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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】電力管理システムおよび電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20220117BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220117BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220117BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J3/38 110
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018005118
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019068707
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2017189454
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】上西 章太
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 尚
(72)【発明者】
【氏名】判谷 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】森 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】松崎 純一
(72)【発明者】
【氏名】安宅 元晴
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-200539(JP,A)
【文献】特開2017-108507(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038719(WO,A1)
【文献】特開2017-108526(JP,A)
【文献】特開2010-011704(JP,A)
【文献】特開2014-039353(JP,A)
【文献】特開2017-005845(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016273(WO,A1)
【文献】特開2005-102364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と蓄電池の少なくとも一方を有する需要家施設が1または複数属し当該属する需要家施設のうち少なくとも1つが蓄電池を有する複数のグループを前記グループ単位で管理するシステムであって、
前記グループ毎の逆潮流電力の余力に基づいて前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当て、前記割り当てに応じて前記各グループに属する前記需要家施設毎の前記放電電力の計画値を決定する計画値生成部と、
前記計画値生成部が決定した前記放電電力の計画値を前記各需要家施設に向けて送信する電力制御部と
を備える電力管理システム。
【請求項2】
前記計画値生成部は、各前記需要家施設で許容される最大の逆潮流電力と各前記需要家施設からの逆潮流電力の差分を前記グループ毎に合計することで、前記グループ毎の逆潮流電力の余力を算出し、前記グループ毎の逆潮流電力の余力の割合または割り当て後の余りに応じて、前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当てる
請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記計画値生成部は、前記需要家施設毎の逆潮流電力の制限値を超えないように前記放電電力の計画値を決定する
請求項1または2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記計画値生成部は、前記各グループに割り当てた前記蓄電池からの放電電力の計画を、前記各グループに属する前記需要家施設毎の一部に割り当てるように前記放電電力の計画値を決定する
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記グループが、前記放電電力を逆潮流させる配電網の構成に対応するものである
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記逆潮流電力の余力が、送配電系統の監視情報、逆潮流の余力情報、または逆潮流の抑制指令の少なくとも1つに基づいて更新される
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力管理システム。
【請求項7】
発電装置と蓄電池の少なくとも一方を有する需要家施設が1または複数属し当該属する需要家施設のうち少なくとも1つが蓄電池を有する複数のグループを前記グループ単位で管理する方法であって、
計画値生成部によって、前記グループ毎の逆潮流電力の余力に基づいて前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当て、前記割り当てに応じて前記各グループに属する前記需要家施設毎の前記放電電力の計画値を決定し、
電力制御部によって、前記計画値生成部が決定した前記放電電力の計画値を前記各需要家施設に向けて送信する
電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システムおよび電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デマンドレスポンスへの対応に際し、契約電流値の最大値に応じて各需要家で削減すべき削減電力量を決定する電力管理システムが記載されている。ここで、デマンドレスポンス(DR:DemandResponse)とは、卸市場価格の高騰時または系統信頼性の低下時において、電気料金価格の設定またはインセンティブの支払に応じて、需要家側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させること、と定義されている。
【0003】
従来より、工場、ビルなど消費電力が大きい大口需要家では需要抑制、蓄電池制御などにより、電力消費ピーク時のデマンドレスポンスが行われてきた。例えば、冷房運転時期において、需要ピーク時に需要抑制の要求があった場合、空調設定温度を上げたり、照明等の各種機器のうち重要度が低い機器を停止したりすることで需要を抑制する。また、蓄電池を用いた需要抑制方法では、大型の蓄電池に予め充電しておき、需要抑制の指定時間において放電し、その間における購入電力が一定時間抑制される。
【0004】
一方、一般住宅等の需要家においては、もともと消費電力が大きくはないため、需要を抑制できる範囲が小さい。そのため、一般住宅における需要を抑制したとしても、需要抑制の十分な効果は見込めない。また、一般住宅において太陽光発電装置が設置されている場合、夏季の昼間の需要ピーク時においては、太陽光発電から得られる電力で自身の需要家における需要を賄うことができる場合がある。その場合、その一般住宅における需要は零となるため、買電電力の需要の抑制についての余力はなくなる。
【0005】
また、例えば夏場において、一般住宅に設けられた太陽光発電装置等の再生可能エネルギーによる発電電力を逆潮流しようとする場合、複数の一般住宅で同時に逆潮流が行われると、逆潮流される電力が一時的に多くなる。系統側では、このような場合においても、逆潮流可能な最大電力値を超えないようにしなければならない。このような場合、電力調整のためにある需要家において充電池から放電した電力を他の需要家に供給する手法では、例えば夏場の日中において逆潮流が行われている状況においては、逆潮流を抑える要請が生じやすく、その場合、充電池から放電した電力を電力系統側に供給(逆潮流)できるとは限らない。