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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】麻酔器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20220117BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20220117BHJP
   G06F 3/04842 20220101ALI20220117BHJP
【FI】
A61M5/145 500
H04Q9/00 361
G06F3/0484 120
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017247876
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019111200
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 芳弘
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086972(JP,A)
【文献】特表2015-528711(JP,A)
【文献】特開2013-218675(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 16/00
H04Q 9/00
G06F 3/0484
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの外部機器と通信可能な通信部と
麻酔情報を示す第一画面を表示する表示装置と、
第一入力操作を受け付ける第一操作受付部と、
を備えており、
前記第一操作受付部が前記第一入力操作を受け付けると、前記第一画面に加え、前記外部機器の動作情報を示す第二画面が前記表示装置に表示され、
第二入力操作を受け付ける第二操作受付部と、
前記外部機器の動作を遠隔制御する操作を受け付ける遠隔操作受付部と、
を備えており、
前記第一入力操作により表示される前記第二画面は、第一のサイズを有しており、
前記第二操作受付部が前記第二入力操作を受け付けると、前記第二画面は、前記第一のサイズよりも大きい第二のサイズに変化し、
前記遠隔操作受付部は、前記第一のサイズを有する前記第二画面内には表示されておらず、前記第二のサイズを有する前記第二画面内には表示されている、
麻酔器。
【請求項2】
前記第二画面は、前記第一画面に重畳することなく表示され、前記第一画面のサイズは、前記第二画面が表示される前よりも縮小される、
請求項1に記載の麻酔器。
【請求項3】
前記第二のサイズは、前記外部機器が備える表示画面のサイズと同じであり、
前記第二のサイズを有する前記第二画面内の情報レイアウトは、前記外部機器の表示画面の情報レイアウトと同じである、
請求項に記載の麻酔器。
【請求項4】
前記第一のサイズを有する前記第二画面は、前記第二操作受付部を兼ねる、
請求項に記載の麻酔器。
【請求項5】
第三入力操作を受け付ける第三操作受付部を備えており、
前記第二画面が前記第二のサイズを有している間に前記第三操作受付部が前記第三入力操作を受け付けた場合、あるいは前記遠隔操作受付部に操作が入力されない時間が所定値に達した場合、前記第二画面は、前記第一のサイズに戻る、
請求項からのいずれか一項に記載の麻酔器。
【請求項6】
前記第二のサイズを有する前記第二画面は、前記第三操作受付部を兼ねる、
請求項に記載の麻酔器。
【請求項7】
前記少なくとも一つの外部機器が上方位置に配置された第一外部機器と下方位置に配置された第二外部機器を含んでいる場合、前記第一外部機器の動作情報を示す第一領域が前記第二画面内の上方位置に表示され、前記第二外部機器の動作情報を示す第二領域が前記第二画面内の下方位置に表示される、
請求項1からのいずれか一項に記載の麻酔器。
【請求項8】
前記第一操作受付部は、前記第一領域と前記第二領域の一方を選択する選択操作受付部を含んでおり、
前記選択操作受付部によって前記第一領域と前記第二領域の一方が選択されると、当該第一領域と当該第二領域の他方に対応する外部機器の遠隔制御が不能とされる、
請求項に記載の麻酔器。
【請求項9】
共通操作スイッチを備えており、
前記選択操作受付部によって前記第一領域が選択されているとき、前記共通操作スイッチは、当該第一領域に対応する外部機器に設けられた操作スイッチと同じ機能を有し、
