(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】座具
(51)【国際特許分類】
A47C 9/00 20060101AFI20220117BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C7/02 Z
(21)【出願番号】P 2020534643
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2019047959
(87)【国際公開番号】W WO2021111638
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2020-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515001484
【氏名又は名称】有限会社音吉
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 庸介
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523940(JP,A)
【文献】登録実用新案第3161885(JP,U)
【文献】特開2010-253096(JP,A)
【文献】特開平08-074433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0124749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173515(US,A1)
【文献】実開昭48-058317(JP,U)
【文献】特表2007-510500(JP,A)
【文献】特開2018-187101(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105640144(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0353892(US,A1)
【文献】特表2012-515629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00 - A47C 16/04
A47C 27/00 - A47C 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の着座時に前記着座者の臀部を支持する臀部支持部材と、前記臀部支持部材の後方に設けられた貫通孔形成部材と、を備え、
前記貫通孔形成部材は、前記臀部支持部材の後方側に向かって凸となるように湾曲または屈曲した後方面部材を有しており、
前記後方面部材の上面が前記臀部支持部材の上面と略同じ高さに設定されていると共に、前記臀部支持部材と前記後方面部材との間に、前記臀部支持部材に臀部が支持された状態で着座する前記着座者の仙骨の下方側において、上面視したときに地面が見える状態で地面に至るまで上下方向に延在する貫通孔が形成されており、
前記後方面部材に、前記臀部支持部材に臀部が支持された状態で着座する前記着座者の尾骨ないし仙骨に対応する部位に接触する当接部材が設けられている、
ことを特徴とする座具。
【請求項2】
前記当接部材が前記後方面部材に着脱可能に取り付けられている、ことを特徴とする
請求項1に記載の座具。
【請求項3】
前記臀部支持部材は、前記着座者の着座時に前記着座者の一対の坐骨を支持する一対の坐骨支持部を備えており、1つの前記坐骨支持部は、柱状の部材であり、前記臀部支持部材は、前記一対の坐骨支持部の側面が接触部分で接触するように並んで配置されることによって構成され、前記着座者が着座したときに、一方の坐骨が一方の坐骨支持部に支持され、他方の坐骨が他方の坐骨支持部に支持され、前記着座者の上半身の左右方向の中心部に前記接触部分が位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の座具。
【請求項4】
前記貫通孔形成部材は、前記接触部分を基端部として前記一方の坐骨支持部の後方側の面に沿って一定量だけ延在する一方側面部材と、前記接触部分を基端部として前記他方の坐骨支持部の後方側の面に沿って一定量だけ延在する他方側面部材と、前記一方側面部材の先端部と前記他方側面部材の先端部との間に介在する前記後方面部材と、によって構成されており、
前記貫通孔は、前記一方側面部材と前記他方側面部材と前記後方面部材とで囲まれた部位に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の座具。
【請求項5】
前記後方面部材は、前記接触部分から前記一方の坐骨支持部の後方側の面に沿って一定量だけ離間した位置と、前記接触部分から前記他方の坐骨支持部の後方側の面に沿って一定量だけ離間した位置との間に介在し、前記臀部支持部の後方側に向かって凸となるように湾曲または屈曲した部材からなり、
前記貫通孔は、前記一方の坐骨支持部の後方側の面の一部と、前記他方の坐骨支持部の後方側の面の一部と、前記後方面部材とで囲まれた部位に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の座具。
【請求項6】
前記後方面部材は、前記後方面部材の左右方向の一方の半分の部位に対応する一方後方面部、および、前記後方面部材の左右方向の他方の半分の部位に対応する他方後方面部が接続されて構成され、
前記一方後方面部、および、前記他方後方面部は同一形状であることを特徴とする請求項5に記載の座具。
【請求項7】
1つの前記坐骨支持部は、柱状の柱部と、前記柱部の上面から隆起した隆起部とを備え、 前記着座者が着座したときに、一方の坐骨が前記一方の坐骨支持部の前記隆起部に支持され、他方の坐骨が前記他方の坐骨支持部の前記隆起部に支持されるようにしたことを特徴とする請求項3から6の何れか1項に記載の座具。
【請求項8】
前記隆起部は、上面視したとときに、前記柱部の上面の中央部を通って左右方向に延在していることを特徴とする請求項7に記載の座具。
【請求項9】
前記隆起部は、前記柱部の上面から隆起した柱状の部材であることを特徴とする請求項7に記載の座具。
【請求項10】
前記臀部支持部材は透明部材で構成されていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の座具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者が着座可能な座具に関する。
【背景技術】
【0002】
体幹(人間が背骨をまっすぐに伸ばして体の軸を作る際に重要となる筋肉、特には、背骨の最も近くにある筋肉(インナーマッスル))を鍛えることが、健康維持やスポーツのパフォーマンス向上の点などから重要と知られている。これに伴い近年、着座時に体幹を鍛えることができる座具が開発されている。例えば特許文献1には、脊柱の適正位置(ニュートラルポジション)を保持しつつ、継続的な脊柱起立筋群のバランス運動を実現することを目的として、内部空気量の調節により膨張・収縮が可能な空気袋としての主座部と、内部にクッション材が収納される被覆袋としての副座部とを備えた着座具が開示されている。
