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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】マスク用の耳掛け紐、及びマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220117BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220117BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/08 C
A62B18/02 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021131110
(22)【出願日】2021-08-11
【審査請求日】2021-08-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521147396
【氏名又は名称】児玉 健太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100142158
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 啓
(72)【発明者】
【氏名】児玉 健太朗
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特許第6864399(JP,B2)
【文献】特開2006-223792(JP,A)
【文献】特開2020-014312(JP,A)
【文献】特開2013-172939(JP,A)
【文献】中国実用新案第2704338(CN,Y)
【文献】登録実用新案第3170873(JP,U)
【文献】特開2016-123737(JP,A)
【文献】特開2019-094601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/08
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク本体の左右に備えられるマスク用の耳掛け紐であって、
前記マスク本体に対し重ね合わせるように着用するマスクに備える紐部を配置することが可能な配置部を、備え、
前記耳掛け紐は、第1耳掛け紐部と第2耳掛け紐部を有し、
前記第1耳掛け紐部は、前記耳掛け紐の一端から他端にかけて延伸して形成され、
前記第2耳掛け紐部は、前記耳掛け紐の前記一端から前記他端に向かって所定の距離進んだ位置である第1の位置と、前記耳掛け紐の前記他端から前記一端に向けて所定の距離進んだ位置である第2の位置の間に延伸して形成され、
前記第1耳掛け紐部の第1の面と前記第2耳掛け紐部の第2の面とは、それぞれ接触しないように対向して構成され、
前記配置部は、前記第1の面と前記第2の面とが対向している位置に形成されることを特徴とするマスク用の耳掛け紐。
【請求項2】
前記配置部の断面形状は、V字形状であることを特徴とする請求項1に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項3】
前記耳掛け紐の断面形状は、略矩形状または略円形状の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項4】
前記第1耳掛け紐部と前記第2耳掛け紐部とは、一体の生地で形成されることを特徴と請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項5】
前記配置部は、前記第2耳掛け紐部の前記第2の面を前記第1耳掛け紐部の前記第1の面側に折り返すことで形成されることを特徴とする請求項に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項6】
前記配置部は、少なくとも前記耳掛け紐が着用者の耳に接触する位置に形成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項7】
前記第2耳掛け紐部は、前記耳掛け紐の一端から他端にかけて延伸して形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項8】
前記配置部の断面形状は、U字形状、r字形状、C字形状の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のマスク用の耳掛け紐。
【請求項9】
マスク本体の左右に備えられるマスク用の耳掛け紐であって、
前記耳掛け紐は、断面形状が円形状であり、
前記マスク本体に対し重ね合わせるように着用するマスクに備える紐部を配置することが可能な配置部を、備え、
前記配置部は、所定の深さと幅で形成される溝部を有し、
前記溝部は、前記耳掛け紐の一端から他端に向かって所定の距離進んだ位置である第1の位置と、前記耳掛け紐の前記他端から前記一端に向けて所定の距離進んだ位置である第2の位置の間に延伸して形成されることを特徴とするマスク用の耳掛け紐。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のマスク用の耳掛け紐を備えたことを特徴とするマスク。
【請求項11】
前記マスクまたは前記マスク用の耳掛け紐の少なくともいずれかは、不織布によって構成されることを特徴とする請求項9に記載のマスク。
【請求項12】
前記マスクまたは前記マスク用の耳掛け紐の少なくともいずれかは、ポリウレタンによって構成されることを特徴とする請求項9に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用の耳掛け紐、及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザの感染防止や花粉症対策のため、マスクをかける機会は年々増えてきている。さらに昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため、時期や昼夜を問わずマスクをかける機会が大幅に増加している。このようにマスクの使用は公衆衛生や感染防止のために強く求められている。さらに、現在、新型コロナウイルス感染症について終息に向けた取り組みを実施してはいるが、完全に終息することは困難であると考えられるため、今後もマスクの装着が強く求められていくと考えられる。
