(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】リン酸化ポリ(エステル-尿素)ベースの分解性骨接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/02 20060101AFI20220203BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220203BHJP
A61L 24/04 20060101ALI20220203BHJP
A61L 24/02 20060101ALI20220203BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C09J175/02
C09J11/04
A61L24/04 200
A61L24/02
A61L24/00 260
A61L24/00 300
A61L24/00 200
(21)【出願番号】P 2018556457
(86)(22)【出願日】2017-04-25
(86)【国際出願番号】 US2017029342
(87)【国際公開番号】W WO2017189534
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-23
(32)【優先日】2016-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505395700
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ アクロン
【氏名又は名称原語表記】The University of Akron
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】バガット, ヴルシャリ ディンカー
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516757(JP,A)
【文献】国際公開第2016/014471(WO,A1)
【文献】米国特許第09023972(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
A61L
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
C07F1/00-5/06;9/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの炭素原子を介して1つ以上の側鎖に共有結合するリン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマー骨格と、
二価の金属の塩を含む架橋剤と、を含む、ポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤。
【請求項2】
前記PEUポリマー骨格は、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択されるアミノ酸の残基を含む、請求項1に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項3】
前記PEUポリマー骨格が、1つ以上のリン酸化L-セリン分子の残基を含む、請求項1に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項4】
リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有する前記PEUポリマー骨格が、
2~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化アミノ酸を含む第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーの残基と、
2~20個の炭素原子によって分離された2個のアミノ酸を含む第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーの残基と、をさらに含む、請求項1に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項5】
前記第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが2個のリン酸化L-セリン分子を含む、請求項4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項6】
前記第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが次式
【化14】
(式中、aは
1~19の整数である)を有する、請求項4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項7】
前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択される2個のアミノ酸を含む、請求項4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項8】
前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、バリンまたはイソロイシンを含む、請求項4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項9】
前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが次式
【化15】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~
19の整数である)を有する、請求項4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項10】
前記PEUポリマー骨格が次式
【化16】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~
19の整数であり、m
は1%
~20%のモル%であり、n
は、80%
~99%のモル%である)を有する、請求項1または4に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項11】
前記架橋剤が、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛およびこれらの組み合わせからなる群から選択される二価の金属の塩である、請求項1に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項12】
前記架橋剤
を1モル%
~20モル%
含む、請求項1に記載のPEUベースの接着剤。
【請求項13】
請求項1に記載のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を製造する方法であって、
A.少なくとも1つの炭素原子を介して1つ以上の側鎖に共有結合するリン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーを調製することと、
B.二価の金属の塩からなる架橋剤を添加することと、を含む、方法。
【請求項14】
リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有する前記PEUポリマーと二価の金属の塩を含む前記架橋剤とのモル比が
、1:1
~10:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有する前記PEUポリマーが、次式
【化17】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~
19の整数であり、m
は1%
~20%のモル%であり、nは
、80%
~99%のモル%である)を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
PEUポリマーを調製するステップ(ステップA)が、
1.1~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化アミノ酸を含む第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを調製するステップと、
2.2~20個の炭素原子によって分離された2個のアミノ酸を含む第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを調製するステップと、
3.前記第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーおよび前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーをホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンと反応させて、前記第1および第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーの間に尿素結合を導入してステップAの前記PEUポリマーを形成するステップと、をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、2~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化セリン分子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択され、2~20個の炭素原子によって分離された2個のアミノ酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、バリンまたはイソロイシン分子を含む、請求項16または18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を使用して骨を骨に、または骨を金属に結合する方法であって、
A.接合される第1の表面と第2の表面とを調製するステップと、
B.少なくとも1つの炭素原子を介して1つ以上の側鎖に共有結合するリン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーを調製するステップと、
C.ステップAの前記PEUポリマーに二価の金属の塩を含む架橋剤を混合して、請求項1に記載のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を形成するステップと、
D.ステップCの前記PEUポリマー/架橋剤混合物を、接合される前記第1および第2の表面の一方または両方に塗布するステップと、
E.前記第1の表面と前記第2の表面とを互いに接合させて配置するステップと、
F.請求項1に記載のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を架橋させ、前記第1の表面と前記第2の表面との間に結合を形成させるステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年4月28日に出願され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国仮特許出願第62/328,653号発明の名称「リン酸化されたポリ(エステル-尿素)ベースの分解性骨接着剤」の利益を主張する。
連邦支援研究に関する声明または開発支援
【0002】
本発明は、国家科学財団によって授与された契約番号DMR-1507420およびDMR-1359321および国防総省医療研究開発プログラムのCombat Casualty Careからの契約番号W81XWH-15-1-0718による政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、分解性および再吸収性の医学的および生物学的接着剤に関する。特定の実施形態では、本発明は、骨接着剤として特に有用な、リン酸化ポリ(エステル-尿素)(PEU)をベースとした分解性および再吸収性接着剤に関する。
【背景技術】
【0004】
骨および組織接着剤は、創傷治癒、止血、組織再建および薬物送達における、外科手術内でそれらを補助するために不可欠である。骨外科手術における古典的な構造的選択肢としては、支持体としての金属板、ピンおよびねじの使用が挙げられる。これらの選択肢は、安全かつ使用可能である一方で、aseptic loosening(無菌性のゆるみ)、骨への不十分な固定に悩まされ、隣接する軟部組織への刺激を引き起こし、患者に不快感を与え、骨再生後に交換または除去する必要がある。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)骨セメントもまた、骨外科手術において一般に使用されるが、重大な欠点を有する。特に、PMMA骨セメントは本質的に接着性ではなく、化学的相互作用を有さず、著しい発熱を引き起こす可能性があり、収縮しやすい。シアノアクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂およびリン酸カルシウムまたはリン酸マグネシウムセラミック骨セメントのような合成グルーを骨接着剤として使用しようとする試みは、骨表面との相互作用の欠如または強度の不足のために奏功していない。分解性および高い接着強度を有する代替的な骨接着剤は、現在、関心のある臨床標的である。
【0005】
