(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】扁平チューブ用フィンの製造装置
(51)【国際特許分類】
B21D 53/08 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
B21D53/08 D
B21D53/08 K
(21)【出願番号】P 2020567672
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2019001626
(87)【国際公開番号】W WO2020152736
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390034809
【氏名又は名称】日高精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 準一
(72)【発明者】
【氏名】森下 圭一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-73510(JP,A)
【文献】特開平10-151530(JP,A)
【文献】特開平10-263733(JP,A)
【文献】特開平6-238371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/08
B21D 43/22
F28F 1/32
B23P 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の一方側から他方側に向けて、熱交換器用の扁平チューブを挿入させる切り欠き部が形成されてなる扁平チューブ用フィンを製造する製造装置において、
未加工の金属製の薄板に切り欠き部を形成して金属帯状体とする金型装置が設けられたプレス装置と、
切り欠き部が形成されてなる金属帯状体を所定幅に切断し、幅方向に複数本整列してなる製品幅の金属帯状体を形成する列間スリット装置と、
製品幅の金属帯状体を所定長さに切断し、前記扁平チューブ用フィンとするカットオフ装置と、
前記列間スリット装置によって形成されて搬送方向に送り出され、前記カットオフ装置を通過して前記カットオフ装置の搬送方向下流側から突出した複数本の製品幅の金属帯状体のそれぞれに対して設けられ、前記製品幅の金属帯状体の側方位置と前記製品幅の金属帯状体の保持位置との間で互いに接離動可能であって、前記製品幅の金属帯状体および前記扁平チューブ用フィンを保持する一対の保持体と、前記一対の保持体を接離動させる保持体接離動機構と、を有する保持装置と、
前記カットオフ装置により所定長さに切断された前記扁平チューブ用フィンを積層させるべく、前記保持装置により保持されている前記扁平チューブ用フィンの前記切り欠き部に挿通される複数本のスタックピンが立設されたスタックピン保持体と、前記スタックピンに挿通された複数枚の前記扁平チューブ用フィンのうち最下部の前記扁平チューブ用フィンの下面に当接するフィン受け部と、前記フィン受け部を前記スタックピンに沿って移動させる第1移動機構と、前記フィン受け部の移動とは独立して前記スタックピン保持体を前記スタックピンの立設方向に沿って移動させる第2移動機構を有するスタック装置と、
少なくとも前記カットオフ装置と、前記保持装置と、前記スタック装置の動作をそれぞれ制御する動作制御部とを具備し、
前記動作制御部は、
前記一対の保持体が前記製品幅の金属帯状体を保持することが可能な保持可能位置にあるときに、前記第1移動機構を作動させて、前記フィン受け部を積層開始基準高さ位置まで上昇させる第1処理と、
前記一対の保持体により保持された前記製品幅の金属帯状体が前記カットオフ装置によって前記扁平チューブ用フィンに切断されるときまでに、前記第1移動機構および前記第2移動機構を同期させた状態でそれぞれ作動させることにより前記フィン受け部および前記スタックピン保持体を、前記フィン受け部と前記スタックピン保持体との位置関係を維持した状態で前記扁平チューブ用フィンの受け取り高さ位置まで上昇させる第2処理と、
前記カットオフ装置により所定寸法に切断された前記扁平チューブ用フィンを前記フィン受け部に受け取らせる際において、前記保持体接離動機構を作動させて前記一対の保持体を離反させる第3処理と、
前記一対の保持体から前記扁平チューブ用フィンが前記フィン受け部に受け渡された後、前記第1移動機構および前記第2移動機構を同期させた状態でそれぞれ作動させることにより前記扁平チューブ用フィンを積層させた状態の前記フィン受け部および前記スタックピン保持体を、前記フィン受け部と前記スタックピン保持体との位置関係を維持した状態で前記スタックピンの先端が前記一対の保持体からの前記扁平チューブ用フィンの受け渡し高さ位置よりも下側位置になるまで下降させる第4処理と、
前記第1移動機構を作動させて、前記フィン受け部を予め設定した高さで下降させる第5処理と、
をそれぞれ実行することを特徴とする扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項2】
前記予め設定した高さは、前記所定寸法に切断された前記扁平チューブ用フィンの厚さ寸法であることを特徴とする請求項1記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、
前記第5処理を実行した以降に、前記保持体接離動機構を作動させて前記一対の保持体を前記保持可能位置に戻す第6処理を実行することを特徴とする請求項1または2記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、
前記第6処理を実行した後、前記第2処理に戻り、前記第2処理乃至前記第6処理を予め設定した回数にわたり繰り返し実行することを特徴とする請求項3記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、
前記スタックピンに挿通されて積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンを上昇させて、積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンのうち最上部の前記扁平チューブ用フィンの上面を前記一対の保持体の下面に当接させ、積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンを整列させるように少なくとも前記第1移動機構を作動させる第7処理を実行することを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか1項記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項6】
