(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】海藻種付装置
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A01G33/02 101Z
(21)【出願番号】P 2019519003
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 NL2017050668
(87)【国際公開番号】W WO2018070871
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-08
(32)【優先日】2016-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507009331
【氏名又は名称】アイエイチシー・ホランド・アイイー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カークフリート, コーネリス ジョアンズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサルベス カストロ, マリア ベルナデット
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-288316(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0092851(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0916862(KR,B1)
【文献】特開2011-103853(JP,A)
【文献】実開昭54-054698(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0053643(KR,A)
【文献】特開2012-016343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻ロープを主ロープに巻き付けるための海藻種付装置であって、前記装置が、
フレームと、
前記フレームに回転可能に接続されて、前記主ロープを周囲で受け、かつ前記主ロープが前記装置を通して引き出されると回転する摩擦車
であって、前記摩擦車の外周面が摩擦面として形成されており、前記摩擦面の周りでの前記主ロープの移動によって回転する、摩擦車と、
回転軸線を中心として回転可能に前記フレームに接続され
、海藻ロープを伴う巻枠を受けることができる巻枠キャリヤ
であって、前記摩擦車に巻き付いた後の前記主ロープを受けるための、前記回転軸線を通る中空軸を備え、前記中空軸が前記装置からの前記主ロープの出口として機能する、巻枠キャリヤと、
前記回転軸線からオフセットして前記巻枠キャリヤに接続された海藻出口ガイドと、
前記摩擦車を前記巻枠キャリヤに接続して、前記巻枠キャリヤを回転させるように前記摩擦車の回転運動を変換する変速機と
を備え
、前記巻枠キャリヤ上の前記巻枠から出て前記海藻出口ガイドによって案内される前記海藻ロープを、前記中空軸から出る前記主ロープに巻き付ける、海藻種付装置。
【請求項2】
前記巻枠キャリヤに接続された巻枠をさらに備え
、前記巻枠が前記海藻出口ガイドに海藻ロープを供給する、請求項1に記載の海藻種付装置。
【請求項3】
前記変速機が歯車列を備える、請求項1または2に記載の海藻種付装置。
【請求項4】
前記巻枠キャリヤが前面を有し、前記海藻出口ガイドが前記巻枠キャリヤの前記前面から延びている、請求項1~3のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項5】
前記変速機が、前記摩擦車から前記巻枠キャリヤへと回転速度を増大させるための複数組の歯車を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項6】
前記摩擦車と前記巻枠キャリヤとの間で前記主ロープを案内するための案内車をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項7】
前記フレームが、前記主ロープの前記フレーム内への異なる供給高さに適応するための複数のスロットを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項8】
前記巻枠キャリヤがカウンタウェイトをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項9】
前記装置がナイロン製である、請求項1~8のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項10】
