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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ドレーン管の使用方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20220117BHJP
【FI】
E03F1/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018102378
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206843
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502231096
【氏名又は名称】株式会社サムシング
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 孝次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公一郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-115410(JP,U)
【文献】特開2004-218308(JP,A)
【文献】特開平09-145424(JP,A)
【文献】特開平11-021865(JP,A)
【文献】実開昭60-154425(JP,U)
【文献】特開2013-221378(JP,A)
【文献】特開2002-004393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水等を地中に浸透させるドレーン管の使用方法であって、不透水部と透水部を有するドレーン管を、該不透水部が地下伏流水脈を横断するように配設することを特徴とするドレーン管の使用方法。
【請求項2】
該ドレーン管は、筒状のドレーン管樹脂骨格と、該ドレーン管樹脂骨格の外側に配設される樹脂ブロック体と、を備えることを特徴とする請求項1記載のドレーン管の使用方法。
【請求項3】
該樹脂ブロック体は、透水性樹脂ブロック体と不透水性樹脂ブロック体の組み合せ体であり、該不透水部が、不透水性樹脂ブロック体であることを特徴とする請求項2記載のドレーン管の使用方法。
【請求項4】
該透水性樹脂ブロック体が、透水性多孔体であることを特徴とする請求項3記載のドレーン管の使用方法。
【請求項5】
該樹脂ブロック体が、円筒体又は半割り円筒体の組み付け円筒体であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載のドレーン管の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の雨水浸透施設を構築するドレーン管を、不透水部が地下伏流水脈層を横断するように配設するドレーン管の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な異常気象の影響で、我が国では1時間に60mmを越える降雨の頻度が増加する傾向にある。また、都市化も急ピッチで行われおり、これによって地表面から雨水浸透機能が低下しており、都市型洪水が頻発している。このため、雨水貯留浸透施設の開発や導入が進められている。雨水浸透施設については、比較的地表面に近い地盤で浸透を行う施設が主流で、より多くの浸透量を確保するためには、施設が大型化する傾向にある。
【0003】
例えば、特開2015-183493号公報には、難透水層G1の下層に透水層G2を有する地下において雨水を集めるとともに、地中に流出又は浸透させる雨水貯留浸透槽10を備え、雨水貯留浸透槽10には、透水層G2に連設する複数の浸透井20が設けられ、雨水貯留浸透槽10には、浸透井20を挿通させる貫通穴13が設けられ、貫通穴13と浸透井20との間に隙間S2を有し、浸透井20は、周面に複数の貫通孔が形成された外管21と内管22からなる二重管構造であり、且つ外管21と内管22との間に透水シート23が配置された構成の雨水貯留浸透設備1が開示されている。雨水貯留浸透設備1によれば、地下水位が高い地盤にも雨水貯留浸透槽を適用することができ、しかも簡単な構成により容易に設置することができる。
