(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】通信装置、通信システムおよびコンテンツ転送方法
(51)【国際特許分類】
H04L 67/10 20220101AFI20220117BHJP
H04M 11/00 20060101ALI20220117BHJP
G06F 12/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H04L67/10
H04M11/00 302
G06F12/00
(21)【出願番号】P 2017221566
(22)【出願日】2017-11-17
【審査請求日】2020-10-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 充
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025463(JP,A)
【文献】特開2008-065854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 29/06
H04M 11/00
G06F 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、
コンテンツを蓄積する記憶部と、
前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置
と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、
前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、自装置に蓄積されたコンテンツに対する要求があると予測される場合に、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得し、前記現在の通信状態が所定の基準より良好である場合には、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記将来の通信状態が前記現在の通信状態より良好となる場合には、前記コンテンツをアップロードせず、前記将来の通信状態が前記現在の通信状態より良好とならない場合には、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
さらに、自装置の現在の位置を測定する測位部を備え、
前記制御部は、前記測位部の測位結果に基づく自装置の移動状況から、所定時間経過後の将来の位置を予測し、前記通信履歴情報に基づいて、前記将来の予測位置に対応する前記将来の通信状態を取得することを特徴とする
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記上位の通信装置として、有線通信路のみのネットワーク領域にある通信装置に対して、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする
請求項1に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信部は、無線通信路を介して前記上位の通信装置と通信を行い、
前記制御部は、前記要求メッセージを受信すると、前記無線通信路の通信状態に基づいて、前記応答メッセージを送信すべきタイミングと判定された場合に、前記応答メッセージを送信することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、
コンテンツを蓄積する記憶部と、
前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、
前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、
を備え、
前記通信部は、位置に対応付けられたコンテンツが自装置に蓄積されている場合には、現在から所定時間経過後の将来の位置を予測して、その将来の予測位置において接続先となる前記上位の通信装置が切り替わる場合には、切り替わる前に前記コンテンツをアップロードすることを特徴とす
る通信装置。
【請求項9】
コンテンツの要求元の通信装置が、情報指向ネットワークを介して、コンテンツを蓄積する提供元の通信装置からコンテンツを収集する通信システムであって、
前記提供元の通信装置は、
コンテンツを蓄積する記憶部と、
前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置
と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、
前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とする通信システム。
【請求項10】
提供元の通信装置に蓄積されたコンテンツを、情報指向ネットワークを経由して、コンテンツの要求元の通信装置に転送するコンテンツ転送方法であって、
前記提供元の通信装置が、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置
と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードし、
前記上位の通信装置が、前記提供元の通信装置から取得した前記コンテンツを蓄積し、前記要求元の通信装置からの要求メッセージを受信すると、自装置に蓄積された前記コンテンツを転送
し、
前記提供元の通信装置による前記コンテンツのアップロードでは、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードすることを特徴とするコンテンツ転送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報指向ネットワークに接続された通信装置、コンテンツの要求元の通信装置が、情報指向ネットワークを介して、コンテンツを蓄積する提供元の通信装置からコンテンツを収集する通信システム、および提供元の通信装置に蓄積されたコンテンツを、情報指向ネットワークを経由して、コンテンツの要求元の通信装置に転送するコンテンツ転送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、IPネットワーク(インターネット)が広く普及している。このIPネットワークでは、デバイスに蓄積されたコンテンツをユーザ端末で取得する場合、デバイスのIPアドレスを入手して、そのIPアドレスを用いてデバイスにアクセスすることで、必要なコンテンツを取得することができる。
【0003】
一方、このようなIPネットワークに代わる技術として、情報指向ネットワーク(ICN:Information Centric Network)の技術が知られている(特許文献1参照)。この情報指向ネットワークは、NDN(Named Data Network)とも呼ばれており、また、ルーティング(経路制御)の方法に注目して、「属性ルーティング」、「名前ルーティング」、「情報ルーティング」などとも呼ばれており、デバイスに蓄積されたコンテンツを、コンテンツの属性や名称などを用いて収集することができるように構築されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、前記従来の技術のように、情報指向ネットワークでは、コンテンツを保持するデバイスが、サーバからの要求を受け取ると、該当するコンテンツをサーバ宛てに転送する。このとき、デバイスとその上位のノードとの間の通信路や、デバイス自体が、コンテンツを適切に転送できる状態でないと、コンテンツの転送に長時間を要したり、コンテンツを確実に転送できなかったりするという問題が生じる。
【0006】
特に、コンテンツを提供するデバイスが、無線通信路を介して上位のノードに接続されている場合には、通信環境の変化に応じて無線通信路の通信状態が大きく変動する。すなわち、無線通信路の時変(フェージング、アンテナなどの揺れ、電波の干渉や遮蔽、デバイスの移動などを原因とする)により通信品質が変動する。また、接続先となる上位のノードには高速通信が可能なものとそうではないものとがあり、デバイスが移動するのに応じて、接続先となる上位のノードが切り替わると、通信速度が変化する。
【0007】