このため、調整力として必ずしも有効ではないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5922138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、逆潮流を利用した電力調整の調整力を向上させることができる電力管理システムおよび電力管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、発電装置と蓄電池の少なくとも一方を有する需要家施設が1または複数属し当該属する需要家施設のうち少なくとも1つが蓄電池を有する複数のグループを前記グループ単位で管理するシステムであって、前記グループ毎の逆潮流電力の余力に基づいて前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当て、前記割り当てに応じて前記各グループに属する前記需要家施設毎の前記放電電力の計画値を決定する計画値生成部と、前記計画値生成部が決定した前記放電電力の計画値を前記各需要家施設に向けて送信する電力制御部とを備える電力管理システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記電力管理システムであって、前記計画値生成部は、各前記需要家施設で許容される最大の逆潮流電力と各前記需要家施設からの逆潮流電力の差分を前記グループ毎に合計することで、前記グループ毎の逆潮流電力の余力を算出し、前記グループ毎の逆潮流電力の余力の割合または割り当て後の余りに応じて、前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当てる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記電力管理システムであって、前記計画値生成部は、前記需要家施設毎の逆潮流電力の制限値を超えないように前記放電電力の計画値を決定する。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記電力管理システムであって、前記計画値生成部は、前記各グループに割り当てた前記蓄電池からの放電電力の計画を、前記各グループに属する前記需要家施設毎の一部に割り当てるように前記放電電力の計画値を決定する。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記電力管理システムであって、前記グループが、前記放電電力を逆潮流させる配電網の構成に対応するものである。
【0013】
また、本発明の一態様は、前記逆潮流電力の余力が、送配電系統の監視情報、逆潮流の余力情報、または逆潮流の抑制指令の少なくとも1つに基づいて更新される。
【0014】
また、本発明の一態様は、発電装置と蓄電池の少なくとも一方を有する需要家施設が1または複数属し当該属する需要家施設のうち少なくとも1つが蓄電池を有する複数のグループを前記グループ単位で管理する方法であって、計画値生成部によって、前記グループ毎の逆潮流電力の余力に基づいて前記蓄電池からの放電電力の計画値を前記各グループに割り当て、前記割り当てに応じて前記各グループに属する前記需要家施設毎の前記放電電力の計画値を決定し、電力制御部によって、前記計画値生成部が決定した前記放電電力の計画値を前記各需要家施設に向けて送信する電力管理方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逆潮流を利用した電力調整の調整力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における電力管理システムの全体構成例を示している。
図2図1に示す各需要家施設100の配電網の構成例を示している。
図3】需要家施設100における電気設備の一構成例を示している。
図4】需要家施設100において備えられる需要家施設内コントローラ200の構成例を示している。
図5】電力管理装置300の構成例を示している。
図6】電力管理装置300が計画値同時同量制御に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図7】電力管理装置300が実行する計画値に基づく電力制御処理(図6のステップS102)の一例を示すフローチャートである。
図8】電力管理装置300が実行する需要家施設ごとの制御目標値を決定する処理手順(図7のステップS203)の例を示すフローチャートである。
図9】電力管理装置300が実行する逆潮流を行う場合に需要家施設ごとの制御目標値を決定する処理手順(図8のステップS303)の例を示すフローチャートである。
図10図9に示す処理の一例を説明するための図である。
図11】電力管理装置300が実行する各需要家グループへの放電電力の割り当て量を決定する処理手順(図9のステップS403)の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態による電力管理システムについて図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における電力管理システム1の全体構成例を示している。本実施形態における電力管理システム1は、例えば、所定の地域範囲における複数の需要家施設に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などに対応する。
【0018】
本実施形態の電力管理システム1は、複数の需要家施設100と、電力管理装置300を備える。図1に示す電力管理システム1は、電力管理エリア10として示す一定範囲の地域における需要家施設100ごとの電気設備を対象として電力管理を行う。需要家施設100は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。
【0019】
なお、本実施形態の電力管理エリア10が対応する地域は、1つの地域範囲により形成されてもよいし、地理的に離散している複数の地域範囲により形成されてもよい。
【0020】
また、本実施形態において、複数の需要家グループ(例えば、需要家グループGP01、GP02、GP03、GP10等)は、電力管理システム1において需要家施設100が配電網(あるいは配電系統)に逆潮流させる電力を管理する際の単位となる。すなわち、電力管理システム1は、需要家施設100が配電網に逆潮流させる電力を、需要家グループGP01、GP02、GP03、およびGP10毎に管理する。また、図1に示す例では、需要家グループGP10が、需要家グループGP01と需要家グループGP02を含む。すなわち、需要家グループGP10が上位の階層の需要家グループであり、需要家グループGP01と需要家グループGP02が下位の階層の需要家グループである。この場合、電力管理システム1は、需要家グループGP10に属する各需要家施設100を全体として管理する。また、電力管理システム1は、需要家グループGP10に属する各需要家施設100を管理する際に、需要家グループGP01に属する各需要家施設100を全体として管理し、需要家グループGP02に属する各需要家施設100を全体として管理する。なお、需要家グループは1つの需要家施設100が属するものであってもよい。また、電力管理エリア10内のすべての需要家施設100が、同一の需要家グループに属していてもよい。また、需要家グループは、階層構造を有していなくてもよい。この場合、電力管理システム1は、例えば、需要家グループGP01、GP02、およびGP03毎に需要家施設100を管理する。
【0021】
需要家施設100のグループ分けは、任意であるが、配電網の構成に対応していてもよい。図2は、図1に示す各需要家施設100の配電網の構成例と需要家グループGP01、GP02、GP03およびGP10との対応関係の一例を示している。なお、図2において図1に示す構成と同一または対応する構成には同一の符号を用いている(以下、各図において同様)。図2に示す配電網50は、配電用変電所51および52と、変圧器53~55と、高圧配電線61および62と、低圧配電線63~65を備える。配電用変電所51は、図示していない送電線から送られてきた電力の電圧を降圧し、高圧配電線61を介して変圧器53、54等に配電する。変圧器53および54は、柱上変圧器、路上変圧器等であり、配電用変電所51から配電された電力の電圧をさらに降圧し、低圧配電線63および64を介して複数の需要家施設100へ配電する。配電用変電所52は、図示していない送電線から送られてきた電力の電圧を降圧し、高圧配電線62を介して変圧器55等に配電する。変圧器55は、柱上変圧器、路上変圧器等であり、配電用変電所52から配電された電力の電圧をさらに降圧し、低圧配電線65を介して複数の需要家施設100へ配電する。
【0022】
図2に示す例では、需要家グループGP10に属する各需要家施設100は配電用変電所51に接続されている。また、需要家グループGP01に属する各需要家施設100は変圧器53に接続されている。また、需要家グループGP02に属する各需要家施設100は変圧器54に接続されている。また、需要家グループGP03に属する各需要家施設100は変圧器55に接続されている。
【0023】
なお、図2に示す例では、各需要家施設100が低圧配電線63、64または65に接続されているが、需要家施設100は、受電用変圧器等の設備を備えて、高圧配電線61、62等に直接接続されていてもよい。この場合、高圧配電線61、62等に直接接続される需要家施設100は、単独で1つの需要家グループに属してもよいし、低圧配電線63、64または65等に接続される他の需要家施設100が属する需要家グループに属していてもよい。また、図2に示す例では、配電用変電所51、52等を1つの単位としてグループ分けを設定しているが、例えば、配電用変電所が備える1または複数の配電用変圧器(バンク)を単位としてグループ分けを設定してもよい。
