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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】表示パネル
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20220117BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220117BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220117BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220117BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20220117BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H05B33/12 B
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/22 Z
H05B33/26 Z
G09F9/30 365
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020126200
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2016011385の分割
【原出願日】2016-01-25
(65)【公開番号】P2020181830
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 哲郎
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0173200(US,A1)
【文献】国際公開第2012/001727(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178028(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/072063(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0072063(US,A1)
【文献】国際公開第2015/155971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/12
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/22
H05B 33/26
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に間隔をあけて配された長尺状の第1、第2及び第3列バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第1行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクと、
前記基板上の前記第1列領域における隣り合う第1行バンク間に設けられた複数の第1有機発光素子と、
前記基板上の前記第2列領域における隣り合う第2行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子と異なる色で発光する複数の第2有機発光素子と、
を備え、
前記複数の第1行バンクは、前記基板の上面からの高さが前記第1列バンク、前記第2列バンク及び前記第3列バンクのいずれよりも低い低位行バンクを少なくとも含み、
前記第2行バンクは、前記低位行バンクと、前記基板の上面からの高さが前記低位行バンクよりも高い高位行バンクとをそれぞれ1以上含み、
前記第2行バンクに含まれる前記高位行バンクの数は、前記第1行バンクに含まれる前記高位行バンクの数より大きい
表示パネル。
【請求項2】
前記第1、第2、及び、第3列バンクに平行に配され、且つ、前記複数の第1、及び第2有機発光素子に電力を供給する長尺状の補助電極をさらに備える
請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に間隔をあけて配された長尺状の第1、第2、第3及び第4列バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第1行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、
前記基板上の前記第1列領域における隣り合う第1行バンク間に設けられた複数の第1有機発光素子と、
前記基板上の前記第2列領域における隣り合う第2行バンク間に設けられた複数の第2有機発光素子と、
前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられた複数の第3有機発光素子と
を備え、
前記複数の第1行バンク及び第3行バンクは、前記基板の上面からの高さが前記第1列バンク、前記第2列バンク、前記第3列バンク及び前記第4列バンクのいずれよりも低い低位行バンクを少なくとも含み、
前記第2行バンクは、前記低位行バンクと、前記基板の上面からの高さが前記低位行バンクよりも高い高位行バンクとをそれぞれ1以上含み、
前記第2行バンクに含まれる前記高位行バンクの数は、前記第1行バンクに含まれる前記高位行バンクの数と前記第3行バンクに含まれる前記高位行バンクの数とのいずれよりも大きい
表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の有機発光素子を備える表示パネルに関し、特に、各有機発光素子を区切るバンクの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の有機発光素子を備える表示パネルの開発が行われている。このような表示パネルには、基板上における列バンク及び行バンクで囲まれたサブピクセル領域に、有機発光素子が設けられるものがある。基板の上面から行バンクの上面までの高さ(以下、「行バンクの高さ」と称する)については、基板の上面から列バンクの上面までの高さ(以下、「列バンクの高さ」と称する)よりも低くすること(特許文献1)、または、列バンクの高さと一致させること(特許文献2)が提案されている。いずれの構成でも、有機発光素子に含まれる有機発光層は、列バンク及び行バンクで囲まれたサブピクセル領域に、有機発光材料を含むインクを塗布して乾燥することで得られる。行バンクが延びる方向である行方向に隣り合うサブピクセル領域には、発光色の異なる有機発光材料を含むインクが塗布され、列バンクが延びる方向である列方向に隣り合うサブピクセル領域には、発光色の同じ有機発光材料を含むインクが塗布される。
【0003】
特許文献1に示される通り、行バンクの高さを列バンクの高さよりも低くすると、列方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布されたインクが行バンクを乗り越えて連結するため列方向に隣り合うサブピクセル領域へのインクの塗布量に差異が生じたとしても、列方向に隣り合うサブピクセル領域に存在するインクの量を平準化できる。これにより、列方向に隣り合う有機発光層の膜厚むらを抑制することができる。有機発光層の膜厚は、有機発光素子の輝度や寿命等の特性に影響を与えるため、有機発光層の膜厚むらを抑制することで、有機発光素子の特性のむらを抑制することができる。なお、有機発光層に限らず、有機機能層を構成する層であってインクの塗布により形成される層であれば、この層の膜厚のむらを抑制することで、有機発光素子の抑制のむらを抑制することができる。有機機能層を構成する層としては、有機発光層以外にも、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層等がある。一方、表示パネルの製造工程において、意図せず列バンクの一部が欠けたり、列バンクに異物が付着したりすることで、列バンクにインクの堰き止めを不能とするような欠陥部が生じることがある。列バンクに欠陥部が生じると、列バンクを挟んで隣り合うサブピクセル領域に塗布された発光色の異なるインクが、欠陥部を介して浸入することがある。さらに、列方向に隣り合う発光色の同じインクが連結していると考えられるため、欠陥部を介して浸入した発光色の異なるインクは、浸入したサブピクセル領域だけに留まらず、当該サブピクセル領域に列方向に隣り合うサブピクセル領域に浸入し、場合によってはさらに列方向に並ぶサブピクセル領域まで広がることがある。発光色の異なるインクが浸入したサブピクセル領域では、インクの混色により有機発光素子の表示不良が引き起こされる。そのため、列バンクの欠陥部に隣り合う有機発光素子に加えて、この有機発光素子に列方向に並ぶ有機発光素子も表示不良となる。
【0004】
一方、特許文献2に示される通り、行バンクの高さを列バンクの高さと一致するほど高くすると、列方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布されたインクは、行バンクにより堰き止められ、互いに連結することは無い。そのため、列バンクを挟んで隣り合うサブピクセル領域に塗布された発光色の異なるインクが欠陥部を介して浸入しても、当該インクは、浸入したサブピクセル領域に留まり、その列方向に隣り合うサブピクセル領域まで広がることは無い。これにより、表示不良となる有機発光素子を、列バンクの欠陥部に隣り合う有機発光素子のみに留めることができ、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。一方、列方向に隣り合うサブピクセル領域へのインクの塗布量にむらが生じたとき、列方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布されたインクが行バンクで堰き止められるため、列方向に隣り合うサブピクセル領域に存在するインクの量を平準化できず、列方向に隣り合う有機機能層の膜厚にむらが生じる。これにより、列方向に並ぶ有機発光素子に輝度や寿命等の特性にむらが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2012/017494A1号公報