このように、無線通信路を介して上位のノードと接続されているデバイスでは、通信状態が十分に良好でない場合があり、このような場合に、映像などの大容量のコンテンツを無理に送信しようとすると、データ誤りによる再送や、誤り訂正の冗長度の増加や、変調多値数の低減などが必要になる。このため、無線リソースを無駄に使用してしまい、無線通信路の負荷が増大すると共に周波数利用効率が低下したり、デバイスで電力を無駄に消費したりするという問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、コンテンツの要求元の通信装置にコンテンツを確実に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができ、特に、無線通信路を介してコンテンツを転送する場合に、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させ、また、消費電力を低減することができる通信装置、通信システムおよびコンテンツ転送方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信装置は、情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、備え、前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
また、本発明の通信装置は、情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、を備え、前記通信部は、位置に対応付けられたコンテンツが自装置に蓄積されている場合には、現在から所定時間経過後の将来の位置を予測して、その将来の予測位置において接続先となる前記上位の通信装置が切り替わる場合には、切り替わる前に前記コンテンツをアップロードする構成としてもよい。
【0010】
また、本発明の通信システムは、コンテンツの要求元の通信装置が、情報指向ネットワークを介して、コンテンツを蓄積する提供元の通信装置からコンテンツを収集する通信システムであって、前記提供元の通信装置は、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0011】
また、本発明のコンテンツ転送方法は、提供元の通信装置に蓄積されたコンテンツを、情報指向ネットワークを経由して、コンテンツの要求元の通信装置に転送するコンテンツ転送方法であって、前記提供元の通信装置が、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードし、前記上位の通信装置が、前記提供元の通信装置から取得した前記コンテンツを蓄積し、前記要求元の通信装置からの要求メッセージを受信すると、自装置に蓄積された前記コンテンツを転送し、前記提供元の通信装置による前記コンテンツのアップロードでは、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、適切な状態のときに、コンテンツの提供元の通信装置から上位の通信装置に事前にコンテンツがアップロードされるので、上位の通信装置は、コンテンツを要求する要求メッセージが届くと、その上位の通信装置に蓄積されたコンテンツを転送すればよい。これにより、コンテンツの提供元の通信装置とその上位の通信装置との間の通信路や、コンテンツの提供元の通信装置自体が、コンテンツを適切に転送できる状態でなくても、コンテンツの要求元の通信装置にコンテンツを確実に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る通信システムの全体構成図
【
図2】第1実施形態に係るデバイス2で行われる事前アップロードの概要を示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る事前アップロードの実施タイミングを示す説明図
【
図4】第1実施形態に係るサーバ1、デバイス2およびルータ3の概略構成を示すブロック図
【
図5】第1実施形態に係る通信システムの動作手順を示すシーケンス図
【
図6】第1実施形態に係るルータ3の動作手順を示すフロー図
【
図7】第1実施形態に係るデバイス2の動作手順を示すフロー図
【
図8】第1実施形態の変形例に係る通信システムの全体構成図
【
図9】第2実施形態に係るデバイス2で行われる事前アップロードの概要を示す説明図
【
図10】第2実施形態に係る事前アップロードの実施タイミングを示す説明図
【
図11】第3実施形態に係るデバイス2で行われる要求メッセージを受信した際の応答メッセージの送信の概要を示す説明図
【
図12】第3実施形態に係る通信システムの動作手順を示すシーケンス図
【
図13】第3実施形態に係るデバイス2の動作手順を示すフロー図
【
図14】第4実施形態に係る登録時のサブスクライブメッセージの一例を示す説明図
【
図15】第4実施形態に係るコンテンツ収集時のパブリッシュメッセージの一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、備え、前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0015】
これによると、適切な状態のときに、コンテンツの提供元の通信装置から上位の通信装置に事前にコンテンツがアップロードされるので、上位の通信装置は、コンテンツを要求する要求メッセージが届くと、その上位の通信装置に蓄積されたコンテンツを転送すればよい。これにより、コンテンツの提供元の通信装置とその上位の通信装置との間の通信路や、コンテンツの提供元の通信装置自体が、コンテンツを適切に転送できる状態でなくても、コンテンツを支障なく、コンテンツの要求元の通信装置に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができる。また、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させることができ、また、通信装置の消費電力を低減することができるという利点もある。また、適切なタイミングでアップロードを行うことができるという利点もある。さらに、将来の通信状態を精度よく予測することができるという利点もある。
【0016】
また、第2の発明は、前記制御部は、自装置に蓄積されたコンテンツに対する要求があると予測される場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0017】
これによると、無用なアップロードを避けることができる。
【0020】
また、第3の発明は、前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得し、前記現在の通信状態が所定の基準より良好である場合には、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0021】
これによると、現在の通信状態が十分に良好である場合には、アップロードを行うため、迅速にアップロードを行うことができる。
【0024】
また、第4の発明は、前記制御部は、前記将来の通信状態が前記現在の通信状態より良好となる場合には、前記コンテンツをアップロードせず、前記将来の通信状態が前記現在の通信状態より良好とならない場合には、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0025】
これによると、より一層適切なタイミングでアップロードを行うことができる。
【0028】
また、第5の発明は、さらに、自装置の現在の位置を測定する測位部を備え、前記制御部は、前記測位部の測位結果に基づく自装置の移動状況から、所定時間経過後の将来の位置を予測し、前記通信履歴情報に基づいて、前記将来の予測位置に対応する前記将来の通信状態を取得する構成とする。
【0029】
これによると、将来の通信状態をより一層精度よく予測することができる。
【0030】
また、第6の発明は、前記制御部は、前記上位の通信装置として、有線通信路のみのネットワーク領域にある通信装置に対して、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0031】
これによると、無線通信路の通信状態の変動による影響を確実に避けることができる。
【0032】
また、第7の発明は、前記通信部は、無線通信路を介して前記上位の通信装置と通信を行い、前記制御部は、前記要求メッセージを受信すると、前記無線通信路の通信状態に基づいて、前記応答メッセージを送信すべきタイミングと判定された場合に、前記応答メッセージを送信する構成とする。
【0033】
これによると、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させることができ、また、通信装置の消費電力を低減することができる。
【0034】
