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特許7007250シュードモナス・エルギノーサのPcrVに結合する単一可変ドメイン抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シュードモナス・エルギノーサのPcrVに結合する単一可変ドメイン抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220203BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220203BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220203BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220203BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220203BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C07K16/46
C07K16/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/09 Z
A61P31/04
A61P11/00
A61K39/395 Y
A61K48/00
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/12
【請求項の数】 33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018187939
(22)【出願日】2018-10-03
(62)【分割の表示】P 2014559260の分割
【原出願日】2013-03-04
(65)【公開番号】P2019013239
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2018-10-31
(31)【優先権主張番号】61/606,094
(32)【優先日】2012-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デ・タフェルニール,エフェリン
(72)【発明者】
【氏名】ウニオン,アン
(72)【発明者】
【氏名】ドンブレヒト,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】エルマン,ギー
(72)【発明者】
【氏名】モリゾ,エリカ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特許第6415987(JP,B2)
【文献】特表2009-510998(JP,A)
【文献】国際公開第2009/088032(WO,A1)
【文献】FRONTIERS IN MICROBIOLOGY,Vol.2, No.142,2011年,pp.1-12
【文献】MAbs,Vol.4, No.2,2012年03月01日,pp.182-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VHH配列、部分的若しくは完全ヒト化VHH、又はラクダ化VH配列からなりかつPcrVに特異的に結合する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなるポリペプチドであって、
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、そして、キメラ2(配列番号200)に対して、該全長PcrVと比較して30~90%減少した結合を示すか又はキメラ2(配列番号200)に対して結合を示さない、ポリペプチド[エピトープビン3];或い
配列番号11又は12のいずれかのアミノ酸配列[エピトープビン3]
から選択され、
第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、ここで、
○ CDR1が配列番号22のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号40のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号59のアミノ酸配列であるか;又は
○ CDR1が配列番号23のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号41のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号60のアミノ酸配列であるか;又は
○ CDR1が配列番号24のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号42のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号61のアミノ酸配列であるか;又は
○ CDR1が配列番号26のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号44のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号63のアミノ酸配列であるか;又は
○ CDR1が配列番号27のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号46のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号65のアミノ酸配列であるか;又は
○ CDR1が配列番号28のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号47のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号66のアミノ酸配列である、
ポリペプチド。
【請求項2】
第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、そして、キメラ2(配列番号200)に対して、該全長PcrVと比較して30~90%減少した結合を示すか又はキメラ2(配列番号200)に対して結合を示さない、ポリペプチド[エピトープビン3];或いは
○ 4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなるポリペプチドであって、
- CDR1が配列番号29のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号48のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号67のアミノ酸配列であるか;又は
- CDR1が配列番号30のアミノ酸配列であり、CDR2が配列番号49のアミノ酸配列であり、CDR3が配列番号68のアミノ酸配列である、
ポリペプチド[エピトープビン3]
から選択され、
第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号3、4、5、7、9及び10のいずれかから選択される、請求項に記載のポリペプチド
【請求項3】
つ以上のペプチドリンカーを介して場合により連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体、dAb、VHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VHからなる群より選択される、請求項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、請求項1又は2に記載の対応するポリペプチドそれ自体と比較して増加した半減期をポリペプチドに提供する、請求項又はに記載のポリペプチド。
【請求項6】
増加した半減期をポリペプチドに提供する前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清タンパク質又はそのフラグメント、血清タンパク質に結合することができる結合単位、Fc部分、及び血清タンパク質に結合することができる小タンパク質又はペプチドからなる群より選択される、請求項に記載のポリペプチド。
【請求項7】
増加した半減期をポリペプチドに提供する前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位が、ヒト血清アルブミン又はそのフラグメントからなる群より選択される、請求項又はに記載のポリペプチド。
【請求項8】
増加した半減期をポリペプチドに提供する前記1つ以上の他の結合単位が、血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、血清免疫グロブリン、又はIgGに結合することができる結合単位からなる群より選択される、請求項又はに記載のポリペプチド。
【請求項9】
増加した半減期をポリペプチドに提供する前記1つ以上の他の結合単位が、血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、血清免疫グロブリン、又はIgGに結合することができるドメイン抗体、単一ドメイン抗体、dAb、VHH、ヒト化VHH、又はラクダ化VHからなる群より選択される、請求項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の対応するポリペプチドそれ自体の半減期よりも少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は、20倍超長い血清半減期を有する、請求項のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1~のいずれかに記載の対応するポリペプチドそれ自体と比較して1時間超、2時間超、6時間超、12時間超、24時間超、48時間超、又は、72時間超増加した血清半減期を有する、請求項10のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項12】
少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも5日、5日~10日、少なくとも9日、9日~14日、少なくとも10日、10日~15日、少なくとも11日、11日~16日、少なくとも12日、12日~18日、14日超、又は、14日~19日のヒトにおける血清半減期を有する、請求項11のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項14】
遺伝子構築物の形態である、請求項13に記載の核酸。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを発現するか、又は適切な状況下でそれを発現することができ;及び/又は、請求項13又は14に記載の核酸を含む、ホスト又は宿主細胞。
【請求項16】
少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド、又は請求項13又は14に記載の核酸を含む、組成物。
【請求項17】
医薬組成物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
1つ以上のさらなる薬学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項13若しくは14に記載の核酸と、肺送達に適切な担体とを含む、請求項17~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項13若しくは14に記載の核酸の肺送達に適切な医薬デバイスであって、少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド又は請求項13若しくは14に記載の核酸を含む、医薬デバイス。
【請求項22】
液体、固体微粒子の懸濁液又は液滴用吸入器、噴霧器、定量吸入器、エアロゾル及び乾燥粉末吸入器から選択される、請求項21に記載の医薬デバイス。
【請求項23】
請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、
a)適切な宿主細胞若しくはホスト生物で又は別の適切な発現系で、請求項13又は14に記載の核酸を発現させる工程
を少なくとも含む、方法。
【請求項24】
b)そのようにして得られた請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを生産するための方法であって、
a)請求項15に記載のホスト又は宿主細胞を、該ホスト又は宿主細胞が、少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを発現及び/又は産生するような条件下で培養及び/又は維持する工程
を少なくとも含む、方法。
【請求項26】
b)そのようにして得られた請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための方法で使用するための請求項1620のいずれかに記載の組成物或いは請求項21又は22に記載の医薬デバイスであって、
該方法が、薬学的活性量の少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含む、
組成物或いは医薬デバイス。
【請求項28】
P. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための方法で使用するための請求項1620のいずれかに記載の組成物或いは請求項21又は22に記載の医薬デバイスであって、
該方法が、薬学的活性量の少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする被験体の肺組織に投与することを含む、
組成物或いは医薬デバイス。
【請求項29】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための方法で使用するための請求項1620のいずれかに記載の組成物或いは請求項21又は22に記載の医薬デバイスであって、
該方法が、薬学的活性量の少なくとも1つの請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする被験体の肺組織に投与することを含む、
組成物或いは医薬デバイス。
【請求項30】
P. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における、請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項31】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における、請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項32】
P. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための、請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosaによる感染を予防及び/又は処置するための、請求項1~12のいずれかに記載のポリペプチド及び/又は請求項1620のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPcrVタンパク質に結合するポリペプチドに関する。より具体的には、本発明は、PcrVに結合し、P. aeruginosaを中和する多パラトープ性ポリペプチド(本明細書では「本発明の多パラトープ性ポリペプチド」とも称される)に関する。本発明はさらに、本発明の多パラトープ性ポリペプチドの調製におけるビルディングブロックとして使用するための一価ポリペプチド(本明細書では「本発明の一価ポリペプチド」とも称される)に関する。
【0002】
本発明はまた、このようなポリペプチドをコードする核酸(本明細書では「本発明の核酸」とも称される);このようなポリペプチドを調製するための方法;このようなポリペプチドを発現するか又は発現することができる宿主細胞;このようなポリペプチド、核酸及び/又は宿主細胞を含む組成物、特に医薬組成物;並びに特に予防及び/又は治療目的、例えば本明細書で言及される予防及び/又は治療目的のためのポリペプチド、核酸、宿主細胞及び/又は組成物の使用に関する。
【0003】
本発明の他の態様、実施態様、利点及び用途は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0004】
背景技術
シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)は、ヒトにおける広域感染症に関連する環境由来グラム陰性菌である。それは、代謝的には極めて柔軟で非常に大きなゲノムを有しており、このことが、非常に多様な環境でそれが見られ得る理由を説明している。この日和見病原体は、III型分泌系(TTSS)による外毒素の送達を通して急性肺障害及び死亡を引き起こし得る。
【0005】
P. aeruginosaのIII型分泌系(TTSS)は、完全な細胞壁を横断する複雑な多タンパク質構造である。それは、TTSSタンパク質及び病原性関連毒素のみを分泌する特殊な中空針様分子構造である。多くの異なるタンパク質が、細菌の細胞質側及び外部の両方でTTSSを形成する。外部からは、単一「バレル」ホモポリマー形成タンパク質及び「針先」タンパク質のみが、抗体にアクセス可能である。針タンパク質PcrVは、環形構造を針先に形成すると考えられる。TTSS複合体は、細菌によって産生される様々な外毒素を宿主細胞の細胞質に直接注入することができる。
【0006】
実際のところ、毒素ではなくTTSSを発現する突然変異体も同様に細胞毒性であることから、病因におけるこの転移装置の関与は外毒素の輸送に限定されない可能性がある(Lee et al. Infect. Immun. 73: 1695-1705, 2005)。転移孔それ自体は、直接的には孔を介して膜透過性を増加させることによって、又は間接的には広範な細胞防御反応を活性化することによって、宿主細胞の死を引き起こすのに十分である。細菌の外表面上のTTSS病原性機構は、白血球及び上皮細胞を殺傷し、組織損傷炎症をトリガーすることによって、P. aeruginosaがヒトの免疫防御から逃れることを可能にする。
【0007】
正常な状況下では、この細菌は全く無害である。しかしながら、ある特定の状況下では、この細菌は、免疫系が弱っているホストに定着することができる。それは、免疫不全患者及び免疫応答性患者(Giamarellou and Kanellakopoulou Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008)、例えば骨髄移植患者(Velasco et al. Clin. Microbiol. Infect. 10: 542-549, 2004)における浸潤デバイス、人工呼吸、熱傷創又は手術に関連する院内菌血症及び感染症の主な原因として認識されている。P. aeruginosaは、典型的には、肺気道、尿路の院内感染症、(熱)創傷及びさらに敗血症を引き起こす。
【0008】
嚢胞性線維症(CF)患者では、P. aeruginosa感染症は、幼児期における再発性肺感染症の十分に確立されたパターンに従い、より高齢のCF患者では慢性感染症の確立につながる(この場合、それは、肺機能の進行性低下及び呼吸不全につながる疾患増悪の主な寄与因子である)(FitzSimmons J. Pediatr. 122: 1-9, 1993; Kerem et al. J. Pediatr. 116: 714-719, 1990; Lyczak et al. Clin. Microb. Rev. 15: 194-222, 2002)。慢性P. aeruginosa肺感染症が確立されると、現在の治療法を使用することによっては、この生物の根絶は不可能であると思われる(Lee Chronic Respiratory Disease 6: 99-107, 2009)。
【0009】
P. aeruginosaは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の状況ではいくつかの異なる徴候を有する。この生物はすぐに除去される生着菌であり、急性増悪を引き起こし、COPDを有する一部の成人では慢性感染症も引き起し得る(Murphy Curr. Opin. Pulm. Med. 15: 138-142, 2009)。
【0010】
P. aeruginosa肺炎の現在の処置についての良い概要が、Giamarellou and Kanellakopoulou (Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008)、Malcolm and Heim (Curr. Opin. Pharmacol. 9: 558-565, 2009)、El Solh and Alhajhusain (J. Antimicrobial Chemotherapy 64: 229-238, 2009)及びRoux and Ricard (Infectious Disorders - Drug Targets 11: 389-394, 2011)によって示されている。患者のための現在の処置は、抗生物質に依然として依存している。4つの主な構造クラスの抗生物質が、P aeruginosa感染症に対して使用されている(Giamarellou and Kanellakopoulou Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008)。重要なことに、P. aeruginosaの定着が確立されると、バイオフィルムの形成により、抗生物質を使用してそれを上手く除去することができない。バイオフィルムは、ある特定の抗生物質がこのフィルムの深層にアクセスするのを制限する(拡散制限)。より重要なことに、バイオフィルムの深層は、栄養アクセスが欠如しているために、生きてはいるが実質的には完全に不活性の多くのP. aeruginosa細菌を含有している。様々なクラスの抗生物質が細胞分裂又は高活性な代謝経路に対して作用するので、これらの休眠細菌を殺傷することができない。治療を徐々に減らすか又は中止すると、これらの細胞は患者に急速に再定着する。
【0011】
さらに、P. aeruginosaは、新たな抗菌療法から逃れて耐性を発達させる能力を有しており、一方では多くの薬物に対して本来的に耐性であり、他方ではいくつかの機構を介して耐性を急速に獲得する(Malcolm and Heim Curr. Opin. Pharmacol. 9: 558-565, 2009)。P. aeruginosaゲノムの多用途性及び大きなサイズにより、様々な耐性機構が同時に存在していくつかの抗緑膿菌薬に対する交差耐性を引き起こし得る(Giamarellou and Kanellakopoulou Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008)。同じ基本的な抗生物質構造に対する新規な変異体が開発中であり、現在の耐性をある程度緩和し得るが、臨床で広範に使用されると新たな耐性を生じさせる可能性が非常に高い。臨床開発中であることが知られている新規クラスの抗生物質はない。新たなクラスの抗生物質の開発は、このような薬物の増大する必要性に大きく後れていることから、我々は現在、これらの感染症と闘う能力が限られたポスト抗生物質時代に直面している。
【0012】
既存の抗生物質の局所投与(例えば、トブラマイシン又はコリスチンのエアロゾル投与)は、患者にとって毒性であり得る高い全身レベルに患者を曝露せずに、より高い局所濃度の抗生物質を送達するために使用されている(Luyt et al. Curr. Opin. Infect. Dis. 22: 154-158, 2009)。しかしながら、その有効性及び耐性の潜在的な出現についての継続的な懸念が同様に生じている(El Solh and Alhajhusain J. Antimicrobial Chemotherapy 64: 229-238, 2009; Roux and Ricard Infectious Disorders - Drug Targets 11: 389-394, 2011)。
【0013】
新たな抗菌剤のパイプラインは枯渇しており、P. aeruginosaの処置は、併用療法の理論上の利点及びポリミキシンのような毒性が深刻なために過去に断念された古い薬物の復活に依拠している(Giamarellou and Kanellakopoulou Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008; El Solh and Alhajhusain J. Antimicrobial Chemotherapy 64: 229-238, 2009)。しかしながら、このような処置に対する耐性が急速に出現しており、最新の耐性率は非常に気掛かりであり、多剤耐性又はさらには汎耐性表現型を有するPseudomonas株が出現している(Malcolm and Heim Curr. Opin. Pharmacol. 9: 558-565, 2009)。報告された耐性の監視データによれば、P. aeruginosa感染症に対する現在の治療アプローチはその限界に近づいていることが明らかである(Giamarellou and Kanellakopoulou Crit. Care Clin. 24: 261-278, 2008)。
【0014】
現在のところ、非抗生物質ベースの処置は市場に出ていない。しかしながら、開発中のいくつかの薬物候補がある。
【0015】
ほとんどがP. aeruginosaのフラジェリン又は株特異的なLPSに対する様々なモノクローナル抗体が記載されている。ほとんどが臨床段階に到達しなかった。あるLPS反応性IgM(Kenta (Berna/Crucell)が第II相開発段階にあるとリストされている。しかしながら、この抗体の血清型特異性は、病院内における感染病原体の血清型を決定するための迅速なアッセイ及び他の診療関連血清型に対して特異的な抗体の開発の必要性を強調している(Roux and Ricard Infectious Disorders - Drug Targets 11: 389-394, 2011)。
【0016】
Pseudomonas感染症のマウス及びラットモデルにおいて強力な中和活性を有するマウスモノクローナル抗PcrV抗体、モノクローナル抗体(Mab)166が、Frank et al. (J. Infect. Dis. 186: 64-73, 2002)及びFaure et al (J. Immune based Therapies and Vaccines 1: 2, 2003)によって記載されている。国際公開第2009/073631号及びBaer et al. (Infection and Immunity 77: 1083-1090)には、P. aeruginosaのPcrVタンパク質に対して特異的であり、PcrV上の同じエピトープに対する結合についてMAb166と競合するいくつかの人為的なヒト抗体Fabフラグメント(そのなかでもFab1A8)が記載されている。これらのFabは、P. aeruginosaのIII型分泌系に対して強力な中和活性を示す。KB001(KaloBios, US)は、Humaneered(商標)抗PcrV PEG化抗体Fab’フラグメント(Anti-PcrV Program Fact Sheet, KaloBios)であり、細胞毒性アッセイにおいて強力なIII型分泌系(TTSS)の中和活性を示した。KB001は、Pa人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防及びCFの処置のために開発されている。活性及び安全性の予備的な証拠は、KaloBiosによって行われた第1/2相試験における両方の適応で実証されている。しかしながら、エスケープ突然変異体が、患者に投与されるとこの単一特異性モノクローナル抗体になるか否かについては依然として決定されていない。
【0017】
総合すると、ある種の感染症の発生率の増加、病院における侵襲的デバイスの使用の増加、及び多剤耐性Pseudomonas株の頻度の増加は、院内Pseudomonas感染症の処置選択肢が不足することの明らかな原因である。上記努力にもかかわらず、P. aeruginosa感染症の管理は、救命救急医にとって困難な治療課題の代表的なものである(El Solh and Alhajhusain J. Antimicrobial Chemotherapy 64: 229-238, 2009)。多剤耐性株を有する患者の場合、臨床的な選択肢は依然としてほとんどない。従って、臨床医の抗菌装備における危険な空白を埋める新規な抗Pseudomonas薬を発見及び開発することが急務であると考えられる(Malcolm and Heim Curr. Opin. Pharmacol. 9: 558-565, 2009)。
【0018】
発明の概要
本発明は、他の有利な特性(例えば、改善された調製容易性、優れた安定性、及び/又は製品コストの削減など)に加えて、従来技術のアミノ酸配列及び抗体と比較して改善された予防的、治療的及び/又は薬理学的特性を有するポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、従来技術で説明されているPcrV中和分子と比較して改善されたPcrV中和特性を示す2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多価ポリペプチドを提供する。本発明者らは、驚くべきことに、2つの異なるPcrV結合免疫グロブリン単一可変ドメインを含む二パラトープ性ポリペプチドが、一価PcrV結合ビルディングブロック単独のPcrV中和能と比較して、PcrV中和効果の有意な増加を示したことを観察した。加えて、この目的のために、本発明はまた、PcrVに特異的に結合し、及び/又はPcrVを有意に阻害若しくは中和することができる多数の非常に有利な免疫グロブリン単一可変ドメイン(すなわち、一価ポリペプチド)を利用可能にする。これらのPcrV結合免疫グロブリン単一可変ドメイン及びそれを含むポリペプチドは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0019】
従って、本発明は、P. aeruginosaのPcrVタンパク質(本明細書では「PcrV」と称される)に特異的に結合する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドを提供する。このようなポリペプチドは、本明細書では「本発明の多価ポリペプチド」とも称される。2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、場合により、1つ以上のペプチドリンカーを介して連結されていてもよい。
【0020】
好ましくは、多価ポリペプチドは、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、PcrVに指向性を有する「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメイン及びPcrVに指向性を有する「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、異なるパラトープを有する。このようなポリペプチドは、本明細書では「本発明の多パラトープ性ポリペプチド」とも称される。従って、本発明は、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなるポリペプチドであって、PcrVに指向性を有する「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメイン及びPcrVに指向性を有する「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインが、異なるパラトープを有するポリペプチドに関する。このようなポリペプチドは、PcrV上の異なるエピトープに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなる。より具体的には、このようなポリペプチドは、PcrV上の第1のエピトープに指向性を有する少なくとも1つの「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインと、PcrV上の第1のエピトープとは異なるPcrV上の第2のエピトープに指向性を有する少なくとも1つの「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む。好ましくは、これらの本発明の多パラトープ性ポリペプチドは、本明細書でさらに定義されるように、二パラトープ性又は三パラトープ性ポリペプチド(本明細書では「本発明の二パラトープ性ポリペプチド」及び「本発明の三パラトープ性ポリペプチド」とも称される)である。
【0021】
本明細書に記載される多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、従来技術で説明されているPcrV中和分子と比較して改善されたPcrV中和特性を示した。本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、細胞毒性アッセイ(例えば、感染多重度(MOI)12でP3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイなど)において、100%の有効性でPcrVを中和することができる。これとは別に、及び/又は加えて、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、細胞毒性アッセイ(例えば、感染多重度(MOI)12でP3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイなど)において、5.0×10-10M以下のIC50でPcrVを中和することができる。これとは別に、及び/又は加えて、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、P. aeruginosaエラスターゼ(3μg/μgポリペプチド)の存在下における24時間後の効力低下が最大5倍(例えば、5倍、3倍、2倍又はそれ未満、すなわち1/5、1/3又は1/2程度まで低下する)である。これとは別に、及び/又は加えて、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、ヒト好中球エラスターゼ(1~2μg/μgポリペプチド)の存在下における24時間後の効力低下が最大15倍(例えば、10倍、5倍、3倍、2倍又はそれ未満、すなわち1/10、1/5、1/3又は1/2程度まで低下する)である。
【0022】
本発明の好ましい多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になり、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインが、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、ここで(表A-6を参照のこと)、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される。
【0023】
より具体的には、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になり、免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つが、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列]
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される。
【0024】
本発明の好ましい多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になり、免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つにおいて、CDR配列が、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する(表A-4)。
【0025】
好ましい態様では、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になり、免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つが、PcrVに対する、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0026】
好ましい態様では、本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインはそれぞれ、上に定義したとおりである。本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの例は、配列番号118~151である(表A-5)。
【0027】
好ましい態様では、PcrVに指向性を有する本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインはそれぞれ、異なるエピトープビンに属する。従って、本発明は、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドであって、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインのそれぞれが、異なるエピトープビンに属するポリペプチドに関する。異なるエピトープビンに属する免疫グロブリン単一可変ドメインは、定義によれば、ターゲットPcrVに対する結合について互いに交差競合しない。従って、本発明は、PcrVに対する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドであって、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する第2の免疫グロブリン単一可変ドメインの結合を交差遮断せず、及び/又は第1の免疫グロブリン単一可変が、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインによってPcrVに対する結合を交差遮断されないポリペプチドに関する。
【0028】
本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する免疫グロブリン単一可変ドメインの好ましい組み合わせは、以下のいずれかを包含し得る:
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;又は
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0029】
本発明の好ましい多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、以下の免疫グロブリン単一可変ドメインの組み合わせの1つを含み得るか、又はこれから本質的になり得る:
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン1に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号3~10のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン2に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号1及び2のいずれかであるポリペプチド;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン1に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号3~10のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン3に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号11及び12のいずれかであるポリペプチド;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン2に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号1及び2のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン1に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号3~10のいずれかであるポリペプチド;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン2に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号1及び2のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン3に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号11及び12のいずれかであるポリペプチド;
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン3に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号11及び12のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン1に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号3~10のいずれかであるポリペプチド;又は
- 第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン3に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号11及び12のいずれかであるポリペプチド;
並びに、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン2に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号1及び2のいずれかであるポリペプチド。
