(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】サイズによってDNAを分離する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20220117BHJP
B01D 15/34 20060101ALI20220117BHJP
B01D 15/12 20060101ALI20220117BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20220117BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
B01D15/34
B01D15/12
B01D15/20
G01N30/88 D
(21)【出願番号】P 2017561345
(86)(22)【出願日】2016-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2016062759
(87)【国際公開番号】W WO2016193490
(87)【国際公開日】2016-12-08
【審査請求日】2019-03-19
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オニール, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シュペルリング, ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】グリューネフェルト, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ショール, ニコラ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】Nucleic Acids Research, 1975年,Vol.2, No.3,p.383-389
【文献】Nucleic Acids Research, 1991年,Vol.19, No.6,p.1346
【文献】Nucleic Acids Research, 2009年,Vol.37, No.18,e122 (p.1-9)
【文献】Chinese J. Analytical Chemistry, 2006年,Vol.34, No.7,p.923-926
【文献】Microbial & Comparative Genomics, 1998年,Vol.3, No.4,p.237-241
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
B01D 15/34
B01D 15/12
B01D 15/20
G01N 30/88
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA含有試料から特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を単離するための、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法であって、
(a)前記DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであって、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種のアルカリ金属塩、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、前記カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を前記固相から溶出させるステップ
を含む方法。
【請求項2】
DNA含有試料から上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離するためであって、
(a)前記DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであって、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種のアルカリ金属塩、および少なくとも1種の二価カチオンを含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記第1の結合用混合物が、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、前記標的DNA分子を含む前記残りの試料から分離するステップ、
(c)前記残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、前記第2の結合用混合物中の前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度が前記第1の結合用混合物と比較して上昇しており、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記下限カットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)前記結合した標的DNA分子を前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を前記固相から溶出させるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において、結合用緩衝液を前記DNA含有試料に添加して前記結合用混合物を調製し、前記結合用緩衝液が、前記少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであって、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが前記PEGである、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種のアルカリ金属塩、前記少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含み、前記結合用緩衝液が、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)において、結合用緩衝液を前記残りの試料に添加して前記第2の結合用混合物を調製し、前記結合用緩衝液が、前記少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであって、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが前記PEGである、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種のアルカリ金属塩、前記少なくとも1種の二価カチオンであって、前記二価カチオンがアルカリ土類金属である、二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含み、前記結合用緩衝液が、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、任意選択で、ステップ(a)におけるものと同じ結合用緩衝液が使用される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
以下の特性:
a)前記アルカリ金属塩が、アルカリ金属ハロゲン化物であること、
b)前記アルカリ金属塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムおよび塩化セシウムから選択され、より好ましくは、前記塩が塩化ナトリウムであること、ならびに/または
c)前記アルカリ金属塩が、前記結合用混合物中に、≧250mM、≧350mM、≧500mM、≧600mM、≧650mM、≧700mM、≧750mMおよび≧800mMから選択される濃度、ならびに/または、250mM~2M、350mM~1.75M、500mM~1.5M、600mM~1.3Mおよび650mM~1.25Mから選択される範囲の濃度で存在すること
の1つまたは複数を有する、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
前記二価カチオンが、以下の特性:
a)前記二価カチオンが、Mg
2+およびCa
2+から選択され、好ましくは、Mg
2+であること、
b)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に溶解塩の形態で存在し、前記塩が、任意選択で、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩または炭酸塩、好ましくは、ハロゲン化物であること、
c)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に、塩化マグネシウムである溶解塩の形態で存在すること、
d)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に、好ましくは溶解塩の形態で、3mM~75mM、4mM~50mM、5mM~40mM、5.5mM~35mM、6mM~30mM、6.5mM~25mM、7mM~20mMおよび7.5mM~15mMから選択される範囲の濃度で存在すること、ならびに/または
e)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に溶解塩の形態で存在し、前記結合用混合物が、アルカリ金属塩、好ましくは、塩化ナトリウムをさらに含有すること
の1つまたは複数を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
以下の特性:
a)前記ポリエチレングリコールが、2000~40000、2500~30000、3000~25000、3500~20000、4000~16000、4500~12000および5000~10000から選択される範囲の分子量を有すること、
b)前記カットオフ値が、前記結合用混合物中の前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度によって調整されること、ならびに/または
c)前記結合用混合物が、前記ポリエチレングリコールを少なくとも7.5%の濃度で含み、前記ポリエチレングリコール濃度が6%~20%、7%~17%、7.5%~15%、8%~13%および8.5%~12.5%から選択される範囲内に入ることが好ましいこと
の1つまたは複数を有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記結合用混合物が、8.6~9.5または8.6~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有し、ならびに/または、前記結合用混合物が、少なくとも1種の緩衝剤を、好ましくは25mM~600mM、50mM~500mM、60mM~450mM、70mM~400mM、80mM~350mM、90mM~300mMおよび100mM~275mMから選択される濃度で含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記結合条件が、前記DNA含有試料および/または残りの試料と接触させる前記結合用緩衝液によって排他的に確立される、請求項3から8ま
でのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記結合用緩衝液が、以下の特性:
a)8.5~9.5または8.6~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有すること、
b)緩衝剤を、25mM~1M、50mM~750mM、75mM~700mM、100mM~650mM、125mM~600mM、150mM~550mM、175mM~525mMおよび200mM~500mMから選択される濃度で含むこと、
c)アルカリ金属塩を、0.5M~4M、0.7M~3.5M、1M~3M、1.2M~2.75Mおよび1.3M~2.5Mから選択される濃度で含むこと、
d)前記ポリエチレングリコールを、7%~45%、10%~40%、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含むこと、ならびに/または
e)以下の特徴:
i)Mg
2+を二価カチオン、好ましくはMgCl
2として含むこと、
ii)ポリエチレングリコールを、好ましくは、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含むこと、
iii)アルカリ金属塩、好ましくは塩化ナトリウムを、0.5M~2.75M、好ましくは、0.75M~2.5Mの範囲内に入る濃度で含むこと、
iv)前記少なくとも1種の緩衝剤を、100~550mMの範囲内に入る濃度で含むこと、
v)8.5~9.5または8.6~9.2の範囲内に入るpHを有することを有することの1つまたは複数を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記DNA含有試料、7.5%~15%、好ましくは、8%~13%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および7mM~40mM、好ましくは8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl
2を含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)前記結合したDNA分子を、前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を前記固相から溶出させるステップ
の通り実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)前記DNA含有試料、8.5%~9.5%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および、7mM~40mM、好ましくは8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl
2を含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)前記結合したDNA分子を、前記標的DNA分子を含む前記残りの試料から分離するステップ、
(c)前記残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8.6~9.25の範囲内に入るpHを有し、前記第2の結合用混合物中のポリエチレングリコールの濃度が前記第1の結合用混合物と比較して上昇しており、10%~12%の範囲内に入り、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)前記結合した標的DNA分子を前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を前記固相から溶出させるステップ
の通り実施される、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アダプターがライゲートしたDNA分子を標的DNA分子としてアダプターライゲーション試料であるDNA含有試料から単離するため、およびアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物を除去するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法であって、アダプターがライゲートしたDNA分子を、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物から、前記アダプターがライゲートしたDNA分子のサイズがより大きいことに基づいて分離する、方法。
【請求項14】
所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子のDNA含有試料からのサイズ選択的単離のためのキットであって、
(a)少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであって、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーがポリエチレングリコール(PEG)である、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種のアルカリ金属塩、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液であり、8.5~9.5の範囲内に入るpH値を有する、結合用緩衝液、
(b)無修飾ケイ素含有表面を有する固相、
(c)任意選択で、少なくとも1種の洗浄用溶液、および
(d)任意選択で、少なくとも1種の溶出用溶液
を含むキット。
【請求項15】
前記結合用緩衝液が、請求項10に記載の特性のうちの1つまたは複数を有する、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、DNA分子のサイズ選択的単離の方法を提供する。本発明の方法は、シークエンシングライブラリーを調製するために、所望の最小長を有する標的DNA分子を単離するのに特に有用である。さらに、DNA分子のサイズ選択的単離に使用することができるキットが提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
核酸を単離するための種々の方法が先行技術において周知である。そのような方法は、目的の核酸を、他の試料構成成分、例えば、タンパク質夾雑物、または潜在的に、非標的核酸と称されることも多い他の核酸などから分離することを伴う。例えば、種々の試料材料から、DNAなどの核酸を、それらをカオトロピック塩の存在下でシリカ材料に結合させることによって単離するための方法が先行技術において周知であり、確立されている。前記原理に基づく典型的な方法は、例えば、EP0389063、WO03/057910、EP0757106、US6,037,465およびWO2006/084753に記載されている。
【0003】
目的の特定の核酸を他の核酸から単離することが意図されている場合、分離プロセスは、通常、例えば、それらのトポロジー(例えば、スーパーコイルDNAであるか直鎖DNAであるか)、それらのサイズ(長さ)または化学的差異(例えば、DNAであるかRNAであるか)などの、標的核酸と非標的核酸のパラメータの差異に基づく。
【0004】
特定の適用に関しては、サイズの差異が標的核酸と非標的核酸を区別するための重要な基準である。例えば、次世代シークエンシング(NGS)適用のためのライブラリー構築では、DNAのサイズ選択的分画が重要なステップである。パイロシークエンシング、合成によるシークエンシングまたはライゲーションによるシークエンシングなどの種々のNGS技術および方法が存在する。大多数のNGSプラットフォームは、一般的な科学技術的特徴、すなわち、フローセル中でまたは油-水エマルションの生成により空間的に分離された、クローンにより増幅させたまたは単一のDNA分子の大規模並列シークエンシングを共有する。NGSでは、ポリメラーゼ媒介性ヌクレオチド伸長のサイクルを繰り返すことによって、または、1つの形式では、オゴヌクレオチドライゲーションの反復サイクルによってシークエンシングを実施する。大規模並列プロセスとして、NGSでは、プラットフォームに応じて、単回の計器実行で数百メガベース~ギガベースのヌクレオチド配列アウトプットが生成される。大きな体積の配列データの安価な生成は、従来の方法と比較した主要な利点である。したがって、NGS技術は、遺伝学的研究における主要な駆動力になっている。いくつかのNGS技術プラットフォームに広範にわたる使用が見出されており、それらとして、例えば、以下のNGSプラットフォーム:Roche/454、Illumina Solexa Genome Analyzer、Applied Biosystems SOLiD(商標)システム、Ion Torrent(商標)半導体配列分析機器、PacBio(登録商標)リアルタイムシークエンシングおよびHelicos(商標)単一分子シークエンシング(SMS)が挙げられる。NGS技術、NGSプラットフォームおよびNGS技術の一般的な適用/分野は、例えば、Voelkerdingら(Clinical Chemistry、55巻:4号、641~658頁、2009年)およびMetzker(Nature Reviews/ Genetics、11巻、2010年1月、31~46頁)に概説されている。
【0005】
NGS技術ではシークエンシングが大規模並列様式で実施されるという特徴に加えて、NGS技術プラットフォームでは、共通して、大規模並列シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーの調製が必要である。そのようなシークエンシングライブラリーの例としては、断片ライブラリー、メイトペア(mate-paired)ライブラリーまたはバーコード化断片ライブラリーが挙げられる。大多数のプラットフォームは、計器での「実行」前に、軽微な改変を伴って一般的なライブラリー調製手順に準拠する。この手順は、DNAの断片化(cDNAから、例えば、超音波処理、水せん断、超音波、噴霧または酵素による断片化などの機械的せん断によって得ることもできる)、その後のDNA修復および末端処理(平滑末端またはA突出部)、ならびに、最後に、プラットフォームに特異的なアダプターライゲーションを含む。そのようなシークエンシングライブラリーの調製および設計は、例えば、Voelkerding、2009年およびMetzker、2010年にも記載されている。
【0006】
高品質のシークエンシングデータを確実にするために、効率的なライブラリー調製方法が必要とされている。さらに、シークエンシング読み取りのバックグラウンドを低減するために、ライブラリー調製の結果として配列ライブラリー中に存在し得るDNA夾雑物を除去することが重要である。そのようなDNA夾雑物の例は、アダプターライゲーション後に多くの場合シークエンシングライブラリー中に存在するアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物である。これらの夾雑物である小さなDNA分子は、シークエンシングの前に除去しなければならない。
【0007】
