(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】メカニカルシールの回り止め機構
(51)【国際特許分類】
F16J 15/36 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
F16J15/36 Z
(21)【出願番号】P 2017103594
(22)【出願日】2017-05-25
【審査請求日】2019-11-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503227553
【氏名又は名称】イーグルブルグマンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】喜藤 雅和
(72)【発明者】
【氏名】穴沢 貴光
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125665(WO,A1)
【文献】実開昭61-67470(JP,U)
【文献】特開2013-160122(JP,A)
【文献】特開昭55-51167(JP,A)
【文献】特開平9-329247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/34-15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の回転軸が挿通される静止側の被取付部材と、前記被取付部材に固定された静止側のシールケースと、該シールケースに保持され
、静止密封環及び該静止密封環との相対回転が規制されたリテーナから構成された静止密封側部材と、前記回転軸に保持され前記回転軸とともに回転し前記静止密封環と摺接する回転密封環と、前記静止密封環と前記回転密封環とを軸方向に圧接状態に付勢するスプリングと、を備えるメカニカルシールにおける前記
リテーナに形成された凹部に前記シールケースに固定されたピン部材を係止させることで前記
リテーナを前記シールケースに対して回り止めするメカニカルシールの回り止め機構であって、
前記ピン部材は、前記シールケースを径方向に貫通して形成される孔部に挿通される胴部と、前記孔部の内径よりも太径である頭部とを有し、
前記ピン部材の前記頭部の裏面は平面形状であり、かつ、前記孔部の外径側開口の周囲表面は平面形状であり、
前記ピン部材の前記胴部を、前記シールケースの外径側から該シールケースの外径方向に開放された前記孔部に挿通して、互いに平面形状同士の前記頭部の裏面を前記孔部の周囲表面に当接させることにより、前記胴部の先端部が前記
リテーナの前記凹部に係止されることを特徴とするメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項2】
前記ピン部材には雄ねじ部が形成され、前記孔部には前記ピン部材の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項3】
前記雄ねじ部は、前記胴部の前記先端部よりも前記頭部側に形成され、前記胴部の前記先端部には形成されていないことを特徴とする請求項2に記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項4】
前記シールケースに前記ピン部材の前記頭部の外径より大径に形成された大径孔部に、前記ピン部材の前記頭部が挿入されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項5】
前記大径孔部は、前記ピン部材の頭部が挿入される第1大径部と、該第1大径部よりも外径側に前記第1大径部より大径に形成された第2大径部とを備えていることを特徴とする請求項4に記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項6】
前記ピン部材よりも外径側に抜け止め部材が係合していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【請求項7】
前記ピン部材よりも外径側に抜け止め部材が係合し、
前記抜け止め部材には雄ねじ部が形成され、前記大径孔部には前記抜け止め部材の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のメカニカルシールの回り止め機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被密封流体の漏れを制限するメカニカルシールにおける密封環の回り止め機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メカニカルシールは、回転密封環(回転密封側部材)と、静止密封環(静止密封側部材)と、回転密封環と静止密封環を回転軸の軸方向に付勢するスプリングとからなり、回転密封環の摺動面と静止密封環の摺動面との間において被密封流体の漏れを制限するものである。