(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】コーティングされたガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 17/25 20060101AFI20220117BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20220117BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C03C17/25 A
C03C17/34 Z
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2017553405
(86)(22)【出願日】2016-04-13
(86)【国際出願番号】 GB2016051028
(87)【国際公開番号】W WO2016166527
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-11
(32)【優先日】2015-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】キャリカス スクマー ヴァーマ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ジェイムス ハースト
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/018184(WO,A1)
【文献】特開2005-194169(JP,A)
【文献】特開2009-160550(JP,A)
【文献】特開平5-286359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C17/00-17/44
B60J1/00
B60S1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、透明基材の主表面に堆積させることと、
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へ、部分的にまたは完全に変換することと、を含む、コーティングされたガラスを製造する方法であって、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも5nmであるが、最大45nmの厚さを有し、
10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で測定される、前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、EPD
Mゴムを含むワイピング手段の接触面との間の動摩擦係数が、湿潤及び/または乾燥状態において、少なくとも0.4であるが、最大0.8であり、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の前記外部表面と、ワイピング手段の前記接触面との間の動摩擦係数が、湿潤と乾燥状態との間で、50%を超えては変化しない、方法。
【請求項2】
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも10nmであるが、最大40nmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の前記外部表面と、ワイピング手段の前記接触面との間の動摩擦係数が、湿潤と乾燥状態との間で、30%を超えて変化しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記透明基材が、直接または間接的に下層でコーティングされ、前記下層が、前記透明基材の前記主表面と、前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層との間に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記下層が、透明導電コーティング(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層が、スピンコーティング、スロットダイコーティング、フレームスプレーコーティングなどの噴霧、ローラーコーティング、浸漬、及び/または印刷によって堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層の、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層への、前記部分的または完全な変換が、前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を堆積させた後に、熱、UV照射、及び/またはIR照射で前記透明基材を処理することを含む、請求項1または請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされたガラス、該ガラスの製造方法、及びガラス上に堆積された、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層を使用して、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイピング手段の接触面との間の、該表面の乾燥状態と湿潤状態との間で実質的に変化しない動摩擦係数を得ることに関する。また、ワイピング手段との組み合わせに適するガラス、該ガラスとワイピング手段との組み合わせ、ならびに該ガラスの使用で、ワイピング手段の一部の往復運動を促進し、ならびに/またはワイピング手段の一部の傾斜及び/もしくは反転を促進することも開示されている。
【背景技術】
【0002】
より良いエンジン、停止/始動技術及び電気推進の使用によって、車両がより静かになるにつれて、より静かなフロントガラス及びリアウインドウ(バックライトとしても知られている)ワイパーの必要性がある。そのようなワイパーは、高い光透過率で窓を清潔に保つという主要な機能を果たさなければならない。ワイパーブレードの寿命を、3年を超えるように延長したいという要望もある。さらに、ブレードが運動し得る円弧の端部でワイパーブレードの傾斜及び/または反転を改善することが有益であろう。
【0003】
米国特許第6974629B1号から、車両のフロントガラスであってもよいガラス物品上の熱分解堆積された誘電体層の上に、シリカ層をスパッタ堆積することが知られている。このコーティングの組み合わせは、ガラスの表面に塵埃や汚れへの耐性を与えると言われている。しかしながら、他の上記の要望を満たす方法の言及はない。
【0004】
