(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】かつら、及び、増毛具
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
A41G3/00 D
(21)【出願番号】P 2017059989
(22)【出願日】2017-03-24
【審査請求日】2020-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢内 大輔
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-060004(JP,A)
【文献】特開平02-264006(JP,A)
【文献】特開2014-159656(JP,A)
【文献】特開2010-196197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸状部材どうしが部分的に一体に編まれて形成されたベース部と、
前記複数の糸状部材の前記ベース部を除く部分で形成された複数の毛髪と、
前記ベース部が固定され、かつら装着者の頭部に載置されるかつらベースと、
を備え
、
前記複数の毛髪と前記ベース部とは、互いに同一の糸状部材により形成されている
ことを特徴とするかつら。
【請求項2】
複数の糸状部材どうしが部分的に一体に編まれて形成されたベース部と、
前記複数の糸状部材の前記ベース部を除く部分で形成された複数の毛髪と、
を備え
、
前記複数の毛髪と前記ベース部とは、互いに同一の糸状部材により形成されている
ことを特徴とする増毛具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の頭部に装着されるかつら、及び、かつらや人の頭部に装着される増毛具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かつらや人の頭部に装着される増毛具として、テグス等の線状部材と、この線状部材に植毛された複数の毛髪と、を備えるすだれ状のみの毛が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、かつらは、かつら装着者の頭部に載置されるかつらベースと、このかつらベースに植毛された複数の毛髪と、を備える。かつらベースは、例えば、ネット部材であるか、或いは、合成樹脂により形成される人工皮膚である。
【0004】
上述の増毛具やかつらにおいては、増毛具の線状部材やかつらのかつらベースが外部に露出すると、増毛具やかつらを装着していることが他者に知られることになる。そのため、例えば、増毛具であれば、みの毛の線状部材を毛髪と同じ色に形成することが行われ、かつらベースであれば、ネット部材又は人工皮膚を毛髪又は皮膚の色と同じ色に形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、増毛具の線状部材やかつらのかつらベースを毛髪又は皮膚と同じ色に形成しても、線状部材やかつらベースは、毛髪とは異なる部材であることから、外部に露出することで毛髪とは異なるものであることが視認され得る。そのため、増毛具やかつらを装着していることが他者に知られるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、外観を自然にすることができるかつら及び増毛具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの観点では、かつらは、複数の糸状部材どうしが部分的に一体に編まれて形成されたベース部と、前記複数の糸状部材の前記ベース部を除く部分で形成された複数の毛髪と、前記ベース部が固定され、かつら装着者の頭部に載置されるかつらベースと、を備え、前記複数の毛髪と前記ベース部とは、互いに同一の糸状部材により形成されている。
【0010】
別の1つの観点では、増毛具は、複数の糸状部材どうしが部分的に一体に編まれて形成されたベース部と、前記複数の糸状部材の前記ベース部を除く部分で形成された複数の毛髪と、を備え、前記複数の毛髪と前記ベース部とは、互いに同一の糸状部材により形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、かつら及び増毛具の外観を自然にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る増毛具を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る増毛具の製造方法を説明するための説明図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るかつらを示す平面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係るかつらの一部を示す斜視図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態に係るかつらの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るかつら及び増毛具について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施の形態に係る増毛具10を示す正面図である。