効率的なアダプターライゲーションを確実にするために、アダプターライゲーションの間、アダプターを過剰に使用する。したがって、アダプターライゲーション後、アダプターがライゲートしたDNA分子に加えて、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプター二量体などのアダプターとアダプターとのライゲーション産物が存在する。ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物をアダプターがライゲートしたDNA分子から除去することが重要である。そうでなければ、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物によりシークエンシング能力が使い果たされ、それにより、目的の配列を調査するために利用可能な力が低減する。シークエンシングライブラリーがライゲートされていないアダプター単量体およびアダプター二量体を大量に含む場合、有益なシークエンシングリソースが無駄になる。したがって、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物を除去することにより、下流のシークエンシングの価値が上昇する。ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物は、通常、シークエンシングされるDNA断片を含有する、より大きなアダプターがライゲートしたDNA分子のサイズ選択的精製によって除去される。
【0008】
特定の標的サイズの、特定の標的サイズ範囲のDNAを個別に単離するために、先行技術においていくつかの手法が開発された。アダプター二量体および単量体を除去するために、これらのサイズ選択方法を使用することができ、その理由は、これらのDNA夾雑物が、アダプターがライゲートしたDNA分子よりも小さなサイズを有するからである。標的サイズのDNAを単離するための古典的な方法は、ゲルにおいてDNAを分離し、所望のゲルバンド(単数または複数)を切り取り、次いで、ゲル断片(単数または複数)から標的サイズのDNAを単離することを伴う。多くの次世代シークエンシングライブラリー調製プロトコールでは、アダプター単量体および二量体を除去するために、それぞれのゲルに基づくサイズ選択方法が多くの場合推奨される。さらに、これらの方法は、所望のサイズよりも大きなDNAが試料中に含有される場合にそれを除去するためにも使用することができる。それにより、下限カットオフ値と上限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内に入るサイズを有するDNA分子を単離することが可能である。しかし、目的の核酸を含有するゲルの部分を手動で切り取り、次いで、ゲルを分解する処理を行うかまたは他のやり方でゲルスライスから標的サイズのDNAを抽出しなければならないので、それぞれの方法には時間がかかる。
【0009】
別の広く使用されている技術は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含有する緩衝液、特にポリエチレングリコールに基づく緩衝液(LisおよびSchleif Nucleic Acids Res.、1975年3月;2巻(3号):383~9頁)またはカルボキシル官能性をもたせたビーズ上での結合/沈殿(DeAngelisら、Nuc. Acid. Res.、1995年、23巻(22号)、4742~3頁;US5,898,071およびUS5,705,628、Beckman-Coulter(AmPure XP;SPRIselect)により商業化、ならびにUS6,534,262)を用いたサイズ選択的沈殿である。AmPure XP製品は、広く使用されており、したがって、基準製品と認識することができる。AmPure XP製品では、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を単離することが可能になり、さらに、特定のサイズ範囲(下限カットオフ値と上限カットオフ値とで決定される)内に入るサイズを有するDNA分子を単離することが可能になる。これらの方法では、所望のサイズの沈殿DNA断片を十分な収率で生成させるために、カルボキシル化したビーズ表面が必須である。固相の表面修飾が必要であることにより、核酸結合のために使用する固体支持体をもたらすために使用することができる材料が限定される。さらに、表面修飾は、固相の製作において冗長で時間および費用がかかるステップである。したがって、ポリエチレングリコールに基づくサイズ選択方法がサイズ選択的DNA単離のゴールドスタンダードとして確立されているにもかかわらず、改善された方法が必要とされている。
【0010】
先行技術では、DNA分子、特に、特定の最小サイズを有するDNA分子のサイズ選択的単離を可能にする方法への関心およびその必要性の高まりが示されている。特に、既存の次世代シークエンシングライブラリー調製プロトコールに組み込むことが可能な、特定の最小サイズのDNAおよび/または特定のサイズ範囲内に入るサイズを有するDNAを単離するための、単純であり、有効であり、費用効率のよい方法が必要とされている。さらに、アダプターライゲーション試料、特に、シークエンシングライブラリーの調製において得られるアダプターライゲーション試料から、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプター二量体を除去するための、高速であり、単純であり、信頼できる方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第0389063号明細書
【文献】国際公開第03/057910号
【文献】欧州特許第0757106号明細書
【文献】米国特許第6,037,465号明細書
【文献】国際公開第2006/084753号
【文献】米国特許第5,705,628号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Voelkerdingら、Clinical Chemistry、55巻:4号、641~658頁、2009年)
【文献】Metzker、Nature Reviews/ Genetics、11巻、2010年1月、31~46頁)
【文献】LisおよびSchleif Nucleic Acids Res.、1975年3月;2巻(3号):383~9頁
【文献】DeAngelisら、Nuc. Acid. Res.、1995年、23巻(22号)、4742~3頁;US5,898,071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の要旨
異なるサイズのDNA分子を含むDNA含有試料から標的サイズまたは標的サイズ範囲のDNAを単離するための方法を提供することは、本発明の目的である。特に、固体支持体材料の表面修飾に依存せずに、標的サイズまたは標的サイズ範囲の標的DNA分子を十分な収率で単離することを可能にするポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、DNA含有試料から特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を選択的に沈殿させるために、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、例えばポリエチレングリコールを使用する、確立されたサイズ選択的DNA単離技術に基づく。沈殿DNA分子は固体支持体に結合するようになり、残りの試料から回収し、取り出すことができる。背景技術において議論した通り、先行技術において公知のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的方法には、標的DNA分子の十分な収率での単離を可能にするために、表面が修飾された固相が必要であるという欠点がある。本発明者らはここで、驚いたことに、無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用する場合でも、結合用混合物中に二価カチオンを含めれば、また、結合用混合物において、8~10の範囲内に入るアルカリ性のpH値が確立されれば、標的DNA分子の高収率でのサイズ選択的単離も可能であることを見出した。実施例により、特定のカットオフ値を上回るサイズを有する、回収されるDNA断片の収率が、この特徴の組合せによって有意に増強され、それにより、無修飾ケイ素含有表面を有する固相を、DNA結合のために、高い回収率を確実にしながら使用することが可能になることが実証される。それにより、時間がかかり、高価な固相の表面修飾に依存せずに、有効なポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法が提供される。
【0015】
第1の態様によると、DNA含有試料から特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を単離するための、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法であって、
(a)DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合したDNA分子を固相から溶出させるステップ
を含む方法が提供される。
【0016】
前記方法では、所望のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は固相に効率的に結合し、高収率が伴うが、一方、前記カットオフ値を下回るサイズを有するDNA分子は、ほとんど結合せず、したがって、ステップ(a)において回収されない。カットオフ値は、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を、先行技術から公知であり、また実施例によっても実証される通り改変することによって調整することができる。本明細書で特定される二価カチオンの存在およびアルカリ性pH値により、無修飾ケイ素含有表面を有する固相の使用にもかかわらず、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子の効率的な結合が確実になる。この方法は、アダプターがライゲートしたDNA分子を標的DNA分子としてアダプターライゲーション試料から単離するため、ならびにアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物を除去するために、特に適している。
【0017】
第2の態様によると、所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子のDNA含有試料からのサイズ選択的単離のためのキットであって、
(a)少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液であり、8~10の範囲内に入るpH値を有する、結合用緩衝液、
(b)無修飾ケイ素含有表面を有する固相、
(c)任意選択で、少なくとも1種の洗浄用溶液、および
(d)任意選択で、少なくとも1種の溶出用溶液
を含むキットが提供される。
【0018】
それぞれのキットは、本発明の第1の態様による方法と併せて、およびそれを実施するために使用することができる。
【0019】
本出願の他の目的、特徴、利点および態様が以下の説明および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかになる。しかし、以下の説明、添付の特許請求の範囲、および特定の実施例は、適用の好ましい実施形態を示すものでありながら、単に例示として示されていることが理解されるべきである。開示されている発明の主旨および範囲内での種々の変化および改変は、以下を読むことにより当業者には容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、結合用緩衝液、したがって、本発明による結合条件および比較用結合用緩衝液/条件を使用したサイズ選択的単離の前後の、せん断により断片化されたDNAの電気泳動図(Agilent high-sensitivity DNA chip)を示すグラフである。これらの曲線から、無修飾シリカ表面を有する固相を使用した場合に、アルカリ性pH(本発明では9.0)を使用し、結合用混合物中に二価カチオン(本発明ではMgCl
2由来)を含めることにより、PEG8000により沈殿するDNA断片の収率が増加することが実証される。FU:蛍光単位、bp:塩基対。
【0021】
【
図2】
図2は、本発明による種々の結合条件、および固相として磁気シリカ粒子を使用したサイズ選択的単離の前後の、せん断により断片化されたDNAの電気泳動図(Agilent 7500 chip)を示すグラフである。見ることができる通り、回収されたDNA断片のカットオフ値は変動し得、したがって、結合用混合物中で異なる濃度のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(本発明ではポリエチレングリコール)を使用することによって調整することができる。これは、異なる量の結合用緩衝液をDNA含有試料に添加することによって実現された。
【0022】
【
図3】
図3は、本発明による種々の結合条件および固相としてシリカスピンカラムを使用した、サイズ選択的単離の前後のせん断により断片化されたDNAの電気泳動図(Agilent 7500 chip)を示すグラフである。見ることができる通り、回収されたDNA断片のカットオフ値は変動し得、したがって、結合用混合物中に異なる濃度のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(本発明ではポリエチレングリコール)を使用することによって調整することができる。
【0023】
【
図4a】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図4b】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図5a】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図5b】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図6a】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図6b】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図7】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図8】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【
図9】
図4~9は、2重サイズ選択を実施して上限カットオフ値と下限カットオフ値(bp)とによって規定される範囲内に入るDNA断片を単離するために、ポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例4の結果を示すグラフである。結果を基準製品であるAMPureと比較した。黒棒は、第2の溶出ステップ後に得られたDNAの量を示す。
図4aは、緩衝剤としてCHESを使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図4bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図5aは、緩衝剤としてAMPDを異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図5bは、結合用混合物中で9%PEGを異なるpH値で使用した、DNA回収率(%)を示す(上限カットオフ値)。
図6aおよび6bは、緩衝剤としてTAPSを使用した場合の対応する結果を示す。
図7は、緩衝剤AMPSOを異なる濃度および異なるpH値で使用して2重サイズ選択を実施した場合のDNA回収率(%)を示す。
図8は、緩衝剤としてTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
図9は、異なる濃度のTRIS/(NH
4)
2SO
4を使用して2重サイズ選択を実施した後のDNA回収率(%)を示す。
【0024】
【
図10a】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図10b】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図11a】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図11b】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図12a】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図12b】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図13a】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図13b】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図14a】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【
図14b】
図10~14は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択においてポリエチレングリコール(PEG)、MgCl
2、NaClおよび異なるpH値の異なる緩衝剤を含む異なる結合用緩衝液を使用した実施例5の結果を示す図である。
図10aは、緩衝剤としてpH9.0、9.1または9.2に調整したCAPSOまたはCHESを含む、新しく調製したサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAを示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図10bは、試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
図11~14は、6カ月間保存されており、異なる緩衝剤を含むサイズ選択用緩衝液を使用した清浄化およびサイズ選択後に分析した遺伝子パネルDNAの試料について得られた結果を示す。
図11a、12a、13aおよび14aは、異なる緩衝剤(
図11a:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12a:AMPD、pH9.0または9.1、
図13a:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14a:TAPS、pH9.0または9.3)を含む選択用緩衝液を用いて処理した分析試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。(L)は、使用したラダーを示す。
図11b、12b、13bおよび14bは、それぞれの選択用緩衝液(
図11b:CAPSO、pH9.0、9.1または9.2、
図12b:AMPD、pH9.0または9.1、
図13b:CHES、pH9.0、9.1または9.2、
図14b:TAPS、pH9.0または9.3)を用いて処理した試料について算出されたDNA回収率(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、異なるサイズのDNA分子を含むDNA含有試料から標的DNA分子をサイズによって単離するための、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的方法を提供する。先行技術の方法とは対照的に、本発明の方法では、沈殿した標的DNA分子を結合させるために、無修飾のケイ素含有表面を有する固相を使用する。先行技術の方法と組み合わせると、DNA回収率が非常に低い(実施例を参照されたい)ので、無修飾固相の使用は実行可能ではなかった。本発明では、とりわけ、二価カチオンが結合用混合物中に存在し、結合用混合物のpHが8~10の範囲内に入るので、この問題が克服される。実施例により実証される通り、この特徴の組合せにより、沈殿および/または結合効率が増強され、その結果、特定のカットオフ値を上回るサイズを有する沈殿DNA分子が高収率で回収される。理論に束縛されることを望むものではないが、DNA回収に対するこの有利な効果についての可能性のある説明は、結合/沈殿プロセス中にアルカリ性pH値を使用すると、DNAの骨格がより負に荷電するというものである。無修飾ケイ素含有表面を有する固相の表面のより大きな画分もこれらの条件下ではより負に荷電するので、結合用混合物中の二価イオンが、このより負に荷電した表面と負に荷電したDNAの間の橋として機能し得、それにより、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子の回収が潜在的に増大する。
方法
【0026】
第1の態様によると、DNA含有試料から特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を単離するための、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法であって、
(a)DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合したDNA分子を固相から溶出させるステップ
を含む方法が提供される。
【0027】
この方法は、次世代シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーの調製の間のDNA分子のサイズ選択の実施に特に適している。
【0028】
この方法は、種々の実施形態で実施することができる。この方法は、とりわけ、以下のために使用することができる。
1.所望の特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子(所望のDNA分子は、本明細書では「標的」DNA分子とも称される)を、ステップ(a)において前記標的DNA分子を固相に結合させることによって単離する。結合した標的DNA分子を分離し(ステップ(b))、任意選択で、洗浄し、溶出させる。この実施形態では、「片側だけ」、すなわち、カットオフ値によって決定される特定の最小サイズを有する標的DNA分子について、サイズ選択を実施することができる。しかし、標的DNA分子の最大サイズ(上限カットオフ値によって決定される)は規定されない。この実施形態は、例えば、所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子を、例えば、オリゴヌクレオチド、プライマー、より短いDNA断片などの、望ましくない夾雑物を表す、より小さなDNA分子から単離、したがって、分離するために適している。