【文献】特開2009-272081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の表示パネルでは、行バンクの高さはいずれも均一である。これに対して、行バンクの一部を基板の上面からの高さが列バンクよりも低い低位行バンクとし、行バンクの残りを基板の上面からの高さが低位行バンクよりも高い高位行バンクとする構成を考える。この構成では、隣り合う高位行バンクの間に低位行バンクが挟まれる場合、隣り合う高位行バンクで挟まれた部分において各サブピクセル領域に存在するインクの量を平準化でき、列バンクに欠陥部が生じても、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。
【0007】
しかしながら、このような表示パネルについて検討した結果、異なる発光色の有機発光素子において、有機機能層の膜厚むらが同程度であっても、列方向に並ぶ有機発光素子に生じる輝度や寿命等の特性むらの程度が異なることが判明した。異なる発光色の有機発光素子において、有機機能層の膜厚むらが同程度であっても有機発光素子の特性むらの大きさが異なる場合、インクの量の平準化、及び、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりの抑制のうちいずれを重視すべきかが異なると考えられる。そのため、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい有機発光素子に対して、有機機能層の膜厚むらの抑制を重視しつつ、表示パネル全体として、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制することが望まれている。
【0008】
本発明は、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい有機発光素子に対して、有機機能層の膜厚むらの抑制を重視しつつ、表示パネル全体として、列バンクに欠陥部が生じた場合に、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制できる表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る表示パネルは、基板と、前記基板上に間隔をあけて配された長尺状の第1、第2、及び第3列バンクと、前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第1行バンクと、前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクと、前記基板上の前記第1列領域における隣り合う第1行バンク間に設けられた複数の第1有機発光素子と、前記基板上の前記第2列領域における隣り合う第2行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子と異なる色で発光する複数の第2有機発光素子と、を備え、前記複数の第1、及び第2行バンクは、前記基板の上面からの高さが前記第1、第2、及び第3列バンクのいずれよりも低い低位行バンクと、当該基板の上面からの高さが当該低位行バンクよりも高い高位行バンクとを含み、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子とは異なる発光色を有する前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数と異なる、ことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る表示パネルは、基板と、
前記基板上に間隔をあけて配された長尺状の第1、第2及び第3列バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第1行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクと、
前記基板上の前記第1列領域における隣り合う第1行バンク間に設けられた複数の第1有機発光素子と、
前記基板上の前記第2列領域における隣り合う第2行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子と異なる色で発光する複数の第2有機発光素子と、
を備え、
前記複数の第1行バンクは、前記基板の上面からの高さが前記第1列バンク、前記第2列バンク及び前記第3列バンクのいずれよりも低い低位行バンクを少なくとも含み、
前記第2行バンクは、前記低位行バンクと、前記基板の上面からの高さが前記低位行バンクよりも高い高位行バンクとをそれぞれ1以上含み、
前記第2行バンクに含まれる前記高位行バンクの数は、前記第1行バンクに含まれる前記高位行バンクの数より大きいことを特徴とする。
また、前記第1、第2、及び、第3列バンクに平行に配され、且つ、前記複数の第1、及び第2有機発光素子に電力を供給する長尺状の補助電極をさらに備えてもよい。
また、本発明の一態様に係る表示パネルは、基板と、
前記基板上に間隔をあけて配された長尺状の第1、第2、第3及び第4列バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第1行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクと、
前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、
前記基板上の前記第1列領域における隣り合う第1行バンク間に設けられた複数の第1有機発光素子と、
前記基板上の前記第2列領域における隣り合う第2行バンク間に設けられた複数の第2有機発光素子と、
前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられた複数の第3有機発光素子と
を備え、
前記複数の第1行バンク及び第3行バンクは、前記基板の上面からの高さが前記第1列バンク、前記第2列バンク、前記第3列バンク及び前記第4列バンクのいずれよりも低い低位行バンクを少なくとも含み、
前記第2行バンクは、前記低位行バンクと、前記基板の上面からの高さが前記低位行バンクよりも高い高位行バンクとをそれぞれ1以上含み、
前記第2行バンクに含まれる前記高位行バンクの数は、前記第1行バンクに含まれる前記高位行バンクの数と前記第3行バンクに含まれる前記高位行バンクの数とのいずれよりも大きくてもよい
【0010】
また、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、3つ以上であり、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクは、等間隔に並んでいてもよい。
また、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた第1行バンクの全部は、高位行バンクであってもよい。
【0011】
また、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた第2行バンクの全部は、低位行バンクであってもよい。
また、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数よりも多く、前記複数の第1有機発光素子は、第1有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記複数の第2有機発光素子は、前記第1有機発光材料とは異なる第2有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記第1有機発光材料は、当該第1有機発光材料で構成される有機発光層の厚みの変化が輝度に及ぼす影響が、前記第2有機発光材料で構成される有機発光層の厚みの変化が輝度に及ぼす影響よりも小さい特性を有する材料であってもよい。
【0012】
また、前記第1有機発光材料は、赤色発光材料であり、前記第2有機発光材料は、青色発光材料または緑色発光材料であってもよい。
また、前記複数の第1有機発光素子は、第1有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記複数の第2有機発光素子は、前記第1有機発光材料とは異なる第2有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数よりも多く、前記第1有機発光材料は、赤色発光材料であり、前記第2有機発光材料は、青色発光材料または緑色発光材料であってもよい。
【0013】
また、前記基板上に前記第3列バンクに対して離れて設けられた長尺状の第4列バンクと、前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、前記複数の第3有機発光素子、及び、前記第4列バンクで構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隙間をあけて隣り合うように複数組設けられ、前記基板上における隣り合う単位組の隙間の各々に設けられ、前記第1、第2、第3、及び、第4列バンクに平行に配され、且つ、前記複数の第1、第2、及び第3有機発光素子に電力を供給する長尺状の複数の補助電極をさらに備えてもよい。
【0014】
また、前記基板上に前記第3列バンクに対して離れて設けられた長尺状の第4列バンクと、前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、前記複数の第3有機発光素子、及び、前記第4列バンクで構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隙間をあけて隣り合うように複数組設けられ、前記複数の補助電極の各々の上に、それぞれ設けられた1つまたは複数の第4行バンクをさらに備えてもよい。
【0015】
また、前記基板上における前記第2列領域とともに前記第3列バンクを挟むように存在する第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、及び前記複数の第3有機発光素子で構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隣り合うように複数組設けられてもよい。