【0024】
本実施形態において、需要家施設100は、図3に示すように、太陽電池により発電を行う発電装置103と、蓄電池104とを備える。図3は、需要家施設100における電気設備の一構成例を示している。本実施形態において、蓄電池104は、例えば2次電池とその2次電池の充放電を制御するインバータ等の制御装置とから構成されている。なお、発電装置103と蓄電池104は、電力変換回路等の構成を一体化したものであってもよい。なお、需要家施設100には、発電装置103と蓄電池104とのいずれか一方を備えるものがあってよい。また、需要家施設100には、発電装置103と蓄電池104とのいずれも備えないものがあってよい。また、発電装置103は、太陽電池を用いるものに限らず、風力発電、地熱発電など、他の再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電装置あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
需要家施設100が備える発電装置103や蓄電池104は、商用電源と系統連系されている。これにより、発電装置103または蓄電池104を備える需要家施設100は、発電装置103が発電して出力する電力または蓄電池104が放電により出力する電力を商用電源の電力系統(配電網)に逆潮流させて、電力系統を通して売電することができる。
【0026】
なお、図1に示す本実施形態の電力管理エリア10は、例えば一般送配電事業者と計画値同時同量制度に対応した契約を結んでいる。つまり、電力管理エリア10の運用者は、電力管理エリア10としての電力受給計画を所定の単位計画時間(例えば、30分)ごとに策定し、策定された電力受給計画を一般送配電事業者に提出する。そのうえで、電力管理エリア10における電力受給の実績が電力受給計画に対して過不足(インバランス)を生じた場合には、電気事業者と一般送配電事業者との間でインバランスに対応する精算(インバランス精算)が行われる。
【0027】
本実施形態における電力受給計画は、発電計画と需要計画とを含む。発電計画は、配電網に逆潮流させる電力についての電力管理エリア10全体としての計画値や、需要家施設100の個別の計画値があり得る。需要計画は、配電網から順潮流で購入する電力についての電力管理エリア10全体としての計画値や、需要家施設100の個別の計画値があり得る。
【0028】
本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、発電計画と需要計画とのそれぞれについて実績が計画通りに達成されることが求められる。つまり、本実施形態が対応する計画値同時同量制度では、電力管理エリア10から逆潮流される電力の実績が発電計画に対して過不足のないことが求められるとともに、電力管理エリア10として順潮流を受ける電力の実績が需要計画に対して過不足のないことが求められる。なお、本実施形態において、発電電力とは配電網に逆潮流させる電力をいう。また、需要電力とは配電網から順潮流させる電力をいう。なお、本実施形態において、発電電力は、発電装置103が発電した電力と蓄電池104が放電した電力を含む。
【0029】
図1に示すように、需要家施設100は、それぞれネットワークNWと接続されることで、電力管理装置300と通信を行うことができる。
【0030】
電力管理装置300は、電力管理エリア10に属する需要家施設100全体における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、図1に示す電力管理装置300は、ネットワークNWを介して需要家施設100の各々と相互に通信が可能なように接続される。これにより、電力管理装置300は、需要家施設100が備える電気設備の運転を制御することができる。
【0031】
また、図3に示すように、需要家施設100は、電力メータ101、分電盤102、発電装置103、蓄電池104、負荷105、通信モデム106および需要家施設内コントローラ200を備える。即ち、図3は、発電装置103と蓄電池104とのいずれも備える需要家施設100の例を示している。
【0032】
電力メータ101は、需要電力と発電電力とを測定する。即ち、電力メータ101は、受給電力を測定する。受給電力は、例えば需要電力と発電電力との差分である。需要家施設100において、一般送配電事業者側の商用電源ラインDLから分電盤102に供給される電力が需要電力である。ここで商用電源ラインDLは、例えば図2に示す低圧配電線63~65等の構成要素である引き込み線に対応する。一方、発電装置103や蓄電池104から出力され、分電盤102から当該電力メータを経由して商用電源ラインDLに供給される電力が発電電力である。需要電力に対応する順潮流を正方向とした場合、順潮流に対応する需要電力に対して逆潮量に対応する発電電力が小さければ、受給電力は正の値として測定され、需要電力に対して発電電力が大きければ受給電力は負の値として測定される。電力メータ101は、例えば、1つの需要家施設100において使用される需要電力を測定する需要メータと、1つの需要家施設100において太陽光発電装置などの自然エネルギーを利用した発電装置103(エネルギー機器の一例)等によって発電された発電電力を測定する発電メータとを備える。
【0033】
分電盤102は、商用電源から供給された電力を、蓄電池104や負荷105などに分配して供給する。また、分電盤102は、発電装置103から出力される電力を逆潮流のために電力メータ101経由で商用電源ラインDLに出力させることができる。分電盤102は、契約電力を制限する配線用遮断器(ブレーカ;開閉器)1021を備えていてもよい。この配線用遮断器1021は、電力メータ101と、発電装置103、蓄電池104および負荷105とを接続する配線上で、契約電力を超える所定の電力に対応する電流が所定時間以上流れた場合にその接続を遮断する。発電電力は、この配線用遮断器1021を介して商用電源ラインDLへ逆潮流される。そのため、順潮流される電流と同様に、逆潮流される電流も契約電流で制限される。
【0034】
発電装置103は、太陽光を受けて発電を行う設備である。発電装置103は、太陽電池とPCS(Power Conditioning System)とを備える。発電装置103は、太陽光を受けて発電し、発電により得られた電力をPCSにより交流に変換して出力する。
【0035】
発電装置103にて発電された電力は、負荷105の電源として供給することができる。また、発電装置103にて発電された電力は、蓄電池104に充電することができる。また、発電装置103にて発電された電力は、分電盤102から電力メータ101を経由して商用電源ラインDLに出力することで逆潮流させることができる。
【0036】
蓄電池104は、充電のために入力される電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する設備である。蓄電池104は、例えば二次電池とインバータを備える。蓄電池104は電力の蓄積(充電)と蓄積された電力の出力(放電)を行う。インバータは、二次電池に充電するための電力を交流から直流に変換し、二次電池から放電により出力される電力を直流から交流に変換する。つまり、インバータは、二次電池が入出力する電力の双方向変換を行う。
【0037】
蓄電池104は、分電盤102を介して供給される商用電源の電力を入力して充電することができる。また、蓄電池104は、発電装置103により発電された電力を入力して充電することができる。また、蓄電池104は、蓄積された電力を負荷105の電源として供給することができる。また、蓄電池104は、蓄積された電力を分電盤102から電力メータ101を経由して商用電源ラインDLに出力することで逆潮流させることができる。
【0038】
負荷105は、需要家施設100において自己の動作のために電力を消費する所定の機器や設備などを一括して示したものである。なお、各需要家施設100が備える負荷としての機器や設備などの種類および数などはそれぞれ異なっていて構わない。負荷105は、分電盤102から供給される商用電源を入力して動作することができる。また、負荷105は、発電装置103により発電された電力を入力して動作することができる。また、負荷105は、蓄電池104から出力された電力を入力して動作することができる。
【0039】