【0003】
マスクは、両側面に弾力性ある素材を使用した耳掛け用の紐部(耳掛け紐、マスク紐)を有している。マスクの着用者(ユーザ)は、耳または耳の一部(耳介若しくは耳殻と頭部との間)にこの耳掛け紐をそれぞれ掛けることでマスクを装着することができる。
【0004】
さらに、上記した新型コロナウィルス感染症のためマスクを装着した上にさらにマスクを装着する、いわゆるマスクの重ね付け(二重マスク)を行うユーザも増えている。この二重マスクとした際には、マスクの耳掛け紐も二重に耳に装着することになり、着用者の耳への負担が増加し、耳への装着部位が痛くなったり、痒くなったりして、不快感や違和感を着用者に与える。
【0005】
特許文献1では、マスクの重ね付けをする際、最初に装着するマスク(インナーマスク)の耳掛け紐における耳に掛ける部分(耳掛け部)にシリコン素材を採用して、耳の痛みを軽減するようにしている。そして、このインナーマスクを装着後、重ね付けするマスクを装着してもインナーマスクのシリコン素材で構成される耳掛け部に通常のマスクの耳掛け紐を装着することができる。これにより、マスクを二重に装着しても耳の痛みは従来における通常のマスクの重ね付けより軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6864399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のマスクでは、上記のように耳掛け部にシリコン素材を使用することで、長時間使用したり何かしらの動作の際に、シリコン部分で耳が擦れて不快感や痛みを生じる可能性がある。また、特許文献1のマスクは頬のたるみ改善用のインナーマスクとして機能するものである。そして、通常の不織布等のマスクに比べ、生地として薄くて軽く、通気性があるように構成されているため、このマスク自体をインフルエンザの感染防止や花粉症対策のためのマスクとして使用することが難しい。
【0008】
さらに、例えば、インナーマスク装着後に通常のマスクを装着したとしても、重ね付けするマスクの耳掛け紐は上記のシリコン部分に乗せているため、着用者が日常を送る中での動作で当該耳掛け紐がずれてしまう可能性もある。その結果、耳を擦ることで耳への不快感または痛みが生じてしまうことや、ずれる度に通常のマスク紐を元の位置(シリコン部分)に戻す動作が生じ、煩わしさ生じてしまうと考えられる。また、着用者が日常を送る中での動作で上記のシリコン部分で耳が擦れるまたは圧迫される等の事象が生じ、耳への不快感や痛みが生じてしまうことも考えられる。
【0009】
そこで本発明は、マスクを重ね付けした際の耳掛け紐による耳の痛みや不快感を軽減し、さらに重ね付けした耳掛け紐のずれや外れを防止するマスク用の耳掛け紐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのマスク用の耳掛け紐は、マスク本体の左右に備えられるマスク用の耳掛け紐であって、マスク本体に対し重ね合わせるように着用するマスクに備える紐部を配置することが可能な配置部を、備え、耳掛け紐は、第1耳掛け紐部と第2耳掛け紐部を有し、第1耳掛け紐部は、耳掛け紐の一端から他端にかけて延伸して形成され、第2耳掛け紐部は、耳掛け紐の一端から他端に向かって所定の距離進んだ位置である第1の位置と、耳掛け紐の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置である第2の位置の間に延伸して形成され、第1耳掛け紐部の第1の面と第2耳掛け紐部の第2の面とは、それぞれ接触しないように対向して構成され、配置部は、第1の面と第2の面とが対向している位置に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マスクを重ね付けした際の耳掛け紐による耳の痛みや不快感を軽減し、さらに重ね付けした耳掛け紐のずれや外れを防止するマスク用の耳掛け紐を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係るマスクを示す斜視図である。
図2】実施例1に係るマスクを示す側面図である。
図3】実施例1に係る耳掛け紐を示す図である。
図4】実施例1に係るマスクの耳掛け紐を示す断面図である。
図5】実施例1に係るマスクの耳掛け紐を装着した際の一例の図である。
図6】実施例1に係る耳掛け紐の断面図の一例である。
図7】実施例2に係るマスクを示す斜視図である。
図8】実施例2に係る耳掛け紐の断面図の一例である。
図9】実施例3に係るマスクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例や図を用いて説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化する。なお以下の説明において、内側とは着用者に接触する側をいい、図面中の方向Y1で表す。外側とは内側の反対側をいい、図面中の方向Y2で表す。右とは図面中の方向X1をいい、左とは図面中の方向X2をいう。上とは図面中の方向Z1をいい、下とは図面中の方向Z2をいう。横断方向(径方向)とは、後述する耳掛け紐2の中心軸C1または配置部10の中心軸C2に直交する方向をいい、周方向とは、中心軸Cの周りを周回する方向を意味するものとする。
【0014】
<実施例1>
図1は、実施例1に係るマスク100を示す斜視図である。図2は、実施例1に係るマスク100を示す側面図である。実施例1のマスク100は、図1図2に示すように、着用者の顔面の鼻、口、顎等を覆うマスク本体1と、マスク用であってマスク本体1の左右両端にそれぞれ装着(固定)される耳掛け紐(マスクゴム、マスク紐)2を備えうる。なお、マスク100は、マスク本体1の後面側を着用者の顔面に向けて着用される。
【0015】
マスク本体1は、着用者の顔面の鼻、口、顎等を覆うように構成されるシート部3と、シート部3の上端部付近に取り付けられた鼻部を補強する補強部材4と、識別部5とを含みうる。
【0016】
シート部3は、内側から外側に向かって、第1層、第2層、及び第3層をこの順に備える。したがって実施例1におけるマスク本体1は3層構造により構成される。なお、実施例1では上記のように3層構造としているが、これに限らず、3層以上の多層構造としてマスク本体1を構成してもよい。
【0017】