リン酸塩ベースの化合物は、水中コーティング、歯科用途、骨インプラント、フィラーおよび金属基材において、数十年にわたって接着促進剤として使用されている。いくつかの研究では、骨結合の有意な改善を示すリン酸官能基化重合体骨移植片の接着または結合強度および骨伝導能が実証されている。ムラサキイガイ、フジツボ、ヒトデ、サンドキャッスルワーム、トビケラなどの特定の海洋生物は、強い結合特性を有する自身の水中接着剤を合成するように進化している。トビケラ接着性シルクに関する研究では、(SX)4モチーフの形態のホスホセリン(pSer)残基の存在が確認されている(式中、Sはセリンであり、Xが通常バリンまたはイソロイシンである)。元素分析はまた、Ca2+およびMg2+などの二価陽イオンの存在を示し、これは、pSer中のリン酸基との強い静電相互作用を受けて、繊維に強度を付与した。トビケラ接着性は、接着フィラメントの著しくリン酸化された領域から生じるものである。
【0006】
ポリ(エステル尿素)(PEU)は、代謝成分への分解、調節可能な機械的特性、インビトロおよびインビボでの広範な機能性および無毒性など、それらの魅力的な性質のために、生体材料用途に適したポリマーのクラスである。当業界で必要とされているのは、トビケラ接着性シルクに見られる接着特性およびPEUポリマーに見られる有益な特性を有する、骨に使用するための接着剤である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な態様において、本発明は、分解可能であり、再吸収可能な新規リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤、ならびにその合成および使用のための関連方法を提供する。これらの接着剤は、1種以上の二価金属架橋剤を用いて架橋されたリン酸官能基化PEUポリマーおよびコポリマーから形成され、トビケラ接着性シルクの特性を模倣するように設計され作製された。本発明の様々な実施形態のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤は、骨または金属のいずれかに骨を結合させるのに特に有効であることが見出されており、骨サンプルにおいて有意(439±203KPa)であり、市販のポリ(メチルメタクリレート)骨セメント(530±133KPa)と同程度の接着強度を示している。これらのリン酸官能基化PEUポリマーおよびコポリマーは、OGPまたはBMP-2などの成長ペプチドの存在下で、整形外科用接着剤、脊髄損傷のための足場材料および整形外科修復物として有意な潜在力を有し、インビトロおよびインビボで分解可能であると考えられている。
【0008】
第1の態様では、本発明は、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマー主鎖と、二価の金属の塩を含む架橋剤と、を含むポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤に関する。いくつかの実施形態では、PEUポリマー鎖は、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択されるアミノ酸の残基を含む。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、PEUポリマー鎖が、1つ以上のリン酸化されたL-セリン分子の残基を含む、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0009】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、PEUポリマー主鎖が、2~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化アミノ酸を含む第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーの残基、および2~20個の炭素原子によって分離された2個のアミノ酸を含む第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーの残基をさらに含むリン酸基を含む1つ以上の側鎖を有する、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、2個のリン酸化L-セリン分子を含む、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0010】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、次式:
【化1】
(式中、aは約1~約20の整数である)を有する、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0011】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択される2個のアミノ酸を含む、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、バリンまたはイソロイシンを含む、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0012】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤は、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、次式:
【化2】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~20の整数である)を有する、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0013】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、次式:
【化3】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~20の整数であり、mは約1%~約20%のモル%であり、nは、約80%~約99%のモル%である)を有する本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0014】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、架橋剤が、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される二価の金属の塩である、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。1つ以上の実施形態において、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤は、架橋剤が、PEUベースの接着剤の約1モル%~約20モル%である、本発明の第1の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0015】
第2の態様では、本発明は、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーを調製することと、二価の金属の塩を含む架橋剤を添加することと、を含む、ポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を製造する方法に関する。いくつかの実施形態では、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーと二価の金属の塩を含む架橋剤とのモル比は、約1:1~約10:1である。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーが上記の式VまたはVIを有する、本発明の第2の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0016】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、本発明の第2の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられ、PEUポリマーを調製するステップは、1~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化アミノ酸を含む第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを調製することと、2~20個の炭素原子によって分離された2個のアミノ酸を含む第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを調製することと、第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーおよび第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーをホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンと反応させて、第1および第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマー間に尿素結合を導入してPEUポリマーを形成することと、をさらに含む。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、2~20個の炭素原子によって分離された2個のリン酸化セリン分子を含む、本発明の第2の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0017】
1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、アラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)からなる群から選択される2個のアミノ酸を含み、2個のアミノ酸は、2~20個の炭素原子によって分離されている、本発明の第2の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。1つ以上の実施形態では、本発明のポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤としては、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、バリンまたはイソロイシン分子を含む、本発明の第2の態様の上記で言及した実施形態のうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0018】
第3の態様では、本発明は、ポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を使用して骨を骨に、または骨を金属に結合する方法に関し、本方法は、接合される第1の表面および第2の表面を調製することと、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマーを調製することと、PEUポリマーに二価の金属の塩を含む架橋剤を混合して、ポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を形成することと、PEUポリマー/架橋剤混合物を、接合する第1および第2の表面の一方または両方に塗布することと、接合する第1の表面および第2の表面を互いに接触させることと、ポリ(エステル尿素)(PEU)ベースの接着剤を架橋させ、これにより第1の表面と第2の表面との間に結合を形成することができることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の特徴および利点のより完全な理解のために、ここで添付図面とともに本発明の詳細な説明を参照する。
【数1】
が、骨への接着を促進する骨表面の正電荷とどのように相互作用するかを示す概略図である。ヨウ化カルシウム由来のCa
2+(架橋剤)は、ポリマーのバルク中のリン酸基と相互作用して凝集力を生じさせる。
【
図2A-2B】5%ポリ(SerDPP-co-Val)(上段)および5%ポリ(pSer-co-Val)(下段)の
1H NMRスペクトル(
図2A)、ならびに5%ポリ(SerDPP-co-Val)(上段)および5%ポリ(pSer-co-Val)(下段)の
31P NMRスペクトルを示すチャートであり、外部標準として85%H
3PO
4を基準とした(
図2B)。挿入図(
図2A)は、
1H NMRスペクトルのδ=7.1~7.3ppmからの倍率を示す。ジフェニル保護基の特徴的なピークは、脱保護後に消失し、δ=4.0~4.5ppmである。δ=約4.37ppmのトリプレットは、脱保護リン酸基に付着したメチレン基のプロトン環境の特徴である。これは、脱保護前には顕著ではない(DMSO-d
6,500MHz,30℃)。
【
図3】5%ポリ(SerDPP-co-Val)の
13C NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図4】5%ポリ(pSer-co-Val)の
13C NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図5】P=O(1040cm
-1)に対応するピークを有するポリ(1,8-Val)、ポリ(SerDPP-co-Val)およびポリ(pSer-co-Val)のATR-IRスペクトルを示し、POストレッチ(710~675cm
-1)が強調表示され、ラベル付けされている図である。
【
図6】2%ポリ(SerDPP-co-Val)の
1H NMRスペクトルである。R基はジフェニル保護ホスフェート基を示す。挿入図は、ジフェニル保護基の芳香族ピークを示す(DMSO-d