したがって、ワイパーと組み合わせて使用されるガラスに関連する問題の少なくともいくつかを軽減または克服することができるガラスを提供することは興味をそそるであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によって、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層で、その主表面上に直接または間接的にコーティングされた透明基材を含むコーティングされたガラスであって、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも5nmであるが、最大45nmの厚さを有し、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を部分的にまたは完全に変換することによって得られるガラスが提供される。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、シラザンに基づく層を透明な基材上に堆積させ、続いて、シラザンに基づく該層を、5nm~45nmの厚さを有するシリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層に変換することにより、いくつかの有利な特性が与えられることを発見した。例えば、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面とワイパーのゴムブレードの接触面との間の動摩擦係数は、乾燥状態と湿潤状態との間で実質的に変化しない。車両及びフロントガラスブレードの製造業者にとっての重要な商業的推進力は、湿潤の場合と乾燥の場合の両方において、ブレードがフロントガラスに最小のノイズしか発生させないことである。車両は電気エンジンや停止/始動技術で騒音がより少なくなっているので、これは特に重要である。その上、該動摩擦係数は、ノイズ低減、水除去効率、及び運動の滑らかさに関して有益である0.4~0.6の範囲内であり、その結果、ワイパーブレードの侵食が低減し、寿命が延びる。さらに、コーティングは、耐擦傷性、及び水分除去ならびに塵埃除去性を改善することができる疎水性を含み、耐久性が高い。
【0007】
本発明の文脈において、該表面のいずれかに水分膜がない場合、1つ以上の表面は「乾燥状態」である。本発明の文脈において、該表面の少なくとも1つに水分膜がある場合、1つ以上の表面は「湿潤状態」である。本発明の文脈において、用語「実質的に変化しない」とは、上記特性値が20%を超えて、好ましくは15%を超えて、より好ましくは10%を超えて、さらにより好ましくは7.5%を超えて、さらにより好ましくは5%を超えて、さらにより好ましくは2.5%を超えて、最も好ましくは1%を超えて、変化しないという意味である。
【0008】
本発明の以下の考察において、別段の記載がない限り、パラメータの許容される範囲の上限または下限についての代替値の開示は、該値のうちの1つが、その他よりも非常に好ましいという指示と併せて、該代替値のより好ましいものとあまり好ましくないものとの間にある該パラメータの各中間値は、それ自体が、該あまり好ましくない値よりも好ましく、また該あまり好ましくない値と該中間値との間にある各値よりも好ましいという含意的陳述として解釈される。
【0009】
層が特定の1つまたは複数の材料「に基づく」と言われる本発明の文脈において、これは、その層が主に対応する該1つまたは複数の材料からなることを意味し、典型的に、それが少なくとも約50at.%の該1つまたは複数の材料を含むことを意味する。
【0010】
本発明の文脈において、透明材料または透明基材とは、可視光線を通過させることができる材料または基材であり、その結果、該物質を越えてまたは背後に位置する物体または画像は、該材料または基材を通して明瞭に見ることができる。
【0011】
好ましくは、該1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、さらにより好ましくは少なくとも20nm、最も好ましくは少なくとも23nmであるが、好ましくは最大40nm、より好ましくは最大35nm、さらにより好ましくは最大30nm、最も好ましくは最大27nmの厚さを有する。これらの好ましい厚さは、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層の部分的または完全な変換について、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイパーのブレード(例えば、ゴムブレード)との摩擦係数の、乾燥状態と湿潤状態との間で変化がより少ないことに関して、さらなる利点を提供する。費用の理由で、より薄い層が有利である。好ましくは、厚さは、向上した反射防止及び光透過のために4分の1波長である。
【0012】
好ましくは、該シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nm、さらにより好ましくは少なくとも20nm、最も好ましくは少なくとも23nmであるが、好ましくは最大40nm、より好ましくは最大35nm、さらにより好ましくは最大30nm、最も好ましくは最大27nmの厚さを有する。前記の、これらの好ましい厚さは、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイパーのブレード(例えば、ゴムブレード)との摩擦係数の、乾燥状態と湿潤状態との間で変化がより少ないことに関して、さらなる利点を提供する。費用の理由で、より薄い層が有利である。好ましくは、厚さは、向上した反射防止及び光透過のために4分の1波長である。
【0013】
該シラザンは、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、トリメチルトリビニルシクロトリシラザン、テトラメチルジフェニルジシランザン、及び/またはジメチルテトラフェニルジシラザンのうちの1つ以上であり得る。好ましくは、該シラザンは、ポリシラザン及び/またはオリゴマーシラザンである。該ポリシラザンは、ペルヒドロポリシラザン及び/またはオルガノポリシラザン、例えば、ポリメチルシラザン及び/またはポリジメチルシラザンであり得る。ポリシラザンは、ケイ素原子及び窒素原子が交互に骨格を形成するポリマーである。骨格内で、各ケイ素原子は、2つの別個の窒素原子に結合され、各窒素原子は、2つのケイ素原子に結合され、したがって、式[R1R2Si-NR3]nの鎖及び環の両方が起こり得る。R1~R3は、水素原子または有機置換基であり得る。すべてのR置換基がH原子である場合、ポリマーは、ペルヒドロポリシラザンとして指定される(ポリペルヒドリドシラザンまたは無機ポリシラザンとしても知られる、[H2Si-NH]n)。炭化水素置換基がケイ素原子に結合される場合、ポリマーは、オルガノポリシラザンとして指定される。分子的に、ポリシラザン[R1R2Si-NH]nは、ポリシロキサン[R1R2Si-O]n(シリコーン)と等電子的であり、それと近親である。好ましくは、該ポリシラザンは、ペルヒドロポリシラザン及び/またはポリジメチルシラザンである。いくつかの実施形態において、ポリシラザンは、ポリ-メタロ-シラザン及び/またはシラザンコポリマーであり得る。
