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特許7007206軒天構造、軒先側支持部材及び軒元側支持部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】軒天構造、軒先側支持部材及び軒元側支持部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/30 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
E04B9/30 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018009522
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019127735
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅士
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄太
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-043819(JP,U)
【文献】特開2007-297829(JP,A)
【文献】特開2000-170312(JP,A)
【文献】特開2000-080752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/62-1/99
E04D 1/00-3/40,
13/00-15/07
E04F 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材と、前記軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材とを備えている軒天構造において、前記軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記上側部と下側部とを繋ぐ縦板部とを備え、前記縦板部に、屋内方向に雌螺子部を設け、前記雌螺子部に、軒元側に進行させて前記軒天板を軒元側方向に押し付ける螺子を螺合させたことを特徴とする軒天構造。
【請求項2】
請求項1に記載の軒天構造において、前記軒先側支持部材の前記上側部又は下側部に、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部を備えることを特徴とする軒天構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の軒天構造において、前記軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記上側部又は下側部に形成されており、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部と、を備えることを特徴とする軒天構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の軒天構造、軒先側支持部材及び軒元側支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
軒天井板の納まりにおいては、軒天板の表面から釘・螺子によって軒天板を建物側に固定するのが一般的である。その場合、釘・螺子部の補修が必要となり、その箇所が目立つという不具合があった。また、一部金物を使用しても軒天板の表面から釘・螺子を一切使用しないのは困難であった。
【0003】
特許文献1には、互いに対向する外壁と鼻板にそれぞれ軒天井材を挿入支持する挿入溝が形成され、外壁側挿入溝内には軒天井材の抜け止め用の係止片が形成され、前記両挿入溝内に軒天井材の両端が挿入されて支持される軒天井取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-285246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記軒天井取付構造は、軒天井材の前記両挿入溝内への挿入力で軒天井材の端部を係止し、この係止によって、軒天井材の軒元支持側から軒先支持側間の方向における軒天井材のガタツキを防止することが可能になると考えられるものの、前記係止が不十分であった場合や、経年変化による係止力の低下等が生じた場合等には、軒天井材のガタツキを適切に防止することができない。
【0006】
