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特許7007365静電分離のための帯電したイソポーラス材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】静電分離のための帯電したイソポーラス材料
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/02 20060101AFI20220117BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220117BHJP
   B01D 71/80 20060101ALI20220117BHJP
   B01D 71/82 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B01D69/02
B01D69/00
B01D71/80
B01D71/82 500
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019508155
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017029591
(87)【国際公開番号】W WO2017189697
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-01-29
(31)【優先権主張番号】62/328,707
(32)【優先日】2016-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518381525
【氏名又は名称】テラポア テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ドリン,レイチェル ミカ
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ,スペンサー ウィリアム
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0023171(US,A1)
【文献】特開平09-048861(JP,A)
【文献】Xiaoyan Qiu, Haizhou Yu, Madhavan Karunakaran, Neelakanda Pradeep, Suzana P. Nunes, and Klaus-Viktor Peinemann,Selective Separation of Similarly Sized Proteins with Tunable Nanoporous Block Copolymer Membranes,ACS Nano,2012年12月19日,VOL.7 No.1,P.768-P.776
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質分離のための、帯電した多孔性の自己組織化ポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニルピリジン)トリブロック共重合体材料であって、当該材料は細孔を含み、前記細孔のうち少なくとも一部がイソポーラスであり、1乃至200nmに及ぶ孔径を有しており、前記4-ビニルピリジンのブロックのうち少なくとも一部が四級化されて、当該材料に正の静止電荷を提供し、当該材料は、7.0のpHにおいて50Lm -2 hr -1 bar -1 より大きい透水率を示す(ただし、200Lm -2 hr -1 bar -1 より大きい透水率を示す部分を除く)、材料。
【請求項2】
前記4-ビニルピリジンのブロックは、官能基化反応によって四級化され、前記官能基化反応は、前記正の静止電荷を提供する、請求項に記載の材料。
【請求項3】
細孔を有する、帯電したA-B-Cトリブロック共重合体材料であって、前記細孔のうち少なくとも一部がイソポーラスであり、1乃至200nmに及ぶ孔径を有しており、前記トリブロック共重合体のうち1つのポリマーブロックが、≦25℃のTgを有し、前記トリブロック共重合体のうち1つのポリマーブロックが、四級化されて当該材料に正の静止電荷を提供する芳香族複素環を含み、前記芳香族複素環は、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、キノロン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フェナジン、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、及びテトラゾールを含む群から選択され、当該材料は、7.0のpHにおいて50Lm -2 hr -1 bar -1 より大きい透水率を示す(ただし、200Lm -2 hr -1 bar -1 より大きい透水率を示す部分を除く)、材料。
【請求項4】
a.前記≦25℃のTgを有するポリマーブロックは、ポリイソプレンブロックでありさらに、
b.前記芳香族複素環を含むポリマーブロックは、ポリ(2-ビニルピリジン)ブロック又はポリ(4-ビニルピリジン)ブロックである、請求項に記載の材料。
【請求項5】
当該トリブロック共重合体材料は、ポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニルピリジン)トリブロック共重合体であり、前記静止電荷は、前記4-ビニルピリジンのブロック上にある、請求項に記載の材料。
【請求項6】
請求項に記載の材料を形成する方法であって、前記A-B-Cトリブロック共重合体を化学物質と接触させるステップを含み、前記化学物質は、前記芳香族複素環と反応して、その上に前記正の静止電荷を導入する、方法。
【請求項7】
標的生体分子を、該標的生体分子を有する他の生体分子又は他の溶質の混合物から分離するプロセスであって、請求項1又は3に記載の材料と前記生体分子の混合物を接触させて、次に、前記標的生体分子を分離する及び/又は除去するステップを含むプロセス。
【請求項8】
前記正の静止電荷は、式R-Xを有する四級化剤によって提供され、Rは、C~C24の置換又は未置換の直鎖、環状又は分岐状アルキル又はアルケニル基又はポリエチレングリコール(PEG)であり、Xは脱離基である、請求項1又はに記載の材料。
【請求項9】
前記正の静止電荷は、式R-W-(R)-CH-Xを有する四級化剤によって提供され、Rは、C~C24の置換又は未置換のアルキル、アルケニル又はアリール基であり、Wはヘテロ原子であり、Xは脱離基である、請求項1又はに記載の材料。
【請求項10】
前記正の静止電荷は、式R-(W)-COCH-Xを有する四級化剤によって提供され、Rは、C~C24のアルキル又はアルケニル、又は、C~C10のアリール基であり、Wはヘテロ原子であり、Xは脱離基である、請求項1又はに記載の材料。
【請求項11】
請求項1に記載の帯電したイソポーラスのブロック重合体材料を形成する方法であって、前記ポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニルピリジン)トリブロック共重合体の前記4-ビニルピリジンのブロックを、化学物質と接触させるステップを含み、前記化学物質は、前記4-ビニルピリジンのブロックの少なくとも一部と反応して、その上に前記正の静止電荷を導入する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2016年4月28日に出願した米国仮特許出願第62/328,707号に基づく優先権を主張するものであり、参照により全内容を本出願において援用する。
【0002】