前記選択操作受付部によって前記第二領域が選択されているとき、前記共通操作スイッチは、当該第二領域に対応する外部機器に設けられた操作スイッチと同じ機能を有する、請求項に記載の麻酔器。
【請求項10】
前記外部機器は、シリンジポンプである、
請求項1からのいずれか一項に記載の麻酔器。
【請求項11】
前記シリンジポンプは、静脈麻酔薬の投与器である、
請求項10に記載の麻酔器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、麻酔器に関する。本開示において「麻酔器」とは、吸入麻酔薬を患者に投与するための装置を意味する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、そのような麻酔器の一例を開示している。当該麻酔器は、気化装置を備えている。例えば手術中において、吸入麻酔薬は気化装置によって気化され、麻酔ガスとして患者に投与される。
【0003】
麻酔器は、表示装置を備えていることが一般的である。表示装置には、麻酔ガスの濃度や患者の生体情報などが表示される。麻酔医は、表示装置に表示される情報を参照しつつ、患者の麻酔状態を管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-131778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術中においては、上記の麻酔器に加えて、シリンジポンプなどの外部機器を用いた麻酔管理や輸液管理がなされる場合がある。シリンジポンプは、シリンジ(静脈注射など)を介して所定量の薬液を患者の体内に投与するための装置である。当該薬液には、静脈麻酔薬が含まれる。
【0006】
そのような外部機器もまた、表示装置を備えていることが一般的である。表示装置には、薬液の投与量や患者の生体情報などが表示される。麻酔医は、表示装置に表示される情報を参照しつつ、患者への輸液管理を行なう。
【0007】
麻酔器と外部機器が併用される場合、両者は離れた場所に設置されることが一般的である。したがって、麻酔医は両装置の間を行き来しながら患者の状態管理を行なう必要がある。
【0008】
本開示は、麻酔器と外部機器が併用される場合において麻酔医の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様は、麻酔器であって、
少なくとも一つの外部機器と通信可能な通信部と
麻酔情報を示す第一画面を表示する表示装置と、
第一入力操作を受け付ける第一操作受付部と、
を備えており、
前記第一操作受付部が前記第一入力操作を受け付けると、前記第一画面に加え、前記外部機器の動作情報を示す第二画面が前記表示装置に表示される。
【0010】
このような構成によれば、麻酔器と外部機器が併用される場合において、麻酔医は、麻酔器の表示装置を通じた患者の麻酔管理を行ないつつ、必要に応じて第一操作受付部に第一入力操作を行なうことによって、外部機器の動作状態を確認できる。すなわち、麻酔器による麻酔管理中に外部機器の動作状態を確認するために外部機器の場所まで赴く必要がない。したがって、麻酔医の負担を軽減できる。また、麻酔医の動線を考慮する必要性が低下するので、外部機器の設置場所に係る自由度が高まる。
【0011】
第二画面は、麻酔器の表示装置に常時表示されているのではなく、第一操作受付部が第一入力操作を受け付けた場合のみ表示される。したがって、第二画面の表示は、第一画面を通じた麻酔管理の妨げにならない。この点においても、麻酔器と外部機器が併用される場合における麻酔医の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る麻酔器の構成を模式的に示している。
図2】上記の麻酔器における表示装置の状態遷移の一例を示している。
図3】上記の表示装置の状態遷移の別例を示している。
図4】上記の表示装置の状態遷移の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る麻酔器1の構成を模式的に示している。
【0014】
麻酔器1は、患者Pに吸入麻酔薬を投与するための装置である。麻酔器1は、気化装置11を備えている。吸入麻酔薬が常温で液体である場合、当該吸入麻酔薬は、気化装置11により気化され、麻酔ガスとして患者Pへ投与される。
【0015】
麻酔器1は、表示装置12を備えている。図2の(A)に示されるように、表示装置12は、麻酔情報表示画面121を表示するための装置である。
【0016】
