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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】細胞凝集体及び組織片の移植の方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A61M37/00 590
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018544847
(86)(22)【出願日】2017-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 SE2017000014
(87)【国際公開番号】W WO2017146627
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2019-11-26
(31)【優先権主張番号】1600070-5
(32)【優先日】2016-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】508194652
【氏名又は名称】ニューロナノ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショウエンボリ、イェンス
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特許第5261398(JP,B2)
【文献】特表2014-528332(JP,A)
【文献】特表2006-520663(JP,A)
【文献】特表2015-523895(JP,A)
【文献】特表2006-527009(JP,A)
【文献】特表2012-501229(JP,A)
【文献】特表2015-530904(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0114069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61M 31/00
A61B 17/86
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞の凝集体又は軟組織片を移植するために、水性ゲルで充填された軟組織における直線的なチャネルを形成するための装置であって、
前端及び後端を有する、軸線方向に延在する剛性ピンと、前記前端から遠位方向に延在するピン部分に配置され、前記部分を取り囲む乾燥ゲル形成薬剤を含む又はそれからなる層とを含み又はそれらからなり、
前記層は、20重量%未満の水を含有し、
前記ピンは、それが乾燥ゲル形成薬剤を含む又はそれからなるその層のない状態で神経組織の中に挿入されることを可能にするように充分に剛性であって、
前記ピンは、その前端とその後端との間に延在する通路を含み、
前記通路は、半径方向断面において長方形、菱形、若しくは台形、又は略長方形、略菱形、若しくは略台形である、装置。
【請求項2】
所与の軸線方向位置における前記通路の半径方向の幅は、それに垂直な前記半径方向の幅より2倍又は3倍又は5倍以上大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ピンの断面は、円筒形、楕円形、長方形、菱形、若しくは台形、又は略円筒形、略楕円形、略長方形、略菱形、若しくは略台形である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ピンは、金属である、若しくは金属を含む、又はポリマー材料である、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
電極手段、光ファイバ手段、センサ手段から選択される1つ以上の手段を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記軸線方向に延在する通路は、水性体液において溶解可能又は分解可能なプラグによってその遠位開口において塞がれている、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記プラグは、ゲル形成薬剤からなる又はそれを含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
水性体液と接触してゲルを形成することができる前記薬剤が、ゲル形成タンパク質、炭水化物、糖タンパク質からなる群から選択される1つ以上の薬剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
水性体液と接触してゲルを形成することができる前記薬剤が、ゼラチン、ヒアルロン酸、化学修飾ゼラチン、組換えゼラチン、化学修飾ヒアルロン酸、組換えヒアルロン酸、及びそれらの塩から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記層は、薬理学的に活性な薬剤を含む、請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記薬理学的に活性な薬剤は、凝固剤、抗凝固剤、抗生物質、浸透圧調節薬剤、抗炎症薬剤、栄養剤、因子刺激成長剤、因子刺激細胞分化剤、ホルモン、免疫抑制薬剤からなる群から選択される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
水性ゲルで充填された軟組織における直線的なチャネルを形成するためのシステムであって、
請求項1~11の何れか一項に記載の装置と、
前端及び遠位端を有する管状挿入ガイドであって、それを、前記装置の前記ピンが挿入される前記チャネルを形成するための位置に対して固定するための手段を含む管状挿入ガイドと
を含み、乾燥ゲル形成薬剤で覆われた前記装置の前記剛性ピンは、前記挿入ガイドの管腔に配置されている、又は変位可能に摺動に配置されることができる、システム。
【請求項13】
前記管状挿入ガイドは、その遠位端において取り付けられた半径方向に延在するフランジを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記固定手段は、剛性の保持要素を含み、前記保持要素は、その一端において前記管状挿入ガイド又は前記フランジに取り付けられ、前記保持要素は、その他端において、人又は動物に対する組合せを固定するように、前記組織が属する人又は動物と直接的又は間接的に接続可能である、請求項12又は13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人又は哺乳動物の軟組織、特に神経組織に細胞凝集体又は組織片の形態で生細胞を移植する方法に関する。更に、本発明は、対応する手段、このような手段を提供する方法、及びこのような提供において使用するための装置に関する。本発明が関連する細胞凝集体及び組織片は、組織への挿入による直接移植に対してそれ自体充分に物理的には安定ではない。
【背景技術】
【0002】
幹細胞及び他の細胞を培養することによって得られる生細胞、特に幹細胞、細胞凝集体、及び小さな組織の、軟組織、特に神経組織の中への移植は、問題を含む。単細胞は移植の間に損傷する危険性が高い一方、細胞凝集体又は組織片は分解される危険性がある。別の問題は、所望の組織位置において細胞又は細胞凝集体を配置する方法である。更なる問題は、神経細胞の喪失及び星状細胞の増殖をもたらす異物による神経組織の刺激である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2014/0024117号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2388022号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0064875号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0101518号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0266000号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0226856号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0141000号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0048292号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0060969号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0041146号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0297208号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0045487号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0112894号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、軟組織、特に神経組織の中への生細胞、細胞凝集体、及び組織片の挿入に関連する1つ又は幾つかの問題を解決する上記種類の方法を提供することである。神経組織は、脳及び脊髄組織だけでなく、末梢神経、後根神経節、及び網膜組織をも含む。
