(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
C02F1/28 D
(21)【出願番号】P 2018234422
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-052116(JP,A)
【文献】特開昭57-078945(JP,A)
【文献】特開昭61-054209(JP,A)
【文献】米国特許第04416798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/00-20/28、
20/30-20/34
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材により排水処理を行う排水処理工程と、前記吸着材の基材に吸着性粉末(8)を付着させる付着工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有し、前記熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材の基材に吸着性粉末(8)を固着させることとし、前記吸着材を再び排水処理工程に供するようにしたことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記付着工程で吸着材を粘着材(21)に浸漬して吸着性粉末(8)を付着させるようにした請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記付着工程で吸着性粉末(8)を付着させた吸着材を乾燥する乾燥工程を有するようにした請求項1又は2記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記吸着剤の基材を中空殻体構造にするようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記付着工程で吸着材の基材に吸着性粉末(8)と共に機能性粉末(9,10)を付着させるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場排水その他の排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場排水その他の排水処理機構に関する提案があった(特許文献1)。
この排水処理機構は、排水中の汚れ物質を吸着する活性炭吸着槽と槽内流動機構とを有し、前記活性炭吸着槽に電解水を供給すると共に、前記活性炭吸着槽内で槽内流動機構により排水と活性炭とを流動させるようにしたものである。
そして、槽内が流動することにより一定の場所に停滞する部位が減少して電解水の洗浄作用を万遍なく活性炭に及ぼすことが出来るので、従来よりも効率良く分解することが出来る、というものである。
しかし、活性炭が消耗していくので活性炭自体を補充していく必要がありその分コストが掛かるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来より吸着材の補充コストが掛からない排水処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水処理方法は、吸着材により排水処理を行う排水処理工程と、前記吸着材の基材に吸着性粉末を付着させる付着工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有し、前記熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材の基材に吸着性粉末を固着させることとし、前記吸着材を再び排水処理工程に供するようにしたことを特徴とする。
【0006】
この排水処理方法では、前記吸着材の基材に吸着性粉末を付着させる付着工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有するので、基材に吸着性粉末を付着した吸着材を熱処理工程で活性化することが出来る。
また、熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材の基材に吸着性粉末を固着させることとしたので、吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解する熱処理工程を利用して、基材に吸着性粉末を付着した吸着材を活性化することが出来る。
【0007】
さらに、吸着材により排水処理を行う排水処理工程を有し、前記熱処理工程を経た吸着材を再び排水処理工程に供するようにしたので、経時的に目減りし消耗していくより高価な吸着材自体を補充することなく、より安価な吸着性粉末を補充しながら排水処理を行うことが出来る。
ここで、前記吸着材の基材として、活性炭、シャモット、炭化ケイ素(SiC)などを例示することが出来る。前記吸着性粉末として、粉状活性炭を例示することが出来る。
前記熱処理工程では、900℃以上で3時間加熱することを例示でき、これにより吸着材を活性化することが出来る。
【0008】
(2)前記付着工程で吸着材を粘着材に浸漬して吸着性粉末を付着させるようにしてもよい。
このように構成し、吸着材を粘着材に浸漬して吸着性粉末を付着させるようにすると、粘着材のバインダー性・粘着性を利用して吸着材の基材に吸着性粉末を付着させることが出来る。
