(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】基材粒子、導電性粒子、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220203BHJP
C08F 265/04 20060101ALI20220203BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20220203BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220203BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220203BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220203BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F265/04
H01B5/00 C
H01B5/00 M
H01B5/00 G
H01B1/00 C
H01B1/00 G
H01B1/00 M
H01B1/22 A
H01B5/16
H01R11/01 501E
(21)【出願番号】P 2019080705
(22)【出願日】2019-04-22
(62)【分割の表示】P 2015005262の分割
【原出願日】2015-01-14
【審査請求日】2019-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2014004300
(32)【優先日】2014-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭幸
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-091131(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0068601(KR,A)
【文献】特開2013-125659(JP,A)
【文献】特開2013-251099(JP,A)
【文献】特開2012-036336(JP,A)
【文献】国際公開第2012/102199(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/007334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 251/00 - 297/08
H01B 1/00 - 1/24
5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10%圧縮したときの圧縮弾性率の30%圧縮したときの圧縮弾性率に対する比が1.5以上であり、
圧縮試験での圧縮変位-圧縮荷重曲線において、50%圧縮するまでの間に屈曲部が存在せず、かつ50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に屈曲部が存在し、
前記10%圧縮したときの圧縮弾性率、前記30%圧縮したときの圧縮弾性率、及び前記圧縮試験での圧縮変位-圧縮荷重曲線はそれぞれ、25℃、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で基材粒子を圧縮して測定され、
コアと、前記コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子ではなく、
基材粒子内で、コアとシェルとの界面が存在せず、
内部形成材料が有機化合物であ
り、
内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なる、基材粒子。
【請求項2】
10%圧縮したときの圧縮弾性率が1000N/mm
2以上、5000N/mm
2以下
である、請求項
1に記載の基材粒子。
【請求項3】
10%圧縮したときの荷重値の30%圧縮したときの荷重値に対する比が0.25以上である、請求項1
又は2に記載の基材粒子。
【請求項4】
内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、表面部形成材料が、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の基材粒子。
【請求項5】
内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、内部形成材料と表面部形成材料とがそれぞれ、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項
4に記載の基材粒子。
【請求項6】
内部形成材料が、(メタ)アクリル化合物であり、
表面部形成材料が、芳香族(ジ)ビニル化合物及びシランアルコキシドの内の少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の基材粒子。
【請求項7】
中心に、芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体を含まないか、又は芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を25%未満で含み、
表面に、シランアルコキシドの重縮合物を含まないか、又はシランアルコキシドの重縮合物を25%未満で含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の基材粒子。
【請求項8】
表面上に導電層が形成され、前記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられるか、又は液晶表示素子用スペーサとして用いられる、請求項1~
7のいずれか1項に記載の基材粒子。
【請求項9】
表面上に導電層が形成され、前記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられる、請求項
8に記載の基材粒子。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の基材粒子と、
前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える、導電性粒子。
【請求項11】
前記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質をさらに備える、請求項
10に記載の導電性粒子。
【請求項12】
前記導電層の外表面に突起を有する、請求項
10又は
11に記載の導電性粒子。
【請求項13】
導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、
前記導電性粒子が、請求項1~
9のいずれか1項に記載の基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える、導電材料。
【請求項14】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部が、導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、
前記導電性粒子が、請求項1~
9のいずれか1項に記載の基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を有する基材粒子に関する。また、本発明は、上記基材粒子を用いた導電性粒子、導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。上記異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板(FPC)、ガラス基板、ガラスエポキシ基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を電気的に接続し、接続構造体を得るために用いられている。また、上記導電性粒子として、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有する導電性粒子が用いられることがある。
【0004】
上記導電性粒子に用いられる基材粒子の一例として、下記の特許文献1では、荷重負荷速度0.2275gf/secで圧縮する圧縮試験において、重合体粒子全体が破壊する本破壊挙動を示す前に、予め重合体粒子の一部が破壊される予備的破壊挙動を示す重合体粒子が開示されている。また、特許文献1には、上記重合体粒子と導電性金属層とを有する導電性粒子も開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、樹脂粒子により形成された基材と、該基材の表面に形成された少なくとも一層の導電性金属層とを有する導電性粒子が開示されている。上記樹脂粒子の平均粒子径は1.0μm~2.5μmである。上記樹脂粒子を荷重負荷速度2.2mN/秒で圧縮する圧縮試験において、荷重と圧縮方向の変位量との関係を示す圧縮変位曲線を得たときに、該圧縮変位曲線は、変位量が樹脂粒子の直径の55%以下となる範囲で変曲点を有さない。
【0006】
また、下記の特許文献3には、内層の少なくとも1層が最外層より柔軟で、隣接する2層間の少なくとも一つが化学的に結合され、かつ最外層の表面が金属で被覆されている導電性多層構造樹脂粒子が開示されている。
【0007】
下記の特許文献4には、異なる有機基を有する2種以上のポリオルガノシロキサンを有し、粒子中心部から表面方向に向かって、組成が段階的または連続的に変化している傾斜複合粒子が開示されている。
【0008】
また、液晶表示素子は、2枚のガラス基板間に液晶が配置されて構成されている。該液晶表示素子では、2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)を均一かつ一定に保つために、ギャップ制御材としてスペーサが用いられている。該スペーサとして、基材粒子が一般に用いられている。
【0009】
上記導電性粒子又は上記液晶表示素子用スペーサに用いられる粒子の一例として、下記の特許文献5には、重合性不飽和基を有する多官能性シラン化合物を、界面活性剤の存在下で加水分解及び重縮合させることにより得られる有機質無機質複合体粒子(基材粒子)が開示されている。特許文献4では、上記多官能性シラン化合物が、特定の式で表される化合物及びその誘導体から選ばれた少なくとも1つのラジカル重合性基含有第1シリコン化合物である。
【0010】
また、下記の特許文献6には、硬質粒子の表面を、軟質な高分子重合体層で被覆したコアシェル粒子が開示されている。上記硬質粒子の好適な例としては、ニッケル等の金属粒子、グラスファイバー、アルミナ、シリカ等の無機物粒子、硬化ベンゾグアナミン等の樹脂硬化物粒子が挙げられている。
【0011】
下記の特許文献7には、コアの外周にシェル層を備えるコアシェル構造を有する絶縁性粒子(基材粒子)が開示されている。特許文献7では、コアがビニル重合体を含み、シェル層がアミノ樹脂を含み、コアの直径をDnm、シェル層の厚みをdnmとしたときに、0.10<d/D<2.0である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2012-36335号公報