【0005】
本発明の他の目的は、神経組織挿入経路に沿った出血を防止又は低減又は停止することであって、このような移植の悪影響から隣接する神経細胞を保護することであって、移植された細胞凝集体及び組織片の配置を修正する能力を保存することである。
【0006】
本発明の別の目的は、その方法において使用するための装置を提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、この種類の移植のための装置及び機器の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の付加的な目的は、本発明の以下の概要、図面に示されるその好ましい実施形態の説明、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水性ゼラチンゲルのような生体適合性水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルの提供が、生細胞の凝集体及び生組織、特に神経細胞の凝集体及び神経組織片の軟組織、特に神経組織の中への挿入による移植を可能にするという見識に基づく。このような凝集体及び組織片は、軟組織、特に神経組織の中への直接挿入のために物理的に充分に安定でないと推定される。神経組織は、脳、脊髄、及び内分泌組織だけでなく、末梢神経、後根神経節、網膜、及び蝸牛組織を含む。この用途においては、移植のための好ましい組織片は、胚組織の片又はシートだけでなく、例えば脳卒中後のホストの組織の置換又は補助に適した生体内で操作された組織の1つである。
【0010】
本発明はまた、移植プロセスによってホストの組織が損なわれて、移植片の生存を危うくする不快な環境を生じるという見識に基づく。脳組織の中に移植された細胞の大部分が生存しないことはよく知られている。
【0011】
本発明は更に、移植のために選択されたホストの組織が、脳卒中後又は変性過程中のような不充分な血液供給及び活性化免疫細胞によって特徴付けられる炎症状態にあることが多いという見識に基づく。
【0012】
軟組織、特に人又は動物の神経組織における本発明の直線的な、好ましくは円筒形のチャネルは、生細胞の凝集体又は生組織の片を移植するために、実質的に剛性の、好ましくは円筒形のピンにおける乾燥ゲル形成薬剤と体液の接触によって形成されるゲルで充填される。好ましいゲル形成薬剤は、ゼラチン、ヒアルロン酸及びそれらの塩、化学修飾ゼラチン、化学修飾ヒアルロン酸及びそれらの塩を含むまたはそれからなる。化学修飾ゼラチン及び化学修飾ヒアルロン酸は、部分的に加水分解されたゼラチンとヒアルロン酸及び/又は架橋ゼラチンとヒアルロン酸を含む。しかし、チャネルが円筒形以外の形態であることは可能であるが好ましくはなく、対応して形成されたピンを使用することによって、略正方形又は他の半径方向断面のチャネルが提供されることができる。円筒形のチャネルは、チャネルと同じ直径の水性ゲルの2つ以上の円筒形の層を含むことができ、又は水性ゲルの円筒形の中心層は、水性ゲルの周辺層によって取り囲まれる。「円筒形のチャネル」という用語は、半径方向断面において楕円形の形態の円筒形のチャネルを含む。本発明のチャネルは、略一直線であって、すなわち所与の中心軸線から10°未満、特に5°未満逸れる。チャネルは、その幅より実質的に大きい長さ、特にその幅より5又は10又は20以上の長さを有する。チャネルの側壁及び底(前)壁は、生軟、特に神経組織によって形成される。この理由及び他の理由のために、チャネルの幾何学的形状は経時的に変化し得る。特に、チャネルの直径は経時的に縮小し得る。
【0013】
本発明によれば、生細胞の凝集体又は生軟組織の片は、水性ゲルで充填された本発明のチャネルに、このような配置のための手段、特にピンにおいて軸線方向に延在する通路の形態の手段で、乾燥ゲル形成薬剤で覆われたピンを適合させること、又は水性ゲルで充填された本発明のチャネルへの生細胞の凝集体又は軟組織の片の注入のための別個の装置を提供することの何れかによって配置される。
【0014】
この結果、本発明によれば、水性ゲルで充填された軟組織における予め形成されたチャネルにおいて生細胞の凝集体又は生軟組織の片を配置するためのこのような別個の装置が開示され、装置は、前後方の開口を含む一定半径方向断面の管腔のピペット若しくはシリンジを含む又はそれからなる。本発明の一態様によれば、凝集体又は片は、ピペット又はシリンジの管腔に配置され、ピペット又はシリンジは、その前端が最も前方でチャネルの中に所望の深さに挿入される。凝集体又は片は、ピペット又はシリンジの前方開口からゲルの中に排出され、そして、ピペット又はシリンジは、ゲルから引き出される。
【0015】
この結果、本発明によれば、軟組織、特に神経組織において直線的なチャネルを形成するための装置が開示され、装置は、生細胞の凝集体又は軟組織片の移植のために適合される。装置は、前端及び後端を有する横長の剛性ピンと、前端から遠位方向に延在するピン部分に配置され、ピン部分を取り囲む乾燥ゲル形成薬剤を含む又はそれからなる層とを含む又はそれらからなる。乾燥ゲル形成薬剤を含む又はそれからなる層は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満の水を含有する。ピンは、乾燥ゲル形成薬剤を含む又はそれからなるその層のない状態で組織の中に挿入されることを可能にするように充分に剛性である。ピンは、その前端と後端との間に延在する通路を含むことが好ましい。通路は、好ましくは円形又は楕円形である。代替的に、通路は、半径方向断面において長方形、菱形、若しくは台形、又は略長方形、略菱形、又は略台形であって、このような場合には、所与の軸線方向位置における通路の半径方向の幅が、それに垂直な半径方向の幅より2倍又は3倍又は5倍以上大きいことが好ましい。ピンは、半径方向の断面において円筒形、楕円形、長方形、菱形、若しくは台形、又は略円筒形、略楕円形、略長方形、略菱形、又は略台形であることが好ましい。
【0016】
ピンは、挿入される組織への損傷を最小化するために可能な限り小さい半径方向寸法の装置を提供するように、剛性材料、特に可能な限り剛性の材料で作られる。
【0017】
本発明の一態様においては、ピンは、金属、金属合金、若しくは導電性ポリマー、若しくは炭素のような他の導電性非金属材料を含む又はそれからなり、好ましくは、金属は、金、銀、銅、白金、イリジウム、チタン、クロム、タングステン、アルミニウム、及びそれらの合金からなる群から選択され、タングステン、イリジウム、及びステンレス鋼の何れかが特に好ましい。これは、ピンを電極として追加的に使用することを可能にする。このような場合、導電性のリードは、導電的にピンの後端に、又はその近傍に取り付けられる。リードは、例えば、電圧監視装置又は電力源とピンの電気通信を確立する。
【0018】
本発明の別の態様においては、ピンは、非導電性材料、特に、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリアクリレートのような充分な硬さを提供することに適したポリマー材料である。ピンは、水性ゲルの形成時に引き出しを容易にする材料からなってもよく又はそれによって覆われてもよい。パリレンC、シリコーンゴム、及びテフロン(登録商標)は、この目的のために特に有用な材料である。
【0019】
本発明の特に好ましい態様によれば、装置は、前端及び遠位端を有する管状挿入ガイドを含み、剛性ピンが配置される。乾燥ゲル形成薬剤からなる又はそれを含む層で覆われたピンは、遠位部、中心部、及び近位部を含み、中心部は同じ直径であって、遠位部は中心部より小さい直径であって、その遠位端に向かって減少し、近位部は中心部以上の直径であって、半径方向断面における挿入ガイドの管腔は、中心部の半径方向断面と同じ形態であるが、ピンの中心部をガイド内で摺動に変位させることを可能にするように僅かにより大きく、ガイドは、それを固定するための手段を、ピンが挿入される組織に対して含む。好ましい実施形態によれば、管状挿入ガイドは、その遠位端から半径方向に延在するフランジ又はスリーブを含む。挿入ガイドは、ピンと同じ遠位/近位の方向に、乾燥ゲル形成薬剤からなる又はそれを含む層で覆われた剛性ピンに取り付け可能である。別の好ましい実施形態によれば、挿入ガイドは、その管状部又はスリーブに取り付けられた剛性の取り付け要素を含み、取り付け要素は、その他端において、組織が属する人又は動物に直接的又は間接的に取り付け可能である。
【0020】