【0014】
好ましくは、ポリシラザンは、200~500,000g/mol、より好ましくは、1000~200,000g/mol、さらにより好ましくは、2000~100,000g/molの数平均分子量を有する。ポリシラザンは、0.5~1.5g/cm3、好ましくは、0.7~1.3g/cm3、より好ましくは、0.8~1.2g/cm3、さらにより好ましくは、0.5~1.5g/cm3の密度を有し得る。
【0015】
該シリカ及び/またはオルガノシリカは、ポリマーであり得る。該オルガノシリカは、式{-SiO(R1)-O-}nを有してもよく、式中、R1が、アルキル及び/またはフェニル部分を含む。代替として、該オルガノシリカは、式{-Si(R1)(R2)-O-}nを有してもよく、式中、R1またはR2の各々が、アルキル及び/またはフェニル部分を含む。該アルキル及び/またはフェニル部分は、1~10個の炭素原子、好ましくは、1~5個の炭素原子を含み得る。該アルキル部分は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及び/もしくはヘキシル基、及び/またはアルケンなどの重合性基(例えば、ビニル基)、及び/またはカルボニル基を含み得る。該オルガノシリカは、式{-Si(CH3)2-O-}nを有してもよい。
【0016】
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層の外部表面は、好ましくは少なくとも0.3nm、より好ましくは少なくとも1nm、さらにより好ましくは少なくとも3nm、最も好ましくは少なくとも5nmであるが、好ましくは最大15nm、より好ましくは最大10nm、さらにより好ましくは最大9nm、さらにより好ましくは最大8nm、最も好ましくは最大7nmの算術平均表面高さ値Saを有し得る。Saは、表面の粗さの表示を付与する。これらの好ましい値は、ノイズの低減、水洗浄効率の改善、及びワイパーブレードの運動を高めることに役立つ。結果として生じるワイパーブレードのより滑らかな作用によって、コーティングされたガラスの外部表面及びゴムワイパーブレードなどのワイパーブレードの両方の摩耗が低減する。
【0017】
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイピング手段の接触面との間の動摩擦係数は、湿潤及び/または乾燥状で、10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.2、さらにより好ましくは少なくとも0.3、最も好ましくは少なくとも0.4であるが、好ましくは最大10、より好ましくは最大5、さらにより好ましくは最大1、さらにより好ましくは最大0.8、最も好ましくは最大0.6である。好ましくは、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイピング手段の接触面との間の動摩擦係数は、湿潤と乾燥状態との間で、50%を超えて、より好ましくは30%を超えて、さらにより好ましくは20%を超えて、さらにより好ましくは10%を超えて、最も好ましくは5%を超えて、変化しない。好ましくは、該動摩擦係数は、10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で測定される。ワイピング手段の該表面は、ワイパーのブレードの少なくとも一部であってもよい。好ましくは、ワイピング手段の該表面は、エラストマーを含んでいてもよい。該エラストマーは、合成または天然ゴムのようなゴムであってもよい。合成ゴムは、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマー(M-クラス)ゴム)を含んでもよい。該エラストマーは、コーティングされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトでコーティングされてもよい。該エラストマーは、非エラストマーとブレンドされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトとブレンドされてもよい。
【0018】
透明基材は、直接または間接的に下層がコーティングされ、該下層が、透明基材の該主表面と、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく該少なくとも1つの層との間に位置する。好ましくは、該透明基材は、該下層と直接接触している。好ましくは、該下層は、該シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と直接接触している。
【0019】
下層は、好ましくは、透明導電コーティング(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含む。好ましくは、TCCは、透明導電酸化物(TCO)である。好ましくは、TCOは、1つ以上のフッ素ドープ酸化スズ(SnO2:F)、アルミニウム、ガリウム、またはホウ素ドープ酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In2O3、In2O3-ZnO(IZO)、In2O3:Ti、In2O3:Mo、In2O3:Ga、In2O3:W、In2O3:Zr、In2O3:Nb、MがZnまたはCuであるIn2-2xMxSnxO3、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO2:Co、In2O3:Ni、In2O3:(Sn,Ni)、ZnO:Mn及び/またはZnO:Coである。
【0020】
好ましくは、TCCに基づく少なくとも1つの層の各層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも100nm、さらにより好ましくは少なくとも200nm、さらにより好ましくは少なくとも250nm、最も好ましくは少なくとも300nmであるが、好ましくは最大600nm、より好ましくは最大450nm、さらにより好ましくは最大370nm、最も好ましくは最大350nmの厚さを有する。これらの厚さは、1)導電性、2)吸収(層が厚いほど、吸収はより多く、透過はより低い)、及び3)色抑制(ある特定の厚さが、中間色を得るためにより良い)という特徴間の均衡をとるために好ましい。