【0014】
図2は、増毛具10の製造方法を説明するための説明図である。
図1に示す増毛具10は、複数の毛髪11と、これらの複数の毛髪11の一端に位置する例えば線状のベース部12と、を備え、後述するかつらや人の頭部に固定される。なお、増毛具としては、線状部材(例えばベース部12)と、この線状部材に植毛された複数の毛髪(例えば毛髪11)と、を備えるすだれ状のみの毛が一例として挙げられるが、線状部材(ベース部12)に代えて、面状(例えば帯状)の部材が用いられてもよい。
【0015】
複数の毛髪11とベース部12とは、糸状部材により一体に編まれて形成されている。一例ではあるが、毛髪11及びベース部12を一体に編むためには、公知の立毛製品(例えば、特開2013-255660号公報、特開2001-17303号公報、特開2002-212864号公報参照)のように、ダブルラッセル機などを用いて立体編地を形成するとよい。例えば、互いに対向する2本の線状のベース地に対して、複数の毛髪11及びベース部12となる線状部材を編み込み、
図2に示すように、2つのベース部12と、これらの間に位置する輪(パイル)Pを形成する。そして、2つのベース部12の間の中央で輪Pを切断することにより1つの輪Pから2本ずつ計4本の毛髪11を形成する。これにより、毛髪11と線状のベース部12とが一体に編まれた増毛具10を2つ製造することができる。なお、線状のベース地は、目立たないものであれば残してもよいが、例えば、ベース部12内から引き抜くことで或いは溶剤で溶かすことで、増毛具10から除去するとよい。
【0016】
また、2本ではなく1本のベース地に対して、線状部材(複数の毛髪11及びベース部12)を編み込む場合には、ベース部12から突出するように複数の輪を形成し、この輪の先端を切断することで1つの輪から2本の毛髪11を形成すればよい。
【0017】
ここでは、毛髪11及びベース部12が一体に編まれて形成されている例について説明したが、ベース部12に、このベース部12と同一の糸状部材からなる複数の毛髪11の各々を植毛してもよい。すなわち、ベース部12とは別体の毛髪11をベース部12に植毛することで、毛髪11をベース部12に固定してもよい。なお、ここでいう同一の糸状部材は、例えば、組成(糸状部材を構成する複数成分の成分比を含む。)が同一の糸状部材であり、毛髪11及びベース部12は、この同一の糸状部材からなる。また、同一の糸状部材は、同一色、同一太さであることが望ましくはあるが、例えば、1本の毛髪11が根元側と先端側とで異なる色に染色されることや、色が連続的に変化するように染色されることもあることから、毛髪11とベース部12とが必ずしも同一色でなくともよい。また、毛髪11とベース部12とが別体である場合の同一の糸状部材は、例えばベース部12の強度を高めるためにベース部12の太さを太くするなど、毛髪11とベース部12とで太さが異なっていてもよい。
【0018】
図3は、本実施の形態に係るかつら1を示す平面図である。
図4は、かつら1の一部を示す斜視図である。
図3に示すかつら1は、上述の増毛具10と、かつらベース20と、複数の毛髪30と、を備える。
【0019】
かつらベース20は、かつら1の装着者の頭部に載置されるため、例えば曲面形状を呈する。一例ではあるが、かつらベース20は、
図3及び
図4に示すように、中央部21と、4本の帯状部22と、周縁部23と、前部ネット24と、後部ネット25と、を有する。なお、かつらベース20の形状や構造は、一例に過ぎず、例えば、かつらベース20の一部又は全体が合成樹脂からなる人工皮膚などの網目がないものであってもよい。
【0020】
中央部21は、かつらベース20の左右方向の中央に配置されている。また、中央部21は、密網ネット21aと、この密網ネット21aの左端及び右端の各々に沿って設けられた計2つの中央帯状部21bと、を有する。
【0021】
密網ネット21aは、前部ネット24及び後部ネット25よりも網目が細かいネットである。中央帯状部21bは、帯状部22よりも粗く編まれており、左右方向に凹凸形状に突出する。
【0022】
中央部21及び帯状部22は、円形枠状の周縁部23内において前後方向に架け渡されるように配置されている。周縁部23は、かつらベース20の周囲から凹凸形状に突出する網目を有する。
【0023】
4本の帯状部22は、中央部21よりも左側に2本、右側に2本配置されている。帯状部22は、例えば、網目を有するリボン部材(レース部材)である。なお、周縁部23が枠状に形成されているため、帯状部22の左右には隙間が生じ、この隙間からかつら1の装着者の頭髪が引き出される。
【0024】