【0030】
本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号124~141のいずれかから選択される(表A-5)。
【0031】
好ましい態様では、本発明は、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号12である上に定義したポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号1及び10のいずれかから選択されるポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、配列番号129及び134のいずれかから選択されるポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号1であるポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号3及び12のいずれかから選択されるポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、配列番号129及び137のいずれかから選択されるポリペプチドに関する。
【0032】
さらなる態様では、PcrVに指向性を有する本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインはそれぞれ、同じエピトープビンに属する。従って、本発明はまた、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドであって、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインのそれぞれが、同じエピトープビンに属するポリペプチドに関する。同じエピトープビンに属する免疫グロブリン単一可変ドメインは、定義によれば、ターゲットPcrVに対する結合について互いに交差競合する。従って、本発明は、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドであって、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する第2の免疫グロブリン単一可変ドメインの結合を交差遮断し、及び/又は第1の免疫グロブリン単一可変が、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインによってPcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチドに関する。
【0033】
このような本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する免疫グロブリン単一可変ドメインの好ましい組み合わせは、以下のいずれかを包含し得る:
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号3~10[エピトープビン1]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号1~2[エピトープビン2]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断され;又は
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、PcrVに対する、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインが、配列番号11~12[エピトープビン3]を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0034】
このような本発明の好ましい多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、以下の免疫グロブリン単一可変ドメインの組み合わせの1つを含み得るか、又はこれから本質的になり得る:
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン1に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号3~10のいずれかであるポリペプチド;
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン2に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号1及び2のいずれかであるポリペプチド;又は
- 第1及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、エピトープビン3に属するポリペプチドであり、以下のいずれか1つから選択される:
○ 全長PcrV(配列番号159)に結合し、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さないポリペプチド;
○ CDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチド;
○ PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断されるポリペプチド;及び
○ 配列番号11及び12のいずれかであるポリペプチド。
【0035】
好ましい態様では、本発明は、配列番号118~123のいずれかから選択される上に定義したポリペプチド(表A-5)に関する。
【0036】
別の好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号3である上に定義したポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、配列番号118、120及び121のいずれかから選択される上に定義したポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインが配列番号1である上に定義したポリペプチドに関する。別の好ましい態様では、本発明は、配列番号122及び123のいずれかから選択される上に定義したポリペプチドに関する。
【0037】
本発明のポリペプチド中に存在する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)からなり得る。それらは、従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列からなり得る。それらは、ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切なアミノ酸)、又はナノボディ(限定されないが、VHHを含む)からなり得る。好ましい態様では、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、部分的若しくは完全ヒト化ナノボディ又は部分的若しくは完全ヒト化VHHからなる。
【0038】
本発明の多価(例えば、多パラトープ性)ポリペプチドは、一般に、2つ以上の(一価)免疫グロブリン単一可変ドメインを適切に(場合により、適切なリンカーを介して)連結又は結合することによって(又は、このような(一価)免疫グロブリン単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を適切に連結又は結合して所望の多価構築物をコードする核酸を提供し、次いで、前記多価構築物を適切に発現させることによって)提供され得る(特に、特定の生物学的作用について意図的に設計され得る)。従って、本発明は、本明細書に記載される多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドを利用可能にするだけではなく、-本明細書に記載される一価ポリペプチドを利用可能にすることによって-本明細書に記載される適切な「ビルディングブロック」を使用して様々な異なる多価、好ましくは多パラトープ性(特に、二パラトープ性及び三パラトープ性)ポリペプチド(これは、異なる結合親和性、アビディティ、特異性、効力及び/又は有効性を有してもよい)を提供するための「ビルディングブロック」として使用することができる様々な異なる「結合ドメイン」又は「結合単位」を当業者に提供することが明らかである。
【0039】
その結果として、様々な本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチド(及び/又は、それをコードするヌクレオチド配列及び/又は核酸)、並びに「ビルディングブロック」としての又は多価及び/若しくは多パラトープ性ポリペプチド(又は、それをコードするヌクレオチド配列及び/又は核酸)を調製するためのそれらの使用は、本発明の重要な態様を形成する。
【0040】
従って、さらなる態様では、本発明はまた、
- CDR1配列:
a)配列番号20~37;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
及び/又は
- CDR2配列:
d)配列番号38~56;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
及び/又は
- CDR3配列:
g)配列番号57~75;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
からなる群より選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つのストレッチを含むポリペプチド(本明細書では「本発明の一価ポリペプチド」とも称される)に関する。
【0041】
アミノ酸残基の上記特定のストレッチの1つ以上を含む一価ポリペプチドは、改善された特性、例えば、PcrVに対する改善された結合特性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)、改善された親和性及び/若しくは改善されたアビディティ、並びに/又は改善されたPcrV中和効果及び/若しくは効力などを示す。
【0042】
例えば、平均感染多重度(MOI)2.8でP3X63細胞をターゲットとして用いるTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の一価ポリペプチドは、1nM~10000nM、5nM~1000nM、好ましくは5nM~500nM、より好ましくは5nM~200nM、例えば5nM~50nM又はそれ未満のIC50値を有し得る。
【0043】
これとは別に、及び/又は加えて、このようなTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の一価ポリペプチドは、50%以上、好ましくは90%以上、例えば100%の有効性(%阻害;実施例4.4を参照のこと)を有し得る。
【0044】
好ましい態様では、本発明の一価ポリペプチドは、構造FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(式中、CDR1、CDR2及びCDR3は、本発明の一価ポリペプチドについて本明細書で定義されるとおりであり、FR1、FR2、FR3及びFR4は、フレームワーク配列である)を有する。従って、本発明はまた、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)から本質的になる一価ポリペプチドであって、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される一価ポリペプチドに関する。
【0045】
好ましい一価ポリペプチドは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)から本質的になり、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される。
【0046】
本発明の好ましい一価ポリペプチドでは、CDR配列は、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する。
【0047】
本発明はまた、PcrVに指向性を有する一価ポリペプチドであって、PcrVに対する、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される一価ポリペプチドに関する。
【0048】
本発明の好ましい一価ポリペプチドは、配列番号1~19のいずれかから選択される。
【0049】
さらに、本発明者らは、ある特定のエピトープビンに属する免疫グロブリンが、PcrVに対する結合、P. aeruginosaの中和に、及び/又は多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性など)ポリペプチドを調製するための結合単位として特に適切であることを観察した。好ましい免疫グロブリンは、エピトープビン1、2又は3(本明細書でさらに定義される)に属する。
【0050】
従って、さらなる態様では、本発明は、エピトープビン1に属し、以下の特徴の1つ以上を有する免疫グロブリンに関する:
● それは、PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断する;
● それは、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される;
● それは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満);
● それは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、
- CDR1が、
a)配列番号22~28のアミノ酸配列;
b)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号40~47のアミノ酸配列;
e)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号59~66のアミノ酸配列;
h)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される;
● そのCDR配列は、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する;又は
● それは、配列番号3~10のいずれかから選択される。
【0051】
別の態様では、本発明は、エピトープビン2に属し、以下の特徴の1つ以上を有する免疫グロブリンに関する:
● それは、PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断する;
● それは、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される;
● それは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満);
● それは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、
- CDR1が、
a)配列番号20~21のアミノ酸配列;
b)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号38~39のアミノ酸配列;
e)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号57~58のアミノ酸配列;
h)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される;
● そのCDR配列は、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する;又は
● それは、配列番号1及び2のいずれかから選択される。
【0052】
別の態様では、本発明は、エピトープビン3に属し、以下の特徴の1つ以上を有する免疫グロブリンに関する:
● それは、PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断する;
● それは、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される;
● それは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満);
● それは、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなり、
- CDR1が、
a)配列番号29~30のアミノ酸配列;
b)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号48~49のアミノ酸配列;
e)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号67~68のアミノ酸配列;
h)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される;
● そのCDR配列は、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する;又は
● それは、配列番号11及び12のいずれかから選択される。
【0053】
本発明の一価ポリペプチドは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)及び重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になり得る。本発明の一価ポリペプチドは、従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列及び重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になり得る。本発明の一価ポリペプチドは、ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切なアミノ酸)、又はナノボディ(限定されないが、VHHを含む)から選択される免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になり得る。好ましい態様では、本発明の一価ポリペプチドは、部分的又は完全ヒト化ナノボディ、例えば、部分的又は完全ヒト化VHHから本質的になる。
【0054】
上記のように、本発明はまた、本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドの調製における、本明細書に記載される一価ポリペプチドの使用に関する。従って、本発明は、本発明の多価ポリペプチドの調製における結合ドメイン又は結合単位としての、本発明の一価ポリペプチドの使用に関する。
【0055】
本発明はさらに、1つ以上の本発明の一価ポリペプチド又は1つ以上の本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドを含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドであって、場合により、1つ以上のペプチドリンカーを介して場合により連結された1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含むポリペプチド(本明細書では「本発明のポリペプチド」とも称される)に関する。本明細書のさらなる開示から当業者には明らかであるように、このようなさらなる基、残基、部分、結合単位又はアミノ酸配列は、さらなる機能性を本発明の一価又は多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドに提供してもよいし又は提供しなくてもよく、本発明の一価又は多価ポリペプチドの特性を改変してもよいし又は改変しなくてもよい。
【0056】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸又はヌクレオチド配列に関する。このような核酸は、本明細書では「本発明の核酸」とも称され、例えば、本明細書にさらに記載されるように、遺伝子構築物の形態でもよい。従って、本発明はまた、遺伝子構築物の形態である核酸又はヌクレオチド配列に関する。
【0057】
本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドをコードする核酸を得るために、本発明の一価ポリペプチドをコードする核酸を連結することができる。従って、本発明はまた、本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドをコードする遺伝子構築物を調製するための、本発明の一価ポリペプチドをコードする核酸又はヌクレオチド配列の使用に関する。
【0058】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドを発現し(又は、適切な状況下でこれを発現することができ);及び/又は、本発明の核酸を含有するホスト又は宿主細胞に関する。このようなホスト又は宿主細胞の好ましいが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0059】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の核酸と、場合により、すなわち組成物の目的の用途に応じたそれ自体が公知のこのような組成物の1つ以上のさらなる成分とを含有するか、又はこれらを含む組成物に関する。このような組成物は、例えば、医薬組成物(本明細書で定義される)でもよいし、又は獣医学的組成物でもよい。このような組成物の好ましいが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0060】
本発明はさらに、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞及び組成物を調製するための方法に関する。
【0061】
本発明はさらに、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞及び組成物の用途及び使用、並びにP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法に関する。好ましいが非限定的ないくつかの用途及び使用は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0062】
このようなものとして、本発明のポリペプチド及び組成物は、P. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するのに使用することができる。P. aeruginosa感染症にかかりやすい患者群は当業者には明らかであり、例えば(限定されないが)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術を受けている患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者、気管支拡張症を有する患者、敗血症を有する患者、及びガン関連好中球減少症を有する患者が挙げられる。
【0063】
従って、本発明はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法であって、少なくとも1つの本発明のポリペプチド又は本発明の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
【0064】
本発明はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における;及び/又は、本明細書に記載される方法の1つ以上に使用するための、本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0065】
本発明はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症の少なくとも1つにおけるP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための、本発明のポリペプチド又は本発明の組成物に関する。
【0066】
本発明のポリペプチド及び組成物の他の用途及び使用は、本明細書のさらなる開示から当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A】実施例5に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける一価抗PcrVナノボディの分析。
図1B】実施例5に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける一価抗PcrVナノボディの分析。
図1C】実施例5に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける一価抗PcrVナノボディの分析。
図1D】実施例5に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける一価抗PcrVナノボディの分析。
図2A】実施例7に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの分析。
図2B】実施例7に記載されている、P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおける二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの分析。
図3】エピトープマッピングに使用した分子の概略図。PcrV-LcrVキメラの設計は、一次配列及び構造(特に、二次構造)情報に基づいていた。PcrVの構造的に対応するカウンターパート(黒色のバー)に代えて、17個~47個のアミノ酸残基の長さのLcrVフラグメント7個(透明のバー)を導入することによって、7個の異なるキメラ分子を設計した。Frank et al. (The Journal of infectious diseases 186: 64-73, 2002及び米国特許第6,827,935号)によって記載されているPcrVフラグメント(アミノ酸144~257)も作製した。バーの上下にある数字は、それぞれPcrV又はLcrVのアミノ酸残基数を示す。異なる構築物のアミノ酸配列を表A-7に示す。
図4A】ナノボディ339、360及び376を接種した後の急性P. aeruginosa感染症マウスモデルで得られた生存曲線。1群当たり7~8匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。マウスの生存を96時間モニタリングした。
図4B】ナノボディ339、360及び376を接種した後の急性P. aeruginosa感染症マウスモデルで得られた生存曲線。1群当たり7~8匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。マウスの生存を125時間モニタリングした。
図5A】肺炎症パラメータ及び細菌負荷。1群当たり3~5匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。さらなる群に10mg/kgのトブラマイシンを腹腔内投与して、ポジティブコントロールとした。すべてのマウスを感染の24時間後に屠殺し、その後にミエロペルオキシダーゼ活性(A)を評価した。結果を平均±SEMとして示す。事後Bonferroni多重比較検定による一元ANOVAを使用して、統計を実施した。<0.05のP値を統計的に有意であるとみなした。
図5B】肺炎症パラメータ及び細菌負荷。1群当たり3~5匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。さらなる群に10mg/kgのトブラマイシンを腹腔内投与して、ポジティブコントロールとした。すべてのマウスを感染の24時間後に屠殺し、その後に細菌負荷(B)を評価した。結果を平均±SEMとして示す。事後Bonferroni多重比較検定による一元ANOVAを使用して、統計を実施した。<0.05のP値を統計的に有意であるとみなした。
図5C】肺炎症パラメータ及び細菌負荷。1群当たり3~5匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。さらなる群に10mg/kgのトブラマイシンを腹腔内投与して、ポジティブコントロールとした。すべてのマウスを感染の24時間後に屠殺し、その後に総体重に対する肺重量の割合(C)を評価した。結果を平均±SEMとして示す。事後Bonferroni多重比較検定による一元ANOVAを使用して、統計を実施した。<0.05のP値を統計的に有意であるとみなした。
図6】相対的な体重減少。1群当たり7~8匹のC57Bl/6マウスに、ナノボディ、Fab13.37又は緩衝液のみのいずれかをPseudomonas aeruginosaと予混合した予混合物を鼻腔内負荷した。マウスを5日間モニタリングし、体重を午後1時に毎日記録した。結果を平均±SEMとして示す。
図7】霧状化前後のナノボディサンプルのOD500値。ポリペプチド339、360、354及び376(Tween80を含むか又は含まないD-PBS溶液)をAKITA2(登録商標)APIXNEBネブライザーシステム(Activaero)によって霧状化した。霧状化実験をデュプリケイトで実施した。4um膜を有するメッシュネブライザーによって、500μlのサンプルを連続して霧状化した。エアロゾルを100mLガラス瓶に収集し、次いで分析した。
【0068】
詳細な説明
定義
特に指示又は定義がない限り、使用されるすべての用語は当技術分野における通常の意味を有し、これらは当業者には明らかである。例えば標準的なハンドブック、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd.Ed.) Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)、F. Ausubel et al. (Current protocols in molecular biology, Green Publishing and Wiley Interscience, New York, 1987)、Lewin (Genes II, John Wiley & Sons, New York, N.Y., 1985)、Old et al. (Principles of Gene Manipulation: An Introduction to Genetic Engineering (2nd edition) University of California Press, Berkeley, CA, 1981); Roitt et al. (Immunology (6th. Ed.) Mosby/Elsevier, Edinburgh, 2001)、Roitt et al. (Roitt's Essential Immunology (10th Ed.) Blackwell Publishing, UK, 2001)及びJaneway et al. (Immunobiology (6th Ed.) Garland Science Publishing/Churchill Livingstone, New York, 2005)、並びに本明細書で引用されている一般的な背景技術を参照のこと。
【0069】
特に指示がない限り、詳細に明記されていないすべての方法、工程、技術及び操作は、当業者には明らかであるように、それ自体が公知の方法で実施することができ、実施されたものである。例えば、先と同様に、標準的なハンドブック及び本明細書で言及されている一般的な背景技術、並びにそこで引用されているさらなる参考文献;並びに、例えば、以下の総説Presta (Adv. Drug Deliv. Rev. 58 (5-6): 640-56, 2006)、Levin and Weiss (Mol. Biosyst. 2(1): 49-57, 2006)、Irving et al. (J. Immunol. Methods 248(1-2): 31-45, 2001)、Schmitz et al. (Placenta 21 Suppl. A: S106-12, 2000)、Gonzales et al. (Tumour Biol. 26(1): 31-43, 2005)(これらには、タンパク質工学技術、例えば親和性成熟、並びにタンパク質(例えば、免疫グロブリン)の特異性及び他の所望の特性を改善するための他の技術が記載されている)を参照のこと。
【0070】
本明細書で使用される場合、「配列」という用語(例えば、「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」又は「タンパク質配列」のような用語)は、一般に、文脈上より限定的に解釈する必要がない限り、関連アミノ酸配列並びにそれをコードする核酸又はヌクレオチド配列の両方を含むと理解されるべきである。
【0071】
アミノ酸残基は、標準的な三文字又は一文字のアミノ酸コードに従って示される。国際公開第08/020079号の48頁の表A-2を参照のこと。
【0072】
核酸又はアミノ酸は、それが得られた反応培地又は培養培地中のそれが通常は付随する少なくとも1つ他の成分、例えば、別の核酸、別のタンパク質/ポリペプチド、別の生物学的成分若しくは高分子又は少なくとも1つの混入物質、不純物又は微量成分から分離された場合、-例えば、前記供給源又は培地と比較して-「(本質的に)単離された(形態)」である(にある)と考えられる。特に、核酸又はアミノ酸は、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、より具体的には少なくとも100倍、最大1000又はそれ以上精製された場合、「(本質的に)単離された」と考えられる。適切な技術、例えば、適切なクロマトグラフィー技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して決定した場合、「(本質的に)単離された形態の」核酸又はアミノ酸は、好ましくは本質的に均一である。
【0073】
ヌクレオチド配列又はアミノ酸配列が、それぞれ別のヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を「含む」か、又は別のヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列「から本質的になる」と言われる場合、これは、後者のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列がそれぞれ、初めに言及されたヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に組み込まれていることを意味し得るが、より通常には、これは一般に、初めに言及された配列が実際にどのようにして作製又は入手されたかに関係なく(例えば、本明細書に記載される任意の適切な方法によるものであり得る)、初めに言及されたヌクレオチド配列又はアミノ酸配列がそれぞれ、その配列内にそれぞれ後者の配列と同じヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を有するヌクレオチド又はアミノ酸残基のストレッチを含むことを意味する。非限定的な例によって、本発明のポリペプチドが免疫グロブリン単一可変ドメインを含むと言われる場合、これは、前記免疫グロブリン単一可変ドメイン配列が、本発明のポリペプチドの配列に組み込まれていることを意味し得るが、より通常には、これは一般に、本発明のポリペプチドが、前記本発明のポリペプチドがどのようにして作製又は入手されたかに関係なく、本発明のポリペプチドが、その配列内に免疫グロブリン単一可変ドメインの配列を含有することを意味する。また、核酸又はヌクレオチド配列が別のヌクレオチド配列を含むと言われる場合、初めに言及された核酸又はヌクレオチド配列は、発現産物(例えば、ポリペプチド)に発現される場合、後者のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列が前記発現産物の一部を形成するようなもの(換言すれば、後者のヌクレオチド配列が、初めに言及されたより大きな核酸又はヌクレオチド配列と同じリーディングフレーム内にあるようなもの)であるのが好ましい。
【0074】
「から本質的になる」は、本発明の方法のいずれかに使用される免疫グロブリン単一可変ドメインが、本発明のポリペプチドと全く同じであるか、又は限られた数のアミノ酸残基、例えば1個~20個のアミノ酸残基、例えば1個~10個のアミノ酸残基、好ましくは1個~6個のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個又は6個のアミノ酸残基が免疫グロブリン単一可変ドメインのアミノ末端、カルボキシ末端又はアミノ末端及びカルボキシ末端の両方に付加された本発明のポリペプチドに対応することを意味する。
【0075】
2つ以上のヌクレオチド配列を比較する目的のために、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性」のパーセンテージを、[第2のヌクレオチド配列中の対応する位置のヌクレオチドと同一の第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数]を[第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの総数]で割り、[100%]を乗じることによって計算することができる(この場合、-第1のヌクレオチド配列と比較した-第2のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの各欠失、挿入、置換又は付加を、単一ヌクレオチド(位置)での相違と考える)。あるいは、2つ以上のヌクレオチド配列間の配列同一性の程度を、標準的な設定を使用したNCBI Blast v2.0などの公知の配列アライメント用コンピュータアルゴリズムを使用して計算することができる。配列同一性の程度を決定するためのいくつかの他の技術、コンピュータアルゴリズム及び設定は、例えば、国際公開第04/037999号、欧州特許出願公開第0967284号、欧州特許出願公開第1085089号、国際公開第00/55318号、国際公開第00/78972号、国際公開第98/49185号及び英国特許出願公開第2357768号に記載されている。通常、上に概説した計算方法に従って、2つのヌクレオチド配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のために、最も多くの数のヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を「第1の」ヌクレオチド配列とし、他のヌクレオチド配列を「第2の」ヌクレオチド配列とする。
【0076】
2つ以上のアミノ酸配列を比較する目的のために、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との間の「配列同一性」(本明細書では「アミノ酸同一性」とも称れる)のパーセンテージを、[第2のアミノ酸配列中の対応する位置のアミノ酸残基と同一の第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の数]を[第1のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の総数]で割り、[100%]を乗じることによって計算することができる(この場合、-第1のアミノ酸配列と比較した-第2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基の各欠失、挿入、置換又は付加を、単一アミノ酸残基(位置)での相違(すなわち、本明細書で定義される「アミノ酸差異」)と考える)。あるいは、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を、先と同様に標準的な設定を使用した公知のコンピュータアルゴリズム、例えば、ヌクレオチド配列の配列同一性の程度を決定するための上記のものを使用して計算することができる。通常、上に概説した計算方法に従って、2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」のパーセンテージを決定する目的のために、最も多くの数のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸配列とし、他のアミノ酸配列を「第2の」アミノ酸配列とする。
【0077】
また、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度を決定する際、当業者であれば、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮することができ、これは、アミノ酸残基が類似化学構造の別のアミノ酸残基に置換されるアミノ酸置換であって、ポリペプチドの機能、活性又は他の生物学的特性に対する影響がほとんど無いか又は本質的に無いアミノ酸置換であると一般に説明することができる。このような保存的アミノ酸置換は当技術分野において、例えば、国際公開第04/037999号、英国特許出願公開第335768号、国際公開第98/49185号、国際公開第00/46383号及び国際公開第01/09300号から周知である;このような置換の(好ましい)種類及び/又は組み合わせは、国際公開第04/037999号及び国際公開第98/49185号並びにそこで引用されているさらなる参考文献の関連する教示に基づいて選択することができる。
【0078】
このような保存的置換は、好ましくは、以下の(a)群~(e)群内のあるアミノ酸が、同じ群内の別のアミノ酸残基に置換される置換である:(a)低分子の脂肪族で非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro及びGly;(b)極性で負に荷電した残基及びこの(非荷電)アミド:Asp、Asn、Glu及びGln;(c)極性で正に荷電した残基:His、Arg及びLys;(d)巨大な脂肪族で非極性の残基:Met、Leu、Ile、Val及びCys;並びに(e)芳香族残基:Phe、Tyr及びTrp。特に好ましい保存的置換は以下のようなものである:AlaをGlyに又はSerに;ArgをLysに;AsnをGlnに又はHisに;AspをGluに;CysをSerに;GlnをAsnに;GluをAspに;GlyをAlaに又はProに;HisをAsn又はGlnに;IleをLeuに又はValに;LeuをIleに又はValに;LysをArgに、Glnに又はGluに;MetをLeuに、Tyrに又はIleに;PheをMetに、Leuに又はTyrに;SerをThrに;ThrをSerに;TrpをTyrに;TyrをTrpに;及び/又はPheをValに、Ileに又はLeuに。