【0004】
これに対して、雨水浸透施設の省スペース化を目的にした縦型の雨水浸透施設が注目を浴びている。このような縦型の雨水浸透施設としては、図9及び図10に示すドレーン管が知られている。このドレーン管は、透水シート103を内包する内径85mmのポリプロピレン製の有孔円筒管(ドレーン管樹脂骨格)102を地中に埋設して縦型の雨水浸透施設100を構築する技術である。縦型の雨水浸透施設100において、ドレーン管樹脂骨格102を地中に埋設するには、例えば、先ず、オーガスクリューを装着した地中掘削装置を使用し、地中に、ドレーン管樹脂骨格102の外径より大の内径の掘削孔を形成する。次いで、形成された掘削孔に地表からドレーン管樹脂骨格102を挿入しつつ構築する。他の工法として、予めケーシングを建て込み、ケーシング内の土砂を螺旋羽根のついたドリルで地表に排出した後、ケーシング内にドレーン管を挿入し、その後、ケーシングを引き抜く方法もある。ドレーン管樹脂骨格102を地中に建て込んだ後、ドレーン管樹脂骨格102周りの隙間に、荒目の洗い砂(埋め戻し材)104を埋め戻す。これにより、粘土質の周辺土壌が付着して浸透面の浸透機能が低下することを防止する。この工法によれば、深度方向にドレーン管を延長することで、地上部の施設占有面積を拡大することなく、浸透面積を拡大することが可能であると共に、高い設計水頭が得られ、浸透施設の省スペース化が図れる。また、地表面付近が浸透不適地盤であっても、浸透対象層まで浸透施設を延長することで、適用が可能となる。また、内部に直径85mmの空洞を確保できるため、砕石で充填された従前の浸透施設よりも、単位容積当たりの貯留量が大きくなる。図9中、符号Aは浸透不適地盤、Bは浸透適地盤、108は雨水ます、107は上部フィルター、106は塩ビ管、105は継手である。ドレーン管に内、浸透適地盤に位置するのが、ドレーン管本体101である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-183493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、透水性のドレーン管を地中の地下伏流水脈層を横断するように建て込むと、雨水等がドレーン管を通じて地下伏流水に流れ込む。これにより、地下伏流水の水質が変化することが起こり得る。従って、ドレーン管に地上の雨水等が流れ込んでも、地下伏流水脈に流れ込まないドレーン管の使用方法が望まれていた。また、埋め戻し材が実質不要で、掘削孔の中心に挿入し易く、また予定深度まで正確に挿入できるドレーン管の使用方法が望まれていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、地上の雨水等がドレーン管に流れ込んでも、地下伏流水脈に流れ込まないドレーン管の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するものであり、雨水等を浸透させるドレーン管の使用方法であって、不透水部と透水部を有するドレーン管を、該不透水部が地下伏流水脈を横断するように配設することを特徴とするドレーン管の使用方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、該ドレーン管は、筒状のドレーン管樹脂骨格と、該ドレーン管樹脂骨格の外側に配設される樹脂ブロック体と、を備えることを特徴とする前記ドレーン管の使用方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、該樹脂ブロック体は、透水性樹脂ブロック体と不透水性樹脂ブロック体の組み合せ体であり、該不透水部が、不透水性樹脂ブロック体であることを特徴とする前記ドレーン管の使用方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該透水性樹脂ブロック体が、透水性多孔体であることを特徴とする前記ドレーン管の使用方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、該樹脂ブロック体が、円筒体又は半割り円筒体の組み付け円筒体であることを特徴とする前記ドレーン管の使用方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地上の雨水等がドレーン管に流れ込んでも、地下伏流水脈に直接、流れ込まない。