そこで、この発明は、前記従来技術のような係止を採用せずに、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向における軒天板のガタツキを適切に防止できる軒天構造、軒先側支持部材及び軒元側支持部材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するこの発明の軒天構造は、軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材と、前記軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材と、前記軒先側支持部材に設けられており、前記軒天板を軒元側に付勢する横方向付勢部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成であれば、軒天板に経年変化による軒元支持側から軒先支持側間の方向の痩せが生じたとしても、この痩せに前記横方向付勢部が追従して軒天板を軒元側に押すので、当該方向の経年によるガタツキを防止することができる。
【0009】
また、この発明の軒天構造は、軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材と、前記軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材と、前記軒元側支持部材に設けられており、前記軒天板を軒先側に付勢する横方向付勢部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成であれば、軒天板に経年変化による軒元支持側から軒先支持側間の方向の痩せが生じたとしても、この痩せに前記横方向付勢部が追従して軒天板を軒先側に押すので、当該方向の経年によるガタツキを防止することができる。
【0011】
前記軒先側支持部材は、前記軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記上側部又は下側部に形成されており、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部と、を備えてもよい。この構成であれば、軒天板の軒先側における軒天板の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板の軒先側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0012】
前記軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記上側部又は下側部に形成されており、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部と、を備えてもよい。この構成であれば、軒天板の軒元側における軒天板の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板の軒元側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0013】
前記軒先側支持部材は桁行方向に間隔をおいて複数配置されており、これら軒先側支持部材及び前記横方向付勢部が軒先側見切によって覆われており、前記軒先側見切に設けた通気孔形成部の通気孔を通して軒天裏と屋外とが連通してもよい。この構成であれば、軒天裏の換気が行えるようになる。
【0014】
前記軒先側見切には、前記通気孔を通して浸入した水を下方に落とす水返しが形成されていてもよい。この構成であれば、軒天裏への雨水の浸入を抑制できる。
【0015】
前記軒先側見切の内側には、火災時の熱で膨張する熱膨張防火材が、膨張時に前記通気孔を遮蔽するように配置されていてもよい。この構成であれば、火災時において炎が前記通気孔から軒天裏に入り込むのを抑制できる。
【0016】
また、この発明の軒先側支持部材は、軒天板の軒先側を支持する軒先側支持部材であって、前記軒天板を軒元側に付勢する横方向付勢部を備えることを特徴とする。また、この軒先側支持部材は、前記軒天板の軒先側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒先側の下側に位置する下側部と、前記上側部又は下側部に形成されており、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部と、を備えてもよい。
【0017】
また、この発明の軒元側支持部材は、軒天板の軒元側を支持する軒元側支持部材であって、前記軒天板を軒先側に付勢する横方向付勢部を備えることを特徴とする。また、この軒元側支持部材は、前記軒天板の軒元側の上側に位置する上側部と、前記軒天板の軒元側の下側に位置する下側部と、前記上側部又は下側部に形成されており、前記軒天板をその厚み方向に付勢する厚み方向付勢部と、を備えてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明であれば、軒天板の軒元支持側から軒先支持側間の方向(軒の突出方向、梁間方向)における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板のガタツキを防止できる。また、軒天板に経年変化による軒元支持側から軒先支持側間の方向の痩せによるガタツキも防止することができる。また、厚み方向付勢部を備えると、軒天板の厚みのバラツキによる厚み方向のガタツキも防止することがで、軒下から軒天板の支持箇所が見えるような場合でも、当該支持箇所において段差を見えにくくできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態にかかる軒天構造の側面視による説明図である。
