(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】炭化処理装置及び炭化処理方法
(51)【国際特許分類】
C10B 47/46 20060101AFI20220117BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20220117BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220117BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220117BHJP
【FI】
C10B47/46
C10B53/00 A
B09B3/00 302F
B09B3/00 ZAB
B09B3/00 302G
(21)【出願番号】P 2017209897
(22)【出願日】2017-10-31
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】509172402
【氏名又は名称】株式会社ワンワールド
(73)【特許権者】
【識別番号】512049971
【氏名又は名称】伊藤 智章
(74)【代理人】
【識別番号】240000268
【氏名又は名称】弁護士法人英明法律事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【氏名又は名称】中井 信宏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/011555(WO,A1)
【文献】特開2002-037687(JP,A)
【文献】特開2001-115167(JP,A)
【文献】特開2000-313884(JP,A)
【文献】特開2013-040054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の油分が含有された廃棄物の原料を、開閉扉で開閉可能に区切られた複数の区画からなる一連の炭化炉内に通過させ、当該複数の区画ごとに異なる温度で過熱水蒸気処理をして炭化処理物を得る炭化処理装置であって、
前記一連の炭化炉の最初の区画よりも前に、開閉扉で開閉可能に区切られた予備区画を設けてなり、
当該予備区画は、密閉状態で水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔を備え、前記炭化炉で廃棄物を炭化処理中に水蒸気を噴射して凝結させ、当該予備
区画内の酸素濃度を低下させることを特徴とする炭化処理装置。
【請求項2】
複数種類の油分が含有された廃棄物の原料を、開閉扉で開閉可能に区切られた複数の区画からなる一連の炭化炉内に通過させ、当該複数の区画ごとに異なる温度で過熱水蒸気処理をして炭化処理物を得る炭化処理装置であって、前記一連の炭化炉の最初の区画よりも前に予備区画を設け、当該予備区画が開閉扉を閉じた密閉状態で水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔を備えてなる炭化処理装置における炭化処理方法であって、
前記予備区画の炭化炉端部側から廃棄物を搬入し、前記最初の区画へと搬送する工程と、
前記開閉扉を閉じて最初の区画及び予備区画を密閉状態にし、当該最初の区画で廃棄物に炭化処理をする工程と、
前記最初の区画での炭化処理中に、前記予備区画内に水蒸気噴射孔から水蒸気を一時的に噴射する工程と、
前記最初の区画での炭化処理に要する時間をかけて、予備区画内の低温化させるとともに水蒸気を凝結させ、当該予備区画内の酸素濃度を低下させる工程と、
炭化処理後に前記開閉扉を開け、酸素濃度が低下し、且つ、低温化した予備区画内と高温の最初の区画内とを連通させることで、高温の最初の区画内の温度を低下させる工程と、
前記最初の区画で炭化処理をした廃棄物を、異なる温度での炭化処理のために次の区画へと搬送する工程と、を含むことを特徴とする炭化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温になった炭化炉内の爆発又は炭化処理物への引火を防止することのできる炭化処理装置及び炭化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、廃棄物等の炭化処理は、廃棄物等の対象物に過熱水蒸気を噴射する等の高温の加熱処理を施すとともに、炭化炉内の空気を排出して炭化炉内を無酸素又は低酸素の状態にして行われる。そのため、炭化処理の直後に炭化炉の開閉扉が開けられると、炭化炉外の酸素が未だ高温の炭化炉内に一気に流入し、炭化炉内で爆発が起きたり、未だ高温の炭化処理物又はその残渣に引火したりするという問題があった。