6,500MHz,30℃)。
【
図7】2%ポリ(pSer-co-Val)の
1H NMRスペクトルである。R’は、脱保護されたリン酸基を示す。挿入図(a)は、7.0~7.25ppmの間での芳香族ピークの消失を示し、ジフェニル基の脱保護が確認される。挿入図(b)は、脱保護されたリン酸基に付着したメチレン基のプロトン環境に対応する4.36ppm付近にトリプレットの存在を示す(DMSO-d
6,500MHz,30℃)。
【
図8】2%ポリ(SerDPP-co-Val)の
13C NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図9】2%ポリ(pSer-co-Val)の
13C NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図10】2%ポリ(SerDPP-co-Val)の
31P NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図11】2%ポリ(pSer-co-Val)の
31P NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図12】ポリ(1,8-Val)、5%ポリ(SerDPP-co-Val)、2%ポリ(SerDPP-co-Val)、5%ポリ(pSer-co-Val)、および2%ポリ(pSer-co-Val)のガラス転移温度(T
g)を決定するために使用したDSC曲線を示すグラフである。リン酸官能基化ポリマーのT
gは、ポリマー骨格鎖の官能性が低いため、脱保護後に有意な変化を示すことはない。
【
図13】ポリ(1,8-Val)、5%ポリ(SerDPP-co-Val)、2%ポリ(SerDPP-co-Val)、5%ポリ(pSer-co-Val)および2%ポリ(pSer-co-Val)の分解温度(T
d)を決定するために使用した熱重量分析曲線を示すグラフである。ジフェニル基の脱保護後、分解温度のわずかな低下が観察される。
【
図14-1】室温でアルミニウム被着体に対して実施された重ね剪断接着研究の結果を示す。
図14Aは、Val-ポリ(1-Val-8)、それぞれ、2%および5%pSer-2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、2%および5%の架橋剤-0.3当量のCa
2+で架橋した架橋剤2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、ならびに市販の骨セメント(Simplex P)の接着強度を示すグラフである。接着強度は平均10回(n=10)繰り返して計算し、標準誤差と共に記録した。アルミニウム被着体は、すべてのサンプルにおいて接着不良を示している:ポリ(1-Val-8)(
図14B)、2%ポリ(pSer-co-Val)(
図14C)、5%ポリ(pSer-co-Val)(
図14D)、0.3当量のCa
2+で架橋した2%ポリ(pSer-co-Val)(
図14E)、0.3当量のCa
2+で架橋した5%ポリ(pSer-co-Val)(
図14F)、およびポリ(メチルメタクリレート)骨セメント(
図14G)。
【
図14-2】室温でアルミニウム被着体に対して実施された重ね剪断接着研究の結果を示す。
図14Aは、Val-ポリ(1-Val-8)、それぞれ、2%および5%pSer-2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、2%および5%の架橋剤-0.3当量のCa
2+で架橋した架橋剤2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、ならびに市販の骨セメント(Simplex P)の接着強度を示すグラフである。接着強度は平均10回(n=10)繰り返して計算し、標準誤差と共に記録した。アルミニウム被着体は、すべてのサンプルにおいて接着不良を示している:ポリ(1-Val-8)(
図14B)、2%ポリ(pSer-co-Val)(
図14C)、5%ポリ(pSer-co-Val)(
図14D)、0.3当量のCa
2+で架橋した2%ポリ(pSer-co-Val)(
図14E)、0.3当量のCa
2+で架橋した5%ポリ(pSer-co-Val)(
図14F)、およびポリ(メチルメタクリレート)骨セメント(
図14G)。
【
図15A-15C】室温でのウシ骨の端々接着を測定する比較による接着強度測定に関する図である。
図15Aは、Val-ポリ(1-Val-8)、それぞれ、2%および5%pSer-2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、2%および5%の架橋剤-0.3当量のCa
2+で架橋した2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、ならびにセメント-市販のPMMA骨セメント(Simplex P)を用いた室温でのウシ骨に対して行った端々接着試験の結果を示すグラフである(接着強度は3回繰り返しの平均(n=3)から計算し、標準誤差と共に報告している)。
図15Bは、ウシの骨サンプル(左)の端々接着およびテクスチャーアナライザー(右)の端々接着検査設定を示す画像を示す概略図である。
図15Cは、0.3当量のCa
2+で架橋した5%ポリ(pSer-co-Val)の凝集不良を示す画像である。
【
図16】ポリマーでのMC3T3細胞の標準化された細胞生存率を示すグラフである。
【
図17】異なるポリマーでのアスペクト比の比較を示すグラフである。MC3T3細胞は、すべてのサンプルにおいて同様の拡散挙動を示す。
【
図18】ビス(L-バリン)-1,8-オクタニルジエステル(M1)のジ-p-トルエンスルホン酸の塩の
1H NMRスペクトルを示す図である(DMSO-d
6,300MHz,30℃)。
【
図19】(a)ビス-N-boc-O-ベンジル(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M2)、(b)ビス-N-boc(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M3)、(c)ビス-N-boc-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M4)、(d)ビス-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M5)の二塩酸塩のホスホセリンモノマー合成の
1H NMRスペクトルの比較を示すグラフである(DMSO-d
6,300MHz,30℃)。
【
図20】ビス-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M5)の二塩酸塩の
1H NMRスペクトル(DMSO-d
6,300MHz,30℃)を示す図である。
【
図21】ビス-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M5)の二塩酸塩のESI-マススペクトルを示す図である。
【
図22】ポリ(1-Val-8)の
1H NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図23】は、ポリ(1-Val-8)の
13C NMRスペクトル(DMSO-d
6,300MHz,30℃)を示す図である。
【
図24】は、5%ポリ(SerDPP-co-Val)の
1H NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図25】は、5%ポリ(SerDPP-co-Val)の
31P NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図26】は、5%ポリ(pSer-co-Val)の
1H NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【
図27】は、5%ポリ(pSer-co-Val)の
31P NMRスペクトル(DMSO-d
6,500MHz,30℃)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な態様において、本発明は、強力で、分解可能であり、再吸収可能な新規リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤、ならびにその合成およびその使用のための関連する方法を提供する。上記のように、これらの接着剤は、1種以上の二価の金属架橋剤を用いて架橋されたリン酸官能基化アミノ酸ベースPEUポリマーおよび/またはコポリマーから形成される。これらは、骨または金属のいずれかに骨を結合させるのに特に有効であることが見出され、かつ骨サンプルへの有意である接着強度(439±203KPa)、および市販のポリ(メタクリル酸メチル)骨セメントと同程度である接着強度(530±133KPa)を実証している。これらのリン酸官能基化PEUポリマーおよびコポリマーは、OGPまたはBMP-2などの成長ペプチドの存在下で、整形外科用接着剤、脊髄損傷のための足場材料および整形外科修復物として有意な潜在力を有し、インビトロおよびインビボで分解可能であると考えられている。
【0021】
第1の態様では、本発明は、リン酸官能基を有する1つ以上のアミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマー、ならびに架橋剤から形成されたリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤に関する。これらのアミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーは、リン酸基を含む1つ以上の側鎖を有するPEUポリマー主鎖を有し、これらは、様々なまたはアミノ酸ベースのポリエステルセグメントから構成され、それぞれが約1~約60個の炭素原子によって分離された2つまたは3つの残基を含み、尿素結合によって互いに結合している。
【0022】
いくつかの実施形態では、これらのポリエステルモノマーセグメントは、それぞれ、約2~約20個の炭素の長さの直鎖炭素鎖、または約2~約60個の炭素原子の長さの分岐炭素鎖によって分離されたアラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン、(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、セリン(ser-S)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、およびバリン(val-V)からなる群から選択される2つ以上のアミノ酸の残基を含む。いくつかの実施形態では、これらのポリエステルモノマーセグメントのそれぞれは、同じアミノ酸を2つ有し得るが、いくつかの他の実施形態では、これらのポリエステルモノマーセグメントの一部またはすべてが2つの異なるアミノ酸を有し得る。これらの実施形態の一部では、これらのポリエステルモノマーセグメントの少なくとも一部は、約2~約20個の炭素原子によって分離された1つ以上のリン酸化L-セリン、スレオニンまたはチロシン分子の残基を含む。これらの実施形態の一部では、これらのポリエステルモノマーセグメントは、約2~約20個の炭素原子によって分離された2つのバリンまたはイソロイシン分子の残基を含む。
【0023】
上述のように、いくつかの実施形態では、ポリエステルモノマーセグメントを形成するアミノ酸残基は、約2~約20個の炭素原子の直鎖炭素鎖または約2~約60個の炭素原子の分岐炭素鎖によって分離される。いくつかの実施形態では、ポリエステルモノマーセグメントを形成するアミノ酸残基は、約3~約20個の炭素原子、他の実施形態では約4~約20個の炭素原子、他の実施形態では約6~約20個の炭素原子、他の実施形態では約8~約20個の炭素原子、他の実施形態では約10~約20個の炭素原子、他の実施形態では約2~約18個の炭素原子、他の実施形態では約2~約16個の炭素原子、他の実施形態では約2~約14個の炭素原子、他の実施形態では約2~約12個の炭素原子の直鎖炭素鎖によって分離される。いくつかの実施形態では、ポリエステルモノマーセグメントを形成するアミノ酸残基は、約5~約60個の炭素原子、他の実施形態では約10~約60個の炭素原子、他の実施形態では約15~約60個の炭素原子、他の実施形態では約8~約20個の炭素原子、他の実施形態では約20~約60個の炭素原子、他の実施形態では約2~約50個の炭素原子、他の実施形態では約2~約40個の炭素原子、他の実施形態では約2~約30個の炭素原子、他の実施形態では約2~約20個の炭素原子の分岐炭素鎖によって分離されている。いくつかの実施形態において、ポリエステルモノマーセグメントを形成するアミノ酸残基は、8個の炭素原子によって分離されている。
【0024】
1つ以上の実施形態において、ポリエステルモノマーセグメントのいくつかは、
式:
【化4】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~20の整数である)を有する。
【0025】
1つ以上の実施形態において、ポリエステルモノマーセグメントのいくつかは、
式:
【化5】
(式中、aは1~20の整数である)を有する。これらの実施形態の1つ以上において、aは7である。
【0026】
1つ以上の実施形態において、ポリエステルモノマーセグメントのいくつかは、
式:
【化6】
(式中、aは1~20の整数である)を有してもよい。
【0027】