図2図1の軒天構造で用いられている軒元側見切の側面視を示した説明図である。
図3図1の軒天構造で用いられている軒元側支持部材の平面と正面と側面を示した説明図である。
図4図1の軒天構造で用いられている軒先側支持部材及び釘を示した立体図である。
図5図4のA-A矢視断面図である。
図6】同図(a)は図1の軒天構造で用いられている軒先側見切の側面視を示した説明図であり、同図(b)は軒先側見切の通気孔を示した説明図である。
図7】本発明の他の実施形態にかかる軒天板を斜めに配置した軒天構造の軒元側の側面視を示した説明図である。
図8図7の軒天構造で用いられている軒元側支持部材の平面と正面と側面を示した説明図である。
図9】本発明の他の実施形態にかかる軒元側支持部材の平面と正面と側面を示した説明図である。
図10】本発明の他の実施形態にかかる軒元側支持部材の側面を示した説明図である。
図11】本発明の他の実施形態にかかる軒元側支持部材の平面と正面と側面を示した説明図である。
図12】本発明の他の実施形態にかかる軒先側支持部材等の側面を示した説明図である。
図13】本発明の他の実施形態にかかる軒天構造の側面視による説明図である。
図14】本発明の他の実施形態にかかる軒元側支持部材の平面と正面と側面を示した説明図である。
図15】本発明の他の実施形態にかかる軒先側支持部材等の側面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づき具体的に説明する。図1に示すように、この実施形態の軒天構造においては、軒元側見切1及び軒元側支持部材(金物)2が、軒元側軒天野縁5の下面から上向きに打ち込まれた釘(螺子でもよい)4によって、当該軒元側軒天野縁5に固定されている。前記軒元側軒天野縁5は、水平に打ち込まれた図示しない釘によって、外壁材及び外壁下地に固定されている。
【0021】
前記軒元側見切1は、桁行方向に長い長尺部材(例えば3000mm程度)とされるのに対し、前記軒元側支持部材2は桁行方向に間隔(例えば455mm間隔)を置いて配置される短尺部材とされる。前記釘4は、前記軒元側支持部材2及び前記軒元側見切1の上側部を貫通して前記軒元側軒天野縁5の下面に打ち込まれている。前記軒元側支持部材2は前記軒元側見切1ごと前記軒元側軒天野縁5に釘固定されている。
【0022】
前記軒元側見切1は、図2にも示すように、上側部と、下側部と、これらを繋ぐ立上部とを備えて断面略コ字形状を有している。また、前記軒元側支持部材2も同様に、上側部21と、下側部22と、これらを繋ぐ立上部23とを備えて断面略コ字形状を有している。
【0023】
前記軒元側見切1は、前記軒元側支持部材2の外面を覆うことができるように、当該軒元側支持部材2よりも一回り大きくされている。この軒元側見切1の上側部は、前記軒元側軒天野縁5の下面に当接しており、前記立上部は外壁材あるいは外壁下地の表面に当接している。
【0024】
また、前記軒元側支持部材2の上側部21は、例えば水平配置される軒天板17の軒元側の上側に位置しており、下側部22は前記軒天板17の軒元側の下側に位置しており、立上部23側に前記軒天板17の屋内側の端面が向けられる。
【0025】
そして、前記軒元側見切1の上側部の屋外側端は、下側に折り返されており、この折り返された部分は、前記軒元側支持部材2の上側部21の屋外側端に係止される。同様に、前記軒元側見切1の下側部の屋外側端は、上側に折り返されており、この折り返された部分は、前記軒元側支持部材2の下側部22の屋外側端に係止される。
【0026】
また、前記軒元側支持部材2における下側部22の屋外側端の両縁部には、一部が切り込まれて略中央部が上側に突出するように屈曲された山状突出部(厚み方向付勢部)2aが形成されている。前記山状突出部2aの先端裾側は、下側部22と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の下面によって当該山状突出部2aが徐々に下方に押されていくことになる。そして、この山状突出部2aは、バネ性を備えており、前記軒天板17の下面に押されて下方に撓むとともに、当該軒天板17を前記上側部21の方向(軒天板17の厚み方向)に押し上げる。
【0027】