【0021】
好ましくは、下層は少なくとも1つのさらなる層をさらに含み、該少なくとも1つのさらなる層が、金属またはメタロイドの酸化物、例えばSiO2、SnO2、TiO2、酸窒化ケイ素及び/または酸化アルミニウムに基づく。該金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つの層のうちの1つの層は、好ましくは、該透明基材の該主表面と直接接触して位置する。追加として、または代替として、該金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つの層のうちの1つの層は、好ましくは、TCCに基づく層と直接接触して位置する。金属またはメタロイドの酸化物に基づくそのような層は、腐食の原因であり得る、ナトリウムイオンの、表面への拡散を防止するために遮断層として作用し得るか、または層の厚さの変化から生じる虹色反射色を抑制する色抑制層として作用し得る。
【0022】
好ましくは、金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つのさらなる層の各層は、少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、さらにより好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも20nmであるが、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大40nm、最も好ましくは最大30nmの厚さを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、下層は、好ましくは、透明基材から順に、SnO2に基づく少なくとも1つの層と、SiO2に基づく少なくとも1つの層と、SnO2:Fに基づく少なくとも1つの層と、を含み、SnO2に基づく少なくとも1つの層が、少なくとも15nmであるが、最大35nmの厚さを有し、SiO2に基づく少なくとも1つの層が、少なくとも15nmであるが、最大35nmの厚さを有し、SnO2:Fに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも300nmであるが、最大600nmの厚さを有する。
【0024】
好ましくは、SnO2に基づく少なくとも1つの層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも23nm、さらにより好ましくは少なくとも24nmであるが、好ましくは最大30nm、より好ましくは最大27nm、さらにより好ましくは最大26nmの厚さを有する。
【0025】
好ましくは、SiO2に基づく少なくとも1つの層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも23nm、さらにより好ましくは少なくとも24nmであるが、好ましくは最大30nm、より好ましくは最大27nm、さらにより好ましくは最大26nmの厚さを有する。
【0026】
好ましくは、SnO2:Fに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも320nm、より好ましくは少なくとも330nm、さらにより好ましくは少なくとも335nmであるが、好ましくは最大400nm、より好ましくは最大360nm、さらにより好ましくは最大350nm、さらにより好ましくは最大345nmの厚さを有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、下層は、好ましくは、透明基材から順に、下部反射防止層と、銀系機能層と、少なくとも1つのさらなる反射防止層と、を含む。
【0028】
下部及び/またはさらなる反射防止層は、Siの(オキシ)窒化物及び/もしくはAlの(オキシ)窒化物、及び/もしくはそれらの合金に基づく、ならびに/またはTi、Zr、Zn、Sn、In、及び/もしくはNbのうちの1つ以上の酸化物、例えば、Zn及びSnの酸化物などの酸化金属に基づく、少なくとも1つの誘電層を含み得る。該誘電層は、好ましくは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、さらにより好ましくは少なくとも5nm、最も好ましくは少なくとも10nmであるが、好ましくは最大70nm、より好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大40nm、最も好ましくは最大30nmの厚さを有し得る。
【0029】
少なくとも1つのさらなる反射防止層は、好ましくは少なくとも1つの障壁層をさらに含む。好ましくは、該障壁層は、銀系機能層と直接接触して位置する。好ましくは、該障壁層は、NiCr、Nb、Ti、Zr、Zn、Sn、In、及び/もしくはCr、ならびに/またはそれらの酸化物及び/もしくは窒化物に基づく。少なくとも1つの障壁層は、好ましくは少なくとも0.5nm、より好ましくは少なくとも1nm、さらにより好ましくは少なくとも3nm、最も好ましくは少なくとも5nmであるが、好ましくは最大12nm、より好ましくは最大10nm、さらにより好ましくは最大8nm、最も好ましくは最大7nmの全厚を有し得る。これらの好ましい厚さは、機械的耐久性を維持しながら、さらに容易な堆積、及びヘイズなどの光学特徴の向上を可能にする。
【0030】
いくつかの実施形態において、下層は、複数の銀系機能層を含む。例えば、下層は、2つ、3つ、またはそれ以上の銀系機能層を含んでもよい。下層が複数の銀系機能層を含む場合、各銀系機能層は、中心反射防止層によって隣接した銀系機能層から間隔を空けて置かれ得る。
【0031】
透明基材は、好ましくは、ガラス板である。あるいは、透明基材は、ポリマーシートであり得る。ガラス板は、透明酸化金属系ガラス板であり得る。好ましくは、このガラス板は、透明フロートガラス板、好ましくは低鉄フロートガラス板である。透明フロートガラスとは、BS EN 572-1及びBS EN 572-2(2004)において定義される組成物を有するガラスを意味する。透明フロートガラスの場合、Fe2O3レベルは、通常は0.11重量%である。約0.05重量%未満のFe2O3含有量を有するフロートガラスは、典型的に低鉄フロートガラスと称される。そのようなガラスは、通常、他の成分酸化物の同じ塩基性組成物を有し、すなわち、低鉄フロートガラスは、透明フロートガラスと同様に、ソーダライム-ケイ酸塩ガラスでもある。通常は、低鉄フロートガラスは、0.02重量%未満のFe2O3を有する。代替として、ガラス板は、ホウケイ酸塩系ガラス板、アルカリ-アルミノケイ酸塩系ガラス板、または酸化アルミニウム系結晶ガラス板である。このガラス板は、熱的及び/または化学的強靭化プロセスなどの任意の好適な手段によって、ある程度強靭化され得る。コーティングされたガラスは曲線状で及び/または曲げられたものであってもよい。好ましくは、コーティングされたガラスは、車両用フロントガラスまたは車両バックライトなどの車両用ガラスである。
