(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】ダパグリフロジンの新規な結晶形並びにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
C07D 309/10 20060101AFI20220117BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20220117BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C07D309/10 CSP
A61K31/351
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2018560220
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(86)【国際出願番号】 CN2017085295
(87)【国際公開番号】W WO2017202264
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-03-02
(31)【優先権主張番号】201610347924.8
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518402015
【氏名又は名称】江▲蘇▼豪森▲薬▼▲業▼集▲団▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲響▼
(72)【発明者】
【氏名】何 雷
(72)【発明者】
【氏名】余 俊
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲進▼家
(72)【発明者】
【氏名】杜 祖▲銀▼
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/117538(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104829573(CN,A)
【文献】国際公開第2013/079501(WO,A1)
【文献】特表2009-545525(JP,A)
【文献】特表2005-531588(JP,A)
【文献】特開2014-133761(JP,A)
【文献】調剤学-基礎と応用-,株式会社南山堂,1977年09月20日,p.142-145
【文献】新製剤学,株式会社南山堂,1984年04月25日,p.102-103,232-233
【文献】新・薬剤学総論(改訂第3版),株式会社南江堂,1987年04月10日,p.111
【文献】大嶋寛,結晶多形・擬多形の析出挙動と制御,PHARM STAGE,2007年01月15日,Vol.6, No.10,p.48-53
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
【文献】山野光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年09月01日,Vol.65, No.9,p.907(69)-913(75)
【文献】芦澤一英 他,医薬品の多形現象と晶析の科学,日本,丸善プラネット株式会社,2002年09月20日,p.3-16,273-278
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 309/10
A61K 31/351
A61P 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダパグリフロジンの結晶形Eであって、そのX線粉末回折パターンが、2θの値が3.5±0.2、4.1±0.2、5.1±0.2、7.3±0.2、14.0±0.2、14.8±0.2、19.1±0.2及び21.8±0.2である位置に、特徴的なピークを有することを特徴とする、ダパグリフロジンの結晶形E。
【請求項2】
前記X線粉末回折パターンが、2θの値が3.5±0.2、4.1±0.2、5.1±0.2、6.6±0.2、7.3±0.2、8.0±0.2、9.0±0.2、9.4±0.2、10.3±0.2、10.9±0.2、13.0±0.2、14.0±0.2、14.8±0.2、15.7±0.2、16.5±0.2、18.2±0.2、19.1±0.2、21.0±0.2及び21.8±0.2である位置に、特徴的なピークを有することを特徴とする、請求項1に記載のダパグリフロジンの結晶形E。
【請求項3】
前記X線粉末回折パターンが、
下記図1:
【表1】
に示されるものであることを特徴とする、請求項1に記載のダパグリフロジンの結晶形E。
【請求項4】
請求項1に記載のダパグリフロジンの結晶形Eの製造方法であって、
以下のステップ:
ダパグリフロジンをエステル溶媒又はエステルの混合溶媒に入れて、溶液を形成するステップ1);、
温度を下げるか若しくは貧溶媒を加えることにより、又は温度を下げるとともに貧溶媒を加えることにより、前記溶液を飽和させるステップ2);、
種結晶を加えて、前記溶液を撹拌して固体を析出させ、前記固体を濾過するステップ3);、
溶媒除去によって、得られた固体を結晶形Eに変換するステップ4)
を含み;
ステップ4)におけ
る溶媒除去の温度が、40℃~70℃であり;
ステップ1)における前記エステル溶媒が、2~6個の炭素原子を有するエステル溶媒であり;
ステップ2)における前記貧溶媒が、n―ヘキサン、n―ヘプタ
ン又はn―オクタンである、
製造方法。
【請求項5】