様々な実施形態において、本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を形成するポリエステルモノマーセグメントの約1モル%~約30モル%は、少なくとも1つのリン酸側鎖を有する。いくつかの実施形態では、本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を形成するポリエステルモノマーセグメントの約2モル%~約25モル%、他の実施形態では約2モル%~約20モル%、他の実施形態では約2モル%~約15モル%、他の実施形態では約2モル%~約12モル%、他の実施形態では約2モル%~約10モル%は、少なくとも1つのリン酸側鎖を有する。
【0028】
1つ以上の実施形態において、本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤は、少なくとも1つのリン酸側鎖を有する1つ以上の第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントと、リン酸側鎖を有さない上記の1つ以上の第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントと、を含むコポリマーである。これらの実施形態の1つ以上において、本発明の第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、約1~約20個の炭素原子の直鎖炭素鎖によって分離された2個のリン酸化L-セリン分子の残基を含む。これらの実施形態のいくつかでは、本発明の第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、上に示した式IXを有する。
【0029】
これらの実施形態のいくつかでは、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、上記のように約2~約20個の炭素の長さの炭素鎖によって分離された2つのアラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)分子の残基を含む。これらの実施形態の他のいくつかでは、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、上記のように3~約60個の炭素の長さの分岐炭素鎖によって分離されたこれらのアミノ酸分子の3つまたは4つの残基を含む。様々な実施形態において、これらのセグメントは、上記の式VIIまたはVIIIを有することができる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、上記のように、1~20個の炭素原子によって分離された2個のバリンまたは2個のイソロイシン分子の残基を含む。いくつかの実施形態では、第2の第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、8個の炭素原子によって分離された2つのバリン分子の残基を含む。
【0030】
明らかなように、第1および第2のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、尿素結合によって互いに連結されている。第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、約0.5モル%~約20モル%のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)コポリマーを含むことが予想される。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーセグメントは、約1モル%~約20モル%、他の実施形態では約2モル%~約20モル%、他の実施形態では約4モル%~約20モル%、他の実施形態では約1モル%~約15モル%、他の実施形態では約1モル%~約10モル%、他の実施形態では約2モル%~約8モル%の本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)コポリマーを含む。
【0031】
様々な実施形態において、これらのリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)コポリマーは、式:
【化7】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~20の整数であり、mは約1%~約20%のモル%であり、nは、約80%~約99%のモル%である)を有する。
【0032】
いくつかのこれらの実施形態では、aは2~20の整数、他の実施形態では2~20、他の実施形態では4~20、他の実施形態では6~20、他の実施形態では8~20、他の実施形態では2~18、他の実施形態では2~14、他の実施形態では2~10の整数である。これらの実施形態のいくつかでは、mは2%から20%のモル%、他の実施形態では4モル%から20モル%、他の実施形態では6モル%から20モル%、他の実施形態では8モル%から20モル%、他の実施形態では2モル%~16モル%、他の実施形態では2モル%~14モル%、他の実施形態では2モル%~12モル%である。いくつかのこれらの実施形態では、nは84モル%~99モル%、他の実施形態では88モル%~99モル%、他の実施形態では92モル%~99モル%、他の実施形態では96モル%~99モル%、他の実施形態では80モル%~97モル%、他の実施形態では80モル%から93モル%、他の実施形態では80モル%から90モル%、他の実施形態では80モル%から85モル%である。
【0033】
上記のように、本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤は、二価の金属架橋剤の残基をさらに含む(
図1を参照されたい)。本明細書において架橋剤に適用される用語「金属」は、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属を含むと理解すべきである。好適な二価の金属としては、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0034】
様々な実施形態において、リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)ポリマーおよび/またはコポリマー対の接着剤を架橋する二価の金属イオンのモル比は、約1:1~約10:1である。いくつかの実施形態では、リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)ポリマーまたはコポリマー対二価の金属イオンのモル比は、約2:1~約10:1、他の実施形態では約4:1~約10:1、他の実施形態では約6:1から約10:1、他の実施形態では約1:1から約8:1、他の実施形態では約1:1から約6:1、他の実施形態では約1:1~約4:1、他の実施形態では約2:1~約8:1、および他の実施形態では約3:1~約7:1である。
【0035】
第2の態様において、本発明は、上記リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤の製造方法に関する。一般的概要において、この方法は、少なくともいくつかがリン酸側基を有する様々なポリエステルモノマーからアミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーを形成することと、それを二価の金属の塩を含む架橋剤と組み合わせて、リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を形成することと、を伴う。
【0036】
上記のように、アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーを形成するために使用されるアミノ酸ベースのポリエステルモノマーのいくつかは、長さが1~約20個炭素の炭素鎖によって分離された2つのアラニン(ala-A)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、またはバリン(val-V)分子から構成される。いくつかの実施形態では、これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは同じアミノ酸を2つ有するが、これは必須ではなく、2つの異なるアミノ酸を有する実施形態が可能であり、本発明の範囲内である。様々な実施形態において、アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーを形成するために使用されるこれらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを形成するアミノ酸は、上記のとおり、約2~約20個の炭素原子の直鎖炭素鎖または約2~約60個の炭素原子の分岐炭素鎖によって分離される。これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、上記リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を形成するために使用されるアミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーの一部を形成するが、接着性リン酸側鎖は含まない。
【0037】
1つ以上の実施形態において、これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、約1~約20個の炭素原子によって分離された2つのバリン分子を含むことができる。いくつかの実施形態では、これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、
式:
【化8】
(式中、Rは-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、aは1~20の整数である)を有してもよい。
【0038】
様々な実施形態において、これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、スキーム1に示されるように、選択されたアミノ酸とポリオールとの反応から形成され得る。
スキーム1
【化9】
【0039】
スキーム1に示される実施形態において、選択されるアミノ酸は、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、および/またはバリン(R=-CH3、H、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)2SCH3、-CH2Ph-、-CH(OH)CH3、-CH2-C=CH-NH-Ph、-CH2-Ph-OH、または-CH(CH3)2)であり、C1~C20ジオールと反応させるが、本発明はそれに限定されない。様々な実施形態において、選択されたアミノ酸は、2~60個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状のポリオールと反応させることができる。様々な実施形態において、ポリオールは、ジオール、トリオール、またはテトラオールであり得る。上記スキーム1に示されるポリオールは、2~20個の炭素原子を有するジオールである。これらの実施形態のいくつかでは、ポリオールは、2~17個の炭素原子、他の実施形態では2~13個の炭素原子、他の実施形態では2~10個の炭素原子、他の実施形態では10~20個の炭素原子を有するジオールである。好適なポリオールは、これらに限定されないが、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、7-オクテン-1,2-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテル、3-アリルオキシ-1,2-ジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)ジペンタエリスリトール、およびこれらの組み合わせを挙げることができる。実施形態において、ポリオールは、1,6-ヘキサンジオールであってもよく、Sigma Aldrich Company LLC(St.Louis,Missouri)またはAlfa Aesar(Ward Hill,Massachusetts)より入手可能である。
【0040】
これらのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーを生成するためのポリオールとアミノ酸との反応は、当業者に一般的に公知である任意の数の方法で達成することができる。一般に、ヒドキシ基に対してわずかなモル過剰(約2.1当量)の酸を伴う水の沸点を超える温度での縮合反応は、反応を進行させるのに十分である。
【0041】
スキーム1に示される反応において、アミノ酸出発物質およびポリオールは、好適な酸を用いて好適な溶媒に溶解され、110℃~約114℃の温度まで加熱され、約20時間から約48時間還流させて、使用されるポリオールに依存して約2~約60個の炭素原子によって分離された2つ以上のアミノ酸残基を有するモノマーの塩を形成する。当業者は、過度の実験をすることなく好適な酸を選択することができるであろう。いくつかの実施形態では、使用される酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物であってもよい。当業者は、過度の実験をすることなく好適な溶媒を選択することもできるであろう。好適な溶媒としては、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、使用される溶媒はトルエンである。
【0042】