本発明の別の好ましい態様によれば、装置、特にピンは、電極手段、光ファイバ手段、センサ手段から選択される1つ以上の手段を含む。
【0021】
ピンの軸線方向に延在する通路が、遠位開口において水性体液に溶解又は分解可能なプラグによって、例えば、ゲル形成薬剤が水性体液と接触してゲルを形成することができる、乾燥ゲル形成薬剤からなる又はそれを含むものによって、塞がれることが好ましい。
【0022】
本発明の乾燥ゲル形成薬剤は生体適合性であって、特に、ゲル形成タンパク質、ゲル形成糖質、ゲル形成糖タンパク質、及びそれらの組合せからなる群から選択される薬剤である。ゲル形成タンパク質が、生体適合性タンパク質性ゲル形成薬剤、特に、ゼラチン、ヒアルロン酸、化学修飾ゼラチン、組換えゼラチン、化学修飾ヒアルロン酸、組換えヒアルロン酸、及びそれらの塩からなる群から選択される薬剤から選択されることが好ましい。生体適合性ゲルは、チャネルの半径方向内方への収縮を防止し、この結果、ゲルが実質的に変化しない、すなわち酵素分解等によって弱化される間の少なくとも期間に、チャネルの幾何学的形状を安定化させる。架橋ゲルの使用は、架橋の程度によって調整されることができる、実質的に安定化された幾何学的形状の時間を延長し得る。
【0023】
乾燥ゲル形成薬剤の水性体液との接触によって形成された生体適合性ゲルは、小さい生細胞の凝集体及び生軟組織の片が、それの中に挿入されること、特にゆっくりとそれの中に挿入されることを、それらの幾何学的形状に実質的に影響を及ぼすことなく可能にする。遅い挿入速度は、毎秒5mmまで、特に毎秒1又は2mmの速度である。これは、軟組織、特に神経組織のこのような挿入に対する耐性とは対照的である。典型的には、本発明の水性ゲルの耐性は、神経組織、特に髄膜及び他の繊維質膜層の耐性より10倍以上、特に25倍以上低い。穿通に対する耐性の尺度は、ピンに軸線方向の遠位方向において作用する一定の力の影響下で、所与の寸法の横長のピンが画定された深さに穿通するために必要な時間である。
【0024】
本発明の生体適合性ゲルは半透明であって、これは、チャネルに配置された光ファイバを通って放出される可視及び近赤外放射の使用のために特に有利である。
【0025】
本発明の好ましい態様は、チャネルにおける水性生体適合性ゲル、特に水性ゼラチンゲルの形成が、神経組織の中に移植された医療機器に対するミクログリア反応の低減を含む神経保護効果を有することができるという追加的見識に基づく。
【0026】
本発明によれば、ウシ、ブタの皮膚、家禽の皮膚、及びマグロのゼラチンのような様々な動物由来のゼラチンが、ゲル形成薬剤として使用されることができる。哺乳動物由来のゼラチンは、体温における優れたゲル化能力のために好ましい。組換えゼラチンがまた使用されることができる。延長された安定性のチャネルを形成するために、化学架橋ゼラチンの使用は、体内における分解速度がより遅いために好ましい。効率的なゼラチン架橋薬剤の例は、ビス(ビニルスルホニル)メタン及び1-エチル-3(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミドである。他の有用な架橋方法はUV放射によるものである。体内における分解速度は、架橋の程度によって制御されることができ、続いて、架橋の程度は、使用される架橋薬剤の量によって、又は所与量のゼラチンを架橋するために使用されるUV放射への暴露を制御することによって制御されることができる。
【0027】
本発明の他の水性生体適合性ゲルは、炭水化物ゲルを含む。本発明に有用な炭水化物ゲルは、アラビノガラクタンゲル、アラビノキシランゲル、ガラクタンゲル、ガラクトマンナンゲル、リケナンゲル、キシランゲルだけでなく、ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなセルロース誘導体を含み、アラビノガラクタン、アラビノキシラン、ガラクタン、ガラクトマンナン、リシナン、キシラン、ヒドロキシメチルセルロース、及び水性媒体と接触してゲルを形成する他のセルロース誘導体から選択されるゲル形成薬剤と、水性媒体、特に水性体液との接触によって形成される。
【0028】
本発明の更なる水性生体適合性ゲルは、タンパク質ゲルを含む。本発明に有用な動物由来のゼラチン以外のタンパク質ゲルは、水性媒質、特に水性体液の、乳漿タンパク、大豆タンパク質、カゼインから選択されるゲル形成薬剤との接触によって形成される乳漿タンパク質ゲル、大豆タンパク質ゲル、カゼインゲルを含む。
【0029】
本発明における使用のための更に他の水性ゲルは、水性媒体、特に水性体液の、アラビノガラクタン;アラビノキシラン;ガラクタン;ガラクトマンナン;リケナン;キシラン;ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなセルロース誘導体;乳漿タンパク;大豆タンパク質;カゼイン;ヒアルロン酸;キトサン;アラビアゴム;カルボキシビニルポリマー;ポリアクリル酸ナトリウム;カルボキシメチルセルロース;カルボキシメチルセルロースナトリウム;プルラン;ポリビニルピロリドン;カラヤガム;ペクチン;キサンタンガム;トラガカント;アルギン酸;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;キチン;ポリグリコール酸;ポリ乳酸;ポリグリコール酸とポリ乳酸とのコポリマー;ポリ乳酸とポリエチレンオキシドとのコポリマー;ポリアミド;ポリ無水物;ポリカプロラクトン;無水マレイン酸コポリマー;ポリヒドロキシブチレートコポリマー;ポリ(1,3-ビス(p-カルボフェノキシ)プロパン無水物);セバシン酸又はポリテレフタル酸との共重合によって形成されたポリマー;ポリ(グリコリド-コ(co)-トリメチレンカーボネート);ポリエチレングリコール;ポリジオキサノン;ポリプロピレンフマレート;ポリ(エチルグルタメート-コ(co)-グルタミン酸);ポリ(三級(tert-)ブチルオキシカルボニルメチルグルタメート);ポリカプロラクトン;ポリ(カプロラクトン-コ(co)-ブチルアクリレート);ポリ-ヒドロキシブチレート及びそのコポリマー;ポリ(ホスファゼン);ポリ(D,L-ラクチド-コ(co)-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-コ(co)-カプロラクトン);ポリ(リン酸エステル);ポリ(アミノ酸);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリデプシドペプチド;無水マレイン酸コポリマー;ポリホスファゼン;ポリイミノカーボネート;ポリ[(7.5%ジメチル-トリメチレンカーボネート)-コ(co)-(2.5%トリメチレンカーボネート)];ポリエチレンオキシド;ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ポリ(エチレン-コ(co)-酢酸ビニル);イソブチレンと、ブチルアクリレート:ブチルメタクリレートのような少なくとも1つの他の繰り返し単位とのイソブチレン系コポリマー;アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、カルボキシスチレン、スルホン化スチレンのような置換スチレン;ポリビニルアルコールのホモポリマー;ポリビニルアルコールとビニルシクロヘキシルエーテルのような少なくとも1つの他の繰り返し単位とのコポリマー;ヒドロキシメチルメタクリレート;ヒドロキシル末端又はアミノ末端ポリエチレングリコール;メタクリル酸、メタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリレートのようなアクリレート系コポリマー;エチレンビニルアルコールコポリマー;アリール又はアルキルシロキサンと少なくとも1つの繰り返し単位とのシリコーン系コポリマー;ポリウレタン;ヘパラン硫酸;RGDペプチド;ポリエチレンオキシド;コンドロイチン硫酸;YIGSRペプチド;ケラタン硫酸;VEGF生体模倣ペプチド;パールカン(ヘパラン硫酸プロテオグリカン2);ラミニンα-1鎖ペプチドを含有するlle-Lys-Val-Ala-Val(IKVAV);修飾ヘパリン; フィブリン片からなる群から選択されたゲル形成薬剤との接触によって形成されることができる。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、ゲル形成層は、薬理学的に活性な薬剤、特に凝固剤、抗凝固剤、抗生物質、浸透圧調節薬剤、抗炎症薬剤、栄養剤、因子刺激成長剤、因子刺激細胞分化剤、ホルモン、免疫抑制薬剤からなる群から選択される1つを含む。
【0031】