【0016】
また、前記基板上に前記第3列バンクに対して間隔をあけて配された長尺状の第4列バンクと、前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上における前記第3列領域とともに前記第4列バンクを挟むように存在する第4列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第4行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、前記基板上の前記第4列領域における隣り合う第4行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子、前記複数の第2有機発光素子、及び前記複数の第3発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第4有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記複数の第4有機発光素子のうち隣り合う第4有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、前記複数の第3有機発光素子、前記第4列バンク、及び前記複数の第4有機発光素子で構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隣り合うように複数組設けられてもよい。
【0017】
また、前記基板上における前記第2列領域とともに前記第3列バンクを挟むように存在する第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、及び前記複数の第3有機発光素子で構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隣り合うように複数組設けられてもよい。
【0018】
また、前記基板上に前記第3列バンクに対して間隔をあけて配された長尺状の第4列バンクと、前記基板上における隣り合う前記第3列バンクと前記第4列バンクとの間の第3列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第3行バンクと、前記基板上における前記第3列領域とともに前記第4列バンクを挟むように存在する第4列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第4行バンクと、前記基板上の前記第3列領域における隣り合う第3行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子及び前記複数の第2有機発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第3有機発光素子と、前記基板上の前記第4列領域における隣り合う第4行バンク間に設けられ、且つ、前記複数の第1有機発光素子、前記複数の第2有機発光素子、及び前記複数の第3発光素子のいずれとも異なる発光色で発光する複数の第4有機発光素子と、をさらに備え、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記複数の第4有機発光素子のうち隣り合う第4有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数、及び、前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多く、前記基板上に、前記第1列バンク、前記複数の第1有機発光素子、前記第2列バンク、前記複数の第2有機発光素子、前記第3列バンク、前記複数の第3有機発光素子、前記第4列バンク、及び前記複数の第4有機発光素子で構成される単位組が、列長手方向に交差する方向に隙間をあけて隣り合うように複数組設けられてもよい。
【0019】
また、前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた複数の第2行バンクの全部、及び前記複数の第4有機発光素子のうち隣り合う第4有機発光素子の間に設けられた複数の第4行バンクの全部は、いずれも高位行バンクであり、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた複数の第1行バンクの全部、及び前記複数の第3有機発光素子のうち隣り合う第3有機発光素子の間に設けられた複数の第3行バンクの全部は、いずれも低位行バンクであってもよい。
【0020】
また、前記複数の第1有機発光素子は、第1有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記複数の第2有機発光素子は、前記第1有機発光材料とは異なる第2有機発光材料を含有する有機発光層を含み、前記基板の上面から前記第1、第2有機発光材料を含有する有機発光層の上面までの高さは、前記基板の上面から前記低位行バンクの上面までの高さよりも高く、前記基板の上面から前記高位行バンクの上面までの高さよりも低くてもよい。
【0021】
また、基板を準備する工程と、前記基板上に、長尺状の第1、第2及び第3列バンクを形成するとともに、前記基板上における隣り合う前記第1列バンクと前記第2列バンクとの間の第1列領域に設けられた複数の第1行バンク、及び、前記基板上における隣り合う前記第2列バンクと前記第3列バンクとの間の第2列領域に、列長手方向に間隔をあけて配された複数の第2行バンクを形成する工程と、前記基板上における前記第1列領域内の隣り合う第1行バンクの間に、それぞれ第1有機発光材料を含む第1インクを塗布する工程と、前記基板上における前記第2列領域内の隣り合う第2行バンクの間に、それぞれ前記第1有機発光材料の発光色と異なる発光色を有する第2有機発光材料を含む第2インクを塗布する工程と、前記第1インク及び第2インクを乾燥させることで、第1有機発光層、及び第2有機発光層を形成する工程と、を含み、前記複数の第1、及び第2行バンクは、前記基板からの高さが前記第1、第2及び第3列バンクよりも低い低位行バンクと、当該基板からの高さが当該低位行バンクよりも高い高位行バンクとを含み、前記複数の第1有機発光素子のうち隣り合う第1有機発光素子の間に設けられた高位行バンクの数は、前記複数の第1有機発光素子とは異なる発光色を有する前記複数の第2有機発光素子のうち隣り合う第2有機発光素子の間に設けられた高位行バンクと異なってもよい。
【発明の効果】
【0022】
上記表示パネルでは、第1有機発光素子間に設けられた高位行バンクの数が、第2有機発光素子間に設けられた高位行バンクの数と異なる。そのため、同一の列領域に高位行バンクと低位行バンクとが混在し、隣り合う高位行バンクに低位行バンクが挟まれる場合には、有機機能層の膜厚むらが同程度であっても特性のむらの大きい発光色の有機発光素子に対して、高位行バンクの数を少なくして、隣り合う高位行バンクの間隔を広げる(隣り合う高位行バンクに挟まれる有機発光素子の数を増やす)ことで、インクの量の平準化を重視できる。一方、当該有機発光素子の特性のむらが小さい発光色の有機発光素子に対して、高位行バンクの数を多くして、隣り合う高位行バンクの間隔を狭める(隣り合う高位行バンクに挟まれる有機発光素子の数を減らす)ことで、列バンクに欠陥部が生じた場合に、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりの抑制を重視できる。なお、第1有機発光素子間に設けられた高位行バンクの数と、第2有機発光素子間に設けられた高位行バンクの数とを最も極端に異ならせた場合、第1及び第2有機発光素子のうち一方の間に設けられた行バンクの全部が高位行バンクであり他方の間に設けられた行バンクの全部が低位行バンクであるという構成になる。
【0023】
従って、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい有機発光素子について、有機機能層の膜厚むらの抑制を重視しつつ、表示パネル全体として、列バンクに欠陥部が生じた場合に、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制できる表示パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態1に係る表示パネルにおける有機発光素子のレイアウト図である。
図2図1の表示パネルにおける列バンク、行バンク、有機発光素子のレイアウト図である。
図3図1の表示パネルにおけるX軸方向に隣り合う有機発光素子の構成を示す模式断面図である。
図4図1の表示パネルから列バンク及び行バンクよりも上の層を取り除いたものの一部切り欠き斜視図である。
図5図1の表示パネルの製造方法を説明するための図であり、(a)はホール注入層上にバンク材料膜を成膜する工程の一部切り欠き斜視図を示し、(b)は低位行バンクを形成する工程の一部切り欠き斜視図を示す。
図6図1の表示パネルの製造方法を説明するための図であり、(a)はホール注入層及び低バンク上にバンク材料膜を成膜する工程の一部切り欠き斜視図を示し、(b)は高位行バンク及び列バンクを形成する工程の一部切り欠き斜視図を示す。
図7図1の表示パネルの製造方法を説明するための図であり、インクを塗布する工程の一部切り欠き斜視図を示す。
図8】表示パネルの製造方法において、第2列バンクに欠陥部が生じた場合にインクを塗布した直後の平面図であり、(a)は第2行バンクが低行バンクである比較例に係る表示パネルを示し、(b)は図1の表示パネルを示す。
図9図1の表示パネルにおける有機発光層に含まれる有機発光材料の特性を説明するためのグラフである。
図10】表示パネルの製造方法において、第4列バンクに欠陥部が生じた場合にインクを塗布した直後の平面図であり、(a)は単位組の間に隙間が無い比較例に係る表示パネルを示し、(b)は図1の表示パネルを示す
図11】表示パネルの製造方法において、第4列バンクに欠陥部が生じた場合にインクを塗布した直後の平面図であり、(a)は第4行バンクが低行バンクである比較例に係る表示パネルを示し、(b)は図1の表示パネルを示す。
図12】本発明の実施の形態2に係る列バンク、及び行バンクのレイアウト図である。