前記スタックピンの上端高さ位置は、前記カットオフ装置の側から離れるにつれて徐々に低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1~5のうちのいずれか1項記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項7】
前記スタック装置は、
前記製品幅の金属帯状体の側面位置から所要間隔をあけて、または、前記製品幅の金属帯状体の側面位置に当接して設けられ、前記製品幅の金属帯状体の幅方向のズレを規制するために上下方向に移動可能な規制ピンを有することを特徴とする請求項1~6のうちのいずれか1項記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項8】
前記保持装置には、前記保持装置に向って上昇してくる前記規制ピンとの干渉を防ぐための規制ピン回避部が設けられていることを特徴とする請求項7記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【請求項9】
前記規制ピンの上下方向への動作は、前記スタックピンの上下方向への動作に同期していることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の扁平チューブ用フィンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の放熱を行う熱交換器用フィンとして用いられる扁平チューブ用フィンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクーラー等の熱交換器は、熱交換チューブを挿入する透孔が複数個穿設された熱交換器用フィンが複数枚積層されて構成されているものが一般的である。このような熱交換器用フィンは、
図14に示す熱交換器用フィンの製造装置によって製造することができる。
【0003】
熱交換器用フィンの製造装置には、アルミニウム等の金属製の薄板10がコイル状に巻かれたアンコイラー12が設けられている。アンコイラー12からピンチロール14を経て引き出された薄板10は、オイル付与装置16に挿入され、加工用オイルをその表面に付着され、プレス装置18内に設けられた金型装置20に供給される。
【0004】
金型装置20は、内部に上下動可能な上型ダイセット22と、静止状態にある下型ダイセット24が設けられている。この金型装置20によって、透孔の周囲に所定高さのカラーが形成された複数個のカラー付き透孔(図示せず)が所定の方向に所定の間隔で形成される。以下、金属製の薄板に透孔等が加工されたものを、金属帯状体11と称する。金属帯状体11は、所定方向に所定距離移送された後、カッター26によって所定長さに切断される。所定長さに切断された製品(熱交換器用フィン)は、スタッカ28に収容される。スタッカ28は、鉛直方向に立設された複数のスタックピン27を有しており、透孔内にスタックピン27を挿入させて製造された熱交換器用フィンを積層している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の熱交換器用フィンは、金属帯状体に熱交換チューブが挿入される複数の透孔を穿設されたものであった。しかしながら現在、多穴の扁平チューブを用いた熱交換器が開発されてきている。この扁平チューブを用いた熱交換器用フィン(以下、扁平チューブ用フィンと称する場合がある)を
図15AおよびBに示す。
【0007】
扁平チューブ用フィン30は、扁平チューブ32が挿入される切り欠き部34が複数箇所に形成されており、切り欠き部34と切り欠き部34との間は、ルーバー35が形成された板状部36が形成されている。切り欠き部34は、扁平チューブ用フィン30の幅方向の一方側からのみ形成されている。したがって、切り欠き部34と切り欠き部34との間の複数の板状部36は、長手方向に沿って伸びる連結部38によって連結されている。
【0008】
ところで、このような扁平チューブ用フィンを
図14に示すような従来の熱交換器用フィン製造装置によって製造しようとすると、以下のような問題が生じていた。すなわち、従来の熱交換器用フィンは、複数の透孔が穿設されており、製造されたフィンは、透孔を貫通するようなスタックピン27が配置されたスタッカ28に積層させているが、このような扁平チューブ用フィンにおいては、透孔が形成されていないため、積層させる際には切り欠き部34にスタックピン27を挿入させることになる。しかしながら、扁平チューブ用フィンは、幅方向に対称な形状をしていないので、幅方向の重量バランスが偏っており、切り欠き部34にスタックピン27を挿入しても扁平チューブ用フィンが傾斜する場合もあり、積層できなくなってしまうおそれがある。
【0009】
そこで、スタックピン27を有するスタッカ28を上昇させ、積層させる扁平チューブ用フィンに近づけたところで扁平チューブ用フィンを落下させることで、扁平チューブ用フィンの落下距離を短くして扁平チューブ用フィンが傾斜してしまうことによる積層の不具合を解消できるのではないかと検討した。
【0010】
しかし、スタックピン27を挿通させた扁平チューブ用フィンを積層(スタック)させた状態で、スタッカ28を上下動させると、スタックピン27と扁平チューブ用フィンとの間に生じる摩擦力により扁平チューブ用フィンが変形してしまうおそれがある。
【0011】
すなわち、扁平チューブ用フィンの積層時において、扁平チューブ用フィンを変形させることなく、確実且つ効率良く行うために、どのようにすべきか、という点に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、透孔が形成されていない扁平チューブ用フィンの積層時において、扁平チューブ用フィンを変形させることなく、確実且つ効率良く製造可能とする扁平チューブ用フィンの製造装置を提供することにある。
【0013】
