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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】複数標的線維症検査
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20220117BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20220117BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220117BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01N33/48 Z
A61B8/08
A61B5/055 311
G01T1/161 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019505363
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017069478
(87)【国際公開番号】W WO2018024748
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】16182272.1
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511187177
【氏名又は名称】センター ホスピタリア ユニバーシタイア ダンガース
(73)【特許権者】
【識別番号】511187166
【氏名又は名称】ユニバーシティ ダンガース
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カレ,ポール
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508936(JP,A)
【文献】特表2012-520995(JP,A)
【文献】特表2012-518507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0012583(US,A1)
【文献】特表2008-509411(JP,A)
【文献】特表2015-522173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
A61B 8/08
A61B 5/055
G01T 1/161
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つの単一標的スコアを計算する工程と、
2)工程1)で計算された前記少なくとも3つの単一標的スコアを多重線形回帰において組み合わせて対象における肝臓病変の存在および重症度を決定するのに有用な新しい複数標的スコアを計算する工程と、
)工程2)で計算された前記複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの肝臓病変ステージまたはグレードに属するかを決定する工程と
を含む、対象における肝臓病変の存在および重症度を決定するための、コンピュータで実行される非侵襲的方法。
【請求項2】
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つの単一標的スコアを計算する工程と、
1a)工程1)で計算された前記少なくとも3つの単一標的スコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の前記診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、前記工程1)の二項ロジスティック回帰によって計算されたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程と、
1b)工程1a)において有意であることが分かった前記単一標的スコアのそれぞれのために肝臓病変ステージまたはグレードの分類を導出する工程と、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて肝臓病変ステージまたはグレードの複数標的分類を作成する工程と、
2)工程1a)で特定された前記有意な単一標的スコアを多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを計算し、それにより対象における肝臓病変の存在および重症度を決定する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を決定するためのものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程1)は、それぞれがF≧1(F0に対してF≧1)、F≧2(F≦1に対してF≧2)、F≧3(F≦2に対してF≧3)およびF=4(F≦3に対してF4)に対応する異なるMetavir線維症ステージを標的にする4回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程1)は、それぞれがMetavir線維症ステージF≧1(F0に対してF≧1)、F≧2(F≦1に対してF≧2)、F≧3(F≦2に対してF≧3)、F4(F≦3に対してF4)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2およびF0+F1+F2+F4に対してF3に対応する異なる線維症標的を有する7回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程1)は、それぞれがMetavir線維症ステージF=0に対してF≧1、F≦1に対してF≧2、F≦2に対してF≧3、F≦3に対してF=4、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3に対応する異なる線維症標的を有する10回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた前記対象の肝臓組織の少なくとも1つの画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせから選択される少なくとも1つの変数に対して行う、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、イメージング法によって以前に得られた前記対象の肝臓組織の少なくとも1つの画像の少なくとも2つの記述子に対して行い、前記記述子は、エッジの直線性の割合、線維症の周りの領域の平均の割合(すなわち小結節形成の割合)、肝生検標本の全表面のうち星形線維症の面積、架橋の数、架橋の厚さ、門脈-中隔領域の平均の面積、架橋の周長、門脈-中隔領域間の架橋の比、架橋の中の線維症の面積、類洞周囲線維症のフラクタル次元、臓器、組織またはその断片の周長、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、線維症全体の中での類洞周囲線維症の比、臓器、組織またはその断片の長さ、曲折記述子(生来の周長、平滑化された周長および両周長間の比)、線維症のフラクタル次元、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長、脾臓表面と肝臓表面との比およびそれらの数学的組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、物理的診断法によって得られる少なくとも1つのデータに対して行い、前記物理的診断法は、振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)、音響放射力インパルス(ARFI)、超音波剪断波イメージング(SSI)弾性率測定法およびMNR/MRIエラストグラフィから選択されるエラストグラフィ法である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、物理的診断法によって得られる少なくとも1つのデータに対して行い、前記物理的診断法は、X線、超音波検査、コンピュータスキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法、断層撮影法、コンピュータX線体軸断層撮影法、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法および断面デンシトメトリーから選択される放射線撮影法である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、APRI、FIB4、Fibrotest、ELFスコア、FibroMeter、Fibrospect、Hepascore、ZengスコアおよびNAFLD線維症スコアから選択される線維症検査により得られた線維症検査の少なくとも1つのスコアに対して行い、前記線維症検査は、生物学的マーカーおよび/または臨床マーカーから選択されるマーカーの単純な数学的関数または二項ロジスティック回帰における組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は、肝線維症検査のFibroMeterファミリーおよびそれらの振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)との組み合わせから選択される線維症検査に対応する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程1)の二項ロジスティック回帰は線形判別分析および多変量解析から選択される別の統計分析と置き換えられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象は、肝機能障害、慢性肝疾患、肝炎ウイルス感染、肝毒性、肝癌、脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫疾患、代謝性肝疾患および肝臓の続発性合併症を伴う疾患からなる群から選択される肝臓病に罹患している、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法を実施するマイクロプロセッサ。
【請求項16】
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つの単一標的スコアを計算する工程と、
2)工程1)で計算された前記少なくとも3つの単一標的スコアを多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを計算する工程と、
)工程2)で計算された前記複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより前記対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを決定する工程と
を含む、対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを決定するための、コンピュータで実行される非侵襲的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓学における診断の分野に関し、より詳細には複数標的検査を用いて肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変を診断するための非侵襲的方法に関する。本発明は、複数標的検査を用いて肝臓病に罹患している対象における死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価するための非侵襲的予後判定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
慢性肝疾患は肝線維症などの肝臓病変の発生を特徴とする。肝線維症は損傷した肝細胞を徐々に置き換え、このようにして肝臓の構造を変える瘢痕化プロセスである。線維症の程度は様々であり得、通常はステージで表される。初期と診断された場合、線維症は通常は可逆的である。
【0003】
歴史的に肝線維症は、生検によって得られた肝臓試料を専門の肝臓病理学者が顕微鏡検査することによって診断される。専門の肝臓病理学者は、確立されている線維症分類に従って線維症のステージを判定する。Metavir分類は最も使用されている線維症分類である。それは肝線維症をF0~F4の5つのステージに区別し、F0ステージは「線維症ではない」に対応し、F4ステージは肝硬変の最終的なステージに対応する。
【0004】
臨床業務では、MetavirステージがF≧2の患者は臨床的に有意な線維症に罹患しているとみなされる。臨床的に有意な線維症であると診断された場合に通常は治療が推奨されるため、このカットオフは特にC型肝炎を有する患者に特に適している。対照的に、MetavirステージF0~F1の患者は通常はどんな治療も受けないが、線維症の進行について監視される。MetavirステージF2の患者は有意な線維症に罹患しているとみなされ、MetavirステージF3の患者は深刻な線維症に罹患しているとみなされ、MetavirステージF4の患者は肝硬変に罹患しているとみなされる。
【0005】
最近では、肝生検に代わる方法を提供するために多くの非侵襲的診断検査が開発されている。肝生検は今でも対象における肝臓病の存在および/または重症度を評価するための至適基準とみなされているが、これは特に試料サイズが小さいことに関連する観察者間または観察者内における再現性の低さおよび試料の偏りの可能性により限界を有する。さらに肝生検は侵襲的医療処置であり、従って合併症のリスクおよび大きなコストを伴うままである。
【0006】
対照的に、非侵襲的診断検査で必要になるのは実施される対象からの血液試料くらいである。従って、そのような検査は対象における肝線維症の存在および/または重症度を判定することを目的としているため、「血液検査」または「線維症検査」と呼ばれることが多い。第1世代の非侵襲的血液検査では、一般的な間接的バイオマーカーおよび任意に臨床マーカーの測定とこれらのマーカーの比の計算とを行う。そのような単純な血液検査の例としては、APRI(Waiら Hepatology 2003)およびFIB-4(Sterlingら Hepatology 2006)が挙げられる。第2世代の非侵襲的血液検査は、独立した直接的および/または間接的バイオマーカーおよび臨床マーカーの統計的組み合わせを含む。Fibrotest(Imbert-Bismutら Lancet 2001)、ELFスコア(Rosenbergら Gastroenterology 2004)、FibroMeter(Calesら Hepatology 2005)、Fibrospect(Patelら Hepatology 2004)およびHepascore(Adamsら Clin Chem 2005)は、これらのより精緻な血液検査の例である。別の種類の非侵襲的検査は、例えばFibroscanとしても知られている振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE:Vibration Controlled Transient Elastography)によって肝硬度評価を実施するなどの、肝線維症の診断にとって有用な物理データを収集および解釈することからなる。最後に、血液検査から得られたスコアをロジスティック回帰において物理データと組み合わせて新しいスコアを得ることができる。米国特許出願公開第20110306849号はそのような組み合わせ、特にFibroMeterとFibroscanとの組み合わせについて記載している。
【0007】
非侵襲的診断検査は通常、単一標的二項検査であり、0~1の範囲の連続的な数字である検査結果、すなわち検査スコアが得られる。それらは標的とされる臨床的特徴、すなわち診断標的が存在しない(0)または存在する(1)か否かを評価するように構築されている。従って、大部分の非侵襲的線維症検査は、有意な線維症(Metavir F≧2)という診断標的と共に構築されており、Metavir F0/1をF2/3/4に対して区別することを目的としている。血液検査結果はMetavirステージの順序尺度とよく相関しているため、いくつかの線維症分類は血液検査結果からの線維症ステージの推定を提供するために開発されている。但し、血液検査は正確な診断標的(通常はF≧2)のために較正されるためこの手法には限界があり、従って肝硬変(F=4)のようなそれらの診断標的から離れている臨床的特徴を診断するためのそれらの性能はあまり正確ではない。この欠陥を緩和するために、有意な線維症ではなく肝硬変を診断標的にする非侵襲的検査であるCirrhoMeterが開発された(Boursierら Eur J Gastroenterol Hepatol,2009)。
【0008】
臨床業務では、医師は実施する必要のある既存の非侵襲的血液検査のうちのどれか1つを選択しなければならない。実際には、所与の患者のために診断標的F=4を用いる検査は診断標的F≧2を用いる検査よりも信頼できる結果を保証する場合があり、その逆も同様である。患者に関してあまり情報が入手できない場合、前記患者にどの検査を指示すべきかという優先度を知ることは難しいと分かるであろう。
【0009】
従って、全ての診断標的のために良好な信頼性および正確性で肝硬変(F=4)を含む線維症の異なるステージの診断を可能にする、複数の診断標的を扱う単一かつ独特な検査がなお必要とされている。単一かつ独特な検査は実際に、特にどの単一標的検査を実施するかを知るための十分な情報を有し得ない医師にとって最も簡単かつ最も好都合な解決法となる。従って本発明は、高い正確性で臨床的に有意な線維症および肝硬変の両方を診断することができる複数標的診断検査に関する。本発明の別の目的は、対象における死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価するための複数標的診断検査の使用である。
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するのに有用な新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの肝臓病変ステージまたはグレードに属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0011】
一実施形態によれば、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための本発明の非侵襲的方法は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
1a)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、工程1)の二項ロジスティック回帰によって得られたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程と、
1b)工程1a)において有意であることが分かった単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれのために肝臓病変ステージまたはグレードの分類を導出する工程と、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて肝臓病変ステージまたはグレードの複数標的分類を作成する工程と、
2)工程1a)で特定された有意なスコアを多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得、それにより対象における肝臓病変の存在および重症度を評価する工程と
を含む。
【0012】
特定の実施形態では、本発明の非侵襲的方法は、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するためのものである。
【0013】
一実施形態では、本発明の非侵襲的方法の工程1)は、それぞれがF1、F2、F3およびF4ステージに対応する異なるMetavir線維症ステージを標的にする4回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0014】
別の実施形態では、本発明の非侵襲的方法の工程1)は、それぞれがMetavir線維症ステージF≧1(F0に対してF≧1)、F≧2(F≦1に対してF≧2)、F≧3(F≦2に対してF≧3)、F4(F≦3に対してF4)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2およびF0+F1+F2+F4に対してF3に対応する異なる線維症標的を有する7回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明の非侵襲的方法の工程1)は、それぞれがMetavir線維症ステージF=0に対してF≧1、F≦1に対してF≧2、F≦2に対してF≧3、F≦3に対してF=4、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3に対応する異なる線維症標的を有する10回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0016】
本発明の非侵襲的方法の一実施形態によれば、工程1)の二項ロジスティック回帰は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた対象の肝臓組織の少なくとも1つの画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせから選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの変数に対して行う。
【0017】
本発明の非侵襲的方法の一実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、イメージング法によって以前に得られた対象の肝臓組織の少なくとも1つの画像の少なくとも2つの記述子に対して行い、前記記述子は、エッジの直線性の割合、平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、肝生検標本の全表面のうち星形線維症の面積、架橋の数、架橋の厚さ、平均の門脈-中隔領域の面積、架橋の周長、門脈-中隔領域間の架橋の比、架橋の中の線維症の面積、類洞周囲線維症のフラクタル次元、臓器、組織またはその断片の周長、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、線維症全体の中での類洞周囲線維症の比、臓器、組織またはその断片の長さ、曲折記述子(生来の周長、平滑化された周長および両周長間の比)、線維症のフラクタル次元、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管(Arantius furrow)の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長、脾臓表面と肝臓表面との比およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0018】
本発明の非侵襲的方法の別の実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、物理的診断法によって得られる少なくとも1つのデータに対して行い、前記物理的診断法は、Fibroscanとしても知られている振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)、音響放射力インパルス(ARFI)、超音波剪断波イメージング(SSI)弾性率測定法およびMNR/MRIエラストグラフィから選択されるエラストグラフィ法である。
【0019】
本発明の非侵襲的方法の別の実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、物理的診断法によって得られる少なくとも1つのデータに対して行い、前記物理的診断法は、X線、超音波検査、コンピュータスキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法、断層撮影法、コンピュータX線体軸断層撮影法、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法および断面デンシトメトリー(tomodensitometry)から選択される放射線撮影法である。
【0020】
本発明の非侵襲的方法の別の実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、APRI、FIB4、Fibrotest、ELFスコア、FibroMeter、Fibrospect、Hepascore、ZengスコアおよびNAFLD線維症スコアから選択される線維症検査により得られる線維症検査の少なくとも1つのスコアに対して行い、前記線維症検査は、生物学的マーカーおよび/または臨床マーカーから選択されるマーカーの単純な数学的関数または二項ロジスティック回帰における組み合わせを含む。
【0021】
本発明の非侵襲的方法の別の実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、線維症検査のFibroMeterファミリーおよびそれらの振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)(Fibroscanとしても知られている)との組み合わせから選択される線維症検査に対応する。
【0022】
本発明の非侵襲的方法の一実施形態によれば、工程1)の二項ロジスティック回帰は線形判別分析および多変量解析から選択される別の統計分析と置き換えられる。
【0023】
一実施形態では、本発明の非侵襲的方法は、肝機能障害、慢性肝疾患、肝炎ウイルス感染(特にB型、C型もしくはD型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染)、肝毒性、肝癌、脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫疾患、代謝性肝疾患および肝臓の続発性合併症を伴う疾患を含む群から選択される肝臓病に罹患している対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するためのものである。