2.DNA含有試料から、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を取り出す。これらのより長いDNA分子を、ステップ(a)において固相に結合させ、ステップ(b)において分離し、したがって、残りの試料から取り出す。それにより、試料から、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を効率的に枯渇させる。次いで、例えば、残りの試料中になお存在する核酸または他の構成成分を単離するために、残りの試料をさらに処理することができる。残りの試料を分析方法において直接使用することもできる。固相に結合した、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は、目的のものでない場合には廃棄することもでき、例えば、場合によってそれらを洗浄し、溶出させることによってさらに処理することもできる。
3.特定のサイズ範囲のDNA分子を含む1つまたは複数の画分を得るために、DNA含有試料のサイズ分画を実施する。これは、本発明の教示に従ってサイズ選択を2ラウンドまたはそれ超実施することによって実現することができる。例えば、方法は、各ラウンドにおける結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を上昇させながら、ステップ(a)および(b)を繰り返すことを含んでよい。それにより、各ラウンドにおいてカットオフ値を低下させる。例えば、第1のラウンドにおいて、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を固相に結合させ、試料から分離する。第2のラウンドにおいて、ポリ(オキシアルキレンオキシド)ポリマーの濃度を上昇させ、それにより、第2のラウンドにおけるカットオフ値を低下させる。この第2のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が固相に結合し、残りの試料から分離される。第2のラウンドにおいて結合したDNA分子は、上限カットオフ値(第1のカットオフ値によって決定される)および下限カットオフ値(第2のカットオフ値によって決定される)に対してサイズ選択されたものであり、したがって、規定のサイズ範囲内のサイズを有する。各ラウンドにおいて固相に結合し、したがって、回収されたDNA分子は、廃棄するか、または、例えば、任意選択の洗浄ステップ後に溶出させることができる。このサイズ分画を、同じ原理を使用して3ラウンドまたはそれ超実施することもできる。これにより、シリカまたはガラス表面などの無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用して、DNA含有試料をサイズ分画すること、および長さが異なるDNA分子を異なる溶出液画分としてもたらすことが可能になる。
【0029】
好ましい実施形態によると、第1の態様による方法は、DNA含有試料から上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離するための方法であって、
(a)DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記第1の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、標的DNA分子を含む残りの試料から分離するステップ、
(c)残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、第2の結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度が第1の結合用混合物と比較して上昇しており、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、下限カットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)結合した標的DNA分子を残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を固相から溶出させるステップ
を含む。
【0030】
この実施形態は、上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される規定の範囲内に入るサイズを有する標的DNA分子を単離することを可能にするので、有利である。
【0031】
個々のステップ(a)および(b)ならびに非限定的な適切かつ好ましい実施形態をここで詳細に記載する。
【0032】
ステップ(a)において、DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製する。結合用混合物は、8~10、好ましくは、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有することが重要である。結合用混合物は、DNA含有試料を、8~10、好ましくは、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンを含み、少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液と接触させることによって調製されることが好ましい。本発明において使用される結合用緩衝液は、本明細書では「沈殿用緩衝液」とも称される。含有されるポリ(アルキレンオキシド)ポリマーにより、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が沈殿し、したがって、それらのDNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合する。それにより、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされる。使用された結合条件下で、カットオフ値未満の分子サイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない。実施例によって示される通り、また、先行技術において公知の通り、カットオフ値は、結合用混合物中の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を変動させることによって調整することができる。したがって、ステップ(a)において、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は固相に効率的に吸着するが、一方、カットオフ値を下回るサイズを有する小さなDNA分子は、このサイズ選択的結合ステップ(a)において無修飾ケイ素含有表面を有する固相に実質的に結合せず、したがって、結合用混合物中に残る。
【0033】
結合用混合物を調製するために、DNA含有試料を、8~10の範囲内に入るpHを有し、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液と接触させることが好ましい。結合条件は、結合用緩衝液によって排他的に確立され、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を固相に結合させるための結合条件を確立するためにさらなる添加剤または試薬は添加されないことが好ましい。これにより、取扱いが単純になる。したがって、一実施形態によると、結合用混合物におけるサイズ選択的結合条件は、DNA含有試料に添加される結合用緩衝液によって排他的に決定される。しかし、結合用混合物において所望のpH値を実現する必要があるので、適切な塩基または酸を添加することによって結合用混合物のpH値を手動で調整することは本発明の範囲内に入る。結合用緩衝液、それぞれ結合用混合物のpHは、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を結合させるために無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用した場合のDNA収率に有意に影響を及ぼすので、結合用混合物のpH値は重要である。実施例により実証される通り、標的DNA回収率は、結合の間にアルカリ性pH値を使用しない場合、非常に低い。さらに、pHは、回収されるDNA分子のサイズにも影響を及ぼし、したがって、カットオフ値に影響を及ぼすために使用することができる。したがって、結合用混合物のpH値は特許請求された範囲内に入ることが重要である。
【0034】
一実施形態によると、結合用混合物および/または結合用混合物を調製するためにDNA含有試料に添加する結合用緩衝液は、8.25~9.75、8.3~9.6、8.4~9.5、8.5~9.4、8.6~9.3および8.7~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有する。pH値は、好ましくは8.5~9.5または8.6~9.2、より好ましくは8.7~9.1、最も好ましくは8.7~9.0、例えば8.8~8.9の範囲内に入る。
【0035】
結合用混合物は、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む。ポリマーにより、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が沈殿し、サイズ選択的結合条件の実現が支持される(上記の背景技術の節も参照されたい)。「ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー」という用語は、本明細書で使用される場合、特に、アルキレンオキシド単位のオリゴマーまたはポリマーを指す。低分子量および高分子量のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが公知である。分子量は、通常、その単量体(単数または複数)の分子量(例えば、エチレンオキシドの場合、44)の群衆であり、50000またはさらには100000までにわたり得る。分子量はDaで示される。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、他の幾何学的配置を有してもよい。直鎖ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは非置換型であっても置換型であってもよい。置換型ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーとしては、例えば、アルキルポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、例えば、アルキルポリエチレングリコールが挙げられるが、ポリ(アルキレンオキシド)エステル、ポリ(アルキレンオキシド)アミン、ポリ(アルキレンオキシド)チオール化合物およびその他も挙げられる。アルキレンオキシド単位は、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択することができる。例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合体などの共重合体もポリ(アルキレンオキシド)ポリマーという用語に包含される。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーはポリ(エチレンオキシド)ポリマーまたはポリ(プロピレンオキシド)ポリマーであることが好ましく、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであることがより好ましい。ポリエチレングリコールは、上記の先行技術によっても証明される通り、サイズ選択的DNA単離方法においても一般に使用されるので、特に好ましい。しかし、置換型ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、例えば、アルキルポリエチレングリコールなどのアルキルポリ(エチレンオキシド)ポリマーなどの他のポリ(エチレンオキシド)ポリマーも使用することができる。ポリエチレングリコールは、非分岐であることが好ましく、また、非置換型であっても置換型であってもよい。公知の置換形態のポリエチレングリコールとして、例えば、一方の末端または両方の末端がC1~C5アルキル基により置換されたアルキルポリエチレングリコールが挙げられる。本発明では、式HO-(CH2CH2O)n-Hの非置換型ポリエチレングリコールを使用することが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに関して本出願に記載されている全ての開示は、一般に、明記されていなくても、好ましい実施形態であるポリエチレングリコール、特に非置換型ポリエチレングリコールに具体的に適用され、特にそれについて言及するものである。
【0036】
ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、種々の分子量で使用することができる。一実施形態によると、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、好ましくはポリエチレングリコールであり、2000~40000、2500~30000、3000~25000、3500~20000、4000~16000、4500~12000および5000~10000から選択される範囲内に入る分子量を有する。5000~10000、より好ましくは6000~9000、例えば8000の分子量が好ましい。そのような分子量は、ポリエチレングリコールに関して特に適切である。実施例においてもポリエチレングリコール8000を使用した。
【0037】
実施例において実証される通り、カットオフ値は、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度による影響を受け、それにより調整することができる。したがって、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を変動させることによって、カットオフ値を再配置する、したがって、調整することができる。結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を上昇させると、カットオフ値は低下する。同じく実施例により実証される通り、そのような変動は、例えば、それぞれがポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを異なる濃度で含む異なる結合用緩衝液を調製することによって、または、同じ結合用緩衝液を異なる体積でDNA含有試料に添加することによって実現することができる。
【0038】
ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、結合用混合物中に、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が沈殿し、次いで、それが無修飾シリカ固相に結合するのに十分な濃度で存在する。一実施形態によると、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー濃度は、6%~20%、7%~17%、7.5%~15%および8%~13%から選択される範囲内に入る。カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子の効率的な沈殿および固相への結合を確実にするためには、結合用混合物がポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを少なくとも7.5%の濃度で含むことが好ましい。8.5%~12.5%の範囲が特に好ましい。したがって、結合用混合物を調製するためにDNA含有試料に添加する結合用緩衝液は、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを、意図された体積のDNA含有試料を適切な体積の結合用緩衝液と接触させた際に、結合用混合物中の対応する濃度が実現される量で含む。ステップ(c)において、例えば、下限カットオフ値についての結合条件を確立するために、結合用緩衝液を残りの試料に添加する場合にも同じことが当てはまる。
【0039】
一実施形態によると、上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定されるサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離する、したがって、本明細書に記載されている通り、少なくとも2回のサイズ選択的DNA単離ステップを実施する。一実施形態によると、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(好ましくは、ポリエチレングリコール)は、第1の結合用混合物中に、8.5%~9.5%の範囲内に入る濃度で存在し(上限カットオフ値用)、第2の結合用混合物中に、10%~12%、好ましくは10.5~11.5%の濃度で存在する(下限カットオフ値用)。実施例において実証される通り、この組合せにより、好都合な結果が導かれる。第1の結合用混合物および第2の結合用混合物における結合条件は、同じ結合用緩衝液を異なる体積で添加することによって調整することができる。
【0040】
一実施形態によると、結合条件を確立するためにDNA含有試料と接触させる結合用緩衝液中の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度は、7%~45%、10%~40%、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される。
【0041】
一実施形態によると、二価カチオンは、アルカリ土類金属、例えば、Mg2+によってもたらされる。
【0042】
二価カチオンは、Mg2+、Fe2+、Ca2+、Mn2+、Zn2+およびNi2+から選択することができる。二価カチオンは、Mg2+であることが好ましい。結合用混合物および/または結合用緩衝液は、二価カチオンを溶解塩の形態で含んでよい。そのような塩は、例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩または炭酸塩であってよく、ハロゲン化物であることが好ましい。溶解塩は塩化マグネシウムであることが好ましい。
【0043】
結合用混合物中に含めることができるさらなる塩は、塩化カルシウムおよび塩化バリウムである。
【0044】
DNA回収に対する有益な効果は、結合用混合物中の低濃度の二価カチオンですでに見られる。一実施形態によると、二価カチオンは、結合用混合物中に、好ましくは溶解塩の形態で、3mM~75mM、4mM~50mM、5mM~40mM、5.5mM~35mM、6mM~30mM、6.5mM~25mM、7mM~20mMおよび7.5mM~15mMから選択される範囲の濃度で存在する。一実施形態によると、濃度は、5mM~20mM、7mM~17.5mM、7.5mM~15mMおよび8mM~12.5mMから選択することができる。
【0045】
一実施形態によると、結合用混合物および/または結合用緩衝液は、二価カチオン(溶解塩としてもたらされることが好ましい、上記参照)に加えて、少なくとも1種の塩を含む。さらなる塩を含めることにより、特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子の固相への結合が促進され得る。これは、二価カチオンをより低い濃度で使用した場合に特に可能性がある。塩は、一価の塩であってよい。塩は、アルカリ金属塩、好ましくは、ハロゲン化物であってよい。塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムおよび塩化セシウムから選択されることが好ましい。塩は、塩化ナトリウムであることがより好ましい。一実施形態によると、非カオトロピック塩を追加的な塩として使用する。一実施形態によると、結合用混合物は、グアニジニウム塩、ヨウ化物、チオシアン酸塩、過塩素酸または他の同等もしくはより強力なカオトロピック性のカオトロピック塩などのカオトロピック塩を含まない。
【0046】
結合用混合物は、追加的な塩を、≧250mM、≧350mM、≧500mM、≧600mM、≧650mM、≧700mM、≧750mMおよび≧800mMから選択される濃度で含んでよい。濃度は、例えば、250mM~3M、250mM~2M、350mM~1.75M、500mM~1.5M、600mM~1.3Mおよび650mM~1.25Mから選択することができる。結合用緩衝液は、塩を、0.5M~4M、0.7M~3.5M、1M~3M、1.2M~2.75Mおよび1.3M~2.5Mから選択される濃度で含んでよい。塩は、一価の塩、特に、NaClまたはKClなどのハロゲン化物であることが好ましい。
【0047】
一実施形態によると、結合用混合物および/または結合用緩衝液は、溶解塩の形態の二価カチオン、好ましくは、MgCl2を含み、アルカリ金属塩、好ましくは、ハロゲン化物、より好ましくは、塩化ナトリウムをさらに含む。実施例により実証される通り、この組合せにより、特に良好な結果が導かれる。
【0048】
一実施形態によると、結合用緩衝液をDNA含有試料と接触させた後、得られた結合用混合物において、結合用緩衝液のpH値に対応するまたは実質的に対応するpH値がもたらされる。したがって、一実施形態によると、結合用緩衝液のpH値が、得られた結合用混合物において実質的に維持される。これは、結合用緩衝液中に含まれる少なくとも1種の緩衝剤によって実現され、それぞれ支持される。結合用混合物のpH値は、結合用緩衝液のpH値から、+/-0.2pH単位を超えて逸脱しない、好ましくは、+/-0.15pH単位を超えて逸脱しない、より好ましくは+/-0.1pH単位を超えて逸脱しない、最も好ましくは+/-0.05pH単位を超えて逸脱しないことが好ましい。
【0049】
結合条件(したがって、カットオフ値)は、DNA含有試料に添加される結合用緩衝液によって制御することができ、それが好ましい。一実施形態によると、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度、二価カチオンおよび結合pH値などの結合条件は、DNA含有試料と結合用緩衝液を接触させることによって確立される。結合用混合物における結合条件を確立するためにさらなる調整は行わないことが好ましい。したがって、結合用混合物は、結合用緩衝液とDNA含有試料を接触させることによって排他的にもたらされ、沈殿した標的DNA分子を無修飾表面を有する固相に結合させるための結合条件を確立するためにさらなる緩衝液または他の試薬の添加は行わないことが好ましい。これにより、取扱いおよび調整の誤差が有利に回避される。例えば、1体積のDNA含有試料を、0.1~10体積の結合用緩衝液、0.15~5体積の結合用緩衝液、好ましくは、0.15~3体積の結合用緩衝液、より好ましくは0.2~2体積の結合用緩衝液、最も好ましくは0.2~1体積の結合用緩衝液と接触させることができる。結合用緩衝液とDNA含有試料を接触させることにより、希釈効果に起因して、得られる結合用混合物中の結合用緩衝液中に含有される成分の濃度が低下する。実施例において実証される通り、例えば、異なる量の結合用緩衝液をDNA含有試料に添加することにより、カットオフ値を柔軟に調整し、したがって、再配置することができる。
