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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シリカ粒子分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/145 20060101AFI20220203BHJP
   C09K 3/14 20060101ALN20220203BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C01B33/145
C09K3/14 550D
H01L21/304 622D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017250368
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2018108924
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2016256394
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】江上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊晴
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-178335(JP,A)
【文献】特許第4566645(JP,B2)
【文献】特開2010-058985(JP,A)
【文献】特開2004-111416(JP,A)
【文献】特開昭62-052119(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159167(WO,A1)
【文献】特開2003-213249(JP,A)
【文献】特開平11-061043(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103864082(CN,A)
【文献】特開平07-010523(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104370289(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
H01L 21/304
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に有機溶媒からなる液Iを容器に準備する工程と、
前記液Iに、実質的にシランアルコキシドからなるか、実質的にシランアルコキシド及び有機溶媒の2成分からなる液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加して、シランアルコキシドを加水分解及び重縮合させてシリカ粒子を製造する工程と、
を含むシリカ粒子分散液の製造方法であって、
前記液A及び前記液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比が常時0.20以上、前記モル比の初期値に対する変化率が0.90~1.10であり、
前記液A及び前記液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比が常時2.0以上、前記モル比の初期値に対する変化率が0.90~1.10であり、
前記液A及び前記液Bの添加終了時の反応系のpHが11以上である
ことを特徴とするシリカ粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記シリカ粒子の平均粒子径(d)が5~300nmであり、未反応物の含有量が200ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ粒子分散液の製造方法
【請求項3】
前記シリカ粒子のU、Thの各々の含有量が0.3ppb未満であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリカ粒子分散液の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子分散液の製造方法に関し、詳しくは、半導体集積回路における金属配線層の形成時の研磨等に用いる研磨材に有用なシリカ粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター、各種電子機器には、各種の集積回路が用いられており、これらの小型化、高性能化に伴い、回路の高密度化と高性能化が求められている。
例えば、半導体集積回路は、シリコンウエハー等の基材上に配線層間膜(絶縁膜)を成膜し、その配線層間膜(絶縁膜)上に金属配線用の溝パターンを形成し、必要に応じてスパッタリング法などによって窒化タンタル(TaN)等のバリアメタル層を形成し、ついで金属配線用の銅を化学蒸着(CVD)法等により成膜する。ここで、TaN等のバリアメタル層を設けた場合には層間絶縁膜への銅や不純物などの拡散や侵食に伴う層間絶縁膜の絶縁性の低下などを防止することができ、また層間絶縁膜と銅の接着性を高めることができる。
次いで、溝内以外に成膜された不要な銅及びバリアメタル(犠牲層ということがある)を化学機械研磨(CMP)法により研磨して除去するとともに上部表面を可能な限り平坦化して、溝内にのみ金属膜を残して銅の配線・回路パターンを形成する。
【0003】
このCMP法で使用される研磨材は、通常、シリカ等の金属酸化物からなる平均粒子径が5~300nm程度の球状の研磨用粒子を含む分散液に、配線・回路用金属の研磨速度を早めるための酸化剤、有機酸等の添加剤を添加して製造される。
【0004】