本発明によれば、生細胞の凝集体又は軟組織片、特に胚組織の片を神経組織の中への移植の方法がまた開示され、方法は、水性ゲルで充填された組織におけるチャネルを提供するステップであって、チャネルは、ピンであって、その中に配置された開いた遠位前端及び後端を有する軸線方向通路を含むピンを任意に含む、ステップと、プランジャを含むシリンジ及びピペットのうちの1つを任意に提供するステップと、シリンジ若しくはピペット又は通路に凝集体又は片を装填するステップと、シリンジの針又はピペットをゲルの中に任意に挿入するステップと、シリンジ若しくはピペット又は通路からゲルの中に凝集体又は片を排出するステップと、シリンジの針又はピペットをゲルから任意に引き出すステップとを含む。チャネルの提供と移植との間の時間差は、任意に少なくとも数分、特に少なくとも1又は2又は6時間、更に少なくとも1又は2又は5日である。
【0032】
本発明の1つの好ましい態様によれば、凝集体又は片は、支持体、特に、開放チャネルを含むマトリックス及び固体材料のシートから選択される支持体によって含まれる。マトリックスは、好ましくは、繊維質材料、特に、水性体液において溶解可能又は生分解可能である繊維質材料を含む又はそれからなる。繊維質材料は、天然及び/若しくは組換え及び/若しくは架橋ゼラチンを含む又はそれからなる繊維を任意に含む。また、繊維は、アラビノガラクタンゲル、アラビノキシランゲル、ガラクタンゲル、ガラクトマンナンゲル、リケナンゲル、ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなキシランゲルセルロース誘導体;乳漿タンパク質、大豆タンパク質、カゼインのようなゲル形成タンパク質;ヒアルロン酸からなる群から選択される1つ以上の構成要素を含む又はそれからなることが好ましい。本発明の別の好ましい態様によれば、固体材料のシートは水性体液において溶解可能又は生分解可能である。天然及び/又は組換え及び/又は架橋ゼラチンは好ましいシート材料である。他の好ましいシート材料は、アラビノガラクタンゲル、アラビノキシランゲル、ガラクタンゲル、ガラクトマンナンゲル、リケナンゲル、ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなキシランゲルセルロース誘導体;乳漿タンパク質、大豆タンパク質、カゼインのようなゲル形成タンパク質;ヒアルロン酸である。
【0033】
本発明のまた更に有利な態様によれば、方法において使用される、シリンジの針若しくはピペットの管腔、又はピンの通路の管腔は、半径方向断面において非円形の形態である。
【0034】
本発明によれば、特に生細胞の凝集体又は生軟組織の片が装填された形態における本発明のシリンジ又はピペットと、チャネルの中への細胞凝集体又は組織片の注入の間に水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルに対して所望の半径方向配置でシリンジ又はピペットを保持するための挿入ガイドとを含むシステムが開示される。挿入ガイドは、前端及び遠位端を有する管を含み、その管腔の中に、ピペット又はシリンジは挿入され、両方の軸線方向に摺動に変位されることができる。この効果のために、管の管腔の半径方向断面は、ピペットの半径方向断面より僅かに大きい。挿入ガイドは、その遠位端において取り付けられた半径方向に延在するフランジを含むことが好ましい。挿入ガイドは、その一端において挿入ガイドの管及び/又はフランジに取り付けられ、その他端において、人又は動物に対する組合せを固定するために、チャネルが設けられた人又は動物に直接的又は間接的に取り付け可能な剛性の保持要素を含むことが更に好ましい。
【0035】
本発明の別の好ましい態様によれば、シリンジ又はピペットに、生細胞の凝集体又は軟組織片、特に胚組織片を含む支持体が装填され、支持体は、開気孔を有するマトリックス、固体材料のシート、及びそれらの組合せからなる群から選択される。マトリックスは、好ましくは、繊維質材料、特に、天然ゼラチン;架橋ゼラチン;アラビノガラクタン;アラビノキシラン;ガラクタン;ガラクトマンナン;リケナン;キシラン;ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなセルロース誘導体;乳漿タンパク質、大豆タンパク質、カゼインのようなゲル形成タンパク質;ヒアルロン酸からなる群から選択される繊維質材料を含む又はそれからなる。
【0036】
好ましい態様によれば、開気孔を有するマトリックス、特に、生体適合性繊維、特に体液に可溶又は生分解可能である繊維を含む又はそれからなるマトリックスに配置された生細胞又は生細胞の凝集体が装填された本発明のシリンジ又はピペットが開示される。
【0037】
本発明の別の好ましい態様によれば、生体適合性材料、生体適合性繊維、及びそれらの組合せのシート又はディスクの何れかによって物理的に支持された生細胞を含む、生細胞の凝集体又は軟組織片を含むシステムが開示され、シートは、水性体液において生分解可能又は可溶である材料であって、シートは、約0.5mm~1.0mm以上、例えば2mm又は3mm又は5mm以上まで、例外的に25mm以上までのサイズである。支持シートは、長方形及び楕円形のような任意の適切な形態とすることができる。シートのサイズはその最大幅を意味する。物理的に支持された凝集体又は片は、開気孔を含む不織ウェブを形成するようにシートに配置された凝集体又は組織を取り囲む生体適合性繊維を含むことが好ましい。例えば架橋よって化学的及び/又は物理的に修飾されたこの種類のポリマーを含む、ゼラチン又は他の生体適合性ポリマーの繊維質マトリックスを含む支持体が特に好ましい。ゼラチン以外の凝集体又はシートの生体適合性繊維は、好ましくは、アラビノガラクタン;アラビノキシラン;ガラクタン;ガラクトマンナン;リケナン;キシラン;ヒドロキシメチルプロピルセルロースのようなセルロース誘導体;乳漿タンパク質、大豆タンパク質、カゼインのようなゲル形成タンパク質;ヒアルロン酸からなる群から選択される1つである。
【0038】
本発明の更に好ましい態様によれば、固体支持体は、ゲルで充填されたチャネルにおける挿入をガイドして、組織における支持体の所望の配置を提供するための微小電極及び/又は光ファイバ手段を含む。このような場合においては、生細胞の凝集体又は軟組織片が、実質的に、細胞凝集体又は組織片と、微小電極及び光ファイバの少なくとも一方が解放不能に不織ウェブに取り付けられる、微小電極及び光ファイバの一方又は両方とを取り囲む不織ウェブからなることが好ましく、生体適合性繊維が微小電極及び/又は光ファイバの一部を取り囲むことが好ましい。
【0039】
本発明の追加に好ましい態様によれば、支持体は、シリンジの針又はピペットの管腔に配置された2つ以上の軸線方向に延在するガイドスロットと協働して、凝集体又は片の管腔におけるその配置に際し半径方向の変位を制限するが軸線方向の変位を制限しないように、支持体のシートから側部方向に突出する2つ以上の歯を含む。
【0040】
本発明は、一定の縮尺でない概略図に示された多くの好ましい実施形態を参照することによって、本明細書でより詳細に説明される。半径方向の寸法は非常に誇張されている。全ての図は、軸線方向又は半径方向の断面である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】軸線方向断面A-Aにおける、軟組織、特に神経組織においてチャネルを形成するための本発明の装置を示す。
図1a】生細胞の凝集体又は生組織の片の移植のための、人又は哺乳動物の神経組織においてチャネルを提供するための本発明の方法を示し、方法は、チャネルの前端が配置されることが望まれる神経組織における標的の位置の同定を含む。
図1b】生細胞の凝集体又は生組織の片の移植のための、人又は哺乳動物の神経組織においてチャネルを提供するための本発明の方法を示し、方法は、チャネルの前端が配置されることが望まれる神経組織における標的の位置の同定を含む。
図1c】生細胞の凝集体又は生組織の片の移植のための、人又は哺乳動物の神経組織においてチャネルを提供するための本発明の方法を示し、方法は、チャネルの前端が配置されることが望まれる神経組織における標的の位置の同定を含む。
図1d】生細胞の凝集体又は生組織の片の移植のための、人又は哺乳動物の神経組織においてチャネルを提供するための本発明の方法を示し、方法は、チャネルの前端が配置されることが望まれる神経組織における標的の位置の同定を含む。
図1e】このように生成されたチャネルを示す。
図1f】生細胞の凝集体又は生組織の片の移植のための、人又は哺乳動物の神経組織においてチャネルを提供するための本発明の方法を示し、方法は、チャネルの前端が配置されることが望まれる神経組織における標的の位置の同定を含む。
図1g】体表面に配置された挿入ガイドにおいて取り付けられ、軟組織の中に挿入される過程における本発明の装置を図1と同じ断面の図において示す。
図1h】体表面に配置された挿入ガイドにおいて取り付けられ、軟組織の中に挿入される過程における本発明の装置を半径方向断面において示す。
図2a】生細胞の凝集体を、図1eのチャネルの中にそれを挿入することによって神経組織の中に移植するための本発明の方法を示す。
図2b】生細胞の凝集体を、図1eのチャネルの中にそれを挿入することによって神経組織の中に移植するための本発明の方法を示す。
図2c】このように移植された凝集体を示す。
図3】側面図において、繊維質マトリックスに配置された本発明の細胞の凝集体を示す。