第1層は、最も内側(着用者に接する側)に配置される不織布(不織布シート)である。第2層は、最も外側に配置される不織布である。第3層は、第1層と第2層との間に配置されるフィルターである。第3層は、第1層または第2層よりも密度が高く形成される。これにより、第3層より密度の低い(柔らかい)第1層と第2層とを第3層が支持することができるため、マスク本体1の形状を維持しやすい。
【0018】
不織布を形成する素材として例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ビニロン、パルプ、生分解性繊維、ガラス繊維のいずれを用いてもよい。また、フィルターを形成する素材として、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成繊維、nm単位の極細繊維のいずれを用いてもよい。また、第1層を形成する不織布には、保湿剤、柔軟剤、抗菌剤等を塗布することも可能である。さらにシート部3に抗菌加工を施すことも可能である。なお、第1層、第2層、及び第3層は、必ずしも全て同じ大きさに形成されなくてもよい。
【0019】
第1層、第2層、及び第3層は、上下及び左右の端部付近において、熱または超音波等によって前後に溶着されている。これにより、シート部3には、上端部付近に上端部接続部3aが、右端部付近に右端部接続部3bが、下端部付近に下端部接続部3cが、左端部付近に左端部接続部3dがそれぞれ形成されている。
【0020】
シート部3の上部には、後述する補強部材4を取り付けるため、補強部材4を囲むように第1層、第2層、及び第3層を熱または超音波等によって溶着した補強部材周辺接続部4aが形成されている。補強部材周辺接続部4aは、正面方向から視認した場合、補強部材4の形状と略一致するように形成されていることが望ましい。しかし、これに限らず、補強部材4の周囲に若干の間隙が存在し、補強部材4を動かすことが可能となるように構成してもよい。
【0021】
また、上記したように上端部接続部3a、右端部接続部3b、下端部接続部3c、及び左端部接続部3dがそれぞれ別に設けられた場合について説明したが、これに限られず、複数の接続部を兼ねる部分が存在していてもよい。例えば、上端部接続部3aが後述する補強部材周辺接続部4aを兼ねるようにしてもよい。また、それぞれの接続部は、前後にシート部3が接続されていればよく、必ずしも熱・超音波等による溶着によって形成されている必要はない。
【0022】
シート部3は、上下方向に折り返される、いわゆるプリーツ加工がされている。これによって、第2層の不織布に、上部プリーツ3gと、中部プリーツ3h、下部プリーツ3iとが形成されている。これらは着用者が展開可能に構成されるため、マスク100の着用時には、これらを上下方向に展開することによって、シート部3が外側に膨出する山型の立体形状となって、着用者の顔面の鼻、口、顎等が覆われるようになっている。
【0023】
上部プリーツ3gは、図1に示すように、シート部3前面の上下方向中央部よりも上部に形成された、上方に凸となる折り目であり、上下方向に展開することができる。実施例1においては、上部プリーツ3gは、シート部3の1か所に備えられている。
【0024】
中部プリーツ3hは、図1に示すように、シート部3前面の上下方向中央部近傍に形成された、下方に凸となる折り目であり、上下方向に展開することができる。実施例1においては、中部プリーツ3hは、シート部3の1か所に備えられている。
【0025】
下部プリーツ3iは、図1に示すように、シート部3前面の上下方向中央部よりも下部に形成された、下方に凸となる折り目であり、上下方向に展開することができる。実施例1においては、下部プリーツ3iは、シート部3の1か所に備えられている。
【0026】
また、上部プリーツ3g、中部プリーツ3h、及び下部プリーツ3iは、これらの配置間隔が全て異なる間隔となるように配置されていることが望ましい。これによって、プリーツごとに配置間隔を変え、適切な位置に配置することが可能となる。なお、配置間隔を等間隔で配置するようにしても構わない。なお、プリーツの配置間隔は、マスク本体1の上端縁からマスク本体1の下端縁と間の間隔を含むものとする。
【0027】
補強部材4は、マスク本体1の上部が着用者の鼻付近の形状に沿って、隙間が生じないようにするためのものであり、シート部3の上端縁に沿って備えられている。実施例1における補強部材4は、左右方向に長い可塑性を有する部材である。また、補強部材4は、シート部3の長手方向であるシート部の横幅(X方向)よりも短く形成され、且つ所定の厚さをする扁平形状(略長方形状)に形成される。
【0028】
補強部材4の材料としては、可塑性を有する任意の材料を使用可能であるが、例えば、塑性変形が容易な金属(アルミ等)や樹脂を用いる。樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いてもよい。補強部材4は、上記した第3層と、着用者側の不繊布との間に配置される。補強部材4は、第1層と第3層の不繊布を、補強部材4の上下及び左右において熱または超音波等を用いて前後に溶着させる。これによって、補強部材4を囲むように形成された補強部材周辺接続部4aによって、シート部3に取り付けられている。補強部材周辺接続部4aは、破線状に形成してもよいし、実線となるように形成してもよい。またこれらを組み合わせて形成してもよい。
【0029】
なお、補強部材4は、マスク本体1の上部に隙間が生じないようにすることが可能であれば、上記した配置位置に限らず、任意の配置及び取り付け方法によってシート部3に取り付けることが可能である。また、補強部材4は、外面側の不織布とフィルターの間に配置して、上記のように取り付けてもよい。また、補強部材4は、扁平形状に限らず、断面形状を円形状となるように形成してもよい。
【0030】
識別部5は、シート部3の外面側に構成されたマークである。実施例1では識別部5のある方を外側として着用者に装着を促せるようにしているが、識別部5をシート部3の内面側に構成するようにしてもよい。
【0031】
耳掛け紐2は、右耳用の耳掛け紐と左耳用の耳掛け紐とを含む。耳掛け紐2は、第1層または第3層と同じ素材で形成される。以下に、耳掛け紐2をマスク本体1に取り付ける方法を説明する。右耳用の掛け紐は、右側において、右耳用の耳掛け紐の一端(一方の端部)をシート部3の右端部の上部に熱・超音波等によって溶着させ、他端(他方の端部)をシート部3の右端部の下部に熱・超音波等によって溶着させることによって形成されている。
