(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】鼻隠部材および屋根
(51)【国際特許分類】
E04D 13/152 20060101AFI20220117BHJP
E04D 13/158 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
E04D13/152 Z
E04D13/158 501R
(21)【出願番号】P 2018018790
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 雅之
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-233603(JP,A)
【文献】特開平09-158428(JP,A)
【文献】特開2007-092427(JP,A)
【文献】特開2010-031645(JP,A)
【文献】特開平11-350681(JP,A)
【文献】実開平07-006355(JP,U)
【文献】特開2013-044088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/152
E04D 13/158
E04D 13/15
E04D 13/143
E04D 3/40
E04D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒先に取付可能な正面主板部と、該正面主板部の下端側に形成された鼻先見切部とからなり、該鼻先見切部の上側に、
前記正面主板部および前記鼻先見切部より内側に窪んだ水切部が設けられ、前記水切部に、換気口が設けられ
、
前記水切部は、下側に水受部を有し、
前記水受部は、前記正面主板部よりも内側となる位置に設けられ、
前記換気口は、窪んだ前記水切部における前記水受部に連続する部分に設けられていることを特徴とする鼻隠部材。
【請求項2】
請求項1に記載の鼻隠部材において、
前記水切部は、上側に水切縁部を有していることを特徴とする鼻隠部材。
【請求項3】
請求項
2に記載の鼻隠部材において、
前記水受部は、前記水切縁部の下側に離隔して設けられていることを特徴とする鼻隠部材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の鼻隠部材において、
前記換気口は、板状部に孔部を形成したものとされることを特徴とする鼻隠部材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項
4のいずれか1項に記載の鼻隠部材を備えていることを特徴とする屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鼻隠部材および屋根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅などの建物では、屋根の軒部分の先端(軒先)に鼻隠部材が取付けられている。このような鼻隠部材には、換気口を有しているものがある(例えば、特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5298379号公報
【文献】特開2015-34409号公報
【文献】特許第4880084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載された鼻隠部材では、換気口は、鼻隠部材の正面や底面などのような外部から見え易い位置に設けられていたので、見栄えが悪いなどの問題があった。また、換気口を外部から見え易い位置に設けることで、換気口には、外部からの雨水の侵入を防止する手段が必要になるので、換気口の形状や構造が複雑になったり、換気性能が低下したりするなどの問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、主に、上記した問題点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の鼻隠部材は、軒先に取付可能な正面主板部と、該正面主板部の下端側に形成された鼻先見切部とからなり、該鼻先見切部の上側に、前記正面主板部および前記鼻先見切部より内側に窪んだ水切部が設けられ、前記水切部に、換気口が設けられ、前記水切部は、下側に水受部を有し、前記水受部は、前記正面主板部よりも内側となる位置に設けられ、前記換気口は、窪んだ前記水切部における前記水受部に連続する部分に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成によって、換気口を外部から見え難いように設けて、鼻隠部材の見栄えの向上を図ると共に、換気口周辺の構造簡易化や換気性能の向上などを図り得るようにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態にかかる屋根の軒部分を側方から見た縦断面図である。