図4】軸線方向断面において、シリンジに配置された図3の凝集体、及びその部分拡大図を示す。
図4a】軸線方向断面において、挿入ガイドによって水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルにおいて取り付けられた細胞の凝集体を含む図3のシリンジを示す。
図5】側面図において、遠位部分のみが示される取り外し可能な挿入ガイドに後端において取り付けられた固体支持体で培養された単層の細胞の凝集体を示す。
図5a図5の凝集体の横方向断面P-Pである。
図6図5aと同じ半径方向断面の図において、略長方形の形態のシリンジ又はピペットの略長方形の管腔に配置された図5及び図5aの凝集体を示す。
図7図5aと同じ半径方向断面の図において、略楕円形の形態のシリンジ又はピペットの管腔に配置された図5及び図5aの凝集体を示し、支持体は、軸線方向に延在する光ファイバ又は微小電極を含む。
図8図5aと同じ半径方向断面の図において、楕円形の形態のシリンジ又はピペットの管腔に配置された、電気又は放射のための軸線方向に延在する導体が設けられた、図5及び図5aの凝集体の変形を示す。
図9】水性ゲルで充填された神経組織においてチャネルを形成するための、光ファイバを含む、本発明による装置を示す。
図10】水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルを形成するための、光ファイバ及び微小電極を含む、本発明による装置を示す。
図11】軸線方向A*-A*の断面において、水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルを形成するための本発明による装置を示し、装置は、乾燥ゼラチンで覆われ、光ファイバ及び電極手段を含む円筒形のピンに加えて、装置の遠位面における通路の開口からチャネルの中への流体材料の注入のための、ピンにおいて軸線方向に延在する通路を含む。
図11a図11の拡大部分を示す。
図12】軸線方向A**-A**の断面において、水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルを形成するための本発明による装置を示し、装置は、乾燥ゼラチンで覆われ、光ファイバ及び電極手段を含む円筒形のピンに加えて、装置の遠位面における通路の開口からチャネルの中への流体材料の注入のための、ピンにおいて軸線方向に延在する通路を含み、軸線方向に延在する通路から半径方向に延在する通路を更に含む。
図12a図12の拡大部分を示す。
図12b】半径方向B-Bの断面において、水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルを形成するための本発明による装置を示し、装置は、乾燥ゼラチンで覆われ、光ファイバ及び電極手段を含む円筒形のピンに加えて、装置の遠位面における通路の開口からチャネルの中への流体材料の注入のための、ピンにおいて軸線方向に延在する通路を含み、軸線方向に延在する通路から半径方向に延在する通路を更に含む。
図12c】半径方向B-Bの断面において、水性ゲルで充填された神経組織におけるチャネルを形成するための本発明による装置を示し、装置は、乾燥ゼラチンで覆われ、光ファイバ及び電極手段を含む円筒形のピンに加えて、装置の遠位面における通路の開口からチャネルの中への流体材料の注入のための、ピンにおいて軸線方向に延在する通路を含み、軸線方向に延在する通路から半径方向に延在する通路を更に含み、半径方向に延在する通路は塞がれている装置の変形を示す。
図13】ゼラチン層において摩擦低減薬剤の層が設けられる、図12の装置に対応する本発明による装置を示す。
図13a】ゼラチン層において摩擦低減薬剤の層が設けられる、図12aの装置に対応する本発明による装置を示す。
図13b】ゼラチン層において摩擦低減薬剤の層が設けられる、図12bの装置に対応する本発明による装置を示す。
図13c】ゼラチン層において摩擦低減薬剤の層が設けられる、図12cの装置に対応する本発明による装置を示す。
図14】同じ断面における図13の装置の変形を示し、ゼラチン層は、近位方向にピンの遠位端から延在する第1の摩擦低減層によって、及び近位方向に摩擦低減層の近位端から延在する抗凝固剤を含む第2の層によって覆われる。
図15】軸線方向(チャネル軸線)断面において、水性ゲルで充填された神経組織における対応する円筒形のチャネルの生成に使用される乾燥ゲル形成薬剤の1つ以上の層で覆われた本発明の円筒形のピンの実施形態を示す。
図15a】軸線方向(チャネル軸線)断面において、水性ゲルで充填された神経組織における対応する円筒形のチャネルの生成に使用される乾燥ゲル形成薬剤の1つ以上の層で覆われた本発明の円筒形のピンの実施形態を示す。
図15b】軸線方向(チャネル軸線)断面において、水性ゲルで充填された神経組織における対応する円筒形のチャネルの生成に使用される乾燥ゲル形成薬剤の1つ以上の層で覆われた本発明の円筒形のピンの実施形態を示す。
図15c】軸線方向(チャネル軸線)断面において、水性ゲルで充填された神経組織における対応する円筒形のチャネルの生成に使用される乾燥ゲル形成薬剤の1つ以上の層で覆われた本発明の円筒形のピンの実施形態を示す。
図16】軸線方向(チャネル軸線)断面において、図15のピンの移植によって生成された、水性ゲルの1つ以上の層で充填された神経組織における、本発明の円筒形のチャネルの実施形態を示す。
図16a】軸線方向(チャネル軸線)断面において、図15aのピンの移植によって生成された、水性ゲルの1つ以上の層で充填された神経組織における、本発明の円筒形のチャネルの実施形態を示す。
図16b】軸線方向(チャネル軸線)断面において、図15bのピンの移植によって生成された、水性ゲルの1つ以上の層で充填された神経組織における、本発明の円筒形のチャネルの実施形態を示す。
図16c】軸線方向(チャネル軸線)断面において、図15cのピンの移植によって生成された、水性ゲルの1つ以上の層で充填された神経組織における、本発明の円筒形のチャネルの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施例1.チャネル形成装置の挿入のための案内情報を提供する、標的、チャネルの前(下)端、チャネルの後(上又は開)端の位置の決定
【0043】
図1aは、頭蓋骨2及び硬膜3の隣接部分を有する哺乳動物の脳1の断面の概略図である。貫通孔5が頭蓋骨2に設けられ、これを通って脳組織1の面6は、硬膜3の一部の除去後にアクセスされることができる。脳組織1においては、100個以上の細胞4を含む多数の神経細胞又はむしろ細胞集団が示される。それらの1つ4’は、微小電極を有する神経細胞電位のための所望の標的として同定される。標的神経細胞/細胞集団4’の位置は、制御ユニット13と電気的に接続され、制御ユニット13によって制御されるコンピュータ断層撮影(CT)11及び磁気共鳴イメージング(MRI)12のような2つのイメージングシステムの組合せを使用することによって決定される。位置情報に基づいて、制御ユニット13のマイクロプロセッサは、制御ユニット13によって制御されるレーザ10のビームによって視覚化されるチャネル形成装置20(図1)のための挿入トラック9を決定する。制御ユニット13は、チャネル形成装置20(図1)の挿入深さを画定するように形成されるチャネル(23’、図1c)の遠位端に対応する標的神経細胞4’の集団の近傍のトラックにおける点7を更に決定する。レーザビームが脳組織4の自由面6に当たる挿入トラック9における点8がまた決定される。点8は、チャネル形成装置20(図1)の脳組織1の中への挿入点を表す。
【0044】
実施例2.本発明のチャネル形成装置の第1の実施形態及びその製造方法
【0045】
本発明のチャネル形成装置20の実施形態が図1に軸線方向断面A-Aにおいて示される。チャネル形成装置20は、剛性材料の硬い円筒形ピン21と、その前(遠位)端21’からその後(近位)端21’’の方向に延在するピン21の一部においてゼラチンの層22とを備える。ゼラチン22の層は、ヒアルロン酸若しくはPEG又はそのような薬剤の組合せのような体と接触してゲルを形成することができる別の薬剤の対応する層によって置換されることができる。層22の軸線方向の延在は、少なくとも形成されるチャネルの深さに対応する。ピン21の直径は、形成されるチャネルの直径よりも小さく、可能な限り小さく維持されるべきである。ピンにおける層22の厚さは、形成されるチャネルの所望の幅によって決定される。移植の間に組織の損傷を低減させるために、ピン21は、例えば、尖った又は丸い先端25、特に円錐形の丸い先端で終わることによって、その遠位端に向かって先細りになっているべきである。ピン21の材料は重要ではないが、水性体液と接触してゲルを形成することができるゼラチン又は他の薬剤の層22のために良好な接着性を提供すべきである。一方、ピンの材料又はピンの表面を覆う材料は、乾燥ゲル形成薬剤の水性体液との接触時に形成される水性ゲルを容易に放出すべきであって、すなわち、このように形成された水性ゲルのために良好な接着性を提供するべきではない。ピン21を覆うテフロン(登録商標)のようなポリフッ素化材料の使用が、許容可能な妥協を構成する。他の有用な材料は、様々な種類のシリコーンを含む。有用なピン21の材料は、スチール、アルミニウム、ポリカーボネート、ポリエステル、ガラス、セラミックスを含むが、またチタン、金、白金、及びそれらの合金を含む。それらは、例えば、ポリフッ素化材料又はシリコーンの薄い層によって覆われてもよく、又はそれらの表面は、シラン処理されてもよい。