【0032】
左耳用の掛け紐は、左側において、左耳用の耳掛け紐の一端をシート部3の左端部の上部に熱・超音波等によって溶着させ、他端をシート部3の左端部の下部に熱・超音波等によって溶着させることによって形成されている。このように耳掛け紐2は、左右共にループ状に構成される。なお、特に言及しない限り以下に説明する実施例1の耳掛け紐2は右耳用の耳掛け紐と左耳用の耳掛け紐ともに同様に構成されうる。
【0033】
図3は、マスク100の耳掛け紐2を示した側面図である。図4は、マスク100の耳掛け紐2を示す断面図である。図4(A)は、図2のA-A’断面を示す図であり、図4(B)は、図2のB-B’断面を示す図である。実施例1における耳掛け紐2の断面形状(中心軸C1またはC2から直交する方向における断面)は、略矩形状に形成される。しかしこれに限らず、図4に示すように当該断面における各隅部にR加工を施し各隅部を円弧状とした略長方形状であってもよいし、略楕円形状や略円形状(丸形状)としてもよい。
【0034】
実施例1における耳掛け紐2は、第1耳掛け紐部2aと、第2耳掛け紐部2bにより構成される。第1耳掛け紐部2aは、耳掛け紐2の一端から他端まで延伸して形成される。第2耳掛け紐部2bは、耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される一端部(第1の位置)11と、耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される他端部(第2の位置)12との間に延伸して形成される。実施例1では、第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bとは1つの部材として一体で形成される。即ち、耳掛け紐2は、1枚の素材(生地)で構成される。
【0035】
一端部11は、上端内側隅部11aと、上端外側隅部11bとを含む。上端内側隅部11aは、シート部3の上部に取り付けられる耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離L1進んだ位置に構成される。上端外側隅部11bは、シート部3の上部に取り付けられる耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離L2進んだ位置に構成される。さらに、上端内側隅部11aから上端外側隅部11bまで角度θ1で斜辺部14が形成される。また、図3に示しているように、L2は角度θ1分、L1より距離が長くなる(L2>L1)ように構成される。
【0036】
他端部12は、下端内側隅部12aと、下端外側隅部12bとを含む。下端内側隅部12aは、シート部3の下部に取り付けられる耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離L3進んだ位置に構成される。下端外側隅部12bはシート部3の下部に取り付けられる耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離L4進んだ位置に構成される。さらに、下端内側隅部12aから下端外側隅部12bまで角度θ1で斜辺部14が形成される。また、図3に示しているように、L4は、角度θ1分、L3よりが距離が長くなる(L4>L3)ように構成される。
【0037】
なお、一端部11及び他端部12のシート部3の端部からの寸法(L1、L2、L3、及びL4の距離)は特に限定していないが、少なくとも耳掛け紐2を着用した際に着用者の耳と重なる位置(耳掛け紐2が着用者の耳と接触する位置)の始点及び終点より一端部11と他端部12がシート部3側(Y2側)となるように形成する。即ち、着用者が耳掛け紐2を着用した際に、着用者の耳に接触する耳掛け紐2の部分はいずれにも第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bとが構成されるように、耳掛け紐2は構成される。
【0038】
また、それぞれの角度θ1は鋭角、鈍角、または直角(90度)のいずれであってもよい。実施例1では角度θ1は20度~60度の範囲が好ましく、30~45度の範囲がより好ましい。また、実施例1では一端部11と他端部12に形成されるそれぞれの斜辺部14を直線で形成しているが、これに限らずそれぞれ円弧状または一方を直線とし他方を円弧状となるように形成してもよい。
【0039】
上記のように直角または直角に近い角度ではなく、30~45度で角度θ1を形成することで、一端部11の上端外側隅部11b及び他端部12の下端外側隅部12bの角における角度が直角に比べて緩やかになる。これにより、一端部11及び他端部12のバタつきや捲れを抑制することができる。また、上記のように斜辺部14を設けることで、当該角度を直角にした際と比べて、マスク100の上に重ね付けするマスクの紐部である耳掛け紐50を後述する配置部10に配置するに際し、当該耳掛け紐50の着脱がスムーズに行える。なお、一端部11と他端部12における角度θ1は同じ角度であってもよいし、それぞれ異なる角度θ1としてもよい。
【0040】
なお、第2耳掛け紐部2bを第1耳掛け紐部2aと同様に、耳掛け紐2の一端から他端まで延伸して形成してもよい。これにより一端部11と他端部12はそれぞれ耳掛け紐2におけるシート部3との接続位置と同じ位置に形成されることになる。この場合、図3に示したL1、L2、L3、及びL4の距離はそれぞれゼロになる。即ち、右耳用の耳掛け紐の場合、上端内側隅部11aと上端外側隅部11bはシート部3の右端部の上部に接続する耳掛け紐2の端部位置(耳掛け紐2の一端)にそれぞれ構成され、下端内側隅部12aと下端外側隅部12bはシート部3の右端部の下部に接続する耳掛け紐2の端部位置(耳掛け紐2の他端)それぞれ構成される。上記では、右耳用の耳掛け紐の場合を説明したが左耳用の耳掛け紐も同様である。
【0041】
なお、例えば、上端内側隅部11aを耳掛け紐2の一端に構成し(L1の距離をゼロ)、上端外側隅部11bを耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離進んだ位置に構成してもよい。即ち、L2>L1とする。さらに、下端内側隅部12aを耳掛け紐2の他端に構成し(L3の距離をゼロ)、下端外側隅部12bを耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置に構成してもよい。即ち、L4>L3とする。この場合、上記したようにそれぞれ斜辺部14についても形成される。また、例えば、これらを組み合わせてそれぞれ一端部11及び他端部12を構成してもよい。即ち、上記した一端部11及び他端部12が構成される位置を組み合わせた耳掛け紐2としてもよい。