【文献】特開2012-221952号公報
【文献】特開2002-33022号公報
【文献】特開2010-235951号公報
【文献】特開2000-204119号公報
【文献】特開平7-140481号公報
【文献】特開2013-62069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の重合体粒子では、50%圧縮する圧縮試験において、50%圧縮するまでの間に、重合体粒子が不連続に破壊している(特許文献1の
図1参照)。特許文献1では、このような性質を示す重合体粒子において、特許文献1に記載の発明の効果が得られることが記載されている。また、特許文献2の樹脂粒子では、上記樹脂粒子を荷重負荷速度2.2mN/秒で圧縮する圧縮試験において、荷重と圧縮方向の変位量との関係を示す圧縮変位曲線を得たときに、該圧縮変位曲線は、変位量が樹脂粒子の直径の55%以下となる範囲で変曲点を有さない(特許文献2の
図2参照)。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の重合体粒子では、圧縮変形時に、シェルが破壊されやすい。また、特許文献2に記載の樹脂粒子では、高圧縮変位時にスプリングバックが起きてしまう可能性がある。また、特許文献1,2に記載の重合体粒子又は樹脂粒子を液晶表示素子用スペーサとして基板間に配置したり、特許文献1,2に記載の重合体粒子又は樹脂粒子の表面に導電層を形成した導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続して接続構造体を得たりした場合に、接続信頼性が低くなりやすい。また、液晶表示素子の表示品質が低下したり、接続構造体における電極間の接続抵抗が高くなったりしやすい。
【0015】
近年、導電性粒子により接続される電極の間隔が狭く、かつ電極面積が小さくなる傾向があり、より一層低い抵抗で接続できる導電性粒子が要求されている。
【0016】
特許文献1~7に記載のような従来の粒子を用いた導電性粒子により、間隔が狭い電極間を電気的に接続した場合には、電極間の接続時に、基材粒子が完全に破壊されたり、飛散したりすることで、電極間の接続抵抗が特に高くなりやすく、また、完全破壊しない場合でも、スプリングバックが生じることで電極間の接続抵抗が高くなりやすい。また、特許文献1~7に記載のような従来の粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いて基板間に配置して液晶表示素子を得た場合にも、粒子が完全に破壊されたり、飛散したりすることがある。このため、得られる液晶表示素子において表示品質が低下することがある。また、上記粒子が液晶表示素子の周辺シール剤に含まれる場合にも、粒子が完全に破壊されたり、飛散したりすることによって、表示品質が低下することがある。
【0017】
本発明の目的は、基材粒子の完全破壊及び飛散を抑えることができ、かつ、スプリングバックを抑えることができる基材粒子を提供することである。また、本発明は、上記基材粒子を用いた導電性粒子、導電材料及び接続構造体を提供することも目的とする。
【0018】
本発明の限定的な目的は、表面上に導電層を形成した導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合に、接続抵抗を低くすることができ、一方で、液晶表示素子においてスペーサとして用いられた場合に、液晶表示素子の表示品質を高めることができる基材粒子を提供すること、並びに該基材粒子を用いた導電性粒子、導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の広い局面によれば、10%圧縮したときの圧縮弾性率の30%圧縮したときの圧縮弾性率に対する比が1.5以上であり、圧縮試験での圧縮変位-圧縮荷重曲線において、50%圧縮するまでの間に屈曲部が存在せず、かつ50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に屈曲部が存在する、基材粒子が提供される。
【0020】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、上記基材粒子は、コアと、前記コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子ではなく、基材粒子内で、コアとシェルとの界面が存在しない。
【0021】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なる。
【0022】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、10%圧縮したときの圧縮弾性率が1000N/mm2以上、5000N/mm2以下である。
【0023】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、10%圧縮したときの荷重値の30%圧縮したときの荷重値に対する比が0.25以上である。
【0024】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、表面部形成材料が、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0025】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、内部形成材料と表面部形成材料とがそれぞれ、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0026】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、内部形成材料が、(メタ)アクリル化合物であり、表面部形成材料が、芳香族(ジ)ビニル化合物及びシランアルコキシドの内の少なくとも1種である。
【0027】
本発明に係る基材粒子のある特定の局面では、中心に、芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体を含まないか、又は芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を25%未満で含み、表面に、シランアルコキシドの重縮合物を含まないか、又はシランアルコキシドの重縮合物を25%未満で含む。
【0028】
本発明に係る基材粒子は、表面上に導電層が形成され、前記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられるか、又は液晶表示素子用スペーサとして用いられることが好ましい。本発明に係る基材粒子は、表面上に導電層が形成され、前記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられることがより好ましい。
【0029】
本発明の広い局面によれば、上述した基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える、導電性粒子が提供される。
【0030】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子は、前記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質をさらに備える。
【0031】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子は、前記導電層の外表面に突起を有する。
【0032】
本発明の広い局面によれば、導電性粒子と、バインダー樹脂とを含み、前記導電性粒子が、上述した基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える、導電材料が提供される。
【0033】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部が、導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、前記導電性粒子が、上述した基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備え、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る基材粒子は、10%圧縮したときの圧縮弾性率の30%圧縮したときの圧縮弾性率に対する比が1.5以上であり、圧縮試験での圧縮変位-圧縮荷重曲線において、50%圧縮するまでの間に屈曲部が存在せず、かつ50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に屈曲部が存在するので、基材粒子の完全破壊及び飛散、かつ、スプリングバックを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る基材粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いた液晶表示素子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る基材粒子の圧縮試験での圧縮変位(X軸)-圧縮荷重(Y軸)曲線を示す二次元グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
(基材粒子)
本発明に係る基材粒子では、基材粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率の基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率に対する比(10%K値/30%K値)が1.5以上である。
【0038】
本発明に係る基材粒子では、10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)の30%圧縮したときの圧縮弾性率(30%K値)に対する比(10%K値/30%K値)は1.5以上である。上記比(10%K値/30%K値)は好ましくは1.55以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.63以上、特に好ましくは2.0以上である。上記比(10%K値/30%K値)が上記下限以上であると、電極と導電性粒子との接触面積が十分に大きくなり、電極間の接続抵抗が効果的に低くなり、かつ電極間の接続信頼性がより一層高くなる。上記比(10%K値/30%K値)は好ましくは5.0以下である。
【0039】
また、本発明に係る基材粒子では、該基材粒子を50%圧縮する圧縮試験での圧縮変位-圧縮荷重曲線において、上記基材粒子が50%圧縮するまでの間に屈曲部が存在しない。
【0040】