本発明における扁平チューブ用フィンの製造装置によれば、幅方向の一方側から他方側に向けて、熱交換器用の扁平チューブを挿入させる切り欠き部が形成されてなる扁平チューブ用フィンを製造する製造装置において、未加工の金属製の薄板に切り欠き部を形成して金属帯状体とする金型装置が設けられたプレス装置と、切り欠き部が形成されてなる金属帯状体を所定幅に切断し、幅方向に複数本整列してなる製品幅の金属帯状体を形成する列間スリット装置と、製品幅の金属帯状体を所定長さに切断し、前記扁平チューブ用フィンとするカットオフ装置と、前記列間スリット装置によって形成されて搬送方向に送り出され、前記カットオフ装置を通過して前記カットオフ装置の搬送方向下流側から突出した複数本の製品幅の金属帯状体のそれぞれに対して設けられ、前記製品幅の金属帯状体の側方位置と前記製品幅の金属帯状体の保持位置との間で互いに接離動可能であって、前記製品幅の金属帯状体および前記扁平チューブ用フィンを保持する一対の保持体と、前記一対の保持体を接離動させる保持体接離動機構と、を有する保持装置と、前記カットオフ装置により所定長さに切断された前記扁平チューブ用フィンを積層させるべく、前記保持装置により保持されている前記扁平チューブ用フィンの前記切り欠き部に挿通される複数本のスタックピンが立設されたスタックピン保持体と、前記スタックピンに挿通された複数枚の前記扁平チューブ用フィンのうち最下部の前記扁平チューブ用フィンの下面に当接するフィン受け部と、前記フィン受け部を前記スタックピンに沿って移動させる第1移動機構と、前記フィン受け部の移動とは独立して前記スタックピン保持体を前記スタックピンの立設方向に沿って移動させる第2移動機構を有するスタック装置と、少なくとも前記カットオフ装置と、前記保持装置と、前記スタック装置の動作をそれぞれ制御する動作制御部とを具備し、前記動作制御部は、前記一対の保持体が前記製品幅の金属帯状体を保持することが可能な保持可能位置にあるときに、前記第1移動機構を作動させて、前記フィン受け部を積層開始基準高さ位置まで上昇させる第1処理と、前記一対の保持体により保持された前記製品幅の金属帯状体が前記カットオフ装置によって前記扁平チューブ用フィンに切断されるときまでに、前記第1移動機構および前記第2移動機構を同期させた状態でそれぞれ作動させることにより前記フィン受け部および前記スタックピン保持体を、前記フィン受け部と前記スタックピン保持体との位置関係を維持した状態で前記扁平チューブ用フィンの受け取り高さ位置まで上昇させる第2処理と、前記カットオフ装置により所定寸法に切断された前記扁平チューブ用フィンを前記フィン受け部に受け取らせる際において、前記保持体接離動機構を作動させて前記一対の保持体を離反させる第3処理と、前記一対の保持体から前記扁平チューブ用フィンが前記フィン受け部に受け渡された後、前記第1移動機構および前記第2移動機構を同期させた状態でそれぞれ作動させることにより前記扁平チューブ用フィンを積層させた状態の前記フィン受け部および前記スタックピン保持体を、前記フィン受け部と前記スタックピン保持体との位置関係を維持した状態で前記スタックピンの先端が前記一対の保持体からの前記扁平チューブ用フィンの受け渡し高さ位置よりも下側位置になるまで下降させる第4処理と、前記第1移動機構を作動させて、前記フィン受け部を予め設定した高さで下降させる第5処理と、をそれぞれ実行することを特徴としている。
【0014】
この構成を採用することにより、扁平チューブ用フィンを積層させた状態におけるスタックピン保持体とフィン受け部を互いの位置関係を維持した状態で同期させた状態で上下動させることができ、切り欠き部とスタックピンとの間に作用する摩擦力を最小限にすることができる。よって、スタックピンと切り欠き部との摩擦による切り欠き部の変形が防止され、形状寸法精度が高い状態で扁平チューブ用フィンの積層を確実且つ効率的に行うことができる。
【0015】
また、前記予め設定した高さは、前記所定寸法に切断された前記扁平チューブ用フィンの厚さ寸法であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、扁平チューブ用フィンを連続的に積層させる際において、フィン受け部が単独で移動する距離を最小限にすることができ、切り欠き部とスタックピンとの間に作用する摩擦力を最小限に抑え、扁平チューブ用フィンの変形を防止することができる。
【0017】
また、前記動作制御部は、前記第5処理を実行した以降に、前記保持体接離動機構を作動させて前記一対の保持体を前記保持可能位置に戻す第6処理を実行することが好ましく、さらに、前記第6処理を実行した後、前記第2処理に戻り、前記第2処理乃至前記第6処理を予め設定した回数にわたり繰り返し実行することがより好ましい。
【0018】
これらの構成によれば、スタック装置に扁平チューブ用フィンを積層させる処理を連続して行うことができる。
【0019】
また、前記動作制御部は、前記スタックピンに挿通されて積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンを上昇させて、積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンのうち最上部の前記扁平チューブ用フィンの上面を前記一対の保持体の下面に当接させ、積層された複数枚の前記扁平チューブ用フィンを整列させるように少なくとも前記第1移動機構を作動させる第7処理を実行することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、フィン受け部に積層されている扁平チューブ用フィンが若干傾斜していたりして積層の状態が好ましく無い状態であっても、フィン受け部と保持装置との間で積層されている扁平チューブ用フィンの上面と下面とを押さえることで綺麗に整列した積層状態にすることができる。
【0021】
さらに、前記スタックピンの上端高さ位置は、前記カットオフ装置側から離れるにつれて徐々に低くなるように形成されていることを特徴としてもよい。
【0022】
この構成によっても、カットオフ装置から送り出された製品幅の金属帯状体に対して、位置ずれの少ないカットオフ装置側の切り欠き部からスタックピンが挿通されることになる。すなわち最初のスタックピンがカットオフ装置側の切り欠き部に挿通することにより、製品幅の金属帯状体の移送方向先端側部分の位置を補正することができ、すべての切り欠き部に対して確実にスタックピンを挿通させることができる。
【0023】
さらに、前記スタック装置は、前記製品幅の金属帯状体の側面位置から所要間隔をあけて、または、前記製品幅の金属帯状体の側面位置に当接して設けられ、前記製品幅の金属帯状体の幅方向のズレを規制するために上下方向に移動可能な規制ピンを有することを特徴としてもよい。
【0024】
この構成によれば、製品幅の金属帯状体の幅方向のズレを規制し、そして切断された後も扁平チューブ用フィンの幅方向のズレを規制するので、幅方向へのズレがないように積層させることが可能である。
【0025】
さらに、前記保持装置には、前記保持装置に向って上昇してくる前記規制ピンとの干渉を防ぐための規制ピン回避部が設けられていることを特徴としてもよい。
【0026】