【0042】
さらに耳掛け紐2には、配置部(折り返し部、折り畳み部)10が備えられる。配置部10は、上記した一端部11と他端部12との間に延伸して形成される。配置部10においては、第2耳掛け紐部2bを、第1耳掛け紐部2a側に折り返す(折り曲げる)ように形成する。折り返すことで、図4で示す中心軸C1または中心軸C2から直交する方向(横断方向)における断面として耳掛け紐2を見た場合、配置部10が構成される個所は生地が2枚(二重)となるように構成される(図3で示す網掛け表示の箇所)。
【0043】
また、第2耳掛け紐部2bは第1耳掛け紐部2a側に折り返した際に、第1耳掛け紐部2aの所定の面(第1の面)と、第1耳掛け紐部2aの所定の面に対向する面である第2耳掛け紐部2bの面(第2の面)とを接触させないように折り返す。即ち、図4(B)に示しているように角度θ2となる加工を耳掛け紐2に行う。従って、配置部10は、第1耳掛け紐部2aの所定の面(第1の面)と第2耳掛け紐部2bの面(第2の面)とが対向している位置に形成される。これにより、着用者が耳掛け紐2を着用した際に、着用者の耳に接触している耳掛け紐2の部分はいずれにも配置部10が存在する。なお、上記したように、第2耳掛け紐部2bを耳掛け紐2の一端から他端まで延伸して形成した場合、配置部10は耳掛け紐2の一端から他端にかけて延伸して形成される。
【0044】
角度θ2で折り返すことで、配置部10では、第1耳掛け紐部2aと、第2耳掛け紐部2bとの間に所定の空間(領域)13が構成される。実施例1では角度θ2を10~45度程度となるように第2耳掛け紐部2bを第1耳掛け紐部2a側に折り返す。そして、角度θ2を10~45度をとなるように折り返すことで、図4(B)に示しているように配置部10は、断面形状(中心軸C1またはC2から直交する方向における断面)がV字形状に形成される。
【0045】
配置部10の断面形状をV字形状とすることで、重ね付けするマスクの耳掛け紐50の配置部10への配置を容易とすることができる。なお、第1耳掛け紐部2aの所定の面(第1の面)と、第1耳掛け紐部2aの所定の面に対向する面である第2耳掛け紐部2bの面(第2の面)とを接触させなければよいため、例えば角度θ2を10度以下としてもよい。なお、実施例1では角度θ2を45度または45度に近い角度とすることが好ましい。角度θ2を45度または45度に近い角度とすることで、耳掛け紐2を着用者した際に鋭角に近い角度に比べて着用者の耳によりフィットして掛けやすさの向上が図れる。
【0046】
また、耳掛け紐2を形成する素材の厚さは特に限定していない。しかし、第1耳掛け紐部2a側に折り返す際の折り曲げ点の仮想交点(第1耳掛け紐部2aの横断方向外周側の面と第2耳掛け紐部2bの横断方向外周側の面とがZ2方向で交わる交点)側については、鋭角ではなく、図4(B)に示しているような曲線とする。即ち、折り返しの加工後に図4(B)に示している曲線となるように素材の厚さを決定する。これにより、耳掛け紐2を着用者の耳に装着しても、折り曲げ点の外側が鋭角となるような場合に比べて、耳の痛みを軽減することができる。なお、図4では小さい加工R(例えば0.2R)で折り曲げ点を形成しているが、上記した小さい加工Rよりも大きな加工Rで加工をしてもよい。大きな加工Rで折り返すことで、領域13のX方向の幅が広がり後述する、重ね付けするマスクの耳掛け紐50の配置部10への配置をより容易とすることができる。
【0047】
なお、第2耳掛け紐部2bを、第1耳掛け紐部2a側に折り返す加工をする際は、例えば製造時の段階で機械等を用いて耳掛け紐2を折り返す。機械等により折り返すことで、第1耳掛け紐部2aと、第2耳掛け紐部2bの折り曲げ点の外周側(仮想交点側)では繋ぎ目を生じなくさせることができる。これにより、繋ぎ目による生地のずれや段差(バリ等)が生じることがなくなるため、耳掛け紐2を着用者が耳に装着したとしても、上記のような繋ぎ目がある場合と比べ違和感又は不快感を感じることなく、快適に耳に装着することができる。
【0048】
また、第2耳掛け紐部2bを、第1耳掛け紐部2aとは別に構成(別の生地)してもよい。その場合、第2耳掛け紐部2bと第1耳掛け紐部2aとを糸等によって縫合して一体としてもよいし、熱・超音波等によって溶着して一体としてもよい。これによって、生地の歩留まりがよくなる。なお、融着によって一体とする際には、上記のように繋ぎ目による生地のずれや段差(バリ等)が生じる場合がある。そのため、繋ぎ目による生地のずれや段差(バリ等)が生じた場合には、融着部分であって着用者の耳に接触する面の全部また一部に、例えば研磨加工を行い、生地のずれや段差(バリ等)を削り取る。これにより、着用者が耳掛け紐2を耳に装着しても、通常(従来)のマスク(不織布等を用いることでインフルエンザの感染防止や花粉症対策をすることができるマスク)の耳掛け紐と同様に違和感や不快感を感じることなく、快適に耳に装着することができる。
【0049】
また、図4(B)に示すように、実施例1においては第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bの高さを揃えている。しかし、これに限らず、例えば第1耳掛け紐部2aの高さを第2耳掛け紐部2bの高さより高く形成してもよく、その逆であってもよい。
【0050】
図5は、マスク100の耳掛け紐2を着用者の耳に装着した様子を示す一例の図である。図5(A)は、マスク100の耳掛け紐2のみを装着者の耳に装着した様子を示す図であって、図5(B)は、マスク100の耳掛け紐2を装着し、さらにマスク100に重ね付けするマスクの耳掛け紐50を配置部10に配置している様子を示す図である。なお、図5は、着用者の右耳に右耳用の耳掛け紐2を装着した際の様子を示しているが、説明を省略しているだけであって、左耳側においても右耳側と同様である。
【0051】
