されることによってホルダ本体の回転が阻止される。また、このように、簡単な構成で、ホルダ本体が作業者の意図に反して回転阻止状態から回転許容状態に切り換わってしまうことを防ぐことができる。さらに、回転許容穴部と係止穴部とは連通しているので、凸部を挿入穴に挿入した状態で凸部を回転許容穴部と係止穴部との間を移動させることができる。そのため、回転許容状態と回転阻止状態とを切り換える切り換え操作が簡単である。
【0012】
上記構成において、前記吊下部は、水平方向に離れて平行に配置された少なくとも2つの竿部を有してもよい。前記フックは、前記ホルダ本体の前記回転軸に対して前記クリップとは反対側の前記周面に配置されてもよい。前記凸部の前記断面は、正方形形状を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、フックは、ホルダ本体の回転軸に対してクリップとは反対側の周面に配置されているので、フックとクリップとは同一平面内に位置している。そのため、作業者は、例えば、クリップが吊下部に対して上方に突出した位置からホルダ本体を90度回転させてクリップおよびフックを吊下部に対して倒伏させることにより、2つの竿部が位置する平面内にフックとクリップを位置させることができ、この倒伏状態では、物干し具の嵩が抑えられてコンパクトになる。さらに、凸部の断面は、正方形形状を有しているので、クリップおよびフックが吊下部に対して倒伏した倒伏状態でも、凸部は回転許容穴部から係止穴部に移動することができる。そのため、物干し具は、クリップおよびフックが吊下部に対して倒伏した倒伏状態でホルダ本体の回転軸周りの回転を阻止することができるので、包装、梱包、運搬や保管に有利になる。
【0014】
上記構成において、前記取付体は、前記凸部を有してもよい。前記ホルダ本体は、前記挿入穴を有してもよい。前記係止穴部は、前記クリップと前記フックのうち少なくとも一方が前記吊下部に対して上方に突出した状態において前記回転許容穴部の下側に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、係止穴部は、クリップとフックのうち少なくとも一方が吊下部に対して上方に突出した状態において回転許容穴部の下側に配置されているので、係止穴部に位置する凸部に、例えば、被吊下物の重量による下向きの力が吊下部を介して凸部に作用しても、凸部が係止穴部から回転許容穴部に移動することはない。そのため、作業者の意図に反して、回転阻止状態から回転許容状態に切り換わってしまうことが防止される。
【0016】
上記構成において、前記クリップは、前記ホルダ本体の前記回転軸と直交する直交回転軸を中心に回転可能に前記ホルダ本体に連結されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、クリップをホルダ本体に対して直交回転軸を中心に回転させることができるので、クリップの吊下部に対する向きを変えることができる。そのため、棚板をクリップで挟み込む際に、棚板に対する吊下部の位置を変えることができ、棚板の近傍のスペースが狭い場合であっても、そのスペースに物干し具を設置しやすくなる。
【0018】
上記構成において、前記クリップは、前記ホルダ本体に連結される連結部と、前記連結部に取り付けられ、前記連結部と対向する対向面との間で前記棚板を挟み込む挟持力を付与するクリップ本体と、前記クリップ本体の前記対向面に貼り付けた柔軟性を有するシート体と、を有してもよい。前記シート体の幅は、前記クリップ本体の前記対向面の幅よりも広くてもよい。
【0019】
この構成によれば、シート体の幅は、クリップ本体の対向面の幅よりも広いので、棚板をクリップで挟み込む際に、クリップ本体の幅方向のエッジ部分で棚板を傷つけてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、広範な対象物に吊り下げ可能な物干し具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る物干し具の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る物干し具の一部分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る物干し具の取付体を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る物干し具の取付体の凸部がホルダ本体の挿入穴に挿入された状態を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る物干し具のホルダ本体の平面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