この研磨用粒子を含む分散液(シリカゾル)中に、シランアルコキシドのオリゴマー等の未反応物(副生成物)が存在すると、反応性に富むオリゴマー等の未反応物の影響のためか、シリカゾルとして十分な安定性が得られなかった。さらに、研磨材として使用する際に混合される添加剤の影響で、増粘、凝集、白濁、沈降性ゲル発生等が生じることがあった。このような研磨材を用いると、凝集物によりスクラッチが発生したり、また、研磨後の基板上にシリカ成分が残存して問題が生じることがあった(例えば、特許文献1~3参照)。また、研磨特性向上のための添加剤を吸着してしまい、添加剤の効果を低減させることがあった。
【0005】
このようなオリゴマー等の未反応物の生成を抑制したシリカゾルの製造方法として、例えば、テトラメトキシシランを含む有機溶媒と、アルカリ触媒及び水を含む溶媒とを、アルカリ触媒及び水を含む有機溶媒に添加することによりテトラメトキシシランを加水分解及び重縮合させてシリカゾルを製造する工程(a)と、シリカゾルの分散媒を水の沸点に達するまで加熱して水で置換する工程(b)とを含む方法が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-124231号公報 段落[0002],[0006]
【文献】特開2012-156393号公報 段落[0006]
【文献】特開2014-154707号公報 段落[0007]
【文献】特許第4566645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1記載の方法は、生産性よく高純度のシリカ粒子を製造するものであるが、工程(a)においては、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないシランアルコキシドのオリゴマー等の未反応物が生成され、これを除去する工程(b)が必須となっており、生産の効率性、コストの点等から問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成を抑制して、効率よくシリカ粒子を製造するシリカ粒子分散液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意研究した結果、実質的に有機溶媒からなる容器内の液Iに対して、シランアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加することにより、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制されることを見いだし、本発明を完成するに至った。特に、シランアルコキシドの加水分解に大きな影響を与える水及びアルカリ触媒の量を、反応期間中、シランアルコキシドに対して一定とすることで、逐次添加されるシランアルコキシドが常に同じ条件で加水分解され、これにより、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制されることを見いだした。
【0010】
すなわち、本発明は、実質的に有機溶媒からなる液Iを反応用容器に準備する工程と、液Iに、シランアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加して、シランアルコキシドを加水分解及び重縮合させてシリカ粒子を製造する工程とを含むシリカ粒子分散液の製造方法に関する。
好ましくは、次の(1)及び(2)の条件を満たすシリカ粒子分散液の製造方法である。
(1)液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間(反応開始(添加開始)から終了までの期間)の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比(アルカリ触媒/シランアルコキシド)の初期値に対する変化率が、0.90~1.10である。
(2)液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間(反応開始(添加開始)から終了までの期間)の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比(水/シランアルコキシド)の初期値に対する変化率が、0.90~1.10である。
【0011】
以下、本明細書においては、「液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率」を単に「触媒割合変化率」といい、「液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比の初期値に対する変化率」を単に「水割合変化率」という。また、「液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間」を「反応開始から終了までの期間」という。
【0012】
本発明の製造方法においては、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比が常時0.20以上であり、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比が常時2.0以上であることが好ましい。また、反応終了時の反応系のpHが11以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、平均粒子径(d)が5~300nmのシリカ粒子を含み、未反応物の含有量が200ppm以下であることを特徴とするシリカ粒子分散液に関する。
本発明のシリカ粒子分散液においては、シリカ粒子中のU、Thの各々の含有量が0.3ppb未満であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシリカ粒子分散液の製造方法によれば、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成を抑制して、効率よくシリカ粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における平均粒子径(d)の算出方法を説明する図である。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。