【0003】
また、一般に、精神面のリフレッシュや集中力の向上には、瞑想状態(禅の世界において精神が統一されたとされる状態や、心が落ち着いているとされる状態等の精神的に充実した状態も含む)に入ることが効果的であるとされている。更に、瞑想状態に入ることで、体の免疫力が高まるという研究結果もある。これに伴い近年、ユーザを瞑想状態へ誘導する様々な器具が提案されている。例えば特許文献2には、ユーザが座る座席部と、背もたれ部の背面に設けられた照明体と、ユーザのα波を検出するα波検出装置と、このα波検出装置により測定された値の変化に対応させて照明体の照明を変化させる制御装置と、座席部の周囲に設けられたフードと、このフードに設けられ照明体からの照明を反射しフード内を間接照明する反射板と、信号を発する呼吸調整器とを備え、ユーザをリラックスさせて瞑想状態へと誘導する瞑想装置が開示されている。
【0004】
【文献】特開2015-126870号公報
【文献】特開平5-253302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の着座具では、一定の体幹向上効果が得られるものの主座部の空気の調整が難しく、より簡易的に体幹を鍛えることが可能な座具が望まれていた。また、特許文献2の瞑想装置は、大掛かりな装置であり、装置の構成も複雑であるため、より小型でシンプルな構成の器具により、瞑想へ誘導できる器具の提供が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、着座者が簡易的に体幹を鍛えることができ、かつ、小型でシンブルな構成で着座者を瞑想状態へ誘導できる座具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の座具は、着座者の着座時に前記着座者の臀部を支持する臀部支持部材と、前記臀部支持部材の後方に設けられた貫通孔形成部材と、を備え、前記貫通孔形成部材は、前記臀部支持部材の後方側に向かって凸となるように湾曲または屈曲した後方面部材を有しており、前記後方面部材の上面が前記臀部支持部材の上面と略同じ高さに設定されていると共に、前記臀部支持部材と前記後方面部材との間に、前記臀部支持部材に臀部が支持された状態で着座する前記着座者の仙骨の下方側において、上面視したときに地面が見える状態で地面に至るまで上下方向に延在する貫通孔が形成されており、前記後方面部材に、前記臀部支持部材に臀部が支持された状態で着座する前記着座者の尾骨ないし仙骨に対応する部位に接触する当接部材が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、着座者は、座具に着座したときに、自身の背骨の下方側に地面が見える状態で上下方向に延在する貫通孔が存在することを認識することによって、意識的または無意識的に貫通孔が延在する方向に沿って背筋を伸ばそうとする。このため、本発明によれば、座具に着座する着座者に、背筋を伸ばさせて、インナーマッスルに適度な力がかかった状態を維持させることができる。このため、着座者は、困難な作業を行うことなく、座具に着座するという単純な作業により簡易的に体幹を鍛えることができる。
【0009】
また、本発明によれば、着座者は、座具に着座したときに、自身の背骨の下方側に地面が見える状態で上下方向に延在する貫通孔が存在することを認識することによって、地面と空(宇宙)とが自身の背骨を通してつながるようなイメージを抱きやすく、このイメージが着座者を瞑想状態へ入りやすい状態とする。すなわち、本発明によれば、α波検出装置や呼吸調整器等の電子機器を有さない小型でシンブルな構成で着座者を瞑想状態へ誘導できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る座具の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る座具の上面図である。
【
図4】人間の腰から臀部にかけての骨を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る貫通孔形成部材の斜視図である。
【
図6】着座者が座具に着座した様子を示す図である。
【
図13】第5変形例に係る貫通孔形成部材の斜視図である。
【
図14】着座者が座具に着座した様子を示す図である。
【
図15】第6変形例に係る坐骨支持部材の斜視図である。
【
図16】第6変形例に係る座具の上面図および正面図である。
【
図18】第7変形例に係る座具の上面図および正面図である。
【
図21】第8変形例に係る座具の別例の上面図である。
【
図22】その他の変形例に係る座具の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、座具1の斜視図である。
図2は、座具1の上面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、人間の腰から臀部にかけての骨を模式的に示す図である。なお以下の説明では、上下方向、左右方向、前後方向は、
図1~3において両矢印で示した方向に従うものとする。上下方向は、座具1が通常の態様で地面2(
図3)に載置されたときの鉛直方向に対応する。また、前後方向の前方は、着座者3(後述する
図6参照)が座具1に正常に着座したときに着座者3の身体のお腹が向く向きであり、後方は、当該身体の背中が向く向きである。正常な着座については後述する。また、左右方向は、上下方向に対して垂直な水平面上で前後方向と直行する方向であり、左右方向の右方は、前方に向かって右向きであり、左方は、前方に向かって左向きである。
【0012】
以下の説明では、「地面2」とは、座具1が載置される平面状の領域の総称である。従って、室内の畳やフローリングに座具1が載置される場合には、これらが「地面2」に相当する。また、説明の便宜のため、図面(
図1~3に限られない)中に示した各部材の寸法が、実際の寸法とは異なる比率で示されている場合がある。
【0013】
座具1は、着座者3が腰掛け椅子のようにして座ることが可能な器具である。特に本実施形態に係る座具1は、体幹を鍛える目的、瞑想状態(本実施形態では、禅の世界において精神が統一されたとされる状態や、心が落ち着いているとされる状態等の精神的に充実した状態も含む)へ入る目的、または、双方の目的を持って着座者3が利用することが想定されている。
【0014】
図1、2で示すように、座具1は、臀部支持部材5(特許請求の範囲の「臀部支持部」に相当)を備える。臀部支持部材5は、着座者3の着座時に着座者3の臀部を支持する部材であり、右側に配置された坐骨支持部材6R(特許請求の範囲の「坐骨支持部」に相当)と左側に配置された坐骨支持部材6L(特許請求の範囲の「坐骨支持部」に相当)とを含む一対の坐骨支持部材6R、6L(特許請求の範囲の「一対の坐骨支持部」に相当)を備える。以下、坐骨支持部材6Rと坐骨支持部材6Lとを区別しない場合は「坐骨支持部材6」という。
【0015】