なお、「屈曲部が存在しない」とは、荷重負荷速度0.3mN/秒で50%圧縮するまでの間に粒子の破壊が生じないこと、又は、50%圧縮するまでの間に粒子の破壊は生じるが不連続破壊は生じないことをいう。本発明において、50%圧縮変形以下での、「屈曲部が存在しない」とは、50%圧縮するまでの間に粒子の破壊が生じないことを意味していてもよく、50%圧縮するまでの間に粒子の破壊は生じるが不連続破壊は生じないことを意味していてもよい。50%圧縮変形以下での屈曲部が存在するか否かは、50%圧縮変形における圧縮変位(X軸)と圧縮荷重(Y軸)との関係を示す二次元グラフにおいて、僅かな荷重差において、不連続に圧縮変位が変化する点を基準に判断され、荷重値0.05mNの範囲内で圧縮変位差が0.1μm以下の場合を「屈曲部が存在しない」と評価する。
【0041】
本発明に係る基材粒子では、50%から80%まで圧縮する圧縮試験での圧縮変位(X軸)-圧縮荷重(Y軸)曲線において、屈曲部が存在する。上記圧縮範囲内で粒子の一部が破壊することで、基材粒子のスプリングバックを抑制でき、電極間の接続抵抗が効果的に低くなり、かつ、電極間の接続信頼性がより一層高くなる。基材粒子の一部が破壊する(屈曲部が存在する)破壊変位率は、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下である。
【0042】
本発明において、50%圧縮してから80%圧縮するまでの間における「屈曲部が存在する」とは、荷重負荷速度0.3mN/秒で50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に基材粒子の一部の破壊が生じているか又は基材粒子の完全破壊が生じていることをいう。本発明において、50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に屈曲部が存在するか否かは、50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に基材粒子の一部の破壊が生じていることを意味していてもよく、50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に基材粒子の完全破壊が生じていることを意味していてもよい。50%圧縮変形よりも大きい領域での屈曲部が存在するか否かは、圧縮変形(X軸)と荷重値(Y軸)との関係を示す二次元グラフにおいて、僅かな荷重差において、不連続に圧縮変位が変化する点を基準に判断され、荷重値0.2mNの範囲内で圧縮変位差が0.03μmを超える場合を「屈曲部が存在する」と評価する。
【0043】
本発明の一実施形態に係る基材粒子では、例えば、
図6に示す圧縮試験での圧縮変位(X軸)-圧縮荷重(Y軸)曲線を示す二次元グラフが得られる。
【0044】
上記屈曲部の存在の有無、並びに上記破壊変位率は、以下のようにして測定できる。
【0045】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で基材粒子を圧縮する。基材粒子の一部の破壊が確認されたときの圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値及び基材粒子の平均粒子径から、破壊変位率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0046】
破壊変位率(%)=D/(2R)×100
【0047】
D:圧縮変形50%以下の領域において圧縮荷重0.05mNの範囲内で圧縮変位差が0.1μmを超えたときの屈曲開始点の圧縮変位、及び、50%圧縮よりも大きい領域において圧縮荷重0.2mNの範囲内で圧縮変位差が0.03μmを超えたときの屈曲開始点の圧縮変位のうち小さいほうの圧縮変位(mm)
【0048】
R:基材粒子の半径(mm)
【0049】
上記基材粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は好ましくは500N/mm2以上、より好ましくは1000N/mm2以上、より一層好ましくは1500N/mm2以上、更に好ましくは2000N/mm2以上、好ましくは6000N/mm2以下、より好ましくは5000N/mm2以下、より一層好ましくは4000N/mm2以下、更に好ましくは3000N/mm2以下である。
【0050】
上記基材粒子を30%圧縮したときの圧縮弾性率(30%K値)は好ましくは300N/mm2以上、より好ましくは500N/mm2以上、より一層好ましくは700N/mm2以上、更に好ましくは1000N/mm2以上、好ましくは3500N/mm2以下、より好ましくは3000N/mm2以下、更に好ましくは2000N/mm2以下である。
【0051】
また、基材粒子の10%圧縮したときの荷重値の基材粒子の30%圧縮したときの荷重値に対する比(10%荷重値/30%荷重値)が0.25以上であり、かつ50%圧縮するまでの間に屈曲部が存在せず、かつ50%圧縮してから80%圧縮するまでの間に屈曲部が存在することが好ましい。この場合には、基材粒子の完全破壊及び飛散をより一層抑えることができ、かつスプリングバックをより一層抑えることができる。特に、50%圧縮するまでの間に本発明に係る基材粒子では、該基材粒子を強く圧縮したとしても、基材粒子の完全破壊及び飛散を抑えることができ、かつスプリングバックを抑えることができ、基材粒子又は導電性粒子と接触対象物との接触面積を大きくすることができる。
【0052】
また、基材粒子の完全破壊及び飛散を抑えることができる結果として、本発明に係る基材粒子を備える導電性粒子を用いて、電極間が接続された接続構造体では、高い荷重下で接続が行われていても、基材粒子が破壊及び飛散せず、かつスプリングバックせずに、基材粒子本来の機能を十分に発揮することが可能となる。また、基材粒子の完全破壊及び飛散が抑えられ、かつスプリングバックが抑えられるために、上記接続構造体における電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
【0053】
また、本発明に係る基材粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いて基板間に配置して液晶表示素子を得た場合に、高い荷重で配置が行われていても、基材粒子の表面部分が破壊及び飛散せずに、基材粒子本来の機能を十分に発揮することが可能となる。また、基材粒子の表面部分の破壊及び飛散が抑えられるために、上記液晶表示素子における表示品質を高めることができる。また、液晶表示素子用スペーサと基板とを良好に接触させることができ、基板間の間隔にばらつきを生じ難くすることができる。このことによっても、上記液晶表示素子の表示品質を高めることができる。
【0054】
基材粒子の破壊及び飛散をより一層抑える観点からは、上記比(10%荷重値/30%荷重値)は、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.30以上、好ましくは0.60以下である。基材粒子の表面部分の破壊及び飛散をより一層抑える観点からは、基材粒子を10%圧縮したときの荷重値(10%荷重値)は、好ましくは0.08mN以上、より好ましくは0.10mN以上、更に好ましくは0.20mN以上、特に好ましくは0.25mN以上、好ましくは0.70mN以下、より好ましくは0.50mN以下、更に好ましくは0.44mN以下である。
【0055】
上記基材粒子における上記圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)、並びに上記荷重値(10%荷重値及び30%荷重値)は、以下のようにして測定できる。
【0056】
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、圧縮速度0.3mN/秒、及び最大試験荷重20mNの条件下で基材粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0057】
10%K値又は30%K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:基材粒子が10%又は30%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:基材粒子が10%又は30%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:基材粒子の半径(mm)
【0058】
上記圧縮弾性率は、基材粒子の硬さを普遍的かつ定量的に表す。上記圧縮弾性率の使用により、基材粒子の硬さを定量的かつ一義的に表すことができる。
【0059】
上記基材粒子の圧縮回復率は好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上である。上記圧縮回復率が上記下限以上であると、電極間の間隔の変動に対応して、導電性粒子が十分に追従して変形しやすい。このため、電極間の接続不良が生じ難くなる。上記基材粒子の圧縮回復率は好ましくは100%未満である。
【0060】
上記圧縮回復率は、以下のようにして測定できる。
【0061】
試料台上に基材粒子を散布する。散布された基材粒子1個について、微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径100μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃で、基材粒子の中心方向に、基材粒子が30%圧縮変形するまで負荷(反転荷重値)を与える。その後、原点用荷重値(0.40mN)まで除荷を行う。この間の荷重-圧縮変位を測定し、下記式から圧縮回復率を求めることができる。なお、負荷速度は0.33mN/秒とする。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
【0062】
圧縮回復率(%)=[L2/L1]×100
L1:負荷を与えるときの原点用荷重値から反転荷重値に至るまでの圧縮変位
L2:負荷を解放するときの反転荷重値から原点用荷重値に至るまでの除荷変位
【0063】
上記基材粒子の用途は特に限定されない。上記基材粒子は、様々な用途に好適に用いられる。上記基材粒子は、表面上に導電層が形成され、上記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられるか、又は液晶表示素子用スペーサとして用いられることが好ましい。本発明に係る基材粒子は、表面上に導電層が形成され、上記導電層を有する導電性粒子を得るために用いられることが好ましい。上記基材粒子は、液晶表示素子用スペーサとして用いられることが好ましく、液晶表示素子用周辺シール剤に用いられることが好ましい。該液晶表示素子用周辺シール剤において、上記基材粒子は、スペーサとして機能することが好ましい。上記基材粒子は、良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を有するので、上記基材粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いて基板間に配置したり、表面に導電層を形成して導電性粒子として用いて電極間を電気的に接続したりした場合に、液晶表示素子用スペーサ又は導電性粒子が、基板間又は電極間に効率的に配置される。さらに、上記基材粒子では、基材粒子の表面部分の破壊及び飛散が抑えられるので、上記液晶表示素子用スペーサを用いた液晶表示素子及び上記導電性粒子を用いた接続構造体において、接続不良及び表示不良が生じ難くなる。