このため、地下伏流水の水質が雨水などの流れ込みにより変化することを極力防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態におけるドレーン管の使用例を示す図である。
図2図1のX-X断面図である。
図3図1のドレーン管本体の簡略図である。
図4】(A)は図1のドレーン管の先端部の拡大された部分断面図であり、(B)は樹脂ブロック体の断面図であり、(C)はH型継手ソケットの断面図であり、(D)は留め板の断面図である。
図5図1のドレーン管の先端側の組み付け状態を説明する断面図である。
図6図1のドレーン管の地表側の組み付け状態を説明する断面図である。
図7】本発明の他の実施の形態におけるドレーン管の使用例を示す図である。
図8】継手ソケットの変形例を示す図である。
図9】従来のドレーン管の使用例を示す図である。
図10図9のY-Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、ドレーン管は、不透水部と透水部を有し、透水部から地上からの雨水等を浸透させ、不透水部からは雨水等を浸透させない。ドレーン管は、筒状のドレーン管樹脂骨格(以下、単に「樹脂骨格」とも言う。)と、樹脂骨格の外周側に配設される樹脂ブロック体を備え、樹脂骨格及び樹脂ブロック体は、共に、縦方向に複数個が直列に継手ソケットや留め板(鍔)により接続又は支持されるものである。樹脂骨格と樹脂ブロック体は、同じ長さに限定されず、異なっていてもよい。すなわち、樹脂骨格と樹脂ブロック体の使用個数は、同じでもよく、異なっていてもよい。なお、雨水等とは、雨水の他、雨水以外の地表面に流れ込む、例えば本下水の未整備地区の生活排水、山肌よりの湧水などを言う。
【0016】
本発明において、ドレーン管を構成する樹脂骨格は、円筒状であって、円筒の外周面には水が抜ける多数の貫通孔が形成されている。樹脂骨格は、土中で受ける水平方向の荷重に対して十分な強度を有し、長期間作用する土圧により発生するひずみ量は十分小さいものが好ましく、例えば、公知のポリプロピレン製、硬質ポリ塩化ビニル管などが使用できる。樹脂骨格は、通常、縦方向に2つ以上、直列に連結されている。ひとつの樹脂骨格の長さとしては、150~500mm、好ましくは200~300mmである。また、樹脂骨格の外径は、50mm以上で適宜決定される。なお、不透水部に相当する樹脂骨格には、例えば、塩ビ管などの不透水性の樹脂骨格を使用してもよい。
【0017】
ドレーン管において、樹脂ブロック体は、複数個準備され、これを縦方向に、直列に連続して接続する。縦方向(長手方向)で上下に隣接する2つの樹脂ブロック体は、継手ソケット又は留め板付き継手ソケットの留め板で支持される。樹脂ブロック体は、左右一対の半割り円筒体を組み付けたものであっても、中心部に樹脂骨格が嵌る貫通孔が形成された円筒体であってもよい。樹脂骨格と樹脂ブロック体が同じ個数の場合、組み付け前の樹脂ブロック体の高さ寸法Hは、樹脂骨格への取り付け後の樹脂ブロック体の高さ寸法Hより少し大とすることが好ましい。すなわち、樹脂ブロック体は、樹脂骨格への取り付け後、留め板の圧縮固定により、高さ寸法が小さくなる。
【0018】
樹脂ブロック体としては、透水部である透水性樹脂ブロック体、及び不透水部である不透水性樹脂ブロック体が挙げられる。本発明においては、不透水性樹脂ブロック体が、地下伏流水脈を横断するように、また、透水性樹脂ブロック体が、地下伏流水脈以外の地中を横断するように、建て込む。これにより、地上の雨水等がドレーン管を通して地下水に直接、流れ込むことを防止でき、地下水質の変質を防止できる。不透水性樹脂ブロック体としては、発泡スチロール等が挙げられる。本発明のドレーン管において、樹脂骨格周りには、必ずしも樹脂ブロック体が形成されている必要はなく、例えば、地下伏流水脈より上方の浸透不適地盤に相当する部位に、不透水の樹脂骨格を使用する場合、樹脂ブロック体の使用を省略できる。