一対の坐骨支持部材6R、6Lは、着座者3の着座時に着座者3の一対の坐骨(
図4参照)を支持する部材である。坐骨支持部材6R、6Lの形状は円柱である。また坐骨支持部材6Rと坐骨支持部材6Lとは同じ形状である。臀部支持部材5は、一対の坐骨支持部材6R、6Lの側面が接触部分7(
図1、2参照)で接触するように左右方向に並んで配置されることによって構成される。ここでの接触は、接触している状態と同視できる程度に近接している状態も含み、この場合、接触部分7とは、一対の坐骨支持部材6R、6Lが最も近接する部分を意味する。座具1は、地面2に一対の坐骨支持部材6R、6Lが立設されることによって、地面2に起立した状態で載置される。
【0016】
坐骨支持部材6R、6Lは、少なくとも着座者3の臀部と接する部分が柔軟性を有する部材により構成されていることが好ましい。着座者3の臀部と接する部分にある程度の柔軟性を持たせることで、着座者3の臀部に加わる負担を減らし、座った際の不快感を取り除くことができる。柔軟性を有する部材については、例えば、ゴム製の部材や、綿を充填した部材、ウレタン等の柔軟性を持った樹脂製の部材とすることができ、これらの中でも、ゴム製の部材を用いることが好ましい。なお、柔軟性を有する部材とするのは、坐骨支持部材6R、6Lの全体でもよいし、着座者3の臀部と接する表面に一定の厚さの部分としてもよい。
【0017】
また、坐骨支持部材6R、6Lの形状を円柱とする場合、その直径D1(
図2参照)を12~20cmとすることが好ましい。坐骨支持部材6R、6Lの直径D1を上記範囲とすることで、人間の標準的な一対の坐骨の離間量を考慮して、着座者3の着座に際して、着座者3の一対の坐骨に対応する部位を一対の坐骨支持部材6R、6Lに的確に位置させることができると共に、後述する貫通孔8を十分に確保できる。
【0018】
坐骨支持部材6R、6L(=臀部支持部材5)の高さH1(
図3)は、座具1の用途や、ターゲットとする年齢層の着座者3の標準的な体の大きさ等に応じて適宜設定できるが、正常に着座する着座者3の足裏が余裕を持って地面2に着いた状態となるようにすることが好ましい。一例として、高さH1は、60cm以下とされる。高さH1が60cmを超えると、足裏が地面2から離れる場合があり、着座者3の姿勢の不安定化の原因となり、後に明らかとなる通り、体幹を鍛える効果および瞑想への誘導効果が十分に得られないおそれがあるからである。
【0019】
図1~3で示すように、臀部支持部材5の後方には、貫通孔形成部材10(特許請求の範囲の「貫通孔形成部」に相当)が設けられている。
図5は、貫通孔形成部材10の斜視図である。貫通孔形成部材10は、上面視したときに地面2が見える状態で地面2に至るまで上下方向に延在する貫通孔8が形成された部材である。
図3で示すように、貫通孔形成部材10は、その上面が、臀部支持部材5の上面よりも若干低くなるよう構成されている。ただし貫通孔形成部材10の上面の高さを、臀部支持部材5の上面の高さと同じとしてもよい。
図1、2、5で示すように、貫通孔形成部材10は、右方側面部材11(特許請求の範囲の「一方側面部」に相当)と、左方側面部材12(特許請求の範囲の「他方側面部」に相当)とを備える。
【0020】
右方側面部材11には坐骨支持部材6Rの側面の弧の形状に従って湾曲した嵌め込み部13R(
図5参照)が形成されている。坐骨支持部材6Rは、嵌め込み部13Rに嵌め込まれ、固定される。坐骨支持部材6Rが嵌め込み部13Rに嵌め込まれると、右方側面部材11は、接触部分7を基端部として坐骨支持部材6Rの後方側の面に沿って一定量だけ延在した状態となる。左方側面部材12には坐骨支持部材6Lの側面の弧の形状に従って湾曲した嵌め込み部13L(
図5参照)が形成されている。坐骨支持部材6Lは、嵌め込み部13Lに嵌め込まれ、固定される。坐骨支持部材6Lが嵌め込み部13Lに嵌め込まれると、左方側面部材12は、接触部分7を基端部として坐骨支持部材6Lの後方側の面に沿って一定量だけ延在した状態となる。一対の坐骨支持部材6R、6Lの双方が貫通孔形成部材10に固定されると、一対の坐骨支持部材6R、6Lは、接触部分7で接触した状態で左右方向に並んで配置される。
【0021】
図1~3、5で示すように、貫通孔形成部材10は、右方側面部材11の先端部と左方側面部材12の先端部との間に介在し、臀部支持部材5の後方側に向かって凸となるように湾曲した後方面部材14(特許請求の範囲の「後方面部」に相当)を備える。右方側面部材11と左方側面部材12と後方面部材14とで囲まれた部位に貫通孔8が形成される。貫通孔8は、上面視したときに地面2が見える状態で(特に
図2参照)、地面2に至るまで上下方向に延在する。貫通孔8は、臀部支持部材5の後方側であって、かつ、後に明らかとなる通り、臀部支持部材5に臀部が支持された状態で正常に着座する着座者3の仙骨(
図4)の下方側に位置する。
【0022】
貫通孔形成部材10は、貫通孔8を形成する部材である。貫通孔形成部材10によって貫通孔8を形成することの効果については後に詳述するが、貫通孔形成部材10が存在することによって、座具1の地面2に接する部分が増え、座具1を地面2に載置したとき、および、地面2に載置された座具1に着座者が着座しているときの座具1の安定性が向上する。
【0023】
貫通孔形成部材10の左右方向の最大幅W1(
図2)については、臀部支持部材5の形状や、座具1の用途等に応じて適宜設定できる。例えば最大幅W1は、10~50cmの範囲で設定することができる。ただし最大幅W1は、15~40cmの範囲であることが好ましい。最大幅W1を上記範囲とすることで、坐骨支持部材6R、6Lの取り付けを確実に行うことができ、また着座した際の安定性も得られる。
【0024】
貫通孔形成部材10を構成する材料については、着座者3が着座する器具として耐えられる強度を有するものであればよく、特に限定はされない。例えば、貫通孔形成部材10は、木に由来する材料(ベニア板や、竹材等)や、金属に由来する材料(鉄や、鋼、合金等)、陶磁器、ガラス、藤、石、コンクリート、繊維、炭素繊維、ゴム、プラスチック、紙等から構成することができる。また、貫通孔形成部材10の厚さT1(
図2参照)については、特に限定はされず 、形状や用いる材料等に応じて適宜設定することができる。ただし、軽量化の観点および貫通孔8を広く確保する観点からは、厚さT1を20mm以下とすることが好ましく、15mm以下とすることがより好ましい。更に貫通孔形成部材10の表面は必要に応じて、防錆や、防疵のためのコーティングを施したり、意匠性を高めるための装飾等を施すこともできる。
【0025】
なお、貫通孔8の開口面積は20cm2以上であることが好ましく、25cm2以上であることがより好ましく、30cm2以上であることが更に好ましい。開口面積を20cm2以上とすることにより、座具1を地面2に載置した際の安定性を高めることができると共に、後に明らかとなる通り、より高い瞑想状態への導入効果を期待できる。
【0026】
図1~3、5で示すように、貫通孔形成部材10の後方面部材14において、臀部支持部材5の接触部分7に対向する位置には、当接部材16(特許請求の範囲の「当接部」に相当)が取り付けられている。当接部材16は、楕円球状の柔軟性を有する部材である。当接部材16は、臀部支持部材5に臀部が支持された状態で正常に着座する着座者3の尾骨ないしは仙骨の先端部(