【0064】
さらに、上記基材粒子は、無機充填材、トナーの添加剤、衝撃吸収剤又は振動吸収剤としても好適に用いられる。例えば、ゴム又はバネ等の代替品として、上記基材粒子を用いることができる。
【0065】
上記基材粒子が、上記比(10%K値/30%K値)を満足することで良好な圧縮変形特性を有し、かつ不連続破壊せずに良好な圧縮破壊特性を有するようにするために、以下に説明する基材粒子の構成を採用することができる。
【0066】
上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子ではないことが好ましく、基材粒子内で、コアとシェルとの界面が存在しないことが好ましい。上記基材粒子は、基材粒子内で、界面が存在しないことが好ましく、異なる面同士が接触している界面が存在しないことがより好ましい。上記基材粒子は、表面が存在する不連続部分を有さないことが好ましく、構造表面が存在する不連続部分を有さないことが好ましい。
【0067】
良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を容易に達成する観点から、上記基材粒子では、内部形成材料の組成と表面部形成材料の組成とが異なることが好ましい。上記基材粒子では、内部が上記内部形成材料を用いて形成されており、表面部が上記表面部形成材料を用いて形成されていることが好ましい。また、上記基材粒子では、上記内部形成材料と上記表面部形成材料との双方を含む領域が存在することが好ましい。上記基材粒子では、上記内部形成材料を含み、かつ上記表面部形成材料を含まないか又は上記表面部形成材料を25%未満で含む領域を、基材粒子は中心に有することが好ましい。
【0068】
上記基材粒子では、上記表面部形成材料を含み、かつ上記内部形成材料を含まないか又は上記内部形成材料を25%未満で含む領域を、基材粒子は表面に有することが好ましい。上記基材粒子の全体で、単一の組成を有さないことが好ましい。上記内部形成材料は、基材粒子の中心を含む領域を形成している材料であり、表面を形成している材料とは異なることが好ましい。上記表面部形成材料は、基材粒子の表面を含む領域を形成している材料であり、基材粒子の中心を形成している材料とは異なることが好ましい。
【0069】
上記表面部形成材料は、上記基材粒子の表面から内側に向かって厚み1/10の距離部分(
図1に示す破線r1の位置)に含まれていることが好ましい。この場合には、表面部形成材料は一般に、粒子を表面処理している表面処理剤とは異なる。例えば、粒子をシランカップリング剤などで表面処理すると、表面処理物質の厚みはさほど厚くならない。
【0070】
良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を容易に達成する観点から、上記内部形成材料の組成と上記表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、上記表面部形成材料が、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記芳香族(ジ)ビニル化合物は、芳香族ビニル化合物であってもよく、芳香族ジビニル化合物であってもよい。良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を容易に達成する観点から、上記内部形成材料の組成と上記表面部形成材料の組成とが異なり、かつ、内部形成材料と表面部形成材料とがそれぞれ、芳香族(ジ)ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物及びシランアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。この場合に、上記内部形成材料が(メタ)アクリル化合物でありかつ上記表面部形成材料が芳香族(ジ)ビニル化合物及びシランアルコキシドの内の少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
良好な圧縮変形特性及び圧縮破壊特性を容易に達成する観点から、内部形成材料が、(メタ)アクリル化合物であることが好ましく、内部形成材料が、(メタ)アクリル化合物であり、かつ表面部形成材料がシランアルコキシドであることがより好ましい。
【0072】
基材粒子の中心は、芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体を含まないか、又は芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を25%未満で含むことが好ましい(2種以上の場合には合計で含有量を計算)。基材粒子の表面は、シランアルコキシドの重縮合物を含まないか、又はシランアルコキシドの重縮合物を25%未満で含むことが好ましい(2種以上の場合には合計で含有量を計算)。上記基材粒子の表面から内側に向かって厚み1/10の領域(
図1に示す領域R1)は、表面部形成材料により形成されていることが好ましく、芳香族(ジ)ビニル重合体、(メタ)アクリル重合体及び芳香族(ジ)ビニル-(メタ)アクリル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種により形成されていることがより好ましい。
【0073】
基材粒子は、基材粒子の中心から表面に向かって、基材粒子形成材料の組成が連続的又は段階的に変化している領域を有することが好ましく、基材粒子形成材料の組成が連続的に変化している領域を有することがより好ましい。基材粒子は、中心から表面に向かって、基材粒子が、組成における各成分の含有量が傾斜している領域を有することが好ましい。
【0074】
基材粒子は、シランアルコキシドの重縮合物を用いる場合、基材粒子の中心から表面に向かって、炭素原子の含有量が連続的に変化している領域を有することが好ましい。基材粒子は、基材粒子の中心から表面に向かって、珪素原子の含有量が連続的に変化している領域を有することが好ましい。炭素原子の含有量が多くなると、炭素原子の含有量が多い基材粒子部分の柔軟性が高くなる傾向があり、10%K値が低くなり、上記比(10%K値/30%K値)が1.0に近づく傾向がある。珪素原子の含有量が多くなると、珪素原子の含有量が多い基材粒子部分の柔軟性が低くなる傾向があり、30%K値が高くなり、上記比(10%K値/30%K値)が1.0に近づく傾向がある。
【0075】
上記基材粒子の中心の珪素原子の含有量は好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記基材粒子の中心は、珪素原子を含んでいなくてもよい。上記基材粒子の中心は珪素原子を含まないことが好ましい。基材粒子の中心に含まれる炭素原子の含有量は好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上である。基材粒子の中心における珪素原子の含有量が少ないほど、また基材粒子の中心における炭素原子の含有量が多いほど、基材粒子の中心の組成に由来して基材粒子の柔軟性がより一層高くなる。
【0076】
基材粒子の表面及び基材粒子の表面部形成材料にそれぞれ含まれる珪素原子の含有量は好ましくは50重量%以上、より好ましくは54重量%以上、更に好ましくは56重量%以上、特に好ましくは60重量%以上である。基材粒子の表面及び基材粒子の表面部形成材料はそれぞれ、炭素原子を含んでいなくてもよい。
【0077】
上記基材粒子の粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記基材の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記比(10%K値/30%K値)が好適な値を示すことが容易であり、基材粒子を導電性粒子及び液晶表示素子の用途に好適に使用可能になる。例えば、上記基材粒子の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、基材粒子の表面部分の破壊及び飛散がより一層抑えられ、更に上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
【0078】
上記基材粒子の粒径は、上記基材粒子が真球状である場合には直径を意味し、上記基材粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。また、基材粒子の粒径は、基材粒子を任意の粒径測定装置により測定した平均粒径を意味する。例えば、レーザー光散乱、電気抵抗値変化、撮像後の画像解析などの原理を用いた粒度分布測定機が利用できる。
【0079】
上記表面部形成材料を含む領域の厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは75nm以上、更に好ましくは125nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記表面部形成材料を含む領域の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、基材粒子の完全破壊及び飛散がより一層抑えられ、更に10%K値及び30%K値がより一層好適な値を示し、基材粒子を導電性粒子及び液晶表示素子用スペーサの用途に好適に使用可能になる。上記表面部形成材料を含む領域の厚みは、基材粒子1個あたりの平均厚みである。ゾルゲル法の制御等によって、上記表面部形成材料を含む領域の厚みを制御可能である。
【0080】
上記基材粒子のアスペクト比は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。上記アスペクト比は、長径/短径を示す。
【0081】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、液晶表示素子における表示品質を効果的に高め、接続構造体及び液晶表示素子における耐衝撃性を効果的に高める観点から、上記基材粒子の内部は、有機化合物により形成されていることが好ましい。上記基材粒子の内部が有機化合物により形成されていることで、基材粒子の完全破壊及び飛散が抑えられる。
【0082】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、液晶表示素子における表示品質を効果的に高め、接続構造体及び液晶表示素子における耐衝撃性を効果的に高める観点から、上記基材粒子の表面は、アルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合させて形成されていることが好ましい。この場合には、基材粒子の表面部分の破壊及び飛散がより一層抑えられる。
【0083】
基材粒子の内部形成材料が有機化合物であると、上記比(10%K値/30%K値)及び上記圧縮回復率が上述した値を満足することが容易である。
【0084】
上記内部形成材料等として用いることができる有機化合物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体、有機官能基を有するシランアルコキシド重合体並びに重縮合体等が用いられる。なかでも、上述したように、上記内部形成材料は、(メタ)アクリル重合体であることが好ましい。内部形成材料が(メタ)アクリル重合体であることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する基材粒子を設計及び合成することが容易である。