【0079】
本明細書に記載されるポリペプチドに適用される任意のアミノ酸置換はまた、Schulz et al. ("Principles of Protein Structure", Springer-Verlag, 1978)によって開発された、異なる種の相同タンパク質間のアミノ酸変異頻度の分析、Chou and Fasman (Biochemistry 13: 211, 1974; Adv. Enzymol., 47: 45-149, 1978)によって開発された構造形成能の分析、並びにEisenberg et al. (Proc. Natl. Acad Sci. USA 81: 140-144, 1984)、Kyte and Doolittle (J. Molec. Biol. 157: 105-132, 1981)及びGoldman et al. (Ann. Rev. Biophys. Chem. 15: 321-353, 1986)によって開発されたタンパク質中の疎水性パターンの分析に基づくものでもよい(これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ナノボディの一次、二次及び三次構造についての情報は、本明細書の記載及び上に引用した一般的な背景技術に示されている。また、この目的のために、ラマ由来のVHHドメインの結晶構造が、例えば、Desmyter et al. (Nature Structural Biology, 3: 803, 1996)、Spinelli et al. (Natural Structural Biology, 3: 752-757, 1996)及びDecanniere et al. (Structure, 7 (4): 361, 1999)によって示されている。従来のVドメインにおいてV/Vインターフェースを形成するアミノ酸残基のいくつか及びこれら位置のラクダ化置換候補についてのさらなる情報は、上に引用した従来技術において見ることができる。
【0080】
アミノ酸配列及び核酸配列は、それらの全長にわたって100%の配列同一性(本明細書で定義される)を有する場合に、「全く同じものである」と言われる。
【0081】
2つのアミノ酸配列を比較する場合、「アミノ酸差異」という用語は、第2の配列と比較した、第1の配列の位置における単一アミノ酸残基の挿入、欠失又は置換を指す;2つのアミノ酸配列は、1個、2個又はそれ以上のこのようなアミノ酸差異を含有することができると理解されている。より具体的には、本発明のアミノ酸配列及び/又はポリペプチドでは、「アミノ酸差異」という用語は、それぞれa)、d)又はg)のCDR配列と比較した、c)、f)又はi)で特定されるCDR配列の位置における単一アミノ酸残基の挿入、欠失又は置換を指す;c)、f)又はi)のCDR配列は、それぞれa)、d)又はg)のCDR配列と比較して、1個、2個又は最大3個のこのようなアミノ酸差異を含有することができると理解されている。
【0082】
「アミノ酸差異」は、本発明のポリペプチドの特性を改善するか、又は本発明のポリペプチドの所望の特性又はそのバランス若しくは組み合わせを少なくとも過度に損なわない任意の1個、2個又は最大3個の置換、欠失若しくは挿入又はそれらの任意の組み合わせであり得る。これに関して、得られる本発明のポリペプチドは、1個、2個又は最大3個の置換、欠失又は挿入を有しない1つ以上のCDR配列を含むポリペプチドと比較して同じ、ほぼ同じ、又はより高い親和性でPcrVに少なくとも結合するものとし、前記親和性は表面プラズモン共鳴によって測定されるようなものである。
【0083】
これに関して、c)、f)及び/又はi)のアミノ酸配列は、それ自体が公知の1つ以上の親和性成熟技術を使用した親和性成熟によってそれぞれa)、d)及び/又はg)のアミノ酸配列から生成されたアミノ酸配列であり得る。
【0084】
例えば、本発明のポリペプチドを発現させるのに使用されるホスト生物に応じて、このような欠失及び/又は置換は、翻訳後修飾のための1つ以上の部位(例えば、1つ以上のグリコシル化部位)が除去されるように設計することができ、これは当業者の能力の範囲内であろう。
【0085】
互換的に使用することができる「エピトープ」及び「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン、従来の抗体、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドなどの抗原結合分子、より具体的には前記分子の抗原結合部位によって認識される、ポリペプチド又はタンパク質などの高分子の一部を指すエピトープは免疫グロブリンの最小結合部位を規定するので、免疫グロブリンの特異性のターゲットに相当する。
【0086】
エピトープを認識する抗原結合分子(例えば、免疫グロブリン、従来の抗体、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)の一部は、「パラトープ」と称される。
【0087】
ある特定のエピトープ、抗原又はタンパク質(又は、それらの少なくとも一部、フラグメント又はエピトープ)「に結合」又は「特異的に結合」でき、これら「に対する親和性を有し」、及び/又はこれら「に対する特異性を有する」ポリペプチド(例えば、本発明の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド、又は一般には抗原結合分子若しくはそのフラグメント)は、前記エピトープ、抗原若しくはタンパク質「に対する」若しくは「に指向性を有する」と言われるか、又はこのようなエピトープ、抗原若しくはタンパク質に関する「結合」分子であるか、又は「抗」エピトープ、「抗」抗原若しくは「抗」タンパク質(例えば、「抗」PcrV)であると言われる。
【0088】
「特異性」という用語は、国際公開第08/020079号の53~56頁の段落n)に示されている意味を有し、そこで言及されているように、特定の抗原結合分子又は抗原結合タンパク質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)が結合することができる異なる種類の抗原又は抗原決定基の数を指す。抗原結合タンパク質の特異性は、国際公開第08/020079号の53~56頁(参照により本明細書に組み込まれる)(これには、抗原結合分子(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)と関連抗原との間の結合を測定するためのいくつか好ましい技術も記載されている)に記載されているように、親和性及び/又はアビディティに基づいて決定することができる。典型的には、抗原結合タンパク質(例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチド)は、10-5~10-12モル/リットル又はそれ未満、好ましくは10-7~10-12モル/リットル又はそれ未満、より好ましくは10-8~10-12モル/リットルの解離定数(K)(すなわち、10~1012リットル/モル又はそれ以上、好ましくは10~1012リットル/モル又はそれ以上、より好ましくは10~1012リットル/モルの会合定数(K))で、それらの抗原に結合するであろう。10mol/リットルより大きい任意のK値(又は、10-1リットル/molより小さい任意のK値)は、一般に、非特異的結合を示すと考えられる。好ましくは、本発明の一価ポリペプチドは、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満、例えば10~5nM以下又はそれ未満などの親和性で、所望の抗原に結合するであろう。抗原又は抗原決定基に対する抗原結合タンパク質の特異的結合は、例えば、スキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドウィッチ競合アッセイ、及び当技術分野におけるそれ自体が公知のそれらの様々な変法;並びに、本明細書で言及されている他の技術を含むそれ自体が公知の任意の適切な方法で決定することができる。当業者には明らかであるように、及び国際公開第08/020079号の53~56頁に記載されているように、解離定数は、実際の解離定数でもよいし、又は見掛けの解離定数でもよい。解離定数を決定するための方法は当業者には明らかであり、例えば国際公開第08/020079号の53~56頁で言及されている技術が挙げられる。
【0089】
免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドが第2のターゲット又は抗原に結合する親和性と比較して少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍、最大10000倍以上良好な(上記の、並びにK値、K値、Koff速度及び/又はKon速度として適切に表される)親和性で第1の抗原に結合する場合、第2のターゲット又は抗原と比較して、第1のターゲット又は抗原「に対して特異的」であると言われる。例えば、免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、前記免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドが第2のターゲット又は抗原に結合するKよりも少なくとも10倍小さい、例えば少なくとも100倍小さい、好ましくは少なくとも1000倍小さい、例えば10000倍小さい又はさらにそれ未満のK値で、第1のターゲット又は抗原に結合してもよい。好ましくは、免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、第2のターゲット又は抗原と比較して、第1のターゲット又は抗原「に対して特異的」である場合、前記第1のターゲット又は抗原に指向性を有する(本明細書で定義される)が、前記第2のターゲット又は抗原に指向性を有しない。
【0090】
「(交差)遮断する」、「(交差)遮断される」、「(交差)遮断している」、「競合結合している」、「(交差)競合する」、「(交差)競合している」及び「(交差)競合」という用語は、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、所定のターゲットに対する他の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は結合剤の結合を妨げる能力を意味するために本明細書では互換的に使用される。免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤がターゲットに対する別のものの結合を妨げることができる程度、ひいては本発明に従って交差遮断すると言われ得るかを、競合結合アッセイを使用して決定することができる。1つの特に適切な定量的な交差遮断アッセイは、表面プラズモン共鳴技術を使用して相互作用の程度を測定することができるBiacore機器を使用する。別の適切な定量的な交差遮断アッセイは、ターゲットに対する結合に関して、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤間の競合を測定するELISAベースのアプローチを使用する。
【0091】
一般に、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、本発明に従って交差遮断するか、又は交差遮断することができるかを決定するのに適切なBiacoreアッセイを以下に説明する。このアッセイは、本明細書に記載される免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤のいずれかと共に使用することができることが認識されよう。Biacore機器(例えば、Biacore3000)は、製造業者の推奨に従って操作する。このように、1つの交差遮断アッセイでは、ターゲットでコーティングした表面を作製するのに、標準的なアミンカップリングケミストリを使用して、ターゲットタンパク質(例えば、PcrV)をCM5 Biacoreチップにカップリングする。通常、ターゲットの200~800個の共鳴単位をチップにカップリングする(容易に測定可能なレベルの結合を与えるが、使用する試験試薬の濃度によって容易に飽和させることができる量)。互いに交差遮断する能力を評価するべき2つの試験結合剤(A*及びB*と称する)を、適切な緩衝液中で、結合部位について1:1のモル比で混合し、試験混合物を作製する。結合部位ベースの濃度を計算する場合、結合剤の分子量は、結合剤の全分子量を、この結合剤上のターゲット結合部位の数で割ったものであるとみなす。試験混合物中の各結合剤の濃度は、Biacoreチップ上に捕捉されたターゲット分子上のこの結合剤に対する結合部位を容易に飽和するのに十分高いものとする。混合物中の結合剤は、(結合ベースで)同じモル濃度であり、その濃度は通常(結合部位ベースで)1.00~1.5マイクロモルであろう。A*及びB*を単独で含有する別々の溶液も調製する。これらの溶液中のA*及びB*は、試験混合物と同じ緩衝液中で、かつ試験混合物と同じ濃度であるとする。試験混合物をターゲットでコーティングしたBiacoreチップに通し、結合総量を記録する。次いで、チップに結合したターゲットを損なうことなく、結合した結合剤を取り除くようにチップを処理する。通常、チップを30mMのHClで60秒間処理することによってこれを行う。次いで、A*単独の溶液をターゲットでコーティングした表面に通し、結合量を記録する。チップを再度処理し、チップに結合したターゲットを損なうことなく、結合した結合剤をすべて取り除く。次いで、B*単独の溶液をターゲットでコーティングした表面に通し、結合量を記録する。次に、A*とB*との混合物の理論最大結合を計算するが、これは単独でターゲット表面に通した場合の各結合剤の結合の合計である。実際に記録された混合物の結合がこの理論最大値よりも小さい場合、2つの結合剤は互いに交差遮断すると言われる。従って、一般に、本発明の交差遮断免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤は、アッセイ中、及び第2の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の存在下で記録された結合が、2つの免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は結合剤の理論最大結合(直前に定義される)を合わせたものの80%~0.1%(例えば、80%~4%)、具体的には理論最大結合の75%~0.1%(例えば、75%~4%)、より具体的には理論最大結合の70%~0.1%(例えば、70%~4%)であるように、上記Biacore交差遮断アッセイでターゲットに結合するものである。上記Biacoreアッセイは、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が本発明に従って互いに交差遮断するかを決定するのに使用される主なアッセイである。稀に、特定の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、CM5 Biacoreチップとアミンケミストリを介してカップリングしたターゲットに結合しないことがある(通常、ターゲット上の関連結合部位がチップとのカップリングによって塞がれるか、又は破壊される場合にこれが起こる)。このような場合、タグ付型のターゲット、例えばN末端Hisタグ付型を使用して交差遮断を決定することができる。この特定のフォーマットで、抗His抗体をBiacoreチップにカップリングした後、Hisタグ付ターゲットをチップの表面に通し、抗His抗体で捕捉する。各チップ再生サイクル後に、抗His抗体でコーティングした表面上に、新たなHisタグ付ターゲットを再ローディングすることを除いて、本質的には上記のように交差遮断分析を行う。N末端Hisタグ付ターゲットを使用する例に加えて、C末端Hisタグ付ターゲットを代替的に使用することができる。さらに、当技術分野において公知の様々な他のタグ及びタグ結合タンパク質の組み合わせをこのような交差遮断分析に使用することができる(例えば、HAタグと抗HA抗体;FLAGタグと抗FLAG抗体;ビオチンタグとストレプトアビジン)。
【0092】
一般に、ターゲット(例えば、PcrV)に指向性を有する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、本明細書に定義されるように交差遮断するか、又は交差遮断することができるかを決定するためのELISAアッセイを以下に説明する。このアッセイは、本明細書に記載される免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤のいずれかと共に使用することができることが認識されよう。このアッセイの一般原理は、ターゲットに指向性を有する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は結合剤をELISAプレートのウェル上にコーティングすることである。過剰量の第2の潜在的交差遮断抗ターゲット免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤を溶液中に追加する(すなわち、ELISAプレートに結合しない)。次いで、限られた量のターゲットをウェルに追加する。コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤と、溶液中の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤とは、限られた数のターゲット分子の結合について競合する。コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が結合していない過剰なターゲットを取り除くために、また第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤、及び第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤とターゲットとの間に形成される任意の複合体を取り除くために、プレートを洗浄する。次いで、ターゲットを検出するのに適切な試薬を使用して、結合したターゲットの量を測定する。コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤を交差遮断することができる溶液中の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤によって、第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の非存在下でコーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤に結合することができるターゲット分子の数に比べて、コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤に結合することができるターゲット分子の数を低減させることができるであろう。固定化した免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤となるように、第1の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤、例えばAb-Xを選択する場合、それをELISAプレートのウェル上にコーティングし、その後、プレートを適切なブロッキング液でブロッキングして、続いて追加する試薬の非特異的結合を最小にする。次いで、Ab-Yターゲット結合部位の1ウェル当たりのモルが、ELISAプレートのコーティング中に使用したAb-Xターゲット結合部位の1ウェル当たりのモルよりも少なくとも10倍多くなるように、過剰量の第2の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤、すなわちAb-YをELISAプレートに追加する。次いで、追加したターゲットの1ウェル当たりのモルが、各ウェルをコーティングするのに使用したAb-Xターゲット結合部位のモルよりも少なくとも25倍少なくになるように、ターゲットを追加する。適切なインキュベート期間の後、ELISAプレートを洗浄し、ターゲットを検出するための試薬を追加し、コーティングした抗ターゲット免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤(この場合、Ab-X)が特異的に結合したターゲットの量を測定する。アッセイのバックグラウンドシグナルは、コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤(この場合、Ab-X)、第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤(この場合、Ab-Y)、ターゲット緩衝液のみ(すなわち、ターゲットを含まない)及びターゲット検出試薬を用いてウェル中で得られたシグナルと定義する。アッセイのポジティブコントロールシグナルは、コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤(この場合、Ab-X)、第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤、緩衝液のみ(すなわち、第2の溶液相の免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤を含まない)、ターゲット及びターゲット検出試薬を用いてウェル中で得られたシグナルと定義する。ポジティブコントロールシグナルがバックグラウンドシグナルの少なくとも6倍になるように、ELISAアッセイを行い得る。コーティング免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤として使用するための、及び第2の(競合)免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤として使用するための免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の選択に起因する任意のアーチファクト(例えば、Ab-XとAb-Yとの間で有意に異なるターゲットに対する親和性)を避けるために、交差遮断アッセイを2つのフォーマットで行い得る:1)フォーマット1は、Ab-Xが、ELISAプレート上にコーティングされた免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤であり、Ab-Yが、溶液中の競合免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤である場合であり、2)フォーマット2は、Ab-Yが、ELISAプレート上にコーティングされた免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤であり、Ab-Xが、溶液中の競合免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤である場合である。フォーマット1又はフォーマット2のいずれかで、溶液相の抗ターゲット免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、溶液相の抗ターゲット免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の非存在下(すなわち、ポジティブコントロールウェル)で得られたターゲット検出シグナルと比較して、ターゲット検出シグナル(すなわち、コーティングした免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が結合したターゲットの量)の60%~100%、具体的には70%~100%、より具体的には80%~100%の低減を引き起こすことができる場合、Ab-X及びAb-Yは交差遮断すると定義する。
【0093】
ターゲットに指向性を有する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、本明細書で定義されるように交差遮断するか、交差遮断することができるか、競合的に結合するか、又は交差競合性であるかを決定するための他の方法は、例えば、Xiao-Chi Jia et al. (Journal of Immunological Methods 288: 91-98, 2004)、Miller et al. (Journal of Immunological Methods 365: 118-125, 2011)に記載されており、及び/又は本明細書に記載される方法(例えば、実施例5.4を参照のこと)である。
【0094】
「エピトープビニング(Epitope binning)」は、競合結合アッセイ又は交差遮断アッセイを使用して、ターゲット(例えば、PcrV)に結合可能な又は結合不可能な免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の対を同定し、それにより同時に、ターゲット上の同じか又はオーバーラップするエピトープに結合する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤を同定することを指す。
【0095】
従って、本明細書で使用される場合、「エピトープビン(epitope bin)」は、同じか又はオーバーラップする結合特異性を有する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤のファミリーである。上記のように、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤のエピトープビンへの分類は、抗原結合に関する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤の交差競合(交差遮断)に基づくものである。交差競合(交差遮断)アッセイは、免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤が、類似の対合プロファイルを有する免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤と共に抗原及び基に同時に結合(対合)するのを分析する。類似のプロファイルを有する(すなわち、同じエピトープビンに属する)免疫グロブリン、抗体、免疫グロブリン単一可変ドメイン、ポリペプチド又は他の結合剤は、同じ、密接に関連した、及び/又はオーバーラップするエピトープに結合し得る。
【0096】
アミノ酸配列が、2つの異なる抗原又は抗原決定基(例えば、2つの異なる哺乳動物種由来の血清アルブミンなど、例えば、ヒト血清アルブミン及びカニクイザル血清アルブミンなど、例えば、異なるP. aeruginosa株由来のPcrVなど)の両方に対して特異的(本明細書で定義される)である場合、これらの異なる抗原又は抗原決定基に対して「交差反応性」であると言われる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「PcrV」という用語は、Pseudomonas aeruginosa (P. aeruginosa)のIII型分泌系(TTSS)中に存在する針タンパク質PcrVを指す。
【0098】
本明細書で使用される場合、本発明のポリペプチドの「効力」という用語は、発生するその特定の効果に必要な本発明のポリペプチドの量の関数である。それは、そのポリペプチドのIC50の逆数として簡単に測定される。それは、前記本発明のポリペプチドがP. aeruginosaを中和する;例えば、P. aeruginosaの感染力をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaがホストに定着するのをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaのTTSS病原性機構をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって様々な外毒素が宿主細胞に注入されるのをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって誘導される宿主細胞膜透過性の孔媒介性増加をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって誘導される広範な細胞防御反応をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、並びに/又はP. aeruginosaによって誘導される組織損傷炎症のトリガーをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制する能力を指す;効力は、当技術分野において公知の又は本明細書に記載される任意の適切なアッセイ、例えば、in vitro細胞毒性アッセイ(例えば、Frank et al., The Journal of infectious diseases 186: 64-73, 2002; Vance et al. Infection and Immunity 73: 1706-1713, 2005; El Solh et al. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 178: 513-519, 2008によって記載されているもの;及び/又は実施例のセクションに記載されている細胞毒性(cytoxicity)アッセイ)及び/又はin vivoアッセイ(例えば、Secher et al., Journal of Antimicrobial Chemotherapy 66: 1100-1109, 2011によって記載されている急性マウスモデル)などによって測定され得る。
【0099】
対照的に、本発明のポリペプチドの「有効性」は、飽和ポリペプチド濃度における効果それ自体の最大強度を測定する。有効性は、本発明のポリペプチドから達成可能な最大反応を示す。それは、ポリペプチドが所望の(治療)効果をもたらす能力を指す。
【0100】
本発明のポリペプチドの「半減期」は、一般に、国際公開第08/020079号の57頁の段落o)に記載されているように定義することができ、そこで言及されているように、例えば、自然機構によるポリペプチドの分解及び/又はポリペプチドのクリアランス若しくは隔離により、ポリペプチドの血清濃度がin vivoで50%減少するのに要する時間を指す。本発明のポリペプチドのin vivo半減期は、それ自体が公知の任意の方法で、例えば、薬物動態分析によって決定され得る。適切な技術は当業者には明らかであり、例えば一般に、国際公開第08/020079号の57頁の段落o)に記載されているとおりであり得る。国際公開第08/020079号の57頁の段落o)でも言及されているように、半減期は、t1/2-α、t1/2-β及び曲線下面積(AUC)などのパラメータを使用して表され得る。例えば、Kenneth et al (Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists, John Wiley & Sons Inc, 1986)及びM Gibaldi and D Perron ("Pharmacokinetics", Marcel Dekker, 2nd Rev. Edition, 1982)などの標準的なハンドブックを参照のこと。「半減期の増加」又は「増加した半減期」という用語も国際公開第08/020079号の57頁の段落o)で定義されているとおりであり、t1/2-α及び/若しくはAUC又はその両方の増加の有無にかかわらず、特にt1/2-βの増加を指す。
【0101】
特に指示がない限り、「免疫グロブリン」という用語は、-本明細書で重鎖抗体又は従来の四本鎖抗体を指すのに使用されるかにかかわらず-完全なサイズの抗体、その個々の鎖、及びそれらの部分、ドメイン又はフラグメントすべて(限定されないが、それぞれVHHドメイン又はV/Vドメインなどの抗原結合ドメイン又はフラグメントを含む)を含めるために一般的な用語として使用される。
【0102】
本明細書で使用される場合、(ポリペプチド又はタンパク質の)「ドメイン」という用語は、タンパク質の他の部分とは独立にその三次元構造を維持する能力を有するフォールディングされたタンパク質構造を指す。一般に、ドメインは、タンパク質の別個の機能的特性に関与するものであり、多くの場合では当該タンパク質及び/又は当該ドメインの残りの部分の機能を損なうことなく、付加し、除去し又は他のタンパク質に移転させることができる。
【0103】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリンドメイン」という用語は、抗体鎖(例えば、従来の四本鎖抗体又は重鎖抗体の鎖)の球形領域、又はこのような球形領域から本質的になるポリペプチドを指す。免疫グロブリンドメインは、抗体分子に特徴的な免疫グロブリンフォールドであって、2つのベータシート内に配置された(場合により保存ジスルフィド結合によって安定化されている)約7本の逆平行ベータ鎖の2層のサンドイッチからなる免疫グロブリンフォールドを保持することを特徴とする。
【0104】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン可変ドメイン」という用語は、4つの「フレームワーク領域」(これらは、当技術分野及び本明細書では以下それぞれ「フレームワーク領域1」又は「FR1」;「フレームワーク領域2」又は「FR2」;「フレームワーク領域3」又は「FR3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」と称される)から本質的になる免疫グロブリンドメインを意味する;これらのフレームワーク領域は、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」(これらは、当技術分野及び本明細書では以下それぞれ「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」と称される)が介在している。従って、免疫グロブリン可変ドメインの一般的構造又は配列は、以下のように示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗原結合部位を有することによって抗原に対する特異性を抗体に付与するのは、この免疫グロブリン可変ドメインである。
【0105】
「単一可変ドメイン」と互換的に使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位が存在する分子であって、単一免疫グロブリンドメインによって形成される分子を定義する。これにより、免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの可変ドメインが相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン又はそのフラグメントから区別される。典型的には、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)が相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合、VH及びVLの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与する。すなわち、合計6つのCDRが抗原結合部位の形成に関与する。
【0106】
上記定義の観点から、従来の四本鎖抗体(例えば、当技術分野において公知のIgG、IgM、IgA、IgD又はIgE分子)又はこのような従来の四本鎖抗体由来のFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント(例えば、ジスルフィド結合Fv又はscFvフラグメント)若しくはダイアボディの抗原結合ドメインは、通常は免疫グロブリン単一可変ドメインとみなされないであろう。なぜならば、これらの事例では、抗原の各エピトープに対する結合は、通常、1つ(単一)の免疫グロブリンドメインによって生じるのではなく、一対の(結合)免疫グロブリンドメイン(例えば、軽鎖及び重鎖可変ドメイン)によって、すなわち免疫グロブリンドメインのVH-VL対(これらは一緒になって各抗原のエピトープに結合する)によって生じるからである。
【0107】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、さらなる免疫グロブリン可変ドメインと対合せずに、抗原のエピトープに特異的に結合することができる。免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のVH/VHH又はVLドメインによって形成される。従って、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は、3つ以下のCDRによって形成される。
【0108】
このようなものとして、単一可変ドメインは、単一の抗原結合単位(すなわち、単一の抗原結合ドメインが機能的抗原結合単位を形成するために別の可変ドメインと相互作用する必要がないような、単一可変ドメインから本質的になる機能的抗原結合単位)を形成することができる限り、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、VL配列)又はその適切なフラグメントでもよいし、又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列又はVHH配列)又はその適切なフラグメントでもよい。
【0109】
本発明の一実施態様では、免疫グロブリン単一可変ドメインは、重鎖可変ドメイン配列(例えば、VH配列)である;より具体的には、免疫グロブリン単一可変ドメインは、従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列でもよいし、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列でもよい。
【0110】
例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインは、(単一)ドメイン抗体(又は(単一)ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、「dAb」若しくはdAb(又はdAbとして使用するのに適切なアミノ酸)、又はナノボディ(本明細書で定義されるように、限定されないが、VHHを含む);他の単一可変ドメイン、又はそれらのいずれか1つの任意の適切なフラグメントであり得る。
【0111】
特に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、Nanobody(登録商標)(本明細書で定義される)又はその適切なフラグメントであり得る。[注:Nanobody(登録商標)、Nanobodies(登録商標)及びNanoclone(登録商標)は、Ablynx N.V.の登録商標である]ナノボディの一般的な説明については、以下のさらなる説明及び本明細書で引用されている従来技術、例えば、国際公開第08/020079号(16頁)に記載されているものなどを参照のこと。
【0112】
VHH、VHドメイン、VHH抗体フラグメント及びVHH抗体としても公知の「VHHドメイン」は、元々は、「重鎖抗体」(すなわち、「軽鎖を欠く抗体」;Hamers-Casterman et al. Nature 363: 446-448, 1993)の抗原結合免疫グロブリン(可変)ドメインであると説明されている。「VHHドメイン」という用語は、これらの可変ドメインを、従来の四本鎖抗体中に存在する重鎖可変ドメイン(これは、本明細書では「Vドメイン」又は「VHドメイン」と称される)及び従来の四本鎖抗体中に存在する軽鎖可変ドメイン(これは、本明細書では「Vドメイン」又は「VLドメイン」と称される)から区別するために選択される。VHH及びナノボディのさらなる説明については、Muyldermans (Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302, 2001)による総説論文及び以下の特許出願(これらは、一般的な背景技術として言及されている)を参照のこと;Vrije Universiteit Brusselの国際公開第94/04678号、国際公開第95/04079号及び国際公開第96/34103号;Unileverの国際公開第94/25591号、国際公開第99/37681号、国際公開第00/40968号、国際公開第00/43507号、国際公開第00/65057号、国際公開第01/40310号、国際公開第01/44301号、欧州特許出願公開第1134231号及び国際公開第02/48193号;Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB)の国際公開第97/49805号、国際公開第01/21817号、国際公開第03/035694号、国際公開第03/054016号及び国際公開第03/055527号;Algonomics N.V. and Ablynx N.V.の国際公開第03/050531号;National Research Council of Canadaによる国際公開第01/90190号;Institute of Antibodiesによる国際公開第03/025020号(=欧州特許出願公開第1433793号);並びに、Ablynx N.V.による国際公開第04/041867号、国際公開第04/041862号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/062551号、国際公開第05/044858号、国際公開第06/40153号、国際公開第06/079372号、国際公開第06/122786号、国際公開第06/122787号及び国際公開第06/122825号、並びにAblynx N.V.によるさらなる公開特許出願。これらの出願で言及されているさらなる従来技術、特に国際公開第06/040153号の41~43頁で言及されている参考文献のリスト(このリスト及び参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる)も参照のこと。これらの参考文献に記載されているように、ナノボディ(特に、VHH配列及び部分的ヒト化ナノボディ)は、特に、1つ以上の「ホールマーク残基」が1つ以上のフレームワーク配列中に存在することを特徴とし得る。ナノボディのヒト化及び/又はラクダ化及び他の改変、部分又はフラグメント、誘導体又は「ナノボディ融合物」、多価構築物(リンカー配列のいくつかの非限定的な例を含む)、並びにナノボディ及びその調製物の半減期を増加させる様々な改変を含むナノボディのさらなる説明は、例えば、国際公開第08/101985号及び国際公開第08/142164号に見られ得る。ナノボディのさらなる一般的な説明については、本明細書で引用されている従来技術、例えば、国際公開第08/020079号(16頁)に記載されているものなどを参照のこと。