る物干し具の連結部の底面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る物干し具のクリップ本体の連結部への固定方法を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る物干し具のクリップ本体の連結部に固定された状態を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る物干し具のクリップのシート体の貼付状態を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る物干し具のホルダ本体を図4の状態から回転軸を中心に90度回転させた状態を示す図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る物干し具のクリップを、直交回転軸を中心に図1の状態から90度回転させた状態を示す図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る物干し具の変形例を示す図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る物干し具の取付体とホルダ本体との間の分解斜視図である。
図14】従来の物干し具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態の物干し具1について図面を参照しながら説明する。物干し具1は、図1に示すように、吊下部2と、ホルダ3と、クリップ4と、フック5と、を備え、例えば、布巾や手袋などを干すために用いられる。
【0023】
吊下部2は、矩形枠状に形成されており、布巾や台所用手袋などの被吊下物を吊り下げるためのものである。具体的には、吊下部2は、2本の平行に延びるアルミ製の第1竿部6と、第1竿部6に対して直角に延びる2本のアルミ製の第2竿部7と、第1竿部6と第2竿部7とを連結する樹脂製のL字ジョイント8と、第1及び第2竿部6、7に吊り下げられた複数のピンチ9と、を有する。
【0024】
第1竿部6は、第2竿部7よりも長い筒状に形成されており、互いに水平方向に離れて平行に配置されている。第2竿部7は、第1竿部6よりも短い筒状に形成されており、互いに水平方向に離れて平行に配置されている。第2竿部7は、2つの第1竿部6の端部同士を連結するように配置されている。第1及び第2竿部6、7は、同一平面内に位置している。第1竿部6は、本発明の竿部である。尚、第1及び第2竿部6、7の素材は、アルミに限定されることはない。第1竿部6と第2竿部7は、例えば、ステンレス、スチール等の他の金属部材で形成されても良く、あるいは、金属部材以外の他の素材、例えば、木材や、ポリプロピレン、硬質ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂などの硬質合成樹脂で形成されてもよい。
【0025】
L字ジョイント8は、両端部に第1及び第2竿部6、7の端部が挿入される挿通穴を有する筒材が直角に屈曲されたような略L字状形状を有する。一方の挿通穴には、第1竿部6の端部が挿嵌され、他方の挿通穴には、第2竿部7の端部が挿嵌されている。第1竿部6と第2竿部7とは、同一平面内に位置している。
【0026】
ホルダ3は、図1、2に示すように、2本の第1竿部6の中央部にそれぞれ取り付けられた取付体13と、水平方向に延びる回転軸14cを中心に回転可能に取付体13に連結されるホルダ本体14と、を有し、2本の第1竿部6の中央部を架け渡すように配置されている。ホルダ3は、クリップ4とフック5とを保持するものであり、ホルダ3の周面には、クリップ4が外方に突出する態様で連結され、フック5が回転軸14cに対してクリップ4とは反対側において外方に突出する態様で連結され、これにより、クリップ4とフック5とが略同一平面内(図1では垂直平面内)に配置可能に構成されている。取付体13とホルダ本体14は、ポリプロピレン、硬質ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂などの硬質合成樹脂からなる。
【0027】
以下、説明の便宜上、各図面において、クリップ4の突出方向を上方、フック5の突出方向を下方、回転軸14cが延びる方向を左右方向(第1方向)、上下方向および左右方向に直交する方向を前後方向(第2方向)として説明するものの(図10を除く)、あくまで相互の相対的な位置を示すものである。尚、図10では、クリップ4とフック5の突出方向を左右方向として説明する。
【0028】
