(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ラジオゾンデに関連する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/08 20060101AFI20220117BHJP
G01W 1/11 20060101ALI20220117BHJP
G01W 1/18 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01W1/08 H
G01W1/11 F
G01W1/18
(21)【出願番号】P 2017243719
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-07-29
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】516236724
【氏名又は名称】ヴァイサラ・オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトゥネン,エーロ
(72)【発明者】
【氏名】ストルムボム,ラース
(72)【発明者】
【氏名】スルヴォ,ペッテリ
(72)【発明者】
【氏名】レッパネン,ユッカ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-174721(JP,A)
【文献】特表2016-509226(JP,A)
【文献】特表2007-511775(JP,A)
【文献】特開2004-069708(JP,A)
【文献】特開平03-065643(JP,A)
【文献】特表2005-526986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0285755(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0024110(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0008471(US,A1)
【文献】特開2005-003543(JP,A)
【文献】特開平02-140653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00 -23/32 、27/00 -27/02 、
G01N27/00 -27/10 、27/14 -27/24 、
G01W 1/00 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジオゾンデに関連する方法であって、前記方法は、
-大気の
相対湿度を
、ポリマ絶縁体を有する蓄電器を備える湿度センサを使用して前記大気中の複数の異なる高度で測定することと、
-前記大気中の複数の異なる高度で圧力を測定すること、またはGPSまたは他の衛生誘導システムから取得する前記ラジオゾンデの高度から、前記圧力を推測することと、
-
前記湿度センサの温度を測定または推測することと、
を含み、
-前記相対湿度
の値(相対湿度)は補正因子に基づいて補正され(相対湿度_補正)、前記補正因子は前記圧力、前記湿度センサの温度、および前記相対湿度の関数であり、前記圧力が減少すると、前記
補正された相対湿度
の値も減少する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、取得した補正湿度値(相対湿度_最終)を前記ラジオゾンデで直接用いるか、または前記取得した補正湿度値を用いる地上局に通信する、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記湿度センサの温度は、大気温度から測定または推測される、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法であって、測定結果は地上局に送信され、前記相対湿度(相対湿度)値の補正は、前記地上局で受信する信号に対して行われる、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の方法であって、前記補正は以下の式に基づいて行われ、
RH_final=RH―RH_correction(P,T,RH) (式1) RH_correction(P,T,RH)=Σ
i=0
3p
i×Σ
k=0
3c
ik×T
k×RH
i (式2)
p
i=b
i×(P/P0)/(1+b
i×(P/P0))-b
i/(1+b
i) (式3)
式中、
相対湿度(RH)は測定された補正前の相対湿度(%)であり、
相対湿度_補正(RH_Correction)は圧力および温度誘導誤差の補正(%)であり、
Pは圧力(hPa)であり、
P0は正常な空気圧、つまり、1013.2(hPa)であり、
Tは推測または測定された湿度センサの温度(℃)であり、
c
ikおよびb
iはポリマ固有パラメータであり、指数iおよびkは0から3であり、校正基準に対する測定から決定される、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法であって、用いられる前記ポリマの体積抵抗率は1.0×10