ステップ1)におけるダパグリフロジンと前記エステル溶媒との質量体積比が、1:2~10であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ1)におけるダパグリフロジンと前記エステル溶媒との質量体積比が、1:2.5~10であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ1)におけるダパグリフロジンと前記エステル溶媒との質量体積比が、1:4~5であることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ1)における前記エステル溶媒が、3~5個の炭素原子を有するエステル溶媒であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ1)における前記エステル溶媒が、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n―プロピルであることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ2)におけるダパグリフロジンと前記貧溶媒との質量体積比が、1:20~70であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップ2)におけるダパグリフロジンと前記貧溶媒との質量体積比が、1:22.5~50であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップ2)におけるダパグリフロジンと前記貧溶媒との質量体積比が、1:30~40であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップ4)における前記溶媒除去が、真空及び加熱の条件下で行われることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップ4)におけ
る溶媒除去の温度が、50℃~60℃であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項15】
有効量の請求項1~3のいずれか一項に記載のダパグリフロジンの結晶形E及び薬学的に許容される一種以上の賦形剤を含有する、II型糖尿病を治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物結晶形の技術分野に属し、具体的には、ダパグリフロジンの結晶形E並びにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、内分泌―代謝疾患の1つであり、高血糖がその共通の特徴である。インスリンの絶対的又は相対的な分泌不足によって、糖、タンパク質、脂肪及び二次性水分、電解質の代謝障害が引き起こされる。それは、全身の各系統、特に目、腎臓、心臓、血管、神経の慢性損傷、機能不全に関わり、多くの致命的な合併症さえ誘発する。世界の人口の高齢化に伴い、糖尿病は、既に一般病、多発病となり、人間の健康に重大な危険を及ぼす病気である。研究データによると、世界中の糖尿病患者の数は、2000年の1.5億から2.8億に増加しており、2030年までに世界中で約5億の糖尿病患者がいると推定されている。
【0003】
人体の通常の状態で、グルコース代謝のバランスを調節し制御するのは、グルコーストランスポーターである。ナトリウム―グルコースコトランスポーター(SGLT)は、既知のグルコーストランスポーターの一種である。SGLTは、SGLT1及びSGLT2を含み、SGLT1は、小腸及び腎近位尿細管の遠端のS3セグメントにおいて発現され、約10%の糖を吸収し、SGLT2は、主に腎近位尿細管の前部のSIセグメントにおいて発現され、90%以上のグルコース再吸収は、ここのSGLT2が担当する。したがって、SGLTを阻害し、特にSGLT2を阻害することで糖の再吸収を阻害することにより、糖を尿により排出し、血液中の糖の濃度を低下させることができる。
【0004】
ダパグリフロジン(Dapagliflozin)は、Bristol―Myers Squibb/AstraZenecaにより開発されたII型糖尿病を治療するためのナトリウム―グルコースコトランスポーター―2(SGLT―2)阻害剤である。
【0005】
2010年12月、Bristol―Myers Squibb/AstraZenecaは、EMAに申請を提出し、2012年4月、欧州医薬品庁のヒト用医薬品委員会は、ダパグリフロジンをII型糖尿病の治療に使用する申請承認を推奨した。
【0006】
2010年12月、Bristol―Myers Squibb/AstraZenecaは、FDAにNDA申請を提出し、2012年1月、FDAは、臨床データの追加を要求する応答書を送付した。
【0007】
ダパグリフロジン(Dapagliflozin)は、化学名が2―クロロ―5―(β―D―グルコピラノース―1―イル)―4’―エトキシジフェニルメタンであり、その化学構造は以下のとおりである。
【化1】
【0008】
一般的には、原薬及び製剤製造の操作可能性、薬剤貯蔵の安定性及び薬物治療効果の向上のために、薬物を結晶体の状態に製造する必要がある。
【0009】
ダパグリフロジンの結晶形に関する文献は、これまで、ダパグリフロジン溶媒化合物及びダパグリフロジンアミノ酸錯体である9種類の結晶形しか元の結晶形に関する特許(CN101479287)により開示されておらず、具体的な内容は、以下のとおりである。
【表1-1】
【表1-2】
【0010】
