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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/18 20060101AFI20220117BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B21D43/18 C
B25J15/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020045558
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146348
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】義元 崇晃
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/171064(WO,A1)
【文献】特許第6081602(JP,B2)
【文献】特許第6618957(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/147937(WO,A1)
【文献】特許第5274053(JP,B2)
【文献】特許第4584845(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/18
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とした場合に、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能なワーク搬送装置において、
本体部、前記本体部の一方の端部に枢着された右上アーム、該右上アームの先端に枢着された右下アーム、前記本体部の他方の端部に枢着された左上アーム、及び、該左上アームの先端に枢着された左下アーム、を有する搬送部と、
Y軸方向に延びるクロスバー、該クロスバーの上面に設けられたY軸方向に延びるレール部、該レール部に沿って移動可能な基部、該基部に取り付け固定された補助バー、前記クロスバーのホルダーに取り付けられた第1吸着手段、及び、前記補助バーに取り付けられた第2吸着手段、を有する吸着部と、
前記右下アームの先端、及び、前記クロスバー、を連結するための右連結部と、
前記左下アームの先端、及び、前記基部、を連結するための左連結部と、
を備え、
前記右連結部が前記右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記左連結部が前記左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記基部が、前記左下アームの先端、及び、前記左連結部と一体となって前記レール部に沿って移動可能となっており、
前記右連結部が、前記右下アームの先端に連結された右首部と、前記クロスバーの上面に連結された右頭部とからなり、
前記左連結部が、前記左下アームの先端に連結された左首部と、前記基部に連結された左頭部とからなり、
前記右頭部が前記右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記左頭部が前記左首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記右首部にはピン穴が設けられており、
前記右下アームの先端にはピン部が取り付けられており、
前記右首部のピン部が前記右下アームのピン穴に挿入されることにより、前記右首部のZ軸周りの回動が制限され、
前記左首部にはピン穴が設けられており、
前記左下アームの先端にはピン部が取り付けられており、
前記左首部のピン部が前記左下アームのピン穴に挿入されることにより、前記左首部のZ軸周りの回動が制限されるワーク搬送装置。
【請求項2】
搬送方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とした場合に、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能なワーク搬送装置において、
本体部、前記本体部の一方の端部に枢着された右上アーム、該右上アームの先端に枢着された右下アーム、前記本体部の他方の端部に枢着された左上アーム、及び、該左上アームの先端に枢着された左下アーム、を有する搬送部と、
Y軸方向に延びるクロスバー、該クロスバーの上面に設けられたY軸方向に延びるレール部、該レール部に沿って移動可能な基部、該基部に取り付け固定された補助バー、前記クロスバーのホルダーに取り付けられた第1吸着手段、及び、前記補助バーに取り付けられた第2吸着手段、を有する吸着部と、
前記右下アームの先端、及び、前記クロスバー、を連結するための右連結部と、
前記左下アームの先端、及び、前記基部、を連結するための左連結部と、
を備え、
前記右連結部が前記右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記左連結部が前記左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記基部が、前記左下アームの先端、及び、前記左連結部と一体となって前記レール部に沿って移動可能となっており、
前記吸着部が、前記クロスバーの上面に設けられたスペーサーを更に有し、
前記右連結部が、前記右下アームの先端、及び、前記スペーサー、を連結するためのものであり、
前記右連結部が、前記右下アームの先端に連結された右首部と、前記スペーサーに連結された右頭部とからなり、
前記左連結部が、前記左下アームの先端に連結された左首部と、前記基部に連結された左頭部とからなり、
前記右頭部が前記右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記左頭部が前記左首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記右下アームの先端と前記クロスバーとの距離が、前記左下アームの先端と前記クロスバーとの距離と略同一となっており、
前記右首部にはピン穴が設けられており、
前記右下アームの先端にはピン部が取り付けられており、