また、第8の発明は、情報指向ネットワークに接続された通信装置であって、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、を備え、前記通信部は、位置に対応付けられたコンテンツが自装置に蓄積されている場合には、現在から所定時間経過後の将来の位置を予測して、その将来の予測位置において接続先となる前記上位の通信装置が切り替わる場合には、切り替わる前に前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0035】
これによると、適切な状態のときに、コンテンツの提供元の通信装置から上位の通信装置に事前にコンテンツがアップロードされるので、上位の通信装置は、コンテンツを要求する要求メッセージが届くと、その上位の通信装置に蓄積されたコンテンツを転送すればよい。これにより、コンテンツの提供元の通信装置とその上位の通信装置との間の通信路や、コンテンツの提供元の通信装置自体が、コンテンツを適切に転送できる状態でなくても、コンテンツを支障なく、コンテンツの要求元の通信装置に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができる。また、切り替わる前の上位の通信装置にコンテンツをアップロードするので、切り替わった後の上位の通信装置に別の位置のコンテンツが誤って送られることを避けることができる。
【0036】
また、第9の発明は、コンテンツの要求元の通信装置が、情報指向ネットワークを介して、コンテンツを蓄積する提供元の通信装置からコンテンツを収集する通信システムであって、前記提供元の通信装置は、コンテンツを蓄積する記憶部と、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信すると、前記上位の通信装置に、コンテンツを含む応答メッセージを送信する通信部と、前記要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記通信部から前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードする制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0037】
これによると、第1の発明と同様に、コンテンツの要求元の通信装置にコンテンツを確実に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができる。また、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させることができ、また、通信装置の消費電力を低減することができるという利点もある。また、適切なタイミングでアップロードを行うことができるという利点もある。さらに、将来の通信状態を精度よく予測することができるという利点もある。
【0038】
また、第10の発明は、提供元の通信装置に蓄積されたコンテンツを、情報指向ネットワークを経由して、コンテンツの要求元の通信装置に転送するコンテンツ転送方法であって、前記提供元の通信装置が、前記情報指向ネットワーク内の自装置より上位の通信装置と無線通信路を介して通信を行い、前記上位の通信装置から、コンテンツを要求する要求メッセージを受信していない状態でも、所定の条件を満足する場合には、前記上位の通信装置に前記コンテンツをアップロードし、前記上位の通信装置が、前記提供元の通信装置から取得した前記コンテンツを蓄積し、前記要求元の通信装置からの要求メッセージを受信すると、自装置に蓄積された前記コンテンツを転送し、前記提供元の通信装置による前記コンテンツのアップロードでは、前記無線通信路の現在の通信状態を取得すると共に、通信履歴情報に基づいて、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、前記現在の通信状態および前記将来の通信状態に基づいて、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングか否かを判定し、前記コンテンツをアップロードすべきタイミングと判定された場合に、前記コンテンツをアップロードする構成とする。
【0039】
これによると、第1の発明と同様に、コンテンツの要求元の通信装置にコンテンツを確実に転送することができ、また、コンテンツの転送に係る時間を短縮することができる。また、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させることができ、また、通信装置の消費電力を低減することができるという利点もある。また、適切なタイミングでアップロードを行うことができるという利点もある。さらに、将来の通信状態を精度よく予測することができるという利点もある。
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0042】
この通信システムは、情報指向ネットワーク(ICN:Information Centric Network)を用いて必要なコンテンツを収集するものであり、サーバ1(通信装置)と、デバイス2(通信装置)と、ルータ3(通信装置)と、を備えており、サーバ1、デバイス2およびルータ3は、情報指向ネットワークを介して相互に接続されている。
【0043】
サーバ1は、必要なコンテンツを情報指向ネットワークから収集するものである。このサーバ1は、コンテンツの収集者としてのユーザが操作する場合もあり、また、収集したコンテンツを別のネットワークを介してユーザ端末に配信するサービスを行う配信サーバとして構成される場合もある。
【0044】
デバイス2は、コンテンツを蓄積する。本実施形態では、デバイス2が、カメラを備えており、そのカメラで撮影した映像のコンテンツを蓄積する。
【0045】
このデバイス2は、有線通信路を介して上位のノードに接続されている場合と、無線通信路を介して上位のノードに接続されている場合と、がある。
図1に示す例では、位置/0/1/0/1、位置/0/1/1/3の各デバイス2が、人物が所持するスマートフォンやタブレット端末などの携帯端末であり、位置/0/1/0/1のデバイス2は、無線通信路を介して上位の位置/0/1/0のルータ3に接続され、位置/0/1/1/3のデバイス2は、無線通信路を介して上位の位置/0/1/1のルータ3に接続されている。また、位置/0/0/0/2のデバイス2は、車両に搭載されたドライブレコーダーであり、無線通信路を介して上位の位置/0/0/0のルータ3に接続されている。
【0046】
各デバイス2では、コンテンツを公開することを事前に許可する設定をユーザが行うことで、各デバイス2に蓄積されたコンテンツをサーバ1が収集することができる。また、防犯や犯罪者の捜査などの用途に限定して、コンテンツの提供を許可するようにしてもよい。この場合、コンテンツを暗号化することで、特定のユーザのみに限定してコンテンツを提供することができる。
【0047】
ルータ3は、サーバ1およびデバイス2から送信されるメッセージを中継する。本実施形態では、コンテンツを要求する要求メッセージ(インタレスト)がサーバ1から送信され、その要求メッセージに応じて、デバイス2から応答メッセージがサーバ1に送信される。
【0048】
また、ルータ3は、デバイス2からの応答メッセージを受信すると、その応答メッセージに含まれるコンテンツを自装置に蓄積し、サーバ1からの要求メッセージを受信すると、その要求メッセージで要求されたコンテンツが自装置に蓄積されている場合には、要求メッセージの転送は行わず、自装置に蓄積されたコンテンツを含む応答メッセージをサーバ1に向けて送信する。このように、情報指向ネットワークにおいては、例えば、サーバ1が複数の場合、あるサーバ1が取得したコンテンツは、デバイス2からサーバ1への転送経路となったルータ3に蓄積されるため、他のサーバ1が同じコンテンツを要求した際に、要求メッセージを転送する過程で所望のコンテンツを蓄積したルータ3に行き着いた場合は、その先のルーティングを割愛して、蓄積されたコンテンツを取得できるため、ネットワークの負荷を低減できる仕組みになっている。
【0049】
なお、本実施形態では、情報指向ネットワークが木構造で構築されている。
図1に示す例では、位置/0のルータ3の配下に、位置/0/0、位置/0/1の各ルータ3が接続されている。また、位置/0/0のルータ3の配下に、位置/0/0/0、位置/0/0/1の各ルータ3が接続されている。また、位置/0/1のルータ3の配下に、位置/0/1/0、位置/0/1/1、位置/0/1/2の各ルータ3が接続されている。また、位置/0/0/0、位置/0/0/1、位置/0/1/0、位置/0/1/1、位置/0/1/2の各ルータ3の配下にそれぞれ、複数のデバイス2が接続されている。