例えば、特許文献1に記載されたメカニカルシールは、回転密封環は回転軸に取り付けられて回転軸と同期回転するようになっており、静止密封環は、ハウジングに固定されたシールケースに螺合された回り止め機構であるピン部材の頭部が静止密封環に形成された穴に嵌合することで、ハウジング側に対して回転が規制された状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-257723号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなメカニカルシールにおける静止密封環の回り止め機構に用いられるピン部材は、シールケースに内径側から径方向に向けて螺合により固定されているため、回転軸の回転に伴う振動等によりピン部材の螺合が緩むと、ピン部材の頭部が回転軸に接触する可能性があり、回転軸の回転性能の低下やメカニカルシールの破損等を引き起こす虞があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、回転軸の回転性能の低下やメカニカルシールの破損を防止できるメカニカルシールの回り止め機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のメカニカルシールの回り止め機構は、
回転機械の回転軸が挿通される被取付部材と、前記被取付部材に固定されたシールケースと、該シールケースに保持された少なくとも静止密封環を含む静止密封側部材と、前記回転軸に保持され前記回転軸とともに回転し前記静止密封環と摺接する回転密封環と、前記静止密封環と前記回転密封環とを軸方向に圧接状態に付勢するスプリングと、を備えるメカニカルシールにおける前記静止密封側部材に形成された凹部に前記シールケースに固定されたピン部材を係止させることで前記静止密封側部材を前記シールケースに対して回り止めするメカニカルシールの回り止め機構であって、
前記ピン部材は、前記シールケースを径方向に貫通して形成される孔部に挿通される胴部と、前記孔部の内径よりも太径である頭部とを有し、前記シールケースの外径側から前記孔部を挿通する前記胴部の先端部が前記静止密封側部材の前記凹部に係止されることを特徴としている。
この特徴によれば、シールケースに固定されるピン部材は、シールケースに形成された孔部に外径側から挿通されて胴部の先端部が静止密封側部材の凹部に係止されるとともに、頭部が孔部の内径より太径であるためシールケースの内径方向への移動を規制されていることから、回転軸の回転に伴う振動等によってピン部材の先端部が内径方向に移動して回転軸に接触する虞がなく、回転軸の回転性能の低下やメカニカルシールの破損等を防止することができる。
【0007】
前記ピン部材には雄ねじ部が形成され、前記孔部には前記ピン部材の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、螺合によりピン部材の頭部が孔部の周囲に押圧されることから、シールケースに対してピン部材を強固に固定することができる。
【0008】
前記雄ねじ部は、前記胴部の前記先端部よりも前記頭部側に形成され、前記胴部の前記先端部には形成されていないことを特徴としている。
この特徴によれば、ピン部材の胴部の先端部が静止密封側部材を損傷させ難い。
【0009】
前記シールケースに前記ピン部材の前記頭部の外径より大径に形成された大径孔部に、前記ピン部材の前記頭部が挿入されることを特徴としている。
この特徴によれば、ピン部材の頭部の全部または一部が大径孔部内に埋設されるため、ピン部材の長さ寸法を短くすることができる。
【0010】
前記大径孔部は、前記ピン部材の頭部が挿入される第1大径部と、該第1大径部よりも外径側に前記第1大径部より大径に形成された第2大径部とを備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、外径側から第2大径部内を覗いた際に、ピン部材の状態、即ち適切な螺合状態であるか等を確認し易い。
【0011】
前記ピン部材よりも外径側に抜け止め部材が係合していることを特徴としている。
この特徴によれば、抜け止め部材によりピン部材の外径方向への移動を規制できる。
【0012】
前記抜け止め部材には雄ねじ部が形成され、前記大径孔部には前記抜け止め部材の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、抜け止め部材がピン部材の頭部を押圧してピン部材の径方向の位置を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1におけるメカニカルシールの回り止め機構を備えたメカニカルシール示す断面図である。
【
図2】静止密封側部材に形成された孔部とピン部材との関係を示す断面図である。
【