【0046】
図1g及び図1hにおいて、図1の装置20は、装置20の外径、すなわちゲル形成薬剤22で覆われたピン21の直径より僅かに大きい内径(管腔)の管要素29を含む挿入ガイド26に取り付けられて示される。その遠位端において、管要素29は、その円筒形の外側面に取り付けられた半径方向に延在するフランジ27を有する。フランジ27の機能は、装置20が挿入されることが望まれる組織30の表面31に当接し、それによって装置20の操作を安定化させることである。軟組織の中への挿入の間の装置20の更なる安定化のために、挿入ガイド26は、フランジ27から近位方向における距離において管要素29の円筒形の外側面に固定された半径方向に延在する保持要素28を含む。その保持要素28を介して、挿入ガイド26は、例えば治療される人又は動物が固定される(示されない)支持体と堅く接続されることによって所定の位置に保持されるように位置的に固定される。
【0047】
チャネル形成装置20は、例えば、ゼラチンの水溶液とステンレス鋼のピン21とを提供することによって製造されることができる。ゼラチン溶液の粘度は、視覚的に粘性があるがゲル化しないように、温度及び濃度によって制御される。ピン21は、ゼラチン溶液の中に浸漬され、そして引き出され、水平に配置され、回転される。ピン21におけるゼラチン溶液の乾燥は、熱及び/又は真空を適用することによって速くさせることができる。制御を必要とする別の要因は、製造環境の相対湿度である。
【0048】
ピン21において所望の厚さのゼラチン層22が形成されるまで、浸漬工程が繰り返される。乾燥ゼラチンの溶解を回避するために、ピン21はゼラチン溶液から迅速に引き出される。
【0049】
チャネル形成装置の別の製造方法においては、水と接触してゲルを形成することができるゼラチン又は他の薬剤が、対応する水溶液で噴霧することによってピン21に塗布される。
【0050】
チャネル形成装置の更に別の製造方法においては、所望の形態の金型がチャネル形成装置の製造のために使用される。好ましい実施形態においては、円筒形又は楕円形の金型を構成する同じサイズの半円筒形の金型部分をそれぞれ含むアクリル材料(Plexiglass(登録商標))の2つのシートは、軸線が金型の中心に配置された本発明の円筒形のピンの周りに、それらの軸線が整列された状態で、当接配置で取り付けられる。シートは、金型の周りに配置された多数のねじによって当接配置に保持される。金型の半径方向の寸法は、ピンの半径方向の寸法より僅かに大きい。金型の一方の軸線方向端においてチャネルが提供され、チャネルを通って、ゲル形成薬剤の濃縮水溶液がピンと金型壁との間の空間の中に注入される。注入は、溶液がゲル化しない温度で行われる。そして、金型のシートは、乾燥のために空気のアクセスを提供するようにねじを緩めることによってゆっくりと解放される。約2重量%の含水量まで乾燥させた後、乾燥ゲル化薬剤で覆われたピンは、金型から取り除かれる。ゲル化薬剤は、次に乾燥ゲル化薬剤の水性体液との接触を遅延させるKollikoat(登録商標)のような材料で被覆されることができ、この結果、ゲル化が開始し、終了する。
【0051】
実施例3.移植チャネルの形成
【0052】
本発明の移植チャネルを形成するプロセスの好ましい実施形態が、図1b~図1fに示される。
【0053】
本発明のチャネル形成装置20(図1)は、アクセス可能な脳組織4の表面6の挿入点8において、その前端21’で、及び挿入トラック線9と整列させたその軸線A-Aで位置決めされる(図1b)。そして、装置20は、ゼラチン層22を欠いているその後方部分において圧力を加えることによって、トラックライン9に沿って組織4の中に挿入される。圧力及び挿入の適用は、手動で又は適切な(示されない)マイクロマニピュレータを使用することによってなされてもよい。装置20は、所望の深さの中に、すなわちその前端が挿入トラック又は経路の前端7に達するまで挿入される(図1c)。挿入の間の水性体液による層22のゼラチンの溶解を回避するためには、挿入はできるだけ速くされるべきである。完全に挿入されると、装置20は、ゼラチン層22が水性体液によって完全に溶解され、ピン21の周りにゼラチンゲル23の管状層が形成されるまで(図1d)、完全に挿入された位置(図1c)に置かれる。ピン21とゼラチンゲル23の管状層との組合せは、その輪郭24によって図1dにおいて視覚化されたプレチャネルを構成する。ゼラチン層22の軸線方向長さは、挿入の深さ、この結果、水性体液とのその接触の軸線方向の延在を超えるので、ゼラチン層22の近位端部22’は溶解しなかった。非溶解ゼラチン22’は、生理食塩水又は人工脳脊髄液で洗い流すことによって、ピン20の引き出しの間のチャネルからのゲルのこの除去付着によって、ピン20を引き出し前に溶解することができ、この結果、チャネルにおけるゲル23の乱れが防止される。次のステップにおいて、ピン21は、挿入経路9に沿ってゲル23から引き出される(方向R)。ピン21の引き出しはピン21の体積によってプレチャネルの容積を低減させて、その輪郭24’によって図1eに視覚化された本発明のチャネルを形成する。(拡大された)図1fは、ゼラチンゲル23’の遠位末端部分がチャネル24’の直径に収縮し、円筒形の形態を採用する一方、ゼラチンゲル23の隣接部分はまだ管状である、ピン21の引き出しの初期段階を示す。完全に引き出されると、ゼラチンゲル23’で充填された移植チャネル24が形成される(図1e)。チャネル24を形成するためのゼラチンの量は、水性体液において溶解可能又は分解可能なマトリックスを含む物理的に安定化された微小電極を使用する場合に低減されることができる。
【0054】
架橋ゼラチン又は他の架橋ゲル形成薬剤を使用することによって、水性体液で充填された組織においてチャネルをピンの引き出し時に保持することが可能である。チャネルは、架橋ゲルの円筒形の壁によって取り囲まれる。これは、本発明の物理的に安定化されていない微小電極又は他のプローブ又はセンサの軟組織の中への挿入に対して特に有用である。
【0055】
実施例4.光ファイバ手段を更に含む本発明による装置の第2の実施形態
【0056】
本発明による装置の第2の実施形態50が、図9に示される。そのポリアクリル酸塩のピン51は、ピンの前端51’から近位方向に延在する中心(軸線A’-A’)の光ファイバ55を、その他端の近傍でピンから離れてピンのシリンダ壁から斜めの角度で現れるように取り囲む。代替的は、光ファイバは、中心配置でピンの全体を通って延在し、その近位端においてピンから離れてもよい。ピン51の側壁は、遠位端51’から光ファイバ55がシリンダ壁から現れる遠位の位置に延在する乾燥ゼラチンの層51によって覆われる。ピン51の前端面はゼラチンで覆われていない。これは、光ファイバ55の前端から妨害されずに現れる放射、及び/又はピン51の前端の前に配置された組織の検査を可能にする。
【0057】
実施例5.光ファイバ手段及び電極手段を更に含む本発明による装置の第3の実施形態
【0058】
本発明の装置の第3の実施形態60が、図10に示される。これは、電極機能を更に含む第2の実施形態の改変である。電極機能は、中心に配置され、その中心軸線をピン61の中心軸線(A’’-A’’)と共有する光ファイバ65を取り囲むピン61における金の導電層66によって提供される。遠位端近傍の短い部分を除いて、金層66は、ラッカー67によって電気的に絶縁される。金層66は、その近位端において金層66に取り付けられた絶縁リード68によって(示されない)制御ユニットと電気的に接続される。乾燥ゼラチンの層62は、金層66の絶縁された部分及び絶縁されない部分を覆う。
【0059】
実施例6.物理的に支持された細胞凝集体及び組織片
【0060】
本発明の方法による移植に適した物理的に支持された細胞凝集体は、例えば、特許文献1~13より知られ、参照により本明細書に組み込まれる。この種類の繊維支持体はまた、これらに開示された生体適合性繊維の織布又は不織ウェブに組織片を埋め込むことによって、生軟組織の片を物理的に安定化するために使用されることができる。
【0061】
この結果、支持された細胞凝集体又は軟組織片は、本発明の方法による移植が可能な大きさであって、この結果、それらのサイズは、1mm未満、例えば0.5mmから5mm又は10mmに、例外的に約25mmまで延在する。
【0062】