【0050】
なお、情報指向ネットワークは、物理的に木構造で構築されている必要はなく、ノード(デバイス2およびルータ3)の位置を規定する情報で仮想的な木構造が構築されていればよい。
【0051】
次に、第1実施形態に係るデバイス2で行われる事前アップロードについて説明する。
図2は、デバイス2で行われる事前アップロードの概要を示す説明図である。
図3は、事前アップロードの実施タイミングを示す説明図である。
【0052】
図2に示すように、無線通信路を介して上位のルータ3と接続されているデバイス2が移動すると、樹木や建物などの遮蔽物の影響などにより、通信品質が変動する。また、接続先となる上位のルータ3には高速通信が可能なものとそうではないものとがあり、デバイス2が移動するのに応じて、接続先となる上位のルータ3が切り替わると、通信速度が変化する。
【0053】
このように、無線通信路を介して上位のルータ3と接続されているデバイス2では、通信状態(通信品質および通信速度)が十分に良好でない場合があり、このような場合に、映像のように大容量のコンテンツを無理に送信しようとすると、無線リソースを無駄に使用してしまい、無線通信路の負荷が増大すると共に周波数利用効率が低下し、また、デバイス2で送信電力が増大して電力を無駄に消費するという問題が生じる。
【0054】
そこで、本実施形態では、サーバ1から要求があると予測されるコンテンツについては、無線通信路の通信状態が十分に良好である場合、すなわち、通信状態が良好で、かつ、通信速度が十分に速い場合には、サーバ1からのコンテンツを要求する要求メッセージを受信していない状態でも、デバイス2から上位のルータ3にコンテンツをアップロードする事前アップロードを行う。
【0055】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、通信状態を、非常に良好である(◎)、良好である(○)、良好でない(△)の3段階で評価する。具体的には、通信状態の評価値が第1の基準値以上となると、非常に良好であると判定する。また、通信状態の評価値が第1の基準値未満で、かつ、第2の基準値以上となると、良好であると判定する。また、通信状態の評価値が第2の基準値未満であると、良好でないと判定する。
【0056】
そして、現在の通信状態が非常に良好である場合には、事前アップロードを実施する。一方、現在の通信状態が非常に良好でない場合、すなわち、通信状態が良好である場合や、通信状態が良好でない場合には、将来の通信状態を予測して、現在の通信状態と将来の通信状態とに基づいて、事前アップロードを実施すべきタイミングか否かを判定する。
【0057】
具体的には、将来の通信状態が現在の通信状態より良好となる場合、すなわち、将来、通信状態が向上する場合には、事前アップロードを実施しない。一方、将来の通信状態が現在の通信状態より良好でない、すなわち、将来、通信状態が悪化する場合には、事前アップロードを実施する。また、将来の通信状態が現在の通信状態と同等である場合、すなわち、通信状態が変化しない場合にも、事前アップロードを実施する。
【0058】
図2に示す例では、デバイス2が、位置A、位置B、位置C、位置D、位置Eの順に移動する。デバイス2が位置Aにあると、通信状態が良好であるが、将来の予測位置Bで通信状態がより一層良好になるため、事前アップロードを実施しない。そして、デバイス2が位置Bに移動すると、通信状態が非常に良好になるため、事前アップロードを実施する。次に、デバイス2が位置Cに移動すると、通信状態が良好であるが、将来の予測位置Dで通信状態が悪化するため、事前アップロードを実施する。次に、デバイス2が位置Dに移動すると、通信状態が良好でないため、事前アップロードを実施しない。次に、デバイス2が位置Eに移動すると、通信状態が非常に良好になるため、事前アップロードを実施する。
【0059】
次に、第1実施形態に係るサーバ1、デバイス2およびルータ3の概略構成について説明する。
図4は、サーバ1、デバイス2およびルータ3の概略構成を示すブロック図である。なお、ここでは、デバイス2は移動可能なデバイス(携帯端末やドライブレコーダーなど)として説明する。
【0060】
サーバ1は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、を備えている。
【0061】
通信部11は、情報指向ネットワークに要求メッセージを送信し、情報指向ネットワークから送信される応答メッセージを受信する。
【0062】
記憶部13は、収集したコンテンツや制御部12を構成するプロセッサで実行されるプログラムを記憶する。
【0063】
制御部12は、メッセージ制御部14を備えている。この制御部12は、プロセッサで構成され、制御部12のメッセージ制御部14は、記憶部13に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0064】
メッセージ制御部14は、要求メッセージを生成して、その要求メッセージを通信部11から情報指向ネットワークに送信する。
【0065】
なお、サーバ1が、コンテンツの収集者としてのユーザが操作する場合には、収集するコンテンツを指定する操作をユーザが行う入力部や、収集したコンテンツを閲覧する表示部などがサーバ1に設けられる。また、サーバ1が、収集したコンテンツを別のネットワークを介してユーザ端末に配信するサービスを行う配信サーバである場合には、コンテンツをユーザ端末に配信する通信部などがサーバ1に設けられる。
【0066】
デバイス2は、通信部21と、カメラ22と、測位部23と、制御部24と、記憶部25と、を備えている。
【0067】
通信部21は、上位のノードから送信される要求メッセージを受信し、上位のノードに応答メッセージを送信する。また、コンテンツを自律的にアップロードする場合は、上位のノードにコンテンツを含む自律送信メッセージを送信する。
【0068】
カメラ22は、デバイス2の周辺を撮影して、映像を出力する。
【0069】
測位部23は、GPS(Global Positioning System)などの測位システムを利用して自装置の位置を測定する。
【0070】
記憶部25は、カメラ22から出力される映像のコンテンツを蓄積する。また、記憶部25は、通信履歴情報を蓄積する。この通信履歴情報は、各位置での過去の通信時の通信状態に関する情報である。また、記憶部25は、転送履歴情報を蓄積する。この転送履歴情報は、コンテンツの属性(撮影位置など)に応じた転送の頻度などに関する情報である。また、記憶部25は、制御部24を構成するプロセッサで実行されるプログラムを記憶する。
【0071】
なお、記憶部25の通信履歴情報は、自装置で収集したものでもよいが、ルータ3が、他のデバイス2から収集した通信履歴情報をデバイス2に提供して、複数のデバイス2間で通信履歴情報を共有するようにしてもよい。
【0072】
制御部24は、メッセージ制御部26と、通信状態取得部27と、通信状態予測部28と、アップロード制御部29と、を備えている。この制御部24は、プロセッサで構成され、制御部24の各部は、記憶部25に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0073】
メッセージ制御部26は、通信部21で上位のノードから要求メッセージを受信すると、応答メッセージを生成して、その応答メッセージを通信部21から上位のノードに送信する。また、アップロード制御部29で事前アップロードをすべきと判断された場合に、コンテンツを含む自律送信メッセージを生成して、その自律送信メッセージを通信部21から上位のノードに送信する。
【0074】
通信状態取得部27は、現在の通信状態を取得する。本実施形態では、通信部21で検出される通信品質(受信電力など)と、現在接続中のルータ3に応じた通信速度とに基づいて、現在の通信状態を取得する。このとき、例えば、通信品質と通信速度との両方に基づいて通信状態を評価して、通信状態に関する評価値を取得して、第1および第2の2つの基準値を用いて通信状態を3段階で評価する。
【0075】
なお、通信品質と通信速度とのいずれか一方のみに基づいて通信状態を評価してもよい。また、通信品質および通信速度以外の情報も考慮するようにしてもよい。また、通信状態取得部27で取得した通信状態に関する情報は、随時、通信履歴情報として記憶部25に蓄積される。
【0076】
通信状態予測部28は、現在から所定時間経過後の将来の通信状態を予測する。本実施形態では、まず、測位部23で取得した現在の位置の推移状況に基づいて、自装置の移動速度および移動方向を取得する。次に、現在の位置と移動速度および移動方向とに基づいて、所定時間経過後の将来の予測位置を取得する。そして、記憶部25に記憶された通信履歴情報に基づいて、将来の予測位置での通信状態を取得する。
【0077】
アップロード制御部29は、アップロードすべきと判断した場合は、上位のノードからコンテンツのアップロードを要求する要求メッセージを受信する前に、上位のノードに、コンテンツをアップロードする事前アップロードを制御する。本実施形態では、通信状態取得部27で取得した現在の通信状態と、通信状態予測部28で取得した将来の通信状態とに基づいて、事前アップロードを実施するタイミングか否かを判定する。
【0078】
また、本実施形態では、アップロードの要求があることが予測されるコンテンツを、事前アップロードの対象とする。ここで、アップロードの要求があることが予測されるコンテンツか否かの判定は、記憶部25に記憶された転送履歴情報に基づいて行われ、アップロードの要求が定期的(例えば毎日1回)にある場合に、アップロードの要求があることが予測されるコンテンツと判定する。なお、撮影位置などに基づいて話題性が高いコンテンツをユーザが予め設定しておき、この設定情報に基づいて、アップロードの要求があることが予測されるコンテンツか否かの判定を行うようにしてもよい。
【0079】
ルータ3は、通信部31と、制御部32と、記憶部33と、を備えている。
【0080】
通信部31は、上位のノードおよび下位のノードとの間で要求メッセージおよび応答メッセージの送受信を行う。
【0081】
記憶部33は、通信部31で受信した応答メッセージに含まれるコンテンツを蓄積する。また、記憶部33は、制御部32を構成するプロセッサで実行されるプログラムを記憶する。
【0082】
制御部32は、転送制御部34と、コンテンツ管理部35と、を備えている。この制御部32は、プロセッサで構成され、制御部32の各部は、記憶部33に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0083】
転送制御部34は、通信部31で受信した要求メッセージおよび応答メッセージの転送を制御し、通信部31で要求メッセージおよび応答メッセージを受信すると、指定された宛先に対応する転送先を選択して、要求メッセージおよび応答メッセージを通信部31から送信する。
【0084】
コンテンツ管理部35は、応答メッセージを通信部31で受信すると、その応答メッセージに含まれるコンテンツを記憶部33に蓄積する。また、コンテンツ管理部35は、コンテンツを要求する要求メッセージを通信部31で受信すると、記憶部33に蓄積されたコンテンツの中から、要求メッセージで指定されたコンテンツを検索する。この検索で、該当するコンテンツが見つかると、転送制御部34は、要求メッセージの転送は行わず、コンテンツを含む応答メッセージを通信部31から送信する。また、コンテンツ管理部35は、デバイス2から自律送信メッセージを通信部31で受信すると、その自律送信メッセージに含まれるコンテンツを記憶部33に蓄積する。
【0085】
次に、第1実施形態に係る通信システムの動作手順について説明する。
図5は、通信システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【0086】
本実施形態では、無線通信路を介して上位のノードに接続されたデバイス2では、上位ノードからの要求メッセージがなくても、通信状態に応じてアップロードすべきタイミングと判定した場合には、上位のノードに、コンテンツを送信する事前アップロードが行われる。
【0087】
図5に示す例では、位置/0/1/0/1のデバイス2が、無線通信路を介して上位の位置/0/1/0のルータ3に接続されているため、事前アップロードが行われ、自装置に蓄積されたコンテンツを含む自律送信メッセージを、上位の位置/0/1/0のルータ3を宛先として送信する。
【0088】
このときの自律送信メッセージには、コンテンツの提供元のデバイス2の位置情報と、コンテンツの時間情報(撮影した日付および時刻)と、コンテンツ(カメラ映像)と、が含まれる。
【0089】
位置/0/1/0のルータ3では、位置/0/1/0/1のデバイス2からの自律送信メッセージを受信すると、その自律送信メッセージに含まれるコンテンツを自装置に蓄積する。
【0090】
その後、サーバ1から位置/0/1/0のコンテンツを要求する要求メッセージがネットワークに送信されると、この要求メッセージは、位置/0のルータ3、その配下の位置/0/1のルータ3、さらにその配下の位置/0/1/0のルータ3に順次転送される。
【0091】
ここで、位置/0/1/0のルータ3では、事前アップロードにより、位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツが蓄積されている。このため、位置/0/1/0のルータ3は、位置/0/1/0/1のデバイス2に要求メッセージを転送せず、自装置に蓄積された位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツを含む応答メッセージを上位のノードに送信する。この応答メッセージは、上位の位置/0/1のルータ3、および位置/0のルータ3に順次転送され、さらにその位置/0のルータ3からサーバ1に転送される。
【0092】
このときの応答メッセージには、コンテンツの提供元のデバイス2の位置情報と、コンテンツの時間情報(日付および時刻)と、コンテンツ(カメラ映像)と、が含まれる。
【0093】
一方、位置/0/1/0/0のデバイス2は、有線で位置/0/1/0のルータ3に接続されているため、事前アップロードは行われない。このため、位置/0/1/0のルータ3は、位置/0/1/0/0のデバイス2に要求メッセージを転送する。
【0094】
位置/0/1/0/0のデバイス2では、要求メッセージを受信すると、自装置に蓄積されたコンテンツを含む応答メッセージをネットワークに送信する。この応答メッセージは、上位の位置/0/1/0のルータ3、位置/0/1のルータ3、および位置/0のルータ3に順次転送され、さらにその位置/0のルータ3からサーバ1に転送される。
【0095】
このときの応答メッセージには、コンテンツの提供元のデバイス2の位置情報と、コンテンツの時間情報(日付および時刻)と、コンテンツ(カメラ映像)と、が含まれる。
【0096】
次に、第1実施形態に係るルータ3の動作手順について説明する。
図6は、ルータ3の動作手順を示すフロー図である。
【0097】
ルータ3では、起動されると、まず、記憶部33に蓄積された全てのコンテンツを削除する(ST101)。次に、転送制御部34において、上位のノードからコンテンツを要求する要求メッセージを受信したか否かを判定する(ST102)。
【0098】
ここで、コンテンツを要求する要求メッセージを受信した場合には(ST102でYes)、次に、コンテンツ管理部35において、要求メッセージで要求されたコンテンツが記憶部33にあるか否かを判定する(ST103)。
【0099】
ここで、要求されたコンテンツが記憶部33にある場合には(ST103でYes)、転送制御部34において、該当するコンテンツを含む応答メッセージを上位のノードに送信して(ST104)、ST102に戻る。
【0100】
一方、要求されたコンテンツが記憶部33にない場合には(ST103でNo)、要求メッセージを下位のノードに転送する(ST105)。そして、下位のノードからの応答メッセージを受信したか否かを判定する(ST106)。
【0101】
ここで、応答メッセージを受信した場合には(ST106でYes)、次に、応答メッセージにコンテンツが含まれているか否かを判定する(ST107)。
【0102】
ここで、応答メッセージにコンテンツが含まれている場合には(ST107でYes)、コンテンツを含む応答メッセージを上位のノードに転送する(ST108)。そして、受信した応答メッセージから取得したコンテンツを記憶部33に蓄積して(ST109)、ST102に戻る。
【0103】
一方、応答メッセージにコンテンツが含まれていない場合には(ST107でNo)、コンテンツがない旨の応答メッセージを上位のノードに送信して(ST111)、ST102に戻る。
【0104】
また、応答メッセージを受信しない場合には(ST106でNo)、次にタイムアウトしたか否かを判定する(ST110)。
【0105】
ここで、タイムアウトしていない場合には(ST110でNo)、ST106に戻る。一方、タイムアウトした場合には(ST110でYes)、コンテンツがない旨の応答メッセージを上位のノードに送信して(ST111)、ST102に戻る。
【0106】