前記右首部のピン部が前記右下アームのピン穴に挿入されることにより、前記右首部のZ軸周りの回動が制限され、
前記左首部にはピン穴が設けられており、
前記左下アームの先端にはピン部が取り付けられており、
前記左首部のピン部が前記左下アームのピン穴に挿入されることにより、前記左首部のZ軸周りの回動が制限されるワーク搬送装置。
【請求項3】
搬送方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とした場合に、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能なワーク搬送装置において、
本体部、前記本体部の一方の端部に枢着された右上アーム、該右上アームの先端に枢着された右下アーム、前記本体部の他方の端部に枢着された左上アーム、及び、該左上アームの先端に枢着された左下アーム、を有する搬送部と、
Y軸方向に延びるクロスバー、該クロスバーの上面に設けられたY軸方向に延びるレール部、該レール部に沿って移動可能な基部、該基部に取り付け固定された補助バー、前記クロスバーのホルダーに取り付けられた第1吸着手段、及び、前記補助バーに取り付けられた第2吸着手段、を有する吸着部と、
前記右下アームの先端、及び、前記クロスバー、を連結するための右連結部と、
前記左下アームの先端、及び、前記基部、を連結するための左連結部と、
を備え、
前記右連結部が前記右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記左連結部が前記左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記基部が、前記左下アームの先端、及び、前記左連結部と一体となって前記レール部に沿って移動可能となっており、
前記右連結部が、前記右下アームの先端に連結された右首部と、前記クロスバーの上面に連結された右頭部とからなり、
前記左連結部が、前記左下アームの先端に連結された左首部と、前記基部に連結された左頭部とからなり、
前記右頭部が前記右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記左頭部が前記左首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記右首部には突出部が取り付けられており、
前記右下アームの先端には把持装置が取り付けられており、
前記右下アームの把持装置が前記右首部の突出部を把持することにより、前記右首部のZ軸周りの回動が制限され、
前記左首部には突出部が取り付けられており、
前記左下アームの先端には把持装置が取り付けられており、
前記左下アームの把持装置が前記左首部の突出部を把持することにより、前記左首部のZ軸周りの回動が制限されるワーク搬送装置。
【請求項4】
搬送方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とした場合に、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能なワーク搬送装置において、
本体部、前記本体部の一方の端部に枢着された右上アーム、該右上アームの先端に枢着された右下アーム、前記本体部の他方の端部に枢着された左上アーム、及び、該左上アームの先端に枢着された左下アーム、を有する搬送部と、
Y軸方向に延びるクロスバー、該クロスバーの上面に設けられたY軸方向に延びるレール部、該レール部に沿って移動可能な基部、該基部に取り付け固定された補助バー、前記クロスバーのホルダーに取り付けられた第1吸着手段、及び、前記補助バーに取り付けられた第2吸着手段、を有する吸着部と、
前記右下アームの先端、及び、前記クロスバー、を連結するための右連結部と、
前記左下アームの先端、及び、前記基部、を連結するための左連結部と、
を備え、
前記右連結部が前記右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記左連結部が前記左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、
前記基部が、前記左下アームの先端、及び、前記左連結部と一体となって前記レール部に沿って移動可能となっており、
前記吸着部が、前記クロスバーの上面に設けられたスペーサーを更に有し、
前記右連結部が、前記右下アームの先端、及び、前記スペーサー、を連結するためのものであり、
前記右連結部が、前記右下アームの先端に連結された右首部と、前記スペーサーに連結された右頭部とからなり、
前記左連結部が、前記左下アームの先端に連結された左首部と、前記基部に連結された左頭部とからなり、
前記右頭部が前記右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記左頭部が前記左首部に対しY軸周りに回動可能となっており、
前記右下アームの先端と前記クロスバーとの距離が、前記左下アームの先端と前記クロスバーとの距離と略同一となっており、
前記右首部には突出部が取り付けられており、
前記右下アームの先端には把持装置が取り付けられており、
前記右下アームの把持装置が前記右首部の突出部を把持することにより、前記右首部のZ軸周りの回動が制限され、
前記左首部には突出部が取り付けられており、
前記左下アームの先端には把持装置が取り付けられており、
前記左下アームの把持装置が前記左首部の突出部を把持することにより、前記左首部のZ軸周りの回動が制限されるワーク搬送装置。
【請求項5】
前記吸着部が、該クロスバーのホルダーに取り付けられたY軸方向に延びる補助レール部を更に有し、
前記補助バーが前記補助レール部に沿って移動可能となっている請求項1~4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記基部には、該基部を前記レール部に仮固定するためのブレーキが設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送装置に関し、更に詳しくは、2枚のワークを、該ワーク間の距離を変えながら、同時に搬送することができるダブルアーム式のワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工の分野においては、ワークをプレス機に連続して搬入又は搬出するために、ワーク搬送装置が用いられる。