ポリグリコール酸繊維202の不織ウェブにおける幹細胞又は胚細胞201からなる例示的な繊維支持細胞凝集体200が図3に示される。凝集体200は、ピペットの管腔又はピストン212が設けられたシリンジ210若しくはピペットの管腔の遠位区画211に配置されることができる(図4)。ピストンは、シリンジ210の遠位区画211及び近位区画214において液体又は気体の圧力の差を等しくし、それによって遠位区画に配置された気体又は流体が誤ってゲルの中に注入されることを防止することを可能にするための、軸線方向に延在する任意の穿孔213を含む。区画211、214は、ガス、好ましくは空気、任意に酸素富化空気、又はゼラチン若しくは他の生体適合性ゲル形成薬剤の水溶液若しくは人工脳脊髄液のような適切な水性流体で充填されてもよい。
【0063】
架橋ゼラチンのシート222に付着し支持される幹細胞221の例示的な層が図5及び図5aに示される。シート222にはその後端において、その遠位端にペンチ224を含む挿入器具との解放可能な協働のための結合輪郭223が設けられる。幹細胞221と支持体222との組合せ220は、ピペット230(図6)の管腔231に配置される。ピペット230及びその管腔231は、半径方向の断面においてほぼ長方形である。
【0064】
図7で示されるピペット230並びに図5及び図5aの幹細胞221と支持体222との組合せ220の改変は、シート222の側面における窪み237、238と協働するピペット230’の壁の対向する内側面に配置されたガイドレール235、236を含む。この配置によって、ピペット230の内側壁との幹細胞の層221の接触、この結果、それらの可能性のある損傷が回避される。
【0065】
図8に示される図6のピペット230の改変240は、楕円形の形態である。ピペットの管腔241に配置された幹細胞241の層を支持するシート242は、幹細胞241の層が取り付けられる面に対向する面に取り付けられる軸線方向に延在するリード244を含む。軸線方向に延在するリード244は、ガラスファイバのような光のためのもの、又は微小電極のためのような電気導体とすることができる。
【0066】
実施例7.細胞凝集体及び組織片の移植
【0067】
物理的に支持された又は安定化された細胞凝集体202の脳組織の中への移植が、図2a~図2cに示される。図3の細胞凝集体202は、管210(図4)内で変位可能なピストン212の遠位に一定直径の管210の形態のシリンジの管腔に配置される。管210の遠位部は、水性ゲル23’で充填されたチャネル24’(図2a)の中に所望の深さに挿入される。そして、細胞凝集体202は、ピストン212を管210の中に更に挿入することによって遠位方向に変位され、最後に管201の遠位開口からゲル23’の中に排出される。管210は、プランジャ214における穿孔を通って出る空気、又はリンゲル液若しくは他の輸液で充填されることができる。そして、管210は、ゲル23’からゆっくりと引き出され、粘性ゲル23’に懸濁された細胞凝集体202から離れる(図2c)。代替的に、細胞凝集体202の排出及びピペット又はシリンジの管又は針210の引き出しが同時に進行する。
【0068】
そして、外側からチャネル24’へのアクセスは、骨セメント若しくは急速硬化組織ゲル又は他の適切な材料の蓋32によって組織における開口を閉じることによって防止される。このセクションにおいては参照されない図2a~図2cにおける参照番号は、それらの図1図1fにおけるのと同じ要素を特定する。
【0069】
好ましい実施形態においては、シリンジの管210又はピペットの管は、移植の間に位置的に安定化される(図4a)。管210は挿入ガイド215の管状のガイド要素219において摺動可能に配置され、その管腔は軸線方向の断面で管210より僅かに広い。この結果、管210は、管状ガイド要素219において半径方向ではなく軸線方向に変位されることができる。遠位(前)端において、管状ガイド要素219には、管210の遠位開口と同一面の堅く取り付けられた半径方向に延在するフランジ217が設けられる。挿入ガイド215は、(示されない)その軸線がチャネル301の(示されない)軸線とほぼ一致するように配置することによって、及びそのフランジ217を、チャネル301を取り囲む組織300の表面216に当接させ、そして、挿入ガイド215を、それを管状ガイド要素219に取り付けられた剛性の保持要素218を介して人若しくは動物、又は人若しくは動物が固定される(示されない)支持体と堅く接続することによって位置的に固定することによって、水性ゲルで充填された軟組織300における円筒形のチャネル301に取り付けられる。代替的に、保持要素218は、フランジ217の近位に向く面に取り付けられることができる(示されない)。
【0070】
水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルの中に配置するために、天然ゼラチン又は架橋ゼラチンのような生体適合性材料222のシート222によって支持され、それに取り付けられた幹細胞又は他の細胞221の凝集体は、一定の内径のシリンジ又はピペット230の管腔231に配置される。シリンジ又はピペット230は、凝集体221の形態に適合された半径方向断面である。この結果、管腔は、好ましくは通常のシリンジ又はピペットのように円形ではない。図6の実施形態においては、管腔231は、図5aに示される細胞の凝集体221と支持体222との組合せの断面に最適に適合されるように、断面がほぼ長方形である。
【0071】
図7に示される一定の直径のシリンジ又はピペットの変形230’は、細胞221’に向くシリンジ又はピペットの内壁234’の一部との接触から、固体支持体230’の一方の面に付着する細胞221’を保護するための手段235、236、237、238を含む。手段は、シリンジ又はピペットの対向する側部内壁から突出する長手方向又は軸線方向に延在するレール235、236を含み、レール235、236は、同じ方向に延在する支持シート230’の側部壁における溝237、238においてそれぞれ延びる。対照的に、図6の実施形態においては、特に、注入の間に細胞221を担持する支持体222を変位させる場合に、支持体230における細胞221は、それらに向くシリンジ又はピペット230の壁部分234に触れてもよい。
【0072】
実施例8.流体の遠位注入のための流体通過手段を含む、本発明による装置の第4の実施形態
【0073】
近位端70’’、遠位端70’、及び側部円筒形面78を有する本発明の装置の第4の実施形態70が、図11及び図11aに示される。本発明の装置の第3の実施形態の改変は、ピン71における中心(軸線A’-A’)の軸線方向に延在する通路75の形態の流体通路手段を更に含むことである。実質的に円筒形の通路75は、ピン71の軸線方向ボアに配置された可撓性管73によって形成され、管73の内壁は、銀又は金のような高導電率の金属の薄層74によって覆われる。層74は、電極として機能することができるが、また省略されることもできる。可撓性管73は、好ましくはアクリレートのような透明な高分子材料であって、この結果、光を導き、光ファイバとして機能することができる。装置70の近位端70’’から短い距離で、可撓性管73は、ピン71の側部面78から出現するように中心軸線A’-A’から曲げられる。乾燥ゼラチンの層72は、前端70’から遠位端70’’近傍に向かって延在するピン71の側部面78の一部を覆うが、ピン71の遠位前面77を覆わず、この結果、通路75の遠位開口を覆わない。
【0074】
通路75は、その遠位端に現れる流体材料の注入のために使用されることができる。流体材料は、例えば、神経伝達物質、例えば、ドーパミン又はアセチルコリン又はヒスタミンのような薬理学的に活性な薬剤の水溶液とすることができる。代替的又は追加的に、通路75は、本発明の物理的に安定化された細胞凝集体又は組織片を、水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルの中に挿入されるために使用されることができ、このような場合、細胞凝集体又は組織片は、通路75の遠位開口から水性ゲルの中に排出されるまで、通路に配置され、通路内で遠位方向に変位される。ピンから水性ゲルの中に細胞凝集体又は組織片を排出するプロセスは、少なくともゲルの形成まで待たなければならないが、数時間又は更には数日の間のようなより長い時間を待つことが有利であり得ることが理解される。水性ゲルで充填されたチャネルの中への物理的に安定化された細胞凝集体又は軟組織の注入ために、本発明による装置の他の実施形態を同様に使用することは、本発明の範囲内である。
【0075】
実施例9.流体の側部注入のための流体通過手段を含む、本発明による装置の第5の実施形態
【0076】