図4参照。以下、尾骨ないし仙骨の先端部を総称して「尾骨等」という)に対応する部位に接触する部材である。当接部材16の下部には切り欠きが形成されており、当接部材16は、この切り欠きに後方面部材14が挿入された状態で、後方面部材14に固定されている。
【0027】
当接部材16の形状については、着座者3の尾骨等に対応した部分に設けられており、尾骨等に接触可能な形状できれば、特に限定はされない。ただし、尾骨等に接触可能であり、貫通孔8を不必要に覆わないという点からは楕円球状であることが好ましい。なお、要求される性能や設計事項等に応じて、当接部材16 の形状を適宜変更することができる。例えば、当接部材16を、棒状(円柱状)とすることもできる。更に、当接部材16が楕円球状である場合、その長径D2(
図2参照。水平方向で最も長い径)が5~8cmであり、高さH2(
図3参照。鉛直方向で最も長い径)が6~12cmであることが好ましい。長径D2および高さH2を上記範囲とすることで、着座者3が座具1に正常に着座したときに、尾骨等に対応する部位に当接部材16をより確実に接触させることができると共に、貫通孔8を十分に確保できるためである。なお、当接部材16が楕円球以外の形状であっても、同様の観点から、高さH2を同様の範囲とすることが好ましい。
【0028】
更に当接部材16の上端16Uは、
図3で示すように、着座時に一対の坐骨支持部材6R、6Lが一対の坐骨に当接し、かつ、当接部材16が尾骨等と当接するという構造上、一対の坐骨支持部材6R、6Lの上面よりも上方に設けられる。当接部材16の上端16Uの高さ位置は適宜設計することができるが、一対の坐骨支持部材6R、6Lの上面との高さの差G1(
図3)が、3~10cmとなるようにすることが好ましい。
【0029】
なお、当接部材16を、後方面部材14に取り付ける方法については特に限定はされない。例えば、切り欠きと後方面部材14との間に生じる摩擦力で取り付けることも可能であり、専用の取付機構や、ネジ止めによって取り付けることも可能であり、溶着や、接着剤を用いて接合することもできる。ただし、当接部材16は、後方面部材14から着脱可能であることが好ましい。これにより、着座者3が座具1を使用する目的に応じてまたは着座者3の気分に応じて、着座者3が当接部材16を付けたり外したりすることができる。
【0030】
以上の構造的特徴を有する座具1に着座者3は以下の態様で着座する。また、座具1は、その構造的特徴により以下の効果をもたらす。
図6は、着座者3が座具1に正常に着座したときの様子を座具1の右側から左方へ向かって見た図である。ただし
図6では、座具1は、
図2のA-A断面で切断した図としている。
図6において、符号P1は坐骨に対応する部位を示し、符号P2は尾骨等(尾骨ないし仙骨の先端部)に対応する人間の部位を示している。以下、坐骨に対応する部位P1を「坐骨対応部位P1」といい、尾骨等に対応する部位P2を「尾骨等対応部位P2」という。
【0031】
図6で示すように、着座者3は、自身の一対の坐骨のそれぞれの坐骨対応部位P1が、一対の坐骨支持部材6R、6Lの上面の中心部領域内に位置し、かつ、尾骨等対応部位P2が当接部材16に触れた状態となるように座具1に着座する。ただし、
図6では、右側の坐骨対応部位P1が坐骨支持部材6Rの上面の中心領域内に位置している様子が描画されている。着座者3は、このような状態となるようにすることを意識しつつ、座具1に着座する。この状態が、正常に着座した状態である。なお、坐骨支持部材6の上面の中心部領域とは、坐骨支持部材6の上面の中心点を含む、ある程度の広がりを持った領域のことである。
【0032】
当接部材16は座具1の左右方向の中心部であって、臀部支持部材5から貫通孔8分の距離をあけて離間した位置に設けられているため、着座者3が自身の尾骨等対応部位P2を当接部材16に当接させることを意識しつつ着座すると、自然と着座者3の上半身の左右方向の中心部が座具1の左右方向の中心部に位置した状態となり、また自然と一対の坐骨対応部位P1が、一対の坐骨支持部材6R、6Lの中央部領域に位置した状態となり、正常な着座が完了する。着座者3の一対の坐骨対応部位P1が一対の坐骨支持部材6R、6Lの中央部領域に位置した状態となると、一対の坐骨が一対の坐骨支持部材6R、6Lに支持され、ひいては臀部支持部材5により着座者3の臀部が支持された状態となる。
【0033】
上述したように、一対の坐骨支持部材6R、6Lは、地面2に起立する独立した円柱状の部材であり、一対の坐骨支持部材6R、6Lの中心部領域に一対の坐骨対応部位P1がバランスよく位置したときに着座が安定し、また、このようなときに着座が安定するとのイメージを着座者3に抱かせる。このことも、一対の坐骨対応部位P1が一対の坐骨支持部材6R、6Lの中心部領域内に位置した状態で座具1に着座することを着座者3に意識させる。
【0034】
図2において符号R1が付与された破線の円は、着座者3が正常に着座したときに仙骨が位置する大体の領域を示している。
図6において符号R2が付与された破線の円は、仙骨の大体の位置を示している。
図2、6で示すように、貫通孔8は、臀部支持部材5に臀部が支持された状態で座具1に正常に着座する着座者3の仙骨の下方側に位置する。そして、地面2が見える状態で地面2に至るまで上下方向に延在する貫通孔8の存在が、あるいは、このような貫通孔8が自身の仙骨の下方側に存在するとの認識が以下の効果を生む。
【0035】
すなわち、着座者3は、自身の仙骨の下方側に地面2が見える状態で地面2に至るまで上下方向に延在する貫通孔8が存在することを認識することによって、意識的または無意識的に貫通孔8が延在する方向、つまり上下方向に沿って仙骨につながる背筋を伸ばそうとする。このため、本実施形態によれば、座具1に着座する着座者3に、背筋を伸ばさせて、インナーマッスルに適度な力が加わった状態を維持させることができる。従って、着座者3は、何らかの器具の空気の調整をするといった困難な作業を行うことなく、座具1に正常に着座するという単純な作業により簡易的に体幹を鍛えることができる。
【0036】
着座者3が仙骨の下方側に貫通孔8が存在することを認識することにより背筋を伸ばそうとすることの理由としては以下の事由が考えられる。すなわち、自身の仙骨の直下にある、地面2につながる空洞の存在が、着座者3に対して一種の緊張感を与え、意識的または無意識的に背筋を伸ばさせることが考えられる。また、物理的な背もたれが設けられていない中、貫通孔8の存在が、貫通孔8に刺さって空に向かって延びる背もたれや柱のイメージを着座者3に与え、このイメージが着座者3に意識的または無意識的に背筋を伸ばさせることが考えられる。なお、臀部支持部材5の後方側に、地面に連通しかつ上下方向に延在する貫通孔8を設けなかった場合、例えば、後方面部材14を取り外して臀部支持部材5の後方を開放空間とした場合や、貫通孔8を塞いだ場合、着座者3が自然と背筋を伸ばすという効果が生じにくいことが発明者の研究により判明している。