図13】本発明の実施の形態3に係る列バンク、及び行バンクのレイアウト図である。
図14】本発明の実施の形態4に係る列バンク、行バンク、及び有機発光素子のレイアウト図である。
図15】本発明の実施の形態5に係る列バンク、行バンク、及び有機発光素子のレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の図面では、行方向をX軸方向、列方向をY軸方向として説明する。
<<実施の形態1>>
1.表示パネル1の構成
<有機発光素子のレイアウト>
本実施の形態に係る表示パネル1における有機発光素子のレイアウトについて、図1のレイアウト図を用いて説明する。同図は、表示パネル1の主面に垂直な方向から、有機発光素子を上面視した図である。
【0026】
表示パネル1は、有機発光素子を発光させることにより画像を表示する表示領域1aを有する。表示領域1aには、例えば、第1の有機発光素子である赤色光(R)を出射する赤色有機発光素子11R、第2の有機発光素子である緑色光(G)を出射する緑色有機発光素子11G、及び第3の有機発光素子である青色光(B)を出射する青色有機発光素子11BがX軸方向及びY軸方向に行列状に並んで設けられている。赤色有機発光素子11R、緑色有機発光素子11G、及び青色有機発光素子11B、(以下、区別の必要のないときには、「有機発光素子11」と称する)は、それぞれサブピクセルに対応して配置されている。各有機発光素子11の形状は、例えば、長方形状である。
【0027】
X軸方向に隣り合う有機発光素子11は発光色が異なり、X軸方向に隣り合う3つの有機発光素子11は、1つの画素を構成している。例えば、表示パネル1がフルハイビジョン規格である場合、表示パネル1には、X軸方向に1920画素、Y軸方向に1080画素が行列状に配置される。
Y軸方向に隣り合う有機発光素子11の発光色は同じである。Y軸方向に並んだ青色有機発光素子により素子列10Bが構成され、Y軸方向に並んだ赤色有機発光素子により素子列10Rが構成され、Y軸方向に並んだ緑色有機発光素子により素子列10Gが構成される。
【0028】
<列バンク、行バンク、列領域、及び有機発光素子のレイアウト>
次に、表示パネル1における列バンク、行バンク、及び有機発光素子のレイアウトについて、図2のレイアウト図を用いて説明する。同図では、一例として、表示パネル1のうち18の有機発光素子11及びこの有機発光素子11周辺の拡大図を示している。表示パネル1では、同図に示した部分以外についても同様に、列バンク、行バンク、及び有機発光素子が配置されている。
【0029】
表示パネル1では、赤色有機発光素子11R、緑色有機発光素子11G、及び青色有機発光素子11Bと、第1列バンク30A、第2列バンク30B、第3列バンク30C、及び第4列バンク30D(以下、区別する必要が無いときには、それぞれを「列バンク30」と称する。)とで構成される単位組60が、X軸方向に隙間61をあけて隣り合うように設けられている。
【0030】
第1列バンク30A、第2列バンク30B、第3列バンク30C、及び第4列バンク30Dは、それぞれY軸方向に延び、長尺状をしている。第1列バンク30Aと第2列バンク30Bとの間の第1列領域35Aにおいて、複数の第1行バンク40Aが列長手方向に間隔をあけて設けられ、列長手方向に隣り合う第1行バンク40Aの間に赤色有機発光素子11Rが設けられている。なお、ここでいう「列長手方向」とは、列バンク30の長尺方向を言う。また、第2列バンク30Bと第3列バンク30Cとの間の第2列領域35Bにおいて、複数の第2行バンク40Bが列長手方向に間隔をあけて設けられ、列長手方向に隣り合う第2行バンク40Bの間に緑色有機発光素子11Gが設けられている。さらに、第3列バンク30Cと第4列バンク30Dとの間の第3列領域35Cにおいて、列長手方向に複数の第3行バンク40Cが列長手方向に間隔をあけて設けられ、隣り合う第3行バンク40Cの間に青色有機発光素子11Bが設けられている。加えて、隙間61に、複数の第4行バンク44が列長手方向に間隔をあけて設けられている。
【0031】
<表示パネル1の断面構造>
次に、表示パネル1の断面構造について、図3の模式断面図を用いて説明する。同図は、図2におけるA-A断面図であり、X軸方向に隣り合い、1つの画素を構成する赤色有機発光素子11R、緑色有機発光素子11G、及び青色有機発光素子11Bとその周辺とを示す。
【0032】
表示パネル1は、第1行バンク40A、第2行バンク40B、第3行バンク40C、及び第4行バンク44(以下、区別の必要が無いときには、まとめて「行バンク40」と称する。)と、列バンク30とに加えて、基板12と、下部電極13と、補助電極50と、と、ホール注入層14と、ホール輸送層15と、赤色有機発光層16R、緑色有機発光層16G、及び青色有機発光層16B(以下、区別の必要が無いときは、「有機発光層16」と称する)と、電子輸送層17と、電子注入層18と、上部電極19と、封止層20とを備える。有機発光素子11は、下部電極13と上部電極19のうち有機発光層16を被覆する部分と、これにより挟まれた各層とからなる。表示パネル1は、本実施の形態では、トップエミッション型の表示パネルである。そのため、同図におけるZ軸方向上向きに光が出射される。以下、表示パネル1の各構成部材について説明する。
【0033】
2.表示パネル1の各構成部材
<基板>
基板12は、例えば、ガラス基板上に、TFT層及び層間絶縁層を順に積層して構成される。ガラス基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどを用いることができる。
TFT層は、各サブピクセルに複数のトランジスタ素子部を備える。各トランジスタ素子部は、ゲート、ソース、ドレインの3電極、半導体層、及びパッシベーション膜等を含み構成されている層間絶縁層の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂などを用いることができる。
【0034】
<下部電極>
下部電極13は、基板12におけるTFT層に電気的に接続されており、陽極として機能する。図2に戻って、下部電極13は、X軸方向に間隔をあけるとともに、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。各下部電極13の形状は、長方形状である。下部電極13のX軸方向における端部は、列バンク30のいずれかにより被覆されている。下部電極13のY軸方向における端部は、第1行バンク40A、第2行バンク40B、及び第3行バンク40Cのいずれかにより被覆されている。下部電極13の材料としては、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料などを用いることができる。表示パネル1がトップエミッション型であるため、下部電極13の表面は、高い光反射性を有することが好ましい。下部電極13の厚みは、例えば、100nm以上700nm以下である。
【0035】
<補助電極>
補助電極50は、上部電極19と接続され、上部電極19の面内における電圧降下を抑制するために設けられている。補助電極50は、単位組60の隙間61、すなわち、第1列バンク30Aと第4列バンク30Dとの隙間に、配置されている。補助電極50の形状は、Y軸方向に延びる長尺状である。補助電極50の上には、複数の第4行バンク44が設けられている。補助電極50のX軸方向における端部の上方は、第1列バンク30A及び第4列バンク30Dにより被覆されている。補助電極50の材料としては、下部電極13の材料と同様に、銀(Ag)またはアルミニウム(Al)を含む金属材料などを用いることができる。補助電極50の厚みは、下部電極13の厚みと同様に、例えば、100nm以上700nm以下である。
【0036】
<ホール注入層>
図3に戻って、ホール注入層14は、下部電極13上、及び基板12上における隣り合う下部電極13の隙間に対応する部分に配置されている。ホール注入層14は、下部電極13からの有機発光層16へのホール注入性を向上させる機能を有する。ホール注入層14の材料としては、金属酸化物などの無機材料を用いることができる。金属酸化物としては、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの金属の酸化物を用いることができる。ホール注入層14の厚みは、例えば、5nm以上30nm以下である。
【0037】
<ホール輸送層>
ホール輸送層15は、ホール注入層14上に配置されている。ホール輸送層15は、下部電極13から注入されたホールを有機発光層16に輸送する機能を有する。ホール輸送層15の材料は、有機材料である。有機材料としては、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって親水基を備えないものを用いることができる。ホール輸送層15の厚みは、例えば、5nm以上30nm以下である。
【0038】
<有機発光層>
有機発光層16は、ホール輸送層15上に配置されている。図示していないが、有機発光層16は、行バンク40により区切られている。有機発光層16は、ホールと電子とが注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。赤色有機発光層16Rは、赤色の有機発光材料を含む。同様に、緑色有機発光層16Gは緑色の有機発光材料を含み、青色有機発光層16Bは青色の有機発光材料を含む。有機発光材料としては、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物などを用いることができる。有機発光層16の厚みは、例えば、50nm以上150nm以下である。
【0039】
<電子輸送層>
電子輸送層17は、有機発光層16上、列バンク30上、及び行バンク40上の全面に配置されている。電子輸送層17は、上部電極19から注入された電子を有機発光層16へ輸送する機能を有する。電子輸送層17の材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナントロリン誘導体(BCP、Bphen)などを用いることができる。電子輸送層17の厚みは、例えば、5nm以上80nm以下である。
【0040】
<電子注入層>