この構成によれば、規制ピン回避部を通過して規制ピンが上下方向に移動可能となる。
【0027】
さらに、前記規制ピンの上下方向への動作は、前記スタックピンの上下方向への動作に同期していることを特徴としてもよい。
【0028】
この構成によれば、より確実にスタックピンを切り欠き部に対して直交する方向に挿通させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、扁平チューブ用フィンの積層時におけるスタックピンによる切り欠き部の変形を防止すると共に、スタック装置への効率的な扁平チューブ用フィンの積層を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る扁平チューブ用フィンの製造装置の概略の全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の金型装置によって加工された金属帯状体の平面図である。
【
図4】
図3を搬送方向正面からみた場合の正面図である。
【
図6】フィン受け部に扁平チューブ用フィンを積層させた状態における平面図である。
【
図7】扁平チューブ用フィンをスタックする際における規制ピンの動きを示す説明図である。
【
図8】1枚目の扁平チューブ用フィンをスタックする際の当初位置におけるスタック装置の状態を示す側面図である。
【
図9】1枚目の扁平チューブ用フィンをスタックする際の積層開始基準高さ位置におけるスタック装置の状態を示す側面図である。
【
図10】1枚目の扁平チューブ用フィンをスタックする際の受け取り高さ位置におけるスタック装置の状態を示す側面図である。
【
図11】1枚目の扁平チューブ用フィンをスタックする際の退避高さ位置におけるスタック装置の状態を示す側面図である。
【
図12】1枚目の扁平チューブ用フィンのスタック後においてフィン受け部を下降させた際におけるスタック装置の状態を示す側面図である。
【
図13】複数枚の扁平チューブ用フィンをスタックした状態で最上面の扁平チューブ用フィンを一対の保持体に当接させている状態を示す搬送方向正面図である。
【
図14】従来の熱交換器用フィンの製造装置の概略の全体構成を示す側面図である。
【
図15】扁平チューブ用フィンの平面図(A)と扁平チューブ用フィンの正面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態における熱交換器用の扁平チューブ用フィン(以下、単に扁平チューブ用フィンという)の製造装置100の全体構成を
図1に示す。本実施形態における扁平チューブ用フィンの製造装置100はフィン成形部100Aとスタック部100Bに大別することができる。フィン成形部100Aは、材料供給部47、プレス装置48、送り装置50、列間スリット装置52、カットオフ装置60を有している。スタック部100Bは、保持装置70とスタック装置80とを具備している。
【0032】
本実施形態における扁平チューブ用フィンの製造装置100における各構成の動作制御は、記憶部に予め記憶されている動作制御プログラムと、動作制御プログラムに基づいて作動するCPUとを少なくも有する動作制御部90により行われている。このような動作制御部90は扁平チューブ用フィンの製造装置100に内蔵させる形態の他、扁平チューブ用フィンの製造装置100とは別体に設けたパーソナルコンピュータ等により実現することができる。
【0033】
フィン成形部100Aにおける材料供給部47は、アンコイラー40とループコントローラ42とNCフィーダ44を有している。扁平チューブ用フィン30の材料であるアルミニウム等の未加工の金属製の薄板41は、アンコイラー40にコイル状に巻回されている。アンコイラー40から引き出された薄板41は、ループコントローラ42内に挿入され、間欠送りされる薄板41のばたつきがループコントローラ42によって抑えられる。ループコントローラ42の下流側には、NCフィーダ44が設けられている。NCフィーダ44は、薄板41の上面と下面とに接触する2つのローラから構成されており、2つのローラが回転駆動することにより、薄板41を互いに挟み込んで薄板41を間欠送りする。NCフィーダ44の下流側には、金型装置46が内部に配置されたプレス装置48が設けられている。プレス装置48において、薄板41が金型装置46によって所定の形状の金属帯状体49に形成される。
【0034】
プレス装置48において形成された金属帯状体49を
図2に示す。
図2に示されている金属帯状体49は、搬送方向である矢印Aに直交する製品幅方向に4つの製品が並んで形成されている。金属帯状体49から得られる具体的な製品については、
図15に示しているように、扁平チューブ32が挿入される切り欠き部34が複数箇所に形成されており、切り欠き部34と切り欠き部34との間には、ルーバー35を有する板状部36が形成されている。また、ルーバー35の幅方向の両端部側には、金属製の薄板が切り起こされて形成された開口部37が形成されている。1つのルーバー35に対する2つの開口部37,37のうち、一方側の開口部37は、板状部36の先端部側に形成されている。
【0035】
切り欠き部34は、扁平チューブ用フィン30の幅方向の一方側からのみ形成されている。したがって、切り欠き部34と切り欠き部34との間の複数の板状部36は、長手方向に沿って連続して伸びる連結部38によって連結されている。上記の1つのルーバー35に対する2つの開口部37,37のうち、他方側の開口部37は、この連結部38上に形成されている。
【0036】
図2に示す金属帯状体49は、2つの製品が、互いの切り欠き部34の開口側を隣接させるように対峙させて配置されている組が、2組形成されている。すなわち、2つの製品の切り欠き部34の開口側が対峙して配置された組が、互いの連結部38どうしを隣接させた状態で配置されている。このように、4つの製品を相対するように配置することによって、金型の左右の荷重バランスが良くなる。
【0037】
なお、
図2のような金属帯状体と異なり、複数の製品の切り欠き部34が全て一方の方向に開口側を向けるようにして配置してしまうと、各製品を切り離す列間スリット装置52(後述する)によって各製品間を切り離す際に、切り欠き部34とそうでない部位との間で、切断位置のずれによる切断片(ヒゲ:切断不良)が生じてしまう可能性が高い。したがって、複数の製品の切り欠き部34の開口側が全て一方方向に向いて配置させる場合には、切り欠き部34の開口部の境目ではなく、連結部38部分に進入した位置まで切り欠き部34の開口部分を若干広げ、切断させる必要が出てくる。しかし、この場合だと断面に段差が生じると共に、また金型の左右の荷重バランスが悪くなる。したがって、