6(Ohm/m)から1.0×10
18(Ohm/m)の範囲である、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法であって、用いられる前記ポリマの相対誘電率は2から6の範囲である、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の方法であって、前記センサは相対湿度0(相対湿度%)から100(相対湿度%)までの段階的な変化にさらされるので、前記センサ容量の相対変化は5(%)から50(%)の範囲である、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の方法であって、前記湿度センサの温度は-100(℃)から50(℃)の範囲である、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の方法であって、前記相対湿度の補正は、海抜15000(m)、16000(m)、17000(m)、18000(m)、19000(m)、20000(m)、25000(m)、または30000(m)より高い高度で実施される、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の方法であって、前記相対湿度値の補正は、前記湿度の測定中に、またはその後の段階で、たとえば、アーカイブされたデータに基づいて実施される、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の方法であって、前記補正因子(相対湿度_補正)は、前記圧力、前記湿度センサの温度、および前記相対湿度のみの関数である、方法。
【請求項13】
-ラジオゾンデと、地上局とを備えるシステムであって、前記ラジオゾンデは相対湿度を測定するための手段
であるポリマ絶縁体を有する蓄電器を備え、
-前記ラジオゾンデは圧力を測定する手段を備え、または前記システムはGPSまたは他の衛星誘導システムから取得する前記ラジオゾンデの高度から、前記圧力を算出する手段を備え
、
-前記システムは湿度センサの温度を測定または推測する手段を備え、
-前記システムは相対湿度値(相対湿度)を補正因子(相対湿度補正)に基づいて補正するように構成され、前記補正因子は前記圧力、前記湿度センサの温度、および前記相対湿度の関数であり、前記圧力が減少すると、前記湿度値も減少する、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記システムは、前記湿度センサの温度を大気温度から測定または推測するように構成される、システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載のシステムであって、前記ラジオゾンデは、測定結果または前記補正された相対湿度値または前記補正因子を前記地上局に送信する手段を備える、システム。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1つに記載のシステムであって、前記ラジオゾンデおよび前記地上局の少なくとも1つは、一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体を備え、一式のコンピュータ実施命令によって、前記ラジオゾンデまたは前記地上局に関して、プロセッサは前記測定された相対湿度値(相対湿度)を補正する、システム。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか1つに記載のシステムであって、前記補正は以下の式に基づき、
RH_final=RH―RH_correction(P,T,RH) (式1) RH_correction(P,T,RH)=Σ
i=0
3p
i×Σ
k=0
3c
ik×T
k×RH
i (式2)
p
i=b
i×(P/P0)/(1+b
i×(P/P0))-b
i/(1+b
i) (式3)
式中、
相対湿度(RH)は測定された補正前の相対湿度(%)であり、
相対湿度_補正(RH_Correction)は圧力および温度誘導誤差の補正(%)であり、
Pは圧力(hPa)であり、
P0は正常な空気圧、つまり、1013.2(hPa)であり、
Tは推測または測定された湿度センサの温度(℃)であり、
c
ikおよびb
iはポリマ固有パラメータであり、指数iおよびkは0から3であり、校正基準に対する測定から決定される、システム。
【請求項18】
請求項13~17のいずれか1つに記載のシステムであって、用いられる前記ポリマの体積抵抗率は1.0×10
6(Ohm/m)から1.0×10
18(Ohm/m)の範囲である、システム。
【請求項19】
請求項13~18のいずれか1つに記載のシステムであって、用いられる前記ポリマの相対誘電率は2から6の範囲である、システム。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか1つに記載のシステムであって、前記センサは相対湿度0(相対湿度%)から100(相対湿度%)までの段階的な変化にさらされるので、前記センサ容量の相対変化は5(%)から50(%)の範囲である、システム。