前記摩擦車が高摩擦表面コーティングを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項11】
前記摩擦車が
、前記主ロープを案内して前記摩擦車に巻き付ける1つ以上のロープガイドを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項12】
前記
海藻出口ガイドが、前記回転軸線と平行な方向に延び
る、請求項1~11のいずれか一項に記載の海藻種付装置。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の海藻種付装置を備える、船舶または水中航走体。
【請求項14】
海藻を主ロープに巻き付ける方法であって、
前記主ロープを、海藻巻付け装置内へと、摩擦車の周囲に複数回送り、かつ巻枠キャリヤの中空軸の外側に出すステップと、
前記巻枠キャリヤ
に接続された巻枠からの海藻ロープを、前記中空軸から出る前記主ロープに接続するステップと、
前記装置を通して前記主ロープを引き出す
ことによって前記摩擦車を回転させるステップとを含み、前記巻枠キャリヤ
が、前記巻枠キャリヤを回転させるように前記摩擦車の回転運動を変換する変速機を介して前記摩擦車に接続しており、前記摩擦車の回転
により、前記巻枠キャリヤ
が回転
し、前記巻枠から出る前記海藻ロープ
を前記主ロープに巻き付
ける、海藻を主ロープに巻き付ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻種付装置、および海藻種付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻を栽培する場合、海藻ロープまたは種苗は、通常、海藻を固定場所に保持して収穫期を迎えるまで栽培するために使用される主基質のロープに繋がれるかまたは巻き付けられる。これは一般的に「巻付け種付」と呼ばれる。多くの場合、さらなるロープもしくはワイヤが海藻ラインおよび主ロープに巻き付けられて、海藻ラインおよび主ロープを一体に保持する。海藻ロープもしくは種苗を主基質のロープに固定するためのいくつかの異なる装置が利用可能である。韓国特許公開第101237156号明細書は、ロープを種苗ラインで巻付け種付するための方法および装置を開示しており、主基質のロープおよび種苗ラインに巻き付くように固定ロープを使用することを含む。このシステムは、システムを通って移動するために、および固定ロープをロープおよび種苗ラインの周囲に接着させるために、モータによって駆動されるいくつかのプーリおよびローラを使用する。別の同様のシステムが韓国特許第20130053643号明細書に示されており、このシステムは、種苗ラインおよびロープを1つに結び付けるように、結束ロープを種苗ラインおよびロープに巻き付ける。ロープおよび種苗ラインは主パイプを通って送られ、モータによって駆動されるプーリは、ロープおよび種苗ラインがパイプから出る際に回転してロープおよび種苗ラインを1つに結び付ける。これらシステムの各々は、固定ロープまたは結束ロープを使用して主ロープおよび海藻ラインの周囲に適切に結合させるために、装置の様々な部品を駆動するモータを必要とする。モータが必要とされるので、装置は機械的な故障を起こしやすく、その上、過酷な条件下もしくは水中条件下で耐えることができない。
【0003】
巻付け種付は高価で時間のかかる工程であり、一般的には種苗が海藻ラインに付着する孵化場段階を含む。これには、通常約6週間かかり、厳密に管理された環境が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、海藻ロープを主ロープに巻き付けるための海藻種付装置は、フレームと、フレームに回転可能に接続されて、主ロープを周囲で受け、かつ主ロープが装置を通して引き出されると回転する摩擦車と、回転軸線を中心として回転可能にフレームに接続された巻枠キャリヤと、回転軸線からオフセットして巻枠キャリヤに接続された海藻出口ガイドと、摩擦車を巻枠キャリヤに接続して、巻枠キャリヤを回転させるように摩擦車の回転運動を変換する変速機とを備える。
【0005】
これは、電気駆動手段を必要とせず、それによって過酷な環境下および/または水中条件下でさえも最高効率で機能することができる海藻種付装置を提供する。変速機を使用して接続し、かつ装置を介した回転運動を変換することはまた、可使時間を通じて点検および維持管理が必要な脆弱な部品が少ないので、より安価でより信頼性のあるシステムを提供することができる。フレームを使用することにより、種付作業の前および/または最中に容易に輸送するために、装置を他の装置または車両に容易に配置するかまたは接続することが可能になる。
【0006】