図3】実施例2におけるメカニカルシールの回り止め機構の静止密封側部材とシールケース及びハウジングとを示す断面図である。
【
図4】ピン部材により静止密封側部材がシールケースに回り止めされた状態を示す断面図である。
【
図5】セットスクリューをシールケースにおけるピン部材より外径側に螺合させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るメカニカルシールの回り止め機構を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【実施例1】
【0015】
実施例1に係るメカニカルシールの回り止め機構につき、
図1と
図2を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、メカニカルシール1は、静止密封側部材10と回転密封側部材20と、シールケース30とから主に構成されている。メカニカルシール1は、回転機械のハウジング(被取付部材)2と、ハウジング2の軸孔3を貫通して回転機械の機外A側に連通するように配置される回転軸4との間に装着されている。機外A側は、海水、水、空気等の雰囲気であり、機内M側は被密封流体が封入されている。
【0017】
静止密封側部材10は、メイティングリング6(静止密封環)と図示しない回り止め手段により該メイティングリング6との相対回転が規制されたリテーナ7とから構成され、ハウジング2の軸方向端部に固定手段である固定ボルト5で固定されたシールケース30内に配置されている。
【0018】
シールケース30の内周面30aに対向するリテーナ7の外周面10bには環状凹部10dが形成されており、環状凹部10d内に配置されるOリング12により静止密封側部材10とシールケース30との間がシールされている。また、リテーナ7のメイティングリング6とは反対側の端部には、リテーナ7を径方向に貫通し、かつ軸方向にも開口する凹部11(回り止め機構)が形成されている。尚、凹部11は、リテーナ7を径方向に貫通せず、外径側から内径方向に凹む構成であってもよいし、軸方向に開口しない構成であってもよい。
【0019】
回転密封側部材20は、シールリング8(回転密封環)と、図示しない回り止め手段によりシールリング8に対して相対回転が規制されたリテーナ9と、カラー60と、スリーブ50と、スプリング40とから構成され、回転軸4側に装着されてこの回転軸4と一体的に回転する。静止密封側部材10と回転密封側部材20とは、回転軸4の軸方向に沿って互いに対向するように配置されており、それらの対向した端面である摺動面10a,20a同士が密接することにより、被密封流体をシールする。すなわち、メカニカルシール1は外径側から内径側への被密封流体の漏れを制限するインサイド形である。
【0020】
スリーブ50は、径方向に形成されたネジ孔49にセットスクリュー48を螺合させることにより回転軸4に対し非回転状態に固定されており、その内周において外径側に凹む環状凹部53にはOリング54が装着されている。カラー60は、径方向に形成されたネジ孔52にセットスクリュー51を螺合させることによりスリーブ50に対し非回転状態に固定されている。カラー60とスリーブ50との間にはスプリング40が圧縮状態で配置され、その両端部41,42がそれぞれカラー60とスリーブ50とに当接している。
【0021】
図2に示されるように、シールケース30には、径方向にシールケース30を貫通する貫通孔部15が形成されている。貫通孔部15は、内径側に位置する孔部16(回り止め機構)と、孔部16の外径側端部に連通する大径孔部17と、から主に構成されている。
【0022】
大径孔部17は孔部16に比べて内径が大径となっており、孔部16と連通する第1大径部18と、シールケース30の外周面側で外部に連通する第2大径部19とを有している。第2大径部19は第1大径部18に比べて内径が大径となっている。また、孔部16の内周面には後述するピン部材21(
図1参照)に形成された雄ねじ部22bが螺合する雌ねじ部16aが形成されている。
【0023】
図2に示されるように、ピン部材21(メカニカルシールの回り止め機構)は、外周面に雄ねじ部22bを有する胴部22と、胴部22に比べて太径に形成された頭部23とを有している。また、ここでは図示しないが、頭部23の端部にはスクリュードライバー等が係合する溝が形成されている。ピン部材21の胴部22に形成された雄ねじ部22bは、頭部23側に形成されており、胴部22の先端部22aには形成されていない。
【0024】
また、
図1に示されるように、ピン部材21の頭部23の外径は、シールケース30に形成された第1大径部18の内径より若干小径に形成されているとともに、頭部23の高さ寸法は、第1大径部18の深さ寸法と略同寸となっている。
【0025】
ピン部材21により静止密封側部材10の回り止めを行う際には、