【0113】
「Dab」、「ドメイン抗体」及び「dAb」としても公知の「ドメイン抗体」(「ドメイン抗体」及び「dAb」という用語は、GlaxoSmithKline企業グループによって商標として使用されている)は、例えば、欧州特許出願公開第0368684号、Ward et al. (Nature 341: 544-546, 1989)、Holt et al. (Tends in Biotechnology 21: 484-490, 2003)及び国際公開第03/002609号及び例えば国際公開第04/068820号、国際公開第06/030220号、国際公開第06/003388号及びDomantis Ltdの他の公開特許出願に記載されている。ドメイン抗体は、本質的には、非ラクダ科哺乳動物、特にヒトの四本鎖抗体のVH又はVLドメインに対応する。単一抗原結合ドメインとして(すなわち、それぞれVL又はVHドメインと対合せずに)エピトープに結合するためには、例えば、ヒト単一VH又はVLドメイン配列のライブラリを使用することによって、このような抗原結合特性についての特異的選択が必要である。ドメイン抗体は、VHHのように約13~約16kDaの分子量を有し、完全ヒト配列に由来する場合には、例えば、ヒトにおける治療的使用のためにヒト化する必要はない。
【0114】
哺乳動物起源ではないので本発明との関連ではあまり好ましくないが、単一可変ドメインは、ある特定の種のサメに由来し得ることにも留意するべきである(例えば、いわゆる「IgNARドメイン」、例えば、国際公開第05/18629号を参照のこと)。
【0115】
従って、本発明の意味では、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」又は「単一可変ドメイン」という用語は、非ヒト供給源、好ましくはラクダ科動物、好ましくはラクダ科重鎖抗体由来のポリペプチドを含む。前記のように、それらはヒト化され得る。また、例えば、Davies and Riechmann (FEBS 339: 285-290, 1994; Biotechnol. 13: 475-479, 1995; Prot. Eng. 9: 531-537, 1996)及びRiechmann and Muyldermans (J. Immunol. Methods 231: 25-38, 1999)に記載されているように、この用語は、非ラクダ科動物供給源、例えば、マウス又はヒト由来の「ラクダ化」されたポリペプチドを含む。
【0116】
VHHドメインのアミノ酸残基は、例えば、Riechmann and Muyldermans (J. Immunol. Methods 231: 25-38, 1999)の図2に示されているラクダ科動物由来のVHHメインに適用されているように、Kabat et al. ("Sequence of proteins of immunological interest", US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)によって示されているVドメインについての一般的なナンバリングに従ってナンバリングされる。Vドメインのアミノ酸残基をナンバリングするための代替方法であって、VHHドメインに同様に適用することができる方法は当技術分野において公知である。しかしながら、本明細書、特許請求の範囲及び図面では、特に指示がない限り、上記VHHドメインに適用したKabatナンバリングに従う。
【0117】
当技術分野ではVドメイン及びVHHドメインについて周知であるように、各CDRにおけるアミノ酸残基の総数は変化してもよく、Kabatナンバリングによって示されるアミノ酸残基の総数に対応していなくてもよいことに留意するべきである(すなわち、Kabatナンバリングによる1つ以上の位置が実際の配列中で占有されていなくてもよし、又は実際の配列が、Kabatナンバリングによって許容される数よりも多くのアミノ酸残基を含有してもよい)。これは、一般に、Kabatナンバリングが、実際の配列中のアミノ酸残基の実際のナンバリングに対応していてもよいし、又は対応していなくてもよいことを意味する。VHドメイン及びVHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、通常、110個~120個、多くの場合は112個~115個であろう。しかしながら、より短い及びより長い配列も、本明細書に記載される目的に適切な場合があることに留意するべきである。
【0118】
CDR領域の決定はまた、異なる方法に従って行われ得る。KabatによるCDRの決定では、VHHのFR1は1位~30位のアミノ酸残基をを含み、VHHのCDR1は31位~35位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR2は36位~49位のアミノ酸を含み、VHHのCDR2は50位~65位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR3は66位~94位のアミノ酸残基を含み、VHHのCDR3は95位~102位のアミノ酸残基を含み、VHHのFR4は103位~113位のアミノ酸残基を含む。
【0119】
しかしながら、本出願では、Kontermann and Dubel (Eds., Antibody Engineering, vol 2, Springer Verlag Heidelberg Berlin, Martin, Chapter 3, pp. 33-51, 2010)に従って、CDR配列を決定した。この方法によれば、FR1は1位~25位のアミノ酸残基をを含み、CDR1は26位~35位のアミノ酸残基を含み、FR2は36位~49位のアミノ酸を含み、CDR2は50位~58位のアミノ酸残基を含み、FR3は59位~94位のアミノ酸残基を含み、CDR3は95位~102位のアミノ酸残基を含み、FR4は103位~113位のアミノ酸残基を含む。
【0120】
ドメイン抗体及びナノボディ(VHHドメインを含む)などの免疫グロブリン単一可変ドメインをヒト化に供することができる。特に、ナノボディ(VHHドメインを含む)などのヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインは、これまでの段落で一般に定義したような免疫グロブリン単一可変ドメインであって、ヒト化置換(本明細書で定義される)であり、及び/又はこれに対応する少なくとも1つのアミノ酸残基が(特に、フレームワーク残基の少なくとも1つの中に)存在する免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る。天然に存在するVHH配列のフレームワーク領域の配列を、1つ以上の密接に関連したヒトV配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって、潜在的に有用なヒト化置換を確認することができ、その後、このようにして決定した潜在的に有用なヒト化置換(又はその組み合わせ)の1つ以上を前記VHH配列に(本明細書にさらに記載のようにそれ自体が公知の任意の方法で)導入することができ、得られたヒト化VHH配列を、ターゲットに対する親和性、安定性、発現の容易性及びレベル、及び/又は他の所望の特性について試験することができる。このように、ある程度の試行錯誤によって、本明細書の開示に基づいて、当業者であれば、他の適切なヒト化置換(又はその適切な組み合わせ)を決定することができる。また上記に基づいて、ナノボディ(VHHドメインを含む)などの免疫グロブリン単一可変ドメイン(のフレームワーク領域)を部分的ヒト化又は完全ヒト化してもよい。
【0121】
ドメイン抗体及びナノボディ(VHHドメイン及びヒト化VHHドメインを含む)などの免疫グロブリン単一可変ドメインを、1つ以上のCDRのアミノ酸配列に1つ以上の変更を導入することによって親和性成熟に供することもでき、前記変更は、得られた免疫グロブリン単一可変ドメインのその各抗原に対する親和性を各親分子と比較して改善する。本発明の親和性成熟免疫グロブリン単一可変ドメイン分子は、例えば、Marks et al. (Biotechnology 10:779-783, 1992)、Barbas, et al. (Proc. Nat. Acad. Sci, USA 91: 3809-3813, 1994)、Shier et al. (Gene 169: 147-155, 1995)、Yelton et al. (Immunol. 155: 1994-2004, 1995)、Jackson et al. (J. Immunol. 154: 3310-9, 1995)、Hawkins et al. (J. MoI. Biol. 226: 889 896, 1992)、Johnson and Hawkins (Affinity maturation of antibodies using phage display, Oxford University Press, 1996)によって記載されているように、当技術分野で公知の方法によって調製することができる。
【0122】
ドメイン抗体又はナノボディなどの免疫グロブリン単一可変ドメインから出発して、ポリペプチドを設計/選択及び/又は調製する工程は、本明細書では、前記免疫グロブリン単一可変ドメインの「フォーマット」とも称される;ポリペプチドの一部を構成する免疫グロブリン単一可変ドメインは、「フォーマット」されたと言われるか、又は前記ポリペプチドの「フォーマット」であると言われる。免疫グロブリン単一可変ドメインをフォーマットすることができる方法の例及びこのようなフォーマットの例は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう;このようなフォーマットされた免疫グロブリン単一可変ドメインは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0123】
例えば限定されないが、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、ポリペプチドを調製するための「結合単位」、「結合ドメイン」又は「ビルディングブロック」(これらの用語は互換的に使用される)として使用することができ、これは場合により、結合単位として機能し得る(すなわち、PcrV上の同じ又は別のエピトープに対する、及び/又はPcrV以外の1つ以上の抗原、タンパク質又はターゲットに対する)1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含有し得る。
【0124】
一価ポリペプチドは、1つの結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)のみを含むか、又はこれから本質的になる。2つ以上の結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)を含むポリペプチドは、本明細書では「多価」ポリペプチドとも称され、このようなポリペプチド中に存在する結合単位/免疫グロブリン単一可変ドメインは、、本明細書では「多価フォーマット」であるとも称される。例えば、「二価」ポリペプチドは、場合によりリンカー配列を介して連結された2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得るのに対して、「三価」ポリペプチドは、場合により2つリンカー配列を介して連結された3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み得る;など。
【0125】
多価ポリペプチドでは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが同じものでもよいし異なるものでもよく、同じ抗原又は抗原決定基(例えば、同じ部分若しくはエピトープ又は異なる部分若しくはエピトープ)に指向性を有してもよいし、あるいは異なる抗原又は抗原決定基に指向性を有してもよく、又はそれらの任意の適切な組み合わせでもよい。少なくとも2つの結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)を含有するポリペプチドであって、少なくとも1つの結合単位が第1の抗原(すなわち、PcrV)に指向性を有し、少なくとも1つの結合単位が第2の抗原(すなわち、PcrVとは異なるもの)に指向性を有するポリペプチドは「多重特異性」ポリペプチドとも称され、このようなポリペプチド中に存在する結合単位(例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインなど)は、本明細書では「多重特異性フォーマット」であるとも称される。従って、例えば、本発明の「二重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわち、PcrV)に指向性を有する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、第2の抗原(すなわち、PcrVとは異なるもの)に指向性を有する少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドであるのに対して、本発明の「三重特異性」ポリペプチドは、第1の抗原(すなわち、PcrV)に指向性を有する少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインと、第2の抗原(すなわち、PcrVとは異なるもの)に指向性を有する少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインと、第3の抗原(すなわち、PcrV及び第2の抗原の両方とは異なるもの)に指向性を有する少なくとも1つのさらなる免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドである;など。
【0126】
「多パラトープ性ポリペプチド」、例えば、「二パラトープ性ポリペプチド」又は「三パラトープ性ポリペプチド」などは、(本明細書にさらに記載されるように;本発明の多価ポリペプチドのチャプターを参照のこと)それぞれが異なるパラトープを有する2つ以上の結合単位を含むか、又はこれらから本質的になる。
【0127】
本発明の一価のポリペプチド
本発明は、PcrVに対する結合に特に適切なアミノ酸残基のストレッチ(配列番号20~37、配列番号38~56及び配列番号57~75;表A-6)を提供する。アミノ酸残基のこれらのストレッチは、特に、それらが本発明のポリペプチドの抗原結合部位(の一部)を形成するように、本発明のポリペプチド中に存在してもよいし、及び/又はこれに組み込まれてもよい。アミノ酸残基のこれらのストレッチは、PcrVに対して産生された重鎖抗体又はVHH配列のCDR配列として作製されたものである。アミノ酸残基のこれらのストレッチは、本明細書では「本発明のCDR配列」(すなわち、それぞれ「本発明のCDR1配列」、「本発明のCDR2配列」及び「本発明のCDR3配列」)とも称される。
【0128】
しかしながら、アミノ酸残基のこれらのストレッチが、本発明のポリペプチドがある特定の親和性及び効力(本明細書で定義される)でPcrVに結合することを可能にする限り、本発明は、その最も広い意味において、アミノ酸残基のこれらのストレッチが本発明のポリペプチドにおいて有し得る特定の構造的役割又は機能に限定されないことに留意するべきである。従って、一般に、本発明は、その最も広い意味において、ある特定の親和性、アビディティ、有効性及び/又は効力でPcrVに結合することができる一価ポリペプチド(本明細書では「本発明の一価ポリペプチド」とも称される)であって、ポリペプチド全体が、PcrVに結合することができる結合ドメイン及び/又は結合単位を形成するように、1つ以上のさらなるアミノ酸配列を介して互いに適切に連結された1つ以上の本明細書に記載されるCDR配列、特に2つ以上のこのようなCDR配列の適切な組み合わせを含む一価ポリペプチドを提供する。しかしながら、1つのこのようなCDR配列のみが本発明の一価ポリペプチド中に存在することそれ自体で、PcrVに結合することができる本発明の一価ポリペプチドを提供するのに既に十分な場合があることにも留意するべきである;例えば、国際公開第03/050531号に記載されているいわゆる「促進フラグメント(Expedite fragments)」を再度参照のこと。
【0129】
従って、具体的だが非限定的な態様では、本発明の一価ポリペプチドは、
- CDR1配列:
a)配列番号20~37;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
及び/又は
- CDR2配列:
d)配列番号38~56;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
及び/又は
- CDR3配列:
g)配列番号57~75;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列のストレッチ;;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列のストレッチ;
からなる群より選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つのストレッチを含み得る。
【0130】
アミノ酸残基の上記特定のストレッチの1つ以上を含む一価ポリペプチドは、改善された特性、例えば、PcrVに対する改善された結合特性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)、改善された親和性及び/若しくは改善されたアビディティ、並びに/又は改善されたPcrV中和効果及び/若しくは効力などを示す。
【0131】
より具体的には、アミノ酸残基の上記特定のストレッチの1つ以上を含む本発明の一価ポリペプチドは、好ましくは、それらが、
- 1000nM~1nM又はそれ未満、好ましくは100nM~1nM又はそれ未満、より好ましくは15nM~1nM又はさらに10nM~1nM又はそれ未満の解離定数(K)でPcrVに結合するような;
及び/又はそれらが、
- 10-1-1~約10-1-1、好ましくは10-1-1~10-1-1、より好ましくは約10-1-1又はそれ以上のkon速度でPcrVに結合するような;
及び/又はそれらが、
- 10-2-1(t1/2=0.69s)~10-4-1(何日間かのt1/2を有するほぼ不可逆的な複合体を提供する)、好ましくは10-3-1~10-4-1又はそれ未満のkoff速度でPcrVに結合するような親和性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)で、タンパク質PcrVに結合することができる。
【0132】
PcrVに対する本発明の一価ポリペプチドの結合に関するいくつかの好ましいIC50値は、本明細書のさらなる記載及び実施例から明らかになるであろう。
【0133】
IC50を決定するためのアッセイとしては、ELISAにおける結合、又はより好ましくは細胞毒性アッセイ、例えばFrank et al. (The Journal of infectious diseases 186: 64-73, 2002)、Vance et al. (Infection and Immunity 73: 1706-1713, 2005)、El Solh et al. (Am. J. Respir. Crit. Care Med. 178: 513-519, 2008)によって記載されているTTSS依存性細胞毒性アッセイ、これらのアッセイの変法、例えば実施例4.4に記載されているもの、又は実施例7.2に記載されているヒト肺上皮細胞(A549細胞)を用いる細胞毒性アッセイ、及びそれらの変法などが挙げられる。
【0134】
例えば、平均感染多重度(MOI)2.8でP3X63細胞をターゲットとして用いるTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の一価ポリペプチドは、1nM~10000nM、5nM~1000nM、好ましくは5nM~500nM、より好ましくは5nM~200nM、例えば5nM~50nM又はそれ未満のIC50値を有し得る。
【0135】
このようなTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の一価ポリペプチドは、50%以上、好ましくは90%以上、例えば100%の有効性(%阻害;実施例4.4を参照のこと)を有し得る。
【0136】
特に、本発明の一価のポリペプチドは、1つの抗原結合部位を含む一価のポリペプチドであって、前記抗原結合部位が、上記CDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列(又はそれらの任意の適切な組み合わせ)からなる群より選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つのストレッチを含む一価のポリペプチドであり得る。しかしながら、好ましい態様では、本発明の一価のポリペプチドは、本発明のCDR1配列、本発明のCDR2配列及び/又は本発明のCDR3配列からなる群より選択されるアミノ酸残基の1つよりも多い(例えば、2つ以上の)ストレッチを含む。好ましくは、本発明の一価のポリペプチドは、それぞれ本発明のCDR1配列、本発明のCDR2配列及び本発明のCDR3配列からなる群より選択されるアミノ酸残基の3つのストレッチを含む。本発明の一価ポリペプチドに好ましいものとして本明細書で言及されているCDRの組み合わせは、表A-6に列挙されている。
【0137】
本発明は、本発明の一価のポリペプチド(又は、それを発現させるのに使用される本発明の核酸)の起源にも、本発明の一価のポリペプチド又は核酸を作製又は取得する(した)方法にも限定されないことに留意するべきである。従って、本発明の一価のポリペプチドは、(任意の適切な種由来の)天然に存在する一価のポリペプチドでもよいし、又は合成若しくは半合成の一価のポリペプチドでもよい。
【0138】
さらに、上記CDRの1つ以上を他の「足場」(限定されないが、ヒト足場又は非免疫グロブリン足場を含む)に「移植」することが可能であることも当業者には明らかであろう。このようなCDR移植に適切な足場及び技術は当業者には明らかであり、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第7,180,370号、国際公開第01/27160号、欧州特許出願公開第0605522号、欧州特許出願公開第0460167号、米国特許第7,054,297号、Nicaise et al. (Protein Science 13: 1882-1891, 2004)、Ewert et al. (Methods 34: 184-199, 2004)、Kettleborough et al. (Protein Eng. 4: 773-783, 1991)、O'Brien and Jones (Methods Mol. Biol. 207: 81-100, 2003)、Skerra (J. Mol. Recognit. 13: 167-187, 2000)及びSaerens et al. (J. Mol. Biol. 352: 597-607, 2005)並びにそこで引用されているさらなる参考文献を参照のこと。例えば、マウス又はラットCDRをヒトフレームワーク及び足場に移植するためのそれ自体が公知の技術は、本発明の一価ポリペプチドの本明細書で定義されるCDR配列の1つ以上と、1つ以上のヒトフレームワーク領域又は配列とを含むキメラタンパク質を提供するために同様に使用することができる。アミノ酸配列を提示するのに適切な足場は当業者には明らかであり、例えば限定されないが、免疫グロブリンベースの又は免疫グロブリン由来の結合足場(すなわち、本明細書に既に記載した免疫グロブリン配列以外のもの)、プロテインAドメイン由来のタンパク質足場(例えば、Affibodies(商標))、テンダミスタット、フィブロネクチン、リポカリン、CTLA-4、T細胞レセプター、設計されたアンキリンリピート、アビマー及びPDZドメイン(Binz et al. Nat. Biotech., 23: 1257, 2005)、及びDNA又はRNAベースの結合部分(限定されないが、DNA又はRNAアプタマーを含む)(Ulrich et al. Comb. Chem. High Throughput Screen 9: 619-32, 2006)を含む。
【0139】
前記本発明の一価のポリペプチドでは、CDRはさらなるアミノ酸配列に連結されていてもよいし、及び/又はアミノ酸配列を介して互いに連結されていてもよく、ここで、前記アミノ酸配列は、好ましくは、フレームワーク配列であるか、又はフレームワーク配列として機能するか若しくはCDRを提示するための足場を一緒に形成するアミノ酸配列である。
【0140】
好ましいが非限定的な実施態様によれば、本発明の一価ポリペプチドは、少なくとも2つのフレームワーク配列に連結された少なくとも3つのCDR配列を含み、ここで、好ましくは、3つのCDR配列のうちの少なくとも1つはCDR3配列であり、他の2つのCDR配列はCDR1又はCDR2配列であり、好ましくは、1つのCDR1配列及び1つのCDR2配列である。特に好ましいが非限定的な一実施態様によれば、本発明の一価ポリペプチドは、構造FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4(式中、CDR1、CDR2及びCDR3は、本発明の一価ポリペプチドについて本明細書で定義されるとおりであり、FR1、FR2、FR3及びFR4は、フレームワーク配列である)を有する。このような本発明の一価ポリペプチドでは、フレームワーク配列は任意の適切なフレームワーク配列であり得、適切なフレームワーク配列の例は、例えば、標準的なハンドブック並びに本明細書のさらなる開示及び本明細書で言及されている従来技術に基づいて当業者には明らかであろう。
【0141】
従って、本発明はまた、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)から本質的になるPcrVに対する一価ポリペプチドであって、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される一価ポリペプチドに関する。
【0142】
特に、この好ましいが非限定的な態様によれば、本発明は、4つのフレームワーク領域(それぞれFR1~FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれCDR1~CDR3)からなるPcrVに対する一価ポリペプチドであって、
- CDR1が、
a)配列番号20~37のアミノ酸配列;
b)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~37のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号38~56のアミノ酸配列;
e)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~56のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号57~75のアミノ酸配列;
h)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~75のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択されるPcrVに対する一価ポリペプチドに関する。
【0143】
本発明はまた、CDR配列が、配列番号1~19のアミノ酸配列の少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに(本質的には)100%のアミノ酸同一性を有する一価ポリペプチドに関する。
【0144】
具体的だが非限定的な一態様では、本発明の一価のポリペプチドは、免疫グロブリンフォールドを含む一価ポリペプチドでもよいし、又は適切な条件(例えば、生理学的条件)下で(すなわち、フォールディングによって)免疫グロブリンフォールドを形成することができる一価のポリペプチドでもよい。とりわけ、Halaby et al. (J. Protein Eng. 12: 563-71, 1999)による総説を参照のこと。好ましくは、免疫グロブリンフォールドを形成するように適切にフォールディングされると、アミノ酸残基のストレッチは、PcrVに結合するための抗原結合部位を適切に形成することができる場合がある。
【0145】
従って、フレームワーク配列は、好ましくは、免疫グロブリンフレームワーク配列、又は(例えばヒト化又はラクダ化などの配列最適化による)免疫グロブリンフレームワーク配列由来のフレームワーク配列(の適切な組み合わせ)である。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えば、V配列)及び/又は重鎖可変ドメイン(例えば、V配列)などの免疫グロブリン単一可変ドメイン由来のフレームワーク配列であり得る。特に好ましい一態様では、フレームワーク配列は、VHH配列由来のフレームワーク配列(前記フレームワーク配列は場合により、部分的又は完全ヒト化されたものでもよい)であるか、又はラクダ化(本明細書で定義される)された従来のV配列であるフレームワーク配列である。
【0146】
フレームワーク配列は、好ましくは、本発明の一価のポリペプチドが、ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸配列);単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸);「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切なアミノ酸);又はNanobody(登録商標)(限定されないが、VHH配列を含む)などの免疫グロブリン単一可変ドメインであるようなものであり得る。先と同様に、適切なフレームワーク配列は、例えば、標準的なハンドブック、並びに本明細書のさらなる開示及び本明細書で言及されている従来技術に基づいて当業者には明らかである。
【0147】
特に、本発明の一価のポリペプチド中に存在するフレームワーク配列は、本発明の一価のポリペプチドがナノボディであるように、ホールマーク残基(国際公開第08/020079号(表A-3~表A-8)に定義される)の1つ以上を含有し得る。このようなフレームワーク配列(の適切な組み合わせ)の好ましいが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる開示から明らかになるであろう(例えば、表A-6を参照のこと)。一般に、ナノボディ(特に、VHH配列及び部分的ヒト化ナノボディ)は、特に、(例えば、国際公開第08/020079号の61頁24行目~98頁3行目にさらに記載されているように)「ホールマーク残基」がフレームワーク配列の1つ以上の中に存在することを特徴とし得る。
【0148】
より具体的には、ナノボディは、(一般)構造
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
(式中、FR1~FR4はそれぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3はそれぞれ相補性決定領域1~3を指し、
i)配列番号1~19(表A-4を参照のこと)のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する(この場合、アミノ酸同一性の程度を決定する目的のために、CDR配列を形成するアミノ酸残基は無視される)。これに関して、配列番号1~19(表A-4を参照のこと)の免疫グロブリン単一可変ドメインのフレームワーク1配列(配列番号76~80)、フレームワーク2配列(配列番号81~93)、フレームワーク3配列(配列番号:94~112)及びフレームワーク4配列(配列番号:113~117)を列挙している表A-6も参照のこと;又は
ii)表A-6に示されているフレームワーク配列の組み合わせ;
及び
iii)好ましくは、Kabatナンバリングの11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ以上は、国際公開第08/020079号の表A-3~表A-8で言及されているホールマーク残基から選択される)を有する免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドであり得る。
【0149】
好ましい態様では、本発明は、配列番号1~19のいずれかから選択される免疫グロブリン単一可変ドメイン又は一価のポリペプチドを提供する。
【0150】
本発明はまた、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインのいずれか1つと同じエピトープビンに属する一価ポリペプチドを提供する。従って、本発明はまた、PcrVに指向性を有する一価ポリペプチドであって、PcrVに対する、配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1~19を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される一価ポリペプチドに関する。
【0151】
先と同様に、このような一価のポリペプチドは、任意の適切な方法で及び任意の適切な供給源に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインでもよいし、例えば、(すなわち、任意の適切なラクダ科動物種由来の)天然に存在するVHH配列でもよいし、又は合成若しくは半合成のアミノ酸配列でもよく、例えば限定されないが、「ヒト化」(本明細書で定義される)ナノボディ又はVHH配列、「ラクダ化」(本明細書で定義される)免疫グロブリン配列(特に、ラクダ化重鎖可変ドメイン配列)、並びに(例えば、合成、ランダム又は天然に存在する免疫グロブリン配列から開始する)親和性成熟、CDR移植、ベニアリング、異なる免疫グロブリン配列由来のフラグメントの組み合わせ、オーバーラッププライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に周知の免疫グロブリン配列を人為操作するための類似技術;又は、本明細書にさらに記載されるように上記のいずれかの任意の適切な組み合わせなどの技術によって得られたナノボディでもよい。また、免疫グロブリン単一可変ドメインがVHH配列を含む場合、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書にさらに記載されるように、本発明の1つ以上のさらなる(部分的又は完全)ヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するように適切にヒト化され得る。同様に、免疫グロブリン単一可変ドメインが合成又は半合成配列(例えば、部分的ヒト化配列)を含む場合、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、場合により、先と同様に本明細書に記載されるように、先と同様に本発明の1つ以上のさらなる(部分的又は完全)ヒト化免疫グロブリン単一可変ドメインを提供するようにさらに適切にヒト化され得る。
【0152】
本発明のこれらの一価のポリペプチド、特に、本発明のCDR配列を含む免疫グロブリン単一可変ドメインは、多価ポリペプチドを調製するためのビルディングブロック又は結合単位として使用するのに特に適切である。
【0153】
従って、PcrVに結合する本発明の一価のポリペプチドは、本質的に単離された形態(本明細書で定義される)でもよいし、又はそれらは、PcrVに結合する1つ以上の一価のポリペプチドを含み得るか又はこれらから本質的になり得るタンパク質又はポリペプチドであって、場合により、1つ以上のさらなるアミノ酸配列(すべてが場合により1つ以上の適切なリンカーを介して連結される)をさらに含み得るタンパク質又はポリペプチドの一部を形成してもよい。本発明はまた、1つ以上の本発明の一価ポリペプチド(又はその適切なフラグメント)を含むか、又はこれらから本質的になるタンパク質又はポリペプチドに関する。
【0154】
従って、1つ以上の本発明の一価のポリペプチドは、すべて本明細書に記載されるように、それぞれ本発明の一価、多価又は多パラトープ性ポリペプチドを提供するために、このようなタンパク質又はポリペプチドにおける結合単位又はビルディングブロックとして使用される。従って、本発明はまた、1つの本発明の一価ポリペプチドを含むか、又はこれから本質的になる一価構築物であるポリペプチドに関する。従って、本発明はまた、2つ以上の本発明の一価ポリペプチドを含むか、又はこれらから本質的になる多価ポリペプチド、例えば、二価又は三価ポリペプチドなどであるポリペプチドに関する(1つ以上のVHHドメインを含有する多価及び多重特異性ポリペプチド並びにそれらの調製については、Conrath et al., J. Biol. Chem. 276: 7346-7350, 2001並びに例えば国際公開第96/34103号、国際公開第99/23221号及び国際公開第2010/115998号も参照のこと)。
【0155】
好ましいエピトープビンに属する免疫グロブリン
さらに、本発明者らは、ある特定のエピトープビンに属する免疫グロブリンが、PcrVに対する結合、P. aeruginosaの中和に、及び/又は本発明の多パラトープ性(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性など)ポリペプチドを調製するための結合単位として特に適切であることを見出した。好ましい免疫グロブリンとしては、エピトープビン1、2又は3(さらに定義される)に属する免疫グロブリン(例えば、重鎖抗体、従来の四本鎖抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgE分子)、又はこのような従来の四本鎖抗体由来のFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、例えば、ジスルフィド結合Fv若しくはscFvフラグメント若しくはダイアボディ、それらの個々の鎖、並びにそれらのすべての部分、ドメイン若しくはフラグメント(限定されないが、抗原結合ドメイン又はフラグメント、例えば、免疫グロブリン単一可変ドメインを含む)、本発明の一価ポリペプチド、又は他の結合剤)が挙げられる。
【0156】
従って、第1の態様では、本発明は、エピトープビン1に属する免疫グロブリンに関する。エピトープビン1は、免疫グロブリンの交差競合(交差遮断)に基づいて、同じか又はオーバーラップする結合特異性を有する免疫グロブリン(本発明の一価ポリペプチドを含む)のファミリーを包含する。より具体的には、エピトープビン1に属する免疫グロブリンは、PcrVに対する、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0157】
エピトープビン1に属する免疫グロブリンは、同じ、密接に関連した、及び/又はオーバーラップするエピトープに結合すると予想される。より具体的には、エピトープビン1に属する免疫グロブリンは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ4(配列番号202)及びキメラ6(配列番号204)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満)。
【0158】
エピトープビン1に属する好ましい免疫グロブリンは、
- CDR1が、
a)配列番号22~28のアミノ酸配列;
b)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号40~47のアミノ酸配列;
e)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号59~66のアミノ酸配列;
h)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される本発明の一価ポリペプチド(上に定義される)を含む。
【0159】
より具体的には、
- CDR1が、
a)配列番号22~28のアミノ酸配列;
b)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号22~28のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号40~47のアミノ酸配列;
e)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号40~47のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号59~66のアミノ酸配列;
h)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号59~66のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される一価ポリペプチド。
【0160】
より具体的には、本発明は、エピトープビン1に属する一価ポリペプチドであって、前記一価ポリペプチドのCDR配列が、配列番号3~10を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する一価ポリペプチドに関する。
【0161】
エピトープビン1に属する本発明の好ましい一価ポリペプチドは、配列番号3~10のいずれかから選択される。
【0162】
別の態様では、本発明は、エピトープビン2に属する免疫グロブリンに関する。エピトープビン2は、免疫グロブリンの交差競合(交差遮断)に基づいて、同じか又はオーバーラップする結合特異性を有する免疫グロブリンのファミリーを包含する。より具体的には、エピトープビン2に属する免疫グロブリンは、PcrVに対する、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0163】