本願は、静電的相互作用を介して溶質を分離するための、イソポーラス材料(isoporous material)を含むマルチブロック重合体セパレータ、その調製方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質の発現、構造及び機能の理解における主要な進歩にもかかわらず、複雑な混合物からのタンパク質の精製には問題が残っている。しばしば細胞培養液中の標的分子は、分離の複雑さを増大させる、例えば、宿主タンパク質、細胞残屑、DNA、ウイルス及びエンドトキシン等、多種多様な外来性成分又は偶発性成分さえも含む。標的タンパク質は、環境条件に対して非常に敏感であることが多くあり、容易に変性させられるか、又さもなければ、損傷を受ける可能性がある。
【0004】
アップストリーム技術は、5g/Lを超えるプロダクトタイターをもたらすことができ、高処理の精製の必要性を駆り立てている。従来、生体分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー及びイオン交換カラムを含むクロマトグラフィーに大きく依存してきた。しかし、これらのクロマトグラフィー技術は、処理量に制限があり、ダウンストリームのバイオプロセスの高コストの大きな一因となる。
【0005】
限外ろ過(UF)は、タンパク質の濃縮及び製剤化のためのダウンストリームのバイオプロセスの後期において頻繁に使用される。例えば、トラックエッチド又は位相反転された市販のUF膜がある。トラックエッチドメンブレンは、非常に均一の細孔を有して、選択的な分離を可能にしているが、細孔密度が低いために低い処理量を被っている。一方、位相反転膜は、はるかに大きい流動を可能にするが、不均一の細孔を有し、選択的な分離を達成することができない。流動の制限により、トラックエッチドメンブレンがベンチスケールの研究のためにほとんど独占的に使用され、位相反転膜はダウンストリームの生物製剤プロセスにおいて広く使用されている。位相反転膜は、広範な正規対数の孔径分布を経験的に示し、効果的な分画のためにタンパク質のモル質量において6~10倍の差を必要としている。この孔径の変動は、膜を横切る不均一な流れのパターンを引き起こし、破過曲線を広げ、媒体容量(media capacity)を減少させる。
【0006】
膜構造及び化学官能性における欠乏は、濃縮及び製剤化ステップへのその使用を大きく制限している。従って、ラボスケールアップの検証に対しても、当然ながら、医学的に関連しているタンパク質の商業規模の製造に対しても、タンパク質精製方法を改善する必要がある。出願人は、イソポーラス材料の物理的構造の独特の調整を化学官能性と組み合わせて、静電的相互作用を介して類似のサイズの溶質を促進及び分離することにより、先行技術の制限を克服する高処理量及び高分解能の分離の適用をもたらす、例えば、フィルム、膜、シート及びチューブ等のイソポーラスの帯電したマルチブロック重合体材料の生成が可能になるということを見出した。
【0007】
複雑な混合物からの他の生体分子の分離も特に困難であり得る。例えば、核酸を診断のために全血から単離することができる。全血からのDNAの単離は、赤血球、タンパク質及び塩を含む様々な長さスケールの溶質のため、特に難しい分離である。DNA単離の1つの方法は、複雑な混合物から負に帯電したDNAを単離するために静電的相互作用を使用することである。それにもかかわらず、既存の膜技術を介した分離が困難であるため、全血からDNAを単離するための効果的な膜技術は商品化されていない。出願人は、本明細書に記載の発明が、全血からの核酸の分離及び濃縮を可能にすることを見出した。
【0008】
帯電した多孔性材料は、バイオフィルム発達の防止に効果的である。例えば、創傷に対する包帯材としてそのような材料を使用することにおいて、多孔性材料は、水蒸気、窒素及び酸素のような気相化学物質の通過を可能にする。しかし、バイオフィルムが発達すると、創傷治癒を阻止する恐れがある。本明細書に記載の帯電した多孔性材料を使用して、バイオフィルムの発達を阻止することができる。加えて、帯電した多孔性材料は、創傷治癒特性をさらに強化し、創傷ケア用途に寄与するために、抗菌化学物質を用いてさらに官能基化することができる。
【0009】
クロマトグラフィーカラムも、電荷及びサイズを含む様々な物理的及び化学的特徴に基づき種を分離するために広範に使用されてきたが、クロマトグラフィーは処理量に制限があり、高価であることが多い。本明細書に記載の帯電した多孔性材料を使用して、電荷及びサイズに基づき溶質を分離することができる。例えば、静電的相互作用を介して膜に結合した種は、溶出剤の勾配を材料に通すことによって膜から引き離すことができる。このようにして、勾配分離を行うことができる。或いは、固定された組成の溶出剤を膜に通すことによって、種の選択対象を膜から引き離すことができる。固定された組成は、所望の種の選択対象のみを引き離すのに適している。このようにして、均一濃度の分離を行うことができる。さらに、一連の溶出を行うことができ、各溶出は、さらなる種の選択対象を引き離すのに適した固定された組成のものである。このようにして、段階溶出を行うことができる。
【0010】
電荷とサイズの併用効果を使用して、生体分子を含む溶質を分画することに対する強い関心があった。しかし、この有望なアプローチのさらなる発展における主要な制限要因は、既存の膜プラットフォームの不均一な孔径である。図1は、孔径分布による問題を例示している。大きな孔径の領域(5)は、矢印(35)によって表されるよりも大きな流れの部分を表す矢印(30)によって示されているように、より小さい孔径の領域(10)よりも多くの流体の流れを運ぶ。帯電した部位は、大きな孔径の領域において結合した種で急速に満たされ、そのような種が膜から逃げることを可能にし、小さな孔径の領域は結合し続ける。従って、結合を目的とする種のブレークスルーが、細孔全てが均一のサイズである場合に起こるよりも少ない量の処理量にて起こる。
【0011】
出願人は、孔径の均一性を高めて、歴史的な膜プラットフォームの正規対数の孔径分布の広がりを減らすことによってこの問題を解決した。例えば、本発明の膜の一実施形態では、図2において示されているように、ほぼ同一の孔の単一層(15)が膜の下流表面上に形成される。この層は、膜の上流部分における孔径分布に関係なく、等しい大きさの流れの矢印(20)及び(25)によって示されているように、流れを均一に分布させる流れに対する抵抗の大部分に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】U.S.Patent No.5,700,902
【文献】U.S.Patent No.6,565,782
【文献】U.S.Patent Pub.No.20110240550
【文献】U.S.Patent Pub.No.20130193075
【文献】International Patent Pub.No.WO2005082501
【文献】U.S.Patent Pub.No.20090173694
【文献】International Patent Pub.No.WO2012/151482
【文献】EP2705077A2
【非特許文献】
【0013】
【文献】Zydney and Kuriyel,High-Performance Tangential Flow Filtration for Protein Separations.Downstream Processing of Proteins,Springer,35-46,(2000)
【文献】Shukla and Thommes,Trends Biotechnol,28,253-261,(2010)
【文献】Clodt et al,Macromol.Rapid Commun.,34,190-194(2013)
【文献】Nunes et al,Langmuir,DOI 10.1021/Ia20439p,web published 28 June 2011