その中でも、ワークを把持するアームへの当該ワークによる重量負荷を軽減すべく、ワークを、クロスバーを介して2本のアームで支持する、いわゆるダブルアーム式のワーク搬送装置が知られている。
【0003】
このようなワーク搬送装置としては、一対のアームユニットと、各アームユニット先端間に搭載されるワーク把持機構と、アームユニットを昇降させる昇降ユニットとを有し、ワーク把持機構によって保持したワークを、アームユニット及び昇降ユニットの作動により搬送するワーク搬送装置(例えば、特許文献1参照)、一対のアームユニットと、各アームユニット先端間に搭載されるワーク把持機構と、基体に対してアームユニットを昇降させる昇降機構とを有し、アームユニットは、各アームユニット先端を相互にスライド可能に結合するスライドアームを有し、このスライドアームを介してワーク把持機構を支持するようにしたワーク搬送装置(例えば、特許文献2)等が知られている。
【0004】
近年、プレス加工においては、生産性の向上、合理化の観点から、2枚のワークを同時に、且つ、2枚のワーク間の距離を変えながら搬送し、2枚のワークを同時にプレスすることがなされている。
このようなワーク搬送装置としては、プレスステージ間適所に配置される基体に回動可能に支持される第1アームユニット、及び第2アームユニットと、両アームユニットを昇降させる昇降ユニットと、第1アームユニットは第1スライドアームを備え、第2アームユニットは第2スライドアームを備え、第1スライドアームと第2スライドアームとが相互にスライド可能に結合されており、第1スライドアームが第1ワーク把持部を備え、第2スライドアームが第2ワーク把持部を備えるワーク搬送装置(例えば、特許文献3)、本体部と、該本体部に取り付けられた水平方向に回動自在な右アーム及び左アームと、右アームに連結されたクロスバーと、該クロスバーに取り付けられた第1吸着手段と、クロスバーに取り付けられたシフターと、該シフターに取り付けられた第2吸着手段と、を備え、シフターが取付部と、該取付部に対して移動する駆動部とからなり、駆動部が左アームに取り付けられた連結バーに枢着されており、右アーム及び左アームの回動に基づいて、駆動部がクロスバーに対して移動するようになっているワーク搬送装置(例えば、特許文献4)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-346699号公報
【文献】特開2007-216254号公報
【文献】特開2009-208080号公報
【文献】国際公開第2014/171064号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3及び4に記載のワーク搬送装置においては、2枚のワークを搬送しながら、その2枚のワーク間の距離を広げることが可能であるものの、その広げる距離はアーム間に取り付けられるスライドアームの移動幅に制限されるという欠点がある。
また、スライドアームを搭載している分だけアームに重量負荷が加わるため、慣性の観点から、アームの駆動速度が低下し、搬送精度も低下する傾向にある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、2枚のワークを搬送しながら、その2枚のワーク間の距離をより広げることができると共に、構造がシンプルでアームへの重量負荷も極力軽減することができるワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、吸着部において、クロスバーのホルダーにワークを吸着可能な第1吸着手段を取り付け、基部に取り付け固定された補助バーにワークを吸着可能な第2吸着手段を取り付け、基部を幅方向に移動させるレール部を、クロスバーに直接設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、(1)搬送方向をX軸方向とし、幅方向をY軸方向とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とした場合に、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能なワーク搬送装置において、本体部、本体部の一方の端部に枢着された右上アーム、該右上アームの先端に枢着された右下アーム、本体部の他方の端部に枢着された左上アーム、及び、該左上アームの先端に枢着された左下アーム、を有する搬送部と、Y軸方向に延びるクロスバー、該クロスバーの上面に設けられたY軸方向に延びるレール部、該レール部に沿って移動可能な基部、該基部に取り付け固定された補助バー、クロスバーのホルダーに取り付けられた第1吸着手段、及び、補助バーに取り付けられた第2吸着手段、を有する吸着部と、右下アームの先端、及び、クロスバー、を連結するための右連結部と、左下アームの先端、及び、基部、を連結するための左連結部と、を備え、右連結部が右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、左連結部が左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能となっており、基部が、左下アームの先端、及び、左連結部と一体となってレール部に沿って移動可能となっているワーク搬送装置に存する。
【0010】
本発明は、(2)右連結部が、右下アームの先端に連結された右首部と、クロスバーの上面に連結された右頭部とからなり、左連結部が、左下アームの先端に連結された左首部と、基部に連結された左頭部とからなり、右頭部が右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、左頭部が左首部に対しY軸周りに回動可能となっている上記(1)記載のワーク搬送装置に存する。
【0011】
本発明は、(3)吸着部が、該クロスバーの上面に設けられたスペーサーを更に有し、右連結部が、右下アームの先端、及び、スペーサー、を連結するためのものであり、右連結部が、右下アームの先端に連結された右首部と、スペーサーに連結された右頭部とからなり、左連結部が、左下アームの先端に連結された左首部と、基部に連結された左頭部とからなり、右頭部が右首部に対しY軸周りに回動可能となっており、左頭部が左首部に対しY軸周りに回動可能となっており、右下アームの先端とクロスバーとの距離が、左下アームの先端とクロスバーとの距離と略同一となっている上記(1)記載のワーク搬送装置に存する。