【
図2】
図1の部分拡大図(
図3のA-A線に沿った位置の縦断面図)である。
【
図4】(a)は鼻隠部材の正面図、(b)は
図4(a)の鼻隠部材の側面図である。
【
図5】(a)は
図4(a)の水切部の部分拡大図、(b)は
図5(a)の水切部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図5は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0010】
<構成>以下、構成について説明する。
図1に示すように、戸建住宅などの建物1における、建物本体2の上部に屋根3を設ける。この屋根3を、建物本体2の外側(図中左側)へ向かって下り勾配に傾斜する傾斜屋根とする。この屋根3の軒部分4の先端(軒先)に、鼻隠部材5を取付ける。
【0011】
ここで、建物1は、どのような構造のものであっても良いが、例えば、ユニット建物などとすることができる。ユニット建物は、予め工場で製造した建物ユニットを建築現場へ搬送して建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに建物1を構築できるものである。
【0012】
建物本体2は、主に、建物1の居住空間または居室部分を構成するものである。建物本体2の外面には外壁材6が取付けられる。
【0013】
屋根3は、ユニット建物の場合、主に、屋根パネル7によって構成される。屋根パネル7は、例えば、矩形状のパネル枠8や垂木や野地板などでできた屋根構造体の上面に、屋根面材9などを貼設したものなどとされる。屋根パネル7(の屋根面材9)の上には、必要に応じて、瓦材やスレート材や鋼板製屋根材などの屋根葺材11などが敷設される。屋根面材9と屋根葺材11との間には、防水シートなどが介在される。
【0014】
屋根3の軒部分4は、建物本体2(の外壁材6の位置)よりも外側に張出した部分のことである。軒部分4の先端(軒先)は、軒部分4の水下側の端部またはその周辺のことである。軒部分4の下面側には、軒天井材12が貼設される。軒天井材12は、ほぼ水平に設置しても良いが、この場合、傾斜した屋根3と平行になるように、屋根パネル7の下面に沿って、軒先側へ下り勾配に傾斜させて設置されている。屋根パネル7の下面と軒天井材12との間には、若干の隙間が形成されている。なお、軒先側は、建物本体2から離れた側のことであり、軒元側は、建物本体2に近い側のことである。
【0015】
軒天井材12は、建物本体2や外壁材6の上端部と、パネル枠8や屋根構造体における軒先側の位置にほぼ水平に設けられた横材13(または横枠材13)との間に設置されている。軒天井材12の上端部は、取付金具14などを介して外壁材6の上端部や建物本体2(の天井梁2a)などに取付けられる。軒天井材12の下端部は、例えば、木レンガ15aや受材15bなどの補助部材を介して、横材13に間接的に取付けられる。
【0016】
鼻隠部材5には各種のものが存在しているが、この実施例では、上記した横材13の表面などを覆う金属製の化粧材とされている。鼻隠部材5は、横材13の長手方向へ延びる長尺の部材とされる。鼻隠部材5は、横材13に沿って複数連設することができる。鼻隠部材5どうしの接続には、鼻隠部材5とほぼ同一の側面形状をした帯板状の繋ぎ部材などを用いることができる。鼻隠部材5は、例えば、長期耐久性に優れたフッ素樹脂塗料を塗装して成るフッ素樹脂塗装鋼板などで構成することができる。鼻隠部材5の外側(軒先側)には、ブラケット16(軒樋支持具)を介して軒樋17が設置される。
【0017】
横材13は、屋根パネル7の軒先の位置にほぼ垂直に立てた状態で配置された屋根構造材となっている。横材13は、この実施例にかかる鼻隠部材5を取付けない場合には、そのまま鼻隠部材として使用することもできる。
【0018】