さらに、前記軒元側支持部材2における立上部23の内側面(屋外側面)には前記軒天板17の屋内側の端面を受けて、前記軒天板17を軒先側に付勢する横方向付勢部25が設けられている。この横方向付勢部25は、図3にも示すように、例えば、前記立上部23の略中央側にバーリング加工によって形成された横円筒部251と、この横円筒部251に係止された曲げ板バネ252とからなる。前記曲げ板バネ252の中央側には円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に前記横円筒部251が圧入やカシメ等によって係止される。また、例えば、曲げ板バネ252は上記係止位置から離れる端側ほど軒天板17の端面に近づくように曲げられている。前記曲げ板バネ252は、前記軒天板17の屋内側の端面を受けて弾性変形し、この弾性変形によって前記軒天板17を軒先側に付勢する。なお、前記曲げ板バネ252はビスや接着剤等を用いて前記立上部23に固定されてもよい。
【0028】
一方、軒先側では、軒先側支持部材(金物)3が、軒先側の建物下地である鼻隠し下地12の下面側から上向きに打ち込まれた釘(螺子でもよい)18によって、前記鼻隠し下地12に固定されている。また、前記軒先側支持部材3を覆い隠すように軒先側見切14が取り付けられる。
【0029】
前記軒先側見切14は、上側部と、下側部と、これらを繋ぐ斜め立上部とを備えて断面略Z字形状をなしている。前記軒先側見切14の上側部の屋外側端は、上側に折り返されている。同様に、前記軒先側見切14の下側部の屋外側端も、上側に折り返されており、この折り返された部分は、前記軒先側支持部材3の下部側を越えたところに位置している。
【0030】
また、前記軒先側見切14は、桁行方向に長い長尺部材(例えば3000mm程度)とされるのに対して、前記軒先側支持部材3は、桁行方向に間隔(例えば455mm間隔)を置いて配置される短尺部材とされる。そして、前記軒先側見切14は、前記鼻隠し下地12の下面側から上向きに打ち込まれた釘(螺子でもよい)19によって、前記鼻隠し下地12の下面に固定されている。前記鼻隠し下地12の屋外側には軒先側の建物部材である鼻隠し11が取り付けられる。前記鼻隠し11は、その下端部が前記軒先側見切14の下端よりも下方に突出するように設けられている。
【0031】
前記軒先側支持部材3は、図4及び図5にも示すように、上側部31と、下側部32と、これらを繋ぐ縦板部33とを備えている。上側部31は、鼻隠し下地12への取り付け部を成すとともに、前記軒天板17の軒先側の上側に位置する部位にもなる。また、前記取り付け部には、前記釘18を通す挿通孔3aが形成されている。
【0032】
また、前記軒先側支持部材3の前記縦板部33は、例えば、上側部31の一部を切り込んで縦方向(軒天板17の端面と平行となる方向)に折り曲げて成るものであり、また、前記下側部32は、例えば、前記縦板部33の端側が横方向に折り曲げられて、前記軒天板17の軒先側の下側に位置する。また、前記縦板部33の略中央位置には、バーリング加工等によって例えば屋内方向に突出する円筒状部が形成されており、この円筒状部内に横方向の雌螺子部3bが形成されている。そして、前記雌螺子部3bには、屋外側から螺子6が螺合されており、この螺子6をドライバーや六角レンチ等によって回すことで、前記軒天板17を軒元側に押し込むことができる。なお、図示はしないが、前記螺子6の先端と前記軒天板17の端面との間に板部材を介在させるようにしてもよい。
【0033】
前記軒天構造を施工する手順としては、例えば、前記軒元側支持部材2を前記軒元側見切1に装着した状態で、前記軒元側支持部材2を、所定ピッチとなる位置において釘4によって前記軒元側軒天野縁5に固定する。そして、前記軒天板17の軒元側を前記軒元側支持部材2に差し込み、また、前記軒天板17の軒先側に前記軒先側支持部材3を仮装着した状態で、この軒先側支持部材3を、前記釘18によって前記鼻隠し下地12の下面に固定する。なお、前記の仮装着の状態では、前記螺子6を緩める方向に回しておく。そして、前記螺子6を締める方向に回すことにより、当該螺子6を軒元側に進行させて前記軒天板17を軒元側方向に押し付ける。この押し付けにより、前記横方向付勢部25の曲げ板バネ252は、前記軒天板17によって屋内方向に押されて弾性変形し、また、この弾性変形によって、前記軒天板17を軒先側方向に付勢することになる。その後に、前記軒先側見切14及び前記鼻隠し11を取り付ける。もちろん、施工手順はこのような順序に限らない。
【0034】
また、図6にも示すように、前記軒先側見切14の斜め立上部は、例えば、複数のスリット状の通気孔14aが形成された通気孔形成部をなしていてもよい。前記通気孔14aを通して、軒天裏と屋外とが連通することになる。また、前記通気孔形成部は、前記鼻隠し下地12に対向して位置するとともに、下側ほど前記鼻隠し11に近づくように傾斜しており、軒下側から雨水が前記通気孔14aに入り難くなっている。さらに、前記軒先側見切14の内側には、火災時の熱で膨張する熱膨張防火材7が、膨張時に前記通気孔14aを遮蔽するように配置されている。例えば、前記熱膨張防火材7は、テープ状に形成されており、前記軒先側見切14の下側部の内面上であって前記螺子6の頭部の下方側で且つ前記通気孔14aの下方側となる位置において桁行方向に貼られている。