【0012】
本発明は、(4)右首部にはピン穴が設けられており、右下アームの先端にはピン部が取り付けられており、右首部のピン部が右下アームのピン穴に挿入されることにより、右首部のZ軸周りの回動が制限され、左首部にはピン穴が設けられており、左下アームの先端にはピン部が取り付けられており、左首部のピン部が左下アームのピン穴に挿入されることにより、左首部のZ軸周りの回動が制限される上記(2)又は(3)に記載のワーク搬送装置に存する。
または、右首部には突出部が取り付けられており、右下アームの先端には把持装置が取り付けられており、右下アームの把持装置が右首部の突出部を把持することにより、右首部のZ軸周りの回動が制限され、左首部には突出部が取り付けられており、左下アームの先端には把持装置が取り付けられており、左下アームの把持装置が左首部の突出部を把持することにより、左首部のZ軸周りの回動が制限される上記(2)又は(3)に記載のワーク搬送装置。
【0013】
本発明は、(5)吸着部が、該クロスバーのホルダーに取り付けられたY軸方向に延びる補助レール部を更に有し、補助バーが補助レール部に沿って移動可能となっている上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のワーク搬送装置に存する。
【0014】
本発明は、(6)基部には、該基部をレール部に仮固定するためのブレーキが設けられている上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のワーク搬送装置に存する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のワーク搬送装置においては、吸着部において、クロスバーのホルダーにワークを吸着可能な第1吸着手段を取り付け、基部に取り付け固定された補助バーにワークを吸着可能な第2吸着手段を取り付けているので、2枚のワークを同時に把持することができる。
そして、ワーク搬送装置においては、右連結部と左連結部とを備えるものとし、右連結部を右下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能なものとし、左連結部を左下アームの先端に対しZ軸周りに回動可能なものとすることにより、上述した2枚のワークを同時に把持し、且つ、X軸方向に搬送することが可能となる。
【0016】
このとき、ワーク搬送装置においては、基部を、クロスバーに直接設けられたレール部に沿って移動可能なものとしているので、2枚のワークを搬送しながら、その2枚のワーク間の距離を変更することができる。なお、レール部のY軸方向の長さは、クロスバーのY軸方向の長さ以下となるものの、クロスバーのY軸方向の長さに特段の制限はないため、レール部も所望の長さとすることができる。その結果、基部の移動幅を所望の範囲に広げることが可能となる。
また、クロスバーに直接レール部を設けているので、いわゆるスライドアームを用いない。これにより、アームに対する重量負荷を軽減することができる。その結果、重量負荷によるアームの駆動速度及び搬送精度の低下を抑制することができる。
【0017】
本発明のワーク搬送装置においては、右連結部を右首部と右頭部とからなるものとし、左連結部を左首部と左頭部とからなるものとし、右頭部を右首部に対しY軸周りに回動可能とし、左頭部を左首部に対しY軸周りに回動可能とすることにより、搬送時に、吸着手段をY軸周りに傾倒させることができる。これにより、ワークの把持される面が前後に傾斜している場合であっても、そのワークを吸着手段が把持することが可能となる。
また、ワークを把持し搬送する際の姿勢を、高速で且つ負荷がかからないように変更することも可能となる。
【0018】
本発明のワーク搬送装置においては、吸着部が、スペーサーを更に有する場合、スペーサーの高さを調整することで、右下アームの先端とクロスバーとの距離と、左下アームの先端とクロスバーとの距離とを同一とすることができる。これにより、ワークを搬送する際のバランスが向上すると共に、ワークによる重量負荷を左下アーム及び右下アームに極力均等に分散させることが可能となる。
また、スペーサーを用いることにより、右下アームの先端や右連結部等を特殊なサイズに変更する手間を省くことができる。
【0019】
本発明のワーク搬送装置においては、クロスバーに補助レール部を取り付け、補助バーを当該補助レール部に沿って移動可能なものとすることにより、基部のレール部に沿った移動の精度及び安定性を向上させることができる。
また、補助レール部をクロスバーに取り付けることにより、補助バーにおけるワークの重量負荷の一部を、補助レール部に負担させることができる。
【0020】
本発明のワーク搬送装置においては、右把持部が右突起部を把持し、左把持部が左突起部を把持することにより、右首部及び左首部のZ軸周りの回動をそれぞれ制限させることができる。これにより、これらのクロスバー(スペーサー)や基部への取り付け作業を簡単に行うことが可能となる。
【0021】
本発明のワーク搬送装置においては、ブレーキを設けることにより、吸着部2を、右連結部3a及び左連結部3bから着脱する際に、基部をレール部に仮固定することができる。これにより、その着脱作業を簡単に行うことが可能となる。
また、基部をレール部に仮固定することにより、離脱前のレール部に対する基部の位置を、装着時に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図2の(a)は、本実施形態に係るワーク搬送装置において、右下アーム及び左下アームに取り付けられたロック機構を説明するための上面図であり、図2の(b)は、図2の(a)に示す把持装置の透過側面図である。
図3図3は、図1に示すワーク搬送装置の右連結部、左連結部及び吸着部を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態に係るワーク搬送装置の吸着部を示す正面図である。
図5図5は、本実施形態に係るワーク搬送装置を用いてワークを搬送した状態を示す上面図である。