麻酔情報表示画面121には、吸入麻酔薬の濃度や投与量を示す数値情報、吸入麻酔薬の濃度や投与量の経時変化を示すトレンドグラフ、患者Pの生体情報を示す数値情報などが表示されうる。生体情報としては、心拍数、血圧、動脈血酸素飽和度などが例示されうる。麻酔情報表示画面121は、患者Pと麻酔器1の少なくとも一方における異常を報知するための表示領域も含みうる。麻酔医は、麻酔情報表示画面121を参照しつつ、患者の麻酔状態を管理する。麻酔情報表示画面121は、第一画面の一例である。
【0017】
図1に示されるように、麻酔器1は、通信部13を備えている。通信部13は、少なくとも一つのシリンジポンプ2との通信を可能にするインターフェースを備えている。
【0018】
シリンジポンプ2は、シリンジ(静脈注射など)を介して所定量の薬液を患者Pの体内に投与するための装置である。シリンジポンプ2は、外部機器の一例である。シリンジポンプ2は、シリンジ21を備えている。患者Pへ送られる薬液の量は、不図示の駆動装置によりシリンジ21が駆動されることによって調節される。
【0019】
シリンジポンプ2と通信部13の間の通信は、有線通信により行なわれてもよいし、無線通信により行なわれてもよい。シリンジポンプ2と通信部13の間の接続は、直接的になされてもよいし、少なくとも一つの中継ユニットを介して間接的になされてもよい。
【0020】
シリンジポンプ2は、表示装置22を備えている。表示装置22は、シリンジポンプ2の動作情報を表示する動作情報表示画面を表示する装置である。動作情報表示画面には、薬液の投与速度、投与量、累積投与量などを示す数値情報が表示されうる。動作情報表示画面は、シリンジポンプ2と患者Pの少なくとも一方の異常を報知するための表示領域も含みうる。麻酔医は、表示装置22に表示される情報を参照しつつ、患者Pへの輸液管理を行ないうる。
【0021】
麻酔器1は、呼出スイッチ14を備えている。呼出スイッチ14は、押下操作を受け付けるハードウェアスイッチである。図2の(A)に示されるように表示装置12に麻酔情報表示画面121が表示された状態で呼出スイッチ14が押下されると、図2の(B)に示されるように、麻酔情報表示画面121に加えてシリンジポンプ情報表示画面122が、表示装置12に表示される。呼出スイッチ14は、第一操作受付部の一例である。呼出スイッチ14の押下操作は、第一入力操作の一例である。
【0022】
シリンジポンプ情報表示画面122は、シリンジポンプ2の表示装置22に表示される動作表示画面に含まれる情報の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、シリンジポンプ情報表示画面122は、シリンジポンプ2の動作情報を示す。シリンジポンプ情報表示画面122は、第二画面の一例である。
【0023】
具体的には、麻酔器1は、シリンジポンプ2の動作表示画面に表示される情報に対応するデータを、通信部13を通じてシリンジポンプ2から取得する。当該データは、不図示のプロセッサなどにより処理され、シリンジポンプ情報表示画面122において可視化される。
【0024】
このような構成によれば、麻酔器1とシリンジポンプ2が併用される場合において、麻酔医は、麻酔器1の表示装置12を通じた患者Pの麻酔管理を行ないつつ、必要に応じて呼出スイッチ14を操作することによって、シリンジポンプ2の動作状態を確認できる。すなわち、麻酔器1による麻酔管理中にシリンジポンプ2の動作状態を確認するために表示装置22の場所まで赴く必要がない。したがって、麻酔医の負担を軽減できる。また、麻酔医の動線を考慮する必要性が低下するので、シリンジポンプ2の設置場所に係る自由度が高まる。
【0025】
シリンジポンプ情報表示画面122は、麻酔器1の表示装置12に常時表示されているのではなく、呼出スイッチ14の操作によってのみ表示される。したがって、シリンジポンプ情報表示画面122の表示は、麻酔情報表示画面121を通じた麻酔管理の妨げにならない。この点においても、麻酔器1とシリンジポンプ2が併用される場合における麻酔医の負担を軽減できる。
【0026】
表示装置12がタッチパネルを備えている場合、呼出スイッチ14は、表示装置12に表示されるタッチ操作可能なスイッチ画像として提供されうる。この場合、当該スイッチ画像が第一操作受付部の一例であり、スイッチ画像のタッチ操作は第一入力操作の一例である。シリンジポンプ情報表示画面122の表示は、所定の第一フレーズを音声入力することによってなされてもよい。この場合、音声入力を受け付ける構成が第一操作受付部の一例であり、第一フレーズの音声入力が第一入力操作の一例である。
【0027】