【0024】
本発明は、本発明の非侵襲的方法を実行するマイクロプロセッサにも関する。
【0025】
本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価する工程と
を含む、対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法にも関する。
【0026】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0027】
数字の前の「約」は、前記数字の値の±10%を意味する。
【0028】
診断検査の「正確性」とは、正確に診断された患者の割合、すなわち前記診断検査によって正確に判定された線維症ステージ(例えば、肝線維症のMetavirステージ分類に基づく)を有する患者の割合を指す。
【0029】
「AUROC」はROC曲線下面積を表し、診断検査の正確性の指標である。統計では、受信者動作特性(ROC)またはROC曲線は、その識別閾値の変化に伴う二項分類システムの性能を示すグラフィカルプロットである。この曲線は0~1の連続値において特異度に対して感度(通常は1-特異度)をプロットすることによって作成される。ROC曲線およびAUROCは統計の分野において周知である。
【0030】
「バイオマーカー」または「生物学的マーカー」とは、対象からの試料において測定することができる変数を指し、前記試料は、例えば血液、血清または尿試料、好ましくは血液または血清試料などの体液試料である。
【0031】
本発明で使用される「血液検査」とは、少なくとも1つの変数を非侵襲的に測定することを含む検査を指し、少なくとも2つ変数を測定する場合は、スコア内の前記少なくとも2つの変数を数学的に組み合わせる。本発明では、前記変数はバイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータまたはそれらの任意の組み合わせ(例えばスコア内の任意の数学的組み合わせなど)であってもよい。
【0032】
「肝硬変」とは、Metavir分類による線維症の最終的なステージ(F=4)を指す。
【0033】
本発明において「分類」とは、病変ステージまたはグレード(例えば、肝線維症ステージ)をソートして異なるクラスを作成することを目的とする非侵襲的診断検査のために開発されたシステムを指す。対象は非侵襲的検査において自身のスコアに従ってクラスに割り当てられ、それにより非侵襲的検査の診断標的に対する単純な二項回答(はい/いいえ)よりも正確な診断が可能になる。
【0034】
「臨床データ」とは、臨床検査を使用することなく対象の外部観察から収集されるデータを指す。年齢、性別および体重は臨床データの例である。
【0035】
「記述子」とは、例えば顕微鏡法によって得られた画像または放射線画像などの臓器または組織の画像に関連するかそれらに由来する任意のコンピュータ生成データを指す。一実施形態では、記述子は形態学的記述子である。一実施形態では、記述子は解剖学的もしくは生理学的記述子である。コンピュータ生成データの例としては、限定されるものではないが、臓器または組織の構造的特性(例えば、その長さなど)、臓器または組織画像のスペクトル特性(例えば、コントラストまたは明度など)、臓器または組織のフラクタル特性、臓器または組織の形状に関するデータおよび他の画像データ媒体変換物が挙げられる。
【0036】
「診断カットオフ」とは検査スコアの診断カットオフを指す。このカットオフは通常二項ロジスティック回帰によって得られ、診断標的の有無(はい/いいえ)で患者を区別する。これは2つの方法、すなわち統計学的伝統的手法による0.5までの演繹的なもの、および特定の選択に従う帰納的なもの、通常は最も高いYouden指数(Se+Spe-1)または検査性能を最適化するための最大の全体的な正確性で固定することができる。
【0037】
「診断標的」とは非侵襲的診断検査の主な対象を指す。大部分の非侵襲的線維症検査は単一の診断標的のために、すなわち標的とされる臨床的特徴の有無(はい/いいえ)を判定するために構築された二項検査(単一標的検査)である。従って一実施形態では、線維症検査の診断標的は、それらの間に診断カットオフ(例えば、F≧2として定められる有意な線維症の有無の診断のためにF2/3/4に対してF0/1)を有するMetavir線維症ステージの2つの範囲によって定めてもよい。
【0038】
「線維症」とは、線維性タンパク質または糖タンパク質(コラーゲン、プロテオグリカン...)を含む瘢痕組織からなる肝臓の異常な病変を指す。
【0039】
「線維症検査」とは、対象における肝線維症の存在および/または重症度を評価することを目的とした非侵襲的診断検査を指す。
【0040】
Knodellスコアとしても知られている「組織学的活動指数(Histology activity index)またはHAIシステム」とは、肝臓組織試料の組織学的描写に基づく肝線維症分類システムを指す。HAIシステムは、壊死性炎症活動(necro-inflammatory activity)を0~18で、線維症を4つのステージ(0、1、3または4)でスコア化する。
【0041】
「Ishakスコアリングシステム」とは、肝臓組織試料の組織学的描写に基づく肝線維症分類システムを指す。Ishakシステムは壊死性炎症活動の変化を0~18の尺度で、線維症を0~6の尺度でスコア化する。
【0042】
「Kleinerグレード分類/ステージ分類」とは、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)に特化した分類システムを指し、脂肪症(従来通りにグレード分類と呼ぶ)または線維症(従来通りにステージ分類と呼ぶ)のいずれかのための異なるクラスにおける形態学的描写に基づく。この半定量的(統計では順序)システムは一番最近の従来の組織学的分類である。このシステムはNASH臨床研究ネットワーク(NASH-CRN:NASH Clinical Research Network)システムとしても知られている。
【0043】
「肝臓病変」とは肝臓におけるあらゆる異常を指す。本発明の一実施形態では、肝臓病変は疾患によって引き起こされることがあり、従って「病理学的病変」と呼ぶ場合がある。肝臓病変としては、限定されるものではないが、肝線維症、肝硬変、肝臓脂肪症、断片化(fragmentation)、壊死性炎症活動または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。
【0044】
「Metavir」とは、肝臓組織試料の組織学的描写に基づく5つのステージ(F0~F4)での肝線維症の病理学上の半定量的分類を指す。Metavirシステムは壊死性炎症活動も4つのグレード(A0~A3)に分類する。
【0045】
本発明における「複数標的検査」とは、病態の様々な、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個の診断標的、より好ましくは全ての診断標的を同時に扱うように構築された非侵襲的診断検査を指す。
【0046】
「Multi-FibroMeter」とは、複数標的FibroMeter(MFM)検査を指す。1つの構築は主として線維症検査分類を提供することを目的としており、この検査をMFMcと呼ぶ。別の構築は主として検査スコアを提供することを目的としており、この検査をMFMsと呼ぶ。ウイルス性病因(「ウイルス」)において構築される場合、MFMをMFMと呼ぶ。同様に、単一標的FibroMeterは、バイオマーカーとして、とりわけヒアルロン酸(第2世代のウイルス性病因のためのFibroMeterすなわちFMV2G)またはGGT(第3世代のウイルス性病因のためのFibroMeterすなわちFMV3G)のいずれかを含むため、対応するMFMをMFMV2GまたはMFMV3Gと呼ぶ。従って、少なくとも4種類のMFMが利用可能である。
【表1】
【0047】
但し、各MFMは2つの表現、すなわちスコア(範囲:0~1)および線維症分類(例えば、F0~F4)で利用可能であることに留意されたい。
【0048】
「非侵襲的」は、本発明において検査について言及する場合、前記検査を実施するために個体の体から組織が採取されないことを意味する(血液は組織とはみなさない)。
【0049】
「百分位数」は、特定の割合の観測値が含まれる間隔に対応する。例えば、集団を10%の10個の百分位数に分けた場合、各百分位数はその集団の10%を含む。
【0050】
「物理データ」とは、例えば振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)によって行われる肝硬度評価などの物理的方法によって得られる変数を指す。
【0051】
「定性的マーカー」とは、値0または値1(すなわち「はい」または「いいえ」)を有する対象のために決定されるマーカーを指す。治療データ、病因、SVR(「SVR」は「持続性ウイルス学的著効」を表す)は定性的マーカーの例である。
【0052】
「信頼できる診断間隔(RDI:Reliable diagnosis interval)」は、診断の正確性が臨床業務のために十分に信頼できるとみなされる診断検査値の間隔(例えば、線維症および/または壊死性炎症活動についてのその間隔など)に対応する。
【0053】
非侵襲的検査についての「感度」は、真陽性として正確に同定される、非侵襲的検査の診断標的のための真陽性の患者の割合の尺度である。
【0054】
非侵襲的検査についての「特異度」は、真陰性として正確に同定される、非侵襲的検査の診断標的のための真陰性の患者の割合の尺度である。
【0055】
「単一標的検査」または「単標的検査」とは、単一の診断標的のために構築された二項検査を指す。一実施形態では、単一標的線維症検査は、それらの間に診断カットオフを有するMetavir線維症ステージの2つの範囲(例えば、F≧2として定められる有意な線維症の診断ではF2/3/4に対してF0/1、すなわちF2+F3+F4に対してF0+F1)によって通常定められる診断標的を扱う。
【0056】
検査スコア(検査値と呼んでもよい)またはスコア値などにおける「スコア」とは、少なくとも1つのバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの臨床データおよび/または少なくとも1つの物理データおよび/または少なくとも1つの血液検査結果の数学的組み合わせによって得られるあらゆる数値を指す。一実施形態では、スコアは数学的関数によって得られる有界の数値である。好ましくは、このスコアは0~1の範囲であってもよい。
【0057】
「脂肪症」は、細胞の液胞内への通常はトリグリセリドである脂質の蓄積として定められている。これは主にメタボリックシンドロームでは肝臓および筋肉に関わる。
【0058】
「対象」とは哺乳類、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか現在受けている、あるいは過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは疾患の発現または進行について監視されている「患者」すなわち温血動物、より好ましくはヒトであってもよい。一実施形態では、対象は成人(例えば年齢が18歳以上の対象)である。別の実施形態では、対象は小児(例えば年齢が18歳未満の対象)である。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。
【0059】
本発明の方法における「変数」とは、二項ロジスティック回帰において組み合わせることができる患者から得られる尺度を指す。本発明における変数としては、生物学的マーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理データ、線維症検査スコア、指標および画像の記述子が挙げられる。
【0060】
「Youden指数」は、感度+特異度-1として定められており、ここでは感度および特異度は割合として計算される。Youden指数はそれぞれ-1および+1である最小値および最大値を有し、ここでは+1の値はアルゴリズムにとって最適な値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、複数標的検査を行う工程を含む、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。肝臓病変としては、限定されるものではないが、肝線維症、肝硬変、肝臓脂肪症、断片化、壊死性炎症活動または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。
【0062】
一実施形態では、本発明は、複数標的検査を行う工程を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0063】
本発明の別の目的は、複数標的検査を行う工程を含む、対象における死亡、肝臓に関連しない死亡もしくは肝臓に関連する死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法である。本発明は、複数標的検査を行う工程を含む、対象における死亡または肝臓に関連するイベントのリスクの増加を決定するための非侵襲的方法にも関する。
【0064】
一実施形態では、本発明の非侵襲的方法は生体外方法である。
【0065】
好ましくは、本発明の複数標的検査は多重線形回帰により構築される。
【0066】
以下の表は、本発明の複数標的検査の構築の概略を提供する。
【表2】
MFMsの主目的(太字の変数)
MFMcの主目的(太字の変数)
【0067】
本発明の方法は、単一標的検査と比較して正確性が向上した独特なスコアおよび独特な分類を提供する、単一標的二項ロジスティック回帰の組み合わせに基づく単一の複数標的診断または予後判定検査について記載している。
【0068】
一実施形態では、本発明の方法は、単一標的診断検査と比較して正確性が向上した独特なスコアおよび独特な分類を提供する、単一標的診断検査の組み合わせに基づく単一の複数標的診断検査について記載している。
【0069】
従って一実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するのに有用な新しい複数標的スコアを得る工程と
を含む、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0070】
従って本実施形態では、本発明の方法は、少なくとも3つの診断標的を対象とする複数標的検査を行う工程を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、多重線形回帰は段階的な多重線形回帰、すなわち独立変数の段階的選択による多重線形回帰である。
【0072】
一実施形態では、本発明の方法は、工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの肝臓病変ステージまたはグレードに属するかを判定する工程を任意に含む。
【0073】
従って一実施形態では、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの病変ステージまたはグレードに属するかを判定する工程と
を含む。
【0074】
特定の一実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症ステージの分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0075】
特定の一実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを前記対象のMetavirスコアを標的にする重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症ステージの分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて、対象における肝臓に関連しない死亡もしくは肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価するのに有用な新しい複数標的スコアを得る工程と
を含む、対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法に関する。
【0077】
一実施形態では、本発明の方法は、工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類においてソートし、それにより対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価する工程を任意に含む。
【0078】
従って一実施形態では、対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類において位置付けし、それにより対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価する工程と
を含む。
【0079】
一実施形態では、本発明の方法の工程2)の多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰は、Metavir Fステージを標的にする。
【0080】
従って一実施形態では、本発明の複数標的検査は、複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレード、例えば線維症ステージの分類においてソートし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの肝臓病変ステージまたはグレード(または病変ステージまたはグレードのクラス)、例えば線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する任意の工程を含む。
【0081】
一実施形態では、本発明の方法の任意の工程3)で使用される分類は、以前に得られたものである。
【0082】
一実施形態によれば、本発明の方法の分類は、線維症ステージのMetavir分類に基づいている。従って一実施形態では、前記分類は、工程2)で得られたスコアと線維症Metavirステージとの対応を導出することによって参照集団から得られる。一実施形態では、この分類は、線維症Metavirステージに基づく4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10個のクラス、好ましくは線維症Metavirステージに基づく5つ、6つ、7つまたは8つのクラスを含む。
【0083】
一実施形態では、この分類は、線維症Metavirステージに基づく5つのクラスを含む。一実施形態では、線維症Metavirステージに基づく前記5つのクラスは、0/1(F0/1)、1/2(F1/2)、2/3(F2/3)、3/4(F3/4)および4(F4)である。別の実施形態では、この分類は線維症Metavirステージに基づく6つのクラスを含む。一実施形態では、線維症Metavirステージに基づく前記6つのクラスは、F0/1、1/2(F1/2)、2(F2±1)、3(F3±1)、3/4(F3/4)および4(F4)である。
【0084】
別の実施形態によれば、本発明の方法の分類は、線維症ステージを含む組織学的活動指数(HAI)分類に基づいている。従って一実施形態では、前記分類は、工程2)で得られたスコアとHAIシステムに従って定められる線維症ステージとの対応を導出することによって参照集団から得られる。
【0085】
別の実施形態によれば、本発明の方法の分類は、線維症ステージのIshak分類に基づいている。従って一実施形態では、前記分類は、工程2)で得られたスコアとIshakシステムに従って定められる線維症ステージとの対応を導出することによって参照集団から得られる。
【0086】
別の実施形態によれば、本発明の方法の分類は、壊死性炎症活動グレードのMetavir分類に基づいている。従って一実施形態では、前記分類は、工程2)で得られたスコアとMetavir壊死性炎症活動グレードとの対応を導出することによって参照集団から得られる。
【0087】
別の実施形態によれば、本発明の方法の分類は、NASH臨床研究ネットワーク(NASH-CRN)システムとしても知られているNAFLDに特化したKleinerグレード分類/ステージ分類に基づいている。従って一実施形態では、前記分類は、工程2)で得られたスコアとKleinerグレード分類/ステージ分類すなわちNASH-CRNシステムとの対応を導出することによって参照集団から得られる。
【0088】
一実施形態によれば、本発明の方法の分類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014005500号に記載されているように、病変ステージまたはグレードを百分位数に従ってクラスに割り当てる方法によって得られる。簡単に言うと、参照集団の患者をそれらのスコア結果に従って百分位数に分類する。次いで、各集団百分位数のために、1つの参照システム(例えば、Metavir、Ishak、Kleiner)に従って定められる関連する至適基準病変ステージまたはグレードを高い固定された最小正分類率(例えば80%)に従って決定する。各百分位数に関連づけることができる至適基準ステージまたはグレードの最大数は限られている(例えば3まで)。従って、固定された最小正分類率に従って限られた数の至適基準病変ステージまたはグレードを各集団百分位数と関連づけることにより、病変ステージまたはグレードをグループ化して新しいクラスを作成することが可能になる。
【0089】
別の実施形態によれば、本発明の方法の分類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014005500号に記載されているように信頼できる診断間隔(RDI)法に従って得られる。
【0090】
一実施形態によれば、本発明の方法において分類を得るためには、慢性肝疾患を有する患者の参照集団が必要となる。一実施形態では、参照集団は肝炎ウイルス、好ましくはC型肝炎ウイルスに罹患している患者の集団であってもよい。一実施形態では、参照集団は少なくとも約500人の患者、好ましくは少なくとも約700人の患者、より好ましくは少なくとも約1000人の患者を含む。
【0091】
本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
1a)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、工程1)の二項ロジスティック回帰によって得られたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程と、
1b)工程1a)において有意であることが分かった単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれのために肝臓病変ステージまたはグレードの分類を導出する工程と、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて肝臓病変ステージまたはグレードの複数標的分類を作成する工程と、
2)工程1a)で特定された有意なスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得て、それにより対象における肝臓病変の存在および重症度を評価する工程と
を含む、対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法にも関する。
【0092】
特定の一実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
1a)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、工程1)の二項ロジスティック回帰によって得られたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程と、
1b)工程1a)において有意であることが分かった単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれのために線維症ステージの分類を導出する工程と、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて線維症ステージの複数標的分類を作成する工程と、
2)工程1a)で特定された有意なスコアを多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得て、それにより対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
1a)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、工程1)の二項ロジスティック回帰によって得られたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程と、
1b)工程1a)において有意であることが分かった単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれのために肝臓病変ステージまたはグレードの分類を導出する工程と、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて肝臓病変ステージまたはグレードの複数標的分類を作成する工程と、
2)工程1a)で特定された有意なスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得て、それにより対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価する工程と
を含む、対象における肝臓に関連しない死亡および/または肝臓に関連する死亡を含む死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法に関する。
【0094】
従って一実施形態では、本発明の方法は、単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれから導出された分類を組み合わせて複数標的分類を作成し、それにより対象がどの肝臓病変ステージまたはグレード(または病変ステージまたはグレードのクラス)に属するかを判定する工程を含む。