【0019】
透水性樹脂ブロック体としては、透水性多孔体が挙げられる。透水性多孔体は、内部に連続した空孔を有するモノリス状であって、のこぎりなどで簡単に切断できる硬さである。透水性多孔体の物性としては、例えば、密度14.6~26kg/cm、空隙率17~18%、曲げ強度(JIS A 9511)4.2~18.6N/cm、10%歪みにおける圧縮強度5.6~12.8N/cm、透水係数(JIS A 1218)0.1cm/秒である。このような、透水性多孔体は土圧に耐える十分な耐圧縮性を有する。透水性多孔体は市販品が使用できる。透水性樹脂ブロック体の内側面には、水を貯留する切欠凹部を多数、形成してもよい。これにより、水の貯留量が増える。また、切欠凹部は、螺旋状に形成されたものであってもよい。これにより、樹脂ブロック体の強度を保持しつつ、水の貯留量を増やすことができる。
【0020】
本発明において、複数個の樹脂骨格及び樹脂ブロック体は、例えば、留め板付き継手ソケットで接続又は支持される。留め板付き継手ソケットは、継手ソケットの外周面に形成されたネジに、円板状の留め板が螺合するもの(ネジ型ソケット)、及び留め板が、筒状の継手ソケットの軸線方向の端部に一体的に付設されたもの(一体型ソケット)が挙げられる。
【0021】
ネジ型ソケットは、継手ソケットで樹脂骨格を接続し、留め板で樹脂ブロックを圧縮固定する。また、一体型ソケットは、継手ソケットで樹脂骨格を接続し、留め板で樹脂ブロックを両端から挟み込みで支持する。
【0022】
ネジ型ソケットの中、樹脂骨格を接続する継手ソケットとしては、中央の貫通孔を有する環状の内壁を備える略H型ソケット(以下、単に「H型ソケット」とも言う。)及び内壁の無いスリーブタイプのソケットなどが挙げられる。H型ソケット及びスリーブタイプのソケットの外周面には、樹脂ブロック体支持用の留め板(鍔)をネジ止めする雄ネジが形成されている。また、その内周面には、樹脂骨格の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されていてもよい。
【0023】
H型ソケットは、円筒状のソケット本体と、ソケット本体の長手方向の略中央で軸中心側に突出する環状の内壁(鍔)とからなるものであり、内壁は本体において長手方向を区画するものである。そして、一方の開口から挿入される円筒状の樹脂骨格の一端面が、内壁の一方の面と当接し、他方の開口から挿入される円筒状の樹脂骨格の一端面が、内壁の他方の面と当接することで、2つの樹脂骨格を接続する。なお、ソケット本体と樹脂骨格の固定方法としては、ネジによる固定、接着剤による固定及びビス固定などが挙げられる。
【0024】
スリーブタイプのソケットは、上記H型ソケットにおいて、内壁が省略されたものである。すなわち、スリーブタイプのソケットは、ソケット本体の内部の長手方向のいずれの位置においても2つの樹脂骨格の接続が可能であり、1本の樹脂骨格のいずれの位置においても付設でき、2つの樹脂ブロック体の接続が可能となる。ソケット本体と樹脂骨格の固定方法としては、同様に、ネジによる固定、接着剤による固定及びビス固定などが挙げられる。
【0025】
一体型ソケットは、図8に示すように、円筒状の短い本体41と、本体41の軸線方向(径と直交する方向)の外周面の一端部に一体的に付設される外側に突出する環状の鍔部51とを有するものであり、樹脂骨格が両側から嵌り、鍔部51が樹脂ブロック体3(3a、3b)を両側から挟むように支持するものとなる。この場合、樹脂ブロック体3は、圧縮固定されていない。また、樹脂ブロック体3aは、円筒状でよく、上下端の切欠部は不要である。
【0026】