また、この負荷105には、例えば、貯湯式給湯器105aがある。この貯湯式給湯器は、一定量の湯を貯湯する貯湯槽を備えており、電気エネルギーを利用して水を加熱することによって得られる湯を貯湯槽に蓄積する。蓄積された湯は、日中や夜間など需要家における任意のタイミングで利用することが可能である。また、電気エネルギーによって水を加熱するタイミングは、需要家施設内コントローラ200によって制御される。需要家施設には、貯湯式給湯器105aが設けられている需要家施設と設けられていない需要家施設があり得る。なお、本実施形態において、負荷105の一例として貯湯式給湯器105aである場合について説明するが、消費電力をコントロールできる負荷であればこれ以外であってもよく、例えば、蓄熱型空調機、衣類乾燥機、食器乾燥機、蓄電池(充電対象としての負荷)であってもよい。
【0040】
通信モデム106は、ネットワークNW経由で電力管理装置300と通信を行う。
【0041】
需要家施設内コントローラ200は、需要家施設100における電気設備(発電装置103、蓄電池104、負荷105および通信モデム106など)を制御する。また、需要家施設内コントローラ200は、電力メータ101にて測定される消費電力の情報を入力し、入力された消費電力の情報を各種制御に利用することができる。
【0042】
なお、図3においては、発電装置103と蓄電池104とのいずれも備える需要家施設100の例を示しているが、発電装置103と蓄電池104とについては、一方だけ備えている場合や両方とも備えていない需要家施設もあり得るため、その場合には、発電装置103、蓄電池104については、一方だけ備えていたり、両方とも備えていない需要家施設100があり得る。また、需要家施設100には、貯湯式給湯器105aが設けられている需要家施設100と設けられていない需要家施設100があり得る。
【0043】
図4は、需要家施設100において備えられる需要家施設内コントローラ200の構成例を示している。図4に示す需要家施設内コントローラ200は、外部通信インターフェース201、外部対応送受信部202、施設内通信インターフェース203、施設内対応送受信部204、電力収集部205、制御部206および記憶部207を備える。
【0044】
外部通信インターフェース201は、例えば通信モデム106を介してネットワークNW経由で通信を行う。外部対応送受信部202は、外部通信インターフェース201を利用してネットワークNW経由によるデータの送受信を制御する。
【0045】
施設内通信インターフェース203は、自己が備えられる需要家施設100における電気設備などと通信を行う。施設内対応送受信部204は、施設内通信インターフェース203経由で需要家施設100における電気設備との間でのデータの送受信を制御する。
【0046】
電力収集部205は、需要家施設100における電力関連の情報を収集する。例えば電力収集部205は、電力メータ101にて測定された受給電力の情報を収集することができる。また、電力収集部205は、発電装置103が発電する電力、蓄電池104の残量(蓄積電力)や充放電電力、負荷105等による負荷電力(消費電力)などを収集してよい。
【0047】
制御部206は、需要家施設内コントローラ200としての機能に対応する各種の制御を実行する。制御部206は、電力収集部205により収集された発電電力と需要電力との情報を、電力管理装置300に送信する。
【0048】
なお、電力メータ101は、例えばスマートメータとして、ネットワークNWを経由した通信線NL経由で、測定した受給電力の情報を電力管理装置300に送信できるようにしてもよい。この場合、電力収集部205が電力メータ101により測定された受給電力を収集する必要はない。なお、スマートメータは、電力量を計測し、計測した結果を通信で一般送配電事業者等に通知する機能を有する電力量計である。また、スマートメータには、電流制限機能(リミッタ機能)を備えるものがある。電流制限機能は、開閉器を用いて、通信によって設定された最大電流値を越えた場合に開閉器を遮断して、順潮流および逆潮流の電流を遮断する機能である。電流制限機能を用いることで、電力メータ101を介して順潮流および逆潮流する電流は、電流制限機能で設定された最大電流値で制限される。なお、最大電流値は、例えば、契約電力に対応させて設定される。
【0049】
記憶部207は、制御部206が利用する各種の情報が記憶される。
【0050】
図5は、電力管理装置300の構成例を示している。図5に示す電力管理装置300は、通信部301、制御部302、および記憶部303を備える。
【0051】
通信部301は、ネットワークNW経由で需要家施設100内の需要家施設内コントローラ200と通信を行う。
【0052】
制御部302は、電力管理エリア10内における各需要家施設100の電気設備の運転を制御する。本実施形態の制御部302は、算出部320、判定部321、計画値生成部322、電力制御部323を備える。
【0053】
算出部320は、電力管理エリア10におけるエリア電力計画値とエリア電力実績値と差に基づくインバランス値を電力管理エリア10の各需要家施設100の数で除したインバランス平均値を算出する。
【0054】
また、算出部320は、需要家施設100における需要実績と発電実績との差である実績値差を算出する。この需要家施設100における需要実績と発電実績との差の算出は、第1基準時間における需要実績と発電実績から算出する。ここで、第1基準時間は、将来の所定の単位計画時間における計画値を算出する時刻または時間に対応する。
【0055】
また、算出部320は、インバランス平均値を、電力管理エリア10における電力の需要不足、電力の需要余剰、電力の発電余剰、または電力の発電不足、のいずれか1つの状態に対応する値として算出する。
【0056】
判定部321は、算出部320が算出したインバランス平均値が、算出部320が算出した実績値差に収まるか否かを判定する。
【0057】
計画値生成部322は、判定部321の判定結果に基づいて、各需要家施設100についてインバランス平均値が実績値に収まる場合には、インバランス平均値に基づいて需要家施設100のエネルギー機器を制御する計画値を生成し、インバランス平均値が実績値に収まらない需要家施設100がある場合には、各需要家施設100について自需要家施設100の実績差に基づく範囲内となるようにしつつ、インバランス平均値を低減させるようにした需要家施設100のエネルギー機器を制御する計画値を生成する。ここで、需要家施設100における需要実績と発電実績は、需要家施設100に設けられた電力メータ101から得られる測定値に基づいて決まる。
【0058】
また、計画値生成部322は、判定結果に基づいて、需要家施設100におけるエネルギー機器から電力を提供するまたはエネルギー機器に電力を蓄積する制御を行なう計画値を生成する。また、計画値生成部322は、計画値を、第1基準時間から所定の時間だけ後の時間帯における計画値として生成する。第1基準時間に対して所定の時間だけ後の時間帯としては、例えば第1基準時間が午後2時である場合には、午後3時から午後3時30分までの時間帯である等、第1基準時間の後であって、第1基準時間における電力の使用傾向とは極端に変化しない時間帯であれば、任意の時間だけ後ろの時間帯を用いることができる。この時間帯としての時間の長さは、例えばデマンド時間の30分とすることができる。また、第1基準時間と次に到来する第1基準時間との間隔は任意であるが、例えばデマンド時間の30分とすることができる。これにより、第1基準時間の到来間隔と、時間帯としての時間の長さを対応させることで、制御を行なう管理がし易くなる。
【0059】
例えば、計画値生成部322は、発電装置の発電電力のピークを含むピーク期間に貯湯式給湯器105aの運転をするように制御する計画を生成する。発電電力のピークは、電力管理エリア10内の各需要家施設100の発電電力(計画値)の合計値におけるピークを用いてもよいし、需要家グループ毎の発電電力(計画値)の合計値をその需要家グループに所属する需要家施設100に用いるようにしてもよいし、個々の需要家施設100の発電電力(計画値)のピーク値を利用するようにしてもよい。また、計画値生成部322は、貯湯式給湯器105aを運転させるタイミングを発電電力のピーク時を含むようにしてもよいが、逆潮流可能な期間であって発電電力のピーク時を含まない期間において運転させるように、逆潮流させる電力を抑制させるタイミングに応じた期間として計画するようにしてもよい。
【0060】
また、計画値生成部322は、貯湯式給湯器105aを運転させる際に、発電電力だけでなく、自需要家に設けられた蓄電池104から貯湯式給湯器105aに電力を供給するよう放電制御を行う計画を生成するようにしてもよい。この場合、計画値生成部322は、貯湯式給湯器105aの運転の運転が停止された後に、逆潮流させる電力の一部を低減させる必要がある場合には、蓄電池104に充電をさせる充電制御をする。蓄電池104から放電して貯湯式給湯器105aを運転することで、蓄電池104の蓄電量がある程度低下するため、充電可能な容量を確保することができるため、貯湯式給湯器105aにおける加熱運転が十分に行なわれた後にさらに逆潮流を抑制させる必要がある場合には、蓄電池104に充電させることで逆潮流させる電力を抑えることができる。
【0061】