【0003】
従来、本願出願人により、有機性廃棄物を移送コンベアに載せ、複数の区画に仕切られた一連の炭化処理炉内を通過させながら、区画毎に設定された温度で前記有機性廃棄物を過熱水蒸気処理することにより、有機物の炭化処理を行う有機物の炭化処理装置が提供されている(特許文献1)。
【0004】
また、水蒸気又は過熱水蒸気を熱処理器内に噴射することで炭化処理を行う炭化物の製造方法であって、炭化処理中に対象物たる有機物から揮発ガスや分解ガス等が発生しても、これらガス分が温度の下がった水蒸気の凝縮水に吸収されて排出されるため、これらガス分がそのまま外部へ放出されて引火爆発するのを防止することのできる炭化物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-524539号
【文献】特開2013-64379号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、一連の炭化処理炉の最初の区画で炭化処理が終了した後、当該処理後の廃棄物が移送コンベアで次の区画へと搬送されるとともに、新たな廃棄物が外部から開閉扉を開けて最初の区画へと搬入される際、高温となった最初の区画に外部から一気に酸素が流入し、最初の区画内で爆発が起きたり、未だ高温である廃棄物の残渣に引火したりするという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、前記ガス分による爆発又は引火を防止することができるものの、水蒸気の温度が低下して凝縮水となるまで待機せねばならず、直ぐには炭化処理物を取り出すことはできなかった。また、仮に炭化処理直後に熱処理器から炭化処理物を取り出すとしても、高温となった熱処理器の開閉扉を開けた際には、無酸素又は低酸素状態の熱処理器内に外部から一気に酸素が流入し、熱処理機内で爆発したり、炭化処理物の残渣に引火したりするというおそれがあった。
【0008】
また、前記最初の区画又は熱処理器内の温度が低下するのを待ってから開閉扉を開け、炭化処理物を取り出すことも可能ではあるが、その待機時間により炭化処理物の生産性が非効率となってしまう。特に、前記特許文献1の炭化処理装置のように、対象物たる廃棄物を一連の炭化炉内の複数の区画ごとに順々に搬送して炭化処理を行うような場合は、最初の区画の温度が低下するのを待ってから廃棄物を移送コンベアで次の区画へと搬送すると、その後の複数の区画で処理待ちが発生し、炭化処理物の生産性がより一層非効率になるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、炭化処理の直後に開閉扉を開けても、高温になった炭化炉内の爆発又は炭化処理物への引火を防止することのできる炭化処理装置及び炭化処理方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
また、炭化処理装置は、複数種類の油分が含有された廃棄物の原料を、開閉扉で開閉可能に区切られた複数の区画からなる一連の炭化炉内に通過させ、当該複数の区画ごとに異なる温度で過熱水蒸気処理をして炭化処理物を得る炭化処理装置であって、前記一連の炭化炉の最初の区画よりも前に、開閉扉で開閉可能に区切られた予備区画を設けてなり、当該予備区画は、密閉状態で水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔を備え、前記炭化炉で廃棄物を炭化処理中に水蒸気を噴射して凝結させ、当該予備区画内の酸素濃度を低下させることを特徴としている。
【0013】