【文献】Phillip et al,Nano Letters,11,2892-2900(2011)
【文献】Rangou et al,J. Membrane Sci.,451,22662-2275(2014)
【文献】Sai et al,Science,341,530(2013)
【文献】Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry Vol.E 21a,4th Edition Supplement,Stereoselective Synthesis,H.Ahlbrecht et al,Ed.,Thieme,1995
【文献】van Reis and Saksena,J.Membrane Sci.129,19-29(1997)
【文献】Devonshire et al.,Anal.Bioanal.Chem.406,6499-6512(2014)
【文献】Breitbach et al,PLOS ONE 9,e87838(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、静電的相互作用を介して生体分子を含む溶質を分離するための、イソポーラスのマルチブロック重合体材料、ひとまとめにして材料を有するフィルタ/セパレータ、その調製方法及びその使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の帯電した自己組織化ブロック重合体材料は、マクロ細孔、メソ細孔又はミクロ細孔のうち少なくとも1つを有し、細孔のうち少なくとも一部がイソポーラスであり、少なくとも1つの重合体ブロックは、静帯電又は反応性官能基を有する。材料は、官能基上の帯電部分によって部分的又は定量的に官能基化された大きな、小さな及び隙間の領域(major, minor and interstitial regions)を有して、材料上に静止電荷をもたらし、高流動でのタンパク質、核酸、他の生物学的若しくは他の生体分子又は溶質の容易な分離のために、帯電された大きな表面及びイソポーラス構造を提供する。
【0016】
本発明のイソポーラスの帯電したマルチブロック重合体材料は、マクロ細孔、メソ細孔又はミクロ細孔のうち少なくとも1つを有する少なくともブロックA、B及びCを含み、細孔のうち少なくとも一部がイソポーラスであり、少なくとも1つの重合体ブロックは、静帯電又は反応性官能基を有し、さらに、以下の式
A-B-C (I)、
A-B-C-B (II)
A-B-C-D (III)
A-B-C-B-A (IV)
A-C-B-C-A (V)
によって定められる。
【0017】
本発明のマルチブロック重合体は、一般的に、ブロックA、B、C、(X)nを有するとして定められ、n=0~7であり、Xは、同じであっても異なっていてもよく、A、B、C、D、E、F又はGから選択される。A、B又はCのうちの1つに適したブロックは、低Tgブロック(≦25℃)であるが、ブロックのうちの1つが低Tgブロックである場合、少なくとも1つの他のブロックは、高Tgブロック(>25℃)であるという条件付きである。少なくとも1つのブロックは、静止電荷を有するか、又は、反応して静止電荷を生成し得る反応性官能基を有さなければならない。D、E、F又はGに適したブロックには:ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(ブチレン)、ポリ(イソプレン)ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸n-ブチル)、ポリ(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(スルホン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(n,n-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アミド酸)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(乳酸)、ポリ(イソシアネート)、ポリ(シアノアクリル酸エチル)、ポリ(エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明は、限定されることなく、支持された又は支持されていない3次元の膜、フィルム、シート、チューブ、又は、ヘリカル若しくはスパイラルの形態のもの等の材料であって、帯電部分を有する官能基化されたイソポーラスのブロック重合体を含む材料を含み、その材料を、高処理の電荷に基づく分離に適したものにする。
【0019】
本発明は、溶質の静電特徴にもサイズにも基づき溶質分離を促進する静止電荷を有するイソポーラスのマルチブロック重合体を含む。
【0020】
本発明は、タンパク質分画、及び、分析的及び産業的なタンパク質分画のための単離に対する高流動での官能基化されたセパレータを含む。
【0021】
本発明はイソポーラス材料に関し、イソポーラス材料は、実験室であろうと、スケールアップ又は商業的環境であろうと、タンパク質生成及び分析のための例えば1つの正に帯電したタンパク質及び1つの中性タンパク質の静電反発等を介した、タンパク質等の類似のサイズの分子の分離、患者特異的生体分子を含む生体分子特異的な分子等の類似のサイズの分子の分離を促進する。
【0022】
本発明は、静電的相互作用を介した類似のサイズのタンパク質の分離を促進するイソポーラス材料、その調製方法及びその使用に関し、イソポーラス材料は、静電的相互作用を介した核酸の分離を促進し、静電的相互作用を介した帯電した生体分子の分離を促進する。
【0023】
本発明は、静電的相互作用を介したマトリックスメタロプロテイナーゼの選択的分離を促進するイソポーラス材料に関する。
【0024】
本発明は、三次元のフィルム、チューブ、スパイラル、シート等、様々な構成の帯電したイソポーラス材料に関する。
【0025】
帯電したイソポーラス材料は、異なる電荷状態を有する類似のサイズのタンパク質を静電気的に分離するための、少なくとも10の選択性及び/又は50Lm-2hr-1bar-1の透過性を有する。
【0026】
本発明は、本明細書において開示される、大きい表面及び均一の孔径を有する階層的に多孔性の材料を形成する少なくとも1つの化学反応性官能基化重合体ブロックを有する自己組織化マルチブロック重合体又は自己組織化マルチブロック共重合体(MBP又はBCP)の材料を含む。これらのイソポーラス材料の反応領域は、反応性単位と末端又は架橋剤との反応によって部分的又は定量的に官能基化されて、電荷の程度が、例えば利用可能な反応性単位の少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%等、少なくとも20%乃至90%であるように、材料上に静止電荷を生成する。
【0027】
自己組織化マルチブロック共重合体の帯電した材料は、約1~200nmのサイズ、全単位のサイズ、及び、その間に及ぶサイズを含むメソ細孔、及び、少なくとも50nm以上のサイズを含むマクロ細孔を有する。
【0028】
>50Lm-2hr-1bar-1、>100Lm-2hr-1bar-1、>200Lm-2hr-1bar-1の透水率にて、帯電した1つ又は複数の溶質を効果的に分離する、本明細書において記載される自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。サイズ排除及び電荷相互作用の二重分離方法論は、関心のあるタンパク質、核酸、治療化合物又は他の分子若しくは化合物の高処理のバイオプロセスを駆り立てる。
【0029】
