(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20220117BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220117BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20220117BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08F290/06
C08F290/14
C09K3/10 B
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2017553431
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2017034711
(87)【国際公開番号】W WO2018062164
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2016191492
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/123824(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/120998(WO,A1)
【文献】特開2006-176576(JP,A)
【文献】特開2009-143047(JP,A)
【文献】特開2010-020286(JP,A)
【文献】特開2002-338946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08F 290/06
C08F 290/14
C09K 3/10
C08G 59/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂とマレイミド化合物とラジカル重合開始剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、分子量が
600~1500の
エポキシ(メタ)アクリレートを含有し、
前記硬化性樹脂100重量部中における前記分子量が
600~1500の
エポキシ(メタ)アクリレートの含有量が10~50重量部である
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
マレイミド化合物は、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する多官能マレイミド化合物であることを特徴とする請求項
1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
マレイミド化合物は、分子量が400以上であることを特徴とする請求項
1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
請求項
1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項5】
請求項
1、2若しくは3記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項
4記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性及び減圧下での安定性に優れる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部まで光が到達せず硬化が不充分となるという問題があった。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出し、溶出したシール剤成分による硬化反応が液晶中において進行することで液晶汚染が発生するという問題があった。液晶汚染を抑制するために反応性の高い硬化性樹脂を用いた場合、液晶表示素子の製造工程において基板貼り合わせ時に減圧した際に、シール剤の安定性が悪くなって部分的に硬化し、貼り合わせ後のシール剤の直線性が損なわれる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、硬化性及び減圧下での安定性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂とマレイミド化合物とラジカル重合開始剤とを含有し、上記硬化性樹脂は、分子量が600~1500のエポキシ(メタ)アクリレートを含有し、上記硬化性樹脂100重量部中における上記分子量が600~1500のエポキシ(メタ)アクリレートの含有量が10~50重量部である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、シール剤に用いる硬化性樹脂として、特定の範囲の分子量を有する化合物を用いることにより、減圧下におけるシール剤の安定性を向上させることを検討した。しかしながら、得られたシール剤は、減圧下での安定性には優れるものの、反応性(硬化性)に劣るという問題があった。該特定の範囲の分子量を有する化合物や重合開始剤の含有量を調整しても、硬化性と減圧下での安定性とを両立することは困難であった。
そこで本発明者は更に鋭意検討した結果、該特定の範囲の分子量を有する化合物の含有量を特定の割合としつつ、硬化性樹脂に加えてマレイミド化合物を用いることにより、硬化性と減圧下での安定性とを両立できる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、分子量が500~1500の化合物を含有する。上記分子量が500~1500の化合物を用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、減圧下での安定性に優れるものとなる。
上記分子量が500~1500の化合物の分子量の好ましい下限は600、好ましい上限は1300、より好ましい下限は700、より好ましい上限は1000である。
なお、本明細書において、上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
また、後述するように、本発明においてマレイミド化合物は、上記硬化性樹脂には含まない。
【0010】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が500~1500の化合物として、分子量が500~1500の(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
上記分子量が500~1500の(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られる分子量が500~1500のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記分子量が500~1500の(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」ともいう)を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。更に、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0011】
上記分子量が500~1500の(メタ)アクリル化合物としては、具体的には例えば、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、オルトクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェニルノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型エポキシ(メタ)アクリレート、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、レゾルシノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート、スルフィド型エポキシ(メタ)アクリレート、ジフェニルエーテル型エポキシ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ(メタ)アクリレート、ナフタレン型エポキシ(メタ)アクリレート、グリシジルアミン型エポキシ(メタ)アクリレート、アルキルポリオール型エポキシ(メタ)アクリレート、ゴム変性型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0012】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記分子量が500~1500の化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は50重量部である。上記分子量が500~1500の化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、硬化性と減圧下での安定性とを両立する効果に優れるものとなる。上記分子量が500~1500の化合物の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0013】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が500~1500の化合物に加えて、その他の硬化性樹脂を含有する。上記その他の硬化性樹脂としては、分子量が500未満の化合物が好ましい。
【0014】
上記分子量が500未満の化合物としては、例えば、分子量が500未満の(メタ)アクリル化合物、分子量が500未満のエポキシ化合物等が挙げられる。
上記分子量が500未満の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、分子量が500未満の(メタ)アクリル酸エステル化合物、分子量が500未満のエポキシ(メタ)アクリレート、分子量が500未満のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、分子量が500未満のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記分子量が500未満の(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
【0015】
上記分子量が500未満の(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