【0050】
多くの適用について、DNA含有試料と結合用緩衝液を接触させることによって結合用混合物のpHを確立することが好ましいにもかかわらず、本発明は、DNA含有試料と結合用緩衝液を接触させた後に、結合用混合物のpH値を調整し、したがって、改変する実施形態も包含する。したがって、一実施形態によると、結合用混合物のpH値を、8~10、好ましくは、8.5~9.5の範囲内に入る結合pH値に調整する。適切なpH値は、上記されており、それぞれの開示で言及される。例えば、調整は、手動で行うことができる。結合用混合物のpH値を決定し、次いで、酸または塩基などの適切なpH改変物質を添加することによって所望のアルカリ性結合pH値に調整することができる。そのような手順は、DNA含有試料が普通でない高pH値または低pH値を有する場合に有利であり得る。しかし、結合用混合物のpHは、結合用緩衝液の添加によって排他的に確立されることが好ましい。
【0051】
上記の通り、結合用混合物は、DNA含有試料と結合用緩衝液を接触させることによって調製されることが好ましい。結合用緩衝液は、緩衝剤を含む。緩衝剤により、結合用混合物のpH値が、記載の通り、無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用する場合に二価カチオンと組み合わせて標的DNA分子の良好な回収率を確実にするために重要な所望のアルカリ性結合pH値に維持されることが支持される。したがって、結合用混合物のpH値も決定するものである結合用緩衝液のpH値は、所望の結合pHを確実にもたらすために十分に安定であることが重要である。緩衝剤は、所望の結合pH値を含む緩衝能力を有するように選択する。大まかな推定値として、緩衝剤の有用な緩衝能力は、多くの場合、pKa±1である。適切な緩衝剤は先行技術において周知であり、それらとして、これだけに限定されないが、TRIS、MOPS、BICINE、TRICINE、CHES、CAPSO、TAPS、AMPSO、AMPDおよび(NH4)2SO4が挙げられる。適切な緩衝剤としては、これだけに限定されないが、TRIS、MOPS、BICINE、TRICINE、CHES、TAPS、AMPSO、AMPDおよび(NH4)2SO4が挙げられる。実施例により実証される通り、緩衝剤の組合せを使用することもできる。一実施形態によると、AMPSOおよび/またはTris/(NH4)2SO4の組合せを緩衝剤として使用する。
【0052】
一実施形態によると、結合用緩衝液は、少なくとも1種の緩衝剤を、25mM~1M、50mM~750mM、75mM~700mM、100mM~650mM、125mM~600mM、150mM~550mM、175mM~525mMおよび200mM~500mMから選択される濃度で含む。結合用緩衝液中に少なくとも1種の緩衝剤をより高い濃度、好ましくは、少なくとも50mM、少なくとも75mM、少なくとも100mM、少なくとも150mM、少なくとも175mM、または少なくとも200mMで使用することが好ましい。これにより、より大量のDNA含有試料を処理する場合および/または2ラウンドまたはそれ超のサイズ選択を実施する場合であっても、信頼できる緩衝能力が確実になる。これにより、試料と結合用緩衝液を接触させると創出される結合用混合物のpH値の変化が低減するまたは回避される。したがって、結合用混合物も緩衝剤を含む。結合用混合物は、緩衝剤または緩衝剤の組合せを、25mM~600mM、50mM~500mM、60mM~450、70mM~400mM、80mM~350mM、90mM~300mMおよび100mM~275mMから選択される濃度で含んでよい。1つ超の緩衝剤を使用する場合、示されている濃度/範囲は、緩衝剤の総濃度を指す。最適な濃度は、いずれの緩衝剤または緩衝剤の組合せを使用するかにも左右され、当業者が本明細書に記載の原理に従って決定することができる。
【0053】
一実施形態によると、ステップ(a)は、DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコール、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製することを含み、前記結合用混合物は、DNA含有試料と、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液を接触させることにより、8~10の範囲内に入るpHを有し、結合用緩衝液は、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相が生じ、使用された結合条件下で、カットオフ値未満の分子サイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない。上記の通り、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)ポリマーであることが好ましく、より好ましくはポリエチレングリコールであり、より好ましくは非置換型ポリエチレングリコールであり、二価カチオンは、Mg2+であることが好ましい。二価カチオンは、結合用混合物中に、5mM~50mM、好ましくは7mM~25mMの範囲内に入る濃度で含まれてよい。さらに、結合用混合物は、追加的な塩、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、好ましくは塩化ナトリウムを含むことが好ましい。適切な濃度範囲は上に記載されている。結合用混合物のpH値は、8.5~9.5の範囲内であることが好ましく、特に好ましいpH値は上にも記載されている。
【0054】
一実施形態によると、結合用混合物を調製するためにDNA含有試料に添加する結合用緩衝液は、以下の特性を有する:
i)二価カチオンとしてMg2+を、好ましくはMgCl2の形態で含む、
ii)ポリエチレングリコールを、好ましくは7%~45%、10%~40%、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含む、
iii)アルカリ金属塩、好ましくは塩化ナトリウムを、0.5M~2.75M、好ましくは、0.75M~2.5Mの範囲内に入る濃度で含む、
iv)少なくとも1種の緩衝剤を、100~550mMの範囲内に入る濃度で含む、
v)8.5~9.5の範囲内に入るpHを有する。
【0055】
選択された結合条件下で無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合するDNA分子の平均の長さはカットオフ値を上回るが、固相に結合しないDNA分子の平均の長さはカットオフ値を下回る。本明細書で使用される、「カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は固相に結合する」という表現および同様の表現は、カットオフ値またはそれを上回るサイズを有するDNA分子が固相に結合することを具体的に明示する。すなわち、カットオフ値が100ntであると記載されている場合、これは、100ntまたはそれより大きなサイズを有するDNA分子が固相に結合することを意味する。したがって、カットオフ値により、それぞれの結合条件下で固相に実質的に結合しない、より小さなDNA分子のサイズが具体的に規定される。一実施形態によると、カットオフ値は、電気泳動図によって可視化することができる最も短いDNA断片の長さを指す。一実施形態によると、カットオフ値は、電気泳動図の曲線がx軸と交わる点に対応する。それにもかかわらず、この点、それぞれこのカットオフ値で、通常は、DNAの定量的回収はないが、捕捉されるDNA分子の百分率は、DNA分子のサイズが増大するにしたがって上昇することが指摘される。
【0056】
DNA含有試料は、異なるサイズ(長さ)のDNA分子を含む。DNA含有試料は、一本鎖および/または二本鎖DNAを含み得る。本発明による方法により、一本鎖DNAのサイズ選択および二本鎖DNAのサイズ選択が可能になる。DNA分子は、直鎖状の二本鎖DNA分子であることが好ましい。DNA含有試料は、これだけに限定されないが、生体試料および核酸処理中に得られた人工試料を含めた、種々の起源のものであってよい。一実施形態によると、DNA含有試料は、溶解物ではない。一実施形態によると、DNA含有試料は、抽出されたDNA、または、例えばせん断によってもしくは酵素反応によってさらに処理された抽出されたDNAの試料である。一実施形態によると、酵素反応後にDNA含有試料を得る。本発明のサイズ選択的DNA単離方法を使用して処理することができるDNA含有試料をもたらす例示的な酵素反応としては、これだけに限定されないが、増幅反応、リガーゼ反応、特にアダプターライゲーション反応、および、ポリヌクレオチド、例えばポリA、尾部付加反応が挙げられる。一実施形態によると、DNA含有試料は、例えば、せん断されたDNAなどの断片化されたDNAを含む。一実施形態によると、DNA含有試料は、せん断されたゲノムDNAまたはせん断されたcDNAを含む。一実施形態によると、DNA含有試料は、サイズせん断手順によって生じる溶液である。そのようなDNA含有試料は、異なるサイズのDNA断片を含む。前記断片化されたDNAを末端修復して平滑末端を有するDNA断片をもたらすこともできる。したがって、一実施形態によると、DNA含有試料は、直鎖状、平滑末端の、異なるサイズのDNA断片を含む。好ましい実施形態によると、DNA含有試料をシークエンシングライブラリーの調製の間に、特に次世代シークエンシングライブラリーの調製の間に得た。一実施形態によると、DNA含有試料は、例えば、シークエンシングライブラリーの調製の間に、アダプターライゲーションステップの結果として得られたアダプターライゲーション試料である。好ましい実施形態によると、DNA含有試料は、(i)5’および/または3’にアダプターが隣接する二本鎖DNA分子、(ii)アダプター単量体および(iii)例えばアダプター二量体などのアダプターとアダプターとのライゲーション産物を含むアダプターライゲーション試料である。さらに、DNA含有試料は、例えば、例えば以前の酵素的シークエンシングライブラリー処理ステップからDNA含有試料中になお存在する酵素などの、モノ、オリゴ-および/またはポリヌクレオチドおよびタンパク質などの追加的な夾雑物である構成成分を含み得る。本発明による方法により、とりわけ、5’および/または3’にアダプターが隣接する、好ましくは、それらの5’末端および3’末端にアダプターが隣接する二本鎖DNA分子をサイズ選択的に精製し、それにより、それぞれの夾雑物を効率的に除去することが可能になる。一実施形態によると、DNA含有試料は、増幅産物、例えば、PCR産物を含む。したがって、一実施形態によると、DNA含有試料は、増幅手順の結果として生じた試料、特にPCR増幅の結果として生じた試料である。
【0057】
一実施形態によると、DNA含有試料は、以下の特性の1つまたは複数を有する:
i)DNA含有試料は、抽出されたDNA、または、例えばせん断によってもしくは酵素反応によってさらに処理された抽出されたDNAの試料である、
ii)DNA含有試料は、酵素反応、好ましくは増幅反応またはリガーゼ反応、特にアダプターライゲーション反応後に得られたものである、
iii)DNA含有試料は、断片化されたDNA、例えば、せん断されたDNAを含む、
iv)DNA含有試料は、直鎖状、平滑末端の、異なるサイズのDNA断片を含む、
v)DNA含有試料は、増幅産物、好ましくは、PCR産物を含む、
vi)DNA含有試料は、アダプターライゲーションステップの結果として得られたアダプターライゲーション試料である、ならびに/または
vii)DNA含有試料は、(i)5’および/または3’にアダプターが隣接する二本鎖DNA分子、(ii)アダプター単量体および(iii)例えばアダプター二量体などのアダプターとアダプターとのライゲーション産物を含むアダプターライゲーション試料である。
【0058】
結合条件、特に結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度は、例えば、例えばアダプター、アダプターとアダプターとのライゲーション産物およびプライマーなどの望ましくない小さなDNA分子を除去することが可能になる所望のカットオフ値が得られるように選択する。本発明による方法では、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は効率的に固相に結合し、したがって、サイズ選択の間に回収または除去することができる。選択される的確なカットオフ値は、例えば、標的DNA分子の意図された使用に左右され、また、サイズ選択の間に、例えば、結合すること、したがって、サイズ選択の間に回収されることが想定されていない夾雑物である小さなDNA分子のサイズにも左右される。本発明を用いて実現される小さなDNA分子の除去は、必ずしも完全なものである必要はない。いくつかの適用に関しては、望ましくない小さなDNA分子が、意図された下流の反応を有意に乱すまたは妨害することがない程度に枯渇すれば十分である。しかし、記載されている通り、多くの場合、より小さなDNAの100%が除去される必要はない。記載されている通り、この方法は、特定の上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定されるサイズ範囲内の長さを有するDNA断片を、少なくとも2つのサイズ選択的結合ステップを実施することによってサイズ選択的に単離するために実施することもできる。
【0059】
本明細書においてヌクレオチド「nt」を参照して示されるサイズ、それぞれカットオフ値は、DNA分子の鎖長を指し、したがって、一本鎖分子および二本鎖DNA分子の長さを記載するため、それぞれ一本鎖分子ならびに二本鎖DNA分子についてのカットオフ値を記載するために使用される。二本鎖DNA分子では、前記ヌクレオチドが対合している。したがって、DNAが、好ましいものである、二本鎖分子である場合、上記の「nt」でのサイズまたは長さに関する指標は、「bp」を指す。したがって、二本鎖DNA分子が、それぞれ100ntのサイズの鎖長を有する場合、前記二本鎖DNA分子は、100bpのサイズを有する。同じことが二本鎖DNA分子についてのカットオフ値の定義に当てはまる。
【0060】
125nt~200nt、好ましくは、135nt~200nt、例えば150nt~190ntなどの範囲内に入る(より低い)カットオフ値は、例えば、シークエンシングライブラリーの調製の間のサイズ選択に特に適切である。本発明では、サイズ選択的DNA単離ステップは、アダプターがライゲートしたDNA分子をライゲートされていないアダプター単量体およびアダプター二量体などのアダプターとアダプターとのライゲーション産物から分離するために特に実施される。次世代シークエンシングのためのシークエンシングライブラリーを調製するために一般に使用されるアダプターのサイズは、多くの場合、25nt~75nt、特に30nt~60ntの範囲内に入る。ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物(例えば、特にアダプター二量体)の除去に関しては、カットオフ値は、一実施形態によると、アダプター単量体(単数または複数)のサイズを上回り、予測されるアダプターとアダプターとのライゲーション産物(単数または複数)のサイズを上回るように選択される。アダプター単量体(単数または複数)およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物(単数または複数)の効率的な除去を確実にするために、カットオフ値は、予測されたアダプターとアダプターとのライゲーション産物(単数または複数)のサイズよりも少なくとも10nt、好ましくは、少なくとも15nt、少なくとも20nt、少なくとも25ntまたは少なくとも30nt大きいことが好ましい。一実施形態によると、125nt~200ntの範囲および上記の好ましい部分範囲内のカットオフ値は、上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって規定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離する方法における、下限カットオフ値を表す。この実施形態によると、上限カットオフ値は、250nt~1000nt、275nt~750ntおよび300nt~500ntの範囲内に入り得る。有利に、上限カットオフ値および下限カットオフ値は、結合用混合物におけるサイズ選択的結合条件を確立するために、適量の結合用緩衝液を添加することによって容易に調整することができる。
【0061】
結合ステップ(ステップ(a)および任意選択のさらなる結合ステップ(単数または複数))において、所望のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子は、DNA結合のためのケイ質表面をもたらすことが好ましい無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合する。一実施形態によると、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子の少なくとも75%、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%またはより好ましくは少なくとも97%が、ステップ(a)(および実施する場合にはステップ(c))において結合する。一実施形態によると、ステップ(a)(および、実施する場合にはさらなる結合ステップ(単数または複数))において固相に結合する、カットオフ値を下回るサイズを有するDNA分子は、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、7%以下または5%以下である。
【0062】
固相は、カットオフ値を上回るサイズを有する沈殿した標的DNA分子が選択された結合条件下で結合する無修飾ケイ素含有表面を含む。結合は、特に吸着によって実現される。固相は、シリカ表面などのケイ質表面をもたらすことが好ましい。「シリカ表面」という用語は、本明細書で使用される場合、二酸化ケイ素および/または他の酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、シリカゲル、ゼオライト(zeolithe)、ベントナイト、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウムおよびホウケイ酸塩を含む、またはそれからなる表面を含む。固相は、無修飾ケイ素含有表面を有する。したがって、表面は、核酸結合性リガンドまたは他の核酸結合性基で修飾されていない。例えば、固相は、その結合表面にイオン交換基含むリガンドを有さない、特に、固相の表面は、機能性リガンドで修飾されたものではない。特に、固相の表面は、好収率を確実にするために、先行技術の方法において共通するような、例えばアミン基またはカルボキシル基などの陰イオン交換基または陽イオン交換基を含むリガンドで修飾されたものではない。一実施形態によると、シリカ表面は、シラノール基または酸化物などの他の酸化形態のケイ素の他に、いかなる官能基も含まない。本発明と併せて使用することができる例示的な固相としては、これだけに限定されないが、シリカ粒子、シリカ繊維、例えばガラス粉末、ガラス繊維、ガラス粒子または制御細孔ガラス(controlled pore glass)などのガラス材料、二酸化ケイ素、粉末、ビーズまたはフリットなどの粒子の形態のガラスまたはシリカを含めた、無修飾シリカ表面を含む固相が挙げられるが、これだけに限定されない。固相という用語は、その形態または設計に関していかなる限定も意味するものではない。したがって、固相という用語は、多孔質または非多孔質であり、浸透性または不浸透性である、無修飾ケイ素含有表面、特に無修飾シリカ表面を有する適切な材料を包含する。適切な固相としては、これだけに限定されないが、膜、フィルター、シート、粒子、磁気粒子、ビーズ、ゲル、粉末、繊維などが挙げられる。シリカゲルなどのシリカ、およびポリケイ酸材料、ホウケイ酸塩、ケイ酸塩および無機ガラスを固相として使用することが特に好ましい。無修飾シリカ表面を含む固相は、例えば、フィルター、繊維、膜または粒子の形態を有してよい。本発明によると、カラムに基づく固相の使用、または、粒子、特に磁気粒子の使用が好ましい。
【0063】
一実施形態によると、ビーズの形態を有し得る無修飾シリカ表面を有するシリカ粒子を使用する。前記粒子は、約0.02~30μm、0.1~15μm、0.2~12.5μm、0.5~10μmおよび0.75~7μmのサイズを有することが好ましい。核酸結合性固相の処理を容易にするために、磁気シリカ粒子を使用することが好ましい。磁気粒子は磁場に応答する。磁気シリカ粒子は、例えば、フェリ磁性、強磁性、常磁性または超常磁性であってよい。適切な磁気シリカ粒子は、例えば、WO01/71732、WO2004/003231およびWO2003/004150に記載されている。他の磁気シリカ粒子も先行技術から公知であり、例えば、WO98/31840、WO98/31461、EP1 260 595、WO96/41811およびEP0 343 934に記載されており、また、それらとして、例えば、磁気シリカガラス粒子も挙げられる。DNAが結合した磁気粒子は、磁場の助けを借りて、例えば恒久的な磁石を使用することによって容易に処理することができるので、磁気粒子の使用には利点がある。この実施形態は、例えば、磁気粒子を処理することができる確立されたロボット系に適合する。現在、先行技術において、標的DNA分子が結合した磁気シリカ粒子を処理するために本発明と併せて使用することができる種々のロボット系が存在する。一実施形態によると、磁気粒子を反応槽の底部または側面に収集し、残りの液体試料を反応槽から除去し、収集された、DNA分子が結合した磁気粒子を残す。残りの試料の除去は、デカンテーションまたは吸引によって行うことができる。そのような系は先行技術において周知であり、したがって、本明細書で詳細に説明する必要はない。磁気粒子を処理するための公知の代替的システムでは、通常は、カバーまたはエンベロープによって覆われた磁石を反応槽に入れて磁気粒子を収集する。それぞれの系は先行技術において周知であり、また、市販もされている(例えば、QIASYMPHONY(登録商標)、QIAGEN)ので、本明細書においてはいかなる詳細な説明も必要ない。磁気粒子を処理するための公知のさらなる代替的システムでは、磁気シリカ粒子を含む試料をピペットチップ中に吸引することができ、磁石を、例えば、ピペットチップの側面に適用することにより、磁気粒子をピペットチップ中で収集することができる。次いで、残りの試料をピペットチップから放出させる一方で、収集された、標的DNA分子が結合した磁石シリカ粒子は、磁石により、ピペットチップ中に残すことができる。次いで、収集された磁気粒子をさらに処理することができる。そのような系も先行技術において周知であり、また、市販もされており(例えば、BioRobot EZ1、QIAGEN)、したがって、本明細書においてはいかなる詳細な説明も必要ない。
