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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】手指の伸展補助具
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A61H1/02 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018029426
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019141372
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713012172
【氏名又は名称】北本 美喜男
(72)【発明者】
【氏名】北本 美喜男
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-587(JP,A)
【文献】特開2011-92676(JP,A)
【文献】特開2000-175946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度があり、軽量な硬質板状本体と、
該硬質板状本体に第1指を固定するため、両端に面ファスナーを取り付けた帯状の第1指固定部材と、
第2~第5指を固定するため、一端に面ファスナーが取り付けられた帯状の指用固定部材と、
手根関節を固定するための、一端に面ファスナーが取り付けられた帯状の手根固定部材と、
該指用固定部材の他端に、該指用固定部材を通すためのリング部材と、
該手根固定部材の他端に、該手根固定部材を通すためのリング部材と、
該第1指固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる2つの第1指固定部材穴と、
該指用固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる2つの指用固定部材穴と、
該手根固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる2つの手根固定部材穴と、
該指用固定部材を穴に通した状態のそれぞれの該指用固定部材穴の近傍から該指用固定部材に延設される2つの該指用固定部材帯と、
該手根固定部材を穴に通した状態のそれぞれの該手根固定部材穴の近傍から該手根固定部材に延設される2つの該手根固定部材帯と、を備え
該指用固定部材帯と該手根固定部材帯とには互いを固定するための面ファスナーがそれぞれに設けられており、小指側の該指用固定部材穴の近傍から延設される該指用固定部材帯と、親指側の該手根固定部材穴の近傍から延設される該手根固定部材帯とを対向するように係合し、親指側の該指用固定部材穴の近傍から延設される該指用固定部材帯と、小指側の該手根固定部材穴の近傍から延設される該手根固定部材帯とを対向するように係合することで、それぞれの帯が手の甲の上で十字に係合され第三関節部分及び手の甲部分を該硬質板状本体側に押し付け、さらに該指用固定部材と該手根固定部材をそれぞれの該リング部材に通し折り返し締めながら止めることにより第三関節部分、手の甲、手首に圧力がかかり手指全体を伸展および固定することを特徴とする手指の伸展補助具。
【請求項2】
該硬質板状本体は第1指の部分だけが分かれた二股の手型をした板状に成型されたことを特徴とする請求項1記載の手指の伸展補助具。
【請求項3】
該硬質板状本体の表面の少なくとも一部に滑り止め部材を配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の手指の伸展補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脳卒中の後遺症である上肢麻痺により手指が握ったまま開きにくい第1指~第5指を伸展することができる手指の伸展補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上肢麻痺により手指が握ったまま開きにくくなっているため第1指~第5指を伸展することは、1人では困難であり、介護者を必要としてしいる。
【0003】
そこで、介護者の必要なく1人で着脱をすることができる手指の伸展補助具が必要である。
【0004】
手指の機能を改善させるための掌の背面、又は内面に対して配された袋状の内部に気体もしくは液体注入、排気して手根関節に対して受動的な開閉運動が起こされる手根関節のリハビリ用具(例えば特許文献1参照)が提案されている。また、第1指~第5指の伸展、手根の伸展を目的とする。手指の伸展補助具(例えば特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-16497号公報
【文献】実用新案登録第3188435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのような器具においては大掛かりであり、身体に障害のある使用者が自分で着脱するには困難である。又、袋体の内部に気体もしくは液体注入しなくてはならない為、介護者が必要となる。さらに第1指~第5指を伸展し、手根を固定する手指の伸展補助具があるがこの形状では第2~第5指の第3関節部分に頸縮が強く表われる人には本体への圧着、固定が安定していないため、伸展が不安定である。
【0007】