図6図6は、本実施形態に係るワーク搬送装置を用いてワークを傾斜させた状態を説明するための斜視図である。
図7図7は、他の実施形態に係るワーク搬送装置の吸着部を示す正面図である。
図8図8は、他の実施形態に係るワーク搬送装置における右下アームに対する右首部の回動、及び、左下アームに対する左首部の回動、を制限するためのロック機構を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0024】
なお、本明細書においては、ワークの搬送方向をX軸方向、ワークの幅方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向(上下方向)をZ軸方向としている。
また、X軸方向におけるワーク搬送の上流側を「前」、下流側を「後」とし、Y軸方向における一方側を「右」、他方側を「左」としている。
【0025】
本発明のワーク搬送装置は、2枚のワークを同時にX軸方向に搬送可能な装置である。そのため、例えば、プレス加工の分野においては、2枚のワークを同時にプレス機に搬入又は搬出するための装置として用いられる。なお、かかるプレス機は、単独で配置されるプレス機だけでなく、タンデムプレスラインのプレス機であってもよく、トランスファープレスラインのプレス機であってもよい。
【0026】
図1は、本発明に係るワーク搬送装置の一実施形態を示す斜視図である。
図1に示すように、ワーク搬送装置100は、搬送部1と、吸着部2と、搬送部1及び吸着部2を連結するための右連結部3a及び左連結部3bとを備える。
すなわち、ワーク搬送装置100は、搬送部1と吸着部2とが、右連結部3a及び左連結部3bを介して一体となっている。なお、一方で、搬送部1及び吸着部2は、それぞれ、右連結部3a及び左連結部3bから着脱自在となっている。
【0027】
ワーク搬送装置100においては、吸着部2が2枚のワークW1,W2を吸着把持し、それを、搬送部1がX軸方向に搬送する機能を有する。
このとき、後述するように、その2枚のワークW1,W2間の距離を変更することが可能となっている。なお、ワークW1,W2を搬送する際の駆動制御及び位置制御は、公知の制御装置を用いて行われる。
【0028】
ワーク搬送装置100において、搬送部1は、本体部10と、本体部10下側の一方の端部に枢着された右上アーム11aと、該右上アーム11aの先端に枢着された右下アーム12aと、本体部10下側の他方の端部に枢着された左上アーム11bと、該左上アーム11bの先端に枢着された左下アーム12bとを有する。
ここで、搬送部1において、右上アーム11a及び右下アーム12aと、左上アーム11b及び左下アーム12bとは、左右対称となるように取り付けられていること以外は、同じ構造となっている。
【0029】
本体部10は、例えば、図示しないプレス機のアップライト(支柱)に直接的に、又は、アップライトに架設されたフレーム等を介して間接的に、取り付けられる。これにより、ワーク搬送装置100全体がプレス機に取り付けられることになる。
この場合、プレス機においては、ワーク搬送装置100の本体部10が取り付けられた側から、当該ワーク搬送装置100によりワークが搬入又は搬出されることになる。
このように、ワーク搬送装置100においては、本体部10をプレス機に取り付けることができるので、スペースを取らず、コンパクトにワークの搬入又は搬出を行うことが可能となる。
なお、ワーク搬送装置100においては、プレス機(のアップライト)に対して昇降移動可能となるように、本体部10に、駆動機構(エアシリンダ、ボールねじ等)が取り付けられていてもよい。この場合、ワーク搬送装置100のメンテナンスや段取り替え等の作業を効率良く行うことが可能となる。
【0030】
右上アーム11a及び左上アーム11bは、その一端が、本体部10の両側の下部にそれぞれ設けられたZ軸方向に延びる枢着軸(図示しない)にそれぞれ枢着されている。これにより、右上アーム11a及び左上アーム11bは、本体部10に対して、Z軸周りに(XY面上で)回動可能となっている。
また、右上アーム11aは、その他端にZ軸方向に延びる枢着軸11a1が設けられている。そして、右下アーム12aは、その一端が右上アーム11aの枢着軸11a1に枢着されている。これにより、右下アーム12aは、右上アーム11aに対して、Z軸周りに(XY面上で)回動可能となっている。
また、左上アーム11bは、その他端にZ軸方向に延びる枢着軸11b1が設けられている。そして、左下アーム12bは、その一端が左上アーム11bの枢着軸11b1に枢着されている。これにより、左下アーム12bは、左上アーム11bに対して、Z軸周りに(XY面上で)回動可能となっている。
【0031】
そして、搬送部1において、右上アーム11aには、当該右上アーム11aを回転駆動させるためのモータM11、及び、右下アーム12aを回転駆動させるためのモータM12、が搭載されている。
同様に、左上アーム11bには、当該左上アーム11bを回転駆動させるためのモータM21、及び、左下アーム12bを回転駆動させるためのモータM22、が搭載されている。
【0032】
右下アーム12aは、その先端に、吸着部2と連結するための右連結部3aが取り付けられている。
同様に、左下アーム12bは、その他端に、吸着部2と連結するための左連結部3bが取り付けられている。
したがって、ワーク搬送装置100においては、右連結部3a及び左連結部3bにより、ダブルアーム式の搬送部1が、吸着部2に連結されることになる。
なお、右連結部3aと、左連結部3bとは、左右対称となるように取り付けられていること以外は、同じ構造となっている。
【0033】
具体的には、右連結部3aは、搬送部1の右下アーム12aの先端、及び、吸着部2の後述するスペーサーS、を連結する。
このとき、右連結部3aは、その右首部3a1が右下アーム12aの他端に設けられたZ軸方向に延びる枢着軸12a1に枢着される。これにより、右連結部3aは、右下アーム12aに対して、Z軸周りに(XY面上で)回動可能となる。
【0034】
同様に、左連結部3bは、搬送部1の左下アーム12bの先端、及び、吸着部2の基部21b、を連結する。
このとき、左連結部3bは、その左首部3b1が左下アーム12bの他端に設けられたZ軸方向に延びる枢着軸12b1に枢着される。これにより、左連結部3bは、左下アーム12bに対して、Z軸周りに(XY面上で)回動可能となる。