【0064】
一実施形態によると、固相は、カラム内に含まれる。「カラム」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの開口部を有する容器を特に記載する。それにより、溶液および/または試料が前記カラムを通過することができる。「カラム」という用語は、容器の形状に関してはいかなる制限も特に意味するものではなく、例えば、丸状または角状、好ましくは、円柱状であってよい。しかし、特にマルチカラムを使用する場合には、他の形状も使用することができる。カラムは、DNA結合のために使用される無修飾ケイ素含有表面を有する固相を含む。カラム内に含まれる前記固相により、溶液、それぞれ結合用混合物がカラムに適用された際の通過が可能になるべきである。これは、例えば遠心分離力をカラムに適用した場合に、溶液および/または結合用混合物が、遠心分離力の方向にカラムを通過することが可能になることを意味する。上記の通り、それぞれのカラムに基づくDNA単離手順を使用すると、結合用混合物は通常、例えば遠心分離または減圧により補助されてカラムを通過し、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が前記通過の間に、含まれる固相に結合する。カラムは単一形式でもマルチ形式でも使用することができる。マルチウェルプレートと同様の形式を有し、シリカ膜またはガラス繊維などの固相を含むそのようなマルチカラムは先行技術において周知であり、また、市販もされている。カラムはスピンカラムであることが好ましい。ケイ素含有表面をもたらすDNA結合性膜またはDNA結合性繊維を固相として使用することが好ましい。例としては、これだけに限定されないが、DNA結合のためのケイ素含有表面をもたらすシリカ膜、ガラス繊維膜またはフィルターが挙げられる。膜は多孔質であることが好ましい。カラムに基づく手順に関しては、カラム内の、シリカを含む、またはそれからなる固相として、膜または繊維を使用することが好ましい。実施例において示される通り、それぞれのカラム材料は、カットオフ値を狭い範囲内に正確に調整するためにも適している。適切かつ好ましい、DNA結合に適したシリカ表面をもたらすシリカに基づく材料も上に記載されている。カラム内に含まれるさらなる一般的な固相は、シリカ粒子のフィル、またはシリカ材料の層(例えば、シリカゲル)である。例えば、シリカ粒子を不活性なフィルターまたは膜上に層として配置し、それにより、DNA固相を形成することができる。結合用混合物のカラム内に含まれる固相の通過を緩和するために、例えば、遠心分離、または、例えば、試料をカラム、それぞれ固相を通して圧縮するもしくは減圧を適用することによって固相を通して吸引する、圧力差を生じさせる器具の使用などの適切な手段を使用することができる。それぞれの手段は先行技術において周知であり、したがって、本明細書においてさらに説明する必要はない。
【0065】
DNA含有試料と結合用緩衝液を接触させて結合用混合物をもたらすことと、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を固相に結合させることは、同時に行うこともでき、逐次的に行うこともできる。一実施形態によると、DNA含有試料を結合用緩衝液と接触させ、次いで、得られた結合用混合物を固相と接触させる。この実施形態は、例えば、カラムに基づく単離プロトコールを使用する場合に可能である。例えば磁気シリカ粒子などの粒子固相を使用する場合にも同様の手法を使用することができる。粒子固相を使用する場合、固相、結合用緩衝液およびDNA含有試料は、任意の順序で添加することができる。例えば、まず固相および結合用緩衝液をもたらし、次いで、試料を添加すること、またはまず試料、固相をもたらし、次いで、結合用緩衝液を添加することは本発明の範囲内に入る。結合用緩衝液と試料を混合して結合用混合物をもたらすことが好ましい。
【0066】
ステップ(a)の最後に、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を、無修飾シリカ表面を有する固相に結合させる。
【0067】
ステップ(b)において、固相に結合したDNA分子を残りの試料から分離する。それにより、カットオフ値を上回るサイズを有する結合したより大きなDNA分子を、試料中に存在する結合していないDNA分子から分離する。適切な分離方法は先行技術において周知であり、適切な分離技法はまた、使用される固相にも左右される。例えば、カラムに基づく手法を使用する場合、分離は、通常、結合用混合物がカラムを通過したときに実現される。カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子はカラム内に含まれる固相に結合し、一方、残りの試料はカラムを通過し、それにより、結合したDNA分子から分離される。上記の通り、このプロセスは、例えば、遠心分離によって、または減圧を適用することによって補助することができる。例えばシリカ粒子などの粒子固相を使用する場合、遠心分離または磁気粒子を使用する場合には磁気分離により補助することができる沈降によって粒子を収集することができ、そして、上清を分離する(例えば、デカンテーションするもしくは吸引する、または粒子を液体から取り出す)。適切な実施形態は異なる形式の固相およびそれらの処理と併せて上に記載しており、また、当業者に周知である。
【0068】
分離されたDNA分子は、結合したDNAが目的のものではなく、ただ単に取り出すべき場合には廃棄することもでき、結合したDNAが標的DNAである場合には、さらに処理することもできる。種々の使用および選択肢はすでに上に記載しており、以下にもさらに詳細に記載する。
【0069】
結合したDNAは、任意選択で、洗浄することができる。本発明では、1つまたは複数の洗浄ステップを実施することができる。このステップは任意選択であるが、例えば、結合したDNAが標的DNAである場合には、以前の反応からのヌクレオチドおよび酵素などの、結合していない構成成分および不純物を効率的に除去するために、実施することが好ましい。これは、シークエンシングライブラリーの調製の間にDNA含有試料を得る場合に特に適切である。さらに、洗浄ステップは、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、二価カチオンおよび任意選択で、結合の間に使用する場合、塩の痕跡を除去するためにも適切である。したがって、一実施形態によると、結合したDNA分子をさらに精製するために、1つまたは複数の洗浄ステップを実施する。この目的のために、一般的な適切な洗浄用溶液を使用することができる。適切な洗浄用溶液により不純物は除去されるが、固相に結合した標的DNAは除去されない。一実施形態によると、洗浄に使用する溶液は、少なくとも1種のアルコールを含む。アルコールとして、炭素原子を1~5個有することが好ましい短鎖の分岐または非分岐アルコールを洗浄に使用することができ、それぞれ洗浄用溶液の状態で使用することができる。アルコールの混合物も使用することができる。適切なアルコールとしては、これだけに限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールが挙げられる。イソプロパノールおよび/またはエタノールを洗浄用溶液中に使用することが好ましい。上記の洗浄用溶液の代わりにまたはそれに加えて使用することができるさらなる適切な洗浄用溶液は、アルコールおよび緩衝剤を含む。生物学的緩衝液などの適切なアルコールおよび緩衝剤は、上記されている。この第2の洗浄ステップにはイソプロパノールまたはエタノールを使用することが好ましく、エタノールを使用することが最も好ましい。エタノールは、少なくとも60%(v/v)、少なくとも70%(v/v)、好ましくは少なくとも80%(v/v)の濃度で使用することが好ましい。緩衝剤は、好ましくは、例えばpHがおよそ7~8のTrisであり得る。上記の洗浄用溶液の代わりに、または場合によってそれに加えて使用することができる別の適切な洗浄用溶液は、アルコールを含むが、塩は含まない。これにより、塩を取り除くことが可能になる。洗浄にはイソプロパノールまたはエタノールを使用することが好ましく、エタノールを使用することが最も好ましい。アルコールは、少なくとも50%v/v、少なくとも60%v/v、好ましくは、少なくとも70%v/vの濃度で含まれることが好ましい。この濃度は、50%v/v~100%v/v、より好ましくは70%v/v~100%v/vの範囲内に入ることが好ましい。
【0070】
アルコールを含有する洗浄用溶液を使用する場合には、洗浄ステップの後に存在する可能性がある残留アルコールを、例えば、風乾によって(例えば、粒子固相を用いて作業する場合に適切である)、または、カラムに基づく固相を使用する場合には追加的な遠心分離ステップによって、除去することができる。それぞれの方法および手順は先行技術において周知であり、したがって、本発明においてはいかなるさらなる説明も必要ない。
【0071】
さらに、サイズ選択された標的DNAを溶出させるために、1つまたは複数の溶出ステップを実施する。しかし、結合したDNA分子は、意図された下流の適用、それぞれサイズ選択されたDNAの意図された使用に応じて、固相に結合したままで処理することもできる。例えば、磁気粒子などの粒子固相を、結合したDNAを事前に別々に溶出させずに、増幅反応に直接供することができる。
【0072】
しかし、DNAを溶出させることが好ましい。本発明では、基本的に全ての、結合したDNAの固相からの脱離をもたらす溶出用溶液を使用することができる。DNAをシリカ表面から有効に溶出させることが公知の古典的な溶出用溶液としては、これだけに限定されないが、水(例えば、脱イオン水)、TE緩衝液などの溶出用緩衝液、および、塩含有量が150mMまたはそれ未満、好ましくは、100mMまたはそれ未満、より好ましくは75mMまたはそれ未満、50mMまたはそれ未満、25mMまたはそれ未満、20mMまたはそれ未満、15mMまたはそれ未満、10mMまたはそれ未満である、または塩を含まない、低塩類溶液が挙げられる。溶出用溶液は、例えば、緩衝剤を含んでよく、特に、Tris、MOPS、HEPES、MES、BIS-TRIS、プロパンおよびその他などの生物学的緩衝液を含んでよい。緩衝剤は、150mMまたはそれ未満、好ましくは、100mMまたはそれ未満、より好ましくは75mMまたはそれ未満、50mMまたはそれ未満、25mMまたはそれ未満、20mMまたはそれ未満、15mMまたはそれ未満または10mMまたはそれ未満の濃度で存在してよい。一実施形態によると、溶出用緩衝液は、pH6.5~pH10、pH7~pH9.5、pH7.5~9.0、pH7.75~pH8.75およびpH8~pH8.6から選択されるpH値を有する。溶出は、例えば、加熱および/または振とうによって補助することができ、これは粒子固相を使用する場合に特に可能である。カラムに基づく固相を使用する場合、通常は溶出用緩衝液をカラムに適用し、固相を通過させ、これもまた、例えば、遠心分離によって、または圧力もしくは減圧を適用することによって補助することができる。
【0073】
意図された下流の適用に干渉しない溶出用溶液を使用することが好ましい。したがって、一実施形態によると、溶出用緩衝液は、EDTAなどの複合剤を含まない。EDTAは、特に高濃度で、下流の反応を阻害する可能性がある。
【0074】
さらに、結合したDNAが固相から効率的に放出されることを確実にするために、溶出ステップを繰り返すことも本発明の範囲内である。
【0075】
本発明による、DNAをサイズによって単離するための方法は、単離されるDNA分子のサイズに関して的確かつ再現性があり、結合用混合物中に使用されるアルカリ性pH値および二価カチオンに起因して、無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用するにもかかわらず高いDNA回収率をもたらす。したがって、先行技術の方法とは対照的に、費用のかかる表面修飾固相は必要ない。本発明による方法は、バッチ手順に適している。これにより、例えば、本発明の方法が、例えば、力価測定可能な陰イオン交換組成を使用する、核酸のサイズによる分離のために使用される先行技術のクロマトグラフィー法と区別される。本発明の方法は、特に、高度に特異的であり費用のかかる器具を必要とせず、結合用緩衝液および/または溶出用緩衝液の勾配の生成および使用、ならびに多数の溶出画分の収集およびスクリーニングを必要としない。したがって、一実施形態によると、本発明による方法においてpH勾配は使用しない。この方法は、自動化に有利に適する。本発明では、固相をもたらすために磁気粒子を使用することが都合よい。
【0076】
本発明による方法の非限定的な好ましい実施形態および適用を以下にさらに記載する。上記の通り、本発明によるサイズ選択的DNA単離方法は、特定のカットオフ値を上回る所望のサイズを有する、および/または、特定のサイズ範囲内に入るサイズ(上限カットオフ値および下限カットオフ値によって決定される)を有するDNA分子を、長さが異なるDNA分子の混合集団から富化させるために特に適している。方法は、特定のカットオフ値を下回るサイズを有する非標的DNA分子を結合させることによって除去し、したがって、カットオフ値を上回る所望の最小のサイズを有する標的DNA分子をDNA含有試料から単離するために特に適している。さらに、特定のカットオフを上回る非標的分子を除去し、したがって、例えば、DNAライブラリーの不均一性を改善すること、およびPCR反復などの望ましくないアーチファクトを除去することが可能である。
【0077】
一実施形態によると、方法は、
(a)DNA含有試料、7.5%~15%、好ましくは、8%~13%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および7mM~40mM、好ましくは8mM~30mM、より好ましくは、8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl2を含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合したDNA分子を固相から溶出させるステップ
の通り実施される。
【0078】
好ましい実施形態によると、方法を、DNA含有試料から上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離するために使用し、前記方法は、
(a)DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記第1の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、標的DNA分子を含む残りの試料から分離するステップ、
(c)残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、第2の結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度が第1の結合用混合物と比較して上昇しており、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、下限カットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)結合した標的DNA分子を残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を固相から溶出させるステップ
を含む。
【0079】
これにより、規定のサイズ範囲内の標的DNA分子を単離することが有利に可能になる。第1の結合ステップおよび第2の結合ステップのためのポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの適切な濃度は上に記載されている。本明細書で議論した通り、第1の結合用混合物および第2の結合用混合物における結合条件を、上記の結合用緩衝液を使用して調整することが好ましい。一実施形態によると、第1の結合用混合物の調製と第2の結合用混合物の調製に同じ結合用緩衝液を使用する。結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度は、例えば、変動してよく、異なる体積の結合用緩衝液を添加することによって調整することができる。
【0080】
一実施形態によると、方法は、
(a)DNA含有試料、8.5%~9.5%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および、7mM~40mM、好ましくは8mM~30mM、より好ましくは、8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl2を含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、
使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、標的DNA分子を含む残りの試料から分離するステップ、
(c)残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、第2の結合用混合物中のポリエチレングリコールの濃度が第1の結合用混合物と比較して上昇しており、10%~12%の範囲内に入り、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)結合した標的DNA分子を残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合した標的DNA分子を固相から溶出させるステップ
の通り実施される。
【0081】
上記の通り、本発明による方法は、次世代シークエンシングの状況でのサイズ選択に特に適している。次世代シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーの調製は、通常、多段階プロセスであり、前記プロセスの種々の段階で、もたらされたDNA分子のサイズ選択を実施することができる。前記プロセスのいずれの段階でサイズ選択を実施するかは、使用されるライブラリー調製方法にも左右される。適切な実施形態を以下に記載する。本発明によるサイズ選択方法は、次世代シークエンシング適用のためのライブラリー構築プロトコールにおいてほんの小さなサイズの差異を有するDNA断片の分離、例えば、本明細書に記載の通り、望ましくないアダプター二量体(およそ120bp)の所望のDNA断片(150bpおよびそれより大きい)からの除去を可能にするので、シークエンシングライブラリーの調製の状況での使用に特に適している。
【0082】
大規模並列シークエンシングに適した、したがって、次世代シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーは、先行技術において公知の方法を使用して調製することができる。それぞれのシークエンシングライブラリーの調製は、多くの場合、核酸を含有する試料から複数の二本鎖の直鎖DNA断片を生成することを伴う。例えば、その後のシークエンシングに適したDNA断片をもたらすために、ゲノムDNAまたはcDNAのようなDNAを、例えば、超音波処理、水せん断、超音波、噴霧または酵素による断片化などの、せん断によって断片化することができる。断片の長さは、その後のシークエンシングに使用される次世代シークエンシングプラットフォームのシークエンシング能力に基づいて選択することができる。通常、得られる断片の長さは、1500bpまたはそれ未満、1000bpまたはそれ未満、750bpまたはそれ未満、600bpまたはそれ未満、好ましくは、500bpまたはそれ未満であり、これは、最新の次世代シークエンシングプラットフォームのシークエンシング能力に対応する。得られる断片の長さは、主に50bp~1000bp、より好ましくは75bp~900bp、100bp~850bp、110bp~800bp、115bp~750bp、120bp~700bp、125bp~650bp、130bp~600bp、135bp~550bp、140bp~500bpおよび145bp~450bpの範囲内に入ることが好ましい。それぞれの断片サイズは、エクソンのサイズがおよそ150bp~200bpの長さであり、それぞれの短い断片を一般的な次世代シークエンシングプラットフォームを使用して効率的にシークエンシングすることができることを考えると、ゲノムDNAに特に適している。しかし、例えば、より長い配列の読み取りが可能になる次世代シークエンシング方法を使用する場合、より長い断片も有用であり得る。
【0083】
一実施形態によると、断片化されたDNAを、先行技術において公知の方法を使用して断片化後に修復し、末端処理し、それにより、平滑末端を有するDNA断片をもたらす。先行技術において周知であるそのような方法では、断片化プロセスによって生じた突出部を平滑末端に変換する。それぞれの方法は先行技術において周知であるので、本明細書においてはいかなる詳細な説明も必要ない。
【0084】
一実施形態によると、本発明によるサイズ選択的DNA単離方法は、DNA断片を得た後、好ましくは、断片化されたDNAを末端処理して平滑末端を有するDNA断片をもたらした後に実施する。この段階におけるサイズ選択的DNA単離により、例えば、その後のシークエンシングに適さない、非常に短いDNA断片を排除することが可能になる。上記の通り、DNA結合についてのカットオフ値は、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を適切に選択することによって調整することができる。本方法により、規定のサイズ範囲内のサイズを実質的に有するDNA断片を単離することが可能になる。
【0085】
一実施形態によると、末端修復、および任意選択でサイズ選択の後、平滑末端断片の3’末端に突出部を付加する。一塩基突出部を添加することが好ましい。例えば、単一の「A」ヌクレオチドを、先行技術において周知の方法を使用して付加することができる。これは、「A尾部付加」とも称される。それぞれのヌクレオチド突出部により、その後のアダプターライゲーション反応の間に断片が互いとライゲートすることが防止される。例えば、対応する単一の「T」または他の相補的な突出部をアダプターの3’末端にもたらして、アダプターとDNA断片をライゲートするための相補的な突出部をもたらすことができる。これにより、低率のキメラ(連鎖状鋳型)形成が確実になる。しかし、シークエンシングアダプターの適切なライゲーションを確実にするための他の戦略も先行技術において公知である。例えば、平滑末端アダプターをライゲートすることもできる。