図5(B)に示すように配置部10における第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bの間の領域13に、マスク100に重ね付けしたマスクの耳掛け紐50を入れ込むことで、当該耳掛け紐50を配置部10に配置することができる。なお、図5(B)では、重ね付けしたマスクの耳掛け紐50の断面を略矩形状としている。しかし、重ね付けしたマスクの耳掛け紐50の断面形状はいずれであっても実施例1の耳掛け紐2の配置部10に配置可能であるため、略矩形状以外でも例えば、略楕円形状、または丸形状等のいずれの形状であってもよい。
【0052】
実施例1の配置部10を含む耳掛け紐2は、上記のように第1層または第3層と同じ素材で形成されるため、弾性及び柔軟性を備えている。そのため、いずれの断面形状の耳掛け紐50が配置部10に配置されても、耳掛け紐50の断面形状にフィットするように第1耳掛け紐部2aまたは第2耳掛け紐部2bの一部(耳掛け紐50が接触する個所)が一時的に変形する。これにより、マスクを重ね付けしたとしても、着用者の耳に装着する耳掛け紐自体は一つとすることができるため、通常のマスクを単に重ね付けした際と比べると、耳掛け紐による耳への痛みや不快感を軽減することができる。
【0053】
さらに、断面形状がV字形状となる配置部10に重ね付けしたマスクの耳掛け紐50を配置することで、V字の下方向(Z2方向)に重ね付けしたマスクの耳掛け紐50が入り込むにつれ、当該耳掛け紐50を配置部10に食い込ませることができる。これにより、着用者が日常を送る中での動作で重ね付けするマスクの耳掛け紐50がY方向若しくはX方向にずれる事象及び配置部10から外れて耳に接触してしまうことを防止できる。したがって、重ね付けしたマスクの耳掛け紐50による着用者の耳への直接の接触が無くなり、当該耳掛け紐50による耳の痛みや不快感を大幅に軽減させることが可能となる。
【0054】
さらに、実施例1におけるマスク100の耳掛け紐2の耳への装着は通常のマスクの耳掛け紐と同様に着用することができるため、職種を問わず、耳掛け紐2を備えるマスク100を使用することが可能となる。そのため例えば、眼鏡、保護メガネ、サングラス、コード付きイヤホン、ワイヤレスイヤホン、耳掛け式のインカム等を装着しているような場合であっても、通常のマスクと同様に使用することができる。その場合も上記と同様にマスクの重ね付けの際、重ね付けするマスクの耳掛け紐50による耳への痛みや不快感を軽減することができる。
【0055】
図6は、図5(B)で示した実施例1の耳掛け紐2における配置部10の断面形状の一例を示す図である。図6(A)は、配置部10の断面形状をU字形状とした場合の断面図の一例である。図6(A)のように断面形状をU字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、重ね付けするマスクの耳掛け紐50のサイズが一般的なものより大きな場合等であっても、当該耳掛け紐50を配置部10に容易に配置することができる。また、図6(A)のような断面形状であれば、着用者の耳に装着しても、上記した折り曲げ点の外側の面は図4等に示している折り曲げ点の外側の面より緩い曲線となっているため、耳の痛みがより軽減される。
【0056】
図6(B)は、配置部10の断面形状をr字形状(第2耳掛け紐部2b側を円弧状となるよう加工している)にした場合の断面図の一例である。図6(B)のようにr字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、第2耳掛け紐部2b側の生地を着用者の耳によりフィットさせることができ、耳掛け紐2による耳への負担を軽減することができる。なお、図6(B)の断面形状とする場合、例えば、第2耳掛け紐部2bを第1耳掛け紐部2aより長く形成してもよい。これにより、第2耳掛け紐部2b側の生地を着用者の耳によりフィットさせることができ、耳掛け紐2による耳への負担をさらに軽減することができる。
【0057】
図6(C)及び図6(D)は、配置部10の断面形状を円形状とした場合の断面図の一例である。図6(C)の場合は、円形状の耳掛け紐2の一部に開口を設け、さらに中空構造としたC字形状としている。開口は耳掛け紐2の上方向(Z1方向)となるように構成される。図6(C)のようにC字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、断面形状が丸形状の耳掛け紐であっても当該開口を介して容易に領域13内に入れ込み、配置部10にフィットするように配置させることが可能となる。
【0058】
また、図6(C)に示すように、横断方向に突出する箇所のない円形状とすることで、着用者の耳の形状等によらず、長時間着用したとしても耳の痛みを軽減することができる。また、開口のX方向の寸法は中空構造における径(X方向における寸法)より小さく構成されるため、重ね付けするマスクの耳掛け紐50を中空構造としている位置まで入れ込んで配置した際に当該耳掛け紐50を外れにくくすることができる。
【0059】
図6(D)の場合は、図6(C)の場合と同様の開口及び中空構造としている。異なる点は、開口周囲の第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bとがそれぞれ所定の距離重なっている状態としている点である。そして、図6(D)の断面形状とすることで、図6(C)及び実施例1における配置部10と同様の効果に加え、配置部10に配置した後に重ね付けするマスクの耳掛け紐50を第1耳掛け紐部2aまたは第2耳掛け紐部2bで覆うようにすることができる。これにより、図6(C)に示す断面形状よりも当該耳掛け紐50を配置部10から外れにくくすることができる。なお、図6(D)では、第2耳掛け紐部2bが第1耳掛け紐部2aより上側となっているが、これに限定されず、第1耳掛け紐部2aを第2耳掛け紐部2bより上側となるようにしてもよい。
【0060】
そして、図6でそれぞれ示した断面形状とした場合であっても、上記した実施例1の耳掛け紐2と同様に重ね付けするマスクの耳掛け紐50がY方向若しくはX方向にずれる事象及び配置部10から外れて耳に接触してしまうことを防止できる。
【0061】
以上、実施例1のマスク100の耳掛け紐2によれば、マスクを重ね付けした際の耳掛け紐50による耳の痛みや違和感を軽減し、さらに当該耳掛け紐50のずれや外れを防止することが可能なマスク用の耳掛け紐を提供することができる。そして、この耳掛け紐2を備えたマスクにおいては、上記した耳掛け紐2の効果に加え、通常のマスクの機能を有するマスクを提供することができる。これにより、例えば、マスクを重ね付けしない場合であっても、通常のマスクと同様の使用も可能となる。