本発明は介護者の必要なく使用者が1人で着脱可能且つ、第1指~第5指の第3関節部分の伸展が安定して行える手指の伸展補助具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための請求項1記載の発明は、強度があり、軽量な硬質板状本体と、該硬質板状本体に第1指を固定するため、両端に面ファスナーを取り付けた帯状の該第1指固定部材と、第2~第5指を固定するため、一端に面ファスナーが取り付けられた帯状の指用固定部材と、手根関節を固定するため、一端に面ファスナーが取り付けられた帯状の手根固定部材と、該指用固定部材の他端に、該指用固定部材を通すためのリング部材と、該手根固定部材の他端に、該手根固定部材を通すためのリング部材と、該第1指固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる少なくとも2つ以上の第1指固定部材穴と、該指用固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる少なくとも2つ以上の指用固定部材穴と、該手根固定部材を通すための該硬質板状本体に設けられる少なくとも2つ以上の手根固定部材穴と、該指用固定部材を穴に通した状態の該指用固定部材穴の近傍から該指用固定部材に延設される少なくとも2つの該指用固定部材帯と、該手根固定部材を穴に通した状態の該手根固定部材穴の近傍から該手根固定部材に延設される少なくとも2つの該手根固定部材帯と、を備えそれぞれの該指用固定部材帯と該手根固定部材帯とを十字に係合させることを特徴とする。
【0009】
上述した硬質板状本体の厚さは0.5mm~1.2mm迄が好ましい。指用固定部材、手根固定部材に帯状の面ファスナーを設けたことにより、圧着、固定を安定して行える事ができる。
【0010】
上述した硬質板状本体に取り付けられる指用固定部材と手根固定部材に伸縮可能な面ファスナーを設け、十字に係合することにより指の第3関節部分の伸展が安定し、及び促進することを可能にした。
【0011】
上述した滑り止め部材は厚さ0.1mm~0.5mm迄が好ましい。滑り止め部材を設けたことにより手指の伸展を安定さすことができる。
【0012】
上述した硬質板状本体をひっくり返し第1指固定部材、指用固定部材、手根固定部材を差し替えることにより右手、左手どちらにも使用可能にした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の手指の伸展補助具に於いては、指用固定部材と手根固定部材の間に伸縮可能な該指用固定部材帯と該手根固定部材帯とを十字に係合させることにより、第2~第5指の第1~第3関節部分を硬質板状本体に圧着、固定する事ができ、安定した指の伸展を可能にすることができる。さらに、第1指~第5指が手の平側に握り込まれ、手根関節が90度近く内側に曲がり込み、その手指が胸腺部分に密着し、肩部、上腕部、前腕部、手根関節部、手の甲部、指先が体の中心に巻き込まれる状態となり、そのため上肢がつっぱり、痛みとなる。そこで意図的に、第1指~第5指の第1関節~第3関節、手根関節を伸展すると、手指の血流が良くなり、浮腫が改善され、一時的に手指に弛緩がおこり、手指が手の平側に握り込まれた為の前腕部のつっぱり、上腕部のつっぱり、巻き肩が緩和され、爪切り、洋服の着脱、手の平の洗浄等、要介護者だけでなく、介護者の負担を軽減する事ができ、上肢が体の内側に巻きこまれるのを防ぎ、痛みも緩和され、痛みが緩和されることにより要介護者のリハビリへの意欲、自立を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】硬質板状本体を示す図
図2】帯状の固定部材を示す図
図3】手指の伸展補助具を展開した表側を示す図
図4】手指の伸展補助具の装着手順を示す
図5】手指の伸展補助具の装着手順を示す図
図6】手指の伸展補助具の装着完了状態を示す図
図7】手指の伸展補助具の装着完了状態の裏側を示す図
図8】手根側からの伸展補助具の断面を示す図
図9】伸展補助具の使用状態を示す
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は強度があり、軽量で、ポリエチレンやポジプロピレンや硬化プラスチック材で形成され、第1指の部分だけが別れた二股の手形をした手指を圧着、固定するための該硬質板状本体1と、本体1の表面には手指が圧着しても手指が傷つくことが無く、物に当たっても本体1が傷つかないクッション性のある該滑り止め部材1aを示す図である。
【0016】
図2は第1指固定穴5aに通す帯状の第1指固定部材2aと、指用固定穴5bに通す帯状の指用固定部材2bと、手根固定穴5cに通す帯状の手根固定部材2cを示す図である。該指用固定部材2bの一端に他端側の該指用固定部材2bを通すための該リング部材3aと、該手根固定部材2cの一端に他端側の該手根固定部材2cを通すための該リング部材3bを示す図である。
【0017】
図3は本体1におす面ファスナー7cと、めす面ファスナー6eを設けた該第1指固定部材2aと、帯状の指用固定部材2bに面ファスナー4a、を設けた該指用固定部材2bと、帯状の手根固定部材2cに面ファスナー4b、を設けた該手根固定部材2cと、第1指用固定部材2aを固定穴5a、指用固定部材2bを固定穴5b,手根固定部材2cを固定穴5cに通した状態を示す図である。
【0018】