1つの正に帯電したタンパク質及び1つの中性タンパク質の静電反発を介して類似のサイズのタンパク質を分離するために、静止正電荷(stationary positive charge)を有する自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。
【0030】
1つの正に帯電したタンパク質及び1つの中性タンパク質の静電反発を介して類似のサイズのタンパク質を分離する、静止負電荷(stationary negative charge)を有する自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。
【0031】
電荷相互作用を介して核酸を分離する、静止正電荷を有する自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。
【0032】
電荷相互作用を介して生体分子を分離する、静止正電荷を有する自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。
【0033】
電荷相互作用を介して生体分子を分離する、静止負電荷を有する自己組織化マルチブロックのイソポーラスの帯電した材料が開示される。
【0034】
イソポーラスの分離層と接触する全ての種が強制的に同じ静電環境を経験させられるため、5~100nmのサイズ、全単位のサイズ、及び、その間に及ぶサイズの細孔のイソポーラスの性質は、電荷分離に特に有益である。細孔のサイズが多分散過ぎる場合、溶質が異なる電荷環境を経験する可能性があり、例えば、静電荷相互作用は、距離の関数として劇的に低下するため、いかなる電荷分離の効果もなく大きい細孔の中心を通過する。高い多孔度、及び場合によっては階層的な構造が、大きい表面に寄与し、従って分離に利用可能な多量の電荷に寄与する。結合及び溶出機構を用いた動作において、これは大きな結合能力も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】大きな孔径分布を有する膜を通る流路の概略図である。この構造における流れは、不均質な流れの分布をもたらす。矢印(35)によって表されているものよりも大きな流れの部分を表す矢印(30)によって示されるように、大きな孔径の領域(5)は、より小さい孔径の領域(10)より多くの流体の流れを運ぶ。
図2】膜の下流表面上に、以下に記載される本発明の材料を使用したほぼ同一の細孔の単一層(15)を含む膜を通る流路の概略図である。この層は、等しいサイズの流れの矢印(20)及び(25)によって示されるように、膜の上流部分の孔径分布に関係なく、流れを均一に分布させる流れに対する抵抗の大部分に寄与する。
図3】本発明によるトリブロックターポリマーISV(ポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニルピリジン))の化学構造を示した図である。ポリ(イソプレン)ブロック(I)は破線、ポリ(スチレン)ブロック(S)は灰色、ポリ(4-ビニルピリジン)ブロック(V)は黒色である。ピリジンは、Vブロック上に正電荷を導入するために四級化することができる。
図4】四級化ポリ(4-ビニルピリジン)の化学構造を示した図であり、ここで、-Rは、以下に定義される任意の化学基であり、Xは、負の対イオンである。
図5】本発明に従って、反応して正に帯電したピリジニウム及びペンダントアミド基を有するヨードアセトアミド-四級化P4VP(右)を形成するポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)及びヨードアセトアミド(左)の化学構造を示した図である。
図6】未処理のイソポーラス材料(左)、次に、本発明に従って、イソポーラス材料の表面上に、付着した化学基(球)及び静止正電荷(「+」)を有する官能基化材料(右)を示した材料官能基化の概略図である。
図7】本発明に従って、反応して架橋P4VP(右)を形成する複数のポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)単位及びジヨードブタン(左)の化学構造を示した図である。
図8】本発明に従って、非四級化膜(上、破線)及び四級化膜(下、灰色の実線)のFTIR特徴を示した図である。1600cm-1での特徴的な増加は、帯電したピリジニウムへの複素環アミンの変換を示している。1700cm-1でのバンドの出現は、四級化の間に導入されたアミドC=O結合に由来する。
図9】非四級化膜及び四級化膜を使用した単一溶質タンパク質(A)~(C)(黒色)及び二成分タンパク質混合物(D)及び(E)の拒絶挙動を例示した5つのチャートA~Eのグラフ比較を示した図である。Mgbは、黒抜きのバーで同定され、Lys及びCytCは斜めの黒色及び白色のバーによって同定される。タンパク質溶液の濃度は0.1mg/mLであった。
図10】以下に記載されるように、ヨードアセトアミドによって四級化された4つのISV膜(本発明の材料)に結合し且つそこから溶出される400bp(黒色のバー)及び200bp(斜めの黒色及び白色のバー)のDNA断片の収率を表したグラフを示した図である。
図11】本発明に従って、0.6x緩衝液で溶出された200bp(黒色のバー)及び600bp(斜めの黒色及び白色のバー)のDNA断片の相対的回収を表したグラフを示した図である。
図12】本発明に従って、負に帯電した核酸断片(65)、小さい帯電していない溶質及び溶媒分子(55)並びに大きな細胞成分(60)を有する溶液で検証した、正に帯電した(50)イソポーラス材料の層(15)の概略図である。非核酸成分は、サイズ排除機構により膜を通過又は膜によって保持され、廃棄され、核酸は膜に静電気的に結合し、その後サイズ選択的に溶出される。
図13】本発明に従って、正に帯電した分子(70)、小さな帯電していない溶質及び溶媒分子(55)を有する溶液で検証した、正に帯電した(50)イソポーラス材料(15)の概略図である。帯電していない分子は、サイズ排除により材料を通過又は材料によって保持される。正に帯電した分子は、電荷反発により拒絶される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照することができ、図面においては、実施することができる特定の実施形態が例示として示されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施するのを可能にするように詳細に記載されており、他の実施形態を利用してもよいということ、及び、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的及び電気的変更を加えてもよいということを理解されたい。従って、いかなる実施例、実施形態又は実験手順の説明は、限定的な意味で解釈されることはない。
【0037】
標的分子溶液及び標的分子自体のいずれか又はその両方の複雑さは、いくつかの工程を要求することが多くあり、時間がかかり且つ高価なプロセスであり、全てが、効果的な分離と高処理とのバランスをとる必要性により悪化する。イソポーラス膜の化学的官能基化を介して改善されることになる2つの重要な性能パラメータは、
【0038】
【数1】
として定義されるふるい係数Sであって、C及びCは、それぞれ透過液及び供給液における関心のあるタンパク質の濃度である、ふるい係数Sと、
【0039】
【数2】
として定義される透水率Lpであって、Jは、容積測定の濾液流動であり、ΔPは、膜間圧力(transmembrane pressure)である、透水率Lpである。
【0040】