【0086】
好ましい実施形態によると、アダプターを、得られたDNA断片の5’末端および/または3’末端、好ましくは、DNA断片の両末端にライゲートする。アダプターの特定の設計は、使用される次世代シークエンシングプラットフォームに左右され、本発明の目的に関して、次世代シークエンシングのためのシークエンシングライブラリーを調製するために使用される基本的に全てのアダプターを使用することができる。アダプター配列により、例えば、その後のライブラリー増幅および/またはシークエンシングプライマーアニーリングを可能にする公知の配列組成がもたらされる。アダプターとして、公知の配列の二本鎖または部分的に二本鎖である核酸を使用することができる。アダプターは、平滑末端を有してよく、3’または5’突出部を有する付着末端を、Y形状のアダプターによって、またはステムループ形状のアダプターによってもたらすことができる。Y形状のアダプターは、例えば、US7,741,463に記載されており、ステムループ形状のアダプターは、例えば、US2009/0298075に記載されており、これらは、アダプターの特定の設計に関して参照により本明細書に組み込まれる。アダプターは、少なくとも7塩基、好ましくは少なくとも10塩基、好ましくは少なくとも15塩基の長さを有することが好ましい。アダプターの長さは、10~100塩基、好ましくは、15~75塩基、より好ましくは20~60塩基の範囲内に入ることが好ましい。DNA断片の3’末端および5’末端に同じアダプターまたは異なるアダプターを使用することができる。両末端に、例えばY形状またはステムループ形状のアダプターなどの同じ型のアダプターを使用することには、アダプター誤対合に起因してライブラリー調製の間に失われる断片がないという利点があり、これは、少量のDNAを用いて作業する際に利点になる。
【0087】
したがって、一実施形態によると、3’末端および5’末端においてアダプター配列とライゲートされるランダムに断片化された二本鎖DNA分子を含むシークエンシングライブラリーを調製する。アダプターにより、公知の配列がもたらされ、したがって、増幅のための公知の鋳型および/またはシークエンシングプライマーがもたらされる。任意選択で、アダプターにより、個々の指標がもたらされ得、それにより、その後の、2つまたはそれ超の標的が富化されたシークエンシングライブラリーをシークエンシングの前にプールすることが可能になる。この実施形態を以下でさらに詳細に記載する。
【0088】
効率的なアダプターライゲーションを確実にするために、アダプターライゲーションステップの間、通常はアダプターを過剰に使用する。したがって、アダプターライゲーション後、アダプターが隣接するDNA分子、加えて、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプター二量体などのアダプターとアダプターとのライゲーション産物を含むDNA含有試料がもたらされる。ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物は、通常、アダプターライゲーションプロセス後に得られる試料中に大量に含まれる。これらのライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物は、除去しなければその後のシークエンシング反応のシークエンシング力を低下させるので、除去することが重要である。ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物ならびに酵素および他の夾雑物をアダプターライゲーション試料から除去するために、本発明による方法を使用したサイズ選択的DNA単離を実施することが好ましい。DNAについてのカットオフ値は、ライゲートされていないアダプター単量体のサイズを上回り、予測されるアダプターとアダプターとのライゲーション産物のサイズを上回るように選択する。これにより、ライゲートされていないアダプター単量体および望ましくないアダプターとアダプターとのライゲーション産物が前記サイズ選択的DNA単離ステップの間に捕捉されず、したがって、カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を主に含む、単離された標的DNAから枯渇することが確実になる。本発明による方法は、実施例により実証される通り、結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度を変動させることによってカットオフ値を狭い範囲内に正確に調整することができるので、この目的のために特に有利である。
【0089】
したがって、一実施形態によると、アダプターがライゲートしたDNA分子を標的DNA分子としてアダプターライゲーション試料であるDNA含有試料から単離し、アダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物を除去するために本発明の方法を使用し、ここで、アダプターがライゲートしたDNA分子は、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物から、アダプターがライゲートしたDNA分子のサイズがより大きいことに基づいて分離される。前記方法は、
(a)アダプターライゲーション試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8~10、好ましくは、8.5~9.5の範囲内に入るpHを有し、沈殿したアダプターがライゲートしたDNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、アダプターがライゲートしたDNA分子が結合した固相が生じ、使用された結合条件下で、アダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物は固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を固相から溶出させるステップ
を含み得る。
【0090】
カットオフ値は、アダプター単量体のサイズを上回り、予測されるアダプターとアダプターとのライゲーション産物のサイズを上回る。一実施形態によると、カットオフ値は、予測されるアダプターとアダプターとのライゲーション産物(単数または複数)のサイズを少なくとも10nt、少なくとも15nt、少なくとも20nt、少なくとも25ntまたは少なくとも30nt上回る。さらに、上記の通り、アダプターライゲーション試料をDNA含有試料として使用して2重サイズ選択を実施することができる。
【0091】
一実施形態によると、標的DNA断片を、アダプターライゲーション(好ましくは、上記のサイズ選択)の後に、増幅、好ましくはPCR増幅によって富化する。そのような富化ステップは任意選択であるが、一部の適用には好ましい。例えば、PCR増幅などの増幅反応を使用して、両末端にアダプター分子を有するDNA断片を選択的に富化すること、およびライブラリー中のDNAの量を増幅することができる。一実施形態によると、PCRは、アダプターとアニーリングする1つまたは複数のプライマーを用いて実施する。それぞれの増幅ステップは先行技術において周知であり、したがって、本明細書においてはいかなる詳細な説明も必要ない。一実施形態によると、本発明の方法によるサイズ選択的DNA単離を増幅後に実施する。カットオフ値を、増幅の間に存在している可能性があり、増幅された可能性がある、プライマー、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物がDNA結合の間に捕捉されないように、再度選択する。一実施形態によると、アダプターライゲーションステップ後にサイズ選択的DNA単離を実施した際に使用したものと同じカットオフ値を使用する。
【0092】
したがって、一実施形態によると、本発明による方法は、富化されたシークエンシングライブラリーをもたらすために、単離され、サイズ選択された、アダプターがライゲートした二本鎖DNA分子を増幅するステップを含み、増幅後、
(a)増幅された試料を、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液と接触させることであって、前記結合用緩衝液が、結合用混合物をもたらすために8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿した標的カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合すること、
(b)結合した標的DNAを残りの試料から分離すること、
- 任意選択で、結合した標的DNAを洗浄すること、ならびに
- 任意選択で、結合した標的DNAを固相から溶出させること
を含む、サイズ選択ステップを実施する。
【0093】
増幅による富化の後、好ましくはその後に本発明によるサイズ選択的DNA単離の後、シークエンシングライブラリーは、使える状態である。任意選択で、得られたアダプターがライゲートした断片、それぞれPCRにより富化された断片のサイズを確証するために、調製したシークエンシングライブラリーを検証、数量化することができ、ならびに/または品質管理を実施することができる。
【0094】
シークエンシングライブラリーを調製するための適切な一般的な方法は、Metzker、2011年、Voelkerding、2009年、およびWO12/003374にも記載されており、また、本発明によるサイズ選択的DNA単離方法と組み合わせることができる。
【0095】
一実施形態によると、本発明は、大規模並列シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーを調製するための方法であって、
A)DNAを断片化するステップであって、任意選択でDNA断片を末端修復して、異なるサイズの平滑末端DNA断片を含む試料をもたらすステップ、
B)任意選択で、特定のカットオフ値を上回る断片サイズを有する標的DNAを単離するステップを実施するステップであって、前記任意選択のサイズ選択ステップが、
(a)異なるサイズのDNA断片を含む試料を、8~10の範囲内に入るpHを有し、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液と接触することであって、対応する結合用混合物をもたらし、沈殿した標的カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合すること、
(b)結合した標的DNAを残りの試料から分離すること、
- 結合した標的DNAを洗浄すること、および
- 結合した標的DNAを固相から溶出させること、
を含む、ステップ
C)アダプターライゲーションステップを実施するステップであって、5’および/または3’にアダプターが隣接する二本鎖DNA分子を含む試料をもたらすステップ、
D)アダプターがライゲートした二本鎖DNA分子を、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物から、アダプターがライゲートした二本鎖DNA分子のサイズがより大きいことに基づいて単離するステップ、したがって、分離するステップであって、前記サイズ選択ステップが、
(a)アダプターライゲーション試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製することであって、前記結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、前記結合用混合物から沈殿したアダプターがライゲートしたDNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、アダプターがライゲートしたDNA分子が結合した固相が生じ、使用された結合条件下で、アダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物は固相に実質的に結合しないこと、
(b)結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を残りの試料から分離すること、
- 結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を洗浄すること、および
- 結合したアダプターがライゲートしたDNA分子を固相から溶出させること、
を含む、ステップ、
E)任意選択で、アダプターがライゲートしたDNA分子を増幅するステップ
を含む方法を提供する。
【0096】
この実施形態は、適切な最小長さを有するアダプターがライゲートしたDNA断片を含むシークエンシングライブラリーを提供する。上記の通り、DNA断片の3’末端および5’末端にアダプターがもたらされることが好ましい。さらに、ステップD)で実施するサイズ選択ステップにより、アダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物ならびに他の夾雑物がライゲーション反応から効率的に除去される。これにより、シークエンシングライブラリーの品質が改善される。ステップD)は、実質的に全てのアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物の効率的な除去を確実にするため、およびサイズ選択ストリンジェンシーを高めるために、繰り返すこと、したがって、2回またはそれ超実施することもできる。この方法は、速く、信頼でき、高品質のシークエンシングライブラリーをもたらす。さらに、前記方法は、既存のシークエンシングライブラリー調製方法に容易に組み込むことができる。記載の方法は、特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子をもたらすために上限カットオフ値および下限カットオフ値についてサイズ選択を行う実施形態(請求項2参照)を使用し、必要な変更を加えて実施することができる。
【0097】
通常、単回のNGS実行により、いくつかの標的富化シークエンシングライブラリーを一度にシークエンシングするのに十分な読み取りがもたらされる。したがって、プール戦略および指標付け手法が、試料当たりの費用を削減するための実用的なやり方である。それぞれの多重化戦略を本発明の教示と併せて使用することもできる。富化プロセスの異なる段階において多重化を可能にする特徴を組み入れることができる。一実施形態によると、シークエンシングライブラリーを、ライブラリーの標識付けおよび鑑別のための特異的な配列モチーフを含有するアダプター(「バーコード付けされた」または「指標」アダプター)を使用することによって生成する。各シークエンシングライブラリーには、個々の、そしてそれ故、ライブラリー特異的配列をもたらすライブラリー特異的アダプターが提供される。各アダプターは、指標領域に加えて、全てのライブラリーに対して使用することができるPCRプライマーおよび/またはシークエンシングプライマーの公知の鋳型をもたらす共通する普遍的領域を含むことが好ましい。標的富化シークエンシングライブラリーを得た後、それらをプールし、単回の実行でシークエンシングすることができる。したがって、それぞれの指標アダプターを有するシークエンシングライブラリーのDNA断片をもたらすことにより、シークエンシングされる断片を指標アダプターのライブラリー特異的配列に基づいて区別することができるので、その後にいくつかの標的富化シークエンシングライブラリーを同じシークエンシング実行でシークエンシングすることが可能になる。シークエンシング後、それで得られた配列において見いだされるライブラリー特異的指標により、個々のライブラリーに属する個々の配列を選別することができる。それぞれの指標手法は先行技術において公知であり、指標アダプターも市販されており、例えば、Illuminaプラットフォームでの使用に適したTruSeq(登録商標)DNA試料プレップキットで提供される。
【0098】
一実施形態によると、シークエンシングライブラリーは、二本鎖DNA分子を3μgまたはそれ未満、2μgまたはそれ未満、1.5μgまたはそれ未満、1μgまたはそれ未満、0.75μgまたはそれ未満または0.5μgまたはそれ未満の全体量で含む。一実施形態によると、シークエンシングライブラリーは、二本鎖DNA分子を少なくとも0.2μg、少なくとも0.5μgまたは少なくとも0.75μgの全体量で含む。本発明による方法は、サイズ選択的DNA単離を可能にするだけでなく、所望のサイズを有するDNA分子の効率的な捕捉も確実にするものである。多くの場合、DNA材料はシークエンシングライブラリーの調製の間にも失われる可能性があるのでシークエンシングライブラリーに含まれるDNAは少量であることから、これは重要な利点である。
【0099】
シークエンシングライブラリーを調製するための出発材料をもたらすために、先行技術において公知の方法に従って、DNAおよび/またはRNAなどの核酸を目的の試料から単離することができる。RNAは、通常、シークエンシングライブラリーを調製する前にまずcDNAに転写させる。
【0100】
上記の通り、シークエンシングは、次世代シークエンシングプラットフォームで実施することが好ましい。全てのNGSプラットフォームは、一般的な科学技術的特徴、すなわち、例えば、クローン増幅された、またはフローセル中でもしくは油-水エマルションの生成により空間的に分離された単一のDNAまたはcDNA分子の大規模並列シークエンシングを共有する。NGSでは、ポリメラーゼ媒介性ヌクレオチド伸長のサイクルを繰り返すことによって、または、1つの共通する形式で、オリゴヌクレオチドライゲーションの反復サイクルによって、シークエンシングを実施する。本発明による方法を使用してシークエンシングライブラリーを得た後、単一分子のクローン分離およびその後の増幅を、エマルションPCR(Roche 454のパイロシークエンシング、Ion Torrentの半導体シークエンシング、Life TechnologiesのSOLiDライゲーションによるシークエンシング、Intelligent Biosystemsの合成によるシークエンシング)、フローセル上でのブリッジ増幅(例えば、Solexa/Illumin(a)、Wildfire技術(Life Technologies)による等温増幅またはローリングサークル増幅によって生成されるロロニー/ナノボール(rolonies/nanoballs)(Complete Genomics、Intelligent Biosystems、Polonator)のようなin vitro鋳型調製反応によって実施する。Heliscope(Helicos)、SMRT技術(Pacific Biosciences)またはナノポアシークエンシング(Oxford Nanopore)のようなシークエンシング技術により、事前にクローン的増幅を行わずに単一分子を直接シークエンシングすることが可能になる。使用することができる適切なNGS法およびプラットフォームは発明の背景においても記載しており、それぞれの開示で言及されている。シークエンシングは、それぞれのプラットフォームのいずれかで実施することができる。ライゲートされていないアダプター単量体またはアダプター二量体を除去するために本発明の方法を使用する一実施形態によると、それぞれ得られたシークエンシングライブラリーのシークエンシング後、読み取りの総数に対するアダプター二量体についての読み取りは、≦1.5%、好ましくは、≦1.25%、≦1%、≦0.75%、≦0.6%、より好ましくは≦0.5%、≦0.4%、≦0.3%、より好ましくは≦0.2%および最も好ましくは≦0.15%である。
【0101】
一実施形態によると、本発明による方法を1回超実施する。したがって、一実施形態によると、ステップ(a)および(b)を含む本発明の方法を使用したサイズ選択的DNA単離サイクルを少なくとも2回実施する。一実施形態によると、第1のサイズ選択サイクルにおいて得られる溶出液から第2のサイズ選択サイクルのためのDNA含有試料がもたらされる。したがって、第1のサイズ選択サイクル後に得られる溶出液を、第2のサイズ選択サイクルのステップ(a)において結合用緩衝液と接触させて、結合用混合物をもたらし、所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子を、無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合させる。一実施形態によると、第2のサイズ選択サイクルにおいて第1のサイズ選択サイクルと同じ結合条件を使用する。別の実施形態によると、第2のサイズ選択サイクルでは異なる結合条件を使用し、例えば、異なるカットオフ値を調整するために、結合用混合物中の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを異なる濃度で使用する。第1のサイズ選択サイクルおよび第2のサイズ選択サイクルにおいて同じ型の無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用することができる。シークエンシングライブラリー、特に次世代シークエンシングに適したシークエンシングライブラリーの調製の間に、大量の、例えばアダプター単量体またはアダプターとアダプターとのライゲーション産物などの夾雑物である短いDNA断片を除去するために、本発明によるサイズ選択サイクルを少なくとも2回実施することが都合よい場合がある。
【0102】
一実施形態によると、DNA含有試料中に含まれるDNA分子をそれらのサイズに応じて分画化するために本発明による方法を使用する。それにより、2つまたはそれ超の画分が得られ、異なる画分に含まれるDNA分子は平均して長さが異なる。本発明による方法はまた、前記目的にも適する。DNA含有試料を分画化するために、例えば、サイズ選択的DNA単離サイクルを2回またはそれ超実施する。サイズ分画は、例えば、以下の通り実現することができる:
- 第1のサイズ選択的DNA単離サイクルAにおいて、結合用混合物においてカットオフ値Aを決定する結合条件Aをもたらし、得られる溶出液Aから、カットオフ値Aを上回るサイズを有する標的DNA分子を主に含む画分がもたらされる、
- 第1のサイズ選択的DNA単離サイクルAのステップ(b)において得られる、分離された残りの試料から、第2のサイズ選択的DNA単離サイクルBのためのDNA含有試料がもたらされ、結合用混合物においてカットオフ値Bを決定する結合条件Bをもたらし、カットオフ値Bは、カットオフ値Aよりも低く、得られる溶出液Bから、カットオフ値Bを上回るがカットオフ値Aは下回るサイズを有する標的DNA分子を主に含む画分がもたらされる。
【0103】