また、コンテンツを要求する要求メッセージを受信しない場合には(ST102でNo)、次に、下位のデバイス2からコンテンツをアップロードする自律送信メッセージを受信したか否かを判定する(ST112)。
【0107】
ここで、自律送信メッセージを受信した場合には(ST112でYes)、自律送信メッセージに含まれるコンテンツを記憶部33に蓄積して(ST113)、ST102に戻る。
【0108】
一方、自律送信メッセージを受信しない場合には(ST112でNo)、特に処理を行わずに、ST102に戻る。
【0109】
次に、第1実施形態に係るデバイス2の動作手順について説明する。
図7は、デバイス2の動作手順を示すフロー図である。
【0110】
デバイス2では、まず、カメラ22で撮影した映像のコンテンツを記憶部25に蓄積する(ST201)。次に、メッセージ制御部26において、上位のノードからコンテンツを要求する要求メッセージを受信したか否かを判定する(ST202)。
【0111】
ここで、コンテンツを要求する要求メッセージを受信した場合には(ST202でYes)、次に、要求されたコンテンツが記憶部25にあるか否かを判定する(ST203)。
【0112】
ここで、要求されたコンテンツが記憶部25にある場合には(ST203でYes)、要求されたコンテンツを含む応答メッセージを上位のノードに送信する(ST204)。
【0113】
一方、要求されたコンテンツが記憶部25にない場合には(ST203でNo)、コンテンツがない旨の応答メッセージを上位のノードに送信して(ST205)、ST201に戻る。
【0114】
また、コンテンツを要求する要求メッセージを受信しない場合には(ST202でNo)、次に、通信状態取得部27において、現在の通信状態を取得する(ST206)。また、通信状態予測部28において、将来の通信状態を予測する(ST207)。そして、アップロード制御部29において、事前アップロードを行うべきタイミングか否かを判定する(ST208)。
【0115】
ここで、事前アップロードを行うべきタイミングである場合には(ST208でYes)、コンテンツを含む自律送信メッセージを上位のノードに送信する(ST209)。
【0116】
一方、事前アップロードを行うべきタイミングでない場合には(ST208でNo)、特に処理を行わずに、ST201に戻る。
【0117】
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図8は、第1実施形態の変形例に係る通信システムの全体構成図である。
【0118】
第1実施形態(
図1参照)では、デバイス2が無線通信路を介して上位のルータ3に接続されている場合について説明したが、本変形例では、上位のルータ3のさらに上位に無線通信路が存在する。
図8に示す例では、位置/0/1/0/1のデバイス2が上位の位置/0/1/0のルータ3と無線通信路を介して接続されており、さらに、その位置/0/1/0のルータ3が上位の位置/0/1のルータ3と無線通信路を介して接続されている。
【0119】
この場合、デバイス2は、有線通信路のみのネットワーク領域にあるルータ3、すなわち、最上位のノードと有線通信路のみで通信を行うことができるルータ3に対して事前アップロードを行う。
図8に示す例では、位置/0/1のルータ3が、最上位の位置/0のルータ3と有線通信路のみで通信を行うことができるため、位置/0/1/0/1のデバイス2は、この位置/0/1のルータ3に対して事前アップロードを行う。すなわち、位置/0/1のルータ3を宛先として、自律送信メッセージを送信する。
【0120】
これにより、位置/0/1のルータ3に、位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツが蓄積され、サーバ1からのコンテンツを要求する要求メッセージ(位置/0/1/0の配下の全てのデバイス2のコンテンツを要求)が位置/0/1のルータ3に転送されると、この位置/0/1のルータ3では、自装置に蓄積された位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツを応答メッセージに付加してサーバ1宛てに送信する。このとき、位置/0/1のルータ3は、/0/1/0/1以外のデバイス2のコンテンツは自装置に蓄積していないので、未取得のコンテンツである位置/0/1/0/0のデバイス2にのみ要求メッセージを転送し、位置/0/1/0/0のデバイス2はそれを受信すると、コンテンツを応答メッセージに付加してサーバ1宛てに送信する。これにより、サーバ1では位置/0/1/0の配下の全てのデバイス2のコンテンツを取得できるが、その際に無線回線で接続されている位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツの取得に際しては、無線回線の負荷やデバイス2の消費電力の無駄を避けることができる。
【0121】
このように本実施形態では、デバイス2が、有線通信路のみのネットワーク領域にあるルータ3に対して事前アップロードを行うため、無線通信路の通信状態の変動による影響を確実に避けることができる。
【0122】
なお、上位の無線通信路と下位の無線通信路との間に有線通信路が存在する場合もある。この場合、上位の無線通信路より上位のルータ3に対して事前アップロードを行えばよい。この場合、無線回線が二重となり、それぞれの回線品質は同じではないため、位置/0/1/0/1のデバイス2が位置/0/1/0のルータ3へのアップロードした後、位置/0/1/0のルータ3が位置/0/1のルータ3へそれを更にアップロードするタイミングは、位置/0/1/0のルータ3が個別に判断する必要がある。その際は、ルータ3においても、
図4のデバイス2に搭載されている通信状態取得部27、通信状態予測部28、アップロード制御部29の機能を搭載すればよい。
【0123】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図9は、デバイス2で行われる事前アップロードの概要を示す説明図である。
図10は、事前アップロードの実施タイミングを示す説明図である。
【0124】
デバイス2が、現在接続中のルータ3の通信エリアから別のルータ3の通信エリアに移動すると、接続先のルータ3が切り替わる。このとき、移動前の位置で通信状態が十分に良好でないために、移動後の位置で事前アップロードを実施すると、移動前の位置のコンテンツが、移動後の接続先のルータ3に蓄積される。このとき、例えば、特定の公園を撮影した映像のように、位置に対応付けられたコンテンツでは、移動後のルータ3に蓄積されたコンテンツの位置(移動前の位置)と移動後のルータ3の位置とが対応しない状態となり、誤った位置のコンテンツがルータ3からサーバ1に提供される。
【0125】
そこで、本実施形態では、デバイス2が移動するのに応じて接続先のルータ3が切り替わることが予測される場合には、移動する前に事前アップロードを実施し、移動前の位置のコンテンツを、その位置に対応するルータ3にアップロードする。
【0126】
ここで、接続先が切り替わるか否かを判定する際には、所定時間経過後の将来の位置を予測して、通信履歴情報に基づいて、将来の予測位置での接続先を取得して、その将来の予測位置での接続先が現在の接続先と異なるか否かを判定すればよい。または、デバイス2が現在接続しているルータ3からの受信電力と、移動先候補であるルータ3からの受信電力を逐次比較して、移動先候補のルータ3へ切り替わるタイミングを予測してもよい。
【0127】
また、接続先が切り替わるか否かに応じて事前アップロードの制御のみを行うようにしてもよいが、この制御を、第1実施形態に示した通信状態に基づく制御と組み合わせるようにしてもよい。
【0128】
具体的には、
図10に示すように、将来の通信状態が現在の通信状態より良好となる場合、すなわち、将来、通信状態が向上する場合には、所定時間経過後に接続先が切り替わるか否かに応じて場合分けし、所定時間経過後に接続先が切り替わる場合には、事前アップロードを実施し、所定時間経過後に接続先が切り替わらない場合には、事前アップロードを実施しない。
【0129】
図9に示す例では、デバイス2が、位置A、位置B、位置C、位置D、位置Eの順に移動する。位置Aでは、デバイス2は、位置/0/1/0のルータ3の通信エリア内にあり、この位置/0/1/0のルータ3に接続して、位置/0/1/0/1として動作する。また、位置Bおよび位置Cでは、デバイス2は、位置/0/0/1のルータ3の通信エリア内にあり、この位置/0/0/1のルータ3に接続して、位置/0/0/1/2として動作する。また、位置Dおよび位置Eでは、デバイス2は、位置/0/0/0のルータ3の通信エリア内にあり、この位置/0/0/0のルータ3に接続して、位置/0/0/0/4として動作する。