【0032】
本発明の第2の態様によって、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、透明基材の主表面に堆積させることと、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することと、を含む、コーティングされたガラスを製造する方法であって、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも5nmであるが、最大45nmの厚さを有する、方法が提供される。
【0033】
好ましくは、該1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層は、スピンコーティング、スロットダイコーティング、フレームスプレーコーティングなどの噴霧、ローラーコーティング、浸漬、及び/または印刷によって堆積される。最も好ましくは、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層、噴霧によって堆積される。好ましくは、堆積前に、シラザンを溶媒和するか、または液体中に懸濁する。好ましくは、該液体は、1つ以上の炭化水素溶媒を含む。該炭化水素溶媒は、脂肪族及び/または芳香族部分を含み得る。該炭化水素溶媒は、ハロゲン化されてもよい。該溶媒は、ジブチルエーテル、キシレン、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、及びジクロロメタンのうちの1つ以上を含み得る。
【0034】
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層の、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層への、該部分的または完全な変換が、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を堆積させた後に、熱、UV照射、及び/またはIR照射で透明基材を処理することを含んでもよい。
【0035】
該熱処理は、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を堆積させた後に、少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃、さらにより好ましくは少なくとも300℃、さらにより好ましくは少なくとも350℃、最も好ましくは少なくとも450℃であるが、好ましくは最大1000℃、より好ましくは最大800℃、さらにより好ましくは最大700℃、さらにより好ましくは最大600℃、最も好ましくは最大550℃、で、透明基材を、加熱することを含んでもよい。これらの好ましい温度は、液体として堆積された1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層が硬化して、良好に密着した固体コーティングの形成を確実にするのを助ける。少なくとも300℃の温度は、シラザンの、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。
【0036】
好ましくは、該熱処理は、透明基材を該温度で少なくとも30分、より好ましくは少なくとも45分、さらにより好ましくは少なくとも1時間、最も好ましくは少なくとも90分であるが、好ましくは最長5時間、より好ましくは最長4時間、さらにより好ましくは最長3時間加熱することを含む。そのような期間は、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。
【0037】
好ましくは、該熱処理は、透明基材を該温度に少なくとも20分、より好ましくは少なくとも40分、さらにより好ましくは少なくとも50分、最も好ましくは少なくとも1時間の期間にわたって加熱することをさらに含む。透明基材を、そのような好ましい最小期間にわたって所望の温度へと段階的に加熱することは、急速な溶媒損失及び欠陥の形成を回避するのを助ける。
【0038】
該UV及び/またはIR照射処理は、1つ以上のシラザンに基づく層を、UV及び/またはIR照射に露光することを含み得る。該UV及び/またはIR処理は、該層を、UV及び/またはIR照射に少なくとも3分間、より好ましくは少なくとも5分間、さらにより好ましくは少なくとも7分間、最も好ましくは少なくとも9分間であるが、好ましくは最長1時間、より好ましくは最長30分間、さらにより好ましくは最長20分間、最も好ましくは最長15分間露光することを含み得る。そのような期間は、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。UV照射は、UVA、UVB、及び/またはUVC照射であってもよい。好ましくは、UV照射は、UVC照射である。
【0039】
本発明の第3の態様によって、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の外部表面と、ワイピング手段の一部の接触面との間の、該表面の乾燥状態と湿潤状態との間で実質的に変化しない動摩擦係数を得るための、透明基材上に堆積された、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の使用が提供される。
【0040】
好ましくは、該動摩擦係数は、10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で測定される。
【0041】
本発明の第4の態様によって、主表面を有する透明基材を含む、ワイピング手段との組み合わせに適するガラスであって、該ワイピング手段との組み合わせに際し、該主表面がワイピング手段と接触すること、使用時に、該ワイピング手段の一部が、往復運動の第1の位置と第2の位置との間で作動する結果、該ワイピング手段が、該主表面の第1の範囲をふき、該ワイピング手段の一部が第1の位置にある際、該ワイピング手段の一部が第2の位置にある際、該一部が該主表面の第2の範囲に接触すること、該ワイピング手段の該一部の接触面と、該主表面の該第2の範囲の少なくとも一部に位置する該主表面との間の動摩擦係数が、該ワイピング手段の該一部の接触面と、該第2の範囲の該少なくとも一部と同じ範囲を占有しない、該第1の範囲の少なくとも一部に位置する該主表面との間の動摩擦係数より高いこと、を含む、ガラスが提供される。