ここで、前記粘着材として、タール・ピッチ、エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂、PVAなどを例示することが出来る。有機系の粘着材を使用すると、熱処理することにより粘着材自体がカーボンとしての吸着性を吸着性粉末と共に発揮することが出来る。前記吸着性粉末として、粉状活性炭を例示することが出来る。
【0009】
(3)前記付着工程で吸着性粉末を付着させた吸着材を乾燥する乾燥工程を有するようにしてもよい。
このように構成し、吸着性粉末を付着させた吸着材を、例えば熱処理工程より低い温度で乾燥する乾燥工程を有するようにすると、吸着性粉末を付着させた粘着材を乾燥してそのまま排水処理工程で使用することが出来る。
【0010】
(4)前記吸着剤の基材を中空殻体構造にするようにしてもよい。
このように構成し、吸着剤の基材を中空殻体構造にすると、保水部分が中空の殻体部分のみとなり含水量が減少し、熱処理工程で蒸発させる水量が減ずることによって該工程で要する熱エネルギーを削減することが出来る。
例えば、中実構造の吸着材(活性炭)の排水処理後の含水率が約50%であったのに対し、中空殻体構造の吸着材とすると含水率が約5%に低減して、熱処理工程における潜熱の熱負担を大きく低減することが出来る。
【0011】
(5)前記付着工程で吸着材の基材に吸着性粉末と共に機能性粉末を付着させるようにしてもよい。
このように構成し、付着工程で吸着材の基材に機能性粉末も付着させるようにすると、排水処理工程で他の付帯的な処理機能を付与することが出来る。
例えば、機能性粉末として陰、陽イオン交換樹脂を付着させるようにすると、排水処理に脱塩作用や海水淡水化作用を付与することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
経時的に目減りし消耗していくより高価な吸着材自体を補充することなく、より安価な吸着性粉末を補充しながら排水処理を行うことができるので、従来より吸着材の補充コストが掛からない排水処理方法を提供することが出来る。
また、熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材の基材に吸着性粉末を固着させることとしたので、吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解する熱処理工程を利用して、基材に吸着性粉末を付着した吸着材を活性化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の排水処理方法の実施形態1を説明するシステム・フロー図。
【
図2】この発明の排水処理方法の実施形態2を説明するシステム・フロー図。
【
図3】この発明の排水処理方法の実施形態3を説明する吸着材の構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔実施形態1〕
この排水処理方法は、吸着材により排水処理を行う排水処理工程と、前記吸着材の基材に吸着性粉末を付着させる付着工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有する。前記吸着材(の基材)として、活性炭を使用した。
図1に示すように、前記排水処理工程では、排水(高濃度有機廃液、センサS1で水質測定)を受け入れる混練槽1(吸着材が貯留されモータMで撹拌される流動床)と、このオーバーフロー水が導かれる吸着材沈降槽2と、やはりそのオーバーフロー水(センサS3で水質測定)がポンプP7で導かれる直列2連の吸着材槽(固定床)3、中間貯留槽4、ポンプP4で導かれる並列2連のUF膜濾過槽5により処理され、最終センサS4で水質測定して排出される。
前記吸着材沈降槽2は、並列2連の電解槽6との間で、センサS2で水質を測定しつつポンプP9により循環するようにしている。なお、測定した水質に応じて、食塩や次亜塩素酸などの電解促進剤を添加するようにしている。
【0015】
前記付着工程(付着槽7)で吸着材を粘着材に浸漬して、吸着性粉末を付着させるようにしている。
吸着材は付着槽7へは、吸着材沈降槽2の底部からポンプP8により抜き出し、吸着材槽3の底部からポンプP5,6により抜き出して送るようにしている。
前記粘着材として、タール・ピッチを使用した。このように有機系の粘着材を使用し、熱処理することにより粘着材自体がカーボンとしての吸着性を吸着性粉末と共に発揮することが出来た。また前記吸着性粉末8として、粉状活性炭を使用した。
前記付着工程で、吸着材の基材に吸着性粉末と共に機能性粉末を付着させるようにした。具体的には、機能性粉末として陰イオン交換樹脂9、陽イオン交換樹脂10を付着させるようにした。
【0016】
このように付着工程を経た吸着材を脱塩用工業用水で洗って、モータM駆動されるスクリュー11で熱処理工程へと送るようにした。スクリューでは吸着材を真空ポンプにより脱水し、流下した水は排水貯槽12に送るようにしている。この排水貯槽12からポンプP13により混練槽1に戻すようにした。
熱処理工程では、排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に、吸着材の基材に吸着性粉末を固着させることとした。
具体的には、ガス・バーナーを備えた熱風発生装置13からモータM駆動される耐熱ファンF2により熱風が熱処理槽14(回転駆動される)に吹き込まれ、この熱風はモータM駆動される耐熱ファンF1により熱風発生装置13に循環されるようにしている。この熱処理槽14で、吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に、吸着材の基材に吸着性粉末を固着させる。熱処理槽14内の粉塵は、ファンFを介してサイクロン装置15で処理するようにしている。