【0095】
一実施形態では、工程1a)で行われる少なくとも別の二項ロジスティック回帰の臨床的に関連する二項標的は、有意な線維症および/または肝硬変である。
【0096】
一実施形態では、工程2)で得られる複数標的スコアは有界であり、0~1の範囲である。
【0097】
一実施形態では、本発明の方法の工程2)の多重線形回帰は、正規化されたMetavir Fを標的にする。別の実施形態では、本発明の方法の工程2)の多重線形回帰は、工程1c)の正規化された(上下限:0および1)複数標的検査分類を標的にする。
【0098】
従って一実施形態では、本発明の複数標的検査は、二項ロジスティック回帰によって得られる単一標的スコアのそれぞれのために分類を導出する工程と、得られた「単一標的」分類を組み合わせて複数標的分類を作成する工程とを含む。
【0099】
一実施形態では、「単一標的」分類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014005500号に記載されているように、病変ステージまたはグレードを百分位数に従ってクラスに割り当てる分類方法によって得られる。
【0100】
別の実施形態では、「単一標的」分類は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014005500号に記載されているように、信頼できる診断間隔(RDI)に基づく分類方法によって得られる。
【0101】
本発明では、二項ロジスティック回帰によって得られた各有意な単一標的スコアのために導出された分類を組み合わせて複数標的分類を作成する工程は、以下に簡単に説明され、かつ実施例3に例示されている特定の独自の統計学的技術を用いて実施する。一実施形態では、本発明の複数標的分類は、単一標的分類の一対比較による最大の正確性に基づく分割方法を用いて得られる。
【0102】
本目的は、工程1a)で有意であると特定された単一標的二項ロジスティック回帰(BLR)のために得られた分類の最も正確な部分を選択して組み合わせることである。有意であると分かった二項ロジスティック回帰(BLR)は、スコア(カットオフの決定のため)または分類(正確性の決定のため)のいずれかで表される。
【0103】
中間分類(検討される二項ロジスティック回帰の数に応じた数)を生成した後に、最終的な複数標的分類が得られる。例えば、3つの二項ロジスティック回帰(BLR1、BLR2、BLR3)が工程1a)で有意であることが分かった場合、1つの中間分類(BLR1/BLR2またはBLR2/BLR3またはBLR1/BLR3)を生成した後に、最終的な複数標的分類が得られる(BLR1/BLR2/BLR3)。
【0104】
最初に、正確に分類された患者の割合(すなわち正確性)を2つの隣接する有意な二項ロジスティック回帰間(BLR1とBLR2またはBLR2とBLR3またはBLR1とBLR3)で比較する。この目的は、最良のカットオフを決定して、これらの2つの二項ロジスティック回帰を含む全体的な正確性を最大化することである。保持される病変クラスまたはグレードの限界は、対応するスコアの限界によって決定される。
【0105】
例えば正確性は、BLR1スコアのカットオフ未満のBLR1分類およびこのカットオフ未満のBLR2分類によって正確に分類された患者の合計である。この計算を低いスコア値から高いスコア値まで繰り返してBLR1スコアの増加値のうち最良のカットオフを見つけて全体的な正確性(「全体的な正確性」とは2つの正確性の合計を意味する)を最大化する。次いで、同じ計算を繰り返してBLR2スコアの最良のカットオフを決定する。このようにして、第1または第2のBLRのいずれかによって決定されるカットオフにより2つが組み合わせられた分類BLR1/BLR2が得られる。2つが組み合わせられた分類間での選択は、主に得られる最大の全体的な正確性によって、次いでBLR3を含む次の計算のためにBLR2により利用可能なままにする最大の集団サイズによって決まる。
【0106】
次いで、同じ計算を行ってBLR1/BLR2分類をBLR3分類と比較するかBLR2/BLR3分類をBLR1分類と比較するか、BLR1/BLR3分類をBLR2分類と比較し、最良の組み合わせられたBLR1/BLR2/BLR3分類を決定する。
【0107】
4つ以上の二項ロジスティック回帰が存在する場合、最終的な分類が得られるまで同じプロセスを繰り返し、前記最終的な分類は、工程1a)で有意であると特定された二項ロジスティック回帰のために導出された分類のそれぞれの部分を組み合わせたものである。
【0108】
一実施形態では、各有意な単一標的二項ロジスティック回帰のために得られた分類を組み合わせたものである複数標的分類は、一対比較による最大の正確性に基づく統計学的方法により得られる。
【0109】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回または少なくとも10回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0110】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対して3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0111】
一実施形態では、他の好適な統計分析または組み合わせを工程1)の二項ロジスティック回帰の代わりに用いてもよい。本発明の複数標的検査の工程1)で使用することができる統計分析の例としては、限定されるものではないが、線形判別分析または多変量解析が挙げられる。
【0112】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の線形判別分析を行う工程を含む。
【0113】
一実施形態では、本発明の検査方法は、少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の多変量解析を行う工程を含む。
【0114】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10個の変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0115】
別の実施形態では、本発明の方法は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個または15個の変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0116】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの変数は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択されてもよい。
【0117】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数は生物学的マーカーと呼ばれることもあるバイオマーカーである。
【0118】
別の実施形態では、本発明の複数標的検査は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数はバイオマーカーであり、かつ少なくとも1つの他の変数はバイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0119】
一実施形態では、対象から得られる試料は血液試料である。
【0120】
従って一実施形態では、本発明の方法は、工程1)の二項ロジスティック回帰を行うためにバイオマーカーを測定する工程を含む。
【0121】
一実施形態では、本発明の方法は、対象から血液試料を得てバイオマーカーを測定する工程も含んでもよい。
【0122】
そのような生物学的マーカーの例としては、限定されるものではないが、総コレステロール、HDLコレステロール(HDL)、LDLコレステロール(LDL)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、血小板(PLT)、プロトロンビン時間(PT)またはプロトロンビン指数(PI)またはINR(国際標準比)、ヒアルロン酸(HAまたはヒアルロナート)、ヘモグロビン、トリグリセリド、α2-マクログロブリン(A2M)、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、尿素、ビリルビン(例えば、総ビリルビンなど)、アポリポタンパク質A1(ApoA1)、III型プロコラーゲンN端末プロペプチド(P3NPまたはP3P)、γ-グロブリン(GBL)、ナトリウム(Na)、アルブミン(ALB)(例えば、血清アルブミンなど)、フェリチン(Fer)、グルコース(Glu)、アルカリホスファターゼ(ALP)、YKL-40(ヒトの軟骨糖タンパク質39)、マトリックスメタロプロテアーゼ組織阻害因子-1(TIMP-1)、TGF、サイトケラチン18、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP-2)~9(MMP-9)、ハプトグロビン、α-フェトプロテイン、クレアチニン、白血球、好中球、分葉核球、分葉核好中球、単球、例えばAST/ALT(比)、AST.ALT(生成物)、AST/ALT+プロトロンビン、AST/ALT+ヒアルロン酸などのそれらの比および数学的組み合わせが挙げられる。
【0123】
一実施形態では、生物学的マーカーは、α2-マクログロブリン(A2M)、ヒアルロン酸(HAまたはヒアルロナート)、プロトロンビン指数(PI)、血小板(PLT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、尿素、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、フェリチン(Fer)およびグルコース(Glu)を含む群から選択される。
【0124】
生物学的マーカーは対象から得られた血液試料で測定してもよい。従って、生物学的マーカーを測定することは、血液中の細胞の計数(例えば血小板数)、血液中のタンパク質濃度(例えば、α2-マクログロブリン、ハプトグロビン、アポリポタンパク質A1、フェリチン、アルブミン)の測定、血液中の化合物(例えば、尿素、ビリルビン、ヒアルロン酸、グルコース)濃度の測定、血液中の酵素(例えば、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ)活性の測定、または血液の凝固能力の評価(プロトロンビン指数)からなってもよい。そのようなアッセイまたは計数を行うための方法は、生物医学研究所においてよく使用されており、肝臓学における診断の分野で非常によく知られている。これらの方法は、免疫学的検定技術(例えば、放射免疫測定法すなわちRIA、ELISAアッセイ、ウェスタンブロットなど)において前記タンパク質を認識する1つ以上のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体を使用してもよく、前記タンパク質のmRNAの量の分析は、ノーザンブロット、スロットブロットまたはPCR型の技術、任意に質量分析と組み合わせられたHPLCなどの技術などを使用する。上記酵素活性アッセイは、これらの酵素のそれぞれに特異的な少なくとも1種の基質に対して行われるアッセイを使用する。国際特許出願の国際公開第03/073822号は、α2-マクログロブリン(A2M)およびヒアルロン酸(HAまたはヒアルロナート)を定量化するために使用することができる方法を列挙している。
【0125】
非網羅的な例として、本発明の方法において血液試料に対して実施されるバイオマーカーの測定のために使用することができる市販のキットまたはアッセイのリストを以下に示す。
・プロトロンビン時間:Quick時間(QT:Quick time)は、カルシウムトロンボプラスチン(例えば、Neoplastin CI plus、Diagnostica Stago社、アニエール、フランス)を血漿に添加して決定し、凝固時間を秒で測定する。プロトロンビン時間(PT)を得るために、100%で推定される正常血漿の各種希釈のプールから較正直線をプロットする。患者の血漿について得られた結果は正常血漿のプールに対する割合として表す。PTの上限値は限定されておらず、100%を超えてもよい。
・A2M:このアッセイはレーザー免疫比濁法、例えばベーリングネフェロメータアナライザーを用いて行う。この試薬はヒトA2Mに対するウサギ抗血清であってもよい。
・HA:血清中濃度は、ウシの軟骨から単離された特異的HA結合タンパク質を使用するELISA(例えば:Corgenix社製Biogenic SA 34130、モーギオ、フランス)で決定する。
・PLT:血液試料はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含むバキュテナー(例えば、Becton Dickinson社、フランス)の中に採取し、アドヴィア120計数器(Bayer Diagnostic社)で分析することができる。
・尿素:例えば「尿素のための動力学UV(Kinetic UV)アッセイ」(Roche Diagnostics社)を用いてアッセイを行う。
・GGT:例えば「Szaszに対して標準化されたγ-グルタミル転移酵素アッセイ」(Roche Diagnostics社)を用いてアッセイを行う。
・ビリルビン:例えば「ビリルビンアッセイ」(Jendrassik-Grof法)(Roche Diagnostics社)を用いてアッセイを行う。
・ALT:例えば「ALT IFCC」(Roche Diagnostics社)によってアッセイを行う。
・AST:例えば「AST IFCC」(Roche Diagnostics社)を用いてアッセイを行う。
・グルコース:例えば「グルコースGOD-PAP」(Roche Diagnostics社)を用いてアッセイを行う。
・尿素、GGT、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、ナトリウム、グルコース、ALTおよびASTは、分析装置、例えば、Hitachi 917(Roche Diagnostics社、D-68298、マンハイム、ドイツ)を用いてアッセイすることができる。
・γ-グロブリン、アルブミンおよびα-2グロブリン:タンパク質電気泳動、例えば:毛管電気泳動(Capillarys)(SEBIA23、ロベスピエール通り(rue M Robespierre)、92130、イシー・レ・ムリノー、フランス)を用いてアッセイする。
【0126】
本発明の方法において測定されるバイオマーカーでは、得られた値を以下のように:
・例えばα2-マクログロブリン(A2M)などのためにmg/dl、
・例えばヒアルロン酸(HAまたはヒアルロナート)またはフェリチンなどのためにμg/l、
・例えばアポリポタンパク質A1(ApoA1)、γ-グロブリン(GLB)またはアルブミン(ALB)などのためにg/l、
・例えばIII型プロコラーゲンN端末プロペプチド(P3P)などのためにU/ml、
・例えばγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアルカリホスファターゼ(ALP)などのためにIU/l、
・例えばビリルビンなどのためにμmol/l、
・例えば血小板(PLT)などのためにGiga/l、
・例えばプロトロンビン時間(PT)などのために%、
・例えば、トリグリセリド、尿素、ナトリウム(NA)、グルコースなどのためにmmol/l、または
・例えばTIMP1、MMP2またはYKL-40などのためにng/ml
で表わしてもよい。
【0127】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数は臨床マーカーである。
【0128】
別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数は臨床マーカーであり、かつ少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0129】
従って一実施形態では、本発明の方法は、工程1)の二項ロジスティック回帰を行うために臨床マーカーを決定する工程を含む。
【0130】
臨床マーカーの例としては、限定されるものではないが、体重、ボディマス指数、年齢、性別、腰回りの長さ、腹部周りの長さ、および例えば腰回りの長さ/腹部周りの長さなどのそれらの比が挙げられる。
【0131】
一実施形態では、臨床マーカーは、体重、年齢および性別の中から選択される。
【0132】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数は定性的マーカーである。
【0133】
別の実施形態では、本発明の複数標的検査は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数は定性的マーカーであり、かつ少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、治療データ、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0134】
従って一実施形態では、本発明の方法は、工程1)の二項ロジスティック回帰を行うために定性的マーカーを決定する工程を含む。
【0135】
定性的マーカーの例としては、限定されるものではないが、糖尿病、糖尿病治療または抗ウイルス治療などの治療データ、SVR(SVRは持続性ウイルス学的著効を表し、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染のための抗ウイルス療法の完了から6週間、好ましくは12週間、より好ましくは24週間後にaviremia(ウイルス血症ではない)と定められる)、病因、およびNAFLDが挙げられる。
【0136】
定性的マーカーである「病因」に関しては、当業者は、前記変数が単一もしくは複数の定性的マーカーであり、かつ肝臓疾患では病因はNAFLD、アルコール、ウイルスまたはそれ以外であってもよいことを知っている。従って、定性的マーカーは、それ以外に対するNAFLD(単一の定性的マーカー)または参照病因に対するNAFLD+参照病因に対するウイルス(複数の定性的マーカー)などとして表してもよい。
【0137】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数は物理的診断法によって得られるデータであり、物理データと呼ぶこともある。
【0138】
別の実施形態では、本方法は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数は物理的診断法によって得られるデータであり、かつ少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0139】
本発明では、物理的診断法によって得られるデータとしてはイメージングデータが挙げられる。
【0140】
従って一実施形態では、物理的診断法によって得られるデータはイメージングデータである。イメージングデータの例としては、限定されるものではないが、超音波検査、特にドップラー超音波検査、IRM、MNRまたは速度測定によって得られるデータが挙げられる。
【0141】
別の実施形態では、物理的診断法によって得られるデータは、エラストグラフィデータと呼ばれることもある弾性率測定データである。弾性率測定データの例としては、限定されるものではないが、肝硬度評価(LSE)または脾硬度評価が挙げられ、これらは、例えばFibroscan(商標)としても知られているVCTE(振動制御過渡エラストグラフィ)またはARFI(音響放射力インパルス)、SSI(超音波剪断波イメージング)、MNR弾性率測定法あるいは任意の他のエラストグラフィ技術によって得てもよい。
【0142】
従って一実施形態では、本発明の方法は、Fibroscanとしても知られている振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)、音響放射力インパルス(ARFI)、超音波剪断波イメージング(SSI)弾性率測定法またはMNR/MRIエラストグラフィによって得られる少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのデータに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0143】
別の実施形態では、本発明の複数標的検査は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数は、Fibroscanとしても知られている振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)、音響放射力インパルス(ARFI)、超音波剪断波イメージング(SSI)弾性率測定法またはMNR/MRIエラストグラフィによって得られるデータであり、かつ少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0144】
特定の実施形態では、物理データは、好ましくはVCTE(Fibroscan(商標)としても知られている、パリ、フランス)によって測定される、肝硬度評価(LSE)と呼ばれることもある肝硬度測定(LSM)である。一実施形態では、VCTEによる測定はMプローブで行う。好ましくは、検査条件は少なくとも3つ、好ましくは10個の有効な測定値を得るために製造業者によって推奨されているものである。結果は、全ての有効な測定値の中央値(キロパスカル)およびIQR(四分位数間範囲)または比(IQR/中央値)として表してもよい。
【0145】
従って一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、前記少なくとも1つの変数はVCTE(Fibroscan(商標)としても知られている)によって得られる。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、ここでは、少なくとも1つの変数はVCTEによって得られる肝硬度測定値(LSM)であり、他の変数は、バイオマーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0146】
別の実施形態では、物理的診断法によって得られるデータは放射線撮影データである。
【0147】
一実施形態によれば、物理的診断法によって得られるデータは、X線、超音波検査、コンピュータスキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法、断層撮影法、コンピュータX線体軸断層撮影法、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法または断面デンシトメトリーから選択される放射線撮影法によって得られる。
【0148】
一実施形態では、本発明の方法は、X線、超音波検査、コンピュータスキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法、断層撮影法、コンピュータX線体軸断層撮影法、陽電子放射断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法または断面デンシトメトリーによって得られる少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのデータに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0149】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数は、非侵襲的検査のスコア、好ましくは線維症検査または脂肪症検査のスコアである。
【0150】
別の実施形態では、本発明の複数標的検査は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数は非侵襲的検査のスコア、好ましくは線維症検査または脂肪症検査のスコでアであり、少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0151】
従って一実施形態では、本発明の方法は、工程1)の二項ロジスティック回帰を行うために線維症スコアと呼ばれることもある線維症検査のスコアを得る工程を含む。
【0152】
本発明では線維症検査のスコアは、線維症検査を行うことによって対象のために得られる。
【0153】
線維症検査は、対象におけるマーカーを決定し、かつ前記マーカーを数学的に組み合わせてスコアを得る工程を含み、前記スコアは通常0~1の範囲の値である。線維症検査(および関連する検査)の例としては、限定されるものではないが、APRI、ELFスコア、Fibrospect、FIB-4、Hepascore、Fibrotest、Zengスコア、NAFLD線維症スコア、FibroMeter(商標)、CirrhoMeter(商標)、CombiMeter(商標)(またはElasto-FibroMeter(商標)またはFibroMeterVCTE(商標))、InflaMeter(商標)、Actitest、QuantiMeter(商標)、P2/MSおよびElasto-Fibrotestが挙げられる。
【0154】
一実施形態では、本発明の複数標的検査は、APRI、FIB4、Fibrotest、ELFスコア、FibroMeter(商標)、FibrospectまたはHepascore、Zengスコア、NAFLD線維症スコアから選択される線維症検査により得られる少なくとも1つの線維症スコアに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、ここでは、前記線維症検査は、算術演算、例えば除算、または生物学的マーカーおよび/または臨床マーカーから選択されるマーカーの二項ロジスティック回帰などの単純な数学的関数における組み合わせを含む。
【0155】
本発明では、対象から得られた血液試料において測定されたバイオマーカーを組み合わせる工程を含む線維症検査を「血液検査」ともいう。
【0156】
APRIは血小板およびASTに基づく血液検査である。
【0157】
ELF(強化肝線維症)スコアは、ヒアルロン酸、P3PおよびTIMP-1に基づく血液検査である。
【0158】
Fibrospectは、ヒアルロン酸、TIMP-1およびA2Mに基づく血液検査である。
【0159】
FIB-4は、血小板、AST、ALTおよび年齢に基づく血液検査である。
【0160】
Hepascoreは、ヒアルロン酸、ビリルビン、α2-マクログロブリン、GGT、年齢および性別に基づく血液検査である。
【0161】
Fibrotestは、α2-マクログロブリン、ハプトグロビン、アポリポタンパク質A1、総ビリルビン、GGT、年齢および性別に基づく血液検査である。
【0162】
Zengスコアは、GGT、A2M、HAおよび年齢に基づく血液検査である。
【0163】
NAFLD線維症スコアは、AST、ALT、血小板、グルコース、アルブミン、年齢および体重に基づく血液検査である。
【0164】
FibroMeter(商標)およびCirrhoMeter(商標)は一緒に血液検査ファミリーを構成し、その内容は慢性肝疾患の原因および診断標的によって決まる。この血液検査ファミリーをFMファミリーと呼び、以下の表1に詳細が記載されている。
【表3】
FM:FibroMeter、CM:CirrhoMeter、FM A:FibroMeter ALD(アルコール性肝疾患)、FM S:FibroMeter NAFLD
A2M:α2-マクログロブリン、HA:ヒアルロン酸、PI:プロトロンビン指数、PLT:血小板、Fer:フェリチン、Glu:グルコース
HAはGGTに置き換えられる
【0165】
FibroMeterは、(i)A2M、HA、PI、PLT、AST、尿素、GGT、ALT、フェリチンおよびグルコースから選択される少なくとも3つの生物学的マーカーと、(ii)任意に、年齢、性別および体重から選択される少なくとも1つの臨床マーカーとに基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がウイルス感染である場合に推奨される第1世代(1G)のFibroMeter(FM V 1G)は、A2M、HA、PI、PLT、AST、尿素および年齢に基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がウイルス感染である場合に推奨される第2世代(2G)のFibroMeter(FM V 2G)は、A2M、HA、PI、PLT、AST、尿素、年齢および性別に基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がウイルス感染である場合に推奨される第3世代(3G)のFibroMeter(FM V 3G)は、A2M、GGT、PI、PLT、AST、尿素、年齢および性別に基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がアルコール摂取である場合に推奨される第1世代(1G)のFibroMeter(FM A 1G)は、A2M、HA、PIおよび年齢に基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がアルコール摂取である場合に推奨される第2世代(2G)のFibroMeter(FM A 2G)は、A2M、HAおよびPIに基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がNAFLD(脂肪症)である場合に推奨されるFibroMeter(FM S)は、PLT、AST、ALT、フェリチン、グルコース、年齢および体重に基づく血液検査である。
【0166】
CirrhoMeterは、(i)A2M、HA、PI、PLT、AST、尿素およびGGTから選択される少なくとも6つの生物学的マーカーと、(ii)年齢および性別の2つの臨床マーカーとに基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がウイルス感染である場合に推奨される第2世代(2G)のCirrhoMeter(CM V 2G)は、A2M、HA、PI、PLT、AST、尿素、年齢および性別に基づく血液検査である。疑いのある線維症の病因がウイルス感染である場合に推奨される第3世代(3G)のCirrhoMeter(CM V 3G)は、A2M、GGT、PI、PLT、AST、尿素、年齢および性別に基づく血液検査である。
【0167】
一実施形態では、FibroMeterおよびCirrhoMeterファミリーの検査は生物学的マーカーである尿素を含まない。
【0168】
一実施形態では、FibroMeterおよびCirrhoMeterファミリーの検査において組み合わせられるマーカーは、例えば、A2M、HAまたはGGT、PI、PLT、AST、尿素などの単一のマーカーとして、あるいは、例えばAST/PLTまたはAST/ALTなどのマーカーの比として、あるいは、例えば、((AST/ULN(例えば、45))/血小板)×100または(年齢×AST)/(血小板×ALT0.5)などの算術的組み合わせ(ここでは、ULNは正常上限である)として使用される。
【0169】
CombiMeter(商標)またはElasto-FibroMeterまたはFibroMeterVCTE(商標)は、FMファミリーの変数(上の表1に詳細が記載されている)またはFMファミリーの検査の結果とVCTE(FIBROSCAN(商標))の結果との数学的組み合わせに基づく検査ファミリーである。一実施形態では、前記数学的組み合わせは二項ロジスティック回帰である。
【0170】
InflaMeter(商標)は、ALT、A2M、PIおよび血小板を含む壊死性炎症活動を反映するFMファミリーのコンパニオン診断(companion test)である。
【0171】
Actitestは、α2-マクログロブリン、ハプトグロビン、アポリポタンパク質A1、総ビリルビン、GGT、ALT、年齢および性別に基づくFibrotestファミリーの血液検査、すなわちコンパニオン診断である。
【0172】
QuantiMeterは、線維症の領域を標的にする血液検査であり、(i)アルコール性肝疾患のために設計されている場合にはα2-マクログロブリン、ヒアルロン酸、プロトロンビン時間、血小板、(ii)NAFLDのために設計されている場合にはヒアルロン酸、プロトロンビン指数、血小板、AST、ALTおよびグルコース、あるいは(iii)慢性ウイルス肝炎のために設計されている場合にはα2-マクログロブリン、ヒアルロン酸、血小板、尿素、GGTおよびビリルビンに基づいている。
【0173】
P2/MSは、血小板数、単球画分および分葉核好中球画分に基づく血液検査である。
【0174】
Elasto-Fibrotestは、Fibrotestの変数またはFibrotestの結果と例えばFibroscan(商標)によって測定されるLSM測定値との数学的組み合わせに基づく検査である。
【0175】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つ変数を組み合わせる少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0176】
肝臓病変の存在および/または重症度を評価するために最近開発された非侵襲的線維症検査の多くは、二項ロジスティック回帰における少なくとも2つの変数の組み合わせからからなる。
【0177】
従って一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも3回の単一標的線維症検査を行う工程を含み、この線維症検査は、
i.バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、物理的診断法によって得られるデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される変数を測定する工程と、
ii.二項ロジスティック回帰において変数を組み合わせて、それによりスコアを得る工程と
を含む。
【0178】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも3回の単一標的線維症検査を行う工程を含み、この線維症検査は、
i.バイオマーカーとも呼ばれる生物学的マーカーおよび任意に臨床マーカーおよび任意に物理的診断法によって得られるデータを測定する工程と、
ii.これらのマーカーを二項ロジスティック回帰において組み合わせて、それによりスコアを得る工程と
を含む。
【0179】
バイオマーカーとも呼ばれる生物学的マーカーおよび前記生物学的マーカーを測定するための方法の例は上に示されている。臨床マーカーの例は上に示されている。物理的診断法によって得られるデータの例は上に示されている。
【0180】
マーカーを測定する工程と前記マーカーを二項ロジスティック回帰において組み合わせる工程とを含む血液検査の例としては、限定されるものではないが、ELFスコア、Fibrospect、Hepascore、Fibrotest、Zengスコア、FibroMeter(商標)、CirrhoMeter(商標)、CombiMeter(商標)(またはElasto-FibroMeterまたはFibroMeterVCTE(商標))およびElasto-Fibrotestが挙げられる。
【0181】
一実施形態では、単一標的線維症検査は、少なくとも2つのバイオマーカーを測定する工程と前記マーカーを二項ロジスティック回帰において組み合わせる工程とを含む。そのような単一標的線維症検査の例としては、限定されるものではないが、Fibrospectが挙げられる。
【0182】
別の実施形態では、単一標的線維症検査は、少なくとも1つのバイオマーカーおよび少なくとも1つの臨床マーカーを測定する工程と、前記マーカーを二項ロジスティック回帰において組み合わせる工程とを含む。そのような単一標的線維症検査の例としては、限定されるものではないが、Hepascore、Fibrotest、FibroMeter(商標)およびCirrhoMeter(商標)が挙げられる。
【0183】
別の実施形態では、単一標的線維症検査は、少なくとも1つの線維症スコアまたは前記線維症検査において組み合わせられるマーカーおよび物理的診断法によって得られる少なくとも1つのデータを決定する工程を含む。そのような単一標的線維症検査の例としては、限定されるものではないが、CombiMeter(商標)(またはElasto-FibroMeterまたはFibroMeterVCTE(商標))およびElasto-Fibrotestが挙げられる。
【0184】
一実施形態によれば、本発明の方法の工程1)で行われる単一標的線維症検査は、それぞれが異なる単一の診断標的を有するFibroMeter(商標)である。一実施形態では、前記FibroMeter(商標)は第2世代のウイルス性病因のためのFibroMeter(商標)(FibroMeterV2G)である。別の実施形態では、前記FibroMeter(商標)は第3世代のウイルス性病因のためのFibroMeter(商標)(FibroMeterV3G)である。
【0185】
従って一実施形態では、本発明の非侵襲的方法の工程(1)の二項ロジスティック回帰は、上の表1に定められているFibroMeter(商標)(またはCirrhoMeter(商標))の変数を組み合わせる。
【0186】
一実施形態では、対象における肝硬変を含む肝線維症の重症度を評価するための非侵襲的方法は、
1)それぞれが異なる単一の診断標的を有する少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回または少なくとも7回のFibroMeterを行い、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程と、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類においてソートし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む。
【0187】
一実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰は、線維症検査のFibroMeterファミリーまたはそれらの振動制御過渡エラストグラフィ(VCTE)(Fibroscanとしても知られている)との組み合わせから選択される線維症検査に対応する。
【0188】
一実施形態では、本発明の方法は、線維症検査のスコアと物理的診断法によって得られるデータとを組み合わせる少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0189】
線維症検査のスコアとは、前記線維症検査を行った場合に得られるスコアであると理解される。
【0190】
線維症検査の例は上に示されている。線維症を診断する物理的方法によって得られたデータの例は上に示されている。
【0191】
米国特許第2011/0306849号は、線維症または肝硬変の診断にとって有用な血液検査と物理データとの組み合わせについて記載している。従って、米国特許第2011/0306849号は、「指標」と呼ばれる新しいスコアが得られるFibroMeterまたはCirrhoMeterとFibroscanとの組み合わせについて記載している。特に米国特許第2011/0306849号は、二項ロジスティック回帰におけるFibroMeterまたはCirrhoMeterとFibroscanとの組み合わせについて記載している。
【0192】
FibroMeterまたはCirrhoMeterとFibroscanとの組み合わせは、上記のようにCombiMeterまたはElasto-FibroMeterまたはFibroMeterVCTE(商標)としても知られている。Elasto-FibroMeterは、FibroMeterファミリーの変数(上の表1に詳細が記載されている)またはFibroMeterファミリーの検査の結果とFibroscanの結果との数学的組み合わせに基づく検査ファミリーである。
【0193】
従って一実施形態では、本発明の方法は、FibroMeterまたはCirrhoMeterとFibroscanとを組み合わせる少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。言い換えると、本発明の方法は、それぞれが異なる単一の標的を扱う少なくとも3つの指標を決定する工程を含む。
【0194】
一実施形態では、前記少なくとも1つの変数はイメージング法によって以前に得られた肝臓組織の少なくとも1つの画像の記述子である。
【0195】
別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、少なくとも1つの変数はイメージング法によって以前に得られた肝臓組織の少なくとも1つの画像の記述子であり、かつ少なくとも1つの他の変数は、バイオマーカー、臨床マーカー、定性的マーカー、線維症を診断する物理的方法によって得られたデータ、線維症検査のスコア、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0196】
本発明では、イメージング法によって以前に得られた肝臓組織の画像の記述子とは、例えば顕微鏡法によって得られた画像または放射線画像などの肝臓の画像に関連するかそれらに由来する任意のコンピュータ生成データを指す。肝臓の画像は電子もしくはデジタル画像であってもよい。肝臓の画像は健康診断直後に回収されたものであってもよく、あるいは健康診断結果のスキャンされた画像であってもよい。例えば、肝臓の画像は肝生検試料から得られたものであってもよい。
【0197】
米国特許第2016/012583号は、臓器の医用画像のコンピュータ分析に基づいてこの臓器における病変の存在および/または重症度を評価するための自動化方法について記載している。特に、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2016/012583号は、スコアを計算するためのそれらの組み合わせにより肝臓における病変の存在および/または重症度を評価するのに有用であり得る画像の記述子について記載している。
【0198】
一実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰において組み合わせられる肝臓組織の画像の少なくとも1つの記述子は、光学技術によって得られた画像の分析により得られる。一実施形態では、光学技術は、例えば電子顕微鏡法、第二高調波発生(SHG)、多光子イメージング、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)、二光子励起蛍光(TPEF)、拡散光イメージングまたは事象関連光信号などの顕微鏡による物理的イメージングであってもよい。
【0199】
光学もしくは電子顕微鏡法を用いて観察することができる肝臓組織の画像の記述子の例としては、限定されるものではないが、(a)臓器またはその断片のエッジのフラクタル次元、(b)エッジの直線性の割合、(c)臓器の湾曲した不規則なエッジの小結節形成(エッジの小結節形成)、(d)角のある形、(e)臓器またはその断片の長さ、(f)生検の長さ、例えば、(g)肝生検の長さ、(h)数値的標本の長さ、(i)臓器の高さ、(j)臓器またはその断片の周長、(k)臓器の生来の平均周長および(l)全体周長、(m)臓器の平滑化された周長、(n)曲折としても参照される生来の周長と平滑化された周長との比、(o)臓器の最も大きな周長、(p)臓器の窪み、(q)臓器またはその断片の面積、(r)粒状度の割合、(s)断片化、(t)赤色成分に対する画像の平均強度、(u)緑色成分に対する画像の平均強度、(v)青色成分に対する画像の平均強度、(w)線維症の面積、(x)線維症のフラクタル次元、(y)平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、(z)小結節の数、(aa)30%超の線維症の周りにある小結節の数、(ab)脂肪症の面積、(ac)脂肪症の相対面積、(ad)脂肪症のフラクタル次元、(ae)門脈-中隔線維症の面積、(af)門脈-中隔線維症のフラクタル次元、(ag)類洞周囲線維症の面積、(ah)類洞周囲線維症のフラクタル次元、(ai)小葉の類洞周囲線維症の面積、(aj)線維症全体の中での類洞周囲線維症の比(すなわち、類洞周囲線維症の面積の比)、(ak)赤色、(al)緑色および/または(am)青色成分での線維症染色の明度、(an)赤色、(ao)緑色および/または(ap)青色成分での実質染色の明度、(aq)線維症と実質との明度コントラスト、(ar)線維症と臓器またはその断片との明度コントラスト、(as)肝生検標本の全表面のうち星形線維症の面積(すなわち、星形線維症の総面積)、(at)門脈-中隔の表面のうちの星形線維症の面積(すなわち、星形線維症の門脈の面積)、(au)小葉領域の表面のうちの星形線維症の面積(すなわち、星形線維症の小葉の面積)、(av)門脈-中隔の数、(aw)星形線維症の平均面積、(ax)平均の門脈-中隔領域の面積、(ay)架橋の数、(az)門脈-中隔領域間の架橋の比(すなわち、架橋のうちの門脈の比)、(ba)架橋の中の線維症の面積、(bb)架橋の厚さ、(bc)架橋の周長、(bd)架橋の表面(すなわち、架橋の面積)、(be)門脈の距離、および(cm)断片の数が挙げられる。上に列挙されている画像の記述子の定義および上に列挙されている画像の記述子を得るための方法は、米国特許出願公開第2016/012583号に含まれている。
【0200】
本発明の別の実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰において組み合わせられる肝臓組織の画像の少なくとも1つの記述子は、非光学技術によって得られる画像の分析により得られる。一実施形態では、非光学技術は、例えば、X線、超音波検査、コンピュータスキャナ、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法、断層撮影法、コンピュータX線体軸断層撮影法、陽電子放射断層撮影法(PET)または単光子放射型コンピュータ断層撮影法、例えばシンチグラフィーなどの核医学検査、光音響法、熱的方法または脳磁気図検査などの放射線撮影であってもよい。
【0201】
放射線学により観察することができる肝臓組織の画像の記述子の例としては、限定されるものではないが、(a)臓器またはその断片のエッジのフラクタル次元、(b)エッジの直線性の割合、(c)臓器の湾曲した不規則なエッジの小結節形成(エッジの小結節形成)、(d)角のある形、(e)臓器またはその断片の長さ、(f)生検の長さ、例えば、(g)肝生検の長さ、(h)数値的標本の長さ、(i)臓器の高さ、(j)臓器またはその断片の周長、(k)臓器の生来の平均周長および(l)全体周長、(m)臓器の平滑化された周長、(n)曲折としても参照される生来の周長と平滑化された周長との比、(o)臓器の最も大きな周長、(p)臓器の窪み、(q)臓器またはその断片の面積、(r)粒状度の割合、(t)赤色成分に対する画像の平均強度、(u)緑色成分に対する画像の平均強度、(v)青色成分に対する画像の平均強度、(ak)赤色、(al)緑色および/または(am)青色成分での線維症染色の明度、(an)赤色、(ao)緑色および/または(ap)青色成分での実質染色の明度、(bf)臓器の脂肪比、(bg)腹部の脂肪比、(bh)肝臓セグメントIの肥大、(bi)セグメントIの表面、(bj)肝臓セグメントIVの幅、(bk)セグメントIの寸法とセグメントIVの寸法との比、(bl)管の厚さ、(bm)管Iの表面、(bn)肝臓における内部小結節形成、(bo)門(静)脈の直径、(bp)密度強度の異質性、(bq)臓器のフラクタル組織、(br)画像の平均総密度、(bs)画像の総密度の標準偏差、(bt)画像の総密度の変動係数、(bu)画像の総密度の中央値、(bv)画像の総密度の四分位数間範囲、(bw)総密度の四分位数間範囲と画像の総密度の中央値との比、(bx)画像上の関心領域(ROI)の平均密度、(by)画像上のROI密度の標準偏差、(bz)画像上のROI密度の変動係数、(ca)画像上でのROI密度の中央値、(cb)画像上のROI密度の四分位数間範囲、(cc)ROI密度の四分位数間範囲と画像上のROI密度の中央値との比、(cd)臓器またはその断片の平均表面、(ce)臓器またはその断片の全表面、臓器またはその断片の総平均表面、(cf)臓器周長と臓器表面との比、(cg)脾臓表面と肝臓表面との比、(ch)脾臓周長と肝臓周長との比、(ci)セグメントI表面と肝臓表面との比、(cj)アランチウス管の厚さ、(ck)アランチウス管の表面、および(cl)門脈の管の厚さが挙げられる。上に列挙されている画像の記述子の定義および上に列挙されている画像の記述子を得るための方法は、米国特許出願公開第2016/012583号に含まれている。
【0202】
一実施形態では、工程1)の二項ロジスティック回帰において組み合わせられる肝臓組織の画像の少なくとも1つの記述子は、断面デンシトメトリー(TDM)とも呼ばれるCTスキャンによって得られる画像の分析により得られる。
【0203】
一実施形態では、本発明の方法は、肝臓組織の画像の少なくとも2つの記述子に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0204】
一実施形態では、本発明の方法は、肝臓組織の画像の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10個の記述子に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0205】
一実施形態では、本発明の方法は、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、類洞周囲線維症のフラクタル次元、類洞周囲線維症の面積の比(%で表示)、星形線維症の総面積(%で表示)、星形線維症の門脈の面積(%で表示)、平均の門脈の距離(μmで表示)、架橋の数、架橋のうちの門脈の比(%で表示)、平均の架橋の厚さ(μmで表示)、平均の粒状度の割合(%で表示)、平均の小結節形成の割合(%で表示)、断片化指標(%で表示)およびエッジの直線性の割合(%で表示)から選択される肝臓組織の画像の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの記述子に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0206】
別の実施形態では、本発明の方法は、エッジの直線性の割合、平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、組織標本の全表面のうちの星形線維症の面積、架橋の数および架橋の厚さから選択される肝臓組織の画像の記述子うちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全てに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0207】
別の実施形態では、本発明の方法は、平均の門脈-中隔領域の面積、架橋の周長、門脈-中隔領域間の架橋の比、平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、架橋の中の線維症の面積および類洞周囲線維症のフラクタル次元から選択される肝臓組織の画像の記述子のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全てに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0208】
別の実施形態では、本発明の方法は、肝臓臓器、組織またはその断片の周長、架橋の中の線維症の面積、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、線維症全体の中での類洞周囲線維症の比、肝臓臓器、組織またはその断片の長さ、類洞周囲線維症のフラクタル次元および曲折記述子(生来の周長、平滑化された周長および両周長間の比)から選択される肝臓組織の画像の記述子のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全てに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0209】
別の実施形態では、本発明の方法は、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長および脾臓表面と肝臓表面との比から選択される肝臓組織の画像の記述子のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全てに対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0210】
別の実施形態では、本発明の方法は、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長、脾臓表面と肝臓表面との比、Fibroscanとしても知られているVCTE、プロトロンビン時間(PI)、α2-マクログロブリン(A2M)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)から選択される少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0211】
別の実施形態では、本発明の方法は、エッジの直線性の割合、平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、肝生検標本の全表面のうち星形線維症の面積、架橋の数、架橋の厚さ、平均の門脈-中隔領域の面積、架橋の周長、門脈-中隔領域間の架橋の比、架橋の中の線維症の面積および類洞周囲線維症のフラクタル次元、臓器、組織またはその断片の周長、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、線維症全体の中での類洞周囲線維症の比、臓器、組織またはその断片の長さ、曲折記述子(生来の周長、平滑化された周長および両周長間の比)、線維症のフラクタル次元、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長、脾臓表面と肝臓表面との比およびそれらの数学的組み合わせから選択される肝臓組織の画像の記述子のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10個に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0212】
別の実施形態では、本発明の方法は、イメージング法によって以前に得られた対象の肝臓組織の少なくとも1つの画像の少なくとも2つの記述子に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、前記記述子は、エッジの直線性の割合、平均の線維症の周りの領域の割合(すなわち小結節形成の割合)、LB標本の全表面のうちの星形線維症の面積、架橋の数、架橋の厚さ、平均の門脈-中隔領域の面積、架橋の周長、門脈-中隔領域間の架橋の比、架橋の中の線維症の面積および類洞周囲線維症のフラクタル次元、臓器、組織またはその断片の周長、門脈-中隔線維症のフラクタル次元、線維症全体の中での類洞周囲線維症の比、臓器、組織またはその断片の長さ、曲折記述子(生来の周長、平滑化された周長および両周長間の比)、線維症のフラクタル次元、総密度の四分位数間範囲、アランチウス管の厚さ、生来の肝臓の平均周長、脾臓全体の平均周長、脾臓表面と肝臓表面との比およびそれらの数学的組み合わせを含む群から選択される。
【0213】
本発明は、上に記載されている複数標的診断検査を用いて対象における肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0214】
本発明は、上に記載されている複数標的診断検査を用いて対象にける死亡、特に肝臓に関連する死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法にも関する。
【0215】
一実施形態によれば、対象はヒトの患者である。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。一実施形態では、対象は成人である。本発明によれば、成人は年齢が18歳、19歳、20歳または21歳以上の対象である。別の実施形態では、対象は小児である。本発明によれば、小児は21歳、20歳、19歳または18歳未満の対象である。
【0216】
一実施形態では、対象は、肝機能障害、慢性肝疾患、肝炎ウイルス感染(特にB型、C型もしくはD型肝炎ウイルスによって引き起こされる感染)、肝毒性、肝癌、脂肪症、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、自己免疫疾患、代謝性肝疾患および肝臓の続発性合併症を伴う疾患を含む群から選択される病気に罹患するリスクがあるか罹患している。
【0217】
一実施形態によれば、肝毒性はアルコール誘発性肝毒性および/または薬物誘発性肝毒性(すなわち、アルコールまたは薬物のような任意の生体異物の化合物)である。
【0218】
一実施形態によれば、自己免疫疾患は、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変または胆管炎(PBC)および原発性硬化性胆管炎(PSC)からなる群から選択される。
【0219】
一実施形態によれば、代謝性肝疾患は、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病およびα1抗トリプシン欠乏症からなる群から選択される。
【0220】
一実施形態によれば、前記肝臓の続発性合併症を伴う疾患はセリアック病またはアミロイドーシスである。
【0221】
本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含み、ここでは二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とする。
【0222】
本発明の範囲内では、「診断標的」という用語は診断検査の主な対象を指す。本発明の方法によれば、工程1)の二項ロジスティック回帰は単一標的二項検査であり、従って、それらの主な目的は標的とされる病変の存在/不存在(はい/いいえ)を評価することにある。
【0223】
一実施形態によれば、診断標的は参照システムまたは参照分類のステージに対応する。別の実施形態によれば、診断標的は参照システムまたは参照分類のステージの組み合わせに対応する。
【0224】
一実施形態によれば、診断標的はMetavir分類のステージに対応する。一実施形態では、少なくとも3回の二項ロジスティック回帰のそれぞれが異なるMetavirステージを対象とする。別の実施形態では、本発明の方法は、MetavirステージF1、F2、F3およびF4、すなわち、F=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)を対象とする4回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0225】
別の実施形態によれば、工程1)の二項ロジスティック回帰の少なくとも1つの診断標的は、それ以外のステージに対して1種類のステージの組み合わせ、例えばF0+F1+F3+F4に対してF2である。一実施形態では、本発明の方法は、F≧1(F0に対してF≧1、すなわちF1+F2+F3+F4に対してF0)、F≧2(F≦1に対してF≧2、すなわちF2+F3+F4に対してF0+F1)、F≧3(F≦2に対してF≧3、すなわちF3+F4に対してF0+F1+F2)、F4(F≦3に対してF4、すなわちF4に対してF0+F1+F2+F3)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2およびF0+F1+F2+F4に対してF3を対象とする7回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。別の実施形態では、本発明の方法は、F=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3を対象とする10回の二項ロジスティック回帰を行う工程を含む。
【0226】
別の実施形態によれば、診断標的は、Metavir分類の壊死性炎症活動のグレード(Metavir A)に対応する。一実施形態では、少なくとも3回の二項ロジスティック回帰のそれぞれが異なるMetavir Aグレードを対象とする。
【0227】
別の実施形態によれば、診断標的は、組織学的活動指数(HAI)のグレードまたはステージに対応する。一実施形態では、少なくとも3回の二項ロジスティック回帰のそれぞれが異なるHAIグレードまたはステージを対象とする。
【0228】
別の実施形態によれば、診断標的は、Ishakシステムのグレードまたはステージに対応する。一実施形態では、少なくとも3回の二項ロジスティック回帰のそれぞれが異なるIshakグレードまたはステージを対象とする。
【0229】
別の実施形態によれば、診断標的は、NASH臨床研究ネットワーク(NASH-CRN)システムとしても知られているNAFLDに特化したKleinerグレード分類/ステージ分類のグレードまたはステージに対応する。一実施形態では、少なくとも3回の二項ロジスティック回帰のそれぞれが異なるNASH-CRNグレードまたはステージを対象とする。
【0230】
本発明の別の目的は、上に記載されている複数標的診断検査を用いて対象における死亡、特に肝臓に関連する死亡または肝臓に関連するイベント、特に合併症のリスクを評価するための非侵襲的方法である。
【0231】
一実施形態では、複数標的検査を行う工程を含む本発明の方法は、対象における死亡および/または肝臓に関連する死亡のリスクを評価するためのものである。
【0232】
別の実施形態では、複数標的検査を行う工程を含む本発明の方法は、対象における肝臓に関連するイベント、特に合併症を評価するためのものである。
【0233】
特定の一実施形態では、本発明の複数標的検査の工程1c)で得られる複数標的分類は、対象における肝臓に関連する死亡のリスクを評価するために使用される。
【0234】
一実施形態では、「死亡」および「死亡率」という用語はどちらも、全体的な死亡または死亡率(原因を問わない死亡または死亡率ともいえる)および/または肝臓に関連する死亡または死亡率を指す。肝臓に関連する死亡の原因の例としては、限定されるものではないが、門脈圧亢進症に関連する出血に続発する死亡、食道もしくは胃静脈瘤関連の出血、肝細胞癌、腹水、脳症、敗血症を伴う肝不全、急性もしくは慢性肝不全、肝腎症候群、肺肝症候群または他の肝代償不全に続発する死亡が挙げられる。
【0235】
一実施形態では、「肝臓に関連するイベント、特に合併症」という用語は、例えば、腹水、脳症、黄疸(50μmol/l超の血清ビリルビンとして定めることができる)、大きな食道静脈瘤の発生(好ましくは5mm以上の直径および/または好ましくは食道外周の25%以上の直径を有する)、静脈瘤出血、胃腸出血(例えば門脈圧亢進症に起因するものなど)、肝腎症候群、肺肝症候群、肝細胞癌、肝移植、食道静脈瘤、所定の閾値以上の門脈圧亢進症(例えば、10mmHg以上または12mmHg以上の肝静脈圧勾配など)、深刻な感染(例えば、敗血症性ショックなど)などの特定の治療法またはケアを必要とする肝臓に関連するイベントまたは合併症を指す。
【0236】
一実施形態では、「肝臓に関連するイベント、特に合併症」という用語は、例えば線維性の非肝硬変患者における肝硬変の出現などの患者における肝臓疾患もしくは障害の進行、または患者が所定の閾値を超えていること(例えば、0.982以上のFibroMeterの結果または14kPa以上のFibroscanの結果など)を指す。
【0237】
本発明によれば、死亡(原因を問わない死亡および肝臓に関連する死亡を含む)は、肝臓に関連するイベント、特に合併症を指さない。
【0238】
一実施形態では、本発明の方法は、患者における最初の肝臓に関連するイベント、特に合併症を予測するためのものである。
【0239】
本発明の一実施形態では、本発明の予後判定方法は、評価日の時点で少なくとも3ヶ月、好ましくは3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年または10年の期間内に生じる死亡または肝臓に関連するイベントのリスクを評価するためのものである。
【0240】
有利なことに一実施形態では、本発明は、
1)線維症検査のFibroMeterファミリーの変数に対してMetavirステージF1、F2、F3およびF4を標的にする4回の二項ロジスティック回帰を行い、それにより4つのスコアを得る工程と、
2)その4つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージのクラスに属するかを判定する工程と
とを含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0241】
従って、有利なことに一実施形態では、本発明は、
1)MetavirステージF1、F2、F3およびF4、すなわち、F=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)を標的にする4回のFibroMeterを行い、それにより4つのスコアを得る工程と、
2)その4つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0242】
一実施形態では、本発明は、
1)Metavirステージの組み合わせ:F=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3を標的にする7回のFibroMeterを行い、それにより7つのスコアを得る工程と、
2)その7つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0243】
一実施形態では、本発明は、
1)Metavirステージの組み合わせ:F=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3を標的にする10回のFibroMeterを行い、それにより10個のスコアを得る工程と、
2)その10個のスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0244】
別の実施形態では、本発明は、
1)VCTE(Fibroscan(商標)としても知られている)によって得られる少なくとも1つの肝硬度測定値に対して、MetavirステージF1、F2、F3およびF4、すなわちF=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)を標的にする4回の二項ロジスティック回帰を行い、それにより4つのスコアを得る工程と、
2)その4つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症の存在および重症度を評価するための非侵襲的方法に関する。
【0245】
一実施形態では、本発明は、
1)VCTE(Fibroscan(商標)としても知られている)によって得られる少なくとも1つの肝硬度測定値に対して、それぞれがMetavirステージの組み合わせ、すなわちF=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3である異なる単一の診断標的を対象とする7回の二項ロジスティック回帰を行い、それにより7つのスコアを得る工程と、
2)その7つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、複数標的診断検査を用いて対象における肝硬変を含む肝線維症を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0246】
一実施形態では、本発明は、
1)VCTE(Fibroscan(商標)としても知られている)によって得られる少なくとも1つの肝硬度測定値に対して、それぞれがMetavirステージの組み合わせ、すなわちF=0に対してF≧1(F1+F2+F3+F4に対してF0に対応する)、F≦1に対してF≧2(F2+F3+F4に対してF0+F1に対応する)、F≦2に対してF≧3(F3+F4に対してF0+F1+F2に対応する)、F≦3に対してF=4(F4に対してF0+F1+F2+F3に対応する)、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3である異なる単一の診断標的を対象とする10回の二項ロジスティック回帰を行い、それにより10個のスコアを得る工程と、
2)その10個のスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得る工程と、
3)任意に、工程2)で得られた複数標的スコアを線維症分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの線維症ステージ(または線維症ステージのクラス)に属するかを判定する工程と
を含む、対象における肝硬変を含む肝線維症を診断するための非侵襲的方法に関する。
【0247】
一実施形態では、本発明の方法はコンピュータで実行される。
【0248】
一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1つの変数に対する少なくとも3回の二項ロジスティック回帰から得られる少なくとも3つのスコアの多重線形回帰における組み合わせから得られる単一の複数標的スコア値を計算するように構成されたソフトウェアを含むマイクロプロセッサにより実施し、ここでは二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とする。
【0249】
従って、本発明の別の目的は本発明の方法を実施するためのコンピュータソフトウェアである。
【0250】
従って、本発明は、上に記載されている複数標的診断検査を用いて対象における肝線維症または肝硬変を診断するための非侵襲的方法を実行するためのマイクロプロセッサにも関する。
【0251】
本発明は、本発明の非侵襲的方法を時間間隔で実施し、それにより患者ごとに時間間隔で得られた複数標的スコアの値を比較することにより前記患者の漸進的変化を評価する工程を含む、患者を監視するための方法にも関する。
【0252】
一実施形態では、本発明の非侵襲的方法は、3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、9ヶ月ごと、12ヶ月ごと、15ヶ月ごと、18ヶ月ごと、24ヶ月ごとまたは36ヶ月ごとに行う。
【0253】
本発明は、(i)本発明の非侵襲的方法を実施する工程と、(ii)患者ごとに得られた複数標的スコアの値に従って患者に適し得る医薬組成物をデータベースの中で選択する工程とを含む、肝疾患または肝臓病に罹患している患者に関する医学的判断を助けるためのツールにも関する。
【0254】
一実施形態では、本発明の方法は、患者への治療薬の投与前と前記患者への治療薬の投与中または後に少なくとも1回実施する。
【0255】
別の実施形態では、本発明の方法は、患者への治療薬の投与前と前記患者への治療薬の投与中に規則的な時間間隔で実施する。
【0256】
一実施形態では、本発明の方法は1人の患者に対して年に1回実施する。別の実施形態では、本発明の方法は、1人の患者に対して3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、9ヶ月ごと、12ヶ月ごと、15ヶ月ごと、18ヶ月ごと、24ヶ月ごとまたは36ヶ月ごとに繰り返す。
【0257】
本発明は、例えば肝線維症または肝硬変などの肝臓病変に罹患しているものとして特定された個体にとって適した患者ケアを実施するための方法にも関する。
【0258】
従って、本発明は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程、および
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰において組み合わせて対象における肝臓病変の存在および重症度を評価するのに有用な新しい複数標的スコアを得る工程
によって、上に記載されているように個体における肝臓病変、好ましくは肝臓線維症または肝硬変の存在および重症度を判定する工程と、
肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変の重症度に従って構成された患者ケアを実施する工程と
を含む、肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変に罹患している個体を治療するための方法に関する。
【0259】
一実施形態では、本発明の方法は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程、
2)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて新しい複数標的スコアを得る工程、および
3)工程2)で得られた複数標的スコアを肝臓病変ステージまたはグレードの分類において位置付けし、それにより対象の複数標的スコアに基づいて対象がどの病変ステージまたはグレードに属するかを判定する工程
によって、上に記載されているように個体における肝臓病変、好ましくは肝臓線維症または肝硬変の存在および重症度を判定する工程と、
肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変の重症度に従って構成された患者ケアを実施する工程と
を含む。
【0260】
一実施形態では、本発明の方法は、
1)少なくとも1つの変数に対して少なくとも3回の二項ロジスティック回帰を行い、その二項ロジスティック回帰は同じ変数に対して行うがそれぞれが異なる単一の診断標的を対象とし、それにより少なくとも3つのスコアを得る工程、
1a)工程1)で得られた少なくとも3つのスコアを含む少なくとも別の二項ロジスティック回帰を行い、前記二項ロジスティック回帰の診断標的は臨床的に関連する二項標的であり、それにより、工程1)の二項ロジスティック回帰によって得られたもののうち有意な単一標的スコアを特定し、前記有意な単一標的スコアは前記臨床的に関連する二項診断標的に独立して関連づけられている工程、
1b)工程1a)において有意であることが分かった単一標的二項ロジスティック回帰のそれぞれのために肝臓病変ステージまたはグレードの分類を導出する工程、
1c)工程1b)の分類を組み合わせて肝臓病変ステージまたはグレードの複数標的分類を作成する工程、および
2)工程1a)で特定された有意なスコアを多重線形回帰、好ましくは独立変数の段階的選択による多重線形回帰において組み合わせて単一の複数標的スコアを得て、それにより対象における肝臓病変の存在および重症度を評価する工程
によって上に記載されているように個体における肝臓病変、好ましくは肝臓線維症または肝硬変の存在および重症度を判定する工程と
肝臓病変、好ましくは肝線維症または肝硬変の重症度に従って構成された患者ケアを実施する工程と
を含む。
【0261】
一実施形態では、個体はMetavirステージF1の肝線維症に罹患していると判定されており、その適した患者ケアは、線維症重症度を一定間隔で評価することにより前記個体を監視することからなる。
【0262】
一実施形態では、線維症重症度を3ヶ月ごと、6ヶ月ごと、9ヶ月ごと、12ヶ月ごと、15ヶ月ごと、18ヶ月ごと、24ヶ月ごとまたは36ヶ月ごとに評価する。
【0263】
一実施形態では、個体はMetavirステージF≧2の肝線維症に罹患していると判定されており、それに適した患者ケアは、遅れることなく少なくとも1種の治療薬を投与すること、または早期の予防的もしくは治癒的処置を適用するために合併症スクリーニングプログラムを開始することからなる。
【0264】
一実施形態では、個体はMetavirステージF≧3の深刻な肝線維症に罹患していると判定されており、それに適した患者ケアは、遅れることなく少なくとも1種の治療薬を投与すること、および任意に早期の予防的もしくは治癒的処置を適用するために合併症スクリーニングプログラムを開始することからなる。
【0265】
一実施形態では、個体は肝硬変、すなわちMetavirステージF4(F=4)の肝線維症に罹患していると判定されており、それに適した患者ケアは、遅れることなく少なくとも1種の治療薬を投与すること、および治癒的処置を適用するために合併症スクリーニングプログラムを開始することからなる。
【0266】
治療薬の例としては、限定されるものではないが、ベザフィブラート、S-アデノシル-L-メチオニン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、シリマリン、ホスファチジルコリン、N-アセチルシステイン、レスベラトロール、ビタミンE、単独またはトコフェロールと組み合わせたペントキシフィリン(pentoxyphilline)(またはペントキシフィリン(pentoxyfilline))、単独またはビタミンEと組み合わせたピオグリタゾン、ロバザ(lovaza)(魚油)、単独または抗ウイルス療法(例えばIFN)と組み合わせたPPC、INT747、ペグインターフェロン2b(ペグ化IFNα-2b)、インフリキシマブとリバビリンとの組み合わせ、幹細胞移植(特にMSC移植)、カンデサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、アンブリセンタン、FG-3019、コミカンソウ、Fu Zheng Hua Yu、ワルファリン、インスリン、コルヒチン、コルチコステロイド、ナルトレキソン、RF260330、ソラフェニブ、メシル酸イマチニブ、ニロチニブ、ピルフェニドン、ハロフジノン、ポラオレジン(polaorezin)、グリオトキシン、スルファサラジン、リモナバン、シムツズマブ(simtuzumab)、GR-MD-02、ボセプレビル、テラプレビル、シメプレビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、エルバスビル、グラゾプレビル、ベルパタスビル、ラミブジン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン、テノホビル、クレブジン、ANA380、ザダキシン(zadaxin)、CMX 157、ARB-1467、ARB-1740、ALN-HBV、BB-HB-331、Lunar-HBV、ARO-HBV、Myrcludex B、GLS4、NVR 3-778、AIC 649、JNJ56136379、ABI-H0731、AB-423、REP 2139、REP 2165、GSK3228836、GSK33389404、RNaseH阻害剤、GS 4774、INO-1800、HB-110、TG1050、HepTcell、TomegaVax HBV、RG7795、SB9200、EYP001、CPI 431-32、トピラマート、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロセート、バクロフェン、メサドン、ブプレノルフィン、オルリスタット、メトホルミン、アトルバスタチン、エゼチミン(ezetimine)、ARB、EPL、EPA-E、多系統バイオティクス(ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ブルガリカス)、オベチコール酸、エラフィブラノール(GFT505)、DUR-928、GR-MD-02、アラムコール(aramchol)、RG-125、セニクリビロック(CVC)、ロシグリタゾン、MSDC-0602K、GS-9674、LJN452、LMB763、EDP-305、エラフィブラノール、サログリタザル、IVA337、NGM282、PF-05231023、BMS-986036、アラムコール、ボリキシバット、GS-0976、リラグルチド、セマグルチド、エキセナチド、タスポグルチド、タウリン、ポリエンホスファチジルコリン、MGL-3196、ビタミンC、GS-4997、シタグリプチン、アログリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、PXS-4728A、VLX-103、高度免疫牛初乳、ナルメフェン、エムリカサン(emricasan)、マリアアザミ、プロバイオティクスおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0267】
一実施形態では、少なくとも1種の治療薬は、シムツズマブ、GR-MD-02、幹細胞移植(特にMSC移植)、コミカンソウ、Fu Zheng Hua Yu、S-アデノシル-L-メチオニン、S-ニトロソ-N-アセチルシステイン、シリマリン、ホスファチジルコリン、N-アセチルシステイン、レスベラトロール、ビタミンE、ロサルタン、テルミサルタン、ナルトレキソン、RF260330、ソラフェニブ、メシル酸イマチニブ、ニロチニブ、INT747、FG-3019、オルチプラズ、ピルフェニドン、ハロフジノン、ポラオレジン、グリオトキシン、スルファサラジン、リモナバンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗線維化薬(antifibrotic agent)である。
【0268】
一実施形態では、少なくとも1種の治療薬は、肝線維症の原因である根本的原因を治療するため、および/または肝線維症を含む肝線維症の原因である根本的原因に伴う症状を寛解または軽減するためのものである。
【0269】
一実施形態では、肝線維症の原因である根本的原因は、肝炎ウイルス感染、肝毒性、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、自己免疫疾患、代謝性肝疾患および肝臓の続発性合併症を伴う疾患からなる群から選択される。
【0270】
一実施形態では、肝線維症の原因である根本的原因はウイルス感染であり、少なくとも1種の治療薬は、インターフェロン、ペグインターフェロン2b(ペグ化IFNα-2b)、インフリキシマブ、リバビリン、ボセプレビル、テラプレビル、シメプレビル、ソホスブビル、ダクラタスビル、エルバスビル、グラゾプレビル、ベルパタスビル、ラミブジン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン、テノホビル、クレブジン、ANA380、ザダキシン、CMX 157、ARB-1467、ARB-1740、ALN-HBV、BB-HB-331、Lunar-HBV、ARO-HBV、Myrcludex B、GLS4、NVR 3-778、AIC 649、JNJ56136379、ABI-H0731、AB-423、REP 2139、REP 2165、GSK3228836、GSK33389404、RNaseH阻害剤、GS 4774、INO-1800、HB-110、TG1050、HepTcell、TomegaVax HBV、RG7795、SB9200、EYP001、CPI 431-32およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0271】
一実施形態では、肝線維症の原因である根本的原因は過剰なアルコール摂取であり、少なくとも1種の治療薬は、トピラマート、ジスルフィラム、ナルトレキソン、アカンプロセートおよびバクロフェンからなる群から選択される。
【0272】
一実施形態では、肝線維症の原因である根本的原因は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)であり、少なくとも1種の治療薬は、テルミサルタン、オルリスタット、メトホルミン、ピオグリタゾン、アトルバスタチン、エゼチミン、ビタミンE、シリマリン(sylimarine)、ペントキシフィリン(pentoxyfylline)、ARB、EPL、EPA-E、多系統バイオティクス(ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・ブルガリカス)、シムツズマブ、オベチコール酸、エラフィブラノール(GFT505)、DUR-928、GR-MD-02、アラムコール、RG-125、セニクリビロック(CVC)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0273】
一実施形態では、肝線維症の原因である根本的原因は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、好ましくは線維性のNASHであり、少なくとも1種の治療薬は、インスリン増感剤(ロシグリタゾン、ピオグリタゾンおよびMSDC-0602Kなど)、ファルネソイドX受容体(FXR)作動薬(オベチコール酸(OCAともいう)、GS-9674、LJN452、LMB763およびEDP-305など)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α/δ(PPARα/δ)作動薬(エラフィブラノール、サログリタザルおよびIVA337など)、線維芽細胞増殖因子19(FGF19)類似体(NGM282など)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)類似体(PF-05231023など)、組換え型FGF21(BMS-986036など)、ステアロイル-補酵素Aデサチュラーゼ1(SCD1)阻害剤(アラムコールなど)、頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送(ASBT)阻害剤(ボリキシバットなど)、アセチル-coAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤(GS-0976など)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)類似体(リラグルチド、セマグルチド、エキセナチドおよびタスポグルチドなど)、ウルソデオキシコール酸およびノルウルソデオキシコール酸(NorUDCA)、タウリン、ポリエンホスファチジルコリン、甲状腺ホルモン受容体(THR)β-作動薬(MGL-3196など)、抗酸化剤(ビタミンEおよびビタミンCなど)、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤(GS-4997など)、DPP-4阻害剤(シタグリプチン、アログリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチンおよびリナグリプチンなど)、血管接着タンパク質-1(VAP-1)阻害剤(PXS-4728Aなど)、ホスホジエステラーゼ-4(PDE-4)阻害剤、アンジオテンシンII-1型受容体拮抗薬(ロサルタンおよびテルミサルタンなど)、抗炎症性化合物(セニクリビロック、VLX-103(経口ペンタミジン)および高度免疫牛初乳)など、トール様受容体4拮抗薬(ナルメフェンなど)、カスパーゼ阻害剤(エムリカサンなど)、ペントキシフィリン、S-アデノシルメチオニン、マリアアザミおよびプロバイオティクスからなる群から選択される。
【0274】
本発明の別の目的は、対象における肝硬変を含む肝線維症の治療に使用するための少なくとも1種の治療薬であり、ここでは、治療される対象は上に記載されているように特定され、その治療は、前記対象における肝線維症の重症度および/または前記対象における肝線維症の原因である根本的原因に応じて上に記載されているようにその対象に合わせて構成される。
【0275】
複数標的検査は、いくつかの単一標的検査(すなわち、二項ロジスティック回帰)を行う工程と、これらの相補的な単一標的検査を組み合わせる工程とを含む。従って、それらはいくつかの診断標的、すなわちいくつかの線維症ステージを扱うように構成されている。
【0276】
複数標的検査の主な利点は、それらの診断性能における有意な向上、特に全体的な正確性における有意な向上である。
【0277】
本発明の複数標的検査から導出される複数標的の組み合わせは、対象の肝臓に関連する死亡のリスク、対象の肝臓に関連しない死亡または対象における合併症などの肝臓に関連するイベントのリスクを評価するためにも使用することができる。
【0278】
実施例1では、本出願人は、Multi-FibroMeter(MFMsV2G)の肝硬変のためのAUROCが対応するFibroMeterと比較して有意に増加することを実証している。肝硬変診断では、MFMの比較対象(comparator)はFibroMeterでありCirrhoMeterではないが、それはFibroMeterが複数標的診断のための過去の基準であったからである。言い換えると、MFMsを構築する場合、その目的は、MFMsがCirrhoMeterの肝硬変のための診断性能をFibroMeterに追加することであった。全てのMetavir線維症ステージを検討すると、Obuchowski指標によって評価される性能は、特に第3世代の大部分の公開されている単標的検査(FibroMeterおよびCirrhoMeter)と比較してMFMsでは有意に向上する。複数のクラスにおける線維症分類に関しては、参照としての公開されているFibroMeterV2G検査による87.6%に対して、新しいMFMsV2G検査により92.3%の正確性が得られた。これは、慢性肝炎C検証集団(validation population)(4.4%)において持続された正しい分類における統計的に有意な4.7%の増加に対応する。これらの増加はMFMsV3G検査を用いた場合にさらに顕著であり、それぞれ5.9%および7.1%であった。この正確性の増加は、異なる肝疾患病因(慢性肝炎B、HIV/慢性肝炎C、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患)を代表する他の検証集団でさらに観察された。
【0279】
さらに、本出願人は、他の血液検査と比較した場合に、MFMsは肝硬変診断のために慢性肝炎Cにおいて評価される全ての検査よりも有意に優れており、これはAPRI、Fibrotest、ZengスコアおよびHepascoreに対する新しい当然の利点(過去の対応する単標的検査に関して)である(MFMsV3Gを用いる場合を除くが、MFMsV3GはHepascoreに対してObuchowski指標において有意な増加を得たので有利なままである)ことを示す。また他の病因では、MFMsは肝硬変診断および/またはObuchowski指標のために慢性肝炎Cにおいて評価される全ての血液検査よりも有意に優れている(Hepascoreに対するものを除く)。これはFibrotestとFibroMeterV2Gとの比較およびHepascoreとFibroMeterV3Gとの比較に関する新しい利点を意味する。実際には、FibroMeterV3GはHepascoreよりも有意に劣るものであり、MFMsV3GはHepascoreとは有意に異ならなかった。
【0280】
重要なことに、実施例1に示されている複数標的診断検査の構築は、半定量的(順序)基準、例えば放射線学における重症度スコアに基づく任意の非侵襲的診断検査に適用することができる。
【0281】
実施例2では、本出願人は、参照としての公開されているFibroMeterV2G検査による87.6%に対して新しいMFMc検査により得られた92.7%の正確性について記載している。正しい分類における5.1%の増加は、12.3%のFibroMeterV2Gにより誤分類された患者の割合における41.1%の減少に対応する。この5%の正確性の増加は、異なる肝疾患病因(慢性肝炎C、HIV/慢性肝炎C、慢性肝炎B)を代表する3つの検証集団においてさらに観察される。
【0282】
別の利点は、複数標的がFibroMeterV2GおよびCirrhoMeterV2Gのような以前に公開された相補的な単標的検査を組み合わせるための自動化手段である点である。このように、複数標的は肝硬変のような重要な診断標的のためにより高い正確性を提供する。従って、MFMcは個体の患者線維症ステージに合わせてより良好に構成されている。
【0283】
肝硬変診断に関しては、非侵襲的検査の基準はVCTEなどの肝臓の弾性率測定法である。実施例1に示されている結果は、VCTEが実際にCirrhoMeterV3Gよりも高い有意差で肝硬変専用の血液検査(CirrhoMeterV2G)よりも優れていることを示している。MFMcはこの欠点をなくし、評価される全ての病因におけるVCTEの正確性よりも有意ではないが優れている正確性を提供する。
【0284】
主な臨床的診断標的が肝硬変である場合、単一のカットオフを用いる単一標的検査による二項診断は十分であることを立証することができた。但し、単一のカットオフを用いる二項診断手法の使用には2つの主な限界がある。第1に、肝硬変の非侵襲的診断のための基準であるVCTE(Fibroscanとしても知られている)は、臨床医によって使用される14kPaの通常のカットオフを用いた場合、慢性肝炎Cでは肝硬変のための陽性予測値(PPV)がたった57%であった(Cales P.ら.「肝硬変診断および肝線維症ステージ分類:肝硬変血液検査に対する過渡弾性率測定法(Cirrhosis Diagnosis and Liver Fibrosis Staging:Transient Elastometry Versus Cirrhosis Blood Test).J Clin Gastroenterol 2015;49:512-519)。実施例に示されているMFMc分類の目的は、肝硬変診断の3つのカテゴリ、すなわち確定的な肝硬変(F4、MFMcV2Gの肝硬変のための陽性予測値(PPV):96%、結果は示されていない)または初期肝硬変(F3/4、肝硬変PPV:67%)のための2つの確定的クラスおよび検査結果をVCTEまたはイメージングおよびより緻密な経過観察などの他の利用可能な検査の観点において検討する必要がある疑わしい肝硬変のための残りのクラス(F3±1、肝硬変PPV:21%)を提供することである。二項肝硬変診断の第2の限界は、非肝硬変結果が臨床医に大きな不確定性を残すことである。特に、それらは、緻密な経過観察またはより積極的な介入を必要とする深刻な線維症を有する患者を有意な線維症を有していない患者から容易に区別することができない。その点において、複数標的検査を用いて得ることができるような詳細かつ高性能な分類は、はるかに情報価値がある。
【0285】
実施例2では本出願人は、MFMc分類が特に4つの線維症クラス、すなわちF2±1、F3±1、F3/4およびF4間の良好な予後識別を提供することも実証している。FibroMeterV2Gと比較してF3/4とF4クラスとの予後識別が向上する。MFMc分類は、1つのクラス当たり最大2つのFステージを有する単純化された分類である。徹底的な分類(1つのクラス当たり最大3つのF)は、単純化された分類(1つのクラス当たり最大2つのF)と比較してより良好な正確性という明白な利点を有する。但し、後者はより良好な精度および予後判定を提供する。従って、単純化された分類は臨床業務にとって十分であるように思われる。徹底的な分類という関心の欠如は、組織学的病期分類による誤分類の原因(試料サイズおよび観察者の読取り)に起因し得る。これは非組織学的病期分類によってではなく、侵襲的検査によるより良好な予後判定によって強固にされる(Naveau S.ら.アルコール性肝疾患を有する患者における線維症の非侵襲的バイオマーカーの診断および予後値(Diagnostic and prognostic values of noninvasive biomarkers of fibrosis in patients with alcoholic liver disease.Hepatology 2009;49:97-105)。最後に、予後判定はF2±1またはさらにはF2/3クラスによってのみ有意に変化し、このようにして最小分類を4つのクラス、すなわちF0/1(有意でない線維症)、F2/3(有意な線維症)、F3/4(初期の肝硬変)およびF4(確定的な肝硬変)に分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0286】
図1】非侵襲的検査の線維症分類を示す図である。FibroMeterV2GおよびCirrhoMeterV2Gは0~1の範囲の対応する検査値から導出される。VCTEの目盛は2.5~75kPaの範囲である。複数標的FibroMeter(MFMc)分類は独特な検査スコアから導出されないので図解の限界を有する(すなわち、対応する数値目盛が存在しない)。線維症クラスは、各矩形内の対応するMetavir Fステージによって示されている。
図2】Multi-FibroMeter(MFMc)の構築を示す図の組み合わせである。パネルAは4つの異なる統計学的工程を示す。工程1(BLR:二項ロジスティック回帰)は、FMF≧1、FMF≧2、FMF≧3およびFMF=4と呼ばれる4つの単一標的検査を含む例を記述している。パネルBはパネルAの工程4の構築に関する詳細を示し、これにより単一標的検査分類の一部を組み込むことによって複数標的検査の最終的な組み合わせられた分類が得られた。これは、4つの統計学的下位工程、すなわち1)FMF≧1分類の一部とFMF≧2分類の一部との正確性の比較、2)FMF≧1分類の一部とFMF≧2分類の一部との組み合わせ、3)FMF≧1+FMF≧2分類の一部とFMF=4分類の一部との正確性の比較、4)FMF≧1+FMF≧2分類の一部とFMF=4分類との一部との組み合わせ(すなわち複数標的検査分類)を含んでいた。図は単一標的検査のスコアカットオフを示す。
図3A】検査分類による慢性肝疾患の多岐にわたる原因における肝臓に関連する死亡率のKaplan-Meierプロットを示すグラフの組み合わせである(検証集団#4:1559人の患者):(A)FibroMeterV2G。垂直のダッシュは打ち切り患者を示す。
図3B】検査分類による慢性肝疾患の多岐にわたる原因における肝臓に関連する死亡率のKaplan-Meierプロットを示すグラフの組み合わせである(検証集団#4:1559人の患者):(B)徹底的な複数標的FibroMeter(MFMc)。垂直のダッシュは打ち切り患者を示す。
図3C】検査分類による慢性肝疾患の多岐にわたる原因における肝臓に関連する死亡率のKaplan-Meierプロットを示すグラフの組み合わせである(検証集団#4:1559人の患者):(C)単純化された複数標的FibroMeter(MFMc)。垂直のダッシュは打ち切り患者を示す。
図4】3809人の患者の集団全体においてFibroMeterV2G(FM2G)、FibroMeterV3G(FM3G)、Multi-FibroMeterV2G(MFM2G)およびMulti-FibroMeterV3G(MFM3G)により得られた正確に分類された患者の割合を示すグラフである。矢印は正確に分類された患者の割合の一対比較に関連づけられたp値を示す。実線は有意差を示し、破線は非有意差を示す。
【実施例
【0287】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0288】
実施例1:複数標的スコアのために構築された複数標的FibroMeter(MFMs)
患者および方法
集団
最初に計2589人の患者を本研究に含めた。1012人の患者(導出集団(derivation population))からのデータを用いて複数標的診断検査を開発し、1577人の患者(検証集団#1~#5)において外部検証を行った。
【0289】
異なる病因を有する慢性肝疾患に罹患している1220人の患者を含む検証集団(検証集団#6)によりさらなるデータを得た。
【0290】
従って、集団全体は3809人の患者を含んでいた。
【0291】
導出集団
導出集団はCHCを有する1012人の患者を含んでいた[4]。従って個々の患者データは、研究設計、患者動員、血液マーカー判定および専門の病理学者による肝組織像解釈のために独立した5つのセンターから入手可能であった。
【0292】
検証集団
診断集団-検証集団#1は慢性肝炎C(CHC)を有する641人の患者を含んでいた[5、6]。慢性肝炎B(CHB)のための検証集団#2は、以前に公開されたデータベースから抽出し[7]、全員が慢性肝炎(30.4%がHBeAg陽性)を有する152人の患者を含み、HBsAgの不活性キャリアを除外した。検証集団#3は、もし抗HCV(C型肝炎ウイルス)および抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体ならびに血清中にHCV RNAを有していれば1997年4月から2007年8月まで前向き研究に含められた、CHCおよび(HIV)感染を有する444人の患者を含んでいた[8]。集団#4は、2002年1月から2013年3月までアンジェ大学病院での研究および2005年9月から2011年7月までペサック大学病院での研究に連続的に含められた、生検により確定診断された非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する225人の患者からなっていた。NAFLDは、同時の脂肪症誘発性薬物(コルチコステロイド、タモキシフェン、アミオダロンまたはメトトレキサートなど)、過剰なアルコール摂取(男性では210g/週超または女性では140g/週超)、慢性肝炎BもしくはC感染および他の同時の慢性肝疾患(CLD)の組織学的証拠の排除後に肝生検において肝臓脂肪症として定めた。肝硬変合併症(腹水、静脈瘤出血、全身感染または肝細胞癌)を有していた場合には患者を除外した。集団#5は以前に公開された研究で使用されたデータベースから抽出したアルコール性肝疾患(ALD)を有する115人の患者を含んでいた[9]。集団#6は、異なる慢性肝疾患(CLD)病因、すなわちCHC:41.3%、NAFLD:31.3%、単なるアルコール性肝疾患(ALD):8.1%または混合型:11.7%、CHB:5.7%、重感染(HIV/CHC、HIV/CHB、CHB/VHD、その他):1.2%、先の病因の他の組み合わせ:0.7%を有する1220人の患者を含んでいた。これらの患者は2011年から2016年までアンジェおよびペサックセンターにおける研究に連続的に含められ、血液検査とVCTEとが一致しない場合には肝生検がより頻繁に指示されるより最近の臨床業務集団の代表である。従って、この集団は別々に検討した。
【0293】
診断方法
組織学的評価
1.4~1.6mmの直径の針を用いるMenghiniの技術を用いて肝生検を行った。生検標本をホルマリン-アルコール-酢酸溶液に固定してパラフィンで包埋し、次いで5μm厚の切片に切断し、ヘマトキシリン-エオシン-サフランで染色した。アンジェおよびFibrostar研究(検証集団#1の一部)において不一致の場合には[11]、コンセンサスリーディングによる2人の上級専門家と他のセンターの上級専門家とによって、Metavir線維症(F)ステージに従って肝線維症を評価した[10]。これらの肝臓標本の所見は非侵襲的検査による肝線維症評価のための基準として機能した。
【0294】
FibroMeterの変数
生物学的マーカーは、慢性ウイルス肝炎において異なる病変を診断するために行われる血液検査で以前に使用されたものであった[9、12]。以下の生物学的マーカー:血小板、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ヒアルロン酸、尿素、プロトロンビン指数、FibroMeterV2Gで使用されるα2-マクログロブリン[4、9]+FibroMeterV3Gで使用されるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)[12]および肝臓の活性を標的にするInflaMeter[13]で使用されるアラニンアミノトランスフェラーゼを含めた。臨床マーカー(FibroMeterV2Gで使用される年齢および性別)も含めた。従って、10個の変数が利用可能であった。ヒアルロン酸を含めるか(FibroMeterV2Gの場合のような第2世代)、含めずに(FibroMeterV3Gの場合のような第3世代)、新しい検査を構築した。新しい検査との比較のための参照血液検査は、有意な線維症(F≧2)を標的にするFibroMeterV2GまたはFibroMeterV3Gおよび肝硬変を標的にするCirrhoMeterV2GまたはCirrhoMeterV3Gであり、これらは以前に計算された分類によるものである[14、15]。
【0295】
非侵襲的検査
計19個の変数(4つの臨床マーカーおよび15個の生物学的マーカー)を、17個の検査(14個の血液検査、1つの弾性率測定法技術および2つの組み合わせ検査)で使用した。11個の検査をCHC集団において構築し、かつ5つの検査を他のCLD原因集団において構築した(NAFLDにおいて2つ、ALD、CHBまたはHIV-HCVにおいてそれぞれ1つ)。
【0296】
血液検査-Fibrotest[16]、Hepascore[17]、Fib-4[18]およびAPRI[19]を公開されているか特許取得されている式に従って計算した。FibroMeterV2G[20]、CirrhoMeterV2G[3]、FibroMeterV3G[12]およびCirrhoMeterV3G[12]は、CHCにおけるMetavir線維症ステージ分類のために構築された。FibroMeter/CirrhoMeterV2GはFibroMeter/CirrhoMeterV3Gとは異なり、前者に含められるヒアルロン酸が後者においてGGTに置き換えられる。CirrhoMeterは肝硬変診断のために構築されたものであり、全てのFibroMeterバイオマーカーを含む[3]。ZengスコアはCHBにおいて構築された[21]。FibroMeterALD2G(第2世代)[13]およびFibroMeterNAFLD[22]はそれぞれALDおよびNAFLDにおけるMetavir線維症ステージ分類のために構築された。NAFLD線維症スコアは、NAFLDにおけるNASH-CRN(またはKleiner)線維症ステージ分類のために構築された[23]。これらの多くの検査は各病因に特異的な少なくとも1つの検査を提供した。一括管理されたFibrostar研究(集団#1の一部)を除く全ての血液アッセイを各センターの同じ研究室で行った。検査結果は補正ルール(例えばエキスパートシステム)を使用せずに生データとして使用した。
【0297】
肝臓の弾性率測定法-振動制御過渡弾性率測定法すなわちVCTE(Fibroscan、Echosens社、パリ、フランス)を、患者データに対して盲検化された経験豊富な(本研究前に50回を超える検査経験を有する)観察者によって行った。検査条件は製造業者によって推奨されるものであった[24]。10個の有効な測定値が記録された場合にVCTE検査を止めた。結果(kPa)は全ての有効な測定値の中央値および四分位数間範囲として表した。
【0298】
検査の構築
本研究の主目的は、FibroMeterファミリーの単標的検査と比較した場合に診断性能における有意な向上を示す複数標的FibroMeterを構築することであった。特にこの目的は、肝硬変のObuchowski指標および受信者動作特性下面積(AUROC)がFibroMeterのものよりも有意に高く、かつ肝硬変のAUROCがCirrhoMeterのものよりも高いか同等である複数標的検査を得ることであった。
【0299】
本研究の第2の目的は、FibroMeterファミリーに属していない他の線維症検査、特にFibrotest、Hepascore、ZengスコアおよびVCTE(Fibroscanとしても知られている)と比較した場合に向上した診断性能を示す複数標的FibroMeterを得ることであった。
【0300】
複数標的分類子システムの構築は3回の連続した工程で行った。
【0301】
工程1:単一標的検査の構築-単一検査は、FibroMeter検査ファミリーのマーカーに対する二項ロジスティック回帰に一致し、ここでは、前記マーカーは単一のマーカーとして、またはマーカーの比として、あるいはマーカーの算術的組み合わせとして組み合わせられる。これらの検査は、5つのMetavir Fステージによって可能な限り多くの診断標的を用いる従来の二項ロジスティック回帰手法を用いて構築した。これらの標的は、線維症(F≧1)、有意な線維症(F≧2)、深刻な線維症(F≧3)および肝硬変(F=4)であった。このようにして4つの単一標的検査を得た。6つのさらなる標的を、2つのカットオフ、例えばそれ以外のステージに対してF1またはF1+F2またはF1+F2+F3を用いる二項標的によって得た。6つのさらなる標的は、F0+F2+F3+F4に対してF1、F0+F1+F3+F4に対してF2、F0+F1+F2+F4に対してF3、F0+F3+F4に対してF1+F2、F0+F1+F4に対してF2+F3およびF0+F4に対してF1+F2+F3であった。このようにして全部で10個の単一標的検査を得ることができた。
【0302】
工程2:単一標的検査の選択-先の単標的検査を5つのMetavirステージを標的にする段階的な多重線形回帰に含めた。Metavirステージを1に正規化する、すなわち4で割って、0と1との間のスコアを得た。この新しいスコアを複数標的FibroMeter(MFM)と呼んだ。
【0303】
工程3:複数標的検査の分類-簡単に言うと、先のMFMスコアとMetavirステージとの対応を公開されている方法に従って導出した[20]。この任意の工程により6つの線維症クラス、すなわち0/1(Metavir F0/1に対応する)、1/2(F1/2)、2(F2±1)、3(F3±1)、3/4(F3/4)および4(F4)を含む分類を得た。
【0304】
統計
正確性-各検査スコアの診断の正確性は2つの記述子で表した。主な記述子は、集団間の線維症ステージ有病率における差をより良好に考慮し、かつ、このようにして範囲バイアスを限定するためのObuchowski指標(OI)[25]であった。この指標は、異常な線維症ステージ分類などの順序基準に合わせて構成された多項バージョンのAUROCである。至適基準の結果のN(=5:F0~F4)個のカテゴリおよびAUROCstを用いて、カテゴリ「s」とカテゴリ「t」とを区別する診断検査のAUROCを推測する。OIは、N個のカテゴリのうちの2つの間の全ての一対比較に対応するN(N-1)/2(=10)個の異なるAUROCstの重み付け平均である。さらに、線維症ステージにおける差、すなわちステージ間の差が1である場合に1のペナルティ、その差が2である場合に2のペナルティ...に比例するペナルティ関数を用いてOIを評価した。肝生検による最も大きな一連のCHCに従って参照有病率を標準化して[26]、病因間の比較を容易にした。従って、その結果は、非侵襲的検査が異なる線維症ステージを有する2つのランダムに選択された患者を正確にランク付けする確率として解釈することができる。
【0305】
検査スコアの診断の正確性のための第2の記述子はAUROC、すなわち二項診断標的のための古典的な指標であった。
【0306】
分類検査の全体的な正確性は、Metavir Fに従って良好に分類された患者の割合によって評価した。
【0307】
楽観バイアス-その名の通り、楽観バイアスは検査が構築される集団において性能を最大化する。これは、その線維症分類のためのFibroMeter、CirrhoMeterおよび導出集団におけるMFMおよび検証集団#1におけるVCTEに影響を与えた。従って、これらの集団以外で外部検証を行った。
【0308】
試料サイズの計算-主な集団(導出および検証#1)のサイズは肝硬変診断のための2つの検査間の有意差を検出するのに必要なサイズであった。0.05のαリスク、0.05のβリスク、0.12の肝硬変有病率、0.82のAUROC相関および両側性検査の場合、肝硬変のために以下の期待されるAUROC値、すなわち第1の検査:0.92、第2の検査:0.90のために必要な試料サイズは659人の患者であった[3]。
【0309】
その他-定量的変数は平均±標準偏差として表した。データはSTARD[27]および肝臓FibroSTARD声明[28]に従って報告し、診断意図基準(intention to diagnose basis)で分析した。SPSSバージョン18.0(IBM社、アーモンク、ニューヨーク、米国)およびSAS9.2(SAS Institute社、カリー、ノースカロライナ州、米国)を用いて専門の統計学者(SB、GH)の管理下で主な統計分析を行った。
【0310】
結果
集団の特性
研究した集団の主な特性が表2に示されている。
【表4】
NA:該当なし
【0311】
診断性能
導出集団
性能は全てのこれらの検査のために楽観バイアスにより最適化され、それ以外の検査のために最適化されていないため、Multi-FibroMeterをこの1012人のCHC集団において単標的FibroMeterのみと比較した。主な診断指標は表3に報告されている(以下を参照)。これらの診断指標は、有意な線維症のためのMulti-FibroMeterV2GとFibroMeterV2G(診断標的:有意な線維症)または肝硬変のためのCirrhoMeterV2G(診断標的:肝硬変)との間で同様であり、特に正確性は有意に異なっていなかった(詳細は示さず)。全ての診断標的のためのAUROCおよびObuchowski指標は以下の表4に列挙されている。予期したとおり、Multi-FibroMeterV2Gは全ての診断標的の中でランクが一番であった(表4)。一対比較は主な二項診断標的であるため、肝硬変AUROCについては以下の表5に詳細が記載されており、Obuchowski指標は全体的な性能を反映しているいるため、以下の表6に詳細が記載されている。Multi-FibroMeterの肝硬変AUROCは、FibroMeterおよびCirrhoMeterよりも高かった。この向上はFibroMeterに対しては有意であったがCirrhoMeterに対しては有意でなかったため、本目的は達せられた。Multi-FibroMeterのObuchowski指標は、FibroMeter(目的は達せられた)およびCirrhoMeter(本目的を超える)に対して有意に向上した。
【表5】
診断標的ごとの最良の結果は太字で示されている。

【表6】
AUROC:受信者動作特性下面積。
この導出集団において血液検査の診断カットオフを帰納的に固定した(有意な線維症のための最大のYouden指数(=最大の正確性)および肝硬変のための最大の正確性)。
肝臓標本との一致を反映するカッパ指数(全てがp<0.001)。
AUROCは診断カットオフとは独立している。

【表7】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterV2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV3G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G
有意差は太字で示されている。

【表8】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterv2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV3G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G
有意差は太字で示されている。
【0312】
CHC検証集団
Multi-FibroMeterをこの641人のCHC集団において10個の他の単一検査と比較し、ここでは楽観バイアスを排除した(以下の表7)。組み合わせられたElasto-FibroMeterは楽観バイアスによりこの比較では別個に検討した。ここでも、Multi-FibroMeterV2GはObuchowski指標においてランクが一番であった。
【表9】
VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ(Fibroscanによる)。
ND:楽観バイアスが原因で行われなかった。

【表10】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterV2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV2G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G、FT:Fibrotest、HS:Hepascore、VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ(Fibroscanによる)、EFM2G:Elasto-FibroMeterV2G、EFM3G:Elasto-FibroMeterV3G。有意差は太字で示されている。
楽観バイアス
【0313】
肝硬変AUROCのための一対比較は上の表8に詳細に記載されている。Multi-FibroMeterのAUROCは、FibroMeterまたはCirrhoMeterに対して有意に向上し(multi-FibroMeterV2GとCirrhoMeterV2Gとの境界線上の有意性(borderlines ignificance))、これは本目的を超えており、導出集団において観察される結果を強固にした。また、Multi-FibroMeterのAUROCは、VCTE以外の全ての他の単一血液検査よりも有意に高かった(Multi-FibroMeterV3GとHepascoreとの間を除く)。Multi-FibroMeterによってもたらされる有意な向上を考慮すると、Multi-FibroMeterV2GがFibrotest(p<0.001)またはHepascore(p=0.025)に対する有意な優位性という新しい利点を有し、これはCirrhoMeterV2Gでは以前に認められなかった事例であることを理解されたい(それぞれp=0.128またはp=0.671)。この新しい利点はMulti-FibroMeterV3Gではより際立っていたが、その理由は、その差がAPRI、FibrotestおよびZengスコアに対して有意になったが、これらの最後の3つの検査の肝硬変のためのAUROCはFibroMeterV2GおよびさらにはCirrhoMeterV3Gとは有意に異なっていなかったからである。VCTEを検討すると、Multi-FibroMeterV3Gの肝硬変のためのAUROCはVCTEのAUROCとは有意に異なっていなかったが、後者はFibroMeterV3GまたはCirrhoMeterV3GのAUROCよりも有意に高かった。言い換えると、Multi-FibroMeterV3Gはその対応する単標的検査に対するVCTEの優位性を有していなかった。
【0314】
Obuchowski指標のための一対比較は以下の表9に詳細に記載されている。Multi-FibroMeterのObuchowski指標はFibroMeterまたはCirrhoMeterに対して有意に向上した(Multi-FibroMeterV2GとFibroMeterV2Gとの間を除く)。Multi-FibroMeterのObuchowski指標は他の血液検査の全てのObuchowski指標よりも有意に高かった。これは、主にMulti-FibroMeterV3GとHepascoreとの間での新しい利点であった。CirrhoMeterの差において全ての単一血液検査に対するMulti-FibroMeterの有意な優位性の発生も認められたが、CirrhoMeterが肝硬変診断のためにのみ使用されたため、この向上は臨床的関心が低かった。Multi-FibroMeterとVCTEとの比較を検討すると、その差はFibroMeterまたはCirrhoMeterの場合とは異なって有意でないままであった。Multi-FibroMeterV3GとElasto-FibroMeterとの比較を検討すると、Elasto-FibroMeterを支持する楽観バイアスにも関わらず、その差はFibroMeterV3GまたはCirrhoMeterV3Gとは対照的に有意にならなかった。言い換えると、Multi-FibroMeterV3Gは対応する単標的血液検査に対するElasto-FibroMeterの優位性を有していなかった。
【表11】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterV2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV2G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G、FT:Fibrotest、HS:Hepascore、VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ(Fibroscanによる)、EFM2G:Elasto-FibroMeterV2G、EFM3G:Elasto-FibroMeterV3G。有意差は太字で示されている。
楽観バイアス
【0315】
非CHC検証集団
肝硬変のためのAUROCおよびObuchowski指標を、以下の表10の4つの他の病因について11~17個の線維症検査で比較した。Multi-FibroMeterは対応する単標的血液検査よりも高いObuchowski指標を有していた(ALDを除く)。大部分の検査において全ての病因間で診断指標において若干のばらつきが認められたが(すなわち、CHC検証集団と比較してObuchowski指標の有意差は認められなかった、結果は示されていない)、病因を統合して以下の表11の935人の患者からなる非CHC集団を得た。
【0316】
以下の表12に肝硬変AUROCのための一対比較が詳細に記載されている。Multi-FibroMeterのAUROCはFibroMeterに対して有意に向上したがCirrhoMeterに対して向上せず、これは目的に叶っていた。Multi-FibroMeterのAUROCはいくつかの単一血液検査:APRI、Fib4およびFibrotest(multi-FibroMeterV3Gを除く)よりも有意に高く、この最後の差はFibroMeterV2Gに対するmulti-FibroMeterV2Gの新しい利点である。Multi-FibroMeterV3Gを検討すると、Hepascoreと対応するFibroMeterV3Gとの間で観察される有意な劣等性が失われて有意でなくなった。
【0317】
Obuchowski指標のための一対比較は以下の表13に詳細に記載されている。Obuchowski指標はFibroMeterまたはCirrhoMeterに対して有意に向上した。Multi-FibroMeterのObuchowski指標は全ての他の単一血液検査(Hepascoreを除く)よりも有意に高かった。他の新しい(小さい)利点は、CirrhoMeterの差におけるAPRI、FibrotestまたはZengスコアに対するMulti-FibroMeterV3Gの有意な優位性であった。
【0318】
376人の患者のサブセットにおいてVCTEを含む3つの検査との比較を行った(以下の表14)。
【表12】
VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ(Fibroscanによる)
楽観バイアス

【表13】

【表14】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterV2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV3G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G、FT:Fibrotest、HS:Hepascore、FMA:FibroMeterALD2G。有意差は太字で示されている。

【表15】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM2G:複数標的FibroMeterV2G、FM3G:FibroMeterV3G、CM3G:CirrhoMeterV3G、MFM3G:複数標的FibroMeterV3G、FT:Fibrotest、HS:Hepascore、FMA:FibroMeterALD2G。有意差は太字で示されている。

【表16】
【0319】
組み合わせられた検証集団#1~#6(1746人の患者)においてMulti-FibroMeterとVCTEとの比較も行った。有意な線維症(F≧2)および肝硬変(F=4)のためのAUROC、Obuchowski指標および正確に分類された患者の割合を比較した。Multi-FibroMeterV2Gは、Obuchowski指標(OI=0.777)および正確に分類された患者の割合(83%)の点で最良の結果を示した。VCTEは、0.755のObuchowski指標および80%の正確に分類された患者の割合を示した。Multi-FibroMeterV3Gも、Obuchowski指標(OI=0.759)および正確に分類された患者の割合(82.7%)の点でVCTEよりも良好な結果を示した。有意な線維症(F≧2)のためのAUROCはMFMV2Gの0.817およびMFMV3Gの0.804に対してVCTEでは0.786であった。肝硬変(F=4)のためのAUROCは、MFMV2G(0.885)またはMFMV3G(0.860)とVCTE(0.898)との間で同等であった。
【0320】
集団全体
以下の表15に示すように、FibroMeterファミリー内での統計学的比較において楽観バイアスが存在しなかったので、Multi-FibroMeterの診断性能も集団全体(3809人の患者)において評価した。MFMV2Gは、有意な線維症のためのAUROC、深刻な線維症のためのAUROC、肝硬変のためのAUROCおよびObuchowski指標の点で最良の結果を示した。MFMV2Gも非常に高い正確に分類された患者の割合を示したが、それはMFMV3Gに次いで二番目にすぎなかった。
【表17】
診断標的ごとの最良の結果は太字で示されている。
【0321】
線維症ステージ分類
FibroMeter[20]、CirrhoMeter[15]およびMulti-FibroMeterの分類は、Metavirステージ分類を反映する6~7つの線維症クラスを含んでいた。Multi-FibroMeterのために開発された新しいクラスは、F0/1、F1/2、F2±1、F3±1、F3/4およびF4であった。正確に分類された患者の割合は、3つの集団すなわち導出集団(1012人のCHC患者)、検証集団#1(676人のCHC患者)および組み合わせられた検証集団#2~#5(936人の非CHC患者)の関数として6つの検査で同じ順位でランクした(以下の表16)。これらの割合は、3つの集団において対応するFibroMeterV2/3GまたはCirrhoMeterV2/3Gに対してMulti-FibroMeterにおいて有意に高かった(p<0.001)。これらの割合は両方のMulti-FibroMeterV2/3Gの間で有意に異なっていなかった。
【0322】
図4に示すように、集団全体(3809人の患者)において同様の結果を得、この際に正確に分類された患者の割合は対応するFibroMeterV2/3GまたはCirrhoMeterV2/3Gに対してMulti-FibroMeterにおいて有意に高かった(p<0.001)が、両方のMulti-FibroMeterV2/3G間で有意に異なっていなかった。
【表18】
診断標的ごとの最良の結果は太字で示されている。
これらの6つの検査によりコア集団よりも多くの患者が利用可能であった
対応のあるウィルコクソン検定によって対応するFibroMeterv2/3GまたはCirrhoMeterv2/3Gに対してp<0.001
対応のあるウィルコクソン検定によってMulti-FibroMeterv2Gに対して:CHC導出集団ではp=0.443、CHC検証集団ではp=0.439、非CHC検証集団ではp=1
対応のあるコクラン検定による
【0323】
複数標的FibroMeter(MFMs)の利点
本研究の主目的は、FibroMeterファミリーの単標的検査と比較した場合に診断性能における有意な向上を示す複数標的FibroMeterを構築することであった。このようにして、Multi-FibroMeterとFibroMeterまたはCirrhoMeterとの間の正確性を5つの判断基準:1)MFMの肝硬変のためのAUROCがFibroMeterのAUROCよりも高いか否か、2)MFMのObuchowski指標がFibroMeterのObuchowski指標よりも高いか否か、3)MFMの有意な線維症のためのAUROCがFibroMeterのAUROCと同じまたは高いか否か、4)MFMの正確に分類された患者の割合(「分類メトリック」ともいう)がFibroMeterのその割合よりも高いか否か、および5)MFMの肝硬変のためのAUROCがCirrhoMeterのAUROCと同じまたは高いか否かの評価により比較する。
【0324】
本研究の第2の目的は、FibroMeterファミリーに属していない他の線維症検査、特にFibrotest、Hepascore、ZengスコアおよびVCTEと比較した場合に向上した診断性能を示す、主目的のために得られるような複数標的FibroMeterを構築することであった。このようにして、Multi-FibroMeterと前記線維症検査との間の正確性を3つ、場合によっては4つの判断基準:1)MFMの肝硬変のためのAUROCがFibrotest、HepascoreおよびZengスコアのAUROCよりも高いか否か、およびVCTEのAUROCと同等であるか否か、2)MFMのObuchowski指標が他の線維症検査のObuchowski指標よりも高いか否か、3)MFMの有意な線維症のためのAUROCが他の線維症検査のAUROCよりも高いか否か、および4)MFMの正確に分類された患者の割合(「分類メトリック」ともいう)がFibrotestおよびVCTEのその割合よりも高いか否かの評価により比較した。
【0325】
以下の表17は、FibroMeterファミリーの単標的検査との比較ならびにFibrotest、Hepascore、ZengスコアおよびVCTEとの比較により上記のように評価した場合のMFMV2GおよびMFMV3Gの両方の診断性能の要約を示す。
【表19】
VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ(Fibroscanによる)、F:線維症。太字で示されている結果は有意差を示す。イタリックで示されている結果は、同じ検査と比較されるFibroMeterまたはCirrhoMeterと比較して、比較した検査に対するMulti-FibroMeterの統計学的利点を示す。
比較において楽観バイアスを回避するために組み合わせられた集団:主目的のための集団全体(3809人の患者)および副次的目的のための集団#1~#6の組み合わせ(Fibrotest:1461人の患者およびVCTE:1746人の患者を除く2796人の患者)。
「はい」および「いいえ」は以下の精度により判定基準に達したか否かを示す
境界線上の有意性
Multi-FibroMeterの有意でない高い値
Multi-FibroMeterの有意な低い値
【0326】