前部ネット24は、かつらベース20の前部に配置された半楕円形状のネットであり、後部ネット25は、かつらベース20の後部に配置された半楕円形状のネットである。なお、前部ネット24は、半楕円形状の曲線部分が周縁部23の前部に沿うように配置され、後部ネット25は、半楕円形状の曲線部分が周縁部23の後部に沿うように配置されている。
【0025】
毛髪30は、例えば人工毛髪であるが、加工人毛などの、人工毛髪以外の毛髪であってもよい。なお、
図3において、毛髪30は、中央部21、帯状部22、周縁部23、前部ネット24、及び後部ネット25のそれぞれに植毛された2本ずつのみを図示するが、実際には、かつらベース20の全体に亘って例えば密集するように植毛される。
【0026】
上述の増毛具10は、ベース部12が周縁部23の前部に沿って曲線状となるように、例えばベース部12において縫い付けられることで周縁部23(かつらベース20)に固定されている。なお、増毛具10は、毛髪11を周縁部23に結び付けることにより周縁部23(かつらベース20)に固定されていてもよいし、ベース部12又は毛髪11が、かつらベース20に植毛された毛髪30に固定されることで、間接的にかつらベース20に固定されてもよい。
【0027】
以上説明した一実施の形態では、かつら1及び増毛具10は、複数の毛髪11及びこれらの毛髪11の一端に位置するベース部12を備える。また、複数の毛髪11とベース部12とは、例えば、互いに同一の糸状部材により一体に編まれて形成されていることで、或いは、線状のベース部12に、このベース部12と同一の糸状部材からなる複数の毛髪11の各々を植毛することで、互いに同一の糸状部材により形成されている。
【0028】
このように、複数の毛髪11とベース部12とが互いに同一の糸状部材により形成されていることで、ベース部12が外部から視認されるのを防ぐことができる。よって、本実施の形態によれば、かつら1及び増毛具10の外観を自然にすることができる。
【0029】
また、本実施の形態では、かつら1は、このかつら1の装着者の頭部に載置されるかつらベース20を更に備え、ベース部12及び複数の毛髪11のうち少なくとも一方は、かつらベース20に直接的に又は間接的に固定される。そのため、かつら1に増毛具10を配置することでかつら1を容易に製造しても、増毛具10のベース部12が外部から視認されるのを防ぐことができる。
【0030】
図5は、他の実施の形態に係るかつら100の一部を示す斜視図である。
図5に示すように、かつら100は、このかつら100の装着者の頭部に載置されるかつらベース101と、このかつらベース101に植毛された複数の毛髪102と、を備える。
【0031】
かつらベース101は、かつら100の装着者の頭部に載置されるため、例えば曲面形状を呈する。かつらベース101と複数の毛髪102とは、上述の増毛具10の毛髪11及びベース部12のように、互いに同一の糸状部材により形成されている。より好ましくは、かつらベース101及び毛髪102は、互いに同一の糸状部材により一体に編まれて形成されている。
【0032】
なお、面状のかつらベース101を毛髪102とともに同一の糸状部材により一体に編むためには、増毛具10と同様に、公知の立毛製品のようにダブルラッセル機などを用いて立体編地を形成するとよい。例えば、互いに対向する2つの面状のベース地に対して、かつらベース101及び複数の毛髪102となる線状部材を編み込み、2つのかつらベース101と、これらの間に位置する輪(パイル)を形成する。そして、2つのかつらベース101の間の中央で輪を切断することにより1つの輪から2本ずつ計4本の毛髪102を形成する。これにより、かつらベース101と複数の毛髪102とが一体に編まれたかつらベース101を2つ製造することができる。なお、面状のベース地は、目立たないものであれば残してもよいが、例えば溶剤で溶かすことで、かつら100から除去するとよい。
【0033】
また、2つではなく1つの面状のベース地に対して、線状部材(かつらベース101及び複数の毛髪102)を編み込む場合には、かつらベース101から突出するように複数の輪を形成し、この輪の先端を切断することで1つの輪から2本の毛髪102を形成すればよい。
【0034】
以上のように、
図5に示す他の実施の形態では、複数の毛髪102と互いに同一の糸状部材により形成されるのが、増毛具10のベース部12ではなく、かつらベース101である。そのため、かつらベース101と複数の毛髪102とが互いに同一の糸状部材により形成されていることで、かつらベース101が外部から視認されるのを防ぐことができる。よって、本実施の形態によっても、かつら100の外観を自然にすることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 かつら
10 増毛具
11 毛髪
12 ベース部
20 かつらベース
21 中央部
21a 密網ネット
21b 中央帯状部
22 帯状部
23 周縁部
24 前部ネット
25 後部ネット
30 毛髪
100 かつら
101 かつらベース
102 毛髪
P 輪