図2に示されるように、ピン部材21をシールケース30の貫通孔部15に挿入し、胴部22を孔部16に螺合させる。この螺合により、胴部22の先端部22aがシールケース30の内側に突出してリテーナ7に形成された凹部11内に配置される。このように、ピン部材21の先端部22aにリテーナ7が係止されることで、静止密封側部材10がシールケース30を介してハウジング2に対して回り止めされる。
【0026】
また、孔部16の内径より太径であるピン部材21の頭部23はその裏面(
図2における下面)がシールケース30の孔部16の周囲に当接し、ピン部材21がシールケース30の内径方向へ抜け止めされる構成となっている。そのため、ピン部材21の先端部22aが内径方向に移動して回転軸4に接触する虞がなく、回転軸4の回転性能の低下やメカニカルシール1の破損等を防止することができる。
【0027】
また、上記したように、ピン部材21の胴部22の先端部22aには雄ねじ部22bが形成されていないため、リテーナ7に形成された凹部11内に配置されたピン部材21の先端部22aがリテーナ7を損傷させ難い。
【0028】
また、ピン部材21には孔部16に形成された雌ねじ部16aに螺合する雄ねじ部22bを備えていることから、ピン部材21をシールケース30の外径側からスクリュードライバー等で回すことにより容易にシールケース30に対して固定することができる。更に、螺合によりピン部材21の頭部23の裏面が孔部16の周囲に押圧されることから、シールケース30に対してピン部材21を強固に固定することができる。
【0029】
従来の回り止め機構では、シールケースの内径側からピン部材を螺合させる構成であり、ピン部材の頭部が静止密封側部材に形成された凹部内に配置されるため、静止密封側部材の大型化を防ぐために、その頭部の大きさが制限される。そのため、胴部に至っては小型に形成された頭部に比べて更に細径となることから、ピン部材の強度を十分に確保できないという問題があった。更に、小型に形成された頭部は、シールケースの内周面との接触領域が小さく、ピン部材が緩みやすいという問題があった。尚、環状のシールケースの内周面に対して平面形状のピン部材の頭部の裏面とでは、そもそも接触領域が小さく、ピン部材が緩みやすいという問題があった。
【0030】
これに対して、本実施例における回り止め機構は、上記したようにシールケース30の外径側からピン部材21を螺合させる構成であり、ピン部材21の胴部22の先端部22aがリテーナ7に形成された凹部11内に配置されるため、十分な強度を有する胴部22の外径を確保しながら、確実にピン部材21を内径方向へ抜け止めできる大きさに頭部23を形成できる。また、頭部23の裏面と孔部16の周囲との接触領域を十分に確保できる大きさに頭部23を形成することができる。更に、孔部16の周囲が平面形状であることから、ピン部材21の頭部23の裏面との接触面積を大きく確保でき、シールケース30に対してピン部材21を強固に固定することができる。
【0031】
また、ピン部材21の頭部23は、シールケース30の孔部16の外径側に形成された第1大径部18内に案内されるため、挿入しやすくなっている。更に、ピン部材21の頭部23がシールケース30内に埋設された状態で位置するため、ピン部材21の長さ寸法を短くすることができる。尚、第1大径部18をシールケース30の外周面に亘り形成し、内径の異なる第2大径部19を省略してもよい。
【0032】
また、第2大径部19は第1大径部18に比べて内径が大径となっているため、外径側から貫通孔部15内を覗いた際に、ピン部材21の状態、即ち適切な螺合状態であるか等を確認し易くなっている。これに加えて、ピン部材21の頭部23の高さ寸法が第1大径部18の深さ寸法と略同寸となっているため、ピン部材21の頭部23が第2大径部19側に突出しているか否かで、ピン部材21が緩んでいるか否かを判断することができる。
【実施例2】
【0033】
次に、実施例2に係る回り止め機構につき、
図3から
図5を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
図3に示されるように、メカニカルシール101のシールケース130には、径方向にシールケース130を貫通する貫通孔部115が形成されている。貫通孔部115は、内径側に位置する孔部116と、大径孔部117とを備えている。大径孔部117は、孔部116の外径側端部に連通する第1大径部118と、第1大径部118の外径端部に連通する第2大径部119と、第2大径部119の外径端部に連通する第3大径部120とから主に構成されている。
【0035】
第2大径部119は第1大径部118に比べて内径が大径となっており、その内周面に
図4及び
図5に示すピン部材21の抜け止め部材であるセットスクリュー121(回り止め機構)の外周面に形成された雄ねじ部121bが螺合する雌ねじ部119aが形成されている。
【0036】