シリンジポンプ情報表示画面122は、麻酔情報表示画面121に重畳表示されうる。しかしながら、本実施形態においては、図2の(B)に示されるように、シリンジポンプ情報表示画面122は、麻酔情報表示画面121に重畳することなく表示される。このとき、麻酔情報表示画面121のサイズは、シリンジポンプ情報表示画面122が表示される前よりも縮小される。
【0028】
このような構成によれば、シリンジポンプ情報表示画面122の表示によって麻酔情報表示画面121の視認が妨げられず、麻酔管理と輸液管理の双方を効率よく行なえる。
【0029】
シリンジポンプ情報表示画面122のサイズは、縮小された麻酔情報表示画面121のサイズよりも小さいことが好ましい。
【0030】
縮小された麻酔情報表示画面121においては、数値情報の表示が維持されつつ、トレンドグラフの時間軸が短縮されることが好ましい。
【0031】
図1に示されるように、シリンジポンプ2は、操作受付部23を備えている。操作受付部23は、シリンジポンプ2の動作を制御するためのスイッチ群である。当該スイッチ群により制御されるシリンジポンプ2の動作は、輸液の開始および停止、輸液速度の上昇および低下などが例示されうる。当該スイッチ群の少なくとも一つは、ハードウェアスイッチでもよいし、表示装置22に表示されるタッチ操作可能なスイッチ画像でもよい。
【0032】
図2の(B)に示されるように表示装置12にシリンジポンプ情報表示画面122が表示された状態で、シリンジポンプ情報表示画面122の一部がタッチ操作されると、図2の(C)に示されるように、シリンジポンプ情報表示画面122が拡大する。シリンジポンプ情報表示画面122の一部は第二操作受付部の一例であり、当該タッチ操作は第二入力操作の一例である。図2の(B)に示されるシリンジポンプ情報表示画面122のサイズは第一のサイズの一例であり、図2の(C)に示されるシリンジポンプ情報表示画面122のサイズは第二のサイズの一例である。
【0033】
拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122内には、遠隔操作受付部123が配置されている。遠隔操作受付部123は、タッチ操作可能な複数のスイッチ画像を含んでいる。各スイッチ画像は、シリンジポンプ2の操作受付部23に含まれるスイッチのいずれかに関連付けられている。すなわち、遠隔操作受付部123は、シリンジポンプ2を遠隔制御する操作を受け付ける。
【0034】
遠隔操作受付部123を通じて入力された操作は、不図示のプロセッサなどにより対応する信号に変換され、通信部13を通じてシリンジポンプ2へ送信される。当該信号は、操作受付部23を通じて入力される信号と同等とされる。当該信号を受信したシリンジポンプ2は、当該信号に対応する動作を実行する。
【0035】
このような構成によれば、麻酔器1とシリンジポンプ2が併用される場合において、麻酔医は、麻酔器1の表示装置12を通じた患者Pの麻酔管理を行ないつつ、必要に応じて遠隔操作受付部123を操作することによって、シリンジポンプ2の動作を遠隔制御できる。すなわち、麻酔器1による麻酔管理中にシリンジポンプ2を操作するために操作受付部23の場所まで赴く必要がない。
【0036】
遠隔操作受付部123は、麻酔器1の表示装置12に常時表示されているのではなく、シリンジポンプ情報表示画面122を呼び出した後の所定操作(第二入力操作)によってのみ表示される。シリンジポンプ2の動作状態を確認するのみであれば、シリンジポンプ情報表示画面122は、よりサイズの小さい状態のままとされる。したがって、遠隔操作受付部123の表示は、麻酔情報表示画面121を通じた麻酔管理の妨げにならない。この点においても、麻酔器1とシリンジポンプ2が併用される場合における麻酔医の負担を軽減できる。
【0037】
なお、麻酔器1における遠隔操作受付部123の操作とシリンジポンプ2における操作受付部23の操作が同時に行なわれた場合は、操作受付部23の操作が優先されるように構成されうる。
【0038】
図2の(C)に示される拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122のサイズ(第二のサイズ)は、図1に示されるシリンジポンプ2の表示装置22に表示される動作情報表示画面のサイズと同じでありうる。また、拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122内の情報レイアウトは、シリンジポンプ2の動作情報表示画面内の情報レイアウトと同じでありうる。
【0039】
このような構成によれば、麻酔器1からシリンジポンプ2を遠隔制御する場合において、表示装置22に表示される動作情報表示画面を通じて動作制御が行なわれる場合と同等の操作感を、表示装置12において麻酔医に提供できる。したがって、麻酔器1による麻酔管理を行ないながらシリンジポンプ2を遠隔制御する際の麻酔医の負担を軽減できる。