取付体13は、筒状に形成された竿取付筒部15と、竿取付筒部15の外周面に形成された設置部16と、設置部16に形成された凸部17と、を有する。竿取付筒部15は、第1竿部6が挿嵌されることによって第1竿部6に取り付けられている。設置部16は、左右方向の内側(回転軸14cの軸方向の内側)に向かって突出し、その突出した先端面は、回転軸14cに垂直な平面16aを構成している。凸部17は、設置部16の平面16aの中央部から左右方向の内側に向かって突出している。凸部17は、図3に示すように、突出方向に直交する断面において全体で略正方形断面を形成している。具体的には、凸部17は、回転軸14cを挟むように間隔を空けて配置された2つの平行に対向する直方体状の突出片18、18を有している。尚、凸部17の略正方形断面には、厳密な正方形の他4つの角部を面取りしたような断面を含む。
【0029】
ホルダ本体14は、図1、2に示すように、回転軸14cを中心に回転可能に取付体13の凸部17に連結される水平軸部19と、水平軸部19から回転軸14cと直交する方向(図1、2では下方)に突出する筒状の被挿入筒部20と、を有する。
【0030】
水平軸部19は、回転軸14cの軸方向に長い略直方体形状を有し、内部を短手方向(図2では前後方向)に貫通するように肉盗み部が形成されることによって枠型に形成されている。具体的には、水平軸部19は、中央部に被挿入筒部20が立設された矩形板状のフック取付壁49と、フック取付壁49の回転軸14cの軸方向の両端縁からクリップ4の突出方向(図2では上方)に延びる起立壁50と、起立壁50のクリップ4の突出方向の縁(図2では上端縁)を繋ぐクリップ取付壁22と、を備え、起立壁50が軸受となって回転軸14cを中心に回転可能に取付体13の凸部17に取り付けられている。
【0031】
クリップ取付壁22は、起立壁50の上端縁からフック取付壁49と平行に対向する天面壁部22aと、天面壁部22aから凹むように形成されたクリップ収納部21と、を有する。
【0032】
クリップ収納部21は、図2に示すように、上方及び前後方向に開放された板状体からなり、クリップ4の一部を収納する凹空間を形成している。具体的には、クリップ収納部21は、クリップ4の一部が載置される矩形板状の載置壁部21aと、載置壁部21aの軸方向の両縁から立ち上がる立設壁部21bと、を有する。載置壁部21aは、中央部を貫通する円形のクリップ挿通孔21cを有する。載置壁部21aの左右方向の両縁は、載置壁部21aの中心を中心とした円弧を描くように円弧状に形成されている。立設壁部21bの内面は、載置壁部21aの左右方向の両縁に沿う平面視で円弧状に形成されている。
【0033】
起立壁50は、その中央部を回転軸14cの軸方向(図2では左右方向)に貫通する挿入穴23を有する。起立壁50の外面22bは、取付体13の平面16aと平行な平面に形成され、水平軸部19が取付体13の凸部17に取り付けられた状態で、取付体13の設置部16の平面16aと面接触した状態になっている。尚、水平軸部19は、本実施形態のような肉盗みを有する枠状ではなく、中実に形成されていてもよい。
【0034】
挿入穴23は、図1、2、4に示すように、取付体13の凸部17が挿入されている。挿入穴23は、クリップ4とフック5の突出方向(図1、2、4では上下方向)に長い略矩形状に形成されている。具体的には、挿入穴23は、中央部分に大きく形成された回転許容穴部24と、回転許容穴部24の上下方向に連通するように形成され、回転許容穴部24よりも小さい2つの係止穴部25と、を有する。
【0035】
回転許容穴部24は、凸部17の略正方形断面における頂点bを結ぶ対角線cが回転軸14cを中心に回転したときの頂点が描く軌跡によって形成される円環dよりも大きな穴径を有するように形成されている。これにより、凸部17が回転許容穴部24に位置した状態では、凸部17と回転許容穴部24との間の相対回転が許容される。
【0036】
係止穴部25は、回転許容穴部24の上下方向に設けられ、回転許容穴部24に連通することにより、取付体13の凸部17が挿入穴23に挿入された状態で回転許容穴部24と係止穴部25との間を移動可能になっている。係止穴部25は、左右の幅が凸部17の突出方向に直交する断面における1辺の幅ないしはそれより若干狭く形成されることにより、2の突出片18、18の平行に対向する対向面のうち外側において対向する対向面18a、18aを挟持するように形成されている。これにより、係止穴部25は、凸部17との間の相対回転を阻止するものとなされている。係止穴部25の上下方向の長さは、凸部17の上下方向の長さよりも小さくなっている。これにより、凸部17は、係止穴部25に位置した状態では、その一部が係止穴部25からはみ出た状態になり(図4の破線)、凸部17と係止穴部25との接触部分を小さくして、凸部17が回転許容穴部24と係止穴部25との間で移動する際の摩擦を軽減している。尚、水平軸部19が中実に形成される場合には、挿入穴23は、凹部のような有底の穴であってもよい。