さらに、炭化処理方法は、複数種類の油分が含有された廃棄物の原料を、開閉扉で開閉可能に区切られた複数の区画からなる一連の炭化炉内に通過させ、当該複数の区画ごとに異なる温度で過熱水蒸気処理をして炭化処理物を得る炭化処理装置であって、前記一連の炭化炉の最初の区画よりも前に予備区画を設け、当該予備区画が開閉扉を閉じた密閉状態で水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔を備えてなる炭化処理装置における炭化処理方法であって、前記予備区画の炭化炉端部側から廃棄物を搬入し、前記最初の区画へと搬送する工程と、前記開閉扉を閉じて最初の区画及び予備区画を密閉状態にし、当該最初の区画で廃棄物に炭化処理をする工程と、前記最初の区画での炭化処理中に、前記予備区画内に水蒸気噴射孔から水蒸気を一時的に噴射する工程と、前記最初の区画での炭化処理に要する時間をかけて、予備区画内の低温化させるとともに水蒸気を凝結させ、当該予備区画内の酸素濃度を低下させる工程と、炭化処理後に前記開閉扉を開け、酸素濃度が低下し、且つ、低温化した予備区画内と高温の最初の区画内とを連通させることで、高温の最初の区画内の温度を低下させる工程と、前記最初の区画で炭化処理をした廃棄物を、異なる温度での炭化処理のために次の区画へと搬送する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る炭化処理装置及び炭化処理方法によれば、前記炭化炉又は最初の区画に開閉扉を介して連通可能に前記予備炉又は予備区画を設け、炭化炉又は最初の区画で炭化処理中に予備炉又は予備区画に一時的に水蒸気を噴射することにより、炭化炉又は最初の区画で炭化処理をしている間に、予備炉又は予備区画の温度が自然に低下するとともに前記水蒸気が凝結し、予備炉又は予備区画内の温度を低下させ、且つ、酸素濃度を低下させることができる。これにより、前記炭化炉又は最初の区画での炭化処理直後に開閉扉を開けても、未だ高温の炭化炉又は最初の区画内に酸素が一気に流入することがなく、また、炭化炉又は最初の区画内の温度が低下することから、炭化炉又は最初の区画での爆発又は引火を防止することができる。
【0015】
また、炭化処理直後であっても炭化炉又は最初の区画の開閉扉を開けることができるので、前記のように炭化炉又は最初の区画から炭化処理物を取り出したり、次の区画へ搬送したりするために待機する必要がなく、スムーズに炭化処理を行えることから炭化処理物の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る炭化処理装置の構造を示す概略図である。
【
図2】他の実施例の炭化処理装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。まず、
図1は、本発明に係る炭化処理装置1の構成を示す概略図である。炭化処理装置1は、基本的には、炭化炉2、予備炉3及びその間の開閉扉4とから構成されている。
【0018】
炭化炉2は、水蒸気又は過熱水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔21を備え、ボイラ22から過熱水蒸気発生手段23を介して水蒸気又は過熱水蒸気を水蒸気噴射孔21から噴射し、廃棄物Xに対して水蒸気又は過熱水蒸気処理を施す。また、炭化炉2は、前記開閉扉4を設けた側面に連通口24を開口させ、その対向する側面位置に有機性の廃棄物Xを搬入出する搬入出口25が設けられている。また、当該搬入出口25には、開閉可能な扉26が設置されている。当該開閉扉4及び扉26は、炭化炉2の側面に沿って上下に昇降させることによって開閉するように構成されている。
【0019】
過熱水蒸気発生手段23は、当該ボイラ22より供給された水蒸気から過熱水蒸気を発生させる誘導加熱式の過熱水蒸気発生装置などであって、過熱水蒸気を発生させることができればこれに限定されるものではない。過熱水蒸気発生手段23で発生させる過熱水蒸気の温度は、廃棄物Xを十分に炭化させるには150℃以上であるのが好ましく、さらに、廃棄物Xに含まれるごみの種類により、エネルギーコストを抑制しつつ炭化処理を十分に行うには、60℃~1300℃とするのが好ましい。
【0020】
予備炉3は、水蒸気を噴射する水蒸気噴射孔31を備え、ボイラ32で生成した水蒸気を予備炉3内に噴射可能に構成されている。また、予備炉3の前記炭化炉2と対向する面には、連通口33が設けられており、前記炭化炉2の連通口24との間に開閉扉4が設置されている。また、予備炉3は、前記噴射した水蒸気が凝結した水を排出する排出口34が下方に形成されている。
【0021】
