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特許7006989可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20220203BHJP
   C30B 29/18 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 29/14 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 29/10 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 29/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G02F1/37
C30B29/18
C30B29/30 A
C30B29/14
C30B29/10
C30B29/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020519666
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2019086352
(87)【国際公開番号】W WO2020220391
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】201910363871.2
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594196624
【氏名又は名称】山東大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】于 浩海
(72)【発明者】
【氏名】張 懐金
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03842289(US,A)
【文献】国際公開第2014/196062(WO,A1)
【文献】特開平05-249524(JP,A)
【文献】特表2005-504361(JP,A)
【文献】欧州特許第00549037(EP,B1)
【文献】欧州特許出願公開第00481510(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第1600906(CN,A)
【文献】S. SOMEKH, et al.,”Phase matching by periodic modulation of the nonlinear optical properties”,OPTICS COMMUNICATIONS,1972年11月,Vol. 6, No. 3,pp. 301-304
【文献】C. FLOREA, et al.,"Direct-write gratings in chalcogenide bulk glasses and fibers using a femtosecond laser",OPTICAL MATERIALS,2008年02月20日,Vol. 30,pp. 1603-1606
【文献】H. KHACHATRYAN, et al.,"Direct etching of perovskite film by electron-beam scanning",MATERIALS SCIENCE IN SEMICONDUCTOR PROCESSING,2018年10月31日,Vol. 90,pp. 171-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35-1/39
JST7580(JDreamIII)
JSTPlus(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイスであって、基本周波数光を周波数逓倍光に変換する非線形光学結晶であり、前記非線形光学結晶の内部には周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域が設けられ、前記アモルファス領域は基本周波数光と周波数逓倍光の位相差
(mは整数である)を提供し、前記周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域は光透過方向に垂直した、屈折率が周期的に分布する位相格子であり、前記位相格子は結晶の光透過方向に平行に配列され、1つの回折格子周期内に加工領域と未加工領域伝送の位相差はいずれも
(mは整数である)であり、前記位相格子は結晶を加工することで、結晶の内部に異なる屈折率で周期的に配列される回折格子を形成し、回折格子周期は
であり、lcが1つの周期内に結晶の光透過方向の未加工部分の幅であり、lbが結晶の光透過方向の加工部分の幅であることを特徴とする可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項2】
結晶加工方法はレーザーマイクロマシニング又はイオンエッチングであることを特徴とする請求項に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項3】
未加工部分の幅lc=0.1-50μm、加工部分の幅lb=0.1-50μmであることを特徴とする請求項に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項4】
前記非線形光学結晶は、水晶結晶、三ホウ酸リチウム結晶、β-メタホウ酸バリウム結晶、四ホウ酸ストロンチウム結晶、ニオブ酸リチウム結晶、フッ化ホウ化ベリリウム酸カリウム結晶、リン酸二水素カリウム結晶又はフッ化バリウムマグネシウム結晶を用いることを特徴とする請求項1に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項5】