【請求項21】
請求項13~20のいずれか1つに記載のシステムであって、前記システムは-100(℃)から50(℃)の温度の範囲、またはその一部の範囲で稼働するように構成される、システム。
【請求項22】
一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実施命令によって、ラジオゾンデまたはラジオゾンデの地上局に関して、補正因子(相対湿度_補正)に基づいて、プロセッサは
ポリマ絶縁体を有する蓄電器を備えた湿度センサを使用して測定された相対湿度値(相対湿度)を補正し、前記補正因子は、圧力、湿度センサの温度、および相対湿度の関数であり、前記圧力が減少すると、前記
補正された相対湿度値も減少する、コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
請求項22に記載のコンピュータ可読媒体であって、前記一式のコンピュータ実施命令は、取得した補正湿度値(相対湿度_最終位置)を、前記ラジオゾンデで直接用いるように、または前記補正湿度値を用いる前記地上局に通信するようにさせる、コンピュータ可読媒体。
【請求項24】
請求項22または23に記載のコンピュータ可読媒体であって、前記補正は以下の式に基づき、
RH_final=RH―RH_correction(P,T,RH) (式1) RH_correction(P,T,RH)=Σ
i=0
3p
i×Σ
k=0
3c
ik×T
k×RH
i (式2)
p
i=b
i×(P/P0)/(1+b
i×(P/P0))-b
i/(1+b
i) (式3)
式中、
相対湿度(RH)は測定された補正前の相対湿度(%)であり、
相対湿度_補正(RH_Correction)は圧力および温度誘導誤差の補正(%)であり、
Pは圧力(hPa)であり、
P0は正常な空気圧、つまり、1013.2(hPa)であり、
Tは推測または測定された湿度センサの温度(℃)であり、
c
ikおよびb
iはポリマ固有パラメータであり、指数iおよびkは0から3であり、校正基準に対する測定から決定される、コンピュータ可読媒体。
【請求項25】
請求項1~12の少なくとも1つに記載の方法を実施するように構成される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、ラジオゾンデに関連する方法に関する。具体的には、本発明の態様は、ラジオゾンデの湿度測定の誤差補正に関する。さらに、本発明の態様は、ラジオゾンデと、地上局とを備えるシステムに関する。さらに、本発明の態様は、一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体に関する。さらに、本発明の態様は、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ラジオゾンデはガス気球に取り付けられる気象観測装置であり、大気パラメータを測定し、測定情報を一般に地上局まで送信する。測定された、または算出されたパラメータは一般に、様々な高度における大気温度、圧力、湿度、ならびに風速および方向を含む。
【0003】
ラジオゾンデは、ガス気球によって大気を通って上方に運ばれるため、測定対象の大気および測定構成の環境条件も動的に変化する。本発明の一部の実施形態は、投下ゾンデにも適している。投下ゾンデは、ラジオゾンデのような気象観測装置であるが、ガス気球によって飛揚される代わりに、航空システム、一般に飛行機、無人機システム(UAS)、または浮遊気球から投下される。
【0004】
気象測定はラジオゾンデのセンサによって実施される。ラジオゾンデによって取得される大気の特徴は、数的な天気予報モデルおよび気候研究の入力として、特に重要である。また、軍隊においても、たとえば、天気予報および弾道準備にラジオゾンデが適用される。
【0005】
特許文献1は、たとえば、ラジオゾンデシステム、ラジオゾンデシステム受信器およびラジオゾンデシステムで用いられる信号処理方法を開示する。ラジオゾンデシステムは、少なくとも1つのラジオゾンデを備え、位置および/または気象データを取得するための手段と、無線周波数経路でデータを下流伝達する手段と、気象および/または位置データを受信するための信号取得手段と、受信した信号を処理するための受信器手段とを有する。
【0006】
ラジオゾンデが測定する主要パラメータの1つは、相対湿度、または露点温度のいずれかとして測定される水蒸気密度である。この湿度測定の目的の一つは、たとえば、雲およびその高度の検出である。一般に、測定サイクル中の温度の範囲は非常に広く、たとえば、+40(℃)から-80(℃)の間であってもよい。
【0007】
測定は、とりわけ、測定された各変数の幅が広いことによって、ならびに雨、温度、氷結、凝結、および過飽和によって複雑になることもある。測定誤差はまた、ラジオゾンデセンサが遅いことが原因となることもあり、大気中で発生する放射熱交換が原因となることもある。