【0085】
上記内部形成材料等が(メタ)アクリル化合物である場合に、上記(メタ)アクリル化合物としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0086】
上記非架橋性の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類単量体等が挙げられる。なかでも、ポリマー粒子中の脆性を良好にする観点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、又は、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。上記非架橋性の単量体は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類単量体等が挙げられる。なかでも、上述したように、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、又は、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートが好ましい。上記架橋性単量体は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0088】
上記単量体を、公知の方法により重合させることで、上記(メタ)アクリル重合体を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0089】
上記表面部形成材料等として用いることができる化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族を有する(ジ)ビニル化合物、アルコキシ基を有するシラン化合物等が挙げられる。なかでも、上記表面部形成材料等は、ジビニルベンゼン、又は、シランアルコキシドであることが好ましい上記表面部形成材料は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0090】
上記シランアルコキシドは特に限定されない。内部形成材料である有機化合物と重合できることから、上記シランアルコキシドは、ビニル基を有することが好ましい。ビニル基を有するシランアルコキシドとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0091】
上記表面部形成材料を用いて上記基材粒子を形成する方法としては、例えば、内部形成材料中に表面部形成材料を溶解しておき、反応速度又はSP値差を利用することで相分離させる方法、非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに内部形成材料を最初に膨潤させたのち、後で活性温度の異なるラジカル重合開始剤とともに表面部形成材料を膨潤させて二段階で重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに内部形成材料を最初に膨潤させたのち、後で表面部形成材料を膨潤させて、水との界面でゾルゲル法により表面部形成材料を重縮合させ、その後ラジカル重合により重合する方法等が挙げられる。
【0092】
接続構造体における接続抵抗を効果的に低くし、液晶表示素子における表示品質を効果的に高め、接続構造体における接続不良及び液晶表示素子における表示不良を効果的に抑える観点からは、上記基材粒子は、非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに内部形成材料を最初に膨潤させたのち、後で活性温度の異なるラジカル重合開始剤とともに表面部形成材料を膨潤させて二段階で重合させ、又は、非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに内部形成材料を最初に膨潤させたのち、後で表面部形成材料を膨潤させて、水との界面でゾルゲル法により表面部形成材料を重縮合させ、その後ラジカル重合により重合する方法することにより得られることが好ましい。
【0093】
上記ゾルゲル法の具体的な方法としては、内部形成材料により形成された内部部分、水やアルコール、ケトン等の溶媒、界面活性剤、及び酸性又は塩基性の触媒を含む分散液に、テトラエトキシシラン等のシランアルコキシドを共存させて界面ゾル反応を行う方法等が挙げられる。
【0094】
(導電性粒子)
上記導電性粒子は、上述した基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える。
【0095】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0096】
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電層2とを有する。導電層2は、基材粒子11の表面を被覆している。導電性粒子1は、基材粒子11の表面が導電層2により被覆された被覆粒子である。
【0097】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0098】
図2に示す導電性粒子21は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電層22とを有する。導電層22は、内層である第1の導電層22Aと外層である第2の導電層22Bとを有する。基材粒子11の表面上に、第1の導電層22Aが配置されている。第1の導電層22Aの表面上に、第2の導電層22Bが配置されている。
【0099】
図3に、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を断面図で示す。
【0100】
図3に示す導電性粒子31は、基材粒子11と、導電層32と、複数の芯物質33と、複数の絶縁性物質34とを有する。
【0101】
導電層32は、基材粒子11の表面上に配置されている。導電性粒子31は導電性の表面に、複数の突起31aを有する。導電層32は外表面に、複数の突起32aを有する。このように、上記導電性粒子は、導電性粒子の導電性の表面に突起を有していてもよく、導電層の外表面に突起を有していてもよい。複数の芯物質33が、基材粒子11の表面上に配置されている。複数の芯物質33は導電層32内に埋め込まれている。芯物質33は、突起31a,32aの内側に配置されている。導電層32は、複数の芯物質33を被覆している。複数の芯物質33により導電層32の外表面が隆起されており、突起31a,32aが形成されている。
【0102】
導電性粒子31は、導電層32の外表面上に配置された絶縁性物質34を有する。導電層32の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質34により被覆されている。絶縁性物質34は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、上記導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
【0103】
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、珪素、タングステン、モリブデン及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムが好ましい。
【0104】
導電性粒子1,31のように、上記導電層は、1つの層により形成されていてもよい。導電性粒子21のように、導電層は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電層が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層であることがより好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層が金層である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
【0105】
上記基材粒子の表面上に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0106】
上記導電性粒子の粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは520μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは20μm以下である。導電性粒子の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が十分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。また、導電性粒子の粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子を導電材料の用途に好適に使用可能である。
【0107】
上記導電性粒子の粒径は、導電性粒子が真球状である場合には直径を意味し、導電性粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0108】
上記導電層の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。上記導電層の厚みは、導電層が多層である場合には導電層全体の厚みである。導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、十分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が十分に変形する。
【0109】
上記導電層が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電層の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電層による被覆が均一になり、耐腐食性が十分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、上記最外層が金層である場合に、金層の厚みが薄いほど、コストが低くなる。
【0110】
上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0111】
上記導電性粒子は、導電性の表面に突起を有していてもよい。上記導電性粒子は、上記導電層の外表面に突起を有していてもよい。該突起は複数であることが好ましい。導電層の表面並びに導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子を用いた場合には、電極間に導電性粒子を配置して圧着させることにより、突起により上記酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子の導電層とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を備える場合に、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又はバインダー樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0112】