【0042】
基材の主表面とワイピング手段の一部の接触面との間の動摩擦係数が、第2の範囲(すなわち、ワイピング手段の一部が第1の位置及び/または第2の位置で主表面に接触する範囲内で)の少なくとも一部において、第1の範囲のいずれか重なっていない部分(すなわち、使用時にワイピング手段が接触し得る主表面の範囲のいずれか重なり合わない部分)より高いことを確実にすることによって、ワイピング手段の一部の往復(すなわち、行ったり来たりする)運動が促進される。この促進は、第2の範囲におけるワイピング手段の一部の接触面によって経験されるより高い摩擦が、部品が経験する方向変化を支援することによって得られる。その上、最大ワイピング性能を確実にするために、主表面に接触するワイピング手段の一部の少なくとも部分が、部品が方向変化する際に、傾斜及び/または反転してもよい。このような傾斜及び/または反転は、本発明によって促進される。
【0043】
好ましくは、該動摩擦係数は、10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で測定される。
【0044】
好ましくは、透明基材が、その主表面の少なくとも一部分に、直接または間接的に少なくとも1つの層をコーティングすることにより、該少なくとも1つの層が存在する場合、第4の態様における透明基材の主表面の該少なくとも一部分への言及が、該少なくとも1つの層の外側表面への言及と解釈される。好ましくは、該少なくとも1つの層は、第1の範囲の少なくとも一部分をコーティングする。より好ましくは、該少なくとも1つの層は、第1の範囲の実質的にすべてまたはすべてをコーティングする。本発明の文脈において、用語「実質的にすべて」とは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92.5%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも97.5%、最も好ましくは少なくとも99%を意味する。
【0045】
好ましくは、該少なくとも1つの層は、該第2の範囲の該少なくとも一部の実質的にすべてまたはすべてをコーティングする。好ましくは、該少なくとも1つの層は、該第2の範囲の実質的にすべてまたはすべてをコーティングする。好ましくは、第2の範囲の少なくとも一部またはすべての範囲における少なくとも1つの層の組成物が、第2の範囲の少なくとも一部またはすべての範囲の外側の該少なくとも1つの層の組成物とは異なる。
【0046】
第2の範囲の少なくとも一部またはすべては、少なくとも1つの層上に堆積された、さらなる層でコーティングされてもよい。好ましくは、第2の範囲の少なくとも一部またはすべての範囲における該さらなる層の組成物は、第2の範囲の少なくとも一部またはすべての範囲の外側の少なくとも1つの層の組成物とは異なる。
【0047】
好ましくは、該少なくとも1つの層及び/またはさらなる層は、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく。好ましくは、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層及び/またはさらなる層は、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を部分的にまたは完全に変換することによって得られる。代替の実施形態において、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく該さらなる層は、シラン、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、及び/またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)の1つ以上に基づく前駆体を使用する堆積によって得られる。シラザン由来のシリカ及び/またはオルガノシリカ層は、一般に、上記前駆体の使用由来のシリカ及び/またはオルガノシリカより、密度が高く、より滑らかである。該前駆体は、化学蒸着(CVD)及び/またはゾルゲルプロセスにおいて使用されてもよい。
【0048】
第1の範囲は、複数の範囲を含んでもよい。さらに、またはあるいは、第2の範囲は、複数の範囲を含んでもよい。例えば、第2の範囲は、ワイピング手段の一部が第1の位置にある場合に接触する範囲と、ワイピング手段の一部が第2の位置にある場合に接触する範囲とを含んでもよい。
【0049】
第2の範囲は、1つ以上の長方形、卵型及び/または楕円形の範囲を含んでもよい。該長方形範囲は、1つ以上の丸い端部を有してもよい。第2の範囲は、好ましくは少なくとも20cm、より好ましくは少なくとも30cm、さらにより好ましくは少なくとも40cm、さらにより好ましくは少なくとも50cm、最も好ましくは少なくとも60cmであるが、好ましくは最長100cm、より好ましくは最長90cm、さらにより好ましくは最長80cm、最も好ましくは最長70cm、の最長い寸法を有する。
【0050】
好ましくは、該ワイピング手段の該一部の接触面と、該主表面の該第2の範囲の少なくとも一部に位置する該主表面との間の動摩擦係数が、該ワイピング手段の該一部の接触面と、該第2の範囲の該少なくとも一部と同じ範囲を占有しない、該第1の範囲の少なくとも一部に位置する該主表面との間の動摩擦係数より、少なくとも10%高く、より好ましくは少なくとも20%高く、さらにより好ましくは少なくとも30%高く、最も好ましくは少なくとも50%高い。
【0051】
好ましくは、該少なくとも1つの層は及び/または該さらなる層は、少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも5nm、さらにより好ましくは少なくとも10nm、最も好ましくは少なくとも15nmであるが、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大35nm、さらにより好ましくは最大30nm、最も好ましくは最大27nmの厚さを有する。
【0052】
好ましくは、該ワイピング手段は、第1の端部でワイパーブレードに取りつけてあるアームを含む。ワイピング手段が、対向する第2の端部を軸に該アームが動くことにより駆動され、該往復運動をもたらす。好ましくは、該ワイピング手段の該部分の接触面は、エラストマーを含む。好ましくは、該ワイピング手段の該部分の接触面は、ワイパーブレードの少なくとも一部を含む。好ましくは、該エラストマーは、合成または天然ゴムのようなゴムである。合成ゴムは、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマー(M-クラス)ゴム)を含んでもよい。該エラストマーは、コーティングされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトでコーティングされてもよい。該エラストマーは、非エラストマーとブレンドされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトとブレンドされてもよい。