主目的は達成され、MFMV2GおよびMFMV3Gはどちらも対応するFibroMeterと比較した場合に診断性能における有意な向上を示す。従って、5つの判断基準の全てがMulti-FibroMeterによって確実に満たされた。特に、Multi-FibroMeterの肝硬変のためのAUROCは、対応するFibroMeterと比較した場合に有意に増加した。なお、肝硬変診断では、FibroMeter(他の血液検査のような)は標的診断が何であろうと使用される古典的な検査であるため、Multi-FibroMeterの最も関連する比較対象はFibroMeterでありCirrhoMeterではない。言い換えると、本目的はMulti-FibroMeterがCirrhoMeterの肝硬変のための診断性能をFibroMeterに追加することであった。Metavir線維症ステージの識別を検討すると、Obuchowski指標によって評価されるMulti-FibroMeterの性能はFibroMeterと比較して有意に向上した。Metavirステージを反映する線維症分類、すなわち正確に分類された患者の割合に関しては、Multi-FibroMeterはFibroMeterよりも有意に高い正確性を有していた。
【0327】
副次的目的に関しては、判断基準は他の線維症検査と比較した場合にMFMV2Gによって全てが確実に満たされ、MFMV3Gによって部分的にのみ満たされた。なお、肝硬変の非侵襲的診断のための通常の基準はVCTEである。その結果からVCTEおよびMulti-FibroMeterV2Gの肝硬変のためのAUROCが同等であることが分かった。有意な線維症のためのAUROCおよびObuchowski指標はMulti-FibroMeterV2Gにおいて有意に増加した。この最後の結果は正確に分類された患者の割合によって確認された。
【0328】
結論として、複数標的FibroMeterを使用することにより、特に肝臓病変の根本的原因が慢性肝炎Cである場合に古典的な単一標的血液検査またはVCTE(Fibroscanとしても知られている)と比較して線維症ステージ分類の正確性が有意に向上した。肝硬変診断では、複数標的FibroMeterは通常は肝硬変の非侵襲的診断のための基準としてみなされるVCTEにさらに一致している。
【0329】
従って、単一の非侵襲的検査である複数標的FibroMeterの使用により、有意な線維症または肝硬変のいずれかを正確に診断することが今では可能である。従って、複数標的FibroMeterは肝硬変を含む線維症の存在および重症度の正確な診断のための独特な非侵襲的検査を提供する。
【0330】
重要なことに、本診断方法、すなわち複数標的診断検査の構築は、半定量的(順序)基準、例えば放射線学における重症度スコアに基づくあらゆる非侵襲的診断検査に適用することができる。
【0331】
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【0332】
実施例2:複数標的分類のために構築された複数標的FibroMeter(MFMc)
患者および方法
集団
計3901人の患者を本研究に含めた。1012人の患者(導出集団)からのデータを用いて複数標的診断アルゴリズムを開発し、1330人の患者(検証集団#1、#2および#3)において外部検証を行った。この新しい診断システムから得られる線維症分類の予後との関連性も1559人の患者からなる前向きコホート(検証集団#4)において評価した。
【0333】
導出集団
導出集団は慢性肝炎C(CHC)を有する1012人の患者を含んでいた(5)。従って、個々の患者データは、研究設計、患者動員、生物学的マーカー判定および専門の病理学者による肝組織像解釈のために独立した5つのセンターから入手可能であった。
【0334】
検証集団
診断集団-検証集団#1はCHCを有する676人の患者を含んでいた(6、7)。検証集団#2は、もし抗HCV(C型肝炎ウイルス)および抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)抗体ならびに血清中にHCV RNAを有していれば1997年4月から2007年8月までの前向き研究に含められたCHCおよびHIV感染を有する450人の患者を含んでいた(8)。慢性肝炎B(CHB)のための検証集団#3は、以前に公開されたデータベースから抽出し(9)、全員が慢性肝炎(30.4%のHBeAg陽性)を有する204人の患者を含み、HBsAgの不活性キャリアを除外した。
【0335】
予後集団-2005年1月から2009年12月までアンジェ大学病院の肝臓学部において慢性肝疾患のために受診または入院していた年齢が18歳以上の全ての対象が、それらの疾患の重症度または病因が何であるかに関わらず(ウイルス肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、他の原因)、研究コホート(検証集団#4)への参加を勧められた。次いで、得られた1559人の患者を、死亡、肝移植または2011年11月1日まで経過観察した。本研究は施設内倫理委員会によって認可され(AC-2012-1507)、全ての患者からインフォームドコンセントを得ていた。
【0336】
診断方法
組織学的評価
1.4~1.6mmの直径の針を用いるMenghiniの技術を用いて肝生検を行った。生検標本をホルマリン-アルコール-酢酸溶液に固定してパラフィンで包埋し、次いで5μm厚の切片に切断し、ヘマトキシリン-エオシン-サフランで染色した。コンセンサスリーディングがアンジェおよびFibrostar研究(検証集団#1の一部)において不一致の場合には2人の上級専門家と(11)、他のセンターにおける上級専門家とによって、Metavir線維症(F)ステージに従って肝線維症を評価した(10)。門脈-中隔線維症の領域を中心に検証集団#1において最近記載されたように(12)自動化形態計測によって測定した。
【0337】
FibroMeterの変数
生物学的マーカーは、慢性ウイルス肝炎において異なる病変を診断するために行われる血液検査で以前に使用されたものであった(13、14)。以下の生物学的マーカー:血小板、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ヒアルロン酸、尿素、プロトロンビン指数、FibroMeterV2Gで使用されるα2-マクログロブリン(5、13)+γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)(線維症の領域を標的にするFibroMeterV3G(14)およびQuantiMeterVで使用される(13))、ビリルビン(QuantiMeterVで使用される)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(肝臓の活性を標的にするInflaMeterで使用される(15))を含めた。臨床マーカー(FibroMeterV2Gで使用されるような年齢および性別)も含めた。従って、AST/ALT比の追加により、12個の変数が利用可能であった。新しい検査との比較のための参照血液検査は、有意な線維症(F≧2)を標的にするFibroMeterV2Gおよび肝硬変を標的にするCirrhoMeterV2Gであり、これらは以前に計算された分類によるものである(図1)(3、4)。
【0338】
肝臓の弾性率測定法
振動制御過渡弾性率測定法またはFibroscan(Echosens社、パリ、フランス)を患者データに対して盲検化された経験豊富な(本研究前に50回を超える検査を行った)観察者によって行った。検査条件は製造業者によって推奨されるものであった(16)。10個の有効な測定値が記録された場合にVCTE検査を止めた。結果(kPa)は全ての有効な測定値の中央値および四分位数間範囲として表した。VCTEのためにCHCにおいて最近開発された6つのクラスの線維症分類をここでは使用した(図1)(4)。
【0339】
検査の構築
複数標的分類子システムの構築は、図2に要約されている4回の連続する工程で行った。統計学的詳細は追加の資料に提供されている。
【0340】
工程1:単一標的検査の構築-これらの検査は、5つのMetavir Fステージによって可能な限り多くの診断標的を用いる従来の二項ロジスティック回帰(BLR)手法を用いて構築した。これらの標的は、線維症(F≧1)、有意な線維症(F≧2)、深刻な線維症(F≧3)および肝硬変(F=4)であった。このようにして4つの単一標的検査を得て、それぞれをFMF≧1、FMF≧2、FMF≧3およびFMF=4と呼んだ。
【0341】
工程2:単一標的検査の選択-有意な線維症は、有意な一元交互作用(one-way interaction)(p=0.001)を用いてFMF≧2検査(p<0.001)およびFMF=4検査(p<0.001)によって独立して予測し、肝硬変はFMF≧1検査(p<0.003)およびFMF=4検査(p=0.038)によって独立して診断した。従って、独立した単一標的検査のうち3つを複数標的ステージ分類に関連性があるものとみなした。
【0342】
工程3:単一標的検査分類-検査スコア(範囲:0~1)を以前に記載されている分割方法(17)に従って予測されるFステージのいくつかのクラスを含む線維症分類に変換した。このようにして、FMF≧1、FMF≧2およびFMF=4検査のための3つの分類を得た。ここでは「クラス」とは、非侵襲的検査による線維症分類(ステージ分類)を指す。
【0343】
工程4:複数標的検査分類-簡単に言うと、3つの保持された検査分類の最も正確な部分のそれぞれ(図2B)を漸増的に組み合わせた。これらの3つが組み合わられた部分により6つの線維症クラスを含む分類を得た(図1)。この新しい検査を複数標的FibroMeter(MFM)と呼んだ。
【0344】
工程5:この任意の工程は、複数標的検査分類上での従属変数(または診断標的)としてMetavir基準を用いる多重線形回帰である。得られたスコアは、その回帰を正規化されたMetavirスコアに適用する前またはその回帰正規化をその回帰スコアに適用した後のいずれかに正規化することができる。必要であれば最終的なスコアを、極値(0および1)を結ぶことによって完全に正規化する(範囲0~1)。
【0345】
統計
定量的変数は平均±標準偏差として表した。各検査の識別能は、受信者動作特性下面積曲線(AUROC)およびMetavir Fに従って良好に分類された患者の割合によって評価される全体的な正確性として表した。分類計算では、検査クラスをそれらの中央値、例えばF1/2では1.5と共に使用した。その名の通り、楽観バイアスは検査分類が構築される集団において性能を最大化する。これはFibroMeterV2G、CirrhoMeterV2Gおよび導出集団におけるMFMおよび検証集団#1におけるVCTEに影響を与えた。データはSTARD(18)および肝臓FibroSTARD声明(19)に従って報告し、診断意図基準で分析した。生存曲線をKaplan-Meier方法によって推定し、ログランク検定を用いて比較した。SPSSバージョン18.0(IBM社、アーモンク、ニューヨーク、米国)およびSAS9.2(SAS Institute社、カリー、ノースカロライナ州、米国)を用いる専門の統計学者(SB、GH)の管理下で主な統計分析を行った。
【0346】
結果
集団の特性
研究した集団の主な特性が以下の表18に示されている。予後集団では、経過観察の中央値は2.8年(IQR:1.7~3.9)であった。経過観察の間に、262人(16.8%)が死亡し、そのうちの115人(7.4%)が肝臓関連であった。
【表20】
NA:該当なし。
FibroMeterV2G分類に従う
【0347】
複数標的検査の特性(導出集団)
検査の正確性
単一標的検査の正確性-以前に公開された検査(FibroMeterV2G、CirrhoMeterV2G)と比較した新しい単一標的検査(FMF≧1、FMF≧2、FMF≧3、FMF=4)の識別能は、以下のように要約することができる。第1に、最も高いAUROCが新しい検査により観察された。第2に、予期したとおり、新しい単一標的検査のそれぞれについて、検査が構築された診断標的において最も高いAUROCが観察された。
【0348】
線維症分類の正確性-以下の表19は、導出集団において新しい複数標的検査(MFM:92.7%、p<0.001)と比較した、公開されている検査の全体的な線維症分類の正確性(正しい分類率によって評価)を示す(FibroMeterV2G:87.6%、CirrhoMeterV2G:87.5%)。その正確性は全ての検査についてMetavir F0においてのみ同程度であった。既に公開されている検査はこのステージにおいて高い正確性を有するので、新しいMFMのためのMetavir F1における増加はほんの中程度であった。対照的に、MFMによりMetavir F2および特にF3おいて大きな増加が得られ、MFMはCirrhoMeterV2Gと比較して導出集団および検証集団#1においてそれぞれ16.3%および22.8%(p<0.001)で正確性を高めた。
【0349】
MFMは大部分の線維症クラスにおいて正確性を高め、例えばF4クラスではMFM:96.0%、CirrhoMeterV2G:88.0%、FibroMeterV2G:79.2%であった(以下の表20に詳細あり)。単一の診断標的のための古典的な診断指標の比較を深刻な線維症についてMFMとFibroMeterV2Gとの間で行った(以下の表21)。全体的な正確性はそれぞれ83.0%および80.4%(p<0.010)であった。
【表21】
MFM:複数標的FibroMeter、n:患者数。太字の数字はステージおよび集団ごとの最も高い正確性を示す。下線が引かれている正確性は以前に公開されたCirrhoMeterV2G検査と比較してMFMによってもたらされる注目すべき向上を示す。
全ての検査間での対応のあるコクラン検定による
試料サイズが小さいためにFステージごとの結果なし

【表22】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、MFM:複数標的FibroMeter、n:患者数、DA:診断の正確性。太字の数字はクラスおよび集団ごとの最も高い正確性を示す。
試料サイズが小さいために検証集団#2および#3における結果なし

【表23】
PPV:陽性予測値、NPV:陰性予測値、LR:尤度比、MFM:複数標的FibroMeter
最大のYouden指数
すなわちクラスF2±1とF3±1との間
【0350】
肝硬変
肝硬変診断-肝硬変は重要な診断標的である。MFMによる線維症分類を好都合には他の検査、特にCirrhoMeterV2Gと比較した。F4を含む線維症クラスの肝硬変に対する感度はそれぞれ93.0%に対して91.3%であった。F4クラスの肝硬変の陽性予測値(PPV)はそれぞれ88.0%に対して96.0%であった。
【0351】
肝硬変分類-門脈-中隔線維症の面積(中央値(IQR))は、Metavirステージ分類ではF3:2.7%(2.2)、F4:5.2%(6.5)であり、MFMクラスではF3±1:2.3%(3.9)、F3/4:3.2%(3.9)、F4:7.3%(4.3)であった。従って、MFMは初期肝硬変(F3/4)と確定的肝硬変(F4)とを区別することができた。
【0352】
分類精度および改良点
精度は、Metavir Fステージを的確に反映するための線維症検査分類の能力を評価するものである。平均Fスコアは検査分類間で1.84±1.08から2.13±0.84に変動した(p<0.001)。これにより分類精度が検査ごとに異なっていたことが分かった。従って、その精度を4つの基準、すなわちMetavir Fステージ分類よる検査分類の一致、差および線形性ならびに検査クラス内でのMetavir Fステージの分散を用いて包括的に評価した。簡単に言うと、MFM分類は新しい検査の中で満足な精度基準を有していた(以下の表22に詳細あり)。
【表24】
FM2G:FibroMeterV2G、CM2G:CirrhoMeterV2G、FMF:単一標的検査、MFM:複数標的FibroMeter、n:患者数。非侵襲的検査間の最良の結果が太字で示されている(Metavir Fは除外)
血液検査とMetavirとの間のFスコアのための対応のあるt検定
検査分類とMetavirステージとの間のFスコアの絶対差(平均±SD)、すなわち負の差におけるマイナス符号の削除
ピアソン相関
検証集団#1(676人の患者)において得られた結果
【0353】
但しMFM分類は、3つのFステージを含む2つの不正確なクラスを有していた(すなわち大きな分散)。従って、線維症クラスごとに最大2つのFステージを有する単純化されたMFM分類を開発した(図1、以下の表23に詳細あり)。単純化されたMFM線維症分類は最良の精度基準を有し、特にそれはMetavirステージ分類による平均Fスコアにおいて有意差を有しない唯一の検査であった。予期したとおり、単純化されたMFM線維症分類の全体的な正確性は80.4%まで低下した(1つのクラス当たり最大3つのFステージを含む徹底的なMFM分類における92.7%(p<0.001)に対して)。
【0354】
複数標的検査の検証
検証集団における分類の正確性
血液検査間の比較-予期したとおり、導出集団と比較してCHC検証集団#1では楽観バイアスが存在しないことによりFibroMeterV2G、CirrhoMeterV2GおよびMFMの線維症分類において正確性の低下が認められた(-4.0%から-5.0%へ)(表19)。但し、MFMの全体的な正確性は、検証集団#1(CHC)、#2(HIV/CHC)および#3(CHB)においてFibroMeterV2GまたはCirrhoMeterV2Gの全体的な正確性よりもなお有意に高かった。
【0355】
VCTEとの比較-VCTEは集団#1からの647人の患者および集団#3からの152人の患者において利用可能であった。MFMの正確性はVCTEの正確性とは有意に異なっていなかった(以下の表24)。VCTEを支持する楽観バイアスにも関わらず、特に肝硬変診断では、他の診断指標はMFMとVCTEとの間で近かった。例えば集団#1ではF4を含む線維症クラスの肝硬変の感度は、MFMおよびVCTEにおいてそれぞれ86.0%および81.7%であり、F4クラスの肝硬変のPPVはそれぞれ80.0%および76.7%であった。
【0356】
線維症クラスの検証
診断集団-MFM線維症分類は、他の肝線維症記述子、すなわち組織学的Metavir F、門脈-中隔線維症の面積、およびVCTEによって測定される肝硬度との良好な相関により有効であった。さらに重要なことには、これらの肝線維症記述子はMFM検査の隣接する線維症クラス間で有意に異なっていた。
【表25】
xは優勢なMetavir Fステージを示す
MFMカットオフ(本文の図2Bを参照)。集団全体における全体的な正確性

【表26】
MFM:複数標的FibroMeter、VCTE:振動制御過渡エラストグラフィ
太字の数字は有意差を示す。
対応のあるMcNemar検定によるMFMに対する比較
対応のあるMcNemar検定によるCirrhoMeterV2Gに対するVCTEの比較
【0357】
予後集団
集団の特性
2005年1月から2009年12月までアンジェ大学病院の肝臓学部において慢性肝疾患のために受診または入院していた年齢が18歳以上の全ての対象がそれらの疾患の重症度または病因が何であるかに関わらず(ウイルス肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、他の原因)、研究コホートへの参加を勧められた。次いで、得られた1559人の患者を、死亡、肝移植または2011年11月1日まで経過観察した。本研究は施設内倫理委員会によって認可され(AC-2012-1507)、全ての患者からインフォームドコンセントを得ていた。
【0358】
結果
MFMc線維症分類は、肝臓に関連する死亡の予後能力にとって有効であった(ログランク検定によってp<0.001)。図3は、生存曲線がFibroMeterV2GおよびMFMc:F2±1、F3±1、F3/4およびF4の4つのクラス間で有意に異なっていたことを示す。F3/4クラスとF4クラスとの生存曲線における差はFibroMeterV2G分類(p=3.10-3)における差よりもMFMc分類(p=3.10-4)においてより顕著であった。最後に、単純化されたMFMc分類は肝臓に関連する死亡のための良好な予後値(ログランク検定によってp<0.001)により有効であった。さらに、F3/4クラスとF4クラスとの識別は、徹底的なMFMc分類(p=3.10-4)(図3B)と比較して単純化されたMFMc分類(p=10-8)(図3C)においてより良好であった。
【0359】
MFMc分類は、特に4つの線維症クラス:F2±1、F3±1、F3/4およびF4間での良好な予後識別を提供した。F3/4クラスとF4クラスとの予後識別はFibroMeterV2G図3)と比較して向上した。最近になってFibroMeterV2GとCirrhoMeterV2Gとの組み合わせが別のコホートにおける予後診断では相乗的であることが分かっており(20)、その研究では、本研究と同様に有意な線維症または肝硬変を標的にする検査間で有意な相互作用が存在した。1つのクラス当たり最大2つのFステージを有する単純化された分類を開発し、これにより予後判定および精度が向上した。
【0360】
これらの結果は単純化された分類または徹底的な分類のどちらを使用すべきかという問題を提起する。徹底的な分類(1つのクラス当たり最大3つのF)は、単純化された分類(1つのクラス当たり最大2つのF)と比較してより良好な正確性という明白な利点を有する。但し、後者はより良好な精度および予後判定を提供する。従って、単純化された分類は臨床業務のために十分であるように思われる。徹底的な分類の関心の欠如は、組織学的病期分類による誤分類源(試料サイズおよび観察者の読取り)に起因し得る。これは組織学的病期分類よりも非侵襲的検査によるより良好な予後判定によって強固にされる(21)。最後に、予後判定はF2±1またはさらにF2/3クラスによってのみ有意に変化し、従って最小分類は、4つのクラス:F0/1(有意でない線維症)、F2/3(有意な線維症)、F3/4(初期の肝硬変)およびF4(確定的な肝硬変)に分けることができる。
【0361】
参考文献
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【0362】
実施例3:MFMcにおける複数標的分類の構築
本目的は、3つの保持された検査分類の最も正確な部分を選択して組み合わせることである(図1)。その原理は以下のとおりであった。正確に分類された患者の割合(すなわち正確性)を2つの隣接する保持された単一標的検査間で比較した。保持された線維症クラスの限界を対応する検査スコアの限界によって決定した。この目的は最良のカットオフを見つけて2つの検査を含む全体的な正確性を最大化することであった。なお、スコア(カットオフの判定のため)または分類(正確性の判定のため)のいずれかで表される3つの検査を使用した。第2に、2つの検査分類、すなわちFMF≧1/FMF≧2分類(中間分類)およびFMF≧1/FMF≧2/FMF=4(最終的な分類)を生成した。
【0363】
実際には、この分析は最初に初期Fステージで開始した(図2A)。従って、正確性は、FMF≧1スコアのカットオフ未満であるFMF≧1分類およびこのカットオフを超えるFMF≧2分類によって正確に分類された患者の合計であった。この計算を低いスコア値から高いスコア値まで繰り返してFMF≧1スコアの増加値の中で最良のカットオフを見つけて全体的な正確性を最大化した(表25)。「全体的な正確性」は2つの正確性の合計を意味する。
【0364】
次いで、同じ計算を繰り返してFMF≧2スコアの最良のカットオフを決定した(表2、図2A)。このようにして、第1または第2のFMF検査のいずれかによって決定されたカットオフにより2つが組み合わせられた分類を得た(表25および表26)。2つが組み合わせられた分類間での選択は、主に得られた最大の全体的な正確性および次いでFMF=4検査を含む次の計算のために第2の検査(FMF≧2)と共に利用可能な残りの最大の集団サイズによって決定した。このようにして、本発明者らは0.27のFMF≧2スコアによって決定されたカットオフを有する組み合わせられたFMF≧1/FMF≧2分類を得た(表26)。
【0365】
次いで、同じ計算を繰り返してFMF≧1/FMF≧2分類をFMF=4分類と比較した(表27および表28、図2B)。最良の組み合わせられたFMF≧1/FMF≧2/FMF=4分類は最終的に、このカットオフ未満のFMF≧1/FMF≧2およびこのカットオフを超えるFMF=4という分類を用いることによって0.085のFMF4スコアカットオフの組み込みにより決定した(表28)。この最後の選択はF4ステージの最良の識別によって決定した。
【0366】
含められた3つのスコアと保持されたそれらの3つのそれぞれの部分との関係が図3に示されている。これらの3つが組み合わせられた部分により、線維症クラスごとのより小さい線維症ステージを含む単純化されたバージョンによる6つの線維症クラスを含むMFMc分類が得られた(図4)。図5は、二重標的FMF≧1/FMF≧2検査のいくつかの線維症クラスを単一標的検査の2つの異なる分類によって提供することができたことを示す。言い換えると、最終的な6つのクラス分類は、同じ単一標的分類に属する線維症クラスの単純な並置ではなかった。
【表27】
FMF≧1カットオフ未満の正確に分類された患者(%)。
FMF≧1カットオフを超える正確に分類された患者(%)。
FMF≧1によるFMF≧1カットオフ未満の正確に分類された患者(%)の合計+FMF≧1カットオフを超えるFMF≧2によって正確に分類された患者(%)。
カットオフの選択肢を決定する最大の割合。

【表28】
FMF≧2カットオフ未満の正確に分類された患者(%)。
FMF≧2カットオフを超える正確に分類された患者(%)。
FMF≧1によるFMF≧2カットオフ未満の正確に分類された患者(%)+FMF≧2カットオフを超えるFMF≧2によって正確に分類された患者(%)の合計。
カットオフの選択肢を決定する最大の割合。

【表29】
FMF≧2カットオフ未満の正確に分類された患者(%)。
FMF≧2カットオフを超える正確に分類された患者(%)。
FMF≧1/FMF≧2によるFMF≧2カットオフ未満の正確に分類された患者(%)+FMF≧2カットオフを超えるFMF=4によって正確に分類された患者(%)の合計。
カットオフの選択肢を決定する最大の割合。

【表30】
FMF=4カットオフ未満の正確に分類された患者(%)。
FMF=4カットオフを超える正確に分類された患者(%)。
FMF≧1/FMF≧2によるFMF=4カットオフ未満の正確に分類された患者(%)+FMF=4カットオフを超えるFMF=4によって正確に分類された患者(%)の合計。
カットオフの選択肢を決定する最大の割合。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4