上記導電性粒子の表面に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、上記芯物質を用いなくてもよい。
【0113】
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えていてもよい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子が上記導電層の表面に突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。上記絶縁性物質は、絶縁性樹脂層又は絶縁性粒子であることが好ましく、絶縁性粒子であることがより好ましい。上記絶縁性粒子は、絶縁性樹脂粒子であることが好ましい。
【0114】
(導電材料)
上記導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電材料は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0115】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0117】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0118】
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
【0119】
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0120】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0121】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、より一層好ましくは40重量%以下、更に好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0122】
(接続構造体及び液晶表示素子)
上述した導電性粒子を用いて、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0123】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、該接続部が上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が単独で用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。上記接続構造体を得るために用いられる上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。
【0124】
上記第1の接続対象部材は、第1の電極を表面に有することが好ましい。上記第2の接続対象部材は、第2の電極を表面に有することが好ましい。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記導電性粒子により電気的に接続されていることが好ましい。
【0125】
図4は、
図1に示す導電性粒子1を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【0126】
図4に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1の接続対象部材52と第2の接続対象部材53とを接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている。
図4では、図示の便宜上、導電性粒子1は略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子21,31などの他の導電性粒子を用いてもよい。
【0127】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0128】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104~4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120~220℃程度である。フレキシブルプリント基板の電極、樹脂フィルム上に配置された電極及びタッチパネルの電極を接続するための上記加圧の圧力は9.8×104~1.0×106Pa程度である。
【0129】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料は、電子部品を接続するための導電材料であることが好ましい。上記導電ペーストはペースト状の導電材料であり、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗工されることが好ましい。
【0130】
上記導電性粒子及び上記導電材料は、タッチパネルにも好適に用いられる。従って、上記接続対象部材は、フレキシブル基板であるか、又は樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることも好ましい。上記接続対象部材は、フレキシブル基板であることが好ましく、樹脂フィルムの表面上に電極が配置された接続対象部材であることが好ましい。上記フレキシブル基板がフレキシブルプリント基板等である場合に、フレキシブル基板は一般に電極を表面に有する。
【0131】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブル基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0132】
また、上記基材粒子は、液晶表示素子用スペーサとして好適に用いられる。すなわち、上記基材粒子は、液晶セルを構成する一対の基板と、該一対の基板間に封入された液晶と、上記一対の基板間に配置された液晶表示素子用スペーサとを備える液晶表示素子を得るために好適に用いられる。上記液晶表示素子用スペーサは、周辺シール剤に含まれていてもよい。
【0133】
図5に、本発明の一実施形態に係る基材粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いた液晶表示素子を断面図で示す。
【0134】
図5に示す液晶表示素子81は、一対の透明ガラス基板82を有する。透明ガラス基板82は、対向する面に絶縁膜(図示せず)を有する。絶縁膜の材料としては、例えば、SiO
2等が挙げられる。透明ガラス基板82における絶縁膜上に透明電極83が形成されている。透明電極83の材料としては、ITO等が挙げられる。透明電極83は、例えば、フォトリソグラフィーによりパターニングして形成可能である。透明ガラス基板82の表面上の透明電極83上に、配向膜84が形成されている。配向膜84の材料としては、ポリイミド等が挙げられている。
【0135】
一対の透明ガラス基板82間には、液晶85が封入されている。一対の透明ガラス基板82間には、複数の基材粒子11が配置されている。基材粒子11は、液晶表示素子用スペーサとして用いられている。複数の基材粒子11により、一対の透明ガラス基板82の間隔が規制されている。一対の透明ガラス基板82の縁部間には、シール剤86が配置されている。シール剤86によって、液晶85の外部への流出が防がれている。シール剤86には、基材粒子11と粒径のみが異なる基材粒子11Aが含まれている。
【0136】
上記液晶表示素子において1mm2あたりの液晶表示素子用スペーサの配置密度は、好ましくは10個/mm2以上、好ましくは1000個/mm2以下である。上記配置密度が10個/mm2以上であると、セルギャップがより一層均一になる。上記配置密度が1000個/mm2以下であると、液晶表示素子のコントラストがより一層良好になる。
【0137】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0138】
(実施例1)
(1)基材粒子の作製
種粒子として平均粒子径0.85μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子3.0gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液120gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0139】
また、内部形成材料として、有機化合物Aとしてイソボルニルアクリレート49gと、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(和光純薬工業社製「V-601」)1.5gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン3.0gと、エタノール40gとをイオン交換水400gに添加し、乳化液Aを調製した。
【0140】
種粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液Aをさらに添加し、4時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物Aを吸収させて、内部形成材料が膨潤した種粒子を含む懸濁液を得た。
【0141】
次に、表面部形成材料として、有機化合物Bとしてジビニルベンゼン(純度96重量%)49gと、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)1.5gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン3.0gと、エタノール40gとをイオン交換水400gに添加し、乳化液Bを調製した。
【0142】
上記懸濁液が入ったセパラブルフラスコに、上記乳化液Bをさらに添加し、4時間撹拌し、内部形成材料が膨潤した種粒子に上記有機化合物Bを吸収させた。
【0143】
その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液360gを添加し、加熱を開始して75℃で5時間、その後85℃で6時間反応させ、平均粒子径3.02μmの基材粒子を得た。
【0144】
(2)導電性粒子の作製
得られた基材粒子を洗浄し、乾燥した。その後、無電解めっき法により、得られた基材粒子の表面に、ニッケル層を形成し、導電性粒子を作製した。なお、ニッケル層の厚さは0.1μmであった。
【0145】
(実施例2)
内部形成材料として、有機化合物Aのイソボルニルアクリレートの添加量を49gから39.2gに変更したこと、並びに表面部形成材料として、有機化合物Bのジビニルベンゼンの添加量を49gから58.8gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0146】