適切な結合条件に関する詳細は、上にすでに記載しており、それぞれの開示で言及される。一実施形態によると、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー(好ましくは、ポリエチレングリコール)は、第1の結合用混合物中には8.5%~9.5%(上限カットオフ値A)の範囲内に入る濃度で存在し、第2の結合用混合物中には10%~12%、好ましくは、10.5~11.5%の濃度で存在する(下限カットオフ値B)。結合条件は、同じ結合用緩衝液を異なる体積で添加することによって調整することができる。所望であれば、残りの試料中になお含まれる、カットオフ値Bよりも小さなサイズを有するDNA分子を第3のサイズ選択的DNA単離サイクルCに供すことができる。したがって、一実施形態によると、サイズ選択的DNA単離サイクルCを実施し、ここで、第2のサイズ選択的DNA単離サイクルBのステップ(b)において得られる分離された残りの試料から、第3のサイズ選択的DNA単離サイクルCのためのDNA含有試料がもたらされ、結合用混合物においてカットオフ値Cを決定する結合条件Cをもたらし、カットオフ値Cは、カットオフ値Bよりも小さく、得られる溶出液Cから、カットオフ値Cを上回るがカットオフ値Bは下回るサイズを有するDNA分子を主に含む画分がもたらされる。
キット
【0104】
第2の態様によると、DNA含有試料から所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子をサイズ選択的単離するためのキットであって、
(a)少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液であり、8~10の範囲内に入るpH値を有する、結合用緩衝液、
(b)無修飾ケイ素含有表面を有する固相、
(c)任意選択で、少なくとも1種の洗浄用溶液、および
(d)任意選択で、少なくとも1種の溶出用溶液
を含むキットが提供される。
【0105】
結合用緩衝液、特に適切かつ好ましい結合用緩衝液の構成成分、結合用緩衝液の構成成分の濃度およびpH値に関する詳細、ならびに固相、洗浄用溶液および溶出用溶液に関する詳細は、本発明による方法と併せて上に詳細に記載されている。本発明において同じく当てはまる上記の開示で言及される。非限定的な選択された実施形態を引き続き再度記載する。
【0106】
結合用緩衝液中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの適切かつ好ましい濃度は上に記載されており、上記の開示で言及される。結合用緩衝液中の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度は、7%~45%、10%~40%、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択されることが好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、好ましくは、ポリエチレングリコール、より好ましくは、非置換型ポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0107】
結合用緩衝液は、8.25~9.75、8.5~9.5または8.6~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有することが好ましい。
【0108】
結合用緩衝液中の適切な緩衝剤および濃度は上に記載されており、本発明において同じく当てはまる上記の開示で言及される。結合用緩衝液は、緩衝剤を、25mM~1M、50mM~750mM、75mM~700mM、100mM~650mM、125mM~600mM、150mM~550mM、175mM~525mMおよび200mM~500mMから選択される濃度で含んでよい。
【0109】
一実施形態によると、結合用緩衝液は、塩、好ましくはアルカリ金属塩、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物を含む。塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムおよび塩化セシウムから選択されることが好ましく、塩は塩化ナトリウムであることがより好ましい。塩も方法と併せて記載されており、それぞれの開示で言及される。塩の濃度は、0.5M~4M、0.7M~3.5M、1M~3M、1.2M~2.75Mおよび1.3M~2.5Mから選択することができる。
【0110】
固相の適切かつ好ましい実施形態も本発明による方法と併せて記載されている。上記の通り、固相は、無修飾シリカ表面をもたらすものであることが好ましい。
【0111】
一実施形態によると、結合用緩衝液は、以下の特徴を有する:
i)Mg2+を二価カチオン、好ましくはMgCl2として含む、
ii)ポリエチレングリコールを、好ましくは、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含む、
iii)アルカリ金属塩、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、より好ましくは、塩化ナトリウムを、0.5M~2.75M、好ましくは、0.75M~2.5Mの範囲内に入る濃度で含む、
iv)少なくとも1種の緩衝剤を、100~550mMの範囲内に入る濃度で含む、および
v)8.5~9.5または8.6~9.2の範囲内に入るpHを有する。
【0112】
さらに、キットは、使用に関する説明書および/または情報を含んでよい。例えば、キットは、特定の体積の結合用緩衝液と特定の体積のDNA含有試料を混合した場合に実現されるカットオフ値、および/またはDNA含有試料と結合用緩衝液を特定の比率で混合した場合に実現されるカットオフ値(単数または複数)に関する説明書および/または情報を含んでよい。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度が異なる2つまたはそれ超の結合用緩衝液がキット中に含まれる場合には、キットにより、キット中に含まれる特定の結合用緩衝液を使用した場合にいずれのカットオフ値が実現されるかの情報をもたらすことができる。したがって、本発明は、例えば、特定の体積の結合用緩衝液と特定の体積のDNA含有試料を混合することによるカットオフ値の柔軟な調整を可能にするキットも提供する。
【0113】
それぞれのキットは、特に、第1の態様による方法において使用され得る。特に、キットは、DNA含有試料中に含まれるDNA分子をそれらの長さに応じて分画化するために使用され得る。
【0114】
本発明は、本明細書に開示されている典型的な方法および材料によって限定されず、本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができる。数値の範囲は、その範囲を規定している数を含む。本明細書で提供される表題は、本明細書を全体として参照することによって読み取ることができる本発明の種々の態様または実施形態の限定ではない。
【0115】
「溶液」という用語は、本明細書で使用される場合、特に、液体組成物、好ましくは水性組成物を指す。溶液は、ただ1つの相の均一な混合物であり得るが、例えば沈殿物などの、固体構成物を含む溶液も本発明の範囲内に入る。
【0116】
主題の明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に別段の規定がなされない限り、複数の態様を包含する。したがって、例えば、「1つのポリ(アルキレンオキシド)ポリマー」への言及は、単一の型のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、ならびに2つまたはそれ超のポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを含む。同様に、「1つの二価カチオン」、「1つの追加的な塩」、「1つの緩衝剤」などへの言及は、単一の実体および2つまたはそれ超のそのような実体の組合せを含む。「本開示」および「本発明」などへの言及は、本明細書において教示される単一の態様または多数の態様を含む、などである。本明細書において教示される態様は、「発明」という用語に包含される。
【0117】
結合用混合物中のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、二価カチオン、塩または緩衝剤などの構成成分の濃度を決定する際に固相は考慮しない。
【0118】
一実施形態によると、方法の場合では、特定のステップを含む、または、組成物、溶液および/もしくは緩衝液の場合では、特定の成分を含むと本明細書に記載されている主題は、それぞれのステップまたは成分からなる主題を指す。本明細書に記載の好ましい実施形態を選択し、組み合わせることが好ましく、好ましい実施形態のそれぞれの組合せから生じる特定の主題も本開示に属する。
【実施例】
【0119】
本発明を以下の非限定的な実施例によって例示する。
(実施例1)
【0120】
結合/沈殿用緩衝液ストック溶液:22%PEG8000、2MのNaCl、20mMのMgCl
2を伴うかまたは伴わない200mMのTris。これらの沈殿用緩衝液のpHを、
図1にも示されている通り、pH6または9のいずれかに調整した。この沈殿用緩衝液ストック溶液をDNA含有試料として、せん断されたヒトDNAと接触させた。DNAは、Covarisウルトラソニケーターを用いてTE緩衝液中でせん断してDNA含有試料をもたらした。このDNA含有試料90μlを沈殿用緩衝液ストック溶液と混合した(結合用混合物中の濃度:11%PEG8000、1MのNaCl、10mMのMgCl
2を伴うかまたは伴わない100mMのTris)90μl。せん断されたDNAを、磁気シリカ粒子(MagAttract Gビーズ-QIAGEN)を含む懸濁液10μlに沈殿させた。磁気シリカ粒子上に沈殿させたDNAを80%エタノールで2回洗浄し、溶出用緩衝液50μlを用いて溶出させた。
【0121】
異なる結合/沈殿用緩衝液を用いて実現されるカットオフ値およびDNA収率を分析するために、得られた溶出液をAgilent 7500 chipで分析した。結果を
図1に示す(電気泳動図)。50bpおよび10380bpにおいて示される大きなピークは、較正マーカーに由来するものである。マーカー間の曲線は、異なる結合用緩衝液を用いて単離された異なるサイズのDNA断片に類似する。したがって、較正マーカー間の曲線により、単離されたDNA断片のサイズ分布が示され、曲線の高さにより、得られた収率が示される。さらに、インプットDNAの曲線が示されている。
【0122】
図1から、二価カチオンMg
2+を添加することと併せて沈殿用緩衝液のpHをおよそpH9にシフトさせることにより、驚いたことに、無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用した場合に回収されるDNA断片の収率が増強されることが実証される。したがって、本発明において使用される結合条件は、ポリエチレングリコール(PEG)により沈殿DNA断片の無修飾シリカ表面上への回収を増強し、それにより、そのような無修飾固相の、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーを用いたサイズ選択的DNA単離における使用を可能にするものである。
(実施例2)
【0123】
実施例2は、本発明の結合用緩衝液、したがって、沈殿用緩衝液を異なる量で添加することにより、回収されるDNA断片のカットオフ値を再配置することができ、したがって、調整することができることを実証するものである。DNA含有試料は、せん断されたヒトDNAであった。結合/沈殿用緩衝液ストック溶液は、22%PEG8000、2MのNaCl、20mMのMgCl2、200mMのTris、pH8.88を含むものであった。この結合用緩衝液を、DNA含有試料に、結合用混合物において以下のPEG8000の最終濃度:14%、12%、10%および8%が実現される量で添加した。
【0124】
せん断されたDNAをMagAttract懸濁液G(磁気シリカ粒子)5μl上に沈殿させた。前もって、シリカ粒子を再緩衝させるために、MagAttract Gビーズを、2MのNaCl、20mMのMgCl
2、200mMのTris、pH8.89を含有する緩衝液と一緒にプレインキュベートした。DNAが結合したビーズを80%エタノールで2回洗浄し、溶出用緩衝液17μlを用いて溶出させた。試料をAgilent DNA 7500チップで再度分析した。得られた電気泳動図を
図2に示す。見ることができる通り、ポリエチレングリコール濃度と相関して、カットオフ値が濃度依存的にシフトする。ポリエチレングリコールの濃度が高いほど、より小さなDNA断片が回収される。結合用混合物中のポリエチレングリコールの濃度を低下させると、カットオフ値は濃度依存的に増大した。したがって、異なる量のPEGを含む沈殿用緩衝液を使用することによって、または異なる量の沈殿用緩衝液を結合用混合物中に含めることによって、カットオフ値を正確に調整することができる。
【0125】
したがって、実施例2から、異なる量の本発明による結合/沈殿用緩衝液をDNA含有試料に添加することによって、異なる長さのDNA断片を分離することができることが示される。サイズ選択的分離方法は、アダプターのような望ましくない、小さなDNA断片またはミスプライミングされたPCR産物のような大きな断片を除去しなければならないのと同時に、ライブラリーDNAをできるだけ効率的に保持しなければならない、次世代シークエンシングのためのライブラリー調製などの適用に特に適している。ライブラリー調製のような適用における本発明によるサイズ選択方法の別の利点は、カットオフの柔軟な再配置である。本発明は、この柔軟な再配置、したがって、回収されるDNA分子の増強された収率の維持と同時にカットオフ値の適合を可能にするものである。単に結合用緩衝液を異なる量で添加することにより、全てのカットオフ値を再配置することができる。
(実施例3)
【0126】
実施例3は、高い標的DNA収率およびカットオフ値の適合が、固相としてシリカスピンカラムを使用した場合にも実現されることを実証するものである。DNA含有試料は、この場合もまた、せん断されたヒトDNAである。沈殿用緩衝液ストック溶液の濃度は、22%Peg8000、2MのNaCl、20mMのMgCl
2、200mMのTris、pH8.88であった。この結合/沈殿用緩衝液をDNA含有試料に、結合用混合物において以下のPEG8000の最終濃度:9%、8%、7%が実現されるように添加した。せん断されたDNAを、前もって、2MのNaCl、20mMのMgCl
2、200mMのTris、pH8.89を含有する緩衝液と一緒にプレインキュベートしたMinEluteスピンカラム上に沈殿させた。含有されるシリカ膜に結合した、沈殿DNAを、80%エタノールで2回洗浄し、溶出用緩衝液17%μlで溶出させた。溶出液をAgilent DNA 7500チップで分析した。電気泳動図を
図3に示す。見ることができる通り、同じ、カットオフ値のポリエチレングリコール濃度依存的再配置が実現される。さらに、DNA断片の回収率は高かった。
(実施例4)
【0127】
実施例4では、DNA含有試料から上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離するために本発明の方法を実施した。結果を、参考AMPure XPを製造者の説明書に従って用いて得られた結果と比較した。簡単に述べると、AMpure XPビーズプロトコールを以下に従って実施した:AMpure XPビーズを再懸濁させた。ビーズ80μlまたは20μlをマイクロタイタープレートにおいて試料100μlまたは上清に添加した。ピペットを160μlに調整し、全体積を、徹底的に混合するために10回ピペッティングした。各試料の後にピペットチップを取り換えた。マイクロタイタープレートを室温で15分間インキュベートした。マイクロタイタープレートを磁石プレート上に載せ、室温で15分間、または液体が透明に見えるまで静置した。次いで、各上清の約半分を取り出し、廃棄し、ビーズに触れないように注意を払い、このステップを2回実施した。各試料の後にピペットチップを取り換え、また、ウェル中には液体が残留する可能性がある。マイクロタイタープレートを磁石プレート上に載せたまま、新しく調製した80%エタノール200μlを各試料に添加し、ビーズが再懸濁しないように注意を払った。マイクロタイタープレートを室温で少なくとも30秒間インキュベートした。その後、完全な上清を各ウェルから取り出し、廃棄した。ビーズに触れないように注意を払った。各試料の後にピペットチップを取り換えた。エタノールでの洗浄を繰り返した。マイクロタイタープレートを磁石プレートから外し、乾燥させるために室温で15分間、静置した。乾燥したペレットを、本発明ではEBである再懸濁用緩衝液17.5μlに、全体積を慎重に10回ピペッティングすることによって再懸濁させた。マイクロタイタープレートを室温で2分間インキュベートした。マイクロタイタープレートを磁石プレート上で5分間または液体が透明に見えるまで静置した。透明な上清15μlを新しいチューブに移した。各試料の後にチップを取り換えた。
【0128】
実施例4では、本発明の方法において多数の異なる結合用緩衝液をさらに試験した。特に明記されていなければ、実施例4では、DNA含有試料は、せん断されたヒトDNAであり、方法を以下に従って実施した:
- 磁気シリカ粒子(MagAttract Gビーズ、QIAGEN)を洗浄緩衝液(ビーズ5μl+洗浄緩衝液10μl、ボルテックスすることにより混合したもの)中でプレインキュベートした。洗浄緩衝液は、PEGを含有しない以外は結合用緩衝液と同じ組成を有するものであった。磁気シリカ粒子を、磁石の力を借りて分離し、洗浄緩衝液を除去した。
- 洗浄した磁気シリカ粒子(5μl)を結合用緩衝液63μlおよびDNA含有試料(1μg)90μlと接触させた。それにより、およそ9%のPEGを含む第1の結合用混合物がもたらされる(1部分のDNA試料に対して0.7部分の結合用緩衝液)。磁気シリカ粒子は、結合用混合物中の構成成分の濃度の算出において考慮に入れない。第1の結合用混合物をボルテックスすることにより混合し、上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を磁気粒子に結合させるために、第1の結合用混合物を振とうしながら10分間インキュベートした。
- DNA分子が結合した磁気粒子を、試料を磁気ラック上に置くことによって磁気により分離した。それにより、上限カットオフ値を上回るサイズを有するより大きなDNA分子が第1の結合用混合物から除去された。残りの試料をさらに処理した。
- 磁気シリカ粒子(上記の通り洗浄したもの)5μlを、別の体積の結合用緩衝液(25.5μl)および残りの試料140mlと接触させた。それにより、およそ11%のPEGを含む第2の結合用混合物がもたらされた。この場合でもまた、結合用混合物中の構成成分の濃度の算出において磁気シリカ粒子は考慮に入れない。第2の結合用混合物をボルテックスすることにより混合し、下限カットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子を磁気粒子に結合させるために、第2の結合用混合物を振とうしながら10分間インキュベートした。
- 標的DNA分子が結合した磁気粒子を、試料を磁気ラック上に置くことによって磁気により分離した。上清を取り出し、廃棄した。
- 標的DNA分子が結合した磁気シリカ粒子を80%エタノール500μlで洗浄し、RT、振とう下で5分間インキュベートし、磁気ラック上で1分間の磁気分離を行った。上清を取り出し、廃棄した。洗浄ステップを2回実施した。
- 洗浄した、標的DNA分子が結合した磁気シリカビーズを5分間風乾した。
- 第1の溶出ステップを、緩衝液TE(QIAGEN)17μlを添加し、RT、振とう下で5分間インキュベートすることによって実施した。懸濁液を分離のために磁気ラック上に置き、得られた溶出液15μlを取り出した。
- 第2の溶出ステップを、緩衝液EB(QIAGEN)50μlを使用し、RT、振とう下で5分間インキュベートして実施した。懸濁液を分離のために磁気ラック上に置き、得られた溶出液を取り出した。本実施例では、全ての結合したDNAの回収を確実にするために第2の溶出ステップを実施した。
【0129】
以下の結合用緩衝液を本発明のこのプロトコールに従って試験し、参考製品(AMPure)と比較した:
【表1-1】
【表1-2】
【0130】
結果から、種々の結合用緩衝液を本発明による方法において使用すること、および核酸結合のために無修飾ケイ素含有表面を有する固相を使用した場合に良好な結果をもたらすことができることが実証される。本発明の方法は対費用効果が大きくかつロバストであり、それにより、当技術分野に重要な寄与をなす。
(実施例5)
【0131】
本実施例は、NGS(標的化シークエンシング)ライブラリー調製ワークフローにおける清浄化およびサイズ選択を示すものである。
実験計画:
【0132】
「Actionable Insights Tumor Panel」(GRTP-101X-12)によって定義されるPCRアンプリコンのセットであるDNAシークエンシングパネルを生成するための試料材料としてヒトゲノムDNAを使用した。この遺伝子パネルは、関連性のあるがん関連遺伝子内の領域のセットを増幅してこれらのDNA領域の標的化シークエンシングを可能にするためのPCRプライマーセットである。この遺伝子パネルの領域を増幅するための多重PCRを「QIAact Gene Panels Handbook」(2015年12月;QIAGEN)に従って実施した。
【0133】
次いで、増幅された遺伝子パネルDNAを、望ましくないプライマー、非特異的な増幅産物および他の不純物を除去するために、清浄化およびサイズ選択プロトコールに供する。
プロトコール詳細:
【0134】
1)DNA(精製されていないPCR産物)100μlに、無希釈の法医学的MagAttract懸濁液G(QIAGEN)30μlを添加して、試料の総体積を130μlにする。
【0135】
2)サイズ選択用緩衝液を試料に46%*濃度まで添加し、混合する。
【0136】
3)RTで振とうしながら20分間インキュベートする。
【0137】
4)磁気ラックによってビーズを懸濁液から分離する。上清を移し、ビーズを廃棄する。
【0138】
5)無希釈の法医学的MagAttract Gビーズ30μlをステップ4からの上清に添加する。
【0139】
6)サイズ選択用緩衝液を70%*濃度まで添加し、混合する。
【0140】
7)RTで振とうしながら20分間インキュベートする。
【0141】
8)磁気ラック上でビーズを懸濁液から分離する。上清を取り出し、廃棄する。
【0142】
9)80%エタノール500μlをビーズに添加し、混合する。
【0143】
10)RTで振とうしながら5分間インキュベートする。
【0144】
11)磁石スタンド上でビーズを懸濁液から分離する。上清を取り出し、廃棄する。
【0145】
12)ステップ9~11を1回繰り返す。
【0146】
13)ビーズを20分間、風乾する。
【0147】