【0035】
このような構成の軒天構造であれば、前記螺子6によって軒天板17が軒元側に押されるとともに、前記横方向付勢部25が軒天板17を受けることにより、軒天板17の軒元支持側から軒先支持側間の方向における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板のガタツキを防止できるようになる。さらに、軒天板17に経年変化による軒元支持側から軒先支持側間の方向の痩せが生じたとしても、この痩せに前記横方向付勢部25が追従して軒天板17を軒先側に付勢するので、当該方向の経年によるガタツキも防止することができる。
【0036】
また、前記軒先側支持部材3及び前記螺子6を前記軒先側見切14によって覆う一方、前記軒先側見切14に設けた通気孔形成部の通気孔14aを通して軒天裏と屋外とを連通させることで、軒天裏の換気が行えるようになる。
【0037】
また、前記軒先側見切14の内側に熱膨張防火材7が配置されていると、火災時において炎が前記通気孔14aから軒天裏に入り込むのを抑制できる。
【0038】
また、前記軒元側支持部材2が、前記軒天板17を前記上側部21の方向に付勢する山状突出部(厚み方向付勢部)2aを備えていると、軒天板17の軒元側における軒天板17の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板17の軒元側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0039】
また、図7に示すように、前記軒天板17を軒先側が低くなる傾斜配置で設けることもできる。この傾斜配置の構成で用いられる軒元側支持部材2Aは、図8にも示すように、上側部21の端部が上側に折り曲げられた取り付け部24を有している。そして、この取り付け部24に釘4が挿通され、この釘4が斜め上方向に軒元側軒天野縁5に打ち込まれることで、当該軒元側支持部材2Aが軒元側軒天野縁5に固定されている。そして、この軒元側支持部材2Aにおいても、前記横方向付勢部25を備えることができる。
【0040】
また、この傾斜配置の構成で用いられる軒元側見切は、図示はしないが、上側部の端部が上側に折り曲げられて前記取り付け部24に沿うようになっており、この曲げ部分に釘4が打ち込まれる。なお、軒先側においては、鼻隠し下地12を軒天勾配と垂直の取り合いとすることができる。この形態において、軒元側支持部材2Aを軒元側見切(先付け)の後で固定する場合もある。
【0041】
また、前記横方向付勢部25に替えて、図9に示すように、横方向付勢部25Aを用いてもよい。この横方向付勢部25Aは、前記立上部23の中央よりも端側にバーリング加工によって形成された横円筒部251Aと、この横円筒部251Aに係止された曲げ板バネ252Aとを備える。前記曲げ板バネ252Aの端側には円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔に前記横円筒部251Aが圧入やカシメ等によって係止される。また、曲げ板バネ252Aは、中央側ほど軒天板17の端面に近づくように湾曲されている。前記曲げ板バネ252Aは、前記軒天板17の屋内側の端面を受けて弾性変形し、この弾性変形によって前記軒天板17を軒先側に付勢する。
【0042】
また、前記横方向付勢部25等に替えて、図10に示すように、横方向付勢部25Bを用いてもよい。この横方向付勢部25Bは、前記立上部23にバーリング加工によって形成された横円筒部251Bと、この横円筒部251Bに横向きで係止されたコイルバネ252Bとを備える。前記コイルバネ252Bは、その一端側が前記横円筒部251Aに外嵌或いは螺合等されることで係止される。前記コイルバネ252Bは、前記軒天板17の屋内側の端面を受けて縮み、この縮みによって前記軒天板17を軒先側に付勢する。
【0043】
また、前記横方向付勢部25等に替えて、図11に示すように、横方向付勢部25Cを用いてもよい。この横方向付勢部25Cは、前記立上部23の両端側において一部が切り込まれて例えば下端側が屋外側(軒先側)に突出するように屈曲された片状部位253からなっている。そして、この片状部位253は、バネ性を備えており、前記軒天板17の屋内側端面に押されて屋内側に撓むとともに、当該軒天板17を軒先方向に付勢する。また、かかる構成では、前記片状部位253は前記立上部23の一部を利用して作製されることになり、別途バネ等を必要としないので、コスト低減を図ることができる。
【0044】