【0008】
気候研究および伝統的な天気予報における最近の進展によって、湿度測定に対してさらに厳しい精度要件が設定されてきた。成層圏での低温と低水蒸気密度との組み合わせ、または上部対流圏の高水蒸気密度によって、測定環境は非常に厳しくなる。湿度もまた、時間および高度に関連して急速に変化する。
【0009】
特許文献2は、ラジオゾンデの湿度測定結果を放射熱交換から発生する誤差に対して補正する方法を記載する。湿度はラジオゾンデの湿度センサによって測定される。誤差補正表または関数を用いて、センサの熱平衡に影響する1または複数のパラメータに応じて、放射熱交換によって生じる誤差を推測する。パラメータは、たとえば、日射強度、太陽高角度、風船上昇率、および空気密度である。代替的に、補正表または補正関数を用いて、湿度センサの温度を推測し、補正された湿度値は測定された湿度および推測された湿度センサの温度の両方から算出される。
【0010】
特許文献3は、方法およびラジオゾンデを開示する。同方法によれば、少なくとも大気の温度および相対湿度がラジオゾンデによって測定される。湿度測定は、迅速に測定を行うために、高温で継続的に実施され、高温および周囲温度の両方が同時に測定される。これらの3つの測定を用いて、補正された大気湿度を決定する。この方法によって、特許文献2が提示する放射誤差補正が必要ではなくなる。
【0011】
ラジオゾンデにおいて、最もよく用いられる湿度センサの種類は容量性薄膜センサである。容量性湿度センサの信号は、ポリマの誘電率を変更する絶縁ポリマ膜に水分が吸収されるに従い変化する。吸収される水分量は、センサの温度の相対湿度にほぼ比例する。つまり、センサ温度に依存する飽和蒸気圧に対する水蒸気の分圧の比率に比例する。分子レベルでは、ポリマに吸収される水分量は、ポリマに吸収される他の気体の量にも依存する水の分子が結合可能な適切な結合部位の量によって異なる。したがって、任意の水蒸気の分圧において、任意のポリマへの水分吸収は、センサ温度、気体圧力、および気体組成によって異なる。以下本明細書では、一部の依存を無視することによって生じる誤差は、吸収モデル誤差と呼ぶ。
【0012】
ラジオゾンデ製造工程の一部として、各ラジオゾンデセンサは個別に測定誤差に対して特徴付けられる。コストの理由から、誤差の特徴づけは、一般に、様々な温度での正常な圧力、つまり、1013.15(hPa)の近くで行われる。特徴づけ条件のため、吸収モデル誤差は一般に、正常な圧力の近くの関連する温度の範囲で、些少なレベルまで低減する。さらに、室温での空中において、吸収モデル誤差は一般に、正常な圧力から完全な真空までの圧力範囲で、取るに足らないほど小さい。このため、湿度測定の吸収モデル誤差は、ラジオゾンデでは検出されてこなかった。
【0013】
ただし、低圧条件の測定では、容量ポリマベースのセンサの吸収モデル誤差が、低温で急速に大きくなり、-20(℃)未満で目立つようになり、ラジオゾンデの温度の範囲の下端である約-60(℃)から-80(℃)までの間で顕著になる。0.5(相対湿度%)を超える補正は、ラジオゾンデのデータに関連性があると考えられる。
【0014】
ただし、低圧および低温での湿度測定のために、個別のラジオゾンデの誤差の特徴づけを実施することは、非常に時間と費用がかかる。
【0015】
したがって、測探中に直面する低圧および低温を考慮する、湿度測定の誤差補正に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第7,358,862号明細書
【文献】米国特許出願第2008/0072669号明細書
【文献】国際公開第2014/128348号パンフレット
【発明の概要】
【0017】
本発明は、独立請求項の特徴によって規定される。一部の具体的な実施形態は従属請求項に規定される。
【0018】
本発明の一部の実施形態の目的は、ラジオゾンデの湿度測定結果を補正するための方法およびシステムを提供することである。具体的には、本発明の一部の実施形態の目的は、ラジオゾンデの湿度測定に対する吸収モデル誤差補正の方法およびシステムを提供することである。さらに、本発明の一部の実施形態の目的は、ラジオゾンデに関連する方法を提供することである。本方法は、少なくとも圧力および大気の湿度を複数の高度で測定するためのステップと、湿度センサの温度を測定するためのステップと、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定するステップとを含む。さらに、本発明の一部の実施形態の目的は、ラジオゾンデと、地上局とを備えるシステムを提供することである。さらに、本発明の一部の実施形態の目的は、一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体を提供することである。本発明の一部の実施形態の目的の1つは、コンピュータプログラムを提供することである。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、ラジオゾンデに関連する方法が提供される。本方法は、大気の湿度を大気中の複数の異なる高度で測定すること、大気中の複数の異なる高度で圧力を測定すること、またはGPSまたは他の衛星誘導システムから取得したラジオゾンデの高度から圧力を算出すること、湿度センサの温度を測定または推測すること、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定すること、補正因子を少なくとも部分的に圧力、湿度センサの温度、および相対湿度に基づいて決定すること、圧力が減少すると、湿度値も減少するように、相対湿度値を補正因子に基づいて補正することを含む。