図2】本発明におけるアスペクト比(b/a;ただしb≧a)の算出方法を説明する図である。aが短軸径、bが長軸径を表す。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。
図3】実施例1における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図4】実施例2における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図5】実施例3における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図6】実施例4における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図7】実施例5における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図8】実施例6における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図9】比較例1における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[シリカ粒子分散液の製造方法]
本発明のシリカ粒子分散液の製造方法は、実質的に有機溶媒からなる液Iに対して、シランアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加することにより、シランアルコキシドを加水分解及び重縮合させてシリカ粒子を製造する方法である。本発明のシリカ粒子分散液の製造方法においては、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率が、0.90~1.10であり、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比の初期値に対する変化率が、0.90~1.10であることが好ましい。
【0017】
シリカ粒子分散液の製造方法においては、実質的に有機溶媒からなる液Iに対して、シランアルコキシドを含有する液Aとアルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加して、反応開始から終了までの反応期間中、シランアルコキシドに対するアルカリ触媒及び水の量を一定とすることにより、逐次添加されるシランアルコキシドが常に同じ条件で加水分解され、これにより、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制される。これにより、未反応物を除去する工程を省略することが可能となり、シリカ粒子分散液を効率的に製造することができる。また、この製造されたシリカ粒子分散液は、オリゴマー等の未反応物を含まないことから、シリカ粒子分散液及び研磨材としての安定性に優れ、良好な研磨特性を有する研磨材を得ることができる。
【0018】
<液I(予め容器に準備された液)>
液Iは、実質的に有機溶媒からなる。有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル、グリコール、エステルなどが挙げられ、アルコールが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステルが挙げられる。これらの中でも、メタノール又はエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0019】
ここで、「実質的に有機溶媒からなる」とは、有機溶媒の製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。例えば、有機溶媒の含有量が99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。
【0020】
なお、液Iにアルカリ触媒や水を入れておく従来の反応系では、反応開始時から、系内の組成が逐次変化するため、シランアルコキシドの加水分解条件が一定ではなく、また、反応開始時のpHは高いが、その後pHが低下していく傾向にあり、追加するアルカリ触媒が不足した場合、反応終了時のpHが11を下回ることが多いため、未反応物が発生しやすかったが、本発明では、実質的に有機溶媒からなる液Iを用いるため、未反応物の発生を抑制することができる。
【0021】
<液A>
液Aは、シランアルコキシドを含有するものであり、好ましくは有機溶媒を含有する。通常は、実質的にシランアルコキシドからなるか、実質的にシランアルコキシド及び有機溶媒の2成分からなる。なお、「実質的にシランアルコキシドからなる」、「実質的に2成分からなる」とは、上記同様、シランアルコキシドや有機溶媒の製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味し、例えば、99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。
【0022】
シランアルコキシドとしては、下記式[1]で表されるものが挙げられる。
【0023】
Si(OR)4-n ・・・[1]
【0024】
式中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、nは0~3の整数である。
【0025】
上記式[1]で表されるシランアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン以外に、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0026】
これらのシランアルコキシドのうち、特に、テトラメトキシシラン(TMOS)やテトラエトキシシラン(TEOS)といった、上記式[1]のnが0で、かつRのアルキル鎖が短いものを使用することが好ましい。これは、これらを使用する場合、加水分解速度が速くなり、未反応物が残りにくい傾向にあるからである。中でも好ましいのは、アルキル鎖が短いテトラメトキシシラン(TMOS)である。
【0027】