【0037】
被挿入筒部20は、図2、5に示すように、フック取付壁49の長手方向中央部から下方に突出して形成された筒形状に構成されている。被挿入筒部20は、本実施例では、円筒状を呈し、内部空間がクリップ収納部21における載置壁部21aのクリップ挿通孔21cに連通している。具体的には、被挿入筒部20は、筒本体20aと筒本体20aの下端から径方向内側に延びる当接フランジ部20bを有し、後述する連結部29の挿入筒部33が挿入されて、その先端面が当接フランジ部20bの上面に突き当たるように設定されている。
【0038】
被挿入筒部20の周壁には、図5に示すように、内側に僅かに隆起する隆起部28が形成されている。隆起部28は、被挿入筒部20の軸方向に長い矩形状に形成され、当接フランジ部20bと隣接する位置から水平軸部19のフック取付壁49近傍まで連続している。隆起部28は、被挿入筒部20の周壁において対向するように2つ設けられている。隆起部28の周方向の両側には、被挿入筒部20の周壁を貫通する貫通孔27、27が形成されている(図2参照)。貫通孔27、27は、隆起部28の周方向の両側に沿って被挿入筒部20の軸方向に延びるように形成されている。これにより、被挿入筒部20の周壁における隆起部28の位置は、弾性変形しやすくなっている。
【0039】
クリップ4は、図1に示すように、ホルダ本体14の周面に外方に突出する態様で連結され、吊り戸棚の棚板100を挟み込むものである。クリップ4は、図2に示すように、ホルダ本体14に連結される硬質合成樹脂性の連結部29と、連結部29に固定される金属製のクリップ本体30と、クリップ本体30に装着される柔軟性を有する透明なシート体31と、を有する。
【0040】
連結部29は、ホルダ本体14における水平軸部19のクリップ収納部21に収納される略直方体状のクリップ固定部32と、クリップ固定部32から回転軸14cと直交する方向(図2では下方)に突出した円筒状の挿入筒部33と、を有し、全体で略T字状に形成されている。
【0041】
クリップ固定部32は、水平軸部19のクリップ収納部21に収納可能な大きさに形成されている。クリップ固定部32は、図2、6に示すように、下方に開放した中空状に形成されている。クリップ固定部32は、開放側とは反対側の天壁部32bと、天壁部32bの長手方向(図2では左右方向)の両縁から下方に延びる一対の短手側壁部32c、32cと、天壁部32bの短手方向の両縁から下方に延びる一対の長手側壁部32d、32dと、を有する。
【0042】
一対の短手側壁部32c、32cは、ホルダ本体14の水平軸部19におけるクリップ収納部21の立設壁部21bに沿った曲面となっている。一方の短手側壁部32cの一部は、天壁部32bから下方に向かって切り欠かれ、この切り欠きの下方にクリップ本体30の一部をクリップ固定部32内に挿入するための本体挿入孔36が長手方向に沿って形成されている。尚、この本体挿入孔36は、本実施形態では、図6~8に示すように、一部が下方に開放され、この下方開放部分に対応して、クリップ本体30をクリップ固定部32に固定するためのねじ穴35が形成されている。また、天壁部32bの中央部には、断面矩形状の孔58が上下方向に形成されている。
【0043】
挿入筒部33は、クリップ固定部32の開放側の中央部から下方に向かって突出するように形成されている。挿入筒部33の外周面には、ホルダ本体14の被挿入筒部20の隆起部28が嵌り込む凹溝37が形成されている。凹溝37は、挿入筒部33の外周面から僅かに凹む挿入筒部33の軸方向に長い略矩形状に形成されており、挿入筒部33が被挿入筒部20に挿入された状態において、被挿入筒部20の隆起部28が挿入筒部33の凹溝37に嵌まり込んでいる。これにより、挿入筒部33は、ホルダ本体14の被挿入筒部20に挿入された状態において、一定以上の円周方向の力が作用すると、図2に示すように、回転軸14cと直交する直交回転軸29cを中心に回転するように構成されている。そのため、作業者は、連結部29をホルダ本体14に対して直交回転軸29cを中心に回転させるときにクリック感を得ることができる。凹溝37は、挿入筒部33の外周面において円周方向に一定の間隔を空けて4つ設けられている。
【0044】
挿入筒部33の突出端の内側の下部には、図6、7に示すように、上方に延びる円錐筒状のボス部38が形成されている。ボス部38の周壁の内面は、上方に向かって内径が徐々に小さくなるテーパ面となっている。ボス部38の周壁には、上方に延びる切り込み39が形成されている。これにより、ボス部38は、径方向の外側に弾性変形しやすくなっている。切り込み39は、ボス部38の円周方向に一定の間隔を空けて例えば3つ設けられている。
【0045】