一実施形態によれば、装置は巻枠キャリヤに接続された巻枠をさらに備える。巻枠を巻枠キャリヤに接続することにより、主ロープが装置から出る際に海藻を巻き付けるために、海藻を装置に容易に繋ぐことができる。巻枠に含まれた海藻を他の場所で栽培し、その後、巻付けの準備が整った巻枠キャリヤに該巻枠を接続することができる。複数の巻枠を使用して長い海藻を巻き付けることができる。
【0007】
一実施形態によれば、変速機は歯車列を備える。任意には、変速機は、摩擦車から巻枠キャリヤへと回転速度を増大させるための複数組の歯車を備える。主ロープに対する海藻の比または主ロープの周囲の海藻ラインの密度は、複数の歯車を含む変速機を使用して調整することができる。歯車は、変速機の種類の中で摩擦が最も低い傾向があり、したがって、信頼性のある低摩擦の形態で摩擦車の回転運動を巻枠キャリヤへ変換する。
【0008】
一実施形態によれば、巻枠キャリヤは前面を有し、海藻出口ガイドは巻枠キャリヤの前面から延びる。このような設計は、海藻ラインを主ロープに巻き付けるための安定した効果的な方法を提供することができる。
【0009】
一実施形態によれば、装置は、摩擦車と巻枠キャリヤとの間で主ロープを案内するための案内車をさらに備える。これは、例えば90度など、主ロープの付着角と種付方向との間の最適な角度を確保するのに役立つ。案内車は、このような案内を提供する低摩擦の手段とすることができる。
【0010】
一実施形態によれば、フレームは、主ロープのフレーム内への異なる供給高さに適応するための複数のスロットを備える。複数のスロットもまた、摩擦車の異なる直径に適応することができる。異なる直径を使用して、主ロープに対する海藻ロープの比を変更することができる。
【0011】
一実施形態によれば、巻枠キャリヤは1つ以上のカウンタウェイトをさらに備える。1つ以上のカウンタウェイトは、海藻出口ガイドおよび/または巻枠の重量に対抗して巻枠キャリヤを釣り合わせるのに役立ち、それによって巻枠キャリヤを回転させるのに必要な力を減少させることができる。
【0012】
一実施形態によれば、装置は耐食材料で形成されている。材料は、例えばナイロンなどのポリマー、またはアルミニウムなどの金属および/または合金とすることができる。これにより、たとえ海および/または水中などの腐食性環境においても、装置の耐用年数を確保するのに役立つ。これらの材料はまた、比較的容易な製造および/または構成を提供することができる。
【0013】
一実施形態によれば、摩擦車は高摩擦表面コーティングを含む。高摩擦表面コーティングは、例えば、樹脂および少なくとも骨材を含むことができる。高摩擦コーティングは、摩擦車への巻付けを、例えば4回ではなく3回などに少なくすることができる。
【0014】
一実施形態によれば、摩擦車は1つ以上のロープガイドを備える。このようなロープガイドは、摩擦車上でロープを補助するのに役立ち、および/またはロープが摩擦車に沿って横方向に移動することができるように摩擦車からロープを持ち上げるのに役立つ。
【0015】
一実施形態によれば、巻枠は、回転軸線と平行な方向に延びる海藻ロープ出口ガイドを備える。これは、装置から出る際に海藻ラインを主ロープの周囲に適切に案内するのに役立ち、かつ海藻ラインと主ロープとの間に最適な角度をなすのに役立つ。
【0016】
一実施形態によれば、巻枠キャリヤは、摩擦車に巻き付いた後の主ロープを受けるための、回転軸線を通る中空軸を備え、中空軸は、主ロープの装置からの出口として機能する。中空軸は、海藻を巻き付けるのに効果的な位置において主ロープの出口を提供することができる。
【0017】
一実施形態によれば、船舶もしくは水中航走体は、先行する請求項のいずれかに記載の装置を備える。装置のフレームは、車両もしくは船舶への容易な接続、または、車両もしくは船舶の上での容易な接続を可能にすることができる。車両もしくは船舶は、栽培のためにロープおよび海藻ラインを撚糸状にする装置を移動させる容易な方法を提供することができる。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、海藻を主ロープに巻き付ける方法は、主ロープを、海藻巻付け装置内へと、摩擦車の周囲に複数回送り、かつ巻枠キャリヤの中空軸の外側に出すことと、巻枠キャリヤ上の巻枠からの海藻ロープを、中空軸から出る主ロープに接続することと、装置を通して主ロープを引き出すこととを含む。巻枠キャリヤは、摩擦車の回転が巻枠キャリヤを回転させ、巻枠から出る海藻ロープが主ロープに巻き付くように、摩擦車に接続している。このような方法は、栽培のために海藻ラインを主ロープに効果的かつ制御可能に巻き付ける簡単な方法を提供する。巻枠キャリヤに接続された摩擦車を使用することにより、電気駆動手段を用いることなく海藻ラインを主ロープに巻き付けることが可能になり、多くの維持管理を必要とせず過酷な条件に耐えることができる効果的な装置が可能になる。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、海藻ラインを種付するための機械が開示される。この機械は、直接種付法を実施することができる。機械は、高くて一定の種付を達成するためにドラム、ロープガイドおよび/または押圧装置を含むことができる。