周知のように、薬物結晶体が溶媒和物又は錯体の形態で存在する場合、原薬に、治療効果を有する有効成分(すなわち、API)を除き、薬物の治療効果と関係せず、一般的に人体に有害であるいくつかの物質が存在する。製剤処方の研究において、溶媒和物又は錯体の形態で存在する薬物において、非API成分が存在するため、製剤の原材料と補助材料の適合性、原材料と補助材料の配合比率、製剤の重量などに影響を及ぼすことが多い。したがって、一般的な状況下で、溶媒和物の形態及び錯体の形態で存在する薬物の結晶形は、薬物製剤の開発における使用に適していない。
さらに、特許WO2013079501Aには、ダパグリフロジンの含水結晶形A及びBが開示され、WO2015117538AとCN104829573Aにはそれぞれ新規なダパグリフロジンの結晶形が開示され、以上の特許に開示された結晶形は、いずれも溶媒化合物の結晶形ではないが、DSC融点測定によって、上記結晶形の融点が低すぎて、いずれも35℃未満であり、打錠中に局部温度が高すぎて活物質が溶融することをもたらし、薬物の製造に不利であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】中国特許CN101479287
【文献】国際出願公開WO2013079501A
【文献】国際出願公開WO2015117538A
【文献】中国出願公開CN104829573A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ダパグリフロジンの新規な結晶形Eを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、ダパグリフロジンの結晶形Eの製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、有効成分としてのダパグリフロジンの結晶形E、及び薬学的に許容される1種以上の賦形剤を含有する医薬組成物、ならびにそのSGLT―2阻害剤としての使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の技術手段によって実現される。
【0016】
本発明は、X線粉末回折パターンが、2θの値が3.5±0.2、4.1±0.2、5.1±0.2、7.3±0.2、14.0±0.2、14.8±0.2、19.1±0.2及び21.8±0.2である位置に、特徴的なピークを有するダパグリフロジンの結晶形Eを提供する。
【0017】
好ましくは、本発明に係るダパグリフロジンの結晶形Eは、そのX線粉末回折パターンが、2θの値が3.5±0.2、4.1±0.2、5.1±0.2、6.6±0.2、7.3±0.2、8.0±0.2、9.0±0.2、9.4±0.2、10.3±0.2、10.9±0.2、13.0±0.2、14.0±0.2、14.8±0.2、15.7±0.2、16.5±0.2、18.2±0.2、19.1±0.2、21.0±0.2及び21.8±0.2である位置に、特徴的なピークを有する。
【0018】
さらに好ましくは、本発明に係るダパグリフロジンの結晶形Eの典型的な実施例は、
図1に示すようなXRPDパターンを有する。
【0019】
本発明は、ダパグリフロジンをエステル系溶媒又はエステル系と別の溶媒との混合溶媒に入れて、溶液を形成するステップ(1)と、
温度を下げるか若しくは貧溶媒を加えることにより、又は温度を下げるとともに貧溶媒を加えることにより、溶液を飽和させるステップ(2)と、
種結晶を加えて、撹拌して固体を析出させ、濾過するステップ(3)と、
得られた固体から溶媒を除去し、結晶形Eに変換するステップ(4)とを含むダパグリフロジンの結晶形Eの製造方法をさらに提供する。
【0020】
ステップ1)における前記ダパグリフロジンとエステル系溶媒との質量体積比は、1:2~10であり、好ましくは、1:2.5~10であり、より好ましくは、1:4~5である。
【0021】
ステップ1)における前記エステル系溶媒は、一般的に、2~6個の炭素原子を含有するエステル系溶媒であり、好ましくは、3~5個の炭素原子を含有するエステル系溶媒であり、より好ましくは、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n―プロピルである。
【0022】
ステップ2)における前記ダパグリフロジンと貧溶媒との質量体積比は、1:20~70であり、好ましくは、1:22.5~50であり、より好ましくは、1:30~40である。
【0023】
ステップ2)における前記貧溶媒は、一般的に、液体アルカン溶媒又はエーテル系溶媒であり、好ましくは、液体アルカン溶媒であり、より好ましくは、n―ヘキサン、n―ヘプタン、n―オクタンである。
【0024】
ステップ(2)における前記温度を下げることは、溶媒の温度を0℃以下、好ましくは、0℃~―20℃に下げることを指す。
【0025】
ステップ(3)における前記種結晶は、具体的には、ダパグリフロジンを反応器に加え、室温下でエステル系溶媒を加えて透明になるまで撹拌し、温度を下げ、静置し、固体を析出させた後、n―ヘプタンを貧溶媒として加えて、撹拌し、濾過して種結晶として使用できる固体を得ることを含む方法によって製造することができる。前記エステル系溶媒は、一般的に、2~6個の炭素原子を含有するエステル系溶媒であり、好ましくは、3~5個の炭素原子を含有するエステル系溶媒であり、より好ましくは、ギ酸エチル、酢酸エチル又は酢酸n―プロピルである。
【0026】
好ましくは、ステップ(3)における前記種結晶は、具体的には、ダパグリフロジンを反応器に加え、室温下で体積がダパグリフロジン質量の2倍のエステル系溶媒を加えて透明になるまで撹拌し、次に温度を―20℃に下げ、静置し、2日間後に固体を析出させ、体積がダパグリフロジン質量の5倍のn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し、濾過して種結晶として使用できる固体を得ることを含む方法によって製造することができる。