【0035】
図2の(a)は、本実施形態に係るワーク搬送装置において、右下アーム及び左下アームに取り付けられたロック機構を説明するための上面図であり、図2の(b)は、図2の(a)に示す把持装置の透過側面図である。なお、図2の(a)においては、便宜的に、右下アーム12a及び左下アーム12bが直線状となるように描いている。
図2の(a)に示すように、ワーク搬送装置100においては、右下アーム12aの先端の側部、及び、左下アーム12bの先端の側部に、それぞれ、ロック機構4が取り付けられている。
かかるロック機構4は、右下アーム12aに対する右首部3a1の回動、及び、左下アーム12bに対する左首部3b1の回動、を制限するためのものである。
【0036】
図2の(b)に示すように、ロック機構4は、先端に下方に突出するピン部41が設けられている。
一方、右首部3a1には、枢着軸12a1外側周縁の上面に、枢着軸12a1の周方向に沿うように複数のピン穴42が設けられている。
そして、ワーク搬送装置100においては、ピン部41をピン穴42に挿入することにより、右首部3a1のZ軸周りの回動が制限されることになる。なお、ピン穴42は複数設けられているので、ピン部41を挿入するピン穴42を適宜選択することにより、右首部3a1の向き(角度)を変えて固定することができる。
これにより、例えば、右連結部3aをクロスバー20のスペーサーSに着脱する作業を行う場合、右首部3a1のZ軸周りの回動を制限することにより、その作業を簡単に行うことが可能となる。
【0037】
なお、左下アーム12bの先端の側部に設けられるロック機構4は、上述した右下アーム12aの先端の側部に設けられるロック機構4と左右対称となっていること以外は同じ構成であるので説明を省略する。
これにより、例えば、左連結部3bをクロスバー20の基部21bに着脱する作業を行う場合、左首部3b1のZ軸周りの回動を制限することにより、その作業を簡単に行うことが可能となる。
【0038】
図3は、図1に示すワーク搬送装置の右連結部、左連結部及び吸着部を拡大して示す斜視図である。
図3に示すように、ワーク搬送装置100において、右連結部3aは、右下アーム12aの先端のZ軸方向に延びる枢着軸12a1に枢着された右首部3a1と、右首部3a1の長さ方向(Y軸方向)に延びる枢着軸(図示しない)に枢着され、後述するスペーサーSに連結された右頭部3a2とからなる。
右連結部3aにおいては、右首部3a1が右下アーム12aに対してZ軸周りに(XY平面上で)回動可能となっており、右頭部3a2が右首部3a1に対してY軸周りに(XZ面上で)回動可能となっている。
そして、右連結部3aの右頭部3a2は、平板状となっており、その下面がスペーサーSに取り付け固定される。
【0039】
同様に、左連結部3bは、左下アーム12bの先端のZ軸方向に延びる枢着軸12b1に枢着された左首部3b1と、左首部3b1の長さ方向(Y軸方向)に延びる枢着軸(図示しない)に枢着され、後述する基部21bに連結された左頭部3b2とからなる。
左連結部3bにおいては、左首部3b1が左下アーム12bに対してZ軸周りに(XY平面上で)回動可能となっており、左頭部3b2が左首部3b1に対してY軸周りに(XZ面上で)回動可能となっている。
そして、左連結部3bの左頭部3b2は、平板状となっており、その下面が基部21bに取り付け固定される。
【0040】
吸着部2は、クロスバー20と、クロスバー20の上面に設けられたスペーサーSと、クロスバー20の上面の中心から左側に設けられたY軸方向に延びるレール部21aと、レール部21aに沿って移動可能な基部21bと、基部21bに取り付け固定された一対の補助バー22bと、クロスバー20のホルダーに取り付けられたY軸方向に延びる一対の補助レール部22aと、クロスバー20のホルダーに取り付けられた複数の第1吸着手段V1と、各補助バー22bに取り付けられた複数の第2吸着手段V2と、を有する。
そして、第1吸着手段V1がワークW1を吸着把持しており、第2吸着手段V2がワークW1とは形状が異なるワークW2を吸着把持している。
【0041】
クロスバー20は、Y軸方向に延びる板状である。なお、クロスバー20のY軸方向の長さは任意に定めることができる。
また、クロスバー20は、前後側の側部に、いわゆるホルダーを複数有している。
そして、クロスバー20の右側領域の前後のホルダーには、ワークW1を吸着する第1吸着手段V1が取り付けられており、左側領域の前後のホルダーには、補助レール部22aが取り付けられている。なお、前後の第1吸着手段V1は互いに対称な構造であり、前後の補助レール部22aは互いに対称な構造である。
かかる第1吸着手段V1及び補助レール部22aは、共に、クロスバー20から着脱自在となっている。ちなみに、ワークの搬送時に、ワーク間の距離を変える必要が無い場合は、補助レール部22aをホルダーから取り外して、当該ホルダーに別の吸着手段を取り付けて用いることも可能である。
【0042】
ここで、第1吸着手段V1としては、特に限定されず、公知のものを適宜採用することができる。例えば、第1吸着手段V1としては、吸着パッド等が挙げられる。この場合、吸着パッド内を真空吸引することによりワークが吸着把持されることになる。
【0043】
補助レール部22aは、ホルダーに取り付け可能な接続部22a2と、接続部22a2により支持されY軸方向に延びる補助レール本体部22a1とからなる。したがって、補助レール本体部22a1は、クロスバー20の前後に一定の距離をおいて配置される。
なお、前側の補助レール本体部22a1、及び、後側の補助レール本体部22a1は、クロスバー20上面に設けられるレール部21aと互いに平行となっている。
補助レール部22aは、補助バー22bを案内する。なお、補助レール部22aと補助バー22bとの関係については後述する。
【0044】
ワーク搬送装置100において、クロスバー20の上面には、中心から稍右側にずれた位置に上述したスペーサーSが取り付け固定されている。
図4は、本実施形態に係るワーク搬送装置の吸着部を示す正面図である。