クリップ本体30は、図2に示すように、細長い略矩形状の金属板材を屈曲させて断面略コ字状に形成したものである。具体的には、クリップ本体30は、クリップ固定部32に固定される固定部40と、固定部40の一端縁から立ち上がる立上げ部41と、立上げ部41の上端縁から屈曲して固定部40と略平行に延びる挟持部42と、を有する。
【0046】
固定部40は、矩形板状に形成され、クリップ固定部32に固定するためのねじ43が差し込まれる貫通孔40aを有する。立上げ部41は、固定部40よりも長手方向の長さが短い矩形板状に形成されている。挟持部42は、固定部40よりも長手方向の長さが長い矩形板状に形成され、立上げ部41の上端縁から鋭角に屈曲している。挟持部42の先端側は、固定部40とは反対方向に僅かに屈曲し、先端縁は円弧状に形成されている。
【0047】
シート体31は、図8、9に示すように、挟持部42における固定部40と対向する側の面の全体に亘って張り付けられている。シート体31の幅は、挟持部42の幅よりも若干広くなっている。例えば、シート体31の幅は、挟持部42の幅よりも1~3mm程広くすることができる。シート体31は、柔軟性を有する樹脂やゴムから形成することができる。シート体31の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ポリエステルが用いられている。尚、図8において、ホルダ本体14の水平軸部19は省略されている。
【0048】
上記のように構成されたクリップ4は、次のようにして組み立てられる。まず、図7、8に示すように、作業者は、クリップ固定部32の他方の短手側壁部32c側の本体挿入孔36を通して固定部40をクリップ固定部32内に挿入し、立上げ部41をクリップ固定部32の他方の短手側壁部32cに近接させる。この状態で、ねじ43を貫通孔40aとねじ穴35に差し込んで固定部40をクリップ固定部32に固定する。これにより、挟持部42は、クリップ固定部32の天壁部32bと対向した状態となり、天壁部32bとの間で棚板100を挟み込む挟持力を付与するように構成される。尚、連結部29は、ホルダ本体14と一体に形成されることによって省略されてもよい。この場合、クリップ本体30の固定部40が、直交回転軸29cを中心に回転可能にホルダ本体14に連結される。
【0049】
次に、フック5について説明する。フック5は、図1、2に示すように、ホルダ本体14の回転軸14cに対してクリップ4とは反対側の周面に外方に突出する態様で上下方向(直交回転軸29c)周りに回転可能に連結され、竿に引掛けて物干し具1を吊り下げるものである。フック5は、硬質合成樹脂で形成されている。フック5は、竿に引掛けることができる略U字状のフック部44と、フック部44の基端に形成され、フック部44をホルダ本体14の被挿入筒部20に取り付けるための取付部45と、を有する。
【0050】
取付部45は、フック部44の基端に形成された円形の当接部46と、当接部46からフック部44とは反対方向に延びる円柱部47と、円柱部47の突出端に形成され、円柱部47に対して拡径する係止部48と、を有する。当接部46は、ホルダ本体14の被挿入筒部20の当接フランジ部20bの内径よりも僅かに大きい直径を有する。円柱部47は、クリップ4の挿入筒部33のボス部38の最も小さい内径よりも僅かに小さい直径を有する。係止部48は、クリップ4の挿入筒部33のボス部38の最も小さい内径よりも僅かに大きな直径を有し、円柱部47から当接部46とは反対方向に向かって徐々に径が小さくなる円形断面を有する。
【0051】
上記のように構成されたクリップ4とフック5は、次のようにして、ホルダ本体14に取り付けられる。まず、図2の矢印に示すように、クリップ4の挿入筒部33をホルダ本体14の被挿入筒部20に挿入して、クリップ固定部32をホルダ本体14における水平軸部19のクリップ収納部21に設置する。この状態では、被挿入筒部20の隆起部28が挿入筒部33の凹溝37に嵌り込むとともに、挿入筒部33が回転軸14cと直交する直交回転軸29cを中心に回転可能な状態となる。次いで、フック5の取付部45をホルダ本体14の被挿入筒部20の突出側から被挿入筒部20内に挿入して、取付部45の係止部48をクリップ4の挿入筒部33のボス部38に当接させる。この状態で、フック5をボス部38に対して押し込むことにより、ボス部38を弾性変形させて係止部48をボス部38の内側を通過させる。係止部48がボス部38の内側を通過すると、図8に示すように、ボス部38の最も小さい内径寸法よりも小さい直径の円柱部47がボス部38の内側に位置した状態となり、ボス部38が元の形状に戻る。このとき、フック5の当接部46がホルダ本体14の被挿入筒部20の当接フランジ部20bに当接した状態となる。これにより、クリップ4における連結部29の挿入筒部33がホルダ本体14の被挿入筒部20から抜け止めされるとともに、係止部48は、ボス部38の内側を通過できなくなるので、フック5がホルダ本体14の被挿入筒部20から抜け止めされる。