電子注入層18は、電子輸送層17上に配置されている。電子注入層18は、上部電極19から有機発光層16への電子注入性を向上する機能を有する。電子注入層の材料としては、例えば、アルカリ金属を含む金属錯体を用いることができる。電子注入層18の厚みは、例えば、5nm以上80nm以下である。
【0041】
<上部電極>
上部電極19は、列バンク30上方及び電子輸送層17上の全面に配置されている。また、図示していないが、上部電極19は、行バンク40上の全面にも配置されている。上部電極19は、負極として機能する。上部電極19の材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、マグネシウム銀合金(MgAg)などを用いることができる。表示パネル1はトップエミッション型であるため、上部電極19の材料は、光透過性の材料であることが好ましい。上部電極19の厚みは、酸化インジウムスズ(ITO)を用いる場合には、例えば、30nm以上200nm以下nmである。また、上部電極19の厚みは、マグネシウム銀合金(MgAg)を用いる場合には、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0042】
<封止層>
封止層110は、上部電極19上に配置されている。封止層110は、各層が水分や空気に晒されることを抑制する機能を有する。封止層110の材料としては、例えば、SiN(窒化シリコン)などを用いることができる。
<バンク>
列バンク30は、ホール注入層14上に配置されており、X軸方向に隣り合う下部電極13の間及び下部電極13の端部を被覆している。
【0043】
列バンク30の高さは、例えば、有機発光層16を印刷法により形成する場合、塗布される有機材料インクを列バンク30が堰き止められる程度、すなわち、有機材料インクを列バンクが乗り越えられない程度とし、例えば、1.0μm以上1.5μm以下である。ここで、列バンク30の高さは、「基板12の上面から列バンク30の上面までの高さ」を言う。行バンク40の高さについても同様である。列バンク30の材料としては、アクリル樹脂系のポジ型フォトレジストなどを用いることができる。
【0044】
第1行バンク40A、第2行バンク40B、及び第3行バンク40Cは、図3の断面図には現れていないが、ホール注入層14上に配置されており、Y軸方向に隣り合う下部電極13の間及び下部電極13の端部を被覆している。第4行バンク44は、図3の断面図には現れていないが、ホール注入層14上に配置されており、補助電極50を部分的に被覆している。
【0045】
図4の斜視図に、列バンク30及び行バンク40の構造を示す。同図は、便宜上、列バンク30及び行バンク40よりも上の層を取り除いて示してある。行バンク40は、列バンク30よりも低い低位行バンクと、低位行バンクよりも高い高位行バンクとを含む。第1行バンク40Aの全部(フルハイビジョン規格の場合1079個)、及び、第3行バンク40Cの全部(フルハイビジョン規格の場合1079個)は、いずれも、低位行バンクである。そのため、隣り合う青色有機発光素子11Bの間、及び、隣り合う赤色有機発光素子10Rの間に設けられる高位行バンクの数は、0個である。低位行バンクの高さは、有機発光層16を印刷法により形成する場合、塗布される有機材料インクが低位行バンクを乗り越えられる程度とし、例えば、500nm以下である。第2行バンク40Bの全部(フルハイビジョン規格の場合1079個)、及び、第4行バンク44の全部(フルハイビジョン規格の場合1079個)は、いずれも、高位行バンクである。なお、隙間61において補助電極50上に設けられる第4行バンク44の全部(フルハイビジョン規格の場1079個)も、高位行バンクである。高位行バンクの高さは、有機発光層16を印刷法により形成する場合、塗布される有機材料インクを高位行バンクが堰き止められる程度、すなわち、有機材料インクを高位行バンクが乗り越えられない程度とし、例えば、1.0μm以上1.5μm以下である。なお、高位行バンクの高さは、高位行バンクの高さは、高位行バンク間に塗布される有機材料インクをある程度保持できるよう考慮して設定すればよい。本実施の形態では、高位行バンクの高さは、列バンク30の高さに等しい。図2において、低位行バンクは粗いドット模様で塗りつぶされており、高位行バンクは細かいドット模様で塗りつぶされている。行バンク40の材料としては、列バンク30の材料と同じく、アクリル樹脂系のポジ型フォトレジストなどを用いることができる。
【0046】
3.表示パネル1の製造方法
上述の通り、本実施の形態はバンクの構造に特徴を有する。以下、表示パネル1の製造方法について、特に、バンクと有機発光層との形成工程について、重点的に図5図7の一部切り欠き斜視図を用いて説明する。
図5(a)に示すように、下部電極13及び補助電極50を形成した基板12上に、ホール注入層14を形成した後、ホール注入層14上の全面にバンク材料膜46Rを成膜する。基板12は、ガラス基板の上面にTFT層及び層間絶縁層を形成したものであり、公知の技術で作製される。下部電極13及び補助電極50は、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて、基板12上に金属膜を成膜した後、金属膜パターニングすることで形成される。さらに、スパッタリング法または真空蒸着法を用いて、下部電極13及び補助電極50が形成された基板12上に金属酸化物膜を成膜することで、ホール注入層14が形成される。バンク材料膜46Rは、スピンコート法などの塗布法を用いて、アクリル樹脂系のポジ型フォトレジストを液体の状態で塗布することで、成膜されている。
【0047】
次に、図5(b)に示すように、行バンク第1層46を形成する。行バンク第1層46は、バンク材料膜46Rを露光及び現像によりパターニングし、焼成を行うことで形成される。具体的には、露光では、マスクを介してUV照射処理を行い、バンク材料膜46Rの一部を硬化させる。現像では、硬化しなかったバンク材料膜を現像液により除去する。
図6(a)に示すように、行バンク第1層46上が形成されたホール注入層14上の全面に、バンク材料膜47Rを成膜する。バンク材料膜47Rは、バンク材料膜46Rと同様に、スピンコート法などの塗布法を用いて、アクリル樹脂系のポジ型フォトレジストを液体の状態で塗布することで、成膜されている。
【0048】
さらに、図6(b)に示すように、列バンク30及び行バンク40の形成を行う。列バンク30、第2行バンク40B及び第4行バンク44は、バンク材料膜47Rを露光及び現像によりパターニングし、焼成を行うことで形成される。具体的には、露光では、マスクを介してUV照射処理を行い、バンク材料膜47Rの一部を硬化させる。現像では、硬化しなかったバンク材料膜を現像液により除去する。
【0049】
列バンク30及び行バンク40を形成する工程では、低位行バンクである第1行バンク40A及び第3行バンク40Cを形成する工程を1工程とし、高位行バンクである第2行バンク40B及び第4行バンク44と同じ高さを有する列バンク30とを形成する工程を1工程としている。これにより、第2行バンク40B及び第4行バンク44は、バンク材料膜46Rで構成される層とバンク材料膜47Rで構成される層とが一体化して形成される。
【0050】
図7に示すように、隣り合う列バンク30で区切られるとともに、隣り合う行バンク40で区切られる領域であるサブピクセル領域に対して、ホール輸送層15を形成した後、赤色有機材料インク16IR、緑色有機材料インク16IG、及び青色有機材料インク16IBを塗布する。具体的には、印刷法を用いて、ホール輸送層15の材料をインクの状態でサブピクセル領域に塗布した後、インクを乾燥することで、ホール輸送層15を形成する。その後、サブピクセル領域に、赤色有機材料インク16IR、緑色有機材料インク16IG、及び青色有機材料インク16IBを塗布する。
【0051】
X軸方向に隣り合う赤色有機材料インク16IR及び緑色有機材料インク16IGは、第2列バンク30Bにより区切られている。X軸方向に隣り合う緑色有機材料インク16IG及び青色有機材料インク16IBについても同様に区切られている。
Y軸方向に隣り合う緑色有機材料インク16IGは、第2行バンク40Bにより区切られている。各第2行バンク40Bが高位行バンクであるため、Y軸方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布された緑色有機材料インク16IGが、その間の第2行バンク40Bを乗り越えて互いに連結することは無い。
【0052】
一方、Y軸方向に隣り合う赤色有機材料インク16IRは、各第1行バンク40Aが低位行バンクであるため、Y軸方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布された赤色有機材料インク16IRは、その間の第1行バンク40Aを乗り越えて連結する。その結果、Y軸方向に隣り合う赤色有機材料インク16IRの体積を平準化することができる。これにより、Y軸方向に隣り合う赤色有機発光層16Rの膜厚のむらを抑制することができる。本実施の形態では、第1行バンク40Aは全て低位行バンクである。従って、Y軸方向に並んだ全てのサブピクセル領域に塗布された赤色有機材料インク16IRが連結し、その結果、Y軸方向に並んだ全ての赤色有機発光層16Rの膜厚のむらを抑制できる。同様に、第3行バンク40Cが全て低位行バンクであるため、Y軸方向に並んだ全てのサブピクセル領域に塗布された青色有機材料インク16IBが連結し、その結果、Y軸方向に並んだ全ての青色有機発光層16Bの膜厚のむらを抑制できる。
【0053】
その後、赤色有機材料インク16IR、緑色有機材料インク16IG、及び青色有機材料インク16IBを乾燥させて有機発光層16を形成し、さらに、電子輸送層17、電子注入層18、上部電極19、封止層20を順に積層することで、表示パネル1が完成する。具体的には、まず、電子輸送層17を蒸着法を用いて形成する。その後、電子輸送層17、列バンク30、及び行バンク40の上面を被覆するように、上部電極19を蒸着法またはスパッタリング法を用いて形成し、封止層110をCVD法またはスパッタリング法を用いて形成する。
【0054】
4.効果
<高位行バンクによる効果>