【0130】
ここで、デバイス2が位置Aで撮影した映像のコンテンツを自装置に蓄積した後、位置Bに移動したところで、デバイス2が自装置に蓄積された位置Aのコンテンツを、位置/0/0/1のルータ3にアップロードすると、サーバから位置/0/0/1のルータ3に位置Bのコンテンツに関する要求があると、位置/0/0/1のルータ3は、自装置に蓄積された位置Aのコンテンツを位置Bのコンテンツとして送信してしまうため、サーバ1は誤った位置の映像を取得してしまうことになる(以下「誤送信」とする)。
【0131】
そこで、本実施形態では、この誤送信を避けるため、デバイス2が位置Aにある場合、将来の予測位置Bでは接続先が切り替わることから、事前アップロードを実施し、位置Aのコンテンツを位置/0/1/0のルータ3にアップロードする。位置/0/1/0のルータ3では、位置/0/1/0/1のデバイス2が通信エリア外に移動した後も、アップロードされた位置Aのコンテンツを自装置に保持する。
【0132】
これにより、サーバ1は位置Aの映像が欲しい場合に、すでにそれを撮影したデバイス2が位置/0/1/0のルータ3の配下から外れてしまっていても、位置/0/1/0のルータ3に蓄積された映像を取得することができる(これは従来のIPネットワークでは不可能)。
【0133】
次に、デバイス2が位置Bに移動すると、将来の予測位置Cでは、接続先が切り替わらず、かつ、通信状態が良くなるので、事前アップロードを実施しない。
【0134】
次に、デバイス2が位置Cに移動すると、将来の予測位置Dでは、接続先が切り替わることから、事前アップロードを実施し、事前アップロードを保留していた位置Bのコンテンツと、位置Cのコンテンツとを、位置/0/0/1のルータ3にアップロードする。位置/0/0/1のルータ3では、位置0//0/1/2のデバイス2が通信エリア外に移動した後も、アップロードされた位置Bのコンテンツと位置Cのコンテンツを自装置に保持する。
【0135】
次に、デバイス2が位置Dに移動すると、将来の予測位置Eでは、接続先が切り替わらないが、通信状態が悪化するので、事前アップロードを実施し、位置Dのコンテンツを位置/0/0/0のルータ3にアップロードする。位置/0/0/0のルータ3では、位置/0/0/0/4のデバイス2が通信エリア外に移動した後も、アップロードされた位置Dのコンテンツを自装置に保持する。
【0136】
なお、位置に対応付けられたコンテンツでなければ、誤った位置のコンテンツが提供される不都合はないため、要求されたコンテンツが、位置に対応付けられたコンテンツか否かを判定して、位置に対応付けられたコンテンツである場合に、接続先が切り替わるか否かに応じた制御を行えばよい。
【0137】
なお、位置に対応付けられていないコンテンツであっても、デバイス2が突然電池切れになったり、予期しない事態によって無線接続が遮断されるなどで、コンテンツのアップロードが不可能になるという可能性もあるため、通信状態を非常に良好である(◎)と判断する基準値をあまり大きくしすぎないようにするとよい。
【0138】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図11は、デバイス2で行われる要求メッセージを受信した際の応答メッセージの送信の概要を示す説明図である。
【0139】
無線通信路を介して上位のノードに接続されているデバイス2では、通信環境の変化に応じて無線通信路の通信状態(通信品質や通信速度)が大きく変動し、要求メッセージを受信した際に、通信状態が十分に良好でない状態で、コンテンツを含む応答メッセージを無理に送信しようとすると、無線リソースを無駄に使用してしまい、無線通信路の負荷が増大すると共に周波数利用効率が低下し、また、デバイス2で送信電力が増大して電力を無駄に消費するという問題が生じる。
【0140】
そこで、本実施形態では、要求メッセージを受信した際に、通信状態(通信品質および通信速度)が十分に良好でない場合には、すぐには応答メッセージを送信せず、応答メッセージの送信を一時的に保留した後、通信状態が十分に良好になったタイミングで、応答メッセージを送信する。特に、本実施形態では、所定時間経過後の将来の通信状態を予測し、現在の通信状態と将来の通信状態とに基づいて、応答メッセージを送信すべきタイミングか否かを判定して、その判定結果に応じて応答メッセージを送信する。
【0141】
応答メッセージの送信タイミングは、第1実施形態における事前アップロードの場合(
図3参照)と同様である。すなわち、現在の通信状態が非常に良好である場合には、応答メッセージを送信する。一方、現在の通信状態が非常に良好でない場合、すなわち、通信状態が良好である場合や、通信状態が良好でない場合には、将来の通信状態を予測して、現在の通信状態と将来の通信状態とに基づいて、応答メッセージを送信すべきか否かを判定する。
【0142】
具体的には、将来の通信状態が現在の通信状態より良好となる場合、すなわち、将来、通信状態が向上する場合には、応答メッセージを送信しない。一方、将来の通信状態が現在の通信状態より良好でない、すなわち、将来、通信状態が悪化する場合には、応答メッセージを送信する。また、将来の通信状態が現在の通信状態と同等である場合、すなわち、通信状態が変化しない場合にも、応答メッセージを送信する。
【0143】
図11に示す例では、デバイス2が位置Aにあると、通信状態が良好であるが、将来の予測位置Bで通信状態がより一層良好になるため、要求メッセージを受信しても、応答メッセージを送信しない。そして、デバイス2が位置Bに移動すると、通信状態が非常に良好になるため、応答メッセージを送信する。次に、デバイス2が位置Cに移動すると、通信状態が良好であるが、将来の予測位置Dで通信状態がより一層悪化するため、要求メッセージを受信すると、応答メッセージを送信する。次に、デバイス2が位置Dに移動すると、通信状態が良好でないため、要求メッセージを受信しても、応答メッセージを送信しない。次に、位置Eに移動すると、通信状態が非常に良好になるため、応答メッセージを送信する。
【0144】
次に、第3実施形態に係る通信システムの動作手順について説明する。
図12は、通信システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【0145】
サーバから要求メッセージがネットワークに送信されると、この要求メッセージは、位置/0のルータ3、その配下の位置/0/1のルータ3、さらにその配下の位置/0/1/0のルータ3に順次転送される。次に、位置/0/1/0のルータ3から要求メッセージが配下の位置/0/1/0/0,位置/0/1/0/1の各デバイス2に転送される。
【0146】
位置/0/1/0/0のデバイス2は、有線通信路を介して位置/0/1/0のルータ3に接続されているため、要求メッセージを受信すると、自装置に蓄積されたコンテンツを含む応答メッセージをすぐにネットワークに送信する。この応答メッセージは、上位の位置/0/1/0のルータ3、位置/0/1のルータ3、および位置/0のルータ3に順次転送され、さらにその位置/0のルータ3からサーバ1に転送される。
【0147】
一方、位置/0/1/0/1のデバイス2は、無線通信路を介して位置/0/1/0のルータ3に接続されているため、応答メッセージの送信タイミングの制御が行われ、要求メッセージを受信しても、適切なタイミングでない場合には、すぐには応答メッセージを送信せず、応答メッセージの送信を一時的に保留した後、通信状態が改善したタイミングで、応答メッセージを送信する。
【0148】
次に、第3実施形態に係るデバイス2の動作手順について説明する。
図13は、デバイス2の動作手順を示すフロー図である。
【0149】
デバイス2では、まず、カメラ22で撮影した映像のコンテンツを記憶部25に蓄積する(ST201)。次に、メッセージ制御部26において、上位のノードからコンテンツを要求する要求メッセージを通信部21で受信したか否かを判定する(ST202)。
【0150】
ここで、コンテンツを要求する要求メッセージを受信した場合には(ST202でYes)、次に、要求されたコンテンツが記憶部25にあるか否かを判定する(ST203)。
【0151】
ここで、要求されたコンテンツが記憶部25にある場合には(ST203でYes)、通信状態取得部27において、現在の通信状態を取得する(ST206)。また、通信状態予測部28において、将来の通信状態を予測する(ST207)。そして、メッセージ制御部26において、現在の通信状態および将来の通信状態に基づいて、応答メッセージを送信すべきタイミングか否かを判定する(ST211)。