当業者には明らかであるように、モノマー中間体のアミン基を保護して、アミノ基転移を防ぐためのステップとするべきである。スキーム1の反応において、アミノ酸のアミンをプロトン化し、より高い転化率でアミノ基転移反応が確実に起こらないようにするためには、トルエンスルホン酸(pTSA)の存在が必要である。しかし、本発明は、スキーム1に示される方法に限定されず、当業者は、過度の実験を行うことなくアミノ基転移を防ぐのに適した対イオンを選択することができるであろう。好適な保護対イオンを生成することができる物質としては、これらに限定されないが、p-トルエンスルホン酸一水和物、塩化物、臭化物、酢酸塩、トリクロロアセテート、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、スキーム1に示される反応の粗生成物は、その目的のために当該分野で公知の任意の手段を用いて精製され得る。いくつかの実施形態では、粗生成物を最初に真空濾過して残留溶媒を除去し、活性炭中で脱色して残留塩または未反応モノマーを除去することによって精製する。その後、沸騰水または水とアルコールとの1:1の混合物から1~10回再結晶して精製生成物を生成する。
【0044】
上記のように、本発明のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を形成するアミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーは、リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーの残基をさらに含む。これらのモノマーは、上記のアミノ酸ベースのポリエステルモノマーと全体的な構造が類似しているが、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンアミノ酸分子を含有する代わりに(または加えて)、リン酸化されたアミノ酸ベースのポリエステルモノマーが、保護されたリン酸基で官能基化された1つ以上のセリン、スレオニンまたはチロシン分子を含有する。
【0045】
1つ以上の実施形態において、これらのリン酸化されたアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、式:
【化10】
(式中、上記のとおりaは約1~約60の整数である)を有し得る。上述の非リン酸化アミノ酸ベースのモノマーと同様に、アミド基転移を防ぐためにモノマーのアミン基を保護するためのステップを講じなければならない。ここでも、当業者は、過度の実験をすることなくアミド基転移を防ぐのに適した対イオンを選択することができるであろう。好適な保護対イオンを生成することができる物質としては、これらに限定されないが、p-トルエンスルホン酸一水和物、塩化物、臭化物、酢酸塩、トリクロロアセテート、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
さらに、これらのOH基における副反応を防止するために、リン酸基のOH基を保護するためのステップを講じなければならない。当業者は、これらの副反応を防止するために保護基を結合する方法を知っているであろう。いくつかの実施形態において、フェニル基は、式Iに示されるような保護基として使用されるが、本発明はこれに限定されず、他の適切な保護基を使用してもよい。
【0047】
1つ以上の実施形態では、リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、保護されたセリン、スレオニンまたはチロシン分子と、非リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーに関して上記で同定されたポリオールのいずれかとの間の縮合反応が行われ、次いで、保護されたリン酸基を付加することによって形成され得る。いくつかの実施形態において、リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、以下のスキーム2に示すように、Bocおよびベンジル保護セリン分子およびC
2~C
20ジオールから形成され得る。
スキーム2
【化11】
式中、aは1~19の整数である。
【0048】
スキーム2に示す実施態様では、出発物質(XI)、(XII)およびピリジニウム4-トルエンスルホネート(DPTS)などの活性化剤は、不活性雰囲気下において好適な反応容器内で、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどの好適な溶媒に溶解させる。次に溶液を約-20℃~約20℃の温度に冷却し、N,N‘-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)などのカップリングを加える。この反応は、Bocおよびベンジルで保護されたセリンベースのポリエステル中間体(XIII)を生成する。スキーム2に示す第2の反応では、このBocおよびベンジルで保護されたセリンベースのポリエステル中間体(XIII)を、水素化瓶およびパラジウム炭素触媒を用いてプロトン化したエタノールイソプロパノールなどの好適な溶媒に溶解させて、ビス-N-boc(L-セリン)ポリエステル中間体(XIV)を形成する。第3の反応において、保護されたリン酸基は、ピリジンなどの好適な溶媒に溶解させて、ジフェニルホスホリルクロリド(XV)と反応させることによって、tビス-N-boc(L-セリン)ポリエステル中間体(XIV)に添加し、ビス-N-boc-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)ポリエステル中間体(XVI)を生成する。最後に、ビス-N-boc-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)ポリエステル中間体(XVI)を脱保護し、トリフルオロ酢酸または硫酸などの酸を用いてプロトン化し、対応するリン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマー(I)を生成する。
【0049】
上述したように、少なくとも一部がフェニル保護されたリン酸基を含むアミノ酸ベースのポリエステルモノマーは、PEU形成化合物と反応させて、本発明のアミノ酸ベースのPEUポリマー接着剤に使用されるリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/コポリマーを生成する。本明細書で使用される場合、用語「PEU形成化合物」は、2つのアミン基の間にカルボキシル基を配置し、これにより尿素結合を形成することができる化合物を指し、これらに限定するものではないが、トリホスゲン、ジホスゲン、またはホスゲンが挙げられる。上述したように、ジホスゲン(液体)およびトリホスゲン(固体結晶)は、ホスゲンよりも適切であると理解される。これは、トリホスゲンが有毒ガスであるホスゲンのより安全な代替物として一般に認識されているためである。アミノ酸ベースのPEUポリマーまたはコポリマーを生成するためのアミノ酸ベースのポリエステルモノマーとトリホスゲン、ジホスゲン、またはホスゲンとの反応は、当業者に一般的に公知である任意の数の方法で達成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明のアミノ酸ベースのPEUポリマー接着剤に使用されるリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーは、以下のスキーム3に示すリン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーおよび非リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマーから形成され得る。
スキーム3
【化12】
(式中、R=-CH
3、H、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)
2、-(CH
2)
2SCH
3、-CH
2Ph-、-CH(OH)CH
3、-CH
2-C=CH-NH-Ph、-CH
2-Ph-OH、-CH(CH
3)
2であり、R’は、ジフェニルホスホリル基であり、aは1~20の整数であり、mは約1%~約20%のモル%であり、nは、約80%~約99%のモル%である)。
【0051】
様々な実施形態において、保護されたポリエステルモノマー(I、II)は、リン酸化されたアミノ酸ベースのポリエステルモノマー(II)対非リン酸化アミノ酸ベースのポリエステルモノマー(I)のモル比が約1:99~約1:5であり、他の実施形態では約1:80から約1:70であり、他の実施形態では約1:60から約1:50であり、他の実施形態では約1:40から約1:30であり、他の実施形態では約1:20から約1:15であり、他の実施形態では約1:10から約1:8である。
【0052】
スキーム3のステップ(a)において、保護されたポリエステルモノマー(I、II)は、界面重合法を用いて重合され、ジフェニルホスホリル側基を有するアミノ酸ベースのPEUコポリマー(XVIII)を形成する。本明細書で使用される場合、界面重合とは、2つの非混和性流体の界面境界でまたはその近くで行われる重合を指す。これらの実施形態では、保護されたポリエステルモノマー(I、II)は、トリエチルアミン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの好適な有機水溶性塩基の第1の画分と所望のモル比で混合させ、機械的撹拌および温水浴(約35℃)を用いて水に溶解させる。これらの実施形態の1つ以上において、反応物は、約-10℃~約2℃の温度まで冷却され、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、または重炭酸カリウムなどの有機水溶性塩基の追加の画分を水に溶解させ、次いで反応混合物に加える。反応物は、これらに限定されないが、氷浴、水浴または再循環冷却器など、その目的のための当技術分野で公知の任意の手段によって冷却することができる。
【0053】
次に、トリホスゲン(XVII)ジホスゲンまたはホスゲンなどのPEU形成化合物の第1の画分を、蒸留クロロホルムまたはジクロロメタンなどの好適な溶媒に溶解させて、次いで反応混合物に加える。スキーム3のステップ(a)において、PEU形成化合物はジホスゲンである。当業者は、過度の実験をすることなく、PEU形成化合物に適した溶媒を選択することができるであろう。約2分~約60分後、PEU形成化合物の第2の画分(トリホスゲン、ジホスゲン、またはホスゲンなど)を蒸留クロロホルムまたはジクロロメタンなどの好適な溶媒に溶解させて、約0.5~約6時間かけて反応混合物に滴下し、ジフェニルホスホリル側基を有するセグメントおよび非リン酸化PEUセグメントを含有する粗PEUコポリマーを生成する。スキーム3のステップ(a)の粗生成物は、その目的のために当該分野で公知の任意の手段を用いて精製することができる。いくつかの実施形態において、スキーム3のステップ(a)の粗生成物は、分液漏斗に移し、それを沸騰水中に沈殿させることによって精製してもよい。
【0054】
スキーム3のステップ(b)において、ジフェニルホスホリル側基を有するアミノ酸ベースのPEUコポリマー(XVIII)のジフェニル保護基は、PtO2などの金属触媒の存在下で水素化分解によって脱保護されて、本発明のアミノ酸ベースのPEUポリマー接着剤に使用されるリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマー(V)を形成する。スキーム3のステップ(b)に示す反応では、ジフェニルホスホリル側基を有するアミノ酸ベースのPEUコポリマー(XVIII)を、ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸(TFA)/酢酸(AcOH)などの好適な溶媒に溶解した。その後、PtO2などの金属触媒をH2(60psi)の存在下で水素化ボンベ反応器中のポリマー溶液に添加して、本発明のアミノ酸ベースのPEUポリマー接着剤に使用されるリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマー(V)を形成する。スキーム3のステップ(b)の粗生成物は、その目的のために当該分野で公知の任意の手段を用いて精製することができる。いくつかの実施形態において、スキーム3のステップ(b)の粗生成物は、分液漏斗に移し、それを沸騰水中に沈殿させることによって精製してもよい(一般的に、実施例7~12を参照されたい)。
【0055】
本発明のアミノ酸ベースのPEUポリマー接着剤を形成するには、上記のリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーを、結合される表面に塗布する直前に架橋剤と組み合わせなければならない。上記のように、好適な架橋剤は、二価の金属イオンを含む溶液を含む(
図1を参照されたい)。好適な二価の金属としては、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛及びこれらの組み合わせを挙げることができる。様々な実施形態において、架橋剤は、カルシウムまたはマグネシウムの二価のイオンを含む溶液を含み得る。
【0056】
様々な実施形態において、リン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)ポリマーおよび/またはコポリマー対架橋剤中の二価の金属イオンのモル比は、約1:1~約10:1である。いくつかの実施形態では、架橋剤におけるリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)ポリマーまたはコポリマーの二価の金属イオンに対するモル比は、約2:1~約10:1、他の実施形態では約4:1~約10:1、他の実施形態では約6:1から約10:1、他の実施形態では約1:1から約8:1、他の実施形態では約1:1から約6:1、他の実施形態では約1:1~約4:1、他の実施形態では約2:1~約8:1、および他の実施形態では約3:1~約7:1である。