ナノポーラス膜又は限外濾過膜を含む分離は、典型的には、サイズ選択性に焦点を当ててきたが、静電的相互作用が、タンパク質溶質の選択性及び透過性に重要な影響を及ぼす。タンパク質の等電点(pI)は、生体分子が正味電荷を示さないpHである。タンパク質pIのpHより下の溶液では、分子は正に帯電しているが、タンパク質pIより高いpHでは、分子は負に帯電している。そのような電荷特徴は、溶液のpH並びにイオン強度を調整し、選択性及び処理量を一桁分まで改善することによって、ナノポーラス膜又は限外濾過膜を用いたタンパク質濾過に活用されてきた。さらに、タンパク質のサイズと電荷との間に強固な関係が存在し、効果的なタンパク質のサイズは、静電遮蔽の減少によりイオン強度が低下するに従い増大する。最近では、帯電したナノポーラス膜又は限外濾過膜と処理条件とを組み合わせることによって、タンパク質の選択性がさらに改善されることが示されてきた。
【0041】
従来の電荷に基づく膜分離から本発明の特徴を区別する1つの鍵は、広範な孔径分布を有するナノポーラス膜又は限外濾過膜に対抗した、イソポーラス膜の構造における集中した細孔分布の使用である。これによって、単純化された処理条件及び高い作動圧力が可能になり、全体的により高い透過性が生じる。
【0042】
供給液が膜表面に平行に通過するタンジェンシャルフロー構成における最適化された帯電した限外濾過膜の分離に対するこれまでの研究により、約15~200Lm-2hr-1の平均透過流束が生じた(非特許文献1)。対照的に、狭い「集中した」孔径分布を有する本発明の自己組織化膜は、850Lm-2hr-1までの透過流束を示している。例えば、濃度分極及び膜汚染等、特定のパフォーマンス制限要因が高流動で増強される(非特許文献2)けれども、静電特性と組み合わせた物理的な膜の特徴の組み合わせは、既存の膜に基づくタンパク質の分離を凌ぐパフォーマンスを可能にする。
【0043】
本発明に対する適したイソポーラスBCP材料膜は、自己組織化するものである。典型的には、そのようなイソポーラス有機膜の調製は、少なくとも部分的に揮発性である1つ又は複数の溶媒にBCP(又はMBP)重合体を溶解させ、溶媒の少なくとも一部が蒸発するように定められた条件下で溶液を流し込み、次に、例えば膜/フィルム等の結果として生じる材料を相分離溶媒系と接触させることを含む。そのような手順は、一般的に、例えば、それぞれ全体が参考として援用される特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5及び非特許文献6に記載されている。
【0044】
適したブロック重合体から多孔性膜を形成する別の方法は、非特許文献7に記載されているような「SIMPLE」(スピノーダル分解により誘発されるマクロフェーズ分離及びメソフェーズ分離プラスすすぎによる抽出)のプロセスである。このプロセスでは、適したBCPが第一に調製され、適した有機溶媒において別のオリゴマー重合体と混合され、混合された溶液を流し込んで、高温での部分的な溶媒の蒸発によって階層的に多孔性の膜が形成される。最終段階で、オリゴマー重合体は、すすぎによって(BCPの)結果として生じる膜から除去される。膜の厚さ、孔径及び構造は、溶媒及び重合体の濃度、溶媒除去の時間及び温度、並びに、他の実験的因子の選択によって要望通り調整することができる。「SIMPLE」プロセスに対する適した第2のオリゴマー重合体は、水溶性であり、水で洗浄することによってBCPから除去することができるものである。一実施形態では、ポリ(エチレンオキシド)PEO等の他の可溶性オリゴマー重合体も使用することができるが、ポリ(アクリル酸)又はPAAが、第2のオリゴマー重合体として使用される。
【0045】
一実施形態では、自己組織化するブロック共重合体は、低Tg(≦25℃)を有する重合体ブロックを含む。この低Tgのブロックは、機械的靭性を提供し、材料の加工性及び取り扱い性を下げる。別のブロックは、機械的安定性を提供するTg>25℃を有するべきである。ブロックの少なくとも1つは、材料に帯電を導入するために化学的に修飾することができる、又は、すでに帯電している少なくとも1つの官能基を有する重合体であるべきである。
【0046】
一実施形態では、官能基を有する重合体ブロックは、化学的に修飾可能な官能基として芳香族窒素複素環を有する。この実施形態では、適した芳香族複素環には、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、キノロン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フェナジン、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等が含まれるが、これらに限定されない。好ましい芳香族窒素複素環は、窒素上にイオン化水素を有さないものであり;すなわち、窒素は、芳香族環の完全なる一部分である。ピリジン及びその誘導体は、特に好ましい複素環である。芳香族複素環基を有する重合体の他の例には、ポリ(2-ビニルピリジン)又はポリ(4-ビニルピリジン)(P2VP又はP4VP)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の一実施形態では、例えば膜等の自己組織化イソポーラス材料を形成するために使用されるブロックは、ISV、トリブロック又はターポリマーポリ(イソプレン-b-スチレン-b-4-ビニルピリジン)であり、ブロック(包括的構造ABCに対応するI、S、V)を示す図3を参照されたい。
【0048】
この実施形態では、トリブロックターポリマー構造は、約0.30体積分率のポリイソプレン(PI)、0.55体積分率のポリスチレン(PS)、及び0.15体積分率のポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)を有する。PI、PS及びP4VPの体積分率は:0.20≦PI≦0.40(例えばブロックA);0.45≦PS≦0.65(例えばブロックB);0.05≦P4VP≦0.35(例えばブロックC);に及ぶ。この材料の構造は、良好な機械的特性を提供すると同時に、小さな孔径を可能にする。ISVターポリマーの出発原料は、アニオン重合を介して合成されてもよい。一部の実施形態では、イソポーラス(狭い孔径分布)のフィルムが、表面層(本明細書では最上層とも呼ばれる)及びバルク層を有する。適した表面層は、ある範囲の厚さを有する。例えば、表面層は、nmまでの全ての値及びその間の範囲を含む5nmから500nmの厚さを有し得る。表面層は、表面層の深さに亘って延びる複数の細孔を有する。表面層における孔径(例えば直径)は、1nmから200nmに及び、nmまでの全ての値及びその間の範囲を含む。
【0049】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載される膜の表面細孔の密度は、少なくとも1014の細孔/m、又は、少なくとも1015の細孔/mである。狭い又は集中した(最大の細孔直径対最小の細孔直径の比(dmax/dmin)として定義される)孔径分布は1乃至3であり、0.1までの全ての値及びその間の範囲を含む。
【0050】
様々な例において、(dmax/dmin)は、例えば1、1.5、2、2.5又は3及びその全ての範囲等、3未満である。例えば、フィルムは、ほぼ単分散のメソ細孔を有する表面層を含む。一実施形態では、イソポーラス表面層は、少なくとも1×1014細孔/mの細孔密度及び3未満の孔径分布(dmax/dmin)を有する。
【0051】
上記の実施形態の一部において、ISVターポリマーのP4VP材料は、鋳放し材料マトリックスの表面に存在し、P4VPのpKaに近い屈曲点を示す膜のpH依存性透水率によっても、各ブロックのナノメートルスケールの相分離を示す染色された透過型電子顕微鏡画像によっても確認される。
【0052】