【0062】
<実施例2>
図7は、実施例2に係るマスク100を示す斜視図である。実施例2におけるマスク100は耳掛け紐2の構成以外は実施例1のマスク100と同様であるため、同様の点については説明を省略し、異なる点について以下に説明する。
【0063】
実施例2では、マスク本体1の耳掛け紐2は断面形状が丸形状であって中空構造でない丸紐で構成される。実施例2の耳掛け紐2は、実施例1と同様に右耳用の耳掛け紐と左耳用の耳掛け紐とを含む。また、特に言及しない限り以下に説明する実施例2の耳掛け紐2は右耳用の耳掛け紐と左耳用の耳掛け紐ともに同様に構成される。耳掛け紐2は、第1層または第3層と同じ素材で形成される。それぞれの耳掛け紐2をマスク本体1に取り付ける方法は実施例1と同様である。
【0064】
実施例2における耳掛け紐2は、耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される一端部(第1の位置)11と、耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される他端部(第2の位置)12とを含む。
【0065】
配置部10は、当該一端部11と当該他端部12との間に延伸して形成される。なお、一端部11及び他端部12の耳掛け紐2のそれぞれの端部からの寸法は特に限定していない。しかし、少なくとも耳掛け紐2を着用した際に着用者の耳と重なる位置(耳掛け紐2が着用者の耳と接触する位置)の始点及び終点より一端部11と他端部12がシート部3側(Y2側)となるように形成する。即ち、着用者が耳掛け紐2を着用した際に、着用者の耳に接触する耳掛け紐2の部分はいずれにも配置部10が構成されるように、耳掛け紐2は構成される。
【0066】
実施例2の配置部10には溝(溝部)が延伸して形成される。即ち、溝は、耳掛け紐2の一端から他端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される一端部(第1の位置)11と、耳掛け紐2の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置に構成される他端部(第2の位置)12との間に延伸して形成される。
【0067】
当該溝の断面形状は、上方向(Z1側)に開口を有するコの字形状に形成される。当該溝は、X方向に所定の幅を有し、Z方向(図7で示すZ2方向)に所定の深さを有するように構成される。所定の幅としては、丸紐の直径の1/3から2/3以内が好ましい。所定の深さは直径の1/3から2/3以内が好ましい。実施例2の配置部10における断面は、後述する図8(A)に示しているV字形状となるように構成される。実施例2の耳掛け紐2の配置部10によれば、実施例1のように折り返して形成する必要はないため材料の歩留まりをよくし、さらに一端部11または他端部12のバタつきや捲れが生じることがなくなる。なお、断面形状はV字形状に限らず、凹形状としてもよい。
【0068】
配置部10の当該溝の形成は、機械等で削りだして形成してもよいし、レーザ等による熱で融解させて形成してもよい。また、実施例2の耳掛け紐2における上記した配置部10の溝の開口は丸紐の上方向(Z1側)に設けているため、耳掛け紐2を着用した際に当該溝の部分は着用者の耳には当たらず、当該溝による痛みや不快感が生じることがない。
【0069】
さらに、配置部10の領域13に重ね付けしたマスクの耳掛け紐50を入れ込み、当該溝に対し配置する。当該溝に対し配置することで、実施例1と同様に着用者が日常を送る中での動作で重ね付けする通常のマスクの耳掛け紐50がY方向若しくはX方向にずれる事象及び配置部10から外れて耳に接触してしまうことを防止できる。これにより、重ね付けしたマスクの耳掛け紐50による耳への接触が無くなり、重ね付けしたマスクの耳掛け紐50による耳の痛みや不快感を軽減させることができる。
【0070】
なお、配置部10における溝を耳掛け紐2の一端から他端まで延伸して形成してもよい。これにより、一端部11と他端部12はそれぞれ耳掛け紐2におけるシート部3との接続位置と同じ位置に形成され、配置部10も耳掛け紐2の一端から他端にかけて延伸して形成される。
【0071】
ここで、上記のように耳掛け紐2における一端部11と他端部12をそれぞれ耳掛け紐2の一端と他端に構成した場合、即ち、配置部10における溝を耳掛け紐2の長さと同じ長さで形成した場合、耳掛け紐2は押出成形による加工及び製造が可能となる。押出成形によって加工・製造することで耳掛け紐2の製造工程と溝の形成工程とを同一のタイミングとすることができる。これにより工程を一つ省略することができるためスループットが向上し、耳掛け紐2の製造費用の削減することが可能となる。この場合、押出成形が可能で、着用者の耳に装着した際に耳への痛みや違和感を軽減することのできる素材であれば何れを使用してもよい。例えば、ポリウレタン等が挙げられる。
【0072】
図8は、実施例2の耳掛け紐2における配置部10の断面形状の一例を示す図である。図8(A)は、配置部10の断面形状をV字形状とした場合の断面図の一例であり、実施例2における配置部10の断面形状を示している。配置部10の断面形状をV字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、重ね付けするマスクの耳掛け紐50が配置部10から外れにくくすることができる。
【0073】
図8(B)は、配置部10の断面形状をU字形状にした場合の断面図の一例である。図8(A)のように断面形状をU字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、重ね付けするマスクの耳掛け紐50のサイズが一般的なものより大きな場合等であっても、当該耳掛け紐50を領域13に容易に配置することができる。
【0074】
図8(C)は、配置部10の断面形状を円形状とした場合の断面図の一例である。図8(C)の場合は、円形状の耳掛け紐2の一部に開口を設け、さらに中空構造としたC字形状としている。開口は耳掛け紐2の上方向(Z1方向)となるように構成される。図8(C)のようにC字形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、断面形状が丸形状の耳掛け紐についても当該開口を介して容易に中空構造部分の領域13内に入れ込み、配置部10にフィットするように配置させることが可能となる。