近位端80’’、遠位端80’、及び側部円筒形面78を有する本発明の装置の第5の実施形態80が、図12、12a、12bに示される。これは、第4の実施形態の改変であって、ピン81において、中心に配置された軸線方向(軸線A**-A**)に延在するチャネル85の形態の流体通路手段を含む。実質的に円筒形のチャネル85は、ピン81の軸線方向ボアに配置された可撓性管83によって形成され、管83の内壁は、銀又は金のような高導電率の金属の薄層84によって覆われる。層84は電極として機能することができるが、また省略されることもできる。可撓性管83は、好ましくは、アクリレートようなの透明な高分子材料であって、この結果、光を導き、光ファイバとして機能することができる。装置80の近位端80’’から短い距離で、可撓性管83は、ピン81の側部面88から出現するように中心軸線A**-A**から曲げられる。約2%重量の含水量の乾燥ゼラチンの層82は、近位端80’から遠位端80’’に向かって延在するピン81を覆うが、可撓性管83の遠位開口を含むピン81の遠位前面87を覆わない。半径方向に延在するチャネル86は、軸線方向チャネル85から分岐する。それらは、乾燥ゼラチン層82の水性ゲルへの変換の際に、その側部面に現れる流体材料の注入のために使用されることができる。流体材料は、例えば、乾燥ゼラチン層82の水性ゲルへの変換を促進する薬剤の水溶液とすることができるが、神経伝達物質、例えば、GABA、ドーパミン、若しくはアセチルコリン、又はヒスタミンのような薬理学的に活性な薬剤をまた又は付加的に含んでもよい。細胞凝集体又は組織片は、代謝を低下させるために移植の間に冷却されてもよく、それによって細胞生存を改善する。
【0077】
側部チャネル86はまた、特に、組織からのピン81の引き出しの間に流体材料を吸引するために使用されることができる。軸線方向に配置されたチャネル85は、その遠位端で開いていても塞がれていてもよく、(示されない)プラグは、永久的な材料、又は架橋ゼラチンのような経時的に溶解又は分解されるものからなる。金属層84を欠く第5の実施形態の変形はまた、可撓性管83又はその遠位端80’から近位方向に延在するその一部を欠く変形と同様に、本発明に含まれ、このような場合、可撓性管83は、高い導電性の金属管に置き換えられる。半径方向平面(図12b)に配置された4つのチャネル86のように半径方向に延在するチャネル86は、軸線方向に配置されたチャネル85から可撓性管83及び金属層84の壁を通って延在するが、乾燥ゼラチン層82を通って延在しない。半径方向に延在するチャネル86の周辺末端部分は、水性流体において溶解可能な材料のプラグ87(図12c)によって塞がれてもよい。それらの提供は、半径方向に延在するチャネル86を詰まらせないように乾燥ゼラチン層82を形成するためにピン81をゼラチンで覆うことを容易にする。
【0078】
実施例10.摩擦低減層を含む、本発明による装置の第5の実施形態の第1の改変
【0079】
図13図13a、図13b、図13cに示される本発明の装置の実施形態90は、同じ軸線方向に延在する乾燥ゼラチン層82’において摩擦低減層89を含む以外は、図12図12a、図12b、図12cに対応する。参照番号81’及び83’から88’は、図12図12a、図12b、図12cの実施形態の特徴81及び83から88と同じ種類の特徴を示す。中心軸線A+-A+は、図12の中心軸線A**-A**に対応する。参照番号90’及び90’’は、それぞれピン81’の遠位端及び近位端を示す。断面B+-B+は、図12aの断面B-Bに対応する。
【0080】
実施例11.摩擦低減層を含む、本発明による装置の第5の実施形態の第2の改変
【0081】
図14に示される本発明の装置の実施形態91は、2つの隣接する層92、93を、層92、93の全延在と同じ軸線方向の延在の乾燥ゼラチン層82’’において含むことを除いて、図12図12a、図12bの実施形態80に対応する。
【0082】
近位に配置された層92は、装置91を神経組織の中に挿入することによって形成されるチャネルからの出血を低減させる凝固剤を含み、一方、遠位に配置される層93は、ピン81’’の挿入の間の細胞の損傷を最小化するために、摩擦低減層、例えば、糖タンパク質系粘液の1つである。参照番号82’’、86’’、及び88’’は、図12図12a、図12bの実施形態の特徴82、86、及び88と同じ種類の特徴を示す。中心軸線A++-A++は、図12の中心軸線A**-A**に対応する。参照番号91’及び91’’は、それぞれピン81’’の遠位端及び近位端を示す。
【0083】
実施例12.ピンがゲル形成薬剤の1つ以上の層で覆われる、本発明の装置の実施形態
【0084】
図15図15a、図15b、図15cは、本発明の装置100、100a、100b、100cを主に示し、それらのピン101の円筒形面は、近位端から短い距離で延在する部分を除いて、様々な配置のゲル形成薬剤の1つ以上の層によって覆われる。図15の実施形態100においては、ピン101は、ゲル形成薬剤の1つの層102によって覆われる。図15aの実施形態100aにおいては、ピン101は、ゲル形成薬剤の外側層103によって覆われたゲル形成薬剤の内側層102によって覆われる。図15bの実施形態100bにおいては、ピン101は、その遠位端から近位端に向かって約半分の距離に延在する第1の層104によって、及び第1の層104の近位端に当接し、そこからピン101の近位端の近傍に延在する第2の層102によって覆われる。図15cの実施形態100cにおいては、ピン101は、図11bの実施形態の層と同じように配置された2つの内側層102、104によって覆われ、内側層102、104は、続いて外側層103によって覆われる。
【0085】
実施例13.水性ゲルの1つ以上の層で充填された本発明の神経組織におけるチャネルの実施形態
【0086】
図16図16a、図16b、図16cは、神経組織105から滲出した水性体液と接触することによって、図15図15a、図15b、図15cにそれぞれ示される本発明の装置100、100a、100b、100cのピン101において乾燥ゲル形成薬剤102、103、104の対応する層から形成された水性ゲル102*、103*、104*の1つ以上の層で充填された本発明の神経組織105におけるチャネルを主に示す。図16のチャネルは、水性ゲル102*で均一に充填される。図16aのチャネルは、チャネルの円筒形の組織壁に当接する管状のゲルシリンダ103*によって取り囲まれた中心のゲルシリンダ102*で充填される。図16bの円筒形のチャネルの底部からその高さの約半分に延在する部分は、第1の水性ゲル104*で充填され、チャネルの残りの上側部分は、第2の水性ゲル102*で充填される。図16cのチャネルの中心の円筒形の部分は、図16bと同じ配置で第1の水性ゲル104*及び第2の水性ゲル102*で充填され、層102*、104*を組合せた高さに亘って延在する水性ゲルの管状層103*によって取り囲まれる。ゲル形成薬剤の特性を適合させることによって、例えば、所望の粘度又は生物分解に対する耐性の水性ゲルが設計されることができる。また、非ゲル化薬剤、例えば、薬理学的に活性な薬剤及び栄養剤を乾燥ゲル形成層に組み込んで、非ゲル化薬剤を含む対応する水性ゲルを生成することが可能である。
【0087】
実施例14.本発明の方法の改変
【0088】
本発明によれば、物理的に安定化された生細胞の凝集体又は軟組織片の、水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルの中への注入のために、実施例8及び9に開示されるような軸線方向通路を含む本発明の装置のピンを使用することが実行可能である。実施例8及び9の装置は、実施例2に開示された挿入ガイドのような、前端及び遠位端を有し、それを、装置のピンが挿入された水性ゲルで充填された軟組織におけるチャネルに対して固定するための手段を含む管状挿入ガイドと組み合わせ、それに挿入されることができる。
【0089】
実施例15.胚組織培養
【0090】
本発明による移植のための組織は、幹細胞若しくは胚細胞から培養された臓器様組織、又は胎児若しくは若年の脳若しくは脊髄組織の薄片(片)の何れかとすることができる。このような組織片又は薄片は、架橋ゼラチン又はマトリゲルのような細胞外物質において培養され、細胞外物質の混合物の大部分がコラーゲンである。このような移植のための本発明のチャネルの使用は、ホストの脳又は脊髄における移植のための許容される環境を作り出す。
【0091】
移植のために選択された組織は、この目的のために、特異的に調製され、病原体がないことが必要である。調製の1つの種類は、培地からチャネルのゲルに移すことに適した固体支持体において組織薄片又は片を培養することである。魅力的な解決策は、ゲルに直接移されることができる支持体において移植片を成長させることである。乗り物として機能する支持体は、有利には、カニューレ又はピペットの管腔において処分可能な形態であるべきである。
【0092】
この問題の魅力的な解決策は、組織を架橋ゼラチンの平坦なシートに移し、それと、それが配置された少なくともシートの面とを生体適合性繊維の不織ウェブで覆うことであって、ウェブは、樹状突起及び軸索の成長を可能にするように充分に緩んでいる。架橋ゼラチン以外の特に好適な繊維質材料は、絹及びフィブリンを含む。
図1
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図4a
図5
図5a
図6
図7
図8
図9
図10
図11-11a】
図12-12a】
図12b
図12c
図13-13a】
図13b
図13c
図14
図15
図15a
図15b
図15c
図16
図16a
図16b
図16c