【0020】
添付の図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1D】線D-Dに沿った海藻種付装置の上面からの断面図である。
【
図2A】直接種付用の海藻種付装置の第2の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aは、主ロープ11と海藻ライン12とを含む海藻種付装置10の斜視図を示し、
図1Bは、海藻種付装置10の側面図を示し、
図1Cは、海藻種付装置10の正面図を示し、
図1Dは、線D-Dに沿った海藻種付装置10の上面からの断面図を示す。
【0023】
海藻種付装置10は、フレーム13と、(ロープガイド15を含む)摩擦車14と、歯車18を含む変速機16と、表面21および中空軸22を含む巻枠キャリヤ20と、海藻出口ガイド24と、巻枠26と、案内車27と、ロープ入口スロット28と、カウンタウェイト30を含む。
【0024】
フレーム13は、海藻種付装置10の様々な部分を支持し、かつ実質的に開いたフレームとすることができるか、または側壁を含むことができる。フレーム13は、主ロープ11を装置内の摩擦車14に送るための1つ以上のスロットもしくは開口部28を含む。スロットもしくは開口部28は異なる高さに位置して、異なるドラムおよび/またはウインチの大きさおよび配置に適合させることができる。フレーム13および他の構成要素は、限定するものではないが、例えばナイロンなどのポリマー、木材および/または(合金を含む)アルミニウムなどの金属を含む様々な材料で作ることができる。特に装置が水中などの腐食性環境で使用される場合、耐食性のある材料を使用して耐用年数を延ばすことができる。
【0025】
摩擦車14はフレーム13に接続しており、フレーム13に対して回転することができる。摩擦車14を様々な大きさにすることができるが、その幅は、主ロープ11が摩擦車14に何度も巻き付くのに十分な幅である。回数を変更することはできるが、ロープ11が装置10を通って移動する際に摩擦車14を回転させるのに十分な摩擦が確実に生じるように、例えば2~10回とすることができる。摩擦車14を、例えば樹脂および骨材を含んだ例えば高摩擦表面コーティングで被覆することができる。このようなコーティングは、有効性を低下させることなく、ロープの摩擦車14の周囲への巻付けを少なくすることを可能にするであろう。
【0026】
変速機16は、フレーム13に接続され、かつ摩擦車14を巻枠キャリヤ20にさらに接続する複数の歯車組18を備える。摩擦車14への接続は、
図1Dに見られるように、摩擦車14と歯車18との間の共通の軸を介している。
図1A~
図1Dに示す実施形態では、変速機16は歯車列を形成する3つの歯車組18を含む。これにより、摩擦車14の初期回転速度が28倍に増大する。他の実施形態は、歯車組を増減して使用するか、または例えばベルトもしくはチェーンなどの他のモードの変速機を使用することができる。歯車列を使用することによって、変速機16は、巻枠キャリヤ20に対する摩擦車14の回転運動を変換して増大させることができる。この増大量は、ロープ11と海藻ライン12との所望の巻付けに応じて変更することができる。
【0027】
巻枠キャリヤ20はフレーム13に接続し、回転軸線Rを中心に回転する。装置10では、巻枠キャリヤ20は装置10内のフレーム13の外側に存在するが、いくつかの実施形態ではフレーム13内に存在することができる。巻枠キャリヤ20は、回転軸線Rと整列する中空軸22を含む。巻枠キャリヤ20はまた、回転軸線Rからオフセットした位置で巻枠キャリヤ20に接続する海藻出口ガイド24を含む。これにより、海藻出口ガイド24は、巻枠キャリヤ20が回転している場合に回転軸線Rを中心に回転することができる。海藻ライン12を保持する巻枠26もまた、装置10に示すように巻枠キャリヤ20上に位置することができ、または、巻枠26は異なる場所に位置して、巻付けのために海藻ライン12を海藻出口ガイド24に簡単に供給することができる。カウンタウェイト30もまた、巻枠キャリヤ20上に位置して巻枠キャリヤ20上の海藻出口ガイド24および/または巻枠26の重量を平衡させることができる。
【0028】
1つ以上のガイド15を使用して、主ロープ11を摩擦車14の上で補助することができる。さらに、摩擦車14から装置10を通って装置10の出口へ移動する場合に、主ロープ11を案内して張力を維持するのに役立つように、1つ以上の案内車27を使用することができる。案内車27を使用して、種付ラインの取付け角度と種付の方向との間で例えば90度にするなど、主ロープ11の周囲の種付ラインに最適な角度を確保することができる。ドラムの大きさおよび/または位置を変更するだけで、様々なロープ径に適応して種付することができる。