留め板付き継手ソケットの中、特に、継手ソケット本体に、留め板がネジにより螺合するものが好ましい。すなわち、留め板付き継手ソケットにおいて、ソケット本体により、樹脂骨格を嵌合接続し、留め板により、樹脂ブロック体を圧縮固定(支持)する。これにより、樹脂ブロック体を密着固定でき、強度の強いドレーン管を得ることができる。ソケット本体に形成される外周面のねじは、外周面の全部であっても、例えば、上下方向の中央部の一部であってもよい。留め板は、中心部に貫通孔が形成された厚みがやや薄い円板状のものであり、外径はドレーン管の外径(全体径)と同じか、やや小さい径である。また、留め板の中心部の貫通孔の内周には、雌ネジが形成されている。これにより、継手ソケットに螺合できる。
【0027】
留め板がネジにより螺合する留め板付き継手ソケットにおいて、留め板を2枚とすることができる。これにより、下方の留め板は、下方の樹脂ブロック体を圧縮固定し、上方の留め板は、上方の樹脂ブロック体を圧縮固定する。これにより、留め板1枚の場合、下方の樹脂ブロック体を圧縮固定した場合、下方の樹脂ブロック体と同じ寸法の上方の樹脂ブロック体を支持するには、寸法足らずとなる恐れがあるが、留め板を2枚とすることで、複数の樹脂ブロック体は、全て同じ寸法でよく、且つ全てを圧縮固定することができる。また、圧縮率を任意に決定できるため、水の浸透率を自由に設定できる。
【0028】
次に、本発明の実施の形態におけるドレーン管の使用方法を、図1図6を参照して説明する。図1に示すように、雨水浸透施設10Aは、ドレーン管10を備えるものであり、ドレーン管10は、地中に構築されるドレーン管本体1と、雨水ます8内に頭出しされる上部フィルター7、ドレーン管本体1と上部フィルター7を接続する継手6cとを有する。
【0029】
ドレーン管本体1は、周面に水抜き孔21が多数形成された円筒状の樹脂骨格2、2a~2cと、樹脂骨格2、2a~2cの外周側に配設される樹脂ブロック体3、3a~3cを有する。樹脂骨格及び樹脂ブロック体は、略同じ長さのものを準備し、これを直列に接続している。ひとつの樹脂ブロック体3は、樹脂骨格2が嵌る中心の貫通孔が形成された円筒体であり、貫通孔の上端周りは、継手ソケット4が嵌る切欠が形成されている(図4(B))。ドレーン管本体1において、エンドキャップ9と第1留め板付きH型ソケット6の第1継手ソケット4間に、第1樹脂骨格2が配設されている(図4(A))。第1継手ソケット4は、短円筒体41の長さ方向の中間位置に上下室43、44を区画する中心部が貫通された部分隔壁42を形成したもので、断面が略H字形状のものである(図4(C))。これにより、ドレーン管内に雨水等が流下又は保持されると共に、第1樹脂骨格2の端位置を保持できる。第1継手ソケット4と第1樹脂骨格2の固定方法としては、特に制限されず、ビス止め、接着材固定が挙げられ、本例では接着材による接着固定である。また、第1継手ソケット4の短円筒体41の外周面には、雄ねじ45が形成されている。また、第1留め板5は、中心に貫通孔52が形成された円板状の鍔であり、貫通孔52の内周面には、雌ねじ53が形成されている(図4(D))。これにより、第1留め板5は、継手ソケット4の外周面に螺合により接合する。
【0030】
ドレーン管本体1において、エンドキャップ9と第1留め板付きH型ソケット6の第1留め板5間には、第1樹脂ブロック体3が圧縮固定されている。すなわち、エンドキャップ9と第1継手ソケット4間には、第1樹脂骨格2が嵌め込まれ、第1樹脂骨格2周りに配設された第1樹脂ブロック体3は、第1継手ソケット4に螺合する第1留め板5により、圧縮固定される(図4(A))。これにより、第1樹脂ブロック体3は、エンドキャップ9と第1留め板5に密着固定するため、強度が高いものとなる。第1樹脂ブロック体3は、透水性樹脂ブロック体である。
【0031】
ドレーン管本体1において、第2樹脂骨格2aの先端部(下端部)は、第1留め板付きH型ソケット6の第1継手ソケット4の反先端側の室に嵌め込まれ、第2樹脂骨格2aの上端部は、第2留め板付きH型ソケット6aの第2継手ソケット4aの先端側の室に嵌め込まれる。第2樹脂ブロック体3aの先端(下端)は、第1留め板付きH型ソケット6の第1留め板5に、第2樹脂ブロック体3aの上端は、第2留め板付きH型ソケット6aの第2留め板5aに、それぞれ密着固定されている。第2樹脂ブロック体3aは不透水性樹脂ブロック体である。
【0032】