【0075】
また、開口から中空構造としている部分まではZ方向に所定の寸法(距離)を有する通路部が構成される。通路部のX方向の寸法は中空構造における径(X方向における寸法)より小さく構成されるため、重ね付けするマスクの耳掛け紐50を中空構造としている位置まで入れ込んで配置した際に当該耳掛け紐50を外れにくくすることができる。
【0076】
図8(D)、図8(E)は、実施例2に係る耳掛け紐2に対し、実施例1と同様のV字形状に折り返した別体の耳掛け紐30を取り付けた場合の断面図である。図8(D)の場合は、図8(A)に示すV字形状の溝における領域13に対し、V字形状に折り返した別体の耳掛け紐30を取り付けている。取付方法は熱または超音波による融着であってもよいし、接着成分を有する溶剤等を用いた接着により取り付けてもよい。図8(D)に示す断面形状とすることで、実施例1における配置部10と同様の効果に加え、着用者の耳の形状等によらず、長時間着用したとしても耳の痛みを軽減することができる。
【0077】
図8(E)の場合は、図8(A)等に示している溝を形成しない耳掛け紐2に実施例1と同様のV字形状に折り返した別体の耳掛け紐30を取り付けた場合の断面図である。図8(D)に示す断面形状では、第1耳掛け紐部30aと第2耳掛け紐部30bの高さ(Z方向の長さ)が図8(D)に示す例と異なる点が差異点であり、他の要素及び効果は同様であるため説明を省略する。なお、図8(D)、図8(E)に示している、耳掛け紐30及び第1耳掛け紐部30aと第2耳掛け紐部30bは実施例1の耳掛け紐2及び第1耳掛け紐部2aと第2耳掛け紐部2bと同様の構成をしているため、説明を省略する。
【0078】
そして、図8でそれぞれ示した断面形状とした場合であっても、上記した実施例2の耳掛け紐2と同様に重ね付けするマスクの耳掛け紐50がY方向若しくはX方向にずれる事象及び配置部10から外れて耳に接触してしまうことを防止できる。
【0079】
以上、実施例2のマスク100の耳掛け紐2によれば、耳掛け紐2を中空構造でない丸紐とすることで、着用した際の耳への負担を実施例1の耳掛け紐より低減することができる。また、実施例1と同様にマスクを重ね付けした際の耳掛け紐50による耳の痛みや違和感を軽減し、さらに当該耳掛け紐50のずれや外れを防止することが可能なマスク用の耳掛け紐を提供することができる。そして、この耳掛け紐2を備えたマスクにおいては、上記した耳掛け紐2の効果に加え、通常のマスクの機能を有するマスクを提供することができる。これにより、例えば、マスクを重ね付けしない場合であっても、通常のマスクと同様の使用も可能となる。
【0080】
<実施例3>
図9は、実施例3に係るマスク100を示す斜視図である。実施例3におけるマスク100は、実施例1のように不織布を用いた多層構造としていない構成以外は、実施例1のマスク100と同様であるため説明を省略し、異なる点について以下に説明する。
【0081】
実施例3のマスク100のシート部3は、ポリウレタンを用いた単層構造で構成される。また、マスク100の耳掛け紐2もシート部3と同様にポリウレタンで構成される。なお、実施例3のマスク100においてはポリウレタンであれば何れでも使用可能であるため、組成や構造は特に限定しない。また、ポリウレタンとしては例えば、軟質ウレタンフォーム、半硬質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム等が挙げられる。
【0082】
また、実施例3のマスク100は、ポリウレタンを用いているため、洗濯可能である。したがって、汚れを落としてマスク100の衛生性を維持することができる。
【0083】
また、実施例3の耳掛け紐2に実施例1または実施例2の耳掛け紐2を用いてもよく、その場合、それぞれ材質をポリウレタンで構成するようにしてもよい。
【0084】
以上、実施例3のマスク100の耳掛け紐2によれば、マスク100を構成する素材をポリウレタンとすることで、不織布とするよりも重量が軽くなり、肌に接触した際の痛みや、かゆみ等の不快感も不織布よりは軽減される。また、不織布に比べ、弾性力も高いため、配置部10に重ね付けするマスクの耳掛け紐50を配置した際、不織布の場合より外れにくくなり、配置部10にフィットさせることが可能となる。また、実施例1と同様にマスクを重ね付けした際の耳掛け紐50による耳の痛みや違和感を軽減し、さらに当該耳掛け紐50のずれや外れを防止することが可能なマスク用の耳掛け紐を提供することができる。
【0085】
実施例3の耳掛け紐2を備えたマスクにおいては、上記した耳掛け紐2の効果に加え、ポリウレタン製のマスクの機能を有するマスクを提供することができる。これにより、例えば、マスクを重ね付けしない場合であっても、ポリウレタン製におけるマスクと同様の使用も可能となる。
【0086】
なお、それぞれの実施例におけるマスク本体1としては、着用者の対称部位を覆い、耳掛け紐2を取り付けた際にマスクとして機能し得るものであれば任意の構成を用いることが可能である。
【0087】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 マスク本体
2 耳掛け紐
2a 第1耳掛け紐部
2b 第2耳掛け紐部
3 シート部
4 補強部材
5 識別部
10 配置部
13 領域
100 マスク
【要約】
【課題】マスクを重ね付けした際の耳掛け紐による耳の痛みや不快感を軽減し、さらに重ね付けした耳掛け紐のずれや外れを防止するマスク用の耳掛け紐を提供する。
【解決手段】マスク本体の左右に備えられるマスク用の耳掛け紐であって、マスク本体に対し重ね合わせるように着用するマスクに備える紐部を配置することが可能な配置部を、備え、耳掛け紐は、第1耳掛け紐部と第2耳掛け紐部を有し、第1耳掛け紐部は、耳掛け紐の一端から他端にかけて延伸して形成され、第2耳掛け紐部は、耳掛け紐の一端から他端に向かって所定の距離進んだ位置である第1の位置と、耳掛け紐の他端から一端に向けて所定の距離進んだ位置である第2の位置の間に延伸して形成され、第1耳掛け紐部の第1の面と第2耳掛け紐部の第2の面とは、それぞれ接触しないように対向して構成され、配置部は、第1の面と第2の面とが対向している位置に形成されることを特徴とする。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9