高位行バンクの機能について、図8を用いて検討する。同図は、表示パネル1において、第3列バンク30Cに欠陥部30Fが存在する構成を示しており、有機材料インクを塗布した直後の上面図である。欠陥部30Fでは、例えば、第3列バンク30Cが意図せず欠けていることにより、表示不良が上下3サブピクセル領域に亘って生じている。まず、比較例に係る表示パネル901について説明する。比較例に係る表示パネル901は、実施の形態1に係る表示パネル1と比べて、第2行バンク940Bが低位行バンクであることのみが異なり、他の構成は同一である。
【0055】
図8(a)に示すように、表示パネル901において、第1列バンク30Aに欠陥部30Fが存在する。そのため、青色有機材料インク16IBは、欠陥部30Fに隣り合い緑色有機材料インク16IGが塗布されたサブピクセル領域に、欠陥部30Fを介して浸入する。さらに、青色有機材料インク16IBは、浸入したサブピクセル領域から、第2行バンク940Bを同図上下方向に1つずつ乗り越える。同様に、緑色有機材料インク16IGは、欠陥部30Fに隣り合い青色有機材料インク16IBが塗布されたサブピクセル領域に欠陥部30Fを介して浸入し、浸入したサブピクセル領域から第3行バンク40Cを同図上下方向に1つずつ乗り越える。これにより、欠陥部30Fに隣り合うサブピクセル領域と、このサブピクセル領域に対してY軸方向に隣り合うサブピクセル領域との合計6つのサブピクセル領域において、混色インク16IGBが存在することになる。混色インク16IGBが乾燥して有機発光層となると、表示パネル901に表示不良な有機発光素子が、6つ生じることになる。なお、欠陥部30Fを介して浸入したインクが、浸入したサブピクセル領域から第3行バンク40Cを同図上下方向に2つ以上の複数個ずつ乗り越えることもある。その場合、不良な有機発光素子は8つ以上と多く生じることになり、表示パネルへの表示不良の影響が大きくなる。
【0056】
一方、図8(b)に示すように、表示パネル1においても、第3列バンク30Cに欠陥部30Fが存在する。緑色有機材料インク16IGは、欠陥部30Fに隣り合い青色有機材料インク16IBが塗布されたサブピクセル領域に欠陥部30Fを介して浸入するが、第2行バンク40Bにより堰き止められる。緑色有機材料インク16IGは、欠陥部30Fに隣り合い青色有機材料インク16IBが塗布されたサブピクセル領域に欠陥部30Fを介して浸入するものの、浸入したサブピクセル領域から第3行バンク40Cを同図上下方向に1つずつ乗り越えにくい。また、仮に、欠陥部30Fを介して浸入した緑色有機材料インク16IGが、浸入したサブピクセル領域から第3行バンク40Cを同図上下方向に1つずつ乗り越えたとしても、その影響は極めて小さい。以上を踏まえると、欠陥部30Fに隣り合うサブピクセル領域である2つのサブピクセル領域において、混色インク16IGBが存在することになる。混色インク16IGBが乾燥して有機発光層となると、表示パネル1に不良な有機発光素子が2つ生じることになる。
【0057】
このように、欠陥部30Fが存在する場合でも、表示パネル1では、表示パネル901と比べて、表示不良となる有機発光素子が、欠陥部30Fに隣り合う有機発光素子から列方向に隣り合う有機発光素子に広がることを抑制できる。すなわち、欠陥部30Fによる表示不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。
また、表示パネル1では、高位行バンクが設けられた第2列領域の両側に、低位行バンクが設けられた第1列領域及び第3列領域が存在しているため、低位行バンクが設けられた列領域が隣り合う構成と比べて、欠陥部30Fによる表示不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。
【0058】
<高位行バンクの配置>
上述のように、表示パネル1では、隣り合う緑色有機発光素子11Gの間に設けられた第2行バンク40Bの全部が高位行バンクであり、隣り合う赤色有機発光素子11Rの間に設けられた第1行バンク40Aの全部、及び、隣り合う青色有機発光素子11Bの間に設けられた第3行バンク40Cの全部が低位行バンクである。すなわち、隣り合う緑色有機発光素子11Gの間に設けられた高位行バンクの数は、隣り合う赤色有機発光素子11Rの間に設けられた高位行バンクの数、及び、隣り合う青色有機発光素子11Bの間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多い。
【0059】
高位行バンクを隣り合う緑色有機発光素子11Gの間に配置した理由は、発光色の異なる赤色有機発光素子、緑色有機発光素子、青色有機発光素子について、有機発光層の膜厚むらが同程度であっても、有機発光素子の特性のむらの大きさが異なるためである。以下、この特性のむらとして輝度むらを例示して説明する。
図9は、有機発光材料の特性を説明するための模式的なグラフであり、横軸が有機発光材料で構成される有機発光層の相対厚み(%)を示し、縦軸が当該有機発光層に対して同じ電圧を印加した場合の輝度を示す。ここでいう「有機発光層の相対厚み」とは、有機発光層の目標膜厚を100%としたときの有機発光層の相対的な厚みを言う。一点鎖線が赤色有機発光材料の特性を示し、二点鎖線が緑色、及び青色有機発光材料の特性を示す。本実施の形態では、輝度を最適にするような膜厚を目標設定としていたが、これに限らず、寿命や消費電力を最適にするような目標設定にしてもよい。
【0060】
緑色有機発光材料では、厚みを変化させたとしても輝度はあまり変化しない。そのため、緑色有機発光層に膜厚むらが生じても輝度むらへの影響は小さい。一方、赤色有機発光材料及び青色有機発光材料では、厚みを変化させると輝度が大きく変化する。そのため、赤色有機発光層及び青色有機発光層に膜厚むらが生じると輝度むらへの影響が大きい。このように、赤色有機発光材料及び青色有機発光材料に比べて緑色有機発光材料では膜厚の輝度に対する影響が小さいため、第2行バンクで高位行バンクの数を多くすることでY軸方向に隣り合う赤色有機発光層に膜厚むらが多くなっても、輝度むらへの影響は小さいと言える。本実施の形態では、X軸方向に、赤色有機発光層、緑色有機発光層、及び青色有機発光層が並ぶように配置することで、膜厚の輝度に対する影響を重視している。この効果については後述する。なお、X軸方向に、緑色有機発光層、赤色有機発光層、及び青色有機発光層が並ぶように配置したとしても、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制するという効果は得られる。
【0061】
一方、本実施の形態では、膜厚の輝度に対する影響が小さい有機発光材料は、緑色有機発光材料であるが、これに限らず、RGBの有機発光材料の組み合わせによっては、赤色または青色の有機発光材料で、膜厚の輝度に対する影響が小さくなることもある。このような場合は、赤色有機発光材料や青色有機発光材料を含む有機材料インクを塗布する列領域に、高位行バンクの数を多くしてもよい。例えば、赤色有機発光材料で、膜厚の輝度に対する影響が小さい場合には、隣り合う赤色有機発光層の間に高位行バンクを設けるとともに、隣り合う緑色有機発光層の間及び隣り合う青色有機発光層の間に低位行バンクを設ければよい。この場合、X軸方向には、赤色有機発光層、緑色有機発光層、及び青色有機発光層が順に並ぶように配置すればよい。また、X軸方向に、緑色有機発光層、赤色有機発光層、及び青色有機発光層が順に並ぶように配置すれば、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制するという効果がさらに大きくなる。
【0062】
ところで、1つの列領域に、高位行バンクと低位行バンクとが混在する場合、高位行バンクが多い場合と少ない場合とでは得られる効果が異なる。具体的には、隣り合う高位行バンクに挟まれる低位行バンクの数が多いほど、インクの量の平準化に対して有利な構成となる。一方、隣り合う高位行バンクに挟まれる低位行バンクの数が少ないほど、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりの抑制に対して有利な構成となる。高位行バンクの数は、その列領域に塗布する有機材料インクにおける膜厚の輝度に対する影響の大きさに応じて選択すればよい。
【0063】
本実施の形態では、上述のように、インクの量の平準化、及び、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりの抑制のうち、膜厚むらに対する輝度むらの影響が小さい緑色発光材料に対して後者を重視し、膜厚のむらに対する輝度むらの影響が大きい青色発光材料や赤色発光材料に対して前者を重視している。これにより、有機発光層の膜厚むらによる影響の大きい赤色有機発光素子11R及び青色有機発光素子11Bについて、有機発光層の膜厚むらによる有機発光素子の特性のむらを重視しつつ、有機発光層の膜厚むらによる影響の小さい緑色有機発光素子11Gについて、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。なお、有機発光層に限らず、有機機能層を構成する他の層であるホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層等についても考慮することが好ましい。例えば、有機機能層が有機発光層及びホール輸送層からなり、これらがインクの塗布により形成される場合、有機発光層の膜厚むらによる影響に加えて、ホール輸送層の膜厚むらによる影響も考慮して、表示パネルを設計することが好ましい。
【0064】
<単位組の隙間>
上述のように、本実施の形態では、有機発光素子11と列バンク30とで構成される単位組60が、X軸方向に隙間61をあけて隣り合っている。この単位組60の隙間61について、図10を用いて検討する。同図は、表示パネル1において、第1列バンク30Aに欠陥部30Fが存在する構成を示しており、有機材料インクを塗布した直後の上面図である。欠陥部30Fは、例えば、第1列バンク30Aが意図せず欠けており、ここではインクの堰き止めが不能となっている。まず、比較例に係る表示パネル911について説明する。比較例に係る表示パネル911は、実施の形態1に係る表示パネル1と比べて、単位組が隙間なく設けられることのみが異なり、他の構成は同一である。