ドレーン管本体1において、第3樹脂骨格2bの先端部(下端部)は、第2留め板付きH型ソケット6aの第2継手ソケット4aの反先端側の室44aに嵌め込まれ、第3樹脂骨格2bの上端部は、第3留め板付きH型ソケット6bの第3継手ソケット4bの先端側の室43bに嵌め込まれる。第3樹脂ブロック体3bの先端(下端)は、第2留め板付きH型ソケット6aの第2留め板5aに、第3樹脂ブロック体3bの上端は、第3留め板付きH型ソケット6bの第3留め板5bに、それぞれ密着固定されている。第2留め板付きH型ソケット6a及び第3留め板付きH型ソケット6bは、第1留め板付き継手ソケット6と同じものである。第3樹脂ブロック体3bは、透水性樹脂ブロック体である。
【0033】
ドレーン管本体1において、第4樹脂骨格2cの先端部(下端部)は、第3留め板付きH型ソケット6bの第3継手ソケット4bの反先端側の室44bに嵌め込まれ、第4樹脂骨格2cの上端部は、第4留め板付きH型ソケット6cの第4継手ソケット4cの先端側の室43cに嵌め込まれる。第4樹脂ブロック体3cの先端(下端)は、第3留め板付きH型ソケット6bの第3留め板5bに、第4樹脂ブロック体3cの上端は、第4留め板付きH型ソケット6cの第4留め板5cに、それぞれ密着固定されている。第4留め板付きH型ソケット6cは、第1留め板付きH型ソケット6と同じものである。第4樹脂ブロック体3cは、透水性樹脂ブロック体である。
【0034】
ドレーン管10において、上部フィルター7の下端部は、第4留め板付きH型ソケット6cの継手ソケット4cの反先端側の室44cに嵌め込まれている。上部フィルター7は、雨水マス8内に頭出しされており、雨水等に混入するゴミ類を捕捉する。なお、雨水マス8に流れ込んだ雨水等は、ドレーン管10に流れ込む(図1参照)。
【0035】
次に、ドレーン管10を組み付ける方法の一例を説明する。事前調査により、地中には、ドレーン管10が建て込まれる範囲において、地下伏流水脈が存在することを確認しておく。また、地下伏流水脈の地表面からの深度を公知の測定方法により確定しておく。ドレーン管10の組み付けにおいては、ドレーン管10を地中に建て込み後、地下伏流水脈に相当する部分が、不透水性樹脂ブロック体となるように、組み付ける。以下の組み付けでは、地下伏流水脈に相当する部分は、第2樹脂ブロック体3aである。
【0036】
先ず、エンドキャップ9、4個の留め板付きH型ソケット6、4つの樹脂骨格2、4つの樹脂ブロック体3及び上部フィルターを準備する。4つの樹脂ブロック体3の内、3つの樹脂ブロック体は、透水性樹脂ブロック体であり、1つの樹脂ブロック体は、不透水性樹脂ブロック体である。先ず、第1樹脂骨格2の外周面に、第1樹脂ブロック3を充てがう。この際、接着材などは不要である。次いで、第1樹脂骨格2の先端にエンドキャップ9を充てがい、第1樹脂骨格2の地表側の端部に第1留め板付きH型ソケット6を取り付ける。この取り付けには、第1継手ソケット4の先端側の室43の内壁に接着材を塗布した後、第1樹脂骨格2を嵌め込む。これにより、第1樹脂骨格2と第1継手ソケット4が固定される。次いで、第1留め板5を下方に前進(締め付け方向)するように回転させ、第1樹脂ブロック3を圧縮固定する。これにより、第1樹脂ブロック3は、エンドキャップ9と第1留め板5で固定される。
【0037】
次いで、第2樹脂骨格2aの外周面に、第2樹脂ブロック3aを充てがう。この際、接着材などは不要である。次いで、第2樹脂骨格2aの先端部を、第1継手ソケット4の反先端側の室44に取り付ける。この取り付けには、第1継手ソケット4の反先端側の室44の内壁に接着材を塗布した後、第2樹脂骨格2aを嵌め込む。これにより、第2樹脂骨格2aと第1継手ソケット4が固定される。次いで、第2樹脂骨格2aの地表側の端部を、第2継手ソケット4aの先端側の室43aに嵌め込む。第2継手ソケット4aの室43aの内壁には、同様に接着材を予め塗布しておく。次いで、第2継手ソケット4aに、第1留め板5を螺合させ、下方に前進(締め付け方向)するように回転させ、第2樹脂ブロック3aを圧縮固定する。これにより、第2樹脂ブロック3aは、第2留め板5aと第1留め板5間で固定される。以後、同様の方法で、第3樹脂ブロック3bは、第3留め板5bと第2留め板5a間で固定され、第4樹脂ブロック3cは、第4留め板5cと第3留め板5b間で固定される。