また、図12に示すように、前記軒先側支持部材3の縦板部33の内側面(屋内側面)に、前記軒天板17の屋外側の端面を受けて、前記軒天板17を軒元側に付勢する横方向付勢部35が設けられていてもよいものである。この横方向付勢部35は、例えば、前記縦板部33の両端において一部が切り込まれて例えば下端側が屋内側(軒元側)に突出するように屈曲された片状部位351からなっている。そして、この片状部位351は、バネ性を備えており、前記軒天板17の屋外側端面に押されて屋外側に弾性変形するとともに、この弾性変形によって当該軒天板17を軒元方向に付勢する。もちろん、前記横方向付勢部35は、片状部位351に限らず、曲げ板バネ等を用いて構成されていてもよい。また、この軒先側支持部材3についても、例えば、その下側部32の屋内側端の両縁部に、一部が切り込まれて略中央部が上側に突出するように屈曲された山状突出部(厚み方向付勢部)3cが形成されていてもよい。前記山状突出部3cの先端裾側は、下側部32と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の下面によって当該山状突出部3cが徐々に下方に押されていくことになる。この山状突出部3cは、バネ性を備えており、前記軒天板17の下面に押されて下方に撓むとともに、当該軒天板17を前記上側部31の方向(軒天板17の厚み方向)に押し上げる。これによれば、軒天板17の軒先側における軒天板17の厚み方向の支持隙間の発生も防止できるようになり、軒天板17の軒先側での前記厚み方向のガタツキも防止できる。
【0045】
また、図13に示すように、前記軒先側支持部材3の縦板部33に、前記軒天板17の屋外側の端面を受けて、前記軒天板17を軒元側に付勢する横方向付勢部35Aが設けられていてもよい。前記縦板部33には、例えばバーリング加工等によって屋内方向に突出する円筒状部が形成されており、この円筒状部内に横方向の雌螺子部3bが形成されている。前記横方向付勢部35Aは、前記雌螺子部3bと、この雌螺子部3bに螺合されたコイルバネ60とからなる。前記コイルバネ60は屋外側から螺合されており、弾性によって前記軒天板17を軒元側に押し込むことができ、軒天板17の軒元支持側から軒先支持側間の方向における支持隙間の発生を防止して当該方向における軒天板17のガタツキを防止できるようになる。また、軒天板17に経年変化による軒元支持側から軒先支持側間の方向の痩せが生じたとしても、この痩せに前記コイルバネ60が追従して軒天板17を軒元側に押すことができるので、当該方向の経年によるガタツキを防止することができる。
【0046】
また、前記軒元側支持部材2(2Aも同様)は、例えば、図14に示すように、上側部21に谷状突出部(厚み方向付勢部)2bが形成されていてもよい。この谷状突出部2bは、前記上側部21の屋外側端の両縁部に一部が切り込まれて略中央部が下側に突出するように屈曲されている。前記谷状突出部2bの先端側は、上側部21と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の上面によって当該谷状突出部2bが徐々に上方に押されていくことになる。そして、この谷状突出部2bは、バネ性を備えており、前記軒天板17の上面に押されて上方に撓むとともに、当該軒天板17を前記下側部22の方向(軒天板17の厚み方向)に押し下げる。
【0047】
また、前記軒先側支持部材3は、例えば、図15に示すように、上側部31に谷状突出部(厚み方向付勢部)3dが形成されていてもよい。この谷状突出部3dは、前記上側部31の屋内側端の両縁部に一部が切り込まれて略中央部が下側に突出するように屈曲されている。前記谷状突出部3dの先端裾側は、上側部31と略面一の高さにあり、差し込まれる前記軒天板17の上面によって当該谷状突出部3dが徐々に上方に押されていくことになる。そして、この谷状突出部3dは、バネ性を備えており、前記軒天板17の上面に押されて上方に撓むとともに、当該軒天板17を前記下側部32の方向(軒天板17の厚み方向)に押し下げる。
【符号の説明】
【0048】
1 :軒元側見切
1A :軒元側見切
2 :軒元側支持部材
2A :軒元側支持部材
2a :山状突出部(厚み方向付勢部)
2b :谷状突出部(厚み方向付勢部)
3 :軒先側支持部材
3a :挿通孔
3b :雌螺子部
3c :山状突出部(厚み方向付勢部)
3d :谷状突出部(厚み方向付勢部)
4 :釘
5 :軒元側軒天野縁
6 :螺子
7 :熱膨張防火材
12 :下地
14 :軒先側見切
14a :通気孔
17 :軒天板
18 :釘
21 :上側部
22 :下側部
23 :立上部
24 :取り付け部
25 :横方向付勢部
25A :横方向付勢部
25B :横方向付勢部
25C :横方向付勢部
31 :上側部
32 :下側部
33 :縦板部
35 :横方向付勢部
35A :横方向付勢部
60 :コイルバネ
251 :横円筒部
251A :横円筒部
251B :横円筒部
252 :曲げ板バネ
252A :曲げ板バネ
252B :コイルバネ
253 :片状部位
351 :片状部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15