なお、パネル枠8や屋根構造体の下面の軒先側における、軒天井材12の軒先側の縁部と、横材13との間となる位置には、必要に応じて、鋼製の鼻先水切材18が取付けられる。鼻先水切材18は、断面ほぼC字状をして横材13の長手方向へ延びる部材とされる。鼻先水切材18は、断面ほぼC字状の開口部分が軒先側で且つ斜め下向きに開いた状態でパネル枠8の下面に設置される。鼻先水切材18の底面からは、ほぼ水平な状態に対して軒先側へ向かう排水勾配を有する水切り用の縁部が軒先側へ向けて突設されている。鼻先水切材18は、例えば、フッ素樹脂塗装鋼板などで構成することができる。
【0019】
上記した各部材は、釘やねじなどの各種の固定具19によって適宜固定される。
【0020】
そして、上記のような基本的または全体的な構成に対し、この実施例は、以下のような構成を備えている。
【0021】
「鼻隠部材5について」
【0022】
(1)
図2(~
図4)に示すように、鼻隠部材5は、軒先に取付可能な正面主板部21と、正面主板部21の下端側に形成された鼻先見切部22とからなっている。
そして、鼻先見切部22の上側に、水切部23が設けられる。
更に、この水切部23に、換気口24が設けられる。
【0023】
ここで、鼻隠部材5は、一枚の鋼板を曲げ加工することなどによって一体に形成することができる。
【0024】
軒先には、主に、上記した横材13と、横材13よりも軒先側へ張出した屋根面材9の軒先側の縁部と、横材13よりも軒元側に位置する軒天井材12の軒先側の縁部と、が存在している。
【0025】
正面主板部21は、主に、横材13の外表面(となる縦面)に当接固定されて横材13の外表面を覆うもの(カバー部)とされる。正面主板部21と横材13の外表面との間には、必要に応じて防水シートなどが介在される。正面主板部21の下部などには、固定具19を外側から横に差込んで正面主板部21を横材13へ固定するための取付孔21aを適宜形成するようにしても良い。但し、取付孔21aは、現場で加工形成するなどしても良い。
【0026】
正面主板部21の上部には、必要に応じて、軒先側へ向けてほぼ水平に延びる横延設部25と、横延設部25の先端部から軒先側へ向けて斜め上方へ延びる傾斜部26とが一体に形成される。
【0027】
傾斜部26は、屋根面材9とほぼ垂直な方向へ延びて、屋根面材9の軒先側の縁部に当接係止される。傾斜部26は、屋根面材9の板厚のほぼ1.5倍から2倍程度の長さなどとされている。横延設部25は、傾斜部26の下端部の位置(横材13の上端部よりも若干低い位置)にて、ほぼ横材13からの屋根面材9の張出量程度の長さに延びて、傾斜部26の下端部と正面主板部21の上端部との間を横に繋ぐように設けられる。
【0028】
鼻先見切部22は、横材13の下方で、軒天井材12の軒先側の端部よりも軒先側となる位置に、正面主板部21などと一体に設けられる。鼻先見切部22は、正面主板部21とほぼ面一な縦の面とされる。但し、鼻先見切部22は、外部から識別できない程度の僅かな量であれば、正面主板部21より軒先側に位置させても良い。
【0029】
鼻先見切部22の下端部は、軒天井材12を軒先側へ延長した線とほぼ重なる位置まで延ばされている。そして、鼻先見切部22の下端部からは、軒天井材12の下端部に達するまで軒元側へ延びて軒天井材12に取付けられる取付部28が一体に形成される。なお、上記した鼻先水切材18は、取付部28よりも上側に位置することで、鼻隠部材5の内側に収容される。或いは、鼻先水切材18は、鼻隠部材5によって隠される。
【0030】
鼻先見切部22と取付部28とによって形成される屈曲部分(または鼻先見切部22の下端部の位置)には、鼻隠部材5の主たる水切部(主水切部29)が、上記した水切部23とは別に設けられる。そして、上記屈曲部分が主水切部29の水切縁部となる。鼻先見切部22と取付部28は、共に水切縁部へ向かう下り勾配の面となる。主水切部29には、適宜、水抜穴31(
図4(a))を設けることができる。この水抜穴31は、(鼻先水切材18で水切りされるなどして)鼻隠部材5の内部に溜まった水を抜くなどのために設けられるものである。
【0031】
取付部28は、軒先側に比較的緩い第一傾斜部32を有し、軒元側に比較的急な第二傾斜部33を有している。第一傾斜部32は、ほぼ水平な状態に対して排水勾配を形成するように、軒先側へ向かって下り勾配に傾斜されており、第二傾斜部33は、軒天井材12とほぼ平行な角度で傾斜されている。このように、取付部28を第一傾斜部32と第二傾斜部33とで構成することにより、取付部28を第二傾斜部33のみで構成した場合と比べて、鼻隠部材5の上下寸法を短くして鼻隠部材5の見栄えを良くすることが可能になる。