また、計画値生成部322は、貯湯式給湯器105aを運転させる際に自需要家に設けられた蓄電池104にも逆潮流させる電力の一部を供給して蓄電池104に充電するようにしてもよい。この場合、逆潮流させる電力を貯湯式給湯器105aと蓄電池104への蓄電との両方に利用することで、逆潮流させる電力をより低減させることができる。
【0062】
また、計画値生成部322は、需要家群を複数のグループに分けた需要家グループ毎(需要家グループGF01、GF02、GF03、GF10等)に貯湯式給湯器105aを運転させる期間が異なるような運転期間が割り当て、この運転期間において貯湯式給湯器105aを運転させるように計画を生成する。これにより、貯湯式給湯器105aを運転させるタイミングを異ならせることで、逆潮流させる電力をより長い期間に分散させて低減させることができる。例えば、運転期間がいずれも異なる期間となるように設定してもよいし、一部の期間が重なるようにした運転期間を設定するようにしてもよい。
【0063】
上述の構成においては、特に夏季において生じやすいインバランスであるが、冬季において生じやすいインバランスもある。例えば、冬季においては夏季に比べて日が短いため、夕方において太陽光発電による発電電力が夕方頃の時点でほぼ零となる。また、日暮れからは気温も低下する傾向があるため、電力を利用した暖房運転を行なう需要家施設100(一般住宅、商業施設、産業施設、企業ビル等)が増えると予想される。そこで、計画値生成部322は、所定の条件を満たした場合には、需要家施設100における買電電力を低減させつつ蓄電池104から放電して電力系統に逆潮流させる制御を行なう。この所定の条件としては、例えば、外部からの要請があった場合、すなわち計画値生成部322が電力系統側(例えば、送配電事業者、電力小売り、発電事業者等でもよい)から電力に関する要請を受信した場合、電力系統から電力の供給をうける買電電力が予め定められた基準値を超える場合等であってもよい。計画値生成部322は、このような所定の条件を満たした場合に、需要家施設100における買電電力を低減させつつ蓄電池104から放電して電力系統に逆潮流させる制御を行なう(例えば、電力制御部の一例)。すなわち、日中等の太陽光発電による発電電力によって蓄電池104に蓄電しておき、その蓄電電力を夕方などの電力の需要ピーク時において放電するが、放電する自需要家施設100の需要電力を零にするような放電を行なうだけでなく、さらに逆潮流させるように放電させることで、買電電力が買電電力よりも大きい需要家施設100に対して電力を供給することができ、これにより、電力管理エリア10における買電電力を低減させつつ、電力系統側に電力を逆潮流させることで、電力系統側において不足する電力の一部を賄うことができる。また、計画値生成部322が、外部である電力系統側から電力に関する要請を受信した場合には、この外部からの要請に応えて、蓄電池104の放電、貯湯式給湯器105aの通電時間を変更するようにしたので、当該外部において必要となった電力を供給させることができる。
【0064】
電力制御部323は、計画値生成部322が決定した計画値を各需要家施設100に向けて送信し、電力管理エリア10に対応して策定された電力の計画値が達成されるように電力管理エリア10に属する各需要家施設100における電力設備の制御を行う。ここで利用される計画値としては、計画値生成部322によって生成される計画値を用いる。
【0065】
記憶部303は、電力管理にあたって制御部302が利用する情報を記憶する。本実施形態の記憶部303は、発電計画情報331、需要計画情報332、需要家施設基本情報333を記憶する。
【0066】
発電計画情報331は、策定された発電計画による発電電力を示す情報である。需要計画情報332は、策定された需要計画による需要電力を示す情報である。
【0067】
需要家施設基本情報333は、電力管理エリア10における需要家施設100ごとについての基本的な情報を含む。1つの需要家施設100に対応する需要家施設基本情報には、対応の需要家施設100を一意に示す需要家施設ID(識別符号)、需要家施設100の契約電力の値、発電装置103の定格出力の値、蓄電池104の定格出力の値、対応の需要家施設100において備えられる電力設備や貯湯式給湯器105aに関する情報、対応の需要家施設100が備える需要家施設内コントローラ200のアドレスなどの情報が含まれる。
【0068】
上記構成による本実施形態の電力管理装置300は、電力管理エリア10に対応して策定された計画値に基づく電力管理計画が達成されるようにするための制御(計画値同時同量制御)を実行する。図6図7図8および図9のフローチャートを参照して、本実施形態の電力管理装置300が計画値同時同量制御に関連して実行する処理手順例について説明する。
【0069】
図6において、制御部302は、調整開始時刻に至ったか否か判断する(ステップS101)。本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、例えば、デマンド時間である30分の単位計画時間ごとに各需要家施設100の発電電力と需要電力とを集計し、集計した結果に基づいて単位計画時間ごとの発電計画と需要計画とを含む電力の計画値を策定する。調整開始時刻は、単位計画時間が開始されるタイミングに対応する。調整開始時刻が到来しない場合には(ステップS101-NO)、一定時間のウエイト処理の後、調整開始時刻に至ったか否かを再度判断する。調整開始時刻に至ったと判断された場合には(ステップS101-YES)、制御部302は、計画値に基づく電力制御処理を実行する(ステップS102)。
【0070】
そして、制御部302は、ステップS101に対応して開始された単位計画時間が終了したか否かについて判定する(ステップS103)。電力制御部323は、単位計画時間が終了していないうちは(ステップS103-NO)、ステップS102の電力制御を継続する。そして、単位計画時間が終了すると(ステップS103-YES)、図6に示す処理が終了される。
【0071】
図7のフローチャートは、図6に示すステップS102としての計画値に基づく電力制御処理の一例を示している。
【0072】
制御部302は、ステップS101に対応して開始された現単位計画時間に対応する発電計画および需要計画を記憶部303に記憶される発電計画情報331、需要計画情報332から取得する(ステップS201)。
【0073】
また、制御部302は、電力管理エリア10に属する需要家施設100ごとの現在に対応する、実際に需要が生じている電力である実需要電力(受給電力ともいう)と実際に発電されている電力である実発電電力とを取得する(ステップS202)。ステップS202において、制御部302は、需要家施設100ごとの需要家施設内コントローラ200に対して受給電力要求を送信する。需要家施設内コントローラ200は、受給電力要求の受信に応じて、電力収集部205が電力メータ101から入力した受給電力の情報を電力管理装置300に送信する。ステップS202において、制御部302は、このようにして各需要家施設100の需要家施設内コントローラ200から送信された受給電力の情報をそれぞれ取得する。
【0074】
また、ステップS202において、制御部302は、需要家施設100ごとの需要家施設内コントローラ200に対して発電電力要求を送信する。需要家施設内コントローラ200は、発電電力要求の受信に応じて、電力収集部205が電力メータ101から入力した発電電力の情報を電力管理装置300に送信する。ステップS202において、制御部302は、このようにして各需要家施設100の需要家施設内コントローラ200から送信された発電電力の情報をそれぞれ取得する。
【0075】
制御部302は、ステップS201により取得された発電計画および需要計画と、ステップS202により取得された電力管理エリア10に属する需要家施設100ごとの現在に対応する実発電電力と実需要電力とに基づき、需要家施設100ごとのエネルギー機器についての制御目標値を決定する(ステップS203)。ここで、制御目標値とは、各需要家施設100が備える発電装置103(発電電力を制御できる場合)の発電電力の目標値、蓄電池104の充放電電力の目標値、負荷105(消費電力を制御できる場合)の消費電力の目標値を含む。なお、発電装置103、蓄電池104、または負荷105が独立して制御可能な複数の機器を有している場合、制御目標値は、機器毎に決定することができる。
【0076】
電力制御部323は、ステップS203により需要家施設100ごとに決定された制御目標値を、それぞれ、対応の需要家施設100に対して送信する(ステップS204)。
【0077】
制御目標値の受信に応じて、電力管理エリア10に属する各需要家施設100の需要家施設内コントローラ200は、発電電力または需要電力が制御目標値となるように蓄電池104の充放電制御等を行う。この結果、電力管理エリア10としての発電計画に対応する計画値同時同量制御が実行される。