有機溶媒としては、上記液Iで例示したものを用いることが可能であるが、液Iと同一組成の有機溶媒を用いることが好ましい。すなわち、液Iにメタノールを用いる場合には、液Aにおいてもメタノールを用いることが好ましい。
【0028】
ここで、液Aが有機溶媒を含む場合、有機溶媒に対するシランアルコキシドの濃度としては、例えば、1.5~6.4mol/Lであり、2.0~6.0mol/Lであることが好ましい。
【0029】
<液B>
液Bは、アルカリ触媒及び水を含有するものであり、通常、実質的に2成分からなる。なお、「実質的に2成分からなる」とは、上記液Aで説明したのと同様の意味である。
【0030】
アルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、塩基性を示す化合物を用いることができ、アンモニアを用いることが好ましい。
【0031】
ここで、水に対するアルカリ触媒の濃度としては、例えば、1~24mol/Lであり、3~15mol/Lであることが好ましい。
【0032】
<反応条件等>
本発明のシリカ粒子分散液の製造方法は、上記のように、実質的に有機溶媒からなる液Iに対して、シランアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加することにより、シランアルコキシドを加水分解及び重縮合させてシリカ粒子を製造するものであり、次の2つの条件を満足することが好ましい。
(1)反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率(触媒割合変化率)が、0.90~1.10であり、
(2)反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比の初期値に対する変化率(水割合変化率)が、0.90~1.10である。
【0033】
すなわち、本発明の製造方法は、反応開始から終了までの期間において、触媒割合変化率及び水割合変化率を極力減らして、一定にしようとするものであり、その具体的な態様としては、液Iに含まれるアルカリ触媒及び水の量を極力低くしておくことにより、触媒割合変化率及び水割合変化率を抑制する方法が挙げられる。また、反応開始から終了までの期間において、液A及び液Bの添加速度等の添加条件をできる限り一定にして触媒割合変化率及び水割合変化率を抑制する方法が挙げられる。例えば、高精度のポンプを使用することにより、液A及び液Bの添加速度の変化を抑制することができる。
【0034】
ここで、シランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比(アルカリ触媒/シランアルコキシド)、及びシランアルコキシドに対する水のモル比(水/シランアルコキシド)は、それぞれ添加重量実測値を基に、シランアルコキシドの加水分解及び重縮合の反応は瞬時に起こるもの、アルカリ触媒は系外への放出はないものと仮定して算出したものをいい、触媒割合変化率及び水割合変化率は、所定時間毎(例えば10分毎)に、添加重量実測値から反応系内のモル比を算出し、初期のモル比で除した数値により算出する。なお、初期値とは、液A及び液Bの添加直後のモル比(理論値)をいう。
【0035】
シリカ粒子分散液の製造方法においては、触媒割合変化率が、上記のように、0.90~1.10であることが好ましいが、0.95~1.05であることがより好ましく、0.98~1.02であることがさらに好ましい。
【0036】
また、シリカ粒子分散液の製造方法においては、水割合変化率が、上記のように、0.90~1.10であることが好ましいが、0.95~1.05であることがより好ましく、0.98~1.02であることがさらに好ましい。
【0037】
さらに、本発明においては、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比が常時0.20以上であり、かつ、シランアルコキシドに対する水のモル比が常時2.0以上であることが好ましい。すなわち、反応中、シランアルコキシドに対してアルカリ触媒及び水を所定量以上に保持することが好ましい。このようにアルカリ触媒及び水を所定量以上に保持して反応させることにより、十分に加水分解を進めることができ、未反応のシランアルコキシドの残存や、未反応物の発生を抑制することができる。
【0038】
なお、シランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比、及びシランアルコキシドに対する水のモル比は、上記同様、それぞれ添加重量実測値に基づき算出したものをいう。
【0039】
ここで、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比としては、上記のように、常時0.20以上であることが好ましいが、常時0.30以上であることがより好ましく、常時0.50~1.00であることがさらに好ましい。
【0040】
また、反応開始から終了までの期間の反応系におけるシランアルコキシドに対する水のモル比としては、上記のように、常時2.0以上であることが好ましいが、常時3.0以上であることがより好ましく、常時3.5~15.0であることがさらに好ましい。
【0041】
また、反応終了時の反応系のpHが11以上であることが好ましく、11.2以上であることがより好ましい。液Iにアルカリ触媒を入れておく従来の反応系では、反応終了時にpHが11を下回ることが多く、未反応物が発生する要因となっていたが、本発明の製造方法では、上記のように、シランアルコキシドに対するアルカリ触媒量や水量を一定にして添加することにより、反応終了時のpHを11以上とすることができる。
【0042】
本発明の製造方法における反応は、通常、常圧下で、使用する溶媒の沸点以下の温度、好ましくは沸点より5~10℃程度低い温度で行われる。反応後、必要に応じて、水置換が行われる。
【0043】
本発明の製造方法により製造されたシリカ粒子分散液は、シランアルコキシドのオリゴマー等の未反応物の生成が抑制されることから、従来行われていた加熱熟成処理、加熱除去処理、限外濾過などの精製処理を必ずしも行う必要はない。