【0052】
次に、上記のように構成された物干し具1の使用方法について説明する。まず、キッチンに吊り戸棚の棚板100が設置されている場合について説明する。
【0053】
まず、作業者は、図10に示すように、取付体13の凸部17をホルダ本体14の挿入穴23の回転許容穴部24に位置させて、ホルダ本体14の回転軸14cを中心とする回転を許容する回転許容状態にする。この状態で、作業者は、ホルダ本体14を、回転軸14cを中心に回転させて、図1に示すように、クリップ4を吊下部2に対して上方に突出させる。このとき、挿入穴23の係止穴部25は、図4に示すように、回転許容穴部24の上下方向の両側に配置された状態になる。次に、作業者は、ホルダ本体14を上方に押し上げて凸部17を回転許容穴部24から係止穴部25に移動させる(図4の破線)。これにより、凸部17の突出片18、18は、係止穴部25の内面25a、25aによって押圧された状態となり、凸部17と係止穴部25との間の相対回転が阻止される。その結果、回転許容状態から、ホルダ本体14の回転軸14cを中心とする回転が阻止される回転阻止状態に切り換わる。次いで、クリップ4の挟持部42と連結部29の天壁部32bとの間で棚板100を挟み込む。これにより、物干し具が棚板100に吊り下げられる。最後に、作業者は、布巾や手袋などの被吊下物をピンチ9に挟み込む。
【0054】
また、例えば、吊り戸棚の棚板100の下側に設置された照明器具の存在により、棚板100の近傍に物干し具1を設置するスペースが十分にない場合には、クリップ4を吊下部2に対して上方に突出させてホルダ本体14を上記回転阻止状態に切り換えた状態において、図11に示すように、クリップ4を直交回転軸29cを中心に90度回転させて棚板100をクリップ4で挟み込むようにしてもよい。
【0055】
一方、キッチンに吊り戸棚が設置されておらず、水平方向に延びる竿(図示省略)が設置されている場合には、フック5を竿に引掛けることにより、物干し具1を竿に吊り下げてもよい。この場合、作業者は、まず、ホルダ本体14を回転許容状態にして回転軸14cを中心にホルダ本体14を回転させてフック5を吊下部2に対して上方に突出させる。その後の操作は、上記と同様の方法で、ホルダ本体14を回転阻止状態にする。この状態で、作業者は、フック5を竿に引掛けて布巾や手袋などの被吊下物をピンチ9に挟み込む。
【0056】
次に、物干し具1を収納する場合について説明する。まず、作業者は、ピンチ9に吊り下げられている被吊下物をピンチ9から取り外すとともに、クリップ4を棚板100から取り外す。次いで、作業者は、ホルダ本体14を押し下げて取付体13の凸部17を挿入穴23の係止穴部25から回転許容穴部24に移動させる(図4参照)。これにより、凸部17と回転許容穴部24との間で相対回転が許容され、上記回転阻止状態から上記回転許容状態に切り換わる。次に、作業者は、ホルダ本体14を、回転軸14cを中心に90度回転させる。このとき、係止穴部25は、図10に示すように、回転許容穴部24における第1竿部6の延びる方向の両側(図10では左右方向の両側)に位置している。最後に、作業者は、ホルダ本体14を左右方向に移動させて、凸部17を回転許容穴部24から係止穴部25に移動させる(図10の破線)。これにより、凸部17と係止穴部25との間で相対回転が阻止され、上記回転許容状態から上記回転阻止状態に切り換えられるとともに、クリップ4とフック5とが第1及び第2竿部6、7を通る同一平面内に位置される。この状態で、作業者は、物干し具1を収納スペースに収納する。
【0057】
上記物干し具1によれば、ホルダ本体14は、フック5が吊下部2に対して上方に突出する位置とクリップ4が吊下部2に対して上方に突出する位置との間でホルダ本体14の回転軸14c周りの回転が許容される回転許容状態と、フック5が吊下部2に対して上方に突出する位置とクリップ4が吊下部2に対して上方に突出する位置とにおいて、ホルダ本体14の回転軸14c周りの回転が阻止される回転阻止状態と、に切り替え可能に構成されている。そのため、作業者は、回転阻止状態から回転許容状態に切り替えてホルダ本体14を回転軸14c周りに回転させることにより、フック5を吊下部2に対して上方に突出させた場合には、竿にフック5を引掛けて物干し具を吊り下げることができる。一方、クリップ4を吊下部2に対して上方に突出させた場合には、棚板100をクリップ4で挟み込んで物干し具1を吊り下げることができる。したがって、作業者は、広範な対象物に物干し具を吊り下げることができる。さらに、作業者は、ホルダ本体を回転許容状態から回転阻止状態に切り替えることにより、吊下部2をホルダ本体14に対して固定することができ、ひいては、クリップ4又はフック5を吊下部2に対して安定した状態で固定することができる。さらに、ホルダ3は、硬質合成樹脂からなるので、ホルダ本体14が取付体13に対して回転することによる摩耗が軽減され、耐久性が向上する。