前記非線形光学結晶面には基本周波数光と周波数逓倍光がいずれも高透過性の誘電体膜がコーティングされることを特徴とする請求項1に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項6】
前記非線形光学結晶の光透過方向の長さは0.1-100mmであり、更に好ましくは3-10mmであることを特徴とする請求項1に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【請求項7】
前記非線形光学結晶の断面は円形または方形であることを特徴とする請求項1に記載の可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非線形光学結晶デバイスに関し、とりわけ可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器に関し、レーザー技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
非線形光周波数変換は材料による光学に対する非線形応答によって、光の周波数アップコンバージョン又はダウンコンバージョンを実現することであり、周波数逓倍はそのアップコンバージョン効果を用いて、光学周波数が一倍増加し、波長が半分縮むという効果であり、非線形光学分野において最も多く研究され、最も幅広く応用されている効果である。周波数逓倍効果の基礎材料は非線形光周波数変換デバイスである。該効果においては、運動量保存すなわち位相整合条件は高効率な光周波数変換の基本要求であり、一般的に複屈折効果の分散関係に基づいて、特殊な切り出し角で基本周波数光o光又はe光と周波数逓倍光e光又はo光との屈折率を同じにすることによって、位相整合を実現し、高効率な周波数逓倍光出力を実現する。現在、複屈折に基づいて可視から紫外にわたる周波数帯レーザーが実現されており、国民経済と国家安全関連の多くの分野において適用されているが、結晶の複屈折の位相整合方式は、結晶が適切な複屈折を有することが要求されるため、適合な複屈折を持たないほとんどの結晶が除外され、高効率なレーザーの入手、特に紫外線又は深紫外線レーザーにおいての応用が制限されてしまう。位相整合条件により制限されているため、層状フッ化ホウ化ベリリウム酸カリウム(KBBF)結晶しか深紫外線の実効的な周波数逓倍を実現できないが、その層状習性のため、結晶成長が困難であり、且つ原料の毒性も大幅に結晶の入手を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の非線形光周波数変換技術と非線形光学材料の不備に対して、発明は、可視光から紫外線ひいては深紫外線にわたる周波数帯の周波数逓倍及び和周波の変換を実現可能な可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要約:
本発明の用いる結晶は非線形光学結晶であり、用いる非線形係数に基づいて結晶を所定の方向に切断し、接線方向に垂直な表面を研磨してコーティングするか、又はコーティングせず、レーザー加工又はイオンビームエッチングなどの方式で、結晶の内部均一性を破壊し、その破壊領域の実効的な非線形効果をなくし、実効的な周波数逓倍過程を実現できないが、基本周波数光と周波数逓倍(又は和周波)光の位相変化を実現し、基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を制御することで、結晶の内部光の位相を調整して位相整合を実現し、実効的な光周波数変換を得る。
【0005】
用語の説明:
o光とは、振動方向が結晶光軸と入射方向からなる主平面に垂直な偏光を意味する。
【0006】
e光とは、振動方向が結晶光軸と入射方向からなる主平面に平行する偏光を意味する。
【0007】
紫外線光とは、波長400ナノより短い光を意味する。
【0008】
回折格子周期は、回折格子常数であり、図2に示されるように、レーザー加工、イオンエッチングなどの技術を用いて結晶を加工し、結晶の内部に異なる屈折率で周期的に配列される回折格子を形成し、回折格子周期は
であり、lが結晶の光透過方向の未加工部分の幅であり、lが結晶の光透過方向の加工部分の幅である。
【0009】
本発明の技術案は以下のとおりである。
可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイスであって、非線形光学結晶を用い、前記光学結晶の内部には周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域が設けられ、該アモルファス領域は非線形光学効果のコヒーレント加算を実現できないため、周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断するが、基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を提供できる。
【0010】
本発明によれば、好ましくは、前記アモルファス領域は基本周波数光と周波数逓倍光の位相差
(mは整数である)を提供する。
【0011】
本発明によれば、好ましくは、前記周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域は光透過方向に垂直で、屈折率が周期的に分布する位相格子であり、前記位相格子は結晶の光透過方向に平行に配列され、1つの回折格子周期内に加工領域と未加工領域において伝送する位相差がいずれも