【0040】
この観点に基づけば、拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122内に配置される遠隔操作受付部123のレイアウトは、遠隔制御されるシリンジポンプ2の操作受付部23のレイアウトと同じであることが好ましい。
【0041】
前述のように、図2の(B)に示されるサイズ(第一のサイズ)のシリンジポンプ情報表示画面122は、シリンジポンプ情報表示画面122を拡大させるタッチ操作(第二入力操作)の受付部を兼ねている。
【0042】
このような構成によれば、より直観的な操作感を伴うユーザインターフェースを麻酔医に提供できる。特に後述する麻酔器1が複数のシリンジポンプを遠隔制御する場合において、いずれのシリンジポンプが操作対象であるかを直観的に認識できる。
【0043】
しかしながら、シリンジポンプ情報表示画面122を拡大させる操作は、表示装置12の近傍に設けられたハードウェアスイッチにより入力されてもよい。この場合、当該ハードウェアスイッチが第二操作受付部の一例であり、当該ハードウェアスイッチの押下操作が第二入力操作の一例である。シリンジポンプ情報表示画面122の拡大は、所定の第二フレーズを音声入力することによってなされてもよい。この場合、音声入力を受け付ける構成が第二操作受付部の一例であり、第二フレーズの音声入力が第二入力操作の一例である。
【0044】
拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122は、麻酔情報表示画面121に重畳表示されうる。しかしながら、本実施形態においては、図2の(C)に示されるように、拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122は、麻酔情報表示画面121に重畳することなく表示される。このとき、麻酔情報表示画面121のサイズは、シリンジポンプ情報表示画面122が拡大される前よりもさらに縮小される。
【0045】
このような構成によれば、シリンジポンプ情報表示画面122の拡大によって麻酔情報表示画面121の視認が妨げられず、麻酔管理と輸液管理の双方を効率よく行なえる。
【0046】
拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122のサイズは、さらに縮小された麻酔情報表示画面121のサイズよりも小さいことが好ましい。
【0047】
さらに縮小された麻酔情報表示画面121においては、数値情報の表示が維持されつつ、トレンドグラフの時間軸が短縮されることが好ましい。
【0048】
図2の(C)に示されるように表示装置12にシリンジポンプ情報表示画面122が拡大表示された状態で、シリンジポンプ情報表示画面122の一部がタッチ操作されると、図2の(B)に示されるように、シリンジポンプ情報表示画面122が元のサイズに戻る。拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122の一部は第三操作受付部の一例であり、当該タッチ操作は第三入力操作の一例である。
【0049】
あるいは、遠隔操作受付部123に操作が入力されない時間が所定値に達した場合、シリンジポンプ情報表示画面122は、自動的に元のサイズに戻る。
【0050】
このような構成によれば、表示装置12が遠隔操作受付部123に占有されている時間を必要最小限にできる。また、遠隔操作受付部123に不慮の操作入力がなされる可能性を抑制できる。
【0051】
前述のように、図2の(C)に示される拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122は、シリンジポンプ情報表示画面122のサイズを元に戻すタッチ操作(第三入力操作)の受付部を兼ねている。
【0052】
このような構成によれば、より直観的な操作感を伴うユーザインターフェースを麻酔医に提供できる。特に後述する麻酔器1が複数のシリンジポンプを遠隔制御する場合において、いずれのシリンジポンプが操作対象であるかを直観的に認識できる。
【0053】
しかしながら、シリンジポンプ情報表示画面122のサイズを元に戻す操作は、表示装置12の近傍に設けられたハードウェアスイッチにより入力されてもよい。この場合、当該ハードウェアスイッチが第三操作受付部の一例であり、当該ハードウェアスイッチの押下操作が第三入力操作の一例である。シリンジポンプ情報表示画面122の縮小は、所定の第三フレーズを音声入力することによってなされてもよい。この場合、音声入力を受け付ける構成が第三操作受付部の一例であり、第三フレーズの音声入力が第三入力操作の一例である。