エピトープビン2に属する免疫グロブリンは、同じ、密接に関連した、及び/又はオーバーラップするエピトープに結合すると予想される。より具体的には、エピトープビン2に属する免疫グロブリンは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ7(配列番号205)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ7(配列番号205)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満)。
【0164】
エピトープビン2に属する好ましい免疫グロブリンは、
- CDR1が、
a)配列番号20~21のアミノ酸配列;
b)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号38~39のアミノ酸配列;
e)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号57~58のアミノ酸配列;
h)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される本発明の一価ポリペプチド(上に定義される)を含む。
【0165】
より具体的には、
- CDR1が、
a)配列番号20~21のアミノ酸配列;
b)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号20~21のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号38~39のアミノ酸配列;
e)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号38~39のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号57~58のアミノ酸配列;
h)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号57~58のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される一価ポリペプチド。
【0166】
より具体的には、本発明は、エピトープビン2に属する一価ポリペプチドであって、前記一価ポリペプチドのCDR配列が、配列番号1及び2を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する一価ポリペプチドに関する。
【0167】
エピトープビン2に属する本発明の好ましい一価ポリペプチドは、配列番号1及び2のいずれかから選択される。
【0168】
別の態様では、本発明は、エピトープビン3に属する免疫グロブリンに関する。エピトープビン3は、免疫グロブリンの交差競合(交差遮断)に基づいて、同じか又はオーバーラップする結合特異性を有する免疫グロブリンのファミリーを包含する。より具体的には、エピトープビン3に属する免疫グロブリンは、PcrVに対する、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つの結合を交差遮断し、及び/又は配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0169】
エピトープビン3に属する免疫グロブリンは、同じ、密接に関連した、及び/又はオーバーラップするエピトープに結合すると予想される。より具体的には、エピトープビン3に属する免疫グロブリンは、全長PcrV(配列番号159)に結合する一方で、キメラ2(配列番号200)に対する結合の減少を示すか(全長PcrVと比較して30~90%)、又はキメラ2(配列番号200)に対する結合を示さない(全長PcrVと比較して30%未満)。
【0170】
エピトープビン3に属する好ましい免疫グロブリンは、
- CDR1が、
a)配列番号29~30のアミノ酸配列;
b)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR2が、
d)配列番号48~49のアミノ酸配列;
e)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び/又は
- CDR3が、
g)配列番号67~68のアミノ酸配列;
h)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される本発明の一価ポリペプチド(上に定義される)を含む。
【0171】
より具体的には、
- CDR1が、
a)配列番号29~30のアミノ酸配列;
b)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
c)配列番号29~30のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR2が、
d)配列番号48~49のアミノ酸配列;
e)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
f)配列番号48~49のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択され;
及び
- CDR3が、
g)配列番号67~68のアミノ酸配列;
h)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列;
i)配列番号67~68のアミノ酸配列の少なくとも1つと3個、2個又は1個のアミノ酸差異を有するアミノ酸配列
からなる群より選択される一価ポリペプチド。
【0172】
より具体的には、本発明は、エピトープビン3に属する一価ポリペプチドであって、前記一価ポリペプチドのCDR配列が、配列番号11及び12を有する免疫グロブリン単一可変ドメインの少なくとも1つのCDR配列と少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的には100%のアミノ酸同一性を有する一価ポリペプチドに関する。
【0173】
エピトープビン3に属する本発明の好ましい一価ポリペプチドは、配列番号11及び12から選択される。
【0174】
本発明の多価ポリペプチド
本発明はさらに、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン(又はその適切なフラグメント)を含むか、又はこれらから(本質的に)なる多価ポリペプチド(本明細書では「本発明の多価ポリペプチド」とも称される)に関する。本発明の多価ポリペプチドは、好ましくは、多パラトープ性ポリペプチド(本明細書では「本発明の多パラトープ性ポリペプチド」とも称される)、例えば、「本発明の二パラトープ性ポリペプチド」又は「本発明の三パラトープ性ポリペプチド」である。本明細書で使用される場合、「多パラトープ性」(抗原)結合分子又は「多パラトープ性」ポリペプチドという用語は、少なくとも2つの(すなわち、2つ以上の)免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドであって、「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインがPcrVに指向性を有し、「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインがPcrVに指向性を有し、これらの「第1の」及び「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインが異なるパラトープを有するポリペプチドを意味するものとする。従って、多パラトープ性ポリペプチドは、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなり、少なくとも1つの「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープに指向性を有し、少なくとも1つの「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープとは異なるPcrV上の第2のエピトープに指向性を有する。
【0175】
好ましい態様では、本発明のポリペプチドは、二パラトープ性ポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「二パラトープ性」(抗原)結合分子又は「二パラトープ性」ポリペプチドという用語は、PcrVに指向性を有する「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインと、PcrVに指向性を有する「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドであって、これらの「第1の」及び「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインが異なるパラトープを有するポリペプチドを意味するものとする。従って、二パラトープ性ポリペプチドは、PcrVに指向性を有する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなり、「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープに指向性を有し、「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープとは異なるPcrV上の第2のエピトープに指向性を有する。
【0176】
本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、改善された特性、例えば、PcrVに対する改善された結合特性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)、改善された親和性及び/若しくは改善されたアビディティ、並びに/又は改善されたPcrV中和効果及び/若しくは効力などを示す。
【0177】
より具体的には、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、好ましくは、それらが、
- 1000nM~1nM又はそれ未満、好ましくは100nM~1nM又はそれ未満、より好ましくは15nM~1nM又はさらに10nM~1nM又はそれ未満の解離定数(K)でPcrVに結合するような;
及び/又はそれらが、
- 10-1-1~約10-1-1、好ましくは10-1-1~10-1-1、より好ましくは約10-1-1又はそれ以上のkon速度でPcrVに結合するような;
及び/又はそれらが、
- 10-2-1(t1/2=0.69s)~10-4-1(何日間かのt1/2を有するほぼ不可逆的な複合体を提供する)、好ましくは10-3-1~10-4-1又はそれ未満のkoff速度でPcrVに結合するような親和性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)で、PcrVに結合することができる。
【0178】
PcrVに対する本発明の二パラトープ性ポリペプチドの結合に関するいくつかの好ましいIC50値は、本明細書のさらなる記載及び実施例から明らかになるであろう。
【0179】
IC50を決定するためのアッセイとしては、ELISAにおける結合、又はより好ましくは細胞毒性アッセイ、例えばFrank et al. (The Journal of infectious diseases 186: 64-73, 2002)、Vance et al. (Infection and Immunity 73: 1706-1713, 2005)、El Solh et al. (Am. J. Respir. Crit. Care Med. 178: 513-519, 2008)によって記載されているTTSS依存性細胞毒性アッセイ、このアッセイの変法、例えば実施例4.4に記載されているもの、又は実施例7.2に記載されているヒト肺上皮細胞(A549細胞)を用いる細胞毒性アッセイ、及びそれらの変法などが挙げられる。
【0180】
例えば、感染多重度(MOI)12でP3X63細胞をターゲットとして用いるTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、0.01nM~50nM、0.01nM~10nM、好ましくは0.01nM~5nM、より好ましくは0.01nM~1nM、例えば0.01nM~0.1nM又はそれ未満のIC50値を有し得る。
【0181】
これとは別に、及び/又は加えて、このようなTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、100%の有効性(%阻害;実施例4.4を参照のこと)を有する。
【0182】
また、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、エラスターゼの存在下において安定であることが示され、機能性を維持していた。
【0183】
P. aeruginosaエラスターゼの存在下における24時間後、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、効力が最大10倍、好ましくは最大5倍、例えば3倍、2倍、1倍又はそれ未満低下し得る。ヒト好中球エラスターゼの存在下における24時間後、本発明の二パラトープ性ポリペプチドは、効力が最大100倍、好ましくは最大30倍、例えば15倍、10倍、3倍、2倍又はそれ未満低下し得る。
【0184】
別の態様では、本発明のポリペプチドは、三パラトープ性ポリペプチドである。本明細書で使用される場合、「三パラトープ性」(抗原)結合分子又は「三パラトープ性」ポリペプチドという用語は、PcrVに指向性を有する「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインと、PcrVに指向性を有する「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインと、PcrVに指向性を有する「第3の」免疫グロブリン単一可変ドメインとを含むポリペプチドであって、これらの「第1の」、「第2の」及び「第3の」免疫グロブリン単一可変ドメインが異なるパラトープを有するポリペプチドを意味するものとする。従って、三パラトープ性ポリペプチドは、PcrVに指向性を有する3つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又はこれらからなり、「第1の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープに指向性を有し、「第2の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1のエピトープとは異なるPcrV上の第2のエピトープに指向性を有し、「第3の」免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrV上の第1の及び第2のエピトープとは異なるPcrV上の第3のエピトープに指向性を有する。
【0185】
本発明の多価ポリペプチド中に存在する2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えば、V配列)からなり得る;それらは、従来の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列からなり得る。好ましい態様では、それらは、ドメイン抗体(又はドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸)、「dAb」(又はdAbとして使用するのに適切なアミノ酸)、又はナノボディ(限定されないが、VHHを含む)からなる。2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインは、部分的若しくは完全ヒト化ナノボディ又は部分的若しくは完全ヒト化VHHからなり得る。本発明の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチド中に含まれる免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書で定義されるように、1つ以上の本発明の一価ポリペプチドである。
【0186】
本発明の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する第1の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrVに対する結合について互いに(交差)競合せず、例えば、異なるエピトープビンに属する。従って、本発明は、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドであって、各免疫グロブリン単一可変ドメインが異なるエピトープビンに属する多パラトープ性ポリペプチドに関する。従って、本発明のこの好ましい多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrVに対する、本発明のこの好ましい多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの第2の免疫グロブリン単一可変ドメインの結合を交差遮断せず、及び/又は第1の免疫グロブリン単一可変は、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインによって、PcrVに対する結合を交差遮断されない。
【0187】
本発明の一価ポリペプチドの中で、異なるエピトープビン(1~3)を同定した(表B-4及び表B-10を参照のこと)。従って、本発明は、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多パラトープ性ポリペプチドであって、各免疫グロブリン単一可変ドメインが本明細書で定義される異なるエピトープビンに属する多パラトープ性ポリペプチドに関する。好ましい態様では、本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドでは、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインの以下の組み合わせが想定される:
【0188】
【表1】
【0189】
これらの本発明の多パラトープ性、(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインは、各エピトープビンに属する(上記)本発明の一価ポリペプチドである。別の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチドは、配列番号124~141のいずれかから選択される。
【0190】
本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインの組み合わせは、
- エピトープビン1及び2に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン;
- エピトープビン3及び1に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン;
- エピトープビン3及び2に属する免疫グロブリン単一可変ドメイン
である。
【0191】
これらの本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインは、各エピトープビンに属する(上記)本発明の一価ポリペプチドである。好ましい態様では、第1の免疫グロブリン単一可変ドメインはエピトープビン3に属し、好ましくは配列番号12である。別の好ましい態様では、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインはエピトープビン2に属し、好ましくは配列番号1である。さらに別の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチドは、配列番号129、134及び137のいずれかから選択される。
【0192】
別の態様では、本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する第1の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び第2の免疫グロブリン単一可変ドメインは、同じエピトープビンに属する。従って、本発明は、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドであって、両方の免疫グロブリン単一可変ドメインが同じエピトープビンに属する多パラトープ性ポリペプチドに関する。これらの免疫グロブリン単一可変ドメインは異なるパラトープを有するが、これらの免疫グロブリン単一可変ドメインは、密接に関連した及び/又はオーバーラップするエピトープに結合する(例えば、PcrVに対する結合について互いに(交差)競合する)。従って、これらの本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの第1の免疫グロブリン単一可変ドメインは、PcrVに対する、これらの本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドの第2の免疫グロブリン単一可変ドメインの結合を交差遮断し、及び/又は第1の免疫グロブリン単一可変は、第2の免疫グロブリン単一可変ドメインによって、PcrVに対する結合を交差遮断される。
【0193】
好ましい態様では、このような本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチド中に存在する免疫グロブリン単一可変ドメインは、本明細書で定義されるエピトープビン(1~3)に属する(表B-4及び表B-10を参照のこと)。従って、本発明は、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む多パラトープ性ポリペプチドであって、両方の免疫グロブリン単一可変ドメインが、本明細書で定義される同じエピトープビンに属する多パラトープ性ポリペプチドに関する。
【0194】
これらの本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインは、各エピトープビンに属する(上記)本発明の一価ポリペプチドである。別の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチドは、配列番号118~123のいずれかから選択される。
【0195】
本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい組み合わせは、
- エピトープビン1に属する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン;
- エピトープビン2に属する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン
である。
【0196】
これらの本発明の多パラトープ性(好ましくは、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドに使用するのに好ましい免疫グロブリン単一可変ドメインは、各エピトープビンに属する(上記)本発明の一価ポリペプチドである。好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチド中に存在する2つの免疫グロブリン単一可変ドメインはエピトープビン1に属し、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインのうちの1つは、好ましくは配列番号3である。本発明の好ましい多パラトープ性ポリペプチドは、配列番号118、120及び121を含む。別の好ましい態様では、本発明の多パラトープ性ポリペプチド中に存在する2つの免疫グロブリン単一可変ドメインはエピトープビン2に属し、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインのうちの1つは、好ましくは配列番号1である。本発明の好ましい多パラトープ性ポリペプチドは、配列番号122及び123を含む。
【0197】
本発明のポリペプチド
本発明の一価ポリペプチド及び本発明の多価(多パラトープ性)ポリペプチドは、1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位をさらに含んでもよいし、又は含まなくてもよい(これらの一価ポリペプチド及び多価(多パラトープ性)ポリペプチド)はすべて、(さらなる基、残基、部分又は結合単位の有無にかかわらず)「本発明のポリペプチド」と称される)。存在する場合、このようなさらなる基、残基、部分又は結合単位は、さらなる機能性を免疫グロブリン単一可変ドメインに(及び/又はそれが存在するポリペプチドに)提供してもよいし、又は提供しなくてもよく、免疫グロブリン単一可変ドメインの特性を改変してもよいし、又は改変しなくてもよい。
【0198】
例えば、このようなさらなる基、残基、部分又は結合単位は、ポリペプチドが(融合)タンパク質又は(融合)ポリペプチドであるような、1つ以上のさらなるアミノ酸配列でもよい。好ましいが非限定的な態様では、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、免疫グロブリンである。さらにより好ましくは、前記1つ以上の他の基、残基、部分又は結合単位は、ドメイン抗体、ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸、「dAb」、dAbとして使用するのに適切なアミノ酸、又はナノボディ(例えば、VHH、ヒト化VHHなど)からなる群より選択される免疫グロブリン単一可変ドメインである。
【0199】
上記のように、異なる抗原特異性を有する免疫グロブリン単一可変ドメインなどのさらなる結合単位を連結して、多重特異性ポリペプチドを形成することができる。2つ以上の特異性、二重特異性、三重特異性などの免疫グロブリン単一可変ドメインを組み合わせることによって、構築物を形成することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、PcrVに指向性を有する1つ、2つ又はそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインと、別のターゲットに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインとを含み得る。このような構築物及び当業者が容易に想定することができるその改変物はすべて、本明細書で使用される「本発明のポリペプチド」という用語によって包含される。
【0200】
上記ポリペプチドでは、1つ、2つ又はそれ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び1つ以上の基、残基、部分又は結合単位は、互いに直接連結されていてもよいし、及び/又は1つ以上の適切なリンカー若しくはスペーサーを介して連結されていてもよい。例えば、1つ以上の基、残基、部分又は結合単位がアミノ酸配列である場合、得られるポリペプチドが融合(タンパク質)又は融合(ポリペプチド)になるように、リンカーもまたアミノ酸配列でもよい。
【0201】
1つ以上のさらなる基、残基、部分又は結合単位は、任意の適切な及び/又は所望のアミノ酸配列であり得る。さらなるアミノ酸配列は、本発明のポリペプチドの(生物学的)特性をを変更、変化若しくは別の方法で影響を与えてもよいし、又は変更、変化若しくは別の方法で影響を与えなくてもよく、さらなる機能性を本発明のポリペプチドに付加してもよいし、又は付加しなくてもよい。好ましくは、さらなるアミノ酸配列は、1つ以上の所望の特性又は機能性を本発明のポリペプチドに付与するようなものである。
【0202】
このようなアミノ酸配列の例は当業者には明らかであり、一般に、従来の抗体及びそのフラグメントに基づくペプチド融合に使用されるすべてのアミノ酸配列を含み得る(限定されないが、ScFv及び単一ドメイン抗体を含む)。例えば、Holliger and Hudson (Nature Biotechnology 23: 1126-1136, 2005)による総説を参照のこと。
【0203】
例えば、このようなアミノ酸配列は、本発明のポリペプチドそれ自体と比較して、半減期、溶解性又は吸収性を増加させ、免疫原性又は毒性を低減し、望ましくない副作用を排除又は減衰し、及び/又は本発明のポリペプチドに他の有利な特性を付与し、及び/又は本発明のポリペプチドの望ましくない特性を低減するアミノ酸配列であり得る。このようなアミノ酸配列のいくつかの非限定的な例は、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(例えば、国際公開第00/27435号を参照のこと)又はハプテン分子(例えば、循環抗体によって認識されるハプテン、例えば国際公開第98/22141号を参照のこと)である。
【0204】
本発明の具体的な一態様では、対応する本発明のポリペプチドと比較して増加した半減期を有するポリペプチドが調製される。このような半減期延長部分を含む本発明のポリペプチドの例としては、例えば限定されないが、免疫グロブリン単一可変ドメインが1つ以上の血清タンパク質若しくはそのフラグメント(例えば、(ヒト)血清アルブミン又はその適切なフラグメント)に、又は血清タンパク質(例えば、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン))、血清免疫グロブリン(例えば、IgG)、トランスフェリン若しくは国際公開第04/003019号に列挙されている他の血清タンパク質の1つに結合することができる血清タンパク質に結合することができる1つ以上の結合単位(例えば、ドメイン抗体、ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体として使用するのに適切なアミノ酸、「dAb」、dAbとして使用するのに適切なアミノ酸、又はナノボディなど)に適切に連結されたポリペプチド;免疫グロブリン単一可変ドメインがFc部分(例えば、ヒトFc)又はその適切な一部若しくはフラグメントに連結されたポリペプチド;又は、1つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメインが、血清タンパク質に結合することができる1つ以上の小タンパク質又はペプチド(例えば限定されないが、国際公開第91/01743号、国際公開第01/45746号又は国際公開第02/076489号に記載されているタンパク質及びペプチド)に適切に連結されたポリペプチドが挙げられる。国際公開第03/002609及び国際公開第04/003019号に記載されているdAb及びHarmsen et al. (Vaccine 23: 4926-42, 2005);欧州特許出願公開第0368684号、並びにAblynx N.V.による国際公開第08/028977号、国際公開第08/043821号、国際公開第08/043822号及び国際公開第08/068280号も参照のこと。
【0205】
本発明の具体的だが非限定的な態様によれば、本発明のポリペプチドは、PcrVに対する2つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドの他に、ヒト血清アルブミンに対する少なくとも1つのナノボディを含有し得る。ヒト血清アルブミンに対するこれらのナノボディは、上記Ablynx N.V.による出願に一般に記載されているものであり得る(例えば、国際公開第04/062551号を参照のこと)。増加した半減期を提供し、本発明のポリペプチドに使用することができるいくつかの特に好ましいナノボディとしては、国際公開第06/122787号(表II及び表IIIを参照のこと)に記載されているナノボディALB-1~ALB-10が挙げられ、これらのうちALB-8(国際公開第06/122787号の配列番号62)及び国際公開第2012/175400号に開示されているナノボディ(国際公開第2012/175400号の配列番号1~11)が特に好ましい。
【0206】
本発明のポリペプチドは、例えば、2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン、好ましくは、PcrVに対する本発明の一価ポリペプチドと、(ヒト)血清アルブミンに指向性を有する第3の免疫グロブリン単一可変ドメインとを含む三価二重特異性ポリペプチドであり得、前記第1の、第2の及び第3の免疫グロブリン単一可変ドメインは、場合により1つ以上の、特に2つのリンカー配列を介して連結されていてもよい。
【0207】
具体的な一態様によれば、1つ以上の本発明のポリペプチドは、1つ以上の定常ドメイン(例えば、Fc部分の一部として/Fc部分を形成するのに使用することができる2つ又は3つの定常ドメイン)に、Fc部分に、並びに/又は1つ以上のエフェクター機能を本発明のポリペプチドに付与し、及び/若しくは1つ以上のFcレセプターに対する結合能を付与し得る1つ以上の抗体部分、フラグメント又はドメインに(場合により適切なリンカー又はヒンジ領域を介して)連結されていてもよい。例えば、この目的のために、限定されないが、1つ以上のさらなるアミノ酸配列は、例えば、(本明細書に記載される)重鎖抗体、より好ましくは従来のヒト四本鎖抗体由来の抗体の1つ以上のCHドメイン及び/又はCHドメインを含んでもよいし、及び/又は例えばIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、IgE、又は別のヒトIg、例えばIgA、IgD若しくはIgM由来のFc領域(の一部)を形成してもよい。例えば、国際公開第94/04678号には、ラクダ科動物VHHドメイン又はそのヒト化誘導体(すなわち、ナノボディ)を含む重鎖抗体であって、ナノボディとヒトCHドメイン及びCHドメイン(しかし、CHドメインを含まない)とをそれぞれ含む2つの重鎖からなる免疫グロブリン(この免疫グロブリンは、CH及びCHドメインによって提供されるエフェクター機能を有し、いかなる軽鎖の非存在下でも機能することができる)を提供するために、ラクダ科動物CH及び/又はCHドメインが、ヒトCH及びCHドメインで置換されている重鎖抗体が記載されている。エフェクター機能を提供するために本発明のポリペプチドに適切に連結することができる他のアミノ酸配列は当業者には明らかであり、所望のエフェクター機能に基づいて選択することができる。例えば、国際公開第04/058820号、国際公開第99/42077号、国際公開第02/056910号、及び国際公開第05/017148号、並びにHolliger and Hudsonによる総説(前掲)、並びに国際公開第09/068628号を参照のこと。本発明のポリペプチドとFc部分とのカップリングもまた、対応する本発明のポリペプチドと比較して増加した半減期をもたらし得る。いくつかの用途の場合、いかなる生物学的に重要なエフェクター機能も用いずに増加した半減期を付与するFc部分及び/又は定常ドメイン(すなわち、CH及び/又はCHドメイン)を使用することが適切な場合もあるし、又はさらに好ましい場合もある。1つ以上の本発明のポリペプチドと、増加した1in vivo半減期を有する1つ以上の定常ドメインとを含む他の適切な構築物は当業者には明らかであり、これは、例えば、場合によりリンカー配列を介してCHドメインに連結されたポリペプチドを含み得る。一般に、増加した半減期を有する任意の融合タンパク質又は誘導体は、好ましくは、50kDを超える分子量、すなわち腎臓吸収のカットオフ値を有する。
【0208】
具体的だが非限定的な別の態様では、本発明のポリペプチドは、(すなわち、従来の四本鎖抗体中に天然に存在する定常ドメインと比較して)二量体に自己会合する傾向が低減した(又は本質的にその傾向がない)天然に存在する、合成又は半合成の定常ドメイン(又はその類似体、変異体、突然変異体、部分又はフラグメント)に(場合により適切なリンカー又はヒンジ領域を介して)連結されていてもよい。このような単量体(すなわち、非自己会合)Fc鎖変異体又はそのフラグメントは、当業者には明らかであろう。例えば、Helm et al. (J. Biol. Chem. 271: 7494, 1996)には、本発明のポリペプチド鎖に使用することができる単量体Fc鎖変異体が記載されている。
【0209】
また、このような単量体Fc鎖変異体は、好ましくは、(それらが由来するFc部分に応じて)補体又は関連Fcレセプターに依然として結合することができるようなもの、及び/又はそれらが由来するFc部分のエフェクター機能の一部又は全部を(又は目的の用途に依然として適切な低減されたレベルで)依然として有するようなものである。あるいは、このような本発明のポリペプチド鎖では、単量体Fc鎖を使用して、増加した半減期をポリペプチド鎖に付与することができ、この場合、単量体Fc鎖はエフェクター機能を有しなくてもよいし、又は本質的に有しなくてもよい。
【0210】
一般に、増加した半減期を有する本発明のポリペプチドは、好ましくは、対応する本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドそれ自体の半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、又は20倍超大きい半減期を有する。
【0211】
一般に、増加した半減期を有する本発明のポリペプチドは、好ましくは、対応する本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又はポリペプチドそれ自体の半減期と比較して1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば、12時間超、又はさらに24時間、48時間若しくは72時間超増加した血清半減期を有する。
【0212】
好ましいが非限定的な別の態様では、このような本発明のポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上のヒトにおける血清半減期を示す。例えば、本発明のポリペプチドは、少なくとも5日(例えば、約5日~10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば、約9日~14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば、約10日~15日)、若しくは少なくとも約11日(例えば、約11日~16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば、約12日~18日以上)、又は14日超(例えば、約14日~19日)の半減期を有し得る。
【0213】
さらなるアミノ酸残基は、本発明のポリペプチドの他の(生物学的)特性を変更、変化若しくは別の方法で影響を与えてもよいし、又は変更、変化若しくは別の方法で影響を与えなくてもよく、さらなる機能性を本発明のポリペプチドに付加してもよいし、又は付加しなくてもよい。例えば、このようなアミノ酸残基は、
a)例えば、異種宿主細胞又はホスト生物における発現の結果として、N末端Met残基を含むことができる。
b)(例えば、本発明のポリペプチドを発現させるのに使用される宿主細胞に応じて、本発明のポリペプチドのプレフォーム、プロフォーム又はプレプロフォームをもたらすように)合成時に宿主細胞からの本発明のポリペプチドの分泌を指令するシグナル配列又はリーダー配列を形成し得る。適切な分泌リーダーペプチドは当業者には明らかであり、本明細書にさらに記載され得る。通常、このようなリーダー配列はポリペプチドのN末端に連結されるが、本発明は、その最も広い意味においてこれに限定されない;
c)例えば、前記配列又は残基に指向性を有する親和性技術を使用して、ポリペプチドの精製を可能又は容易にする「タグ」(例えば、アミノ酸配列又は残基)を形成し得る。その後、(化学的又は酵素的切断によって)前記配列又は残基を除去して、ポリペプチドを提供し得る(この目的のために、タグは、場合により、切断可能なリンカー配列を介してアミノ酸配列又はポリペプチド配列に連結されていてもよいし、又は切断可能なモチーフを含有してもよい)。このような残基の好ましいが非限定的ないくつかの例は、複数のヒスチジン残基、グルタチオン残基及びmycタグ、例えば、AAAEQKLISEEDLNGAA(配列番号206)である;
d)官能基化された、及び/又は官能基の結合部位として機能することができる1つ以上のアミノ酸残基であり得る。適切なアミノ酸残基及び官能基は当業者には明らかであり、限定されないが、本発明のポリペプチドの誘導体について本明細書で言及されているアミノ酸残基及び官能基が挙げられる。
【0214】
本発明の多価(例えば、二パラトープ性又は三パラトープ性)ポリペプチドは、一般に、本発明の多価ポリペプチドを提供するように、場合により1つ以上の適切なリンカーを介して、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドを、1つ以上のさらなる本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドに適切に連結する工程を少なくとも含む方法によって調製することができる。本発明のポリペプチドは、一般に、本発明のポリペプチドをコードする核酸を提供する工程、適切な方法で前記核酸を発現させる工程、及び発現させた本発明のポリペプチドを回収する工程を少なくとも含む方法によって調製することもできる。このような方法は、例えば、本明細書にさらに記載される方法及び技術に基づいて、当業者には明らかなそれ自体が公知の方法で実施することができる。
【0215】
本発明の多パラトープ性ポリペプチドを調製するための方法は、2つ以上の本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドと、例えば、1つ以上のリンカーとを適切な方法で一緒に連結する工程を少なくとも含んでもよい。本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチド(及びリンカー)は、当技術分野において公知の任意の方法によって、本明細書にさらに記載されるようにカップリングされ得る。好ましい技術は、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチド(及びリンカー)をコードする核酸配列を連結して、多パラトープ性ポリペプチドを発現する遺伝子構築物を調製することを含む。アミノ酸又は核酸を連結するための技術は当業者には明らかであり、上記Sambrook et al.及びAusubel et al.などの標準的なハンドブック、並びに以下の実施例を再度参照のこと。
【0216】