(mは整数である)である。本発明の周期的に分布する回折格子は、加工されたアモルファス領域を含むだけではなく、未加工の領域も含み、この2つの部分の屈折率が同じではなく、従って、屈折率の周期的分布を形成し、この2つの部分はいずれもπの奇数倍の位相差を提供し、未加工部分は位相差を持つだけではなく、実効的な非線形効果、すなわち基本周波数光から周波数逓倍光への持続的変換も有し、加工領域は実効的な非線形効果がなく、位相差だけを提供する。
【0012】
本発明によれば、好ましくは、前記回折格子は結晶加工方法、すなわち付加的な周期位相を追加することで取得され、加工方式はレーザーマイクロマシニング、イオンエッチングなどの、結晶の局部破壊を実現可能な技術を含むがこれらに限られない。
【0013】
本発明は、結晶自体の構造を破壊することで周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域を形成し、該領域の非線形光学効果をなくし、それにより、周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断し、しかし、該領域は基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を提供できる。
【0014】
更に、本発明はレーザー加工、イオンエッチングなどの技術を用いて結晶の内部に異なる屈折率で周期的に配列される回折格子を形成する。加工領域の屈折率が波長に従う分散関係を用いて基本周波数光と周波数逓倍光(又は和周波レーザー)の位相差を実現し、位相整合を満たし、高効率な周波数逓倍出力を実現する。
【0015】
図2に示されるように、本発明の回折格子周期は
であり、lが結晶の光透過方向の未加工部分の幅であり、lが結晶の光透過方向の加工部分の幅である。光透過方向の回折格子の加工長さを制御することで、光を結晶の内部に伝送するときの位相を制御し、結晶が1つの回折格子周期内に伝送する位相差は
として示され、式中、
は非線形光学結晶の位相不整合の逆格子ベクトルであり、Λは回折格子周期である。好ましくは、未加工部分の幅l=0.1-50μm、加工部分の幅l=0.1-50μm。
【0016】
本発明によれば、好ましくは、前記非線形光学結晶は、水晶(SiO2)結晶、三ホウ酸リチウム(LBO)結晶、β-メタホウ酸バリウム(β-BBO)結晶、四ホウ酸ストロンチウム(SBO)結晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)結晶、フッ化ホウ化ベリリウム酸カリウム(KBBF)結晶、 リン酸二水素カリウム(KDP)結晶、フッ化バリウムマグネシウム(MgBaF4)結晶などの非線形光学結晶を用いることができるが、上記結晶に限られない。用いる非線形係数に基づいて結晶を所定の方向に切断し、接線方向に垂直な表面を研磨する。光透過方向に沿って、レーザーフォトリソグラフィ、イオンエッチングなどの技術によって光透過方向に垂直な周期位相格子を加工する。入射した基本周波数光波の波長と非線形光学結晶の屈折率分散方程に基づいて、加工領域の長さを制御し、付加的な周期位相を提供し、それにより、位相整合条件を満たし、可視から紫外線、深紫外線にわたる周波数帯の周波数変換を実現する。
【0017】
本発明によれば、好ましくは、前記非線形光学結晶面には基本周波数光と周波数逓倍光がいずれも高透過性の誘電体膜がコーティングされるか、又はコーティングされていない。
【0018】
本発明によれば、好ましくは、前記非線形光学結晶の光透過方向の長さは0.1-100mmであり、更に好ましくは3-10mmであり、結晶の断面は円形、方形又は任意の形状である。
【0019】
本発明によれば、好ましくは、上記可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイスの製造方法は、
非線形係数に基づいて非線形光学結晶を所定の方向に切断し、レーザー加工、イオンエッチングなどの技術を用いて結晶の内部に異なる屈折率で周期的に配列される回折格子を形成するステップと、結晶自体の構造を破壊することで周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域を形成し、該領域の非線形光学効果をなくし、それにより、遮断周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断し、しかし、該領域は基本周波数光と周波数逓倍光の位相差
(mは整数である)を提供できるステップとを含む。
【0020】
図2に示されるように、本発明は、光透過方向の回折格子の加工長さを制御することで、光を結晶の内部に伝送するときの位相を制御し、結晶が1つの回折格子周期内に伝送する位相差は
として示され、式中、
は非線形光学結晶の位相不整合の逆格子ベクトルであり、Λは結晶回折格子周期であり、
であり、lが結晶の光透過方向の未加工部分の長さであり、lが結晶の光透過方向の加工破壊部分の長さである。破壊領域の加工長さを変えることで、破壊領域の基本周波数光と周波数逓倍光の位相差
及び未破壊領域の位相差
をいずれも(2m+1)πにし、式中、mは整数である。破壊領域の付加的な周期位相差を
に制御することで位相整合条件を満たし、実効的な光周波数変換を実現する。
【0021】
本発明によれば、上記可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイスの光周波数変換器における応用、更に、可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器における応用。