【0054】
図1に破線で示されるように、麻酔器1は、複数のシリンジポンプ2との通信が可能とされうる。本例においては、第一シリンジポンプ2A、第二シリンジポンプ2B、および第三シリンジポンプ2Cの三台との通信が可能とされている。シリンジポンプ2が静脈麻酔薬の投与器として用いられる場合、複数のシリンジポンプ2が用いられることが一般的である。例えば、第一シリンジポンプ2Aは、鎮静薬を投与するために用いられうる。第二シリンジポンプ2Bは、鎮痛薬を投与するために用いられうる。第三シリンジポンプ2Cは、筋弛緩薬を投与するために用いられうる。
【0055】
複数のシリンジポンプ2は、上下方向に並ぶようにラックに支持されることが一般的である。本例においては、第一シリンジポンプ2Aは、第二シリンジポンプ2Bの上方に配置されている。第二シリンジポンプ2Bは、第三シリンジポンプ2Cの上方に配置されている。
【0056】
このような構成においては、図2の(B)に示されるように、呼出スイッチ14の操作によって表示されるシリンジポンプ情報表示画面122は、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cを含む。
【0057】
第一領域122Aは、第一シリンジポンプ2Aの表示装置22に表示される動作表示画面に含まれる情報の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、第一領域122Aは、第一シリンジポンプ2Aの動作情報を示す。
【0058】
第二領域122Bは、第二シリンジポンプ2Bの表示装置22に表示される動作表示画面に含まれる情報の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、第二領域122Bは、第二シリンジポンプ2Bの動作情報を示す。
【0059】
第三領域122Cは、第三シリンジポンプ2Cの表示装置22に表示される動作表示画面に含まれる情報の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、第三領域122Cは、第三シリンジポンプ2Cの動作情報を示す。
【0060】
具体的には、麻酔器1は、第一シリンジポンプ2Aの動作表示画面に表示される情報に対応するデータを、通信部13を通じて第一シリンジポンプ2Aから取得する。当該データは不図示のプロセッサなどにより処理され、第一領域122Aにおいて可視化される。
【0061】
同様に、麻酔器1は、第二シリンジポンプ2Bの動作表示画面に表示される情報に対応するデータを、通信部13を通じて第二シリンジポンプ2Bから取得する。当該データは不図示のプロセッサなどにより処理され、第二領域122Bにおいて可視化される。
【0062】
同様に、麻酔器1は、第三シリンジポンプ2Cの動作表示画面に表示される情報に対応するデータを、通信部13を通じて第三シリンジポンプ2Cから取得する。当該データは不図示のプロセッサなどにより処理され、第三領域122Cにおいて可視化される。
【0063】
シリンジポンプ情報表示画面122内において、第一領域122Aは、第二領域122Bよりも上方に配置されている。第二領域122Bは、第三領域122Cよりも上方に配置されている。すなわち、第一シリンジポンプ2A、第二シリンジポンプ2B、および第三シリンジポンプ2Cの配列順序が、シリンジポンプ情報表示画面122内の第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cの配列順序に反映されている。
【0064】
このような構成によれば、麻酔器1と複数のシリンジポンプ2を併用する場合において、複数のシリンジポンプ2の各表示装置22を確認する作業状態を、違和感なく麻酔器1の表示装置12上に再現できる。したがって、麻酔医の負担を軽減できる。
【0065】
図2の(B)に示されるように表示装置12にシリンジポンプ情報表示画面122が表示された状態で、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cのいずれかがタッチ操作されると、図2の(C)に示されるように、シリンジポンプ情報表示画面122が拡大する。
【0066】