予備炉3は、前記水蒸気噴射孔31から水蒸気を一時的に噴射させ、予備炉3内の空気を排除して予備炉3内の水蒸気が占める割合を増加させることにより、これら水蒸気が時間を経て予備炉3内の温度が自然に低下して水滴となるに伴い、予備炉3内の酸素濃度を低下させることができる。
【0022】
開閉扉4は、前記の通り、炭化炉2と予備炉3の間に設けられており、これら側面に沿って上方へスライドさせることで炭化炉2と予備炉3を連通させる。一方、炭化炉2で炭化処理を施す際には、これら側面に沿って下方へスライドさせることで炭化炉2と予備炉3を密閉させるように設置されている。なお、当該開閉扉4は、本実施例では、上下への昇降するように構成したが、炭化炉2と予備炉3を連通させ、且つ、密閉させるように構成できれば、どのような開閉扉4の態様であってもよい。
【0023】
また、図示はしないが、本実施例の炭化処理装置1には、前記構成要素を操作制御する操作制御手段や前記炭化炉2及び予備炉3内の温度を検知して前記操作制御手段に送信する温度検知手段が設けられている。また、炭化炉2には、炭化処理により排出される廃棄液等を排出するための排出口が設けられている。
【0024】
このように炭化炉2に予備炉3を連通可能に併設し、予備炉3に水蒸気を噴射可能に構成した炭化処理装置1によれば、炭化炉2での炭化処理中に、予備炉3に一時的に水蒸気を噴射し、炭化炉2での炭化処理が終了するまでの時間を掛けて予備炉3内の温度を自然に低下させることにより、前記水蒸気が凝結するとともに予備炉3内の酸素濃度も低下する。そして、前記開閉扉4を上方へスライドさせて開けることにより、炭化炉2の温度も低下し、また、予備炉3内の酸素濃度が低下しているため、炭化炉2内での爆発や廃棄物Xの残渣への引火を防止することができる。
【0025】
このように構成した炭化処理装置1における炭化処理の手順について、以下に説明する。
【0026】
まず、前記炭化炉2の扉26を上方へスライドさせて搬入出口25を開き、当該搬入出口25から炭化炉2内に炭化処理の対象物である有機性の廃棄物Xを搬入する。
【0027】
次に、炭化炉2の前記扉26と開閉扉4を下方へスライドさせて閉じ、炭化炉2及び予備炉3を密閉状態にする。その後、炭化炉2内に所定の温度、例えば、60℃~1300℃の水蒸気又は過熱水蒸気を水蒸気噴射孔21から噴射し、所定の時間間隔、例えば、数十分~数時間にわたって廃棄物Xに対して炭化処理を施す。
【0028】
ここで、前記炭化処理を開始した段階で、前記予備炉3の水蒸気噴射孔31から水蒸気を一時的に噴射し、予備炉3内の空気を排除させ、予備炉3内に水蒸気が満たされるようにする。このように水蒸気で満たされた予備炉3内は、前記炭化炉2で炭化処理をしている間に、その内部の温度が低下し、水蒸気が凝結していく。それに伴い、予備炉3内の酸素濃度も低下していく。
【0029】
そして、炭化炉2での炭化処理が終了する頃には、予備炉3内の温度が常温程度~約60℃にまで低下しており、且つ、予備炉3内の酸素濃度が低い状態になっている。この状態で開閉扉4を開け、炭化炉2と予備炉3を連通させると、炭化炉2の温度も低下し、また、酸素濃度も低いので炭化処理の直後であっても炭化炉2で爆発や廃棄物Xの残渣への引火が起こらないようにすることができる。
【0030】
最後に、前記扉26を上方にスライドさせて開け、搬入出口25から炭化炉2内の炭化した廃棄物X、すなわち炭化処理物を取り出す。
【0031】
このように、本実施例の炭化処理装置及び前記工程によれば、前記の通り、炭化処理後の炭化炉2での爆発等を防止することができ、また、炭化処理直後であっても炭化処理物を取り出すことができることから、次の廃棄物Xに対して直ぐに炭化処理を施すことができ、炭化処理物の生産性を向上させることができる。
【0032】
次に、第二実施例の炭化処理装置1について、
図2を用いて具体的に説明する。
【0033】
本実施例に係る炭化処理装置1は、基本的には、区画A乃至区画Gごとに区切られた一連の炭化炉2と、一連の炭化炉2の前に設けられた予備区画3と、各区画ごとに仕切るための開閉扉4と、有機性の廃棄物Xを載せてこれら区画内の内側を搬送する搬送手段5とから構成されている。なお、これら構成要素を操作制御する操作制御手段と区画ごとの温度を検知して操作制御手段に送信する温度検知手段も設けられている。
【0034】