【0022】
本発明によれば、上記可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換デバイスはさらに可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換を実現可能なレーザーにも用いられる。
【0023】
本発明によれば、可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換のレーザーは、光路に順次に設けられたポンプ源、光周波数変換デバイス、プリズム及び検出計を備え、前記光周波数変換デバイス、プリズム及び検出計がヘッドカバーボックスに設けられる。
【0024】
本発明によるレーザーであって、前記ポンプ源と光周波数変換デバイスとの間にさらに集束システムが設けられる。
【0025】
本発明によるレーザーであって、好ましくは、前記ポンプ源は連続レーザーポンプ源又はパルスレーザーポンプ源であり、前記プリズムはフッ化カルシウムプリズムであり、前記集束システムは凸レンズである。
【0026】
本発明によれば、上記可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換のレーザーが動作すると、ポンプ源がレーザーを発出し、集束システムを介して集束された後にレーザーが光周波数変換デバイスに入り、光周波数変換デバイスにおける光学結晶の内部には周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域が設けられ、該アモルファス領域は非線形光学効果がないため、周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断するが、基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を提供でき、非線形光学結晶の位相不整合を補償し、高効率な周波数逓倍及び和周波の変換を実現し、変換後のレーザーがプリズムに入り、観測するように、異なる波長の光を分け、プリズムがポンプ光と周波数逓倍光を分け、検出計に入って電力又はエネルギーを検出して、光学周波数の変換を実現するか否かを決定する。過程を真空又は窒素環境で行うように、光周波数変換デバイス、プリズム及び検出計はヘッドカバーボックスに設けられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1、本発明は非線形光学結晶を用い、光学結晶の内部には周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域が設けられ、該アモルファス領域は非線形光学効果がないため、周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断するが、基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を提供する。たとえば、レーザー加工、イオンエッチングなどの技術によって非線形光学結晶の内部に屈折率が周期的に分布する位相格子を形成でき、それにより、付加的な周期位相を提供して、非線形光学結晶の位相不整合を補償し、高効率な周波数逓倍及び和周波の変換を実現し、特に深紫外線レーザー出力を実現できる。構成が簡単であり、加工過程が容易であり、可視から紫外にわたる周波数帯からの光周波数変換を実現できる。
【0028】
2、本発明は非線形光学結晶の構造に対して特別な要件がなく、すべての非線形光学結晶をそれらの光透過率の許可範囲内に加工すると、いずれも可視から紫外にわたる周波数帯からの光周波数変換を実現することができる。
【0029】
3、本発明はさらなる作用、たとえば電場の作用が不要であり、結晶に周期的な回折格子を加工すれば、可視から紫外にわたる光周波数変換を実現でき、方法は十分に簡単であり、且つ加工精度が高く、制御可能性が高い。
【0030】
4、本発明の前記付加的な周期位相の位相整合方式は非線形光学材料を好適に選択することができ、たとえば、実効的な非線形係数が大きな結晶を選択し、又は結晶の大きな実効的な非線形係数を選択し、それにより、周波数変換効率を向上させる。
【0031】
5、本発明は異なる波長を好適に選択することができ、所要の波長に応じて適切な非線形結晶を選択してレーザーフォトリソグラフィなどのプロセスによってそれにマッチングする付加的な周期位相を提供すれば、対応する波長の周波数変換を実現できる。
【0032】
本発明の実施例又は従来技術の技術案を明瞭に説明するために、以下、実施例において必要な図面を簡単に説明し、当然ながら、以下に記載する図面は単に本発明のいくつかの実施例であって、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到しうる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1の水晶結晶の加工模式図である。図中、1はポンプ光源方向であり、2は加工領域であり、X、Y、Zは水晶結晶光学主軸である。
図2】実施例1の結晶をフォトリソグラフィした後の屈折率周期分布模図である。図中、3はポンプ光であり、4は結晶の未加工部分であり、屈折率がnであり、幅がlであり、5は結晶の加工部分であり、屈折率がnであり、幅がlであり、回折格子周期はΛ=l+lであり、6は周波数逓倍出力光である。
図3】実施例1の実験装置図である。図中、7は波長355nmのポンプ源であり、8は集束システムであり、9は光周波数変換デバイスであり、10はフッ化カルシウムプリズムであり、観測するように、異なる波長の光を分けることができ、11はポンプ光であり、12はプリズムから分けた周波数逓倍光であり、13は電力とエネルギーを検出可能な検出計であり、14は真空又は窒素環境を提供するグローブボックスである。