【0044】
[シリカ粒子分散液]
本発明のシリカ粒子分散液は、平均粒子径(d)が5~300nmのシリカ粒子を含み、未反応物の含有量が200ppm以下であることを特徴とする。シリカ粒子分散液は、上記説明した本発明の製造方法により製造することができる。シリカ粒子分散液は、研磨材に有用であり、このまま分散体の状態で用いてもよいし、乾燥して用いてもよい。
【0045】
未反応物とは、製造目的とするシリカ粒子まで反応が進んでいない含珪素化合物を意味し、例えば、未反応の原料シランアルコキシドやその低分子加水分解物(オリゴマー)等であり、具体的には、日立工機株式会社製 小型超遠心機CS150GXLを用いて、シリカ粒子水分散液を設定温度10℃、1,370,000rpm(1,000,000G)で30分遠心処理した際の上澄み中に存在する含珪素化合物を意味する。
【0046】
(未反応物の含有量の測定方法)
上記上澄み中に存在する含珪素化合物(未反応物)を、株式会社島津製作所製 ICP発光分析装置ICPS-8100で測定したSiから求めたSiO濃度で比較する。
【0047】
シリカ粒子分散液は、オリゴマー等の未反応物を含まないことから、研磨材に用いた場合、基板への付着物を抑制することができ、また、研磨材に添加される各種薬品の吸着や各種薬品との反応を抑制して、各種薬品の効果をより有効に発揮させることができる。
【0048】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、三次元的重縮合構造をとる。これは、シランアルコキシドの加水分解および重縮合がアルカリ性側で行われることで、平面状(二次元的)のみに進行するのではなく、立体的(三次元的)に進行するためである。このような構造をもった粒子を用いた研磨材は、粒子の分散性が高く、充分な研磨速度が得られるので好適である。一方、酸性側で加水分解および重縮合を行うと二次元的に進行し、球状粒子が得られない。
その構造は、透過電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡で確認して、粒子として存在することで判断できる。
【0049】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子の平均粒子径(d)は、5~300nmであり、要求される研磨速度や研磨精度等によって適宜設定することができる。平均粒子径(d)の算出方法について、図1を用いて説明する。図1は、一次粒子が単独で存在する粒子や複数の一次粒子が連結した粒子を例示している。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。粒子径dは、各粒子の一次粒子の最長径を測定したものである。平均粒子径(d)は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、各粒子の一次粒子の最長径dを測定し、その平均値として得たものである。
ここで、平均粒子径が5nm未満の場合は、シリカ粒子分散液の安定性が不充分となる傾向にあり、また粒子径が小さすぎて充分な研磨速度が得られない。平均粒子径が300nmを超える場合は、研磨材として使用した場合、基板または絶縁膜の種類にもよるが、スクラッチが発生しやすく、充分な平滑性が得られないことがある。好ましい平均粒子径は10~200nm、より好ましくは15~100nmである。
【0050】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、アスペクト比が1.00~1.20の真球状であってもよいが、アスペクト比が1.20を超え5.00以下の異形状であることが好ましい。アスペクト比がこの範囲にある異形状の粒子は、粒子表面に凸な部分が存在する。そのため、研磨時に応力が集中して、基板の研磨速度を速くできる。
アスペクト比の算出方法について、図2を用いて説明する。図2は、一次粒子が単独で存在する粒子や複数の一次粒子が連結した粒子を例示している。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。このアスペクト比は、走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、100個の粒子について、図2に例示するように粒子を長方形で囲んだ時、長い辺を辺b、短い辺を辺aとして縦横比(b/a)を測定し、その平均値として得たものである。
【0051】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、U、Thの各々の含有量が0.3ppb未満であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満であるの範囲にあることが好ましい。この範囲であることで、配線ノードが40nm以下の高集積なロジックやメモリー及び三次元実装用の研磨砥粒として使用可能である。
これら不純分の金属元素の含有量が上述の範囲を超えて多く存在すると、シリカ粒子を用いて研磨した基板に金属元素が残存し、この金属元素が半導体基板に形成された回路の絶縁不良を起こしたり回路が短絡したりして、絶縁用に設けた膜(絶縁膜)の誘電率が低下し、金属配線にインピーダンスが増大し、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起きることがある。また、金属元素イオンが移動(拡散)し、使用条件や使用が長期にわたった場合に前記不具合を生じることがある。特に、U、Thの場合は、放射線を発生するため微量でも残存した場合に放射線による半導体の誤作動を引き起こす点で好ましくない。
ここで、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表し、アルカリ土類金属とは、Be,Mg、Ca、Sr,Ba,Raを表す。
【0052】
このような不純分の含有量が少ない高純度シリカ粒子を得るには、粒子を調製する際の装置の材質をこれらの元素を含まず、かつ耐薬品性が高いものにすることが好ましく、具体的には、テフロン(登録商標)、FRP、カーボンファイバー等のプラスチック、無アルカリガラス等が好ましい。