図2に示したような配置で複数の製品を製造することが好ましい。
【0038】
扁平チューブ用フィンの製造装置100の全体構成の説明に戻る。
図1に示すようにプレス装置48内の金型装置46で形成された金属帯状体49は、プレス装置48の下流側に設けられている送り装置50によって間欠的に搬送方向に送られる。送り装置50の送りタイミングは、動作制御部90によりNCフィーダ44と連動して動作するようになっており、安定した間欠送りを可能とする。
【0039】
送り装置50は、水平方向に移動可能な往復動ユニット51が、動作制御部90によって初期位置と移送位置との間を往復動するよう動作が制御されていて、プレス装置48から金属帯状体49を牽引する。往復動ユニット51の上面には、送りピン55が上方に突出して配置されており、送りピン55が金属帯状体49に形成された切り欠き部34又は開口部37内に下方から進入し、送りピン55が牽引することで金属帯状体49は移送位置まで移動する。
【0040】
送り装置50の下流側には、列間スリット装置52が設けられている。列間スリット装置52は、金属帯状体49の上面側に配置された上刃53と、金属帯状体49の下面側に配置された下刃54とを有する。列間スリット装置52は、プレス装置48の上下動動作を利用して動作するように設けるとよい。また、動作制御部90により図示しない列間スリット装置52の駆動機構の動作を制御することで列間スリット装置52の操作制御することもできる。上刃53および下刃54は金属帯状体49の搬送方向に沿って長尺に形成されており、間欠送りされる金属帯状体49を噛み合わせた上刃53と下刃54とで所定幅で切断し、搬送方向に長い帯状の製品(以下、製品幅の金属帯状体49’と称する場合がある)を製造する。
【0041】
列間スリット装置52によって所定幅(製品幅)に切断され、複数本整列した状態の製品幅の金属帯状体49’は、それぞれが別体に設けられたカットオフ装置60内に送り込まれる。なお、カットオフ装置60に送り込まれる前に、複数本の製品幅の金属帯状体49’は、隣り合う製品幅の金属帯状体49’どうしの間を所定間隔あけるように配置される。また、カットオフ装置60に送り込まれる前には、複数本の製品幅の金属帯状体49’は、カットオフ装置60による1回の送り長さよりも長い長さを一時的に溜めるため、下方に撓ませるようにしてバッファ部分Bを形成している。
【0042】
カットオフ装置60内には、搬送方向に各製品幅の金属帯状体49’を間欠的に搬送する送り装置62が設けられている。送り装置62の構造としては、プレス装置48の下流側に設けられている送り装置50の構造よりも、1回の送り長さが長くすることができるような構成となっている。送り装置62もまた動作制御部90により動作が制御されていて、水平方向に移動可能な搬送ユニット64が、所定距離移動することにより製品幅の金属帯状体49’をプレス装置48側から牽引し、カットオフ装置60の下流側に押し出している。搬送ユニット64の上面には、製品幅の金属帯状体49’の数だけ水平方向に並んだ複数列の送りピン65が列状に上方に突出して配置されている。送りピン65がそれぞれの製品幅の金属帯状体49’に形成された切り欠き部34又は開口部37内に下方から進入し、送りピン65が牽引することでそれぞれの製品幅の金属帯状体49’が移送位置まで移動される。
【0043】
カットオフ装置60内において、送り装置62の下流側には切断装置66が設けられている。切断装置66は動作制御部90により動作が制御されていて、各々の製品幅の金属帯状体49’を所定寸法(所定長さ)に切断することにより、扁平チューブ用フィン30を形成する。切断装置66は、各製品幅の金属帯状体49’の上面側に配置された上刃68と、各製品幅の金属帯状体49’の下面側に配置された下刃69とを有する。上刃68と下刃69とが型閉じすることによって、各製品幅の金属帯状体49’が搬送方向に沿って所定長さに切断され、扁平チューブ用フィン30が製造される。
【0044】
カットオフ装置60の下流側には、スタック部100Bとしての保持装置70と、製造された扁平チューブ用フィン30を板厚方向(上下方向)に積層するスタック装置80とが設けられている。なお、
図3には、
図1の保持装置とスタック装置をさらに拡大して詳細にしたところを示している。
図4は、
図3を搬送方向下流側からみた正面図を示している。
図5は、スタック装置の一部でフィン受け部の平面図である。
図6は、フィン受け部に扁平チューブ用フィンを積層させた状態における平面図である。
図7は、扁平チューブ用フィンをスタックする際における規制ピンの動きを示す説明図である。
【0045】
保持装置70は、カットオフ装置60の下流側から搬送方向に出てきた製品幅の金属帯状体49’を、搬送方向にスライド可能に支持している。具体的には、保持装置70は、カットオフ装置60から出てきた製品幅の金属帯状体49’の幅方向端部を載置できるように、製品幅の金属帯状体49’の幅方向両側に配置された、一対の保持体71,71を有している。各保持体71,71は、製品幅の金属帯状体49’の長手方向(搬送方向)に直交する方向における断面形状がコの字状に形成されている。すなわち、各保持体71,71を搬送方向から見ると、
図4に示すように、互いに幅方向外側に凹む凹部74が互いに対向するように形成されている。このような保持装置70は、まだ切断される前の製品幅の金属帯状体49’の時点から、切断装置66によって所定長さに切断されて扁平チューブ用フィン30に形成された後も保持状態を維持することができる。
【0046】
また、各保持体71,71は、製品幅の金属帯状体49’の側方位置と、製品幅の金属帯状体49’を保持する保持位置との間で互いに水平方向に接離動可能(移動可能)に設けられている。各保持体71,71を接離動させるための保持体接離動機構として、後述する動作制御部90により動作が制御される流体シリンダ72が設けられている(
図1以外の図面においては流体シリンダ72の表示を省略する)。
【0047】
スタック装置80は、複数本のスタックピンとしてのスタックブレード81(
図3では5本)が立設された平板状のスタックピン保持体82と、スタックブレード81に挿通された複数枚の扁平チューブ用フィン30のうち最下部の扁平チューブ用フィン30の下面に当接する平板状のフィン受け部83とを有している。
【0048】
本実施形態におけるスタックブレード81は、扁平チューブ用フィン30の切り欠き部34に挿通可能な大きさであって、具体的には切り欠き部34の形状に合わせて製品の幅方向に長辺が形成され、これに直交する短辺を有する略L字形状である。また、スタックブレード81の先端部は尖鋭に形成されていてもよいし、先端部が丸められた形状に形成されていてもよい。