【0053】
該主表面の該第2の範囲の少なくとも一部に位置する主表面は、好ましくは少なくとも0.3nm、より好ましくは少なくとも1nm、さらにより好ましくは少なくとも3nm、最も好ましくは少なくとも5nmであるが、好ましくは最大15nm、より好ましくは最大10nm、さらにより好ましくは最大9nm、さらにより好ましくは最大8nm、最も好ましくは最大7nmの算術平均表面高さ値Saを有し得る。
【0054】
該主表面の該第1の範囲の少なくとも一部に位置する主表面と、ワイピング手段の接触面との間の摩擦係数が、湿潤及び/または乾燥状で、10~110mNの力かつ600mm/秒の速度で、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.2、さらにより好ましくは少なくとも0.3、最も好ましくは少なくとも0.4であるが、好ましくは最大10、より好ましくは最大5、さらにより好ましくは最大1、さらにより好ましくは最大0.8、最も好ましくは最大0.6である。好ましくは、該主表面の該第1の範囲の少なくとも一部に位置する主表面と、ワイピング手段の接触面との間の摩擦係数が、湿潤と乾燥状態との間で、50%を超えて、より好ましくは30%を超えて、さらにより好ましくは20%を超えて、さらにより好ましくは10%を超えて、最も好ましくは5%を超えて、変化しない。ワイピング手段の該接触面は、エラストマーを含んでいてもよい。該エラストマーは、ワイパーのブレードの少なくとも一部であってもよい。好ましくは、該エラストマーは、合成または天然ゴムのようなゴムである。合成ゴムは、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマー(M-クラス)ゴム)を含んでもよい。該エラストマーは、コーティングされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトでコーティングされてもよい。該エラストマーは、非エラストマーとブレンドされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトとブレンドされてもよい。
【0055】
透明基材は、その主表面が、直接または間接的に下層でコーティングされ、該下層が、透明基材の該主表面と、該少なくとも1つの層との間に位置する。好ましくは、該透明基材は、該下層と直接接触している。好ましくは、該下層は、該少なくとも1つの層と直接接触している。
【0056】
下層は、好ましくは、透明導電コーティング(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含む。好ましくは、TCCは、透明導電酸化物(TCO)である。好ましくは、TCOは、1つ以上のフッ素ドープ酸化スズ(SnO2:F)、アルミニウム、ガリウム、またはホウ素ドープ酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In2O3、In2O3-ZnO(IZO)、In2O3:Ti、In2O3:Mo、In2O3:Ga、In2O3:W、In2O3:Zr、In2O3:Nb、MがZnまたはCuであるIn2-2xMxSnxO3、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO2:Co、In2O3:Ni、In2O3:(Sn,Ni)、ZnO:Mn及び/またはZnO:Coである。
【0057】
ガラスは曲線状で及び/または曲げられたものであってもよい。好ましくは、ガラスは、車両用フロントガラスまたは車両バックライトなどの車両用ガラスである。
【0058】
第4の態様によるガラスは、第1の態様によるガラスの任意の特徴を含み得る。
【0059】
本発明の第5の態様によって、第4の態様のガラスとワイピング手段との組み合わせが提供される。
【0060】
本発明の第6の態様によって、ワイピング手段の一部の往復運動を促進し、ならびに/またはワイピング手段の一部の傾斜及び/もしくは反転を促進する第4の態様のガラスの使用が提供される。
【0061】
好ましくは、ワイピング手段の該部分は、ワイパーブレードの少なくとも一部を含む。好ましくは、ワイパーブレードの該少なくとも一部は、エラストマーを含む。好ましくは、該エラストマーは、合成または天然ゴムのようなゴムである。合成ゴムは、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマー(M-クラス)ゴム)を含んでもよい。該エラストマーは、コーティングされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトでコーティングされてもよい。該エラストマーは、非エラストマーとブレンドされてもよい、例えば、該エラストマーは、グラファイトとブレンドされてもよい。
【0062】
本発明の1つの態様に適用可能な随意の特徴は、任意の組み合わせで、及び任意の数で使用され得ることが理解されるであろう。さらに、それらは、本発明の他の態様のうちのいずれかと、任意の組み合わせで、及び任意の数で使用することもできる。これは、本出願の特許請求の範囲内の任意の他の請求項に対して従属項として使用される、任意の請求項からの従属項が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に、またはその前に提出され、本明細書と共に縦覧のために公開されているすべての論文及び文書に向けられ、そのような論文及び文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される特徴のすべて、及び/またはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程のすべては、そのような特徴及び/または工程のうちの少なくともいくつかが、互いに排他的である組み合わせを除いて、いずれの組み合わせで組み合わされてもよい。
【0065】
本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される各特徴は、別途明示されない限り、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別途明示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の単なる一例である。