従って、本発明はまた、本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドの調製における、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドの使用に関する。多価ポリペプチドを調製するための方法は、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドを、少なくとも1つのさらなる本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドに、場合により1つ以上のリンカーを介して連結することを含むであろう。次いで、2つ(例えば、二価ポリペプチドの場合)、3つ(例えば、三価ポリペプチドの場合)又はそれ以上(例えば、多価ポリペプチドの場合)の結合単位を含む多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドを提供及び/又は調製する際に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドを結合ドメイン又は結合単位として使用する。これに関して、2つ、3つ又はそれ以上の結合単位を含む本発明の多価(好ましくは、多パラトープ性)、例えば二価(好ましくは、二パラトープ性)又は三価(好ましくは、三パラトープ性)ポリペプチドを提供及び/又は調製する際に、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン(immunoglobulin singe variable domain)及び/又は一価ポリペプチドを結合ドメイン又は結合単位として使用してもよい。
【0217】
従って、本発明はまた、多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドの調製における、(本明細書に記載される)本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は特に一価ポリペプチドの使用に関する。多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドを調製するための方法は、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドを、少なくとも1つのさらなる本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又は一価ポリペプチドに、場合により1つ以上のリンカーを介して連結することを含むであろう。
【0218】
本発明の多価、好ましくは多パラトープ性ポリペプチドに使用するのに適切なスペーサー又はリンカーは当業者には明らかであり、一般に、アミノ酸配列を連結するために当技術分野において使用される任意のリンカー又はスペーサーであり得る。好ましくは、前記リンカー又はスペーサーは、医薬用途のためポリペプチドの構築に使用するのに適切である。
【0219】
いくつかの特に好ましいスペーサーとしては、抗体フラグメント又は抗体ドメインを連結するために当技術分野において使用されるスペーサー及びリンカーが挙げられる。これらとしては、上記一般的な背景技術で言及されているリンカー、及び例えばダイアボディ又はScFvフラグメントを構築するために当技術分野において使用されるリンカーが挙げられる(しかしながら、これに関して、ダイアボディ及びScFvフラグメントでは、使用されるリンカー配列が、関連するV及びVドメインが一体となって完全な抗原結合部位を形成することを可能にする長さ、柔軟性の程度、及び他の特性を有する必要があるが、各免疫グロブリン単一可変ドメインはそれ自体で完全な抗原結合部位を形成するため、本発明のポリペプチドに使用されるリンカーの長さ又は柔軟性に関しては特に限定されないことに留意するべきである)。
【0220】
例えば、リンカーは、適切なアミノ酸配列、特に1個~50個、好ましくは1個~30個、例えば1個~10個のアミノ酸残基のアミノ酸配列であり得る。このようなアミノ酸配列のいくつかの好ましい例としては、例えば、国際公開第99/42077号に記載されている(例えば、glyser)又は(glyserなどの(glyser型のgly-serリンカー、及び天然に存在する重鎖抗体のヒンジ領域などのヒンジ様領域、又は類似配列(例えば、国際公開第94/04678号に記載されているもの)が挙げられる。
【0221】
いくつかの他の特に好ましいリンカーは、表A-8で言及されており、その中でもGS40(配列番号193)が特に好ましい。
【0222】
他の適切なリンカーは、一般に、有機化合物又はポリマー、特に医薬用途のタンパク質に使用するのに適切なものを含む。例えば、ポリ(エチレングリコール)部分が、抗体ドメインを連結するのに使用されている。例えば、国際公開第04/081026号を参照のこと。
【0223】
使用されるリンカーの長さ、柔軟性の程度及び/又は他の特性(ただし、通常はScFvフラグメントに使用されるリンカーの場合と同様であるので重要ではない)は、最終的な本発明のポリペプチドの特性(限定されないが、PcrV又は1つ以上の他の抗原に対する親和性、特異性又はアビディティを含む)にいくらかの影響を及ぼし得ることが本発明の範囲内に包含される。当業者であれば本明細書の開示に基づいて、場合によりいくつかの限定的なルーチン実験を実施した後に、特定の本発明のポリペプチドに使用するのに最適なリンカーを決定することができるであろう。
【0224】
使用されるリンカーが、1つ以上の他の有利な特性又は機能性を本発明のポリペプチドに付与し、及び/又は(例えば、本発明のポリペプチドの誘導体について本明細書に記載されるように)誘導体の形成及び/又は官能基の結合のための1つ以上の部位を提供することも本発明の範囲内に包含される。例えば、1つ以上の荷電アミノ酸残基を含有するリンカーは、親水性の改善を提供することができるのに対して、小さいエピトープ又はタグを形成又は含有するリンカーは、検出、同定及び/又は精製の目的で使用することができる。先と同様に、当業者であれば本明細書の開示に基づいて、場合によりいくつかの限定的なルーチン実験を実施した後に、特定の本発明のポリペプチドに使用するのに最適なリンカーを決定することができるであろう。
【0225】
最後に、本発明のポリペプチドに2つ以上のリンカーを使用する場合、これらのリンカーは同じものでもよいし、又は異なるものでもよいし。先と同様に、当業者であれば本明細書の開示に基づいて、場合によりいくつかの限定的なルーチン実験を実施した後に、特定の本発明のポリペプチドに使用するのに最適なリンカーを決定することができるであろう。
【0226】
通常、発現及び産生を容易にするために、本発明のポリペプチドは、直鎖ポリペプチドであろう。しかしながら、本発明は、その最も広い意味においてこれに限定されない。例えば、本発明のポリペプチドが3つ以上(three of more)のアミノ酸配列又はナノボディを含む場合、「星型」の構築物を提供するために、各「アーム」がアミノ酸配列又はナノボディに連結されている3つ以上の「アーム」を有するリンカーを使用することによってこれらを連結することが可能である。通常はあまり好ましくないが、環状の構築物を使用することも可能である。
【0227】
タグ又は他の官能基、例えば、毒素、ラベル、放射化学物質などを含む融合免疫グロブリン配列も本発明に包含される。
【0228】
あるいは、さらなる基、残基、部分又は結合単位は、例えば、化学基、残基、部分でもよく、これらはそれ自体が生物学的及び/若しくは薬理学的に活性でもよいし、又は生物学的及び/若しくは薬理学的に活性ではなくてもよい。例えば限定されないが、このような基は、本発明のポリペプチドの「誘導体」を提供するために、2つ以上の免疫グロブリン単一可変ドメイン又は一価ポリペプチドに連結されていてもよい。
【0229】
従って、本発明はまた、その最も広い意味において、本発明のポリペプチドの誘導体を含む。このような誘導体は、一般に、本発明のポリペプチド、及び/又は本発明のポリペプチドを形成するアミノ酸残基の1つ以上の改変、特に化学的及び/又は生物学的(例えば、酵素的)改変により得ることができる。
【0230】
このような改変の例、並びにこのように(すなわち、タンパク質骨格、しかし好ましくは側鎖のいずれかについて)改変することができるポリペプチド配列内のアミノ酸残基の例、このような改変を導入するのに使用することができる方法及び技術、並びにこのような改変の潜在的使用及び利点は当業者には明らかであろう。
【0231】
例えば、このような改変は、1つ以上の官能基、残基又は部分、特に1つ以上の所望の特性又は機能性を本発明のポリペプチドに付与する1つ以上の官能基、残基又は部分を本発明のポリペプチド内に又は本発明のポリペプチド上に(例えば、共有結合によって、又は他の任意の適切な方法で)導入することを含み得る。このような官能基の例は当業者には明らかであろう。
【0232】
例えば、このような改変は、本発明のポリペプチドの半減期、溶解性及び/又は吸収性を増加させ、本発明のポリペプチドの免疫原性及び/又は毒性を低減し、本発明のポリペプチドの任意の望ましくない副作用を排除若しくは減衰し、及び/又は本発明のポリペプチドに他の有利な特性を付与し、及び/又は本発明のポリペプチドの望ましくない特性を低減し、又は上記のうちの2つ以上の任意の組み合わせをもたらす1つ以上の官能基を(例えば、共有結合によって、又は他の任意の適切な方法で)導入することを含み得る。このような官能基及びこれらを導入するための技術の例は当業者には明らかであり、一般に、上記一般的な背景技術で言及されているすべての官能基及び技術、並びに医薬用タンパク質の改変、特に抗体又は抗体フラグメント(ScFv及び単一ドメイン抗体を含む)の改変に関するそれ自体が公知の官能基及び技術を含み得る。これらについては、例えばRemington (Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1980)を参照のこと。先と同様に当業者には明らかであるように、このような官能基は、例えば、本発明のポリペプチドに直接(例えば、共有結合的に)連結されていてもよいし、又は場合により適切なリンカー若しくはスペーサーを介して連結されていてもよい。
【0233】
一具体例は、本発明のポリペプチドが、(例えば、ペグ化によって)その半減期を増加させるように化学的に改変された本発明の誘導体ポリペプチドである。これは、医薬用タンパク質の半減期を増加させ、及び/又はその免疫原性を低減するために最も広く使用される技術の1つであり、適切な薬理学的に許容しうるポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)又はその誘導体(例えば、メトキシポリ(エチレングリコール)又はmPEG)の結合を含む。一般に、任意の適切な形のペグ化、例えば抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvを含む)について当技術分野において使用されるペグ化を使用することができる。例えば、Chapman (Nat. Biotechnol. 54: 531-545, 2002)、Veronese and Harris (Adv. Drug Deliv. Rev. 54: 453-456, 2003)、Harris and Chess (Nat. Rev. Drug. Discov. 2: 214-221, 2003)及び国際公開第04/060965号を参照のこと。タンパク質をペグ化するための様々な試薬も、例えばNektar Therapeutics, USAより市販されている。
【0234】
好ましくは、特にシステイン残基を介した部位特異的ペグ化を使用する(例えば、Yang et al. (Protein Engineering 16: 761-770, 2003)を参照のこと)。例えば、この目的のために、本発明のポリペプチド中の天然に存在するシステイン残基にPEGを結合してもよいし、本発明のポリペプチドを、PEG結合用の1つ以上のシステイン残基を適切に導入するように改変してもよいし、又はPEG結合用の1つ以上のシステイン残基を含むアミノ酸配列を、本発明のポリペプチドのN末端及び/又はC末端に融合してもよい(すべて、それ自体が当業者に公知のタンパク質工学技術を使用する)。
【0235】
好ましくは、本発明のポリペプチドの場合、5000超(例えば、10,000超)かつ200,000未満(例えば、100,000未満);例えば、20,000~80,000の範囲の分子量を有するPEGを使用する。
【0236】
通常はあまり好ましくない別の改変は、通常、翻訳時及び/又は翻訳後修飾の一部として、本発明のポリペプチドを発現させるのに使用される宿主細胞に応じてN結合型又はO結合型のグリコシル化を含む。
【0237】
さらに別の改変は、ラベルした本発明のポリペプチドの目的の用途に応じて、1つ以上の検出可能なラベル、又は他のシグナル発生基若しくは部分の導入を含み得る。それらを結合、使用及び検出するのに適切なラベル及び技術は当業者には明らかであり、例えば、限定されないが、蛍光ラベル(例えば、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタアルデヒド、及びフルオレサミン、並びに152Euなどの蛍光金属、又はランタニド種からの他の金属)、リン光ラベル、化学発光ラベル又は生物発光ラベル(例えば、ルミナール、イソルミナール、セロマティックアクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、シュウ酸エステル、ジオキセタン又はGFP、及びその類似体)、放射性同位体(例えば、H、125I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Fe、及び75Se)、金属、金属キレート又は金属カチオン(例えば、99mTc、123I、111In、131I、97Ru、67Cu、67Ga、及び68Gaなどの金属カチオン)、若しくはin vivo、in vitro若しくはin situ診断及びイメージングに特に適切な他の金属若しくは金属カチオン、例えば(157Gd、55Mn、162Dy、52Cr、及び56Fe)、並びに、発色団及び酵素(例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、δ-V-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ビオチンアビジンペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-VI-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼ)が挙げられる。他の適切なラベルは当業者には明らかであり、例えば、NMR又はESR分光法を使用して検出することができる部分が挙げられる。
【0238】
このようなラベルした本発明のポリペプチドは、例えば、特定のラベルの選択に応じて、in vitro、in vivo又はin situアッセイ(ELISA、RIA、EIA及び他の「サンドイッチアッセイ」などのそれ自体が公知のイムノアッセイを含む)に、並びにin vivo診断及びイメージングの目的で使用することができる。
【0239】
当業者には明らかであるように、別の改変は、例えば、上記金属又は金属カチオンの1つをキレート化するキレート基の導入を含み得る。適切なキレート基としては、例えば限定されないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0240】
さらに別の改変は、ビオチン-(ストレプト)アビジン結合対などの特異的結合対の一方の部分である官能基の導入を含み得る。このような官能基は、本発明のポリペプチドを、結合対の他方に結合している別のタンパク質、ポリペプチド、又は化合物に(すなわち、結合対の形成を介して)連結するのに使用され得る。例えば、本発明のポリペプチドをビオチンにコンジュゲーションし、アビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲーションしている別のタンパク質、ポリペプチド、化合物又は担体に連結してもよい。例えば、このようなコンジュゲーションした本発明のポリペプチドは、例えば、検出可能なシグナル発生剤をアビジン又はストレプトアビジンにコンジュゲーションする診断系において、レポーターとして使用することができる。このような結合対は、例えば、本発明のポリペプチドを、担体(医薬目的に適切な担体を含む)に結合するのにも使用することができる。非限定的な一例は、Cao and Suresh (Journal of Drug Targeting 8: 257, 2000)によって記載されているリポソーム製剤である。このような結合対はまた、治療的に活性な薬剤を本発明のポリペプチドに連結するのに使用することができる。
【0241】
他の潜在的な化学的及び酵素的改変は当業者には明らかであろう。このような改変を、(例えば、機能-活性関係性を研究するために)調査目的で導入してもよい。例えば、Lundblad and Bradshaw (Biotechnol. Appl. Biochem. 26: 143-151, 1997)を参照のこと。
【0242】
好ましくは、誘導体は、本明細書で定義される(すなわち、本発明のポリペプチドについて定義される)親和性(これは、本明細書にさらに記載されるように、適切に測定され、及び/又は(実際の又は見掛け上の)K値、(実際の又は見掛け上の)K値、kon速度及び/又はkoff速度、あるいはIC50値として表される)で、PcrVに結合するようなものである。このような誘導体はまた、通常、本明細書で定義されるPcrV中和効果及び/又は効力を有するであろう。
【0243】
このような本発明のポリペプチド及びその誘導体はまた、本質的に単離された形態(本明細書で定義される)であり得る。
【0244】
本発明はさらに、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞及び組成物を調製するための方法に関する。
【0245】
本明細書のさらなる記載から当業者には明らかであるように、本発明のポリペプチド及び核酸は、それ自体が公知の方法で調製され得る。例えば、本発明のポリペプチドは、抗体を調製するための、特に抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvフラグメントを含む)を調製するためのそれ自体が公知の任意の方法で調製され得る。ポリペプチド及び核酸を調製するための好ましいが非限定的ないくつかの方法としては、本明細書に記載される方法及び技術が挙げられる。
【0246】
本発明のポリペプチドを生産するための方法は、以下:
- 適切な宿主細胞若しくはホスト生物(本明細書では「本発明のホスト」とも称される)又は別の適切な発現系で、前記本発明のポリペプチドをコードする核酸(本明細書では「本発明の核酸」とも称される)を発現させる工程、
場合により続いて:
- このようにして得られた本発明のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含んでもよい。
【0247】
特に、このような方法は、
- 本発明のホストを、前記本発明のホストが少なくとも1つの本発明のポリペプチドを発現及び/又は産生するような条件下で培養及び/又は維持する工程;
場合により続いて:
- このようにして得られた本発明のポリペプチドを単離及び/又は精製する工程
を含んでもよい。
【0248】
従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸又はヌクレオチド配列(「本発明の核酸」とも称される)に関する。本発明の核酸は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAの形態であり得、好ましくは二本鎖DNAの形態である。例えば、本発明のヌクレオチド配列は、ゲノムDNA、cDNA又は合成DNA(例えば、目的とする宿主細胞又はホスト生物における発現に特異的に適合されたコドン出現頻度を有するDNA)でもよい。
【0249】
本発明の一実施態様によれば、本発明の核酸は、本明細書で定義されるように、本質的に単離された形態である。本発明の核酸はまた、例えば、プラスミド、コスミド又はYACなどのベクターの形態でもよいし、これらの中に存在してもよいし、及び/又はこれの一部でもよく、これらは先と同様に本質的に単離された形態でもよい。
【0250】
本発明の核酸は、本明細書に示される本発明のポリペプチドについての情報に基づいて、それ自体が公知の方法で調製若しくは取得することができ、及び/又は適切な天然資源から単離することができる。また、当業者には明らかであるように、本発明の核酸を調製するために、いくつかのヌクレオチド配列、例えば、本発明の免疫グロブリン単一可変ドメイン又は一価ポリペプチドをコードする少なくとも2つの核酸と、例えば1つ以上のリンカーをコードする核酸とを適切な方法で連結することもできる。
【0251】
本発明の核酸を作製するための技術は当業者には明らかであり、例えば限定されないが、自動DNA合成;部位特異的突然変異誘発;2つ以上の天然に存在する配列及び/又は合成配列(又はそれらの2つ以上の部分)の組み合わせ(combining)、切断発現産物の発現をもたらす突然変異の導入;(例えば、適切な制限酵素を使用して容易に消化及び/又はライゲーションすることができるカセット及び/又は領域を作るための)1つ以上の制限部位の導入、及び/又は1つ以上の「ミスマッチ」プライマーを使用するPCR反応による突然変異の導入を挙げることができる。これらの及び他の技術は当業者には明らかであり、先と同様に、上述のSambrook et al.及びAusubel et al.などの標準的なハンドブック、並びに以下の実施例を参照のこと。
【0252】
本発明の核酸はまた、当業者には明らかであるように、遺伝子構築物の形態でもよいし、この中に存在してもよいし、及び/又はこの一部でもよい。このような遺伝子構築物は、一般に、それ自体が公知の遺伝子構築物の1つ以上の要素、例えば、1つ以上の適切なレギュレーション要素(例えば、適切なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)及び本明細書で言及される遺伝子構築物のさらなる要素などに場合により連結された少なくとも1つの本発明の核酸を含む。少なくとも1つの本発明の核酸を含むこのような遺伝子構築物は、本明細書では「本発明の遺伝子構築物」とも称される。
【0253】
本発明の遺伝子構築物はDNAでもよいし、又はRNAでもよく、好ましくは二本鎖DNAである。本発明の遺伝子構築物はまた、目的とする宿主細胞又はホスト生物のトランスフォーメーションに適切な形態、目的とする宿主細胞のゲノムDNAに組み込むのに適切な形態、又は目的とするホスト生物における単独での複製、維持及び/又は継代に適切な形態でもよい。例えば、本発明の遺伝子構築物は、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター又はトランスポゾンなどのベクターの形態でもよい。特に、ベクターは、発現ベクター(すなわち、in vitro及び/又はin vivo(例えば、適切な宿主細胞、ホスト生物及び/又は発現系)での発現を提供することができるベクター)でもよい。
【0254】
好ましいが非限定的な実施態様では、本発明の遺伝子構築物は、
a)以下のものに機能的に結合された少なくとも1つの本発明の核酸;
b)1つ以上のレギュレーション要素(例えば、プロモーター)及び適切なターミネーター;及び場合によりさらに
c)それ自体が公知の遺伝子構築物の1つ以上のさらなる要素を含み、
ここで、「レギュレーション要素」、「プロモーター」、「ターミネーター」、及び「機能的に結合した」という用語は、(本明細書にさらに記載されるように)当技術分野における通常の意味を有する;遺伝子構築物中に存在する前記「さらなる要素」は、例えば、3’-又は5’-UTR配列、リーダー配列、選択マーカー、発現マーカー/レポーター遺伝子、及び/又はトランスフォーメーション若しくは組み込み(の効率)を促進又は増加させ得る要素であり得る。このような遺伝子構築物に適切なこれら及び他の要素は当業者には明らかであり、例えば使用する構築物の種類;目的の宿主細胞又はホスト生物;関心対象の本発明のヌクレオチド配列を発現させる方法(例えば、構成的発現、一時的発現、又は誘導性発現を介するもの);及び/又は使用するトランスフォーメーション技術に依存し得る。例えば、抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvフラグメントを含む)の発現及び生産のための、それ自体が公知のレギュレーション配列、プロモーター、及びターミネーターを、本質的には同様に使用してもよい。
【0255】
好ましくは、本発明の遺伝子構築物において、前記少なくとも1つの本発明の核酸、及び前記レギュレーション要素、及び場合により前記1つ以上のさらなる要素は、互いに「機能的に連結」しており、これは通常、これらが互いに機能的な関係にあることを意味する。例えば、プロモーターが、コード配列の転写及び/又は発現を、開始又は別の方法でコントロール/レギュレーションすることができる場合(ここで、前記コード配列は、前記プロモーター「のコントロール下にある」ものとする)、前記プロモーターはコード配列に「機能的に連結」されていると考えられる。一般に、2つのヌクレオチド配列が機能的に連結されている場合、それらは同じ方向にあり、さらに通常は同じリーディングフレーム内にある。通常、それらは本質的には連続しているが、これは必ず要求されるものではない。
【0256】
好ましくは、本発明の遺伝子構築物のレギュレーション要素及びさらなる要素は、目的の宿主細胞又はホスト生物において目的の生物学的機能を提供することができるようなものである。
【0257】
例えば、プロモーター、エンハンサー又はターミネーターは、目的の宿主細胞又はホスト生物において「機能的」であるものとし、これは(例えば)、前記プロモーターが、機能的に連結されている(本明細書で定義される)ヌクレオチド配列(例えば、コード配列)の転写及び/又は発現を開始又は別の方法でコントロール/レギュレーションすることができるものであることを意味する。
【0258】
特に好ましいいくつかのプロモーターとしては、限定されないが、本明細書で言及される宿主細胞における発現のためのそれ自体が公知のプロモーター、特に細菌細胞における発現のためのプロモーター、例えば、本明細書で言及されるもの及び/又は実施例で使用したものが挙げられる。
【0259】
選択マーカーは、本発明のヌクレオチド配列で(上手く)トランスフォーメーションされた宿主細胞及び/又はホスト生物を、(上手く)トランスフォーメーションされなかった宿主細胞及び/又はホスト生物と(すなわち、適切な選択条件下で)区別することができるようなものとする。このようなマーカーの好ましいが非限定的ないくつかの例は、抗生物質(例えば、カナマイシン又はアンピシリン)に対する耐性を提供する遺伝子、温度耐性を提供する遺伝子、又は非トランスフォーメーション細胞若しくは生物が生存する上で不可欠な培地中のある特定の因子、化合物及び/若しくは(食品)成分の非存在下で宿主細胞若しくはホスト生物を維持するのを可能にする遺伝子である。
【0260】
リーダー配列は、(目的の宿主細胞又はホスト生物において)所望の翻訳後修飾を可能にし、及び/又は転写されたmRNAを細胞の所望の部分又はオルガネラに配向させるような配列であるものとする。リーダー配列はまた、前記細胞からの発現産物の分泌を可能にし得る。このようなものとして、リーダー配列は、宿主細胞又はホスト生物中で機能的な任意のプロ配列、プレ配列、又はプレプロ配列であり得る。リーダー配列は、細菌細胞中での発現に必要とされない場合がある。例えば、抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、単一ドメイン抗体及びScFvフラグメントを含む)の発現及び生産のためのそれ自体が公知のリーダー配列を、本質的には同様に使用してもよい。
【0261】
発現マーカー又はレポーター遺伝子は、(宿主細胞又はホスト生物中で)遺伝子構築物(上に存在する遺伝子又はヌクレオチド配列)の発現の検出を可能にするようなものとする。発現マーカーはまた、場合により、例えば細胞の特定の部分又はオルガネラ、及び/又は多細胞生物の特定の細胞、組織、器官若しくは部分における発現産物の局在化を可能にし得る。このようなレポーター遺伝子はまた、本発明のアミノ酸配列又はポリペプチドとのタンパク質融合物として発現され得る。好ましいが非限定的ないくつかの例としては、GFPなどの蛍光タンパク質が挙げられる。
【0262】
適切なプロモーター、ターミネーター、及びさらなる要素の好ましいが非限定的ないくつかの例としては、本明細書で言及される宿主細胞における発現に使用することができるもの、特に細菌細胞における発現に適切であるもの、例えば、本明細書で言及されるもの及び/又は以下の実施例で使用したものが挙げられる。本発明の遺伝子構築物に存在/使用し得るプロモーター、選択マーカー、リーダー配列、発現マーカー及びさらなる要素(例えば、ターミネーター、転写及び/若しくは翻訳エンハンサー、並びに/又は組み込み因子)の(さらなる)非限定的ないくつかの例については、上述のSambrook et al.及びAusubel et al.などの一般的なハンドブック、並びに国際公開第95/07463号、国際公開第96/23810号、国際公開第95/07463号、国際公開第95/21191号、国際公開第97/11094号、国際公開第97/42320号、国際公開第98/06737号、国際公開第98/21355号、米国特許第7,207,410号、米国特許第5,693,492号、及び欧州特許第1085089号に示されている例を参照のこと。他の例は当業者には明らかであろう。上記一般的な背景技術に関する参考文献及び本明細書で引用されているさらなる参考文献も参照のこと。
【0263】
本発明の遺伝子構築物は、一般に、例えば上述のSambrooket al.及びAusubel et al.などの一般的なハンドブックに記載されている技術を使用して、本発明のヌクレオチド配列を、1つ以上の上記さらなる要素に適切に連結することによって提供され得る。
【0264】
多くの場合、本発明の遺伝子構築物は、本発明のヌクレオチド配列を、それ自体が公知の適切な(発現)ベクターに挿入することによって得られるであろう。適切な発現ベクターの好ましいが非限定的ないくつかの例は、以下の実施例で使用したもの、及び本明細書で言及されるものである。
【0265】
本発明の核酸及び/又は本発明の遺伝子構築物は、宿主細胞又はホスト生物をトランスフォーメーションするため、すなわち本発明のポリペプチドを発現及び/又は産生させるために使用することができる。適切なホスト又は宿主細胞は当業者には明らかであり、例えば、任意の適切な真菌、原核若しくは真核細胞若しくは細胞株又は任意の適切な真菌、原核若しくは(非ヒト)真核生物、例えば:
- 細菌株(限定されないが、グラム陰性株、例えばEscherichia coliの株;Proteus、例えばProteus mirabilisの株;Pseudomonas、例えばPseudomonas fluorescensの株;並びにグラム陽性株、例えばBacillus、例えばBacillus subtilisの株又はBacillus brevisの株;Streptomyces、例えばStreptomyces lividansの株;Staphylococcus、例えばStaphylococcus carnosusの株;及びLactococcus、例えばLactococcus lactisの株を含む);
- 真菌細胞(限定されないが、Trichodermaの種、例えばTrichoderma reesei;Neurosporaの種、例えばNeurospora crassa;Sordariaの種、例えばSordaria macrospora;Aspergillusの種、例えばAspergillus niger又はAspergillus sojae;又は他の糸状菌由来の細胞を含む);
- 酵母細胞(限定されないが、Saccharomycesの種、例えばSaccharomyces cerevisiae;Schizosaccharomycesの種、例えばSchizosaccharomyces pombe;Pichiaの種、例えばPichia pastoris又はPichia methanolica;Hansenulaの種、例えばHansenula polymorpha;Kluyveromycesの種、例えばKluyveromyces lactis;Arxulaの種、例えばArxula adeninivorans;Yarrowiaの種、例えばYarrowia lipolytica由来の細胞を含む);
- 両生類細胞又は細胞株、例えばXenopus卵母細胞;
- 昆虫由来の細胞又は細胞株、例えば鱗翅目由来の細胞/細胞株(限定されないが、Spodoptera SF9及びSf21細胞、又はDrosophila由来の細胞/細胞株、例えばシュナイダー及びKc細胞を含む);
- 植物又は植物細胞、例えばタバコ植物;及び/又は
- 哺乳動物細胞又は細胞株、例えばヒト由来の細胞又は細胞株、哺乳動物由来の細胞又は細胞株(限定されないが、CHO細胞、BHK細胞(例えば、BHK-21細胞)を含む)、並びにヒト細胞又は細胞株、例えばHeLa、COS(例えば、COS-7)、及びPER.C6細胞;
並びに抗体及び抗体フラグメント(限定されないが、(単一)ドメイン抗体及びScFvフラグメントを含む)の発現及び生産のためのそれ自体が公知のすべての他の宿主細胞又は(非ヒト)ホストであり得、これらは当業者には明らかであろう。上記一般的な背景技術、並びに例えば国際公開第94/29457号;国際公開第96/34103号;国際公開第99/42077号;Frenken et al. (Res Immunol. 149: 589-99, 1998); Riechmann and Muyldermans (1999)、前掲; van der Linden (J. Biotechnol. 80: 261-70, 2000); Joosten et al. (Microb. Cell Fact. 2: 1, 2003); Joosten et al. (Appl. Microbiol. Biotechnol. 66: 384-92, 2005);及び本明細書で引用されているさらなる参考文献も参照のこと。
【0266】
本発明のポリペプチドはまた、例えば国際公開第WO 94/02610号、国際公開第95/22618号及び米国特許第7,004,940号;国際公開第03/014960号; Cattaneo and Biocca ("Intracellular Antibodies: Development and Applications" Landes and Springer-Verlag, 1997);及びKontermann (Methods 34: 163-170, 2004)に記載されているように、いわゆる「細胞内抗体」として発現させることができる。
【0267】
本発明のポリペプチドはまた、トランスジェニック哺乳動物の母乳中、例えばウサギ、ウシ、ヤギ又はヒツジの母乳の母乳中(トランス遺伝子を哺乳動物に導入するための一般的な技術については、例えば、米国特許第6,741,957号、米国特許第6,304,489号及び米国特許第6,849,992号を参照のこと)、植物若しくは植物の一部(限定されないが、葉、花、果実、種、根、塊茎を含む)中(例えば、タバコ、トウモロコシ、大豆、又はアルファルファ)、又は例えばカイコBombix moriの蛹中に産生させることができる。
【0268】
さらに、本発明のポリペプチドはまた、無細胞発現系で発現及び/又は産生させることができ、このような系の適切な例は当業者には明らかであろう。好ましいが非限定的ないくつかの例としては、小麦麦芽系;ウサギ網状赤血球溶解物;又はE. coli Zubay系での発現が挙げられる。
【0269】
好ましくは、本発明では、本発明のポリペプチドを医薬用途に適切な形態で提供する(in vivo又はin vitro)発現系、例えば細菌発現系を使用するが、先と同様にこのような発現系は当業者には明らかであろう。また当業者には明らかであるように、医薬用途に適切な本発明のポリペプチドは、ペプチド合成技術を使用して調製することができる。
【0270】
工業規模の生産において、免疫グロブリン単一可変ドメイン又は免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するポリペプチド治療剤の(工業的)生産に好ましい異種ホストとしては、大規模な発現/生産/発酵、特に大規模な医薬用途での発現/生産/発酵に適切なE. coli、Pichia pastoris、S. cerevisiaeの株が挙げられる。このような株の適切な例は当業者には明らかであろう。このような株及び生産/発現系はまた、Biovitrum (Uppsala, Sweden)などの企業によって市販されている。
【0271】
あるいは、哺乳動物細胞株、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、大規模な発現/生産/発酵、特に大規模な医薬用途での発現/生産/発酵のに使用することができる。先と同様に、このような発現/生産系はまた、上述の企業のいくつかによって市販されている。
【0272】
特定の発現系の選択は、ある特定の翻訳後修飾、より具体的にはグリコシル化の必要条件に一部依存している。グリコシル化が望ましいか又は必要とされる免疫グロブリン単一可変ドメインを含有するリコンビナントタンパク質の産生には、発現したタンパク質をグリコシル化する能力を有する哺乳動物発現ホストの使用が必要である。これに関して、得られるグリコシル化パターン(すなわち、結合した残基の種類、数及び位置)が、発現に使用される細胞又は細胞株に依存することは、当業者には明らかであろう。好ましくは、ヒト(すなわち、本質的にヒトのグリコシル化パターンを有するタンパク質を与える)細胞若しくは細胞株が使用されるか、又はヒトのグリコシル化と本質的及び/若しくは機能的に同じであるか、又は少なくともヒトのグリコシル化を模倣するグリコシル化パターンを提供することができる別の哺乳動物細胞株が使用される。一般に、E. coliなどの原核生物ホストはタンパク質をグリコシル化する能力を有しておらず、酵母などの下等真核細胞を使用すると、通常、ヒトのグリコシル化とは異なるグリコシル化パターンがもたらされる。それにもかかわらず、上記宿主細胞及び発現系のすべてを、得ようとする所望のポリペプチドに応じて、本発明に使用することができることを理解するべきである。
【0273】
従って、本発明の非限定的な一実施態様によれば、本発明のポリペプチドはグリコシル化されている。本発明の別の非限定的な実施態様によれば、本発明のポリペプチドはグリコシル化されていない。
【0274】
本発明の好ましいが非限定的な一実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、細菌細胞、特に大規模な医薬用途での生産に適切な細菌細胞、例えば上述の株の細胞で産生される。
【0275】
本発明の好ましいが非限定的な別の実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、酵母細胞、特に大規模な医薬用途での生産に適切な酵母細胞、例えば上述の種の細胞で産生される。
【0276】
本発明のさらに好ましいが非限定的な別の実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、哺乳動物細胞、特にヒト細胞又はヒト細胞株の細胞、より具体的には大規模な医薬用途での生産に適切なヒト細胞又はヒト細胞株の細胞、例えば上述の細胞株で産生される。
【0277】
宿主細胞中での発現を使用して本発明のポリペプチドの生産する場合、本発明のポリペプチドを細胞内(例えば、細胞質中、ペリプラズム中、又は封入体中)に産生させ、次いで宿主細胞から単離し、場合によりさらに精製することもできるし、又は細胞外(例えば、宿主細胞を培養する培地中)に産生させ、次いで培養培地から単離し、場合によりさらに精製することもできる。真核宿主細胞を使用する場合、得られるポリペプチドのさらなる単離及び下流工程でのプロセシングが大幅に容易になるため、通常、細胞外に産生させることが好ましい。上述のE. coliの株などの細菌細胞は、通常、毒素及び血液毒などの数種のタンパク質を除き、タンパク質を細胞外に分泌せず、E. coliにおける分泌産生は、タンパク質が内膜を通ってペリプラズム空間に移行することを指す。ペリプラズム産生は、細胞質産生に対していくつかの利点を提供する。例えば、分泌産物のN末端のアミノ酸配列は、特異的シグナルペプチダーゼによる分泌シグナル配列の切断後の天然遺伝子産物と同一であり得る。また、ペリプラズム中では、細胞質中よりもプロテアーゼ活性がはるかに低いと思われる。加えて、ペリプラズム中では、混入するタンパク質が少ないため、タンパク質の精製がより容易である。別の利点は、ペリプラズムが細胞質よりも酸化的な環境をを提供するため、正確なジスルフィド結合が形成し得ることである。E. coli中で過剰発現されたタンパク質は、不溶性の凝集物(いわゆる封入体)中に見られることが多い。これらの封入体は、細胞質又はペリプラズム中に存在し得る;これらの封入体からの生物学的に活性なタンパク質の回収は、変性/リフォールディングプロセスを必要とする。治療用タンパク質を含む多くのリコンビナントタンパク質は、封入体から回収される。あるいは、当業者には明らかであるように、所望のタンパク質、特に本発明のポリペプチドを分泌するように遺伝的に改変された細菌のリコンビナント株を使用することができる。
【0278】
従って、本発明の非限定的な一実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、細胞内に産生され、宿主細胞、特に細菌細胞又は細菌細胞中の封入体から単離されたポリペプチドである。本発明の非限定的な別の実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、細胞外に産生され、宿主細胞を培養する培地から単離されたポリペプチドである。
【0279】
これらの宿主細胞と共に使用するための好ましいが非限定的ないくつかのプロモーターとしては、
- E. coliにおける発現のためのもの:lacプロモーター(及びその誘導体、例えばlacUV5プロモーター);アラビノースプロモーター;λファージの左側(PL)及び右側(PR)プロモーター;trpオペロンのプロモーター;ハイブリッドlac/trpプロモーター(tac及びtrc);T7-プロモーター(より具体的には、T7-ファージ遺伝子10のプロモーター)、及び他のT-ファージプロモーター;Tn10テトラサイクリン耐性遺伝子のプロモーター;外来レギュレーションオペレーター配列の1つ以上のコピーを含む上記プロモーターの人為操作された変異体;