拡大されたシリンジポンプ情報表示画面122において、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cの各々も拡大される。拡大された第一領域122Aは、第一遠隔操作受付部123Aを含んでいる。第一遠隔操作受付部123Aは、第一シリンジポンプ2Aを遠隔制御する操作を受け付ける。拡大された第二領域122Bは、第二遠隔操作受付部123Bを含んでいる。第二遠隔操作受付部123Bは、第二シリンジポンプ2Bを遠隔制御する操作を受け付ける。拡大された第三領域122Cは、第三遠隔操作受付部123Cを含んでいる。第三遠隔操作受付部123Cは、第三シリンジポンプ2Cを遠隔制御する操作を受け付ける。
【0067】
図3の(A)に示されるように、麻酔器1は、選択スイッチ15を備えうる。選択スイッチ15は、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cのいずれかを選択する操作を受け付ける。例えば、初期状態で第一領域122Aが選択されている場合に選択スイッチ15が押下されると、図3の(B)に示されるように、第二領域122Bが選択されている状態に切り替わる。この状態で選択スイッチ15が押下されると、図3の(C)に示されるように、第三領域122Cが選択されている状態に切り替わる。この状態で選択スイッチ15が押下されると、第一領域122Aが選択されている状態に戻る。選択スイッチ15は、選択操作受付部の一例である。
【0068】
選択状態にある領域は、非選択状態にある領域よりも相対的に目立つように、様々な態様で特定されうる。図3に示されるように非選択状態にある領域がグレイアウト表示されてもよいし、選択状態にある領域がハイライト表示されてもよい。
【0069】
麻酔器1は、非選択状態にある領域を通じてのシリンジポンプ2の遠隔操作入力を禁止するように構成されうる。このような動作は、麻酔器1が備えている不図示のプロセッサなどによる制御処理として実現されうる。例えば図3の(A)に示されるように、第一領域122Aが選択状態にある場合、グレイアウト表示されている第二領域122Bに含まれる第二遠隔操作受付部123Bを通じた第二シリンジポンプ2Bの遠隔制御は不能とされる。同様に、グレイアウト表示されている第三領域122Cに含まれる第三遠隔操作受付部123Cを通じた第三シリンジポンプ2Cの遠隔制御は不能とされる。
【0070】
このような構成によれば、麻酔器1と複数のシリンジポンプ2を併用する場合において、操作対象であるシリンジポンプ2を明確に特定できるだけでなく、操作対象でないシリンジポンプ2が誤って操作される可能性を排除できる。
【0071】
本例においては、選択スイッチ15は、表示装置12の近傍に配置されたハードウェアスイッチである。しかしながら、選択スイッチ15は、表示装置12に表示されるタッチ操作可能なスイッチ画像として提供されうる。この場合、当該スイッチ画像が選択操作受付部の一例である。遠隔制御の対象となるシリンジポンプ2の切り替えは、所定のフレーズを音声入力することによってなされてもよい。この場合、音声入力を受け付ける構成が選択操作受付部の一例である。
【0072】
図1に示されるように、第一シリンジポンプ2Aは、第一操作スイッチ24Aを備えうる。第一操作スイッチ24Aは、プッシュ操作とダイヤル操作の少なくとも一方を入力可能なスイッチとして提供されうる。第一操作スイッチ24Aを通じて入力される所定の操作により、第一シリンジポンプ2Aは所定の操作を行なうように構成されうる。
【0073】
同様に、第二シリンジポンプ2Bは、第二操作スイッチ24Bを備えうる。第二操作スイッチ24Bは、プッシュ操作とダイヤル操作の少なくとも一方を入力可能なスイッチとして提供されうる。第二操作スイッチ24Bを通じて入力される所定の操作により、第二シリンジポンプ2Bは所定の操作を行なうように構成されうる。
【0074】
同様に、第三シリンジポンプ2Cは、第三操作スイッチ24Cを備えうる。第三操作スイッチ24Cは、プッシュ操作とダイヤル操作の少なくとも一方を入力可能なスイッチとして提供されうる。第三操作スイッチ24Cを通じて入力される所定の操作により、第三シリンジポンプ2Cは所定の操作を行なうように構成されうる。
【0075】
麻酔器1は、共通操作スイッチ16を備えうる。共通操作スイッチ16は、プッシュ操作とダイヤル操作の少なくとも一方を入力可能なスイッチとして提供されうる。図3の(A)に示されるように選択スイッチ15を通じて第一領域122Aが選択されているとき、共通操作スイッチ16は、第一領域122Aに対応する第一シリンジポンプ2Aに設けられた第一操作スイッチ24Aと同じ機能を有する。
【0076】
この状態で共通操作スイッチ16を通じて操作が入力されると、麻酔器1が備えている不図示のプロセッサは、当該操作に対応する信号を、通信部13を通じて第一シリンジポンプ2Aへ選択的に送信する。当該信号を受信した第一シリンジポンプ2Aは、共通操作スイッチ16を通じて入力された操作に対応する動作を行なう。