【0020】
第1の態様の様々な実施形態は、以下の項目の少なくとも1つの特徴を備えていてもよい。
・取得した補正湿度値は、直接ラジオゾンデで用いられるか、または補正湿度値を用いる地上局に通信される。
・湿度センサの温度は測定されるか、または大気温度から推測される。
・測定結果は地上局に送信され、受信した信号に対する相対湿度値の補正を地上局で行う。
・補正は以下の式に基づいて行われる。
【0021】
【0022】
式中、
相対湿度(RH)は測定された補正前の相対湿度(%)であり、
相対湿度_補正(RH_Correction)は圧力および温度誘導誤差の補正(%)であり、
Pは圧力(hPa)であり、
P0は正常な空気圧、つまり、1013.2(hPa)であり、
Tは推測または測定された湿度センサの温度(℃)であり、
cikおよびbiはポリマ固有パラメータであり、指数iおよびkは0から3であり、校正基準に対する測定から決定される。
・用いられるポリマの体積抵抗率は、1.0×106(Ohm/m)から1.0×1018(Ohm/m)の範囲である。
・用いられるポリマの相対誘電率は、2から6の範囲である。
・センサが相対湿度0(相対湿度%)から100(相対湿度%)までの段階的な変化にさらされるので、センサ容量の相対変化は5(%)から50(%)の範囲である。
・湿度センサの温度は、-100(℃)から50(℃)の範囲である。
・相対湿度の補正は、海抜15000(m)、16000(m)、17000(m)、18000(m)、19000(m)、20000(m)、25000(m)、または30000(m)より高い高度で実施される。
・相対湿度値の補正は、湿度の測定中に、またはその後の段階で、たとえば、アーカイブされたデータに基づいて実施される。
・補正因子(相対湿度_補正)は圧力、湿度センサの温度、および相対湿度のみの関数である。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、ラジオゾンデと、地上局とを備えるシステムが提供される。ラジオゾンデは、相対湿度を測定するための手段を備える。ラジオゾンデは圧力を測定する手段を備え、またはシステムはGPSまたは他の衛星誘導システムから取得するラジオゾンデの高度から圧力を算出する手段を備える。ラジオゾンデはポリマ絶縁体を有する蓄電器を備え、システムは湿度センサの温度を測定または推測する手段を備える。システムは相対湿度値を補正因子に基づいて補正するように構成され、補正因子は圧力、湿度センサの温度、および相対湿度の関数であり、圧力が減少すると、湿度値も減少する。
【0024】
第2の態様の様々な実施形態は、第1の態様に関連して記載した前述のブレット付きのリストの項目の特徴に対応する、少なくとも1つの特徴を備えていてもよい。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体が提供される。コンピュータ実施命令によって、プロセッサは、ラジオゾンデまたは地上局と関連して、測定された相対湿度値を補正因子に基づいて補正する。補正因子は、圧力、湿度センサの温度、および相対湿度の関数であり、圧力が減少すると、湿度値も減少する。
【0026】
第3の態様の様々な実施形態は、第1の態様に関連して記載した前述のブレット付きのリストの項目の特徴に対応する、少なくとも1つの特徴を備えていてもよい。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様による方法を実行させるように構成されるコンピュータプログラムが提供される。
【0028】
第4の態様の様々な実施形態は、第1の態様に関連して記載した前述のブレット付きのリストの項目の特徴に対応する、少なくとも1つの特徴を備えていてもよい。
【0029】
本発明の実施形態によって顕著な有利点が得られる。本発明の一部の実施形態は、ラジオゾンデの湿度測定結果を補正する方法およびシステムを提供する。測定された湿度値は、測定された湿度、湿度センサの温度および圧力に依存する関数によって補正可能である。
【0030】
必要とされる吸収モデル誤差補正は、湿度センサで用いられるポリマ素材の素材特性である。測定された相対湿度は標準関数によって補正可能であり、個別のラジオゾンデに対して低圧および低温で実施された測定に左右されない。
【0031】