【0029】
装置10の使用準備をするために、主ロープ11を、開口部28を通して装置10内に、摩擦車14の周囲に複数回送るようにガイド15によって案内することができる。次に、主ロープ11は案内車27の周囲に延び、かつ巻枠キャリヤ20内の中空軸22の中心から出る。海藻ライン12は巻枠26に巻き付けられ、端部は海藻出口ガイド24から延びる。海藻ライン12の端部を、例えば一重結びによって主ロープ11に取り付けることができる。
【0030】
ここで、主ロープ11および海藻ライン12を、栽培のための海藻ラインの設置に使用する準備が整った。中空軸22において装置10の主ロープ出口から海藻を栽培するために接続される場所まで、(海藻ライン12が接続された)主ロープ11を引き出すことができる。主ロープ11が引き出されると、主ロープ11は装置10を通って移動する。主ロープ11が摩擦車14の周囲を移動することによって摩擦車14が回転し、この回転が変速機16によって巻枠キャリヤ20の回転に変換される。歯車18により、摩擦車14から巻枠キャリヤ20への回転運動もまた増大する。海藻ライン12は主ロープ11に接続されているので、海藻ライン12もまた主ロープ11の移動とともに移動し、中空軸22を通って出る主ロープ11の周囲の巻枠キャリヤ20の回転運動によって、主ロープ11のみに(螺旋状に)巻き付けられる。摩擦車14と比較して、巻枠キャリヤ20の回転運動が増大すると、海藻ロープ12は主ロープ11にさらに緊密に巻き付けられる。
【0031】
また、装置を通って該装置から移動する主ロープ11の動作は、(上述の通りロープ12を移動させる代わりに)主ロープ11を栽培のための設置個所に接続した後に装置10を移動させることによりできる。このような実施形態では、装置10は、船舶、水中航走体、または装置10を所望の場所に移動させることを可能にする任意の他の装置上に位置することができる。
【0032】
変速機を介して巻枠キャリヤ20に接続された摩擦車14を含む装置10を使用することにより、栽培のために海藻ライン12を主ロープ11に巻き付けるための簡単かつ効果的な方法が可能になる。摩擦車14を使用し、かつ摩擦車14の回転運動を巻枠キャリヤ20へ変換することによって、装置10は、モータなどの電気駆動システムを使用することなく、海藻ライン12を主ロープ11に効果的に巻き付けることができる。これにより、水中などの過酷な環境であっても装置10を効果的に機能させることができる。電気駆動手段を必要としないことにより、同様に、より容易かつより安価に装置を維持することができ、その結果、稼動寿命が全体的に長くなる。フレーム13を想定した大きさおよび設計により、装置10を容易に輸送することができ、かついくつかの異なる船舶もしくは車両上で使用するか、またはいくつかの異なる船舶もしくは車両とともに使用することができる。さらに、単純な設計により、容易に分解し再組立てすることができる構成要素が可能になり、使用前および/または使用中の輸送および/または出荷が容易になる。使用する歯車組18を増減して所望の通り回転運動を柔軟に変更する変速機16を使用することによって、出力中に所望の巻付け密度を得るように巻付けを大きく制御することができる。また、巻枠キャリヤ20上のカウンタウェイト30を使用することは、巻枠キャリヤ20上の海藻出口ガイド24および/または巻枠26の平衡を保つのに役立ち、それによって巻枠キャリヤ20を回転させるのに必要な力を減少させる。
【0033】
水中環境において装置10を使用する能力は、過酷な条件下であっても装置10および撚糸状ラインを使用する能力をもたらすことができる。強風、激流および/または強い波などの過酷な天候条件下では、装置10を水面下に沈めて条件の影響を緩和することができ、海藻ライン12を含むロープ11を張設したまま保つことができる。
【0034】
図2Aは、直接種付用の海藻種付装置40の第2の実施形態の斜視図を示し、
図2Bは、海藻種付装置40の上面図を示している。海藻種付装置40は、浴部フレーム42と、ドラム44と、押圧ローラ46とを含む。主ロープ50を保持するドラム48もまた示されている。
【0035】
浴部フレーム42は、接着剤、結合剤および/または粘着剤と海藻種苗との浴を保持する。ドラム44は浴部フレーム42内に配置されている。ロープ50はドラム44に1回以上巻かれ、ここで、種苗および接着剤にさらされることになる。海藻種苗および接着剤は、ドラムから離れる際にロープ50に付着し、次いで、ロープ50は押圧ローラ46を通過して、海藻種苗がロープ50に付着した状態を確保するのに役立つ。過剰な海藻種苗および接着剤を、収集および輸送システムまたは他の任意の手段によって装置40に戻すことができる。ローラ46は、互いに押圧する2つの車輪または他のローラ手段とすることができる。装置40は、直接種付法を用いて海藻を栽培するために海藻種苗をロープ50に繋ぐ簡単な方法を提供する。