- S. cerevisiaeにおける発現のためのもの:構成的:ADH1(アルコール脱水素酵素1)、ENO(エノラーゼ)、CYC1(チトクロームc iso-1)、GAPDH(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)、PGK1(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、PYK1(ピルビン酸キナーゼ);レギュレーション:GAL1、10、7(ガラクトース代謝酵素)、ADH2(アルコール脱水素酵素2)、PHO5(酸ホスファターゼ)、CUP1(銅メタロチオネイン);異種:CaMV(カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター);
- Pichia pastorisにおける発現のためのもの:AOX1プロモーター(アルコール酸化酵素I);
- 哺乳動物細胞における発現のためのもの:ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期エンハンサー/プロモーター;プロモーターがTetリプレッサーによってレギュレーションされ得るように2つのテトラサイクリンオペレーター配列を含有するヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーター変異体;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)プロモーター;ラウス肉腫ウイルスの長末端反復配列(RSV LTR)エンハンサー/プロモーター;ヒト、チンパンジー、マウス、又はラット由来の伸長因子1α(hEF-1α)プロモーター;SV40初期プロモーター;HIV-1の長末端反復配列プロモーター;βアクチンプロモーターが挙げられる。
【0280】
これらの宿主細胞と共に使用するための好ましいが非限定的ないくつかのベクターとしては、
- 哺乳動物細胞における発現のためのベクター:pMAMneo(Clontech)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO-pSV2-neo(ATCC37593)、pBPV-1(8-2)(ATCC37110)、pdBPV-MMTneo(342-12)(ATCC37224)、pRSVgpt(ATCC37199)、pRSVneo(ATCC37198)、pSV2-dhfr(ATCC37146)、pUCTag(ATCC37460)及び1ZD35(ATCC37565)、並びにウイルスベースの発現系、例えばアデノウイルスベースのもの;
- 細菌細胞における発現のためのベクター:pETベクター(Novagen)及びpQEベクター(Qiagen);
- 酵母又は別の真菌細胞における発現のためのベクター:pYES2(Invitrogen)及びPichia発現ベクター(Invitrogen);
- 昆虫細胞における発現のためのベクター:pBlueBacII(Invitrogen)及び他のバキュロウイルスベクター
- 植物又は植物細胞における発現のためのベクター:例えば、カリフラワーモザイクウイルス又はタバコモザイクウイルス、アグロバクテリウムの適切な株に基づくベクター、又はTi-プラスミドベースのベクターが挙げられる。
【0281】
これらの宿主細胞と共に使用するための好ましいが非限定的ないくつかの分泌配列としては、
- E. coliなどの細菌細胞における使用のためのもの:PelB、Bla、OmpA、OmpC、OmpF、OmpT、StII、PhoA、PhoE、MalE、Lpp、LamBなど;TATシグナルペプチド、ヘモリシンC-末端分泌シグナル;
- 酵母における使用のためのもの:α-接合因子プレプロ配列、ホスファターゼ(pho1)、インベルターゼ(Suc)など;
- 哺乳動物細胞における使用のためのもの:固有シグナル(ターゲットタンパク質が真核細胞起源である場合);マウスIgκ鎖V-J2-Cシグナルペプチド;などが挙げられる。
【0282】
本発明のホスト又は宿主細胞をトランスフォーメーションするのに適切な技術は当業者には明らかであり、目的の宿主細胞/ホスト生物及び使用する遺伝子構築物に依存し得る。上述のハンドブック及び特許出願を再度参照のこと。
【0283】
トランスフォーメーション後、本発明のヌクレオチド配列/遺伝子構築物で上手くトランスフォーメーションされた宿主細胞又はホスト生物を検出及び選択するための工程を実施することができる。これは、例えば、本発明の遺伝子構築物中に存在する選択可能なマーカーに基づく選択工程、又は例えば特異的抗体を使用して本発明のポリペプチドを検出することを含む工程であり得る。
【0284】
トランスフォーメーションされた宿主細胞(安定な細胞株の形態であり得る)又はホスト生物(安定な突然変異体又は株の形態であり得る)は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0285】
好ましくは、これらの宿主細胞又はホスト生物は、(ホスト生物の場合には、少なくとも1つのその細胞、部分、組織又は器官において)本発明のポリペプチドを発現するか、又は(少なくとも)(例えば、適切な条件下で)発現することができるようなものである。本発明はまた、例えば細胞分裂又は有性若しくは無性生殖によって得られ得る、本発明の宿主細胞又はホスト生物のさらなる世代、後代及び/又は子孫を含む。
【0286】
本発明のポリペプチドを発現させ/その発現を得るために、トランスフォーメーションされた宿主細胞又はトランスフォーメーションされたホスト生物は、一般に、(所望の)本発明のポリペプチドが発現/産生されるような条件下で保持、維持及び/又は培養され得る。適切な条件は当業者には明らかであり、通常、使用する宿主細胞/ホスト生物、及び(関連する)本発明のヌクレオチド配列の発現をコントロールするレギュレーション要素に依存するであろう。本発明の遺伝子構築物に関する上述の段落で言及されているハンドブック及び特許出願を再度参照のこと。
【0287】
一般に、適切な条件には、適切な培地の使用、適切な食餌及び/又は適切な栄養源の存在、適切な温度の使用、及び場合により適切な誘導因子又は化合物の存在(例えば、本発明のヌクレオチド配列が誘導性プロモーターのコントロール下にある場合)が含まれる;これらはすべて当業者が選択することができる。先と同様に、このような条件下で、本発明のポリペプチドを連続的に発現させることもできるし、一時的に発現させることもできるし、又は適切に誘導された場合にのみ発現させることもできる。
【0288】
本発明のポリペプチドは、(まず)未成熟型(上記)で生成され、次いで、使用する宿主細胞/ホスト生物に応じて翻訳後修飾されてもよいことも、当業者には明らかであろう。また、本発明のポリペプチドは、先と同様に、使用する宿主細胞/ホスト生物に応じてグリコシル化されてもよい。
【0289】
次いで、本発明のポリペプチドを、宿主細胞/ホスト生物から、及び/又は前記宿主細胞若しくはホスト生物を培養した培地から、それ自体が公知のタンパク質単離及び/又は精製技術、例えば、(分取)クロマトグラフィー、及び/又は電気泳動技術、デファレンシャル沈殿技術、アフィニティー技術(例えば、本発明のポリペプチドと融合した特定の切断可能なアミノ酸配列を使用する)、及び/又は分取免疫学的技術(すなわち、単離するべきポリペプチドに対する抗体を使用する)を使用して単離することができる。
【0290】
本発明の組成物
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の核酸と、場合により、すなわち組成物の目的の用途に応じたそれ自体が公知のこのような組成物の1つ以上のさらなる成分とを含有するか、又はこれらを含む生成物又は組成物に関する。このような生成物又は組成物は、例えば、医薬組成物(本明細書に記載される)、獣医学的組成物若しくは生成物又は診断用組成物(これも本明細書に記載される)であり得る。このような生成物又は組成物の好ましいが非限定的ないくつかの例は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0291】
一般に、医薬用途のために、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤及び/又はアジュバントと、場合により1つ以上のさらなる薬理学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物とを含む医薬調製物又は医薬組成物として製剤化することができる。このような適切な投与形態(これは、投与の方法、並びにその調製に使用するための方法及び担体に応じて、固体、半固体又は液体であり得る)は当業者には明らかであり、本明細書にさらに記載される。
【0292】
従って、さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明のポリペプチドと、少なくとも1つの適切な(すなわち、医薬用途に適切な)担体、希釈剤又は賦形剤と、場合により1つ以上のさらなる活性物質とを含有する医薬組成物に関する。特定の態様では、本発明は、配列番号118~141のいずれかから選択される本発明のポリペプチドと、少なくとも1つの適切な(すなわち、医薬用途に適切な)担体、希釈剤又は賦形剤と、場合により1つ以上のさらなる活性物質とを含有する医薬組成物に関する。
【0293】
一般に、本発明のポリペプチドは、それ自体が公知の任意の適切な方法で製剤化及び投与することができ、これらについては、例えば、上記一般的な背景技術(特に、国際公開第04/041862号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041867号及び国際公開第08/020079号)、及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Company, USA (1990)、Remington, the Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, Lippincott Williams and Wilkins (2005)などの標準的なハンドブック;又はTherapeutic Antibodies (S. Dubel, Ed.), Wiley, Weinheim, 2007のハンドブック(例えば、252頁~255頁を参照のこと)を参照のこと。
【0294】
例えば、本発明のポリペプチドは、従来の抗体及び抗体フラグメント(ScFv及びダイアボディを含む)及び他の薬学的に活性なタンパク質についてのそれ自体が公知の任意の方法で製剤化及び投与することができる。このような製剤及びそれを調製するための方法は当業者には明らかであり、例えば、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋内、管腔内、動脈内又は髄腔内)投与に適切な調製物が挙げられる。
【0295】
非経口投与のための調製物は、例えば、点滴又は注射に適切な滅菌溶液、懸濁液、分散液又はエマルジョンであり得る。このような調製物に適切な担体又は希釈剤としては、例えば限定されないが、国際公開第08/020079号の143頁で言及されているものが挙げられる。通常、水溶液又は懸濁液が好ましいであろう。
【0296】
本発明のポリペプチドは、点滴又は注射によって静脈内又は腹腔内に投与されてもよい。本発明のポリペプチドの溶液は水で調製することができ、場合により非毒性の界面活性剤と混合されてもよい。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン及びこれらの混合物並びに油で調製することができる。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐ防腐剤を含有する。
【0297】
点滴又は注射に適切な医薬剤形としては、有効成分を含む滅菌水溶液又は分散液又は滅菌粉末であって、滅菌注射又は点滴溶液又は分散液の即時調製物に適合されており、場合によりリポソームに封入されているものが挙げられ得る。いずれの場合でも、最終的な剤形は、滅菌されており、流動体であり、製造及び保存条件下で安定でなければならない。液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌又は抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝液又は塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に使用することによって達成することができる。
【0298】
滅菌注射溶液は、必要量の本発明のポリペプチドを、上に列挙した他の成分のいくつかを含む適切な溶媒に入れ、必要に応じて続いてろ過滅菌することによって調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、有効成分の粉末と、予めろ過滅菌した溶液中に存在する任意のさらなる所望の成分とが得られる。
【0299】
好ましい態様では、本発明のポリペプチド、及び/又はそれを含む組成物を肺組織に投与する。本発明との関連では、「肺組織」は、本発明の目的では肺組織又は肺と同等のものである。肺は2つの異なる領域:気道領域及び呼吸領域を含み、その中に気道及び血管コンパートメントがある(例えば、"Pulmonary Drug Delivery", Edited by Karoline Bechtold-Peters and Henrik Luessen, ISBN 978-3-87193-322-6 pp. 16-28, 2007を参照のこと)。
【0300】
肺送達のために、本発明のポリペプチドは、すなわちそれらが液体又は乾燥粉末である場合には純粋な形態で適用することができる。しかしながら、本発明のポリペプチドと、肺送達に適切な担体とを含む組成物又は製剤として肺組織にそれらを投与することが好ましいであろう。従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドと、肺送達に適切な担体とを含む医薬組成物に関する。肺送達に適切な担体は当技術分野において公知である。
【0301】
本発明のポリペプチドはまた、肺送達に有利な粒径及び粒子分布を有する純粋な薬物のマイクロ粒子又はナノ粒子として投与してもよい。
【0302】
従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドの肺送達に適切な、及びそれを含む組成物を使用するのに適切な医薬デバイスに関する。このデバイスは、本発明のポリペプチドを含む液体(例えば、固体微粒子の懸濁液又は液滴)用吸入器であり得る。デバイスはまた、乾燥粉末形態の本発明のポリペプチドを含む乾燥粉末吸入器であり得る。
【0303】
好ましい方法では、肺組織への投与は、本発明のポリペプチド、及び/又はそれを含む組成物をエアロゾルクラウドで吸入することによって実施される。本発明によれば、エアロゾルクラウドの吸入は、吸入デバイスによって実施され得る。デバイスは、哺乳動物の吸入サイクルの適切な時点で、本発明のポリペプチド(及び/又はそれを含む組成物)を含む製剤から、正しい用量の本発明のポリペプチドを含有する、所望の粒径(粒子分布)のエアロゾルクラウドを発生させるものとする("Pulmonary drug delivery", Bechtold-Peters and Luessen, eds., ISBN 978-3-87193-322-6, page 125, 2007)。
【0304】
本発明との関連では、「エアロゾル」は、ガス状の固体微粒子又は液滴(又はこれらの組み合わせ)の懸濁液を示し、本発明の目的では、粒子及び/又は液滴は、本発明のポリペプチドを含む。
【0305】
デバイスは、哺乳動物の吸入サイクルの適切な時点で、製剤から、正しい用量の本発明のポリペプチドを含有する、所望の粒径(粒子分布)のエアロゾルクラウドを発生させるものとする。
【0306】
様々な吸入システムが、例えば総説("Pulmonary Drug Delivery", Bechtold-Peters and Luessen, eds.,前掲)の129頁~148頁に記載されており、限定されないが、噴霧器、定量吸入器、定量液体吸入器及び乾燥粉末吸入器が挙げられる。吸入操作のコントロールに最適化した個別の呼吸パターンを考慮したデバイスも使用してもよい("Pulmonary Drug Delivery", Bechtold-Peters and Luessen, eds.,前掲の157頁でのAKITA(登録商標)技術を参照のこと)。
【0307】
しかしながら、本発明のポリペプチドの肺送達にこのデバイスが重要であることに加えて、適切な製剤が効果的な送達を達成するのに重要である。原則として、これは以下のアプローチの1つを使用することにより達成することができる:
- 本発明のポリペプチドを含む水溶液又は懸濁液(例えば、点鼻薬)の鼻腔への投与;
- 本発明のポリペプチドを含む水溶液又は懸濁液の霧状化;
- 液化高圧ガスによる微粒化;及び
- 乾燥粉末の分散。
【0308】
従って、本発明のポリペプチドの製剤を、選択された吸入デバイスに適合及び調整させる必要がある。本発明のポリペプチドに加えて、適切な製剤、すなわち賦形剤は、例えば、"Pulmonary Drug Delivery", Bechtold-Peters and Luessen, eds.,前掲の第IV章に記載されている。これに関して、国際公開第2010/081856号も参照のこと。
【0309】
処置に使用するのに必要な本発明のポリペプチドの量は、選択される特定のポリペプチドだけではなく、投与経路、処置する症状の性質、並びに患者の年齢及び状態によっても変化し、最終的には担当する医師又は臨床医の判断に委ねられる。本発明のポリペプチドの投与量も変化するであろう。
【0310】
所望の用量は、便宜上、単一用量で、又は適切な間隔で投与される分割用量、例えば1日2回、3回、4回又はそれ以上の部分用量として提示してもよい。部分用量それ自体を、例えば、吸入器からの複数回の吸入などの、個別で大まかな間隔の多数回投与にさらに分割してもよい。
【0311】
投与計画には、長期間の毎日処置が含まれ得る。「長期間」は、少なくとも2週間、好ましくは数週間、数カ月間、又は数年間の期間を意味する。この投与量範囲における必要な改変は、本明細書の教示に示されるルーチン実験のみを使用して当業者によって決定され得る。Remington's Pharmaceutical Sciences (Martin, E.W., ed. 4), Mack Publishing Co., Easton, PAを参照のこと。投与量は、任意の合併症の場合には、個々の医師によって調整され得る。
【0312】
本発明のポリペプチドの使用
本発明はさらに、本明細書に記載されるポリペプチド、核酸、宿主細胞及び組成物の用途及び使用、並びにP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法に関する。好ましいが非限定的ないくつかの用途及び使用は、本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。
【0313】
本発明のポリペプチド及び組成物は、一般に、P. aeruginosaを中和する;例えば、P. aeruginosaの感染力をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaがホストに定着するのをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaのTTSS病原性機構をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって様々な外毒素が宿主細胞に注入されるのをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって誘導される宿主細胞膜透過性の孔媒介性増加をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、P. aeruginosaによって誘導される広範な細胞防御反応をモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制し、並びに/又はP. aeruginosaによって誘導される組織損傷炎症のトリガーをモデュレーション、阻害及び/若しくは抑制するのに使用され得る。
【0314】
一態様では、本発明のポリペプチド及び組成物は、例えば、本明細書に記載されるアッセイ(例えば、実施例のセクションに記載されているTTSS依存性細胞毒性アッセイ)の1つを使用するそれ自体が公知の任意の適切な方法で測定した場合に、P. aeruginosaの感染力を、本発明のポリペプチドが存在しない以外は同じ条件下におけるP. aeruginosaの感染力と比較して少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%又は少なくとも25%、好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%又はそれ以上、例えば100%中和することができる。
【0315】
本発明はまた、P. aeruginosaによる感染症を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
【0316】
このようなものとして、本発明のポリペプチド及び組成物は、P. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するのに使用することができる。P. aeruginosa感染症にかかりやすい患者群の例は本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであり、例えば(限定されないが)、以下の患者群:人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術を受けている患者、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者、気管支拡張症を有する患者、敗血症を有する患者、ガン関連好中球減少症を有する患者が挙げられる。
【0317】
従って、本発明はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症におけるP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法であって、少なくとも1つの本発明のポリペプチド又は本発明の組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体に投与することを含む方法に関する。
【0318】
本発明はまた、限定されないが、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症におけるP. aeruginosa感染症を含むP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための医薬組成物の調製における;及び/又は、本明細書に記載される方法の1つ以上に使用するための、本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0319】
本発明はまた、P. aeruginosa感染症、例えば、(限定されないが)人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症におけるP. aeruginosa感染症を含むP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための、本発明のポリペプチド又はそれを含む組成物に関する。
【0320】
本発明との関連では、「予防及び/又は処置」という用語は、感染症を予防及び/又は処置することを含むのみではなく、一般に、感染症の進行を遅延又は停止させること、感染症の重症度及び/若しくは継続期間を減少させること、並びに/又は感染症の重症度のさらなる増大を防止すること、並びに一般に処置される患者に有益な任意の薬理学的作用も含む。
【0321】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、P. aeruginosa感染症に罹患しているか又はそのリスクを有する被験体に投与することを含む免疫治療法(特に、受動免疫治療法)に関する。
【0322】
処置されるべき被験体は、任意の温血動物でもよいが、特に哺乳動物、より具体的にはヒトである。当業者には明らかであるように、処置されるべき被験体は、特に、限定されないが、本明細書で言及されるP. aeruginosa感染症にかかりやすい患者群を含む、P. aeruginosa感染症に罹患しているか又はそのリスクを有する者であろう。
【0323】
従って、一般に、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む組成物を任意の適切な方法で投与することができる。例えば(限定されないが)、本発明のポリペプチド及びそれを含む組成物は、吸引によって、及び/又は肺送達の任意の他の適切な形態によって鼻腔内に、気管内に投与することができる。本発明のポリペプチドの肺送達、鼻腔内送達、気管内に及び/又は吸引による送達のための方法は当業者には公知であり、例えば、ハンドブック"Drug Delivery: Principles and Applications" (2005) by Binghe Wang, Teruna Siahaan and Richard Soltero (Eds. Wiley Interscience (John Wiley & Sons)); "Pharmacology PreTest(商標)Self-Assessment and Review" (11th Edition) by Rosenfeld G.C., Loose-Mitchell D.S.;及び"Pharmacology" (3rdEdition) by Lippincott Williams & Wilkins, New York; Shlafer M. McGraw-Hill Medical Publishing Division, New York; Yang K.Y., Graff L.R., Caughey A.B. Blueprints Pharmacology, Blackwell Publishingに記載されている。
【0324】
従って、本発明は、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む組成物の有効量を投与するための方法であって、ポリペプチド及び/又はそれを含む組成物を肺組織に投与する工程を含む方法に関する。このような方法では、ポリペプチド及び/又はそれを含む組成物を、肺送達に関して当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば吸入器(エアロゾル、定量吸入器、噴霧器)又は鼻腔内送達デバイスの使用によって投与することができる。
【0325】
本発明の好ましい態様では、ポリペプチドは、肺組織中に存在するP. aeruginosaに結合し、及び/又はこれを中和するであろう。好ましくは、このような肺送達方法では、本発明のポリペプチドの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、さらにより好ましくは少なくとも80%又はそれ以上が、少なくとも12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、肺組織中で安定である。
【0326】
従って、本発明は、本発明のポリペプチドを、不活性化することなく被験体の肺組織に送達するための方法であって、前記本発明のポリペプチドを前記被験体に肺投与する工程を含む方法に関する。
【0327】
本発明はまた、P. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体の肺組織に投与することを含む方法に関する。
【0328】
より具体的には、本発明は、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、火傷被害者、人工呼吸器装着患者、嚢胞性線維症(CF)患者、造血細胞移植患者、骨髄移植患者、手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、敗血症、ガン関連好中球減少症におけるP. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するための方法であって、本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む医薬組成物の薬学的活性量を、それを必要とする被験体の肺組織に投与することを含む方法に関する。
【0329】
本発明のポリペプチド及び/又はそれを含む組成物は、P. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するのに適切な処置計画に従って投与される。臨床医は、一般に、処置されるべき患者群、感染症の重症度及び/又はその症候の重症度、使用されるべき本発明の特定のポリペプチド、特定の投与経路、及び使用されるべき医薬製剤又は医薬組成物、患者の年齢、性別、体重、食事、全身状態などの要因、並びに臨床医に周知の類似要因に応じて、適切な処置計画を決定することができるであろう。
【0330】
一般に、処置計画は、1つ以上の本発明のポリペプチド、又はそれを含む1つ以上の組成物を1つ以上の薬学的有効量又は薬学的有効用量で投与することを含むであろう。投与されるべき具体的な量又は用量は、先と同様に上記要因に基づいて臨床医によって決定され得る。
【0331】
一般に、P. aeruginosa感染症を予防及び/又は処置するために、処置されるべき特定の患者群、使用されるべき本発明のポリペプチドの効力、特定の投与経路、及び使用されるべき特定の医薬製剤又は医薬組成物に応じて、本発明のポリペプチドは、一般に、1グラム~1マイクログラム/kg体重/日、好ましくは0.1グラム~10マイクログラム/kg体重/日、最も好ましくは0.01グラム~100マイクログラム/kg体重/日、例えば約0.1、0.5、1、2、5、又は10ミリグラム/kg体重/日の量で、単一1日用量として連続して(例えば、点滴によって)、又は1日に複数の分割用量として投与されるであろう。半減期延長部分を含有する本発明のポリペプチドは、1ミリグラム~100ミリグラム/kg体重、好ましくは1ミリグラム~50ミリグラム/kg体重、例えば約10ミリグラム/kg体重、10、15、20又は30ミリグラム/kg体重の量で、1カ月に1回又は2回投与され得る。臨床医は、一般に、本明細書で言及される要因に応じて適切な1日用量を決定することができるであろう。特定の場合には、臨床医は、例えば、上記要因及び臨床医の専門的判断に基づいて、これらの量から逸脱することを選択し得ることも明らかであろう。
【0332】
ポリペプチド及び/又はそれを含む組成物を肺組織に投与する場合、処置計画は、1日1回又は2回、好ましくは1日1回、又は2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎若しくは7日毎に1回であり得る。
【0333】
通常、上記方法では、単一の本発明のポリペプチドを使用するであろう。しかしながら、2つ以上の本発明のポリペプチドを組み合わせて使用することも本発明の範囲内である。
【0334】
本発明のポリペプチドはまた、1つ以上のさらなる薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて、すなわち複合処置計画として使用することもできるが、これは相乗効果をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。先と同様に、臨床医は、上記要因及び臨床医の専門的判断に基づいて、このようなさらなる化合物又は成分、並びに適切な複合処置計画を選択することができるであろう。
【0335】
特に、本発明のポリペプチドは、P. aeruginosa感染症の予防及び/又は処置に使用されるか又はこれらに使用することができる他の薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて使用することができ、その結果として相乗効果が得られてもよいし、又は得られなくてもよい。このような化合物及び成分、並びにそれらを投与するための経路、方法及び医薬製剤又は医薬組成物の例は臨床医には明らかであり、(限定されないが)アミノグリコシド(トブラマイシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、アミカシン、ネチルマイシン)、フルオロキノロン(シタフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、オフロキサシン)、ポリミキシン(ポリミキシンA、ポリミキシンB、ポリミキシンC、ポリミキシンD、ポリミキシンE(コリスチン;コリマイシン))、UDP-N-アセチルグルコサミン-3-エノールピルビルトランスフェラーゼ(NAM;MurA)阻害剤(ホスホマイシン)、マクロライド(アジスロマイシン)、オキサゾリジノン(リネゾリド)、ペニシリン(メチシリン;カルボシキペニシリン:チカルシリン;ウレイドペニシリン:ピペラシリン、アズロシリン)、カルバペネム(ドリペネム、ビアペネム、イミペネム、メロペネム、トポペネム)、セファロスポリン(セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム、セフトビプロール、CXA-101(Calixa))、又は他のβ-ラクタマーゼ阻害剤、例えばクラブラン酸及びβ-ラクタマーゼ阻害剤の組み合わせ(ピペラシリン及びタゾバクタムの組み合わせ、チカルシリン及びクラブラン酸の組み合わせ、イミペネム及びシラスタチンの組み合わせ);又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0336】
2つ以上の物質又は成分を複合処置計画の一環として使用する場合、それらは、同じ投与経路を介して又は異なる投与経路を介して、本質的に同じ時間で又は異なる時間で(例えば、本質的に同時に、連続して、又は交互の計画に従って)投与することができる。物質又は成分を、同じ投与経路を介して同時に投与する場合、当業者には明らかであるように、異なる医薬製剤若しくは医薬組成物、又は複合医薬製剤若しくは複合医薬組成物の一部として投与してもよい。
【0337】
また、2つ以上の活性物質又は成分を複合処置計画の一環として使用する場合、化合物又は成分を単独で使用する場合に使用されるものと同じ量で、及び同じ計画に従って物質又は成分のそれぞれを投与してもよく、このような併用が相乗効果をもたらしてもよいし、又はもたらさなくてもよい。しかしながら、2つ以上の活性物質又は成分の併用が相乗効果をもたらす場合、所望の治療作用を依然として達成する一方で、投与されるべき物質又は成分の1つ、複数又はすべての量を低減させることも可能性であり得る。これは、例えば、所望の薬学的効果又は治療効果を依然として得る一方で、通常量で使用する場合の物質又は成分の1つ以上の使用に関連する任意の望ましくない副作用を回避、制限又は低減するのに有用であり得る。
【0338】
本発明に従って使用される処置計画の有効性は、臨床医には明らかであるように、関与する疾患又は障害についてそれ自体が公知の任意の方法で決定及び/又は観察され得る。臨床医はまた、必要に応じて及びケースバイケースで、特定の処置計画を変更若しくは改変して所望の治療効果を達成すること、望ましくない副作用を回避、制限若しくは低減すること、及び/又は一方では所望の治療効果を達成することと、他方では望ましくない副作用を回避、制限又は低減することとの適切な均衡を達成することができるであろう。
【0339】
一般に、所望の治療効果が達成されるまで、及び/又は所望の治療効果を維持するべき限り、処置計画は継続されるであろう。先と同様に、これは臨床医によって決定され得る。
【0340】
本発明のポリペプチド、核酸、遺伝子構築物、並びにホスト及び宿主細胞のさらなる使用は、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかであろう。例えば限定されないが、本発明のポリペプチドを適切な担体又は固体支持体に連結して、組成物及び組成物を含む調製物からP. aeruginosa由来のPcrVタンパク質を精製するためのそれ自体が公知の方法で使用することができる培地を提供することができる。適切な検出可能なラベルを含む本発明のポリペプチドの誘導体もまた、組成物又は調製物中のP. aeruginosaのPcrVタンパク質の存在を(定性的に又は定量的に)決定するためのマーカーとして使用することができる。
【0341】
次に、以下の非限定的な好ましい態様、実施例及び図面によって、本発明をさらに説明する。
【0342】
本出願を通して引用したすべての参考文献(論文参考文献、発行特許、公開特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む)の内容全体が、特に上記で参照されている教示について参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0343】
実施例
実施例1 材料及び方法
1.1 リコンビナントPcrVタンパク質(rPcrV)の作製
参照株PAO1の全長PcrVタンパク質(アミノ酸残基1~294、表A-1を参照のこと)をコードする遺伝子を社内のpUC119由来発現ベクターにクローニングした。このベクターは、lacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、マルチクローニング部位及びpelBリーダー配列を含有していた。rPcrVをコードする配列とインフレームで、このベクターは、C末端Hisタグをコードしていた。E. coli(TG-1)にトランスフォーメーションした後に、発現培養物を増殖させ、1mM IPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃で4時間維持した。遠心分離によって細胞を回収し、超音波処理によって細胞ペレットを溶解した。遠心分離によって細胞質画分を単離した。HisTrap FF crude 1 mlカラムの固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によって粗抽出物からリコンビナントタンパク質を精製し、D-PBS(HiPrep 26/10カラム)に緩衝液交換し、続いてSource15Q(カラム容量(CV)2ml)カラムを使用してイオン交換クロマトグラフィーを行い、最後にSuperdex75 10/300 GLカラム(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)を用いてゲルろ過を行った。SDS-PAGE及び分析サイズ排除によって、タンパク質の純度及び均一性を確認した。
【0344】
1.2 GST-PcrVタンパク質の作製
PAO1株由来のPcrVコード配列(アミノ酸残基1~294、表A-1を参照のこと)を発現ベクターpET42a(+)(EMBBiosciences, Darmstadt, Germany)にクローニングして、GST-PcrV遺伝子融合物を作製した。得られたベクターをE. coli BL21 DE3細胞(Invitrogen)にトランスフォーメーションした。GST-rPcrV融合タンパク質を発現させ、E. coli(BL21 DE3)から以下のように精製した。GST-PcrVを発現する1リットル培養バッチのE. coliを増殖させ、1mM IPTGを追加することによって発現を誘導した。37℃でさらに3時間増殖させた後、遠心分離によって細菌細胞をペレット化し、超音波処理によって溶解した。遠心分離によって溶解物を清澄化した後、それをグルタチオンセファロースカラム(GSTrap FF)に通し、続いて、脱塩工程(HiPrep26/10カラム)及びSource15Qカラム(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)を使用したさらなるイオン交換クロマトグラフィー工程を行った。SDS-PAGEによって、タンパク質の純度(>90%)及び均一性を確認した。
【0345】
1.3 PcrV配列変異体の作製
抗PcrV療法が様々なP. aeruginosa臨床分離菌に対して一般に適用可能であるかを決定するために、Lynch (Microbial pathogenesis 48: 197-204, 2010)は、3つの異なる地理的領域から収集した90種の臨床分離菌由来のPcrVを配列決定することによって、PcrVの遺伝的異質性を決定した。このようにして、Lynchらは14種の異なるPcrV変異体を同定した(表A-1、PcrV変異体01~PcrV変異体15を参照のこと)。
【0346】
同様の方法を使用して、207種の臨床分離菌-地理的に十分に広い地域にわたって収集したもの(Prof. Vaneechoutte, UGent, Belgium)-を使用して、PcrVの遺伝的異質性に関するさらなる情報を得た。このようにして、8種の新規なPcrV配列変異体を同定した(表A-1、PcrV変異体16~PcrV変異体23を参照のこと)。
【0347】
すべてのPcrV配列変異体の作製について、23種の異なるPcrV変異体(アミノ酸残基1~294、表A-1を参照のこと)をコードする遺伝子を、Hisタグをコードする遺伝子と一緒に、pET42a(+)ベクター(EMBBiosciences, Darmstadt, Germany)にクローニングして、GST-PcrV-His遺伝子融合物を作製した。GST-PcrV-His融合タンパク質を発現させ、pET42a(+)-PcrV-HisでトランスフォーメーションしたE. coli(BL21 DE3)から以下のように精製した。1リットル培養物を増殖させ、1mM IPTGを追加することによって発現を誘導した。37℃でさらに3時間増殖させた後、遠心分離によって細菌細胞をペレット化し、超音波処理によって溶解した。遠心分離によって溶解物を清澄化した後、それをGSTrap FFカラム(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)に通し、D-PBSに緩衝液交換し、この後に純粋なタンパク質(>90%)が得られた。
【0348】
1.4 抗PcrV Fab分子の作製