【0037】
特に本実施形態では、尾骨等対応部位P2が当接部材16に触れた状態である。このため、着座者3は、尾骨等に当接部材16が接触しているとの感触を得ることになり、この感触が一種の刺激となって意識的または無意識的に背筋を伸ばさせることが考えられる。
【0038】
また、
図4で示すように、一対の坐骨と尾骨等とは三角形を形成している。また一対の坐骨および尾骨等は、着座時に臀部から張り出す骨である。このため、
図1、2で示すように、一対の坐骨および尾骨等に対応した位置に、一対の坐骨支持部材6R、6Lおよび当接部材16を設けることによって、着座者3の臀部やその他の部分に過度な負担をかけることなく、3点支持によって臀部を支持することができる。そして、臀部を一対の坐骨および尾骨等の3点で支持することで、より効果的に着座者3の姿勢を正すことができ、インナーマッスルに適度な力が加わった状態を維持できる結果、体幹を鍛えることが可能となる。
【0039】
更に着座者3は、座具に着座したときに、自身の仙骨の下方側に地面2が見える状態で上下方向に延在する貫通孔が存在することを認識することによって、瞑想状態へ入りやすい状態となる。このため、本実施形態によれば、瞑想状態への移行を補助するための電子機器を有さない小型でシンブルな構成で着座者3を瞑想状態へ誘導できる。
【0040】
着座者3が仙骨の下方側に貫通孔8が存在することを認識することにより、瞑想状態へ入りやすい状態となる理由としては以下の事項が考えられる。すなわち、着座者3が地面2と空(宇宙)とが、自身の仙骨および仙骨に接続する背骨を通してつながっているとのイメージを抱きやすく、このイメージが着座者3を瞑想状態へ入りやすい状態としていることが考えられる。人間にとって自身と自然とがつながっているとのイメージが、瞑想状態への移行によい影響を与えることは広く知られている。
【0041】
更に、貫通孔8を介して地面2から着座者3の臀部まで空間が直接的につながっているため、着座者3に適度なリラックス状態を付与しつつ、場合によっては地面2から気のようなものを得ているとのイメージを着座者3に抱かせることができ、このことが着座者3を瞑想状態へ入りやすい状態としていることが考えられる。また、上述の通り座具1に正常に着座すると、着座者3は自然と背筋を伸ばし、インナーマッスルに適度な力が加わった状態となるが、この姿勢の良さ、および、良い姿勢が維持されることが瞑想状態への移行によい影響を与えていることが考えられる。なお、臀部支持部材5の後方側に、地面に連通しかつ上下方向に延在する貫通孔8を設けなかった場合、例えば、後方面部材14を取り外して臀部支持部材5の後方を開放空間とした場合や、貫通孔8を塞いた場合、着座者3が瞑想状態へ入りやすい状態となるという効果が得られにくいことが発明者の研究により分かっている。
【0042】
<第1変形例>
次に上記実施形態の第1変形例について説明する。以下の第1変形例の説明において、上記実施形態と同一の要素については同一の符号を付与し詳細な説明は省略する。このことは後述する他の変形例についても同じである。
【0043】
図7は、第1変形例に係る座具20の斜視図である。本変形例に係る座具20は、座椅子や正座用椅子として使用されることが想定されている。
図7と
図1との比較で明らかな通り、座具20は、臀部支持部材21の高さ(=一対の坐骨支持部材22R、22Lの高さ)が、上記実施形態に係る臀部支持部材5の高さよりも低い。座具20の臀部支持部材21の高さは、座具20の想定される使用態様によって適宜設計される。ただし、座具20が座椅子または正座用椅子として使用される場合には、臀部支持部材21の高さを6~15cmとすることが好ましい。臀部支持部材21の高さが6cm未満の場合には、着座の際の体勢が窮屈になるおそれがあり、当該高さが15cmを超えると、着座の際の姿勢が安定しないおそれがあるからである。
【0044】
着座者3は、上記実施形態と同様、着座者3の一対の坐骨が一対の坐骨支持部材22R、22Lに支持され、かつ、着座者3の尾骨等対応部位P2に当接部材16が当接した状態で座具20に着座する。その際、着座者3は、座具20を座椅子として使用する場合には例えば両足であぐらをかいた状態で座具20に着座し、また座具20を正座用椅子として使用する場合には例えば、右膝を180°近く折り曲げて右膝より下の部位を坐骨支持部材22Rよりも右側に位置させ、左膝を180°近く折り曲げて左膝より下の部位を坐骨支持部材22Lよりも左側に位置させ、正座に近い状態で座具20に着座する。
【0045】
着座者3が座具20に着座したときの上背の姿勢や、着座者3の臀部より上の部位と、座具20の各部材との関係は上記実施形態と同様であり、本変形例によれば上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
<第2変形例>
次に上記実施形態の第2変形例について説明する。
図8は、第2変形例に係る座具24の斜視図である。
図8と
図1との比較で明らかな通り、座具24は、上記実施形態に係る当接部材16が設けられていない点で上記実施形態と異なっている。着座者3が座具24に着座し、着座者3の一対の坐骨が一対の坐骨支持部材6R、6Lに支持されると、貫通孔8の上方に着座者3の仙骨が位置した状態となる。これにより、着座者3の姿勢は上記実施形態のときと同様となり、第1実施形態で説明した効果(ただし、当接部材16に由来する効果を除く)が生じる。
【0047】
<第3変形例>
次に上記実施形態の第3変形例について説明する。
図9は、第3変形例に係る座具26の斜視図である。
図9と
図1との比較で明らかな通り、座具26は、臀部支持部材27を構成する一対の坐骨支持部材28R、28Lおよび関連する部材が、上記実施形態に係る坐骨支持部材6R、6Lおよび関連する部材と異なっている。
【0048】
詳述すると、座具26では、貫通孔形成部材10の上部に、第1実施形態と比較して高さが小さい一対の坐骨支持部材28R、28Lが取り付けられ、固定されている。以下、坐骨支持部材28Rと坐骨支持部材28Lとを区別しない場合は、「坐骨支持部材28」という。一対の坐骨支持部材28R、28Lの上面の位置は、上記実施形態と同様、貫通孔形成部材10の上面の位置よりも若干高くなっている。
【0049】
更に
図9で示すように、貫通孔形成部材10の下部には、一対の足部材29R、29Lが固定されている。以下、足部材29Rと足部材29Lとを区別しない場合は、「足部材29」という。足部材29の形状は、坐骨支持部材28の形状と同一である。一対の足部材29R、29Lの下面と貫通孔形成部材10の下面とは同一平面上に位置している。一対の足部材29R、29Lの下面は、その全域が地面2に接触し、地面2に対して座具26を起立させる。貫通孔形成部材10が座具26の転倒の防止に有効に機能することは上記実施形態と同様である。
【0050】
着座者3が座具26に正常に着座したときの姿勢や、着座者3の身体と座具26の各部材との関係は上記実施形態と同様であり、本変形例によれば上記実施形態と同様の効果を奏する。更に本変形例によれば、座具26の軽量化を図ることができる。なお、本変形例に係る座具26について、第2変形例のように、当接部材16を設けない構成としてもよい。
【0051】
また、坐骨支持部材28の形状と足部材29の形状とは必ずしも同じにする必要はなく、例えば、
図10で示すように、足部材29を、上面が四角形と半円とを組み合わせた形状の、柱状の部材により構成してもよい。この場合、上面視したときに半円の部分を、坐骨支持部材28に嵌め込む。ただし坐骨支持部材28の形状と足部材29の形状とを同じとすれば座具1の量産に有利である。また足部材29を貫通孔形成部材10から着脱自在な構成としてもよい。足部材29を取り外して使用することによって、座具26に着座する着座者3は、座具26の姿勢が安定するようにインナーマッスルに力を加え、この結果、体幹を鍛える効果をより高めることができる。
【0052】
<第4変形例>
次に上記実施形態の第4変形例について説明する。
図11は、第4変形例に係る座具30の斜視図である。
図11と
図1との比較で明らかな通り、本変形例に座具30は、当接部材31およびこれに関連する部材が上記実施形態と異なっている。詳述すると、本変形例では、後方面部材14において接触部分7に対向する位置に、円柱状の当接部支持部材32が取り付けられる。この当接部支持部材32の上面に、上記実施形態に係る当接部材16の上半分の部分の形状と大体同じ形状の当接部材31が取り付けられる。
【0053】
着座者3が座具30に着座したときの姿勢や、着座者3の身体と座具30の各部材との関係は上記実施形態と同様であり、本変形例によれば上記実施形態と同様の効果を奏する。更に本変形例によれば、当接部材31をより安定的に貫通孔形成部材10に固定することができる。なお、本変形例に係る座具30について第1変形例のように、座具30の高さを小さくし、座椅子や正座用椅子等として利用されるようにしてもよい。また、本変形例に係る座具30について一対の坐骨支持部材6R、6Lに代えて、第3変形例に係る一対の坐骨支持部材28R、28Lおよび一対の足部材29R、29Lを第3変形例と同様の態様で設けるようにしてもよい。
【0054】
<第5変形例>
次に上記実施形態の第5変形例について説明する。
図12は、第5変形例に係る座具33の斜視図である。
図13は、第5変形例に係る貫通孔形成部材34の斜視図である。
図12と
図1および
図13と
図5との比較で明らかな通り、本変形例に係る座具33は、貫通孔形成部材34の形状が上記実施形態と異なっており、また、当接部材16を有していない。詳述すると、貫通孔形成部材34の後方面部材35は、「上記実施形態に係る貫通孔形成部材10の後方面部材14に相当する後方面対応部分36」に、「後方面部材14の上面を基端として、上方に向かうほど断面の左右対称性が維持されつつ、断面の弧が長さが小さくなっていく臀部被覆部分37」が付加された形状をしている。臀部被覆部分37は、特許請求の範囲の「臀部被覆部」に相当する。臀部被覆部分37は、上面視したときに貫通孔8を避けた場所に設けられており、本変形例においても上記実施形態と同様、上面視したときに貫通孔8を介して地面2が見える。
【0055】
図14は、着座者3が座具33に正常に着座した様子を座具33の右側から左方に向かって見た図である。着座者3が座具33に正常に着座し、一対の坐骨が坐骨支持部材6R、6Lに支持された状態となると、
図14で示すように、臀部被覆部分37が着座者3の臀部を後ろから包み込むように覆った状態となる。
【0056】
本変形例によれば、上記実施形態で説明した効果に加え、以下の効果を奏する。すなわち、臀部を包み込むように延在し臀部の周囲に接触する臀部被覆部分37の感触が、貫通孔8が延在する方向に沿って背筋を伸ばすことを着座者3に感覚的に意識させ、これにより着座者3が自然と背筋を伸ばそうとする。また、臀部被覆部分37が着座者3の臀部を後ろから包み込むように支持するため、着座時の安定感を向上することが可能となり、瞑想への導入効果をより高めることができる。また、地面2から貫通孔8を介して直接、気のようなものが身体に注がれていくイメージを着座者3がより抱きやすく、瞑想状態への誘導効果をより高めることができる。
【0057】
ただし、着座者3のインナーマッスルを鍛える観点からは、臀部被覆部分37は設けない方が好ましいため、臀部被覆部分37は、着脱式とすることができる。例えば
図13を参照し、
図13において破線で示す後方面対応部分36と臀部被覆部分37との境目で、臀部被覆部分37を取り外せるようにすることで、座具33を使用した当初は、安定して着座できるよう臀部被覆部分37を取り付けた形で使用して瞑想状態への導入効果をより高め、座具33の使用に慣れてきた後には、臀部被覆部分37 を取り外し、インナーマッスルをより効果的に鍛えられるようにすることが可能となる。
【0058】
<第6変形例>
次に上記実施形態の第6変形例について説明する。
図15は、第6変形例に係る座具39の臀部支持部材40を構成する坐骨支持部材41R、41Lのうち、坐骨支持部材41Rの斜視図である。
図16(A)は、第6変形例に係る座具39の上面図である。
図16(B)は、第6変形例に係る座具39を座具39の前側から後方へ向かった見た図である。
【0059】
図15、16で示すように、坐骨支持部材41Rは、円柱状の柱部分42R(特許請求の範囲の「柱部」に相当)と、柱部分42Rの上面から隆起した隆起部分43R(特許請求の範囲の「隆起部」に相当)とを備える。
図16(A)で示すように、隆起部分43Rは、上面視したときに右方に向かうに従って前後方向の幅が小さくなるように、柱部分42Rの上面の中心を通る仮想線に沿って左右方向に延在している。坐骨支持部材41Lの形状は、坐骨支持部材41Rの形状と同じである。
図16(A)で示すように、坐骨支持部材41Rと坐骨支持部材41Lとは、左右対称に配置される。従って、坐骨支持部材41Lの隆起部分43Lは、上面視したときに左に向かうに従って前後方向の幅が小さくなるように、坐骨支持部材41Lの柱部分42Lの上面の中心を通る仮想線に沿って左右方向に延在している。上記実施形態に係る坐骨支持部材6R、6Lの高さと、本変形例に係る坐骨支持部材41R、41L(柱部分42R、42L+隆起部分43R、43L)の高さとは大体同じとされる。
【0060】
着座者3は、以下の態様で座具39に着座する。すなわち、着座者3は、尾骨等対応部位P2が当接部材16に触れ、かつ、一対の坐骨対応部位P1が一対の隆起部分43R、43Lのそれぞれの上面に接触した状態となるように座具39に着座する。この結果、着座者3が座具39に正常に着座すると、着座者3の一対の坐骨が一対の隆起部分43R、43Lにより支持された状態となる。
【0061】
本変形例によれば、上記実施形態で説明した効果の他、以下の効果を奏する。すなわち上記実施形態では、一対の坐骨支持部材6R、6Lのそれぞれの上面が座面として機能したが、本変形例では、一対の隆起部分43R、43Lのそれぞれの上面が座面として機能する。上述した通り、一対の隆起部分43R、43Lの上面は、左右方向に細長い形状であり、着座者3が着座した際に、上記実施形態と比較して、臀部のうち、より狭い範囲が座面に接触した状態となる。このため、一対の隆起部分43R、43Lによって坐骨を的確に支持できる。また、背筋が曲がった状態のときは、着座者3の姿勢が安定しずらいことになる。このため、意識的または無意識的に着座者3に背筋を伸ばさせて、インナーマッスルに適度な力が加わった状態を維持させることができ、より効果的に体幹を鍛えることができる。