【0036】
図2Aから最もよく分かるように、ロープが海藻種付装置40の浴部フレーム42から出る場合にロープを案内するために案内要素52が設けられている。案内要素52は、例えばスナップ式継手などの任意の適切な手段によって浴部フレーム42に解放可能に接続される。ロープ50が浴部フレーム42内および/またはドラム44の周囲に進むように案内するために、類似の案内要素を設けることができる。なお、案内要素52はまた、過剰な種苗および/または接着剤を浴部フレーム42に戻すように案内するための漏斗として機能することができる。このようにして、種付工程の質を最適かつ一定にすることができる。浴部フレーム42内およびドラム44の周囲のロープ部分の保持時間の制御、および押圧ロールの力の制御は、種付工程の最終品質を確保するのに役立つ。
【0037】
ドラム44は、略半径方向に延び、かつ回転方向に向かって側面に接触面を備えた複数のスラットを備える。スラットには、半径方向に対して約10~20%の傾斜が設けられている。このようにして、ロープ50は、適切な量の接着剤、結合剤および/または粘着剤と海藻の種苗との混合物を均質に吸収しながら、巻き数を最小限にする。さらに、この構成を有することによって、この動作に必要な空間を最小限にしながら、種付速度をロープの少なくとも毎時1kmとすることができる。これにより、小型で信頼性のある海藻種付装置40が得られる。
【0038】
当業者は、前記接着剤、結合剤もしくは粘着剤が、それぞれの接触面の高さで2つ以上の要素を互いに付着させる物質であることを理解するであろう。これは、前記接着剤、結合剤もしくは粘着剤が藻類または海藻のロープ50への接着を促進するという利点をもたらす。前記接着剤もしくは粘着剤を、前記ロープ50上に予め別々に塗布することができ、または、接着剤、結合剤および/または粘着剤の浴に加えることができ、この浴は、海藻種付装置40に入る藻類もしくは海藻の種苗をさらに含むことになる。適切な接着剤、結合剤もしくは粘着剤は、例えばメチルセルロースなどのポリマーを含んでもよい。任意には、前記接着剤、結合剤もしくは粘着剤は生体接着剤である。藻類もしくは海藻がロープに直接繋がれると、この生体接着性材料は希釈される。この希釈は、この藻類もしくは海藻がロープ50の糸に直接繋がれた付着根を成長させると起こり得る。
【0039】
なお、直接種付は、接着剤懸濁液に混合される海藻の種苗を含み、孵化場段階を除外して基質ラインに直接適用することができる。このラインは、収穫まで海藻がさらに成長することができるように迅速に現場に配備することができる。接着剤が生分解性である場合、現時点では種苗が基質ロープに確実に固定されているが、接着剤は最終的に消失する。当業者は、種付パラメータを調整することによって、直接種付工程を用いてリボン状基質に種付することもできることを理解するであろう。
【0040】
当業者はまた、海藻種付装置を陸上および海上で使用することができることを理解するであろう。海上で使用される場合、本発明を車両または船舶に使用することができる。前記車両もしくは船舶は、海藻栽培システムに直接接続された海藻収穫システムと、海藻の基質を結合する結合装置とを含むことができ、ここで、本発明の海藻種付装置もまた提供される。さらに、海藻種付装置が陸上で使用される場合、海藻種付装置を独立型とすることができ、または車両、船舶もしくは海藻栽培システム上で支持することができ、これらのいずれも海岸線から0~100メートルまでの場所に位置することができる。
【0041】
本発明は駆動手段を必要としないように記載されているが、いくつかの実施形態では、電気駆動手段を存在させることができる。システム要件に応じて、歯車組18を増減して、および/または異なる変速機16を手段として使用することができる。さらに、巻枠26および/または海藻出口ガイド24の形状、構成および位置は、異なる実施形態では異なり得る。
【0042】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を加え、かつ等価物をその要素に置き換えてもよいことを理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正を加えて特定の状況または材料を本発明の教示に適合させてもよい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態もしくは好ましい実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図されている。