図4に示されるように、ピン部材21により静止密封側部材10の回り止めを行う際には、ピン部材21をシールケース130の貫通孔部115に挿入し、胴部22を孔部116に螺合させる。この螺合により、胴部22の先端部22aがシールケース130の内側に突出し、リテーナ7に形成された凹部11内に配置される。これによれば、リテーナ7がピン部材21の先端部22aに係止されることで、静止密封側部材10がシールケース130を介してハウジング2に対して回り止めされる。
【0037】
次いで、
図4及び
図5に示されるように、第2大径部119にセットスクリュー121を螺合させ、セットスクリュー121の先端部121aでピン部材21の頭部23をシールケース130の内径方向に押圧する。これによれば、ピン部材21の頭部23がシールケース130における孔部116の周囲とセットスクリュー121の先端部121aとにより挟まれることになり、ピン部材21の内径方向と外径方向との両方向への移動が効果的に規制され、ピン部材21の径方向の位置を保持することができる。
【0038】
また、セットスクリュー121の先端部121aは、先細りした形状となっており、仮に頭部の高さ寸法が第1大径部118の深さ寸法より短く形成されているピン部材を利用する際にも、先端部121aを第1大径部118内に侵入させることができ、先端部121aでピン部材の頭部を押圧することができる。
【0039】
尚、上記したように、セットスクリュー121によりピン部材21のシールケース130における外径方向への移動を規制することができるため、セットスクリュー121を用いる場合には、ピン部材21の胴部22の外周面に形成された雄ねじ部22b及び、対応するシールケース130の孔部116の内周面に形成された雌ねじ部116aを省略してもよい。
【0040】
更に尚、大径孔部117に固定されてピン部材21のシールケース130における外径方向への移動を規制する抜け止め部材としては、前述のセットスクリュー121を用いる態様に限らず、例えば大径孔部117の内周面に環状溝を形成し、この環状溝に係合するスナップリングにより抜け止めしてもよいし、樹脂製の栓部材を大径孔部117内に圧入して抜け止めしてもよい。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、実施例1及び実施例2において、ピン部材21をシールケース30(300)の外径方向に移動規制する手段は、上記した螺合によるものに限らず、例えば圧入により移動規制してもよいし、孔部16(116)の内周面に環状溝を設け、この環状溝に係合するスナップリングにより移動規制してもよい。
【0043】
また、ピン部材21に形成される雄ねじ部について、ピン部材21の胴部22の先端部22aまで雄ねじ部が形成されていてもよい。更に、ピン部材21に形成される雄ねじ部について、ピン部材21の胴部22の頭部23側に代えて、例えばピン部材21の頭部23の外周に形成し、第1大径部18の内周に形成した雌ねじ部と螺合させる構成としてもよい。
【0044】
また、実施例1及び実施例2において静止密封側部材10は、メイティングリング6とリテーナ7とから構成されており、ピン部材21はリテーナ7に形成された凹部11に係止されることで、静止密封側部材10をハウジング2に対して回り止めしているが、静止密封側部材の構造によってはこの態様に限らない。例えば、静止密封側部材がリテーナを備えず、メイティングリングのみから構成されている場合には、メイティングリングの径方向に凹部を形成し、この凹部にピン部材21の先端部22aを係止させる。
【0045】
また、メカニカルシール1(101)は内径側から外径側への被密封流体の漏れを制限するアウトサイド形であってもよい。
【0046】
また、メカニカルシール1(101)は静止形を例に説明したが、回転形であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 メカニカルシール
2 ハウジング(被取付部材)
3 軸孔
4 回転軸
5 固定ボルト
6 メイティングリング(静止密封環)
7 リテーナ
8 シールリング(回転密封環)
9 リテーナ
10 静止密封側部材
10a 摺動面
11 凹部(回り止め機構)
15 貫通孔部
16 孔部(回り止め機構)
16a 雌ねじ部
17 大径孔部
18 第1大径部
19 第2大径部
20 回転密封側部材
21 ピン部材(回り止め機構)
22 胴部
22a 先端部
22b 雄ねじ部
23 頭部
30 シールケース
30a 内周面
40 スプリング
50 スリーブ
60 カラー
101 メカニカルシール
115 貫通孔部
116 孔部
116a 雌ねじ部
117 大径孔部
118 第1大径部
119 第2大径部
119a 雌ねじ部
120 第3大径部
121 セットスクリュー(抜け止め部材)
121a 先端部
121b 雄ねじ部
130 シールケース
A 機外
M 機内