【0152】
ここで、応答メッセージを送信すべきタイミングである場合には(ST211でYes)、要求されたコンテンツを含む応答メッセージを上位のノードに送信して(ST204)、ST201に戻る。
【0153】
一方、応答メッセージを送信すべきタイミングでない場合には(ST211でNo)、特に処理を行わずに、ST206に戻る。
【0154】
また、要求されたコンテンツが記憶部25にない場合には(ST203でNo)、コンテンツがない旨の応答メッセージを上位のノードに送信して(ST205)、ST201に戻る。また、コンテンツを要求する要求メッセージを受信しない場合には(ST202でNo)、特に処理を行わずに、ST201に戻る。
【0155】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図14は、ランデブーノードへの位置登録時のサブスクライブメッセージの一例を示す説明図である。
図15は、コンテンツ収集時のパブリッシュメッセージの一例を示す説明図である。
【0156】
本実施形態では、COPSS(Content Oriented Publish/Subscribe System)を採用する。このCOPSSでは、ネットワークの階層構造の最上位にランデブーノード(RN:Rendezvous Node)が設けられる。
図14,
図15に示す例では、位置/0のルータ3がランデブーノードとなる。
【0157】
このCOPSSでは、まず、サーバ1、デバイス2およびルータ3は、ランデブーノードとなるルータ3にサブスクライブメッセージを送信することにより、サーバ1、デバイス2およびルータ3の位置(宛先情報)をランデブーノードとなるルータ3に登録する。
【0158】
具体的には、
図14に示すように、ランデブーノードとなる位置/0のルータ3に対して、サーバ1からサブスクライブメッセージが送信される。このサブスクライブメッセージには、情報収集者であるサーバ1の宛先情報が(Collector0)含まれる。
【0159】
また、ランデブーノードとなる位置/0のルータ3に対して、配下のデバイス2やルータ3からサブスクライブメッセージが送信される。
図14では、サブスクライブメッセージとして、デバイス2の位置情報(/0/1/0/1、/0/0/0/2など)と、デバイス2の属性情報、すなわち、デバイス2がカメラであることを表す情報(#datカメラ)とが含まれている例を示す。
【0160】
ランデブーノードとなるルータ3は、配下の各ルータ3の位置情報、配下の各デバイス2の位置情報および属性情報、および返信先情報、すなわち、情報収集者となるサーバ1の宛先情報を管理する。
【0161】
また、本実施形態では、コンテンツ収集時に、コンテンツを要求する要求メッセージとしてのパブリッシュメッセージがサーバ1から送信され、これに応じて、要求されたコンテンツを含む応答メッセージとしてのパブリッシュメッセージがデバイス2から送信される。
【0162】
具体的には、
図15に示すように、まず、ランデブーノードとなる位置/0のルータ3に対して、サーバ1からパブリッシュメッセージ(要求メッセージ)が送信される。このパブリッシュメッセージには、ランデブーノードの識別情報(RN)と、コンテンツの収集範囲の位置情報(位置/0/1/)と、デバイス2に対してデータ(カメラの映像など)を要求する旨の情報(#dat/カメラ)と、コンテンツの収集期間の時間情報と、が含まれる。
【0163】
ランデブーノードとなる位置/0のルータ3では、サーバ1からパブリッシュメッセージを受信すると、自装置に記憶された管理情報に基づいて、パブリッシュメッセージを、配下の位置/0/1のルータ3および位置/0/1/0のルータ3を経由して、位置/0/1/0/1のデバイス2に転送する。
【0164】
位置/0/1/0/1のデバイス2では、ランデブーノードとなるルータ3からパブリッシュメッセージを受信すると、ランデブーノードとなるルータ3に対して、コンテンツを含むパブリッシュメッセージ(応答メッセージ)が送信される。このパブリッシュメッセージには、ランデブーノードとなるルータ3の識別情報(RN)と、コンテンツの提供先となるサーバ1の宛先情報(Collector0)と、コンテンツの提供元のデバイス2の位置情報(位置/0/1/0/1)と、コンテンツ(映像データ)と、が含まれる。
【0165】
ランデブーノードとなるルータ3では、デバイス2(位置/0/1/0/1)からパブリッシュメッセージを受信すると、自装置に記憶された管理情報に基づいて、パブリッシュメッセージを、コンテンツの提供先となるサーバ1(Collecotor0)に送信する。
【0166】
一方、位置/0/1/0/1のデバイス2で事前アップロードが行われる場合には、上位の位置/0/1/0のルータ3に対して、コンテンツをアップロードするパブリッシュメッセージ(自律送信メッセージ)が送信される。このパブリッシュメッセージには、アップロード先となる上位のルータ3の位置情報(位置/0/1/0)と、コンテンツの提供元のデバイス2の位置情報(位置/0/1/0/1)と、コンテンツ(映像データ)と、が含まれる。
【0167】
この場合、位置/0/1/0のルータ3では、コンテンツを要求するパブリッシュメッセージを位置/0/1のルータ3から受信しても、そのパブリッシュメッセージを位置/0/1/0/1のデバイス2に転送せず、自装置に蓄積された位置/0/1/0/1のデバイス2のコンテンツを含むパブリッシュメッセージを位置/0/1のルータ3に送信する。
【0168】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0169】
例えば、前記の実施形態では、サーバ1が、コンテンツとして、カメラで撮影した映像を収集する例について説明したが、収集対象となるコンテンツは映像に限定されるものではなく、例えば、マイクで収音した音声や、種々のセンサで検出した状態情報(気温や湿度など)などでもよい。
【0170】
また、前記の実施形態では、コンテンツの提供元の通信装置であるデバイスを、スマートフォンなどの携帯端末や、車両に搭載されたドライブレコーダーとしたが、デバイスは、移動しないものであってもよく、例えば、所定位置に設置された自動販売機をデバイスとして、自動販売機の売り上げ情報をコンテンツとしてサーバに提供するようにしてもよい。この場合、デバイスは自装置の設置位置を予め記憶することで、測位部23を持たなくてもよい。
【0171】
また、前記の実施形態では、無線通信路の通信状態に基づいて事前アップロードを制御するようにしたが、事前アップロードの制御は、無線通信路の通信状態に基づく制御に限定されるものではなく、コンテンツの提供元の通信装置であるデバイス自体の状態に基づいて事前アップロードを制御するようにしてもよい。例えば、デバイスの電池残量が低下すると、コンテンツを上位のノードに転送するための通信ができなくなるが、事前アップロードを実施することで、デバイスが電池残量の低下で上位のノードと通信できなくなる前に、コンテンツをコンテンツの要求元の通信装置に確実に転送することができる。
【0172】
また、前記の実施形態では、コンテンツの提供元の通信装置としてのデバイスが、自装置の事前アップロードを制御するようにしたが、デバイスの上位の通信装置であるルータが、デバイスの事前アップロードを制御し、デバイスで事前アップロードを行うべきタイミングか否かを判定して、事前アップロードの実施をデバイスに指示するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明に係る通信装置、通信システムおよびコンテンツ転送方法は、コンテンツの転送に係る時間を短縮し、また、コンテンツを確実に転送することができ、特に、無線通信路を介してコンテンツを転送する場合に、無線リソースの有効利用を図り、無線通信路の負荷を軽減すると共に周波数利用効率を向上させ、また、消費電力を低減することができる効果を有し、情報指向ネットワークに接続された通信装置、コンテンツの要求元の通信装置が、情報指向ネットワークを介して、コンテンツを蓄積する提供元の通信装置からコンテンツを収集する通信システム、および提供元の通信装置に蓄積されたコンテンツを、情報指向ネットワークを経由して、コンテンツの要求元の通信装置に転送するコンテンツ転送方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0174】
1 サーバ(通信装置)
2 デバイス(通信装置)
3 ルータ(通信装置)
11 通信部
12 制御部
13 記憶部
21 通信部
22 カメラ
23 測位部
24 制御部
25 記憶部
31 通信部
32 制御部
33 記憶部