【0038】
以上の取り付け方法により、ドレーン管本体1が得られる。次いで、第4留め板付きH型ソケット6cに第4継手ソケット4cの地表側の室44cに、上部フィルターを取り付ける。これにより、ドレーン管10が得られる。ドレーン管10の全長は、雨水浸透施設の大きさにより、適宜決定されるが、通常数m~十数mである。
【0039】
次に、ドレーン管10の使用方法について説明する。先ず、オーガスクリューを備える掘削装置により、地中にドレーン管10を建て込む掘削孔を構築する。掘削孔の孔径は、ドレーン管10の外径と同じ又はやや大である。また、掘削孔の長さは、ドレーン管本体1の長さと略同じでよい。この長さは、ドレーン管10が浸透適地盤に十分に位置する長さである。次いで、この掘削孔に上記方法で得られたドレーン管10を建て込む。ドレーン管10周りの隙間は、周辺土壌が崩落により埋るため、その後の埋め戻し材は不要である。ドレーン管10によれば、樹脂骨格2は継手ソケット4により固定され、樹脂ブロック3は留め板5により圧着固定されているため、樹脂ブロック3の面密着が高まり、建て込みが安定する。また、ドレーン管10を掘削孔の中心に挿入し易く、また予定深度まで正確に挿入できる。すなわち、ケーシング引き抜き時、樹脂ブロック体の共上がりを防止できる。また、透水性樹脂ブロック体の透水の程度にもよるが、単位容積当たりの貯留量を大きく採れる。また、従来の荒目の砂は、透水係数のバラツキがあるが、樹脂ブロック体を使用したことで、均一な透水係数を自由に設定できる。
【0040】
次に、ケーシングを使用するドレーン管10の使用方法について説明する。先ず、地中にケーシングを打設により建て込む。ケーシングの内径は、ドレーン管10の外径よりやや大であり、ケーシングの長さは、ドレーン管本体1の長さと略同じでよい。次いで、ケーシング内の土壌及び地下水を、オーガスクリューにより、地表に排出する。次いで、空洞となったケーシング内にドレーン管10を建て込む。次いで、ケーシングを地表へ引き抜く。ドレーン管10周りの隙間は、ケーシングの打設により外側に押された周辺土壌が元に戻るように埋めるため、その後の埋め戻し材は不要である。ケーシングを使用したドレーン管10の建て込みは、ケーシングの引き抜きスピードを落とすことなく、また、埋め戻し材である荒目の砂の投入が不要となる。地中に構築されたドレーン管10は、不透水性樹脂ブロック体3aが、地下伏流水脈を横断している(図1参照)。
【0041】
ドレーン管10の使用方法によれば、地表の雨水等は、ドレーン管10に流れ込み、ドレーン管10の処理能力を超えた雨水等は、下水管本管に流れ込む。ドレーン管10に流れこんだ雨水等は、不透水性樹脂ブロック体3aが地下伏流水脈を横断しているため、地下伏流水脈には浸透しない。一方、不透水性樹脂ブロック体3a以外の樹脂ブロックである透水性樹脂ブロック体3、3b、3cを通して、雨水などは地中、特に地下伏流水脈以下の深部に浸透させることができる。また、従来の埋め戻し材(荒目の砂)の代わりに樹脂ブロック体を使用すると共に、事前に樹脂骨格に樹脂ブロック体を装着したため、掘削孔にドレーン管を挿入する際、ドレーン管を掘削孔の中心に挿入し易く、また予定深度まで正確に挿入できる。また、ケーシングの引き抜きスピードを落とさず、埋め戻し材である荒目の砂の投入が不要となる。また、留め板付き継手ソケットを使用したため、ケーシング引き抜き時、樹脂ブロック体の共上がりを防止できる。また、樹脂ブロックを圧着固定できるため、樹脂ブロックの面密着が高まり、建て込みが安定する。
【0042】