(実施例3)
内部形成材料として、有機化合物Aをイソボルニルアクリレートから、テトラメチロールメタンジメタクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0147】
(実施例4)
表面部形成材料として、有機化合物Bのジビニルベンゼンの添加量を49gから22gに変更したこと、並びに表面部形成材料として、ビニルトリメトキシシラン22gを更に添加したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0148】
(実施例5)
表面部形成材料として、ビニルトリメトキシシランをビニルトリエトキシシランに変更したこと以外は、実施例4と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0149】
(実施例6)
表面部形成材料として、ビニルトリメトキシシランを3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランに変更したこと以外は、実施例4と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0150】
(実施例7)
加熱開始時に25%アンモニア水溶液15ml添加したこと以外は、実施例4と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0151】
(実施例8)
基材粒子の作製において、種粒子として平均粒子径0.85μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子1.1gと、イオン交換水98gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液120gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0152】
また、内部形成材料として、有機化合物Aとしてイソボルニルアクリレート69gと、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(和光純薬工業社製「V-601」)1.75gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン3.7gと、エタノール48gとをイオン交換水480gに添加し、乳化液Aを調製した。
【0153】
種粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液Aをさらに添加し、4時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物Aを吸収させて、内部形成材料が膨潤した種粒子を含む懸濁液を得た。
【0154】
次に、表面部形成材料として、有機化合物Bとしてジビニルベンゼン(純度96重量%)69gと、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)1.75gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン3.7gと、エタノール48gとをイオン交換水480gに添加し、乳化液Bを調製した。
【0155】
上記懸濁液が入ったセパラブルフラスコに、上記乳化液Bをさらに添加し、4時間撹拌し、内部形成材料が膨潤した種粒子に上記有機化合物Bを吸収させた。
【0156】
その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液480gを添加し、加熱を開始して75℃で5時間、その後85℃で6時間反応させ、平均粒子径4.75μmの基材粒子を得た。
【0157】
得られた基材粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性粒子を作製した。
【0158】
(実施例9)
基材粒子の作製において、種粒子として平均粒子径0.85μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子3.0gと、イオン交換水265gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液60gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0159】
また、内部形成材料として、有機化合物Aとしてイソボルニルアクリレート15gと、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(和光純薬工業社製「V-601」)0.4gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン0.8gと、エタノール11gとをイオン交換水105gに添加し、乳化液Aを調製した。
【0160】
種粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液Aをさらに添加し、4時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物Aを吸収させて、内部形成材料が膨潤した種粒子を含む懸濁液を得た。
【0161】
次に、表面部形成材料として、有機化合物Bとしてジビニルベンゼン(純度96重量%)15gと、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)0.4gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン0.8gと、エタノール11gとをイオン交換水105gに添加し、乳化液Bを調製した。
【0162】
上記懸濁液が入ったセパラブルフラスコに、上記乳化液Bをさらに添加し、4時間撹拌し、内部形成材料が膨潤した種粒子に上記有機化合物Bを吸収させた。
【0163】
その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液105gを添加し、加熱を開始して75℃で5時間、その後85℃で6時間反応させ、平均粒子径2.42μmの基材粒子を得た。
【0164】
得られた基材粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして導電性粒子を作製した。
【0165】
(実施例10)
内部形成材料として、有機化合物Aをイソボルニルアクリレート49gから、テトラメチロールメタンジメタクリレート34.3g及びイソボルニルアクリレート14.7gに変更したこと、並びに表面部形成材料として、有機化合物Bをジビニルベンゼン49gから、テトラメチロールメタンジメタクリレート19.6g、ベンジルアクリレート24.5g及びペンタエリスリトールテトラアクリレート4.9gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0166】
(実施例11)
内部形成材料として、有機化合物Aをイソボルニルアクリレート49gから、ジビニルベンゼン42.8g及びスチレン6.1gに変更したこと、表面部形成材料として、有機化合物Bをジビニルベンゼン49gから、ジビニルベンゼン42.8g及びスチレン6.1gに変更したこと、反応条件を、加熱を開始して75℃で5時間、その後85℃で6時間反応の条件から、加熱を開始して80℃で5時間、その後90℃で6時間の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0167】
(実施例12)
内部形成材料として、有機化合物Aをイソボルニルアクリレートからシクロヘキシルメタクリレートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして基材粒子および導電性粒子を作製した。
【0168】
(実施例13)
(1)パラジウム付着工程
実施例1で得られた基材粒子を用意した。得られた基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
【0169】
(2)芯物質付着工程
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
【0170】
(3)無電解ニッケルめっき工程
実施例1と同様にして、基材粒子の表面上に、ニッケル層を形成し、導電性粒子を作製した。なお、ニッケル層の厚さは0.1μmであった。
【0171】
(実施例14)
(1)絶縁性粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N-トリメチル-N-2-メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
【0172】
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
【0173】
実施例1で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
【0174】
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
【0175】
(実施例15)
実施例1で得られた基材粒子を用いて、ニッケル粒子スラリーを使用せずに、めっき浴内に反応によりニッケル芯物質を生成し、生成した芯物質と共に無電解ニッケルめっきを共析出させることで、ニッケル層の外表面に複数の突起を有する導電性粒子を得た。
【0176】
(実施例16)
実施例15の導電性粒子を使用して、実施例14で作製した絶縁性粒子を実施例14と同様にして付着させることで、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
【0177】
(比較例1)
種粒子として平均粒子径1.30μmのポリスチレン粒子48gと、イオン交換水100gと、メタノール342gと、ポリビニルピロリドンの5重量%水溶液6gとを混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌して、ポリスチレン粒子懸濁液を作製した。
【0178】
また、有機化合物Aとしてトリエチレングリコールジメタクリレート100gと、2-エチルヘキシルメタクリレート150gと、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V-65」)3gと、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF-08」)の20%水溶液を12.5gと、メタノール980gとをイオン交換水250gに添加し、乳化液を作製した。
【0179】
ポリスチレン懸濁液が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液を添加し、8時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物A及びBを吸収させた。
【0180】
その後ポリビニルアルコールの10重量%水溶液60gと、イオン交換水250gを添加し、その後、65℃で2時間反応させ、平均粒子径2.85μmの基材粒子を得た。得られた基材粒子を用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を作製した。