一連の炭化炉2は、開閉扉4で区画ごとに仕切られており、本実施例では、区画A乃至区画Gの七つの区画に分割されている。当該各区画は、一連の炭化炉2の両端側と各区画間に設けられた開閉扉4を開閉することで炭化炉2内を連通させたり、夫々の区画を独立空間にしたりすることが可能となっている。
【0035】
このように分割された区画A乃至Gのうち、本実施例においては、最初の区画Aは、炭化炉2内に搬入された廃棄物Xをボイラ22から送られた水蒸気を水蒸気噴射孔31から噴射することで加熱し、その廃棄物Xを減容するための区画である。また、中間の区画B乃至Eは、区画ごとに夫々過熱水蒸気発生手段23を備えており、廃棄物Xに含有される油分の気化温度差に応じて所定の異なる温度、例えば、区画Aで150℃の温度の水蒸気、区画Bで300℃、区画Cで450℃、区画Dで600℃の温度の過熱水蒸気が水蒸気噴射孔31から供給されるようになっている。また、区画E、区画F及び最後の区画Gは、炭化処理物を炭化炉2から搬出する前に緩やかに冷却するための区画であって、区画Eには150℃程度の過熱水蒸気が供給され、区画Fには前記ボイラ22から水蒸気が供給され、当該区画Gには冷却用の送風機6が備えられている。なお、区画Eは、廃棄物Xの種類によっては、1300℃等の600℃以上の高温で過熱水蒸気処理を施し、区画F及び区画Gにおいて炭化処理物を冷却するようにしてもよい。
【0036】
予備区画3は、前記水蒸気噴射孔31から水蒸気を一時的に噴射させ、予備区画3内の空気を排除して予備区画3内の水蒸気が占める割合を増加させることにより、これら水蒸気が時間を経て予備区画3内の温度が自然に低下して水滴となるに伴い、予備区画3内の酸素濃度を低下させることができる。
【0037】
開閉扉4は、炭化炉2の各区画と予備区画の間に設けられており、上方へスライドさせることで各区画を連通させ、一方、炭化炉2の各区画で炭化処理を施す際には、下方へスライドさせることでこれら区画内を密閉させるように設置されている。なお、当該開閉扉4は、本実施例では、上下への昇降するように構成したが、各区画を連通させ、且つ、密閉させるように構成できれば、どのような開閉扉4の態様であってもよい。
【0038】
前記搬送手段5は、移送コンベアであって、前記廃棄物Xを載置して前記予備区画3から炭化炉2の内側を前記区画A乃至区画Gの順で搬送する。なお、当該廃棄物Xは、容器7に収容された状態で搬送手段5に載置されている。また、搬送手段5は、廃棄物Xが各区画での処理を行うごとに作動され、例えば、ある廃棄物Xを区画Aから区画Bへ搬送すると、その区画Bで行われる過熱水蒸気処理の経過時間を待ってから、廃棄物Xを区画Cへと搬送する。このようにして、区画Aから区画Gまで順々に各区画で廃棄物Xに対して処理が施される。また、搬送手段3は、搬送経路に沿って区画ごとに複数のモーターが設置されており、操作制御手段からの指示に基づいて廃棄物Xを搬送する。
【0039】
このように構成された炭化処理装置1は、例えば、前記のように最初の区画Aの処理温度が150℃で、区画Bの処理温度が300℃とし、各区画での炭化処理後に区画A及び区画B間の開閉扉4を上方にスライドさせて開けると、高温の区間Bによって区間A内の温度も200℃以上となる。このような状態で、予備区画3と最初の区画Aの間の開閉扉4を開けると、前記の通り、予備区画3では温度の低下による水蒸気の凝結に伴って酸素濃度が低下していることから、最初の区画Aでは爆発が起こらず、また、区画Aでの処理後の廃棄物Xの残渣への引火も防止することができる。
【0040】
次に、第二実施例の炭化処理装置1における炭化処理の手順について、以下に説明する。
【0041】
まず、予備区画3の外側(図中左側)の搬送手段5に廃棄物Xを収容した容器7を載置し、搬送手段5を作動させて予備区画3の内側へと搬送する。そして、予備区画3の外側の搬送手段5にさらに廃棄物Xを収容した二番目の容器7を載置し、搬送手段5を作動させて予備区画3の内側へと搬送する。これに伴い、最初に載置した容器7は、最初の区画Aへと搬送される。
【0042】
次に、予備区画3の外側の開閉扉4及び各区画間の開閉扉4を下方にスライドさせて閉じ、これら区画を密閉状態にした上で、最初の区画Aで、所定の温度且つ所定の時間間隔で、例えば150℃の温度で1時間30分にわたって最初に載置した容器7の廃棄物Xに炭化処理を施す。
【0043】