次に、本発明の他の実施の形態におけるドレーン管の使用方法を、図7を参照して説明する。図7において、図1図6と同一構成要素には、同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について主に説明する。すなわち、図7において、図1図6と異なる点は、地盤とドレーン管である。すなわち、本例の地盤は、地下伏流水脈を含めてそれより上部地盤Aが浸透不適地盤層であり、地下伏流水脈を除くそれより下部地盤Bが浸透適地盤層とした点である。また、本例のドレーン管10aは、地下伏流水脈を除くそれより上部の地盤Aに相当する部分を、樹脂骨格として不透水性の塩ビ管とし、樹脂ブロック体を省略した点である。なお、塩ビ管3bと塩ビ管3cを接続するソケットは、留め板の無い継手ソケット又はスリーブ型ソケットでよい。また、塩ビ管3bと塩ビ管3cは、両者が一体化した1本の塩ビ管であってもよい。
【0043】
ドレーン管10aの地中への建て込み方法は、ドレーン管10の建て込み方法と同様であるが、地中にドレーン管10aを建て込んだ後、第2留め板付き継手ソケット6aより上方の樹脂骨格3b、3c周りには、埋め戻し材を充填する。ドレーン管10aの地中への建て込みにおいて、埋め戻し材を充填する前に、既にドレーン管10aの建て込みは実質的に終了しており、従前の埋め戻し材の充填の諸問題は発生しない。すなわち、ドレーン管10aの使用方法は、ドレーン管10と同様の効果を奏する。
【0044】
なお、ドレーン管10aにおいて、樹脂骨格3b、3cは、透水性の樹脂骨格とし、更に樹脂骨格3b、3c周りに不透水性の樹脂ブロックを配設してもよい。この場合、埋め戻し材の使用を省略できる。
【0045】
本発明のドレーン管の使用方法は、上記実施の形態例に限定されず、種々の変形を採ることができる。本発明のドレーン管において、透水性シートは、必須の構成要素ではないものの、樹脂骨格に例えば、内周面に付設してもよい。透水性樹脂ブロック体は、水中の懸濁性不溶物質(SS)を捕捉するため、透水性シートの目詰まりを防止できる。また、不透水部については、透水性シートに悪影響を及ぼさない。
【0046】
ドレーン管10において、留め板付き継手ソケットは、地表側の第4留め板付き継手ソケットのみとし、その他の接続継手は、留め板無しの継手ソケットとしてもよい。この場合、エンドキャップ9と第4留め板付き継手ソケットの留め板で、その間の樹脂ブロックを圧縮固定することになる。また、ドレーン管10において、留め板付き継手ソケットは、第2留め板付き継手ソケットと第4留め板付き継手ソケットにおいて使用し、その他の接続継手は、留め板無しの継手ソケットとしてもよい。この場合、エンドキャップ9と第2留め板付き継手ソケットの留め板及び第2留め板付き継手ソケットの留め板と第4留め板付き継手ソケットの留め板間で、その間の樹脂ブロックを圧縮固定することになる。
【0047】
本発明のドレーン管10において、留め板は、上記実施の形態例に限定されず、中心の貫通孔周りの板厚を大きくした段差断面構造であってもよい。貫通孔周りの板厚を大きくすることで、ネジ山が増え、螺合強度が向上する。
【0048】
H型継手ソケットの場合、樹脂ブロック体の上下端には、継手ソケット本体を回避する切欠部33を形成するが、この切欠部33の形成深さなどは、樹脂ブロック体の設置位置及び圧縮による縮小率などを考慮して決定すればよい。
【0049】
本発明のエンドキャップは、上記実施の形態例に限定されず、継手ソケットと同じものを使用してもよい。エンドキャップの先端に多少の突起があったとしても、地中への建て込みには影響しない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、地下伏流水の水質が雨水などの流れ込みにより変化することを極力防止できる。また、地中に埋設して縦型の雨水浸透施設を構築することができ、近年の都市洪水に対応できる。また、ドレーン管に地中への構築が安定して行なえ、従来の埋め戻し材の使用を実質的に省略できる。
【符号の説明】
【0051】
1 ドレーン管本体
2、2a~2c 円筒状の樹脂骨格
3、3a~3c 樹脂ブロック体
4、4a~4c 継手ソケット
5、5a~5c 留め板
6、6a~6c 留め板付き継手ソケット
7 上部フィルター
8 雨水マス
9 エンドキャップ
10、10a ドレーン管
10A、10B 雨水浸透施設
Z 地下伏流水脈
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10