また、上記分子量が500未満の(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記分子量が500未満の(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記分子量が500未満のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0019】
上記分子量が500未満のエポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールEジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジイルビス(グリシジルエーテル)、1,6-ナフタレンジイルビス(グリシジルエーテル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0020】
上記分子量が500未満のウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0021】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
【0023】
上記分子量が500未満のエポキシ化合物としては、例えば、上記分子量が500未満のエポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、分子量が500未満の部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味し、例えば、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0024】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、マレイミド化合物を含有する。上記マレイミド化合物を用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性に優れるものとなる。
なお、本発明において上記マレイミド化合物は、硬化性樹脂にもラジカル重合開始剤にも含まない。
【0025】
上記マレイミド化合物は、反応性の観点から、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する多官能マレイミド化合物であることが好ましい。
【0026】
上記マレイミド化合物の分子量の好ましい下限は400である。上記マレイミド化合物の分子量が400以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、硬化性と減圧下での安定性とを両立する効果により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の分子量のより好ましい下限は500である。
また、反応性の観点から、上記マレイミド化合物の分子量の好ましい上限は1500、より好ましい上限は1000である。
【0027】
上記マレイミド化合物としては、下記式(1)で表される化合物や下記式(2)で表される化合物が好適に用いられる。
【0028】
【0029】
式(1)中、R1は、炭素数2~3のアルキレン基を表し、nは、2~40の整数である。
【0030】
【0031】
式(2)中、R2は、炭素数1~40の2価の脂肪族基を表す。
【0032】
上記式(2)中、R2の炭素数は、12~36であることが好ましい。また、R2は、脂肪族環を有することが好ましい。
上記式(2)で表される化合物としては、具体的には例えば、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサン(下記式(3-1)で表される化合物)、1-ヘプチレンマレイミド-2-オクチレンマレイミド-4-オクチル-5-ヘプチルシクロヘキサン(下記式(3-2)で表される化合物)、1,2-ジオクチレンマレイミド-3-オクチル-4-ヘキシルシクロヘキサン(下記式(3-3)で表される化合物)等が挙げられる。これらの化合物は、米国特許第5973166号明細書に記載の方法等によって合成することができる。
【0033】
【0034】
上記硬化性樹脂100重量部に対する上記マレイミド化合物の含有量の好ましい下限は1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記マレイミド化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、硬化性と減圧下での安定性とを両立する効果により優れるものとなる。上記マレイミド化合物の含有量のより好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0035】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ラジカル重合開始剤を含有する。
上記ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。なかでも、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
また、上述したように、本発明においてマレイミド化合物は、上記ラジカル重合開始剤には含まない。
【0036】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0037】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、O-アセチル-1-(6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)エタノンオキシム等が挙げられる。
【0038】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0039】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0040】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0041】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ化合物としては、例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物としては、例えば、V-65、V-501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0042】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0043】
上記ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の保存安定性等を悪化させることなく、硬化性により優れるものとすることができる。上記ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0044】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0045】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、SDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0046】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、より熱硬化性に優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0047】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化物の柔軟性や接着性等を向上させたり、液晶のシール剤への差し込みやシール剤の液晶への溶出を抑制したりする等の観点から、柔軟粒子を含有することが好ましい。
【0048】
上記柔軟粒子としては、例えば、シリコーン系粒子、ビニル系粒子、ウレタン系粒子、フッ素系粒子、ニトリル系粒子等が挙げられる。なかでも、シリコーン系粒子、ビニル系粒子が好ましい。
【0049】
上記シリコーン系粒子としては、樹脂への分散性の観点からシリコーンゴム粒子が好ましい。
【0050】
上記ビニル系粒子としては、(メタ)アクリル粒子が好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル粒子は、原料となる単量体を公知の方法により重合させることで得ることができる。具体的には例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で単量体を懸濁重合する方法、ラジカル重合開始剤の存在下で非架橋の種粒子に単量体を吸収させることにより種粒子を膨潤させてシード重合する方法等が挙げられる。
【0051】
上記(メタ)アクリル粒子を形成するための原料となる単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、酸素原子含有(メタ)アクリレート類、ニトリル含有単量体、フッ素含有(メタ)アクリレート類等の単官能単量体が挙げられる。
上記アルキル(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記酸素原子含有(メタ)アクリレート類としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ニトリル含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
上記トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、単独重合体のTgが低く、1g荷重を加えたときの変形量を大きくすることができることから、アルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0052】
また、架橋構造を持たせるため、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸骨格トリ(メタ)アクリレート等の多官能単量体を用いてもよい。なかでも、架橋点間分子量が大きく、1g荷重を加えたときの変形量を大きくすることができることから、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0053】