【0057】
第3の態様において、本発明は、上記のリン酸官能基化アミノ酸ベースのポリ(エステル尿素)接着剤を使用して骨を骨にまたは骨を金属に結合させるための方法に関する。これらの実施形態では、最初に、骨および/または金属表面の汚れを取り除き、任意の適用可能な方法を使用して調製する。次に、リン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーを上記のように調製する。表面が結合される直前に、上記の、ある量の架橋剤をリン酸化アミノ酸ベースのPEUポリマーおよび/またはコポリマーに混合して、架橋反応を開始させる。次いで、混合物は、結合させる表面の1つ以上に塗布され、表面は一緒にプレスされ、ポリマーが架橋し続けるときに所定の位置に保持される。ポリマーが完全に架橋するにつれて、表面は互いに完全に接着するようになる。
実験
【0058】
リン酸化セリン(pSer)およびバリンアミノ酸ベースのPEUコポリマーを合成し、それらの物理的性質の特徴を明らかにした。コポリマー中に組み込まれたpSer含量は2%および5%であった。これらのポリマーのエタノールへの溶解性により、それらはより臨床的に関連があるようになり、骨接着剤としてのさらなる開発の強い可能性を示す。それらの接着強度は、Ca2+による架橋の前後に、アルミニウム基材での重ね剪断接着およびウシ骨基材での端々接着により調べた。
【0059】
スキーム4は、これらの実験に用いたポリ(pSer-co-Val)の合成を表す。ポリマー合成の第一ステップは、ビス(L-バリン)-1,8-オクタニルジエステル(1-Val-8)モノマーのジ-p-トルエンスルホン酸の塩とジフェニル保護ホスホセリンモノマーの溶液重合を伴い、ポリ(セリンジフェニルホスフェート-co-バリン)(ポリ(SerDPP-co-Val))を生成する。第2ステップでは、ポリ(SerDPP-co-Val)の水素化分解脱保護を伴って、リン酸官能基化コポリマー、ポリ(ホスホセリン-コ-バリン)(ポリ(pSer-co-Val))を得る。
スキーム4
【化13】
【0060】
これらの実験では、2%および5%のpSer含量を有するコポリマーが合成されており、それぞれ、2%ポリ(pSer-co-Val)および5%ポリ(pSer-co-Val)として示した。ポリマーに取り込まれたセリンモノマーの実際の量は、
1H NMR分光法によって測定された供給量よりも少ないことが分かった。理にかなった根拠としては、モノマーに4つの嵩高いフェニル基が存在することであり、これにより、セリンモノマーの反応性が低下し、セリン含量の取り込みを低下させる傾向がある。5%ポリ(pSer-co-Val)の
1H NMRスペクトルでは、フェニル保護基は芳香族領域にピークを示すδ=7.06~7.34ppm。水素化分解後のこれらのフェニル基の脱保護の成功は、芳香族ピークの損失によって確認された。保護されたリン酸基に直接接着したメチレンでのプロトン環境は、約δ=4.0ppmの共鳴を有し、脱保護後にはわずかに下降してδ=4.37ppmとなる(
図2A)。保護フェニル基の除去は、
13C NMRスペクトルからも確認された。5%ポリ(SerDPP-co-Val)中の芳香族ピーク(δ=約120~130ppm)は、5%ポリ(pSer-co-Val)の脱保護後には消失している(
図3および4)。
31P NMRスペクトルでは、フェニル基の完全脱保護も確認する。5%ポリ(SerDPP-co-Val)は、δ=-11.58ppmに特徴的なリンピークを有し、脱保護後にはδ=-1.20ppmにシフトしている(
図2B)。
【0061】
減衰全反射赤外分光法(ATR-IR)は、ジフェニル基の脱保護の前後にリン酸基の存在および保存を示す。P-O-H結合は700~500cm
-1の範囲に特徴的なIRピークを有し、P=O結合は1200~1100cm
-1の間に特徴的なピークを有する。ポリ(SerDPP-co-Val)のP-O特性ピークは約675cm
-1付近に見られ、これは脱保護後の約710cm
-1へのわずかなシフトを示す。P=O結合は、脱保護の前後に特徴的なピーク約1040cm
-1を示す。これらの2つの特徴的なリン酸塩伸長ピークはいずれも、1-Val-8ポリマー(ポリ(1-Val-8))においては顕著ではない(
図5)。2%コポリマーの
1H NMRスペクトルは、積分値が異なること以外は5%コポリマーのものと類似している(
図6および7)。2%コポリマーの
13Cおよび
31P NMRスペクトルも、5%コポリマーと同様のδ(ppm)を有する(
図8~11)。
【0062】
PEUの特徴を明らかにし、熱重量分析(TGA)による分解温度(T
d)、示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移温度(T
g)、SECによる数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(M
w)、および多分散性(D
M)などの物理的特性を決定した。これらのポリマーの表面エネルギーは、既知の表面エネルギーの5つの異なる液体の接触角から決定され、次式によってポリマー表面エネルギーの極性および分散成分を計算した
29、30(Stakleff,K.S.;Lin,F.;Smith Callahan,L.A.;Wade,M.B.;Esterle,A.;Miller,J.;Graham,M.;Becker,M.L.,Resorbable,amino acid-based poly(ester urea)s crosslinked with osteogenic growth peptide with enhanced mechanical properties and bioactivity.Acta Biomater 2013,9,(2),5132-42;およびYu,J. Y.;Lin,F.;Lin,P.P.;Gao,Y.H.;Becker,M.L.,Phenylalanine-Based Poly(ester urea):Synthesis,Characterization,and in vitro Degradation.Macromolecules 2014年,47,(1),121-129(これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。
【数2】
【数3】
ポリマーの全表面エネルギーγ
p(mJ m
-2)は、式1から計算された極性成分と分散成分の和である。表1は、ポリマーの物理的特性をまとめたものである。ポリマーの接着性が原因によるSECカラムのブロッキングを防ぐために、ポリ(pSer-co-Val)の分子量を求めることはなかった。PtO
2触媒の存在下での水素化分解反応は、選択性が高く、部位特異的であるため、この反応中にポリマーの分解が起こることは予想されなかった。
【表1】
【数4】
【0063】
ポリ(pSer-co-Val)は、ポリ(SerDPP-co-Val)よりわずかに低いガラス転移温度を示す。保護されたポリマーに嵩高いフェニル基が存在することにより、鎖を堅くし、それらの動きを妨害し、その一方で、脱保護後、鎖はより柔軟になり、自由に流動し、それぞれのT
gのわずかな低下を示す(
図12)。保護されたポリマーおよび脱保護されたポリマーは双方とも150℃を超える分解温度を有する(
図13)。すべてのポリマーの分子量は同等であり、分子量効果による接着強度の逸脱が回避される。
【数5】
【表2】
【0064】
2%および5%の両方のポリ(pSer-co-Val)は、表面エネルギーの極性および分散成分を有する。極性成分が存在することは、表面接着において重要な役割を果たす表面極性基を示す。2%および5%ポリマーの表面エネルギーは、互いに同程度であり、ポリ(1-Val-8)のものよりも高い。ポリマーの官能基の割合が小さいことから、2%と5%の官能基化の間の表面エネルギーの認識可能な変化は見られなかった。
アルミニウム基材での重ね剪断接着試験
【0065】
重ね剪断接着は、接着材料の強度およびそれらの不良様式を決定するために使用される一般的な方法である。(実施例14参照)。ポリマーの接着強度は、室温におけるアルミニウム被着体での重ね剪断構造下で調べた。重ね剪断接着試験は、Ca
2+による架橋の有無にかかわらず、2%および5%ポリ(pSer-co-Val)に対して行った。ポリ(1-Val-8)は、接着におけるリン酸基の重要性を証明するための対照の1つとして用いた。市販のPMMA骨セメントは、ポリ(pSer-co-Val)との比較のための別の対照として用いた。重ね剪断接着試験の結果を
図14Aにまとめる。
【0066】
ポリ(1-Val-8)の接着強度は0.04±0.16MPa、PMMA骨セメントは0.04±0.01MPaであった。ポリ(メタクリル酸メチル)は接着性を有していないため、骨セメントの接着強度は低いと予想される。PMMA骨セメントは高弾性率を有しており、本質的に骨および歯のフィラーとして使用される。ポリ(pSer-co-Val)は、対照サンプルと比較して改善された接着強度を示す。これは、リン酸基とアルミニウム表面との間の静電的または水素結合相互作用から生じ得る。2%および5%ポリ(pSer-co-Val)の接着強度は、それぞれ0.92±0.18MPaおよび0.77±0.09MPaである(
図14A)。トビケラシルクに関するこれまでの研究では、二価カチオンが除去されている場合には、Ca
2+による架橋は繊維に強度を与え、結晶性β-シート構造が崩壊することを示しており、系中のCa
2+の重要性を示唆している(Addison,J.B.;Ashton,N.N.;Weber,W.S.;Stewart,R.J.;Holland,G.P.;Yarger,J.L.,beta-Sheet nanocrystalline domains formed from phosphorylated serine-rich motifs in caddisfly larval silk:a solid state NMR and XRD study.Biomacromolecules2013年,14,(4),1140-8;Addison,J.B.;Weber,W.S.;Mou,Q.;Ashton,N.N.;Stewart,R.J.;Holland,G.P.;Yarger,J.L.,Reversible assembly of beta-sheet nanocrystals within caddisfly silk.Biomacromolecules2014年,15,(4),1269-75を参照されたい(これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる))。本発明者らの仮説では、ポリマー骨格鎖のリン酸基が架橋剤中のCa
2+と相互作用して、物理的架橋を生じ、架橋していない対応物と比較して、接着剤強度をさらに上昇させるポリマーバルク内の凝集力を改善する(
図1)。接着強度は、系内での接着力と凝集力の両方の効果を組み合わせた結果である。発明者らの仮説を検証するために、本発明の系のCa
2+源としてヨウ化カルシウムを選択した。
【0067】
2%および5%のCa
2+架橋ポリ(pSer-co-Val)は両方とも、未架橋の対応物と比較して接着強度の上昇を示した。架橋した2%ポリ(pSer-co-Val)および架橋した5%ポリ(pSer-co-Val)の接着強度は、それぞれ1.17±0.19MPaおよび1.14±0.02MPaである(
図14A)。発明者らの結果は、アルミニウム基材におけるリン酸官能基化ポリマーの強い親和性を示している。凝集不良は、接着剤が不良後に両方の被着体に付着した場合である。接着剤が一方の被着体からきれいに離脱し、不良後、他方の被着体に粘着した場合は、接着不良と呼ばれる。不良モードは、接着剤の商業的可能性を決定する際に重要である。ほとんどの接着剤では、凝集不良が望ましい。興味深いことに、接着していない骨セメントを除いて、すべてのサンプルが凝集不良を示している(
図14B~G)。骨セメントは本質的に接着性ではなく、骨の支持媒体として役立つのみであるという事実を考慮すると、この結果は驚くべきことではない。金属に対する接着調査の結果は、わずかな割合でポリマー骨格のリン酸基が取り込まれることで、金属基材での接着強度の有意な改善が示されることを示唆している。また、二価カチオンによるリン酸基の架橋は、静電的相互作用を介して接着強度をさらに高める。
ウシ骨の端々接着試験
【0068】
ウシ骨サンプルでのポリ(pSer-co-Val)の接着強度の試験も行い、骨接着剤としてのその潜在的な適用を実証した。(実施例15参照)。骨は、表面に正と負の電荷の配列を有する。骨の基本構成ブロックは、化学構造Ca
5(PO
4)
3(OH)を有するヒドロキシアパタイトである。
図15Aは、ポリマーのウシ骨への接着強度をまとめたものである。この調査の対照は、金属基材の対照と同じであった。ポリ(1-Val-8)は骨表面に全く接着しなかった。試験を実施する前に、すべてのサンプルが接着しなかった。ポリ(pSer-co-Val)は、ポリ(1-Val-8)対照と比較して接着強度が上昇していることを示している。2%ポリ(pSer-co-Val)は、190KPa±70KPaの接着強度を示し、5%ポリ(pSer-co-Val)は、399±101KPaの接着強度を示した。
【0069】