【0077】
図3の(B)に示されるように選択スイッチ15を通じて第二領域122Bが選択されているとき、共通操作スイッチ16は、第二領域122Bに対応する第二シリンジポンプ2Bに設けられた第二操作スイッチ24Bと同じ機能を有する。
【0078】
この状態で共通操作スイッチ16を通じて操作が入力されると、麻酔器1が備えている不図示のプロセッサは、当該操作に対応する信号を、通信部13を通じて第二シリンジポンプ2Bへ選択的に送信する。当該信号を受信した第二シリンジポンプ2Bは、共通操作スイッチ16を通じて入力された操作に対応する動作を行なう。
【0079】
図3の(C)に示されるように選択スイッチ15を通じて第三領域122Cが選択されているとき、共通操作スイッチ16は、第三領域122Cに対応する第三シリンジポンプ2Cに設けられた第三操作スイッチ24Cと同じ機能を有する。
【0080】
この状態で共通操作スイッチ16を通じて操作が入力されると、麻酔器1が備えている不図示のプロセッサは、当該操作に対応する信号を、通信部13を通じて第三シリンジポンプ2Cへ選択的に送信する。当該信号を受信した第三シリンジポンプ2Cは、共通操作スイッチ16を通じて入力された操作に対応する動作を行なう。
【0081】
このような構成によれば、麻酔器1に設けられる操作スイッチの数を必要最小限に抑えつつ、複数のシリンジポンプ2の遠隔操作を可能にできる。
【0082】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0083】
上記の実施形態においては、麻酔器1と複数のシリンジポンプ2が通信可能である場合において、シリンジポンプ情報表示画面122に含まれる第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cのいずれかがタッチ操作されると、シリンジポンプ情報表示画面122の全体が拡大される。換言すると、当該タッチ操作により、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cの全てが拡大される。しかしながら、図4に示される表示態様もまた採用されうる。
【0084】
図4の(A)は、呼出スイッチ14の操作により、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cを含むシリンジポンプ情報表示画面122が表示された状態を示している。この状態から第一領域122Aがタッチ操作されると、図4の(B)に示されるように、第一領域122Aのみが第一遠隔操作受付部123Aを含むように拡大される。このとき、第二領域122Bと第三領域122Cは、グレイアウト表示されてもよい。
【0085】
図4の(B)に示される状態から第二領域122Bがタッチ操作されると、図4の(C)に示されるように、第二領域122Bのみが第二遠隔操作受付部123Bを含むように拡大される。このとき、第一領域122Aと第三領域122Cは、グレイアウト表示されてもよい。第三領域122Cについても同じ説明が適用されうる。
【0086】
このような構成によっても、麻酔器1と複数のシリンジポンプ2を併用する場合において、操作対象であるシリンジポンプ2を明確に特定できるだけでなく、操作対象でないシリンジポンプ2が誤って操作される可能性を排除できる。この場合、第一領域122A、第二領域122B、および第三領域122Cの各々が、選択操作受付部の一例である。
【0087】
上記の実施形態においては、麻酔器1と通信可能なシリンジポンプ2が一台の場合と三台の場合が例示された。しかしながら、麻酔器1を通じた麻酔管理と並行して行なわれる輸液管理の内容に応じて、麻酔器1と通信可能なシリンジポンプ2は、二台でもよいし、四台以上でもよい。
【0088】
上記の実施形態におけるシリンジポンプ2に係る説明は、麻酔管理や輸液管理に用いられる適宜の外部機器にも適用されうる。
【符号の説明】
【0089】
1:麻酔器、12:表示装置、121:麻酔情報表示画面、122:シリンジポンプ情報表示画面、122A:第一領域、122B:第二領域、122C:第三領域、123:遠隔操作受付部、13:通信部、14:呼出スイッチ、15:選択スイッチ、16:共通操作スイッチ、2:シリンジポンプ、2A:第一シリンジポンプ、2B:第二シリンジポンプ、2C:第三シリンジポンプ、22:表示装置、23:操作受付部、24A:第一操作スイッチ、24B:第二操作スイッチ、24C:第三操作スイッチ
図1
図2
図3
図4