【0078】
なお、図7に示す処理は、単位計画時間ごとに対応して1回行われるものであってもよいし、単位計画時間をさらに区分した一定時間ごとに行われるものであってもよい。
【0079】
次に、上述した図7に示すステップS203における需要家施設100ごとに制御目標値を決定する処理について、図8のフローチャートを用いてさらに説明する。
【0080】
制御部302の算出部320は、現段階における電力管理エリア10のインバランス平均値を算出し、判定部321が、算出部320が算出したインバランス平均値が算出部320が算出した実績値差に収まるか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301において、判定部321は、電力管理エリア10において算出されるインバランス平均値が、電力の需要不足、電力の需要余剰、電力の発電余剰、電力の発電不足、のいずれであるかを判定する。
【0081】
発電計画に対して発電実績が大きく、また、各需要家施設100から逆潮流される電力が、逆潮流の計画値よりも大きくなるインバランス(電力の発電余剰)であることが算出される場合(ステップS301-逆潮流が多い状態)、計画値生成部322は、逆潮流させる電力の一部を、その逆潮流を行なう需要家施設100における貯湯式給湯器105aを運転させるようにする計画値を生成する(ステップS302)。
【0082】
例えば、夏季において、一般住宅では、自需要家施設における需要電力よりも発電電力の方が大きくなり、その発電された余剰電力を逆潮流しやすくなる傾向がある。その場合、計画していた逆潮流の電力値を超えて逆潮流をすることとなった場合には、電力管理エリア10における全体への影響が少なくなるように、まずは自需要家施設100において、逆潮流させる発電計画値に近づけるように、自需要家施設100において負荷を増やす。この際、負荷のうち貯湯式給湯器105aを運転させることで、他の時間帯において電力を使用する量を低減しつつ、湯を利用することができる。また、夏季において日中において水を加熱する場合には、外部から供給される水の水温が、ある程度高い状態であると考えられるため、水温が低い状態よりも少ない電気エネルギーで水温を上昇させることができ、貯湯する目標温度に到達させるまでに必要なエネルギーが少ない状態で水温を上げることができる。また、気温が高いため、貯湯式給湯器105a内における水温が低下し難いため、熱のロスを抑えることができる。
【0083】
ステップS302では、計画値生成部322は、発電電力のピーク時において貯湯式給湯器105aを運転させるような計画値を生成してもよいし、発電電力のピーク時を含まない時間帯であって逆潮流を行なっている期間において貯湯式給湯器105aを運転させる計画値を生成してもよい。
【0084】
また、ステップS302において、計画値生成部322は、電力の発電余剰が予め決められた基準値よりも大きい場合には、発電電力によって貯湯式給湯器105aを運転させるだけでなく、蓄電池104に充電させるような計画値を生成するようにしてもよい。また、貯湯式給湯器105aを運転させ、貯湯式給湯器105aにおける水温が目標温度に達した場合には、貯湯式給湯器105aに必要が電力が少なくなるため、貯湯式給湯器105aに必要な電力が低減するタイミングに応じて、蓄電池104を発電電力によって充電させるようにしてもよい。これにより、逆潮流させる電力値そのものは、貯湯式給湯器105aの運転に必要な電力が低下することにともなって低下するが、逆潮流させる電力を低減させる期間を延ばすことができる。このように、貯湯式給湯器105aを運転させるタイミングや、蓄電池104に充電させるタイミングは、特定の需要家施設100のインバランスの状態に応じて決めてもよいし、複数の需要家施設のインバランスの組み合わせを考慮して決めるようにしてもよい。
【0085】
また、発電電力が貯湯式給湯器105aや蓄電池104に供給しても余剰する場合には、他の需要家施設において電力の需要余剰が生じている需要家施設に電力を供給するような計画値を生成してもよい。ステップS302において、計画値生成部322によって計画値が生成されると、電力制御部323は、得られた計画値を、各需要家施設100に対して制御目標値として送信する(図7のステップS204)。各需要家施設100は、この制御目標値として送信された計画値に従って、需要家施設100内に電力管理を行なう。
【0086】
一方、ステップS301において、電力の需要余剰であるインバランス平均値であることが算出された場合(ステップS301-発電量が少なく、需要が多い状態)、計画値生成部322は、蓄電池104から放電して自需要家施設100の需要を賄いつつ、需要家グループ単位で各需要家施設100で逆潮流も行う計画値を制御目標値として生成する(ステップS303)。ステップS303では、計画値生成部322は、例えば、その放電を行なう需要家施設100における電力需要が零となるように、すなわち、その需要家施設100における買電電力が零となるように蓄電池104から放電をしつつ、逆潮流も行なうような放電量となるように、計画値を生成する。
【0087】
例えば、冬季では日照時間が夏季に比べて短くなるため夕方においては、太陽光発電による発電量が大幅に低下(例えば零)し、電力の需要も増大する。このため、計画値生成部322は、蓄電池104から放電を行なう需要家施設100における電力需要が零となるようにしつつ、逆潮流も行なうことで、逆潮流された電力を電力系統に逆潮流させつつ、自身の買電電力を低減させることができる。これにより、蓄電池104から放電を行なう需要家施設100については需要電力を抑えることができ、かつ、電力系統においては、不足する電力の一部を逆潮流される電力によって賄うことができる。
【0088】
ステップS303において、計画値生成部322によって計画値が生成されると、電力制御部323は、得られた計画値を、各需要家施設100に対して制御目標値として送信する(図7のステップS204)。各需要家施設100は、この制御目標値として送信された計画値に従って、需要家施設100内に電力管理を行なう。
【0089】
一方、「逆潮流が多い状態」または「発電量が少なく、需要が多い状態」に該当しない場合におけるインバランスである場合には(ステップS301-他のインバランスの状態)、計画値生成部322は、そのインバランスの状態に応じて、インバランスを低減するための計画値を生成する(ステップS304)。計画値生成部322によって計画値が生成されると、電力制御部323は、得られた計画値を、各需要家施設100に対して制御目標値として送信する(図7のステップS204)。各需要家施設100は、この制御目標値として送信された計画値に従って、需要家施設100内に電力管理を行なう。
【0090】
次に、上述したステップS303における需要家施設100ごとに逆潮流を行う場合の計画値を制御目標値として生成する処理について、図9のフローチャートを用いてさらに説明する。図9に示す処理において、計画値生成部322は、まず、電力管理エリア10内の各需要家施設100について、発電計画および需要計画と、需要家施設100毎の現在の実発電電力と実需要電力とに基づき、需要家施設100毎の制御目標値を算出する(ステップS401)。次に、計画値生成部322は、電力管理エリア10の全体での各需要家施設100の各蓄電池104からの放電電力の制御目標値の合計値を算出する(ステップS402)。
【0091】
次に、計画値生成部322は、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力と需要家グループ毎の放電電力の余力のいずれか小さい方に応じて各需要家グループへの放電電力の割り当て量を決定する(ステップS403)。本実施形態において、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力とは、各需要家施設100において許容される最大の逆潮流電力と各需要家施設100からの逆潮流電力との差分を需要家グループGF01、GF02、GF03、GF10、…毎に合計した値である。ここで、各需要家施設100において許容される最大の逆潮流電力は、例えば、配線用遮断器、スマートメータの電流制限機能等による制限がある場合、契約電力(定格電力)である。あるいは、配線用遮断器等による制限がない場合、電力系統側(例えば、送配電事業者、電力小売り、発電事業者等でもよい)との間で事前に取り決めた値とすることができる。あるいは、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力は、例えば、配電線や配電設備等の設備上あるいは配電系統の電圧や周波数の安定性や電圧、電流、電力等の安全性上の制限によって、需要家グループ毎に決められた値であってもよい。また、各需要家施設100からの逆潮流電力は、例えば、逆潮流電力の実績値、逆潮流電力の実績値から放電電力の実績値を差し引いた値、電力需給の計画値に基づいて予定される逆潮流電力の計画値、電力需給の計画値に基づいて予定される逆潮流電力の計画値から放電電力の計画値を差し引いた値等とすることができる。