【0058】
上記物干し具1によれば、挿入穴23の回転許容穴部24と係止穴部25とは連通しているので、凸部17を挿入穴23に挿入した状態で凸部17を回転許容穴部24と係止穴部25との間を移動させることができる。そのため、回転許容状態と回転阻止状態とを切り換える切り換え操作が簡単である。
【0059】
上記物干し具1によれば、凸部17は、2つの平行に対向する突出片18、18を有するので、対向する方向に弾性変形しやすくなっている。そのため、凸部17が回転許容穴部24から係止穴部25に移動するときに、2つの突出片18、18の対向面のうち外側において対向する対向面18a、18aが両側から押圧されるように挟持されることで容易に弾性変形して回転許容穴部24から係止穴部25に移動しやすくなっている。そのため、作業者は、ホルダ本体14を回転許容状態から回転阻止状態に容易に切り換えることができる。
【0060】
上記物干し具1によれば、凸部17は、略正方形断面を有するように形成され、係止穴部25は、凸部17が係止穴部25に位置した状態において、2つの突出片18、18が平行に対向する対向面のうち外側において平行に対向する2つの対向面18a、18aを挟持するように形成されている(図4の破線)。そのため、凸部17は、係止穴部25に位置した状態では、係止穴部25よって両側から挟み込まれるように押圧されるので、係止穴部25よって強固に把持される。そのため、簡単な構成で、ホルダ本体14が作業者の意図に反して回転阻止状態から回転許容状態に切り換わってしまうことを防ぐことができる。
【0061】
上記物干し具1によれば、フック5は、ホルダ本体14の回転軸14cに対してクリップ4とは反対側の周面に配置されているので、フック5とクリップ4とは同一平面内に位置している。そのため、作業者は、クリップ4が吊下部2に対して上方に突出した位置からホルダ本体14を、回転軸14cを中心に90度回転させてクリップ4およびフック5を吊下部2に対して倒伏させることにより、第1及び第2竿部6、7が位置する平面内にフック5とクリップ4を位置させることができ、この倒伏状態では物干し具1の嵩が抑えられてコンパクトになる。さらに、凸部17の断面は、正方形形状を有しているので、図10に示すように、クリップ4およびフック5が吊下部2に対して倒伏した倒伏状態でも、凸部17は回転許容穴部24から係止穴部25に移動することができる。そのため、上記物干し具1は、クリップ4およびフック5が吊下部2に対して倒伏した倒伏状態でホルダ本体14の回転軸14cを中心とする回転を阻止することができるので、包装、梱包、運搬や保管に有利になる。
【0062】
上記物干し具1によれば、係止穴部25は、クリップ4とフック5が吊下部2に対して上方に突出した状態において回転許容穴部24の下側に配置されているので、係止穴部25に位置する凸部17に、例えば、被吊下物の重量による下向きの力が吊下部2を介して凸部17に作用しても、凸部17が係止穴部25から回転許容穴部24に移動することはない。そのため、作業者の意図に反して、ホルダ本体14が回転阻止状態から回転許容状態に切り換わってしまうことが防止される。
【0063】
上記物干し具1によれば、クリップ4は、ホルダ本体14の回転軸14cと直交する直交回転軸29cを中心に回転可能にホルダ本体14に連結されているので、クリップ4をホルダ本体14に対して直交回転軸29cを中心に回転させることにより、クリップ4の第1及び第2竿部6、7に対する向きを変えることができる。そのため、棚板100をクリップ4で挟み込む際に、棚板100に対する吊下部2の位置を変えることができ、棚板100の近傍のスペースが狭い場合であっても、そのスペースに物干し具1を設置しやすくなる。
【0064】
上記物干し具1によれば、クリップ4のシート体31の幅寸法は、クリップ本体30の挟持部42の幅寸法よりも長いので、棚板100をクリップ4で挟み込む際に、挟持部42のエッジ部分で棚板100を傷つけてしまうことを防止することができる。
【0065】
以上に説明した物干し具1は、本発明の一実施形態であり、その具体的構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、第1実施形態の変形例について説明する。
【0066】
上記物干し具1では、ホルダ本体14が凸部17を有し、取付体13が挿入穴23を有するように構成されてもよい。この場合、凸部17は、ホルダ本体14の水平軸部19の起立壁50の外面22bに形成され、挿入穴23は、取付体13の設置部16の平面16aに形成される。