0.3当量のCa2+を架橋剤として添加した後に接着強度の上昇が観察された。架橋された2%ポリ(pSer-co-Val)の接着強度は211±77KPaに上昇し、架橋した5%ポリ(pSer-co-Val)の接着強度は439±203KPaに上昇した。対照ポリマーの場合と比較して、リン酸官能基化ポリマーの接着強度が上昇していることは、リン酸基の存在が重要であることを証明している。また、少ない割合でのリン酸官能基の取り込みが、接着の認識可能な変化をもたらすことは注目に値する。5%ポリ(pSer-co-Val)の接着強度は、市販の骨セメント(530±133KPa)と同程度であり、これは、ポリ(pSer-co-Val)が骨接着剤へのさらなる発展の可能性が高いことを示唆している。接着不良を示した骨セメントを除いて、すべてのサンプルが凝集不良を示した。
インビトロ細胞生存率および拡散アッセイ
【0070】
MC3T3細胞の細胞生存率は、各サンプルについて少なくとも40の画像を用いて計算し、2%ポリ(pSer-co-Val)に標準化した。(
図16および
図17を参照されたい)。ガラス、ポリ(1-Val-8)、2%および5%ポリ(pSer-co-Val)、2%および5%架橋ポリ(pSer-co-Val)での細胞生存率は、それぞれ(84±9)%、(94±8)%、(100±3)%、(97±5)%、(97±7)%、および(98±4)%であった(
図16を参照されたい)。ガラス上での細胞の生存率が低いことは、取り扱い誤差および播種誤差に起因し得る。官能基化ポリマーの細胞生存率が高い(>95%)のは、リン酸官能基が細胞に対して無毒であることを証明している。いずれのサンプルにおいても、MC3T3細胞の細胞骨格構造または拡散挙動は類似していた。細胞は核については青色(DAPI)、焦点接着点については緑色(Alexa Fluor 488)、アクチンフィラメントについてはローダミンファロイジン(赤色)に染色された。全てのサンプルの細胞のアスペクト比はかなり近く(約2~3)であり、官能基化ポリマーが対照と同様に挙動することが証明された(
図17)。
【0071】
リン酸官能基化PEUコポリマーは、トビケラ接着性シルクの特性を模倣するように設計され作製された。これらのコポリマーはエタノール可溶性であり、これにより好適な送達機構となり、それらを医療用途に適したものにする。コポリマーは、Ca2+で架橋した後、金属基材において1.17±0.19MPaの最大接着強度を示した。骨サンプルでのコポリマーの接着強度は有意であり(439±203KPa)、市販のポリメタクリル酸メチル骨セメント(530±133KPa)と同程度であった。リン酸官能基化コポリマーは、バリンポリマー類似体と比較して、改善された有意な接着強度を示した。これは、リン酸基が接着を促進する上で重要な役割を果たすことを示している。すべての場合において、コポリマーは凝集不良を示した。リン酸官能基化コポリマーは、OGPまたはBMP-2のような成長ペプチドの存在下で、整形外科用接着剤、脊髄損傷のための足場材料、および整形外科修復物として有意な潜在能力を有する。PEUはインビトロおよびインビボで分解可能である。
実施例
【0072】
以下の実施例は、本発明をより完全に説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、いくつかの実施例は、本発明が機能し得る方法についての結論を含み得るが、発明者はこれらの結論に拘束されることを意図するものではなく、可能な説明としてのみ提示する。さらに、過去の時制の使用によって示されない限り、実施例の提示は、実験または手順が実施されたか否か、または結果が実際に得られたか否かを意味するものではない。使用される数(例えば、量、温度)に関して正確さを保つための努力がなされているが、いくつかの実験誤差および偏差が存在する可能性はある。他に指示がない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
材料および方法
【0073】
L-バリン、p-トルエンスルホン酸一水和物、トルエン、1,8-オクタンジオール、無水ジクロロメタン(DCM)、Pd/C、PtO2、エタノール、ジフェニルホスホリルリド(99%)、無水ピリジン、4M HCl /ジオキサン溶液、クロロホルム、トリメチルアミン、および酢酸は、Sigma Aldrichから購入した。N-Boc-O-Bzl-L-セリンはArk Pharm、Inc.から購入した。N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)はOakwood Chemicalsから購入した。トリホスゲンは、TCI Americaから購入した。4-(ジメチルアミノ)ピリジニウム4-トルエンスルホネート(DPTS)を文献の手順に従って合成した。クロロホルムをCaH2で一晩乾燥させ、蒸留し、使用前に暗所で保存した。別段の記載がない限り、すべての化学物質は受領したまま使用した。
【0074】
モノマーおよびポリマーの1H、13Cおよび31P NMRスペクトルをVarian,NMR分光光度計(それぞれ300MHzおよび500MHz)で記録した。化学シフト(δ)はppm単位で報告され、残留溶媒共鳴(1H NMR,DMSO-d6:δ=2.50ppm、および13C NMR,DMSO-d6:δ=39.50 ppm)を基準とした。多重度の略語は、s-シングレット、d-ダブレット、m-マルチプレット、q-カルテット、dd-ダブルダブレット、td-トリプルダブレットとして示す。ポリマーの減衰全内部反射分光(ATR-IR)スペクトルを、水晶窓を備えたShimadzu Miracle 10 ATR-FTIRで記録した。測定には、水晶窓を十分覆う小さいポリマー片を使用した。モノマーのエレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ESI-MS)は、ESI供給源を備えたBruker HCTultra II四重極イオントラップ(QIT)質量分析計(Billerica、MA)で記録した。ポリマーの分子量およびPDI(DM)は、溶離剤としてDMF(0.1M LiBr塩溶液)を使用し、流速0.5mL/分、50℃で、屈折率検出器を備えた、TOSOH ECOSEC HLC-8320GPCによるサイズ排除クロマトグラフィーによって決定した。ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC、TA Q200)により、-50℃~60℃、走査速度10℃/分で5サイクル行って測定した。ポリマーの分解温度(Td)は、熱重量分析(TGA、TA Q500)を用いて、25℃~600℃で、加熱速度10℃/分として測定した。
実施例1
ビス(L-バリン)-1,8-オクタニルジエステル(M1)のジ-p-トルエンスルホン酸の塩の合成
【0075】
トルエンの入ったディーン・スターク・トラップ、コンデンサー、電磁攪拌棒を備えた500mL丸底フラスコで、L-バリン(27.5gm、0.234mol)、1,8-オクタンジオール(15gm、0.102mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(46.57gm、0.190mol)を秤量した。この溶液を撹拌しながら48時間加熱還流した。生成物を周囲温度まで冷却させた後、それを熱水に溶解し、カーボンブラックと一緒に撹拌して着色不純物をいずれも除去した。モノマーをさらに水中で3回再結晶化し、純粋な生成物として40gm(収率=65%)の白色粉末を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ): 0.95(dd,J=6.96Hz,10.48Hz,12H;CH3),1.21(d,J=45.71Hz,8H;CH
2),1.54(m,4H,CH
2),2.02-2.20(m,2H,CH),2.31(d,J=19.91Hz,6H;CH
3),3.90(d,J=4.56Hz,2H;CH),3.98-4.40(m,J=6.53Hz,10.83Hz,17.18Hz,4H;CH
2),7.29(dd,J=7.97Hz,110.42Hz,4H;CH),8.23(br s,6H,NH)。
図18を参照されたい。
実施例2
ビス-N-boc-O-ベンジル(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M2)の合成
【0076】
N-boc-O-ベンジル-L-セリン(15gm、50.79mmol)、1,8-オクタンジオール(3.09gm、21.16mmol)およびDPTS(1.06gm、4.23mmol)を30mLの無水DCMにN
2下で溶解した。次いで反応フラスコを氷浴に浸し、DIC(7.62ml、48.67mmol)を0℃、N
2下で、フラスコに迅速に注入した。温度を室温まで徐々に上昇させながら反応物を不活性雰囲気下で一晩撹拌させた。反応溶液を濾過して尿素結晶を除去し、真空濃縮した。油状生成物をCHCl
3に溶解し、5%HCl溶液で2回、脱イオン水で1回洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン/酢酸エチル(2.65/1、v/v)を溶離剤とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、淡黄色の油状物(13.38gm、収率=89%)を得た。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):1.20(s,4H,CH
2),1.37(s,22H,CH
3),1.50(m,4H,CH
2),3.53-3.77(m,4H,CH
2),3.85-4.13(m,4H,CH
2),4.24(dd,J=5.55Hz,12.80Hz,2H;CH),4.46(s,4H,CH
2),7.09(d,J=7.92Hz,2H;CH),7.19-7.40(m,12H,Ar H)。
図19を参照されたい。
実施例3
ビス-N-boc(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M3)の合成
【0077】
M2(11gm、15.69mmol)を水素化瓶中でエタノール30mlに溶解した。1.3gmのPd/C触媒をポリマー溶液に加え、軽度の加熱(約35℃)、48時間、60psiのH2圧下で水素化分解に付した。溶液を5000rpmで30分間遠心分離した。上清を濾過し、濃縮し、真空乾燥させて、無色の油状物を生成物として得た(8.5gm、収率=77%)。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):1.20(s,4H,CH2),1.37(s,22H,CH
3),1.53(m,4H,CH2),3.65(t,J=5.44Hz,4;CH2),3.8-4.19(m,4H,CH2),6.91(d,J=8.02Hz,2H;CH)。
図19を参照されたい。
実施例4
ビス-N-boc-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M4)の合成
【0078】
M3(9gm、3.40mmol)を窒素下で約15mlのピリジンに溶解し、氷浴に15分間浸漬した。塩化ジフェニルホスホリル(10.21gm、8ml、6.72mmol)を窒素下で反応溶液にゆっくり加えた。反応温度を室温まで徐々に上昇させながら、反応物を一晩攪拌した。約30mlのCHCl
3を反応フラスコに加えて生成物を溶解させた。溶液を100mlの脱イオン水、100mlの1M HClで1回洗浄し、最後に100mlの脱イオン水で2回洗浄した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、黄色がかった固体生成物が得られるまでさらに真空乾燥させた。続いて、黄色固体をイソプロパノール中で3回再結晶化させて、純粋な生成物として白色粉末を得た(8.8gm、収率=52%)。
1H NMR(300MHz;DMSO-d6,δ):1.17(s,4H,CH2),1.35(s,22H,CH
3),1.47(m,4H,CH2),3.99(t,J=6.36Hz,6H;CH2),4.42(d,J=6.11Hz,4H;CH2),7.23(dd,J=7.61Hz,15Hz,8H;ArH),7.4(t,J=7.85Hz,12H;Ar H)。
図19を参照されたい。
実施例5
ビス-O-ジフェニルホスフェート(L-セリン)-1,8-オクタニルジエステル(M5)の二塩酸塩の合成
【0079】
4M HCl/ジオキサン溶液(40ml)をM4(8.8gm)に加え、窒素下で一晩攪拌した。溶液を濃縮し、凍結乾燥させて溶媒を除去した。凍結乾燥後に得られた淡黄色固体を酢酸エチルで洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物として淡黄色粉末を得た(8.8gm、収率=100%)。
1H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):1.16(t,J=7.05Hz,4H;CH
2),1.43(m,4H,CH
2),4.02(t,J=6.20Hz,4H;CH
2),4.68(s,6H,CH
2),7.24(dd,J=7.94Hz,15.66Hz,8H,Ar H),7.41(t,J=7.29Hz,12H;Ar H),8.96(br s,6H,NH)。
図19および
図20を参照されたい。ESI-MS(m/z): 理論値:784.74;計算値:[M+H]+=785.2。
図21を参照されたい。
実施例6
1,8-オクタンジオール-L-バリンポリ(エステル尿素)(ポリ(L-Val-8))の合成:
【0080】