【0062】
なお、坐骨支持部材41Rの隆起部分43Rの形状を、
図17で示すように、上面視したときに、前後方向の幅が一定のまま柱部分42Rの上面の中心を通る仮想線に沿って左右方向に延在する形状としてもよい。坐骨支持部材41Lの隆起部分43Lについても同様である。
【0063】
また、本変形例において、隆起部分43R、43Lを、ゴム製の部材等の柔軟性を有する部材から構成し、柱部分42R、42Lを、金属やプラスチック、炭素繊維、木等の硬質性の材料から構成することができる。これによって、坐骨へ加わる負担を減らしつつ、貫通孔形成部材10との接続を強固に行うことができる。
【0064】
また、他の変形例について、本変形例に係る隆起部分43R、43Lに対応する部材を設ける構成としてもよい。
【0065】
<第7変形例>
次に上記実施形態の第7変形例について説明する。
図18(A)は、第7変形例に係る座具45の上面図である。
図18(B)は、第7変形例に係る座具45を座具45の前側から後方へ向かった見た図である。第7変形例の説明において、第6変形例の要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
本変形例に係る座具45の臀部支持部材46を構成する坐骨支持部材47R、47Lは、第6変形例に係る坐骨支持部材41R、41Lと形状が異なっている。すなわち、坐骨支持部材47Rに着目すると、坐骨支持部材47Rは、円柱状の柱部分42Rの上面から、円柱状の隆起部分48Rが隆起した形状となっている。隆起部分48Rの上面の径は、柱部分42Rの上面の径に対して十分に小さく、また、隆起部分48Rの軸は、柱部分42Rの軸と同一軸上にある。坐骨支持部材47Lは、坐骨支持部材47Rと同様の態様で、同一形状の隆起部分48Lを備える。
【0067】
着座者3は、以下の態様で座具45に着座する。すなわち、着座者3は、尾骨等対応部位P2が当接部材16に触れ、かつ、一対の坐骨対応部位P1が一対の隆起部分48R、48Lの上面に接触し、一対の坐骨が一対の隆起部分48R、48Lに支持された状態となるように座具45に着座する。
【0068】
本変形例によれば、上記実施形態で説明した効果の他、以下の効果を奏する。すなわち、本変形例では、一対の隆起部分48R、48Lのそれぞれの上面が座面として機能する。
図16(A)と
図18(A)との比較で明らかな通り、本変形例の座面は、第6変形例に係る座具39の座面よりも更に小さい。このため、着座者3は、安定した状態で座具45に着座するためには、よりしっかりと一対の坐骨が一対の隆起部分48R、48Lに支持された状態とする必要があると共によりしっかりと背筋を伸ばす必要があり、またそのような必要があると着座者3に認識させ、または、イメージさせることができる。このため、意識的または無意識的に着座者3に背筋を伸ばさせて、インナーマッスルに適度な力が加わった状態を維持させることができ、より効果的に体幹を鍛えることができる。
【0069】
なお、他の変形例について、本変形例に係る隆起部分48R、48Lに対応する部材を設ける構成としてもよい。
【0070】
<第8変形例>
次に上記実施形態の第8変形例について説明する。
図19は、第8変形例に係る座具50の上面図である。
図2と
図19との比較で明らかな通り、本変形例に係る座具50の貫通孔形成部材51は、右方側面部材11および左方側面部材12を備えていない。貫通孔形成部材51は、接触部分7から坐骨支持部材6Rの背面に沿って一定量だけ離間した位置X1と、接触部分7から坐骨支持部材6Lの背面に沿って一定量だけ離間した位置X2との間に介在し、後方(臀部支持部材5の背面側)に向かって凸となるように湾曲した後方面部材52を備えている。貫通孔53は、坐骨支持部材6Rの背面の一部と、坐骨支持部材6Lの背面の一部と、後方面部材52とで囲まれた部位に形成される。なお、後方面部材52の位置X1には、坐骨支持部材6Rの側面と接する面を有する接触部が形成されており、この接触部に対して坐骨支持部材6Rが固着されることにより、坐骨支持部材6Rは後方面部材52に固定される。同様に、後方面部材52の位置X2には、坐骨支持部材6Lの側面と接する面を有する接触部が形成されており、この接触部に対して坐骨支持部材6Lが固着されることにより、坐骨支持部材6Lは後方面部材52に固定される。
【0071】
着座者3が座具50に着座したときの姿勢や、着座者3の身体と座具50の各部材との関係は上記実施形態と同様であり、本変形例によれば上記実施形態と同様の効果を奏する。なお、他の変形例について、貫通孔形成部材10または貫通孔形成部材10に対応する部材を本変形例のように構成してもよい。
【0072】
<第9変形例>
次に上記実施形態の第9変形例について説明する。
図20(A)は、本変形例に係る座具55の右側貫通孔形成部材56R(特許請求の範囲の「一方貫通孔形成部」に相当)および左側貫通孔形成部材56L(特許請求の範囲の「他方貫通孔形成部」に相当)を分解した様子を座具55の上側から下方へ向かって見た図である。
図20(B)は、右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとを後述する方法で接続した後の座具55の様子を座具55の上側から下方へ向かって見た図である。
図20(A)、(B)の何れにおいても、当接部材16の図示は省略してある。
【0073】
上記実施形態では、貫通孔形成部材10の後方面部材14は一枚板で形成されており、後方面部材14と右方側面部材11と左方側面部材12とが接続手段による接続を伴うことなく、一体となって貫通孔形成部材10を構成していた。一方で本変形例では、貫通孔形成部材56は分解可能である。
【0074】
詳述すると、
図20(A)で示すように、貫通孔形成部材56は、右方側面部材61Rとこれに接続された右側後方面部材57R(特許請求の範囲の「一方後方面部」に相当)からなる右側貫通孔形成部材56R(特許請求の範囲の「一方貫通孔形成部」に相当)、および、左方側面部材61Lとこれに接続された左側後方面部材57L(特許請求の範囲の「他方後方面部」に相当)からなる左側貫通孔形成部材56L(特許請求の範囲の「他方貫通孔形成部」に相当)が接続されて構成される。右側後方面部材57Rは、上記実施形態の後方面部材14の右半分の部位に対応し、左側後方面部材57Lは、上記実施形態の後方面部材14の左半分の部位に対応する。
【0075】
右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとは以下のようにして接続される。すなわち、