吸収モデル誤差によって生じる測定誤差は、-80(℃)で10(相対湿度%)までと大きい。測探中の条件は変動するため、明確な吸収モデル誤差補正の導入によって、測定精度および一貫性が向上する。熱帯地方の緯度において、対流圏界面で発生することが多い過飽和湿度の表示誤差は、本補正を用いて排除可能である。対流圏界面後の高偏向など、依然として発生する誤差もまた、本現象によって説明され、同様に排除可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の少なくとも一部の実施形態による、本方法のフローチャートを例示する。
【
図2】本発明の少なくとも一部の実施形態による、本方法のフローチャートを例示する。
【
図3】本発明の少なくとも一部の実施形態による、本方法のフローチャートを例示する。
【
図4】様々な高度における温度および相対湿度を示す第1の図を例示する。
【
図5】様々な高度における温度および相対湿度を示す第2の図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一部の実施形態は、ラジオゾンデに関連する方法に関する。本方法は、複数の高度における少なくとも圧力および大気の湿度を測定するステップと、湿度センサの温度を測定または推測するステップと、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定するステップとを含む。相対湿度値は、補正因子に基づいて補正される。補正因子は、圧力、湿度センサの温度および相対湿度の関数であり、圧力が減少すると湿度値も減少する。本発明の実施形態によって、低圧および低温によって生じる誤差を補正することができる。
【0034】
図1では、本発明の実施形態による本方法のフローチャートを例示する。ラジオゾンデに関連する本方法は、大気の湿度を大気中の複数の異なる高度で測定することを含む。さらに、本方法は、圧力を大気中の複数の異なる高度で測定することを含む。代替的に、圧力をラジオゾンデの高度から推測してもよい。たとえば、GPSまたは他の衛星誘導システムから取得したラジオゾンデの高度(つまり、高さ)から、圧力を算出してもよい。さらに、本方法は、湿度センサの温度を測定または推測することを含む。さらに、本方法は、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定することを含む。本方法によれば、補正因子は、少なくとも部分的に圧力、湿度センサの温度、および相対湿度に基づいて、または圧力、湿度センサの温度、および相対湿度にのみ基づいて決定される。相対湿度値の補正は、補正因子に基づいて実施され、圧力が減少すると、湿度値も減少する。取得した補正湿度値は、直接ラジオゾンデで用いられてもよく、または補正湿度値を用いる地上局に通信されてもよい。
【0035】
一部の実施形態によれば、用いられるポリマの体積抵抗率は、有利には1.0×106(Ohm/m)から1.0×1018(Ohm/m)の範囲であり、用いられるポリマの相対誘電率は、有利には2から6の範囲であり、センサが相対湿度0(相対湿度%)から100(相対湿度%)までの段階的な変化にさらされるので、センサ容量の相対変化は5(%)から50(%)の範囲である。
【0036】
図2では、本発明の別の実施形態による本方法のフローチャートを例示する。ラジオゾンデを飛揚後、少なくとも大気の湿度および湿度センサの温度を大気中の複数の異なる高度で測定する。さらに、圧力を大気中の複数の異なる高度で測定し、またはラジオゾンデの高度から算出する。ラジオゾンデの高度から算出する場合は、圧力を、GPS高度から由来する圧力と考えてもよい。さらに、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定する。その後、測定結果は地上局に通信され、受信した信号に対する相対湿度値の補正を地上局で行う。
【0037】
一部の実施形態によれば、ラジオゾンデによるデータの後処理は、標準的なワークステーションコンピュータなどの計算装置を用いて行ってもよい。一般に、データ処理をアーカイブされたデータに対しても行ってもよい。
【0038】
図3では、本発明の実施形態による本方法のフローチャートを例示する。ラジオゾンデに関連する本方法は、大気中の複数の異なる高度で大気の湿度を測定することを含む。さらに、本方法は、大気中の複数の異なる高度で圧力を測定することを含む。代替的に、圧力をラジオゾンデの高度から推測してもよい。たとえば、GPSまたは他の衛星誘導システムから取得したラジオゾンデの高度から、圧力を算出してもよい。さらに、本方法は、湿度センサの温度を測定または推測することを含む。さらに、本方法は、ポリマ絶縁体を有する蓄電器によって相対湿度を測定することを含む。相対湿度値(相対湿度)は補正因子に基づいて補正される(相対湿度_補正)。補正因子は、圧力、湿度センサの温度、および相対湿度の関数であり、圧力が減少すると、湿度値も減少する。
【0039】
補正は以下の式に基づく。
【0040】
【0041】
式中、
相対湿度(RH)は測定された補正前の相対湿度(%)であり、
相対湿度_補正(RH_Correction)は圧力および温度誘導誤差の補正(%)であり、
Pは圧力(hPa)であり、