【0032】
第二傾斜部33の端部には、軒天井材12などに対する取付けのための凹凸部34が設けられる。この凹凸部34は、取付部28の端部を補強すると共に、軒天井材12に対して当接固定される。この場合、凹凸部34は、側方から見て、軒天井材12側へ向かう凹部と、軒天井材12から離れる側へ向かう凸部とを有する矩形波状のものとされている。凹凸部34の凹部(の底部)には、固定具19を下側から差し込んで取付部28を軒天井材12や受材15bなどへ固定するための取付孔34aが適宜形成される。
【0033】
上記した水切部23は、換気口24を効果的に設置できるようにするために、鼻先見切部22の上側、または、正面主板部21と鼻先見切部22との間の位置に、上記した主水切部29とは別に設けられる(副水切部、第二水切部または、換気口用水切部など)。
【0034】
具体的には、水切部23は、鼻先見切部22の上側における、横材13の下端部よりも僅かに低い位置に設けられる。水切部23や換気口24は、鼻隠部材5に一体に設けられる。これらについては、後述する。
【0035】
(2)
図5に示すように、水切部23は、上側に水切縁部35を有するようにしても良い。
【0036】
ここで、水切縁部35は、正面主板部21の下端部から下方へ延びる下方延長部36と、下方延長部36の下端部から軒元側へ延びる横屈曲部37とで構成されている。下方延長部36と横屈曲部37によって形成される屈曲部分が水切縁部35となる。下方延長部36と横屈曲部37は、共に水切縁部35へ向かう下り勾配の面となる。
【0037】
横屈曲部37は、横材13の厚みとほぼ同じかそれよりも若干短い長さとされる。横屈曲部37は、ほぼ水平な状態に対して排水勾配を形成するように、軒先側へ向かって下り勾配に傾斜されている。下方延長部36は、横屈曲部37の傾斜量に応じた長さに形成される。この実施例では、水切縁部35は、換気口24とほぼ同じかそれよりも若干高い位置などに設けられる。
【0038】
(3)水切部23は、下側に水受部41を有するようにしても良い。
【0039】
ここで、水受部41は、水切縁部35の下側に設置されて、水切縁部35で水切りされた雨水などを受けるものとされる。そして、上記により、水切部23は、少なくとも、水切縁部35と、水受部41と、換気口24とを有するものとなる。水受部41は、換気口24よりも下側に設けられる。この実施例では、換気口24は、上下方向に対してほぼ水切縁部35と水受部41との間に位置される。
【0040】
(4)水受部41は、正面主板部21よりも内側となる位置に設けられるようにしても良い。
【0041】
ここで、正面主板部21よりも内側とは、正面主板部21と同じかそれよりも軒元側となる位置のことである。または、正面主板部21よりも内側とは、水受部41が、正面主板部21よりも軒先側に突出しないことである。水受部41は、全ての部分が正面主板部21よりも内側に位置しているのが好ましいが、外部から識別できない程度の僅かな量であれば一部が正面主板部21よりも軒先側に位置していても許容できる。
【0042】
(5)水受部41は、水切縁部35の下側に離隔して設けられるようにしても良い。
【0043】
ここで、水切縁部35から離隔とは、水受部41が水切縁部35に対して下方に離れた位置に設けられていることである。具体的には、水切縁部35を構成する横屈曲部37の軒元側の端部に下方へ向けて屈曲する下方屈曲部45を一体に設け、この下方屈曲部45の下端部に軒先側へ向けて屈曲する軒先側屈曲部46を一体に設ける。これら下方屈曲部45および軒先側屈曲部46によって、水切部23には(鼻隠部材5の長手方向へ延びて軒元側へ引っ込む)窪みが形成される。この窪み(の下側の軒先側屈曲部46)に水受部41を配置することで、水受部41を水切縁部35から離隔させるようにしている。
【0044】
そして、軒先側屈曲部46を軒先側へ向けて下り勾配となる傾斜面にしても良い。この傾斜面の少なくとも軒先側の部分(傾斜面の下側、または、窪みの手前側の部分)を水受部41としても良い。軒先側屈曲部46を傾斜面とすることにより、水受部41の有効面積をより大きくすることができる。
【0045】
水切縁部35と水受部41との上下方向の間隔47(窪みの入口の大きさ)は、下方屈曲部45の長さと、軒先側屈曲部46の傾斜角度とによってほぼ設定される。軒先側屈曲部46の傾斜角度は、軒天井材12の傾斜角度とほぼ同じかそれよりも大きな角度とされる(
図1参照)。
【0046】