図20(B)で示すように、右方側面部材11の左側の端部と左方側面部材12の右側の端部と接触部分7で接触し、かつ、右側後方面部材57Rの先端部と左側後方面部材57Lの先端部とが重複部分58で重なるように、右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとが位置決めされる。なお、右側貫通孔形成部材56Rおよび左側貫通孔形成部材56Lのそれぞれは、同一形状であり、右側後方面部材57Rおよび左側後方面部材57Lはそれぞれ、重複部分58が形成されるように設計される。
【0076】
図20の各図では図示はされていないが、右側後方面部材57Rおよび左側後方面部材57Lのそれぞれの重複部分58に相当する部位には、重複部分58において重なり合う位置にネジ止め用の孔が形成されている。ネジ止め用の孔は、上下方向に間隔を開けて複数、設けられている。そして、ネジ止め用の孔のそれぞれに外側からボルト59の軸部が挿通されると共に、内側からナット60が螺合され、これにより右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとが接続される。図示は省略するが、接続後、重複部分58の上部に当接部材16が取り付けられる。
【0077】
本変形例によれば、完成品が上記実施形態で説明した効果と同様の効果を奏するのは勿論のこと、更に座具55の製造に関して以下の優位性がある。すなわち、上述したように右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとは同じ形状であるため、貫通孔形成部材10の製造に際して、右側貫通孔形成部材56Rにも左側貫通孔形成部材56Lにもなる同じ形状の部材(当部材を便宜的に「片側部材」という)を製造すればよい。片側部材は、上記実施形態に係る貫通孔形成部材10と比較して小型であり、構造が単純であるため、上記実施形態に係る貫通孔形成部材10と比較して製造容易性が高い。
【0078】
特に、貫通孔形成部材56を木製材料にて構成する場合には、第1実施形態に係る貫通孔形成部材10を木製材料にて構成する場合と比較して、製造容易性に関して以下の優位性がある。すなわち、上記実施形態に係る後方面部材14は一枚板であり、座具1の製造にあたって、後方面部材14とする十分な大きさの木製材料を準備をする必要があり、更に切り出しや曲げ等の加工を行う必要がある。そして、本変形例によれば、上記実施形態に係る後方面部材14に対応する部材が第1実施形態と比較して小さいため、その分、木製材料の準備や、加工の困難性が低く、製造容易性が高い。
【0079】
なお、本変形例では、ボルト59およびナット60を利用して重複部分58にて右側貫通孔形成部材56Rと左側貫通孔形成部材56Lとを接続する構成であったが、接続の手段は例示したものに限らず、ボルト59およびナット60以外の部品を用いた接続の他、接着、溶接、テーピング等であってもよい。
【0080】
また、他の変形例について、貫通孔形成部材10または貫通孔形成部材10に対応する部材を本変形例のように構成してもよい。特に、第8変形例に係る座具50に本変形例の技術を適用した場合、
図21で示すように、座具50の貫通孔形成部材62は以下の構成を有する。すなわち、貫通孔形成部材51は、後方面部材52の一方の半分の部位に対応する右側後方面部材63R(特許請求の範囲の「一方後方面部」に相当)、および後方面部材52の他方の半分の部位に対応する左側後方面部材63L(特許請求の範囲の「他方後方面部」に相当)が接続されて構成され、右側後方面部材63R、および、左側後方面部材63Lは同一形状である。
【0081】
<その他の変形例>
次に上記実施形態の他の変形例について説明する。以下のその他の変形例では、説明の便宜のため、上記実施形態と同一の機能を有する要素について同一の符号を付与する。
【0082】
上記実施形態では、臀部支持部材5の一対の坐骨支持部材6R、6Lの形状は、円柱であった。しかしながら、一対の坐骨支持部材6R、6Lの形状は円柱である必要はなく、一例として以下の形状であってもよい。例えば
図22(A)で示すように、坐骨支持部材6は、断面が仮想線を堺に曲率の異なる円の一部が接続された面となっている柱状の部材であってもよい。また図示は省略するが、坐骨支持部材6は、断面が楕円形や、三角形(丸みを帯びた三角形でもよい)、四角形(丸みを帯びた四角形でもよい)、その他の多角形の柱状の部材であってもよい。以上のことは第1~9変形例についても同様である。
【0083】
また、臀部支持部材5を透明部材で構成してもよい。透明部材は例えば、ガラス、透明樹脂である。この構成によれば、着座者3は、臀部支持部材5を介して視認される地面2を認識することにより、地面2と空(宇宙)とが自身(特に、仙骨から上方に向かって延びる背骨)を介してつながっているとのイメージをより容易に得ることでき、より効果的に着座者3を瞑想状態へ誘導できる。以上のことは第1~9変形例についても同様である。
【0084】
また、貫通孔形成部材10の形状は、上記実施形態で説明した形状に限られない。例えば
図21(B)で示すように、臀部支持部材5の後方側に向かって凸となるように左右方向の中央部の一点で屈曲した形状であってもよい。また
図21(C)で示すように、臀部支持部材5の後方側に向かって凸となるように左右方向に離間した二点で屈曲した形状であってもよい。
【0085】
また、貫通孔形成部材10については、上下方向に伸縮可能な構造にすることができる。伸縮可能とすることで、状況に応じて、座具1を上記実施形態のように腰掛け用の椅子として使用したり、第1変形例のように座椅子や正座用椅子として使用したりすることができる。なおこの場合、事前に、高さの異なる坐骨支持部材6を複数用意しておき、貫通孔形成部材10の伸縮状態に応じて適切な高さの坐骨支持部材6を貫通孔形成部材10の適切な位置にセットする必要がある。貫通孔形成部材10を伸縮可能にする手段としては、公知の技術を適宜用いることができる。例えば、テレスコピックパイプ構造、ラチス構造、モノコック・シェル構造、蛇腹構造等があげられる。
【0086】
更に、座具1に着座者3の臀部の固定を高めるための部材や、背もたれ等の着座を補助する部材を設ける構成としてもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、上記実施形態および変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、20、24、26、30、33、39,45、50,55 座具
2 地面
3 着座者
5、21、27、40、46 臀部支持部材
6L、6R、22L、22R、28L、28R、41L、41R、47L、47R 坐骨支持部材
8、53 貫通孔
10、34、51、56、62 貫通孔形成部材
11、61R 右方側面部材
12、61L 左方側面部材
14、35、52 後方面部材(後方面部)
16、31 当接部材(当接部)
37 臀部被覆部分(臀部被覆部)
43L、43R、48L、48R 隆起部分
56R 右側貫通孔形成部材(一方貫通孔形成部)
56L 左側貫通孔形成部材(他方貫通孔形成部)
57R、63R 右側後方面部材(一方後方面部)
57L、63L 左側後方面部材(他方後方面部)