【0065】
図10(a)に示すように、表示パネル911では、単位組60がX軸方向に隙間なく設けられている。赤色有機材料インク16IRは、欠陥部30Fに隣り合い青色有機材料インク16IBが塗布されたサブピクセル領域に、欠陥部30Fを介して浸入し、さらに、浸入したサブピクセル領域から、第3行バンク40Cを同図上下方向に1つずつ乗り越える。同様に、青色有機材料インク16IBは、欠陥部30Fに隣り合い赤色有機材料インク16IRが塗布されたサブピクセル領域に欠陥部30Fを介して浸入し、浸入したサブピクセル領域から第1行バンク40Aを同図上下方向に1つずつ乗り越える。これにより、欠陥部30Fに隣り合うサブピクセル領域と、このサブピクセル領域に対してY軸方向に隣り合うサブピクセル領域との合計6つのサブピクセル領域において、混色インク16IBRが存在し、このインクが乾燥して有機発光層となると、表示パネル921に不良な有機発光素子が、6つ生じることになる。
【0066】
図10(b)に示すように、表示パネル1では、R色有機材料インク16IRが、欠陥部30Fに隣り合う隙間61に、欠陥部30Fを介して浸入する。そのため、欠陥部の両側に有機発光素子が設けられている表示パネル911と異なり、混色インクは生じないため、表示パネル1の輝度むらを抑制することができる。なお、塗布されたサブピクセル領域に保持される赤色有機材料インク16IRの量は、塗布された量と比べて当該されたサブピクセル領域から隙間61に流れ出た分だけ少なくなるが、このインクの量の減少による影響は、混色インクによる影響よりも小さい。
【0067】
また、表示パネル1では、隙間61に、上部電極19に給電を行う補助電極50を設けている。これにより、上部電極19の全面において一定の電圧を印加することができる。
<補助電極上に設けられた高位行バンク>
補助電極上に設けられた高位行バンクについて、図11を用いて検討する。同図は、表示パネル1において、第1列バンク30Aに欠陥部30Fが存在する構成を示しており、有機材料インクを塗布した直後の上面図である。同図における欠陥部30Fでは、第1列バンク30Aが意図せず欠けている。まず、比較例に係る表示パネル901について説明する。比較例に係る表示パネル921は、実施の形態1に係る表示パネル1と比べて、第4行バンク944の全部が低位行バンクであることのみが異なり、他の構成は同一である。
【0068】
図11(a)に示すように、表示パネル921において、赤色有機材料インク16IRは、第1列バンク30Aと第4列バンク30Dとの間の領域に、欠陥部30Fを介して浸入する。浸入した赤色有機材料インク16IRは、第4行バンク944を、同図上下方向に1つずつ乗り越える。これにより、第1列バンク30A及び第4列バンク30Dに囲まれた領域のうち3つのサブピクセル領域に流出した赤色有機材料インク16IRの体積の分だけ、欠陥部30Fと隣り合うサブピクセル領域に存在する赤色有機材料インク16IRの体積が小さくなる。その後、赤色有機材料インク16IRが乾燥して赤色有機発光層16Rとなると、表示パネル921における赤色有機発光層16Rの一部で膜厚が薄くなる。
【0069】
図11(b)に示すように、表示パネル1においても、赤色有機材料インク16IRは、第1列バンク30A及び第4列バンク30Dに囲まれた領域に、欠陥部30Fを介して浸入する。しかしながら、浸入した赤色有機材料インク16IRは、第4行バンク44を乗り越えない。これにより、第1列バンク30A及び第4列バンク30Dに囲まれた領域のうち1つのサブピクセル領域に流出した赤色有機材料インク16IRの体積の分だけ、欠陥部30Fに隣り合うサブピクセル領域に存在する赤色有機材料インク16IRの体積が小さくなる。その後、赤色有機材料インク16IRが乾燥して赤色有機発光層16Rとなると、表示パネル901における赤色有機発光層16Rの一部で膜厚が薄くなる。
【0070】
このように、欠陥部30Fが存在する場合でも、表示パネル1では、表示パネル921と比べて、欠陥部30Fに隣り合うサブピクセル領域及びこのサブピクセル領域にY軸方向に隣り合うサブピクセル領域から流出するインクの体積が小さくなる。そのため、赤色有機発光層16Rの膜厚が薄くなることを抑制することができる。これにより、表示パネル1では、表示パネル921と比べて、赤色有機発光層16Rの膜厚むらを抑制できる。
【0071】
なお、表示パネル1では、補助電極50上に位置する第4行バンク44の全部が高位行バンクであったが、これに限らず、第4行バンク44の一部が高位行バンクであり残りが低位行バンクであってもよい。この場合でも、インクの流出に起因する欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。
<<実施の形態2>>
図12のレイアウト図に示す実施の形態2の表示パネル101の基本構成は、実施の形態1と略同じである。実施の形態2は、「第2行バンクの全部が高位行バンクである」実施の形態1に対して、「第2行バンクのうち、一部が高位行バンクであり、残りが低位行バンクである」点が相違する。なお、実施の形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0072】
表示パネル101では、第2行バンクをY軸方向に視たときに、隣り合う第2行バンク140B1が、2つの第2行バンク140B2を挟むように配置されている。第2行バンク140B1が高位行バンクであり、第2行バンク140B2が低位行バンクである。すなわち、表示パネル101では、隣り合う第2行バンク140B1(高位行バンク)が、2つの第2行バンク140B2(低位行バンク)を挟むように等間隔に並んでいる。なお、ここでいう「等間隔」とは、隣り合う高位行バンクの物理的な距離が等しいことではなく、隣り合う高位行バンクの間に挟まれた低位行バンクの数が等しいことを言う。この構成であっても、隣り合う緑色有機発光素子11Gの間に設けられた高位行バンクの数が、隣り合う青色有機発光素子11Bの間に設けられた高位行バンクの数、及び、隣り合う赤色有機発光素子11Rの間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多くなっている。そのため、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい赤色有機発光素子11R、及び青色有機発光素子11Bについて、有機機能層の膜厚むらによる有機発光素子の特性のむらを重視しつつ、表示パネル1全体として、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
【0073】
なお、表示パネル101のように、Y軸方向に隣り合う高位行バンクが2つの低位行バンクを挟む構成に限らず、列バンクの欠陥部を介して浸入したインクが列方向に拡がる領域までに高位行バンクを配置することで、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制できる。一般的に、列バンクの欠陥部を介して浸入したインクが、浸入したサブピクセル領域からに上下10サブピクセル領域まで広がる。そのため、Y軸方向に隣り合う高位行バンクが19以下の低位行バンクを挟む構成とすることで、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
【0074】
<<実施の形態3>>
図13のレイアウト図に示す実施の形態3の表示パネル201の基本構成は、実施の形態1と略同じである。実施の形態3は、「第1行バンク及び第3行バンクの全部が低位行バンクである」実施の形態1に対し、「第1行バンクの一部が高位行バンクであり残りが低位行バンクであるとともに、第3行バンクの一部が高位行バンクであり残りが低位行バンクである」点が相違する。なお、実施の形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0075】
表示パネル201では、第1行バンクをY軸方向に視たときに、隣り合う第1行バンク240A1が、2つの第1行バンク240A2を挟むように配置されている。すなわち、表示パネル201では、隣り合う第1行バンク240A1(高位行バンク)が、2つの第1行バンク240A2(低位行バンク)を挟むように等間隔に並んでいる。この構成であっても、隣り合う緑色有機発光素子11Gの間に設けられた高位行バンクの数が、隣り合う青色有機発光素子11Bの間に設けられた高位行バンクの数、及び、隣り合う赤色有機発光素子11Rの間に設けられた高位行バンクの数のいずれよりも多くなっている。そのため、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい赤色有機発光素子11R、及び青色有機発光素子11Bについて、有機機能層の膜厚むらによる有機発光素子の特性のむらを重視しつつ、表示パネル1全体として、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
【0076】
<<実施の形態4>>
図14のレイアウト図に示す実施の形態4の表示パネル301の基本構成は、実施の形態1と略同じである。実施の形態4は、「単位組の間に隙間があり、その隙間に補助電極が配されている」実施の形態1に対し、「単位組の間に隙間が無い」点が相違する。なお、実施の形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0077】
表示パネル301は、赤色有機発光素子11R、緑色有機発光素子11G、及び青色有機発光素子11Bと、第1列バンク30A、第2列バンク30B、及び第3列バンク30Cとで構成される単位組が隙間なく隣り合うように配置されている。この構成であっても、第2列領域に設けられる高位行バンクの数が、第1列領域に設けられる高位行バンクの数、及び、第3列領域に設けられる高位行バンクの数のいずれよりも多くなっている。そのため、有機機能層の膜厚むらによる影響の大きい緑色有機発光素子11G、及び青色有機発光素子11Bについて、有機機能層の膜厚むらによる有機発光素子の特性のむらを重視しつつ、表示パネル1全体として、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
【0078】