上記架橋性単量体の使用量は、上記(メタ)アクリル粒子を形成するための原料となる単量体全体において、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は90重量%である。上記架橋性単量体の使用量が1重量%以上であることにより、耐溶剤性が上がり、種々のシール剤原料と混練したときに膨潤等の問題を引き起こさず、均一に分散しやすい。上記架橋性単量体の使用量が90重量%以下であることにより、回復率を低くすることができる。上記架橋性単量体の使用量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0054】
更に、これらのアクリル系の単量体に加えて、スチレン系単量体、ビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、不飽和炭化水素、ハロゲン含有単量体、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の単量体を用いてもよい。
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、トリメトキシシリルスチレン等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
上記カルボン酸ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
上記不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
上記ハロゲン含有単量体としては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等が挙げられる。
【0055】
上記(メタ)アクリル粒子としては、コアシェル(メタ)アクリレート共重合体微粒子も好適に用いられる。
上記コアシェル(メタ)アクリレート共重合体微粒子のうち市販されているものとしては、例えば、F351(ゼオン化成社製)等が挙げられる。
【0056】
また、上記ビニル系粒子としては、例えば、ポリジビニルベンゼン粒子、ポリクロロプレン粒子、ブタジエンゴム粒子等を用いてもよい。
【0057】
上記柔軟粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.01μm、好ましい上限は10μmである。上記柔軟粒子の平均粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の硬化物の柔軟性や接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の平均粒子径のより好ましい下限は0.1μm、より好ましい上限は8μmである。
なお、本明細書において、上記柔軟粒子の平均粒子径は、シール剤に配合する前の粒子について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することにより得られる値を意味する。上記レーザー回折式粒度分布測定装置としては、マスターサイザー2000(マルバーン社製)等を用いることができる。
【0058】
上記柔軟粒子の硬度の好ましい下限は10、好ましい上限は50である。上記柔軟粒子の硬度がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の硬化物の柔軟性や接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の硬度のより好ましい下限は20、より好ましい上限は40である。
なお、本明細書において上記柔軟粒子の硬度は、JIS K 6253に準拠した方法により測定されるデュロメータA硬さを意味する。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記柔軟粒子の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。上記柔軟粒子の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の硬化物の柔軟性や接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記柔軟粒子の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0061】
上記充填剤としては、例えば、無機充填剤や上記柔軟粒子に含まれる以外の有機充填剤が挙げられる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
【0062】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0063】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0064】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0067】
上記遮光剤としては、例えば、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。また、上記無機充填剤として挙げた酸化鉄や酸化チタン等は、上記遮光剤として用いることもできる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0068】
上記チタンブラックは、波長300~800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370~450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0069】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0070】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0071】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m2/g、好ましい上限は30m2/gであり、より好ましい下限は15m2/g、より好ましい上限は25m2/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0072】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0073】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する接着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0074】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0075】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、マレイミド化合物と、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。
【0076】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0077】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0078】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0079】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を光硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。また、上記シール剤を光硬化させる工程に加えて、シール剤を加熱して熱硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、硬化性及び減圧下での安定性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0082】
(実施例1~8、参考例9、及び、比較例1~6)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~8、参考例9、及び、比較例1~6の液晶表示素子用シール剤を調製した。
なお、マレイミド化合物として表中に記載したポリテトラメチレンエーテルグリコールのジマレイミド酢酸エステル(DIC社製、「LUMICURE MIA200」)は、上記式(1)で表される化合物である。
【0083】
<評価>
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0084】
(減圧下での安定性(真空安定性))
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、ディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行った。次いで、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)を用いてガラス基板上に長方形の枠を描く様にシール剤を塗布し、真空貼り合わせ装置内にて0.1Paの減圧下にて5分間保持した後、別のガラス基板を貼り合わせてセルを得た。真空貼り合わせ装置内を大気圧に戻してセルを取り出し、セル内のシール部の形状(シール剤の直線性)を顕微鏡にて観察した。
シール幅の最大値に対するシール幅の最小値が90%以上であった場合を「○」、80%以上90%未満であった場合を「△」、80%未満であった場合を「×」として減圧下での安定性(真空安定性)を評価した。
【0085】
(硬化性)
実施例、参考例、及び、比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤をガラス基板上に約5μm塗布した後、同サイズのガラス基板を重ね合わせた。次いで、メタルハライドランプを波長365nmの紫外線を3000mJ/cm2照射した。赤外分光装置(BIORAD社製、「FTS3000」)を用い、(メタ)アクリロイル基由来ピークの光照射前後での変化量(減少率)を測定した。
光照射後の(メタ)アクリロイル基由来のピークの減少率が95%以上であった場合を「◎」、85%以上95%未満であった場合を「○」、75%以上85%未満であった場合を「△」、75%未満であった場合を「×」として硬化性を評価した。
【0086】
【0087】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、硬化性及び減圧下での安定性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。