【0181】
(比較例2)
種粒子として平均粒子径0.85μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子3.0gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液120gとを、混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0182】
また、有機化合物Aとしてイソボルニルアクリレート49gと、有機化合物Bとしてジビニルベンゼン(純度96重量%)49gと、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)3.0gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン6.0gと、エタノール80gとをイオン交換水800gに添加し、乳化液を調製した。
【0183】
種粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液を2回に分けて添加し、8時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物A及びBを吸収させた。
【0184】
その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液360gを添加し、その後85℃で11時間反応させ、平均粒子径3.33μmの基材粒子を得た。得られた基材粒子を用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を作製した。
【0185】
(比較例3)
有機化合物Bのジビニルベンゼンの添加量を49gから22gに変更したこと、並びに有機化合物A及びBとともにビニルトリメトキシシラン22gを更に添加したこと以外は、比較例2と同様にして基材粒子及び導電性粒子を作製した。
【0186】
(比較例4)
コアの作製:
種粒子として平均粒子径0.85μmのポリスチレン粒子を用意した。該ポリスチレン粒子3.0gと、イオン交換水500gと、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液120gとを、混合し、超音波により分散させた後、セパラブルフラスコに添加し、均一に撹拌した。
【0187】
また、有機化合物Aとしてイソボルニルアクリレート34gと、有機化合物Bとしてジビニルベンゼン(純度96重量%)34gと、過酸化ベンゾイル(日油社製「ナイパーBW」)1.4gと、ラウリル硫酸トリエタノールアミン3.0gと、エタノール40gとをイオン交換水400gに添加し、乳化液を調製した。
【0188】
種粒子としての上記ポリスチレン粒子が添加されたセパラブルフラスコに、上記乳化液を2回に分けて添加し、6時間撹拌し、種粒子に上記有機化合物A及びBを吸収させた。その後、ポリビニルアルコールの5重量%水溶液196gを添加し、その後85℃で9時間反応させ、平均粒子径2.75μmの基材粒子を得た。
【0189】
シェルの形成:
得られた重合体粒子(有機コア)30gと、界面活性剤であるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド6gと、25重量%のアンモニア水溶液24gとを、2-プロパノール540g及び純水20g中に入れ、混合し、重合体粒子の分散液を得た。この分散液に、テトラエトキシシラン67gと、2-プロパノール360gとを添加して、ゾルゲル反応による縮合反応を行った。テトラエトキシシランを重合体粒子の表面に析出させて、シェルを形成し、粒子を得た。得られた粒子を熱水で2回、メタノールで2回洗浄し、乾燥することでコアシェル粒子(基材粒子)を得た。得られたコアシェル粒子の粒径は3.01μmであった。コアの粒径とコアシェル粒子の粒径とから、シェルの厚みは0.13μmと算出された。
【0190】
得られた基材粒子を用いて、実施例1と同様にして導電性粒子を作製した。
【0191】
(評価)
(1)基材粒子の平均粒子径
得られた基材粒子について、粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「Multisizer4」)を用いて、約100000個の粒径を測定し、平均粒子径及び標準偏差を測定した。
【0192】
(2)基材粒子の圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)、並びに圧縮荷重値(10%荷重値及び30%荷重値)
得られた基材粒子の上記圧縮弾性率(10%K値及び30%K値)、並びに上記荷重値(10%荷重値及び30%荷重値)を、23℃の条件で、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」)を用いて測定した。10%K値/30%K値並びに、10%荷重値/30%荷重値を求めた。
【0193】
(3)基材粒子の圧縮回復率及び破壊変位率、並びに、基材粒子の圧縮試験における屈曲部の有無
基材粒子の上記圧縮回復率及び破壊変位率、並びに、基材粒子の圧縮試験における屈曲部の有無を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」)を用いて測定した。
【0194】
(4)コアシェル界面および粒子内部組成比
得られた基材粒子の超薄切片試料を作製し、四酸化オスミウムで染色を行った。染色後の基材粒子を透過型電子顕微鏡で観察を行った。内部組成比は粒子中心部のコントラストおよび半径の1/2部のコントラスト、表層部のコントラストの比から評価を行った。
【0195】
(5)接続抵抗
接続構造体の作製:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成イーマテリアルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
【0196】
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
【0197】
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)が設けられたガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極のほぼ中央部へ貼り付けた。次いで同じアルミニウム電極が設けられた2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を電極同士が重なるように、位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、40N、180℃、及び15秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。
【0198】
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。
【0199】
[接続抵抗の評価基準]
○○:接続抵抗が3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、4.0Ω以下
△:接続抵抗が4.0Ωを超え、5.0Ω以下
×:接続抵抗が5.0Ωを超える
【0200】
(6)スプリングバック防止性
上記(5)接続抵抗の評価で得られた接続構造体を85℃及び85%(高温高湿下)で100時間放置した。放置後に、スプリングバックに伴う接続抵抗の上昇を評価した。放置後の接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。放置後の接続構造体の接続抵抗から、接続構造体の耐衝撃性を下記の基準で判定した。なお、接続抵抗が上昇している場合に、スプリングバックが大きく生じていることを確認した。
【0201】
[接続構造体の耐衝撃性の評価基準]
○○:放置前の接続抵抗に対して、放置後の接続抵抗の上昇率が15%未満
○:放置前の接続抵抗に対して、放置後の接続抵抗の上昇率が15%以上、30%未満 △:放置前の接続抵抗に対して、放置後の接続抵抗の上昇率が30%以上、50%未満 ×:放置前の接続抵抗に対して、放置後の接続抵抗の上昇率が50%以上
【0202】
基材粒子の詳細及び結果を下記の表1,2に示す。なお、上記(5)接続抵抗の評価において、評価結果が悪いほど、基材粒子の表面部分の破損及び飛散が多く見られることを確認した。
【0203】
【0204】
【0205】
(7)液晶表示素子用スペーサとしての使用例
STN型液晶表示素子の作製:
イソプロピルアルコール70重量部と水30重量部とを含む分散媒に、得られるスペーサ分散液100重量%中で実施例1~12の加熱前の液晶表示素子用スペーサ(基材粒子)を固形分濃度が2重量%となるように添加し、撹拌し、液晶表示素子用スペーサ分散液を得た。
【0206】
一対の透明ガラス板(縦50mm、横50mm、厚さ0.4mm)の一面に、CVD法によりSiO2膜を蒸着した後、SiO2膜の表面全体にスパッタリングによりITO膜を形成した。得られたITO膜付きガラス基板に、スピンコート法によりポリイミド配向膜組成物(日産化学社製、SE3510)を塗工し、280℃で90分間焼成することによりポリイミド配向膜を形成した。配向膜にラビング処理を施した後、一方の基板の配向膜側に、液晶表示素子用スペーサを1mm2当たり100個となるように湿式散布した。他方の基板の周辺にシール剤を形成した後、この基板とスペーサを散布した基板とをラビング方向が90°になるように対向配置させ、両者を貼り合わせた。その後、160℃で90分間処理してシール剤を硬化させて、空セル(液晶の入ってない画面)を得た。得られた空セルに、カイラル剤入りのSTN型液晶(DIC社製)を注入し、次に注入口を封止剤で塞いだ後、120℃で30分間熱処理してSTN型液晶表示素子を得た。
【0207】
得られた液晶表示素子では、実施例1~12の加熱前の液晶表示素子用スペーサにより基板間の間隔が良好に規制されていた。また、液晶表示素子は、良好な表示品質を示した。また、実施例1~12の液晶表示素子用スペーサを用いた液晶表示素子を75℃で168時間放置した結果、スプリングバックが抑えられており、液晶表示素子の表示品質は良好に維持されていた。なお、液晶表示素子の周辺シール剤に、実施例1~12の基材粒子を液晶表示素子用スペーサとして用いた場合でも、得られた液晶表示素子の表示品質は良好であった。なお、この液晶表示素子の評価において、表示品質が良好であるのは、基材粒子の表面部分の破損及び飛散が抑えられているためであることを確認した。
【符号の説明】
【0208】
1…導電性粒子
2…導電層
11…基材粒子
11A…基材粒子
21…導電性粒子
22…導電層
22A…第1の導電層
22B…第2の導電層
31…導電性粒子
31a…突起
32…導電層
32a…突起
33…芯物質
34…絶縁性物質
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部 81…液晶表示素子
82…透明ガラス基板
83…透明電極
84…配向膜
85…液晶
86…シール剤