14)溶出用緩衝液50μlをビーズに添加する。ボルテックスすることによって混合する。
【0148】
15)RTで振とうしながら5分間インキュベートする。
【0149】
16)磁気ラック上でビーズを懸濁液から分離する。
【0150】
17)溶出液約50μlを新しいチューブに移す。
*結合用混合物中のサイズ選択用緩衝液の百分率
使用するサイズ選択用緩衝液:
【0151】
使用するサイズ選択用緩衝液-一般的な組成:
【表2】
【0152】
使用する緩衝剤:
1)CAPSO(N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸)
2)AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)
3)CHES(N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸)
4)TAPS(N-[Tris(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸)
【0153】
以下にさらに示す通り、それぞれの緩衝液を9.0~9.3の異なるpH値に調整した。
【0154】
試験したサイズ選択用緩衝液の4種のバリアントの安定性を決定するために、緩衝液を、新しく作製した後、25℃で6カ月間保管し、その後、DNA清浄化およびサイズ選択プロトコールのために使用した(結果2~4)。参照として、緩衝剤としてCAPSOおよびCHESを使用して新しく作製した緩衝液を試験した(結果1)。
【0155】
清浄化後、DNAを、Agilent Bioanalyzerキャピラリー電気泳動システムを製造者の説明書に従って使用して分析した。
【0156】
DNA回収率を、清浄化プロトコールに供したDNAの量および標的化されたサイズ範囲(Agilent BioAnalyzerソフトウェアを使用して決定される)内の遺伝子パネルDNAの量に基づいて算出した。
結果1-CAPSO/CHES(新しく調製したもの)を用いたサイズ選択用緩衝液:
【0157】
緩衝剤としてCAPSOおよびCHESを使用して新しく作製した緩衝液を試験した。CAPSOまたはCHESのいずれかを使用して、サイズ選択用緩衝液のpHをそれぞれ9.0、9.1、9.2に調整した。DNA清浄化およびサイズ選択プロトコール(上記)の完了後、Agilent BioAnalyzerを使用してDNAを分析し、数量化した。結果を
図10aに示す。この図は、ラダー(L)について、および遺伝子パネルDNAの試料について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す。試料1~6を清浄化およびサイズ選択後に分析した。試料7は、1:100に希釈した、清浄化前の遺伝子パネルDNAである。
【表3】
【0158】
精製された遺伝子パネルDNA(試料1~6)と100倍希釈した精製されていないDNA(試料7)の純度の比較から見ることができるように、サイズ選択プロトコールは、例えば、遺伝学的がんプロファイリング適用において次世代シークエンシング適用のためのDNA領域のセットを増幅するために一般的に使用されるので、高度に多重化されたPCR反応に由来するDNAを精製するためによく適する。
【0159】
図10bは、上記の遺伝子パネルDNA試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
結果2~4-CAPSO、AMPD、CHESまたはTAPSを用いたサイズ選択用緩衝液(6カ月間の保管):
【0160】
試験したサイズ選択用緩衝液の4種のバリアントの安定性を決定するために(上記、緩衝剤としてCAPSO、AMPD、CHESまたはTAPSを含む)、緩衝液を、新しく作製した後、25℃で6カ月間保管し、その後、DNA清浄化およびサイズ選択プロトコールのために使用した。個々の緩衝剤について得られた結果を以下および
図11~14に提示する。
結果2-CAPSOを用いたサイズ選択用緩衝液(6カ月間の保管):
【0161】
緩衝剤としてCAPSO(pH9.0/9.1/9.2)を用いたサイズ選択用緩衝液をそれぞれ三連で試験した。DNA清浄化およびサイズ選択プロトコール(上記)の完了後、DNAを、Agilent BioAnalyzerを使用して分析した。Agilent BioAnalyzeキャピラリーゲル電気泳動の結果を
図11aに示す。この図は、ラダー(L)について、および遺伝子パネルDNAの試料1~9について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す:
【表4】
【0162】
図11bは、遺伝子パネルDNA試料1~9について算出されたDNA回収率(%)を示す。
結果3-AMPDを用いたサイズ選択用緩衝液(6カ月間の保管):
【0163】
緩衝剤としてAMPD(pH9.0/9.1)を用いたサイズ選択用緩衝液をそれぞれ三連で試験した。DNA清浄化およびサイズ選択プロトコール(上記)の完了後、DNAを、Agilent BioAnalyzerを使用して分析した。Agilent BioAnalyzerキャピラリーゲル電気泳動の結果を
図12aに示す。この図は、ラダー(L)について、および遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す:
【表5】
【0164】
図12bは、遺伝子パネルDNA試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
結果4-CHESを用いたサイズ選択用緩衝液(6カ月間の保管):
【0165】
緩衝剤としてCHES(pH9.0/9.1/9.2)を用いたサイズ選択用緩衝液をそれぞれ三連で試験した。DNA清浄化およびサイズ選択プロトコール(上記)の完了後、DNAを、Agilent BioAnalyzerを使用して分析した。Agilent BioAnalyzerキャピラリーゲル電気泳動の結果を
図13aに示す。この図は、ラダー(L)について、および遺伝子パネルDNAの試料1~9について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す:
【表6】
【0166】
図13bは、遺伝子パネルDNA試料1~9について算出されたDNA回収率(%)を示す。
結果5-TAPSを用いたサイズ選択用緩衝液(6カ月間の保管):
【0167】
緩衝剤としてTAPS(pH9.0/9.3)を用いたサイズ選択用緩衝液をそれぞれ三連で試験した。DNA清浄化およびサイズ選択プロトコール(上記)の完了後、DNAを、Agilent BioAnalyzerを使用して分析した。Agilent BioAnalyzerキャピラリーゲル電気泳動の結果を
図14aに示す。この図は、ラダー(L)について、および遺伝子パネルDNAの試料1~6について得られたAgilent BioAnalyzerゲル様画像を示す:
【表7】
【0168】
図14bは、遺伝子パネルDNA試料1~6について算出されたDNA回収率(%)を示す。
結論:
【0169】
試験した緩衝剤の4種全てが、DNAをシリカ表面にサイズ依存的に結合させるためのDNAサイズ選択用緩衝液として適切である。
【0170】
「結果1」の節(精製された遺伝子パネルDNAと100倍希釈した精製されていないDNAの純度の比較)に示されている通り、サイズ選択プロトコールは、例えば、遺伝学的がんプロファイリング適用において次世代シークエンシング適用のためのDNA領域のセットを増幅するために一般的に使用されるので、高度に多重化されたPCR反応に由来するDNAを精製するためによく適する。
【0171】
DNA回収はアルカリ性pHで改善される。pH9.2または9.3では、pH9.0よりもなお一層高いDNA回収率が導かれる。
【0172】
試験した緩衝液バリアントは良好に作用することが見いだされた。
- CAPSO、pH9.2
- AMPD、pH9.1
- CHES、pH9.2
- TAPS、pH9.3
を用いたサイズ選択用緩衝液バリアントにより、
【0173】
25℃で6カ月間保管した後、最も高いDNA回収率が示される(結果2~4)。回収率はまた、新しく作製した、CAPSOまたはCHESを含有するサイズ選択用緩衝液を用いて得られたDNA回収率とも同等である(結果1)。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
DNA含有試料から特定のカットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子を単離するための、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーに基づくサイズ選択的DNA単離方法であって、
(a)前記DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、使用された結合条件下で、前記カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を前記固相から溶出させるステップ
を含む方法。
(項目2)
DNA含有試料から上限カットオフ値と下限カットオフ値とによって決定される特定のサイズ範囲内のサイズを有する標的DNA分子を単離するためであって、
(a)前記DNA含有試料、少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、および少なくとも1種の二価カチオンを含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記第1の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)結合したDNA分子を、前記標的DNA分子を含む前記残りの試料から分離するステップ、
(c)前記残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8~10の範囲内に入るpHを有し、前記第2の結合用混合物中の前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度が前記第1の結合用混合物と比較して上昇しており、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記下限カットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)前記結合した標的DNA分子を前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を前記固相から溶出させるステップ
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
ステップ(a)において、結合用緩衝液を前記DNA含有試料に添加して前記結合用混合物を調製し、前記結合用緩衝液が、前記少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、前記少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含み、前記結合用緩衝液が、8~10の範囲内に入るpHを有する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
ステップ(c)において、結合用緩衝液を前記残りの試料に添加して前記第2の結合用混合物を調製し、前記結合用緩衝液が、前記少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、前記少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含み、前記結合用緩衝液が、8~10の範囲内に入るpHを有し、任意選択で、ステップ(a)におけるものと同じ結合用緩衝液が使用される、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
前記結合用混合物および/または前記結合用緩衝液が、少なくとも1種の塩をさらに含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
以下の特性:
a)前記塩が、非カオトロピック塩であること、
b)前記塩が、一価の塩であること、
c)前記塩が、アルカリ金属塩、好ましくはアルカリ金属ハロゲン化物であること、
d)前記塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムおよび塩化セシウムから選択され、より好ましくは、前記塩が塩化ナトリウムであること、ならびに/または
e)前記塩が、前記結合用混合物中に、≧250mM、≧350mM、≧500mM、≧600mM、≧650mM、≧700mM、≧750mMおよび≧800mMから選択される濃度、ならびに/または、250mM~2M、350mM~1.75M、500mM~1.5M、600mM~1.3Mおよび650mM~1.25Mから選択される範囲の濃度で存在すること
の1つまたは複数を有する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記二価カチオンが、以下の特性:
a)前記二価カチオンが、Mg
2+
、Fe
2+
、Ca
2+
、Mn
2+
、Zn
2+
およびNi
2+
から選択され、好ましくは、Mg
2+
であること、
b)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に溶解塩の形態で存在し、前記塩が、任意選択で、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩または炭酸塩、好ましくは、ハロゲン化物であること、
c)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に、塩化マグネシウムである溶解塩の形態で存在すること、
d)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に、好ましくは溶解塩の形態で、3mM~75mM、4mM~50mM、5mM~40mM、5.5mM~35mM、6mM~30mM、6.5mM~25mM、7mM~20mMおよび7.5mM~15mMから選択される範囲の濃度で存在すること、ならびに/または
e)前記二価カチオンが、前記結合用混合物中に溶解塩の形態で存在し、前記結合用混合物が、アルカリ金属塩、好ましくは、塩化ナトリウムをさらに含有すること
の1つまたは複数を有する、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
以下の特性:
a)前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが、ポリエチレングリコールであること、
b)前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが、好ましくはポリエチレングリコールであり、2000~40000、2500~30000、3000~25000、3500~20000、4000~16000、4500~12000および5000~10000から選択される範囲の分子量を有すること、
c)前記カットオフ値が、前記結合用混合物中の前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーの濃度によって調整されること、ならびに/または
d)前記結合用混合物が、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、好ましくはポリエチレングリコールを少なくとも7.5%の濃度で含み、前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマー濃度が6%~20%、7%~17%、7.5%~15%、8%~13%および8.5%~12.5%から選択される範囲内に入ることが好ましいこと
の1つまたは複数を有する、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記結合用混合物が、8.25~9.75、8.5~9.5または8.6~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有し、ならびに/または、前記結合用混合物が、少なくとも1種の緩衝剤を、好ましくは25mM~600mM、50mM~500mM、60mM~450mM、70mM~400mM、80mM~350mM、90mM~300mMおよび100mM~275mMから選択される濃度で含む、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記結合条件が、前記DNA含有試料および/または残りの試料と接触させる前記結合用緩衝液によって排他的に確立される、項目3から9までまたは項目4から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記結合用緩衝液が、以下の特性:
a)8.25~9.75、8.5~9.5または8.6~9.2から選択される範囲内に入るpH値を有すること、
b)緩衝剤を、25mM~1M、50mM~750mM、75mM~700mM、100mM~650mM、125mM~600mM、150mM~550mM、175mM~525mMおよび200mM~500mMから選択される濃度で含むこと、
c)塩、好ましくはアルカリ金属塩を、0.5M~4M、0.7M~3.5M、1M~3M、1.2M~2.75Mおよび1.3M~2.5Mから選択される濃度で含むこと、
d)前記ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーが、好ましくはポリエチレングリコールであり、7%~45%、10%~40%、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含むこと、ならびに/または
e)以下の特徴:
i)Mg
2+
を二価カチオン、好ましくはMgCl
2
として含むこと、
ii)ポリエチレングリコールを、好ましくは、12.5%~35%、15%~30%、17.5%~27.5%および20%~25%から選択される濃度で含むこと、
iii)アルカリ金属塩、好ましくは塩化ナトリウムを、0.5M~2.75M、好ましくは、0.75M~2.5Mの範囲内に入る濃度で含むこと、
iv)前記少なくとも1種の緩衝剤を、100~550mMの範囲内に入る濃度で含むこと、
v)8.5~9.5または8.6~9.2の範囲内に入るpHを有することを有すること
の1つまたは複数を有する、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
(a)前記DNA含有試料、7.5%~15%、好ましくは、8%~13%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および7mM~40mM、好ましくは8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl
2
を含む結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)前記結合したDNA分子を、前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合したDNA分子を前記固相から溶出させるステップ
の通り実施される、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
(a)前記DNA含有試料、8.5%~9.5%の範囲内に入る濃度のポリエチレングリコール、および、7mM~40mM、好ましくは8mM~20mMの範囲内に入る濃度のMgCl
2
を含む第1の結合用混合物を調製するステップであって、前記結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、沈殿DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、前記上限カットオフ値を上回るサイズを有するDNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、上限カットオフ値未満のサイズを有する標的DNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(b)前記結合したDNA分子を、前記標的DNA分子を含む前記残りの試料から分離するステップ、
(c)前記残りの試料を含む第2の結合用混合物を調製するステップであって、前記第2の結合用混合物が、8.5~9.25の範囲内に入るpHを有し、前記第2の結合用混合物中のポリエチレングリコールの濃度が前記第1の結合用混合物と比較して上昇しており、10%~12%の範囲内に入り、沈殿した標的DNA分子が無修飾ケイ素含有表面を有する固相に結合し、それにより、標的DNA分子が結合した固相がもたらされ、前記使用された結合条件下で、前記下限カットオフ値未満のサイズを有するDNA分子は前記固相に実質的に結合しない、ステップ、
(d)前記結合した標的DNA分子を前記残りの試料から分離するステップ、
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を洗浄するステップ、ならびに
- 任意選択で、前記結合した標的DNA分子を前記固相から溶出させるステップ
の通り実施される、項目2から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
アダプターがライゲートしたDNA分子を標的DNA分子としてアダプターライゲーション試料であるDNA含有試料から単離するため、およびアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物を除去するための、項目1から13のいずれか一項に記載の方法であって、アダプターがライゲートしたDNA分子を、ライゲートされていないアダプター単量体およびアダプターとアダプターとのライゲーション産物から、前記アダプターがライゲートしたDNA分子のサイズがより大きいことに基づいて分離する、方法。
(項目15)
所望のカットオフ値を上回るサイズを有する標的DNA分子のDNA含有試料からのサイズ選択的単離のためのキットであって、
(a)少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)ポリマー、少なくとも1種の二価カチオンおよび少なくとも1種の緩衝剤を含む結合用緩衝液であり、8~10の範囲内に入るpH値を有する、結合用緩衝液、
(b)無修飾ケイ素含有表面を有する固相、
(c)任意選択で、少なくとも1種の洗浄用溶液、および
(d)任意選択で、少なくとも1種の溶出用溶液
を含むキット。
(項目16)
前記結合用緩衝液が、項目11に記載の特性のうちの1つまたは複数を有する、項目15に記載のキット。