3個のFab分子(Fab13.37(国際公開第2009/073631号;配列番号13及び37)、Fab26.24(国際公開第2009/073631号;配列番号26及び24)及びFab35.36(国際公開第2009/073631号;配列番号35及び36))由来のVL及びVHをコードする遺伝子セグメントを社内のヒトIgG1/κFab発現ベクターにクローニングした。このベクターは、LacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、2つの別個のクローニング部位、その後ろにpelB(軽鎖)又は遺伝子3(重鎖)リーダー配列を含有していた。重鎖をコードする配列とインフレームで、この発現ベクターは、C末端のHAタグ及びHisタグをコードしていた。FabフラグメントをE. coliで発現させ、HisTrap FF crude 1 ml (GE healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)によってネイティブな非還元条件下で精製し、続いて、ヒトFabκ軽鎖用のアフィニティークロマトグラフィー(CaptureSelect LC-kappa (Hu), BAC)及びSuperdex75 10/300 GLカラム(GE Healthcare GE healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)のサイズ排除クロマトグラフィー又はZebaスピンカラム(Pierce, Rockford, IL, USA)よる脱塩を行った。3個のFabの可変重鎖及び可変軽鎖のアミノ酸配列を表A-2に示す。定常重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を表A-3に示す。
【0349】
実施例2:rPcrVタンパク質によるラマの免疫感作、重鎖のみ抗体フラグメントレパートリーのクローニング及びファージの調製
2.1 免疫感作
Ethical Committee of the faculty of Veterinary Medicine (University Ghent, Belgium)の承認後、スティミューン(Stimune) (Prionics, Lelystad, the Netherlands)に配合したrPcrVタンパク質を4回筋肉内注射(2週間間隔で25又は10ug/投与)することによって、4匹のラマ(指定番号504、505、506及び507)を免疫感作した。
【0350】
2.2 重鎖のみ抗体フラグメントレパートリーのクローニング及びファージの調製
最後の免疫原の注射後、最後の抗原注射の4日及び8日後に採取した2個の150mL血液サンプルを動物ごとに採取した。製造業者の説明書(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ, USA)に従ってFicoll-Hypaqueを使用して、血液サンプルから末梢血単核細胞(PBMC)を調製した。PBMCから全RNAを抽出し、RT-PCRの出発物質として使用して、VHH/ナノボディをコードするDNAセグメントを増幅した。PCR増幅したVHHレパートリーを、VHHライブラリのファージディスプレイを容易にするように設計したベクターに、特定の制限部位を介してクローニングした。このベクターはpUC119由来のものであり、LacZプロモーター、M13ファージgIIIタンパク質コード配列、アンピシリン又はカルベニシリン耐性遺伝子、マルチクローニング部位、及びハイブリッドgIII-pelBリーダー配列を含有していた。VHH/ナノボディをコードする配列とインフレームで、このベクターは、C末端トリプルFlagタグ及びHisタグをコードしていた。標準的なプロトコール(例えば、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/062551号、国際公開第05/044858号、並びに本明細書で引用されている他の従来技術及びAblynx N.V.によって出願された出願を参照のこと)に従ってファージを調製し、さらなる使用のためにろ過滅菌した後に4℃で保存した。
【0351】
実施例3:ファージディスプレイによるPcrV特異的VHHの選択
すべてのラマから得られ、ファージライブラリにクローニングしたVHHレパートリーを2つの選択戦略に使用した。第1の選択戦略では、rPcrVタンパク質(社内で生産したもの、実施例1のセクション1.1を参照のこと)をNunc Maxisorpプレート上に15ug/mlの濃度で固定化し、その隣を抗原0ug/mlのネガティブコントロールとした。ファージライブラリと共にインキュベーションしてよく洗浄した後、結合したファージをトリプシン(1mg/mL)で溶出した。溶出したファージを増幅し、10ug/ml(rPcrV)及び0ug/ml(コントロール)の第2の選択ラウンドでアプライした。
【0352】
第2の選択戦略では、50nM及び5nMのビオチン化rPcrVタンパク質(bio-rPcrV;製造業者の説明書に従ってSulfo-NHS-LC-Biotin (Pierce, Rockford, IL, USA)を使用してビオチン化したもの)を、ニュートラアビジン(1ug/ml)をコーティングしたNunc Maxisorpプレート上に捕捉し、その隣をニュートラアビジンのみ(1ug/ml)のネガティブコントロールとした。ファージライブラリと共にインキュベーションしてよく洗浄した後、結合したファージをトリプシン(1mg/mL)で溶出した。溶出したファージをE. coliの感染に使用した。感染E. coli細胞は、5nM、0.5nM、0.05nM、0.005nMのbio-rPcrV及びコントロール(ニュートラアビジン1ug/ml)の次の選択ラウンドのためのファージを調製するのに使用したか、又は個々のVHHクローンの分析のために寒天プレート(LB+amp+グルコース2%)上にプレートした。
【0353】
すべての選択ラウンドのアウトプットを濃縮係数(コントロールに対する、溶出液中に存在するファージの数)について分析し、最良の選択条件をさらなる分析のために選択した。選択アウトプットを特異的結合体についてスクリーニングするために、単一コロニーを寒天プレートから剥がし、1mL 96ディープウェルプレートで増殖させた。LacZによってコントロールされるVHH発現を、グルコースの非存在下でIPTG(最終1mM)の追加によって誘導した。標準的なプロトコール(例えば、国際公開第03/035694号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/062551号、並びに本明細書で引用されている他の従来技術及びAblynx N.V.によって出願された出願を参照のこと)に従って、ペリプラズム抽出物(容量約80μL)を調製した。
【0354】
実施例4:機能的遮断ナノボディについてのペリプラズム抽出物のスクリーニング
4.1 ELISAにおけるスクリーニング
最初の工程では、結合ELISAによって、bio-rPcrVに対する結合について、ペリプラズム抽出物を試験した。簡潔に言えば、10nMのbio-rPcrVタンパク質を、ニュートラアビジン(2ug/ml)をコーティングした96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)上に捕捉した。カゼイン溶液(1%)でウェルをブロッキングした。10倍希釈のペリプラズム抽出物を追加した後、マウス抗Flag-HRPコンジュゲート(Sigma)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、ナノボディの結合を検出した。バックグラウンドを>2倍上回るELISAシグナルを示すクローンを、ポジティブなPcrV結合ナノボディをコード化すると判断した。
【0355】
4.2 配列決定
ポジティブクローンのDNA配列を決定した。抗PcrVナノボディのアミノ酸配列を表A-4に示す。
【0356】
4.3 off速度の決定
ProteOn機器(BioRad)の表面プラズモン共鳴によって、固有のPcrV結合ナノボディすべてのoff速度分析を行った。この目的のために、リコンビナントPcrVタンパク質を、1個のリガンドチャネルに対するアミンカップリングを介してGLC Proteonセンサーチップに共有結合させ、この後に残りの反応基を不活化した。抗PcrVナノボディを発現するE. coli細胞から調製したペリプラズム抽出物を10倍希釈し、固定化rPcrVに結合させるために流量45uL/分で2分間にわたって注入した。サンプル注入の間に、ProteOnリン酸溶液0.85%で表面を再生した。1:1相互作用モデル(Langmuirモデル)を個々の解離曲線にフィッティングすることによって、off速度を決定した。決定したoff速度は検出限界未満の3×10-5-1~4×10-2-1の範囲であり、クローンの大部分が、1×10-3~1×10-4-1の範囲のoff速度を有していた。
【0357】
4.4 TTSS依存性細胞毒性アッセイにおける分析
Pseudomonas aeruginosaのTTSS媒介性感染を防止することができるナノボディを同定するために、P3-X63-Ag8(P3X63)マウス骨髄腫細胞(ECACC Cell line)をターゲットとして使用するTTSS依存性細胞毒性アッセイにおいて、代表的なクローンを試験した。Pseudomonas aeruginosa細胞毒性アッセイの例は、例えば、Frank et al. (The Journal of infectious diseases 186: 64-73, 2002)、Vance et al. (Infection and Immunity 73: 1706-1713, 2005)、El Solh et al. (Am. J. Respir. Crit. Care Med. 178: 513-519, 2008)に提供されている。1ウェル当たり合計2×10個のP3X63細胞を96ウェルプレートに播種した。PcrV結合ナノボディを含有するペリプラズム抽出物(1/4希釈したもの)をP. aeruginosaのPA103株と共にプレインキュベーションし、これをカルシウム枯渇条件(LB培地+5mM EGTA;Kim, Microbiology 151: 3575-3587, 2005)下で増殖させて、TTSSの発現を誘導した。プレインキュベーション後、ペリプラズム抽出物及び細菌の混合物をP3X63細胞に追加し、37℃における3時間のインキュベーション工程の後に、P3X63細胞をヨウ化プロピジウム(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)で染色し、2%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)で固定した。Pseudomonas aeruginosa感染及びそれにより媒介される細胞死を防止する能力を、FACS Array (Becton Dickinson, USA)及びFCS Expressソフトウェア(Denovo, USA)を使用して死細胞によるヨウ化プロピジウム色素の取り込みをモニタリングすることによって定量した。骨髄腫細胞1に対して細菌8(6:1~10:1の範囲)の平均感染多重度(MOI)で、PA103株による感染を行った。Prism5ソフトウェア(Graphpad)を使用して、データを分析した。未処置サンプル中の死細胞に対して細胞毒性を標準化し、以下の式:
【数1】

(式中、
y=無関係なコントロールナノボディと共にインキュベーションしたPA103処置ウェルの平均(%死細胞)
z=無関係なコントロールナノボディと共にインキュベーションした未処置ウェルの平均(%死細胞)
x=評価したデータ点の死細胞に対する%)
に従って%阻害を計算するために標準化データを使用した。
【0358】
ペリプラズム抽出物のスクリーニングデータの概要を表B-1に示す。
【0359】
【表2】
【0360】
実施例5:精製一価抗PcrVナノボディの特性決定
5.1 選択ナノボディの調製
実施例4に記載されているスクリーニングから選択したクローンをさらに特性決定した。選択ナノボディを社内のpUC119由来発現ベクターにサブクローニングした。このベクターは、lacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、マルチクローニング部位、及びpel Bリーダー配列を含有していた。ナノボディをコードする配列とインフレームで、このベクターは、C末端トリプルFlag及びHisタグをコードしていた。E. coli(TG-1)におけるトランスフォーメーションの際に、発現培養物を増殖させ、1mM IPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃で4時間維持した。細胞培養物をスピンした後、ペレットを凍結融解し、続いて遠心分離することによって、ペリプラズム抽出物を調製した。次いで、これらの抽出物を出発物質として使用して、HisTrap FF crude 1 mlカラム(GE healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)のIMACによって精製し、続いてZebaスピンカラム(Pierce, Rockford, IL, USA)によって脱塩したところ、SDS-PAGEによる評価では95%の純度が得られた。
【0361】
5.2 細胞毒性アッセイにおけるPcrV遮断ナノボディの評価
P3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性アッセイにおいて、Pseudomonas aeruginosaのTTSS誘導性細胞毒性を防止するナノボディの能力を試験した。簡潔に言えば、系列希釈の精製ナノボディをPseudomonas aeruginosa PA103と共にプレインキュベーションし、これをTTSS誘導条件(LB培地+5mM EGTA;Kim, Microbiology 151: 3575-3587, 2005)下で培養した。混合物をP3X63細胞に追加し、媒介される細胞死を実施例4.4のように分析した。骨髄腫細胞1に対して細菌2.8(4:1~1.5:1の範囲)の平均MOIで、感染を行った。データを図1及び表B-2に要約する。
【0362】
【表3】
【0363】
5.3 親和性の決定
Biacore T100機器の表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、一部のナノボディの動態結合パラメータを決定した。この目的のために、リコンビナントGST-PcrVを、EDC及びNHSを使用したアミンカップリングを介してCM5チップ上に固定化した。精製ナノボディを異なる濃度(1~1000nM)で2分間注入し、流量45ul/分で20分間解離させた。サンプル注入の間に、10mMグリシン(pH1.5)及び100mM HClで表面を再生した。HBS-N(Hepes緩衝液pH7.4)をランニング緩衝液として使用した。BIAEvaluationソフトウェア(1:1相互作用)を使用して、センサーグラムから速度定数を計算した。6個の抗PcrVナノボディの親和性は0.5~5nMの範囲であった(表B-3)。
【0364】
【表4】
【0365】
5.4 エピトープビニング
ナノボディを異なるエピトープビンに分類するために、競合結合ELISAアッセイを実施した。第1の実験では、1ug/mLのGST-PcrVタンパク質を96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)にコーティングした。0.1%カゼイン及び0.05%Tween20(Sigma)を含有する希釈系列(濃度範囲100nM~6.4pM)の精製ナノボディのPBS緩衝液を、1nM Fab13.37(配列番号142及び143)の存在下でインキュベーションした。マウス抗HA IgG(Zymed Laboratories, South San Francisco, California)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートウサギ抗マウスIgG(Dako, Glostrup, Denmark)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、GST-PcrVに対するFab13.37(配列番号142及び143)の残余結合を検出した。
【0366】
第2の実験では、2nMビオチン化rPcrVタンパク質を、2ug/mlのニュートラアビジンでコーティングした96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)上に捕捉した。ペリプラズム抽出物と、異なるナノボディ由来のナノボディファージ粒子(いずれも標準的なプロトコールに従って調製したもの、例えば、本明細書で引用されている従来技術及びAblynx N.V.によって出願された出願を参照のこと)との混合物をインキュベーションし、モノクローナル抗M13-HRPコンジュゲート(GE healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、ビオチン化rPcrVタンパク質に対するファージの残余結合を検出した。これら2つのアプローチからの結果に基づいて、ナノボディを異なるエピトープビンに分けた(表B-4を参照のこと)。
【0367】
【表5】
【0368】
実施例6:多価PcrV遮断ナノボディの作製及びスクリーニング
6.1 二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディライブラリの構築
二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディライブラリを以下のように構築した。2回の別個のPCR反応によって、18個の一価抗PcrVナノボディのコード配列(表A-4)を増幅した:N末端ビルディングブロック(5’-GAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGGG-3’;配列番号150及び5’-ACCGCCTCCGGAGGAGACCGTGACCAGGGT-3’;配列番号151)及びC末端ビルディングブロック(5’-TCTTGGATCCGAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGG-3’;配列番号152及び5’-TGAGGAGACGGTGACCAGGGT-3’;配列番号153)。ナノボディ5H01については、異なるプライマーセットをN末端ビルディングブロックPCR(5’-GAGGTGCAATTGGTGGAGTCTGGG-3’;配列番号154及び5’-ACTTGAAGACCTCCGGAGGAGACCGTGACCAGGGT-3’;配列番号155)及びC末端ビルディングブロックPCR(5’-ACTTGAAGACTGGATCCGAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTGGG-3’;配列番号156及び5’-TGAGGAGACGGTGACCAGGGT-3’;配列番号157)に使用した。発現ベクターにおいて、19個の抗PcrVナノボディのN末端ビルディングブロックPCRプールを、フレキシブルなグリシン-セリンリンカー(40GS:GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS;配列番号193)のコード情報とインフレームで上流にクローニングしたのに対して、19個の抗PcrVナノボディのC末端プールを、40GSリンカーをコードする配列とインフレームで下流にクローニングした。
【0369】
この発現ベクターはpUC119由来のものであり、トランス遺伝子の発現を駆動するためのLacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子、マルチクローニング部位、及びOmpAリーダー配列を含有していた。インフレームで及び多価ナノボディをコードする配列の下流において、このベクターは、C末端トリプルFlagタグ及びHisタグをコードしていた。二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディライブラリ(理論上の多様性は19×19=361)を有する得られたプラスミドプールをE. coli TG1細胞にトランスフォーメーションし、寒天プレート(LB+Km+2%グルコース)上にプレートした。864個の単一コロニー(ライブラリの>90%の予想完全性を表す)を寒天プレートから剥がした。ペリプラズム抽出物を上記のように調製した。
【0370】
6.2 二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディライブラリのスクリーニング
最も強力な機能的遮断抗PcrVナノボディを選択するためのスクリーニングキャンペーンにおいて、二価/二パラトープ性ライブラリのペリプラズム抽出物を使用した。この目的のために、(実施例4.4に記載されているように)P3X63細胞をターゲットとして使用する細胞毒性アッセイにおいて、TTSS誘導性P. aeruginosa感染を防止する能力について、ペリプラズム抽出物(最終希釈1/150)を試験した。864個のライブラリクローンのうちの最も強力な48個(13%)からのスクリーニング結果(%阻害)を表B-5に要約する。表B-5には、361個の潜在的な二価/二パラトープ性の組み合わせのすべてが、それらのN末端及びC末端ビルディングブロック(これらは、実施例5.4で決定したようにそれらの相対的なエピトープビンによって分類されている)に応じて収められている。
【0371】
表A-5に示されているように、48個の最も強力なライブラリクローンの対応する配列を決定した。配列分析により、以下の観察結果が明らかになった:48個の最も強力な構築物の中には、(i)(2つの同一のナノボディビルディングブロックからなる)単一特異性二価ナノボディは存在せず(0/48)、(ii)大部分(42/48クローン)は2つの異なるエピトープビンのビルディングブロックからなっていた。スクリーニングの後、24個の固有の二パラトープ性ナノボディ(配列番号118~141)をさらなる特性決定のために選択した。
【0372】
【表6】
【0373】
実施例7:二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの特性決定
7.1 選択ナノボディの調製
選択二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディ由来のコード配列を、Pichia pastorisにおける発現及び培養培地への分泌を可能にする社内で構築したプラスミドにクローニングした。この発現ベクターはpPICZa(Invitrogen)由来のものであり、厳密にレギュレーションされたメタノール誘導性発現のためのAOX1プロモーター、Zeocin(商標)耐性遺伝子、マルチクローニング部位、及びα-因子分泌シグナルを含有していた。ナノボディをコードする配列とインフレームで、このベクターは、C末端GlyAlaAla配列、続いてトリプルFlagタグ及びHis6タグをコードしていた。トランスフォーメーションの際に、発現培養物を増殖させ、メタノールを追加することによってナノボディ発現を誘導し、30℃で48時間維持した。HisTrap(商標)カラム(GE Healthcare)を使用した固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)の出発物質として、上澄みを使用した。20mM~250mMのイミダゾール段階勾配を使用して、カラムからナノボディを溶出した。次の工程では、HiPrep(商標)26/10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用して、ナノボディをD-PBS(Invitrogen)に緩衝液交換した。
【0374】
7.2 細胞毒性アッセイにおける二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの評価
(セクション5.2に記載されているように)感染多重度(MOI)12でP3X63細胞をターゲットとして用いる細胞毒性(cytotox)アッセイにおいて、TTSS誘導性P. aeruginosa感染を防止する能力について、二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディを試験した。図2に示されている結果は、表B-6に要約されているように、すべてのナノボディが、1.3×10-11~3.7×10-09Mの範囲のIC50値でP. aeruginosa感染を防止することができることを実証している。
【0375】
【表7】
【0376】
ヒト肺上皮細胞(A549細胞)をターゲットとして用いるさらなる細胞毒性アッセイも確立し、フォーマットされたナノボディを特性決定するのに使用した。この目的のために、1ウェル当たり6×10個のA549(ABL161-ATCC:CCL-185)細胞を96ウェルE-プレート(Roche Cat No 05232368001)に追加し、xCELLigence RTCA workstation (Roche Analyser Model W380)内に37℃で6~8時間置いた。TTSS発現用の誘導条件下で増殖させたP. aeruginosa(PA103株)を、10種の異なる濃度の精製ナノボディと共に37℃で1時間プレインキュベーションし、次いでA549細胞に追加し、37℃でさらに24時間インキュベーションした。処置ウェルの細胞指数の低下が細胞指数域(cell index window)の75%~90%であった時点において、データを分析した。PA103接種菌液を細胞に追加した時点に対してデータを標準化した。独立して実施した3回の実験からの試験二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの効力を、参照分子Fab13.37の効力に対する比として示す(表B-7)。
【0377】
【表8】
【0378】
7.3 PcrV臨床変異体に対する交差反応性
23個のPcrV配列変異体(表A-1を参照のこと)に対する二価/二パラトープ性抗PcrVナノボディの交差反応性を結合ELISAによって評価した。この目的のために、1ug/mlの各PcrV変異体を用いて、マイクロタイタープレートを4℃で一晩コーティングした。0.1%カゼイン及び0.05%Tween20(Sigma)を含有する希釈系列(濃度範囲:5nM~4pM)のPBS緩衝液として、ナノボディをアプライした。マウス抗Flag-HRPコンジュゲート(Sigma)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、ナノボディの結合を検出した。すべてのナノボディは、それらがPAO1株由来のPcrV参照に結合するのとよく似た程度に、すべての異なるPcrV変異体に結合することができた。各ナノボディについて得られた異なるPcrV変異体及びPAO1参照株に対するEC50値の範囲を表B-8に示す。
【0379】
【表9】
【0380】
7.4 ヒト好中球エラスターゼ及びPseudomonas aeruginosaエラスターゼに対するナノボディの安定性
ナノボディをHNE又はPseudomonas aeruginosaエラスターゼのいずれかと共にインキュベーションし、続いて結合ELISAによって分解産物を分析することによって、病原体由来のプロテアーゼ(Pseudomonas aeruginosaエラスターゼ)及び宿主細胞由来のプロテアーゼ(ヒト好中球エラスターゼ(HNE))の存在下における安定性及び機能性の維持をin vitroで試験した。
【0381】
この目的のために、Tris pH7.8、150mM NaCl;10mM CaCl緩衝液中で、ナノボディをヒト好中球エラスターゼ(1~2Uエラスターゼ/ugナノボディ)又はPseudomonas aeruginosaエラスターゼ(3μg/μgナノボディ)と共に37℃で様々な時間間隔(2時間、4時間、24時間及び48時間)にわたってインキュベーションした。サンプル分析のために、1ug/mLのリコンビナントPcrVタンパク質を96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)に4℃で一晩固定化した。カゼイン溶液(1%)でウェルをブロッキングし、0.1%カゼイン及び0.05%Tween20(Sigma)を含有する希釈系列のPBS緩衝液として、サンプルをアプライした。参照として、未処置ナノボディを共に用いた。ポリクローナルウサギ抗VHH抗体(Ablynx N.V.)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Dako, Glostrup, Denmark)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、ナノボディの結合を検出した。
【0382】
結果を表B-9に要約する。
【0383】
【表10】
【0384】
実施例8:エピトープマッピング
選択一価抗PcrVナノボディの立体結合エピトープをマッピングするために、キメラ分子ベースの戦略を使用した。この目的のために、PcrVの不連続な溶媒曝露部分をそれらのLcrVカウンターパート(Yersinia種由来のPcrVホモログ)で置換した。(Sato et al. Frontiers in Microbiology 2: 142, 2011)。PcrVタンパク質の配列範囲の大部分をカバーする合計7個のキメラ分子を作製した(図3;表A-7を参照のこと)。
【0385】
キメラ分子を全長PcrVタンパク質(アミノ酸1~294、表A-1を参照のこと)と共に社内のpUC119由来発現ベクター(これは、LacZプロモーター、カナマイシン耐性遺伝子及びマルチクローニング部位を含有していた)にクローニングした。キメラをコードする配列とインフレームで、このベクターは、C末端c-mycタグ及びHis6タグをコードしていた。加えて、PcrV遮断エピトープとして記載されている(Frank et al. J. Inf. Dis. 186: 64-73, 2002; 米国特許第6,827,935号)短いPcrVフラグメント(アミノ酸144~257、図3を参照のこと)もこの発現ベクターにクローニングした。E. coli(TG-1)におけるトランスフォーメーションの際に、発現培養物を増殖させ、1mM IPTGを追加することによって発現を誘導し、37℃で4時間維持した。細胞培養物をスピンした後、ペレットを凍結融解し、続いて遠心分離することによって、ペリプラズム抽出物を調製した。残りの細胞ペレットを再懸濁し、超音波処理によって溶解した。遠心分離によって細胞質画分を単離し、ペリプラズム抽出物と共にプールした。Ni-Sepharose 6 Fast Flow beads (GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を使用した固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、続いてZeba脱塩スピンカラム(Thermo Scientific)を使用した脱塩によって、リコンビナントタンパク質を精製した。
【0386】
選択一価抗PcrVナノボディが短いPcrVフラグメント及び7個のキメラ分子に結合することができるかを評価するために、結合ELISAを行った。簡潔に言えば、ナノボディを3ug/mLで96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc, Wiesbaden, Germany)に4℃で一晩コーティングした。カゼイン溶液(PBS中1%)でウェルをブロッキングした。PcrVタンパク質をアプライし(1/10)、ビオチン化マウス抗myc抗体(Serotec)、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートエクストラアビジン(Sigma, St Louis, MO, USA)及び続いて基質esTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)(SDT, Brussels, Belgium)の存在下における酵素反応を使用して、結合を検出した。参照として、Fab13.37を共に用いた(9ug/mlを96ウェルプレートにコーティング)。すべての試験ナノボディは、全長PcrVと同様の結合レベルで7個のキメラ分子のうちの少なくとも5個に結合し、各キメラ分子は、全長PcrVと同様の結合レベルで7個のナノボディのうちの少なくとも3個によって結合されることから、PcrVタンパク質の不連続な部分のみがそれらのLcrVカウンターパートによって置換され、キメラ分子の全体的な三元構造は全長PcrV分子と比較して劇的に影響を受けなかったと結論付けることができた。異なるのPcrV分子に対する抗PcrVナノボディの結合パターンを比較することにより、3つの主なエピトープ群が明らかになった(表B-10を参照のこと)。これらのデータは、実施例5.4に記載されているエピトープビニング実験から取得したデータと一致している。ビン1のナノボディはアミノ酸156~177及びアミノ酸195~211を有するPcrV領域に結合し、ビン3のナノボディはアミノ酸57~91を有するPcrV領域を認識し、ビン2のナノボディはアミノ酸209~249に結合する。さらには、この実験により、Fab13.37の提案された結合エピトープ(Frank et al. J. Inf. Dis. 186: 64-73, 2002)及び米国特許第6,827,935号)がアミノ酸144~257からアミノ酸209~249であることがさらに示された。3つの異なるPcrV遮断エピトープ領域の描写を図3に示す。
【0387】
【表11】
【0388】
実施例9:本発明のポリペプチドの霧状化
9.1 材料及び方法
予想発現レベルに応じて2L又は10Lの発酵槽スケールでPichia pastoris X33標準発酵設定を使用して、ナノボディ339、354、360及び376(それぞれナノボディ256(配列番号129)、319(配列番号138)、259(配列番号137)及び258(配列番号134)のタグ無しバージョン)を生産した。発酵後、一般的なタンジェンシャルフローろ過工程を使用して4個のナノボディすべてを清澄化し、捕捉工程、研磨工程を使用した樹脂クロマトグラフィー及び分取サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した。次いで、ナノボディを濃縮して、D-PBS中及びD-PBS+0.01%Tween80中の両方で約50mg/mlとした。
【0389】
参照ナノボディ(配列番号207;
【化1】

国際公開第2011/098552号の配列番号2)も平行して霧状化した。10mM NaH2PO4/Na2HPO4+0.13M NaCl(pH7.0)中、55.2mg/mLでこの参照ナノボディを使用した。
【0390】
サンプルの霧状化手順は、撹拌及び凍結/融解実験から得られた異なるナノボディのOD500データに基づいていた:最も安定なポリペプチドを最初に霧状化し、撹拌又はF/Tストレスでより高い濁度を示したポリペプチドをその後に霧状化した。コントロールとして、参照ナノボディをその前に、その間に及びその後に霧状化した。1日目において、表B-11の順序(1~11)に従って、すべてのサンプルを霧状化した。同じ実験を2日目に反復した。
【0391】
製造業者の説明書に従ってAKITA(登録商標)APIXNEBネブライザーシステム(Activaero)によって、ポリペプチドを霧状化した。霧状化実験はデュプリケイトで実施した。4μm膜を有するメッシュネブライザーによって、500ulのサンプルを連続して霧状化した。エアロゾルを100mLガラス瓶に収集し、次いで分析した。
【0392】
濁度測定(OD500)及びSE-HPLC分析によって、霧状化前後のサンプルを評価した。
【0393】
9.2 濁度測定
濁度パラメータとして、OD500を測定した。D-PBSを用いてブランクの設定を行った。参照サンプル(霧状化前)について測定したOD500値及び霧状化サンプル(1日目及び2日目)を表B-11に示す。
【0394】
【表12】
【0395】
霧状化前後のサンプルのOD500値を図7にさらに示す。
【0396】
9.3 SE-HPLC分析
SE-HPLCアッセイは、BioSEC-5, 7.8 x 300 mm, 5um, Agilent, 5190-2521 (SEC85)カラム、0.3MアルギニンHCl+リン酸緩衝液(pH6)からなる移動相及びA280nmのUV検出から構成されていた。特定のタンパク質不純物の相対量を相対面積%として表し、特定のタンパク質又はタンパク質不純物に対応するピーク面積を全積分面積で割ることによって計算した。10ugのサンプルを注入した。この方法は、クロマトグラムにおいてプレピークとして溶出するより高分子量の種(HMW)の定量を目的とする。
【0397】
SE-HPLCの統合データの概要を表B-12に示す。参照ナノボディについて公知であるように(国際公開第2011/098552号を参照のこと)、霧状化によって、プレピーク(HMW)の増加が引き起こされた。この現象は、すべての本発明の霧状化ポリペプチドでは観察されなかった。霧状化は、高分子量分子の形成に影響を与えなかった。Tween80をサンプルに追加する必要はないと思われた。注入サンプルの濃度に対するSE-HPLCでの総ピーク面積を最後の列に示す。サンプルのいずれについてもグループ間で霧状化前後の面積に有意差は見られなかったが、このことは濃度の低下がないことを示している。
【0398】
【表13】
【0399】
実施例10:抗PcrVナノボディのin vivo有効性
3個のナノボディ(すなわち、339、360及び376)のin vivo有効性を評価するために、急性P. aeruginosa感染症マウスモデルを使用した。Secher et al. (Journal of Antimicrobial Chemotherapy 66: 1100-1109, 2011)に記載されているように、このモデルを行った。簡潔に言えば、10nMニトリロ三酢酸(Sigma)を補充したBHI培地(Brain Heart Infusion)中、150rpmで振盪しながら、P. aeruginosaのPA2310.55血清型O1株を37℃で一晩増殖させた。指数増殖期の後、P. aeruginosaを5×10cfu/mlに希釈することによって、接種材料をよって調製した。ナノボディ又はFab13.37をD-PBSで適切な濃度に希釈し、続いてPseudomonas aeruginosa培養物と1対1の比で予混合した。超微細ピペットチップを使用して、麻酔した8~10週齢C57Bl/6マウスに予混合物(40μl)を直ぐに鼻腔内投与した。
【0400】
感染マウスを4又は5日間モニタリングし、生存及び体重の両方(1群当たり7~8匹の動物)を、研究を通して毎日記録した。加えて、1群当たり3~5匹の動物を感染の24時間後に屠殺した。これらの動物において、右肺と左肺の他の葉(大きな葉を除く)とを計量し、使い捨ての滅菌ホモジナイズシステムDispomix (Medic Tools AG, 6300-Zug, Switzerland)を使用して1.5mLの等張生理食塩溶液中でホモジナイズした。肺中の生菌(cfu)を決定するために、等張生理食塩溶液で作製した10倍系列希釈の肺ホモジネートをBHI寒天プレート上にプレートした。CFU決定のために肺をホモジナイズした後、続いて肺ホモジネートを遠心分離し、上清を廃棄し、0.5%ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB)及び5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する1mLのPBSにペレットを再懸濁した。遠心分離後、200μLのPBS-HTAB-EDTA、1mLのHanks平衡塩溶液(HBSS)、100μLのo-ジアニシジン二塩酸塩(1.25mg/mL)及び100μLのH0.05%を含む試験管に、100μLの上清を入れた。撹拌器中、37℃で15分間インキュベーションした後に、100μLのNaN1%を用いて反応を停止させた。培地に対する460nmの吸光度として、ミエロペルオキシダーゼ活性を決定した。
【0401】
このモデルにおいて、低用量(0.028μg/マウス)及び高用量(10μg/マウス)の各ナノボディを試験した。図4に示されている生存曲線は、すべての試験抗PcrVナノボディが、10μg/マウスの用量で、P. aeruginosa感染に関連する致死からマウスを完全に保護したことを示している。対照的に、無関係なナノボディで処置した動物及び緩衝液で処置した動物はすべて、感染後の最初の48時間以内に死亡した。より低用量の0.028μg/マウスでは、3個のナノボディすべてが、完全な(A339)又はほぼ完全な(A360及びA376)保護を依然として提供した。
【0402】
ナノボディで処置したか又はFab13.37で処置した感染マウスの生存は、緩衝液で処置した感染マウス又は無関係なナノボディで処置した感染マウスと対比して長期であり、肺の炎症パラメータの低下と相関していた。より具体的には、肺ホモジネートにおけるミエロペルオキシダーゼ活性によって測定した場合の好中球性肺浸潤(図5A)及び相対肺重量(図5C)は、0.028μg/マウスほど低用量のすべての抗PcrVナノボディによって明らかに減少した。肺炎症に対するこれらのポジティブな効果に加えて、24時間の時点の細菌負荷も1.4log10CFU超減少した(図5B)。反対に、無関係なコントロールナノボディはこれらのパラメータに影響を及ぼさず、このことは、観察された効果が抗PcrVナノボディに関連することを示している。
【0403】
最後に、体重減少率も分析した。A339で処置したマウス(図6)は、最大平均体重減少率がわずか8.3%であり、感染後1日目においてこの最小値に既に達した。用量0.028μg/マウスのA376及びA360又は用量0.05μg/マウスのFab13.37で処置したマウスは、それぞれ11.9%、14.1%及び13.5%の平均体重減少率を示し、感染後2日目においてのみ最小値に達した。
【0404】

【表14】

【0405】
【表15】
【0406】
【表16】
【0407】
【表17】
【0408】
【表18】

【0409】
【表19】
【0410】
【表20】
【0411】
【表21】
【0412】
均等物
上記明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。実施例は、本発明のある特定の態様及び実施態様の例証として意図するものであるから、本発明は、提供した実施例による範囲に限定されるべきではない。他の機能的に均等な実施態様は本発明の範囲内である。当業者であれば、本明細書に示され記載されているものに加えて、本発明の様々な改変が上記説明から明らかであり、これらは添付の特許請求の範囲の範囲内である。本発明の利点及び目的は、本発明の各実施態様によって必ずしも包含されない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【配列表】
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