【0092】
また、需要家グループ毎の放電電力の余力とは、需要家施設100が有する各蓄電池104から少なくとも単位計画時間(あるいは単位計画時間を区分した所定の時間)継続して放電可能な電力の値を、需要家グループGF01、GF02、GF03、GF10、…毎に合計した値である。継続して放電可能な電力の値は、蓄電池104が満充電に近い状態である場合、通常、放電電力の定格値(最大出力値)である。あるいは、継続して放電可能な電力の値は、蓄電池104が満充電されていない場合、例えば、充電状態に応じて放電電力の定格値(最大出力値)より小さな値となる。
【0093】
例えば、電力管理エリア10の全体での制御目標値における放電電力の合計値が50kWであり、図2に示す需要家グループGF01の逆潮流電力の余力と放電電力の余力の小さい方が20kW、需要家グループGF02の逆潮流電力の余力と放電電力の余力の小さい方が30kW、そして、需要家グループGF03の逆潮流電力の余力と放電電力の余力の小さい方が50kWであるとする。ステップS403において計画値生成部322は、例えば、放電電力の制御目標値の50kWを、余力(の小さい方)の割合に応じて需要家グループGF01、GF02およびGF03へ割り当てる。この場合、計画値生成部322は、需要家グループGF01、GF02およびGF03へそれぞれ10kW、15kwおよび25kWの放電電力を割り当てる。あるいは、ステップS403において計画値生成部322は、例えば、放電電力の制御目標値の50kWを、できるだけ余りがでないように、需要家グループGF01、GF02およびGF03へ割り当てる。この場合、計画値生成部322は、例えば、需要家グループGF01およびGF02へそれぞれ20kWおよび30kWの放電電力を割り当てる。あるいは、計画値生成部322は、例えば、需要家グループGF03へ50kWすべての放電電力を割り当てる。
【0094】
ここで、図11を参照して、図9のステップS403の処理の構成例について説明する。図11は、図9のステップS403で、計画値生成部322が、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力と需要家グループ毎の放電電力の余力のいずれか小さい方に応じて各需要家グループへの放電電力の割り当て量を決定する処理の一例を示すフローチャートである。なお、この処理で用いられる逆潮流電力の余力には所定の初期値が設定されているものとする。図11に示す処理では、計画値生成部322が、まず、送配電系統の監視情報が更新されたか否かを判定する(ステップS501)。送配電系統の監視情報とは、送配電系統における所定の配電線に流れる電流、線間の電圧、送配電容量、送り出し電圧等の実測結果を表す情報である。送配電系統の監視情報は、例えば、送配電事業者等が設置した計測装置で所定の周期で計測し、計測した結果を、送配電事業者等からあるいは計測装置から直接、電力管理装置300が通信回線を介して受信した情報である。送配電系統の監視情報が更新された場合(ステップS501-YES)、計画値生成部322は、送配電系統の監視情報に基づいて逆潮流電力の余力を算出し、算出結果に基づいて逆潮流電力の余力を更新する(ステップS502)。その算出の際、計画値生成部322は、例えば、逆潮流電力の余力の値を所定の安全率を用いて安全側に調整することができる。
【0095】
一方、送配電系統の監視情報が更新されていない場合(ステップS501-NO)、または、送配電系統の監視情報に基づいて逆潮流電力の余力が更新された場合(ステップS502)、計画値生成部322は、送配電事業者から受信した逆潮流余力情報が有効か否かを判定する(ステップS503)。逆潮流余力情報とは、送配電事業者等が設定した逆潮流電力の余力の値を表す情報であり、電力管理装置300は送配電事業者等から通信回線を介して受信する。逆潮流余力情報は、例えば一定の時間毎、あるいは、任意のタイミングで送配電事業者等が更新する。例えば、何らかの不具合等によって更新が止まってしまった場合、逆潮流余力情報は所定の期間後に無効となるように設定されている。なお、逆潮流余力情報の更新が停止した場合、計画値生成部322は、逆潮流の余力の初期値あるいはステップS502で更新された値を逆潮流電力の余力の値として用いることができる。送配電事業者から受信した逆潮流余力情報が有効な場合(ステップS503-YES)、計画値生成部322は、逆潮流余力情報に基づいて逆潮流電力の余力を更新する(ステップS504)。
【0096】
一方、送配電事業者から受信した逆潮流余力情報が有効でない場合(ステップS503-NO)、または、逆潮流余力情報に基づいて逆潮流電力の余力が更新された場合(ステップS504)、計画値生成部322は、送配電事業者から受信した逆潮流抑制指令が有効か否かを判定する(ステップS505)。逆潮流抑制指令とは、送配電事業者等が任意のタイミングで指令する逆潮流電力の制限値を示す情報であり、電力管理装置300は送配電事業者等から通信回線を介して受信する。電力管理装置300は、逆潮流抑制指令を受信した場合、即座にあるいは指定された時間内にあるいは指定された時刻までに、逆潮流電流量を指定された制限値以下に抑制することが求められる。逆潮流抑制指令は、例えば、その指令を解除する旨の指示を送配電事業者等が送信した場合、その指令に有効期間が設定されていた場合にその有効期間が経過したとき等に無効となる。送配電事業者から受信した逆潮流抑制指令が有効な場合(ステップS505-YES)、計画値生成部322は、逆潮流抑制指令に基づいて逆潮流電力の余力を更新する(ステップS506)。
【0097】
一方、送配電事業者から受信した逆潮流抑制指令が有効でない場合(ステップS505-NO)、または、逆潮流抑制指令に基づいて逆潮流電力の余力が更新された場合(ステップS506)、計画値生成部322は、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力と放電電力の余力のいずれか小さい方に応じて各需要家グループへの放電電力の割り当て量を決定する(ステップS507)。
【0098】
なお、図11に示す例では、送配電系統の監視情報、逆潮流余力情報または逆潮流抑制指令に基づいて、逆潮流電力の余力が更新されるが、その際、逆潮流抑制指令、逆潮流余力情報および送配電系統の監視情報の順に優先度が設定されている。すなわち、例えば、逆潮流抑制指令が有効な場合、逆潮流余力情報や送配電系統の監視情報に基づいて更新された逆潮流電力の余力は、逆潮流抑制指令に基づいて更新される(上書きされる)。なお、逆潮流電力の余力は、例えば送配電系統の部位毎に設定されていてもよく、その場合、部位毎に優先順位に応じて値が更新される。また、送配電系統の監視情報、逆潮流余力情報または逆潮流抑制指令のいずれか1つまたは2つによる更新を省略してもよい。また、図11に示す例では、需要家グループに割り当てる前の逆潮流電力の余力が送配電系統の監視情報、逆潮流余力情報または逆潮流抑制指令に基づいて、逆潮流電力の余力が更新されるので、需要家グループ毎の逆潮流電力の余力も送配電系統の監視情報、逆潮流余力情報または逆潮流抑制指令に基づいて、逆潮流電力の余力が更新されることになる。
【0099】
次に、計画値生成部322は、需要家グループ毎に各需要家施設100の放電電力の制御目標値を決定する(ステップS404)。ステップS404において、計画値生成部322は、ステップS403で各需要家グループに割り当てた放電電力を、需要家グループ毎に、各需要家グループに属する各需要家施設100に割り当てる。その際、計画値生成部322は、各需要家グループに割り当てた放電電力の全部を当該需要家グループ内の需要家施設100に対して割り当ててもよいし、一部を割り当ててもよい。また、計画値生成部322は、逆潮流電力の余力と放電電力の余力を有する各需要家施設100の全部に放電電力を所定の割合で割り当ててもよいし、逆潮流電力の余力と放電電力の余力を有する複数の需要家施設100のうちの一部に放電電力を所定の割合で割り当ててもよい。なお、割り当てを行う放電電力の大きさ、あるいは、割り当てを行う需要家施設100の数を一部にした場合、全部にする場合と比較して放電電力の変化が配電網に与える影響を小さくすることができる。また、複数の需要家施設100のうちの一部に放電電力を所定の割合で割り当てる場合、全部に所定の割合で割り当てる場合と比較して、各需要家施設100に割り当てられる放電電力の大きさを大きくすることができる。この場合、放電時の変換効率をより高くすることができる。
【0100】
また、ステップS404での各需要家施設100への放電電力の割り当ての際に、計画値生成部322は、例えば、当該需要家グループに割り当てられた放電電力が、当該需要家グループに属する各需要家施設100の放電電力の余力の合計値および逆潮流電力の余力の合計値を上回っている場合、放電電力を、各需要家施設100に対して平均的に割り当てたり、時間毎に振り分けて割り当てたりすることができる。