また、使用する原料については、蒸留・イオン交換・フィルター除去で精製することが好ましい。特にアルコキシドの加水分解時に使用するアルコールは、タンク等からの金属不純分や合成時の触媒が残存するおそれがあり、特に精度の高い精製を必要とする場合がある。
【0053】
高純度シリカ粒子を得る方法としては、上述のように、予め不純分の少ない原料を準備したり、粒子調製用の装置からの混入を抑えたりする方法がある。これ以外にも、そのような対策を充分にとらずに調製された粒子を得た後に不純分を低減することは可能である。しかしながら、不純分がシリカ粒子内に取り込まれていたりするため、イオン交換やフィルター除去で精製することは効率が悪く、高コストになるおそれがある。このため、このような方法で、不純分の含有量が少ないシリカ粒子を得るのは現実的でない。
【0054】
シリカ粒子中のU、Thの含有量、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの含有量、およびCu、Ni、Crの含有量については、シリカ粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてICP誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定する。
【実施例
【0055】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
〈シリカ粒子分散液(SA)の製造〉
メタノール(液I)410.0gを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシラン(多摩化学工業(株)製(以下同じ))のメタノール溶液(液A)3436.3gと、アンモニア水(液B)1684.0gとを同時に10時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SA)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図3に示す。
【0057】
《アルカリ触媒及び水のシランアルコキシドに対するモル比、及びその変化率》
アルカリ触媒/シランアルコキシド、水/シランアルコキシドの各モル比は、添加重量実測値を基に、シランアルコキシドの加水分解及び重縮合の反応は瞬時に起こるもの、アルカリ触媒は系外への放出はないものと仮定して算出した。液A及び液Bの添加開始10分後から、10分毎の反応系内のモル比を算出した。液A及び液Bの添加直後のモル比(理論値)を初期値として、かかる初期値で除した数値で、系内の各物質モル比の変化を比較した。
【0058】
Si(OR)+4HO → Si(OH)+4ROH
(加水分解時に4モル消費)
Si(OH) → SiO + 2H
(重縮合時に2モル放出)
【0059】
《平均粒子径の測定》
平均粒子径は、シリカ粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、図1に例示するように一次粒子の最も径が長い部分を測定し、その平均値として得た。
【0060】
《アスペクト比の測定》
アスペクト比は、シリカ粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、図2に例示するように粒子を長方形で囲んだ時、長い辺を辺(b)、短い辺を辺(a)として縦横比(b/a)を測定し、その平均値として得た。
【0061】
《未反応物量の測定》
未反応物量は、得られた20質量%シリカ粒子分散液を、日立工機株式会社製 小型超遠心機CS150GXLを用いて、設定温度10℃、1,370,000rpm(1,000,000G)で30分遠心処理した際の上澄み中に存在する含珪素化合物(未反応物)を、株式会社島津製作所製 ICP発光分析装置ICPS-8100で測定したSiから求めたSiO濃度で比較した。
【0062】
《系中シリカ粒子濃度の測定》
サンプル5gを150℃で1時間乾燥させ、乾燥後の重量から、系中シリカ粒子濃度を算出した。
【0063】
〈研磨材(SA)の製造〉
実施例1で製造したシリカ粒子を3.0質量%、ヒドロキシエチルセルロース(H E C)を175ppm、アンモニアを225ppm含有する研磨材(SA)を調製した。
【0064】
《研磨材(スラリー)の安定性試験》
研磨材(スラリー)の安定性は、〈研磨材(SA)の製造〉で調製された研磨材(SA)の白濁の有無で評価した。結果を表1に示す。
白濁しない :○
白濁する :×
【0065】
《研磨試験》
研磨用基板(結晶構造が1.0.0である単結晶シリコンウェハー)を用い、研磨装置(ナノファクター(株)製 NF300)にセットし、研磨パッドSUBA600、基板加重15kPa、テーブル回転速度50rpm、スピンドル速度60rpmで、上記研磨材(SA)を250ml/分の速度で研磨用基板の研磨を10分間行った。その後、純水にて洗浄し風乾した。
【0066】
その後、得られた研磨基板の研磨表面を観察し、表面の平滑性を以下の基準(スクラッチの程度)で評価した。結果を表1に示す。
スクラッチはほとんど認められない。 :○
スクラッチが僅かに認められる。 :△
スクラッチが広範囲に認められる。 :×
【0067】
研磨基板上のシリカ成分の残存について、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-X250)を用いて残存の程度を確認し、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
残存はほとんど認められない。 :○
残存が僅かに認められる。 :△
残存が広範囲に認められる。 :×
【0068】
[実施例2]
〈シリカ粒子分散液(SB)の製造、研磨材(SB)の製造〉