【0049】
また、
図5に示すように本実施形態におけるフィン受け部83は、扁平チューブ用フィン30を積層させるために上面が平坦な長方形板体により形成されている。フィン受け部83にはスタックブレード81および規制ピン94を挿通させるための通過孔93および規制ピン回避部96がスタックブレード81および規制ピン94の平面位置に対応する位置に穿設されている。一方、スタックピン保持体82もフィン受け部83と同様に上面が平端面に形成されている。
【0050】
また、
図6および
図7には、規制ピン94が設けられているところを示している(他の図面では省略されている)。規制ピン94は、製品幅の金属帯状体49’の移送方向におけるスタックブレード81の立設位置と同じ位置であって、かつ、製品幅の金属帯状体49’の連結部38の側端縁(側面位置)から所要間隔をあけて、または、連結部38の側端縁に当接する位置に立設されている。すなわち、スタックブレード81と規制ピン94によって、製品幅の金属帯状体49’の連結部38を幅方向で挟み込むような位置に規制ピン94が配置される。規制ピン94は、スタックブレード81と同じく、スタックピン保持体82の上面に立設されている。また、規制ピン94は、対応するスタックブレード81の長さよりも長く形成されている。なお、規制ピン94は、図面を簡略化するため
図6および
図7のみに示しており、他の図面においては規制ピン94の表示を省略している。
【0051】
このような規制ピン94を立設した場合、保持体71には規制ピン94との干渉を回避するための規制ピン回避部96が形成される。規制ピン回避部96は、
図6に示すように、対向した状態で配設された保持体71のうちの一方において、対向面側の端縁の一部を製品幅の金属帯状体49’の移送方向と直交する方向(幅方向)に切り欠いた凹状の切り欠き部とすることができる。
【0052】
このようにスタックピン保持体82の上面にスタックブレード81と規制ピン94を立設すれば、製品幅の金属帯状体49’がカットオフ処理されて扁平チューブ用フィン30に個片化された後、次のような作用をなす。
【0053】
すなわち、規制ピン94は、スタックピン保持体82の昇降動作に伴ってスタック装置80の上方位置に設けられた規制ピンガイド97の貫通孔98に挿抜されることになる。なお、スタック装置80の昇降動作時における規制ピン94は、常に規制ピンガイド97の貫通孔98内に進入している状態が維持され、製品幅の金属帯状体49’および扁平チューブ用フィン30が一対の保持体71の内部空間において幅方向にズレることなく位置決めされた状態が維持される。ここで、規制ピンガイド97は、同じくスタック装置80の上方位置に設けられた取付プレート99により吊り下げ保持されている。なお、取付プレート99はベースBに取り付けられている。また、ベースBには一対の保持体71を接離動させるためのいわゆるリニアガイドと称される直動用ガイド(図示はせず)が内蔵されている。
【0054】
また、扁平チューブ用フィン30をスタック装置80に積層させる際には、スタックブレード81と規制ピン94が扁平チューブ用フィン30の側面位置に当接または当接寸前の状態にすることができる。すなわち、スタックブレード81と規制ピン94とにより扁平チューブ用フィン30が幅方向で挟み込まれる状態になり、扁平チューブ用フィン30の幅方向の動きを規制することができる。よって、扁平チューブ用フィン30はスタックピン保持体82に対してより整然とした状態で積層させることが可能になる。
【0055】
本実施形態におけるスタックピン保持体82は、ベースとしてのパレット82Aと、スタックブレード81を保持するためのスペーサ82Bが固定されたマガジン82Cとを有し、スタックブレード81を起立させた状態で保持させたスペーサ82Bはマガジン82Cを介してパレット82Aに取り付けられている。このようなスタック装置80におけるフィン受け部83とスタックピン保持体82は、それぞれ独立してスタックブレード81の立設方向に沿って第1移動機構84および第2移動機構85によって上下方向に移動可能になっている。
【0056】
また、
図8に示すように、本実施形態においてフィン受け部83を移動させる第1移動機構84は、第1サーボモータ84A、第1ボールねじ84B、第1タイミングベルト84C、昇降プレート84Dを有している。第1ボールねじ84Bはスタックブレード81の立設方向と平行に設けられている。第1タイミングベルト84Cは、第1サーボモータ84Aの出力軸84Eに取り付けられた第1タイミングプーリー84Fと、第1ボールねじ84Bの一端部に取り付けられた第1従動タイミングプーリー84Gとの間に掛け渡されている。昇降プレート84Dは第1ボールねじ84Bに螺合させた状態で取り付けられていて、フィン受け部83を支持することが可能に設けられている。昇降プレート84Dは第1ボールねじ84Bの回転方向に応じて第1ボールねじ84Bの軸線方向に沿って(スタックブレード81の立設方向に沿って)フィン受け部83を支持した状態で上下方向に移動可能になっている。
【0057】
本実施形態においては、以上に説明した第1移動機構84をフィン受け部83の長手方向(製品幅の金属帯状体49’の搬送方向)における両端部のそれぞれに対して設けている。また、フィン受け部83を昇降させる際においてフィン受け部83の上面が水平を維持するよう、動作制御部90により互いの第1移動機構84の動作が同期するよう制御されている。
【0058】
また、本実施形態においてスタックピン保持体82を移動させる第2移動機構85は、第2サーボモータ85A、第2ボールねじ85B、第2タイミングベルト85C、昇降台85Dを有している。第2ボールねじ85Bはスタックピン保持体82の下側位置においてスタックブレード81の立設方向と平行に設けられている。第2タイミングベルト85Cは、第2サーボモータ85Aの出力軸85Eに取り付けられた第2タイミングプーリー85Fと第2ボールねじ85Bの一端部に取り付けられた第2従動タイミングムーリー85Gとの間に掛け渡されている。昇降台85Dは横方向端部が第2ボールねじ85Bにそれぞれ螺合させた状態で取り付けられていて、上方向端部がスタックピン保持体82に取り付けられている。昇降台85Dは第2ボールねじ85Bの回転方向に応じて第2ボールねじ85Bの軸線方向に沿って(スタックブレード81の立設方向に沿って)スタックピン保持体82を上下方向に移動させることが可能である。第2移動機構85は第1移動機構84の動作とは独立および同期させた状態で作動するよう動作制御部90により動作が制御されている。なお、第2移動機構85と第1移動機構84の動作を同期させる際には、互いの位置関係を維持した状態(相対位置が維持された状態)となるようにそれぞれの動作が動作制御部90により制御されることになる。