【0067】
上記物干し具1では、第1竿部6は、アルミで形成されたが、硬質合成樹脂で形成されてもよい。この場合、取付体13の竿取付筒部15が省略されてもよい。この場合、取付体13は、第1竿部6に一体的に形成された設置部16と設置部16に一体的に形成された凸部17とにより構成される。さらに、設置部16も省略されてもよい。この場合、取付体13は、第1竿部6に一体的に形成された凸部17により構成される。
【0068】
上記物干し具1では、凸部17は、2つの突出片18、18を有し、突出方向に直交する断面において全体で略正方形断面を有するように構成したが、2つの突出片18、18を組み合わせたような1つのブロックにより、突出方向に直交する断面において略正方形断面を有するように構成してもよい。
【0069】
また、凸部17は、突出方向に直交する断面において平行に対向する2つの辺を有すればよい。例えば、凸部17は、突出方向に直交する断面において正六角形形状を有するものや、2つの平行に対向する対向面18a、18aを繋ぐ面を断面円弧状に形成したものであってもよい。この場合、挿入穴23の回転許容穴部24は、凸部17の前記断面内において中心を通る線分のうち最も長い線分よりも大きな穴径を有するように形成されることにより、凸部17との間の相対回転を許容するように構成される。挿入穴23の係止穴部25は、回転許容穴部24に連通し、凸部17の前記断面において平行に対向する2つの辺を挟持するように形成されることにより、凸部17との間の相対回転を阻止するように構成される。
【0070】
上記物干し具1では、吊下部2は、図12に示すように、2本の平行に対向する第1竿部6と平行に対向する第3竿部61を更に有していてもよい。
【0071】
上記第1実施形態では、本発明は、2本の第1竿部6と2本の第2竿部7とを有する吊下部2を備えた物干し具1に適用されたが、衣服用のハンガーのような物干し具にも適用することができる。
【0072】
次に、第2実施形態の物干し具について説明する。第2実施形態の物干し具は、第1実施形態の取付体13の凸部17とホルダ本体14における水平軸部19の挿入穴23との連結構造の点において第1実施形態の物干し具1と相違している。第1実施形態の物干し具1と対応する要素については、第1実施形態と同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
第2実施形態の取付体13は、図13に示すように、上記竿取付筒部15と、竿取付筒部15の外周面から上方に突出する設置箱51と、設置箱51の内部に形成された円筒状の挿入筒部52と、を有する。設置箱51は、ホルダ本体14側が開放した箱型に形成されている。挿入筒部52は、設置箱51における開放側とは反対側の立設面53の中央からホルダ本体14に向かって突出している。挿入筒部52の外周面には、挿入筒部52の軸方向に延びる凹溝54が円周方向に等間隔に4つ形成されている。
【0074】
第2実施形態のホルダ本体14の水平軸部19は、上記フック取付壁49と、上記起立壁50と、上記クリップ取付壁22と、上記起立壁50の外面22bに形成された筒状の嵌合筒部55と、を有する。
【0075】
嵌合筒部55は、円周方向に間隔を空けて形成され、嵌合筒部55の軸方向に平行に延びる一対の切欠き56、56を有する。一対の切欠き56、56は、嵌合筒部55の壁面において円周方向に等間隔に4つ設けられている。嵌合筒部55の内面における一対の切欠き56、56に挟まれる位置には、内側に突出して挿入筒部52の凹溝54に嵌まり込む隆起部57が形成されている。嵌合筒部55には、図13の矢印に示すように、挿入筒部52が挿入され、隆起部57が凹溝54に嵌まり込んだ状態になる。この状態は、隆起部57が凹溝54に接触することによって、ホルダ本体14の回転軸14cを中心とする回転が阻止されるので、上記回転阻止状態である。隆起部57に円周方向の一定以上の力を作用させると、隆起部57の凹溝54への嵌り込みが解除される。この状態は、ホルダ本体14の回転軸14cを中心とする回転が許容されるので、上記回転許容状態である。すなわち、第2実施形態のホルダ本体14は、ホルダ本体14を、回転軸14cを中心に回転させる方向に一定以上の力を作用させることにより、上記回転許容状態と上記回転阻止状態が切り換えられる。
【符号の説明】
【0076】
1 物干し具
2 吊下部
3 ホルダ
4 クリップ
5 フック
6 竿部
13 取付体
14 ホルダ本体
14c 回転軸
17 凸部
23 挿入穴
24 回転許容穴部
25 係止穴部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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