【0027】
ステップ4)における前記溶媒の除去は、真空及び加熱の条件下で行われる。本発明者の研究によると、真空及び加熱は、工業化製造を達成するために、溶媒除去の速度を加速することができ、特に加熱の状況下で、溶媒除去の速度が非常に顕著である。
【0028】
さらに、溶媒除去の温度は、一般的に、25℃~80℃、好ましくは、40℃~70℃、より好ましくは50℃~60℃を選択する。
【0029】
さらに、溶媒除去の時間は、一般的に、1~48時間、好ましくは、20~24時間である。
【0030】
本発明は、有効成分としてのダパグリフロジンの結晶形Eと、薬学的に許容される1種以上の賦形剤とを含有する医薬組成物をさらに提供する。該医薬組成物は、ヒト、サル、イヌを含む哺乳類に適用することができ、例えば、錠剤、カプセル、顆粒、注射剤、鼻腔内投与又は皮膚貼付剤の形態で投与する。
【0031】
本発明に係るダパグリフロジンの結晶形Eは、単独で、又は1種以上の他の抗糖尿病薬、抗高血糖薬、及び/又は他の疾患治療薬と組み合わせて使用することができる。本発明に係るダパグリフロジンの結晶形Eが他の治療薬とともに使用される場合、同じ剤形で、又は別々の経口剤形又は注射で投与することができる。
【発明の効果】
【0032】
従来の技術と比べて、本発明は以下の有益な効果を奏する。
【0033】
1)ダパグリフロジンの結晶形Eは、無溶媒化合物の結晶形であり、すなわち結晶格子に薬物分子以外の他の溶媒分子を含有しない結晶形であり、薬物の結晶形がより安全かつ純粋であり、薬物の安全性を向上させ、糖尿病の治療効果についてより顕著な効果を有する。また、結晶形Eの融点が70℃に達し、既存の非溶媒化合物の結晶形と比べて、製薬の要件を満たすことができる。
【0034】
2)ダパグリフロジンの結晶形Eは、良好な高温安定性及び光安定性を有し、薬物の加工、輸送及び貯蔵に有利である。
【0035】
3)ダパグリフロジンの結晶形Eは、固体の粒度が小さく、粒度分布の範囲が狭く、より良好な流動性を有し、薬物の加工成形に役立ち、深刻な凝集、膠着などの現象を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ダパグリフロジンの結晶形EのX線粉末回折パターンである。
【
図2】ダパグリフロジンの結晶形EのTGA図である。
【
図3】ダパグリフロジンの結晶形EのDSC図である。
【
図4】ダパグリフロジンの結晶形Eの打錠後のX線粉末回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面及び実施例を参照して、本発明の具体的な実施形態をさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明を説明するために用いられるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
実施例1 種結晶の製造
1gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で2.0mLの酢酸エチルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に温度を―20℃に下げ、静置し、2日後に固体を析出させ、上記反応器に5mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し、懸濁液を濾過して酢酸エチルを含有する固体を得て、該固体を種結晶として使用することができる。
【0039】
実施例2 種結晶の製造
酢酸エチルの代わりにギ酸エチルを用いて、実施例1と類似した方法で製造して、ギ酸エチルを含有する種結晶を得た。
【0040】
実施例3 種結晶の製造
酢酸エチルの代わりに酢酸イソプロピルを用いて、実施例1と類似した方法で製造して、酢酸イソプロピルを含有する種結晶を得た。
【0041】
実施例4
10gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で25.0mLの酢酸エチルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に25.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例1で得られた種結晶を加えて、4時間撹拌した後に200mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、50℃で24時間真空乾燥させて固体の結晶形Eを得た。
【0042】
実施例5
500gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で2.0Lの酢酸エチルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に2.3Lのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例1で得られた種結晶を加えて、4時間撹拌した後に12.7Lのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、60℃で24時間真空乾燥させて固体の結晶形Eを得た。
【0043】
実施例6
25gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で100.0mLのギ酸エチルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に100.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例2で得られた種結晶を加えて、4時間撹拌した後に1.5Lのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、50℃で24時間真空乾燥させて固体の結晶形Eを得た。
【0044】
実施例7
10gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で40.0mLの酢酸イソプロピルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に40.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例3で得られた種結晶を加えて、4時間撹拌した後に460mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、60℃で24時間真空乾燥させて固体の結晶形Eを得た。
【0045】
実施例8
20gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で50.0mLの酢酸n―プロピルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に50.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例3で得られた種結晶を加えて、5時間撹拌した後に750mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、60℃で12時間真空乾燥させて固体の結晶形Eを得た。
【0046】
実施例9
20gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で50.0mLの酢酸n―プロピルを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に50.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例3で得られた種結晶を加えて、5時間撹拌した後に750mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、30℃で48時間真空乾燥させ、XPRDの比較により、溶媒和物が少量だけ結晶形Eに変換された。
【0047】
実施例10
酢酸エチルの代わりにエタノールを用いて、実施例1と類似した方法で製造して、エタノールを含有する種結晶を得た。
【0048】
実施例11
20gのダパグリフロジンを秤量して反応器に加え、室温の条件下で50.0mLのエタノールを加えて、試料を透明になるまで溶解し、次に反応器に50.0mLのn―ヘプタンを加えて、系を混濁させ、実施例10で得られた種結晶を加えて、5時間撹拌した後に750mLのn―ヘプタンを加えて、24時間撹拌し続け、懸濁液を濾過して固体を得て、60℃で24時間真空乾燥させ、XPRDの比較により、結晶形Eが製造できない。
【0049】
実施例12 結晶形Eの安定性研究
研究過程において、ダパグリフロジンの結晶形Eの試料に対して苛酷試験及び加速試験を行い、実験内容及び結果は以下のとおりである。
【0050】
【0051】
実験結果は、ダパグリフロジンEの試料が高温(40℃)及び光の照射(5000ルクス)の条件下で、少なくとも30日間安定して存在できることを示す。
【0052】
【0053】
実験結果は、ダパグリフロジンEの試料が25℃の温度条件下で、少なくとも6ヶ月間安定して存在できることを示す。
【0054】
苛酷試験及び加速試験の結果は、ダパグリフロジンEの安定性が薬用の要件を満たすことができることを示す。
【0055】
実施例13 打錠試験
本発明の実施例8で製造された結晶形を、圧力を10KNに制御して打錠機で直接打錠すると、、パターン4から分かるように、本発明の結晶形Eは結晶転移が発生せず、本発明の結晶形に打錠条件下で安定することを示す。
【0056】
実施例14 ダパグリフロジン錠剤の製造
以下の処方により、ダパグリフロジン錠剤を製造する。
【0057】
【0058】
製造プロセス:ダパグリフロジンの結晶形E、微結晶セルロース、乳糖、クロスポビドンを混合器に加えて、10rpmの回転数で、30min混合し、乾式造粒機を用いて顆粒を製造し、続いて二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウムを加えて10rpmの回転数で、5min混合する。混合した後の材料を回転式打錠機で打錠する。打錠された素錠を高効率コーティング機で、錠剤の温度を40~45℃にしてコーティングする。具体的な各プロセスステップは以下のとおりである。
【0059】
【0060】
打錠した後に製造されたダパグリフロジン錠剤を、XPRDにより測定し、パータンの比較により、特徴的なピークが一致し、結晶形Eに結晶転移が発生していないことを示す。40℃、60%の相対湿度の条件下で、結晶形は、3ヶ月及び6ヶ月間長期静置しても結晶は一致したままであり、結晶転移が発生していない。
【0061】
以上は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、指摘すべきこととして、当業者にとって、本発明の技術的原理を逸脱することなく、いくつかの改良及び変更を行うことができ、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲とみなすべきである。