(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】携帯型注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220203BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20220203BHJP
G10L 25/51 20130101ALI20220203BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220203BHJP
G05B 23/02 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61M5/172
G10L25/51
H04R3/00 310
G05B23/02 302Z
(21)【出願番号】P 2019503962
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2017069999
(87)【国際公開番号】W WO2018029162
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリードリ、クルト
(72)【発明者】
【氏名】デッパート、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ランバートソン、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェーテレ、クリスチャン
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/046396(WO,A1)
【文献】米国特許第04985015(US,A)
【文献】特表2016-518157(JP,A)
【文献】特表2015-505258(JP,A)
【文献】特開2015-054015(JP,A)
【文献】国際公開第2015/187793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/172
G10L 25/51
H04R 3/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)制御ユニット(11)と、
b)電気音響変換器(12)と、
c)追加の電気音響変換器(12a)と
を含む
、携帯型注入装置(1)であって、
前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)はそれぞれ、ノイズエミッタおよびノイズレシーバとして動作可能であり、
前記制御ユニット(11)は、
前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作を、少なくとも、
・前記追加の電気音響変換器(12a)をノイズエミッタとして動作させ、かつ
・前記電気音響変換器(12)をノイズレシーバとして動作させ、前記電気音響変換器(12)により受信される受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の状態を判定する、第1の動作、
および、
・前記電気音響変換器(12)をノイズエミッタとして動作させ
、かつ
・前記
追加の電気音響変換器(12a)をノイズレシーバとして動作させ、前記
追加の電気音響変換器(12a)により受信される
追加の受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の
追加の状態を判定する
、第2の動作
から択一的に選択可能に構成される、携帯型注入装置(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(11)は、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作を切り替えるためのスイッチモジュール(111)を備える、請求項1記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(11)は、
前記第1の動作において、前記追加の電気音響変換器(12a)を、ノイズエミッタとして、追加の放出ノイズを発するように動作させながら、前記電気音響変換器(12)をノイズレシーバとして同時に動作させるように構成され、
前記受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の
前記状態を判定することは、前記受信ノイズが前記追加の放出ノイズに一致するかどうか判定することを含む、請求項
1または2記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項4】
前記制御ユニット(11)は、
前記第2の動作において、前記追加の電気音響変換器(12a)をノイズレシーバとして動作させ、前記追加の電気音響変換器(12a)によって受信される
前記追加の受信ノイズから、前記携帯型注入装置(1)の
前記追加の状態を判定するように構成され、
前記制御ユニット(11)は、前記追加の電気音響変換器(12a)をノイズレシーバとして動作させながら、前記電気音響変換器(12)をノイズエミッタとして、放出ノイズを発するように同時に動作させるようにさらに構成され、前記携帯型注入装置(1)の前記追加の状態を判定することは、前記追加の受信ノイズが前記放出ノイズに一致するかどうかを判定することを含む、請求項
1~3のいずれか1項に記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項5】
前記制御ユニットは、
前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作を、前記第1の動作および前記第2の動作に加え、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を音響ノイズエミッタとして同時に動作させ、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を共通して作動させる
、第3の動作からさらに選択可能に構成される、請求項
1~4のいずれか1項に記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(11)は、
前記第3の動作において、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を同調的に作動させるように構成される、請求項5記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項7】
a)制御ユニット(11)と、
b)電気音響変換器(12)と
を含む、携帯型注入装置(1)であって、
前記制御ユニット(11)は、択一的に、
・前記電気音響変換器(12)をノイズエミッタとして動作させるか、
または、
・前記電気音響変換器(12)をノイズレシーバとして動作させ、前記電気音響変換器(12)により受信される受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の状態を判定する
ように構成され、
前記制御ユニット(11)は、薬剤投与を制御するように構成され、それによって前記携帯型注入装置(1)は動作ノイズを発し、前記携帯型注入装置(1)の動作状態を判定することは、前記動作ノイズを評価することを含
み、
前記動作ノイズは、バルブ切り替えノイズを含む、携帯型注入装置(1)。
【請求項8】
前記動作ノイズを評価することは、
前記動作ノイズが
、予測される動作ノイズに一致するかどうかを判定することを含む、請求項7記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項9】
前記動作ノイズを評価することは、前記動作ノイズが、注入路の流体妨害物の存在を示すかどうかを判定することを含む、請求項7または8記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項10】
前記動作ノイズを評価することは、前記動作ノイズが
、欠陥の存在を示すかどうかを判定することを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項11】
前記携帯型注入装置(1)は、電気駆動装置(14)を含み、前記動作ノイズは、前記電気駆動装置(14)によって放出される駆動ノイズを含む、請求項7~10のいずれか1項に記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項12】
前記携帯型注入装置(1)の前記状態を判定することは、機械的衝撃の発生を検出することを含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の携帯型注入装置(1)。
【請求項13】
携帯型注入装置(1)の一部である電気音響変換器(12)
および追加の電気音響変換器(12a)を動作させる方法であって、
前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)はそれぞれ、ノイズエミッタおよびノイズレシーバとして動作可能であり、
前記方法は、
少なくとも、
前記追加の電気音響変換器(12a)を、追加の放出ノイズを発するように、ノイズエミッタとして動作させ、かつ、
前記電気音響変換器(12)をノイズレシーバとして動作させ、前記電気音響変換器(12)によって受信される受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の状態を判定する、第1の動作、
および、
前記電気音響変換器(12)を、放出ノイズを発するように、ノイズエミッタとして動作させ
、かつ、
前記
追加の電気音響変換器(12a)をノイズレシーバとして動作させ、前記
追加の電気音響変換器(12a)によって受信される
追加の受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の
追加の状態を判定する
第2の動作
から前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作を選択することを含む、方法。
【請求項14】
前記第1の動作において、前記受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の前記状態を判定することは、前記受信ノイズが、前記追加の電気音響変換器(12a)により放出される、
前記追加の放出ノイズに一致するかどうかを判定することを含む、請求項
13記載の方法。
【請求項15】
前記第2の動作において、前記追加の受信ノイズから前記携帯型注入装置(1)の前記追加の状態を判定することが、前記追加の受信ノイズが、前記電気音響変換器(12)により放出される、前記放出ノイズに一致するかどうかを判定することを含む、請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記
電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作は、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を、音響ノイズエミッタとして同時に動作させ、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を共通に作動させる
、第3の動作をさらに含み、
前記方法は、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の動作を、少なくとも、前記第1の動作および前記第2の動作に加え、前記第3の動作から選択することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、
前記第3の動作において、前記電気音響変換器(12)および前記追加の電気音響変換器(12a)の両方を同調的に作動させることを含む、請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気音響変換器を含む携帯型注入装置の分野、および携帯型注入装置の電気音響変換器を動作させる方法に関する。携帯型注入装置は、多くの療法、特に、インスリン持続皮下注入(CSII)による糖尿病の治療によく使用される。
【背景技術】
【0002】
携帯型注入装置は、長年、糖尿病の療法、およびある特定の疼痛治療またはがん治療など、略連続的な薬剤注入を伴うさらなる療法において知られている。今日の携帯型注入装置は、たとえば、典型的にはズボンのポケット内に収まるようにサイズ決めされる、および/または直接かつ典型的には粘着してユーザの体に付着されるように設計される小型のコンピュータ化された装置である。装置は、実質的に昼夜連続的に持ち運ばれ、典型的に、時間により変化する基礎スケジュール、および要求に応じた所望の量の薬剤ボルに従い、略連続的に薬剤を投与するように設計される。
【発明の概要】
【0003】
CSIIにおいて注入されるインスリン製剤、および注入され得る他の典型的な薬剤は、極めて重大であり、精密な投薬を必要とするため、安全性ならびに危険状態(たとえば流体妨害物、空の薬剤リザーバ、または漏洩)および装置の欠陥の検出は重要度が高い。したがって、最新式の携帯型注入装置は、典型的に、多数のセンサ、ならびに正常動作の監視、および試験または検査手順の実行のための安全回路およびソフトウェア/ファームウェア手順を含む。さらに、携帯型注入装置は、典型的に、一般的なユーザフィードバックを提供するために、特に、ユーザの注意を必要とする状況において警報または警告を提供するために、音響式インジケータ、たとえばブザーを、および多くの場合、触覚式表示器、たとえばページャ型バイブレータを含む。
【0004】
しかし、快適性および行動の自由のために、小さいサイズおよび重量の重要性が高く、またより高まっているため、センサおよび安全回路が利用可能なスペースはごく限られている。一般的に、典型的な治療コストは高額であるため、装置のコストもまた考慮すべき点であり、構成要素の数もそれに応じて少なくするべきである。
【0005】
国際公開第2004/110528号は、手動または児童によるノイズ分析を含む、装置の様々な欠陥および/または危険な状況を検出するためのマイクの使用を開示している。
【0006】
欧州特許出願公開第0519765号明細書は、埋込型注入ポンプにより生成される音響信号を取得し、故障検出のために信号を評価するためのピエゾセンサの使用を開示している。
【0007】
米国特許第4985015号明細書は、動作中にピストンポンプによって生成される特徴的なノイズが、注入装置の監視および制御のために使用される、ピストンポンプを備える埋込型注入装置を開示している。
【0008】
欧州特許出願公開第0519756号明細書は、埋込型注入装置の動作を判定するために、聴診器の使用を開示している。
【0009】
この背景に基づき、携帯型注入装置、特に、効率的な構成要素の使用に関して技術水準を向上させることが、本開示の全体的な目的である。特定の実施形態の、特有の追加の利点を、以下において、本明細書の進行と共に説明する。一般的に携帯型注入装置中に音響式インジケータとして存在する電気音響変換器が、有利に、通常動作中および/または特定の状況下で、携帯型注入装置によって生成される音響信号を取得するために、付加的に使用されてもよいという洞察に基づき、目標は達成される。
【0010】
一般的な方法では、全体的な目的は、独立請求項の主題によって達成される。追加の特有の利点は、従属請求項、および全体としての本開示により定義される種々の実施形態により達成される。
【0011】
一実施形態では、全体的な目的は、制御ユニットおよび電気音響変換器を含む携帯型注入装置により達成される。制御ユニットは、電気音響変換器をノイズエミッタとして動作させるように構成される。制御ユニットは、電気音響変換器をノイズレシーバとして動作させ、電気音響変換器により受信される受信ノイズから携帯型注入装置の状態を判定するようにさらに構成される。ノイズエミッタおよびノイズレシーバとしての変換器の動作は、典型的には択一であり、変換器は、ノイズエミッタ、または代替的にノイズレシーバのいずれかとして動作する。しかし、変換器および/または以下でさらに説明する追加の変換器を、ノイズエミッタおよびノイズレシーバとして同時に動作させることも可能である。
【0012】
判定は、周波数スペクトルの概形などの質的な面、ならびに受信した信号の振幅および/または強度、特有のスペクトル成分の振幅など量的な面を含んでもよい。
【0013】
そのような装置では、電気音響変換器は二重の目的を果たす。ノイズエミッタとして動作される場合、電気音響変換器は、音響式の指示、および、特に音響警報をデバイスのユーザに提供するために、音響式インジケータ(拡声器、ブザー)としての役割を果たす。ノイズレシーバとして動作される場合、変換器は、受信ノイズを取得するマイクとして機能し、受信ノイズはその後に評価される。ノイズおよび評価手順の種々の特定の例を、以下においてさらに説明する。以下でさらに説明するように、変換器をノイズレシーバとして動作させることは、携帯型注入装置またはその構成要素の正常動作を試験または検証をする状況においては特に好ましい。
【0014】
携帯型注入装置は、体外装置であり、特に、既に説明され、また一般に当技術で知られる、CSIIによる糖尿病治療に使用される装置であってもよい。
【0015】
本明細書においては、「ノイズ」という表現は、音波、典型的には、少なくとも部分的に可聴スペクトルの音波を有する音響信号を指す。概して、音響信号、ノイズおよび音は同意語として理解される。ノイズは、ユーザフィードバック、警報などを提供するために生成される警報信号などの、意図的に生成されたノイズまたは音響信号であってもよい。しかし、携帯型注入装置またはその構成要素の動作により避けられない、駆動ノイズなどの動作ノイズであってもよい。
【0016】
ユーザフィードバックまたは警報を提供するために生成される音響信号は、有利には、たとえば、一定かつ既知の周波の音、周波数が交互になる音響パターン、振幅が増大および/または縮小する音響パターンなど、明確に定義された音響パターンを有する。
【0017】
一実施形態では、携帯型注入装置は、電気音響変換器とは別個である、追加の電気音響変換器を含んでもよい。ここでは、制御ユニットは、追加の電気音響変換器を追加のノイズエミッタとして動作させるように構成されてもよい。そのような追加の電気音響変換器は、冗長性を目的として、および/または以下でさらに説明するように音レベルを上昇させて音響警報を提供するために特に有利である。
【0018】
追加の電気音響変換器を備える実施形態では、制御ユニットは、追加の電気音響変換器を、ノイズエミッタとして、追加の放出ノイズを発するように動作させながら、電気音響変換器をノイズレシーバとして同時に動作させるように構成される。受信ノイズから携帯型注入装置の状態を判定することは、この種類の実施形態においては、受信ノイズが追加の放出ノイズに一致するかどうか判定することを含む。
【0019】
そのような実施形態では、ブザーまたは拡声器として動作している追加の変換器の正常動作は、変換器をマイクと使用して検査される。ノイズが受信されない場合、または受信ノイズが、予測される追加の放出ノイズに一致しない場合、警告または警報が有利に提供される。
【0020】
ブザーまたは拡声器の正常動作を、放出ノイズ信号を取得し、評価することによって検査することは、すべての面、特に、純粋な電気的試験または検査からは明白ではない、たとえば、ノイズの放出に悪影響を及ぼす埃または変換器の破損した固定部など、潜在的な問題または欠陥を考慮するため、純粋な電気的試験よりも有利である。対照的に、最新技術による典型的な装置では、電気音響変換器(ブザーまたは拡声器)は、電気インピーダンス測定などの技術を用いて電気的に検査されるのみである。
【0021】
さらに、放出されるノイズと受信ノイズとの誤差は、変換器の離調を引き起こし得るハウジングの破損など、装置のさらなる欠陥を示してもよい。
【0022】
受信ノイズが、放出ノイズに一致するかどうかを判定することは、有利には、周波数および/または受信ノイズの振幅を評価することを含む。正常動作において予測される受信ノイズは、音響パターン、特に放出ノイズの音響パターンの振幅および/または周波数パターンにより判定される。
【0023】
変換器および追加の変換器を備える実施形態では、有利には、変換器および追加の変換器は、追加の変換器により放出されるノイズが変換器によって受信される、および/または変換器により放出されるノイズが追加の変換器によって受信されるように、構造伝達および/または空気伝達音響結合による音響結合で配置される。概して、良好な音響結合が有利である。このために、変換器および追加の変換器は、たとえば、接近し、並んで互いに隣り合って配置されてもよい。
【0024】
多くの場合、ブザー/拡声器としての携帯型注入装置など、携帯型デバイス内に存在する変換器は、円盤状の圧電変換器として実現される。円盤状の変換器および追加の円盤状の変換器を備える特に有利な実施形態では、変換器および追加の変換器は、スタックとして配置され、有利には、互いに対して整列される。典型的には、円盤状の変換器の両方は、同一の設計である。その結果のスタックは、単一の変換器の設置面積、および単一の変換器の2倍の高さを有する。好ましくは、変換器および追加の変換器は、接着結合によって機械的かつ音響的に結合される。
【0025】
追加の電気音響変換器を備える実施形態では、制御ユニットは、追加の電気音響変換器を、追加のノイズレシーバとして動作するように制御し、追加の電気音響変換器によって受信された追加の受信ノイズから、携帯型注入装置の追加の状態を判定するように構成されてもよい。有利には、そのような実施形態では、制御ユニットは、追加の電気音響変換器をノイズレシーバとして動作させながら、電気音響変換器をノイズエミッタとして、ノイズ信号を発するように動作させるようにさらに構成される。ここでは、携帯型注入装置の追加の状態を判定することは、追加の受信ノイズが、電気音響変換器によって放出ノイズに一致するかどうかを判定することを含んでもよい。
【0026】
そのような実施形態の場合、ブザーまたは拡声器としての電気音響変換器の正常動作は、既に説明した実施形態と類似の方法で、追加の電気音響変換器をマイクとして使用して音響的に検査されてもよい。
【0027】
追加の電気音響変換器を備える実施形態では、制御ユニットは、電気音響変換器および追加の電気音響変換器の両方を音響ノイズエミッタとして同時に動作させるように構成されてもよい。ここでは、制御ユニットは、電気音響変換器および追加の電気音響変換器の両方を共通して、特に同調的に作動させるようにさらに構成されてもよい。この種類の実施形態は、単一のブザーまたは拡声器と比較してより高い音響レベルで、音響式の指示、特に警報の提供を可能にする。典型的に携帯型注入装置のための場合、ノイズ放出要素としてのブザーまたは拡声器は、ケース内に配置される必要があり、その結果、ノイズ放出状況が非理想的となることによって、警報の音響レベルは、一般的に、特に、防水または水密の装置にとってクリティカルな問題であるため、これは特に有利である。
【0028】
一実施形態では、制御ユニットは、薬剤投与を制御するように構成され、それによって携帯型注入装置は動作ノイズを発する。ここでは、携帯型注入装置の動作状態を判定することは、動作ノイズを評価することを含んでもよい。動作ノイズは、駆動装置(モータ、歯車、軸受け、ねじ状のスピンドルなど)により放出されるノイズであり、携帯型注入装置に、その設計に応じて特有である。動作ノイズを評価することは、一般に当技術で知られる、音響信号を評価するための技術およびアルゴリズム、たとえば、フィルタリング(たとえば高域、低域およびバンドパスフィルタリング)、平均化高速フーリエ変換(FFT)、ピーク検出、パターン認識などを含んでもよい。信号状況および評価は、ハードウェア、ならびに/または任意の所望の組み合わせで制御ユニットのマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラ上で実行されるソフトウェアおよびファームウェアのそれぞれによって行われてもよい。
【0029】
動作ノイズを評価することを含む実施形態では、評価することは、駆動ノイズが、予測される動作ノイズに一致するかどうかを判定することを含んでもよい。有利には、携帯型注入装置は、受信ノイズが予測される動作ノイズに一致および適合しない場合、警告および/または警報を生成するように構成される。
【0030】
動作ノイズを評価することを含む実施形態では、評価することは、動作ノイズが欠陥の存在を示すかどうかを判定することを含んでもよい。
【0031】
動作ノイズを評価することを含む実施形態では、携帯型注入装置は電気駆動装置を含み、動作ノイズは電気駆動装置によって放出される駆動ノイズを含んでもよい。
【0032】
動作ノイズを評価することは、薬剤投与中の、駆動ノイズにより反映される駆動装置の動作時間を評価し、判定された動作時間を、投与される薬剤量に従う予測される動作時間と比較することを含んでもよい。このようにして、欠陥により起こり得る、誤って不十分な動作が判定されてもよい。さらに、意図されず持続的に動作する駆動装置と関連のある欠陥が検出されてもよい。そのような欠陥は、大量の、恐らくはリザーバの内容物全体の薬剤の制御されていない投与を引き起こし得るため、特に重大である。
【0033】
動作ノイズの評価は、駆動装置の動作中の、動作ノイズ、特に駆動ノイズにおける予期されない中断を検出することを含んでもよい。このようにして、緩い接触が有利に検出され得る。
【0034】
動作ノイズの評価は、動作ノイズ、特に駆動ノイズから、駆動装置の回転方向を判定することをさらに含んでもよい。回転方向は、放出駆動ノイズにおける差異に基づいて判定され得る。
【0035】
動作ノイズの評価は、駆動装置がステッパモータまたはブラシレス直流モータを含む場合、ステップロスの発生の検出を含んでもよい。ステップロスは、機械的過負荷により引き起こされてもよく、または装置の欠陥を示すものであってもよい。
【0036】
動作ノイズ、特に駆動ノイズの評価は、動作ノイズと追加のセンサ信号との関係を評価することを含んでもよく、追加のセンサ信号は、駆動センサによって生成され、関係が予測される関係に適合するかどうかを判定する。駆動装置センサは、特に、駆動軸に結合され、駆動装置の管理および/または制御に使用される光学および/または磁気回転式エンコーダなどのエンコーダであってもよい。携帯型注入装置が正常に動作する場合、動作ノイズおよび追加のセンサ信号は適合する。
【0037】
動作ノイズを評価することを含む実施形態では、評価することは、動作ノイズが、注入路の流体妨害物の存在を示すかどうかを判定することを含んでもよい。
【0038】
動作ノイズを評価することを含む実施形態では、動作ノイズは、バルブ切り替えノイズを含む。
【0039】
一実施形態では、携帯型注入装置の動作状態を判定することは、機械的衝撃の発生を検出することを含む。
【0040】
一実施形態では、方法は、受信ノイズおよび/または追加の受信ノイズを、携帯型注入装置の記憶装置および/または外部装置に記録することを含む。記録された信号は、故障解析の目的で使用されてもよい。さらに、制御ユニットは、受信ノイズおよび/または追加の受信したノイズを、記憶装置に保存されている、前に受信ノイズと比較するように構成されてもよい。このようにして、過度の摩耗を示すものとしての動作音、特に駆動ノイズの長期変化が検出されてもよい。
【0041】
一実施形態では、携帯型注入装置は、動作中、少なくとも1つの、特定目的のための特徴的なノイズ信号、たとえば、駆動装置の正常動作に関連するクリックノイズを生成するように設計される駆動装置を含む。受信ノイズおよび/または追加の受信ノイズ信号を評価することは、特定目的のための特徴的なノイズ信号の有無を判定することを含んでもよい。有利には、特定目的のための特徴的なノイズが検出されない場合、警報が提供される。
【0042】
一実施形態では、携帯型注入装置は、ページャ型バイブレータなどの触覚式表示器、を含む。制御ユニットは、触覚式表示器を作動させ、電気音響変換器をノイズレシーバとして同時に動作させるように構成されてもよく、受信ノイズから携帯型注入装置の状態を判定することは、受信ノイズが、触覚式表示器の動作の結果、受信されると予測されるノイズに一致するかどうかを判定することを含む。この種類の実施形態の場合、触覚式表示器の正常動作は、電気音響変換器および/または追加の電気音響変換器と同じ方法で検査されてもよい。この種類の実施形態は、典型的な触覚式表示器、特にページャ型バイブレータもまた、マイクとして動作する電気音響変換器によって受信されてもよいノイズを発するということに依存する。
【0043】
さらなる態様においては、携帯型注入システムを開示する。携帯型注入システムは、携帯型注入装置および遠隔装置を含む。携帯型注入装置は、制御ユニット、および制御ユニットの制御下で動作可能なブザーまたは拡声器などの電気音響ノイズエミッタを含む。遠隔装置は、有利には、血糖値計、遠隔制御装置を任意で含んでもよい糖尿病管理装置のような携帯デバイス、または汎用のデバイス、たとえばスマートフォンである。遠隔装置は、ノイズレシーバ、たとえばマイクを含む。携帯型注入装置および遠隔装置は、無線通信リンク、たとえば典型的には、Bluetooth(登録商標)規格に基づく、または独自規格に従い動作するRF通信リンクを介して動作可能に結合するように構成される。携帯型注入装置の制御ユニットは、ノイズエミッタを作動させてノイズを放出させ、対応するノイズ放出通知を、通信リンクを介して遠隔装置へとさらに送信するように構成される。遠隔装置は、ノイズ放出通知の受信の際に電気音響レシーバを作動させるように構成され、ノイズレシーバによって受信された受信ノイズが、ノイズエミッタによって放出させられると予測される放出ノイズに一致するかどうかを判定するようにさらに構成される。有利には、遠隔装置は、受信ノイズが予測される放出ノイズに一致しない場合に警報を提供するようにさらに構成される。
【0044】
携帯型注入装置のノイズエミッタは、専用のノイズエミッタ(ブザー、拡声器)であってもよく、またはノイズレシーバとしても動作可能である電気音響変換器であってもよい。同様に、遠隔装置のノイズレシーバは、専用のノイズレシーバ(マイク)であってもよく、またはノイズエミッタとしても動作可能である電気音響変換器であってもよい。
【0045】
この種類の携帯型注入システムの場合、携帯型注入装置のノイズエミッタは、例示的な実施形態の文脈において既に説明したもの、および/または以下でさらに説明するものと略同じ方法で、および同じ方法を適用して、音響的に検査され得る。しかし、放出ノイズは、遠隔装置のノイズレシーバによって受信される。
【0046】
さらなる態様では、全体の目的は、携帯型注入装置の一部である電気音響変換器を動作させる方法によって達成される。方法は、電気音響変換器を、放出ノイズを発するように、ノイズエミッタとして動作させることを含む。方法は、電気音響変換器をノイズレシーバとして動作させ、電気音響変換器によって受信された受信ノイズから携帯型注入装置の機能状態を判定することをさらに含む。ノイズエミッタおよびノイズ変換器としての動作は、典型的には択一的であり、変換器は、ある時点において、ノイズエミッタまたはノイズレシーバとして動作させられてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、変換器は、ノイズエミッタおよびノイズレシーバとして同時に動作させられてもよい。
【0047】
一実施形態では、方法は、電気音響変換器とは別個である追加の電気音響変換器をノイズエミッタとして動作させ、電気音響変換器をノイズレシーバとして同時に動作させることを含んでもよい。ここでは、受信ノイズから携帯型注入装置の状態を判定することは、受信ノイズが、追加の電気音響変換器により放出された、追加の放出ノイズに一致するかどうかを判定することを含んでもよい。
【0048】
一実施形態では、方法は、電気音響変換器および追加の電気音響変換器の両方を、音響ノイズエミッタとして同時に動作させることを含んでもよい。ここでは、方法は、電気音響変換器および追加の電気音響変換器の両方を共通に、特に同調的に作動させることをさらに含んでもよい。
【0049】
携帯型注入装置および方法のさらなる態様および特定の実施形態を、例示的な実施形態の文脈で以下においてさらに説明する。
【0050】
さらなる態様では、全体的な目的は、動作を管理する、および/または携帯型注入装置を監視するための方法により達成される。方法は、電気音響変換器を、既に説明したように、および/または以下でさらに説明するように動作させるための方法を含んでもよい。方法は、判定された動作状態が、欠陥および/または誤動作および/または危険状態を示す場合に、警告を提供することをさらに含んでもよい。
【0051】
本開示による携帯型注入装置の実施形態は、特に、本開示による方法の対応する実施形態を実行するように設計されてもよい。同様に、本開示による方法は、特に、本開示による携帯型注入装置を用いて、および/または携帯型注入装置によって実行されてもよい。したがって、方法の特定の実施形態の開示は、同時に、携帯型注入装置の対応する実施形態を開示する。同様に、携帯型注入装置の特定の実施形態の開示は、同時に、対応する方法の実施形態を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図2】携帯型注入装置のさらなる例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下において、先ず
図1を参照する。
図1は、本開示による携帯型注入装置1の例示的な実施形態を概略図で示す。
【0054】
携帯型注入装置1は、典型的には1つまたは複数のマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラおよびこの技術で知られる補助回路を含む、電子回路により実現される制御ユニット11を含む。携帯型注入装置1は、典型的には、たとえば一般にこの技術で知られる直流モータ、ステッパモータまたはブラシレス直流モータなど、モータ14に基づく電気駆動装置をさらに含む。モータ14は、スピンドル駆動ユニット15と動作可能に連結される。モータ14およびスピンドル駆動ユニット15は、組み合わされて、携帯型注入装置1の駆動チェーン(drive chain 駆動連鎖)を形成する。動作構成において、スピンドル駆動ユニット15は、液体薬剤カートリッジ21のピストンと動作可能に連結される。制御された方法でカートリッジ21のピストンを変位させることによって、薬剤は、制御ユニット11の制御下で、注入管22および注入カニューレ23を介してカートリッジ21から排出される。携帯型注入装置1は、制御ユニット11と動作可能に連結された電気音響変換器12をさらに含む。さらに、携帯型注入装置1は、制御ユニット11と動作可能に連結され、制御ユニット11によって制御されるページャ型バイブレータ13として実現される触覚式表示器を含む。
【0055】
この点で、携帯型注入装置1は、この技術において広く知られているように設計され、たとえば、糖尿病の治療に使用される携帯型注入装置の典型的な機能を提供する。特に、携帯型注入装置1は、たとえば、実質的に昼夜連続で時間により変化する基礎スケジュールに従う、液体インスリン製剤の液体薬剤の投与のため、および要求に応じた望ましいサイズの薬剤ボルの追加の投与のために設計される。なお、携帯型注入装置1は、電源、ユーザコマンドを入力するための入力ユニット、ディスプレイ、1つまたは複数の通信インターフェース、モータ14の一部としての、またはモータ14と動作可能に連結された光学および/または回転式エンコーダ、および駆動チェーンによりピストンに加えられる力を測定する力センサなどの追加の構成要素を含んでもよい。対応する構成要素および装置は、この技術において一般的に知られている。
【0056】
携帯型注入装置1は、動作状態において、その構成要素を内包する、典型的にはカートリッジ21を含む、ハウジング10をさらに含む。
【0057】
制御ユニット11は、すでに説明した薬剤投与のためのモータ14を含む、携帯型注入装置1の動作全体を制御する。制御ユニット11は、変換器12、および以下において説明するような、関連する構成要素の動作をさらに制御する。
【0058】
変換器12の動作を制御するために、制御ユニット11は、スイッチモジュール111、ノイズ生成モジュール112および評価モジュール113を含む。なお、
図1および以下の図面に示される機能モジュールを分離しているのは、読者の理解の手助けのためになされたものであり、概して例示である。携帯型注入装置1、特に制御ユニット11の一実施形態では、多数の機能モジュールは、完全に、または部分的に、互いと一体に実現されてもよく、さらに、任意の所望の組み合わせのハードウェアおよび/またはソフトウェア/ファームウェアによって実現されてもよい。
【0059】
変換器12は例示的には圧電変換器として実現されるが、代替的に、異なる設計であってもよく、たとえば、電気力学的変換器として実現されてもよい。変換器12は、ノイズエミッタ(スピーカー、ブザー)およびノイズレシーバ(マイク)の両方として動作可能である。
【0060】
ノイズエミッタとして動作する場合、スイッチモジュール111は、変換器12を、電動ドライバ回路としてのノイズ生成モジュール112と動作可能に接続させる。ノイズエミッタとして動作する場合、変換器12は、音響式のユーザフィードバックを提供する、ならびに/または、携帯型注入装置1の欠陥、注入管22および/または注入カニューレ23の詰まり(閉塞)、カートリッジ21が空になるなど、ユーザに特別の注意および/もしくは行動を要求する。状況を警告するための音響式インジケータとして機能する追加的および/または代替的に、ページャ型バイブレータ13が、音響変換器12と同じ方法で使用される。有利には、電気音響変換器12および/またはページャ型バイブレータ13のいずれか、または両方が、重大でない表示および/またはユーザフィードバックを提供するために使用されてもよく、一方で、電気音響変換器12およびページャ型バイブレータ13の両方は、ユーザの即座の注意を必要とする重大な状況の場合に制御ユニット11により作動させられる。
【0061】
ノイズレシーバとして動作する場合、スイッチモジュール111は、電気音響変換器12を評価モジュール113と動作可能に接続させ、電気音響変換器を介して受信される信号は、要求に応じて処理および/または条件付け、たとえば、フィルタリング、増幅、および/またはアナログからデジタルに変換されてもよく、そして評価される。
【0062】
ノイズレシーバとして動作する場合、電気音響変換器12は、受信ノイズとしての携帯型注入装置1の動作ノイズを受信するように機能し、受信ノイズは変換され、さらにそれぞれ処理されて、評価モジュール113によって評価される。電気音響変換器は、駆動チェーン(特にモータ14およびスピンドル駆動ユニット15)と音響的に連結され、ページャ型バイブレータ13と構造的に伝達されるおよび/または空気的に伝達される音響連結によって、音響的に連結される。
【0063】
制御ユニット11は、薬剤投与中、すなわち、基礎薬剤投与または薬剤ボーラスの投与のためのモータ14の起動と同時に、ノイズレシーバとして電気音響変換器12を動作させる。動作中、モータ14は、概してモータ14の設計、およびその動作条件(特に回転速度、負荷)に特有の駆動ノイズを発する。同様に、スピンドル駆動ユニット15は動作中、その設計および動作条件に依存したノイズを発する。組み合わされて、スピンドル駆動ユニット15およびモータ14により放出されるノイズが、薬剤投与中の動作ノイズである。評価モジュール113は、モータ14の作動中に電気音響変換器12により受信される動作ノイズを評価し、動作ノイズが予測される動作ノイズと一致するかどうかを判定するように構成される。
【0064】
この目的のため、評価モジュール113は、受信ノイズを(たとえば、高速フーリエ変換、FFTに基づき)時間領域および/または周波数領域において評価してもよく、および/または全体の信号振幅、実効値(二乗平均、RMS)などの特徴を評価してもよい。受信ノイズの評価は、典型的に、ソフトウェアおよびファームウェアそれぞれのコードとして実施されるが、専用のハードウェア構成要素を、追加的または代替的に含んでもよい。
【0065】
典型的な装置の欠陥、特に駆動チェーンの欠陥により、予測される動作ノイズからの逸脱が生じるため、欠陥は評価モジュール113により検出される。たとえば、(通常かつ許容されるレベルを超える)過度の摩耗、埃または汚れは、典型的に、全体的なノイズレベルの上昇を引き起こす。典型的にモータ14および/またはスピンドル駆動ユニット15の一部を形成する減速歯車の歯の破損または欠陥は、回転速度に依存した周波数を有する特徴的な信号を引き起こす。検出され得るさらなる欠陥が、概略において上で説明されている。
【0066】
薬剤投与中、動作ノイズが予測される動作ノイズに一致するかどうかの判定に加えて、制御ユニット11が、モータ14を作動させ、駆動試験手順の一部として、動作ノイズが予測される動作ノイズに一致するかどうかを判定してもよい。そのような駆動試験手順は、有利には、たとえば薬剤カートリッジ21の交換の時に自動で実行されてもよい。スピンドル駆動ユニット15が携帯型注入装置1に一体化された一部であり、それに応じて(空の薬剤カートリッジ21に対応する)前進位置から(満載の薬剤カートリッジ21に対応する)後退位置へと移動させられる必要がある場合、後退移動のためにモータ14を作動させている間に、駆動試験手順が実行されてもよい。
【0067】
薬剤投与中、受信ノイズが予測される動作ノイズに一致するかどうかの判定は、有利には、動作ノイズが流路、特に注入管22および/または注入カニューレ23の妨害物の存在(閉塞)を示すかどうかを判定するためにさらに使用されてもよい。閉塞の場合、カートリッジ21からさらに薬剤を投与しようと試みること(より具体的にはモータ14の起動)により、内部の流体圧が急激に上昇し、そしてそれに従い、駆動チェーンに逆らって作用する力が、モータ14が最終的に失速するまで、急激に上昇する。この過程には、典型的に、時間の経過によるモータノイズにおける特性の変化、典型的には、特に、モータ14が最終的に失速する前の全体的な動作ノイズの一時的な上昇を伴う。
【0068】
既に述べたように、電気音響変換器12は、有利には、さらに、ページャ型バイブレータ13と音響的に連結されており、評価ユニット113は、同時にページャ型バイブレータ13を作動させながら電気音響変換器12により受信される受信ノイズが、予測されるノイズに一致するかどうかを判定するように構成されてもよい。予測されるノイズは、ページャ型バイブレータ13の設計および制御に依存し、小型モータおよびその駆動軸に連結される偏心マスを備える典型的な設計の場合、回転速度に依存する。ページャ型バイブレータ13の起動、および電気音響変換器12が対応する信号を受信するかどうかの判定は、制御ユニット11の制御下で専用のページャ試験手順の一部として実行されてもよい。そのようなページャ試験手順は、たとえば、携帯型注入装置1の電源投入時に、薬剤カートリッジ21の交換時に、および/または所定の時間間隔、たとえば、一日に一度、開始されてもよい。ページャ試験手順は、デバイスのユーザに指示を提供するために、ページャ型バイブレータ13を作動させるときに実行されてもよい。
【0069】
携帯型注入装置の動作状態を判定するために電気音響変換器またはマイクにより受信される信号を評価するための、多数のさらなる方法、手順およびアルゴリズムが、この点に関して参照される国際公開第2004/110528号に開示されている。
【0070】
以下において、本開示による携帯型注入装置1のさらなる実施形態を図示する
図2がさらに参照される。
図2の実施形態は、
図1の実施形態に多数の点で一致するため、以下において差異のみを説明する。
【0071】
図2の実施形態では、電気音響変換器12に加え、追加の電気音響変換器12aが存在し、ノイズ生成モジュール112に加え、追加のノイズ生成モジュール112aが設けられる。ノイズ生成モジュール112は、変換器12と関連付けられ、追加のノイズ生成モジュール112aは、追加の変換器12aと関連付けられる。変換器12および追加の変換器12aは、同一の設計、たとえば圧電ブザーであってもよいが、別個であり、互いから独立して動作可能である。変換器12および追加の変換器12aの両方は、発音装置または受音装置として動作されてもよい。スイッチモジュール111は、変換器12および追加の変換器12aを音声エミッタとして動作させるために、変換器12をノイズ生成モジュール112、および追加のノイズ生成モジュール112aを備える追加の変換器12aと同時に動作可能に連結するように構成される。スイッチモジュール111は、変換器12または追加の変換器12aのいずれかを、ノイズエミッタとしての動作のために、その関連する音源モジュール1112、112aと動作可能に連結するように、および、同時に、変換器12および追加の変換器12aのうちの他方を、ノイズレシーバとしての動作のために評価モジュール113と動作可能に連結するようにさらに構成される。
【0072】
変換器12および追加の変換器12aは、機能上は互いとは別個であり、互いから分離して動作されてもよい。しかし、それらは、変換器12により放出ノイズが追加の変換器12aにより追加の受信ノイズとして受信されてもよいように音響的に連結されている。同様に、追加の変換器12aによる、追加の放出ノイズは、変換器12によって、受信ノイズとして受信されてもよい。典型的な例示的実施形態では、変換器12および追加の変換器12aは、互いに積み重ねられ、上で説明したように接着結合により結合される円盤状の圧電変換器である。
【0073】
音響式の指示をデバイスのユーザに提供するために、変換器12および追加の変換器12aの一方または両方が、ノイズエミッタおよび音響式インジケータのそれぞれとして動作されてもよい。一実施形態では、制御ユニット11は、両方の変換器の起動を、共通して起動されるように制御し、それによって、ノイズ生成モジュール112および追加のノイズ生成モジュール112aが、たとえば同一のノイズ信号を生成して、単一の変換器と比較して、騒音レベルの上昇が引き起こされる。代替的に、制御ユニットは、重大でないユーザフィードバックおよび/または一般情報を提供する時に、変換器の1つのみ、たとえば変換器12起動を制御するが、たとえば、既に説明したような装置のエラーまたは閉塞など、直接の注意を要求する警告を提供するために、変換器12および追加の変換器12aの両方の起動を制御する。そのような状況において、特に、密封および水密のハウジング10の場合、音響警報レベルは重大な問題であり、充分な音響警報レベル、特に既定の最小警報レベルが、典型的に、規制上の理由から満たされることとなるため、両方の変換器の使用は有利である。
【0074】
正常動作を試験するために、変換器12および追加の変換器12aのうちの一方は、ノイズエミッタとして動作され、一方で、変換器12および追加の変換器12aのうちの他方は、ノイズレシーバとして動作され、受信変換器により受信される信号が、発信変換器により発信される、予測されるノイズに一致するかどうか判定される。対応する試験手順は、既に説明したページャ試験手順と同じ方法で、専用の変換器試験手順として実行されてもよい。そのような変換器試験手順は、たとえば、携帯型注入装置1の電源投入時に、薬剤カートリッジ21の交換時に、および/または所定の時間間隔、たとえば、一日に一度、開始されてもよい。変換器試験手順は、デバイスのユーザに指示または警告を提供するために、変換器12および/または追加の変換器12aを作動させるときに実行されてもよい。
【0075】
以下において、
図2に示される携帯型注入装置1を用いて実行されてもよい変換器試験手順の実施形態の動作フローを概略的に図示する
図3をさらに参照する。
【0076】
試験手順は、ステップ(S)で開始される。続くステップ(S1)で、スイッチモジュール111は、変換器12を、ノイズエミッタとしての動作のために、ノイズ生成モジュール112と動作可能に連結させ、追加の変換器12aを、ノイズレシーバとしての動作のために、評価モジュール113と動作可能に連結させる。さらに、ステップ(S1)において、変換器12は、ノイズエミッタとして作動させられ、ノイズ生成モジュール112により生成されるノイズ信号を発し、一方で、追加の変換器12aがノイズレシーバとして動作させられ、受信ノイズは、評価ユニット113により評価される。続くステップ(S2)において、追加の変換器12aにより受信されるノイズが、それぞれノイズ生成モジュール112により生成される、および変換器12により放出されるノイズ信号に一致するかどうかを判定し、結果に応じて動作フローが枝分かれする。肯定の場合、試験は成功であり、ステップ(E)にて終了する。その逆の場合、ステップ(S3)が実行され、対応する警告または警報が生成され、たとえば携帯型注入装置のディスプレイ上に表示される、および/またはたとえば携帯型デバイス、スマートフォンなど、追加の装置に送信され、変換器試験手は終了する(E)。さらにステップS3において、追加の音響変換器12a(すなわち、ステップS2においてノイズエミッタとして動作するために作動させられていない変換器)が、代替的または追加的にノイズ生成モジュール112と動作可能に連結され、その後に、音響警告またはエラー信号を発するように制御されてもよい。このようにして、音響警報は、変換器12に欠陥があっても、行われてもよい。なお、
図3の手順は、変換器12および追加の変換器12aの役割を反対にして、類似の方法で実行されてもよい。
【0077】
以下において、
図2の携帯型注入装置1のユーザに対する音響警報を提供する警報手順の例示的な動作フローを図示する
図4をさらに参照する。動作フローは、変換器12および追加の変換器12aに対する試験手順を含む。
【0078】
警報手順は、ステップ(S)で開始される。続くステップ(S100)では、スイッチモジュール111は、変換器12を、ノイズエミッタとしての動作のために、ノイズ生成モジュール112と動作可能に連結させ、追加の変換器12aを、ノイズレシーバとしての動作のために、評価モジュール113と動作可能に連結させる。さらに、ステップ(S100)において、変換器12は、ノイズエミッタとして起動させられ、それによって音響警報信号が出され、一方で、追加の変換器12aがノイズレシーバとして動作させられ、受信ノイズは、評価ユニット113により評価される。続くステップ(S101)において、追加の変換器12aにより受信されるノイズが、それぞれノイズ生成モジュール112により生成される、および変換器12により出される警報信号に一致するかどうかを判定し、結果に応じて動作フローが枝分かれする。
【0079】
ステップS101において結果が肯定である場合、概して、既に説明したステップS100、S101に一致するステップS110、S111が、続いて実行される。しかし、変換器12および追加の変換器12aの役割は反対である。つまり、追加の変換器12aは、ノイズエミッタとしての動作のために、追加のノイズ生成モジュール112aと動作可能に連結され、変換器12は、ノイズレシーバとしての動作のために、評価モジュール113と動作可能に連結される。
【0080】
ステップS111で結果が肯定であった場合、変換器12および追加の変換器の両方が正確に動作する。続くステップ(S112)において、スイッチモジュール111は、変換器12をノイズ生成モジュール112と動作可能に連結させ、同時に、追加の変換器12aを追加のノイズ生成モジュール112aと動作可能に連結させ、変換器12および追加の変換器12aの両方は、音響警報を提供するためのノイズエミッタとして動作される。
【0081】
追加の変換器12aにより受信される信号(ステップ(S100))および変換器12により受信される信号(ステップ(S110))のそれぞれは、ノイズ生成モジュール112および追加のノイズ生成モジュール112aのそれぞれにより生成される信号に一致しない場合、動作フローは、ステップ(S101)にてステップ(S120)に、およびステップ(S111)にてステップ(S113)にそれぞれ枝分かれする。ステップ(S120)では、警報信号は追加の変換器12aによって出され、ステップ(S113)では、警報信号は変換器12によって出される。ステップ(S120)および(S113)の両方では、対応する警告または警報が生成され、携帯型注入装置のディスプレイ上に表示される、および/または既に説明したような追加のデバイスに転送され、変換器12および追加の変換器12aのそれぞれに欠陥があるという警告を提供する。
【0082】
図1、
図2に示す携帯型注入装置および
図3、4に図示する動作フローは、多くの点で、変更され変化してもよい。
【0083】
図2の実施形態では、別個のノイズ生成モジュールS112、112aは、変換器12および追加の変換器12aと別個に関連すると見越していた。これは、2つの変換器S12、12aにより提供される冗長性(redundancy)がノイズ生成モジュールS112、112aにまで及ぶ限りは、有利となる。たとえば、ノイズ生成モジュール112(電源またはドライバ回路を含む)に欠陥がある場合、音響警報は依然として追加のノイズ生成モジュール112aおよび追加の変換器12aにより提供されてもよい。しかし、代替的に、追加のノイズ生成モジュール112aは、除外されてもよく、ノイズ生成モジュール112が、変換器12および追加の変換器12aのいずれかまたは両方と動作可能に結合されてもよい。
【0084】
非視覚式(音響および/または触覚式)表示、および特にユーザへの警報のための少なくとも2つの異なる手段を提供することは、概して有利である。この理由のために、単一の変換器12を備える
図1の実施形態では、ページャ型バイブレータ13が設けられる。
図2の実施形態では、追加の変換器12aおよび追加のノイズ信号発生器112aのため、ページャ型バイブレータが必要でない。しかし、ページャ型バイブレータ13は、任意で存在してもよく、たとえば、特に、重大でない状況において個別の指示および/またはユーザフィードバックを提供するために、追加の警報装置として機能してもよい。
【0085】
図1および
図2では、モータ14およびスピンドル駆動ユニット15の両方は、携帯型注入装置の一体化された一部である。代替の構成では、ねじ状のロッドまたはスピンドルはカートリッジ14の一体化された一部であり、一方で、対応するドライブナットは、携帯型注入装置1の一部である、またはその逆である。
【0086】
さらなる構成では、携帯型注入装置1は、薬剤が計量され、カートリッジ21から直接投与される、典型的なシリンジポンプ装置としては設計されない。代わりに、主要リザーバ(たとえばカートリッジ21またはバッグ、パウチなど)が、中間投薬シリンダと流体結合される、中間投薬シリンダから薬剤が計量され、投与される下流投薬構造が見越されていてもよい。この場合、モータ14は、動作状態で、小型のシリンジポンプを形成するために投薬ユニットと動作可能に連結されている。バルブユニットが設けられ、典型的には投薬シリンダと主要リザーバまたは注入管22との代替の流体結合のための投薬シリンダと一体的に実現される。バルブユニットも、モータ14により切り換え、または作動させられてもよい、または携帯型注入装置は、バルブユニットと動作可能に連結する、専用のバルブ切り替えドライブを有してもよい。適切な投薬ユニット設計および構造は、たとえば欧州特許出願公開第2163273号明細書、欧州特許出願公開第2881128号明細書に開示されている。別個の駆動装置が、バルブを切り換えすると見越す場合、その動作ノイズは、
図1の文脈で既に説明したものと同じ方法で試験されてもよい。さらに、変換器12および/または追加の変換器12aは、バルブの切り替えに関連するバルブ切り替えノイズを受信してもよく、バルブ切り替えノイズは、バルブ切り替えノイズが、予測されるバルブ切り替えノイズに一致するかどうかを判定するために、評価ユニット113によって評価されてもよい。
【0087】
特定の設計および構造から独立して、携帯型注入装置1は、概して、圧力条件から実質的に独立した、制御された方法で、明確に定義された薬剤容積を投与するために設計される、容積計量ポンプおよび容積式ポンプのそれぞれとして実現される。
【0088】
携帯型注入装置1は、たとえば、ベルトクリップなどを用いてズボンのポケット内で、すなわち、体に直接付着されずに持ち運ばれるように構成されてもよい。代替的または追加的に、携帯型注入装置1は、注入カニューレ23をハウジング10から突出させて、たとえば粘着テープによって、装着者の体に直接付着されるように設計されてもよい。
【0089】
通常動作中、ならびに変換器12および/または追加の変換器12aが評価ユニット113に動作可能に連結され得るとき、評価ユニット113は、携帯型注入装置1が落下した場合に生じ、損傷を引き起こし得る機械的衝撃の発生を検出するように構成されてもよい。機械的衝撃が検出されると、(自己)試験手順が自動で開始されてもよい、および/もしくは警告または警報が生成されてもよい。