図4に示すように、スペーサーSは、当該スペーサーSの上面が右連結部3aの右頭部3a2の下面と接し、当該スペーサーSの下面がクロスバー20の上面と接した状態で、右頭部3a2及びクロスバー20と連結固定されている。すなわち、ワーク搬送装置100においては、スペーサーSが右頭部3a2とクロスバー20とにより挟持されており、右頭部3a2、スペーサーS及びクロスバー20の順で一体となっている。
したがって、ワーク搬送装置100において、右下アーム12aは、右連結部3a及びスペーサーSを介して、クロスバー20に取り付けられることになる。
【0045】
ここで、スペーサーSの高さは任意に定めることができる。例えば、右下アーム12aの先端とクロスバー20との距離H1が、左下アーム12bの先端とクロスバー20との距離H2と略同一となるように、スペーサーSの高さを調整することが好ましい。具体的には、スペーサーSの高さは、レール部21a及び基部21bの高さと一致するように調整することが好ましい。なお、距離H1,H2を測定する位置は、左右のアーム12a,12bで互いに対応する位置からクロスバー20までの距離であれば特に限定されない。
これにより、ワークW1,W2を搬送する際のバランスが向上すると共に、ワークW1,W2による重量負荷を右下アーム12a及び左下アーム12bに極力均等に分散させることが可能となる。
また、スペーサーSを用いることにより、右下アームの先端や右連結部等を特殊なサイズに変更する手間を省くことができる。
【0046】
図3に戻り、ワーク搬送装置100において、クロスバー20の上面には、中心から左側のY軸方向に延びる2本の線状体からなるレール部21aが設けられている。このように、レール部21aを2本の線状体からなるものとすることにより、基部21bの移動を安定的なものとすることができ、後述するブレーキも確実に行うことが可能となる。
レール部21aのY軸方向の長さは、クロスバー20のY軸方向の長さ以下であれば、任意に設定することができる。その結果、基部21bの移動幅を所望の範囲に広げることが可能となる。
【0047】
基部21bは、当該基部21bの上面が左連結部3bの左頭部3b2の下面と接した状態で左頭部3b2と連結固定されている。
そして、基部21bは、レール部21aに沿って移動可能となるように、当該レール部21aに取り付けられている。
したがって、ワーク搬送装置100において、左下アーム12bは、左連結部3b、基部21b及びレール部21aを介して、クロスバー20に取り付けられることになる。
【0048】
ワーク搬送装置100において、基部21bの下面には、基部21bをレール部21aに仮固定するための2つのブレーキ25が取り付けられている。このため、ブレーキ25は、基部21bと共に移動する。なお、2つのブレーキ25は、同じ構造となっている。
各ブレーキ25は、レール部21aの各線状体に対応するように配置されており、線状体をクランプすることが可能となっている。
したがって、ワーク搬送装置100においては、基部21bがレール部21aに沿って移動している場合、ブレーキ25がレール部21bの線状体をクランプすることにより、基部21bの移動が停止されるようになっている。なお、基部21bが停止している場合は、ブレーキ25がレール部21bの線状体をクランプすることにより、その状態が維持されることになる。
【0049】
ワーク搬送装置100においては、ブレーキ25を有しているので、吸着部2を、右連結部3a及び左連結部3bから着脱する際に、基部21bをレール部21aに仮固定することができる。これにより、その着脱作業を簡単に行うことができると共に、仮固定した状態を維持することで、離脱前のレール部21aに対する基部21bの位置を、装着時に再現することができる。
【0050】
ワーク搬送装置100において、基部21bには、クロスバー20の前後に突出するように、それぞれ補助バー22bが取り付け固定されている。このため、一対の補助バー22bは、基部21bと共に移動する。
補助バー22bは、基部21bに取り付けられた支持部22b2と、該支持部により支持されY軸方向に延びる棒状の補助バー本体部22b1とからなる。なお、前後の補助バー22bは互いに対称な構造である。
【0051】
ワーク搬送装置100において、補助バー本体部22b1には、ワークW2を吸着する第2吸着手段V2が取り付けられている。
なお、第2吸着手段V2としては、上述した第1吸着手段V1と同様のものを採用することができる。
【0052】
ワーク搬送装置100において、支持部22b2は、補助バー本体部22b1を支持するだけでなく、上述した補助レール本体部22a1に当接されている。
これにより、ワーク搬送装置100においては、基部21bがレール部21aに沿って移動すると、基部21bに取り付けられた補助バー22bの支持部22b2も、クロスバー20に取り付けられた補助レール部22aの補助レール本体部22a1に沿って移動するようになっている。
【0053】
次に、ワーク搬送装置100の動きについて説明する。
図5は、本実施形態に係るワーク搬送装置を用いてワークを搬送した状態を示す上面図である。
図5に示すように、本実施形態に係るワーク搬送装置100においては、まず、クロスバー20のホルダーに取り付けた第1吸着手段V1により右側のワークW1が吸着され、基部21bに取り付け固定された補助バー22bに取り付けられた第2吸着手段V2により左側のワークW2が吸着される。これにより、2枚のワークW1,W2が同時に把持されることになる。
【0054】
次に、ワーク搬送装置100においては、上述したように、右上アーム11a及び左上アーム11bが本体部10に対してZ軸周りに回動可能であり、右下アーム12aが右上アーム11aに対してZ軸周りに回動可能であり、右連結部3aが右下アーム12aに対してZ軸周りに回動可能であり、左上アーム11bが左上アーム11bに対してZ軸周りに回動可能であり、左連結部3bが左下アーム12bに対してZ軸周りに回動可能であるので、右上アーム11a及び右下アーム12a、並びに、左上アーム11b及び左下アーム12b、を適宜回動させることにより、基部21bがレール部21aに沿って移動する場合であっても、ワークW1,W2をX軸方向にスムーズに搬送することができる。
【0055】
そして、第2吸着手段V2、当該第2吸着手段V2が取り付けられた補助バー22b、及び、当該補助バー22bが取り付けられた基部21bは、一体となって、レール部21aに沿って例えば左側(図5でいう上側)に移動する。