P0は正常な空気圧、つまり、1013.2(hPa)であり、
Tは推測または測定された湿度センサの温度(℃)であり、
cikおよびbiはポリマ固有パラメータであり、指数iおよびkは0から3であり、校正基準に対する測定から決定される。
【0042】
一部の実施形態によれば、上記の補正式は、物理法則を用いて、露点校正を有するポリマセンサの露点に対して修正することができる。
【0043】
補正は正常な空気圧より低い圧力で行われる。相対湿度値(相対湿度)の補正は、ラジオゾンデで行われてもよく、または測定結果を地上局に送信後に地上局で行われてもよい。一般に、ラジオゾンデおよび地上局の少なくとも1つは、一式のコンピュータ実施命令を記憶するコンピュータ可読媒体を備える。一式のコンピュータ実施命令によって、ラジオゾンデまたは地上局に関連して、プロセッサは測定された相対湿度値を補正する。代替的に、データの後処理は計算装置が行ってもよい。
【0044】
図4では、様々な高度における温度および相対湿度を示す第1の図を例示する。図中、温度、測定された相対湿度、補正された相対湿度、および測定された相対湿度と補正された相対湿度との差を示す。最大測定誤差は、海抜16000(m)から18000(m)の範囲で発生することが明白に分かる。
【0045】
図5は、様々な高度における温度および相対湿度を示す第2の図を例示する。図中、温度、測定された相対湿度、補正された相対湿度、および測定された相対湿度と補正された相対湿度との差を示す。最大測定誤差は、最も低い測定温度で、海抜15000(m)から20000(m)の範囲で発生することが明白に分かる。
【0046】
開示する本発明の実施形態は、本発明で開示する具体的な構造、処理段階、または素材に限定されず、当業者が認識するであろうその同等物にまで拡大されることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は具体的な実施形態を記載する目的でのみ用いられ、限定を目的とするものではないことも理解されたい。
【0047】
本明細書を通じて一実施形態または任意の実施形態への言及は、実施形態に関連して記載する具体的な特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所における、「一実施形態では」、または「実施形態では」という語句は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているわけではない。たとえば、約または実質的に、などの用語を用いて数値に言及する場合は、正確な数値も開示される。
【0048】
本明細書では、複数の項目、構造要素、組成要素、および/または素材を便宜上共通のリストに表示することもある。ただし、これらのリストは、リストの各部材が別個で唯一の部材として、個別に特定されるものとして解釈されるべきである。したがって、別段記載がない限り、このリストのどの個別の部材も、共通のグループに表示されるということのみに基づいて、同じリストの他の部材と事実的に同等と解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、本明細書において様々な構成要素の代替とともに言及されてもよい。このような実施形態、実施例、および代替は、事実上互いに同等であると解釈されてはならず、別個の本発明の自律的な表示と考えられるべきであることを理解されたい。
【0049】
さらに、前述の特徴、構造、または特性を、1または複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせてもよい。本明細書において、本発明の実施形態を完全に理解するために、多数の具体的な詳細、たとえば、長さ、幅、形などを提示する。ただし、当業者は、1または複数の具体的な詳細を用いずに、または他の方法、部品、素材などを用いて、本発明を実施可能であることを認識するであろう。他の事例では、本発明の態様を明らかにするために、既知の構造、素材、または稼働は詳細には図示または記載されない。
【0050】
前述の例は、1または複数の具体的な適用における本発明の原理を例示するが、当業者には、実施の形態、用途および詳細において、発明力を行使せず、本発明の原理および概念から逸脱せずに多数の修正が可能であることは明らかであろう。したがって、以下に記載する請求項による限定を除き、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0051】
「備える」および「含む」という動詞は、本書で非限定的に使用され、記載されていない特徴を除外もせず、要求もしない。従属請求項に記載された特徴は、他に明示的に記載のない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。さらに、本書において、「1つ」、つまり単数形を使用することは、複数を除外するものではないことを理解されたい。
【0052】
[産業上の利用可能性]
本発明の少なくとも一部の実施形態は、ラジオゾンデおよび湿度測定方法において産業的に利用可能である。