軒先側屈曲部46の軒先側の端部は、正面主板部21とほぼ面一となる位置まで延ばされる。そして、軒先側屈曲部46の軒先側の端部を下方へ屈曲することで窪みの下側に鼻先見切部22が一体に形成される。この実施例では、上記した窪みの入口の高さは、鼻先見切部22の上下方向の長さとほぼ同程度となっている。軒樋17は、その下部によって上記した窪みの一部を隠すように正面主板部21へ取付けても良い(
図1参照)。
【0047】
(6)換気口24は、水受部41と連続して設けられるようにしても良い。
【0048】
ここで、連続とは、例えば、換気口24が水受部41に対して隣接して形成されることである。そのために、換気口24を、傾斜面とされた軒先側屈曲部46の軒元側の部分(傾斜面の上側、または、窪みの奥側の部分)に設けるようにする。これにより、軒先側屈曲部46の上で水受部41と換気口24とが窪みの奥行方向に連続される。この際、軒先側屈曲部46を傾斜面とすることにより、換気口24の有効面積をより大きくすることができる。
【0049】
更に、換気口24は、下方屈曲部45に対して設けるようにしても良い。この実施例では、換気口24は、下方屈曲部45の上側の位置などに設けられている。
【0050】
(7)換気口24は、板状部51に孔部52を形成したものとしても良い。
【0051】
ここで、板状部51は、傾斜面とされた軒先側屈曲部46や、縦面となっている下方屈曲部45などのことである。板状部51は、ほぼ水平に延びると共に、少なくとも孔部52を形成するのに必要な大きさの平坦な面を有するものとされる。
【0052】
孔部52は、例えば、ブリッジ付き孔のように孔部52を塞ぐ部分などを有さない完全な開口(貫通孔など)とするのが好ましい。孔部52は、板状部51に対して打抜加工などによって貫通形成することができる。この実施例では、孔部52を、所要の長さを有して横へ延びるほぼ長方形状や長円形状などのスリット孔としている。孔部52は、側方から見て、軒先側屈曲部46の上部に2本、下方屈曲部45の上部に1本、合計3本を1組にして形成されている。3本のスリット孔は、例えば、所要の長さに揃えて形成すると共に、鼻隠部材5の延設方向に沿って複数組形成することができる。但し、孔部52の設置個数や設置パターンなどは、上記に限るものではない。
【0053】
「屋根3について」
【0054】
(8)屋根3は、上記した鼻隠部材5を備えるようにしても良い。
【0055】
ここで、建物1の屋根3は、どのようなものとしても良いが、屋根3の軒先側に位置する水平な縁部(軒先)に設けられた横材13に対して鼻隠部材5を取付けることができる。特に、傾斜した屋根3の水下側に位置する水平な横材13(の外表面)に対して鼻隠部材5を取付けたものとするのが好ましい。
【0056】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0057】
(作用効果1)鼻隠部材5は、(屋根3の)軒先に対して、正面主板部21を取付けることによって、正面主板部21で軒先(の横材13など)を隠すと共に、正面主板部21で軒先を雨水や経年劣化などから保護することができる。また、正面主板部21の下端側に鼻先見切部22を形成することにより、屋根3の軒先の下側の形状を鼻先見切部22によって隠したり整えたりすることができる。
【0058】
また、鼻先見切部22の上側に水切部23を形成することにより、正面主板部21から鼻先見切部22へ向けて流下する雨水を途中で水切部23によって水切りすることができる。
【0059】
そして、鼻隠部材5が換気口24を有することにより、換気口24から軒先内部や小屋裏空間などの換気を行うことができる。この際、換気口24が水切部23に設けられることにより、水切部23で水切りを行う位置に換気口24が存在するので、または、換気口24の周辺で水切部23による水切りが行われるので、換気口24への雨水などの侵入を防止することが可能になる。
【0060】
更に、水切部23に換気口24を設けることにより、鼻隠部材5に水切部23や換気口24を一体に設けて、鼻隠部材5や換気口24の構造簡略化を図ることができる。そして、鼻先見切部22の上側に水切部23を設けて、水切部23に換気口24を形成することで、水切部23を利用して換気口24を目立たないように設置することなども可能になる。
【0061】