【0059】
続けて本実施形態における扁平チューブ用フィンの製造装置100において特徴的な動作である保持装置70とスタック装置80の動作について詳細に説明する。
図8に示すように、スタック装置80が待機位置にあるときは、フィン受け部83とスタックピン保持体82は保持装置70の接離動動作の邪魔にならないよう保持装置70の下方位置に位置している。スタック装置に扁平チューブ用フィン30をスタックさせるための動作が開始すると、動作制御部90が第1移動機構84のみを作動させる。具体的には、第1サーボモータ84Aを駆動させて第1タイミングベルト84Cを介して第1ボールねじ84Bを回転させ、
図9に示すように、昇降プレート84Dをフィン受け部83に当接させてフィン受け部83を第1ボールねじ84Bに沿って積層開始基準高さ位置まで上昇させる(第1処理)。なお、
図7~
図10内における一点鎖線は製品幅の金属帯状体49’のパスライン(一対の保持体71から扁平チューブ用フィン30をフィン受け部83に受け渡しする高さ位置)である。
【0060】
次に動作制御部90は、流体シリンダ72を作動させ、一対の保持体71の凹部74どうしを互いに接近させ、互いの凹部74によって、カットオフ装置60の送り装置62から送り出された製品幅の金属帯状体49’の幅方向両端部および底面を保持可能な状態(保持可能位置)にする処理を実行する。これにより製品幅の金属帯状体49’は一対の保持体71における互いの凹部74によって形成されたガイド空間により、搬送方向がガイドされた状態にすることができる。一対の保持体71によるガイド空間に所定長さの製品幅の金属帯状体49’が送り込まれると、動作制御部90はカットオフ装置60の送り装置62の動作を一時停止させる処理を実行する。
【0061】
次に動作制御部90は、
図10に示すように、第1移動機構84と第2移動機構85とを互いの位置関係を維持させた状態となるように同期させた状態で作動させる。これにより、フィン受け部83とスタックピン保持体82は、スタックブレード81が一対の保持体71により保持されている製品幅の金属帯状体49’の切り欠き部34を貫通する高さ(扁平チューブ用フィン30の受け取り高さ位置)まで上昇する(第2処理)。なお、本実施形態における5本のスタックブレード81の上端高さ(長さ)は、搬送方向に進むにしたがって徐々に低くなるように(すなわち、5本のスタックブレード81の上端の高さ位置は、カットオフ装置60から離れるにつれて徐々に低くなるように)形成されている。このようなスタックブレード81を採用することで、スタックピン保持体82が上昇すると、カットオフ装置60から送り出された製品幅の金属帯状体49’に対して、カットオフ装置60側の切り欠き部34から順にスタックブレード81を挿通させることができる。
【0062】
カットオフ装置60側における製品幅の金属帯状体49’の送り出し位置は、設計上の送り出し位置にきわめて近接した位置または一致しているから、スタックブレード81を製品幅の金属帯状体49’の切り欠き部34に挿通させる際における位置ズレの心配がない。そして、スタックブレード81をカットオフ装置60側から挿通させることにより、製品幅の金属帯状体49’の移送方向の下流側先端縁の位置も設計位置となるように修正することができる。したがって、製品幅の金属帯状体49’のすべての切り欠き部34に対するスタックブレード81の挿通位置のズレが防止され、スタックブレード81による製品幅の金属帯状体49’の破損を防止することができる。なお、スタックブレード81の長さ(高さ)はすべて等しくすることももちろん可能である。
【0063】
次に動作制御部90は、一対の保持体71により保持され、切り欠き部34にスタックブレード81が挿通された状態の製品幅の金属帯状体49’をカットオフ装置60によって所定長さに切り分けて扁平チューブ用フィン30にする処理(カットオフ処理)を実行する。このように製品幅の金属帯状体49’を切断処理する際は、スタックブレード81が切り欠き部34に挿通し、製品幅の金属帯状体49’が保持されているので、カットオフ装置60によるカットオフ処理の際における製品幅の金属帯状体49’のばたつきを抑えることができる。切断装置66により個片化された扁平チューブ用フィン30は、個片化される前と同様にスタックブレード81が切り欠き部34に挿通した状態で各保持体71に保持されている。
【0064】
次に動作制御部90は、流体シリンダ72を作動させて、一対の保持体71を扁平チューブ用フィン30の幅方向における側方に離反させる処理(第3処理)を実行する。それぞれの保持体71が水平移動して扁平チューブ用フィン30の保持を解除したことによって、扁平チューブ用フィン30は切り欠き部34に挿通しているスタックブレード81に沿ってフィン受け部83の上に落下する。このとき、フィン受け部83の上面と保持体71の扁平チューブ用フィン30の保持面(凹部74の内底面)との距離はごくわずかであるため、落下距離が短くて済み、扁平チューブ用フィン30をフィン受け部83の上に整然と積層させる(受け取らせる)ことができる。
【0065】
次に動作制御部90は、一対の保持体71を保持可能位置にする際の妨げにならないように第1移動機構84と第2移動機構85の位置関係(相対位置関係)を維持するよう同期させた状態で作動させ、
図11に示すようにフィン受け部83とスタックピン保持体82を退避高さ位置まで下降させる処理(第4処理)を実行する。このとき、フィン受け部83とスタックピン保持体82の退避高さ位置は、スタックブレード81の上端が製品幅の金属帯状体49’のパスライン(一対の保持体71から扁平チューブ用フィン30をフィン受け部83に受け渡しする高さ位置)よりも下側に設定されている。このような第4処理を実行することで、フィン受け部83に載置(積層)された状態の扁平チューブ用フィン30は、スタックブレード81と切り欠き部34との摩擦を生じさせることなくフィン受け部83とスタックピン保持体82と共に製品幅の金属帯状体49’(扁平チューブ用フィン30)の搬送の妨げにならない所定高さ位置に退避させることができる。
【0066】
次に動作制御部90は、第1移動機構84のみを作動させ、