図4は、第2~第5指の第1~第3関節を本体1に圧着、固定するために2つの指用固定部材帯6a、6bと、2つの手根固定部材帯6c、6dとが面ファスナーで十字に係合される状態を示す図である。図で示すように、2つの指用固定部材帯6a、6bは該指用固定部材2bの該穴5bの近傍より延設され、2つの手根固定部材帯6c、6dは該手根固定部材2cの該穴5cの近傍より延設される。2つの指用固定部材帯6a、6bは伸縮性のめす面ファスナーであり、2つの手根固定部材帯6c、6dにはおす面ファスナー7a、7bが取り付けられており、指用固定部材帯6aと手根固定部材帯6d、指用固定部材帯6bと手根固定部材帯6cが各面ファスナーで係合されることで、手の甲で十字状態となり、本体1に第1~第3関節を圧着、固定することができる。
【0019】
図5は該指用固定部材帯6a、6bと、該手根固定部材帯6c、6dを固定したあとに該指用固定部材2bを該リング部材3aに通し、該手根固定部材2cを該リング部材3bに通したことを示す図である。
【0020】
図6は該指用固定部材2bを面ファスナー4aで係合し、該手根固定部材2cを面ファスナー4bで係合した状態を示す図である。
【0021】
図7図6の裏を示す図である。
【0022】
図8図6のA-Aの断面を示す図である。
【0023】
前記硬質板状本体1については、脳卒中の後遺症である上肢麻痺の手指は固く握りこんでいる。握り込んだ指先が手の平側に食い込み傷ができるほど強く握り込まれている人もいて、その手指を伸展圧着するには板状本体1に負荷がかかるそのために強度のある部材が好ましい。又、伸展補助具を装着したまま移動や他の動きの妨げにならず、ストレスになることなく使用するためにも軽量である事が好ましい。硬化プラスチック材で成型され第1指を別にして第2指~第5指を一体化したじゃまにならない形状で、硬質板状本体1には穴5a、5b、5cがあり、ベルトの入れ替えができるので、本体1を裏返すことにより右手、左手どちらにも使用できる構造であることが好ましい。
【0024】
指用固定部材2b及び手根固定部材2c、リング3a、3bに通し、折り返し、引きながら固定できるため、手指及び手根を本体1に、安定した圧着、固定をする事ができる部材で第1指の伸展、第2指~第5指の第1~第3関節、手根関節の伸展が行える構造であることが好ましい。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例図面9を参照して説明する。
【0026】
図9は手指の伸展補助具を装着した状態を示す図である。
【0027】
手指の伸展補助具を装着して座ったまま内側に曲がりやすい手首を麻痺のない方の手で補助しながらストレッチを行う。
【0028】
座ったまま体の横で内側に曲がりやすい手首を麻痺のないほうの手で補助しながら手の甲の方を反らし体重をかけることで、前腕部の筋肉のストレッチ効果が得られる。また屈曲した手根関節、手指の伸展を行うことは、血流、筋肉のバランスを保ち浮腫みを軽減することができる。関節を動かさない、関節が動かない事で関節包,靭帯などの弾力が失われ上肢の関節が固まってしまう、麻痺側の手指が握りこまれたままだと腕、肩、全体がつっぱって動かなくなってしまう、肩の可動性が制限され、肩周りのつっぱりを強める。指の第1関節、第2関節、第3関節を伸ばすことは、上肢の筋肉、筋膜のつっぱりの改善につながっていく、脳卒中の後遺症のように、動かせない、動かない要介護者は指を握り込む筋肉が非常に強く、指先や手のひらが開けず伸びない状態、腕全体が硬く動かなくなっている。そのような人が意図的に指の第1~第3関節を伸ばすことにより、前腕部のつっぱり、上腕部のつっぱり、肩周りの痛みが緩和される。手指の伸展補助具は続けて装着することで使用者本人が装着でき、指先、手の平が伸びない状態が改善され手の平の洗浄、爪切り、洋服の着脱等、要介護者だけでなく、介護者の負担までもが軽減され、要介護者のリハビリへの意欲、自立を促す事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
寝たきりになる原因の3割近くが脳卒中などの脳血管疾患になっており、脳卒中の患者は2020年には300万人を超すことが予想されている。脳卒中ではさまざまな障害が後遺症として残ってしまう、重い後遺症のために介護が必要となる原因の第1位になっている。手指の伸展補助具を使用することにより、日常生活での、手の平の洗浄、爪切り、洋服の着脱等、要介護者、介護者の負担を軽減、リハビリへの意欲の向上、促進において本発明は産業上の利用の可能性は高いものとおもわれる。
【符号の説明】
【0030】
1 :硬質板状本体
la :滑り止め部材
2a :帯状の第1指固定部材
2b :帯状の指用固定部材
2c :帯状の手根固定部材
3a :該指用固定部材を通すための該リング部材
3b :該手根固定部材を通すための該リング部材
4a :帯状の指用固定部材を係合するための面ファスナー
4b :帯状の手根固定部材を係合するための面ファスナー
5a :帯状の弟1指固定部材を通すための該穴
5b :帯状の指用固定部材を通すための該穴
5c :帯状の手根固定部材を通すための該穴
6a :該指用固定部材帯(めす面ファスナー)
6b :該指用固定部材帯(めす面ファスナー)
6c :該手根固定部材帯
6d :該手根固定部材帯
7a :おす面ファスナー
7b :おす面ファスナー
7c :おす面ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9