即ち、正面主板部21の下端側に位置する鼻先見切部22に水切部23を設けて、この水切部23に対して換気口24を設けることで、例えば、水切部23によって外部から見え難い部分などを創り出すことができる。そして、この外部から見え難い部分に換気口24を設置するようなことが可能となり、見栄えの向上を図ることが期待できる。
【0062】
また、水切部23によって創り出した外部から見え難い部分に換気口24を設けることで、換気口24に対して外部からの雨水が侵入し難くなる。そのため、形状や構造の複雑化や、換気性能の低下などを招くことなく、雨水が侵入し難い換気口24を得ることなども期待できる。
【0063】
(作用効果2)水切部23は、その上側に水切縁部35を有するようにしても良い。これにより、正面主板部21に沿って流下した雨水を水切部23の上側に設けた水切縁部35の位置で確実に水切りすることができる。そして、例えば、水切縁部35を、換気口24の上側となる位置などに換気口24を避けてうまく設けるようにすれば、雨水が換気口24へ入り込まなくなるように水切りを行わせることなども可能になる。
【0064】
(作用効果3)水切部23は、その下側に水受部41を有するようにしても良い。これにより、水切部23に水受機能を持たせて、例えば、(上側の)水切縁部35で水切りされた雨水を下側の水受部41にて受けさせることができる。よって、水切りを行う位置と水受けを行う位置(または水切りの経路)を特定することができる。そして、例えば、水受部41を、換気口24よりも下側に設けると共に、上記した水切りの経路を避けた位置に換気口24を設けるようにすれば、雨水が換気口24へ入り込まなくなるように水切りおよび水受けを行わせることなども可能になる。
【0065】
(作用効果4)水受部41を正面主板部21よりも内側となる位置に設けても良い。これにより、水受部41を外部から目立たないように設置することができる。よって、鼻隠部材5の外観品質を向上することができる。
【0066】
(作用効果5)水受部41を水切縁部35の下側に離隔して設けるようにしても良い。これにより、水切縁部35で水切りされた雨水を水切縁部35の下側に離隔した位置に設けられた水受部41で確実に受けることができる。また、水受部41を水切縁部35から離隔させることで、水切縁部35と水受部41との間に所要のスペースを確保することができる。そして、このスペースを有効活用することで、例えば、上記したように水受部41(や換気口24)を正面主板部21よりも内側の位置に設けることなどが容易または可能になる。
【0067】
(作用効果6)換気口24を水受部41と連続させて設けるようにしても良い。これにより、例えば、換気口24と水受部41とを一体化して鼻隠部材5や水切部23の構造の簡略化や省スペース化を図ることができる。そして、例えば、換気口24を水受部41の軒元側に連続して配置するようにした場合には、水受部41を正面主板部21よりも内側に設けることで、水受部41と連続する換気口24も正面主板部21より内側に位置されることになる。そのため、換気口24に雨水が直接かかったり、雨水が換気口24から内部へ侵入したりし難くすることができる。よって、換気口24に、別途外部からの雨水の侵入を防止するための手段などを設ける必要をなくすことなどが可能になる。
【0068】
(作用効果7)換気口24は、板状部51に対して孔部52を形成したものとしても良い。これにより、(窪みとなっている水切部23の内壁部分を構成する)板状部51に沿って外気(風など)が流れることで負圧吸引作用が発生して孔部52からの換気を促進する(または強制換気を行わせる)ことが可能になる。よって、簡単な構成で確実に換気(小屋裏換気など)を行わせることができる。
【0069】
この際、孔部52を貫通孔などのような完全に開口したものとすれば、例えば、孔部52をブリッジ付き孔などのように一部塞がれたものとした場合と比べて開口面積が大きくなるので、換気性能を向上することができる。
【0070】
特に、換気口24を正面主板部21よりも内側となる位置に設けるようにした場合には、位置的に外部から孔部52内へ雨水が侵入し難くなるので、換気口24を貫通孔としても支障が生じないようにできる。
【0071】
(作用効果8)本実施例の屋根3によれば、上記した鼻隠部材5と同様の効果を得ることができる。
【0072】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【符号の説明】
【0073】
3 屋根
5 鼻隠部材
21 正面主板部
22 鼻先見切部
23 水切部
24 換気口
35 水切縁部
41 水受部
51 板状部
52 孔部