【0101】
ここで、図10を参照して、計画値生成部322が、需要家グループ毎に各需要家施設100へ放電電力を割り当てる例について説明する。図10は、ある需要家グループ(需要家グループGP01とする)に5つの需要家施設100が属する場合に、各需要家施設100に放電電力の制御目標値を設定する例を示す。この場合、各需要家施設100の需要家施設IDをA、B、C、DおよびEとする(以下、各需要家施設100を需要家施設A、B、C、DおよびEと呼ぶ)。図10に示す例では、需要家施設A、B、C、DおよびEは、発電装置103として太陽光発電装置を備え、発電能力(定格値)がそれぞれ6kW、5kW、5kW、6kWおよび8kWである。また、需要家施設A、B、C、DおよびEは、蓄電池104を備え、放電能力(定格値)がそれぞれ2kW、2kW、3kW、3kWおよび2kWである。また、需要家施設A、B、C、DおよびEの定格電力(契約電力)は、それぞれ7kW、6kW、8kW、8kWおよび9kWである。また、需要家施設A、B、C、DおよびEの現在の発電電力は、それぞれ5kW、4.5kW、4.8kW、5.2kWおよび7kWである。また、需要家施設A、B、C、DおよびEの現在の負荷消費電力は、それぞれ1kWである。また、需要家施設A、B、C、DおよびEの現在の蓄電池104の充放電電力はそれぞれ0kWである(不図示)。この場合、現在の逆潮流電力(=「現在の発電電力」-「現在の負荷消費電力」-「充放電電力」)は、需要家施設A、B、C、DおよびEで、それぞれ4kW、3.5kW、3.8kW、4.2kWおよび6kWである。また、現在の発電電力の余力(=「太陽光発電能力」-「現在の発電電力」)は、需要家施設A、B、C、DおよびEで、それぞれ1kW、0.5kW、0.2kW、0.8kWおよび1kWである。また、現在の逆潮流電力の余力(=「定格電力」-「現在の逆潮流電力」)は、需要家施設A、B、C、DおよびEで、それぞれ3kW、2.5kW、4.2kW、3.8kWおよび3kWである。また、現在の放電電力の余力は、需要家施設A、B、C、DおよびEで、それぞれ2kW、2kW、3kW、3kWおよび2kWである。
【0102】
また、この例では、計画値生成部322が、5つの需要家施設100のうち3つの(おおむね50%の)需要家施設100に放電電力を割り当てることとしている。また、計画値生成部322による各需要家施設100への放電電力の割り当ては、逆潮流電力の余力以下である限り、放電電力の余力一杯に設定されることとしている。
【0103】
また、計画値生成部322が、5つの需要家施設100のうちから3つの需要家施設100を選択する仕方は、一例として現在の発電電力の余力が大きい方から3つを選択することとしている。ここで、現在の発電電力の余力が大きいということは、発電電力がより大きくなる可能性があるということである。発電電力がより大きく変化する可能性がある需要家施設100に放電電力を割り当てることで、実際に予想より大きく発電電力が増加した場合でも、当該需要家施設100が放電電力を減少させることで、逆潮流電力が契約電力を超えることを防止しやすくなる。なお、発電電力の余力は、例えば太陽電池モジュールの発電電圧によって観測することもできる。すなわち、例えば、発電電圧が定格電圧より小さい場合、発電電力の余力がより大きいと推定することができる。なお、各需要家グループに属する各需要家施設100への放電電力の割り当ては、発電電力の余力の大きい順あるいは発電電圧が低い順に限定されない。各需要家施設100への放電電力の割り当てを、発電電圧が高い順にしてもよい。この場合、機会損失を回避することができる。
【0104】
上記条件で、需要家施設A、B、C、DおよびEが属する需要家グループGP01に例えば10kWの放電電力の制御目標値が割り当てられているとすると、計画値生成部322は、まず、需要家施設A、B、C、DおよびEにおいて、現在の発電電力の余力が大きい方から3つを選択する。図10に示す例では、計画値生成部322が、現在の発電電力の余力が大きい順に、需要家施設A=需要家施設E、需要家施設Dの3つを選択する。次に、計画値生成部322は、需要家グループGP01に対して割り当てられた10kWの放電電力を超えないように、選択した需要家施設A、EおよびDに対して、現在の放電電力の余力の値を設定する。図10に示す例では、計画値生成部322が、需要家施設A、需要家施設Eおよび需要家施設Dの放電電力の制御目標をそれぞれ2kWに設定する。また、計画値生成部322は、残りの2つの需要家施設Bおよび需要家施設Cの放電電力の制御目標をそれぞれ0kWに設定する。
【0105】
以上のように、本実施形態の電力管理システム1は、発電装置103と蓄電池104の少なくとも一方を有する需要家施設100が1または複数属する複数の需要家グループ(グループ)をグループ単位で管理するシステムであって、計画値生成部322と、電力制御部323とを備える。計画値生成部322は、グループ毎の逆潮流電力の余力に基づいて蓄電池104からの放電電力の計画値を各グループに割り当て、その割り当てに応じて各グループに属する需要家施設100毎の放電電力の計画値を決定する。電力制御部323は、計画値生成部322が決定した放電電力の計画値を各需要家施設100に向けて送信する。この構成によれば、逆潮流電力の余力に応じて複数の需要家施設100に対して放電電力を割り当てることができるので、逆潮流を利用した電力調整の調整力を容易に向上させることができる。
【0106】
また、計画値生成部322は、需要家施設100毎の逆潮流電力の制限値を超えないように放電電力の計画値を決定するので、配電網への悪影響を容易に回避することができる。
【0107】
また、計画値生成部322は、各グループに割り当てた蓄電池104からの放電電力の計画を、各グループに属する需要家施設100毎の一部に割り当てるように放電電力の計画値を決定するので、急激に潮流が変化することを容易に回避することができる。
【0108】
また、需要家グループが、放電電力を逆潮流させる配電網の構成に対応するものとした場合、配電網の安定性や安全性をより容易に確保することができる。
【0109】
このように、需要家施設100の貯湯式給湯器105a、発電装置103、蓄電池104等の種々の設備を利用することで、一般住宅等の大口需要家に比べて需要電力が小さい需要家であっても、夏季な冬季等の時期によらず、電力の調整力を確保することができる。
【0110】
なお、冬季において、日中の時間帯において発電装置103によって発電を行なうが、翌日(制御対象日)の太陽光発電が不足することが予測される場合には、制御対象日を迎える前日の夜間(深夜)において買電電力によって蓄電池104を充電するようにしてもよい。夜間(深夜)においては、日中や夕方に比べて需要が少ないため、電力系統側においても需要のピークとは重ならないため、電力系統側への影響を少なくすることができる。
【0111】
上述したように冬季あるいは夏季においても、需要家施設100における複数の機器を制御させることで、一般住宅等の大口需要家に比べて需要電力が小さい需要家であっても、年間を通して安定した調整力を提供することができる。
【0112】
なお、上述した実施形態において、計画値を計画値生成部322が生成する場合について説明したが、インバランスを解消させる量を各需要家施設100に割り当て、その割り当てられたインバランスを解消させる指示を電力管理装置300から需要家施設内コントローラ200に送信し、需要家施設内コントローラ200(例えば制御部206)が、指示されたインバランスの値に応じて計画値を生成するようにしてもよい。
【0113】
上述した実施形態における電力管理装置300、需要家施設内コントローラ200等をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0114】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 電力管理システム、10 電力管理エリア、100 需要家施設、101 電力メータ、102 分電盤、103 発電装置、104 蓄電池、105 負荷、105a 貯湯式給湯器、106 通信モデム、200 需要家施設内コントローラ、201 外部通信インターフェース、202 外部対応送受信部、203 施設内通信インターフェース、204 施設内対応送受信部、205 電力収集部、206 制御部、207 記憶部、300 電力管理装置、301 通信部、302 制御部、303 記憶部、320 算出部、321 判定部、322 計画値生成部、323電力制御部、331 発電計画情報、332 需要計画情報、333 需要家施設基本情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11