ビス(L-バリン)-1,8-オクタニル-ジエステル(M1)のジ-p-トルエンスルホン酸塩(13.74g、20mmol、1当量)およびトリエチルアミン(12.55ml、90mmol、4.5当量)を、電磁攪拌棒および圧力均等化添加漏斗を備えた500mL3つ口丸底フラスコ中で40mLのクロロホルムに溶解させて溶液重合を行った。次いで、トリホスゲン(2.37g、8mmol、0.4当量)を新たに蒸留したクロロホルム15mLに溶解し、窒素下、室温で滴下した。反応を12時間続け、その後、15mLのクロロホルムに溶解したトリホスゲン(0.45g、1.5mmol、0.08当量)のさらなるアリコートをフラスコに滴下した。反応物をさらに8時間撹拌した。ポリマーを熱水中で沈殿させて精製し、真空乾燥させた。
【数6】
実施例7
ポリ(セリンジフェニルホスフェート-co-バリン)(ポリ(SerDPP-co-Val)の合成:
【0081】
コポリマーは、P(1-Val-8)と同様の溶液重合によって合成した。典型的には、電磁攪拌棒を備えた500mLの3つ口丸底フラスコ中で、N2下で40mLの新たに蒸留したCHCl3にモノマー(20mmol、1当量)およびトリエチルアミン(90mmol、4.5当量)を両方とも溶解させた。トリホスゲン(8mmol、0.4当量)を15mLの蒸留クロロホルムに溶解し、室温、窒素下でフラスコに滴下した。反応を12時間続けた後、トリホスゲンのさらなるアリコート(10mLのクロロホルム中1.5mmol、0.075当量)をフラスコに滴下した。反応をさらに8時間続け、その後、反応溶液を分液漏斗に移し、熱水中に滴下して沈殿させた。水を周囲温度まで冷却させた後、ポリマーを室温にて水中で一晩洗浄し、最後に真空乾燥させて生成物としての白色ポリマーを得た。
実施例8
5%ポリ(SerDPP-co-Val)の合成
【0082】
理論的モノマー供給比-pSer/Val(M5/M1)=15/85:
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6,δ):実際のモノマー比=5/95,δ=0.85(dd,J=6.76Hz,13.63Hz,195H;CH
3),1.26(d,J=11.12Hz,154H;CH
2),1.54(m,72H,CH
2),1.98(dd,J=6.56Hz,12.58Hz,31H;CH),3.93-4.14(m,137H,CH
2,CH),6.37(d,J=8.91Hz,38H;NH),7.06-7.18(m,26H,Ar H),7.19-7.34(m,12H,Ar H)。
13C NMR(500MHz,DMSO-d
6,δ):19.4(C4),25.69(C4),28.55(C4),30.90(C2),58.15(C4),64.53(C4),120.34(Ar C),123.08(Ar C),129.31(Ar C),157.97(NH-C=O),172.85(O-C=O)。
図24を参照されたい。
31P NMR(500MHz,DMSO-d
6,85% H
3PO
4外部標準,δ): 11.58ppm。ATR-IR(ν): 1650-1690cm
-1(s,C=O 尿素ストレッチ),1735-1750cm
-1(s,C=Oエステルストレッチ),3300-3500cm
-1(m,N-H尿素ストレッチ),約1040 cm
-1(w,P=Oストレッチ),約675 cm
-1(w,P-Oストレッチ)。
【数7】
図25を参照されたい。
実施例9
2%ポリ(SerDPP-co-Val)の合成
【0083】
理論的モノマー供給比-pSer/Val(M5/M1)=10/90:
1H NMRスペクトル共鳴は、異なる積分値を有する5%P(SerDPP-co-Val)に類似している。
図6、24を参照されたい。実際のモノマー比=2/98。
13Cおよび
31P NMRスペクトルおよびATR-IRスペクトルは、
【数8】
実施例10
ポリ(ホスホセリン-co-バリン)(ポリ(pSer-co-Val)の合成:
【0084】
ジフェニル保護基を、PtO2触媒の存在下で水素化分解により脱保護して、トビケラシルクの模倣物としてリン酸官能基化コポリマーを合成した。典型的には、ポリ(SerDPP-co-Val)(1.00g)をCHCl3:40%TFA/AcOH(4:1)溶液50mLに溶解した。触媒としてのPtO2(1.1当量のSerDPP)を水素化ボンベ反応器中のポリマー溶液に加え、反応をH2(60psi)の存在下、室温で2時間行った。溶液を濾過し、真空濃縮させた。熱水中で沈殿させた後、純粋なポリマーを白色固体として得て、真空乾燥させた。
実施例11
5%ポリ(pSer-co-Val):
【0085】
0.9g、収率=90%。
1H NMR(500MHz,DMSO-d
6,δ):0.85(dd,J=6.76Hz,13.61Hz,194H;CH
3),1.26(s,155H,CH
2),1.54(m,72H,CH
2),1.98(td,J=6.72Hz,13.39Hz,35H;CH),3.87-4.18(m,102H,CH
2,CH),4.37(t,J=6.48Hz,2H;CH
2),6.37(d,J=8.91Hz,26H,NH)。
13C NMR(500MHz,DMSO-d
6,δ):19.4(C4),25.69(C4),28.55(C4),30.90(C2),58.15(C4),64.53(C4),157.97(NH-C=O),172.85(O-C=O)。
図26を参照されたい。
31P NMR(500MHz,DMSO-d
6,85% H
3PO
4外部標準,δ): -1.20ppm。
図27を参照されたい。ATR-IR(ν): 1650-1690cm
-1(s,C=O 尿素ストレッチ),1735-1750cm
-1(s,C=Oエステルストレッチ),3300-3500cm
-1(m,N-H尿素ストレッチ),約1040 cm
-1(w,P=Oストレッチ),約710cm
-1(w,P-Oストレッチ)。
図5を参照されたい。
実施例12
2%ポリ(pSer-co-Val):
【0086】
1g、収率=100%。
1H NMRスペクトル共鳴は、異なる積分値を有する5%ポリ(pSer-co-Val)に類似している。
13Cおよび
31P NMRスペクトルおよびATR-IRスペクトルは、5%ポリ(pSer-co-Val)のそれぞれに対応する。
図4、
図7、
図9および
図26を参照されたい。
実施例13
表面エネルギー測定。
【0087】
5つの異なる液体の接触角を測定して、Owens/Wendt法を用いて各ポリマーのそれぞれの表面エネルギーを計算した。接触角測定には、既知の表面張力の液体(水、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ホルムアミド)を使用した30。ポリマー薄膜は、ポリマーの入った1%(w/v)エタノール溶液を用いて、オゾン処理したシリコンウェーハ上に、2000rpmで1分間、スピンコーティングした。サンプルを一晩、70℃で真空乾燥させた。各サンプルについて測定(n=3)を室温で行い、平均の標準偏差を独立した測定値から計算した。結果を上記の表1および2に報告する。
実施例14
アルミニウム基材での重ね剪断接着試験。
【0088】
重ね剪断接着試験は、ASTM D1002規格に従ってアルミニウム基材で行った。厚さ1.6mmのアルミニウム被着体を、一方の端部から各被着体に12.5mm穿孔された直径6.5mmの穴を有する長さ75mm×幅12.5mmの長方形の基材に切断した。接着試験のために、ポリマーの入ったエタノール溶液(30μL、1mLエタノール中300mg)を被着体の一端に塗布した。別の被着体を重なり面積が1.56cm
2である重ね剪断形状でその上に置いた。架橋剤を使用する場合、ポリマー溶液(25μL、エタノール1mL中300mg)および架橋剤溶液(5μL、1mLアセトン中に0.3当量/pSer群)を混合し、被着体の一端に塗布した。被着体を一緒にプレスし、試験前に室温で1時間、75℃で24時間、室温で1時間硬化させた。重ね剪断接着は、1000Nのロードセルを備えたInstron5567装置を用いて行った。被着体は、不良が発生するまで、1.3mm/分の速度で引き離した。密着強度(Pa)は、不良時の最大荷重(N)を接着面積(m
2)で割ったものである。結果を
図2A~Gに報告する。
実施例15
ウシ骨基材への端々接着試験
【0089】
ポリ(pSer-co-Val)の接着特性を調べるために、本発明らは皮質ウシ骨に対する端々接着実験を行った。ウシ骨サンプルは、地元の食料品店から入手した。これらの骨を、骨鋸で長さ約2cm×幅0.6cm×厚さ0.4cmの長方形の断片に切断した。続いて、320粒のサンドペーパー(3M Pro Grade Precision、X-fine)を用いて骨サンプルの試験端を研磨し、接着剤塗布の1時間前に骨をPBS溶液中に保持した。ポリマー溶液(30μL、エタノール1mL中300mg)を骨の一端に塗布し、第2の骨をその上に端から端に配置した。架橋した試験片については、1本目の骨にポリマー溶液(25μL、エタノール1mL中300mg)および架橋剤溶液(5μL、1mLアセトン中0.3当量/pSer群)を塗布し、2本目の骨を、端々構成に配置した。骨サンプルを一緒に切り取り、PBS浸漬したガーゼで24時間包んだ。次いで、接着試験前に、サンプルを37℃、湿度95%、および5%CO
2で、インキュベーター中に2時間置いた。接着試験は、5kgのロードセルを備えたテクスチャーアナライザー(TA.XT.Plus)で行った。骨サンプルを、不良が発生するまで1.3mm/分の速度で引き離した。密着強度(Pa)は、不良時の最大荷重(N)を接着面積(m
2)で割ったものである。結果を
図15A~
図15Cに報告する。
実施例16
インビトロ細胞生存率試験
【0090】
播種後1日目および3日目にリン酸官能基化ポリマーについてMC3T3細胞の細胞生存率および伝播を調べた。ポリマー膜を、12mmガラスカバースリップ上で、2000rpmで1分間3%(w/v)エタノール溶液からスピンコートした。膜を80℃で一晩真空乾燥させ、注意深く12ウェルプレートに移した。細胞をPBSですすぎ、その後37℃、湿度95%、5%CO2で、5分間、0.05%トリプシン/EDTA溶液1mにより脱着させた。5mLの培地を添加することによってトリプシン/EDTA溶液を失活させ、細胞を4℃、3000rpm、1分間の遠心分離によって収集した。細胞ペレットを乱すことなく培地/トリプシン溶液を吸引し、細胞を5mLの新鮮な培地に再懸濁した。細胞密度を、トリパンブルー染色を用いて、血球計算盤により計数した。細胞を6000細胞/cm2の密度で播種した。ウェルプレートは、インキュベーション前にサンプル上に細胞が確実に均一に分布するように、穏やかに攪拌した。
【0091】
細胞生存率は、Live/Dead assay(Life Technologies)によって評価した。約5μLのカルセインAM(4mM)と10μLのエチジウムホモ二量体を10mLのDPBSに添加して染色溶液を調製した。各サンプルから培地を吸引し、DPBSですすいだ後、0.5mLの染色溶液を各ウェルに添加した。ウェルプレートをアルミニウム箔で覆い、イメージングする前に37℃で10分間インキュベートした。Hamamatsu orca R2CCDカメラ、FITCおよびTRITCフィルターを備えたOlympus蛍光顕微鏡で、CellSENSソフトウェアを用いて4倍に拡大して画像を撮影した。緑色に染色された細胞は生存していると考えられ、赤く染色された細胞は死滅したと考えられた。細胞カウンタープラグインを使用してImageJソフトウェアで細胞を計数した。結果を
図16に報告する。
実施例17
細胞拡散アッセイ
【0092】
拡散試験のために、1mLの培地に細胞を前固定し、CS緩衝溶液中の3.7%パラホルムアルデヒド(PFA)1mLを37℃で5分間、乾燥ブロックで播種させた。吸引後、細胞を37℃で5分間、3.7%PFA溶液の入ったCS緩衝液2mLに5℃で固定した。次いで、サンプルをCS緩衝液2mLで3回すすぎ、続いて1.5mLのTriton X-100の入ったCS緩衝液(0.5%v/v)を各ウェルに添加して、37℃で10分間細胞を透過化処理した。サンプルをCS緩衝液で3回すすいだ。次いで、新たに調製した0.1重量%のNaBH
4の入ったCS緩衝液2mLを各ウェルに10分間、室温で添加して、アルデヒド蛍光を消光させ、その後、吸引し、5%ロバ血清中において室温で20分間インキュベートして、非特異的結合を阻止した。吸引後、サンプルを300μLビンキュリン一次抗体マウスの入ったCS緩衝液(v/v1:200)中において、4℃で一晩インキュベートした。次に、サンプルを1%ロバ血清で3回すすぎ、ろう紙上、暗所、室温で、50μLのローダミンファロイジン(v/v 1:40)およびAlexa Fluor 488二次抗体マウス(v/v 1:200)溶液により1時間染色した。サンプルをCS緩衝液で3回洗浄後、核をDAPIの入ったCS緩衝液(6μL/10mL)を用いて暗所、室温で20分間染色した。サンプルをCS緩衝液で3回洗浄して余分な染色を除去し、20倍の倍率でFITC、TRITCおよびDAPIフィルターを備えたHamamatsu orca R2CCDカメラを備えたOlympus蛍光顕微鏡下で観察した。結果を
図17に報告する。
【0093】
上記に照らして、本発明は、分解可能かつ再吸収可能な新規リン酸化ポリ(エステル-尿素)(PEU)ベースの接着剤(および関連する製造方法および使用方法)を提供することにより、本発明は、技術を著しく進歩させ、これにより構造的および機能的には多くの点で改善されることを理解されたい。本発明の特定の実施形態を本明細書で詳細に開示したが、本発明はこれらに限定されず、したがって本発明の変形形態が当業者には容易に理解されるであろうことを理解されたい。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲から理解されるであろう。