ここで、前記炭化処理を開始した段階で、前記予備区画3の水蒸気噴射孔31から水蒸気を一時的に噴射し、予備区画3内の空気を排除させ、予備区画3内に水蒸気が満たされるようにする。このように水蒸気で満たされた予備区画3内は、前記最初の区画Aで炭化処理をしている間に、その内部の温度が低下し、水蒸気が凝結していく。それに伴い、予備区画3内の酸素濃度も低下していく。
【0044】
そして、最初の区画Aでの炭化処理が終了する頃には、予備区画3内の温度が常温程度~約60℃にまで低下しており、且つ、予備区画3内の酸素濃度が低い状態になっている。この状態で開閉扉4を開け、最初の区画Aと予備区画3を連通させると、最初の区画Aの温度も低下し、また、酸素濃度も低いので炭化処理の直後であっても最初の区画Aで爆発や廃棄物Xの残渣への引火が起こらないようにすることができる。
【0045】
また、最初の区画Aで最初に載置した容器7の廃棄物Xの炭化処理中に、予備区画3の外側の搬送手段5に三番目の容器7を載置しておく。前記の通り、最初の区画Aで炭化処理が終了すると、開閉扉4が開けられ、三番目の容器7が予備区画3へ、二番目の容器7が最初の区画Aへ、最初の容器7が区画Bへと夫々搬送される。そして、例えば、区画Bでは300℃の過熱水蒸気処理を、区画Aでは150℃の水蒸気処理を1時間30分間にわたって施し、当該炭化処理が開始されると、予備区画3では一時的に水蒸気が噴射され、前記の通り、前記区画A及び区画Bの炭化処理中に温度及び酸素濃度を低下させる。
【0046】
ここで、三番目の容器7を予備区画3へと搬送するに際して、二番目の容器7が最初の区画Aへ、最初の容器7が区画Bへと夫々搬送され炭化処理が開始されても、三番目の容器7は、予備区画3の外側の搬送手段5で所定の時間、例えば、約20~30分間に亘って待機させ、予備区画3内をカラの状態でその温度を水蒸気の噴射によって冷却させた後、予備区画3の外側(図中左側)の開閉扉4を開けて予備区画3内に搬送させることもできる。これは、前回の炭化処理後に、予備区画3及び最初の区画Aの間の開閉扉4を開けた際、最初の区画Aの温度は低下する一方で、予備区画3の温度が100℃以上に上昇した場合、予備区画3の外側の開閉扉4を開けると外側から酸素が一気に流れ込み、予備区画3で爆発や廃棄物Xへの引火が起きるおそれがあるためである。その後、予備区画3では、残りの約1時間~1時間10分に亘って前記一時的な水蒸気の噴射ののち、前記の通り、区画A及び区画Bの炭化処理中に予備区画3の温度及び酸素濃度を低下させる。これにより、より安全に予備区画3の外側の開閉扉3を開けることができ、また、区画Aでの前記1時間30分間の炭化処理の直後に、予備区画3及び区画Aの間の開閉扉4を開けることもできる。
【0047】
このように、当該炭化処理装置1は、廃棄物Xが収容された容器7が列を為して順々に各区画へと搬送され、炭化炉2の区画A乃至区画Gで夫々所定の時間間隔で処理がなされるとともに、予備区画3では、当該時間間隔ごとに前記水蒸気の凝結によって酸素濃度を低下させる構成となっている。かかる構成により、前記所定の時間間隔で施される最初の区画Aでの炭化処理ごとに開閉扉4を開けても、最初の区画A内に酸素が一気に流入することがなく、また、最初の区画A内の温度が低下することから、所定の時間間隔ごとの処理において最初の区画Aでの爆発又は引火を防止することができる。
【0048】
また、炭化処理直後であっても予備区画3と最初の区画A間の開閉扉4を開けることができるので、廃棄物Xを収容した容器7を最初の区画Aから次の区画Bへ搬送するために待機する必要がなく、スムーズに炭化処理を行えることから炭化処理物の生産性を向上させることができる
【0049】
このように、本発明に係る炭化処理装置及び炭化処理方法によれば、炭化炉2又は最初の区画Aでの爆発等を防止でき、また、炭化処理直後であっても開閉扉4を開けることができることから、安全に且つスムーズに廃棄物Xに対して炭化処理を施すことができ、生産性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 炭化処理装置
2 炭化炉
21 水蒸気噴射孔
22 ボイラ
23 過熱水蒸気発生手段
24 連通口
25 搬入出口
26 扉
3 予備炉、予備区画
31 水蒸気噴射孔
32 ボイラ
33 連通口
34 排出口
4 開閉扉
5 搬送手段
6 送風機
7 容器
X 廃棄物