図12に示すように、扁平チューブ用フィン30が載置されたフィン受け部83のみを予め設定した高さ(ここでは扁平チューブ用フィン30の板厚寸法に相当する高さ)で下降させる処理(第5処理)を実行する。このように扁平チューブ用フィン30の板厚寸法に相当する高さでフィン受け部83のみを下降させることにより、次の扁平チューブ用フィン30を積層させる際における最上面の扁平チューブ用フィン30の上面高さ位置を、1枚目の扁平チューブ用フィン30を受け取る際のフィン受け部83の上面高さに一致させることができる。
【0067】
動作制御部90は、第5処理を実行した後、流体リンダ72を作動させ、一対の保持体71を保持可能位置に戻す処理(第6処理)を実行する。また、動作制御部90は、第6処理と同時またはその前後において図示しない記憶部に予め記憶させてある扁平チューブ用フィン30の積層枚数のカウンタ値(扁平チューブ用フィン30の積層開始時に数値を0にリセットしてある)に1を加える処理を行う。次に動作制御部90は同じく図示しない記憶部に予め記憶させてある比較対象値と積層枚数のカウンタ値との比較を行う処理(積層数確認処理)を実行する。比較対象値>積層枚数のカウンタ値のときは、動作制御部90は第2処理に戻る処理を実行し、積層数確認処理までを繰り返し実行する。
【0068】
動作制御部90は積層数確認処理において、比較対象値=積層枚数のカウンタ値になったときは、図示しないスタック装置移動機構により扁平チューブ用フィン30の積層体、フィン受け部83、スタックピン保持体82を積層体引き渡し位置に移動させる処理(積層体取り出し用移動処理)を実行する。次に動作制御部90は、図示しない積層体取り出し装置により扁平チューブ用フィン30の積層体をスタック装置80から取り出す処理(積層体取り出し処理)を実行する。次に動作制御部90は、記憶部の積層枚数のカウンタ値を0にリセットした後、スタック装置移動機構を作動させてスタック装置80を元の位置に戻す処理または別体のフィン受け部83、スタックピン保持体82を取り付ける(スタック装置復帰処理)を実行する。
【0069】
次に動作制御部90は、第1移動機構84を作動させ、フィン受け部83を積層開始基準高さ位置まで上昇させる処理(第1処理)を実行し、続けて一対の保持体71を保持可能位置にセットする処理および第2処理以降の処理を上記説明と同様にして繰り返し実行する。
【0070】
本実施形態における扁平チューブ用フィンの製造装置100の構成によれば、保持装置70における一対の保持体71の接離動動作の妨げにならないように扁平チューブ用フィン30を積層させた状態のスタック装置80を退避させる際、扁平チューブ用フィン30を一枚積層させる毎にスタックブレード81と切り欠き部34との摩擦が生じる回数を1回のみにすることができる。従来においては、待機位置から受け取り高さ位置への上昇時、受け取り高さ位置から待機位置までの下降時、フィン受け部をフィン一枚分下降時の3回にわたってスタックブレード81と切り欠き部34との間に摩擦力が作用していたので、この摩擦力の作用回数(スタックブレード81と切り欠き部34との累積摩擦距離)を3分の1にすることができる。これにより、扁平チューブ用フィン30のスタック装置80への積層時における切り欠き部34の変形や傷の発生を防止することができる。
【0071】
また、
図13に示すように、動作制御部90が第1移動機構84を駆動させることによってフィン受け部83を上昇させ、積層された扁平チューブ用フィン30の最上部に位置する扁平チューブ用フィン30の上面を、各保持体71の下面に当接させる処理(積層整列処理;第7処理)を行うようにしても良い。このような動作により、フィン受け部83に積層されている扁平チューブ用フィン30が若干傾斜して積層の状態が好ましく無い状態であっても、フィン受け部83と各保持体71との間で、積層されている扁平チューブ用フィン30の上面と下面とを押さえることとなり、綺麗に整列した積層状態にすることができる。
【0072】
そして、積層された扁平チューブ用フィン30の上面を保持体71の下面に当接させた後、動作制御部90が第1移動機構84を作動させ、フィン受け部83を下降させる。フィン受け部83を下降させる位置は、次の扁平チューブ用フィン30が受け渡される位置である。
【0073】
なお、上述してきた一連の動作をスタック装置80に積層された扁平チューブ用フィン30の数が、所定数になるまで繰り返し実行された後、スタックブレード81が切り欠き部34に挿通されたままの状態で次の工程へ移行させてもよい。扁平チューブ用フィン30の積層を再開する際には、複数本のスタックブレード81が立設された空のスタックピン保持体82をパレットに装着することで行える。
【0074】
なお、上述した実施形態では、未加工の金属製の薄板41には、幅方向に複数の扁平チューブ用フィン30を並列して製造するために列間スリット装置52を有する形態について説明した。しかし、細長帯状体に形成された金属製の薄板41を用い、薄板41の幅方向において扁平チューブ用フィン30を1個取りする場合には列間スリット装置52の構成は省略することもできる。また、以上に説明した実施形態と同様に薄板41の幅方向に複数の扁平チューブ用フィン30を同時に製造する際には、金型の左右バランスを維持するためになるべく偶数個の扁平チューブ用フィン30を1枚の薄板の幅方向内に配置し、切り欠き部34どうしが向かい合うような組を設けることが好ましい。
【0075】
さらに、上述した実施形態においては、断面形状がコの字型に形成されている保持体71について説明しているが、保持体71は少なくとも幅方向外側に凹む凹部74として底面と側面を有する形態であればよく、具体的には断面L字型や断面C字型に形成された保持体71の構成を採用してもよい。
【0076】
さらに上述した保持体71は、金属帯状体49の送り出し方向に連続した形態について説明しているが、扁平チューブ用フィン30の長さ方向に沿って所要長さに形成された複数の保持体71を所定の間隔をあけた状態で配設した形態としてもよい。保持体71どうしの配設間隔部分にスタックブレード81および規制ピン94が進入するように配置すれば、規制ピン94を保持体71に干渉させないようにできる。
【0077】
また、以上の実施形態においては、保持体71の接離動手段として流体シリンダ72を採用しているが、保持体71を移動させることさえできれば特に流体シリンダ72の構成に限定するものではない。さらに、第1移動機構84および第2移動機構85としてサーボモータとサーボモータの出力軸にタイミングプーリーおよびタイミングベルトを介して連結されたボールネジを採用した形態について説明した。しかし、第1移動機構84および第2移動機構85についても上述した形態の構成に限定されるものではない。
【0078】
また、本明細書中で説明した各種の変形例を適宜組み合わせた扁平チューブ用フィンの製造装置100の形態を採用することも可能である。