メタノール(液I)310.0gを50℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)5703.8gと、アンモニア水(液B)1560.0gとを同時に30時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SB)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図4に示す。
シリカ粒子分散液(SB)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SB)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例3]
〈シリカ粒子分散液(SC)の製造、研磨材(SC)の製造〉
メタノール(液I)410gを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシラン(液A)976.3gと、アンモニア水(液B)1769.5gとを同時に10時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SC)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図5に示す。
シリカ粒子分散液(SC)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SC)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例4]
〈シリカ粒子分散液(SD)の製造、研磨材(SD)の製造〉
メタノール(液I)410gを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2206.3gと、アンモニア水(液B)565.33gとを同時に10時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SD)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図6に示す。
シリカ粒子分散液(SD)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SD)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例5]
〈シリカ粒子分散液(SE)の製造、研磨材(SE)の製造〉
メタノール(液I)410gを50℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)388.1gと、アンモニア水(液B)116.1gとを同時に1時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SE)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図7に示す。
シリカ粒子分散液(SE)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SE)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例6]
〈シリカ粒子分散液(SF)の製造、研磨材(SF)の製造〉
メタノール(液I)410gを50℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2328.6gと、アンモニア水(液B)696.69gとを同時に6時間かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で3時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(SF)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図8に示す。
シリカ粒子分散液(SF)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SF)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
〈シリカ粒子分散液(RA)の製造、研磨材(RA)の製造〉
メタノール2268.0g、純水337.5g、29%アンモニア水94.5gからなる液Iを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2170.0を160分かけて添加した。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、20質量%シリカ粒子分散液(RA)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図9に示す。
シリカ粒子分散液(RA)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(RA)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0074】
なお、いずれの実施例及び比較例においても、シリカ粒子中のU、Thの各々の含有量は0.3ppb未満であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量は0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量は1ppb未満であった。
【0075】
《金属元素含有量の測定》
シリカ粒子中の各金属元素量の含有量については、シリカ粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてICP誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1に示すように、実施例1~6で製造されたシリカ粒子分散液は、比較例1と比較して未反応物の生成量が少なく、スラリー安定性や研磨特性の点でも優れていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9