【0066】
本発明はここで、以下の付随する図面を参照して、限定ではなく、例証によって付与される、以下の特定の実施形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明のガラスと、平行に作動するように構成されている2つのワイパーの組み合わせを示す概略平面図である。そして、
【
図2】本発明のガラスと、反対方向に作動するように構成されている2つのワイパーの組み合わせを示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1は、ワイピング手段2と組み合わされた、本発明による車両ガラス1、具体的にはフロントガラスを示す。ガラス1は、表面3の全体を覆うシリカ層で、外側主表面3上にコーティングされている。ワイピング手段2は、2つのワイパーブレード4、2つのワイパーアーム5、2つの回転軸6、及びモーター(示されていない)を備える。それぞれのワイパーブレード4は、異なるワイパーアーム5の第1の端部に取り付けられている。それぞれのワイパーアーム5は、対向する第2の端部において、異なる回転軸6に取り付けられている。2つのワイパーブレード4は、表面3に接触する。
【0069】
使用時には、モータは、軸6を回転させて、その運動を同期させ、ワイパーアーム5及びその結果としてワイパーブレード4を平行/一斉に作動させる。軸6は、時計方向及び反時計方向に交互に回転し、ワイパーブレード4を表面3上において往復運動で作動させ、第1の範囲7をふく。ワイパーブレード4は、第1の位置と第2の位置との間を作動することによって、該主表面3の第1の範囲7をふく。
図1の斜線範囲は、これらの第1及び第2の位置の領域におけるガラス1の表面3を表し、一緒に第2の範囲8を備える。第2の範囲8の表面3におけるシリカ層は、オルガノシラン前駆体を使用して堆積される第1の範囲7のシリカ層の残りの部分とは異なる。この構成は、第2の範囲8の表面3とワイパーブレード4のゴムとの間の運動摩擦係数を、第1の範囲7の残りの表面3と該ゴムとの間よりも、大きくするのを確実にする。この構成は、ワイパーブレード4が方向変換する際、すなわちワイパーブレード4が第1または第2の位置にあり、第2の領域8に接触している際、ワイパーブレード4の傾斜及び/または反転を促進する。第1の範囲7(第2の範囲8を含む)の表面3とワイパーブレード4のゴムとの間の摩擦係数は、乾燥状態と湿潤状態との間で実質的に変化しない。
【0070】
図2は、代替のワイピング手段2と組み合わされた、本発明による別の車両ガラス1、具体的にはフロントガラスを示す。
図1の特徴に関連する参照番号は、
図2の対応する特徴についても使用される。
図2のワイピング手段2は、
図1のそれとは異なる。使用時に、
図2のワイピング手段のモータが軸6を反対方向(時計回り及び反時計回り)に回転させ、ワイパーアーム5及びその結果としてワイパーブレード4を反対方向に作動させる。重ねて、軸6は、時計方向及び反時計方向に交互に回転し、ワイパーブレード4を表面3上において往復運動で作動させ、第1の範囲7をふく。
【0071】
図1及び
図2は、ワイピング手段の2つの異なる動作モードを例示しており、もちろん、単一ブレードシステム、パンタグラフシステム、及び複合弧形システムなどの本発明と組み合わせて使用できる、いくつかの他のタイプのワイピング手段がある。
【実施例】
【0072】
厚さ2.2mmのPilkington Energy Advantage(登録商標)ガラスの4つの試料のそれぞれに、ペルヒドロポリシラザンの層をコーティングした(コーティングされた面上)、この試料を200℃で1時間加熱することによりシリカの層に変換した。4つの試料上に堆積されたシリカ層はそれぞれ25nm、50nm、100nm及び150nmの厚さを有していた。次いで、これらの4つの試料に加えて、コーティングされていない、または処理されていない厚さ2.2mmのPilkington Energy Advantage(登録商標)ガラスの参照試料の、動摩擦係数試験を行った。
【0073】
乾燥及び湿潤条件下で、19mmの長さに切断されたBosch Superplus 24(登録商標)ワイパーブレードを使用して、試験を実施した。CSM Micro-Combi Tester(登録商標)をスクラッチモードで使用して摩擦試験を実施し、ワイパーブレードによって試料のコーティングされた面に10~110mNの荷重をかけた。65mmの長さを通じて、600mm/分の速度で試験を実施した。
【0074】
各試料について、別々の19mmのワイパーブレードを、CSM Micro-Combi Tester(登録商標)の圧子ホルダーの端部に固定したガラスディスクに接着させた。試験に先立ち、エアロゾル溶剤スプレー、続いて脱イオン水を使用して試料を洗浄し、最後にDust Off(登録商標)エアロゾルスプレーでいずれの破片も除去した。湿潤試験のために、約2mlの量の脱イオン水のプールを試料表面につけた。試験ごとに5回のテストを行い、各試験の開始時と終了時の負荷変動の影響を避けて、10~60mm間の運動で得られたデータを使用して結果を平均した。
【表1】
表1ワイパーブレードと参照試料(厚さ2.2mmのPilkington Energy Advantage(登録商標)ガラス)及び異なる厚さのシリカトップコートを有する4つのサンプルを含む、5つの試料のそれぞれとの間の湿潤または乾燥条件下での動摩擦係数。
【0075】
上記の表1に示すように、ペルヒドロポリシラザンの層由来の厚さ25nmのシリカトップコートを有する試料は、シリカトップコートの表面とワイパーブレードの接触面との間の動摩擦係数が、乾燥及び湿潤状態の間で変化がないことを示した。その一方で、他の試験試料では、乾燥状態から湿潤状態に変化する際の動摩擦係数において低下を示した。その上、厚さ25nmのシリカトップコートを有する試料は、0.4~0.6の望ましい範囲内の摩擦係数を示し、それは、ノイズ低減、水除去効率、及び運動の滑らかさに関して有益であり、その結果、ワイパーブレードの侵食が低減し、寿命が延びる。
【0076】
本発明は、前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される特徴のうちのいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組み合わせ、またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスの工程のいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組み合わせにも及ぶ。