上記の実施形態の一部(53~55)において記載されているように、イソポーラス材料は、膜の表面に存在し、四級化剤に利用可能な窒素複素環を有する重合体ブロックを有し、表面は、細孔の隙間の表面を含む。例えば、共重合体がP4VP(弱塩基)を有する上記の実施形態では、P4VPは、種々の化学物質を使用して四級化され、図4において示されているように、膜上に静止正帯電が生じる。
【0053】
この実施形態における四級化剤は、標的とされている特定の溶質の精製を最適化するように選ばれる。有用な方法において適用することができる作用物質(agent)の多くの特徴がある。例えば、帯電した材料の親水性/疎水性の程度は、一部のタンパク質にとって重要な考慮事項であり得る。親水性/疎水性を制御するために、四級化剤は、例えば、残基のClogPの値又は範囲(親水性/疎水性の程度を反映する測定値)に従って選択することができる。例えば、より親水性の環境が望ましい場合、比較的低いClogPを材料に残すヨードアセトアミド、ヨード酢酸又はクロトン酸等の四級化剤が選ばれてもよい。より疎水性の環境が望ましい場合、相対的に高いClogPを材料に残すドデシルヨージド等の四級化剤が選ばれてもよい。使用することができるClogP以外の親水性/疎水性の程度の他の測定基準がある。例えば、四級化後の材料の接触角に対して最適な値又は範囲があってもよい。導入された官能基(例えば、カルボン酸、アミド)は、後の化学反応にも有用であり得るか、又は、有用な官能性(例えば、pH応答、熱応答、溶媒耐性)であり得る。
【0054】
上記の実施形態における四級化剤は、BCPの窒素複素環と反応して正に帯電した複素環を形成する任意の適した化合物である。本発明の1つの特徴は、正電荷の量を制御するために電荷の程度又は量を変えることができることである。これは、精製されているタンパク質に対する全電荷の最適化を可能にする。四級化後の膜の電荷密度(四級化の程度に対応)は、FTIR及びNMRによって決定することができる。
【0055】
上記の実施形態の四級化剤の1つの群は、式R-Xによって定められる化合物であり、式中、Rは、C~C24、より好ましくはC~C20の置換又は未置換の直鎖、環状又は分岐状アルキル又はアルケニル基であり、Xは、ハライド(F-、Cl-、I-、Br-)又は--OSOCH等の脱離基である。典型的には、脱離基は、アルキル又はアルキレン基上の末端基(すなわち末端に位置する基)であり、未置換のsp炭素(すなわち、-CH-X)に結合して、反応性を最大にするであろう。アルキル又はアルキレン基は、骨格に1~24の炭素原子を有してもよい。直鎖アルキル基の例として、メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。環状アルキル基の一例は、-CH-シクロヘキサンである。
【0056】
上記の実施形態の分岐状アルキル基の例は、-CH-CH(CH及び-CHCH-CH(CHである。アルケニル基の例は、ゲラニル(trans-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-X)であろう。置換アルキル基の例は、ベンジル(X-CH-C)であろう。置換反応による四級化が好ましいけれども、適したオレフィンへの付加反応によって複素環を四級化することが可能であろう。例えば、Qが電子求引性基であるHC=CHQ化合物との反応によって、Het-CH-CHQの形態の四級化複素環が生じ、ここでQは電子求引性基である。このクラスの作用物質の例として、メタクリル酸エチル又はメチルアクリルアミドが挙げられるであろう。
【0057】
上記の実施形態の別のクラスの四級化剤は、式R-W-(R)-CH-Xによって定められ、Rは、C~C24、より好ましくはC~C12の置換又は未置換のアルキル、アルケニル又はアリール基であり、Wは、酸素、ケイ素、硫黄又は窒素等のヘテロ原子であり、Xは、上記の脱離基である。このクラスの四級化剤の一部の例が、X-CH-O-C、X-CHCH-O-CH及びX-CHCH-モルホリンであろう。
【0058】
別のクラスの四級化剤は、式R-(W)-COCH-Xのアシル化合物であり、Rは、C~C24、より好ましくはC~C10のアルキル又はアルケニル、又は、C~C10のアリール基であり、Wは、酸素又は窒素等のヘテロ原子であり、Xは、上記の脱離基である。このクラスのアシル化剤の適した例が、X-CH-CO-C、X-CH-COCH、X-CH-CONH及びX-CHCON(CHを含む。
【0059】
上記の実施形態の適した四級化化合物には、ブロモブタン、ブロモ-PEG、ブロモプロピオン酸、ブロモ吉草酸、クロロアセトアミド、クロロブタン、クロロ酪酸、クロトン酸、ジヨードブタン、ヨードブタン、ヨードアセトアミド及びヨードプロピオン酸を含む四級化が含まれるが、これらに限定されない。ヨードアセトアミドは、低い蒸気圧、比較的低い危険性、安価で容易に入手可能であり、水溶性、制御可能な四級化、親水性、及び膜の選択的な層の保存性等、多くの望ましい特徴のために特に興味深いものである。これらの特徴は、この四級化プロセスを、帯電した膜の大量生産に対して容易にスケーラブルにする。以下に示す膜を四級化するために使用される最終条件は:6.6mMの水溶性のヨードアセトアミド、60℃、1時間であった。求核置換反応により、以下に示すように、材料中にペンダントアセトアミド基を有する正に帯電したピリジニウムが得られる。
【0060】
上記の実施形態において、ヨードアセトアミドは、ポリ(4-ビニルピリジン)と反応し、膜上に静止電荷が得られる。この反応は、膜上の末端アミド及び持続性の正電荷をもたらす。
【0061】
全反射式フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)を使用して、非四級化膜及び四級化膜を特徴づけた。図8において見られるように、四級化プロセスの特徴的なピークを、ヨードアセトアミドで処理した膜において観察した。1640cm-1での特徴的な増加は、帯電したピリジニウムへの複素環アミンの変換を示している。1700cm-1でのバンドの出現は、四級化中に導入されたアミドC=0結合に由来する。H核磁気共鳴(NMR)分光法の測定値によって、15.9%のビニルピリジンプロトンは化学的環境を変えず、標準化した条件を使用した84.1%の四級化変換を意味しているということが示された。ヨードアセトアミドで処理した膜についてだけでなく、上記の他の化学基についても類似の実験を行い、温度、試薬濃度及び反応時間を変えたことは注目に値する。ヨードアセトアミドに対する反応時間を増やすことによって、1640cm-1及び1700cm-1でのピーク強度が増加したけれども、1時間の反応が、かなりの割合の4-ビニルピリジンモノマーを変換し、高帯電特徴を膜に伝えるのに十分であった。
【0062】
複素環との2つの反応部位を有し、架橋剤として役立つ、上記の実施形態の適した二官能性の四級化剤には、式X-R-X、X-CH-CO-(W)-R-(W)-COCH-X、又は、X-CH-(R)-W-(R)-CH-Xによって定められる架橋剤が含まれ、式中、Rは、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、Wは、酸素又は窒素等のヘテロ原子であり、さらに、Xは、上記の脱離基である。架橋剤は、対称的でなくてもよく;すなわち、1つの反応性基は、第2の反応性基とは異なっていてもよい。二官能性の四級化基の例として、X-(CH-X、X-CHCH-O-CHCH-X、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、及び、N-1-ヒドロキシル-2,2-ジメトキシエチルアクリルアミドの誘導体が挙げられる。1,4-ジヨードブタン等の架橋剤は、膜の機械的完全性の増加及び化学的抵抗性の増強の可能性のため、特に興味深いものである。
【0063】
上記の実施形態の適した四級化剤は、材料の全体的な電荷並びに親水性/疎水性の程度を調整するために正又は負の電荷を有することができるさらなる官能基も含む。例えば、四級化剤は、アニオン性化合物、又は、水性の精製(aqueous purification)の条件下でイオン化してアニオンを形成する化合物であり得る。これは、全体的な電荷が中性である双性イオンの複素環を形成する、及び、高極性の特徴を依然として保持しながら材料の正電荷を減少させるであろう。この種の作用物質の例として、-CHCHCOH又は-CHCHSOH等のカルボン酸基又はスルホン酸基を有する化合物が挙げられる。或いは、四級化剤は、カチオン性化合物、又は、精製条件下でプロトン化される化合物である。この種の例として、-CHCONHCHCH-NH(CH 又は-CHCH-N(CH が挙げられるであろう。これにより、材料の全体的な正電荷が増加する。これらの種類の電荷制御四級化剤は、必要に応じて膜特性を制御するために親水性/疎水性制御剤と共に使用される。
【0064】
タンパク質及び他の種類の生物学的材料は、光学活性であることが多いため、官能基化剤はキラルであってもよい。これは、ある程度のキラリティーを関連させる材料をもたらすであろう。適した光学活性アルキル化剤の例は、非特許文献8において見つけることができる。例えば、上記の実施形態の適したキラル四級化剤は、光学活性の第一級アルキルハライド又はメシレートを含むであろう。
【0065】
電荷を導入するための材料の修飾は、修飾剤を有する溶液に調製されたままの膜を浸すことによって行われる。一部の実施形態において、電荷導入は定量的であり、全ての利用可能な反応部位の>20%、>30%、>40%、>50%、>60%、>70%、>80%又は>90%であるが、他の実施形態では、四級化の程度は定量未満あってもよい。四級化に対する適した溶媒は水である。しかし、作用物質の一部は、水における溶解度が限られている可能性があるため、水と(アルコール等の)有機補助溶媒との組み合わせが使用される。場合によっては、非水性有機溶媒又は有機溶媒の混合物を使用することが必要であり得る。このプロセスに対する典型的な条件は、適切な溶媒系において四級化剤を溶解し、20乃至30℃の温度での1乃至24時間の反応時間で、2mM及び100mMの試薬濃度で膜を処理することであろう。場合によっては、より反応性の低い作用物質では、より長い反応時間及び高い温度を使用する必要があり得る。このプロセスの進行を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)及び核磁気共鳴(NMR)を使用して監視することができる。
【0066】
一部の実施形態では、可能な限り高い電荷密度が、帯電した溶質の最も選択的な電荷に基づく分離に望ましい。しかし、これらの場合であっても、膜は、様々なpHの供給溶液の高流動を保持しなければならない。膜のパフォーマンスは、加圧されたデッドエンド型攪拌式セル装置を利用して測定することができる。この装置は、10乃至50mLの供給リザーバ、及び、約4cm乃至約13cmの膜面積を使用することができる。
【0067】
本発明の帯電したイソポーラス膜によって精製又は濃縮されることになるタンパク質又は他の生物学的に基づく材料のタイプ又は種類は限定されない。特に、供給原料は、哺乳動物、細菌、昆虫、ウイルス又は真菌の細胞株に由来するタンパク質であってもよく、典型的には、別のプロセスによって既に部分的に精製されていてもよい水性供給原料で使用される。発酵ブロスを供給原料として使用することも可能である。供給原料は、全血、希釈血液、血漿、血清であってもよい。供給原料は、上記の材料を使用して分離され得る核酸を有してもよい。
【0068】
3つの関心のあるモデルタンパク質には、ミオグロビン(Mgb)、リゾチーム(Lys)及びチトクロムC(CytC)が含まれる。これらのタンパク質の典型的なモル質量及び等電点が表1において示されており、それらは、細胞培養液中に存在し得るタンパク質の代表である。タンパク質溶質を有する供給液での流動を、上記と同じ方法を使用して測定することができ、タンパク質拒絶を、紫外可視分光法、及び、供給液及び透過液に対する水性高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して定量的に測定することができる。計算される拒絶Rは、以下の式
【0069】
【数3】
のように、ふるい係数に関連がある。
【0070】
【表1】
HPLCを用いた紫外可視検出は、タンパク質混合物を分離し、タンパク質濃度を定量的に決定する単純且つ迅速な方法である。
【0071】
しかし、本発明の一部の実施形態では、供給原料は、例えばタンパク質Mgb/Lys又はMgb/CytC等、二成分(又はさらにより複雑な)溶質混合物を有してもよい。そのような混合物に対する1つの鍵となるパフォーマンスパラメータは、非特許文献9によって
【0072】
【数4】
として定められる選択性Ψであり、式中、S及びSは、より少ない及びより多い保持されたタンパク質に対するふるい係数である(非特許文献9)。このパラメータによって、帯電した膜及び未処理の膜の間の関連しているパフォーマンス特性の単純且つ直接的な比較が可能になる。
【0073】
この例では、Mgb/Lys及びMgb/CytCの成分はサイズが非常に類似しており、単純な限外濾過では分離することができない。中性のpHにていずれかの混合物を用いて本発明の膜を使用すると、Mgbは(その等電点のために)中性に帯電し、Mgbが混合物中に存在しない場合に対応する選択性で膜を通過する。Lys又はCytCは、(その等電点のために)中性pHで正に帯電すると予想され、同様に帯電した膜によって拒絶されることになる。本発明の膜は、50LMH/barを超える流速でデッドエンドシステムにおいて少なくとも10のそのような膜の対の選択性を達成するように設計されている。
【0074】
【表2】
一部の実施形態では、帯電したイソポーラス膜を使用した精製プロセスは、所望の材料の等電点の、その下及び上の生物学的材料を有する加圧された緩衝供給液流を使用することを含む。
【0075】
別の実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、核酸を単離するために使用される。上記の実施形態のように、ISVイソポーラス材料のP4VPを四級化した後で、イソポーラス材料は正電荷を有する。DNA断片の混合物に曝露されると、負に帯電したDNAが膜に結合する。その後、少量の溶出緩衝液を使用して、DNAを膜から溶出することができる。4つの異なる膜における200及び400の塩基対(bp)に対する回収率が、図10において示されている。溶出されたDNAの収率を、ゲル電気泳動を使用して定量化し、4つの四級化膜に対して、200及び400bp断片の収率を定量化した。200bpに対して、収率は71~85%まで変動し、変動係数(SD/平均)は8.8%であった。400bpの収率は非常に類似しており、67~86%まで変動し、変動係数は10.6%であった。他の市販のキットに対して最良の場合で約10%から49%に及ぶ相対標準偏差を有する市販のキット(非特許文献10;非特許文献11)と比較して、これらの結果は、イソポーラスの帯電した重合体材料を用いた極めて迅速なプロセスを使用した、非常に一貫した高いDNA回収を実証している。
【0076】
この実施形態では、DNA断片のサイズ選択的溶出も可能である。異なる希釈度の溶出緩衝液(0.6x、0.3x)を溶出に使用した。図11は、200bp断片と600bp断片との0.6x緩衝液溶出の相対収率を示している。より大きな600bpの収率は1/4以下まで減少し、600bpより大きい全てのバンドは検出可能ではなく、帯電したイソポーラス膜システムを、DNAの抽出、濃縮及びサイズ選択に使用することができるということを実証している。0.3xの緩衝液濃度では、200bp断片さえも溶出されなかった。これらの結果は、非常に特異的なDNA断片サイズを標的とし、且つ、単に溶出条件を調整することによって単一の製品が多数のDNA単離の用途に使用されることを可能にする帯電した膜の強力な利点を示している。