図4】実施例1における355nmの逓倍周波数177.3nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
図5】実施例2における426nmの倍光周波数逓213nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
図6】実施例3における1540nmの逓倍周波数770nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
図7】実施例5における1064nmと532nmの和周波355nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
図8】実施例7における1064nmの逓倍周波数532nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
図9】実施例9における484nmの逓倍周波数242nmのレーザー出力スペクトルであり、横座標は波長(nm)、縦座標は相対強度である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面と実施例を参照しながら本発明について更に説明するが、これに限られない。
【0035】
実施例1:水晶結晶を用いた深紫外線波長177.3nmの周波数逓倍装置
光周波数変換デバイスの製造過程は以下のとおりであった。水晶結晶を非線形光学結晶として用い、結晶加工方法は図1に示されるように、最大非線形係数d11を用い、水晶結晶をZ方向に切断し、光透過方向のZ方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、フォトリソグラフィ領域は付加的な周期位相を提供し、加工領域と未加工領域の幅がいずれも0.7μmであった。加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の付加的な周期位相差がπであり、加工区間全体は結晶長さが1mm、結晶断面が3mm×3mmであり、表面を研磨した。屈折率の周期配列は図2に示された。
【0036】
実験装置は図3に示されるように、ポンプ源7、集束システム8、光周波数変換デバイス9、フッ化カルシウムプリズム10、検出計13が光路に沿って順次に配列されるように構造されていた。光周波数変換デバイス9、プリズム10及び検出計13はグローブボックス14に設けられた。
【0037】
ポンプ源7は波長355nmの紫外線パルスレーザーであり、パルス幅が6nsであり、繰り返し周波数が10Hzであり、集束システム8は焦点距離が10cmの集束レンズであり、グローブボックス14は真空状態を作ることで真空環境を提供し又は窒素を充填することで窒素環境を提供することができ、深紫外線波長の空気中の吸収損失を減少させた。フッ化カルシウムプリズム10は結晶分散方程に基づいて、異なる波長の光波の結晶における屈折率が異なり、ポンプ光と周波数逓倍光波を分け、周波数逓倍光の実効的な出力と使用を容易にした。
【0038】
ポンプ源7はレーザーを発出し、集束システム8を介して集束された後にレーザーが光周波数変換デバイス9に入り、光周波数変換デバイス9における光学結晶の内部には周期的かつ規則的に分布するアモルファス領域が設けられ、該アモルファス領域は非線形光学効果がなく、それにより、周波数逓倍光から基本周波数光への変換過程を遮断するが、基本周波数光と周波数逓倍光の位相差を提供でき、非線形光学結晶の位相不整合の不備を補償し、高効率な周波数逓倍及び和周波の変換を実現し、変換後のレーザーはプリズム10に入り、観測するように、異なる波長の光を分け、プリズム10からポンプ光11と周波数逓倍光12を分け、検出計13に入って電力又はエネルギーを検出して光学周波数の変換を実現するか否かを確定する。
【0039】
ポンプ電力を増加させることにより、深紫外線177.3nmのレーザー出力を実現し、出力波長は図4に示された。
【0040】
実施例2:水晶結晶を用いた紫外線波長213nmの周波数逓倍装置
ポンプ源7は波長426nmのパルスレーザーであり、パルス幅が10nsであり、繰り返し周波数が50Hzであり、水晶結晶断面が5×3mmであり、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも1.4μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差がπであり、ポンプ電力を増加させると、紫外線波長213nmのレーザー出力を実現でき、出力波長図5に示される以外、実施例1の記載と同様であった。
【0041】
実施例3:水晶結晶を用いた可視波長770nmの周波数逓倍装置
ポンプ源7は波長1540nmのフェムト秒パルスレーザーであり、パルス幅が500fsであり、繰り返し周波数が200MHzであり、水晶結晶断面が4×4mmであり、結晶長さが50mmであり、結晶面には1540nmと770nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされ、フッ化カルシウムプリズムによる分光とグローブボックスが不要であり、光透過方向のZ方向にイオンビームエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも34.4μmであり、提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差がπであり、ポンプ電力を増加させると、可視波長770nmのレーザー出力を実現でき、出力波長図6に示される以外、実施例1の記載と同様であった。