さらに、表示パネル301では、単位組の隙間がある構成と比べて、単位組の隙間の分だけ多くの素子列を配置することができる。そのため、表示パネル301では、パネルサイズが同じであり単位組の隙間のある構成に比べて、高精細化を実現できる。表示パネル301のサイズを小さくすることができる。また、表示パネル301では、同じ解像度であり単位組の隙間がある構成と比べて、隙間の分だけサブピクセル領域を大きくすることができるため、開口率をより向上することができる。
【0079】
<<実施の形態5>>
図15のレイアウト図に示す実施の形態5の表示パネル401の基本構成は、実施の形態4と略同じである。実施の形態5は、「赤色有機発光素子、緑色有機発光素子、及び青色有機発光素子が配置される」実施の形態4に対し、「赤色有機発光素子、緑色有機発光素子、青色有機発光素子、白色有機発光素子が配置される」点が相違する。なお、実施の形態4と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0080】
表示パネル501は、赤色有機発光素子11R、緑色有機発光素子11G、青色有機発光素子11B、白色有機発光素子11Wと、第1列バンク30A、第2列バンク30B、第3列バンク30C、及び第4列バンク30Dとで構成される単位組が、隙間なく隣り合うように配置されている。第4列バンクは、青色有機発光素子11Bと白色有機発光素子11Wとを隔てるように配置されている。第1列バンク30Aと第4列バンク30Dとの間の第4列領域35Dには、列長手方向に間隔をあけて複数の第4行バンク40Dが配置されている。第4行バンク40Dの全部は、高位行バンクである。
【0081】
表示パネル401では、第3列バンク30Cに欠陥部が生じても、第4行バンク40Dの全部が高位行バンクであるため、欠陥部による表示不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
<<変形例>>
1.列バンク及び行バンクの構成
(1-1)単位組を隙間なく設ける構成における高位行バンクの配置
上記実施の形態4では、第1行バンク、第2行バンク、第3行バンクのうち、第2行バンクの全部が高位行バンクであり、第1行バンク及第3行バンクの全部が低位行バンクであった。しかしながら、これに限らず、第2行バンクの全部が低位行バンクであり、第1行バンク及び第3行バンクの全部が高位行バンクであってもよい。この場合、上記実施の形態4と比べて、高位行バンクの数が多くなるので、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりをさらに抑制することができる。
(1-2)各列領域における高位行バンクのレイアウト
上記実施の形態等では、各列領域において高位行バンクは等間隔に並んでいた。しかしながら、これに限らず、各列領域において高位行バンクが異なる間隔で並んでいてもよい。この構成であっても、高位行バンクの外側には、列バンクに欠陥部を介して生じた混色インクが拡がらない。これにより、欠陥部による不良な有機発光素子の広がりを抑制することができる。
【0082】
(1-3)表示パネル全体における高位行バンクのレイアウト
上記実施の形態等では、表示パネル全体を視たときに、高位行バンクは均一に分布していた。しかしながら、これに限らず、高位行バンクは不均一に分布していてもよい。例えば、表示パネル周辺部で列バンクに欠陥部が生じやすいようであれば、当該周辺部に位置する列領域に高位行バンクを多く配置してもよい。
【0083】
(1-4)列バンク及び行バンクの製造工程
上記実施の形態等では、列バンク及び行バンクを、低位行バンクを形成する工程と、高位行バンク及び列バンクを形成する工程の2工程を経て製造した。しかしながら、これに限らず、列バンク及び行バンクを1工程で製造してもよい。この場合、下部電極及びホール注入層を形成した基板上に、高位行バンク及び列バンクの高さ程度にバンク材料膜を成膜し、高位行バンク及び列バンクを形成する部分に開口を設けるとともに、低位行バンクを形成する部分をハーフトーンとしたマスクを用いて露光を行い、その後、現像によりパターニングして、焼成を行えばよい。列バンク及び行バンクを1工程で製造することで、製造工程を減らすことができる。
【0084】
また、列バンク及び行バンクを、低位行バンク及び高位行バンク形成する工程と、列バンクを形成する工程を経て製造してもよい。
(1-5)列バンク及び高位行バンクの撥液処理
上記実施の形態等では記載していなかったが、列バンク及び高位行バンクの材料として、フッ素化ネガ型フォトレジストを用いて表面に撥液性を持たせてもよい。具体的には、フッ素化ネガ型フォトレジストとして、PFOA(ペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩)を含む材料を用いることができる。
【0085】
(1-6)列バンク及び行バンクの材料
上記実施の形態等では、列バンクにおける有機バンク層の材料は、アクリル樹脂系であったが、これ以外にも、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂などの有機材料であってもよい。
(1-7)列バンクの欠陥部
上記実施の形態等では、列バンクの欠陥部として、列バンクが意図せず欠けていることを例示した。しかしながら、これに限らず、例えば、列バンクの一部の高さが意図せず低かったり、列バンクの一部に意図せず異物が落ちたりすることも、列バンクに生じる欠陥部に含まれる。以下、列バンクに異物が落ちた場合について説明する。有機発光層の形成工程において、行方向に隣り合うサブピクセル領域に塗布されたインクは、盛りあがった形状となり、インクの端部が列バンクの上面にまで乗り上げることがある。この場合、例えば、列バンク上における隣り合うインクの隙間に異物が付着していると、異物の部分でインクを堰き止めることができず、行方向に隣り合うインクが異物を介して連結することがある。この場合も、混色インクによる問題が生じることになる。
【0086】
(1-8)高位行バンクを配置する列領域
上記実施の形態等では、高位行バンクを配置する列領域を、塗布されるインクに含まれる有機発光材料の膜厚むらの輝度への影響を基に決定した。しかしながら、これに限らず、例えば、塗布されるインクに含まれる有機発光材料の膜厚むらへの寿命への影響を基に決定してもよい。この場合、膜厚むらへの寿命への影響が小さい有機発光材料を含むインクが塗布される列領域に、より多くの高位行バンクを配置すればよい。
【0087】
2.全体構成
上記実施の形態等では、トップエミッション型の表示パネルを一例として採用したが、ボトムエミッション型の表示パネルに対して本発明の構成を採用することとしても、上記同様の効果を得ることができる。
3.各部構成
<基板>
上記実施の形態等では、ガラス基板上にTFT層及び層間絶縁層を形成して基板としたが、ガラス基板の代わりに、プラスチック基板を用いてもよい。この場合、ガラス基板の代わりに、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルベンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、プリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。また、プラスチック基板を用いる場合には、可撓性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0088】
<下部電極>
上記実施の形態等では、下部電極を金属材料からなる単層構造としたが、これ以外にも、金属層と透明導電層との積層体を採用することもできる。透明導電層の材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
【0089】
<有機機能層>
上記実施の形態等では、下部電極及び上部電極に挟まれる有機機能層として、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層、及び電子注入層を用いたが、これに限らず、例えば、有機機能層をホール輸送層及び発光層に電子ブロック層やバッファ層を追加して構成してもよい。また、有機機能層を有機発光層のみで構成してもよい。
【0090】
上記実施の形態等では、有機発光層の発光色として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、白色(W)を例示した。しかしながら、これに限らず、例えば、有機発光層の発光色としてディープブルー等を採用してもよい。
また、上記実施の形態等では、下部電極と上部電極との間に異なる発光色の有機発光層を設けることで、異なる発光色の有機発光素子を実現していた。しかしながら、これに限らず、下部電極と上部電極との間に同一の発光色の有機発光層を設けるとともに、上部電極に対する光出射方向側にカラーフィルタ層を設けることで、異なる発光色の有機発光素子を実現してもよい。この場合、例えば、白色光を出射する有機発光層と、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の波長域の可視光を選択的に透過するカラーフィルタ層とを組み合わせればよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、各種電子機器のディスプレイ等に有用である。
【符号の説明】
【0092】
1.表示パネル
11B.青色有機発光素子(第1有機発光素子)
11R.赤色有機発光素子(第2有機発光素子)
11G.緑色有機発光素子(第有機発光素子)
12.基板
13.下部電極
14.ホール注入層
15.ホール輸送層
16R.赤色有機発光素子
16G.緑色有機発光素子
16B.青色有機発光素子
17.電子輸送層
18.電子注入層
19.上部電極
20.封止層
30A.第1列バンク
30B.第2列バンク
30C.第3列バンク
30D.第4列バンク
35A.第1列領域
35B.第2列領域
35C.第3列領域
40A.第1行バンク
40B.第2行バンク
40C.第3行バンク
44.第4行バンク
図1
図2
図3
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