【0017】
排ガスはモータM駆動される耐熱ファンF3により再生吸着材貯留槽16を介して、並列2連のスクラバー装置17を介し、最終 排ガス濾過装置18を通して大気解放するようにしている。スクラバー装置17には電解槽からの電解液が供給されるようにしており、両槽内のスクラバー水をポンプP10,11で循環するようにしている。
そして、前記吸着材を再び排水処理工程に供するようにした。具体的には、再生吸着材貯留槽16から再生吸着材をポンプP12により引き出し、ポンプP1で混練槽1に、ポンプP2で吸着材槽3に送るようにした。
熱処理工程では、900℃以上で3時間加熱することにより、吸着材を活性化するようにした。
【0018】
次に、この排水処理方法の使用状態を説明する。
この排水処理方法では、前記吸着材の基材に吸着性粉末を付着させる付着工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有するので、基材に吸着性粉末を付着した吸着材を熱処理工程で活性化することが出来る。
また、熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材の基材に吸着性粉末を固着させることとしたので、吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解する熱処理工程を利用して、基材に吸着性粉末を付着した吸着材を活性化することが出来る。
さらに、吸着材により排水処理を行う排水処理工程を有し、前記熱処理工程を経た吸着材を再び排水処理工程に供するようにしたので、経時的に目減りし消耗していくより高価な吸着材自体を補充することなく、より安価な吸着性粉末を補充しながら排水処理を行うことができ、従来より吸着材の補充コストが掛からないという利点を有する。
【0019】
また、吸着材を粘着材に浸漬して吸着性粉末を付着させるようにしたので、粘着材のバインダー性・粘着性を利用して吸着材の基材に吸着性粉末を付着させることが出来た。
【0020】
さらに、付着工程で吸着材の基材に機能性粉末も付着させるようにしたので、排水処理工程で他の付帯的な処理機能を付与することが出来た。具体的には、機能性粉末として陰、陽イオン交換樹脂を付着させるようにしたので、排水処理に脱塩作用、海水淡水化作用を付与することが出来た。
【0021】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この排水処理方法は、前記付着工程(付着槽7)で吸着性粉末を付着させた吸着材を乾燥する乾燥工程(乾燥槽19)を有するようにした。この乾燥槽は、再生吸着材貯留槽16の後ろに付着槽7を設け、その次に配設している。そして、付着槽7では、粘着材21と吸着性粉末8とを両方練り込んでいる(吸着性粉末8は付着槽7では図示せず)。
このように吸着性粉末8を付着させた吸着材を、熱処理工程より低い温度で乾燥する乾燥工程を有するようにしたので、吸着性粉末を付着させた粘着材を乾燥してそのまま排水処理工程で使用することが出来た。
【0022】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図3に示すように、この排水処理方法では、前記吸着剤の基材を中空殻体構造にするようにした。
すなわち、吸着剤の基材母体20は中空殻体構造で、表面にφ0.5mm~0.8mmの微細孔を有する(
図3の左上)。そして、この基材上に粘着材21としてタール・ピッチが付着し、その表面に吸着性粉末8として粉状活性炭を付着させるようにしており、表面にφ0.005mm~0.008mmの微細孔を有する(
図3の左下)。
図3の右に、その拡大詳細部を示す。
【0023】
このように吸着剤の基材を中空殻体構造にすると、保水部分が中空の殻体部分のみとなり含水量が減少し、熱処理工程で蒸発させる水量が減ずることによって該工程で要する熱エネルギーを削減することが出来た。
具体的には、中実構造の吸着材(活性炭)の排水処理後の含水率が約50%であったのに対し、中空殻体構造の吸着材とすると含水率が約5%に低減して、熱処理工程における潜熱の熱負担を大きく低減することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0024】
従来より吸着材の補充コストが掛からないことによって、種々の排水処理の用途に適用することができる。具体的には、次のような処理に適用・応用することが出来る。
【0025】
雨水処理装置、スイミングプール水殺菌・浄化装置、浴場水殺菌・浄化装置、温泉水殺菌・浄化装置、クーリングタワー水殺菌・浄化装置、地下水・除鉄・マンガン殺菌・浄化装置(河川水・ダム水・池水)、電車・バス・トラック・乗用車・飛行機洗車排水再利用装置、物流用大型小型トラックBox荷台殺菌・洗浄装置、物流用パレット殺菌・洗浄処理装置、電着塗装の排水処理、合併処理浄化槽排水の再利用装置、金属切削油殺菌・浄化装置、食品加工工場排水処理方法(HACCP対策)、食品厨房排水殺菌・浄化処理装置、電着塗装排水処理方法、塗装ブース排水処理方法、金属・樹脂メッキ処理排水処理方法、排水中の重金属類除去装置、電解海水淡水化装置、電解軟水化装置、高濃度有機物含有廃液処理装置、土壌洗浄水殺菌浄化処理装置、陸上養殖水殺菌・浄化処理装置、水耕栽培水殺菌・浄化処理装置、工場空調機器運転の省エネ装置、循環水発電システム、等である。
【符号の説明】
【0026】
8 吸着性粉末
9 機能性粉末
10 機能性粉末
21 粘着材