【0042】
実施例4:SBO結晶を用いた深紫外線波長177.3nmの周波数逓倍装置
非線形光学結晶はSBO結晶であり、最大非線形係数d33を用いて、結晶をX方向に切断し、結晶断面が3×4mmであり、結晶長さが10mmであり、光透過方向のX方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも2.9μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差が5πであり、ポンプ電力を増加させると、深紫外線波長177.3nmのレーザー出力を実現できる以外、実施例1の記載と同様であった。
【0043】
実施例5:LBO結晶を用いた紫外線波長355nmの和周波変換器
非線形光学結晶はLBO結晶であり、波長1064nmと532nmの同方向のレーザー和周波によって355nmレーザーを発生させ、最大非線形係数d32を用いて、結晶をX方向に切断し、結晶断面が5×5mmであり、結晶長さが20mmであり、光透過方向のX方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも4.4μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と和周波光の位相差がπであり、ポンプ電力を増加させると、紫外線波長355nmのレーザー出力を実現でき、出力波長図7に示される以外、実施例1の記載と同様であった。
【0044】
実施例6:KBBF結晶を用いた紫外線波長205nmの周波数逓倍装置
非線形光学結晶はKBBF結晶であり、最大非線形係数d11を用いて、結晶をZ方向に切断し、結晶断面が2×3mmであり、結晶長さが2.5mmであり、光透過方向のZ方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも1.6μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差がπであり、ポンプ源7は波長410nmの光パラメトリック発振器であり、パルス幅が20nsであり、繰り返し周波数が20Hzであり、ポンプ電力を増加させると、紫外線波長205nmのレーザー出力を実現できる以外、実施例1の記載と同様であった。
【0045】
実施例7:LiNbO結晶を用いた可視波長532nmの周波数逓倍装置
非線形光学結晶はLiNbO結晶であり、最大非線形係数d33を用いて、結晶をX方向に切断し、ポンプ源7は波長1064nmの連続レーザーであり、結晶断面が直径10mmの円形であり、結晶面には1064nmと532nmに対して高透過性である誘電体膜がコーティングされ、フッ化カルシウムプリズムによる分光とグローブボックスが不要であり、結晶長さが20mmであり、光透過方向のX方向にイオンビームエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域の幅が3.5μmでり、未加工領域の幅がいずれも10.5μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差がπであり、未加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差が3πであり、ポンプ電力を増加させると、可視波長532nmのレーザー出力を実現でき、出力波長図8に示される以外、実施例1の記載と同様であった。
【0046】
実施例8:MgBaF4結晶を用いた紫外線波長266nmの周波数逓倍装置
非線形光学結晶はMgBaF4結晶であり、最大非線形係数d32を用いて、結晶をX方向に切断し、ポンプ源7は波長532nmのパルスレーザーであり、パルス幅が50nsであり、繰り返し周波数が1kHzであり、結晶断面が6×6mmであり、結晶長さが30mmであり、光透過方向のX方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも10.7μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差が3πであり、ポンプ電力を増加させると、紫外線波長266nmのレーザー出力を実現できる以外、実施例1の記載と同様であった。
【0047】
実施例9:β-BBO結晶を用いた紫外線波長242nmの周波数逓倍装置
非線形光学結晶はβ-BBO結晶であり、最大非線形係数d22を用いて、結晶をZ方向に切断し、結晶断面が3×4mmであり、結晶長さが15mmであり、光透過方向のZ方向にレーザーエッチングによって屈折率が周期的に分布する回折格子構造を形成し、各周期内に加工領域と未加工領域の幅がいずれも3.3μmであり、加工領域により提供可能な基本周波数光と周波数逓倍光の位相差が3πであり、ポンプ源7は波長484nmのパルスレーザーであり、パルス幅が10nsであり、繰り返し周波数が100Hzであり、ポンプ電力を増加させると、紫外線波長242nmのレーザー出力を実現でき、出力波長は図9に示される以外、実施例1の記載と同様であった。
【0048】
また、以上の実施例からわかるように、本発明は基本周波数と周波数逓倍光の位相差を制御することで、可視から紫外にわたる周波数帯の光周波数変換器を提供しており、可視-紫外線-深紫外線の周波数逓倍又は和周波のレーザー出力を実現でき、特に希少な紫外線結晶デバイスと深紫外線結晶デバイスに新品種を提供する。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9