このとき、補助バー22bは、補助レール部22aにより案内される。これにより、基部21bのレール部21aに沿った移動の精度及び安定性を向上させることができる。
また、補助レール部22aをクロスバー20に取り付けることにより、補助バー22bにおけるワークW1,W2の重量負荷の一部を、補助レール部22aに負担させることができる。
これらのことにより、ワーク搬送装置100においては、2枚のワークを搬送しながら、その2枚のワーク間の距離を変更することができる。
なお、基部21bのレール部21a上の移動距離は、コンピュータのプログラムによって設定され、当該移動距離を移動した時点で、ブレーキ25により基部21bの移動が停止される。
【0056】
次に、本体部10の前側から後側に搬送されたワークW1、W2は、所定の位置にて、第1吸着手段V1からワークW1が離され、第2吸着手段V2からワークW2が離される。
その後、再び、右上アーム11a及び右下アーム12a、並びに、左上アーム11b及び左下アーム12bを、本体部10の後側から前側に移動させることにより、各アームは、元の位置に戻ることになる。
【0057】
ワーク搬送装置100において、搬送後のワークW1とワークW2との距離D2は、搬送前のワークW1とワークW2との距離D1より大きくなっている。なお、設定されたコンピュータのプログラムによっては、搬送後のワークW1とワークW2との距離D2を、搬送前のワークW1とワークW2との距離D1よりも小さくすることも可能である。
【0058】
このように、ワーク搬送装置100においては、搬送中に、基部21bをレール部21aに沿って移動させることにより、ワークW1,W2間の距離を変えることができる。すなわち、ワーク搬送装置100は、簡単な構造でありながら、2枚のワークを、該ワーク間の距離を変えながら、同時に搬送することができる。
【0059】
図6は、本実施形態に係るワーク搬送装置を用いてワークを傾斜させた状態を説明するための斜視図である。
図6に示すように、ワーク搬送装置100は、右頭部3a2が右首部3a1に対してY軸周りに回動可能であり、左頭部3b2が左首部3b1に対してY軸周りに回動可能であるので、右頭部3a2及び左頭部3b2を適宜回動させることにより、ワークW1,W2の搬送中であっても、第1吸着手段V1及び第2吸着手段V2を、Y軸周りに傾倒させることができる。すなわち、いわゆるチルト機能を付与することができる。
これにより、ワークW1,W2の把持される面が前後に傾斜している場合であっても、そのワークW1,W2を第1吸着手段V1及び第2吸着手段V2が把持することが可能となる。
また、ワークW1,W2を把持し搬送する際の姿勢を、高速で且つ負荷がかからないように変更することも可能となる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0061】
本実施形態に係るワーク搬送装置においては、吸着部2が、スペーサーSを有しているが、スペーサーSは必須ではない。
図7は、他の実施形態に係るワーク搬送装置の吸着部を示す正面図である。
図7に示すように、他の実施形態に係るワーク搬送装置においては、右頭部3a3が、スペーサーを介さずに、直接、クロスバー20に取り付けられている。
この場合、右連結部の右頭部3a3を特殊なサイズに変更する必要がある。
【0062】
本実施形態に係るワーク搬送装置においては、右下アーム12aに対する右首部3a1の回動、及び、左下アーム12bに対する左首部3b1の回動、を制限するためのロック機構4が設けられているが(図2参照)、ロック機構の構造はこれに限定されない。
図8は、他の実施形態に係るワーク搬送装置における右下アームに対する右首部の回動、及び、左下アームに対する左首部の回動、を制限するためのロック機構を説明するための斜視図である。
図8に示すように、他の実施形態に係るワーク搬送装置において、ロック機構4aは、右首部3a1の側部に取り付けられた突出部41aと、右下アーム12aの先端の側部に取り付けられた把持装置42aとからなる。
そして、把持装置42aが突出部41aを把持することにより、右首部3a1のZ軸周りの回動を制限することができる。
なお、この場合、左下アーム12bの先端の側部にも同様のロック機構4aが設けられる。これにより、左首部3b1のZ軸周りの回動を制限することができる。
【0063】
本実施形態に係るワーク搬送装置100において、基部21bの下面には、基部21bをレール部21aに仮固定するための2つのブレーキ25が取り付けられており、当該ブレーキ25は、レール部21aの各線状体に対応するように配置されており、線状体をクランプすることが可能となっているが、ブレーキの構造はこれに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のワーク搬送装置は、例えば、プレス加工において、ワークをプレス機に搬送するための装置として用いられる。本発明のワーク搬送装置によれば、2枚のワークを搬送しながら、その2枚のワーク間の距離をより広げることができると共に、構造がシンプルでアームへの重量負荷も極力軽減することができる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・搬送部
10・・・本体部
11a・・・右上アーム
11a1,11b1,12a1,12b1・・・枢着軸
11b・・・左上アーム
12a・・・右下アーム
12b・・・左下アーム
2・・・吸着部
20・・・クロスバー
21a・・・レール部
21b・・・基部
22a・・・補助レール部
22a1・・・補助レール本体部
22a2・・・接続部
22b・・・補助バー
22b1・・・補助バー本体部
22b2・・・支持部
25・・・ブレーキ
3a・・・右連結部
3a1・・・右首部
3a2,3a3・・・右頭部
3b・・・左連結部
3b1・・・左首部
3b2・・・左頭部
4,4a・・・ロック機構
41・・・ピン部
41a・・・突出部
42・・・ピン穴
42a・・・把持装置
100・・・ワーク搬送装置
M11,M12,M21,M22・・・モータ
S・・・スペーサー
V1・・・第1吸着手段
V2・・・第2吸着手段
W1,W2・・・ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8