【0077】
別の実施形態では、ブロック共重合体は、包括的構造A-B-A-Cに対応するポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン-b-4ビニルピリジン)である。P4VPは、上記の実施形態のように静止電荷を生成するために四級化される。一部の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料は、二次元構造に形成される。他の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料は、三次元構造に形成される。
【0078】
一実施形態では、イソポーラス材料上に静止電荷をもたらす反応が、材料の親水性を変化させる。別の実施形態では、イソポーラス材料上に静止電荷をもたらす反応が、さらなる化学反応又は材料の官能性に使用することができる官能基を材料に導入する。
【0079】
一部の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料上の静止電荷は、例えば、四級化ピリジン基、四級化ジエチルアミノエチル基、四級化ジメチルアミノエチル基等、正である。他の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料上の静止電荷は、例えばスルホン酸基等、負である。一部の実施形態では、イソポーラス材料は、材料上に正電荷を生成するために化学物質を用いて四級化することができるアミン基(例えば、ピリジン、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル等)を有する。一実施形態では、アミンは、例えば2-ヨードアセトアミド、2-ブロモエタノール等、ヨウ素、塩素及び臭素から選択される1つのハロゲンを有する単官能性アルキル化剤を用いて四級化される。一実施形態では、単官能性アルキル化剤は、式:R-Xを有し、式中、Rは、C~C24置換又は未置換の直鎖、環状又は分岐状アルキル又はアルケニル基であり、Xはハロゲン基である。
【0080】
別の実施形態では、単官能性アルキル化剤は、式:R-W-(R)-CH-Xを有し、式中、Rは、C~C24のアルキル、アルケニル又はアリール基であり、Wは、酸素、ケイ素、硫黄又は窒素等のヘテロ原子であり、Xはハロゲン基である。別の実施形態では、単官能性アルキル化剤は、式:R-(W)-COCH-Xを有し、式中、Rは、C~C24のアルキル、アルケニル又はアリール基であり、Wは、酸素又は窒素等のヘテロ原子であり、Xはハロゲン基である。
【0081】
別の実施形態では、複数のアミンが、例えば1,4-ジヨードブタン等、ヨウ素、塩素及び臭素から選択される2つ以上のハロゲンを有する多官能性アルキル化剤を用いて四級化される。
【0082】
別の実施形態では、アミンは、例えばクロトン酸等、少なくとも1つの反応性二重結合を有するアルキル化剤を用いて四級化される。
【0083】
一部の実施形態では、上記のアミン-アルキル化剤含有物のうち2つ以上が、イソポーラス材料上に電荷を導入するために使用される。
【0084】
一部の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料上の電荷の程度は、少なくとも20%から90%である。他の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料上の電荷の程度は、全ての利用可能な単位の≦90%である。
【0085】
一実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、抗菌剤を用いてさらに処理又は官能基化される。
【0086】
一部の実施形態では、静止電荷を有するイソポーラス材料の幾何学的形状及び面積が制御される。一部の実施形態では、帯電した領域の幾何学的形状及び面積は、リソグラフィでパターン化されるか、又は、帯電した修飾材料の一部又は複数の部分を非修飾材料又は別の基板に付着させることによって達成されるか、又は、印刷又は押し出しを介して非修飾材料の一部又は複数の部分上にパターン化される。
【0087】
一部の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料は、分離媒体として使用される。一部の実施形態では、イソポーラスの帯電した材料は、生体分子を他の生体分子から分離するために使用される。一実施形態では、標的生体分子はタンパク質である。別の実施形態では、標的生体分子は核酸である。
【0088】
一部の実施形態では、分離媒体として帯電したイソポーラス材料を使用した分離機構には、標的の種が静電的相互作用によって材料に結合してそれを単離する結合及び溶出機構が含まれ、標的の種は、標的の種を回収するために、材料から解離することができる。
【0089】
一部の実施形態では、分離媒体として帯電したイソポーラス材料を使用した分離機構には、電荷反発機構、サイズ選択機構、及び/又は濃縮機構が含まれる。
【0090】
一部の実施形態では、結合及び溶出機構を有する分離媒体として帯電したイソポーラス材料を使用した分離機構は、化学選択的又はサイズ選択的溶出も含む。
【0091】
一部の実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、勾配分離、イソクラティック分離、又はステップ分離のために使用される。
【0092】
一部の実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、創傷の包帯又は絆創膏として使用されるか、又は、バイオフィルムの発達を調節するために使用される。
【0093】
一部の実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、2つ以上の帯電した材料と組み合わされて装置に一括されるか、又は、帯電したイソポーラス材料は、帯電していないイソポーラス材料と組み合わされて装置として一括される。
【0094】
一部の実施形態では、帯電した材料は、プリーツパック、クロスフローカセット、中空繊維モジュール、シリンジフィルタ、カプセル、ピペットチップ、遠心チューブ、渦巻き形モジュール又はセンサ装置に一括される。
【0095】
別の実施形態では、帯電した材料は平らなシートとして一括される。
【0096】
一部の実施形態では、帯電したイソポーラス材料は、支持材料上に固定化されるか、又は、布地と直接一体化される。
【0097】
一実施形態では、2つ以上の帯電したイソポーラス材料が、キットとして共に一括される。
【0098】
別の実施形態では、帯電したイソポーラス材料を組み込んだ2つ以上の装置が、キットとして共に一括される。
【0099】
別の実施形態では、少なくとも1つの帯電したイソポーラス材料が、結合した標的の種を結合後に溶出させるために、1つ又は複数の化学溶液と共に一括される。
【0100】
図において同定される特徴の表
5 大きな孔径の領域
10 小さな孔径の領域
15 ほぼ同一の孔径の層
20 均一の流れを示す矢印
25 均一の流れを示す矢印
30 より多くの流量を示す矢印
35 より少ない流量を示す矢印
40 電荷を導入するための官能基化反応
45 官能基化反応から導入された官能基
50 正に帯電した材料
55 帯電していない溶質/溶媒分子
60 細胞残屑等の大きな溶質
65 負に帯電した核酸溶質
70 正に帯電した溶質
図1
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